説明

菌類及び細菌を処理、抑制、殺滅する方法

本発明は、基層上の菌類、皮膚糸状菌、酵母及び細菌を制限するために、新規な組成物で基層を処理する方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基層上の菌類及び細菌を処理/予防する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
序論
菌類は、人間及び動物(コンパニオンアニマル及び愛玩動物を含む)の表皮の広範囲の疾患の原因である。
本発明は、少なくとも1つの抗-菌類化合物で基層を処理することによって、ヒト及び動物(コンパニオンアニマルおよび愛玩動物を含む)において、菌類による疾患の予防及び低減を目的とする方法及び組成物を含む。そのような処理は基層の汚染除去をもたらす。
【発明の開示】
【0003】
発明の概要
本発明は、以下の工程を含む、直接又は間接的に表皮と接触する基層を処理する方法を含む:a)第一の抗-菌類又は抗細菌化合物で基層を処理する工程、及び/又はb)第二の抗-菌類又は抗細菌化合物で基層を処理する工程、及び/又は第三の抗-菌類又は抗細菌化合物で基層を処理する工程。
本明細書で提供されるものは、抗細菌、抗-菌類及び殺胞子特性を含む、新規に発見された化合物の特性である。さらにまた新規なものは、一般的な菌類、皮膚糸状菌、胞子及び細菌に対する基層の処理及び前処理で予想外の結果をもたらす化合物の組合せである。本発明者らは、天然に存在する殺菌類剤と既知の殺菌類剤との併用が予想外の良好な結果をもたらすことを初めて示し、さらに、天然に存在する化合物(殺菌類化合物を含む)の使用は細菌に対するそれらの有用性を拡大することもまた示した。
さらにまた、本明細書で提供されるものは、抗-菌類及び抗細菌特性の両特性を示す化合物である。そのような化合物(又は混合物)は、基層(靴を含むが、ただし前記に限定されない)に対し菌類の消毒及び消臭特性をもたらす処理又は前処理を提供するので特に有用である。
本方法のさらに別の特徴では、抗-菌類化合物は、ただ1回の適用で(例えば混合物として)又は別々の適用で用いられ、前記別々の適用は、連続的に、同時に、及び前記の混合として実施される。混合物は、相乗的に作用しえる種々の活性を有するいくつかの化合物を含むことができるので特に有用である。混合物は、“同時に”適用される。すなわち混合物中の全ての化合物が一時に適用される。
さらに別の特徴では、本発明は、或るデリバリー方法を介して基層を抗-菌類化合物で処理する方法を含む。
本発明者らはまた、ある種の抗-菌類化合物は抗-菌類活性および抗細菌活性を有することを発見した。単独での又は他の抗-菌類化合物と併用されるこれらの化合物の使用は、基層上での細菌及び菌類の増殖の抑制をもたらすであろう。
別の特徴では、本発明は、抗-菌類特性を有する化合物のLD50(致死用量50)を、前記抗-菌類化合物を第二の化合物と併用することによって減少させる方法を含む。前記第二の化合物は、天然に存在する抗-菌類化合物でも、合成、半合成、プロドラッグ、塩などでもよい。
本発明のこれら並びに他の特質、特徴及び利点は、以下の詳細な説明、実施例及び添付の特許請求の範囲を参照してより深く理解されよう。
【0004】
詳細な説明
略語及び定義
植物性薬品:植物性薬品は、植物から単離された化合物を意味する。植物性抗-菌類化合物は、例えばオシマム・バシリクム(Ocimum basilicum)(バジル)、シンナモマム・アロマチクムvar. カッシア(Cinnamomum aromaticum var. Cassia)(シナモン)、シドルス・リバニ(Cedrus libani)(レバノンシーダー(Cedar of Lebanon))、任意のシドルス(Cedrus)spp.、カメメルム・ノビレ(Chamaemelum nobile)(カミツレ)、シムボポゴン・ナルヅス(Cymbopogon nardus)(シトロネラ)、シジギウム・アエロマチクム(Syzygium aromaticum)(クローブ及びクローブの芽)、クニヌム・シミヌム(Cuminum cyminum)(クミン)、フェニクルム・ヴルガレ(Foeniculum vulgare)(フェンネル)、メラレウカ・アルテルンフォリア(Melaleuca alternfolia)(ティーツリー(Tea Tree))、メンタ x ピペリタ(Mentha x piperita)(ペパーミント)、メンタ・スピカタ(Mentha spicata)(スペアミント)、クルクマ・ロンガ(Curcuma longa)(ターメリック(Tumeric)、シムボポゴン・シトラテス(Cymbopogon citrates)(レモングラス)、サンタルム・アルブム(Santalum album)(ビャクダン)から単離されるともに、抗-菌類特性を有する植物から単離された他の化合物からも単離することができる。
天然の抗-菌類化合物:天然の抗-菌類化合物(又は天然に存在する抗-菌類化合物)は、植物性供給源(植物性抗-菌類化合物を参照されたい)又は他の天然に存在する供給源(例えば唾液、両生類動物の皮膚、無脊椎動物(例えば線虫))から単離された化合物である。これらの化合物は、動物又は植物によって産生されるタンパク質又は他の生成物でありえる。
【0005】
菌類:菌類界の多数の真核生物のいずれかであり、葉緑素及び脈管組織を欠き、形態は単細胞(例えば酵母)から多数の分枝した糸状の菌糸体まで存在し、後者はしばしば特殊化した結実体及び仮性菌糸を生じる。菌類界には酵母、糸状粘菌、皮膚糸状菌、クロボ菌類及びきのこが含まれるが、ただしこれらに限定されない。
抗-菌類化合物は、菌類の増殖を抑制するか、及び/又は菌類の細胞/胞子を殺滅する能力を有する任意の化学物質又は物質と定義される。本出願を通して用いられる化合物には前記化合物の塩及びプロドラッグが含まれる。
−抗-菌類化合物の定義に含まれるものは、菌類細胞(栄養及び胞子構造)に対して静止(例えば抑制)活性(制-菌類化合物)及び/又は根絶(例えば殺滅)活性(殺-菌類化合物)を有する物質である。
−さらにまた抗-菌類化合物の定義に含まれるものは、定義した抗-菌類活性を有する合成、半合成又は天然起源の任意の物質である。
−さらにまた抗-菌類化合物の定義に含まれるものは、菌類胞子の増殖を破壊/殺滅/抑制することができる任意の物質、例えば胞子静止(抑制)又は胞子根絶(殺滅)活性を有する任意の物質である。下記の殺胞子化合物の定義を参照されたい。
−本明細書を通して、抗-菌類化合物という用語は、抗-菌類活性(抑制、殺滅、静止、根絶、胞子静止又は胞子根絶活性を含む)を有する任意の物質(合成、半合成、塩、プロドラッグ、天然物質など)を指す全てを包含する用語であろう。これらの化合物は適宜、例えば他の抗-菌類化合物、洗剤、及び/又は不活性成分と混合されて処方物を生成することができる。
【0006】
胞子:胞子は休眠中の保護状態にある菌類である。前記は、乾燥及び熱に対して高度に耐性を有する、小さな通常は単細胞の生殖体を有し、新しい生物に成長することができ、特にある種の細菌、菌類、藻類、及び隠花植物によって形成される。
殺胞子化合物:菌類胞子の増殖を抑制するか、前記の感受性を高めるか、及び/又は前記を破壊する物質である。これらは合成でも天然に存在するものでもよい。胞子を活性化させることによって、活発に生長している菌類のみを殺滅又は不活性化させる殺-菌類剤がそのような活性化胞子を殺滅することを可能にする。前記は、例えば混合物として用いることができ、前記混合物では、生長を活性化させる化学物質が殺-菌類化学物質と混合される。少なくとも活性化化合物だけを用い、続いて少なくとも1つの殺-菌類剤を連続的に用いることもまた可能である。胞子の活性化は当分野で公知の方法であり、細菌の芽胞については例えば米国特許6,656,919号に記載されている(前記文献は参照により本明細書に含まれる)。
殺細菌化合物:細菌又は細菌の芽胞の増殖を抑制するか、これらの感受性を高めるか、及び/又は前記を破壊する物質である。これらは合成でも天然に存在するものでもよい。芽胞を活性化させることによって、活発に増殖している細菌のみを殺滅又は不活性化させる殺細菌剤がそのような活性化された芽胞を殺滅することを可能にする。前記は、例えば混合物として用いることができ、前記混合物では、増殖を活性化させる化学物質が殺-菌類化学物質と混合される。少なくとも活性化化合物だけを用い、続いて少なくとも1つの殺-菌類剤を連続的に用いることもまた可能である。芽胞の活性化は当分野で公知の方法であり、細菌の芽胞については例えば米国特許6,656,919号に記載されている(前記文献は参照により本明細書に含まれる)。
【0007】
表皮:真皮を覆う、脊椎動物の皮膚の無血管外側保護層であり、皮膚の主要な防御壁機能として作用し、皮膚の角化層の形成を専ら担う。表皮由来構造には毛髪(及び柔毛)、鉤爪、爪及び蹄が含まれる。
処理:基層を処理するとは、基層を物質と接触させることを意味する。これには以下で考察するデリバリー方法が含まれえる(ただし前記に限定されない)。液体又は散剤は、例えば少なくとも1つの殺-菌類剤を含むことができる。前記処理は、表面の消毒をもたらすことができるが、前記表面を完全に消毒する必要はない。前処理は、末端ユーザー(例えば製品又は材料の消費者又は生産者)が使用する前に基層(又は基層を製造するために使用される材料)を処理することを意味する。
最少阻害濃度(MIC):最少阻害濃度(MIC)は、例えば以下の文献(Clin Infect Dis 1997 Feb, 24(2):235-47)に記載されている。抗-菌類活性のための検査は、MIC(最少阻害濃度)アッセイ及びMFC(最少殺-菌類濃度)アッセイである。これらのアッセイは、菌類を抑制(MIC)又は殺滅(MFC)するために必要な薬剤の最少量を決定するために用いられる。
抗-菌類化合物:抗-菌類化合物の例は、以下の化合物クラス、又は下記化学物質又は天然に存在する化合物から選択することができる:脂肪族窒素化合物、アミド化合物、アシルアミノ酸化合物、アリルアミン化合物、アニリド化合物、ベンゾアニリド化合物、ベンジルアミン化合物、フラニリド化合物、スルホンアニリド化合物、ベンゾアミド化合物、フラミド化合物、フェニルスルファミド化合物、スルホンアミド化合物、バリナミド化合物、抗生物質化合物、ストロビルリン化合物、芳香族化合物、ベンゾイミダゾール化合物、ベンゾイミダゾール前駆体化合物、ベンゾチアゾール化合物、架橋ジフェニル化合物、カルバメート化合物、ベンゾイミダゾリルカルバメート化合物、カルバニレート化合物、コナゾール化合物、コナゾール化合物(イミダゾール)、コナゾール化合物(トリアゾール)、銅化合物、ジカルボキシミド化合物、ジクロロフェニルジカルボキシミド化合物、フタルイミド化合物、ジニトロフェノール化合物、ジチオカルバメート化合物、環式ジチオカルバメート化合物、ジチオカルバメートポリマー化合物、イミダゾール化合物、無機化合物、水銀化合物、無機水銀化合物、有機水銀化合物、モルフォリン化合物、有機リン化合物、有機スズ化合物、オキサチイン化合物、オキサゾール化合物、ポリエン化合物、ポリスルフィド化合物、ピラゾール化合物、ピリジン化合物、ピリミジン化合物、ピロール化合物、キノリン化合物、キノン化合物、キノキサリン化合物、チオカルバメート化合物、チアゾール化合物、チオフェン化合物、トリアジン化合物、トリアゾール化合物、及び尿素化合物。
【0008】
抗-菌類化合物には以下の具体的な化合物が含まれる:アモロルフィン(ジメチルモルフォリン)、ビフォナゾール、ブテナフィン、ブトコナゾール、クリオキノール、シクロピロクス、オラミン、クロトリマゾール、エコナゾール、フルコナゾール、グリセオフルヴィン、ハロプロゲン、ヨードクロルヒドロキシキン、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、ナフチフィン、オキシコナゾール、ポヴィドン-ヨウ素セルタコナゾール、スルコナゾール、テルビナフィン、テルコナゾール、チオコナゾール、トルナフェート、ウンデシレン酸及びその塩(カルシウム、銅及び亜鉛)、ヴォリコナゾール、プロピオン酸のナトリウム又は亜鉛塩、ブチルアミン、シモキサニル、ドジシン、ドジン、グアザチン、イミンオクタジン、カルプロパミド、クロラニフォルメタン、シフルフェナミド、ジクロシメト、エタボキサム、フェノキサニル、フルメトヴァー、フラメトピル、マンジプロパミド、ペンチオピラド、プロクロラズ、キナザミド、シルチオファム、トリフォリン、ベナラキシル、ベナラキシル-M、フララキシル、メタラキシル、メタラキシル-M、ペフラゾエート、ベナラキシル、ベナラキシル-M、ボスカリド、カルボキシン、フェンヘキサミド、メタラキシル、メタラキシル-M、メトスルフォヴァクス、オフレース、オキサジキシル、オキシカルボキシン、ピラカルボリド、チフルザミド、チアジニル、ベノダニル、フルトラニル、メベニル、メプロニル、サリチルアニリド、テクロフタラム、フェンフラム、フララキシル、フルカルバニル、メトフロキサム、フルスルファミド、ベンゾヒドロキサム酸、フルオピコリド、チオキシミド、トリクラミド、ザリルアミド、ゾキサミド、シクラフラミド、フルメシクロクス、ジクロフルアニド、トリルフルアニド、アミスルブロム、シアゾファミド、ベンチアヴァリカルブ、イプロヴァリカルブ、アウレオファンギン、ブラスチシジン-S、シクロヘキシミド、グリセオフルヴィン、カスガマイシン、ナタマイシン、ポリオキシン、ポリオキソリム、ストレプトマイシン、ヴァリダマイシン、アゾキシストロビン、ジモキシストロビン、フルオキサストロビン、クレソキシム-メチル、メトミノストロビン、オリサストロビン、ピコキシストロビン、ピラクロストロビン、トリフロキシストロビン、ビフェニル、クロロジニトロナフタレン、クロロネブ、クロロタロニル、クレゾール、ジクロラン、ヒキサクロロベンゼン、ペンタクロロフェノール、キントゼン、ペンタクロロフェノキシドナトリウム、テクナゼン、ベノミル、カルベンダジム、クロルフェナゾール、シペンダゾール、デバカルブ、フベリダゾール、メカルビンジド、ラベンザゾール、チアベンダゾール、フロファネート、チオファネート、チオファネート-メチル、ベンタルロン、クロベンチアゾン、TCMTB、ビチオノール、ジクロロフェン、ジフェニルアミン、ベンチアヴァリカルブ、フロファネート、イプロヴァリカルブ、プロパモカルブ、チオファネート、チオファネート-メチル、ベノミル、カルベンダジム、シペンダゾール、デバカルブ、メカルビンジド、ジエトフェンカルブ、クリムバゾール、イマザリル、オキシポコナゾール、プロクロラズ、トリフルミゾール、イミダゾール化合物、アザコナゾール、ブロムコナゾール、シプロコナゾール、ジクロブトラゾール、ジフェノコナゾール、ジニコナゾール、ジニコナゾール-M、エポキシコナゾール、エタコナゾール、フェンブコナゾール、フルキノコナゾール、フルシラゾール、フルトリアフォール、フルコナゾール、フルコナゾール-シス、ヘキサコナゾール、イミベンコナゾール、イプコナゾール、メトコナゾール、ミクロブタニル、ペンコナゾール、プロピコナゾール、プロチオコナゾール、キノコナゾール、シメコナゾール、テブコナゾール、テトラコナゾール、トリアジメフォン、トリアジメノール、トリチコナゾール、ユニコナゾール、ユニコナゾール-P、トリアゾール化合物、ボルドー混合物、バーガンディー混合物、チェシャント混合物、酢酸銅、炭酸銅、ベーシック(basic)、水酸化銅、ナフテン酸銅、オレイン酸銅、オキシ塩化銅、硫酸銅、ベーシック、クロム酸銅亜鉛、クフラネブ、クプロバム、酸化第一銅、マンコッパー(mancopper)、オキシンコッパー(oxine copper)、ファモキサドン、フルオロイミド、クロゾリネート、ジクロゾリン、イプロジオン、イソヴァレジオン、ミクロゾリン、プロシミドン、ヴィンクロゾリン、キャプタフォール、キャプタン、ジタリムフォス、フォルペット、チオクロルフェンフィム、ビナパクリル、ジノブトン、ジノキャップ、ジノキャップ-4、ジノキャップ-6、ジノクトン、ジノペントン、ジノスルフォン、ジノテルボン、DNOC、アジチラム、カルバモルフ、クフラネブ、クプロバム、ジスルフィラム、フェルバム、メタム、ナバム、テコラム、チラム、ジラム、ダゾメト、エテム、ミルネブ、マンコッパー、マンコゼブ、マネブ、メチラム、ポリカルバメート、プロピネブ、ジネブ、シアゾファミド、フェナミドン、フェナパニル、グリオジン、イプロジオン、イソヴァレジオン、ペフラゾエート、トリアゾキシド、コナゾール化合物(イミダゾール)、アジ化カリウム、チオシアン酸カリウム、アジ化ナトリウム、硫黄、銅化合物、無機水銀化合物、塩化第二水銀、酸化第二水銀、塩化第一水銀、臭化(3-エトキシプロピル)水銀、酢酸エチル水銀、臭化エチル水銀、塩化エチル水銀、エチル水銀2,3-ジヒドロキシプロピルメルカプチド、エチル水銀ホスフェート、N-(エチル水銀)-p-トルエンスルホンアニリド、ヒドラルガフェン、2-メトキシエチル水銀クロリド、メチル水銀ベンゾエート、メチル水銀ジシアンジアミド、メチル水銀ペンタクロロフェノキシド、8-フェニル水銀オキシキノリン、フェニル水銀ウレア、酢酸フェニル水銀、塩化フェニル水銀、ピロカテコールのフェニル水銀誘導体、硝酸フェニル水銀、サリチル酸フェニル水銀、チオメルサール、酢酸トリル水銀、アルジモルフ、ベンザモルフ、カルバモルフ、ジメトモルフ、ドデモルフ、フェンプロピモルフ、フルモルフ、トリデモルフ、アムプロピルフォス、ジタリムフォス、エジフェンフォス、フォセチル、ヘキシルチオフォス、イプロベンフォス、フォスジフェン、ピラゾフォス、トルクロフォス-メチル、トリアミフォス、デカフェンチン、フェンチン、トリブチルチンオキシド、カルボキシン、オキシカルボキシン、クロゾリネート、ジクロゾリン、ドラゾキソロン、ファモキサドン、ハイメキサゾール、メタゾキソロン、ミクロゾリン、オキサジキシル、ヴィンクロゾリン、バリウムポリスルフィド、カルシウムポリスルフィド、カリウムポリスルフィド、ナトリウムポリスルフィド、フラメトピル、ペンチオピラド、ボスカリド、ブチオベート、ジピリチオン、フルアジナム、フルオピコリド、ピリジニトリル、ピリフェノクス、ピロキシクロル、ピロキシフル、ブピリメート、シプロジニル、ジフルメトリム、ジメチリモル、エチリモル、フェナリモル、フェリムゾン、メパニピリム、ヌアリモル、ピリメタニル、トリアリモル、フェンピクロニル、フルジオキソニル、フルオロイミド、エトキシキン、ハラクリネート、8-ヒドロキシキノリンスルフェート、キナセトール、キノキシフェン、ベンキノクス、クロラニル、ジクロン、ジチアノン、キノメチオナート、クロルキノクス、チオキノクス、エタボキサム、エトリジアゾール、メツルフォヴァクス、オクチリノン、チアベンダゾール、チアジフルオル、チフルザミド、メタスルホカルブ、プロチオカルブ、エタボキサム、シルチオファム、アニラジン、アミスルブロム、ビテルタノール、フルオトリマゾール、トリアズブチル、コナゾール化合物(トリアゾール)、ベンタルロン、ペンシクロン、キナザミド、アシベンゾラル、アシペタクス、アリルアルコール、塩化ベンザルコニウム、ベンザマクリル、ベトキサジン、カルヴォーン、クロロピクリン、DBCP、デヒドロ酢酸、ジクロメジン、ジエチルピロカルボネート、フェナミノスルフ、フェニトロパン、フェンプロピジン、ホルムアルデヒド、フルフラル、ヘキサクロロブタジエン、ヨードメタン、イソプロチオラン、臭化メチル、メチルイソチオシアネート、メトラフェノン、ニトロスチレン、ニトロサール-イソプロピル、OCH、2-フェニルフェノール、フタリド、ピペラリン、プロベナゾール、プロキナジド、ピロキロン、ナトリウムオルトフェニルフェノキシド、スピロキサミン、スルトロペン、チシオフェン、トリシクラゾール、ヨードフォア、銀、ナイスタチン、アンホテリシンB、グリセオフルヴィン、及び、ナフテン酸亜鉛。
【0009】
基層:本発明は基層の処理を提供する。基層には感染媒介物(fomites)が含まれ、以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):
−足用アパレル(履き物)(靴(スニーカー、ランニングシューズなど、ブーツ、サンダル、モカシン、スリッパなど含むが、ただし前記に限定されない)、靴の中に挿入されるもの(中敷、矯正器具、内張りなどを含む)又は他の“足を覆うもの”(ソックス、ストッキングなどを含む)が含まれるが、ただしこれらに限定されない)。種々のタイプの材料(革、他の獣皮、木材及び木材由来物質、織物、又は他の材料(天然、合成又は半合成)を含む)から製造され、菌類の汚染を受ける全ての靴が含まれる。
−表皮の屑/皮膚細胞若しくは毛髪若しくは爪又は前記構造物のケラチンタンパク質が見出される(人々が靴又は他の履物又は他のアパレルを着脱する場所を含む)か、又は菌類が潜む人間の皮膚(例えば足)又は他の哺乳動物の皮膚が接触する他の基層。
−家庭、病院、屋内競技場、スイミングプール、サウナ、空港又は人が集まる他の場所で見出される床、又は床を覆うもの(カーペット、タイル、マットなどを含む)。
−身に付けるか、又は直接若しくは間接的に皮膚と接触するアパレル(ズボン、シャツ、手袋、下着、オムツ、コート及び帽子を含む)。このリストは限定的に解されるべきではない。なぜならば任意のアパレルが本発明の処理のために意図されるからである。
−寝具類(シーツ、毛布、枕、枕カバー、敷布団、及びベッドスプリングから成る群から選択される寝具類を含むが、ただしこれらに限定されない)。このリストは限定的に解されるべきではない。なぜならば任意の寝具類が本発明の処理のために意図されるからである。寝具類には寝台で直接又は間接的に皮膚と接触する任意の物品が含まれる。
−家具類(長いす、イス、寝台、及び任意の物質(革、織物、ビニール、カーペット、マットなどを含むが、ただしこれらに限定されない)で覆われ、菌類の汚染を受ける任意の個々の家具から成る群から選択される基層が含まれるが、ただし前記に限定されない)。このリストは限定的に解されるべきではない。なぜならば任意の家具が本発明の処理のために意図されるからである。
−動物及び犬舎用物品(愛玩動物の寝床、家畜の寝床(わらを含む)を含む動物の寝床を含む)。愛玩動物の寝床は、以下のリストから選択することができるが、ただし任意の動物が意図され、イヌ、ネコ、ブタ、鳥及び爬虫類が含まれる。家畜の寝床は、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ及び鳥類のための寝床から成る群から選択することができる。任意の寝床が本発明の処理のために意図されるので、前記のリストは限定と解されるべきではない。
−基層は、動物の身に付けさせるか或いは動物と接触する物品から成る群から選択することができる。これらの物品には、革、感染媒介物、馬勒、端綱、蹄鉄、動物のアパレル、並びに動物の表皮と直接又は間接的に接触する他の全ての基層及び物品が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
−基層はまた、クシ、ブラシ、ピック(pick)、かみそり、カッターから成る群から選択される、人間又は動物のグルーミング用具でもよい。このリストは限定的に解されるべきではない。なぜならば任意のグルーミング用具が本発明による処理のために意図されるからである。
−上記のものを含む、動物の表皮と直接又は間接的に接触する全ての基層が本発明の部分である。
デリバリー方法:以下のデリバリー方法が本発明に含まれるが、ただしこのリストを限定的に解してはならない:
−エーロゾル
−スプレー
−散剤
−擦り付け
−挿入
−抗-菌類化合物による基層の含浸
デリバリー系の各々は、菌類による汚染前又は汚染後のいずれかで用いることができる。
【0010】
詳細な説明
菌類による疾患は哺乳動物が罹患するもっとも一般的なものであり、人間のもっとも一般的な感染症のいくつかを含む。これらには人間では以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):
a)体幹白癬−(“身体の白癬”)。この感染は、腕、脚、胸又は背中のほぼ全ての場所に大きな輪に成長する小さな赤色スポットを生じる。
b)足部白癬−足の菌類感染。典型的には、足指の間の皮膚(趾間の足部白癬又は“水虫”)又は足の裏及び側面の皮膚(足底又は“モカシン型”足部白癬)が含まれえる。足の他の領域も含まれえる。感染は足指の爪にも広がり(爪白癬又は爪真菌症)、その場合、足指の爪の肥厚及び断裂を生じる。前記はまた手及び指の爪にも広がりえる。
c)前記菌が鼠径部の湿った温かい領域で増殖するとき、この皮疹は股部白癬と称される。この感染症の一般名称は“いんきんたむし(jock itch)”である。股部白癬は一般的には男性、特に運動競技用装備をしばしば身に付ける男性に生じる。
d)頭部白癬(“頭皮の白癬”と称される)は、通常は頭部にかゆみを伴う赤色領域を生じる。毛髪はしばしば破壊され、脱毛斑を生じる。この白癬菌感染は小児にもっとも一般的である。
e)ふけ(頭皮の表皮の過剰な脱離(剥脱)である)。菌類は前記状態を引き起こすか、又は悪化させる。
【0011】
上記のリストは、或る哺乳動物の該当症状の長大なリストのうちもっとも一般的なもののいくつを提供する。菌類によって引き起こされる多くの疾患が特定され、さらにまた鵞口瘡及びオムツかぶれのような一般的な症状も含まれる。菌類は糖尿病及び肥満患者ではしばしば合併因子である。さらにまた、人間の疾患は、アスペルギルス(Aspergillus)、ブラストミセス(Blastomyces)、カンジダ(Candida)、コクシジオイデス(Coccidioides)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、ヒストプラズマ(Histoplasma)、パラコクシジオイデス(Paracoccidioides)、スポロスリクス(Sporothrix)属、及び接合菌綱(Zygomycetes)の少なくとも3つの属に由来する菌類(ただしこれらに限定されない)を含む他の菌類ととともに、動物について下記に記載する菌類によって引き起こされる。
オムツかぶれを悪化させえる二次感染には菌類(たとえばカンジダ属の酵母)が含まれる。
愛玩動物及びコンパニオンアニマルでは、上記の菌類とともに多くの他の菌類が疾患を引き起こしえる。本発明は、動物と直接又は間接的に接触する基層を包含する。動物で疾患を引き起こす微生物の例には、マラッセジア・フルフル(Malassezia furfur)、エピデルモフィトン・フロッコスム(Epidermophyton floccosum)、毛瘡白癬菌(トリコフィトン・メンタグロフィテス(Trichophyton mentagrophytes))、紅色白癬菌(トリコフィトン・ルブルム(Trichophyton rubrum))、トリコフィトン・トンスランス(Trichophyton tonsurans)、トリコフィトン・エキヌム(Trichophyton equinum)、デルマトフィルス・コンゴレンシス(Dermatophillus congolensis)、ミクロスポルム・カニス(Microsporum canis)、ミクロスポルム・アウドウイニ(Microsporum audouini)、ミクロスポルム・ジプシウム(Microsporum gypsium)、マラッセジア・オバレ(Malassezia ovale)、プシュダレスケリア(Pseudallescheria)、スコプラリオプシス(Scopulariopsis)及びカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)が含まれる。
【0012】
本開示は、直接又は間接的に表皮と接触する基層を処理する方法を含む。前記方法は、a)第一の抗-菌類化合物で基層を処理する工程、及びb)第二の抗-菌類化合物で基層を処理する工程を含む。この処理はいつでも行うことができ、基層又は基層を形成する材料の製造時の処理と同様に、菌類若しくは細菌による汚染前又は汚染後の処理が含まれる。
各人のアパレルの汚染除去は表皮と菌類の接触を減少させることができる。これによって最初の菌類汚染率を順次低下させ、罹患個体の再感染率を低下させることができる。水虫の事例では、足及びアパレルの処理は再汚染率を低下させ、より耐久性の水虫治療を提供する。これと同じことが多くの菌類汚染に当てはまる。例えば、ウマの白線病(white line disease)(しばしば蹄の菌類汚染によって引き起こされる)は寝わらから伝達され、さらに同一馬及び別の馬の再汚染が寝わら及び/又はそれらの馬が入れられている厩舎から伝達されえる。抗-菌類化合物による基層の処理は、汚染/感染率及び再汚染/再感染率の低下をもたらしえる。
汚染前の処理は汚染率を低下させ、洗浄前のアパレルの処理は一着のアパレルから別のアパレルへの一感染ユニットの伝達の低下をもたらしえる。
本方法は基層の処理を提供する。この処理は、任意の態様で基層を殺-菌類化合物と接触させることを必要とする(デリバリー方法が提供される)。前記基層は、直接又は間接的に表皮と接触する任意の基層から選択することができる。例えば、直接表皮と接触する物品には、ウマの蹄と接触するウマの寝わら、又はイヌの表皮から突出した毛と接触するイヌの寝床が含まれる。人間の表皮と直接又は間接的に接触する基層は、基層の定義で考察したように極めて多様でありえる。
【0013】
さらに別の特徴では、本方法は第一及び第二の抗-菌類化合物を含み、前記はただ1回の適用又は別個の適用で用いられる。具体的な抗-菌類化合物は、抗-菌類化合物のいずれの特定タイプ又はクラスにも限定されない。ただし特別な抗-菌類化合物が単に例示として本明細書で考察されるが、限定と解されるべきではない。
表皮の直接的接触は、表皮と直接接触する全てのアパレルを含む。
さらに別の特徴は本方法で用いることができる抗-菌類化合物を含み、この場合、前記抗-菌類化合物は、既知の抗-菌類化合物、又は天然に存在する化合物(植物性薬品を含む)を含む化合物クラスから選択される。上記リストは限定的に解されるべきではない。なぜならば全ての抗-菌類化合物が本発明で意図されるからである。
さらに別の特徴は本方法における抗-菌類化合物を含み、この場合、第一及び第二の抗-菌類化合物の少なくとも1つは天然に存在する抗-菌類化合物である。
さらにまた、本発明者らは、ある種の抗-菌類化合物は抗細菌特性を有することを初めて示した。このことは、両タイプの生物の増殖に対して感受性を有するある種の基層を処理するときに特に有用である。
別の特徴では、直接又は間接的に表皮と接触する基層を前処理する方法が提供される。前記方法は製品の末端ユーザーが使用する前に抗-菌類化合物で基層を処理することを含む。前記は任意のデリバリー方法により実施することができる。
薬剤の併用は、以下を含む多くの潜在的利点を有することが示唆されている:(a)用いられる個々の薬剤の活性スペクトルを拡張及び拡大すること、(b)個々の化合物の抗微生物性能を高めること、(c)耐性の発生を抑えること、(d)耐性株を処理し、さらに(e)少なくとも1つの処理因子に対して用いられる濃度を低下させること、及び(f)胞子を活性化させて又は活性化させることなく殺胞子活性を示すこと。本明細書の実施例におけるデータは、合成、半合成及び天然の併用使用によってこれらの目的が達成されることを示している。
【0014】
例えば、ミコナゾールは、テルビナフィン及びトルナフテートと異なり、抗細菌活性を有するので、前者を後者のいずれかの薬剤と併用することによって、消毒活性スペクトルが拡大され、皮膚糸状菌、酵母及び細菌までカバーされるであろう。さらにまた、ミコナゾールは制-菌類剤であるので、前記をテルビナフィン又はトルナフテート(我々は前記が菌類胞子の殺活性を有することを示した)のどちらかと併用することによってこの併用の殺滅活性を拡大させるであろう。これらの併用が例として提供され、当業者はこれらの開示から相乗的に作用しえる他の効果的な併用を演繹することができる。
さらにまた、我々は、臭いの原因となる細菌及び蜂巣炎を引き起こす細菌の増殖を制限する組成物を記載する。これらの化合物を処理組成物又は前処理組成物に添加することによって、菌類の汚染を手当てしつつ足の臭い及び蜂巣炎を抑制することを含む有利な相乗効果がもたらされるであろう。好ましい実施態様では、前記組成物は、合成抗-菌類化合物及び天然に存在する抗-菌類化合物の混合物(例えばテルビナフィン若しくはトルナフテート及びレモングラス油、又はテルビナフィン若しくはトルナフテート、レモングラス油)を含む。本発明者らはまた、細菌のみを処理するために、殺菌化合物(天然に存在する化合物(クローブの芽油、レモングラス油及びビャクダン油を含むがただしこれらに限定されない))だけを使用することもまた有利であると結論した(例えば基層を殺菌化合物で処理又は前処理する)。殺菌化合物で処理する利点には基層の臭いの減少が含まれるが、ただしこれに限定されない。
【0015】
本明細書で提供されるものは、抗細菌、抗-菌類及び殺胞子特性を含む、新規に見出された化合物の特性である。さらにまた新規なものは、一般的な菌類(皮膚糸状菌、酵母など)及び細菌に対する基層の処理及び前処理で予想外の結果を提供する化合物の併用である。本発明者らは、天然に存在する殺-菌類剤を公知の殺-菌類剤と併用することによって予想外に良好な結果がもたらされることを初めて示し、本発明者らはまた天然に存在する殺-菌類化合物の使用は細菌に対するそれらの有用性を拡大することを初めて示した。本発明者らは以下のように結論した:1)精油(特にレモングラス油及びクローブの芽油)は天然の生成物として単独で用いて基層に感染する微生物を抑制することができる;及び2)精油を合成抗-菌類化合物と併用することによって、広い活性スペクトルが提供されるであろう。一般的な微生物の処理に加えて、前記を用いて、薬剤耐性微生物(例えばテルビナフィン耐性紅色白癬菌及び多剤耐性カンジダ)を処理するとともに、精油と併用する場合には合成薬剤の濃度を下げて使用することができる。我々の方法は、強力な抗-菌類活性及び抗細菌活性を有する消毒方法及びレジーメンを特定し、さらに基層(すなわち本明細書に記載の全ての基層)(靴を含むが、ただし前記に限定されない)の菌類汚染を予防及び処理する効果的な手段を提供する。
抗-菌類化合物は強力な抗-皮膚糸状菌活性を有することを示したが、本発明者らはまた、バイオアッセイを用いてこれら薬剤の皮膚糸状菌に対する活性を示した。これらの結果は、基層の処理及び前処理は新規で予想を超える結果をもたらし、製造業者及び消費者に、基層(靴を含むが、ただし前記に限定されない)上の細菌、菌類、皮膚糸状菌及び他の望ましくない微生物を抑制する技術及び組成物を提供することができることを示した。
特定の賦形剤(洗剤、油など)の使用もまた本発明で役割を果たし、基層への浸透、浸透速度、被覆の完全性などを高めることができる。これらはまた、抗-菌類化合物及び抗細菌化合物を胞子に浸透させるために用いることができる。賦形剤はまた、胞子の休眠を終了させ、発芽を開始させ、したがって胞子を前記化合物にいっそう感受性にさせるために用いることができる。
前記抗-菌類化合物及び抗細菌化合物を含む組成物はまた、基層への付着を高める化合物を含むことができる。基層への付着を高めることによって、化合物が基層と接触している時間を延長することができる。
本発明の特徴は、以下の実施例(前記は本発明の範囲を限定するものと解してはならない)を参考にさらに理解を進めることができる。
【0016】
実施例
実施例1:本発明で機能する抗-菌類化合物の例
本実施例での処理は少なくとも2つの抗-菌類化合物から成る。典型的な化合物がそれら化合物の一般的なクラス、或いは化学物質によって列挙される。濃度はクラスに付随する。それら濃度は全体を包含する範囲として記載される。上記及び下記に記載される抗-菌類化合物の各クラスから少なくとも1つの化合物を選択し、2つ以上の化合物の混合物が作成することができよう。全ての百分率は質量/体積を示す。
イミダゾール(0.01−10%):ビフォコナゾール、ブトコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、フルコナゾール、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、オキシコナゾール、サペルコナゾール、セトラコナゾール、スルコナゾール、テルコナゾール、チオコナゾール、ヴォリコナゾール、イオロコナゾール。
アリルアミン及びベンジルアミン(0.001−10%;0.05−5%):ブテナフィン、ナフチフィン、テルビナフィン。
ポリエン(0.01−10%;0.5−5%):アンホテリシンB、カンジジシン、フィリピン、フンギマイシン、ナイスタチン。
雑多な合成抗-菌類化合物(例えば0.05−25%):アモロルフィン(デメチモルフォリン)、シクロプロクスオラミン、ハロプロゲン、クリオキノール、トルナフテート、ウンデシレン酸、ヒダントイン、クロルダントイン、ピロールニトリン、サリチル酸、チクラトン、トリアセチン、グリセオフルヴィン、ピリチオン亜鉛。
消毒剤(例えば0.001−20%):硫酸銅、ゲンチアンヴァイオレット、ベータダイン/ポヴィドンヨウ素、銀コロイド、亜鉛。
植物性薬品(例えば0.01−10%):バジル(オンシマム・バシリクム(Oncimum basilicum))、カッシア(シンナモマム・アロマチクムvar. カッシア(Cinnamomum aromaticum vsr. Cassia))、シダーウッド油(シドルス・リバニ(Cedrus libani)又はシドルス種)、カミツレ(カメメルム・ノビレ(Chamaelum nobile))、シトロネラ(シムボポゴン・ナルヅス(Cymbopogon nardus))、クローブ(シジギウム・アエロマチクム(Syzgium aromaticum))、クミン(クニヌム・シミヌム(Cuminum cyminum))、フェンネル(フェニクルム・ヴルガレ(Foeniculum vulgare))、メンタ/ミント(MenthThe/Mint)(MenthThe x piperita/Menththe spicata)、ティーツリー(Tea Tree)油(メラレウカ・アルテルンフォリア(Melaleuca alternfolia))、ターメリックリーフ(Tumeric leaf)油(クルクム・ザ・ロンガ(Curcum The longa))、レモングラス油(シムボポゴン・シトラツス(Cymbopogon citratus))。
【0017】
実施例2:抗-菌類化合物の混合物の適用方法
例えば、適切な抗-菌類化合物によって皮膚でいったん治癒した水虫は、汚染した同じ履物により足が再感染したとき再発することが知られている。発明者らは、抗-菌類化合物および抗-菌類化合物の混合物による靴の素材の処理は、水虫の治療に予想外の良好な結果をもたらしえることを示した。この処理は、足と接触する基層の菌類又は細菌による汚染前(使用前)又は汚染後のどちらの処理でもよい。好ましい実施態様では、細菌の治療で有効であると本明細書に記載した天然の油の少なくとも1つが組成物で用いられ、菌類の増殖を制限し、同時に足/靴の臭い及び蜂巣炎が制限される。
さらにまた種々の他の基層の処理(床の処理を含む)は、水虫の感染サイクル(感染した足、治療された足、未処理/汚染履物又は他の基層による足の再感染)を立ち切るために役立ちえる。
【0018】
実施例3:軍用アパレルの処理
本発明の典型的な使用は軍隊用ソックス、戦闘ブーツ、及び/又は他のアパレルを消毒し、したがって汚染された履物及び衣類による水虫の再汚染を断ち切ることであろう。正味の効果は、かゆみ及び前記疾患及び/又は他の菌類の汚染の不快から相対的に開放される兵士であろう。本出願では、ブーツ、ソックス及び/又はアパレルは、少なくとも1つの抗-菌類化合物溶液を抗-菌類化合物をスプレーされるか若しくはその中に浸されるか、又は、生産者若しくは製造者の元で予め処理された基層から作成される。履物衣類の全てのタイプ及び使用者が本発明の使用者として意図されるが、軍用衣類、履物及び他の用具類は、それらはしばしば長期にわたって身に付けられるので汚染を運ぶ傾向が特に強いために特に本発明の実施態様である。
【0019】
実施例4:床及び敷物/マットの処理
本発明の典型的な使用は、スイミングプール近く又は屋内競技場、ロッカールーム(例えばロッカールームのシャワーのそば)及びヨガ教室で一般的に存在する敷物の汚染を除去することであろう。菌類は、温かい湿った場所で増えるので、敷物から白癬及び水虫を引き起こす感染性生物を除去することができる。これらの基層は、使用を開始した後で、又は適切な場所に配置する前に(たとえば製造者の元で)本発明の殺-菌類組成物を用いて処理し、その上での菌類の増殖が制限されるであろう。
屋内競技場、空港の検査所、及び他の(人々が定例的に靴を脱ぐ)場所のような場所の床上/床中の基層の処理もまた意図される。
【0020】
実施例5:動物の基層の処理
本消毒剤は、動物が身に付ける物品内又は物品上の、疾患を引き起こす菌類及び菌類様生物を死滅させるか又は無力にし、したがって前記動物の毛皮、皮膚、爪、蹄及び類似の構造物の汚染及び再汚染を前記の手段によって防ぐ。
前記疾患には表面の皮膚科学的汚染、例えば白癬、雨腐敗病(rain rot)、汚物掻痒(muck itch)、腹帯掻痒(girth itch)、白線病(ホワイトライン病)、鵞口瘡が含まれる。処理される基層である、動物が身に付ける物品には、革ひも、端綱、鞍、毛布、ブーティー(booty)、感染媒介物及び蹄鉄が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
本発明の典型的な使用は、鞍の下側又は鞍の毛布の汚染を除去し、したがってウマ白癬の汚染及び再汚染の防止を実施することである。本発明のまた別の予想される使用はわらの汚染除去である。この処理は、わらの中に生息する、無数の病気を引き起こす菌類による汚染及び再汚染を防止することであろう。
【0021】
実施例6:in vitro並びに靴及び中敷生検ディスクアッセイを用いる、合成抗-菌類化合物及び靴に感染する微生物に対抗する天然の物質の活性の評価
以下の化合物の靴を消毒する活性を調べた:テルビナフィン、トルナフテート、ミコナゾール、シダー(Cedrus)油、及びティーツリー油、クローブの芽油、レモングラス油、ビャクダン油及びスペアミント油。
in vitro感受性検査
最少阻害濃度(MIC)及び最少殺-菌類濃度(MFC)の決定:合成及び天然の生成物の皮膚糸状菌に対する最少阻害濃度を、臨床検査標準協会(Clinical Laboratory Standards Institute(CLSI))(従前は臨床検査標準委員会(National Commitee of Clinical Laboratory Standards, NCCLS))のM38A標準方法(Center for Medical Mycologyで皮膚糸状菌について開発された)の変法(1)を用いて決定したが、一方、これらの物質のカンジダ種に対するMICは、CLSI M27-A2方法論(2)を用いて決定した。細菌に対するMICの決定に用いた方法はCLSI文書M7-A7(3)を骨子とした。
皮膚糸状菌については、テルビナフィン、トルナフテートの段階稀釈を0.004−2μg/mLの範囲で調製し、一方、ミコナゾールについては、濃度は0.015−8μg/mLの範囲とした。最後に精油については、試験した濃度は0.03−16μg/mLの間であった。唯一の例外はティーツリー油であり、この場合、稀釈は0.0078−4μg/mLの範囲で調製した。MICは4日で読み取り、増殖コントロールと比較したとき菌類の増殖を80%阻害する薬剤の最低濃度と定義した(表2)。
カンジダ種に対する薬剤のMICを決定するために、テルビナフィン及びトルナフテートの段階稀釈を0.125−64μg/mLの範囲で、ミコナゾールについては、0.03−16μg/mLの範囲で調製し、さらにティーツリー油は0.125−4μg/mLの範囲を有した。残りの精油は、0.03−16μg/mLの稀釈範囲で調製した。カンジダについては、MICは24時間で読み取り、増殖コントロールと比較したとき菌類の増殖を50%阻害するための最低濃度と定義した(表4)。
細菌種については、抗-菌類物質及び精油の抗-菌類活性及び抗細菌活性の判定に用いた培地は、それぞれRPMI1640(Hardy Diagnostics, Santa Maria, CA)及びMueller-Hinton(Oxoid Ltd., Basingstoke, Hampshire, Emgland)であった。ミコナゾール、テルビナフィン、及びトルナフテートの段階稀釈を、0.125−64μg/mLの範囲で調製し、ティーツリー油の段階稀釈は0.0078−4μg/mLの範囲で調製し、一方、残りの精油については、0.031−16μg/mLの範囲で調製した。MICは16時間で読み取り、増殖コントロールと比較したとき細菌の増殖を80%阻害する薬剤の最低濃度と定義した(表5)。
【0022】
最少殺-菌類濃度(MFC):種々の薬剤の最少殺-菌類濃度は、以前にCantonら(4)が記載した技術を用いて決定した。この方法では、菌類の分生胞子をジャガイモデキストロース寒天(PDA)プレート上での増殖後に採集し、種々の濃度の薬剤を含む96ウェルプレートに接種するために用いた。35℃で4日間(皮膚糸状菌の場合)又は24時間(酵母の場合)インキュベートした後、目に見える増殖を示さないウェルを培養しMFC(菌類の分生胞子又は胞子の99−100%を殺すある薬剤の最低濃度と定義される)を決定した。MFCは、分生胞子又は胞子を殺す薬剤のレベルを表す。
微生物感染靴に対する抗-菌類剤及び精油の併用活性の評価
薬剤の併用は、以下を含む、多くの潜在的な利点を有することが示唆されている:(a)個々の使用薬剤の活性スペクトルを拡張及び拡大すること、(b)個々の化合物の抗微生物有効性を高めること、(c)耐性の発生を抑えること、(d)耐性株を処理し、さらに(e)少なくとも1つの処理因子に対して用いられる濃度を低下させること、及び(f)殺胞子活性を示すこと。
バイオアッセイ
本実験で用いる靴の基層は、ドクター・ショール(Dr Scholl's(商標))のエアピロー中敷とした。我々はこの中敷が皮膚糸状菌に対して阻害活性をもたないことを以前に示しており(下記参照)、さらにこの中敷が靴の中敷の製造で用いられる代表的な材料タイプであるので、この基層を選択して我々のバイオアッセイで用いた。
中敷及び革の菌類汚染を予防し処理する薬剤の能力を判定するために、我々は、皮膚糸状菌の毛瘡白癬菌(T. mentagrophytes)に対するそれらの活性を測定し、新規な中敷/革バイオアッセイを開発した。毛瘡白癬菌は足白癬及び爪真菌症の主要原因であるので、この菌類を我々のバイオアッセイ実験のモデル株として用いた。これらの疾患でしばしば原因生物として同定されるが胞子/分生胞子の生成は少ない紅色白癬菌(T. rubrum)とは異なり、毛瘡白癬菌は、これらの疾患の疫学的因子であることに加えて分生胞子を繁殖的に生成し、したがってバイオアッセイでの使用が容易である。このアッセイでの毛瘡白癬菌に対する活性は、紅色白癬菌及び他の皮膚糸状菌に対する活性の指標となるであろう。
【0023】
靴のバイオアッセイの開発
靴を消毒する種々の薬剤の能力を評価するために、バイオアッセイ方法を開発することが必要である。我々の目的は、靴の汚染を(前処理により)予防しさらに(後処理により)処理する種々の薬剤の活性の測定に有用なアッセイを開発することであった。このバイオアッセイ開発の第一の工程は、靴に用いられる基層を代表し、さらにそれ自体では菌類を抑制しない最適な中敷及び革素材を特定することであった。最適な靴の中敷を選択するために、市場で入手できる4つの靴中敷(CVSオドストップ中敷、ドクター・ショールのエアーピロー靴中敷(前記は抗-菌類活性を有すると称されている)、オドイーター中敷、及びCVS二重気泡靴中敷)から皮膚生検パンチ(Miltex, Berthpage, NY)を用いて8mmの寸法のディスクを切り出した。毛瘡白癬菌を播種したPDAプレートにこれらの生検ディスクを置いた。靴及び他の基層で増殖する全菌類クラスの代表である毛瘡白癬菌を基準生物として用いた。現時点で存在する製品の中敷生検ディスクの皮膚糸状菌抑制能力を35℃で7日間インキュベートした後で決定した。我々のデータは、前記中敷の3つ(CVSオドストップ、オドイーター及びCVS二重気泡)は、わずかな抗-菌類活性を有し(図2A−C)、一方、ドクター・ショールの中敷は毛瘡白癬菌を全く抑制しないことを示した(図2D)。類似のアプローチを用いて、我々が入手したレザーハイド(leather hide)の生検ディスクが菌類の増殖を抑制するか否かを決定した。我々のデータは、革素材はそれ自体では抗-菌類活性をもたないことを示した(図2E)。したがってドクター・ショールの靴中敷及びレザーハイドを後の実験で基層として用いた。
【0024】
我々のバイオアッセイでは、種々の消毒剤を溶かすためにビヒクルとしてイソプロパノールを使用することにした。この溶媒は足白癬の治療のために市販されている種々の調製物で用いられる一般的な溶媒であるので、我々はこの溶媒を選択した。次に、我々はそれ自体で菌類の増殖を抑制しないイソプロパノールの濃度を明らかにする実験を実施した。イソプロパノールの異なる3通りの濃度(30%、50%及び100%)について皮膚糸状菌の増殖を抑制する能力を試験した。我々のデータは、30%のイソプロパノールは、前記ビヒクルが中敷及び革の表面での菌類の増殖を抑制しない最適な濃度であることを示した(図3A−B)。トルナフテートはイソプロパノールには非常に良好には溶解しないので、いくつかの実験では、我々はビヒクルとしてアセトンを用いるさらに別の実験を実施した。
上記の実験を根拠として、我々のディスク生検アッセイは、靴で用いられている素材を代表する最適な基層としてドクター・ショールの中敷及び革のディスクを、さらに前処理及び後処理実験で試験される薬剤を溶解する最適なビヒクルとして30%イソプロパノールを採用した。
菌類による靴の汚染を予防及び処理する種々の薬剤の能力の評価
以下の2つのタイプの生検ディスクアッセイを用いて、種々の合成及び天然基層の靴素材の消毒能力を評価した:(a)前処理アッセイ(このアッセイでは初めにディスクを抗-菌類剤で前処理し、続いて毛瘡白癬菌を感染させた)及び(b)後処理アッセイ(このアッセイでは初めにディスクを毛瘡白癬菌で感染させ、続いて薬剤で処理した)。これらのアッセイは、種々の薬剤の菌類による靴の汚染を予防及び処理する能力をそれぞれ明らかにするであろう。
前処理アッセイ:菌類による靴の汚染を予防する種々の薬剤の能力を査定するために、104の毛瘡白癬菌細胞が均等に広がったPDAプレートを調製した。次に、中敷及び革から得たディスクを以下のように処理した(薬剤又はコントロールビヒクルのどちらかを用いる):ディスクを15秒又は30秒の噴霧で1回噴霧により前処理した。他のディスクは薬剤又はビヒクル中に30分浸漬した。この処理に続いて、ディスクをペトリプレートに1分間静置することによって風乾した。続いて、これらの乾燥ディスクを(薬剤側を下に)前記播種PDAプレートに置いた。続いてプレートを30℃で4日間インキュベートした。インキュベーションの後で菌類の増殖を記録した。活性を有する薬剤は生検ディスクの周囲に透明ゾーンを示し(図1A、矢印)、一方、活性をもたない薬剤はディスクの全周囲に菌類の増殖を示した(図1B)。透明ゾーンの直径(CZD)を測定した。種々の薬剤及びコントロールの相対的な活性を査定した。このアッセイでは、活性な薬剤は活性のない又は活性が低い薬剤よりもより大きなCZDを有した。
【0025】
後処理アッセイ:感染した靴を処理する種々の薬剤の能力を査定するために、104の毛瘡白癬菌細胞が均等にその表面に広がったPDAプレートを調製した。次に、未処理の生検ディスクをこれらのPDAプレート上に置き、30℃で4日間インキュベートした。このようにして生検ディスクをインキュベートすることによって、菌類をディスクに侵入させた。感染ディスクを取り出し、噴霧により種々の薬剤で後処理した。後処理ディスクを風乾し、続いて新しい未接種PDAプレートに置き、さらに4日間30℃でインキュベートした。このような条件下でディスクをインキュベートすることによって、噴霧によって死滅しなかった全ての菌類を増殖させることができる。言い換えれば、靴の素材の処理に有効な薬剤は、生検ディスク周囲に菌類の増殖を全く示さないであろう(図1C)。対照的に、無効な薬剤で処理されたディスクは、それらから発する菌類の増殖を示すであろう(図1D)。増殖ゾーンの直径(GZD)を被検薬剤の活性の測定値として決定した。このアッセイでは、活性のない又は活性の低い薬剤は活性を有する薬剤よりも大きなGZDを有し、一方、活性な薬剤は菌類の増殖を全く示さなかった(GZD=0)。
走査電子顕微鏡検査法(SEM)
走査電子顕微鏡検査法(SEM)を用いて、靴の中敷又は革の生検ディスク上での菌類の増殖を根絶する薬剤の能力をモニターした。前処理及び後処理したディスクを、以前に記載されたChandraらの方法(6)によってSEM用に処理した。1組のディスクを薬剤による前又は後処理を実施していないコントロールとして用いた。さらにまた、1組の生検ディスクを菌類細胞又は薬剤が添加されないブランクとして用いた。処理の後、ディスクを2%のグルタルアルデヒドで2時間固定し、続いてカコジル酸ナトリウム緩衝液で洗浄した(各回10分で3回)。続いてディスクを1%のオスミウムテトラオキシドで処理し(4℃で1時間)、続いてカコジル酸ナトリウム緩衝液で一連の洗浄、その後の蒸留水による2回の洗浄を実施した。次に、ディスクを1%のタンニン酸で処理し、蒸留水で3回洗浄し、続いて1%酢酸ウラニルで処理し水で2回洗浄した。続いてサンプルを一連のエタノール溶液(蒸留水中で25%(v/v)から無水エタノールまでの範囲)で脱水した。続いて調製サンプルをAu/Pd(60/40)でスパッター被覆し、Amray 1000B走査電子顕微鏡で観察した。
【0026】
結果
in vitro感受性試験
最少阻害濃度(MIC)及び最少殺-菌類濃度(MFC)
種々の薬剤の阻害活性の評価によって、これらの薬剤は、皮膚糸状菌、酵母及び細菌の抑制に種々の程度で有効であることが示された。これらのMIC/MFC実験のデータは表1に要約されている(MIC/MFCデータの詳細については表2−5を参照されたい)。試験した種々の合成及び天然生成物の抗-菌類活性並びに抗細菌活性の要約は下記にまとめられている。
合成薬剤の抗微生物活性
テルビナフィン:我々の結果は、テルビナフィンは、試験した3つの皮膚糸状菌属の全ての単離株に対して高い活性を有することを示した(低いMIC値が観察された:MIC範囲=0.008−0.06μg/mL)。さらにまた、この薬剤は、低いMFC値で示されたように(MFC範囲は0.03−0.125μg/mL)、これらの皮膚糸状菌の胞子を殺滅することができた。テルビナフィンの抗酵母活性の査定によって、この薬剤は試験した全てのC.パラプシローシス(C. parapsilosis)単離株に対して高い活性を有することが示された(全ての単離株についてMIC値は0.25μg/mLであった)。これに関して、C.パラプシローシスは皮膚の公知の通常微生物叢である。我々のデータは、テルビナフィンは、C.パラプシローシスと比較してC.アルビカンス(C. albicans)に対する活性は低く、試験した単離株の大半に対しC.パラプシローシス(5つの単離株のMIC値は0.5から2μg/mLの範囲であった)と比較して1から3倍大きいMIC値を有することを示した。興味深いことに、テルビナフィンは、1つのC.アルビカンス株に対しては効果を示さなかった(株8280でMICは>64μg/mL)。皮膚糸状菌及び酵母株に対して認められたテルビナフィンの高い活性とは対照的に、この薬剤は、試験した全ての細菌株に対して抗細菌活性を全く示さなかった(試験した全てについてMICは>64μg/mL)。
【0027】
トルナフテート:トルナフテートの抗-菌類活性の評価によって、この薬剤は、菌類抑制(試験した全ての皮膚糸状菌に対しMICは0.008−0.125μg/mL)及び胞子殺滅(MFCは0.06−0.125μg/mL)の両方について試験した皮膚糸状菌に対して高い活性を有することが示された。トルナフテートの阻害活性及び殺胞子活性はテルビナフィンと類似し、わずかに(1段階稀釈)高い。トルナフテートの抗酵母活性の評価によって、この薬剤は、テルビナフィンと比較して酵母に対しては低い活性を有することが示された。トルナフテートのより高いMICは試験した全てのC.アルビカンス株に対して観察された(全ての株についてMIC値は≧64μg/mL)。C.パラプシローシスに対するトルナフテートの活性は株依存性であり、或る株(#7629)は低いMIC(0.5μg/mL)を示し、他の単離株は比較的高いMIC値(8−16μg/mL)を示した。トルナフテートの細菌感受性検査により、この薬剤は黄色ブドウ球菌(S. aureus)に対して抗細菌活性をもたないが(試験した全ての株についてMICは>64μg/mL)、一方、S.エピデルミディス(S. epidermidis)株に対してはいくらかの株依存性を有することが示された(2株は2μg/mLのMIC値を有し、残りの4つは16から>64μg/mLの範囲のMICを示した)。
【0028】
ミコナゾール:ミコナゾールに対する皮膚糸状菌の感受性試験により、この薬剤が、毛瘡白癬菌、紅色白癬菌及びE.フロッコスム(E. floccosum)に対して強力な抗-菌類活性を有することが示された(MIC値は0.06から0.125μg/mLの範囲)。テルビナフィン及びトルナフテートと比較して、ミコナゾールはわずかに活性が低かった。さらにまた、これらの薬剤と異なり、ミコナゾールは皮膚糸状菌に対して静止作用を有した(試験した毛瘡白癬菌の全ての単離株並びに紅色白癬菌及びE.フロッコスム単離株の大半に対するミコナゾールのMFCは≧8μg/mLであった)。我々のデータは、ミコナゾールは軽度の抗酵母活性を有することを示した。一般的には、C.アルビカンス及びC.パラプシローシスの両方に対するミコナゾールのMIC値は、テルビナフィンについて得られた値よりも高かった。C.アルビカンスは、ミコナゾールに対していくらかの株依存性感受性を示し、4つの単離株についてMICは1−2μg/mLで、別の株については16μg/mLで、残りのアルビカンス株(8280)については≧16μg/mLであった。C.パラプシローシスに対するミコナゾールのMIC値もまた株依存性であった(MICは4から≧16mg/Lの範囲であった)。テルビナフィン及びトルナフテートとは対照的に(前記は細菌に対しては活性をもたなかった)、ミコナゾールは試験した黄色ブドウ球菌及びS.エピデルミディス単離株の両方に対して活性を有した(全てのブドウ球菌単離株に対するMIC値は0.5から2μg/mLであった)
【0029】
シダー油:シダー油の抗-菌類感受性試験により、この天然の油が、皮膚糸状菌に対してin vitroで許容しえる抗-菌類活性を有することが示された(MICは0.5から2μg/mLの範囲)。さらにまた、シダー油は、以下のように種依存性殺滅活性を示した:毛瘡白癬菌に対するMFCは、E.フロッコスム及び紅色白癬菌単離株(MFC=0.5−4μg/mL)に対するものよりも顕著に高かった(MFC=4−16μg/mL)。結果は表1に示されている。
【0030】
ティーツリー油:ティーツリー油に対する抗-菌類感受性試験により、この天然の生成物が、これらの菌類の抑制および胞子殺滅で高い活性を有することが示された(試験した全ての皮膚糸状菌に対しMIC50は0.125-0.4であり、一方、MFCは0.25から>4μg/mLであった)。さらにまた、皮膚糸状菌に対するティーツリー油のMIC及びMFC値はシダー油について観察されたものより低かった。酵母単離株の大半がティーツリー油に対して耐性を示した(MIC>4μg/mL)。興味深いことには、C.アルビカンスの1株(8280)がティーツリー油に感受性を示したが、同じ株がテルビナフィン、トルナフテート及びミコナゾールに対して耐性を示した(MICはそれぞれ64、>64及び>16μg/mL)。この発見は非常に興味深い。なぜならば、この発見は、ティーツリー油をこの3つの薬剤のいずれかと併用することによって靴の消毒活性の強化を提供することができ、ティーツリー油の抗-菌類剤のいずれかへの添加によって耐性単離株を広くカバーできる可能性を示唆しているからである。ティーツリー油と前記の耐性菌類に対する種々の薬剤との併用の可能性を評価した(下記参照)。試験した細菌株はティーツリー油に感受性ではなかった。結果は表1に示されている。
【0031】
結果
足で増殖し、足白癬を引き起こすことが知られている皮膚糸状菌、爪の感染を引き起こすことが知られている酵母、及び足の感染を引き起こすか又は不快な臭いを生じえる細菌に対して有効な全ての精油の抗微生物活性。
C.1.2.皮膚糸状菌に対する活性
これらの実験で、我々は、皮膚糸状菌、酵母及び細菌に対する精油の活性を評価した。表7は、精油の抗皮膚糸状菌活性の要旨を提示する。表から分かるように、試験した5つの精油が、皮膚糸状菌に対して強力な抗-菌類活性を示し、MICは0.125から0.5μg/mLの範囲であった。
C.1.2酵母に対する活性
次に、我々は、酵母(C.アルビカンス及びC.パラプシローシス)を抑制するこれらの製油の能力を試験した。表8から分かるように、天然の精油のうち4つ(クローブの芽、レモングラス、スペアミント及びティーツリー油)が、これらの臨床的に重要な菌類に対して活性を有し、MICは0.063−0.5μg/mLの範囲であった。ただ1つの例外はビャクダン油であり、4から>16μg/mLのMICを有した(表3)。これらの結果は、ビャクダン油は調べたカンジダ種及び株に対して抑制活性を示さないことを示唆した。
C.1.3細菌に対する活性
我々は、次に、(a)臭い発生細菌(ミクロコッカス及びコリネバクテリウム)及び(b)黄色ブドウ球菌(蜂巣炎の主要原因)に対する精油のin vitro活性を試験した。表9で分かるように、クローブの芽油、レモングラス油及びビャクダン油は、調べた臭い産生細菌(MIC=0.25−2μg/mL)に対し活性を有したが、スペアミント及びティーツリー油はin vitro活性を示さなかった(MIC=2−8μg/mL)。さらにまた、クローブの芽油、レモングラス油及びビャクダン油は、ブドウ球菌(Staphylococcus)に対していくらかの活性を示した(MIC=0.25−8μg/mL)。さらにまた、レモングラス油は、クローブの芽油及びビャクダン油よりも1から2段階稀釈低いMICを有する傾向があり、前者はより活性が高いことを示した。対照的に、スペアミント油及びティーツリー油は、調べた病原性細菌単離株のいずれに対しても顕著な活性は示さなかった(MIC=8−32μg/mL)。これらの実験は、クローブの芽油及びレモングラス油は他の精油と比較して最も広い抗微生物活性を有し、天然生成物として靴の処理に使用できる有望な候補物質であることを示した。
【0032】
D.1.微生物感染靴に対する抗-菌類剤及び精油の併用活性の評価
合成抗-菌類剤(例えばテルビナフィン、トルナフテート及びミコナゾール)及び精油(例えばクローブの芽油、レモングラス油、ビャクダン油、スペアミント油及びティーツリー油)を併用して用いることについての潜在能力を判定するために、我々は、テルビナフィン、ミコナゾール及びトルナフテートに対し多剤耐性を示す、テルビナフィン耐性毛瘡白癬菌及びC.アルビカンス株(株番号MRL8280)を抑制する精油の能力を評価した。図10に示すように、試験した全てのテルビナフィン耐性毛瘡白癬菌単離株は、天然精油に対して感受性を有し、MICは0.031から0.25μg/mLの範囲であった。もっとも強力な油はレモングラスであり、これらの白癬菌単離株に対して非常に低いMICを示した。
同様に、前記精油は、多剤耐性C.アルビカンス株の抑制に有効であった。この耐性株の抑制にもっとも有効な精油はレモングラスであった(表11参照)。
【0033】
D.結論
これらのデータをもとにして以下のように結論される:1)精油(特にレモングラス油及びクローブの芽油)は天然産物として単独で用いて、靴に感染する微生物を抑制することができる。2)精油を合成抗-菌類剤併用することによって、広い活性スペクトルが提供され、テルビナフィン耐性紅色白癬菌及び多剤耐性カンジダが処理されるとともに、精油と併用したときにはより低い濃度の合成薬剤の使用が可能になる。我々の方法によって、強力な抗-菌類活性及び抗細菌活性を有し、靴及び他の基層の菌類汚染を予防及び処理する効果的な手段を提供する消毒“系”が特定された。
テルビナフィン、トルナフテート及び精油は、足に感染して細菌コロニーを生じる微生物に対して強力な抗皮膚糸状菌活性を有することをin vitro感受性アッセイを用いて示したが、我々は、次に、皮膚糸状菌に対するこれらの薬剤の活性を、我々が開発した靴ディスクバイオアッセイ及びSEM技術を用いて調べた。
【0034】
皮膚糸状菌による靴汚染の予防に対する靴の中敷及び革表面の合成及び天然生成物による前処理の効果
中敷の前処理
テルビナフィン、トルナフテート及びティーツリー油の靴汚染予防能力を決定するために、我々は、上記に記載した前処理中敷の生検バイオアッセイ方法を用いた。図4(及び表11、図5の代表的画像)に示したように、中敷の1%テルビナフィン溶液による前処理は、ビヒクルコントロール(CZD=0mm)と比較して菌類増殖の完全な抑制をもたらした(CZD=85mm、菌類の抑制はペトリ皿の端に達した)。この完全な抑制は、中敷ディスクを1回噴霧で前処理したときでさえ観察された。生検ディスクのトルナフテート(1%及び2%)による前処理もまた、ビヒクルコントロールと比較して菌類の増殖を抑制したが(CZD=それぞれ25mm及び11mm)、ただしテルビナフィンよりも程度は低かった。トルナフテートはより良好にアセトンに溶解するので、我々はビヒクルとしてアセトンを用いていくつかの実験を繰り返した。我々のデータは、トルナフテートは靴に感染する皮膚糸状菌に対して強力な予防活性を有することを示した(図5)。トルナフテートの濃度を3%及び4%に増加させることによって活性は増加した。対照的に、1%のティーツリー油は抑制的予防効果を示さなかった(CZD=0mm)。総合すれば、これらのデータは、靴の中敷及び革素材のテルビナフィン及びトルナフテートによる前処理は、菌類による靴の汚染を予防する有効な方法であることを示している。重要なことには、これらの薬剤は、中敷の菌類汚染の防止で市販のドクター・ショールブランドよりも優れていた。
【0035】
革の前処理
革の生検ディスクのテルビナフィン、トルナフテート又はティーツリー油による前処理が、毛瘡白癬菌の増殖を予防することができる否かを決定するために、我々は、上記に記載したバイオアッセイ方法を用いてそれらの活性を試験した。図4Bに示したように、革ディスクのビヒクルによる前処理は抑制を全く生じなかったが(CZD=0mm)、テルビナフィン前処理は菌類増殖の完全な抑制をもたらした(CZD=85mm、表6もまた参照されたい)。革生検標本の1%トルナフテートによる前処理は菌類増殖の抑制をもたらした(CZD=16mm、図4B)。しかしながら、革ディスクの1%ティーツリー油単独による前処理は菌類の増殖を抑制しなかった(CZD=0mm)。
これらのデータは、テルビナフィン又はトルナフテートによる革素材の前処理は、靴で用いられる革の菌類汚染を予防する有効な方法であることを示している。
【0036】
中敷及び革表面で既に生じた皮膚糸状菌の根絶に対する合成及び天然生成物による汚染後処理の効果
皮膚糸状菌に感染した中敷を処理する薬剤の能力
靴の中敷で既に生じた毛瘡白癬菌汚染を処理するテルビナフィン、トルナフテート又はティーツリー油の能力を決定するために、我々は、我々が開発した靴生検ディスクの後処理アッセイを用い(上記参照)、これら薬剤による感染中敷の後処理による効果を、定着菌類汚染を排除するそれらの能力について決定した。図7A(及び表6)に示したように、ビヒクルコントロールは、菌類の再増殖の存在によって実証されるように、既に発生した菌類汚染を処理することはできなかったが(GZD=33mmの増殖)、テルビナフィンは中敷に既に生じた汚染を完全に根絶した(GZD=0mm)。トルナフテート(1%及び2%)もまた中敷の汚染の除去に有効であったが、わずかな再増殖が観察された(それぞれGZD=8mm及び10mm)。対照的に、ティーツリー油は中敷の生検標本に存在する汚染を処理することはできなかった(GZD=33mm)。
革の汚染後処理
我々は、次に、革の生検ディスクで既に生じた毛瘡白癬菌汚染をテルビナフィン、トルナフテート又はティーツリー油処理することができるか否かを決定した。図7B(及び表6)に示したように、テルビナフィンは革のディスクに既に生じた汚染を完全に除去した(GZD=0mm)。さらにまた、トルナフテート(1%及び2%)もまた革の汚染を低下させた(両濃度についてGZD=11mm)。ティーツリー油は、ビヒクルコントロールと比較して感染革の生検標本で菌類増殖の極めてわずかな抑制を誘発しただけであった(GZD=26mm対33mm)。これらのデータは、中敷及び革のテルビナフィン及びトルナフテートによる後処理は感染靴の処理に効果的な方法であることを明瞭に示している。
【0037】
靴の皮膚糸状菌汚染の防止に対するトルナフテートとティーツリー油との併用効果
合成化合物と精油との併用が低濃度の合成薬剤の使用を可能にするか否かを決定するために、我々は、0.01%のトルナフテート及び3%のティーツリー油の併用による靴汚染の防止能力を、上記に記載した中敷の前処理及び後処理バイオアッセイを用いて試験した。
図10に示したように、0.01%のテルビナフィン又は3%のティーツリー油による中敷のただ1回の前処理では菌類増殖抑制は全く生じなかった。対照的に、0.01%のテルビナフィン及び3%のティーツリー油の併用は菌類増殖の顕著な抑制を誘発した(図10C)。
さらにまた、0.01%のトルナフテート又は3%のティーツリー油は後処理の後で中敷の菌類の増殖を防止しなかったが(図10A(A)−(B))、これらの薬剤を併用した汚染後処理は菌類の増殖を低下させた(図10A(C))。
これらのデータは、トルナフテートとティーツリー油の併用は、低濃度のトルナフテートを使用して靴の汚染を予防及び処理することを可能にすることを示している。
【0038】
走査電子顕微鏡による分析
前処理及び後処理した中敷のSEM
中敷生検標本で増殖する毛瘡白癬菌の能力に対する合成及び天然の生成物の効果を決定するために、我々は、SEM分析を実施した。図8に示したように、中敷のビヒクルによる前処理は菌類の増殖に対して全く影響を示さなかったが(図8C)、テルビナフィン及びトルナフテートは菌類の増殖を完全に根絶した(図8D, E;菌類成分は全く認められなかった)。しかしながら(及び前記バイオアッセイ実験と同様に)、ティーツリー油による前処理は中敷上での菌類の増殖を低下させたが、生検ディスクから前記菌類を除去することはなかった(図8F)。中敷のテルビナフィンによる汚染後処理は、菌類増殖の完全な除去をもたらしたが(図8G)、トルナフテートによる処理は、いくらかの菌糸の存在によって示されるようにわずかにしか有効でなかった(図8H)。対照的に、ティーツリー油による汚染後処理は毛瘡白癬菌に対して全く活性をもたなかった(図8I)。
これらのデータは、テルビナフィンによる前処理及び後処理は、毛瘡白癬菌に感染した靴素材から菌類成分を排除するために極めて有効であることを示している。さらにまた、トルナフテートは、中敷の生検標本がこの薬剤で前処理された場合のみ菌類成分の排除に有効であった。
総合すれば、これらのデータは、テルビナフィン又はトルナフテートのどちらかによる中敷の前処理及び後処理は菌類の定着防止、および中敷き上に既に存在する菌類の増殖に有効であることを示している。
我々のデータはまた、トルナフテート及びティーツリー油の併用によって、トルナフテートを低濃度で使用し靴の汚染を防止及び処理できることを示している。
【0039】
前処理した革の生検ディスクのSEM分析
我々は、SEM分析を用いて、革の生検標本での毛瘡白癬菌増殖を防止するテルビナフィン、トルナフテート及びティーツリー油の能力に対する、前記薬剤の前処理の効果を決定した。図9に示したように、テルビナフィンによる革生検ディスクの前処理は、未処理の革ディスク(図9B)又はビヒクル処理ディスク(図9C)(この場合、大量の菌類成分が革素材を侵しているのが観察できる)と比較して、菌類の増殖を完全に排除した(この場合、菌類成分はまったく観察されなかった)(図9D)。トルナフテートによる前処理は、革ディスク上の菌類密度を減少させたようであるが、皮膚糸状菌の増殖を完全には排除しなかった(図9E)。ティーツリー油で前処理したディスクは菌類増殖に関して全く影響を示さず(図9F)、イソプロパノール(ビヒクルコントロール)で前処理したディスクと外見的に類似していた。
総合すれば、これらの結果は、テルビナフィンによる革の前処理は、毛瘡白癬菌に感染した革素材から菌類成分の防止及び排除に極めて有効で、一方、トルナフテートはわずかに有効であった。対照的に、ティーツリー油は革ディスクの汚染除去に有効ではなかった。テルビナフィン、トルナフテート及びティーツリー油による革の汚染後処理は現在実施しているところである。
【0040】
我々の発見は以下を示している:
試験した合成薬剤(テルビナフィン、トルナフテート、ミコナゾール)の中で、皮膚糸状菌を抑制するもっとも強い活性を有する薬剤はテルビナフィンであり、トルナフテート及びミコナゾールがこれに続く。
テルビナフィン及びトルナフテートは、靴に存在しえる皮膚糸状菌胞子を殺すことができるが、ミコナゾールは皮膚糸状菌胞子に対して静止的である。
テルビナフィン及びミコナゾールはまた酵母のカンジダ種に対して有効であったが、ただし株依存性及び種依存性態様であった。
ミコナゾールは細菌種に対して活性を示したが、トルナフテートはS.エピデルミディスに対して株依存性抑制を示した。
試験した天然の生成物(ティーツリー油、シダー油、クローブの芽、レモングラス油、ビャクダン油、スペアミント油)の中では。
【0041】
3.我々の発見により以下のことが示された:
精油は、靴に感染する皮膚糸状菌、酵母及び細菌を含む広い抗微生物活性を有する。もっとも活性の高い精油はレモングラスであり、クローブの芽がこれに続く。
精油は、不快な臭いを産生する細菌及び黄色ブドウ球菌(蜂巣炎の主要原因)に対して抑制活性を有する。
天然の精油は、テルビナフィン耐性皮膚糸状菌とともに多剤耐性C.アルビカンスに対して強力なin vitro活性を有する。レモングラスはこれに関してもっとも強力な活性を有する。
バイオアッセイ実験では、テルビナフィン及びトルナフテート前処理は、ビヒクルコントロールと比較して、靴の中敷及び革生検標本上で菌類を抑制することができた。テルビナフィンはもっとも活性の高い前処理薬剤であった。
テルビナフィン後処理は、靴生検ディスク上の既に発生した菌類汚染を処理することができた。トルナフテートは後処理薬剤としての抗-菌類活性を示したが、その活性はテルビナフィンのそれよりも低かった。ティーツリー油は後処理薬剤として有効ではなかった。
合成抗-菌類剤と精油との併用によって、低用量の合成抗-菌類剤を使用して、感染した靴中敷を防止及び処理することができる。
我々のデータは、薬剤の併用が、耐性菌類株の抑制により消毒剤の活性スペクトルを拡張することによって利点を提供する可能性が高いことを示している。
結論すれば、本発明の消毒剤は強力な抗-菌類活性及び抗細菌活性を有し、靴及び他の基層の菌類汚染を防止及び処理する効果的な手段を提供する。
【0042】
表1:テルビナフィン、トルナフテート、ミコナゾール、ティーツリー油及びシダー油の皮膚糸状菌、酵母及び細菌に対するMIC(μg/mL)及びMFC(μg/mL)の範囲

ND*:測定しなかった
【0043】
表2:テルビナフィン、トルナフテート及びミコナゾールの皮膚糸状菌に対する最少阻害濃度(MIC, μg/mL)及び最少殺-菌類濃度(MFC, μg/mL)

*ND:測定しなかった
【0044】
表3:シダー油及びティーツリー油の皮膚糸状菌に対する最少阻害濃度(MIC, μg/mL)及び最少殺-菌類濃度(MFC, μg/mL)

【0045】
表4:テルビナフィン、トルナフテート、ミコナゾール及びティーツリー油のカンジダ種に対する最少阻害濃度(MIC, μg/mL)

【0046】
表5:テルビナフィン、トルナフテート、ミコナゾール及びティーツリー油のブドウ球菌種に対する最少阻害濃度(MIC, μg/mL)

【0047】
表6:種々の薬剤による革及び中敷生検ディスクの前処理及び汚染後処理の毛瘡白癬菌の増殖に対する効果

*CZD 透明ゾーンの直径;GZD 増殖ゾーンの直径
**Tol トルナフテート;TTO ティーツリー油
【0048】
表7皮膚糸状菌に対する精油の活性

【0049】
表8:酵母単離株に対する天然精油の活性

【0050】
表9:臭い発生細菌単離株(A)及び病原性細菌単離株(B)に対する天然の油の活性

【0051】
表10:テルビナフィン耐性紅色白癬菌に対する天然の油の活性

【0052】
表11:C.アルビカンスの多剤耐性株(株8280)に対する精油の活性

【0053】
他の実施態様
上記に記載した詳細な説明は、当業者の本発明の実施を容易にするために提供される。しかしながら、本発明の記載及び特許請求の範囲は本明細書に開示した特定の実施態様に限定されない。なぜならば、これらの実施態様は本発明のいくつかの特徴を例示することを意図したものだからである。任意の等価の実施態様が本発明の範囲内に包含される。実際、本明細書に例示したものの他に、本発明の種々の改変が前述の記載から当業者には明白であり、それらは本発明の範囲から外れない。そのような改変は添付の請求の範囲内に包含される。
全ての刊行物、特許、特許出願及び本出願に引用された他の参考文献は、その刊行物、特許、特許出願又は他の参考文献の各々が具体的にかつ個々に全ての目的のために引用によりその全体が本明細書に含まれるように引用により本明細書に含まれる。前記参考文献の本明細書への引用を、それらが本発明の先行技術であると容認するものと解してはならない。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】前処理アッセイ:(A)活性物質は生検ディスク周囲に透明ゾーン(矢印)を示すが、(B)不活性物質はディスク周囲に菌類の増殖を示した。処理後アッセイ:(C)活性物質で処理したディスクは菌類の増殖を示さなかった。(D)不活性物質はディスク上で菌類の増殖を示した。
【図2】(A)CVS二重気泡靴中敷、(B)オドイーター靴中敷、(C)CVSオドストップ靴中敷、(D)ドクター・ショールのエアーピロー靴中敷、(E)コントロール。ドクター・ショールの靴中敷は菌類の増殖を抑制しなかった。
【図3】毛瘡白癬菌(Trichophyton mentagrophytes)の増殖に対する30%イソプロパノールの効果:(A)革及び(B)ドクター・ショールの靴中敷。イソプロパノールは菌類の増殖を抑制しなかった。
【図4】種々の物質による靴中敷(A)又は革(B)生検ディスクの前処理の皮膚糸状菌増殖に対する効果。ゾーン直径は透明ゾーンを示す。
【図5】(A)1%テルビナフィン、(B)1%トルナフテート、又は(C)1%ティーツリー油(tea tree oil)による靴中敷前処理の効果。
【図6】皮膚糸状菌に対するトルナフテートの活性に対するアセトンの影響。アセトン(A)又は4%トルナフテート(w/v、アセトン中で調製)(B)で前処理した靴中敷ディスク上での毛瘡白癬菌の増殖。(C)毛瘡白癬菌による既に発生した汚染に対する4%トルナフテート(アセトンに溶解)の活性(菌類の再増殖は観察されなかった)。
【図7】靴中敷(A)又は革(B)生検ディスクの種々の物質による感染後処理の皮膚糸状菌増殖に対する効果。ゾーン直径は増殖ゾーンを示す。30%イソプロパノールによる処理はビヒクルコントロールとして供した。
【図8】毛瘡白癬菌が感染した靴中敷の走査電子顕微鏡検査(SEM)による分析。全パネルについて倍率はx2000。パネルAからFまで棒線は20μMを表し、感染後処理ディスク(パネルG−I)については10μMを表す。
【図9】毛瘡白癬菌が感染した革生検の走査電子顕微鏡検査(SEM)による分析。倍率はx2000、棒線は20μm。
【図10】図10A:靴の中敷上での紅色白癬菌(T. rubrum)増殖に対する(A)0.01%トルナフテート、(B)3%ティーツリー油又は(C)0.01%トルナフテート+3%ティーツリー油による靴中敷の前処理効果。図10B:感染が生じた靴中敷の(A)0.01%トルナフテート、(B)3%ティーツリー油又は(C)0.01%トルナフテート+3%ティーツリー油による後処理の効果。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)第一の抗-菌類化合物で基層を処理する工程、及びb)第二の抗-菌類化合物で基層を処理する工程を含む、直接又は間接的に表皮と接触する基層の処理方法であって、前記適用過程が、連続的、同時又は別個の適用から成る群から選択される、前記基層の処理方法。
【請求項2】
第一の抗-菌類化合物及び第二の抗-菌類化合物がただ1回適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第一の抗-菌類化合物及び第二の抗-菌類化合物が別個に適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも第三の抗-菌類化合物が基層に適用され、前記適用の過程が、連続的、同時又は別個の適用から成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
基層がアパレルである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
アパレルが靴である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
アパレルがソックスである、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
アパレルがズボン、シャツ、手袋、下着、オムツ、コート及び帽子である、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
基層が寝具類である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
寝具類が、シーツ、毛布、枕、枕カバー、敷布団、及びベッドスプリングから成る群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
基層が家具類である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
家具類が、長いす、イス、寝台、及び個々の家具から成る群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
基層が、動物の寝床、わら、グルーミング用具、畜舎、ケージから成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
動物の寝床が、愛玩動物の寝床及び家畜の寝床から成る群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
愛玩動物の寝床が、イヌ、ネコ、ブタ、トリ及び爬虫類用の寝床から成る群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
家畜の寝床が、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ及びトリ用の寝床から成る群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
グルーミング用具が、クシ、ブラシ、ピック、かみそり、カッターから成る群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
基層が、動物に装着させるか、さもなければ動物と接触する物品から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
物品が、フォーマイト、馬勒、端綱、蹄鉄、及びアパレルから成る群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
第一の抗-菌類化合物及び前記第二の抗-菌類化合物の少なくとも1つが、既知の抗-菌類化合物クラスから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
第一の抗-菌類化合物及び第二の抗-菌類化合物の少なくとも1つが、天然に存在する抗-菌類化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
第一の抗-菌類化合物及び第二の抗-菌類化合物の少なくとも1つが、植物性抗-菌類化合物である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
a)第一の抗-菌類化合物で基層を処理する工程、及びb)少なくとも第二の抗-菌類化合物で基層を処理する工程を含む、直接又は間接的に表皮と接触する基層を処理する方法であって、前記第一の抗-菌類化合物及び前記第二の抗-菌類化合物の少なくとも1つがエーロゾルにより適用される、前記基層の処理方法。
【請求項24】
a)第一の抗-菌類化合物で基層を処理する工程、及びb)少なくとも第二の抗-菌類化合物で基層を処理する工程を含む、直接又は間接的に表皮と接触する基層を処理する方法であって、前記第一の抗-菌類化合物及び前記第二の抗-菌類化合物の少なくとも1つがデリバリー方法により適用される、前記基層の処理方法。
【請求項25】
1つ以上の抗-菌類化合物を基層にデリバリーする方法であって、前記系が、前記第一の抗-菌類化合物及び前記第二の抗-菌類化合物の少なくとも1つを、霧、エーロゾル、スプレー、散剤、挿入又は含浸により適用する、前記デリバリー方法。
【請求項26】
少なくとも1つの抗-菌類化合物が天然に存在する抗-菌類化合物である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
製品の末端ユーザーが使用する前に1つ以上の抗-菌類化合物で基層を処理することを含む、直接又は間接的に表皮と接触する基層を前処理する方法。
【請求項28】
少なくとも1つの抗-菌類化合物が天然に存在する抗-菌類化合物である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
基層が靴又は靴の中敷である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
基層がソックスである、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
抗-菌類特性を有する化合物のLD50を、前記抗-菌類剤を第二の化合物と一緒にすることによって低下させる方法であって、前記第二の化合物が植物性抗-菌類化合物である、前記LD50を低下させる方法。
【請求項33】
基層が靴である、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
基層が、病院、屋内競技場、又は空港の床である、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
少なくとも1つの抗-菌類化合物が胞子を抑制又は殺滅するその能力について選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
抗-菌類化合物が天然に存在する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
抗-菌類化合物が植物性である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
抗-菌類化合物が、クローブの芽油、レモングラス油、及びビャクダン油から成る群から選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
基層が靴である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
処理が前処理である、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
靴処理用組成物であって、約0.01%のトルナフテート及び約3%のティーツリー油を含む、前記組成物。
【請求項43】
基層処理用組成物であって、前記組成物が1%未満のトルナフテート及び1%を超えるティーツリー油を含む、前記組成物。
【請求項44】
少なくとも1つの抗-菌類化合物が殺細菌性化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項45】
殺細菌性化合物が天然に存在する殺細菌性化合物である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
殺細菌性化合物が植物性である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
殺細菌性化合物が、クローブの芽油、レモングラス油、及びビャクダン油である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
胞子の発芽を引き起こすか、又は胞子中への抗-菌類若しくは抗細菌化合物の侵入を高めることによって胞子の感受性を増加させる、本発明の抗-菌類若しくは抗細菌化合物又は本発明の少なくとも1つの抗-菌類若しくは抗細菌化合物を含む混合物を適用する方法。
【請求項49】
抗-菌類化合物を含む組成物が基層への付着性を高める化合物をも含む、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図10】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−512729(P2009−512729A)
【公表日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−537723(P2008−537723)
【出願日】平成18年10月2日(2006.10.2)
【国際出願番号】PCT/US2006/038490
【国際公開番号】WO2007/050242
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(508125494)スタヴァル ファーマ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】