説明

蓋シール構造およびそれを備えた電子機器

【課題】シール性を高めることができる蓋シール構造を提供する。
【解決手段】デジタルカメラ100は、ボディ120と、蓋200と、防水パッキン204と、を備えている。ボディ120は開口310を形成するシール部300を有している。蓋200は開口310を開閉可能に設けられている。防水パッキン204は、蓋200に装着されるベース部204cと、ベース部204cから突出した第1密着部204aと、ベース部204cから突出した第2密着部204bと、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示される技術は、蓋シール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
生活防水機能を有する電子機器や水中でも使用することができる電子機器は、電池等を収納する収納部を隠蔽する蓋に、収納部への水の浸入を防止するための蓋構造を採用することが多い。また、収納部には、電池の他にメモリカード等の記憶媒体が収納されることも多い。
このような電子機器にあっては、収納部に水が浸入することは致命的である。電池が短絡してしまうことはもちろん、電子機器がデータの生成、編集、記録等を行なうものであれば、大切なデータが消滅したり破壊されたりする事態も起こりうる。
さらに、近年では、マリンケース等の防水機能を備えた外装品を用いなくとも、そのままで水深数mから10m程度の海中で使用することができるデジタルカメラが市販されている。このようなデジタルカメラでは、高い水圧に耐えて防水機能を維持するために、より防水機能を高めた蓋構造が求められる。また、防水機能が備わっていない電子機器に対してマリンケース等の外装品を用いる場合であっても、上記と同様に、外装品に対して比較的高い防水機能が求められる。
【0003】
特許文献1に記載の電池蓋構造では、防水パッキン受けの外周に沿って装着された防水パッキンが電池収納室の開口部の傾斜面に密着することによって、電池収納部をシールしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−142841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の電池蓋構造では、防水パッキンが電池収納室の開口部の傾斜面に一箇所で線接触するので、防水パッキンと電池収納室の開口部の傾斜面との間に髪の毛や砂等の異物を挟み込んでしまった場合、電池収納室のシール状態を維持することが難しい。
ここに開示される技術は、シール性を高めることができる蓋シール構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示される蓋シール構造は、筐体と、蓋と、防水パッキンと、を備えている。筐体は開口を形成するシール部を有している。蓋は開口を開閉可能に設けられている。防水パッキンは、蓋に装着されるベース部と、ベース部から突出しシール部に密着可能に設けられた第1密着部と、ベース部から突出しシール部に密着可能に設けられた第2密着部と、を有している。
ここで、蓋シール構造は、電子機器および電子機器を収納するマリンケースなどの外装品に用いることができる。
この蓋シール構造では、防水パッキンが第1密着部および第2密着部を有しているので、シール部と第1密着部との間に異物を挟まって隙間が生じたとしても、シール部および第2密着部によりシール状態を保つことができる。また、シール部と第2密着部との間に異物を挟まって隙間が生じたとしても、シール部および第1密着部によりシール状態を保つことができる。
【発明の効果】
【0007】
したがって、ここに開示される蓋シール構造であれば、シール性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】(A)デジタルカメラの背面図、(B)デジタルカメラの正面図、(C)デジタルカメラの底面図
【図2】(A)〜(D)蓋の開閉動作を説明する図
【図3】(A)デジタルカメラの底面図(蓋が閉状態の場合、図2(A)に対応)、(B)デジタルカメラの底面図(蓋が開状態の場合、図2(D)に対応)
【図4】防水パッキンの斜視図
【図5】蓋および蓋ロック機構の断面図
【図6】(A)図5の部分拡大図、(B)図5の部分拡大図
【図7】図3(A)のVII−VII断面図
【図8】(A)図7の部分拡大図、(B)図7の部分拡大図
【図9】(A)図8(A)に対応する防水パッキンおよびシール部の部分拡大図(蓋を閉める直前)、(B)図8(B)に対応する防水パッキンおよびシール部の部分拡大図(蓋を閉める直前)
【発明を実施するための形態】
【0009】
<デジタルカメラの構成>
図1(A)〜4(C)を用いて第1実施形態に係るデジタルカメラ100について説明する。なお、説明の便宜上のため、デジタルカメラ100に対して3次元直交座標系を設定する。X軸はデジタルカメラ100を使用する際の左右方向に平行に設定されている。Y軸はデジタルカメラ100の光軸AXと平行に設定されている。Z軸はデジタルカメラ100を使用する際の上下方向(鉛直方向)に平行に設定されている。以下の説明では、X軸方向は、X軸に平行な方向とし、第1方向の一例である。Y軸方向はY軸に平行な方向とする。さらに、Z軸方向はZ軸に平行な方向とする。被写体に向かって左側をX軸方向正側とする。Y軸方向の被写体側をY軸方向正側とする。Z軸方向に沿って上側をZ軸方向正側とする。
【0010】
なお、デジタルカメラ100の通常姿勢(以下、横撮り姿勢ともいう)における鉛直上側(Z軸方向正側)を上、鉛直下側(Z軸方向負側)を下ともいうが、これらの表現はデジタルカメラ100の使用状態を限定するものではない。
図1(A)〜図1(C)に示すように、デジタルカメラ100(電子機器の一例)は、光学系110、ストロボ111、操作ユニット130、ボディ120(筐体の一例)、蓋200(蓋の一例)、蓋ロック機構140および防水パッキン204(防水パッキンの一例)を備えている。
図1(B)に示すように、光学系110は、デジタルカメラ100の正面に配置されており、光を撮像素子(図示せず)に導く。光学系110は光軸AXを有している。暗所での撮影を可能にするために、ストロボ111がデジタルカメラ100の正面に設けられている。例えば、デジタルカメラ100は、特定の被写体に自動的にピントを合わせるオートフォーカス機能を採用している。暗所においてもオートフォーカス機能を適切に作用させるために、AF補助光発光部112が設けられている。
【0011】
図1(A)に示すように、操作ユニット130は、電源ボタン101、モードダイヤル102、液晶モニタ103、シャッタボタン104、動画ボタン105、再生ボタン106、十字操作ボタン107、クイックメニューボタン108およびディスプレイボタン109を有している。操作ユニット130はボディ120の上面および背面に設けられている。
電源ボタン101を押すと、デジタルカメラ100の電源が投入される。モードダイヤル102を回転させることで所望の撮影モードを選択することができる。液晶モニタ103に被写体が表示されるので、液晶モニタ103に表示される被写体を見ながら構図を決定することができる。シャッタボタン104を押すと、静止画を撮影することができる。また、動画ボタン105を押すと、動画を撮影することができる。再生ボタン106を押すと、撮影した静止画や動画を液晶モニタ103に再生することができる。
【0012】
十字操作ボタン107を押下すると、撮影や再生における様々な設定を行うことができる。十字操作ボタン107を構成する各ボタンには、方向を示す他に、個別の機能が割り当てられていてもよい。例えば、十字操作ボタン107の上ボタンには、上方向を示す他に、露出補正の機能が割り当てられている。また、十字操作ボタン107の中央には、メニューボタン107aが設けられている。このメニューボタン107aを押すと、液晶モニタ103に設定メニュー画面が表示される。
クイックメニューボタン108を押すと、一部の設定を簡単に変更することができる。クイックメニューボタン108は、撮影した静止画や動画の削除を行う削除ボタンとしても機能する。
ディスプレイボタン109を押すと、液晶モニタ103に表示される情報が切り替わる。液晶モニタ103には、撮影情報や構図の決定を補助するガイドライン等が表示される。
【0013】
図2(D)に示すように、ボディ120は、デジタルカメラ100の外装やフレームを含んでおり、収納部320を有している。収納部320にはバッテリ301およびメモリカード302などの付属品が取り外し可能に収納されている。収納部320はバッテリ301およびメモリカード302を抜き差しするための開口310(開口の一例)を有している。開口310は、X軸方向に延びる概ね長方形を有しており、ボディ120の底面に形成されている。蓋200が開口310を開閉可能にボディ120に連結されている。
蓋200が開いた際にバッテリ301が落下しないように、収納部320はバッテリロック304を有している。バッテリロック304を図3(B)において上向きにスライドさせると、バッテリ301のロックが外れてバッテリ301を取り外すことができる。蓋200が閉状態の場合にバッテリロック304が防水パッキン204に接触しないように、防水パッキン204には窪み204mが設けられている(図4参照)。
【0014】
メモリカード302をデジタルカメラ100に取り付けるために、収納部320には、いわゆるプッシュ−プッシュ式のコネクタが採用されている。そのため、メモリカード302を取り付けたり取り外したりするためには、メモリカード302を図3(B)中奥向きに所定量だけ押し込まなければならない。したがって、メモリカード302の頭部は、図3(B)において手前向きに若干突出している。蓋200が閉状態の場合に、メモリカード302の頭部が防水パッキン204に当接しないように、防水パッキン204には、窪み204dが設けられている(図4参照)。
図3(B)に示すように、収納部320は開口310の周縁に配置された概ね環状のシール部300を有している。ここで、「概ね環状」とは、途中で途切れずに連続して形成されている形状を意味している。したがって、シール部300のような四角形も「概ね環状」に含まれる。蓋200が閉状態の場合に、シール部300には防水パッキン204が密着する。シール部300は開口310を形成している。シール部300の詳細については後述する。
【0015】
図2(D)、図3(A)および図3(B)に示すように、ボディ120の底面には、デジタルカメラ100を三脚や一脚に固定するための取付ネジ穴113が設けられている。また、ボディ120の底面には、開口310を開閉するために蓋200が装着されている。
開口310の縁にはヒンジ203が設けられており、蓋200はヒンジ203によりボディ120に回転可能に連結されている。ヒンジ203はデジタルカメラ100の底面側の角に配置されている。開口310がX軸方向に細長いので、蓋200もX軸方向に細長い概ね長方形を有している。本実施形態では、蓋200は回転軸線Aを中心に回転するがボディ120に対してX軸方向にスライドしない。また、本実施形態では、ヒンジ203にコイルバネは設けられておらず、自動的に蓋200が開放する構成にはなっていない。その代わり、図2(A)〜(D)に示すように、蓋外装200aの一部はデジタルカメラ100の正面から見えているので、蓋200を手で開けやすくなっている。
【0016】
なお、自動的に蓋200が開くようにするために、ヒンジ203にコイルバネを設けてもよい。この場合、第1ロックレバー201をC方向にスライドさせると、ロック爪201aおよび突起303によるロックが解除されて、コイルバネの弾性力により蓋200が自動的に開く。
蓋200を開けると、収納部320に収納されているバッテリ301およびメモリカード302が見える。必要に応じて、バッテリ301やメモリカード302を収納部320に取り付けたり収納部320から取り外したりすることができる。
蓋200は、樹脂製の蓋外装200aと、蓋外装200aを補強する金属製の補強板200bと、を有している。蓋外装200aは、ボディ120とともにデジタルカメラ100の外装を構成している。補強板200bは、蓋外装200aの裏側に装着されており、蓋外装200aと防水パッキン204との間に配置されている。蓋200を閉状態でロックするために、蓋200には蓋ロック機構140が設けられている。
【0017】
図5に示すように、蓋ロック機構140は、第1ロックレバー201、板バネ205および第2ロックレバー202を有している。
第1ロックレバー201は、蓋200を閉状態でロックするために設けられており、蓋200によりX軸方向に沿って移動可能に支持されている。第1ロックレバー201は板バネ205と当接可能に配置されている。図3に示すように、第1ロックレバー201はロック爪201aを有している。ボディ120はロック爪201aと当接可能に設けられた突起303を有している。第1ロックレバー201が閉位置に配置されている場合、ロック爪201aはヒンジ203に引っかかる。第1ロックレバー201が開位置に配置されている場合、ロック爪201aはヒンジ203に引っかからない。
板バネ205は、第1ロックレバー201が開位置に移動するのを規制するために設けられており、Z軸方向に弾性変形可能に蓋200に装着されている。板バネ205は、X軸方向に細長く延びており、蓋200の裏面に沿って配置されている。板バネ205が延びている方向はデジタルカメラ100の長手方向と一致している。板バネ205は例えば金属製である。
【0018】
板バネ205は、第1ロックレバー201が開位置へ移動するのを規制する規制位置と第1ロックレバー201が開位置へ移動するのを許容する退避位置との間を移動可能に配置されている。板バネ205の規制位置および退避位置の切り替えは第2ロックレバー202により行われる。
板バネ205は凸部205aを有している。凸部205aは、第2ロックレバー202側に突出しており、板バネ205が折り曲げられ形成されている。板バネ205が第2ロックレバー202により案内される際に、凸部205aは第2ロックレバー202の案内部202cと摺動する。凸部205aは第2ロックレバー202のX軸方向の移動を規制する。
第2ロックレバー202は、第1ロックレバー201を閉位置でロックするために設けられており、蓋200によりX軸方向に沿って移動可能に支持されている。第2ロックレバー202は板バネ205の位置を規制位置および退避位置に切り替え可能に配置されている。
【0019】
第2ロックレバー202は案内部202cを有している。案内部202cは、レバー本体202bから板バネ205の方へ突出しており、板バネ205と摺動可能に設けられている。案内部202cは板バネ205を規制位置および退避位置に案内する。具体的には、案内部202cは凹部202aを有している。第2ロックレバー202がロック位置に配置されている場合、凹部202aには板バネ205の凸部205aが嵌り込んでおり、板バネ205が規制位置で保持されている。凹部202aに凸部205aが嵌りこんでいるので、凸部205aにより第2ロックレバー202のX軸方向の移動が規制される。第2ロックレバー202がロック位置からロック解除位置へ移動すると、板バネ205が規制位置から退避位置へ案内される。
<防水パッキンおよび収納部の構成>
図2(D)に示すように、蓋200とボディ120との間に形成される隙間から液体や塵埃が収納部320に進入するのを防止するために、蓋200の裏面には防水パッキン204が装着されている。ここで、図4〜図9(B)を用いてシール部300および防水パッキン204の詳細について説明する。
【0020】
図7に示すように、防水パッキン204は芯材204fおよびパッキン本体204kを有している。芯材204fは、金属性であり、ビス207により蓋200に固定されている。芯材204fが金属製であるので、防水パッキン204の形状をある程度保つことができる。また、金属性の芯材204fを蓋200に固定するので、防水パッキン204の取付強度を高めることができる。芯材204fはパッキン本体204kに封入されている。
パッキン本体204kは、シリコンゴム製であり、全体が一体成形されている。パッキン本体204kの材質としては、シリコンゴムの他にも、例えば、ウレタンゴム、ニトリルゴムおよびフッ素ゴムが考えられる。
図7に示すように、パッキン本体204kは、ベース部204c、第1密着部204aおよび第2密着部204bを有している。ベース部204cは、芯材204fを覆っており、芯材204fを介して蓋200に装着されている。
【0021】
図9(A)および(B)に示すように、第1密着部204aは、シール部300に密着可能に設けられた概ね環状の部分であり、ベース部204cから突出している。第1密着部204aはベース部204cから外側に向かって突出している。より詳細には、第1密着部204aはベース部204cから外周側へ突出しており、蓋200の主面200cに対して第1密着部204aの突出する方向は概ね平行となっている。
図9(A)および(B)に示すように、第2密着部204bは、シール部300に密着可能に設けられた概ね環状の部分であり、ベース部204cから突出している。第2密着部204bが突出する方向は、第1密着部204aが突出する方向と異なっている。本実施形態では、第2密着部204bはベース部204cから蓋200と反対側に突出しており、蓋200の主面200cに対して第2密着部204bの突出する方向は傾斜している。
【0022】
ボディ120のシール部300は、開口310を形成する概ね環状の部分であり、防水パッキン204と密着可能な位置に配置されている。シール部300は開口310を取り囲むように形成されている。防水パッキン204の第1密着部204aおよび第2密着部204bはシール部300と全周にわたり密着可能となっている。具体的には、ボディ120は概ね環状の第1シール面300aおよび概ね環状の第2シール面300bを有している。
第1シール面300aは防水パッキン204の第1密着部204aと接触可能に設けられている。第1シール面300aは第2シール面300bに対して傾斜している。具体的には、第1シール面300aは開口310に近づくにつれて第2シール面300bに近づくように傾斜している。バッテリ301およびメモリカード302を抜き差しする方向(D方向)に対して第1シール面300aが傾斜していると言うこともできる。本実施形態では、D方向はZ軸方向に平行である。第1シール面300aはシール部300の内側寸法が開口310に向かって徐々に小さくなるように傾斜している。このように、第1シール面300aが傾斜しているので、蓋200を閉める際に第1密着部204aが第1シール面300aに密着しやすくなる。なお、第1シール面300aはD方向に平行であってもよい。
【0023】
第2シール面300bは防水パッキン204の第2密着部204bと接触可能に設けられている。第2シール面300bは第1シール面300aよりも開口310の近くに配置されている。第2シール面300bは、蓋200が閉状態の場合に蓋200の主面200cに概ね平行に配置されている。また、第2シール面300bはD方向に対して概ね垂直に配置されている。第2シール面300bがD方向に概ね垂直であるため、第2シール面300bが蓋200を閉める際の押圧力を受け止める。したがって、蓋200を閉める際に蓋200を過度に押し込んでしまうことを防止できる。
蓋200を基準とすると、蓋200が閉状態の場合に、蓋200の主面200cに対する第1シール面300aの傾斜角度は、蓋200の主面200cに対する第2シール面300bの傾斜角度と異なっている。
【0024】
ここで、蓋200を閉めた際の防水パッキン204およびシール部300の状態について説明する。
図8(A)および(B)に示すように、蓋200が閉状態の場合に、第1密着部204aはシール部300の第1シール面300aに密着する。第1シール面300aが傾斜しているので、第1密着部204aが第1シール面300aに押し付けられた状態で、第1密着部204aは、開口310から遠ざかるように弾性変形する。言い換えると、第1密着部204aが第1シール面300aに押し付けられた状態で、第1密着部204aは、第2密着部204bから遠ざかるように弾性変形する。
図8(A)および(B)に示すように、蓋200が閉状態の場合に、第2密着部204bはシール部300の第2シール面300bに密着する。第2密着部204bは、蓋200が閉状態の場合に第1密着部204aよりも開口310の近くに配置されている。第2密着部204bが第2シール面300bに押し付けられた状態で、第2密着部204bは、開口310から遠ざかるように弾性変形する。言い換えると、第1密着部204aが第1シール面300aに押し付けられた状態で、第1密着部204aは、第1密着部204aに近づくように弾性変形する。第1密着部204aが第1シール面300aに接触しており、かつ、第2密着部204bが第2シール面300bに接触している状態で、第1密着部204aおよび第2密着部204bの間には空間Sが形成されている。これにより、第1密着部204aおよび第2密着部204bが弾性変形する際に互いに干渉することがない。第2密着部204bが第2シール面300bに押し付けられるので、第2密着部204bはクッションの役割をも果たす。このため、蓋200や蓋ロック機構140などの他の構成部材に不要なストレスが作用しにくくなる。
【0025】
さらに、開口310の縁には、概ね環状の受け部300cが設けられている。受け部300cは第2シール面300bから突出している。受け部300cを設けることで、第2密着部204bを第2シール面300bに確実に密着させることができる。また、受け部300cの外周部には、第1シール面300aと隣接する概ね環状の傾斜面300fが形成されている。傾斜面300fは第2シール面300bに向かって傾斜している。傾斜面300fにより、蓋200を閉める際に第2密着部204bが第2シール面300b側に導かれ、第2密着部204bが開口310から遠ざかるように弾性変形しやすくなる。
さらに、第1シール面300a、第2シール面300bおよび受け部300cによりシール溝300g(凹部の一例)が形成されている。シール溝300gは開口310を取り囲むように配置されている。蓋200が閉状態の場合に、シール溝300gには第1密着部204aおよび第2密着部204bが収容される。このシール溝300gにより、蓋200を開けた際に水が収納部320に流れ込みにくくなる。
【0026】
また、防水パッキン204には突起部204eが設けられている。蓋200が閉状態の場合に、突起部204eは収納部320内に設けられた蓋検出スイッチ305を押圧する。これにより、蓋200が確実に閉まっていない場合に電源の投入を禁止したり、あるいは、蓋200が開いた場合にメモリカード302へのアクセスを中止して電源を切断する準備を開始したりすることができる。
さらに、ビス207を蓋200に取り付けるために、防水パッキン204には取付孔204hが設けられている。取付孔204hの周辺部には、ベース部204cから蓋200側に突出する環状突出部204gが形成されている。ビス207により防水パッキン204が蓋200に装着される際、環状突出部204gは蓋200に押し付けられる。このため、防水パッキン204を蓋200に取り付ける際の取付強度を高めることができる。
【0027】
<蓋の開閉動作>
続いて、蓋200を開く際の動作を説明する。図2(A)〜図2(D)は、閉状態から開状態までの蓋200の動作を時系列で示している。図2(A)〜図2(D)では、デジタルカメラ100は天地が逆になっている。
図2(A)に示す状態では、第1ロックレバー201のロック爪201aが突起303に引っかかっている(図5参照)。また、第2ロックレバー202によって板バネ205の先端が第1ロックレバー201に当接する規制位置で保持されている(図5参照)。この状態では、第1ロックレバー201は、C方向に移動することができない。したがって、蓋200が容易に開放することはない。図2(A)に示す状態で第2ロックレバー202をC方向にスライドさせると、蓋ロック機構140は図2(B)に示す状態となる。
【0028】
図2(B)に示す状態では、板バネ205の先端が第2ロックレバー202によりZ軸方向正側に押されて第1ロックレバー201に当接しない退避位置に配置されているので、第1ロックレバー201をC方向にスライドさせることができる。図2(B)に示す状態では、第1ロックレバー201をまだC方向にスライドさせていないので、第1ロックレバー201のロック爪201aが突起303に引っかかっている。したがって、蓋200は開放しない。図2(B)に示す状態で第1ロックレバー201をC方向にスライドさせると、蓋ロック機構140は図2(C)に示す状態となる。
図2(C)に示す状態では、第1ロックレバー201のロック爪201aが突起303に引っかかっていないので、図2(D)に示すように蓋200を開放することができる。
図2(D)に示すように、蓋200が開放した状態では、収納部320が露出している。収納部320には、バッテリ301およびメモリカード302が収納されている。蓋200を開放することによって、バッテリ301とメモリカード302を取り付けたり取り外したりすることができる。
【0029】
なお、蓋200を閉める際の動作は、蓋200を開ける際の動作の逆になる。図6(A)図6(B)、図8(A)および図8(B)に示すように、蓋200を閉める際、防水パッキン204がシール部300に押付けられる。具体的には、第1密着部204aが第1シール面300aに押し付けられ、第2密着部204bが第2シール面300bに押し付けられる。蓋ロック機構140により蓋200が閉状態でロックされると、防水パッキン204は図6(A)図6(B)、図8(A)および図8(B)に示す状態となり、防水パッキン204および蓋200により収納部320は密閉状態となる。
<特徴>
以上に説明したデジタルカメラ100の特徴を以下にまとめる。
(1)デジタルカメラ100では、防水パッキン204が第1密着部204aおよび第2密着部204bを有しているので、シール部300と第1密着部204aとの間に異物を挟まって隙間が生じたとしても、収納部320に水が浸入するのをシール部300および第2密着部204bにより防止できる。また、シール部300と第2密着部204bとの間に異物を挟まって隙間が生じたとしても、収納部320に水が浸入するのをシール部300および第1密着部204aにより防止できる。
【0030】
このように、上記の構成であれば、簡素な構成によりシール性を高めることができる。
(2)第1シール面300aが開口310に近づくにつれて第2シール面300bに近づくように傾斜しているので、蓋200を閉めると第1密着部204aが第1シール面300aに徐々に押し付けられる。したがって、第1密着部204aおよび第1シール面300aの密着度を高めやすくなる。
(3)第1密着部204aが第1シール面300aに押し付けられた状態で、第1密着部204aは開口310から遠ざかるように弾性変形するので、第1密着部204aが密閉領域の外側に向かって弾性変形することになる。このため、外部の圧力により第1密着部204aが第1シール面300aに押付けられ、第1密着部204aでのシール性が高まる。
【0031】
また、第1密着部204aが第1シール面300aに押し付けられた状態で、第1密着部204aは、第2密着部204bから遠ざかるように弾性変形するので、第1密着部204aおよび第2密着部204bが互いに干渉することなく、第1密着部204aおよび第2密着部204bの弾性変形が妨げられない。すなわち、第1密着部204aおよび第2密着部204bでのシール性をともに確保することができる。
(4)第2密着部204bが第2シール面300bに押し付けられた状態で、第2密着部204bは、開口310から遠ざかるように弾性変形するので、第2密着部204bが密閉領域の外側に向かって弾性変形することになる。このため、外部の圧力により第2密着部204bが第2シール面300bに押付けられ、第2密着部204bでのシール性が高まる。
【0032】
(5)第1密着部204aが第1シール面300aに接触しており、かつ、第2密着部204bが第2シール面300bに接触している状態で、第1密着部204aおよび第2密着部204bの間には空間Sが形成されている。したがって、第1密着部204aおよび第2密着部204bが互いに干渉することなく、第1密着部204aおよび第2密着部204bの弾性変形が妨げられない。すなわち、第1密着部204aおよび第2密着部204bでのシール性をともに確保することができる。
また、第1密着部204aおよび第1シール面300aの間を通過した異物を空間Sに滞留させることができ、第2密着部204bおよび第2シール面300bの間にその異物がかみ込むのを抑制できる、という効果も期待できる。
<その他の実施形態>
本発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形および修正が可能である。
【0033】
なお、以降の説明では、前述の実施形態と実質的に同じ機能を有する構成については、同じ符号を使用し、その詳細な説明は省略する。
(1)前述の実施形態では、デジタルカメラ100を例に蓋シール構造について説明しているが、以上に説明した蓋シール構造はデジタルカメラ100などの電子機器だけでなく他の装置にも適用可能である。例えば、以上に説明した蓋シール構造は、電子機器を収容する防水ケース(例えばデジタルカメラのマリンケース)にも用いることができる。
また、前述の実施形態では、ボディ120を例に筐体について説明しているが、筐体の構成はボディ120に限定されない。例えば、筐体が収納部320を有していなくてもよく、例えば開口310を形成するシール部300を有していればよい。
(2)前述の実施形態では、防水パッキン204を例に防水パッキンについて説明しているが、防水パッキンの構成は防水パッキン204に限定されない。例えば、防水パッキン204が第1密着部204aおよび第2密着部204b以外に別の密着部を有していてもよい。
【0034】
また、前述の実施形態では、第1密着部204aがベース部204cから外側に向かって突出しているが、第1密着部の突出する方向は前述の方向に限定されない。同様に、第2密着部204bがベース部204cから突出している方向は、前述の方向に限定されない。さらに、第2密着部204bが突出する方向が第1密着部204aが突出する方向と異なっているが、第1密着部204aおよび第2密着部204bの突出する方向が同じであってもよい。
さらに、第1密着部204aおよび第2密着部204bの配置が互いに入れ替わってもよい。
(3)前述の実施形態では、シール部300を例にシール部について説明しているが、シール部の構成はシール部300に限定されない。例えば、シール部300が第1シール面300aおよび第2シール面300bを有しているが、シール部300が第1シール面300aのみを有している場合も考えられる。この場合、第1密着部204aおよび第2密着部204bを第1シール面300aに密着するように配置すればよい。
【0035】
また、シール部300が第2シール面300bのみを有している場合も考えられる。この場合、第1密着部204aおよび第2密着部204bを第2シール面300bに密着するように配置すればよい。
(4)前述の実施形態では、第2シール面300bが第1シール面300aよりも開口310の近くに配置されているが、第2シール面300bが第1シール面300aよりも開口310から遠い位置に配置されていてもよい。つまり、第1シール面300aおよび第2シール面300bの配置が入れ替わっている場合も考えられる。
また、第1シール面300aが第2シール面300bに対して傾斜しているが、第1シール面300aが第2シール面300bに対して傾斜しておらず第2シール面300bと平行に配置されていてもよい。また、第1シール面300aがD方向に対して傾斜しているが、第1シール面300aがD方向に平行(つまり、第2シール面300bに対して垂直)に配置されていてもよい。さらに、第1シール面300aが開口310に向かって傾斜しているが、第1シール面300aが前述の構成と異なる方向に傾斜していてもよい。
【0036】
(5)前述の実施形態では、第1シール面300aおよび第2シール面300bにより形成されるシール溝300gを有しているが、シール部300がシール溝300gのような凹部を有していなくてもよい。また、凹部の構成はシール溝300gに限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上に説明した技術によれば、シール性を高めることができるので、以上に説明した技術はデジタルカメラ等の電子機器あるいは電子機器を収容するケース等の蓋シール構造に適用可能である。
【符号の説明】
【0038】
100 デジタルカメラ
101 電源ボタン
102 モードダイヤル
103 液晶モニタ
104 シャッタボタン
105 動画ボタン
106 再生ボタン
107 十字操作ボタン
108 クイックメニューボタン
109 ディスプレイボタン
110 光学系
111 ストロボ
112 AF補助光発光部
113 三脚ネジ穴
200 蓋(蓋の一例)
201 第1ロックレバー
201a ロック爪
202 第2ロックレバー
202a 凹部
203 ヒンジ
204 防水パッキン(防水パッキンの一例)
204a 第1密着部(第1密着部の一例)
204b 第2密着部(第2密着部の一例)
204m 窪み
204d 窪み
204e 突起部
204f 芯材
204g 環状突出部
204h 開口部
205 板バネ
205a 凸部
207 ビス
300 シール部(シール部の一例)
300a 第1シール面(第1シール面の一例)
300b 第2シール面(第2シール面の一例)
300c 受け部(受け部の一例)
300f 傾斜面
300g シール溝(凹部の一例)
301 バッテリ(付属品の一例)
302 メモリカード(付属品の一例)
303 突起
304 バッテリロック
305 蓋閉止検出スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を形成するシール部を有する筐体と、
前記開口を開閉可能に設けられた蓋と、
前記蓋に装着されるベース部と、前記ベース部から突出し前記シール部に密着可能に設けられた第1密着部と、前記ベース部から突出し前記シール部に密着可能に設けられた第2密着部と、を有する防水パッキンと、
を備えた蓋シール構造。
【請求項2】
前記シール部は、前記第1密着部と接触可能な第1シール面と、前記第2密着部と接触可能な第2シール面と、を有している、
請求項1に記載の蓋シール構造。
【請求項3】
前記第2シール面は、前記第1シール面よりも前記開口の近くに配置されている、
請求項2に記載の蓋シール構造。
【請求項4】
前記第1シール面は、前記第2シール面に対して傾斜している、
請求項2または3に記載の蓋シール構造。
【請求項5】
前記第1シール面は、前記開口に向かって傾斜している、
請求項2から4のいずれかに記載の蓋シール構造。
【請求項6】
前記筐体は、前記第1シール面および前記第2シール面により形成され前記第1密着部および前記第2密着部が収容される凹部を有している、
請求項2から5のいずれかに記載の蓋シール構造。
【請求項7】
前記蓋は、概ね板状の部材であり、
前記第2シール面は、前記蓋が閉状態の場合に前記蓋の主面に概ね平行に配置されている、
請求項2から6のいずれかに記載の蓋シール構造。
【請求項8】
前記蓋が閉状態の場合に、前記蓋の主面に対する前記第1シール面の傾斜角度は、前記蓋の主面に対する前記第2シール面の傾斜角度と異なっている、
請求項7に記載の蓋シール構造。
【請求項9】
前記第1密着部が前記第1シール面に押し付けられた状態で、前記第1密着部は、前記開口から遠ざかるように弾性変形する、
請求項2から8のいずれかに記載の蓋シール構造。
【請求項10】
前記第1密着部が前記第1シール面に押し付けられた状態で、前記第1密着部は、前記第2密着部から遠ざかるように弾性変形する、
請求項2から9のいずれかに記載の蓋シール構造。
【請求項11】
前記第2密着部が前記第2シール面に押し付けられた状態で、前記第2密着部は、前記開口から遠ざかるように弾性変形する、
請求項2から10のいずれかに記載の蓋シール構造。
【請求項12】
前記第1密着部は、前記ベース部から外側に向かって突出している、
請求項2から11のいずれかに記載の蓋シール構造。
【請求項13】
前記第1密着部が前記第1シール面に接触しており、かつ、前記第2密着部が前記第2シール面に接触している状態で、前記第1密着部および前記第2密着部の間には空間が形成されている、
請求項2から12のいずれかに記載の蓋シール構造。
【請求項14】
前記筐体は、前記開口の縁に形成され前記第2シール面から突出する受け部を有している、
請求項2から13のいずれかに記載の蓋シール構造。
【請求項15】
前記第2密着部が突出する方向は、前記第1密着部が突出する方向と異なっている、
請求項1から14のいずれかに記載の蓋シール構造。
【請求項16】
前記第2密着部は、前記蓋が閉状態の場合に前記第1密着部よりも前記開口の近くに配置されている、
請求項1から15のいずれかに記載の蓋シール構造。
【請求項17】
前記筐体は、前記開口を含み付属品を収納するための収納部を有している、
請求項1から16のいずれかに記載の蓋シール構造。
【請求項18】
前記蓋は、前記開口を開閉可能に前記筐体に連結されている、
請求項1から17のいずれかに記載の蓋シール構造。
【請求項19】
前記シール部は、前記開口を取り囲むように形成されており、
前記第1密着部は、前記シール部と全周にわたり密着可能であり、
前記第2密着部は、前記シール部と全周にわたり密着可能である、
請求項1から18のいずれかに記載の蓋シール構造。
【請求項20】
請求項1から19のいずれかに記載の蓋シール構造を備えた電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−190932(P2011−190932A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26552(P2011−26552)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】