説明

船舶用排気ガス浄化装置、および排気ガス浄化方法

【課題】重質油を燃料とした船舶用ディーゼル機関の排気ガスから微粒子成分、NOxを効率的に除去し、大気中へのSOxの放出を最小限に抑制するための船舶用排気ガス浄化装置、及びそれを用いた排気ガス浄化方法を提供。
【解決手段】重質油を燃料とする船舶用ディーゼル機関からの排気ガスを浄化する船舶用排気ガス浄化装置であって、排気ガスへ窒素酸化物の還元成分を噴霧供給する還元成分噴霧手段(A)と、前記還元成分と排気ガスを接触させて窒素酸化物を還元する選択還元触媒(B)と、排気ガス中の微粒子成分を回動するベルト面に接触させて集塵する親水性無端ベルト装置(C)と、ベルト面の微粒子成分に水を接触させ、微粒子の少なくとも一部を分離するとともに、ベルト面にスクレイパーを当接させ、微粒子成分を掻き取って分離する微粒子分離手段(D)を含み、親水性無端ベルト装置(C)が、排気ガス流路中の選択還元触媒(B)の下流に配置されてなる船舶用排気ガス浄化装置などによって提供。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶用排気ガス浄化装置、および排気ガス浄化方法に関し、より詳しくは、重質油を燃料とする船舶用内燃機関の排気ガスから有害な微粒子成分、NOxを効率的に除去し、SOxにより排気ガス浄化装置の浄化能力の低下を招くことなく、大気中へのSOxの放出も最小限に抑制するための船舶用排気ガス浄化装置、および排気ガス浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶の動力源である内燃機関には、ディーゼル機関が汎用されており、その燃料には、軽油(以下、軽質油ということがある)や、各種重油や、原油精製の過程で生じた残渣油を軽質油で希釈したバンカー油(bunker oil)が使用されている。以下、重油、バンカー油をあわせて重質油ということがある。また、近年は環境負荷が少ない燃料として植物油も検討されている。これら燃料のうち、軽油は小型船舶や大型船舶の河川や内湾での航行に使用されることが多く、重質油は外洋航海や、大型船舶において使用されることが多い。
【0003】
船舶で使用されるディーゼル機関は、図1に示すように、船舶1の航行用のスクリュー4を稼動するためのディーゼル機関(以下、主機3ということがある)と、船舶内の電気や動力を賄うためのディーゼル機関(以下、補機2ということがある)の2種のディーゼル機関が使用されることがある。特に中型船、大型船では主機3、補機2をあわせて使用されることが多い。そして、多くの場合、主機3には大型のディーゼル機関を、補機2には主機3に比べて小型のディーゼル機関が使用されることが多い。
【0004】
ディーゼル機関は内燃機関であるために、その構造、種類に応じて、燃料や燃焼空気に由来して、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)や煤、可溶性有機成分、サルフェート等の微粒子成分など様々な有害物質が排出される。
燃料である重質油には、炭素鎖長が長いHC成分や、芳香族成分の含有量が多いことから、軽質油に比べて着火性、燃焼性に劣り、また、硫黄成分も多いことから、燃焼後の排気ガス中には多量の有害物質が含まれることになる。
【0005】
排気ガス中の硫黄成分は、粒子状のサルフェートやガス状のSOxとして排出され、酸性雨など大気汚染の原因となる。自動車用燃料では、軽油中の硫黄成分は、数十ppm以下(日本国内では50ppm以下)まで低減され、サルファフリー燃料として広く普及している。重質油の場合も低サルファー化が検討されているが、脱硫が困難であり脱硫コストがかかることから、最も硫黄成分の少ない等級のものでも0.5質量%以下であり、0.5質量%を超え、上限が設定されていない等級のものも広く流通している。そのため、硫黄成分の含有量が多い重質油を使用するディーゼル機関からの排気ガスには、軽油の場合に比べて多量のサルフェートや、SOxが含まれている。
【0006】
低硫黄成分の軽油を使用する自動車等のディーゼル機関では、排気ガスの浄化技術の開発が進み様々なタイプのものが既に実用化されている。しかし、硫黄成分は排気ガス浄化触媒にとって被毒物質であり(特許文献1)、高硫黄成分の重質油を使用するディーゼル機関からの排気ガスに、この浄化技術を適用しても満足な浄化が行えなかった。また、このような硫黄成分は、後述する触媒化したフィルターの活性も失わせてしまう。そのため、重質油を使用して排出された排気ガスの浄化をより困難なものにしていた。
また、主機3には燃焼室の容積が大きい大型のディーゼル機関が使用される。大型のディーゼル機関では消費される燃料も多く、燃焼室における炎の伝播も小型のディーゼル機関に比べて劣る。そのため、排気ガス中には多量の微粒子成分含まれる。そのため、フィルターを使用しても排気ガスの浄化が充分ではなかったり、フィルターが微粒子成分で詰ってしまうことがある。そして、硫黄成分により活性の低下した触媒を使用したフィルターでは、このような不具合がより助長されてしまう。
【0007】
排気ガス成分中の微粒子成分を除去するのに、これまで図4のように排気ガス流路にフィルターが設置されている。このようなフィルターには、多孔質セラミックス製のハニカム形状のフィルターがあり、ウォールフロー型フィルター(以下、単にフィルターと言うことがある)として知られている。このフィルターの構造は、一方の端面穴から他方の端面の穴に向かって多数の孔(チャネル)が連設され、それら穴の一方が両端面で交互に目封じされるとともに、この孔の壁面は多孔質からなり、壁面はガスを透過するが微粒子成分は透過不能になっている。そのため、微粒子成分を含んだ排気ガスは、開口端面からフィルター内部に導入され、壁により微粒子成分が濾し取られて、排気ガスから微粒子成分が除去される仕組みになっている。
【0008】
微粒子成分が堆積したフィルターは、そのまま使用し続けると目詰まりを起こすので、加熱燃焼処理などで微粒子成分を酸化除去して再生する。酸化除去には外部ヒーターによる加熱燃焼処理や、フィルターへ燃料を噴射する燃焼処理が利用される。また、微粒子成分の酸化除去を促進するため、フィルターが白金、パラジウムなど貴金属成分の被着により触媒化されることもある。このような構造のフィルターは、触媒化フィルター(CSF:Catalyzed Soot Filter)と称され、軽油を燃料とするディーゼル自動車において広く普及している(特許文献2)。
排気ガスに微粒子成分が多量に含まれる場合、それを燃焼し除去するために加熱処理を頻繁に繰り返す事になる。しかし、頻繁に加熱処理するとフィルターが熔解する恐れが生じ、また、頻繁に燃料を噴射することは燃費の悪化を引き起こす。
また、硫黄成分を多量に含む排気ガスには、微粒子成分としてサルフェートが含まれるので、これがフィルターに堆積し、フィルター再生時には、このサルフェートが燃焼してSOxとなって、新たに大気汚染の原因物質を排出してしまう。
【0009】
ディーゼル機関から排出される有害成分としては、この他にNOxがある。その浄化方法には、排気ガス中にアンモニアや炭化水素などを還元成分として添加混合し、触媒が充填された浄化装置に導入して浄化する技術があり、選択的触媒還元(SCR:Selective Catalytic Reduction)法として知られている。例えば、アンモニアを還元成分とする方法は、NOxの浄化に効果的であり(特許文献3)、この浄化プロセスは、NOxをNとHOに分解するもので、主として次に示す反応式によって進行する。
4NO+4NH+O→4N+6H
2NO+4NH+O→3N+6H
NO+NO+2NH→2N+3H
このように、アンモニアを還元成分とするSCR法(NH−SCR法)では、触媒(NH−SCR触媒)が使用され、アンモニア源として尿素を使用する場合はUrea−SCR触媒とも言われている。なお、本発明では、特にことわりのない限り、SCR法と言った場合、これら、Urea(尿素)や、NHを還元成分としたSCR法のことをさし、SCR触媒といった場合も同様とする。
【0010】
SCR触媒には、その主要な成分としてゼオライトや、バナジウム、タングステン、モリブデン、ニオブ、チタン等の酸化物の一種以上が使用されている。このうち、ゼオライトを使用したSCR触媒は、実質的に重金属の揮発が無いので、安全性に優れるとされている。
しかし、ゼオライトは、排気ガス中の硫黄成分で活性が低下することがある。そのため、シリカ/アルミナ比の大きなゼオライトの使用が望ましい(特許文献4、特許文献5)。ところが、重質油を燃焼させたときの多量のSOxを含む排気ガスに対しては、このようなゼオライトでも触媒活性の維持が困難な場合がある。
【0011】
従来、船舶では自動車のように厳しい規制が行われていなかったために、自動車の場合ほど排気ガス浄化技術は進んでいない。注目される技術としては、微粒子成分をフィルターで除去した後、脱硝する方法が提案されている程度である(特許文献6参照)。
ところが、近年、地球環境問題がクローズアップされ、船舶においても排気ガス成分の規制がより強化されることになった。そのため、硫黄成分を多量に含む燃料を使用する船舶に対しても効果的な排気ガス浄化技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007−111625([0006]他)
【特許文献2】特許第3012249号
【特許文献3】特表2002−502927
【特許文献4】特開平7−96194
【特許文献5】特開平8−266869
【特許文献6】特開2002−161728
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、重質油を燃料とした船舶用ディーゼル機関の排気ガスから微粒子成分、NOxを効率的に除去し、大気中へのSOxの放出を最小限に抑制するための船舶用排気ガス浄化装置、及びそれを用いた排気ガス浄化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、このような課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、重質油を燃料とした船舶用ディーゼル機関から排出される排気ガスを、還元成分と共に選択還元触媒に接触させてNOxを浄化することと、排気ガスを親水性無端ベルト装置のベルト面に接触させて微粒子成分を集塵することと、微粒子成分が集塵されたベルト面に水を接触させて微粒子成分の少なくとも一部を除去することと、親水性無端ベルト装置にスクレイパーを当接させて、ベルト面に残留した微粒子成分を掻き取ることで、効果的な排気ガスの浄化が可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、重質油を燃料とする船舶用ディーゼル機関からの排気ガスを浄化する船舶用排気ガス浄化装置であって、排気ガスへ窒素酸化物の還元成分を噴霧供給する還元成分噴霧手段(A)と、前記還元成分と排気ガスを接触させて窒素酸化物を還元する選択還元触媒(B)と、排気ガス中の微粒子成分を回動するベルト面に接触させて集塵する親水性無端ベルト装置(C)と、ベルト面の微粒子成分に水を接触させ、微粒子の少なくとも一部を分離するとともに、ベルト面にスクレイパーを当接させ、微粒子成分を掻き集めて分離する微粒子分離手段(D)を含み、親水性無端ベルト装置(C)が、排気ガス流路中の選択還元触媒(B)の下流に配置されてなる船舶用排気ガス浄化装置が提供される。
【0016】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、還元成分が、尿素水溶液であることを特徴とする船舶用排気ガス浄化装置が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、選択還元触媒(B)が、主要な触媒成分として、バナジウム、タングステン、モリブデン、ニオブ、又はチタンから選ばれる一種以上の酸化物を含むことを特徴とする船舶用排気ガス浄化装置が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1又は3の発明において、選択還元触媒(B)が、フロースルー型ハニカム担体に触媒成分が被覆された一体構造型触媒であることを特徴とする排気ガス浄化装置が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1の発明において、微粒子分離手段(D)が、親水性無端ベルト装置の端部を受け入れる貯水槽を備えることを特徴とする船舶用排気ガス浄化装置が提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、第1又は5の発明において、微粒子分離手段(D)で用いられる水が、海水、河川水、又は湖水から選ばれるいずれかであることを特徴とする船舶用排気ガス浄化装置が提供される。
【0017】
一方、本発明の第7の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明に係り、重質油を燃料とする船舶用ディーゼル機関からの排気ガスを、船舶用排気ガス浄化装置に導入し、排気ガスに還元成分を噴霧し、選択還元触媒に接触させて窒素酸化物を還元し、その後、親水性無端ベルト装置のベルト面に微粒子成分を集塵し、次に、集塵された微粒子成分に水を接触させて、ベルト面から微粒子成分の少なくとも一部を分離するとともに、ベルト面にスクレイパーを当接させ、微粒子成分を掻き集めて分離することを特徴とする排気ガス浄化方法が提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明の船舶用排気ガス浄化装置によれば、窒素酸化物の還元成分と排気ガスを接触させ窒素酸化物を還元する選択還元触媒と、排気ガス中の微粒子成分を吸着する回動自在な親水性無端ベルト装置とを少なくとも備えることから、重質油を燃料とする船舶用ディーゼル機関から排出される排気ガス中の微粒子成分やNOxに対して、高い浄化性能を発揮する。
また、前記親水性無端ベルト装置から微粒子成分を分離除去する際に燃焼再生を行わないので、大気中へのSOxの排出が最小限に抑制できる。また、触媒活性を保つのに適切な温度を維持する必要のあるSCR触媒を、最適な温度を維持し易い排気ガス流れの上流側に設置するので、優れたNOx浄化性能を発揮することができる。
また、SCR触媒、微粒子成分の集塵効果のある親水性無端ベルト装置を採用するので、多量に微粒子成分を含む排気ガスに対しても、装置の浄化能力の低下を招くことなく、高い浄化性能を発揮し続けることができる。
また、SCR触媒の主要な成分としてバナジウム、タングステン、モリブデン、ニオブ、チタンの少なくとも一種を含む酸化物を使用すれば、本発明の船舶用排気ガス浄化装置でSOx濃度の高い排気ガスを処理しても、優れた選択還元性能を発揮することができる。
さらに、ベルト面で集塵された微粒子成分は、海水、湖水、河川水など、船舶の使用環境で容易に手に入る水系媒体と接触させて少なくとも一部を分離するので微粒子成分を粉塵として大気に飛散させることがなく、また、ベルト面で集塵された微粒子成分もスクレイパーにより掻き集めて分離するので、ベルト面を使用した排気ガス中の微粒子成分を連続的に行うことができる。
ベルト面から分離された微粒子成分は、海水、湖水、河川水に廃棄してもよいが、水槽中に回収して別途適切な分離手段を用いて微粒子成分のみを分離すれば、安全かつ衛生的に処理される。
また、ベルト面から分離された微粒子成分は粗大化する傾向にあり、そのような場合には分離した微粒子の飛散もしづらく、分離後の微粒子成分の回収も容易である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明が適用される船舶の概要説明図である。
【図2】本発明の排気ガス浄化装置の構成と、処理方法の概要を示す説明図である。
【図3】本発明で使用する還元触媒への改質成分の配置例を示す断面図である。
【図4】従来技術の排気ガス浄化装置における装置構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を用いて本発明の船舶用排気ガス浄化装置、及びそれを用いた排気ガス浄化方法について、海上船舶を中心に詳細に説明する。なお、本発明は、図示された構成や、特定の種類の船舶に限定されるものではなく、広く船舶用途全般に適用可能である。
本発明の船舶用排気ガス浄化装置は、図2に示すように、重質油を燃料とする船舶用ディーゼル機関2や3から排出される船舶用排気ガス浄化装置であって、窒素酸化物を浄化する還元成分を供給する還元成分噴霧手段5と、前記還元成分と排気ガスを接触させ窒素酸化物を還元する選択還元触媒6と、排気ガス中の微粒子成分を回動するベルト面に接触させて集塵する親水性無端ベルト装置7と、ベルト面の微粒子成分に水系媒体12を接触させ、微粒子の少なくとも一部を分離するとともに、ベルト面にスクレイパー8を当接させ、微粒子成分を掻き集めて分離する微粒子分離手段を含み、親水性無端ベルト装置7が、排気ガス流路3中の選択還元触媒6の下流に配置されている。また、微粒子分離手段の後段には、更に微粒子回収手段を別途設けることができる。
【0021】
1.船舶用ディーゼル機関
本発明は、燃料として重質油を使用した船舶用ディーゼル機関から排出される排気ガスの浄化に適用される。船舶用ディーゼル機関は、図1に、船舶内の電気や動力を賄う補機2、推進用のスクリュー4を駆動する主機3が示すように、船舶に二基以上搭載されることがある。
本発明の排気ガス浄化技術は、補機2、主機3のどちらにも使用可能であるが、微粒子成分の除去と微粒子成分の集塵手段の再生を連続的に行うことが可能であることから、大型の主機3における排気ガスの浄化で威力を発揮する。
【0022】
このような船舶用ディーゼル機関の基本構成は、一般的なディーゼル機関と同じで、圧縮された空気に対して燃料を噴射して着火し、その爆発力によって駆動されるものである。また、排出される排気ガス成分も同様であり、未燃焼の燃料に由来する煤、可溶性有機成分、サルフェート等からなる微粒子成分、希薄燃焼に由来するNOx、不完全燃焼により発生する炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、また二酸化炭素(CO)、硫黄酸化物(SOx)などの混合物である。
【0023】
重油などの重質油を使用する船舶用ディーゼル機関の特徴は、排気ガス成分として、煤、可溶性有機成分、サルフェート等からなる微粒子成分を多量に含む点にある。多量の微粒子成分を含むので、ディーゼル自動車など、軽油を燃料とする内燃機関から排出される排気ガスの組成とは大きく異なっている。
図4に示すディーゼル自動車の排気ガス浄化システムでは、排気ガスの流路に還元剤を噴霧し、選択還元触媒(SCR)と接触させた後、フィルターで微粒子成分を除去している。重質油を使用した船舶用ディーゼル機関では、このようなディーゼル自動車の排気ガス浄化システムをそのまま適用することが難しい。排気ガスに含まれる膨大な粒子状物質を濾過すると、フィルターがすぐに目詰まりを起こして機能しなくなり、微粒子成分の除去が出来なくなる他、背圧の上昇を招きディーゼル機関の出力低下を招くためである。また、堆積した微粒子状物質を除去してフィルターを再生するためには、微粒子状物質を除去する必要があるが、粒子状物質の量が膨大であるために、巨大なフィルターを設置したり、燃料噴霧による燃焼再生やフィルターを頻繁に交換する必要があり、現実的な手段とはいえない。
【0024】
2.還元成分、並びにその噴霧手段(A)
本発明において還元成分は、ガソリン、軽油などの炭化水素成分の他、アンモニア水溶液や尿素水溶液等が使用できる。アンモニア水溶液や尿素水溶液によれば、効率的にNOxを浄化でき、特に尿素水溶液は、その取り扱いの容易さ、安全性の高さ、インフラの普及により、自動車排気ガス中のNOx成分を浄化するSCR法の還元成分として主流になりつつある。以下、アンモニア水溶液や尿素水溶液を総称してアンモニア成分ということがある。
【0025】
還元成分は、選択還元触媒に対して、そのまま噴霧しても良いが、噴霧前に加熱や改質など前処理をして供給しても良い。還元成分の改質とは、還元成分が尿素であればより反応性の高いアンモニアへ分解させることをいい、燃料など炭化水素成分を使う場合は炭素鎖長を短くして反応性を増すためのクラッキングのことをいう。このような加熱や改質などの前処理を行うことで、選択還元触媒における還元成分とNOxの反応が促進される。
【0026】
このような還元成分の改質では、改質触媒を還元成分噴霧装置の噴霧ノズル部位や、選択還元触媒の前段に配置してもよく、選択還元触媒に改質成分を含ませ、選択還元触媒の表面で還元成分を改質しても良い。
選択還元触媒に改質成分を含ませる場合、図3(a)のように、改質成分をハニカム構造体にコートした選択還元触媒とは別に排気ガス流れの上流側に偏って被覆したり、選択還元触媒と一体化しても良く、図3(b)のように選択還元触媒の表面部に偏って被覆させてもよい。分解成分を選択還元触媒の表面部のみに含ませる場合、図3(c)のように排気ガス流れの選択還元触媒の上流側に被覆しても良い。
【0027】
本発明において使用される還元成分は、炭化水素でもアンモニア成分であっても良いが、アンモニア成分である事が望ましい。
すなわち、前述のとおり、燃料として重質油を使用する場合には、排気ガス中にSOx等多量の硫黄成分が含まれることになる。一般に、内燃機関から排出される排気ガスの還元成分が炭化水素であれば、炭化水素源として燃料を使用することが多い。しかし、炭化水素の改質に使用できる分解成分としては、ゼオライトや白金、パラジウムが一般的である。しかし、これらは硫黄成分により劣化されやすいので改質性能が低下する傾向があり、硫黄成分を多く含む重質油に対しては充分な改質が出来ない場合がある。
これに対し、尿素の改質成分には、タングステン、モリブデン、ニオブ、バナジウム、チタンを含む酸化物が使用される。このような酸化物は、ゼオライトや白金、パラジウムに比べると、硫黄被毒による活性低下の程度が小さいためである(特開2001−300309、[0005])。
【0028】
還元成分は、図2に示すように、排気管14内の選択還元触媒6の前段で噴霧される。噴霧位置は特に限定されるものではなく、排気管14内に還元成分噴霧装置5を介して排気ガスと混合するように還元成分を供給する他、選択還元触媒6に対して直接噴霧供給しても良い。また、還元成分は、そのまま噴霧しても良いが、噴霧前に加熱や改質など前処理をしてから供給しても良い。還元成分が尿素であれば、より反応性の高いアンモニアへ分解させる前処理を行うことが好ましい。このような、加熱や改質など還元成分の前処理は、一種単独で使用しても良く、加熱と改質の両方を使用しても良い。このような加熱や改質などの前処理を行うことで、選択還元触媒6における還元成分とNOxの反応が促進される。
【0029】
3.SCR触媒(B)
本発明に使用される選択還元触媒は、還元成分が混合された排気ガス中の窒素酸化物を選択的に還元する機能を有するものであり、燃料である重質油に由来する硫黄成分に対する耐被毒性能に優れる触媒であれば特に限定されないが、アンモニア成分を還元成分としたSCR触媒が好ましい。
【0030】
アンモニア成分を還元成分とするSCR法においては、耐硫黄被毒特性に優れる触媒成分として、シリカ/アルミナ比が大きなゼオライトや、バナジウム、タングステン、モリブデン、ニオブ、又はチタンから選ばれる一種以上の酸化物が使用できる。
【0031】
本発明においてシリカ/アルミナ比が大きなゼオライトとは、シリカ(SiO)/アルミナ(Al)のモル比(SAR:Silica Alumina Ratio)が18以上のゼオライトの事をいい、特に25〜40であることが好ましい。
このようにSARの大きなゼオライトを使用すると、例えば、特開平7−96194に開示されるように耐硫黄被毒性が向上する。その理由は、アルミナは硫黄成分との良好な反応性を示すこと(「触媒利用技術集成」33頁、編集:「触媒利用技術集成」編集委員会、発売元:株式会社大学図書)、ゼオライトのSARが小さいとアルミナの量が多くなることから、ゼオライトとして硫黄被毒を起こしやすくなるためである。従って、SARが大きなゼオライトは、アルミナの量が相対的に少なくなり、被毒し難くなり、活性の低下が抑制されるのであろう。
このようなゼオライトの種類は、特に限定されないが、例えば、モルデナイト、フェリエライト、ゼオライトβ、ZSM−5、ZSM−8、ZSM−11、ZSM−12、ZSM−20、ZSM−22、ZSM−35、ZSM−57、チャバザイト等が使用できる。また、アルミナ比率の大きなゼオライトY、ゼオライトL等のゼオライトを脱アルミニウム化したものを使用してもよい。また、SAPO(silicoaluminophosphate)などのモルキュラーシーブ(molecular sieve)を使用してもよい。
ゼオライトには、カチオンでイオン交換可能なカチオンサイトがあるが、このようなイオン交換サイトは、La、Ceなどの希土類元素、Fe、Cu、Sn、Gaなどの金属元素、Ag、Pt、Pd、Rh等の貴金属元素がイオン交換されていてもよく、アンモニウムイオンまたはプロトンがイオン交換されていてもよい。
【0032】
SCR触媒成分としてバナジウム、タングステン、モリブデン、ニオブ、又はチタンから選ばれる一種以上を含む酸化物を用いる場合は、これらの酸化物を単独使用することができる。中でもバナジウム、タングステン、チタンの少なくとも一種を含む酸化物が好ましく、バナジウムを含む酸化物を使用することが最も好ましい。また、バナジウム、タングステン、モリブデン、ニオブ、チタンの二種以上からなる複合酸化物として使用しても良い。そして、バナジウムを必須成分として含む酸化物、複合酸化物が特に好ましい。なお、バナジウムとチタンを必須成分とする触媒組成物が、良好な性能を発揮する組成として知られている(特開2001−300309、[0005])。
また、バナジウム、タングステン、モリブデン、ニオブ、チタンのような元素の酸化物、複合酸化物は、耐硫黄被毒性が高いことが知られている(例えば、特開2007−182812、特開2007−167698)。その理由は定かではないが、ゼオライトのように硫黄成分と反応し易いアルミニウム成分を含まないためではないかと考えられる。
このようなSCR触媒には、上記触媒成分の他、セリア、ジルコニア、アルミナ、シリカ、白金、ロジウム、パラジウムなど公知の触媒成分を、本発明の触媒性能を阻害しない範囲で適宜添加することができる。これら酸化物には耐熱性や活性を向上する機能がある。
【0033】
本発明におけるSCR触媒は、様々な形状に成型して使用することができる。具体的には、ペレット状に成型したもの、粒子状のセラミックスの表面にSCR触媒成分を被覆したもの、ステンレスやセラミック等の耐熱性材で出来たモノリス状のハニカム構造体にSCR触媒成分を被覆したもの等が挙げられる。特にハニカム構造体であると、幾何学的表面積が大きく、触媒としての活性面を大きくでき、微粒子成分の堆積も少ない事から好ましい。また、ハニカム構造体のなかでは、一方の端面の穴(hole)から他方の端面の穴(hole)へ連通した孔(channel)を有するフロースルー型ハニカム構造体が好ましい。フロースルー型ハニカム構造体であれば、ディーゼル機関に対する背圧も高くならず、ディーゼル機関の性能の低下を招き難い。このようなハニカム構造型触媒は、ハニカム構造体に触媒成分を被覆した物の他、触媒組成物そのものをハニカム構造体として成型したものであっても良い。
【0034】
本発明において、SCR触媒(ハニカム構造型触媒)は、触媒成分と必要に応じてバインダーなどを水系媒体とを混合してスラリー状混合物にしてから、ハニカム構造体へ塗工して、乾燥、焼成する事により製造される。
触媒成分をハニカム構造体に塗工する場合、まず、触媒成分と水系媒体を所定の比率で混合してスラリー状混合物を得る。本発明においては、水系媒体は、スラリー中でSCR触媒が均一に分散できる量を用いれば良い。
この際、必要に応じてpH調整のための酸、アルカリを配合し、粘性の調整やスラリー分散性向上のための界面活性剤、分散用樹脂等を配合する事ができる。スラリーの混合方法としては、ボールミルなどによる粉砕混合が使用可能であるが、他の粉砕、もしくは混合方法を使用しても良い。
次に、ハニカム構造体へスラリー状混合物を塗工する。塗工方法は、特に限定されないが、ウオッシュコート法が好ましい。塗工した後、乾燥、焼成を行う事により触媒組成物が担持されたフロースルー型ハニカム構造型触媒が得られる。なお、乾燥温度は、100〜300℃が好ましく、100〜200℃がより好ましい。また、焼成温度は、300〜700℃が好ましく、特に400〜600℃が好ましい。加熱手段については、電気炉やガス炉等の公知の加熱手段によって行う事ができる。
【0035】
このSCR触媒に、還元成分が混合された排気ガスを接触させると、排気ガス中の窒素酸化物が選択的に還元される。
【0036】
4.親水性無端ベルト装置
本発明には、排気ガス中の微粒子成分を集塵するため、親水性無端ベルト装置が使用される。この親水性無端ベルト装置(以下、無端ベルト装置ということがある)は、水を含んだ状態で、煤(微粒子成分)との親和性が高い材質から構成されたベルト面を有している微粒子成分除去手段である。
【0037】
本発明における親水性無端ベルト装置とは、図2に示すように、微粒子成分13を吸着可能な親水性のある無端ベルト7’を備え、無端ベルト部位の始端側と終端側に配置された一対のローラー9、9’で、無端ベルト7’を回動自在としている。
無端ベルト7’は、少なくとも表面が、例えばナイロン、ポリオレフィン、ポリエステル、エラストマー(合成ゴム)などの合成樹脂製の親水性材料から構成されている。また、これら合成樹脂をベースとして、親水性モノマーでグラフト処理した材料も使用できる。ステンレスやセラミックは、親水性や柔軟性がないので好ましくない。ベルトの厚さは、3mm〜30mm程度、ベルトの幅は、排気ガス流路のサイズに合せて、例えば30mm〜3000mmの範囲で適宜設計することができる。
【0038】
また、無端ベルト7’の表面状態は、平坦であっても良いが、無端ベルト7’の排気ガスとの接触面が親水性を有する起毛状態にしたり、無端ベルト7’の排気ガスとの接触面に多数の舌状部位を設けたりして、排気ガスとの接触面積を大きくした構成にすることが好ましい。起毛部位、舌状部位の長さ、太さは特に制限されないが、例えば、長さが1〜30mm、太さ1〜5mm程度が好ましい。
また、無端ベルト7’は、親水性を有したうえで、排気ガスを透過可能に構成されることが望ましい。そのためには、上記のようなベルト表面に対して、それを保持するフェルトやメッシュなど通気性の基材を合体させることができ、排気ガスが回転するベルトを透過してベルト面と2回接触することになり、粒子状物質13の吸着性能が向上する。
【0039】
また、無端ベルト7’には静電吸着機能を持たせても良い。つまり、無端ベルト7’に入ってくる微粒子成分13を帯電させ、無端ベルト7’にそれと反対の電荷を帯びさせて、無端ベルト7’に対する微粒子成分13の吸着性を向上させるものである。
また、静電吸着構造では、微粒子成分13、無端ベルト7’の帯電に高電圧を印加使用した場合、微粒子成分13、無端ベルト7’の近傍で排気ガス中の有害成分が浄化される。これは、高い電圧をかけた際、放電によりプラズマが発生し、このプラズマによって排気ガス成分中から反応性の高いラジカルが生成し、そのラジカルにより排気ガス中の有害成分が分解されるからである。
無端ベルト装置7は、図2のように排気流路に対して、傾斜させて設置される。傾斜角度は、特に制限されないが、排気ガスとの接触面積を高めるうえで、30〜90°、特に45〜90°が好ましい。
【0040】
無端ベルト装置7にはNOxが浄化された後の排気ガスが導入される。無端ベルト7’は、両端のローラー9、9’の少なくとも一方に連結されたモーター等(図示せず)によって回転駆動される。回転方向は前進方向でも後退方向であってもよく、必要により、切り替えても良い。回転速度は、特に制限されないが、0.01m/s以上とし、0.01〜1m/s程度が好ましい。一般に回転速度を高めるほど微粒子成分13の除去効率は大きくなるが、回転速度が1m/sを超えると微粒子成分13の吸着効率が低下することがある。
この排気ガス中に多量に含まれている微粒子成分13は、回転する無端ベルト装置7の含水した無端ベルト7’上で吸着され、排気ガスが集塵される。
なお、無端ベルト7’への吸着前に、別途加水噴霧手段10等により、微粒子成分13に加水処理を施しても良い。このような加水処理により、無端ベルト7’に対する微粒子成分13の吸着性が向上する場合がある。
微粒子成分13が吸着した無端ベルト7’には、後述する水系媒体への浸漬前に、送風や水系媒体の噴射手段11により、微粒子成分13に対して送風、加水処理を施しても良い。送風や水系媒体の噴射により、無端ベルト7’上の微粒子成分13を剥がれ易くすることができ、後述するスクレイパー処理の前に無端ベルト7’から剥離できる場合がある。
微粒子成分13が除去された排気ガスは、無端ベルト装置7の後方から排出される。ただし、装置レイアウトの都合上、側面方向から排出されるようにしてもよい。
【0041】
5.微粒子分離手段(D)
本発明において、微粒子分離手段(D)は、水系媒体を接触させることで、親水性無端ベルト装置7に集塵された微粒子成分の少なくとも一部を分離する機能と、ベルト面にスクレイパーを当接させ、微粒子成分を掻きとって分離する機能を有する。ここで、掻き取られた微粒子成分は、粒子を粗大化する傾向がある。粗大化した粒子は回収が容易になり、掻き取った後に微粒子成分が再び飛散するようなことも抑制できる。
【0042】
この微粒子分離手段は、貯水槽とその内部の水系媒体を備えており、貯水槽は、その上部が開口し、親水性無端ベルト装置の端部を受け入れ可能とされている。水系媒体は、水をベースとして、必要により、界面活性剤、植物性の潤滑油や防錆剤などを含有させたものである。水の種類は、船舶の使用環境において容易に入手可能であれば特に限定はなく、海水、河川水、又は湖水から選ばれるいずれかであり、海洋船舶においては海水が好ましく使用できる。
無端ベルト7’の軌道上でベルト面に吸着した微粒子成分13は、無端ベルト7’と共に貯水槽中の水系媒体に浸漬され事が望ましいが、海水、河川水、湖水へ直接浸漬されても良い。浸漬した微粒子成分13は水を含むことで流動性を帯び、無端ベルト7’の軌道上から離脱し易くなる。ここで微粒子の少なくとも一部が分離する。
【0043】
含水した微粒子成分13は、その後、無端ベルト7’の軌道上に接触しているスクレイパー8によって、無端ベルト7’の軌道上からかき取られる。ここで、スクレイパー8の材質は、特に限定される事は無く、樹脂製、金属製、木製など適宜使用可能である。また、高圧の水系媒体の噴射をもってスクレイパー8に換えても良い。無端ベルト7’へのスクレイパー8の接触位置は、水系媒体への浸漬後であっても良いが、水系媒体中でも良い。
【0044】
スクレイパー8と接触した微粒子成分は、図2のように含水状態で粗大化することで重量を増し、そのまま水槽に落下し、粉塵として大気へ飛散することも無く、安定した状態で排気ガス流路の系外へ排出される。掻き取られた微粒子成分、または粗大化粒子13aはそのまま排気ガスの系外へ排出されても良いが、更にフィルターや遠心分離機を使用して集積し、分離除去しても良い。
微粒子成分の粗大化は、上記以外に、集塵装置7後段の排気ガス系内へ水系媒体の噴霧手段11による噴霧や、排気ガスを水系媒体の中を通過させること(図示せず)で行う事もできる。背圧の上昇を防ぐためには、排気ガス系内へ水系媒体を噴霧する方法が好ましい。水分を含んだ粗大化粒子は、そのまま排気ガスの系外へ排出されても良いが、更にフィルターや遠心分離機を使用して集積し、分離除去することが望ましい。
【0045】
7.排気ガス浄化方法
本発明の排気ガス浄化方法は、重質油を燃料とする船舶用ディーゼル機関からの排気ガスを、前記の船舶用排気ガス浄化装置に導入し、排気ガスに還元成分を噴霧し、選択還元触媒に接触させて窒素酸化物を還元し、その後、親水性無端ベルト装置のベルト面に微粒子成分を集塵し、次に、集塵された微粒子成分に水を接触させて、ベルト面から微粒子成分の少なくとも一部を分離するとともに、ベルト面にスクレイパーを当接させ、微粒子成分を掻き取って分離することを特徴とする。
【0046】
このように、本発明では集塵装置を、「還元成分供給手段」、「選択還元触媒」、「親水性無端ベルト装置」、「微粒子分離(水系媒体への浸漬)」、「微粒子分離(スクレイパー処理)」の順序で処理することで、重質油を燃料とした船舶用ディーゼル機関から排出される排気ガス中の微粒子成分やNOxを、連続的、安定的、長期的に効率よく浄化することができる。
また、燃料に由来して発生が避けられないサルフェートを含む微粒子成分を、あえて燃焼処理しないので、サルフェートを加熱することで生じるSOxの大気中への放出を最小限に抑制することができる。
また、バンカー油を燃料として使用した場合には、原油精製時の触媒成分であるアルミナ、シリカなどの燃焼除去不可能な無機微粒子が混入するが、本発明では前記特許文献6のような燃焼再生を必要とするフィルターを使用しないことから、無機微粒子によって、微粒子成分除去手段である親水性無端ベルト装置に再生不可能な障害が生じることもない。
【符号の説明】
【0047】
1 船舶
2 補機 ディーゼル機関
3 主機 ディーゼル機関
4 スクリュー
5 還元成分噴霧装置
6 選択還元触媒(SCR触媒)
7 親水性無端ベルト装置
7’ 無端ベルト
9、9’ 駆動ローラー
10 加水噴霧手段
11 送風や水系媒体の噴射手段
12 水系媒体(海水)
13 微粒子成分
13a 粗大化した微粒子成分
14 排気管
15 還元成分タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重質油を燃料とする船舶用ディーゼル機関からの排気ガスを浄化する船舶用排気ガス浄化装置であって、
排気ガスへ窒素酸化物の還元成分を噴霧供給する還元成分噴霧手段(A)と、前記還元成分と排気ガスを接触させて窒素酸化物を還元する選択還元触媒(B)と、排気ガス中の微粒子成分を回動するベルト面に接触させて集塵する親水性無端ベルト装置(C)と、ベルト面の微粒子成分に水を接触させ、微粒子の少なくとも一部を分離するとともに、ベルト面にスクレイパーを当接させ、微粒子成分を掻き取って分離する微粒子分離手段(D)を含み、
親水性無端ベルト装置(C)が、排気ガス流路中の選択還元触媒(B)の下流に配置されてなる船舶用排気ガス浄化装置。
【請求項2】
還元成分が、尿素水溶液であることを特徴とする請求項1記載の船舶用排気ガス浄化装置。
【請求項3】
選択還元触媒(B)が、主要な触媒成分として、バナジウム、タングステン、モリブデン、ニオブ、又はチタンから選ばれる一種以上の酸化物を含むことを特徴とする請求項1記載の船舶用排気ガス浄化装置。
【請求項4】
選択還元触媒(B)が、フロースルー型ハニカム担体に触媒成分が被覆された一体構造型触媒であることを特徴とする請求項1又は3に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項5】
微粒子分離手段(D)が、親水性無端ベルト装置の端部を受け入れる貯水槽を備えることを特徴とする請求項1記載の船舶用排気ガス浄化装置。
【請求項6】
微粒子分離手段(D)で用いられる水が、海水、河川水、又は湖水から選ばれるいずれかであることを特徴とする請求項1又は5に記載の船舶用排気ガス浄化装置。
【請求項7】
重質油を燃料とする船舶用ディーゼル機関からの排気ガスを、請求項1〜6のいずれかに記載の船舶用排気ガス浄化装置に導入し、排気ガスに還元成分を噴霧し、選択還元触媒に接触させて窒素酸化物を還元し、その後、親水性無端ベルト装置のベルト面に微粒子成分を集塵し、次に、集塵された微粒子成分に水を接触させて、ベルト面から微粒子成分の少なくとも一部を分離するとともに、ベルト面にスクレイパーを当接させ、微粒子成分を掻き取って分離することを特徴とする排気ガス浄化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−32953(P2011−32953A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181162(P2009−181162)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【出願人】(000228198)エヌ・イーケムキャット株式会社 (87)
【Fターム(参考)】