説明

薄板ガラスの加工装置

【課題】厚さが0.5〜1.1mmの薄板ガラスに、迅速且つ正確に孔や抉りを設けることができる薄板ガラス加工装置の提供する。
【解決手段】サンドブラスト装置及び研磨装置からなる薄板ガラスの加工装置であり、サンドブラスト装置が、薄板ガラス6を予め定められた位置に固定する手段を有するテーブル1、上下に可動に固定され、設ける孔及び/又は抉りよりも0.2〜0.35mm内側の部分が露出するように、小さめに切り欠き21が設けられているテーブル1を保護するマスキングプレート2、切り欠き21によって露出した部分に研磨剤粒子を吹き付けるサンドブラスト手段3からなり、研磨装置が、サンドブラスト装置により切削された薄板ガラスを予め定められた位置に固定する手段を有するテーブル及び、サンドブラスト手段によって切削された部分の端面を、予め定められた孔及び/又は抉りの形状に仕上げる研磨手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は板ガラスの加工装置に関し、特に、薄板ガラスに孔及び/又は抉りを設けることができる、薄板ガラスの加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器を始め、多くの機器はディスプレーとしての表示窓を有しているが、昨今の機器の小型化によるスペースの都合上、表示窓の一部にスイッチ類又はスピーカー等を配置する必要が生じ、表示窓に長孔又は抉り部等が設けられることが多い。これらの孔や抉りの位置及び寸法は、特に製品自体が小型である場合、寸法誤差が±0.1mm以下という、高い精度が要求される。
特に最近は、これらの機器のデザインが多様化し複雑化するのに合わせて、より高い精度が要求される傾向にある。このような孔や抉りを有する表示窓の製造には、通常、軽量である上加工が容易なポリカーボネート樹脂が主として使用されている。
【0003】
特に、最近の機器にはタッチパネルが導入される傾向がある。しかしながら、タッチパネルは頻繁に指で触れられたり強く押されたりするので、ポリカーボネート樹脂では、傷や歪みが生ずることが懸念される。そこで、厚さ0.5〜1.1mmの薄板ガラスが表示窓に使用されることが多くなっているものの、薄板ガラスの場合には、小型又は複雑な形状の抉りや孔を設ける加工が困難であるという欠点があった。
【0004】
従来、板ガラスに長方形や楕円形等の、円形以外の孔又は抉りを設ける加工を行う場合には、孔又は抉りの形状に沿って、ドリルを用いて一列に並べた多数の小孔を開け、該小孔に囲まれた部分を打ち抜いた後、切断面を研磨して整える方法が採用されていた。
しかしながら、この方法は加工に長時間を要し、効率的ではないという問題があった。
【0005】
上記の欠点を改良する、板ガラスに抉り部を設ける場合の切断方法として、素板ガラスの抉り部のスクライブ線と抉り部以外の部分のスクライブ線との間に隙間を設け、抉り部のスクライブ線を素板ガラスの周縁部付近まで延長する異形切断方法が開示されている(特許文献1)。
【0006】
しかしながらこの方法では、スクライブ線が不連続であり、該不連続部分は亀裂の波及効果によって切断される(特許文献1、5頁32‐33行参照)ので、薄板ガラスの場合は破損する恐れがある。また、仮に破損を回避することができたとしても、スクライブ線がなかった部分については、寸法に狂いが生じる恐れがある。このような寸法の狂いは、抉りが大きい場合にはそれほどの影響はないが、抉りが小さい場合には相対的に大きな寸法の狂いとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−203690
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者等は、薄板ガラスに、迅速且つ正確に孔や抉りを設けるために鋭意検討を重ねた結果、所定の外形に切り出された薄板ガラスを、マスキングプレートを介してサンドブラストを用いて切削を行った後に、該切削部の内側端面を研磨することにより、薄板ガラスを破損することなく、迅速且つ高い寸法精度で、抉りや孔を設けることができることを見出し本発明に到達した。
従って本発明の目的は、厚さが0.5〜1.1mmの薄板ガラスに、迅速且つ正確に孔や抉りを設けることができる薄板ガラス加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち本発明は、厚さ0.5〜1.1mmの薄板ガラスに、直線及び/又は曲線で形成される孔及び/又は抉りを1以上設ける、サンドブラスト装置及び研磨装置からなる薄板ガラスの加工装置であって、少なくとも、前記サンドブラスト装置が、(i)前記薄板ガラスを予め定められた位置に固定する手段を有するテーブル、(ii)該テーブルに、前記薄板ガラスの位置決めを妨げないように、上下に可動に固定された前記薄板ガラスを保護するマスキングプレートであって、前記薄板ガラスをマスキングしたときに前記薄板ガラスに設ける孔及び/又は抉りよりも0.2〜0.35mm内側の部分が露出するように、小さめに切り欠きが設けられているマスキングプレート、(iii)該マスキングプレートによりマスキングされた薄板ガラスの、前記マスキングプレートの切り欠きによって露出した部分に研磨剤粒子を吹き付けるサンドブラスト手段からなり、前記研磨装置が、(iv)前記サンドブラスト装置により切削された薄板ガラスを予め定められた位置に固定する手段を有するテーブル、及び、(v)前記サンドブラスト手段によって切削された部分の端面を、予め定められた孔及び/又は抉りの形状に仕上げる研磨手段を有することを特徴とする、薄板ガラスの加工装置である。
【0010】
前記サンドブラスト装置及び研磨装置のテーブルは、前記薄板ガラスを固定する手段として、公知の真空吸引手段(図示しない)を有することが好ましい。
また、前記サンドブラスト装置は、100〜120メッシュの研磨剤粒子を500〜600kPaの圧力で吹き付けて切削するサンドブラスト装置であることが好ましく、前記研磨剤粒子は、アルミナ、ジルコニア、チタニアからなる群より選択される研磨剤粒子であることが好ましい。前記サンドブラスト装置は、切り替え手段によって研磨剤粒子の粒径を変更することのできる装置であることが好ましい。
更に、前記研磨装置は、第1工程としての粗研磨手段及び第2工程としての仕上げ研磨手段を有することが好ましく、前記薄板ガラスはソーダガラスであることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の薄板ガラスの加工装置によれば、高い精度で、効率よく薄板ガラスに孔及び/又は抉りを設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明におけるサンドブラスト装置の概念を示す部分断面図である。
【図2】サンドブラスト装置を3台有する場合である。
【図3】テーブル上の薄板ガラス位置決め手段の1例である。
【図4】本発明で使用されるマスキングプレートの1例である。
【図5】本発明における研磨装置の概念を表す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明における薄板ガラスとは、厚さ0.5〜1.1mmの板ガラスをいい、その外形は、直線のみからなるものに限られず、曲線を有していてもよい。また、抉り及び孔の形状は、矩形、円形、楕円形のような直線又は曲線のみからなる形状ばかりでなく、直線及び曲線を組み合わせてなる形状でもよい。
また、薄板ガラスとしては、安価で加工性に優れるソーダ石灰ガラスを使用することが好ましい。
以下、本発明を実施例に基づいて詳述する。
【実施例】
【0014】
本発明の薄板ガラスの加工装置は、少なくとも、サンドブラスト装置及び研磨装置からなる。図1は、本発明における、サンドブラスト工程で使用される装置における1つのサンドブラスト手段近辺の概略図であり、図2はこの一組の装置を複数有する装置の概念図を表す。尚、本図の場合には、マスキングプレートは、1枚で3組分を覆うようになっている。前記サンドブラスト装置は、マスキングプレートと整合するように、薄板ガラス6を固定する手段を有するテーブル1、該テーブル1に予め定められた位置に上下に可動に、例えば蝶番を介して固定された前記薄板ガラスをマスキングするマスキングプレート2、及びサンドブラスト手段3を有している。テーブル1に固定された薄板ガラス6は、切り欠き21を有するマスキングプレートによりマスキングされ、次いで、前記切り欠き21によって薄板ガラスが露出した部分を、サンドブラスト手段3により切削する。本装置は、図2に示すように、複数の薄板ガラスを同時に処理することができるように構成されることが好ましい。
【0015】
図3は、テーブル1に設けられる、薄板ガラスを予め定められた位置に位置決めする手段の1例である。この場合には、矢印の方向に可動なガイド13を用いて薄板ガラス6を移動させ、テーブル上に固定されたL字型固定具12に薄板ガラス6を固定して位置決めする。
【0016】
また、位置決めされた薄板ガラス6をテーブルに固定する手段としては、薄板ガラス6を傷つけず該薄板ガラス6の着脱を容易に行うことができる、真空吸着手段(図示せず)が好ましい。
【0017】
前記テーブル1に固定された前記薄板ガラス6にマスキングするマスキングプレート2としては、サンドブラストによる破損を防ぐ観点から、通常金属製のものを使用することが好ましい。また、マスキングプレート2の薄板ガラス6と接触する面は、薄板ガラス6を保護するために、樹脂フィルム等で被覆されている必要がある。このマスキングプレートは、例えばガイドピン15等により予め定位置に上下可動に配置されており、該マスキングプレートと整合するように位置決めされ、吸引固定された前記薄板ガラス6の上面を覆うことができる。また加工時には、例えばマスキングプレートを保持する保持枠11等の公知の手段によって、加工される前記薄板ガラス6の上面に、上部から圧接されることが好ましい。
【0018】
図4に、本発明に使用される、切り欠きを有するマスキングプレートの1例を示す。マスキングプレート2に設ける切り欠き21は、後工程の研磨工程で切削される分を考慮して、前記薄板ガラス6をマスキングしたときに、破線で示した所望する孔及び/又は抉りの形状61よりも0.2〜0.35mm内側の部分が露出するように、小さめに設けられる。本発明で使用するマスキングプレートは、1枚の薄板ガラスを個別にマスキングするものであってもよいが、作業効率を上げるため、2枚以上の薄板ガラスを同時にマスキングできるようにしてもよい。
【0019】
前記マスキングプレートに設けられた切り欠き部から露出した薄板ガラス6の部分を、サンドブラスト手段3を用いて切削する。この場合、サンドブラストのノズル31は、コンピューター数値制御(CNC)により、薄板ガラス6の露出部外週に沿って研磨剤粒子を吹き付けながら移動する。
【0020】
本発明におけるサンドブラストに用いる研磨剤粒子は、例えばアルミナ、ジルコニア、チタニア等の、公知の研磨剤粒子の中から適宜選択して使用することができる。研磨剤粒子の粒径は特に制限されるものではないが、100〜120メッシュであることが好ましい。100メッシュのものより粒径が大きいと、薄板ガラス6を破損するおそれがあり、120メッシュのものより粒径が小さいと、効率的に薄板ガラス6を切削できなくなる。
【0021】
また、サンドブラストの吹き付けの圧力は特に制限されるものではないが、500〜600kPaであることが好ましい。吹き付けの圧力が500kPaより小さいと効率的に切削することができず、600kPaより大きいと、薄板ガラス6が破損するおそれがある。
【0022】
本発明のサンドブラスト装置は、切り替え手段によって研磨剤粒子の粒径を変えられる装置であることが好ましい。研磨粒子の粒径を変えることによって、粗切削のみならず精密な切削も可能となるからである。研磨粒子の粒径によって、ノズル径を切り替えて変更するか交換することが好ましい。しかしながら、本発明においては、サンドブラストを一定の粒径の研磨材で行い、後記するように、後工程の研磨工程で粗研磨及び仕上げ研磨をしてもよいし、必要に応じて、サンドブラスト工程と研磨工程の両方をそれぞれ2段ずつ行っても良い。
【0023】
前記研磨装置は、前記サンドブラスト手段により切削された薄板ガラスを、予め定められた位置に固定する手段を有するテーブル4、及び前記サンドブラスト手段により切削された部分の端面を研磨する研磨手段5を有する。
前記サンドブラスト装置により切削された薄板ガラス6は、切削された面を整え、予め定められた孔及び/又は抉りの形状に調整するため研磨装置を用いて研磨される。
【0024】
研磨手段5としては、通常、ダイヤモンドを使用した回転式の砥石51を用いる。回転式の砥石51は、CNCにより、薄板ガラスの縦横及び厚さ方向に移動することが可能であり、薄板ガラスの切削部の端部62を、所望する孔及び/又は抉りの形状になるように、切削及び研磨する。本発明で使用する回転式の砥石51としては、通常、500〜800番で、直径が0.2mm以下のものを使用する。
【0025】
図5に、本発明で使用する研磨装置の概略図を示す。
切削部端部の研磨は、薄板ガラス6をテーブル4上に位置決めした後、固定して行う。位置決めの手段は、図3で表されるような、前記サンドブラスト装置の場合と同様の手段でよい。また位置決め後の固定手段も、前述したサンドブラストの場合と同様に、公知の真空吸着による固定手段であることが好ましい。
【0026】
本発明においては、研磨時のテーブルとサンドブラスト時のテーブルを共通にしてもよい。何れにしても、研磨を行う場合に用いる薄板ガラス6を固定するテーブルには、研磨手段の先端を逃すため、孔及び/又は抉りに対応する箇所に、所望する該孔及び/又は抉りよりも大きめの孔42を開けておくか、それに替わるスペーサー又は板を配置する必要がある。
【0027】
本発明における研磨装置は、粗研磨手段と仕上げ研磨手段を、交換可能に有することが好ましい。即ち、サンドブラスト工程の仕上がり具合や、目標精度に応じて、先ず粗研磨によって所望の孔及び/又は抉りより0.25〜0.2mm内側までを切削し、仕上げ研磨によって、所望の孔及び/又は抉りの形状となるように研磨しても良いし、サンドブラスとによって所望の孔及び/又は抉りより0.25〜0.2mm内側までを切削した場合には、粗研磨を省略し、仕上げ研磨だけを行っても良い。回転式の砥石51として、粗研磨では、500〜600番のものを使用し、仕上げ研磨では、800番程度のものを使用する。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の薄板ガラスの加工装置は、厚さが0.5〜1.1mmの薄板ガラスに、迅速且つ高精度で孔や抉り等を設けることができるので、携帯電話等の機器類の表示窓に、スピーカー孔やスイッチ取り付け孔等を設ける場合に有用である。
【符号の説明】
【0029】
1 薄板ガラス固定用テーブル
2 マスキングプレート
3 サンドブラスト手段
4 薄板ガラス固定用テーブル
5 研磨手段
6 薄板ガラス
11 マスキングプレート圧接板
12 薄板ガラス位置決め固定用ガイド
13 薄板ガラス位置決め固定用ガイド
14 真空吸引
15 ガイドピン
21 マスキングプレート切り欠き部
31 サンドブラストノズル
41 真空吸引
42 研磨手段の先端を逃すための孔
51 回転式の砥石
61 薄板ガラスに設ける孔及び抉りの外形線
62 薄板ガラス切削部端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ0.5〜1.1mmの薄板ガラスに、直線及び/又は曲線で形成される孔及び/又は抉りを1以上設ける、サンドブラスト装置及び研磨装置からなる薄板ガラスの加工装置であって、少なくとも、前記サンドブラスト装置が、前記薄板ガラスを予め定められた位置に固定する手段を有するテーブル;該テーブルに、前記薄板ガラスの位置決めを妨げないように、上下に可動に固定された前記薄板ガラスを保護するマスキングプレートであって、前記薄板ガラスをマスキングしたときに前記薄板ガラスに設ける孔及び/又は抉りよりも0.2〜0.35mm内側の部分が露出するように、小さめに切り欠きが設けられているマスキングプレート;該マスキングプレートによりマスキングされた薄板ガラスの、前記マスキングプレートの切り欠きによって露出した部分に研磨剤粒子を吹き付けるサンドブラスト手段からなり、前記研磨装置が、前記サンドブラスト装置により切削された薄板ガラスを予め定められた位置に固定する手段を有するテーブル;及び、前記サンドブラスト手段によって切削された部分の端面を、予め定められた孔及び/又は抉りの形状に仕上げる研磨手段を有することを特徴とする薄板ガラスの加工装置。
【請求項2】
前記サンドブラスト装置及び研磨装置のテーブルが、前記薄板ガラスを固定する真空吸引手段を有する、請求項1に記載された薄板ガラスの加工装置。
【請求項3】
前記サンドブラスト装置が、100〜120メッシュの粉末を圧力500〜600kPaで吹き付けて切削するサンドブラスト装置である、請求項1又は2に記載された薄板ガラスの加工装置。
【請求項4】
前記サンドブラスト装置が、切り替え手段によって研磨粒子の粒径を変更することのできる装置である、請求項1〜3の何れかに記載された薄板ガラスの加工装置。
【請求項5】
前記研磨剤粒子が、アルミナ、ジルコニア、チタニアからなる群より選択される研磨剤粒子である、請求項1〜4のいずれかに記載された薄板ガラスの加工装置。
【請求項6】
前記研磨装置が、研磨手段として変更可能な複数の粗さの回転式砥石を有する、請求項1〜5のいずれかに記載された薄板ガラスの加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−32124(P2011−32124A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179343(P2009−179343)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(507240901)ブリヂストンプラントエンジニアリング株式会社 (6)
【出願人】(397002119)ハイテックエンジニアリング株式会社 (4)
【出願人】(509211206)太百コーニング株式会社 (1)
【Fターム(参考)】