説明

蓋の建付調整構造

【課題】枠及び蓋を開口部に組み付ける前に、蓋を閉じた状態でストッパの高さを調節できて、組み付け後の調節が不要となる蓋の建付調整構造を提供すること。
【解決手段】パネル1に形成された開口部2と、回動に伴って開口部2を開閉する蓋4と、開口部2の周縁に沿って配置され、蓋4を支持する枠3とを備え、枠3にネジ孔9を穿設し、閉状態における蓋4の裏面に上面が当接するストッパ10をネジ孔9に螺合し、ストッパ10の下端に回転工具と係合可能な回動操作部16を設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車に設けられた充電口等を保護する蓋の建付調整構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、電気自動車の充電口やガソリン車のガソリン給油口は、車体に形成された開口部の内部に設置され、車体の開口部は開閉可能な蓋で閉鎖されている。
このような構造では、蓋の閉鎖位置に誤差が生ずると、蓋の外面と車体表面とが連続せず、車体に形成された開口部と蓋の外周との隙間も大きくなって見映えが悪い。
そこで、従来、車体側にクッションゴムを装着し、フューエルリッドの内面にクッションゴムの先端に嵌入可能な先細りのテーパー状の凹部を形成した車両のフューエルリッド構造が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
上記従来のリッド構造によれば、フューエルリッドを閉じた時に、凹部がクッションゴムに案内されてリッドが位置決めされ、車体開口部とリッド周縁との隙間が一定になるよう調整できる。
このリッド構造では、リッドの凹部とクッションゴムとを正確な位置に設置する必要があるため、リッドに取り付けたヒンジアームを車体に対して仮締めし、リッドを閉じて凹部とクッションゴムとの位置合わせをおこなってから、再度リッドを開き、ヒンジアームを開口部に許庫に固定していた。
しかし、このような位置合わせ方法は、リッドの開閉を繰り返すため作業者の負担が大きくて、調節作業にも長い時間を要した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平7−37757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、枠及び蓋を開口部に組み付ける前に、蓋を閉じた状態でストッパの高さを調節できて、組み付け後の調節が不要となる蓋の建付調整構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の蓋の建付調整構造は、パネルに形成された開口部と、回動に伴って前記開口部を開閉する蓋と、前記開口部の周縁に沿って配置され、前記蓋を支持する枠とを備え、該枠にネジ孔を穿設し、閉状態における蓋の裏面に上面が当接するストッパを前記枠のネジ孔に螺合し、該ストッパの下端に回転工具と係合可能な回動操作部を設けてある。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ストッパの下端側から操作することによりストッパの突出量を変更できるので、蓋を閉じたままで、蓋の裏側からストッパの高さを調節可能であり、ストッパの高さ調節を行なう際に蓋を何度も開閉する必要が無い。
また、枠及び蓋を開口部へ組み付ける前にストッパの高さを調節しておけば、組み付け後に蓋を開閉しながらストッパの高さ調節を行なう手間が省ける。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施例に係る開口部、枠及び蓋の断面図である。
【図2】本発明の実施例に係る枠及び蓋の蓋開放状態における斜視図である。
【図3】本発明の実施例に係る枠及びリンク機構の蓋閉鎖状態における斜視図である。
【図4】本発明の実施例に係る枠及び蓋の蓋閉鎖状態における側面図である。
【図5】本発明の実施例に係る枠及び蓋の裏面から見た要部斜視図である。
【図6】本発明の実施例に係る枠及び蓋の要部断面図である。
【図7】枠と蓋との組み立て工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、電気自動車の充電口を保護する蓋の建付調整構造に関する実施例を、図面に基づいて詳細に説明する。
図1に示すように、電気自動車の車体表面を形成するパネル1に開口部2が形成され、開口部2の内部に図示しない給電装置の充電口が設置されている。
また、パネル1の下方には、開口部2の周縁に沿って枠3が配置され、この枠3により、開口部2を開閉する蓋4がリンク機構7を介して上下動及び回動可能に支持されている。
【0010】
図2に示すように、蓋4の裏面の先端中央部と、枠3の一辺3aの中央部には、互いに係合して蓋4を閉状態でロックするロック機構5が設けられる。
また、枠3の左右側辺3bの一辺3a寄りには、車体外面に向かって起立する起立片6が一体に形成され、リンク機構7の一端がこの起立片6に軸着されている。リンク機構7の他端は、蓋4の裏面両側部に軸着されている。
そして、リンク機構7が伸びて、蓋4がパネル1に対して立ち上がるよう回動すると共に上昇すると、開口部2が開放され、リンク機構7が折り畳まれて、蓋4がパネル1と平行になるよう回動すると共に下降すると、開口部2が閉鎖される。
【0011】
また、起立片6の上端を内側に折り曲げてフランジ8が形成され、フランジ8を車体の内外方向に貫通するネジ孔9が穿設されている。図3に示すように、枠3の側辺3bに形成されたネジ孔9には、ストッパ10がそれぞれ螺合されている。
図2に示すように、蓋4の裏面の先端部両側において、ストッパ10と対向した位置には、裏面側に突出した隆起部11が形成され、蓋4を閉じた時、隆起部11にストッパ10の上面が当接して(図1及び図4参照)、蓋4がパネル1と面一に連続するよう位置決めしている。
【0012】
図5及び図6に示すように、ストッパ10は、枠3のフランジ8を貫通してネジ孔9に螺合する雄ネジ部材12と、雄ネジ部材12の上端部外面に嵌合された筒状の弾性体13とから成る。
雄ネジ部材12は、金属製で、外周面にネジ溝が形成された軸部14と、軸部14の上端に一体に形成された径大の頭部15とを備える。
また、軸部15の下端面には六角穴より成る回動操作部16が形成されている。
【0013】
弾性体13は、合成ゴム等を素材として筒状に形成され、雄ネジ部材12の頭部15の外周に、雄ネジ部材12よりも上方へ突出するように嵌合されている。
従って、蓋4を閉じると、蓋4の裏面に形成された隆起部11は弾性体13の上端面に当接し、蓋4が傷ついたり、大きい衝突音が発生することはない。
また、六角レンチより成る回転工具Aを回転操作部16に係合して回転させ、ネジ孔9に螺合された雄ネジ部材12を回動させると、ストッパ10が枠3に対して上下動し、枠3からストッパ10の上面までの高さが変化する。
【0014】
図7に示すように、蓋4と蓋4を支持する枠3とは、開口部2に組み付ける前に、治具17の上で組み立てられる。
治具17には、蓋4の基準位置となる蓋設置部18が設けられると共に、その側部上方に、枠3の基準位置となる枠設置部19が設けられている。
そして、治具17の蓋設置部18の上に蓋4が裏返した状態で仮固定され、枠設置部19に枠3が上下逆にして仮固定される。すると、蓋4と枠3とは、開口部2に枠3を取り付けた時に、蓋4がパネル1に対して段差ができない基準位置に配置される。
なお、枠3には、予め、リンク機構7も装着されており、枠3のネジ孔9にはストッパ10の雄ネジ部材12が、弾性体13を蓋4に向けて螺合されている。
【0015】
この状態で、枠3と蓋4とをリンク機構7を介して組み立てる。
また、蓋4の裏側から(上方から)ストッパ10の回転操作部16に回転工具Aを係合し、回転工具Aを操作して、基準位置にある蓋4の内面に弾性体13の上面が当接するよう、ストッパ10の突出量を調節する。
次いで、組み立てられた枠3及び蓋4を治具17から外し、パネル1の開口部2に組み付ける。
ストッパ10の高さは、開口部2に組み付ける前に治具17上で既に調節してあるので、車体に搭載した後で、蓋4を開閉させながら車体の外面から調整する必要は無い。
【0016】
なお、治具17上でストッパ10の突出量を調節する際に、車体の形状等に合わせて、弾性体13が蓋4の裏面に当接した位置から、任意の量だけ突出させることも後退させることもできる。
このストッパ10の出代調節は、雄ネジ部材12のネジ山のピッチと、雄ネジ部材12の回転数によって正確に、且つ、容易に行なえる。例えば、ネジ山のピッチが1mmであれば、弾性体13が蓋4に当接した位置から雄ネジ部材12を1回転させることによって、ストッパ10の出代を1mm増減することができる。同様にして、雄ネジ部材12を2回転或いは3回転させることにより、2mm,3mmの調整が可能である。
また、本実施例では、回転工具Aとして六角レンチを用い、回動操作部16を六角穴としているが、回動操作部16と回転工具Aとが、相対的な回転が規制されて係合される形状であればこれに限定されない。
【符号の説明】
【0017】
1 パネル
2 開口部
3 枠
4 蓋
5 ロック機構
6 起立片
7 リンク機構
8 フランジ
9 ネジ孔
10 ストッパ
11 隆起部
12 雄ネジ部材
13 弾性体
14 軸部
15 頭部
16 回転操作部
17 治具
18 蓋設置部
19 枠設置部
A 回転工具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルに形成された開口部と、回動に伴って前記開口部を開閉する蓋と、前記開口部の周縁に沿って配置され、前記蓋を支持する枠とを備え、前記枠にネジ孔を穿設し、閉状態における蓋の裏面に上面が当接するストッパを前記枠のネジ孔に螺合し、該ストッパの下端に回転工具と係合可能な回動操作部を設けたことを特徴とする蓋の建付調整構造。
【請求項2】
前記ストッパは、前記枠を貫通してネジ孔に螺合する雄ネジ部材と、該雄ネジ部材の上端部外面に嵌合された弾性体とから成り、前記雄ネジ部材の下端に前記回動操作部を設けてある請求項1に記載の蓋の建付調整構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−245915(P2011−245915A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118729(P2010−118729)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(000146434)株式会社城南製作所 (47)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】