説明

艦船用バルブ駆動ユニット

【課題】艦船に特有の課題を解決したバルブ駆動ユニットを提供する。
【解決手段】艦内の各所に配置されたバルブユニットVUに対して個別に組付けられる油圧ユニットHUであり、中央制御機構から電気的ラインを介して個別に油圧ユニットHUが駆動される。油圧ユニットHUは、バルブユニットVUを駆動する油圧式のアクチュエータ1と、正逆回転式の電動油圧ポンプ2と、電動油圧ポンプを正逆回転駆動する電機式モータMをマニホールドブロック4に搭載し、マニホールドブロック4によりクローズ回路3を形成する油圧回路を構成する。アクチュエータ1は、出力軸に設けたピニオンを挟んで噛合する第1ラック及び第2ラックを同時に往動又は復動させるシリンダを設けたダブルラック形式とされ、マニホールドブロック4に形成した往動経路25及び復動経路26を介してシリンダに圧油が供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、艦船用バルブ駆動ユニット、例えば、艦船のバラストライン、ビルジライン、燃料ライン又は消火ライン等に設けられたバルブをリモートコントロールするシステムにおける艦船用バルブ駆動ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、リモートコントロールされる船舶用油圧バルブコントロールシステムに関して、船内の油圧配管を不要とし、低騒音かつ省エネルギーとしたシステムを過去に提案した(特許文献1)。
【0003】
前記システムは、各バルブユニット毎に油圧システムを組付けた個別のパッケージユニットを構成しており、前記油圧システムは、電機モータにより駆動される油圧ポンプによりオイルタンクの圧油をアクチュエータに送り、該アクチュエータを駆動した後にオイルタンクに戻すようにしたオープン回路を構成している。オープン回路には、2つのポペット形の電磁弁が設けられ、該電磁弁を切換作動することにより、アクチュエータの正逆回転を切り換えるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2614128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術は、船内の油圧配管を不要にするという優れた効果を奏するが、艦船に利用するときは、更に解決すべき多くの課題を含んでいる。
【0006】
即ち、艦船の艦内は、例えば、乗員のベッド側部にまで機器が配置される程に、多くの機器が満載されているため、各機器のコンパクト化の要求が極めて高い。この点に関して、特許文献1の技術の場合、前述のようにオープン回路を構成しているため、オイルタンクの大型化が避けられず、しかも、2つの電磁弁を必須とするため、小型化に限界があるという問題がある。
【0007】
また、艦船においては、砲弾発射時の衝撃加速度が極めて大きく、例えば、機器質量が10kgの場合、通常時の100倍以上になることが報告されており、そのような状況でも誤作動しない構造であることが要求される。しかも、就役後30年という長期保証が要求されるので、頑強な材料及び構造が求められる。この点に関して、前述の特許文献1のような電磁弁を設けると、誤作動の原因になり易いという問題がある。
【0008】
また、特許文献1の場合、船内の油圧配管は不要とするが、各バルブユニットに組付けられる油圧システム自体としては、油圧ポンプと電磁弁とアクチュエータの間に油圧配管が必要であるため、衝撃を受けた際に、油圧配管の継手部分から油漏れを生じることが懸念される。
【0009】
更に、艦船の場合、被弾時や機器トラブル発生時等に、電源使用不能(ブラックアウト)の状態となるため、特許文献1のように、電機モータを唯一の駆動源とすることは望ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、特許文献1と同様に、各バルブユニット毎に油圧システムを組付けた個別のパッケージユニットを構成することにより、艦内の油圧配管を不要とし、中央制御機構から電気的ラインによりリモートコントロール可能とした装置に関して、上述したような艦船に特有の課題を解決した艦船用バルブ駆動ユニットを提供することを目的とする。
【0011】
そこで、本発明が手段として構成したところは、バルブユニットを駆動する油圧式のアクチュエータと、正逆回転式の電動油圧ポンプと、前記電動油圧ポンプを正逆回転駆動する電機式モータをマニホールドブロックに搭載し、前記マニホールドブロックを介して、モータの正転時に電動油圧ポンプの第1ポートから吐出する圧油をアクチュエータに送ることにより該アクチュエータをバルブ開方向に駆動した後に電動油圧ポンプの第2ポートに戻し、モータの逆転時に電動油圧ポンプの第2ポートから吐出する圧油をアクチュエータに送ることにより該アクチュエータをバルブ閉方向に駆動した後に電動油圧ポンプの第1ポートに戻すようにしたクローズ回路を形成したユニットを構成しており、前記アクチュエータは、出力軸に設けたピニオンを挟んで噛合する第1ラック及び第2ラックと、第1ラックを往復駆動する第1ピストンを備えた第1シリンダと、第2ラックを往復駆動する第2ピストンを備えた第2シリンダを設け、第1ピストンと第2ピストンを同時に駆動させるように、第1ピストンを挟んで第1シリンダの両側に往動ポートと復動ポートを設けると共に、第2ピストンを挟んで第2シリンダの両側に往動ポートと復動ポートを設けており、前記マニホールドブロックは、第1シリンダ及び第2シリンダの往動ポートを電動油圧ポンプの第1ポートに連絡させる往動経路と、第1シリンダ及び第2シリンダの復動ポートを電動油圧ポンプの第2ポートに連絡させる復動経路を形成して成る点にある。
【0012】
本発明の好ましい実施形態は、レバー駆動型の手動油圧ポンプと、該手動油圧ポンプの吐出経路と流入経路を手動で切り換え自在とする切換バルブと、パイロットチェック弁を前記マニホールドブロックに搭載しており、前記クローズ回路は、前記マニホールドブロックの内部に形成された往動経路及び復動経路と、該往動経路及び復動経路のそれぞれからマニホールドブロックの外部に延長された外部経路と、該外部経路のそれぞれからマニホールドブロックの内部に延長された駆動経路により構成され、前記駆動経路のそれぞれを電動油圧ポンプの第1ポート及び第2ポートに連絡しており、前記外部経路に前記手動油圧ポンプの切換バルブを介装し、前記切換バルブと駆動経路の間に位置して前記外部経路に前記パイロットチェック弁を介装している。
【0013】
また、本発明の好ましい実施形態は、加圧シリンダと安全弁を前記マニホールドブロックに搭載しており、前記安全弁は、前記外部経路に介装され、前記加圧シリンダは、マニホールドブロックに形成した加圧経路を介して前記アクチュエータと前記電動油圧ポンプと前記安全弁に連絡されている。
【0014】
更に、本発明の好ましい実施形態は、前記電動油圧ポンプの第1ポート及び第2ポートの間に介装されたアンチキャビテーション弁を前記マニホールドブロックに搭載し、該アンチキャビテーション弁を通過する圧油を電動油圧ポンプに還流させるように構成している。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の本発明によれば、アクチュエータ1と、電動油圧ポンプ2と、電機式モータMをマニホールドブロック4に搭載し、該マニホールドブロック4によりクローズ回路3とされた油圧回路を構成しているので、オープン回路のようなオイルタンクが不要とされ、しかも、油圧回路を構成する油圧配管が不要なため、全体として装置のコンパクト化が可能となり、艦船用に適したバルブ駆動ユニットを提供することができる。
【0016】
この際、電機式モータMにより電動油圧ポンプ2を正逆回転駆動することにより、アクチュエータ1のバルブ開方向の駆動とバルブ閉方向の駆動を可能にするものであるから、従来のような油圧回路を切り換えるための2つの電磁弁を設ける必要がなく、これにより装置全体のコンパクト化が可能になる。そして、衝撃加速が非常に大きい艦船では、マグネットを使用してスプールを動かす電磁弁は衝撃により誤作動の原因となることがあるため、電磁弁を使用しないことにした。また、マニホールドブロック4により油圧回路を形成することにより、油漏れのおそれがある油圧配管を設けない構成としているので、艦船に特有の過酷な衝撃に十分耐え得る信頼性の高いバルブ駆動ユニットを提供することができる。
【0017】
更に、油圧式のアクチュエータ1の構成に関して、第1シリンダ18の第1ピストン16a、16bと、第2シリンダ19の第2ピストン17a、17bにより、出力軸14のピニオン15を挟んで噛合する第1ラック16及び第2ラック17を同時に往復駆動させるように構成したものであるから、小型化された装置でありながら、トルク効率が良く、高出力のアクチュエータ1が提供される。即ち、出力軸に設けたピニオンを片側から1つのラックで駆動するシングルラック形式の場合は、ピニオンが横荷重を受けるため、トルクロスを生じることにより出力トルクが減少するのに対して、本発明によれば、ピニオン15を一対のラック16、17で挟んだダブルラック形式が構成され、相互に逆方向に往動又は復動するラック16、17により、ピニオン15が受ける横荷重を相殺し、必要な回転力のみを受取らせることができるので、これにより高出力のアクチュエータ1が可能となり、換言すれば、アクチュエータ1を格段に小型化することが可能となる。
【0018】
請求項2に記載の本発明によれば、艦船の被弾時や機器トラブル発生時等における電源使用不能(ブラックアウト)の緊急状態においては、手動で切換バルブ8を切り換えると共に、人力で手動油圧ポンプ11を作動させることによりアクチュエータ1を駆動し、バルブユニットVUを開閉することができるので、艦船における非常時ないし緊急時の要求に応えることができる。
【0019】
この際、手動油圧ポンプ11によりアクチュエータ1を駆動するための外部経路27、28は、前記切換バルブ8と、電動油圧ポンプ2によりアクチュエータ1を駆動するための駆動経路29、30との間に位置して、パイロットチェック弁9を設けているので、手動油圧ポンプ11から吐出される圧油が電動油圧ポンプ2に向けて流れることにより該手動油圧ポンプ11に負荷が生じることを防止することができ、圧油を切換バルブ8とアクチュエータ1の間に形成されたクローズ回路3aの内部で好適に循環させることができる。
【0020】
そして、マニホールドブロック4に搭載した手動油圧ポンプ11の切換バルブ8とパイロットチェック弁9により外部経路27、28を形成させ、該外部経路27、28をマニホールドブロック4の内部に形成した駆動経路29、30に連絡するように構成することにより、油圧配管が不要とされるので、装置全体のコンパクト化が実現される。
【0021】
請求項3に記載の本発明によれば、前記アクチュエータ1と電動油圧ポンプ2と安全弁7に連絡される加圧シリンダ6を設けた構成であるから、オイルタンクを不要としたクローズ回路3を形成する構成でありながら、電動油圧ポンプ2の作動時及び手動油圧ポンプ11の作動時の何れの場合にも、該ポンプ2、11がキャビテーションを起こす心配がない。
【0022】
しかも、加圧シリンダ6を安全弁7に連絡しており、該安全弁7により油圧回路の吸入圧力を常に正圧で保持できるので、クローズ回路3における圧油の好適な循環が可能となる。
【0023】
そして、前記加圧シリンダ6と安全弁7を前記マニホールドブロック4に搭載し、加圧シリンダ6からの加圧経路31をマニホールドブロック4の内部に形成することにより、油圧配管が不要とされるので、装置全体のコンパクト化が実現される。
【0024】
請求項4に記載の本発明によれば、アンチキャビテーション弁5を電動油圧ポンプ2の第1ポートFと第2ポートRの間に介装し、該アンチキャビテーション弁5を経由してブースト圧を電動油圧ポンプ2に与えるように構成しているので、電動油圧ポンプ2の吸入圧力不足を生じることはない。
【0025】
そして、このようなアンチキャビテーション弁5も前記マニホールドブロック4に搭載されているので(図示実施形態の場合は電動油圧ポンプ2を介して間接的にマニホールドブロック4に搭載されているので)、油圧配管を不要とし、装置全体のコンパクト化を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態に係る艦船用バルブ駆動ユニットを示す油圧回路図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る艦船用バルブ駆動ユニットの外観を示しており、(A)は平面図、(B)は正面図である。
【図3】図2(B)のA−A線の拡大断面図である。
【図4】図3のB−B線の拡大断面図である。
【図5】マニホールドブロックを介して形成されたクローズ回路を説明しており、(A)は側面方向から表した回路図、(B)はマニホールドブロックに形成された回路を平面方向から表した回路図である。
【図6】電動油圧ポンプによりアクチュエータをバルブ開方向に駆動させた場合の圧油の流れを示す油圧回路図である。
【図7】電動油圧ポンプによりアクチュエータをバルブ閉方向に駆動させた場合の圧油の流れを示す油圧回路図である。
【図8】手動油圧ポンプによりアクチュエータをバルブ開方向に駆動させた場合の圧油の流れを示す油圧回路図である。
【図9】手動油圧ポンプによりアクチュエータをバルブ閉方向に駆動させた場合の圧油の流れを示す油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下図面に基づいて本発明の好ましい実施形態を詳述する。
【0028】
図1に示すように、艦船用バルブ駆動ユニットは、艦内の各所に配置されるバルブを備えたバルブユニットVUのそれぞれに対応して組付けられる油圧ユニットHUを構成している。油圧ユニットHUは、前記バルブユニットVUのバルブを開閉駆動する油圧式のアクチュエータ1と、正逆回転式の電動油圧ポンプ2と、該電動油圧ポンプ2を正逆回転駆動する電機式モータMを備えており、前記モータMの正転時には、電動油圧ポンプ2の第1ポートFから吐出する圧油を前記アクチュエータ1に送り、該アクチュエータをバルブ開方向Oに駆動した後に電動油圧ポンプ2の第2ポートRに戻し、モータMの逆転時には、電動油圧ポンプ2の第2ポートRから吐出する圧油を前記アクチュエータ1に送り、該アクチュエータをバルブ閉方向Sに駆動した後に電動油圧ポンプ2の第1ポートFに戻すように構成したクローズ回路3を設けている。
【0029】
そこで、艦内の各所に配置されたバルブユニットVUに対して個別に組付けられた油圧ユニットHUの多数は、コンピュータ及びD/Aコンバータ等から成る中央制御機構に電気的ラインで接続され、油圧ユニットHUを個別に駆動し、所望のバルブユニットVUを開閉させる。即ち、中央制御機構から電気的ラインを介してリモートコントロールすることにより、油圧ユニットHUが個別に駆動され、これに対応するバルブユニットVUが個別に開閉される。従って、艦内に油圧配管を設けていない。
【0030】
図2に示すように、油圧ユニットHUは、中央に配置した盤状のマニホールドブロック4を中心として、該マニホールドブロック4の一側面(図示の下側面)に前記アクチュエータ1が搭載されている。該マニホールドブロック4の他側面(図示の上側面)には、前記電動油圧ポンプ2及びモータMが搭載され、該電動油圧ポンプ2にアンチキャビテーション弁5を備えており、前記電動油圧ポンプ2の近隣に位置して、加圧シリンダ6が搭載されると共に、前記モータMの近隣に位置して、安全弁7と切換バルブ8とパイロットチェック弁9とバイパスプレート10が積層状に搭載され、前記切換バルブ8の側方にレバー駆動型の手動油圧ポンプ11が設けられている。前記手動油圧ポンプ11には駆動レバー12が設けられ、前記切換バルブ8には切換レバー13が設けられている。
【0031】
前記電動油圧ポンプ2及び手動油圧ポンプ11とアクチュエータ1を連絡する油圧回路は、前記マニホールドブロック4を介して形成されており、従って、油圧配管は設けていない。また、油圧回路は、充填された圧油を循環させるクローズ回路3を構成しており、従って、圧油を貯留するためのオイルタンクは設けていない。これにより、油圧ユニットHUは、全体としてコンパクトに形成されている。
【0032】
前記マニホールドブロック4は、油圧回路を形成するため、上下左右前後の6面に約100本のきり穴をあけ、内部に巣のない鋼材により形成されている。
【0033】
図3及び図4に示すように、前記アクチュエータ1は、出力軸14に設けたピニオン15を挟んで噛合する第1ラック16及び第2ラック17と、第1ラック16を往復駆動する第1ピストン16a、16bを備えた第1シリンダ18と、第2ラック17を往復駆動する第2ピストン17a、17bを備えた第2シリンダ19から構成され、第1ピストン16a、16bと第2ピストン17a、17bを同時に駆動させるように、第1ピストン16a、16bを挟んで第1シリンダ18の両側に往動ポート22と復動ポート21を設け、第2ピストン17a、17bを挟んで第2シリンダ19の両側に往動ポート24と復動ポート23を設けており、従って、図3に示すように、出力軸13の軸線を中心として第1シリンダ18と第2シリンダ19が点対称となるように構成されている。
【0034】
この際、アクチュエータ1のシリンダ18、19を含むケーシング20は、強度の問題で、ダクタイル鋳鉄を採用せざるを得ないが、鋳鉄は巣が発生しがちであり、巣を構成するピンホールが繰り返して衝撃を受けると、クラックを発生する可能性がある。このため、高圧油通路穴を構成する往動ポート22、24及び復動ポート21、23は、最短距離のストレート通路となるように形成されている。そして、ケーシング20とマニホールドブロック4は、材質を変えた別ブロックとして形成され、取付ボルトで固着されている。
【0035】
そこで、第1シリンダ18の往動ポート22と第2シリンダ19の往動ポート24に圧油が同時に供給されると、第1ラック16及び第2ラック17が図示矢印Fで示すように往動することにより出力軸14をバルブ開方向に駆動回転する。このとき、第1シリンダ18の復動ポート21第2シリンダ19の復動ポート23から吐出される圧油は、クローズ回路3に戻されて循環する。
【0036】
反対に、第1シリンダ18の復動ポート21と第2シリンダ19の復動ポート23に圧油が同時に供給されると、第1ラック16及び第2ラック17が図示矢印Rで示すように復動することにより出力軸14をバルブ閉方向に駆動回転する。このとき、第1シリンダ18の往動ポート22と第2シリンダ19の往動ポート24から吐出される圧油は、クローズ回路3に戻され循環する。
【0037】
図1に示すように、前記クローズ回路3は、前記マニホールドブロック4の内部に形成された往動経路25及び復動経路26と、該往動経路25及び復動経路26のそれぞれからマニホールドブロック4の外部に延長された第1外部経路27及び第2外部経路28と、該外部経路27、28のそれぞれからマニホールドブロック4の内部に延長された第1駆動経路29及び第2駆動経路30により構成されている。
【0038】
前記往動経路25は、アクチュエータ1における前記第1シリンダ18及び第2シリンダ19の往動ポート22、24に連絡され、前記復動経路26は、アクチュエータ1における前記第1シリンダ18及び第2シリンダ19の復動ポート21、23に連絡されている。
【0039】
前記外部経路27、28は、前記マニホールドブロック4に積層状に搭載された安全弁7と切換バルブ8とパイロットチェック弁9とバイパスプレート10の内部を連通するように形成されており、バイパスプレート10の内部で折り返された第1延長路27a及び第2延長路28aを介して第1駆動経路29及び第2駆動経路30に連絡されている。
【0040】
図5に示すように、マニホールドブロック4の内部の第1駆動経路29は、電動油圧ポンプ2の第1ポートFに連通される連通孔A1と、第1延長路27aに連通される連通孔A2を相互に連絡する。そして、マニホールドブロック4の内部の往動経路25は、第1外部経路27に連通される連通孔A3と、前記シリンダ18、19の往動ポート22、24を相互に連絡する。
【0041】
また、マニホールドブロック4の内部の第2駆動経路30は、電動油圧ポンプ2の第2ポートRに連通される連通孔B1と、第2延長路28aに連通される連通孔B2を相互に連絡する。そして、マニホールドブロック4の内部の復動経路26は、第2外部経路28に連通される連通孔B3と、前記シリンダ18、19の復動ポート21、23を相互に連絡する。
【0042】
図1に示すように、前記駆動経路29、30は、それぞれ、アンチキャビテーション弁5を介して、電動油圧ポンプ2の第1ポートF及び第2ポートRに連絡されており、該アンチキャビテーション弁5は第1ポートF及び第2ポートRの間に介装されている。図例の場合、アンチキャビテーション弁5は、電動油圧ポンプ2に取付けられ、従って、該電動油圧ポンプ2を介して間接的にマニホールドブロック4に搭載されている。
【0043】
前記加圧シリンダ6は、マニホールドブロック4に形成された加圧経路31を介して前記アクチュエータ1と電動油圧ポンプ2と安全弁7に連絡されている。
【0044】
前記手動油圧ポンプ11は、駆動レバー12により往復動され、方向制御弁11aを介して、圧油を吐出する吐出ポートfと、圧油を吸入する吸入ポートrを有しており、前記切換バルブ8を介して外部経路27、28に連絡される。
【0045】
以下、図6ないし図9に基づいて、油圧ユニットHUの作用を説明する。各図において、圧油の供給側を黒塗りの矢印で示し、戻り側を白抜きの矢印で示している。尚、手動油圧ポンプ11の切換バルブ8は、常時は、閉位置8aに位置させられており、非常時ないし緊急時に切り換えられる。
【0046】
(電動油圧ポンプの正転時におけるアクチュエータの駆動)
図6に示すように、モータMにより電動油圧ポンプ2を正転駆動すると、第1ポートFから第1駆動経路29に向けて吐出される圧油は、第1延長路27a及び第1外部経路27を経て往動経路25に供給され、アクチュエータ1における第1シリンダ18及び第2シリンダ19の往動ポート22、24に流入されることにより、出力軸13をバルブ開方向Oに駆動回転し、バルブユニットVUを開かせる。
【0047】
第1外部経路27を流れる圧油は、該第1外部経路27の一部を構成するパイロットチェック弁9の第1弁9aを通過すると共に、第2外部経路28の一部を構成するパイロットチェック弁9の第2弁9bを開放させる。
【0048】
アクチュエータ1における第1シリンダ18及び第2シリンダ19の復動ポート21、23から吐出される圧油は、第2外部経路28及び第2延長路28aを経て、第2駆動経路30から電動油圧ポンプ2の第2ポートRに戻され、クローズ回路3を循環させられる。
【0049】
(電動油圧ポンプの逆転時におけるアクチュエータの駆動)
図7に示すように、モータMにより電動油圧ポンプ2を逆転駆動すると、第2ポートRから第2駆動経路30に向けて吐出される圧油は、第2延長路28a及び第2外部経路28を経て復動経路26に供給され、アクチュエータ1における第1シリンダ18及び第2シリンダ19の復動ポート21、23に流入されることにより、出力軸13をバルブ閉方向Sに駆動回転し、バルブユニットVUを閉じさせる。
【0050】
第2外部経路28を流れる圧油は、該第2外部経路28の一部を構成するパイロットチェック弁9の第2弁9bを通過すると共に、第1外部経路27の一部を構成するパイロットチェック弁9の第1弁9aを開放させる。
【0051】
アクチュエータ1における第1シリンダ18及び第2シリンダ19の往動ポート22、24から吐出される圧油は、第1外部経路27及び第1延長路27aを経て、第1駆動経路29から電動油圧ポンプ2の第1ポートFに戻され、クローズ回路3を循環させられる。
【0052】
電動油圧ポンプ2の正転駆動と逆転駆動の何れの状態でも、アンチキャビテーション弁5が加圧シリンダ6により加圧されており、該アンチキャビテーション弁5を通過する圧油を電動油圧ポンプ2に還流するように構成しているので、電動油圧ポンプ2がキャビテーションを生じることはない。外部経路27、28に安全弁7が設けられ、加圧シリンダ6により該安全弁7を経由してブースト圧をかけているので、前記クローズ回路3のアクチュエータ1まわりのキャビテーションの発生を防止している。
【0053】
(手動油圧ポンプによるアクチュエータのバルブ開方向の駆動)
図8に示すように、切換バルブ8を往動位置8bに切り換えた状態で手動油圧ポンプ11を手動で駆動すると、該ポンプ11の吐出ポートfから圧油を第1外部経路27に向けて吐出すると共に往動経路25に供給し、アクチュエータ1における第1シリンダ18及び第2シリンダ19の往動ポート22、24に圧油を流入することにより、出力軸14をバルブ開方向Oに駆動回転し、バルブユニットVUを開かせる。
【0054】
アクチュエータ1における第1シリンダ18及び第2シリンダ19の復動ポート21、23から吐出される圧油は、第2外部経路28を経て、切換バルブ8から手動油圧ポンプ11の吸入ポートrに戻される。
【0055】
(手動油圧ポンプによるアクチュエータのバルブ閉方向の駆動)
図9に示すように、切換バルブ8を復動位置8cに切り換えた状態で手動油圧ポンプ11を手動で駆動すると、該ポンプ11の吐出ポートfから圧油を第2外部経路28に向けて吐出すると共に復動経路26に供給し、アクチュエータ1における第1シリンダ18及び第2シリンダ19の復動ポート21、23に圧油を流入することにより、出力軸14をバルブ閉方向Sに駆動回転し、バルブユニットVUを閉じさせる。
【0056】
アクチュエータ1における第1シリンダ18及び第2シリンダ19の往動ポート22、24から吐出される圧油は、第1外部経路27を経て、切換バルブ8から手動油圧ポンプ11の吸入ポートrに戻される。
【0057】
前記切換バルブ8と延長路27a、28aの間にはパイロットチェック弁9が設けられているので、手動油圧ポンプ11の使用中、手動油圧ポンプ11から吐出される圧油は、電動油圧ポンプ2に向けて流れることにより負荷を増大するようなことはなく、切換バルブ8とアクチュエータ1の間に形成されたクローズ回路3aを好適に循環させられる。
【0058】
外部経路27、28に安全弁7が設けられ、加圧シリンダ6により該安全弁7を経由してブースト圧をかけているので、前記クローズ回路3aが手動油圧ポンプ11の使用時にキャビテーションを起こす心配はない。
【符号の説明】
【0059】
VU バルブユニット
HU 油圧ユニット
1 アクチュエータ
2 電動油圧ポンプ
F 第1ポート
R 第2ポート
M 電機式モータ
3、3a クローズ回路
4 マニホールドブロック
5 アンチキャビテーション弁
6 加圧シリンダ
7 安全弁
8 切換バルブ
9 パイロットチェック弁
10 バイパスプレート
11 手動油圧ポンプ
f 吐出ポート
r 吸入ポート
14 出力軸
15 ピニオン
16 第1ラック
17 第2ラック
16a、16b 第1ピストン
17a、17b 第2ピストン
18 第1シリンダ
19 第2シリンダ
21 復動ポート
22 往動ポート
23 復動ポート
24 往動ポート
25 往動経路
26 復動経路
27、28 外部経路
29、30 駆動経路
31 加圧経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブユニット(VU)を駆動する油圧式のアクチュエータ(1)と、正逆回転式の電動油圧ポンプ(2)と、前記電動油圧ポンプを正逆回転駆動する電機式モータ(M)をマニホールドブロック(4)に搭載し、
前記マニホールドブロック(4)を介して、モータの正転時に電動油圧ポンプ(2)の第1ポート(F)から吐出する圧油をアクチュエータ(1)に送ることにより該アクチュエータをバルブ開方向に駆動した後に電動油圧ポンプ(2)の第2ポート(R)に戻し、モータの逆転時に電動油圧ポンプ(2)の第2ポート(R)から吐出する圧油をアクチュエータ(1)に送ることにより該アクチュエータをバルブ閉方向に駆動した後に電動油圧ポンプ(2)の第1ポート(F)に戻すようにしたクローズ回路(3)を形成したユニット(HU)を構成しており、
前記アクチュエータ(1)は、出力軸(14)に設けたピニオン(15)を挟んで噛合する第1ラック(16)及び第2ラック(17)と、第1ラック(16)を往復駆動する第1ピストン(16a,16b)を備えた第1シリンダ(18)と、第2ラック(17)を往復駆動する第2ピストン(17a,17b)を備えた第2シリンダ(19)を設け、第1ピストンと第2ピストンを同時に駆動させるように、第1ピストン(16a,16b)を挟んで第1シリンダ(18)の両側に往動ポート(22)と復動ポート(21)を設けると共に、第2ピストン(17a,17b)を挟んで第2シリンダ(19)の両側に往動ポート(24)と復動ポート(23)を設けており、
前記マニホールドブロック(4)は、第1シリンダ及び第2シリンダの往動ポート(22)(24)を電動油圧ポンプ(2)の第1ポート(F)に連絡させる往動経路(25)と、第1シリンダ及び第2シリンダの復動ポート(21)(23)を電動油圧ポンプ(2)の第2ポート(R)に連絡させる復動経路(26)を形成して成ることを特徴とする艦船用バルブ駆動ユニット。
【請求項2】
レバー駆動型の手動油圧ポンプ(11)と、該手動油圧ポンプの吐出経路と流入経路を手動で切り換え自在とする切換バルブ(8)と、パイロットチェック弁(9)を前記マニホールドブロック(4)に搭載しており、
前記クローズ回路(3)は、前記マニホールドブロック(4)の内部に形成された往動経路(25)及び復動経路(26)と、該往動経路及び復動経路のそれぞれからマニホールドブロックの外部に延長された外部経路(27)(28)と、該外部経路のそれぞれからマニホールドブロックの内部に延長された駆動経路(29)(30)により構成され、前記駆動経路(29)(30)のそれぞれを電動油圧ポンプ(2)の第1ポート(F)及び第2ポート(R)に連絡しており、
前記外部経路(27)(28)に前記手動油圧ポンプの切換バルブ(8)を介装し、前記切換バルブ(8)と駆動経路(29)(30)の間に位置して前記外部経路(27)(28)に前記パイロットチェック弁(9)を介装して成ることを特徴とする請求項1に記載の艦船用バルブ駆動ユニット。
【請求項3】
加圧シリンダ(6)と安全弁(7)を前記マニホールドブロック(4)に搭載しており、
前記安全弁(7)は、前記外部経路(27)(28)に介装され、前記加圧シリンダ(6)は、マニホールドブロック(4)に形成した加圧経路(31)を介して前記アクチュエータ(1)と前記電動油圧ポンプ(2)と前記安全弁(7)に連絡されて成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の艦船用バルブ駆動ユニット。
【請求項4】
前記電動油圧ポンプ(2)の第1ポート(F)及び第2ポート(R)の間に介装されたアンチキャビテーション弁(5)を前記マニホールドブロック(4)に搭載し、該アンチキャビテーション弁(5)を通過する圧油を電動油圧ポンプ(2)に還流させるように構成して成ることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の艦船用バルブ駆動ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−52761(P2011−52761A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202493(P2009−202493)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(508278882)株式会社シー・オー・シー (3)
【Fターム(参考)】