説明

蓋体集合体および当該蓋体集合体を用いた圧電振動デバイスおよび圧電振動デバイスの製造方法

【課題】 低コストで安定した気密封止を行うことができる蓋体集合体および、当該蓋体集合体を用いた圧電振動デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 上部に凹部6と、前記凹部6を包囲し、上面に第1の封止材S11が形成された環状の堤部7とを具備するベースがマトリクス状に複数かつ一体形成されたベース集合体1を、一括気密封止する、複数の蓋体がマトリクス状に一体形成された蓋体集合体2であって、前記蓋体集合体2の前記ベース集合体1との接合面側には、複数の前記ベースの堤部上面と一対一で対応する位置に、周状の第2の封止材S21が複数形成されている。そして、前記第2の封止材S21の内周縁が、前記堤部7の内壁面と略同一平面上の位置に形成、あるいは前記堤部7の内壁面よりも内側の位置まで張り出して形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動デバイスの製造で使用される、複数の蓋体が一体形成された蓋体集合体と、当該蓋体集合体を用いた圧電振動デバイスの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、表面実装型の水晶振動子は低背化および省スペース化に対応した形態の圧電振動デバイスとして広く使用されている。表面実装型の水晶振動子の主な構成部材は、平板状の水晶振動素子と、前記水晶振動素子を収納するための凹部を有する絶縁体からなる容器体(ベース)と、前記凹部を気密封止するための蓋体である。なお、前記ベースは前記凹部を包囲するとともに、上面に金属膜が形成された環状の堤部を具備している。
【0003】
前記表面実装型の水晶振動子は、前記凹部に前記水晶振動素子を収納した後、前記金属膜と、前記蓋体とが、前記蓋体の前記ベースとの接合面側に形成された封止材を介して加熱雰囲気中で溶融接合される。上記ベースを個片の状態で取り扱う場合は、生産効率が悪化するとともに、近年の小型化要求への対応が困難なため、複数の蓋体またはベースが一体的に形成された集合体を用いた製造方法が用いられている。
【0004】
前記集合体を用いた製造方法の例として、例えば図8に示すように複数のベースがマトリクス状に整列して一体的に形成されたべース集合体1を用いて、個片状態の複数の蓋体9を各ベースの封止材S1の上に載置し、一括加熱処理によって各蓋体と各ベースとを封止材S2を介して気密封止した後、分割切断することによって同時に多数個の水晶振動子を得る製造方法がある。あるいは、図9に示すようにベース集合体1と、複数の蓋体がマトリクス状に整列して一体的に形成された蓋体集合体2とを、蓋体集合体の片面に全面に亘って形成された封止材S2を介して、一括加熱処理によって気密封止した後に、分割切断することによって同時に多数個の水晶振動子を得る製造方法も用いられている。このような集合体を用いた製造方法は、例えば特許文献1および特許文献2に開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平11−340350号
【特許文献2】特開2004−186995号
【0006】
特許文献1は、前記ベース集合体と、連結部を介して複数の蓋体が一体化した蓋体集合体との組み合わせによる製造方法である。このような構成であればベース集合体に対して蓋体の位置決めは容易になるが、現実的にはベースの焼成時の収縮によって、前記ベース集合体上に前記蓋体集合体を載置したときの位置ズレが懸念される。また、前記蓋体集合体の各蓋体片面側には全面に亘って封止材が形成されており、前記ベースと前記蓋体とをエレクトロンビーム溶接によって封止する際には、前記蓋体の外周部分の封止材のみが封止に寄与することになる。したがって、封止材使用量の低減を図ることができないため、コスト高になってしまう問題がある。
【0007】
また、特許文献2は、各ベース上面の金属膜に対応する形状のロウ材が蓋体に形成されているが、水晶振動子の製造前には、個片の状態に事前に分割しておく必要があり、前記水晶振動子の小型化が進んでくると、複数のベースの前記金属膜上に複数の蓋体を正確に位置決めして載置することが困難になってくる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、低コストで安定した気密封止を行うことができる蓋体集合体および、当該蓋体集合体を用いた圧電振動デバイスの製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、上部に凹部と、前記凹部を包囲する環状の堤部とを具備するベースがマトリクス状に複数かつ一体形成されたベース集合体を一括気密封止する、複数の蓋体がマトリクス状に一体形成された蓋体集合体であって、少なくとも前記蓋体集合体の前記ベース集合体との接合面側には、複数の前記ベースの堤部上面と一対一で対応する位置に周状の封止材が複数形成されているとともに、前記封止材の内周縁が、前記堤部の内壁面と略同一平面上の位置に形成、あるいは前記堤部の内壁面よりも内側の位置まで張り出して形成されていることを特徴とする蓋体集合体であるので、各ベースの堤部上面に一対一で、各蓋体に形成された封止材を集合基板状態で載置することができるため、確実で効率的な気密封止を行うことができる。
【0010】
前記ベース集合体がセラミック材料からなり、当該ベース集合体の堤部上面にも封止材が形成され、前記蓋体集合体の前記ベース集合体との接合面側に、複数の前記ベースの堤部上面と一対一で対応する位置に周状の封止材が複数形成されているとともに、前記封止材の内周縁が、前記堤部の内壁面よりも内側の位置まで張り出して形成されている場合は、前記セラミックベース集合体の焼成時の収縮によって寸法バラツキが生じても、前記蓋体集合体を前記ベース集合体上に載置したとき、各ベースの堤部上面に形成された封止材の形成領域は、各蓋体の封止材の形成領域内に収まる(内包される)ため、ベースと蓋体との位置ズレを防止することができる。また、多少の位置ズレが生じたとしても、前記各ベースの封止材と各蓋体の封止材とは、対向する位置関係となるため、確実で安定した圧電振動デバイスの気密封止を行うことができる。
【0011】
なお、本発明は、少なくとも前記蓋体集合体に、複数の前記ベースの堤部上面と一対一で対応する位置に周状の封止材が複数形成された構成となっているが、前記蓋体集合体にだけ封止材が形成された形態に限定されるものではなく、前記ベース集合体(各ベースの堤部上面)にも封止材が形成された形態であっても、本発明の適用は可能である。
【0012】
上記構成によると、圧電振動デバイスの組み立て時に、蓋体を事前に蓋体集合体から個片状態に分割しておく必要がなく、シート(基板)状態で蓋体を取り扱うことが可能なため、各蓋体の各ベースに対する位置決めおよび、各蓋体の各ベースへの仮固定を行う必要がなくなるので、効率的な圧電振動デバイスの生産を行うことができる。
【0013】
また、前記蓋体に形成される封止材の幅寸法を、前記ベース集合体の焼成時における製造ロット毎の収縮率の差異を考慮して設計することにより、ベース集合体の製造ロットに依存せず同一の蓋体集合体を使用することができる。
【0014】
さらに上記構成によると、各蓋体に形成される封止材は、各ベースの堤部上面と一対一で対応する位置にだけ形成されているので、封止材が蓋体の片側(ベースとの接合面側)全面に亘って形成されている場合に比べて、封止材の使用量を削減することができ、製造コストダウンに繋がる。
【0015】
また、請求項2の構成によると、上部に凹部と、前記凹部を包囲する環状の堤部とを具備するベースがマトリクス状に複数かつ一体形成されたベース集合体と、前記凹部に搭載される圧電振動素子と、前記ベースの堤部上面と一対一で対応する位置に周状の封止材が複数形成された請求項1に記載の蓋体集合体とから得られる圧電振動デバイスであって、前記封止材は金属、あるいは低融点ガラスからなり、前記凹部に一対一で前記圧電振動素子を搭載した後、前記凹部を前記蓋体集合体を用いて、前記封止材の加熱溶融によって一括気密封止した後、分割切断することによって得られることを特徴とする圧電振動デバイスであるので、要求仕様によって異種封止材料を選択することが可能となり、設計の自由度が増すことになる。
【0016】
さらに、上記構成において、蓋体に形成された前記封止材の内周縁が、前記堤部の内壁面よりも内側の位置まで張り出して形成されている場合は、加熱溶融によって溶解した金属または低融点ガラスがベースの内部側にフィレットを形成するため、蓋体とベースとの接合強度が向上する。
【0017】
また、請求項3の発明によると、上部に凹部と、前記凹部を包囲する環状の堤部とを具備するベースが、マトリクス状に複数かつ一体形成されたベース集合体の各凹部に、少なくとも圧電振動素子を搭載する搭載工程と、前記凹部を気密封止する蓋体がマトリクス状に一体形成された蓋体集合体であって、少なくとも前記蓋体集合体の前記ベース集合体との接合面側には、複数の前記ベースの堤部上面と一対一で対応する位置に周状の封止材が複数形成されているとともに、前記封止材の内周縁が、前記堤部の内壁面と略同一平面上の位置に形成、あるいは前記堤部の内壁面よりも内側の位置まで張り出して形成されている蓋体集合体を用いて、前記凹部を加熱雰囲気中にて一括気密封止する封止工程と、一括気密封止された前記蓋体集合体と前記ベース集合体とを分割切断して、複数の圧電振動デバイスを得る切断工程とを、有する圧電振動デバイスの製造方法であるので、封止材の使用量を抑制しつつ、複数の前記ベースの堤部上面に一対一で、複数の前記蓋体の封止材を確実に気密封止することが可能となる。これにより、効率的な圧電振動デバイスの製造を行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、低コストで安定した気密封止を行うことができる蓋体集合体および、当該蓋体集合体を用いた圧電振動デバイスの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明による実施形態について、表面実装型水晶振動子を例に挙げて説明する。
−第1の実施形態−
本発明の第1の実施形態を図1乃至図2を用いて説明する。図1は本発明の第1の実施形態を示すベース集合体と蓋体集合体の斜視図であり、図2は本発明の第1の実施形態を示すベース集合体と蓋体集合体の断面図である。なお、図1乃至図2においてベース集合体の内部に形成された配線導体の記載は省略している。
【0020】
図1は、本発明の第1の実施形態を示すベース集合体と蓋体集合体の斜視図であり、上側にベース集合体1を、下側に蓋体集合体2を配置して表している。このような配置で表しているのは、蓋体集合体上の封止材(S21)の形成領域を分かり易くするためである。
【0021】
ベース集合体1は、圧電振動素子を収納するための凹部6と、前記凹部6を包囲する環状の堤部7とを具備する平面視矩形状のベースを一単位として、当該ベースがマトリクス状に複数配列され、かつ一体的に形成されている。前記ベース集合体1はアルミナを主材料とするセラミックグリーンシートを2層、積層して焼成によって一体的に形成されている。なお、各ベースの底面側(下面側)には金属からなる外部接続端子8が4箇所に形成されている。なお、前記一単位のベースの領域は、前記外部接続端子8が露出している面および前記堤部上面に、縦横に形成されたダイシング予定ライン(後述)Dで区画される最小領域に相当する。なお、前記ベース集合体1において、セラミックグリーンシートの積層数は2層に限定されるものではなく、3層構成であってもよい。
【0022】
そして、図2に示すように、前記ベース各々の堤部7の上面は、平坦な状態になっており、金属多層膜からなる第1の封止材S11が周状に形成されている。ここで、前記第1の封止材S11は3層から構成されており、下からタングステン、ニッケル、金の順で積層されている。タングステンはメタライズ技術により、セラミック焼成時に一体的に形成され、ニッケル、金の各層はメッキ技術により形成される。なお、前記タングステンに代えてモリブデンを使用してもよい。
【0023】
前記第1の封止材S11は、隣接するベース間の堤部7の上面に全面に亘って形成されている。また、前記ベース集合体1の積層間には、隣接するベース同士を電気的に接続する配線パターン(図示せず)が形成されている。
【0024】
凹部6の内底部の一端側には一対の搭載パッド4が形成されており、当該搭載パッド4はタングステンを印刷焼成した後、ニッケルメッキが施され、さらにその上に金メッキ処理が施されている。そして、当該搭載パッド4は、前記外部接続端子8とベース内部に形成された配線導体(図示せず)を介して電気的に接続した状態となっている。なお、前記搭載パッド4と前記外部接続端子8との電気的接続は、ベースの外周上下部の4角にキャスタレーションを形成することによって行ってもよい。
【0025】
なお、本項以降、本発明の実施形態の説明において、図2に示す凹部6が形成されている側の面を、ベース集合体1の「表面」に、前記凹部6が形成されていない側の面(外部接続端子が露出している面)を「裏面」と便宜上、定義しておく。つまり、図1はベース集合体1の「裏面」が上を向いた状態となっている。
【0026】
図2において、ベース集合体1の表裏面には隣接するベースとの境界線上に、ダイシング予定ラインDが縦横に形成されており、当該ダイシング予定ラインDによって、1つのベースの領域に区画されている。そして、前記ダイシング予定ラインDは、後工程でダイシングによって複数の水晶振動子に個割り切断する際の位置決めラインとしての役割を担っている。なお、前記ダイシング予定ラインDは、例えばダイシング等の手段によって、浅い切り溝を設けることによって形成してもよいが、切り溝を形成しない場合であっても、ベース集合体1への工夫(目印の形成等)によって対応可能である。
【0027】
本実施形態で使用される蓋体集合体2は、図1に示すような平面視矩形状の蓋体がマトリクス状に複数かつ一体的に形成されたコバールを基体とする平板状の形態となっている。そして、前記コバールの上層にはニッケルメッキ層、さらに上層に金フラッシュメッキ層がそれぞれ全周に形成されている。ここで各層の厚みは、ニッケル層は1.0〜4.0μm、金フラッシュ層は約0.01μmに形成されている。なお、前記金フラッシュメッキ層は、0.03μm以下の厚みで形成されていることが好ましい。
【0028】
また、図1に示す蓋体集合体2の各蓋体の封止接合面側、すなわち前記蓋体集合体2の、前記ベース集合体1との接合面側には、前記金フラッシュメッキ層(図示せず)の上層に金属ロウ材からなる第2の封止材S21が周状に形成されている。本実施形態では前記第2の封止材として、金−錫合金(Au−Sn合金)が使用されている。ここで前記Au−Sn合金は、溶融後の状態において水晶振動子全体、つまり1個の蓋体に形成されている金フラッシュメッキ層と、1個のベースの堤部7上面に形成されている第1の封止材S11を構成する金も含めて、Au:Sn=80:20の比率あるいは、これよりもAuの比率を若干下げた比率となるように、蓋体の封止接合面に形成されるAu−Sn合金の組成が予め調整されている。
【0029】
前記第2の封止材S21は、前記蓋体集合体2の前記ベース集合体1との接合面側に、前記第1の封止材S11と一対一で対応する位置に形成されている。そして、隣接する蓋体間にも前記第2の封止材S21が形成されている。つまり、複数の前記凹部6に対応した部分だけが封止材S21が形成されていない状態となっている。なお、1つのベース領域において、第2の封止材S21の内周縁は、堤部7の内壁の稜部から蓋体集合体2へ鉛直方向に延出した仮想ラインLと略一致する位置に形成されている。
【0030】
上記のように、隣接する蓋体間に封止材が形成されている蓋体集合体であれば、封止材は繋がって一体的に形成されているので、封止強度の向上が期待できる。
【0031】
また、前記蓋体集合体2の表裏面には、隣接する蓋体との境界線上にダイシング予定ラインDが縦横に形成されており、当該ダイシング予定ラインDによって、1つの蓋体領域に区画されている。そして、前記ダイシング予定ラインDも、後工程でダイシングによって複数の水晶振動子に個割り切断する際の位置決めラインとしての役割を担っている。
【0032】
次に、前記蓋体集合体2を用いた水晶振動子の製造方法について、図2を基に説明する。まず、水晶振動子の製造工程中に各々の水晶振動素子3の諸特性を確認する必要があることから、水晶振動素子3を前記凹部6に搭載する前に、当該ベース集合体1の積層間に形成された前記配線パターン(図示せず)を切断して、各々のベースを電気的に独立した状態にする(配線カット工程)。なお、本実施形態において、前記配線カット工程はベース集合体1の裏面側からレーザーを照射することによって行われるが、レーザー以外にダイシングで行ってもよい。
【0033】
次に、前記配線カット工程によって、隣接するベース同士が電気的に独立した状態となったベース集合体1を用いて、前記ベース集合体1の各凹部内にある前記一対の搭載パッド4上に、表裏面に所定形状の金属膜が成膜された平板状の水晶振動素子3を導電性接合材5を介して一対一で接合する(搭載工程)。本実施形態では前記水晶振動素子3にATカット水晶板が、前記導電性接合材5にシリコーン系の導電性樹脂接合材が使用されている。なお、前記水晶振動素子3はATカット水晶板に限定されるものではなく、ATカット以外の切断角度の水晶板に対しても適用可能であり、導電性接合材5についてはシリコーン系以外にエポキシ系などの導電性樹脂接合材を使用することも可能である。
【0034】
全てのベースの凹部6に水晶振動素子3を搭載した後、所定の温度プロファイルに制御された雰囲気中で前記導電性接合材5を一括加熱硬化させて、前記水晶振動素子3と前記搭載パッド4とを接合する。なお、本実施形態では、水晶振動素子とベースとの接合手段として導電性接合材を用いているが、これに限定されるものではなく、例えば金属バンプを用いたFCB(フリップチップボンディング)の手法によって、水晶振動素子とベースとの接合を行ってもよい。
【0035】
全ての凹部6に水晶振動素子3を導電性接合材5を介して接合した後、各々の水晶振動素子3について発振周波数の微調整を行う。そして、前記蓋体集合体2を前記第2の封止材S21が形成されている面を上方に向けて、封止治具と呼ばれる治具に形成された凹部内に載置する。
【0036】
前記第2の封止材S21が上方に向けられた状態で載置された前記蓋体集合体2の上に、ベース集合体1を第1の封止材S11が下向き、すなわちベース集合体1の裏面が上向きになるようにして載置する。このときベース集合体1は、ベース集合体1の外縁と、蓋体集合体2の外縁とが略一致するようにして、蓋体集合体2の上に載置される。そして、加熱炉を用いた雰囲気加熱によって、前記封止材を溶融させてベース集合体2の全てのベースが一括気密封止される(封止工程)。
【0037】
前述のようにベース集合体1を蓋体集合体2の上に載置しても、各ベースに形成された第1の封止材S11と、蓋体集合体2の各蓋体の領域に形成された第2の封止材S21とは、一対一で対向する位置関係となっているため、第1と第2の封止材が確実に当接した状態にすることができる。
【0038】
なお、本実施形態においてベース集合体1はセラミック材料の焼成によって形成されるため、製造バラツキによって、製造ロット毎にベースサイズが若干異なった状態となることがある。しかしながら、本発明の蓋体集合体は、第2の封止材S21の幅寸法を前記ベース集合体の焼成時における製造ロット毎の収縮率の差異を考慮して設計することにより、第1と第2の封止材形成領域の幅寸法を略同一にすることができる。
【0039】
また、前記第2の封止材S21の幅寸法は、ベースの収縮率を予め考慮して設計されているため、個片状態での蓋体の場合のように、各々のベース上への蓋体の位置決めおよび、蓋体の仮固定を行う必要が無くなり、効率的な圧電振動デバイスの生産を行うことができる。
【0040】
さらに、前記蓋体集合体2の、前記ベース集合体1との接合面側には、ベース集合体1の各ベースに形成された第1の封止材S11と、一対一で対応する位置にだけ、第2の封止材S21が形成されているので、前記蓋体集合体2の片面に全面に亘って封止材が形成された蓋体集合体に比べて、金属封止材の使用量を削減することができる。また、蓋体のベースに対する位置決めを行う必要が無くなるとともに、製造ロットに依存せずに同一の蓋体集合体を使用することができるので製造コストダウンに繋がる。
【0041】
本発明の実施形態によれば、前記蓋体集合体2に形成される封止材の絶対量を、前記蓋体集合体2の片面に全面に亘って封止材が形成されている場合に比べて減少させることができるので、封止材の加熱溶融時の揮発ガス発生量を最小限に抑制することができ、圧電振動デバイスの特性安定化に寄与する。
【0042】
前記一括気密封止が終了すると、複数の水晶振動子が連なった状態となった、蓋体集合体2とベース集合体1の結合体(シート基板)を、前記蓋体集合体に形成されたダイシング予定ラインDに沿って、蓋体集合体2の上方からベース集合体1の裏面へ向かう方向に、ダイシングブレードで切断していく(切断工程)。上記切断は前記シート基板の縦横の直交する2方向からダイシングブレードを走行させることによって行われる。このように切断することによって、同時に多数個の水晶振動子を得ることができる。なお、上記切断は、ベース集合体1の下方側から蓋体集合体2へ向かう方向に行ってもよい。
【0043】
−第2の実施形態−
本発明の第2の実施形態を図3乃至図4を用いて説明する。図3は本発明の第2の実施形態を示すベース集合体と蓋体集合体の斜視図であり、図4は本発明の第2の実施形態を示すベース集合体と蓋体集合体の断面図である。なお、図3乃至図4においてベース内部に形成された配線導体の記載は省略している。なお、前述の実施形態と同様の構成については、同番号を付して説明の一部を割愛するとともに、前述の実施形態と同様の効果を有する。
【0044】
図3において、ベース集合体1は第1の実施形態と同様に、アルミナを主材料とするセラミックグリーンシートを2層、積層して焼成することによって得られる。さらに図4に示すように、各ベースの堤部7の上面には第1の実施形態と同一の膜構成で、周状の第1の封止材S12が形成されている。ここで、第1の封止材S12は堤部7の上面のダイシング予定ラインD上には形成されておらず、隣接するベースに対してダイシング予定ラインを挟んで一定間隔で離間した状態となっている。つまり、隣接するベースとは堤部上面において電気的に繋がっていない状態となっている。なお、その他配線パターン等のベース内部導体は第1の実施形態と同一であるため説明は割愛する。
【0045】
一方、蓋体集合体2には、図3に示すように第2の封止材22が、前記ベース集合体1との接合面側に、前記第1の封止材S12と一対一で対応する位置に各々が独立した状態で複数形成されている。なお、1つのベース領域において、第2の封止材S22の内周縁は、堤部7の内壁の稜部から蓋体集合体2へ鉛直方向に延出した仮想ラインLと略一致する位置に形成されている。一方、第2の封止材S22の外周縁は、第1の封止材S12の外周縁と略同一平面上に位置している。
【0046】
このような構成であれば、ベース集合体1を蓋体集合体2の上に載置しても、各ベースに形成された第1の封止材S12と、蓋体集合体2の各蓋体領域に形成された第2の封止材S22とは、一対一で対向する位置関係となっているため、第1と第2の封止材が確実に当接した状態となり、安定した気密封止を行うことができる。
【0047】
また、前記個割り切断工程において、隣接する蓋体間および、隣接するベース間のダイシング予定ラインD上には金属膜(第1と第2の封止材)は形成されていない状態となっているため、ダイシングによる個割り切断をよりスムーズに行うことができる。
【0048】
さらに、上記構成によると各蓋体に形成される封止材は、各ベースの堤部上面と一対一で対応する位置にだけ形成されているとともに、第1の封止材S12は隣接するベース間のダイシング予定ラインD上には形成されていないため、封止材の使用量を削減することができる。
【0049】
−第3の実施形態−
本発明の第3の実施形態を図5および図6を用いて説明する。図5は本発明の第3の実施形態を示すベース集合体と蓋体集合体の断面図である。図6は図5のA部拡大図である。なお、前述の実施形態と同様の構成については、同番号を付して説明の一部を割愛するとともに、前述の実施形態と同様の効果を有する。
【0050】
本発明の実施形態において、図5に示すようにベース集合体1は前記第2の実施形態と同一の構成であるので、説明は割愛する。
【0051】
本発明の実施形態では、蓋体集合体2は図6のように、1つのベース領域において、第2の封止材S23の内周縁が、堤部7の内壁の稜部から蓋体集合体2へ鉛直方向に延出した仮想ラインLよりも内側(凹部方向)に位置している。一方、第2の封止材S23の外周縁は、第1の封止材S12の外周縁と略同一平面上に位置している。つまり、第2の封止材S23の幅寸法W2は、第1の封止材S12の幅寸法W1よりも大きくなるように形成されている。
【0052】
上記構成によって、各ベースの第1の封止材S12の形成領域は、各蓋体の第2の封止材S23の形成領域内に収まる(内包される)ようになる。したがって、ベース集合体1の焼成時の収縮によって、製造ロット毎のベースサイズのバラツキが拡大した場合でも、上記構成によって、ベースと蓋体との位置ズレを抑制することができる。これにより、より確実で安定した圧電振動デバイスの気密封止を行うことが可能となる。
【0053】
また、第2の封止材S23の内周縁が、第1の封止材S12の内周縁よりも内側に位置するように形成されているので、前記封止材の加熱溶融時に堤部7の上面から蓋体側にかけて形成される封止材(金属ロウ材)のフィレットも、より凹部内側方向に形成される。したがって、封止材による接合領域が拡大するため、蓋体とベースとの接合強度を向上させることができる。
【0054】
−第4の実施形態−
本発明の第4の実施形態を図7を用いて説明する。図7は本発明の第4の実施形態を示すベース集合体と蓋体集合体の断面図の一部である。なお、前述の実施形態と同様の構成については、同番号を付して説明の一部を割愛するとともに、前述の実施形態と同様の効果を有する。
【0055】
本発明の実施形態において、図7に示すベース集合体1は前記第2の実施形態と同一の構成であり、ベース集合体1に形成される第1の封止材S12は、図7に示すように隣接するベースに対してダイシング予定ラインを挟んで一定間隔で離間した状態で形成されている。一方、蓋体集合体2には隣接する蓋体間に第2の封止材S24が形成されている。つまり、1つの蓋体に形成された第2の封止材S24は、隣接する蓋体に形成された第2の封止材S24と繋がって一体的に形成されている。
【0056】
第2の封止材S24の内周縁は、堤部7の内壁の稜部から蓋体集合体2へ鉛直方向に延出した仮想ラインLよりも内側(凹部方向)に位置しているとともに、隣接する蓋体間にも前記第2の封止材S24が形成されている。
【0057】
本実施形態において、前記第2の封止材S24の材料として、金−錫合金を使用しているが、雰囲気加熱によって溶融した金−錫合金は、第2の封止材S24の、第1の封止材S12と当接しない領域(図7のB部およびC部)から第1の封止材S12に引き寄せられてフィレットを形成する。これにより、蓋体集合体2とベース集合体1とが確実に気密接合される。したがって、第1の封止材S12の形成位置が前述のように、隣接するベースに対してダイシング予定ラインを挟んで一定間隔で離間した状態であっても、前記B部およびC部の存在によって接合領域を確保することができるので、蓋体とベースとの接合強度を向上させることができる。
【0058】
このような構成であれば、ベース集合体1に形成する封止材S12の量を削減でき、製造コストの低減を図ることができる。
【0059】
なお、本発明の実施形態において、封止材として、金−錫合金(Au−Sn合金)が使用されているが、これに限定されるものではなく、例えば錫−銀合金(Sn−Ag合金)や金−ゲルマニウム(Au−Ge合金)など他の金属を使用してもよい。あるいはまた、金属ロウ材以外に低融点ガラスを用いることも可能である。例えば、ホウケイ酸ガラスや、鉛フリーガラスとして、酸化ビスマス系ガラス、酸化バナジウム系ガラス、銀リン酸系ガラス、錫リン酸系ガラス等を用いることも可能である。
【0060】
また、本発明の実施形態においては、蓋体集合体とベース集合体の両方に封止材が形成された例を挙げているが、本形態に限定されるものではなく、蓋体集合体側にだけ封止材が形成された形態であってもよい。例えば、蓋体集合体の片面(ベース集合体との接合面側)に、封止材としてガラスを使用した形態であってもよい。
【0061】
本発明の実施形態では表面実装型水晶振動子を例にしているが、IC等の電子部品を搭載した水晶発振器などの圧電振動デバイスの蓋体集合体および、当該蓋体集合体を用いた圧電振動デバイスの製造方法にも適用可能である。
【0062】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0063】
圧電振動デバイスの量産に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の第1の実施形態を示すベース集合体と蓋体集合体の斜視図。
【図2】本発明の第1の実施形態を示すベース集合体と蓋体集合体の断面図。
【図3】本発明の第2の実施形態を示すベース集合体と蓋体集合体の斜視図。
【図4】本発明の第2の実施形態を示すベース集合体と蓋体集合体の断面図。
【図5】本発明の第3の実施形態を示すベース集合体と蓋体集合体の断面図。
【図6】図5のA部拡大図。
【図7】本発明の第4の実施形態を示すベース集合体と蓋体集合体の断面図。
【図8】従来の水晶振動子の一例を示す断面図。
【図9】従来の水晶振動子の一例を示す断面図。
【符号の説明】
【0065】
1 ベース集合体
2 蓋体集合体
3 水晶振動素子
4 搭載パッド
5 導電性接合材
6 凹部
7 堤部
8 外部接続端子
S11、S12 第1の封止材
S21、S22、S23、S24 第2の封止材
D ダイシング予定ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に凹部と、前記凹部を包囲する環状の堤部とを具備するベースがマトリクス状に複数かつ一体形成されたベース集合体を一括気密封止する、複数の蓋体がマトリクス状に一体形成された蓋体集合体であって、
少なくとも前記蓋体集合体の前記ベース集合体との接合面側には、複数の前記ベースの堤部上面と一対一で対応する位置に周状の封止材が複数形成されているとともに、前記封止材の内周縁が、前記堤部の内壁面と略同一平面上の位置に形成、あるいは前記堤部の内壁面よりも内側の位置まで張り出して形成されていることを特徴とする蓋体集合体。
【請求項2】
上部に凹部と、前記凹部を包囲する環状の堤部とを具備するベースがマトリクス状に複数かつ一体形成されたベース集合体と、前記凹部に搭載される圧電振動素子と、前記ベースの堤部上面と一対一で対応する位置に周状の封止材が複数形成された請求項1に記載の蓋体集合体とから得られる圧電振動デバイスであって、
前記封止材は金属、あるいは低融点ガラスからなり、前記凹部に一対一で前記圧電振動素子を搭載した後、前記凹部を前記蓋体集合体を用いて、前記封止材の加熱溶融によって一括気密封止した後、分割切断することによって得られることを特徴とする圧電振動デバイス。
【請求項3】
上部に凹部と、前記凹部を包囲する環状の堤部とを具備するベースが、マトリクス状に複数かつ一体形成されたベース集合体の各凹部に、少なくとも圧電振動素子を搭載する搭載工程と、
前記凹部を気密封止する蓋体がマトリクス状に一体形成された蓋体集合体であって、少なくとも前記蓋体集合体の前記ベース集合体との接合面側には、複数の前記ベースの堤部上面と一対一で対応する位置に周状の封止材が複数形成されているとともに、前記封止材の内周縁が、前記堤部の内壁面と略同一平面上の位置に形成、あるいは前記堤部の内壁面よりも内側の位置まで張り出して形成されている蓋体集合体を用いて、前記凹部を加熱雰囲気中にて一括気密封止する封止工程と、
一括気密封止された前記蓋体集合体と前記ベース集合体とを分割切断して、複数の圧電振動デバイスを得る切断工程とを、有する圧電振動デバイスの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−33613(P2009−33613A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−197303(P2007−197303)
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】