説明

船舶推進機

【課題】クランク軸の逆転を即座に検知することができる船舶推進機を提供すること。
【解決手段】船外機は、クランク軸を含むエンジンと、クランク軸の回転速度を検出する回転速度検出装置と、クランク軸の回転をプロペラに伝達する前後進切替機構と、船外機のシフト位置を検出するシフト位置検出装置とを含む。クランク軸がエンジンによって一方の回転方向に回転駆動されると、オイルポンプから潤滑流路にオイルが供給され、クランク軸の回転速度に対応する油圧が潤滑流路に発生する。ECUは、クランク軸が回転している状態で前後進切替機構が前進状態から後進状態に切り替わった後の潤滑流路の油圧P2が、クランク軸が一方の回転方向に回転しているときの潤滑流路の油圧の最小値Pminよりも小さい場合に、逆転防止制御を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、船舶推進機に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶に備えられる船舶推進機の一例は、船外機である。一つの先行技術に係る船外機は、たとえば、特許文献1に記載されている。この船外機は、プロペラを回転させるエンジンと、船外機を制御するECU(電子制御ユニット)とを含む。ECUは、エンジンによってプロペラを回転させることにより、船舶を前進および後進させる。エンジンは、回転可能に構成されたクランク軸と、クランク軸の回転に連動して回転するカムシャフトと、クランク軸の回転角を検出する磁気センサと、カムシャフトの回転角を検出する磁気センサとを含む。
【0003】
エンジンは、クランク軸を一方の回転方向に回転させることにより、プロペラを回転させる。プロペラの回転方向は、船外機のシフト位置によって切り替えられる。正常状態では、船舶が前進している場合にはプロペラは正転し、船舶が後進している場合にはプロペラは逆転する。クランク軸は一方の回転方向のみに回転しており、クランク軸とプロペラ軸との間に設けられたドッグクラッチの噛み合いを切り替えることにより、プロペラの回転方向を切り替えることになる。しかし、船舶が高速で前進している状態で船外機のシフト位置が前進位置から後進位置に切り替えられると、クランク軸が逆転する場合がある。
【0004】
具体的には、船舶が高速で前進している状態で船外機のシフト位置が前進位置から後進位置に切り替えられた直後は、船舶が慣性で前進しているため、プロペラを正転させる抵抗(水圧)がプロペラに加わる。そして、この抵抗は、クランク軸に伝達される。このとき、船外機のシフト位置が後進位置であるから、このプロペラを正転させる抵抗は、クランク軸を逆転させる力としてクランク軸に伝達される。そのため、船舶が高速で前進している状態で船外機のシフト位置が前進位置から後進位置に切り替えられると、クランク軸が逆転する場合がある。
【0005】
クランク軸が逆転すると、エンジンの排気ポートに接続された排気通路内が負圧になるため、プロペラで開口する排気通路の出口を通じて排気通路内に吸い込まれた船外機の外の水が、エンジンの内部に進入するおそれがある。また、クランク軸が逆転すると、クランク軸の回転の周期と、カムシャフトの回転の周期との関係が変化する。特許文献1では、この関係に基づいてECUがクランク軸の逆転を検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−274970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
クランク軸の逆転は、即座に検知されることが好ましい。しかしながら、前述の先行技術に係る船外機では、クランク軸が逆転した後に、クランク軸の回転の周期と、カムシャフトの回転の周期とが検出され、これらの周期の関係に基づいてクランク軸の逆転が検知される。すなわち、クランク軸の逆転は、少なくともクランク軸が数回転した後に検出される。そのため、クランク軸の逆転を検知するまでに時間を要する。さらに、クランク軸が逆転する直前の状態(逆転の兆候)を検知することが困難である。
【0008】
このような問題は、船外機に限らず、船内機や船内外機などの他の形式の船舶推進機にも生じうる。
そこで、この発明の目的は、クランク軸の逆転を即座に検知することができる船舶推進機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するための請求項1記載の発明は、回転可能に構成されたクランク軸を含み、前記クランク軸を一方の回転方向に回転させることによりプロペラを回転させるエンジンと、前記クランク軸の回転速度を検出する回転速度検出手段と、前記クランク軸の回転を前記プロペラに伝達するように構成されており、前記プロペラが前進回転方向に回転する前進状態と、前記プロペラが後進回転方向に回転する後進状態と、前記クランク軸と前記プロペラとの間での回転の伝達が遮断されるニュートラル状態とに切り替わるように構成された前後進切替機構と、前記前後進切替機構が、前進状態、後進状態、およびニュートラル状態のいずれの状態であるかを検出するシフト位置検出手段と、前記エンジンによって駆動されることにより、液体を送るように構成された送液手段と、前記クランク軸が前記一方の回転方向に回転しているときに前記送液手段から液体が供給されるように構成された流路と、前記流路において前記送液手段から前記流路に供給された液体の物理量を検出する物理量検出手段と、前記回転速度検出手段、シフト位置検出手段、および物理量検出手段の検出値が入力され、前記クランク軸が回転している状態で前記前後進切替機構が前進状態から後進状態に切り替わった後の前記流路における液体の物理量である切替後物理量が、予め定められた第1の値よりも小さい場合に、前記クランク軸の逆転を防止するように前記エンジンおよび前後進切替機構の少なくとも一方を制御する逆転防止制御を実行するように構成された制御手段とを含む、船舶推進機である。
【0010】
この構成によれば、エンジンが、クランク軸を一方の回転方向に回転させる。クランク軸の回転および回転速度は、回転速度検出手段によって検出される。また、クランク軸の回転は、前後進切替機構によってプロペラに伝達される。前後進切替機構は、プロペラが前進回転方向に回転する前進状態と、プロペラが後進回転方向に回転する後進状態と、クランク軸とプロペラとの間での回転の伝達が遮断されるニュートラル状態とに切り替わる。前後進切替機構の状態は、シフト位置検出手段によって検出される。
【0011】
また、エンジンがクランク軸を一方の回転方向に回転させると、送液手段から流路に液体が供給される。物理量検出手段は、流路において送液手段から流路に供給された液体の物理量を検出する。すなわち、物理量検出手段は、液体の圧力、液体の流量、および液体の流速を含む液体の物理量を流路において検出する。制御手段は、物理量検出手段によって検出された液体の物理量に基づいてクランク軸の逆転を検知する。具体的には、クランク軸が回転している状態で前後進切替機構が前進状態から後進状態に切り替わった後の流路における液体の物理量を切替後物理量と定義し、予め定められた液体の物理量を第1の値と定義する。制御手段は、切替後物理量が第1の値よりも小さい場合に、エンジンおよび前後進切替機構の少なくとも一方を制御して逆転防止制御を実行する。これにより、クランク軸の逆転が防止される。
【0012】
送液手段から流路には、クランク軸が一方の回転方向に回転しているときに液体が供給される。したがって、クランク軸が回転していないとき、およびクランク軸が逆転しているときの流路における液体の物理量は、第1の値よりも小さい。そのため、クランク軸の回転方向が一方の回転方向から他方の回転方向(一方の回転方向と反対の方向)に変わるときには、流路における液体の物理量が、第1の値以上の値から第1の値よりも小さい値に変化する。よって、ECUは、流路における液体の物理量の変化に基づいて、クランク軸が逆転する直前の状態(逆転の兆候)を検知することができる。また、クランク軸の逆転が始まる前から液体の物理量が減少しているから、ECUは、流路における液体の物理量に基づいて、クランク軸の逆転を即座に検知することができる。
【0013】
請求項2記載の発明のように、前記物理量検出手段は、前記流路において前記送液手段から前記流路に供給された液体の圧力を検出する液圧検出手段を含み、前記切替後物理量は、前記クランク軸が回転している状態で前記前後進切替機構が前進状態から後進状態に切り替わった後の前記流路における液体の圧力である切替後液圧を含み、前記第1の値は、予め定められた第1の液圧を含んでいてもよい。
【0014】
この場合、請求項3記載の発明のように、前記送液手段は、前記エンジンによって駆動されることにより、オイルを送るように構成された送油手段を含み、前記液圧検出手段は、前記流路において前記送油手段から前記流路に供給されたオイルの圧力を検出する油圧検出手段を含み、前記切替後液圧は、前記クランク軸が回転している状態で前記前後進切替機構が前進状態から後進状態に切り替わった後の前記流路におけるオイルの圧力である切替後油圧を含み、前記第1の値は、予め定められた第1の油圧を含んでいてもよい。
【0015】
また、請求項4記載の発明のように、前記送液手段は、前記エンジンによって駆動されることにより、水を送るように構成された送水手段を含み、前記液圧検出手段は、前記流路において前記送水手段から前記流路に供給された水の圧力を検出する水圧検出手段を含み、前記切替後液圧は、前記クランク軸が回転している状態で前記前後進切替機構が前進状態から後進状態に切り替わった後の前記流路における水の圧力である切替後水圧を含み、前記第1の値は、予め定められた第1の水圧を含んでいてもよい。
【0016】
また、請求項5記載の発明のように、前記第1の油圧は、前記流路にオイルが充填されているときの前記流路の油圧の最小値であることが好ましい。すなわち、たとえばエンジンの始動直後などはエンジンの回転速度が非常に小さいので、流路にオイルが充填されておらず、流路の油圧が非常に小さい場合がある。また、このとき、流路の油圧は、エンジンの回転速度に対応していない場合がある。一方、流路にオイルが充填されているときには、エンジンの回転速度に対応する油圧が流路に発生する。したがって、クランク軸が逆転しているときや、クランク軸が逆転する直前には、流路の油圧が、流路にオイルが充填されているときの流路の油圧の最小値よりも小さい。したがって、第1の油圧が、流路にオイルが充填されているときの流路の油圧の最小値である場合には、制御手段は、逆転の兆候や、クランク軸の逆転を確実に検出することができる。
【0017】
また、請求項6記載の発明のように、前記流路は、前記送油手段から供給されたオイルを吐出する吐出口を含み、前記油圧検出手段は、前記送油手段と前記吐出口との間において油圧を検出するように構成されていてもよい。すなわち、前記流路は、送油手段と吐出口とを繋ぐ流路であり、オイルを貯留するオイル貯留部(たとえば、オイルパン)から送油手段までの流路や、吐出口から吐出されずに残ったオイルをオイル貯留部に戻す流路以外の流路であることが好ましい。
【0018】
請求項7記載の発明は、前記制御手段は、前記前後進切替機構が前進状態またはニュートラル状態であり、前記クランク軸が回転しているときの前記流路における液体の物理量である切替前物理量が、前記第1の値以上であり、前記切替後物理量が前記第1の値よりも小さい場合に、前記逆転防止制御を実行するように構成されている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の船舶推進機である。
【0019】
船舶が高速で前進している状態で前後進切替機構が前進状態から後進状態に切り替わると、クランク軸が逆転する場合がある。すなわち、通常、クランク軸の逆転は、前後進切替機構が後進状態に切り替わった後に起こる。したがって、前後進切替機構が前進状態およびニュートラル状態であるときには、クランク軸の逆転が起こらない。そのため、前後進切替機構が前進状態またはニュートラル状態であり、クランク軸が回転しているときの流路における液体の物理量である切替前物理量は、第1の値以上である。したがって、切替前物理量が、第1の値よりも小さい場合には、物理量検出手段、送液手段、および流路の少なくとも一つに異常が発生しているおそれがある。制御手段は、切替前物理量が第1の値以上であり、切替後物理量が第1の値よりも小さい場合に、逆転防止制御を実行する。これにより、実際の切替後物理量が第1の値以上であるのに、物理量検出手段等の異常によって、切替後物理量が第1の値よりも小さいと判定されることが防止される。
【0020】
請求項8記載の発明は、前記制御手段は、時間を計る計時手段を含み、前記前後進切替機構が前進状態から後進状態に切り替わってからの経過時間が所定時間以下であるときにのみ前記逆転防止制御を実行するように構成されている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の船舶推進機である。
この構成によれば、制御手段は、計時手段によって、前後進切替機構が前進状態から後進状態に切り替わってからの時間を計測する。そして、制御手段は、前後進切替機構が前進状態から後進状態に切り替わってからの経過時間が所定時間以下であるときにのみ逆転防止制御を実行する。そのため、前後進切替機構が後進状態に切り替わってから所定時間経過後には逆転防止制御が行われない。したがって、たとえば、船舶の通常航走時(船舶が所定の速度で前進および後進しているとき)に、何らかの理由で一時的に液体の物理量(たとえば、油圧)が低下してしまった場合でも誤って逆転防止制御が行われることが防止される。
【0021】
請求項9記載の発明は、前記送液手段は、前記流路に送られる液体の流量が前記クランク軸の回転速度の増加に伴って増加するように構成されており、前記制御手段は、前記前後進切替機構が前進状態から後進状態に切り替わった後に、前記クランク軸の回転速度が増加しており、かつ前記切替後物理量が前記第1の値よりも小さい場合に、前記逆転防止制御を実行するように構成されている、請求項1〜8のいずれか一項に記載の船舶推進機である。
【0022】
この構成によれば、エンジンがクランク軸を一方の回転方向に回転させている状態で、クランク軸の回転速度が増加すると、送液手段から流路に送られる液体の流量が増加して、流路における液体の圧力および流速が増加する。すなわち、液体の物理量が増加する。したがって、クランク軸が逆転していなければ、前後進切替機構が前進状態から後進状態に切り替わった後にクランク軸の回転速度が増加すると、切替後物理量も増加する。すなわち、クランク軸が逆転している場合には、前後進切替機構が前進状態から後進状態に切り替わった後にクランク軸の回転速度が増加していても、切替後物理量が第1の値よりも小さい。制御手段は、液体の物理量に加えて、クランク軸の回転速度に基づいてクランク軸の逆転を検知する。これにより、クランク軸の逆転がより確実に検知される。
【0023】
請求項10記載の発明は、前記逆転防止制御は、前記前後進切替機構を制御して前記前後進切替機構を後進状態からニュートラル状態に切り替えるシフト制御を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の船舶推進機である。
この構成によれば、制御手段は、クランク軸の逆転を検知したときに、前後進切替機構を制御してシフト制御を実行する。これにより、前後進切替機構が後進状態からニュートラル状態に切り替わって、クランク軸とプロペラとの間での回転の伝達が遮断される。したがって、プロペラに加わる力(クランク軸を逆転させる力)がクランク軸に伝達されることが防止される。これにより、クランク軸の逆転が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係る船舶の構成を説明するための概略図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るリモートコントロールボックスの側面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る船外機の側面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るエンジンの概略図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る潤滑装置の概略図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るオイルポンプの断面図である。
【図7】クランク軸の逆転が生じていない場合のグラフである。
【図8】クランク軸の逆転が生じている場合のグラフである。
【図9】本発明の一実施形態に係る逆転検知制御について説明するためのフローチャートである。
【図10】本発明の他の実施形態に係る逆転検知制御について説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る船舶1の構成を説明するための概略図である。また、図2は、本発明の一実施形態に係るリモートコントロールボックス8(以下、単に「リモコンボックス8」という。)の側面図である。
図1に示すように、船舶1は、船外機2と、船体3とを含む。船外機2は、船舶推進機の一例である。船外機2は、船体3の後部に取り付けられている。船外機2は、船体3を推進させる推進力を発生する。船外機2は、プロペラ4(図3参照)を回転させるエンジン5と、船外機2を制御するECU6(電子制御ユニット)とを含む。また、船体3は、操舵部材7と、リモコンボックス8と、表示部9とを含む。船舶1は、操舵部材7が操作されることにより操舵される。また、船舶1の速度は、リモコンボックス8に備えられたレバー10が操作されることにより調整される。船舶1の前進および後進は、レバー10が操作されることにより切り替えられる。速度などの船舶1の状態は、表示部9に表示される。
【0026】
図2に示すように、リモコンボックス8のレバー10は、その下端部を中心に前後に回動可能である。レバー10は、操船者によって、概ね垂直な位置を中心に前後に傾けられる。中立位置Nは、たとえば、レバー10が概ね垂直な位置である。レバー10が中立位置Nから前進シフトイン位置Finまで前に傾けられると、船外機2は、船体3を前進させる前進方向への推進力を発生する。また、レバー10が中立位置Nから後進シフトイン位置Rinまで後ろに傾けられると、船外機2は、船体3を後進させる後進方向への推進力を発生する。前進シフトイン位置Finと後進シフトイン位置Rinとの間の領域は、船外機2からの推進力の発生が停止される中立領域Tnである。
【0027】
また、レバー10が前進シフトイン位置Finから前進全開位置Ffullの方にさらに前に傾けられると、レバー10の傾き量に応じて前進方向への推進力が増加する。同様に、レバー10が後進シフトイン位置Rinから後進全開位置Rfullの方にさらに後ろに傾けられると、レバー10の傾き量に応じて後進方向への推進力が増加する。図2に示すように、前進シフトイン位置Finから前進全開位置Ffullまでの領域は、前進出力調整領域Tfである。また、後進シフトイン位置Rinから後進全開位置Rfullまでの領域は、後進出力調整領域Trである。
【0028】
また、リモコンボックス8は、ECU6に電気的に接続されている。図2に示すように、リモコンボックス8は、レバー10の操作位置を検出する位置検出装置11を含む。たとえばレバー10が中立位置Nから前進シフトイン位置Finに移動されると、船外機2のシフト位置をニュートラル位置から前進位置に切り替える指令がECU6に入力される。これにより、船外機2のシフト位置がECU6によって前進位置に切り替えられ、船体3が前方に推進される。また、レバー10が前進シフトイン位置Finから前進全開位置Ffullの方に傾けられると、エンジン5の出力を増加させる指令がECU6に入力され、船舶1の航走が加速される。
【0029】
図3は、本発明の一実施形態に係る船外機2の側面図である。
船外機2は、船外機本体12と、取付機構13とを含む。船外機本体12は、取付機構13によって船体3の後部に取り付けられている。取付機構13は、スイベルブラケット14と、クランプブラケット15と、ステアリング軸16と、チルト軸17とを含む。ステアリング軸16は、上下に延びるように配置されている。チルト軸17は、左右に延びるように水平に配置されている。スイベルブラケット14は、ステアリング軸16を介して船外機本体12に連結されている。また、クランプブラケット15は、チルト軸17を介してスイベルブラケット14に連結されている。クランプブラケット15は、船体3の後部に固定されている。
【0030】
船外機本体12は、取付機構13によって、概ね垂直な姿勢で船体3に取り付けられている。船外機本体12およびスイベルブラケット14は、クランプブラケット15に対して、チルト軸17まわりに上下に回動可能である。船外機本体12がチルト軸17まわりに回動されることにより、船外機本体12が、船体3およびクランプブラケット15に対して傾けられる。また、船外機本体12は、スイベルブラケット14およびクランプブラケット15に対して、ステアリング軸16まわりに左右に回動可能である。船外機本体12は、操舵部材7(図1参照)が操作されることにより、ステアリング軸16まわりに左右に回動される。これにより、船舶1が操舵される。
【0031】
また、船外機本体12は、ドライブシャフト18と、プロペラシャフト19と、前後進切替機構20とを含む。また、船外機本体12は、エンジンカバー21と、ケーシング22とを含む。エンジン5は、エンジンカバー21内に収容されている。ドライブシャフト18は、エンジンカバー21およびケーシング22内で上下に延びている。プロペラシャフト19は、ケーシング22の下部内で前後に延びている。ドライブシャフト18の上端部は、エンジン5に連結されている。また、ドライブシャフト18の下端部は、前後進切替機構20によってプロペラシャフト19の前端部に連結されている。プロペラシャフト19の後端部は、ケーシング22から後方に突出している。プロペラ4は、プロペラシャフト19の後端部に連結されている。プロペラ4は、プロペラシャフト19と共に回転する。プロペラ4は、エンジン5によって回転駆動される。
【0032】
エンジン5は、たとえばガソリンなどの燃料を燃焼させて動力を発生する内燃機関である。エンジン5は、クランク軸23と、複数(たとえば4つ)の気筒24と、回転速度検出装置25とを含む。エンジン5は、クランク軸23が上下に延びるように配置されている。ドライブシャフト18の上端部は、クランク軸23の下端部に連結されている。クランク軸23は、鉛直軸線まわりに回転可能である。クランク軸23は、各気筒24での燃焼によって一方の回転方向D1に回転駆動される。クランク軸23の回転速度(エンジン5の回転速度)は、回転速度検出装置25によって検出される。回転速度検出装置25の検出値は、ECU6に入力される。
【0033】
また、前後進切替機構20は、駆動ギヤ26と、前進ギヤ27と、後進ギヤ28と、ドッグクラッチ29と、シフト機構30とを含む。駆動ギヤ26、前進ギヤ27、および後進ギヤ28は、たとえば、筒状の傘歯車である。駆動ギヤ26は、ドライブシャフト18の下端部に連結されている。前進ギヤ27および後進ギヤ28は、駆動ギヤ26に噛み合わされている。前進ギヤ27および後進ギヤ28は、互いの歯部が前後に間隔を空けて向かい合うように配置されている。前進ギヤ27および後進ギヤ28は、それぞれ、プロペラシャフト19の前端部を取り囲んでいる。駆動ギヤ26の回転が前進ギヤ27および後進ギヤ28に伝達されると、前進ギヤ27および後進ギヤ28は、互いに反対方向に回転する。
【0034】
また、ドッグクラッチ29は、前進ギヤ27および後進ギヤ28の間に配置されている。ドッグクラッチ29は、たとえば、筒状である。ドッグクラッチ29は、プロペラシャフト19の前端部を取り囲んでいる。ドッグクラッチ29は、たとえばスプラインによって、プロペラシャフト19の前端部に連結されている。したがって、ドッグクラッチ29は、プロペラシャフト19の前端部と共に回転する。また、ドッグクラッチ29は、プロペラシャフト19の前端部に対して軸方向に移動可能である。ドッグクラッチ29は、シフト機構30によってプロペラシャフト19の軸方向に移動される。
【0035】
シフト機構30は、たとえば、上下に延びるシフトロッド31と、シフトロッド31の上端部に連結されたシフトアクチュエータ32と、ドッグクラッチ29のシフト位置を検出するシフト位置検出装置33とを含む。シフトアクチュエータ32は、ECU6によって制御される。また、シフト位置検出装置33の検出値は、ECU6に入力される。ドッグクラッチ29は、シフトロッド31がシフトアクチュエータ32によって回動されることにより、プロペラシャフト19の軸方向に移動される。ドッグクラッチ29は、前進位置、後進位置、およびニュートラル位置のいずれかのシフト位置に配置される。
【0036】
前進位置は、ドッグクラッチ29が前進ギヤ27に噛み合う位置であり、後進位置は、ドッグクラッチ29が後進ギヤ28に噛み合う位置である。また、ニュートラル位置は、ドッグクラッチ29がいずれのギヤ(前進ギヤ27および後進ギヤ28)にも噛み合わない位置である。ニュートラル位置は、前進位置および後進位置の間の位置である。ドッグクラッチ29が前進位置に配置されている状態では、ドライブシャフト18の回転が、前進ギヤ27を介してプロペラシャフト19に伝達される。また、ドッグクラッチ29が後進位置に配置されている状態では、ドライブシャフト18の回転が、後進ギヤ28を介してプロペラシャフト19に伝達される。また、ドッグクラッチ29がニュートラル位置に配置されている状態では、ドライブシャフト18の回転がプロペラシャフト19に伝達されない。
【0037】
ドライブシャフト18の回転が、前進ギヤ27を介してプロペラシャフト19に伝達されると、プロペラ4が前進回転方向に回転する。これにより、前進方向への推進力が発生する。また、ドライブシャフト18の回転が、後進ギヤ28を介してプロペラシャフト19に伝達されると、プロペラ4が、前進回転方向とは反対の後進回転方向に回転する。これにより、後進方向への推進力が発生する。したがって、ドッグクラッチ29のシフト位置が切り替えられることにより、プロペラ4の回転方向が切り替えられる。プロペラ4の回転方向は、リモコンボックス8のレバー10が操作されることにより切り替えられる。
【0038】
また、船外機本体12は、船外機本体12の内部に設けられた排気通路34を含む。排気通路34は、エンジン5に接続された排気入口と、プロペラ4に接続された排気出口とを含む。船舶1が水に浮かべられている状態では、排気通路34の出口は、水中に位置している。したがって、船舶1が水に浮かべられている状態では、排気通路34の出口を通過した水が、排気通路34の下流部に浸入している。たとえばエンジン5が高速回転しているときには、排気通路34内の水が、エンジン5から排出された排気の圧力によって押されて、排気と共に排気通路34の出口から排出される。これにより、エンジン5で生成された排気が水中に排出される。
【0039】
また、船外機本体12は、冷却装置71を含む。冷却装置71は、船外機2の外から冷却水としての水を船外機本体12内に取り込んで、エンジン5に供給する。これにより、エンジン5が冷却される。冷却装置71は、ケーシング22の外面で開口する取水口72と、取水口72に接続された第1冷却水流路73と、第1冷却水流路73を介して取水口72に接続されたウォーターポンプ74と、ウォーターポンプ74に接続された第2冷却水流路75とを含む。また、冷却装置71は、エンジン5に設けられ、第2冷却水流路75に接続されたウォータージャケット76と、ウォータージャケット76の水圧を検出する水圧検出装置77とを含む。ウォーターポンプ74は、ケーシング22内に配置されており、ウォータージャケット76は、排気通路34に接続されている。
【0040】
ウォーターポンプ74は、たとえば、ドライブシャフト18に連結されている。ウォーターポンプ74は、たとえば、ドライブシャフト18に連結されたゴム製のインペラと、インペラを収容するポンプボディとを含むロータリーポンプである。ウォーターポンプ74は、エンジン5によって駆動される。ウォーターポンプ74は、クランク軸23が一方の回転方向D1に回転しているときに、船外機2の外の水をエンジン5の回転速度(クランク軸23の回転速度)に対応する流量で取水口72から吸い込む。そして、ウォーターポンプ74は、取水口72から取り込んだ水を第1冷却水流路73、ウォーターポンプ74、および第2冷却水流路75を介して、ウォータージャケット76に送る。これにより、エンジン5が冷却される。そして、ウォータージャケット76に供給された水は、排気と共に排気通路34の出口から排出される。
【0041】
ウォータージャケット76には、エンジン5の回転速度に対応する流量で冷却水がウォーターポンプ74から供給される。すなわち、エンジン5の回転速度が増加すると、ウォータージャケット76に供給される冷却水の流量が増加する。所定流量で冷却水がウォーターポンプ74によってウォータージャケット76に供給されると、ウォータージャケット76が冷却水によって充填される。このとき、ウォータージャケット76には、エンジン5の回転速度に対応する水圧が発生する。水圧検出装置77は、ウォータージャケット76の水圧を検出する。そして、水圧検出装置77によって検出された水圧は、ECU6に入力される。
【0042】
図4は、本発明の一実施形態に係るエンジン5の概略図である。
エンジン5は、複数の気筒24内にそれぞれ配置された複数のピストン35と、複数のピストン35をそれぞれクランク軸23に連結する複数のコネクティングロッド36と、気筒24ごとに設けられた吸気ポート37および排気ポート38とを含む。クランク軸23が、各気筒24での燃焼によって一方の回転方向D1に回転駆動されると、クランク軸23の回転がカムシャフト39に伝達される。そして、カムシャフト39の回転によって、吸気バルブ40および排気バルブ41にそれぞれ対応する一対のロッカーアーム42が、ロッカーアームシャフト43まわりに回動する。これにより、吸気ポート37および排気ポート38がそれぞれ吸気バルブ40および排気バルブ41によって所定のタイミングで開閉される。
【0043】
エンジン5は、複数の気筒24にそれぞれ取り付けられた複数の点火プラグ44と、複数の点火プラグ44にそれぞれ接続された複数のイグニッションコイル45とを含む。また、エンジン5は、複数の気筒24にそれぞれ接続された複数の吸気管46と、各吸気管46に設けられた燃料噴射装置47およびスロットルバルブ48とを含む。ECU6は、各イグニッションコイル45によって高電圧を発生させる。これにより、高電圧が各点火プラグ44に印加され、火花が各気筒24内で発生する。そのため、燃料と空気の混合気が各気筒24内で燃焼する。混合気は、各吸気管46から対応する気筒24内に供給される。ECU6は、バルブアクチュエータ49を制御してスロットルバルブ48の開度を変更することにより、各気筒24への混合気の供給流量を調整する。また、ECU6は、スロットルバルブ48の開度と、燃料噴射装置47から噴射される燃料の噴射量とを制御することにより、空燃比を調整する。
【0044】
図5は、本発明の一実施形態に係る潤滑装置50の概略図である。図6は、本発明の一実施形態に係るオイルポンプ53の断面図である。
船外機2は、潤滑装置50を含む。エンジン5は、潤滑装置50によって潤滑される。潤滑装置50は、オイル(潤滑油)が貯留されたオイルパン51と、エンジン5内に設けられた潤滑流路52と、オイルパン51に貯留されたオイルを潤滑流路52に送るオイルポンプ53と、潤滑流路52の油圧を検出する油圧検出装置54とを含む。油圧検出装置54は、たとえばオイルの入れ忘れやオイルフィルターのつまりなどで、潤滑流路52にオイルが供給されておらず、このまま船舶1を運転し続けるとエンジン5に損傷が生じることをユーザに知らせるための装置である。したがって、油圧検出装置54は、通常、船外機2に備えられている。
【0045】
また、オイルポンプ53は、たとえば、クランク軸23の下端部に連結されている。オイルポンプ53は、クランク軸23の回転に伴って駆動される。図6に示すように、オイルポンプ53は、たとえば、クランク軸23に連結されたインナーロータ55と、インナーロータ55を取り囲むアウターロータ56と、インナーロータ55およびアウターロータ56を収容するハウジング57とを含むトロコイドポンプである。オイルポンプ53は、トロコイドポンプに限らず、歯車ポンプ、ロータリーポンプなどの他の形式のポンプであってもよい。
【0046】
また、潤滑流路52は、オイルパン51、オイルポンプ53、クランク軸23、およびロッカーアームシャフト43に接続されている。潤滑流路52は、オイルパン51からオイルポンプ53に延び、さらに、オイルポンプ53およびロッカーアームシャフト43の内部を通ってオイルパン51に至る。潤滑流路52は、クランク軸23に接続された複数の分岐流路58を含む。分岐流路の一部はクランク軸23内に形成されていても良い。各分岐流路58の先端には、吐出口59が設けられている。また、ロッカーアーム42には、複数の吐出口60が設けられている。オイルパン51内のオイルは、オイルポンプ53によって潤滑流路52に供給される。そして、潤滑流路52に供給されたオイルは、各吐出口59、60から吐出される。
【0047】
具体的には、オイルポンプ53は、クランク軸23の回転方向に対応する方向に流体を送るように構成されている。クランク軸23が一方の回転方向D1に回転すると、オイルパン51内のオイルが、オイルポンプ53によって、潤滑流路52の入口52aから吸い込まれて潤滑流路52に供給される。そして、潤滑流路52に供給されたオイルが、クランク軸23やロッカーアーム42に設けられた各吐出口59、60から吐出される。これにより、エンジン5が潤滑される。一方、クランク軸23が一方の回転方向D1とは反対方向に回転して逆転すると、オイルポンプ53によって、各吐出口59、60から空気が吸い込まれるだけで、オイルパン51内のオイルが潤滑流路52に供給されない。そのため、クランク軸23が一方の回転方向D1に回転駆動されている場合に、潤滑流路52にオイルが供給され、潤滑流路52に油圧が生じる。
【0048】
潤滑流路52の油圧は、油圧検出装置54によって検出される。油圧検出装置54の検出値は、ECU6に入力される。オイルポンプ53から潤滑流路52に供給されるオイルの流量は、エンジン5の回転速度の増加に伴って増加する。したがって、潤滑流路52の油圧は、エンジン5の回転速度の増加に伴って増加する。一方、クランク軸23が逆転している場合や、クランク軸23が回転していない場合には、オイルパン51内のオイルがオイルポンプ53によって潤滑流路52に供給されない。したがって、クランク軸23が逆転している場合には、潤滑流路52の油圧は、エンジン5の回転速度に応じて変化しない。
【0049】
また、潤滑流路52は、入口52aとオイルポンプ53とを繋ぐ第1流路52bと、オイルポンプ53と各吐出口59、60とを繋ぐ第2流路52cと、各吐出口59、60から吐出されなかったオイルをオイルパン51に導く第3流路52dとを含む。オイルパン51内のオイルは、第1流路52bを介して、第2流路52cに供給される。そして、第2流路52cに供給されたオイルは、各吐出口59、60から吐出される。また、各吐出口59、60から吐出されずに残ったオイルは、第3流路52dに供給され、潤滑流路52の出口52eから吐出され、オイルパン51に戻される。油圧検出装置54は、第2流路52cの油圧を検出する。
【0050】
エンジン5が最小回転速度以上の回転速度で回転しているときには、オイルポンプ53から供給されたオイルによって第2流路52cが充填される。したがって、このとき、エンジン5の回転速度に対応する油圧が第2流路52cに生じる。一方、たとえばエンジン5の始動直後などのように、エンジン5の回転速度が非常に小さいとき(最小回転速度よりも小さいとき)には、第2流路52cに供給されるオイルの流量が小さいので、第2流路52cにオイルが充填されない。クランク軸23が最小回転速度で一方の回転方向D1に回転しているときには、第2流路52cがオイルによって充填されており、最小油圧Pminが第2流路52cに発生している。すなわち、最小油圧Pminは、クランク軸23が最小回転速度で一方の回転方向D1に回転しているときの第2流路52cの油圧である。
【0051】
図7はクランク軸23の逆転が生じていない場合のグラフであり、図8はクランク軸23の逆転が生じている場合のグラフである。図7のグラフは、船舶1が前進している状態で、船外機2のエンジン5のクランク軸23が逆転せずにシフト位置(ドッグクラッチ29のシフト位置)が前進位置から後進位置に切り替えられたときのエンジン5の回転速度および潤滑流路52の油圧(第2流路52cの油圧)の測定値を示す。また、図8のグラフは、船舶1が高速で前進している状態で船外機2のシフト位置が前進位置から後進位置に切り替えられたときのエンジン5の回転速度および潤滑流路52の油圧(第2流路52cの油圧)の測定値を示す。図7および図8中の「F」、「N」、および「R」は、それぞれ、前進位置、ニュートラル位置、および後進位置を示している。
【0052】
船舶1が前進している状態でリモコンボックス8のレバー10が前進出力調整領域Tfから後進出力調整領域Trに移動されると、ドッグクラッチ29が、前進位置からニュートラル位置を経て後進位置に移動される。ドッグクラッチ29が後進位置に配置された直後では、船舶1が慣性で前進している。そのため、プロペラ4を前進回転方向に回転させる抵抗(水圧)がプロペラ4に加わる。そして、この抵抗は、プロペラシャフト19、前後進切替機構20、およびドライブシャフト18を経て、クランク軸23に伝達される。このとき、ドッグクラッチ29が後進位置に配置されているから、このプロペラ4を前進回転方向に回転させる抵抗は、クランク軸23を逆転させる力としてクランク軸23に伝達される。
【0053】
図7では、エンジン5の回転速度は、船外機2のシフト位置がニュートラル位置から後進位置に切り替わるときに急激に減少しており、船外機2のシフト位置が後進位置に切り替わった後に徐々に増加している。また、潤滑流路52の油圧は、船外機2のシフト位置がニュートラル位置から後進位置に切り替わるときに、エンジン5の回転速度とほぼ同じタイミングで急激に減少しており、船外機2のシフト位置が後進位置に切り替わった後に、エンジン5の回転速度とほぼ同じように増加している。船外機2のシフト位置がニュートラル位置から後進位置に切り替わるときの潤滑流路52の油圧の最小値は、最小油圧Pminよりも大きい。
【0054】
図7において、エンジン5の回転速度が急激に減少しているのは、プロペラ4に加わる抵抗(水圧)が、クランク軸23を逆転させる力としてクランク軸23に伝達された為である。また、潤滑流路52の油圧が最小油圧Pminまで低下しなかったのは、船舶1の速度が小さいため、プロペラ4に加わる抵抗が小さく、クランク軸23が逆転せずに一方の回転方向D1に回転し続けている為である。そのため、船外機2のシフト位置が後進位置に切り替わった後も、潤滑流路52に最小油圧Pmin以上の油圧が生じており、この油圧は、エンジン5の回転速度と同様に変化している。このように、図7では、クランク軸23は、一定の回転方向に回転し続けており、クランク軸23の逆転が生じていないことがわかる。
【0055】
一方、図8では、エンジン5の回転速度は、船外機2のシフト位置がニュートラル位置から後進位置に切り替わるときに急激に減少しており、船外機2のシフト位置が後進位置に切り替わった後に急激に増加している。図8では表れていないが、このときエンジン5の回転速度は、瞬間的に零まで減少したと考えられる。また、潤滑流路52の油圧は、船外機2のシフト位置がニュートラル位置から後進位置に切り替わるときに、エンジン5の回転速度とほぼ同じタイミングで急激に減少している。しかし、潤滑流路52の油圧は、船外機2のシフト位置が後進位置に切り替わった後は大きく変動しておらずほぼ一定である。
【0056】
一方の回転方向D1へのエンジン5の回転速度(クランク軸23の回転速度)が増加すれば、潤滑流路52の油圧も増加する。しかし、図8では、船外機2のシフト位置が後進位置に切り替わった後にエンジン5の回転速度が急激に増加しているのに、潤滑流路52の油圧が増加していない。したがって、船外機2のシフト位置が後進位置に切り替わった後に、クランク軸23の逆転が生じていることがわかる。
【0057】
また、図8では、船外機2のシフト位置が後進位置であるときの潤滑流路52の油圧(切替後油圧P2)は、最小油圧Pminよりも小さい。船外機2のシフト位置が後進位置に切り替わった後にクランク軸23が一方の回転方向D1に回転していれば、潤滑流路52の油圧は、最小油圧Pmin以上である。しかし、図8では、切替後油圧P2が、最小油圧Pminよりも小さい。したがって、この油圧の値からも、クランク軸23の逆転が生じていることがわかる。また、言い換えれば、最小油圧Pminは、図7のように逆転が生じない場合の最小油圧より小さく、図8のように逆転が生じる場合の最小油圧よりも大きい値に設定される。
【0058】
図9は、本発明の一実施形態に係る逆転検知制御について説明するためのフローチャートである。以下では、図3、図8および図9を参照して、クランク軸23の逆転を検知するための逆転検知制御の一例について説明する。
船舶1が前進している状態でリモコンボックス8のレバー10が前進出力調整領域Tfから後進出力調整領域Trに移動されると、船外機2のシフト位置を後進位置に切り替える後進切替指令がECU6に入力される。ECU6は、後進切替指令がECU6に入力された時点の潤滑流路52の油圧を切替前油圧P1に代入する(S1)。その後、ECU6は、シフトアクチュエータ32を制御して、ドッグクラッチ29を前進位置からニュートラル位置を経て後進位置に移動させる(S2)。これにより、船外機2のシフト位置が前進位置から後進位置に切り替わる。
【0059】
次に、ECU6は、切替前油圧P1が、最小油圧Pmin以上であるか否かを判定する(S3)。このとき、切替前油圧P1が最小油圧Pmin未満である場合(S3でNoの場合)は、ECU6は、逆転検知制御を終了する。すなわち、切替前油圧P1は、クランク軸23が一方の回転方向D1に回転しているときの潤滑流路52の油圧であるから、切替前油圧P1が最小油圧Pmin未満である場合は、油圧検出装置54、オイルポンプ53、および潤滑流路52の少なくとも一つに異常が生じている可能性がある。そのため、ECU6は、油圧検出装置54等に異常が生じていると判定して、逆転検知制御を終了する。一方、切替前油圧P1が最小油圧Pmin以上である場合(S3でYesの場合)には、ECU6は、タイマー6a(図3参照)によって、船外機2のシフト位置が後進位置に切り替わってからの経過時間が所定時間T1以内(たとえば、0.5秒以内)であるか否かを判定する(S4)。
【0060】
経過時間が所定時間T1を超えている場合(S4でNoの場合)には、ECU6は、逆転検知制御を終了する。また、経過時間が所定時間T1以内である場合(S4でYesの場合)には、ECU6は、船外機2のシフト位置が後進位置に切り替えられた後の潤滑流路52の油圧である切替後油圧P2が最小油圧Pminよりも小さいか否かを判定する(S5)。すなわち、ECU6は、船外機2のシフト位置が後進位置に切り替えられた直後に、切替後油圧P2が最小油圧Pminよりも小さいか否かを判定する。
【0061】
切替後油圧P2が最小油圧Pmin以上の場合(S5でNoの場合)は、ECU6は、再び、船外機2のシフト位置が後進位置に切り替わってからの経過時間が所定時間T1以内であるか否かを判定する(S4に戻る)。また、切替後油圧P2が最小油圧Pminよりも小さい場合(S5でYesの場合)は、ECU6は、クランク軸23が逆転している、または逆転する直前であると判定して、船外機2のシフト位置を後進位置からニュートラル位置に切り替えるシフト制御を実行する(S6)。これにより、クランク軸23とプロペラ4との機械的な連結が切断され、プロペラ4に加わる抵抗(水圧)がクランク軸23に伝達されることが防止される。そのため、クランク軸23の逆転が防止される。
【0062】
以上のように本実施形態では、エンジン5がクランク軸23を一方の回転方向D1に回転させているときに、オイルポンプ53から潤滑流路52にオイルが供給され、クランク軸23の回転速度に対応する油圧が潤滑流路52に生じる。一方、クランク軸23が回転していないとき、およびクランク軸23が逆転しているときには、オイルポンプ53から潤滑流路52にオイルが供給されない。したがって、クランク軸23が回転していないとき、およびクランク軸23が逆転しているときの潤滑流路52の油圧は、最小油圧Pminよりも小さい。そのため、クランク軸23の回転方向が一方の回転方向D1から他方の回転方向(一方の回転方向D1と反対の方向)に変わるときには、潤滑流路52の油圧が、最小油圧Pmin以上の値から最小油圧Pminよりも小さい値に変化する。
【0063】
ECU6は、潤滑流路52の油圧の変化に基づいて、クランク軸23が逆転する直前の状態を検知することができる。また、ECU6は、潤滑流路52の油圧に基づいて、クランク軸23が逆転した直後からクランク軸23の逆転を検知することができる。これにより、クランク軸23の逆転が即座に検知される。そして、クランク軸23が逆転しそうである、またはクランク軸23が逆転しているとECU6が判定した場合には、ECU6は、逆転防止制御としてのシフト制御を行って、船外機2のシフト位置を後進位置からニュートラル位置に切り替える。これにより、クランク軸23とプロペラ4との機械的な連結が切断され、プロペラ4に加わる力(クランク軸23を逆転させる力)がクランク軸23に伝達されることが防止される。これにより、クランク軸23の逆転が防止される。したがって、排気通路34内の水が、クランク軸23の逆転によって、エンジン5の内部に吸い込まれることが防止される。さらに、船外機2に通常備えられる装置(油圧検出装置54)を利用して、クランク軸23の逆転が検知されるので、船外機2の部品点数の増加が防止される。
【0064】
また、本実施形態によれば、ECU6は、船外機2のシフト位置が前進位置から後進位置に切り替わった直後に、切替後油圧P2が最小油圧Pminよりも小さいか否かを判定する。具体的には、ECU6は、船外機2のシフト位置が後進位置に切り替わってから所定時間T1以内(たとえば、0.5秒以内)に、前述の判定を行う。これにより、クランク軸23の逆転が即座に検知される。また、船外機2のシフト位置が後進位置に切り替わってから所定時間T1が経過した後には逆転防止制御が行われない。したがって、たとえば、船舶1の通常航走時(船舶1が所定の速度で前進および後進しているとき)に、何らかの理由で一時的に油圧が低下してしまった場合でも、誤って逆転防止制御が行われることが防止される。
【0065】
この発明の実施の形態の説明は以上であるが、この発明は、前述の実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。たとえば、前述の実施形態では、1機の船外機2が船舶1に備えられている場合について説明した。しかし、複数の船外機2が船舶1に備えられていてもよい。また、船舶推進機としては、船外機に限らず、船内機や船内外機などの他の形式の船舶推進機であってもよい。
【0066】
また、前述の実施形態では、ECU6が潤滑流路52の油圧に基づいてクランク軸23の逆転を検知する場合について説明した。しかし、ECU6は、潤滑流路52の油圧およびエンジン5の回転速度に基づいてクランク軸23の逆転を検知してもよい。
具体的には、たとえば図10に示すように、切替後油圧P2が最小油圧Pminよりも小さい場合(S5でYesの場合)には、ECU6は、船外機2のシフト位置が前進位置から後進位置に切り替わった後にエンジン5の回転速度が増加しているか否かを判定してもよい(S7)。そして、エンジン5の回転速度が増加している場合(S7でYesの場合)に、シフト制御が行われてもよい(S6)。
【0067】
エンジン5がクランク軸23を一方の回転方向D1に回転させている状態で、クランク軸23の回転速度が増加すると、オイルポンプ53から潤滑流路52に送られるオイルの流量が増加して、潤滑流路52の油圧が増加する。したがって、クランク軸23が逆転していなければ、船外機2のシフト位置が前進位置から後進位置に切り替わった後にクランク軸23の回転速度が増加すると、切替後油圧P2も増加する(図7参照)。すなわち、クランク軸23が逆転している場合、船外機2のシフト位置が前進位置から後進位置に切り替わった後にクランク軸23の回転速度が増加していても、切替後油圧P2が最小油圧Pminよりも小さい(図8参照)。図10に示すフローチャートでは、ECU6は、潤滑流路52の油圧に加えて、エンジン5の回転速度に基づいてクランク軸23の逆転を検知する。これにより、クランク軸23の逆転がより確実に検知される。
【0068】
また、前述の実施形態では、クランク軸23の逆転が検知された場合に、船外機2のシフト位置を後進位置からニュートラル位置に切り替えるシフト制御が、逆転防止制御として行われる場合について説明した。しかし、クランク軸23の逆転が検知された場合に、エンジン5の燃焼を停止させる燃焼停止制御が、逆転防止制御として行われてもよい。
具体的には、ECU6は、たとえば、イグニッションコイル45(図4参照)を制御してエンジン5を失火させたり、燃料噴射装置47(図4参照)を制御して燃料の噴射を停止させたりしてもよい。これにより、逆転しているクランク軸23が、エンジン5によって一方の回転方向D1とは反対の方向に駆動されることが防止される。燃焼停止制御は、シフト制御と併せて行われてもよいし、単独で行われてもよい。
【0069】
また、前述の実施形態では、リモコンボックス8とECU6とが電気的に接続されており、ECU6が、レバー10の操作に応じて前後進切替機構20のシフトアクチュエータ32を制御する場合について説明した。しかし、リモコンボックス8と前後進切替機構20とが機械的に接続されており、船外機2のシフト位置が、レバー10の操作に応じて機械的に切り替えられてもよい。すなわち、シフトアクチュエータ32が設けられていなくてもよい。この場合、ECU6が、クランク軸23の逆転を検知したときには、ECU6がシフトアクチュエータ32を制御することにより実行されるシフト制御に代わって、燃焼停止制御が、逆転防止制御として行われてもよい。
【0070】
また、前述の実施形態では、ECU6が、潤滑流路52の油圧に基づいてクランク軸23の逆転を検出する場合について説明した。しかし、ECU6は、ウォータージャケット76の水圧に基づいてクランク軸23の逆転を検出してもよい。すなわち、ウォーターポンプ74は、クランク軸23が一方の回転方向D1に回転しているときに、ウォータージャケット76に冷却水を供給するので、ウォータージャケット76の水圧に基づいてクランク軸23の回転状態を検出することができる。しかしながら、前述の実施形態では、ウォーターポンプ74から水圧検出装置77までの冷却水の経路長は、オイルポンプ53から油圧検出装置54までのオイルの経路長よりも長いので、クランク軸23の回転状態が変化したときに、潤滑流路52の油圧は、ウォータージャケット76の水圧よりも早く変化する。すなわち、潤滑流路52の油圧の方がウォータージャケット76の水圧よりも応答性能がよい。したがって、前述の実施形態では、潤滑流路52の油圧に基づいてクランク軸23の逆転を検出する方が好ましい。これは、前述の実施形態では、水圧検出装置77は、検出した水圧をメータ等で操船者へ報知し、冷却水がエンジン等に供給されていることを知らせることを目的として備えられているためである。
【0071】
応答性能について具体的に説明すると、図7に示すように、ウォータージャケット76の水圧は、船外機2のシフト位置がニュートラル位置(N)から後進位置(R)に切り替わる前後でほぼ一定であり、エンジン5の回転速度が急激に減少し始めた直後に僅かに減少している。すなわち、潤滑流路52の油圧が、エンジン5の回転速度とほぼ同じタイミングで急激に減少しているのに対し、ウォータージャケット76の水圧は、エンジン5の回転速度の減少に遅れて僅かに減少している。さらに、水圧の減少幅は、油圧の減少幅よりも小さい。
【0072】
一方、図8では、ウォータージャケット76の水圧は、船外機2のシフト位置がニュートラル位置(N)から後進位置(R)に切り替わるのに従って緩やかに減少し続けており、船外機2のシフト位置が再びニュートラル位置(N)に切り替わった後にほぼ一定となっている。しかしながら、ウォータージャケット76の水圧は、潤滑流路52の油圧とは異なり、緩やかに減少し続けているだけでエンジン5の回転速度のように急激に減少していない。
【0073】
このように、前述の実施形態では、潤滑流路52の油圧は、ウォータージャケット76の水圧よりも応答性能がよい。したがって、前述の実施形態では、潤滑流路52の油圧に基づいてクランク軸23の逆転を検出する方が好ましい。しかしながら、水圧検出装置77として、高精度の水圧センサを用いれば、水圧の応答性能が高まる。したがって、前述の実施形態において、高精度の水圧センサを水圧検出装置77として用いてもよい。この構成によれば、潤滑流路52の油圧に基づいてクランク軸23の逆転を検出する場合と同様に、ウォータージャケット76の水圧に基づいてクランク軸23の逆転を検出することができる。
【0074】
また、前述の実施形態において、図3において二点鎖線で示すセンサ78が、ウォーターポンプ74の吐出口の近傍に配置されていてもよい。このセンサ78は、ウォーターポンプ74から吐出される冷却水の流量を測定する流量センサであってもよいし、ウォーターポンプ74から吐出される冷却水の流速を測定する流速センサであってもよい。ウォーターポンプ74はエンジン5によって駆動されるから、ウォーターポンプ74から吐出される冷却水の流速および流量は、エンジン5の回転速度と共に増減する。また、ウォーターポンプ74から吐出される冷却水の流速および流量は、エンジン5の回転速度と同じタイミングで変化する。したがって、ウォーターポンプ74の吐出口の近傍において冷却水の流速または流量を検出することにより、潤滑流路52の油圧に基づいてクランク軸23の逆転を検出する場合と同様に、冷却水の流速または流量に基づいてクランク軸23の逆転を検出することができる。
【0075】
同様に、オイルポンプ53はエンジン5によって駆動されるから、オイルポンプ53から吐出されるオイルの流速および流量は、エンジン5の回転速度と共に増減する。また、オイルポンプ53から吐出されるオイルの流速および流量は、エンジン5の回転速度と同じタイミングで変化する。したがって、前述の実施形態において、図5において二点鎖線で示すセンサ79がオイルポンプ53の吐出口の近傍に配置されていてもよい。このセンサ79は、オイルポンプ53から吐出されるオイルの流量を測定する流量センサであってもよいし、オイルポンプ53から吐出されるオイルの流速を測定する流速センサであってもよい。この構成によれば、潤滑流路52の油圧に基づいてクランク軸23の逆転を検出する場合と同様に、オイルの流速または流量に基づいてクランク軸23の逆転を検出することができる。
【0076】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
以下に、特許請求の範囲に記載された構成要素と前述の実施形態における構成要素との対応関係を示す。
クランク軸:クランク軸23
一方の回転方向:一方の回転方向D1
プロペラ:プロペラ4
エンジン:エンジン5
回転速度検出手段:回転速度検出装置25
前後進切替機構:前後進切替機構20
シフト位置検出手段:シフト位置検出装置33
送液手段:オイルポンプ53、ウォーターポンプ74
流路:第2流路52c 、ウォータージャケット76、第2冷却水流路75
物理量検出手段:油圧検出装置54、水圧検出装置77、センサ78、センサ79
切替後物理量:切替後油圧P2
第1の値:最小油圧Pmin
制御手段:ECU6
船舶推進機:船外機2
液圧検出手段:油圧検出装置54、水圧検出装置77
切替後液圧:切替後油圧P2
第1の液圧:最小油圧Pmin
送油手段:オイルポンプ53
油圧検出手段:油圧検出装置54
切替後油圧:切替後油圧P2
第1の油圧:最小油圧Pmin
送水手段:ウォーターポンプ74
水圧検出手段:水圧検出装置77
吐出口:吐出口59、60
切替前物理量:切替前油圧P1
計時手段:タイマー6a
所定時間:所定時間T1
【符号の説明】
【0077】
1 船舶
2 船外機
4 プロペラ
5 エンジン
6 ECU
6a タイマー
20 前後進切替機構
23 クランク軸
25 回転速度検出装置
33 シフト位置検出装置
52 潤滑流路
53 オイルポンプ
54 油圧検出装置
59 吐出口
60 吐出口
74 ウォーターポンプ
76 ウォータージャケット
77 水圧検出装置
78 センサ
79 センサ
D1 一方の回転方向
P1 切替前油圧
P2 切替後油圧
Pmin 最小油圧
T1 所定時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に構成されたクランク軸を含み、前記クランク軸を一方の回転方向に回転させることによりプロペラを回転させるエンジンと、
前記クランク軸の回転速度を検出する回転速度検出手段と、
前記クランク軸の回転を前記プロペラに伝達するように構成されており、前記プロペラが前進回転方向に回転する前進状態と、前記プロペラが後進回転方向に回転する後進状態と、前記クランク軸と前記プロペラとの間での回転の伝達が遮断されるニュートラル状態とに切り替わるように構成された前後進切替機構と、
前記前後進切替機構が、前進状態、後進状態、およびニュートラル状態のいずれの状態であるかを検出するシフト位置検出手段と、
前記エンジンによって駆動されることにより、液体を送るように構成された送液手段と、
前記クランク軸が前記一方の回転方向に回転しているときに前記送液手段から液体が供給されるように構成された流路と、
前記流路において前記送液手段から前記流路に供給された液体の物理量を検出する物理量検出手段と、
前記回転速度検出手段、シフト位置検出手段、および物理量検出手段の検出値が入力され、前記クランク軸が回転している状態で前記前後進切替機構が前進状態から後進状態に切り替わった後の前記流路における液体の物理量である切替後物理量が、予め定められた第1の値よりも小さい場合に、前記クランク軸の逆転を防止するように前記エンジンおよび前後進切替機構の少なくとも一方を制御する逆転防止制御を実行するように構成された制御手段とを含む、船舶推進機。
【請求項2】
前記物理量検出手段は、前記流路において前記送液手段から前記流路に供給された液体の圧力を検出する液圧検出手段を含み、
前記切替後物理量は、前記クランク軸が回転している状態で前記前後進切替機構が前進状態から後進状態に切り替わった後の前記流路における液体の圧力である切替後液圧を含み、
前記第1の値は、予め定められた第1の液圧を含む、請求項1記載の船舶推進機。
【請求項3】
前記送液手段は、前記エンジンによって駆動されることにより、オイルを送るように構成された送油手段を含み、
前記液圧検出手段は、前記流路において前記送油手段から前記流路に供給されたオイルの圧力を検出する油圧検出手段を含み、
前記切替後液圧は、前記クランク軸が回転している状態で前記前後進切替機構が前進状態から後進状態に切り替わった後の前記流路におけるオイルの圧力である切替後油圧を含み、
前記第1の値は、予め定められた第1の油圧を含む、請求項2記載の船舶推進機。
【請求項4】
前記送液手段は、前記エンジンによって駆動されることにより、水を送るように構成された送水手段を含み、
前記液圧検出手段は、前記流路において前記送水手段から前記流路に供給された水の圧力を検出する水圧検出手段を含み、
前記切替後液圧は、前記クランク軸が回転している状態で前記前後進切替機構が前進状態から後進状態に切り替わった後の前記流路における水の圧力である切替後水圧を含み、
前記第1の値は、予め定められた第1の水圧を含む、請求項2記載の船舶推進機。
【請求項5】
前記第1の油圧は、前記流路にオイルが充填されているときの前記流路の油圧の最小値である、請求項3記載の船舶推進機。
【請求項6】
前記流路は、前記送油手段から供給されたオイルを吐出する吐出口を含み、
前記油圧検出手段は、前記送油手段と前記吐出口との間において油圧を検出する、請求項5記載の船舶推進機。
【請求項7】
前記制御手段は、前記前後進切替機構が前進状態またはニュートラル状態であり、前記クランク軸が回転しているときの前記流路における液体の物理量である切替前物理量が、前記第1の値以上であり、前記切替後物理量が前記第1の値よりも小さい場合に、前記逆転防止制御を実行するように構成されている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の船舶推進機。
【請求項8】
前記制御手段は、時間を計る計時手段を含み、前記前後進切替機構が前進状態から後進状態に切り替わってからの経過時間が所定時間以下であるときにのみ前記逆転防止制御を実行する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の船舶推進機。
【請求項9】
前記送液手段は、前記流路に送られる液体の流量が前記クランク軸の回転速度の増加に伴って増加するように構成されており、
前記制御手段は、前記前後進切替機構が前進状態から後進状態に切り替わった後に、前記クランク軸の回転速度が増加しており、かつ前記切替後物理量が前記第1の値よりも小さい場合に、前記逆転防止制御を実行するように構成されている、請求項1〜8のいずれか一項に記載の船舶推進機。
【請求項10】
前記逆転防止制御は、前記前後進切替機構を制御して前記前後進切替機構を後進状態からニュートラル状態に切り替えるシフト制御を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の船舶推進機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−7658(P2012−7658A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143143(P2010−143143)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】