説明

薄いプライを用いるセラミック複合材物品の製造

【課題】輪郭変化部及び肉厚変化部を有する部品を製造するために、薄いプライを使用し、取扱い及びレイアップ作業中の、薄いプライ、及びレイアップ品の損傷を防止するセラミック複合材(CMC)物品の製造法を提供する。
【解決手段】薄い耐熱CMCプリプレグプライの表面にスクリム(取扱い特性を向上させるため薄いプリプレグの表面に適用される薄い支持層)を形成し、薄いプライの取り扱い時、及びレイアップ作業中の部品の損傷を防止する。スクリムは、補強材として適用される細い繊維又は太い繊維の荒目又は細目メッシュである。また、スクリムは臨時の除去可能な構造体であってもよいし、薄いプライの一部として部品中に組み込んでもよい。また、スクリムの構造及び組成は、適用される構造体、部品により決定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄いセラミックマトリックス複合材(CMC)プライの製造及びCMC部品の製造におけるそれの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンの効率及び性能を向上させて推力/重量比の増大、排出物削減及び燃料消費率の向上を達成するため、エンジンタービンの運転温度を高めることが課題とされている。高温化がエンジンのホットセクション(特にエンジンのタービンセクション)の部品を構成する材料の限界に達し、それを超えると、新素材を開発しなければならない。
【0003】
エンジン運転温度の上昇に伴い、燃焼器及びタービンセクション部品を構成する耐熱合金の新たな冷却法が開発されてきた。例えば、高温燃焼ガスの流れる部品表面にセラミック遮熱コーティング(TBC)を塗工することで、伝熱率を低下させ、基材金属を熱から保護し、部品が高温に耐えられるようにする。こうした改良は、ピーク温度及び温度勾配を低下させるのに役立つ。フィルム冷却により耐熱性又は熱保護性を改良するため、冷却孔も導入されている。併せて、耐熱合金の代替材料としてセラミックマトリックス複合材も開発されている。セラミックマトリックス複合材(「CMC」)は多くの場合に金属よりも温度及び密度の点で優れているため、運転温度の高温化及び/又は軽量化が望まれる際に好ましい材料となる。
【0004】
従来、セラミックマトリックス複合材を用いてタービン翼形のようなホットセクションタービンエンジン部品を製造するために様々な技術が用いられてきた。しかし、かかる技術には、ヘリコプターエンジンで見られるようなガスタービンエンジン部品の小さな外形的特徴部に関して問題があった。本願出願人に譲渡された米国特許第5015540号、同第5330854号及び同第5336350号(これらの開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。)に記載されたCMC部品の一製造方法は、溶融ケイ素を溶浸した繊維材料を含む炭化ケイ素マトリックス複合材の製造法に関するもので、この方法を以下「Silcomp法」という。繊維は一般に約140マイクロメートル(0.0055インチ)以上の直径を有するので、小形ガスタービンエンジン用タービン動翼部品のように約0.030インチ程度の外形的特徴部を有する複雑で入り組んだ形状はSilcomp法では製造できない。
【0005】
プリプレグ溶浸法のような他の技術も用いられてきた。しかし、通常は未硬化時の厚さが約0.009〜約0.011インチの標準的プリプレグプライで製造されるため、かかる部品について十分な構造的健全性をもつ最小硬化厚さは約0.030〜約0.036インチであった。最終製造部品におけるマトリックス組成百分率が標準的なものでは、かかる未硬化厚さのものを用いると多層プライ部品に関する最終硬化厚さは約0.030〜約0.036インチとなる。これは、微細な外形的特徴部を要求する部品を含む小形タービンエンジンで使用するには厚すぎる。
【0006】
タービンエンジン用途のための複雑なCMC部品は、複数のプライをレイアップすることで製造されてきた。部品の輪郭変化又は肉厚変化が存在する区域では、相異なる小さい形状のプライを特注切断することで輪郭変化又は肉厚変化のある区域に適合させる。複雑で綿密に予備設計されたレイアップ計画に従ってこれらの部材をレイアップすることで硬化部品が形成される。設計が複雑であるばかりでなく、レイアップ作業も時間のかかる複雑なものである。さらに、輪郭変化及び肉厚変化のある区域では機械的性質がモノリシックでないので、これらの区域はプライの配向及び得られる性質に基づいて注意深く設計しなければならない。輪郭境界に沿ったプライ間の移行は滑らかでないので、これらの輪郭部は機械的性質が滑らかに移行しない区域であり得る。このことは、部品の設計及びレイアップ作業のモデル化に際して考慮しなければならない。
【0007】
さらに他の技術では、繊維トウの太さを低減させることにより、多層プライを構成するために使用されるプリプレグプライの厚さを低減させることが試みられている。理論的には、かかる方法はプライの厚さを低減させることには成功し得るであろう。しかし、実際には、かかる薄いプライは自動装置を用いても加工中の取扱いが難しい。若干のよくある問題としては、薄いプライのしわ、物品中のボイド及び物品の機械的性質の低下を生じることがある製造欠陥、並びにプライ分離の可能性がある。加えて、翼形ハードウェアが小さい半径及び比較的薄い縁端を形成する能力を要求することによっても問題が起こる。プリプレグテープ又はプライ中の繊維(通例は炭化ケイ素)の高い剛性は、急激な屈曲部及び小半径のコーナーの回りにプライを形成しようとする場合に分離を引き起こすことがある。これは、かかる区域における物品の機械的性質の低下をもたらし、結果的に耐久性の悪化につながる。
【特許文献1】米国特許第5015540号明細書
【特許文献2】米国特許第5330854号明細書
【特許文献3】米国特許第5336350号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
要望されているのは、(特に縁端において)約0.015〜約0.021インチの厚さ並びに約0.030インチ未満の小さい半径を有する外形的特徴部の形成を可能にするCMCタービンエンジン部品の製造方法である。加えて、約0.021インチ未満の厚さを有する外形的特徴部をもったCMCタービンエンジン部品の製造方法も要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、輪郭変化部及び肉厚変化部を有する部品を製造するために薄いプライを使用する。薄いプライはまた、薄い横断面を有する部品を製造するためにも使用される。
【0010】
薄い耐熱CMCプリプレグプライの表面には、取扱い及びレイアップ作業中にプライの健全性を維持するのを助けるスクリムが適用される。本明細書中で使用する「健全性を維持する」とは、薄いプライ及びレイアップ品の損傷(例えば、しわ)を防止することを意味する。本明細書中で使用する「スクリム」とは、取扱い特性を向上させるため薄いプリプレグの表面に適用される薄い支持層である。スクリムは、補強材として適用される細い繊維又は太い繊維の荒目又は細目メッシュであり得る。スクリムは臨時の除去可能な構造体であってもよいし、或いは薄いプライの一部として部品中に組み込んでもよい。スクリムの構造及び組成は、スクリムが臨時の除去可能な構造体であるか、或いはそれが部品中に恒久的に組み込まれるかに依存する。
【0011】
スクリムが臨時の除去可能な構造体であり、したがって使い捨てである場合、それはオープンメッシュ構造をなして連続フィラメント糸から作られた低コストの補強用ファブリックからなり得る。オープンパターンに代わる構造体としては、フィルム、フェルト又は繊維材料がある。
【0012】
スクリムが部品中に組み込まれる場合には、スクリムは補強繊維を含み得る。この場合、繊維の束又はトウの配列は必要な強度を与えるように予め選択された方向に沿って適用すべきである。スクリム用として選択される繊維は、薄肉セクション又は輪郭変化部での薄層の使用に矛盾しないように適度に細くなければならない。加えて、スクリムを構成するフィラメント糸の組成はプライの薄層を構成する材料との相容性を有していなければならない。
【0013】
スクリムはまた、部品中に組み込むことでマトリックス材料に転化することもできる。この場合、スクリムは、溶融ケイ素で容易に濡れ、好ましくは炭化ケイ素(SiC)に転化する材料からなる。例えば、炭素系スクリムは溶融ケイ素溶浸プロセス中にSiCに転化する。
【0014】
スクリムを部品中に組み込むための代替アプローチは、溶浸に先立つ高温でのポリマー熱分解又は焼却操作中に熱分解する「逃散性」繊維材料(例えば、レーヨン)を使用するものである。この場合、選択される「逃散性」材料は夾雑物を残すことがなく、熱分解中に生じる開放通路は以後のケイ素溶浸を容易にすることがある。
【0015】
薄い耐熱セラミックマトリックス複合材をスクリムで補強する方法は、薄肉セクション又は大きい輪郭変化部を有する軽量の耐熱セラミックマトリックス複合材部品の形成を可能にする。この方法は、先行技術に係る複数の耐熱セラミックマトリックス複合材プリプレグプライをレイアップすることを伴う。0.008インチ以下の厚さを有する薄い耐熱セラミックマトリックス複合材プリプレグプライを薄肉セクション用及び大きい輪郭変化部用として用意するが、かかるプリプレグプライは耐熱性能を有している。オープンメッシュ構造を有する補強用ファブリック(スクリム層という)を用意し、欠陥を生じる損傷を受けることなしにプリプレグプライの取扱いが可能となるようにするためプリプレグプライに適用する。プライの健全性を維持しながら薄いプリプレグプライをレイアップする。薄いプライは、薄肉セクション又は大きい輪郭変化部を要求する幾何学的形状に対応する所定の位置にレイアップされる。スクリム層は相次ぐレイアップ作業中にスクリムから除去でき、或いは熱分解によって除去できる。別法として、スクリム層は部品中に組み込むこともできる。スクリム層が熱分解で除去されるか、或いは部品中に組み込まれる場合、ボイドを排除すると共に部品を完全に緻密なものにするため、プライマトリックス材料に対応するマトリックス材料の溶浸が必要となる。プリプレグ部品を形成するために必要なレイアップ品を完成させ、次いで加熱及び加圧下で硬化させて耐熱セラミックマトリックス複合材部品を形成する。
【0016】
本発明の利点は、スクリムの使用により、薄肉セクションの形成又は輪郭部での使用のために薄いプライをレイアップするのが可能になることである。レイアップは異方性を有し得る結果、薄肉セクション、肉厚の変化する区域、及び輪郭部に必要に応じて指向性の強度を付与することができ、したがってこれらの位置で強度を犠牲にしなくて済む。
【0017】
本発明の利点は、薄いプライへのスクリムの適用により、薄いプライの取扱い及びレイアップに関して以前に確認されていた問題を回避しながらプライの取扱い及びレイアップが可能になることである。
【0018】
薄いプライの取扱いが可能なので、8ミル(0.008インチ)以下の厚さを有するプライをCMC複合材中に使用でき、3枚以上のプライの構造的健全性を要求する約27ミル(0.027インチ)以下の薄いセクションをCMC材料で形成することが可能になる。
【0019】
本発明のもう一つの利点は、スクリムを薄肉複合材セクション又は輪郭変化部に組み込む場合、スクリムの除去作業を含める必要がないことである。スクリムは溶浸法で構造物中に組み込まれてCMCの一部をなすので、ファブリックの材料は薄いプライのために使用される材料と共存し得るように選択しなければならない。
【0020】
本発明のその他の特徴及び利点は、本発明の原理を例示するための添付の図面と併せて好ましい実施形態に関する以下の詳細な説明を考察することによって明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
薄いCMCプライの取扱い特性を向上させるためにスクリムが使用される。スクリムは、取扱い特性を向上させるため薄いプリプレグの表面に適用される薄い支持層である。スクリムは、補強材として適用される細い繊維又は太い繊維の荒目又は細目メッシュであり得る。スクリムは臨時の除去可能な使い捨て構造体として適用してもよいし、或いは薄いプライの取扱い特性を向上させるために適用すると共にCMC部品中に組み込んでもよい。スクリムの材料及びサイズの最終選択は、スクリムが臨時の取扱い補助材として適用されるか、或いはそれがCMC構造物中に組み込まれるかに依存する。スクリムは、通例、間隙領域中にマトリックス材料を含まない裏なし素材のファブリックである。単にファブリックの付着特性を向上させるため、ファブリックに接着剤の薄層を適用できる。ファブリックは、織物、荒目織物材料、複数の一方向性トウ、又は不連続繊維材料の薄いマットからなり得る。マットの厚さは約0.0005インチ(0.5ミル)ほどに薄くてよいが、これはスクリム厚さに関する現時点での限界に近いと考えられる。しかし、技術の改良によってさらに薄いスクリムの製造が可能になることもある。
【0022】
CMC材料を形成するためのプライは、未硬化マトリックス材料中のフィラメントトウからなる。本明細書中で使用する「トウ」とは、連続フィラメントの束を意味する。「フィラメント」は繊維材料の最小単位を意味していて、高いアスペクト比を有すると共に、長さに比べて非常に小さい直径を有する。繊維はフィラメントと互換的に使用される。本明細書中で使用する「マトリックス」とは、他の材料(特に繊維又はトウ)を埋め込んだ本質的に均質な材料である。本明細書中で使用する「プリプレグプライ」又は単に「プリプレグ」とは、樹脂状のマトリックス材料を含浸した後、部分的に乾燥し、完全に乾燥し、又は部分的に硬化させた一方向性トウのシートを意味する。本明細書中で使用する「プリフォーム」とは、プリプレグプライを所定の形状にレイアップしてなる、プリプレグプライの硬化前のレイアップ品である。プライは、レイアップ中に互いに付着し得るようにするため、ある程度の粘着性を維持している。プライは一般に異方性を有していて、トウ方向と同じ方向に沿って最大強度方向を有する。
【0023】
構造部材を形成するために使用されるプライは、これまで、未硬化又は部分硬化マトリックス材料中に埋め込まれた直径約5.5ミル(0.0055インチ)のトウを使用してきた。ボイドのないマトリックスを生み出すためには十分なマトリックス材料が利用できなければならないので、供給されるマトリックス材料の量は通例はトウ直径によって決定される。直径の小さいトウを供給すれば、マトリックス材料の低減が可能になり、ひいては9ミル未満の厚さを有するプライが得られる。9ミル未満のサイズのプライを準備することに関する問題は、かかるプライの取扱い及びレイアップが難しく、プライの健全性を損なう許容し得ないしわ又は他のタイプの損傷を生じることである。
【0024】
CMC材料は、宇宙航空用途及び航空機エンジンの特定部品で使用されている。CMC材料は、低い密度(重量の減少)及び高温での優れた強度のため、航空機エンジンにおける代替材料として特に有用である。CMC材料は、燃焼器セクション、タービンセクション及び排気セクションを含めたエンジンのホットセクション全体にわたり、タービン動翼、燃焼器ライナー、排気ライナー、フラップ及び他の構造用途のような部品で使用される。ある種の用途では、非常に薄肉のセクション或いは急激な肉厚変化部又は輪郭変化部が存在するものの、強度は維持しなければならない。若干の典型例には、タービン動翼の後縁部及び冷却孔又は冷却通路の回りの輪郭部がある。かかる冷却孔及び冷却通路は、多くのホットセクション部品に関して設けられている。強度が要求される場合、3枚以上のプライが使用される。標準的なプライ厚さのため、プライの使用は、27ミル以上の肉厚部及びあまり急激でない輪郭変化部に限定される。
【0025】
本発明に従えば、0.009インチ未満の薄いプライが使用できる。本発明に従えば、細いトウ及びマトリックス材料からなる厚さ2.5〜3.5ミル(0.0025〜0.0035インチ)のプライを用意して取り扱うことができる。これらのタービンエンジン部品のために使用されるプライは、顕著に細くて薄いプライを生み出すトウから構成できる。
【0026】
マンドレルを用意する。マンドレルは適当な表面を有している。適当な表面とは、プライ又はスクリムの少なくとも一方に関して不粘着性のものである。好ましくは、マンドレルは、プライがそれ自体に重なることなしにプライの完全な巻き付きを許すような円周を有する円筒面である。即ち、レイアップのために使用されるプライの長さが36インチであれば、円筒面の円周は約36インチ(又は約12インチの外径)を超える。直径(d)と円周Cとの関係は次式の通りである。
【0027】
C = π*d (1)
プライ及びスクリムを円筒面に巻き付けるが、加工されるプライのサイズはもっぱら円筒のサイズによって制限される。スクリムはプライの一面のみに適用される。プライは未硬化又は部分硬化の状態にあるので、それは多少の粘着性を有しており、スクリムはプライに付着し得る。カレンダードラムによく似た第2の円筒ドラムを用いて、スクリム及びプライを互いに接触させると共に、スクリム及びプライに圧力を加えて完全な接触を達成することができる。
【0028】
次いで、プライ/スクリムの組合せをマンドレルから取り除くことができる。プライに多少の追加強度を与えるスクリムが取扱いを容易にする。次いで、プライを通常のやり方でレイアップできる。
【0029】
本発明の一実施形態では、マンドレル上のプライにスクリムを適用するか、或いはマンドレル上のスクリムにプライを適用することができる。薄いプライはマトリックス中に埋め込まれた方向性配列トウを含むと共に、裏材を有する。トウは、最も典型的には一方向性のものであるか、或いは織物であり得る。トウは、未硬化又は部分硬化の状態にあるマトリックス中に埋め込まれている。マトリックスはプライに粘着性を付与する。好ましい実施形態では、裏材が円筒側を向くようにしてプライを円筒の円周面上に配設することで、円筒の表面上で容易にしわをのばすことができる。所望ならば、円筒への適用前に、或いは円筒又はドラム上に配設しながら、裏材をプライから剥離又は除去できる。円筒は任意適宜の速度で回転させることができる。次いで、プライの長さ及び幅に合致するサイズに予め切断したスクリムをプライに適用する。通例、プライの粘着性はスクリムをプライに接触した状態に維持するのに十分である。所望ならば、スクリムをプライに圧着できる。これは手で行うことができる。一層正確な適用が要求されるならば、スクリムに一定の力を加えることができる第2の反転円筒を用いてスクリムをプライ上に配設できる。第2の円筒を用いれば、加える力を一貫したやり方で変化させることができる。スクリムをプライに適用した後、集成体を円筒又はドラムから取り除くことができる。以前に除去されていなければ、裏材をここで除去することができ、スクリムが薄いプライの取扱いを容易にする。
【0030】
代わりの実施形態では、スクリムを円筒又はドラムに適用することができる。前述のように、スクリムは少量の接着剤を含むことがある。このような少量の接着剤は必ずしも必要でないが、プライに対するスクリムの付着性を向上させるために利用することもできる。次いで、プライをスクリム上に適用する。通例、プライの粘着性はプライをスクリムに接触した状態に維持するのに十分である。所望ならば、プライをスクリムに圧着できる。これは手で行うことができる。一層正確な適用が要求されるならば、スクリムに対して接触させた場合にプライに巻付け張力を加えることで、スクリムとプライとを十分に接触させて結合を容易にし得る第2の円筒を用いてプライをスクリム上に配設できる。プライをスクリムに適用した後、集成体を円筒又はドラムから取り除くことができる。以前に除去されていなければ、裏材をここで除去することができ、スクリムが薄いプライの取扱いを容易にする。
【0031】
変法では、上述のようなマンドレル上にスクリムを予め配置した後、スクリムを覆うようにして横行マンドレル上に含浸トウを直接巻き付ける。含浸トウは、標準的なプライを製造するために通常使用される標準的な5.5ミルの直径より著しく小さい直径を有し得る。含浸トウを巻付け張力下に維持することで、トウとスクリムとの十分な接触が可能となる。含浸トウは粘着性を有することにより、トウとスクリムとの間の付着及び実質的に平行なトウ間の付着が推進される。集成体をマンドレルから分離すれば、実質的に薄いプライが最終的に得られる。このプライをレイアップすれば、スクリムがもたらす支持のため、薄いプライに付随するプライ欠陥を有しないプリフォームを形成できる。
【0032】
上述の製造オプションでは、レイアップ後にスクリムをプライから除去することもできるし、或いはレイアップ後にスクリムをプライ上に存続させて部品中に組み込むこともできる。レイアップ後にスクリムをプライから除去する場合、スクリム材料は薄いプライの取扱いを一時的に向上させるためにのみ適用される。予め選択された断面厚さ(通例は10ミル以下)又は輪郭変化部に対応する厚さが達成されるまで、プリプレグプライ層とスクリムとの集成体を順次にレイアップし、スクリム層を順次に除去する。このような場合には、スクリム材料は除去後に捨ててよい。スクリムが薄いプライから容易に分離できること、及びスクリムがプライとの接触中にプライと他の相互作用を示さないことを除けば、除去可能なスクリムとして使用される材料のサイズ又は種類は特に限定されない。このような場合には、プライとスクリムとの相互接触は、スクリムがプライに支持を与えながらも両者を容易に分離できる程度に軽いものであることが望ましくあり得る。本プロセスは、スクリムで支持されたプライからなる集成体をレイアップすることを含む。プライをレイアップした後、スクリムを除去できる。プライを別のプライ上にレイアップする場合には、最初にしわをのばしながらプライを下方のプライに圧着することで良好な接触及び付着を達成する。下方のプライが存在しない場合には、しわをのばしながらプライを(成形用具であり得る)基体上に配置する。次いで、スクリムを除去する。下方の材料との付着力は、スクリムを除去するために必要な力より大きければ理想的である。しかし、プライの移動を防止するため、スクリムを除去する際に多少の力をプライに軽く加えることもできる。各プライについてこれを繰り返しながら、加工に適したレイアップ品が得られるまでレイアップを続ける。レイアップの完了後、当技術分野で公知の通り、例えばオートクレーブ処理又は減圧バッグ熱処理及びCMC材料が要求するような追加の高温処理によってレイアップ部品を加熱及び加圧下で硬化させる。
【0033】
代わりの実施形態では、プライの取扱い特性を向上させるため、プライにスクリムが適用される。しかし、プライにスクリムを適用してプライをレイアップした後、スクリム材料は除去されず、例えば溶浸によって部品中に組み込まれる。スクリムはプライ中に組み込まれるので、スクリム材料の選択及びサイズは大きな重要性を有する。プライは必然的に薄いので、スクリム材料は、この技術で製造される部品セクションの厚さを顕著に増加させないようなものでなければならない。したがって、スクリム中に使用される繊維又はトウは、標準のプライ中に使用されるトウ(即ち、約0.0055インチ)より細くすべきである。部品中に組み込まれるトウ又は繊維は、好ましくは約5ミル未満にすべきであり、0.5ミルという小さい直径を有し得る。このようにすれば、プライ間の溶浸セクションも非常に薄くすることができる。
【0034】
部品中に組み込まれるスクリムを構成するトウ又は繊維は、プライ材料との相容性を有していなければならない。即ち、プライ材料が炭化ケイ素/炭化ケイ素であれば、スクリム用として炭化ケイ素繊維トウ又は炭素繊維トウを使用し、スクリムによって占められる容積にケイ素を溶浸させることが望ましくあり得る。スクリムの形態(不連続繊維マット、荒目織物又は一方向性繊維のいずれであるか)並びに使用されるデニールは、部品の機械的性質要件に依存する。プライが所要の機械的性質を与え得るならば、荒目織物が使用できる。多少の追加強度が要求されるならば、不連続繊維マットが機械的性質要件を満たし得る。最大の強度が要求されるならば、プライ中に使用されるものとほぼ同じ一方向性繊維を含むスクリムが必要である。
【0035】
本発明は、薄いプライを用いてのみ得ることができる薄肉セクション或いは肉厚変化部又は輪郭変化部の形成を可能にする。実質的に欠陥のないプライに成形されるこれらの薄いプライをレイアップすることで、2インチ未満の半径方向高さを有する小形動翼の後縁部のような望ましい薄肉セクションを形成できる。これらのプライレイアップ品のもう一つの用途は、例えば動翼プラットフォームに関する薄肉−厚肉移行部であり得る。この場合、セクション間の移行部用としては薄いプライが望ましいが、前述した欠陥を形成する傾向のためにこれまで使用できなかった。CMCレイアップ品は、少なくとも3枚のプライの使用を必要とする。本発明は、溶浸技術と組み合わせてプライを使用することで薄肉セクション、肉厚変化部又は輪郭変化部を得るため、非常に薄いプライのレイアップ及び硬化を可能にする。こうして得られるレイアップ品は、部品の機械的性質を悪化させることなしに薄いレイアップ品に付随する欠陥を排除しながら、3枚プライの組合せの厚さを約27〜33ミル(0.027〜0.033インチ)の現行値から約7.5〜10ミル(0.0075〜0.010インチ)という小さい値に減少させる。
【0036】
以上、好ましい実施形態に関して本発明を説明してきたが、本発明の技術的範囲から逸脱せずに様々な変更をなすことができ、構成要素を同等物で置換できることが当業者には理解されよう。さらに、本発明の技術的範囲内で、特定の状況又は材料を本発明の教示内容に適合させるために多くの修正をなすことができる。したがって、本発明はこの発明を実施するための最良の形態として開示した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に含まれるすべての実施形態を包含する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温部品の製造方法であって、
0.008インチ以下の厚さを有すると共に耐熱性能を有するセラミックマトリックス複合材プリプレグプライを準備する段階、
オープンメッシュ構造を有する補強用ファブリックをスクリム層として準備する段階、
スクリム層をプリプレグプライに適用して集成体を形成する段階、及び
プリプレグプライの健全性を維持しながら集成体をレイアップする段階
を含んでなる方法。
【請求項2】
集成体をレイアップする段階が、集成体をレイアップし、スクリム層を除去することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
集成体をレイアップする段階が、予め選択された断面厚さが達成されるまで、最初の層上に後続集成体を順次にレイアップし、スクリム層を順次に除去することを含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
オープンメッシュ構造を有する補強用ファブリックが、オープンメッシュ構造を有する連続フィラメント糸、フィルム、フェルト及び繊維材料からなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
集成体をレイアップする段階が、約0.0075〜0.010インチの範囲内の予め選択された断面厚さが達成されるまで、最初の層上に2つの後続集成体を順次にレイアップし、スクリム層を順次に除去することを含む、請求項3記載の方法。
【請求項6】
集成体をレイアップする段階が、予め選択された断面厚さに到達するまで、最初の集成体上に後続集成体を順次にレイアップすることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
スクリム層がレイアップ集成体中に組み込まれる、請求項6記載の方法。
【請求項8】
スクリム層が予め選択された方向に沿って適用された繊維束のトウを含むと共に、スクリム層がセラミックマトリックス複合材プリプレグプライ材料と相容性を有する、請求項6記載の方法。
【請求項9】
さらに、スクリムの補強用ファブリックのオープンメッシュ構造に、複合材プリプレグプライのセラミックマトリックス材料に対応するマトリックス材料を溶浸させる段階を含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
プリプレグプライが炭化ケイ素/炭化ケイ素セラミックマトリックス複合材であり、スクリムが炭化ケイ素繊維トウ及び炭素繊維トウからなる群から選択され、溶浸させるマトリックス材料がケイ素である、請求項9記載の方法。

【公開番号】特開2008−230951(P2008−230951A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−321455(P2007−321455)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】