説明

蓄電デバイス

【課題】 量産性を向上し、かつ内部抵抗の増加を抑制し信頼性が良好な蓄電デバイスを提供する。
【解決手段】 正極集電体および前記負極集電体の巻回方向に平行な一方の長辺には、正極集電体露出部および負極集電体露出部を設け、極集電体露出部および負極集電体露出部は、それぞれ反対方向に突出するように積層され、正極外部端子1および負極外部端子2は、蓄電素子110の最外周の一方の平面部に位置する正極集電体露出部および負極集電体露出部にそれぞれ電気的に接続し、外装材の前記蓄電素子の巻回方向に垂直な一辺から並行して外部に突出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオンキャパシタ、リチウムイオン二次電池などの蓄電デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
充放電可能な電池機能を有する蓄電デバイスには、電気二重層キャパシタ、リチウムイオン二次電池などがある。また近年は、電気二重層キャパシタの正極とリチウムイオン二次電池の負極とで構成されたリチウムイオンキャパシタ等のハイブリッドタイプのキャパシタ(以下、「ハイブリッドキャパシタ」という)も知られている。
【0003】
上述した蓄電デバイスの構造としては、セパレータを介して対向している帯状の正極電極と負極電極を巻回して作製した円筒状素子を、円筒の缶に収納した円筒型蓄電デバイスが用いられている。また、扁平状に巻回した後に角型の缶またはラミネートフィルムに収納した角型蓄電デバイスも広く用いられている。
【0004】
このような蓄電デバイスは、エネルギー源、エネルギー回生用途への適用、さらには無停電源装置や風力発電、太陽光発電などの自然エネルギーへの応用など、様々な分野への適用が検討されている。
【0005】
様々な分野への適用において、アシストする負荷電流が大きくなるほど、蓄電デバイスにはパワー密度の向上が求められる。パワー密度は、蓄電デバイスの重量または容積当たりに取り出すことができる最大の電力量であり、パワー密度の向上のためには、内部抵抗が低いことが要求される。従来、内部抵抗を低減した蓄電デバイスが種々提案されている。
【0006】
例えば、特許文献1には、集電体に集電タブを設けた複数の正極電極および負極電極が、セパレータを介して積層され、正極電極、負極電極それぞれの集電タブに接続した外部端子を並列に接続し外装パッケージに収納した積層型の蓄電デバイスが開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、複数の平板状の正極電極および負極電極がセパレータを介して積層され、正極、負極それぞれの電極集電体に接続した外部端子を並列に接続し外装パッケージに収納した積層型の蓄電デバイスが開示されている。
【0008】
さらに、特許文献3には、セパレータを介して対向する帯状の正極電極と負極電極を扁平状に巻回し巻回体を作製し、外部端子を巻回体の両端に取り付け、ラミネートフィルムからなる外装材に収納した蓄電デバイスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−252023号公報
【特許文献2】特開2004−87431号公報
【特許文献3】特開2005−317295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来技術には下記に掲げる課題がある。
【0011】
第一に、特許文献1に開示されている蓄電デバイスは、蓄電デバイスの外部端子が同一方向から出ている構造であり、顧客から要求された電圧で蓄電素子をモジュール化する際、正極外部端子と負極外部端子を接続することが比較的容易であるが、積層精度を保った状態での量産性の向上および信頼性の確保が困難であるという課題がある。その理由として、特許文献1に記載の蓄電デバイスは、集電体の一部から集電タブを延出し、正極電極および負極電極を切断し、更にそれを積層していくため、短時間で精度よく切断、積層することが難しいことが挙げられる。仮に、量産性を向上する為に各部材の切断時間や積層時間を短縮すると、切断不良や積層ずれ等の問題が発生し工程歩留りが悪くなり、更には信頼性が低下するという課題が生ずる。
【0012】
第二に、特許文献2に開示されている蓄電デバイスは、積層精度を保った状態での量産性の向上および信頼性の確保と、更には素子をモジュール化する際の接続が困難であるという課題がある。特許文献2に記載の蓄電デバイスは、複数の平板状の正極電極および負極電極がセパレータを介して積層され、正極、負極それぞれの集電体に接続した外部端子を並列に接続し外装材に収納した構成になっている。特許文献1に記載の正極電極および負極電極を用いる場合に比較すると、切断での不具合が発生する確率は低くなる為に歩留りは向上し改善されている。しかし、複数の平板状の正極電極、セパレータ、負極電極を切断し、更にそれを積層する際、量産性を向上する為に各部材の切断および積層時間を短縮すると、切断不良や積層ずれなどの問題が発生する。このため、工程歩留りの低下および信頼性の確保が十分ではないという課題がある。
【0013】
第三に、特許文献3に開示されている蓄電デバイスは、低抵抗化および信頼性の確保が困難であるという課題がある。特許文献3の蓄電デバイスは、セパレータを介して対向する帯状の正極電極と負極電極を扁平状に巻回し巻回体を作製し、外部端子を巻回体の両端に取り付け、ラミネートフィルムからなる外装材に収納する構造である。このため、特許文献1や特許文献2に記載の蓄電デバイスと比較して、積層、切断工程が格段に少なく、蓄電素子(巻回体)の製造が容易であり量産化に優れている構造といえる。しかしながら、蓄電素子の両端に外部端子が接続されているため、電解質溶液を注液、含浸する際、外部端子の接続箇所が電解質溶液の浸透の妨げとなり、扁平巻回構造である蓄電素子の巻回内部に電解質溶液を均一に含浸させることが困難である。対して、外部端子の幅を細くし、蓄電素子の巻回内部まで電解質溶液を均一に含浸させることも考えられるが、外部端子の幅を細くすると、抵抗が増加する為、発熱等の問題が発生し、大電流での高速充放電が十分にできないという課題がある。
【0014】
本発明は上述した課題を解決するためになされたもので、その目的は、量産性を向上し、かつ内部抵抗の増加を抑制し信頼性が良好な蓄電デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、扁平巻回構造の蓄電素子の最外周に正極外部端子および負極外部端子を取り付け、蓄電素子の同一方向から各外部端子を取り出すように配置し、外装材の一辺から各外部端子を外部に突出させることで、量産性を向上し、かつ内部抵抗の増加を抑制し信頼性が良好となる蓄電デバイスである。
【0016】
すなわち、本発明は、帯状の金属箔からなる正極集電体の少なくとも一方の主面に正極活物質層を形成した正極電極と、帯状の金属箔からなる負極集電体の少なくとも一方の主面に負極活物質層を形成した負極電極と、前記正極電極および前記負極電極の前記主面にそれぞれ対向して配置されるセパレータを積層し、扁平状に巻回した蓄電素子を備え、前記正極電極および前記負極電極には正極外部端子および負極外部端子の一端を電気的に接続し、前記正極外部端子および前記負極外部端子の他端を外部に突出させ、前記蓄電素子を電解質溶液とともに外装材にて密閉する蓄電デバイスであって、前記正極集電体および前記負極集電体の巻回方向に平行な一方の長辺には、正極集電体露出部および負極集電体露出部を設け、前記正極集電体露出部および前記負極集電体露出部は、それぞれ反対方向に突出するように積層され、前記蓄電素子は、折り曲げて巻回する2つの湾曲部と前記湾曲部に挟まれる2つの平面部を有し、前記正極外部端子および前記負極外部端子は、前記蓄電素子の最外周の一方の平面部に位置する正極集電体露出部および負極集電体露出部にそれぞれ電気的に接続し、前記蓄電素子の巻回方向に垂直な一辺から並行して前記外装材の外部に突出させたことを特徴とする蓄電デバイスである。この構成により、蓄電素子の切断ずれや積層ずれが発生しにくく、かつ各外部端子の取り付けも容易となり、量産性を向上した蓄電デバイスが得られる。また、各外部端子と各集電体との接触面積を十分にとることができ、かつ電解質溶液の蓄電素子への浸透を効率よく行うことができるため、内部抵抗の増加を抑制し信頼性が良好な蓄電デバイスが得られる。
【0017】
また、前記正極外部端子および前記負極外部端子の巻回方向に平行な辺の長さは、それぞれ同じであることが好ましい。この構成により、大電流を取り出す場合においても、電流が集中する箇所が発生しないため、内部抵抗が低く信頼性が良好な蓄電デバイスが得られる。また、単純な形状となるため、量産性も向上する。
【0018】
また、前記正極外部端子と前記負極外部端子は、異なる電気抵抗率を有する金属板からなり、前記電気抵抗率の大きい方が、前記外装材から突出する側の正極集電体露出部または負極集電体露出部に接続されることが好ましい。この構成により、正極外部端子と負極外部端子の電気抵抗率が異なる場合でも、電気抵抗率が大きい方の外部端子の体積を小さくすることができ、内部抵抗の更なる低減が可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の構造により、量産性を向上し、かつ内部抵抗の増加を抑制し信頼性が良好な蓄電デバイスを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の蓄電デバイスの構造を示す図で、図1(a)は正面図、図1(b)は底面図、図1(c)は上面図、図1(d)は右側面図、図1(e)は左側面図。
【図2】本発明の蓄電デバイスの蓄電素子の構成要素を示す図で、図2(a)は正極電極の正面図、図2(b)は負極電極の正面図、図2(c)はセパレータの正面図。
【図3】本発明による蓄電デバイスの蓄電素子を示す正面図。
【図4】比較例1の蓄電素子の構成要素を示す図で、図4(a)は正極電極の正面図、図4(b)は負極電極10の正面図、図4(c)はセパレータの正面図。
【図5】比較例1の蓄電素子の正面図。
【図6】比較例2の蓄電素子の構成要素を示す図で、図6(a)は正極電極の正面図、図6(b)は負極電極の正面図、図6(c)はセパレータの正面図。
【図7】比較例2の蓄電素子の正面図。
【図8】比較例2の蓄電デバイスの構造を示す図で、図8(a)は正面図、図8(b)は底面図、図8(c)は上面図、図8(d)右側面図、図8(e)は左側面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の蓄電デバイスの実施の形態について、図面を参照して説明する。本実施の形態では、蓄電デバイスとしてリチウムイオンキャパシタを用いた。
【0022】
図1は、本発明の蓄電デバイスの構造を示す図で、図1(a)は正面図、図1(b)は底面図、図1(c)は上面図、図1(d)は右側面図、図1(e)は左側面図である。本発明の蓄電デバイスは、正極外部端子1と負極外部端子2の先端が、外装材3の一辺から同一方向に突出している構造となっている。外装材3は、2枚のシートで構成され、外部端子が接続された蓄電素子(図示せず)の上側と下側から挟むように配置される。上側と下側の外装材3の間には、リチウム塩含有の電解質溶液が充填されており、蓄電素子は電解質溶液に浸漬された状態となっている。
【0023】
本発明の蓄電デバイスは、上側と下側の外装材3同士を周縁部で接着して、蓄電素子と電解質溶液を内蔵した状態で密封し、漏出を防ぐ構成となっている。また、外装材3の正極外部端子1および負極外部端子2が外部に突出する位置(接合部)では、各外部端子の周囲を被覆して封止する構成となっている。したがって、蓄電素子は、外装材3同士の接着と外装材3による正極外部端子1と負極外部端子2の接合部の周囲の被覆によって完全に密封されている。外装材3には、金属箔とポリオレフィン系フィルムを貼り合わせたラミネートフィルムを使用できる。外装材3の内面側には熱可塑性樹脂が形成され、熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、酸変性プロピレン、エチレンーメタクリル酸共重合体などが使用できる。
【0024】
図2は、本発明の蓄電デバイスの蓄電素子の構成要素を示す図で、図2(a)は正極電極の正面図、図2(b)は負極電極の正面図、図2(c)はセパレータの正面図である。図2(a)に示す正極電極9は、正極集電体5と正極活物質層7からなり、帯状の正極集電体5の少なくとも一方の主面に、正極活物質層7を塗工または貼り合わせて構成される。正極電極9は、正極集電体5の長手方向に沿う長辺に、正極活物質層7が形成されない正極集電体露出部を有している。正極集電体5は、アルミニウムやアルミニウム合金などの金属箔からなり、貫通孔が形成されている。正極活物質層7は、炭素材料を主成分とする活物質を多量に含む電極合剤層であって、バインダおよび導電剤を含むことが多い。
【0025】
図2(b)に示す負極電極10は、負極集電体6と、リチウムを可逆的に吸蔵、脱離可能な負極活物質層8からなり、帯状の負極集電体6の少なくとも一方の主面に、負極活物質層8を塗工または貼り合わせて構成される。負極電極10は、負極集電体6の長手方向に沿う長辺に、負極活物質層8が形成されない負極集電体露出部を有している。負極集電体6は、銅や銅合金などの金属箔からなり、貫通孔が形成されている。負極活物質層8は、炭素材料を主成分とする活物質を多量に含む電極合剤層であって、バインダおよび導電剤を含む。なお、本実施の形態では、正極集電体5および負極集電体6に、貫通孔を有するものを使用したが、プレーン箔やエッチング箔でも構わない。
【0026】
図2(c)に示すセパレータ4は、絶縁性の薄板であり、一般には正極電極9、負極電極10よりもやや大きく構成され、電解質溶液が浸透しやすい素材であることが必要である。
【0027】
本実施の形態の蓄電素子は、図2(c)に示すセパレータ4、図2(b)に示す負極電極10、図2(c)に示すセパレータ4、図2(a)に示す正極電極9、図2(c)に示すセパレータ4の順で積層し、扁平状に巻回したものである。
【0028】
図3は、本発明による蓄電デバイスの蓄電素子を示す正面図である。上述したように積層した正極電極9と負極電極10とセパレータ4を、正極電極9が内側になるように、一定間隔で扁平状に巻回して蓄電素子110を作製する。このとき、正極集電体露出部と負極集電体露出部は互いに重ならないようにずらして積層され、セパレータ4を除く最外周には、それぞれの集電体露出部が露出している構成となっている。蓄電素子110は、巻回するときに折り曲げる2つの湾曲部と、2つの湾曲部に挟まれる2つの平面部を有している。この蓄電素子110に、正極外部端子1と負極外部端子2を取り付けた構成となっている。正極外部端子1および負極外部端子2は、正極電極9の正極集電体露出部におよび負極電極10の負極電極集電体露出部に、それぞれ電気的に接合される。
【0029】
正極外部端子1および負極外部端子2は、蓄電素子110の一方の平面部の一辺から同一方向に取り出される。すなわち、本実施の形態では、正極集電体露出部に接合された正極外部端子1は、蓄電素子110の平面部に平行で、かつ蓄電素子110の巻回方向に垂直となるように、外側に向けて配置される。一方、負極集電体露出部に接合された負極外部端子2は、蓄電素子110の平面部に平行で、かつ蓄電素子の110の巻回方向に垂直となるように、接合部分と反対側の辺の外側に向けて配置される。したがって、負極外部端子2は、正極外部端子1よりも巻回方向に垂直な長さ寸法が大きくなる。このとき、正極外部端子1と負極外部端子2の幅寸法と厚み寸法は、生産性を考慮すると同一とするのが望ましい。また、蓄電素子110から取り出す電流を大きくするために、各外部端子の幅寸法は絶縁が確実にされた状態で、なるべく大きくするのが望ましい。さらに、大電流を取り出すときに電流経路を一定とし、電流が集中する箇所が発生しないように、各外部端子の幅寸法がそれぞれ同じとなるようにするのが望ましい。
【0030】
また、正極外部端子1と負極外部端子2の配置は反対でもよいが、外部端子を形成する金属板の電気抵抗率が高い方の長さ寸法を短くし、外部端子の体積を小さくするのが、内部抵抗の低減のために好ましい。例えば、本実施の形態において、アルミニウム板から正極外部端子1は、銅板からなる負極外部端子2と比較して、材料自体の電気抵抗率が高いため、体積が小さいほうが好ましい。そのため、本実施の形態では、正極外部端子1の長さ寸法が短くなるように、各外部端子を取り出す側に、正極集電体露出部および正極外部端子1を配置している。
【0031】
正極外部端子1および負極外部端子2には、外装材と接合する部分に、外装材との密着性、外装材内部の密閉性を向上するための充填材を付加してもよい。
【0032】
さらに、図示はしないが、本実施の形態の蓄電素子の外側には、負極電極の負極活物質層にリチウムイオンを供給するための、リチウム挿入用電極が設けられる。このリチウム挿入用電極は、超音波溶接により負極電極と接合されている。接合方法は、超音波溶接に限られるものではなく、抵抗溶接、レーザ溶接などでもよい。またリチウム挿入用電極は、銅などの金属箔からなる集電体に金属リチウムを貼り合わせ固定されている。負極活物質層へのリチウムイオンの挿入後は、リチウム挿入用電極を取り出すことが望ましいが、挿入量にあわせた金属リチウムを用い消費させれば、リチウム挿入用電極をそのまま負極電極と接合したままでもよい。
【0033】
ここで、本発明の実施の形態における、扁平巻回構造のハイブリッドキャパシタの製造方法の例を以下に説明する。
【0034】
(正極電極)
正極電極は、アルミニウム箔またはステンレス箔等からなる金属箔の正極集電体の表面に、炭素材料を主成分とする正極活物質とバインダおよび導電剤を混合した、シート状の正極活物質層を形成し一体化させたものである。正極活物質となる炭素原料としては、木材、鋸屑、椰子殻、パルプ廃液などの植物系物質、石炭、石油重質油、またはそれらを熱分解して得られる石炭系および石油系ピッチ、石油コークス、カーボンエアロゲル、タールピッチなどの化石燃料系物質、フェノール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデンなどの合成高分子系物質など各種のものが用いられる。これらの炭素原料を炭化した後に、ガス賦活法もしくは薬品賦活法によって賦活し、比表面積が700m/g〜3000m/gとなる炭素系の正極活物質を得る。この正極活物質の比表面積は、特に1000m/g〜2000m/gとするのが好ましい。また、バインダとしては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、フルオロオレフィン共重合体架橋ポリマー等の含フッ素系樹脂、スチレン−ブタジエンゴム等のゴム系バインダ、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂などが用いられる。特に、ポリテトラフルオロエチレンが、耐熱性、耐薬品性、作製されるシート状の正極活物質層の強度の観点から好ましい。このバインダは、正極活物質層の全体の3質量%〜20質量%程度となるように作製するのが好ましい。さらに、導電剤としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどのカーボンブラック、天然黒鉛、熱膨張黒鉛炭素繊維などの物質が使用できる。この導電剤は、正極活物質層の全体の5質量%〜30質量%程度添加するのが好ましい。
【0035】
次に、正極電極を作製する方法の例について説明する。以下に説明する例では、正極集電体としてアルミニウム箔を用い、正極活物質となる炭素原料としてフェノール樹脂、バインダとしてポリテトラフルオロエチレン、また導電剤としてケッチェンブラックを選択している。まず、フェノール樹脂を炭化し、賦活して作製した活性炭粉末とポリテトラフルオロエチレンとケッチェンブラックの三者を混練し、次いで圧延を行ってシート状の正極活物質層を成形する。こうして得られた正極活物質層を、粗面化されたアルミニウム箔からなる正極集電体に、導電性カーボンペーストを用いて接着する。さらに加熱乾燥することで一体化し、これを正極電極とする。このとき、帯状の正極集電体の一方の長辺には、一定の幅で正極活物質層を形成しない正極集電体露出部を設ける。
【0036】
正極電極は、上記の方法ではなく、正極活物質層と正極集電体とを重ね合わせて、これらを互いに圧着させる方法で作製してもよい。また、この正極活物質層は、正極集電体の片面に形成してもよいし、両面に形成してもよい。さらに、メチルセルロースやポリフッ化ビニリデンなどのバインダを溶媒に溶解した溶液に、上記の正極活物質や導電剤を混合、分散させてスラリーとし、このスラリーを正極集電体の片面あるいは両面に塗工する方法により、正極電極を作製してもよい。
【0037】
(負極電極)
負極電極は、銅箔、ニッケル箔、ステンレス箔等からなる金属箔の負極集電体の表面に、炭素材料を主成分とする負極活物質とバインダおよび導電剤を混合した、シート状の負極活物質層を形成し一体化させたものである。負極活物質となる炭素材料としては、リチウムイオンの吸蔵、脱離が可能な、グラファイト、不定形炭素などを用いることができる。また、バインダとしては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、フルオロオレフィン共重合体架橋ポリマー等の含フッ素系樹脂、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム等のゴム系バインダ、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂などが用いられる。特に、ポリフッ化ビニリデンが、耐熱性、耐薬品性、作製されるシート状の負極活物質層の強度の観点から好ましい。このバインダは、負極活物質層の全体の3質量%〜20質量%程度となるように作製するのが好ましい。さらに、導電剤としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、天然黒鉛、熱膨張黒鉛炭素繊維等の物質が使用できる。この導電材は、負極活物質層の全体の5質量%〜30質量%程度添加するのが好ましい。
【0038】
次に、負極電極を作製する方法の例について説明する。以下に説明する例では、負極集電体として銅箔を用い、負極活物質となる炭素原料として難黒鉛化炭素材料、バインダとしてポリテトラフルオロエチレン、また導電剤としてケッチェンブラックを選択している。まず、難黒鉛化炭素材粉末とポリテトラフルオロエチレンとケッチェンブラックの三者を混練し、次いで圧延を行ってシート状の負極活物質層を成形する。こうして得られた負極活物質層を、銅箔からなる負極集電体に、導電性カーボンペーストを用いて接着する。さらに加熱乾燥することで一体化し、これを負極電極とする。このとき、帯状の負極集電体の一方の長辺には、一定の幅で負極活物質層を形成しない負極集電体露出部を設ける。
【0039】
負極電極は、上記の方法ではなく、負極活物質層と負極集電体とを重ね合わせて、これらを互いに圧着させる方法で作製してもよい。また、この負極活物質層は、負極集電体の片面に形成してもよいし、両面に形成してもよい。さらに、メチルセルロースやポリフッ化ビニリデンなどのバインダを溶媒に溶解した溶液に、上記の負極活物質や導電剤を混合、分散させてスラリーとし、このスラリーを負極集電体の片面あるいは両面に塗工する方法により、負極電極を作製してもよい。
【0040】
(セパレータ)
また、正極電極と負極電極の間や、最外層に設置されるセパレータは、厚さが薄く、しかも電子絶縁性およびイオン透過性が高い材料が好ましい。セパレータの構成材料はとくに限定されるものではないが、たとえば、ポリエチレンやポリプロピレンなどの不織布、もしくはビスコースレーヨンや天然セルロースの抄紙などが好適に使用できる。セパレータは、作製する蓄電デバイスの種別に応じてその構成材料を選定することが好ましい。
【実施例】
【0041】
以下、実施例および比較例について説明する。なお、実施例1〜3および比較例1〜3はリチウムイオンキャパシタを、実施例4および比較例4はリチウムイオン二次電池をそれぞれ作製し、各種評価を行ったものである。
【0042】
(実施例1)
正極活物質である比表面積が1500m/gのフェノール系活性炭の粉末92質量部と、導電剤として黒鉛8質量部を混合した粉末に対し、バインダとしてスチレン−ブタジエンゴム3質量部、カルボキシルメチルセルロース3質量部、溶媒として水200質量部となるように加え、混練してスラリーを得た。次いで、エッチング処理により両面が粗面化された厚さ20μmのアルミニウム箔を正極集電体として、その両面に上記スラリーを均一に塗布した。正極集電体は、予め直径100μmの貫通孔が、開孔率20%となるように形成されたものを使用した。スラリーを塗布した後、乾燥させて圧延プレスし、両面の各厚さが30μmとなる正極活物質層を形成した。正極電極の厚さは80μmとなった。ここで、正極集電体の一方の長辺には、一定の幅で正極活物質層が形成されない正極集電体露出部を設け、アルミニウム箔を露出させた。
【0043】
負極活物質である難黒鉛化材料粉末88質量部と、導電剤としてアセチレンブラック6質量部を混合した粉末に対し、バインダとしてスチレン−ブタジエンゴム5質量部、カルボキシルメチルセルロース4質量部、溶媒として水200質量部となるように加え、混練してスラリーを得た。次いで、厚さ10μmの銅箔を負極集電体として、その両面に上記スラリーを均一に塗布した。負極集電体は、予め直径100μmの貫通孔が、開孔率20%となるように形成されたものを使用した。スラリーを塗布した後、乾燥させて圧延プレスし、両面の各厚さが20μmとなる負極活物質層を形成した。負極電極の厚さは50μmとなった。ここで、負極集電体の一方の長辺には、一定の幅で正極活物質層が形成されない負極数電体露出部を設け、銅箔を露出させた。
【0044】
セパレータとして、厚さ35μmの天然セルロース材の薄板を使用した。このセパレータの寸法形状は、上記各電極よりも少しだけ大きくなるように構成した。
【0045】
次いで、セパレータ、負極電極、セパレータ、正極電極、セパレータの順番でこれら三者を積層し、正極電極が内側になるように一定間隔(約164mm)で扁平状に巻回し、蓄電素子を作製した。この蓄電素子の最外周にはセパレータが配置されるように構成した。このとき、各電極の各集電体露出部は、互いに反対方向に位置するように配置し、さらに互いに重ならないようにずらして積層した。本実施例では、正極集電体の寸法は長さ82mm×幅820mm、負極集電体の寸法は長さ84mm×幅825mm、セパレータの寸法は長さ86mm×幅831mmとした。また、正極活物質層は長さ70mm×幅820mm、負極活物質層は長さ72mm×幅825mmとした。すなわち、正極集電体露出部と負極集電体露出部を、各集電体の長辺に端縁から12mmの長さで設けた。
【0046】
正極外部端子は、長さ20mm×幅70mm×厚さ0.2mmのアルミニウム板を使用し、負極外部端子は、長さ102mm×幅70mm×厚さ0.2mmの銅板を使用した。外装材から突出している領域は、各外部端子ともに長さ10mm×幅70mmとした。外装材と熱接着する部分には、酸変性ポリオレフィン樹脂からなるシーラントを両面に施した。
【0047】
次に、正極集電体露出部を束ね、一括して正極外部端子の片端に超音波溶接により固定した。同様に、負極集電体露出部を束ね、一括して負極外部端子の片端に超音波溶接により固定した。このとき、正極外部端子は、蓄電素子の平面部に平行で、かつ蓄電素子の巻回方向に垂直となるように、外側に向けて配置した。負極外部端子は、蓄電素子の平面部に平行で、かつ蓄電素子の巻回方向に垂直となり、さらに正極外部端子と同一方向から取り出すように配置した。
【0048】
次に、負極活物質にリチウムイオンを吸蔵させるためのリチウム挿入用電極を作製した。リチウム挿入用電極は、銅箔の表面に、リチウム挿入外部端子取り付け部分を除いて金属リチウムを貼り合わせ、リチウム挿入用外部端子を超音波溶接により固定して作製した。その後、リチウム挿入用電極の金属リチウムが、蓄電素子の平面部と対向するように配置した。さらに、2枚の外装材で蓄電素子とリチウム挿入用電極板を挟み、正極外部端子および負極外部端子を配置する1つの長辺と、リチウム挿入用外部端子を配置する1辺を含む3辺の周縁部を熱圧着し、外装材の内面に形成した酸変性ポリオレフィン樹脂からなる熱可塑性樹脂層を接合させて袋状とした。この外装材の内面の熱可塑性樹脂層の厚さは40μmとした。
【0049】
最後に、袋状にした外装材の内部に電解質溶液を注入した。電解質溶液は、六フッ化リン酸リチウムをプロピレンカーボネートとジエチルカーボネートを1:1の割合で混合させた混合溶媒に溶解させ、1mol/lの濃度に調製したものを使用した。電解質溶液を注入した後に、外装材の残る1辺を、真空雰囲気中にて熱圧着により封止した。リチウム挿入用外部端子と負極外部端子を電気的に接続し、電気化学的手法により、リチウム挿入用電極から負極活物質層にリチウムイオンを挿入し吸蔵させた。リチウムイオンの挿入量は、負極活物質の質量に対し400mAh/gとした。リチウムイオン挿入完了後、外装材の短辺を開封し、余分な電解質溶液を取り出した後、開封した短辺を真空雰囲気中にて再度熱圧着し封止した。
【0050】
以上の方法により、扁平巻回構造のリチウムイオンキャパシタを得た。実施例1では、リチウムイオンキャパシタを50個作製した。
【0051】
(実施例2:集電体)
実施例2では、正極集電体および負極集電体に、貫通孔が形成されていないプレーン箔を使用した。その他の材料および製造条件などはすべて実施例1と同様とし、リチウムイオンキャパシタを50個作製した。
【0052】
(実施例3:外部端子寸法)
【0053】
実施例3では、正極外部端子および負極外部端子の幅寸法を70mmから30mmに変更した。その他の材料および製造条件などはすべて実施例1と同様とし、ハイブリッドキャパシタを50個作製した。実施例3の正極外部端子は、長さ20mm×幅30mm×厚さ0.2mmのアルミニウム板を使用し、負極外部端子は、長さ102mm×幅30mm×厚さ0.2mmの銅板を使用した。
【0054】
(比較例1〜3:従来技術による場合)
比較例1〜3は、従来技術によるリチウムイオンキャパシタ50個を、以下に説明するそれぞれの条件で作製した。使用する構成部材の材料は、実施例1と同様とした。
【0055】
比較例1は、従来技術である特許文献1と類似の構成を、リチウムイオンキャパシタの作製に適用したものである。図4は、比較例1の蓄電素子の構成要素を示す図で、図4(a)は正極電極の正面図、図4(b)は負極電極10の正面図、図4(c)はセパレータの正面図である。図5は、比較例1の蓄電素子の正面図である。
【0056】
比較例1は、図4に示すように、正極電極19および負極電極20が、正極集電体15と負極集電体16の一部が延出した旗型の形状のものである。各集電体の一部が延出した延出部には、正極活物質層17、負極活物質層18が形成されない構成とした。セパレータ14、負極電極20、セパレータ14、正極電極19、セパレータ14の順番でこれら三者を積層し、蓄電素子を得た。本比較例では、1試料あたりの積層した正極電極19は4枚、負極電極20は5枚、セパレータ14は10枚とした。また、各集電体の延出部を除いた寸法は、正極電極19が長さ70mm×幅163mm、負極電極20が長さ72mm×幅165mm、セパレータ14が長さ74mm×幅169mmであった。また、各集電体の一部に形成した延出部は、各集電体の長辺の同一方向から延出し、延出部の寸法は、それぞれ長さ20mm×幅70mmとした。
【0057】
図5に示すように、比較例1の蓄電素子120においても、正極集電体15および負極集電体16から延出した延出部をそれぞれ束ね、一括して正極外部端子11および負極外部端子12を超音波溶接により接合した。正極外部端子11および負極外部端子12の寸法は、それぞれ長さ20mm×幅72mm×厚さ0.2mmとした。外装材13等の上述した以外の構成および寸法は実施例1と同様とした。
【0058】
比較例2は、従来技術である特許文献3と類似の構成を、リチウムイオンキャパシタの作製に適用したものである。図6は、比較例2の蓄電素子の構成要素を示す図で、図6(a)は正極電極の正面図、図6(b)は負極電極の正面図、図6(c)はセパレータの正面図である。図7は、比較例2の蓄電素子の正面図である。また、図8は、比較例2の蓄電デバイスの構造を示す図で、図8(a)は正面図、図8(b)は底面図、図8(c)は上面図、図8(d)右側面図、図8(e)は左側面図である。
【0059】
図8に示すように、比較例2の蓄電デバイスは、正極外部端子21と負極外部端子22は、外装材23の対向する一対の辺から突出する構成となっている。比較例2は、図6および図7に示すように、長方形状の正極電極29および負極電極30の一端側に、正極集電体25および負極集電体26が露出した構造となっている。この集電体露出部には、正極活物質層27および負極活物質層28が形成されず、さらに各集電体露出部が互いに反対方向に位置するように配置される。セパレータ24、負極電極30、セパレータ24、正極電極29、セパレータ24の順番でこれら三者を積層し、蓄電素子を得た。本比較例では、1試料あたりの積層した正極電極29は4枚、負極電極30は5枚、セパレータ24は10枚とした。正極集電体25の寸法は長さ72mm×幅175mm、負極集電体26の寸法は長さ74mm×幅177mm、セパレータ24の寸法は長さ76mm×幅180mmとした。また、正極活物質層27は長さ72mm×幅163mm、負極活物質層28は長さ74mm×幅165mmとした。すなわち、各集電体露出部は、各集電体の一方の短辺に端縁から12mmの幅で設けた。
【0060】
比較例2の蓄電素子130においても、正極集電体25および負極集電体26の集電体露出部をそれぞれ束ね、一括して正極外部端子21および負極外部端子22を超音波溶接により接合した。正極外部端子21は、長さ70mm×幅20mm×厚さ0.2mmのアルミニウム板を使用し、負極外部端子22は、長さ70mm×幅20mm×厚さ0.2mmの銅板を使用した。図8に示す外装材23から突出している領域は、各外部端子ともに、長さ70mm×幅10mmとした。上述した以外の構成および寸法は実施例1と同様とした。
【0061】
比較例3は、扁平巻回構造の蓄電素子において、巻回幅の寸法と、外部端子の取り出し位置を変更した。実施例1と異なる点は、セパレータ、負極電極、セパレータ、正極電極、セパレータの順番でこれら三者を積層し、正極電極が内側になるように一定間隔(実施例1が約164mmに対して約72mm)で扁平状に巻回して蓄電素子を作製したことである。このとき、実施例1と同様に、正極電極と負極電極の各集電体には、活物質層を形成しない正極集電体露出部と負極集電体露出部を設けた。各集電体露出部が反対方向に位置し、かつ露出するようにずらして配置、積層した。各寸法は、正極集電体が長さ172mm×幅354mm、負極集電体が長さ177mm×幅360mm、セパレータが長さ180mm×幅365mmとした。また、正極活物質層は長さ160mm×幅354mm、負極活物質層は長さ165mm×幅360mmとした。すなわち、正極集電体露出部と負極集電体露出部を、各集電体の一方の長辺に端縁から12mmの幅で設けた。
【0062】
正極外部端子は、長さ20mm×幅70mm×厚さ0.2mmのアルミニウム板を使用し、負極外部端子は、長さ20mm×幅70mm×厚さ0.2mmの銅板を使用した。外装材から突出している領域は、各外部端子ともに長さ10mm、幅70mmとした。外装材と熱接着する部分には、酸変性ポリオレフィン樹脂からなるシーラントを両面に施した。
【0063】
次に、正極集電体露出部を束ね、一括して正極外部端子の片端に超音波溶接により固定した。同様に、負極集電体露出部を束ね、一括して負極外部端子の片端に超音波溶接により固定した。正極外部端子と負極外部端子は、蓄電素子の平面部に平行で、かつ巻回方向に垂直となり、それぞれ反対方向から取り出すように配置した。
【0064】
(実施例4および比較例4:蓄電デバイスの種類)
実施例4では、蓄電デバイスの種類を変更した。正極活物質に、実施例1のフェノール系活性炭ではなく、コバルト酸リチウム(LiCoO)を用い、また、セパレータに、実施例1のセルロース系ではなく、ポリエチレン系セパレータを用いた。これら以外に関しては、実施例1と同じ材料を用い同様の工法で、リチウムイオン二次電池を50個作製した。
【0065】
比較例4は、比較例1と同様の構成で、蓄電デバイスの種類を変更した。正極活物質に、比較例1のフェノール系活性炭ではなく、コバルト酸リチウム(LiCoO)を、また、セパレータに、比較例1のセルロース系ではなく、ポリエチレン系セパレータを用いた。これら以外に関しては、比較例1と同じ材料を用い同様の工法で、リチウムイオン二次電池を50個作製した。
【0066】
(評価方法)
実施例1〜4、および比較例1〜4において作製した蓄電デバイスは、それぞれ以下の評価を行った。評価項目は、直流抵抗(以下「DC−R」と呼ぶ)測定、容量測定、自己放電特性、高温環境下での信頼性試験とした。
【0067】
DC−R測定評価として、蓄電デバイスを充放電装置にて所定の定電圧で1時間充電した後、電流値20Cで放電した際のDC−Rを測定した。DC−Rの選別規格は、従来技術である比較例1を基準とし、比較例1から抜き取った20個(明らかな不良品は除く)について測定したDC−R値の平均値+3σの値以下とした。選別規格より大きいものは不良とし、評価数に対する不良数から不良率を算出した。実施例4および比較例4は、リチウムイオン二次電池であるため不良選別の対象外とした。
【0068】
容量測定評価として、蓄電デバイスを充放電装置にて所定の定電圧で1時間充電した後、電流値20Cで使用下限電圧まで放電した際の電流容量を測定した。容量の選別規格は、比較例1から抜き取った20個(明らかな不良品は除く)について測定した容量平均値の90%以上をした。選別規格より小さいものは不良とし、評価数に対する不良数から不良率を算出した。実施例4および比較例4は、リチウムイオン二次電池であるため不良選別の対象外とした。
【0069】
自己放電測定評価として、蓄電デバイスを充放電装置にて所定の定電圧で1時間充電した後、端子間を開回路にした状態で、恒温槽にて60℃で72時間放置した後の端子間電圧を測定した。自己放電の選別規格は、比較例1から抜き取った10個(明らかな不良品は除く)について測定した電圧平均値−3σの値以上とした。選別規格より小さいものは不良とし、評価数に対する不良数から不良率を算出した。
【0070】
信頼性試験として、実施例1〜3と比較例1〜3は、70℃の環境下、100Cの負荷をかけて200万回充放電サイクル試験を実施した。また、実施例4と比較例4は、60℃の環境下、1Cの負荷をかけて750回充放電サイクル試験を実施した。そして、試験前のDC−Rに対する変化率を算出した。
【0071】
以上の方法により、実施例1〜4、比較例1〜4における試料(各50個)について、DC−R測定評価、容量測定評価、自己放電測定評価、信頼性試験の評価をそれぞれ行った。平均DC−R、平均容量、自己放電不良率、総合不良率、信頼性評価結果を表1に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
本発明の実施例において、DC−Rおよび容量は、従来技術の比較例に対して同等以上の特性を有しており、蓄電デバイスの内部抵抗の増加を抑制することが可能となっている。比較例3の蓄電デバイスは、正極外部端子および負極外部端子が、蓄電素子の対向する一対の辺からそれぞれ反対方向に取り出す構造である。この比較例3は、DC−Rの値が高くなっているため、本発明の、正極外部端子および負極外部端子を同一方向から取り出す構成が有効である。比較例3では、各外部端子が蓄電素子への電解質溶液の含浸を阻害し、均一に含浸されなかったため、内部抵抗が大きくなりDC−R値が増加し、容量が低下したものと考えられる。
【0074】
次に、自己放電不良率について述べる。本発明は、自己放電不良率が低く良好な結果が得られた。これは、蓄電デバイスの構造に起因するといえる。つまり、比較例1、2は、正極電極と負極電極とセパレータを切断し積層する積層構造となっているが、実施例1〜3および比較例3は、扁平巻回構造である。扁平巻回構造をとることにより、製造工程での切断不良や積層ずれなどに起因するエッジ部でのショートなどの不具合が発生しないため、不良率も少なく、量産性が向上した。実際に、不良品の故障解析を実施したところ、積層ずれによるショート不良、および切断時の不具合によるエッジ部でのショート不良の9割程度であった。
【0075】
また、信頼性試験についても、上記と同じ理由で、本発明の実施例は良好な結果であった。また、実施例4のリチウムイオン二次電池においても、ハイブリットキャパシタと同様の結果が得られた。
【0076】
なお、上記の各実施例の説明は、本発明の実施の形態に係る場合の効果について説明するためのものであって、これによって特許請求の範囲に記載の発明を限定し、あるいは請求の範囲を減縮するものではない。また、本発明の各部構成は上記の実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0077】
1、11、21 正極外部端子
2、12、22 負極外部端子
3、13、23 外装材
4、14、24 セパレータ
5、15、25 正極集電体
6、16、26 負極集電体
7、17、27 正極活物質層
8、18、28 負極活物質層
9、19、29 正極電極
10、20、30 負極電極
110、120、130 蓄電素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の金属箔からなる正極集電体の少なくとも一方の主面に正極活物質層を形成した正極電極と、帯状の金属箔からなる負極集電体の少なくとも一方の主面に負極活物質層を形成した負極電極と、前記正極電極および前記負極電極の前記主面にそれぞれ対向して配置されるセパレータを積層し、扁平状に巻回した蓄電素子を備え、前記正極電極および前記負極電極には正極外部端子および負極外部端子の一端を電気的に接続し、前記正極外部端子および前記負極外部端子の他端を外部に突出させ、前記蓄電素子を電解質溶液とともに外装材にて密閉する蓄電デバイスであって、前記正極集電体および前記負極集電体の巻回方向に平行な一方の長辺には、正極集電体露出部および負極集電体露出部を設け、前記正極集電体露出部および前記負極集電体露出部は、それぞれ反対方向に突出するように積層され、前記蓄電素子は、折り曲げて巻回する2つの湾曲部と前記湾曲部に挟まれる2つの平面部を有し、前記正極外部端子および前記負極外部端子は、前記蓄電素子の最外周の一方の平面部に位置する正極集電体露出部および負極集電体露出部にそれぞれ電気的に接続し、前記蓄電素子の巻回方向に垂直な一辺から並行して前記外装材の外部に突出させたことを特徴とする蓄電デバイス。
【請求項2】
前記正極外部端子および前記負極外部端子の巻回方向に平行な辺の長さは、それぞれ同じであることを特徴とする請求項1に記載の蓄電デバイス。
【請求項3】
前記正極外部端子と前記負極外部端子は、異なる電気抵抗率を有する金属板からなり、前記電気抵抗率の大きい方が、前記外装材から突出する側の正極集電体露出部または負極集電体露出部に接続されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蓄電デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−26430(P2013−26430A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159573(P2011−159573)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】