説明

荷役用クレーンの走行位置制御装置

【課題】荷役用クレーンの走行位置をコンテナに的確且つ速やかに一致させると共に、手間やコスト増を抑制するる。
【解決手段】走行レール上を走行し、その走行方向に隙間を空けて並べられた複数コンテナ3のうち対象コンテナの中心位置に、走行位置を合わせてコンテナを荷役する荷役用クレーンの走行位置制御装置において、走行方向について荷役用クレーンと同期して移動し、走査角度範囲内16に複数コンテナ3が含まれるように取り付けられ、走査角度ごとにコンテナ表面までの距離を計測する走査型の距離計10を備える。計測された距離とその走査角度18とを関連付けた測定データを記憶する。記憶された複数の測定データに基づいて対象コンテナの中心位置と荷役用クレーンの位置との走行方向に関する相対距離を算出する。相対距離を零に近づけるように荷役用クレーンを走行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンテナターミナル等で使用されるコンテナクレーン等の荷役用クレーンの走行位置を調整する制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
港湾のコンテナターミナル内等において、岸壁に沿った走行レール上を走行するコンテナクレーンが知られている。コンテナクレーンは、コンテナ船等の船舶との間でコンテナ等の荷役作業を行うために用いられる。荷役作業を行う場合には、コンテナクレーンの走行位置を的確且つ速やかに船舶に積載されたコンテナ列に一致させる必要がある。従来は、コンテナクレーンの操縦者が、トロリを船舶の側まで移動させ、目視にてコンテナを把持するためのスプレッダの位置がコンテナ列に合うように、コンテナクレーンの走行位置を調整していた。このように、手動でコンテナクレーンの走行位置を微調整する必要があるため、時間と手間がかかるという課題があった。
【0003】
このような課題に対して、特許文献1には、GPSを用いた走行位置決め装置が開示されている。特許文献1の走行位置制御装置では、船舶側とクレーンとの双方にGPS検出器が設置される。双方の位置データから距離が算出され、船舶側と荷役装置との相対距離が演算される。この相対距離に基づいてクレーンの走行位置が決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−244209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された走行位置決め装置では、コンテナの位置をGPS検出器で把握するために、船舶に積載されたコンテナ列ごとにGPS検出器を取り付ける必要がある。或いは、GPS検出器の取り付け位置にコンテナを移動させる必要がある。GPS検出器を船舶側に取り付けるためには手間がかかり、またコンテナ列ごとにGPS検出器を設ければコスト増に繋がるという課題があった。
【0006】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、荷役用クレーンの走行位置をコンテナに的確且つ速やかに一致させると共に、手間やコスト増を抑制することのできる荷役用クレーンの走行位置制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記の目的を達成するため、走行レール上を走行し、その走行方向に隙間を空けて並べられた複数コンテナのうち対象とする1のコンテナ(以下、対象コンテナという)の中心位置に、走行位置を合わせてコンテナを荷役する荷役用クレーンの走行位置制御装置において、前記走行方向について前記荷役用クレーンと同期して移動し、走査角度範囲内に前記複数コンテナが含まれるように取り付けられ、走査角度ごとにコンテナ表面までの距離を計測する走査型の距離計を備える。また、前記距離計により計測された距離とその走査角度とを関連付けた測定データを記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された複数の測定データに基づいて、前記対象コンテナの中心位置と前記荷役用クレーンの位置との前記走行方向に関する相対距離を算出する計算部と、前記相対距離を零に近づけるように、前記荷役用クレーンを走行させる制御部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、荷役用クレーンの走行位置をコンテナに的確且つ速やかに一致させて荷役効率を高めると共に、手間やコスト増を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態において、港湾に形成されたコンテナターミナルの一部を示す平面図である。
【図2】クレーン6の走行位置をコンテナ列に合わせる制御装置の構成を説明するためのブロック図である。
【図3】走行方向に関してクレーン6とコンテナ列との相対距離を算出する処理について説明するための図である。
【図4】コンテナ列選択部14に設けられた運転手が操作する選択スイッチについて説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を実施するための形態について添付の図面に従って説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0011】
実施の形態.
[基本構成]
図1は、港湾に形成されたコンテナターミナルの一部を示す平面図である。図1において、1は岸壁、2は岸壁1に接岸し停泊している船の船体、3は船体2に積載されたコンテナ、4はエプロン(荷役エリア)、5はエプロン4に岸壁1に沿って船体2と略平行に敷設された走行レール、6は船体2と陸との間でコンテナ3等の荷物を積み降ろすクレーン(コンテナクレーン、ガントリークレーン等)である。
【0012】
ここで、クレーン6は、走行レール5上を走行するクレーン本体7を備えている。また、クレーン6は、平面視において走行レール5と直交するように、クレーン本体7の所定の高さに水平に設けられ、その一端が船体2の上方にまで突設されたブーム8を備えている。ブーム8には、ブーム8に沿って走行するトロリ9(運転室を有する)が設けられている。トロリ9には、トロリ9からワイヤロープによって吊り下げられ、コンテナ3の上部四隅を所定の方向から掴んで支持するスプレッダ(図示省略)が設けられている。なお、このスプレッダは、ワイヤロープが巻き掛けられた巻上装置(図示省略)によって上下方向に移動(巻上げ、巻下げ)され、所定角度内における長手方向の傾き、短手方向の傾き、水平方向の回転が制御可能に構成されている。
【0013】
このような構成において、クレーン本体7は、船体2と略平行に敷設された走行レール5上を走行方向に移動することができる。また、トロリ9は、平面視において走行レール5に直交するブーム8に沿った横行方向に移動することができる。運転手は船体2に積載されたコンテナ3を荷役する際、トロリ9を船体2側へ移動させる。運転手は、荷役すべきコンテナタイプ(コンテナ幅)を選択スイッチで選択し、コンテナ3を掴むスプレッダの幅を変更する。コンテナ幅は規格で定められており、20フィートと40フィートとの2種類がある。
【0014】
コンテナ3は、船体2上に横行方向に複数並べて配置され、コンテナ列を構成している。さらに、コンテナ列は、走行方向に列間に隙間を空けて複数並べて配置されている。図1には、第1列から第5列までの5つのコンテナ列が表されている。
【0015】
[特徴的構成]
次に図2〜図4を用いてクレーン6の走行方向の位置をコンテナ列に合わせる特徴的制御について説明する。なお、クレーン6は、クレーン6の走行方向への移動、トロリ9の横行方向への移動、スプレッダの巻上げ巻き下げ、その他クレーン6本来の機能を実現するための装置を当然に具備している。
【0016】
図2は、クレーン6の走行方向の位置をコンテナ列に合わせる制御装置の構成を説明するためのブロック図である。図2では、本制御装置の各部がブロックで表され、ブロック間の主な信号の伝達が矢印で表されている。図2に示す本制御装置は、レーザ式距離計10、データ記憶部11、コンテナ幅選択部12、計算部13、コンテナ列選択部14、制御部15を備えている。なお、図示省略するが、本制御装置は、各部に指令を与える中央処理部、電力供給部などを当然に具備する。
【0017】
レーザ式距離計10は、レーザを照射してその反射時間により対象物までの距離を測定する非接触型の距離計である。また、レーザ式距離計10は、所定の角度範囲内でレーザを走査させることにより、連続して距離を測定することのできる走査型の距離計でもある。データ記憶部11は、レーザ式距離計10により測定された測定データを記憶する記憶装置である。コンテナ幅選択部12は、運転手が選択するコンテナタイプ(コンテナ幅)の選択スイッチである。計算部13は、データ記憶部11の測定データとコンテナ幅選択部12のデータとに基づいて、走行方向に関してクレーン6とコンテナ列との相対距離を算出する演算装置である。コンテナ列選択部14は、運転手が選択するコンテナ列の選択スイッチである。制御部15は、計算部13とコンテナ列選択部14とからのデータに基づいて、クレーン6を走行方向へ移動させる信号を駆動部(図示省略)に出力する出力装置である。
【0018】
上述のレーザ式距離計10は、クレーン6の走行方向への移動と同期するように、クレーン本体7又はトロリ9に取り付けられている。また、レーザ式距離計10は、その走査可能な角度範囲内に少なくとも上記コンテナ列が2列以上含まれる位置(走行方向に隙間を空けて並べられたコンテナ3が2つ以上含まれる位置)に、コンテナ3に向けて取り付けられている。以下、この角度範囲をコンテナ照射範囲16という。
【0019】
上述した本制御装置の構成において、レーザ式距離計10は、中央処理部からの指令を受けてコンテナ3表面までの距離を測定する。レーザ式距離計10からコンテナ3表面までの距離は、コンテナ照射範囲16においてレーザ走査角度ごとに測定される。測定された距離はそのレーザ走査角度と関連付けられ、測定データとしてデータ記憶部11に記憶される。
【0020】
コンテナ照射範囲16における測定が終了した後、計算部13は、中央処理部からの指令を受けて、走行方向に関してクレーン6とコンテナ列との相対距離を算出する。図3は、走行方向に関してクレーン6とコンテナ列との相対距離を算出する処理について説明するための図である。図3では、レーザ式距離計10の位置を基準点として、走行方向をx座標、横行方向をy座標とする。
【0021】
計算部13は、コンテナ幅選択部12からコンテナタイプ(コンテナ幅)データを、データ記憶部11からコンテナ照射範囲16における各測定データを取得する。各測定データには、レーザ式距離計10からコンテナ3表面までの距離と、そのレーザ走査角度とが関連付けられており、これらからコンテナ3表面の座標が算出される。岸壁1と向かい合うコンテナ3の前面でレーザが反射されている間は、測定データから算出されるy座標の値は同じである。一方、レーザがコンテナ列の隙間に照射された場合には、コンテナ3の側面でレーザが反射されるため、そのy座標の値は、コンテナ3の前面で反射された場合に比して大きくなる。
【0022】
例えば、図3に示すようにコンテナ列が並べられている場合、レーザ走査角度17で照射されたレーザは、コンテナ列の隙間に照射され、座標19においてコンテナ3の側面に到達する。座標19のy座標の値は、レーザ走査角度17前後でレーザがコンテナ3の前面に到達する座標のy座標の値に比して大きくなる。そのため、各測定データにおけるy座標の値の変化から、コンテナ列間の区切りを検出することができる。図3に示す例では、レーザ走査角度17、18の前後でコンテナ列間の区切りを検出することができる。
【0023】
また、コンテナタイプのデータからコンテナ幅・奥行きが把握されるため、検出されたy座標の値から、コンテナ列間の隙間か、岸壁1側のコンテナ列前段が無いのか、またコンテナ列が1列無いのかを識別することができる。
【0024】
続いて、検出されたコンテナ3の両側の座標から、コンテナ3の中心座標が算出される。さらに、コンテナ3の中心座標とレーザ式距離計10との相対座標が算出される。この相対座標のx座標の値を零にするようにクレーン6を走行させることにより、コンテナ3を荷役する位置にクレーン6の位置を合わせることができる。
【0025】
ところで、本制御装置では、コンテナ照射範囲16で検出される複数のコンテナ3のうち、いずれかのコンテナ3を選択してクレーン6の位置を合わせることができる。図4に示すように、コンテナ列選択部14は運転手が操作するための選択スイッチを備えている。この選択スイッチは、クレーン6に一番近いコンテナ列を選択するための中央列スイッチ21、その左列のコンテナ列を選択するための左列スイッチ22、及び右列のコンテナ列を選択するための右列スイッチ23からなる。なお、左列及び右列についてのコンテナ3の中心座標とクレーン6との相対座標は、上述した中央列のコンテナ3と同様な手法で算出することができる。計算部13は、左列、中央列、右列について上述の相対座標を計算した後、各相対座標のx座標の値を零にするための各移動量を制御部15に出力する。
【0026】
制御部15は、計算部13から入力された各移動量のうち、コンテナ列選択部14からの入力に応じた移動量を選択する。制御部15は、選択された移動量に応じてクレーン6を走行方向へ移動させる信号を駆動部に出力し、クレーン6を走行方向に走行させる。その結果、選択されたコンテナ3を荷役する位置にクレーン6の位置を合わせることができる。
【0027】
以上説明した本実施形態によれば、走行方向に関して、クレーン6の走行位置をコンテナ3の中心位置に的確且つ速やかに一致させると共に、手間やコスト増を抑制することができる。
【0028】
ところで、上述した実施の形態においては、コンテナ幅を20フィート又は40フィートの2種類としているが、本発明はこれに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0029】
1 岸壁、 2 船体、 3 コンテナ、
4 エプロン、 5 走行レール、 6 クレーン、
7 クレーン本体、 8 ブーム、 9 トロリ、
10 レーザ式距離計、 11 データ記憶部、 12 コンテナ幅選択部、
13 計算部、 14 コンテナ列選択部、 15 制御部、
16 コンテナ照射範囲、17,18 レーザ走査角度、21 中央列スイッチ、
22 左列スイッチ、 23 右列スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行レール上を走行し、その走行方向に隙間を空けて並べられた複数コンテナのうち対象とする1のコンテナ(以下、対象コンテナという)の中心位置に、走行位置を合わせてコンテナを荷役する荷役用クレーンの走行位置制御装置において、
前記走行方向について前記荷役用クレーンと同期して移動し、走査角度範囲内に前記複数コンテナが含まれるように取り付けられ、走査角度ごとにコンテナ表面までの距離を計測する走査型の距離計と、
前記距離計により計測された距離とその走査角度とを関連付けた測定データを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された複数の測定データに基づいて、前記対象コンテナの中心位置と前記荷役用クレーンの位置との前記走行方向に関する相対距離を算出する計算部と、
前記相対距離を零に近づけるように、前記荷役用クレーンを走行させる制御部と、
を備えることを特徴とする荷役用クレーンの走行位置制御装置。
【請求項2】
前記計算部は、
前記記憶部に記憶された複数の測定データから前記対象コンテナの両側の隙間位置を算出する隙間位置算出手段と、
前記対象コンテナの両側の隙間位置から前記対象コンテナの中心位置を算出するコンテナ中心位置算出手段と、
前記走行方向に関して、前記対象コンテナの中心位置と前記荷役用クレーンの位置との相対距離を算出する相対距離算出手段と、
を備えることを特徴とする請求項1記載の荷役用クレーンの走行位置制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−96884(P2012−96884A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245502(P2010−245502)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(501137636)東芝三菱電機産業システム株式会社 (904)
【Fターム(参考)】