説明

蓄光性テープ及びシートの製造方法

【課題】 蓄光顔料を含有するインキを合成樹脂製テープ又はシートの一面にパターン印刷してなる蓄光性テープ及びシートを製造する方法を提供する。
【解決手段】 インキ印刷工程Aにおいて、基材層3を構成する前記合成樹脂製フィルムの一面に蓄光顔料を含有する紫外線硬化型インキをスクリーン印刷することによって、所定のパターンを形成する。次に、紫外線照射工程Bにおいて、蓄光顔料を含有する紫外線硬化型インキをパターン印刷した合成樹脂製フィルムに高圧水銀ランプ6等により紫外線を照射することによって、紫外線硬化型インキを硬化させる。印刷パターンとしては、星空模様を採用するのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適宜場所、物体等に貼着され、夜間等において発光する蓄光性テープ及びシートを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、住宅、病院、学校等の建築物に設置される階段にあっては、それ程明るい照明が設置させていない場合が多いため、夜間において、踏板の位置が確認し難く、階段を上り下りするには注意する必要があり、十分に注意していないと、踏板を踏み外して転げ落ちる虞があった。
又、停電が発生した場合には、踏板の位置どころか、階段そのものの存在すら確認できなくなるため、階段を上り下りするのが困難になったり、踏板を踏み外して転げ落ち、大怪我をする虞があった。
【0003】
そこで、従来、階段の手摺、踏板等の一部に蓄光性テープ又はシートを貼着し、夜間又は停電が発生した場合に、手摺、踏板等の一部が発光するようにして、階段の存在を明確とし、踏板の位置を確認し易くするようにして、踏板を踏み外すことなく、確実に上り下りできるようにしていた。
【0004】
このような蓄光性テープ又はシートとして、従来、蓄光顔料を含有する合成樹脂材料から成形してなるテープの裏面に粘着剤を塗布したもの(例えば、特許文献1参照。)、合成樹脂製テープ又はシートの表面に蓄光塗液を塗布すると共に裏面に粘着剤を塗布したもの(例えば、特許文献2参照。)が知られている。
【0005】
【特許文献1】特開平09−071756号公報
【特許文献2】特開平11−241052号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の蓄光性テープ又はシートにあっては、表面全体に一様に、いわゆるベタ状態で、蓄光顔料が含有されていたり、蓄光塗液が塗布されていたから、蓄光性テープ又はシートを手摺、踏板等の一部に貼着した場合に、発光作用は比較的に強烈であり、利用者に不安感を惹起させるものであった。又、表面全体に一様に発光するため、冷たい無機質感を惹起させるものであった。
【0007】
そこで、本発明者は、かかる問題点に鑑み、発光作用が比較的に穏和であり、利用者に不安感を惹起させることがなく、意匠性を保有させることもでき、暖かい有機質感をも惹起させることができる蓄光性テープ及びシートを実現すべく、種々研究、検討を重ねた結果、蓄光顔料を含有するインキを合成樹脂製テープ又はシートの一面にパターン印刷してなる蓄光性テープ及びシートを発案するに至った。
【0008】
このような蓄光性テープ及びシートを製造するには、合成樹脂製テープ又はシートの一面に蓄光顔料を含有するインキをオフセット印刷してパターンを形成し、その後、加熱して乾燥、硬化させることによって製造する方法が考えられる。
【0009】
しかし、オフセット印刷した場合には、合成樹脂製テープ又はシートの一面にインキをあまり厚く付着できないため、蓄光性テープ及びシートの発光輝度が低いと共に、残光時間も短いという問題があった。
【0010】
又、インキを加熱して乾燥させた場合には、インキが熱硬化するまでに長い時間を要するため、製造に時間がかかると共に、インキが蒸発して付着厚さが減少するため、蓄光性テープ及びシートの発光輝度が低いと共に、残光時間も短いという問題があった。
【0011】
本発明は、前記問題点に鑑みて為されたものであって、蓄光顔料を含有するインキを合成樹脂製テープ又はシートの一面にパターン印刷してなる蓄光性テープ及びシートを製造する方法において、蓄光性テープ及びシートの発光輝度を高く、かつ、残光時間も長くすることができると共に、製造にかかる時間を短くすることができる蓄光性テープ及びシートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の蓄光性テープ及びシートの製造方法は、合成樹脂製テープ又はシートの一面に蓄光顔料を含有する紫外線硬化型インキをスクリーン印刷してパターンを形成し、その後、紫外線を照射してインキを硬化させることを特徴とする。
【0013】
さらに、前記合成樹脂製テープ又はシートの他面に粘着剤を塗布して粘着剤層を形成してもよい。
【0014】
ここで、印刷パターンとしては、星空模様を採用するのが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の蓄光性テープ及びシートの製造方法について、図面を参照して具体的に説明する。
【0016】
先ず、本発明の製造方法によって製造される蓄光性テープ及びシート1について説明するが、蓄光性テープ及びシート1は、図1及び2に示すように、蓄光材層2、基材層3、粘着剤層4及び剥離紙5から構成される。
尚、本発明においては、テープとは、比較的に幅が狭く、長さが長い帯状のものを意味し、シートとは、比較的に縦横が広い板状のものを意味するものとする。
【0017】
蓄光材層2は、蓄光顔料を含有する紫外線硬化型インキを基材層3の一面にパターン印刷して形成したものである。
【0018】
蓄光顔料は、昼間において、太陽光線等から光エネルギーを吸収、蓄積しておき、夜間において、蓄積した光エネルギーを放出することによって発光する顔料であり、アルミン酸ストロンチューム、ユーロピュームジスプロシューム等を成分とするものを使用することができる。
又、本実施例においては、蓄光顔料の粒径として、1〜5μm、特には2〜4μmのものを使用するのが好ましい。
尚、蓄光顔料には、さらに、酸化チタン、カーボンブラック等の着色剤を添加させてもよい。
【0019】
紫外線硬化型インキの主成分は、前記蓄光顔料に加えて、光重合性プレポリマー、光重合性モノマー及び光重合開始剤である。
【0020】
光重合性プレポリマーは、紫外線硬化樹脂の主成分であって、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、不飽和ポリエステル等を使用することができる。
光重合性モノマーは、樹脂の粘度調整をする反応性希釈剤であって、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、メチレンビスアクリルアマイド、ペンタエリスリトールジアクリレート等を使用することができる。
光重合開始剤は、紫外線を照射されると光重合反応を開始する化合物であって、カルボニル化合物、イオウ化合物、アゾ化合物等を使用することができる。
【0021】
紫外線硬化型インキの各成分の重量比は、好適なものとして、蓄光顔料を約40部、光重合性プレポリマーを約40部、光重合性モノマーを約20部のものを採用したが、これに限定されるものではない。
【0022】
基材層3は、蓄光顔料を含有するインキを担持するものであって、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂製フィルムから構成される。
合成樹脂製フィルムの膜厚としては、10〜500μm、特には20〜100μmのものを使用するのが好ましい。
【0023】
粘着剤層4は、蓄光材層2及び基材層3を適宜場所、物体に貼着する役割を果たすものであって、アクリル樹脂系、シリコーン樹脂系等の有機粘着剤から構成される。
尚、蓄光性テープ及びシート1の使用時に粘着剤を塗布する場合には、予め粘着剤層4を形成しておく必要はなく、剥離紙5も不要である。
【0024】
次に、本発明の蓄光性テープ及びシート1の製造方法について説明するが、本発明の蓄光性テープ及びシート1の製造方法における製造工程は、図3に示すように、インキ印刷工程Aと、紫外線照射工程Bとから成る。
【0025】
先ず、インキ印刷工程Aにおいては、基材層3を構成する前記合成樹脂製フィルムの一面に前記蓄光顔料を含有する紫外線硬化型インキをスクリーン印刷することによって、所定のパターンを形成する。
【0026】
スクリーン印刷によれば、インキの付着厚さを10〜30μm程度と厚くすることが可能であるから、それだけ蓄光性テープ及びシート1の発光輝度を高くすることができると共に、残光時間も長くすることができる。
【0027】
次に、紫外線照射工程Bにおいては、蓄光顔料を含有する紫外線硬化型インキをパターン印刷した合成樹脂製フィルムに高圧水銀ランプ6等によって紫外線を照射する。
ここで、前記高圧水銀ランプ6として、波長365〜436nmのものを使用するのが好ましい。可視光に近い領域の紫外線は、エネルギーはやや小さいものの、紫外線硬化樹脂の内部まで浸透し易いので、インキの硬化時間を短くすることができるからである。
【0028】
紫外線を照射すれば、瞬時に、すなわち0.1〜0.5秒程度でインキは硬化し、基材層3の一面にパターン印刷された蓄光材層2が形成され、本発明の蓄光性テープ及びシート1を製造することができる。
【0029】
前記印刷パターンとして星空模様を採用することができる。ここで、星空模様とは、図1に示すように、蓄光顔料を含有するインキが固化した蓄光材aが基材層3上に点状に散在している模様を意味する。
この印刷パターンを採用すれば、図4に示すように、階段11の手摺12、踏板13等の一部に蓄光性テープ又はシート1を貼着しておけば、夜間又は停電が発生した場合に、手摺、踏板等の一部が発光するから、階段11の存在は明確となり、踏板13の位置を確認し易く、踏板13を踏み外すこともなく、確実に上り下りすることができる。
しかも、蓄光材aが基材層3上に点状に散在しているため、発光作用が比較的に穏和であり、利用者に不安感を惹起させることはなく、意匠性をも保有しており、暖かい有機質感をも惹起させることができる。
【0030】
尚、印刷パターンとしては、前記星空模様に限定されるものではなく、適宜文字パターン、記号パターンとしてもよく、さらには、子供等に好まれるキャラクターの図案を採用してもよい。
【0031】
又、本発明によって製造される蓄光性テープ及びシート1は、基材層3を構成する合成樹脂製フィルムの一面に蓄光顔料を含有するインキをパターン印刷したものであるから、インキが付着し、固化した部分、すなわち、蓄光材aが存在する部分だけ、微小ながらも凸部が形成されることになる。
よって、盲目者、弱視者等にとっては、蓄光性テープ又はシート1の表面を手で触れることによって、階段11の手摺12等が存在することを容易に認識できるという効果も奏する。
【0032】
本発明の蓄光性テープ及びシートの製造方法によれば、幅2cm程度の細長い蓄光性テープ1から、縦90cm、横180cm程度の大面積の蓄光性シート1までを製造することができる。
そして、本発明の製造方法によって製造された蓄光性テープ及びシート1は、図3に示すように、製造後に巻取ドラム7に巻き取っておくのが好ましい。
【0033】
又、蓄光性テープ及びシート1に粘着剤層4を形成しておきたい場合には、上記工程によってインキを紫外線硬化させた後に、基材層3である合成樹脂製テープ又はシートの他面に粘着剤を塗布して粘着剤層4を形成する工程を付加する必要がある。
【0034】
上記においては、蓄光性テープ又はシート1を階段11の手摺12、踏板13等の一部に貼着する場合について説明したが、これらに限らず、適宜場所、物体等に貼着することができ、その場合にも、上記と同様の作用、効果を奏する。
【0035】
さらには、前記蓄光顔料を含有するインキは、さらに蛍光顔料を含有するものであってもよい。
蛍光顔料は、紫外線が当たった時に可視光を発する顔料であって、カルシウム、バリウム、マグネシウム、カドミウム等の酸化物、硫化物、珪酸塩、燐酸塩、タングステン酸塩等を主成分とするものを使用することができる。
【0036】
蓄光顔料に加えて蛍光顔料を含有するインキを使用すれば、夜間又暗所において、より鮮明な発光を期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明によって製造される蓄光性シートの平面図である。
【図2】本発明によって製造される蓄光性シートの断面図である。
【図3】本発明の蓄光性テープ及びシートの製造方法を示す説明図である。
【図4】本発明によって製造される蓄光性テープ又はシートを貼着した階段の外観斜視図である。
【符号の説明】
【0038】
1 蓄光性テープ及びシート
2 蓄光材層
3 基材層
4 粘着剤層
6 高圧水銀ランプ
a 蓄光材
A インキ印刷工程
B 紫外線照射工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製テープの一面に蓄光顔料を含有する紫外線硬化型インキをスクリーン印刷してパターンを形成し、その後、紫外線を照射して硬化させることを特徴とする蓄光性テープの製造方法。
【請求項2】
さらに、前記合成樹脂製テープの他面に粘着剤を塗布して粘着剤層を形成することを特徴とする請求項1に記載の蓄光性テープの製造方法。
【請求項3】
前記印刷パターンは、星空模様であることを特徴とする請求項1又は2に記載の蓄光性テープの製造方法。
【請求項4】
前記合成樹脂製テープに代えて合成樹脂製シートに紫外線硬化型インキをスクリーン印刷してパターンを形成することを特徴とする請求項1乃至3何れか1項に記載の蓄光性シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−216129(P2007−216129A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−38692(P2006−38692)
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【出願人】(504044252)株式会社蔵幸 (4)
【Fターム(参考)】