説明

薄膜集積回路の作製方法

【課題】 薄膜集積回路の飛散を防止する。
【解決手段】 本発明の薄膜集積回路の作製方法では、基板の一表面に剥離層を選択的に形成する。そうすると、剥離層が設けられた第1の領域と、剥離層が設けられていない第2の領域が形成される。次に、剥離層の上方に、薄膜集積回路を形成する。続いて、剥離層を露出させる開口部を形成し、開口部にエッチング剤を導入し、剥離層を除去する。そうすると、剥離層が設けられた領域では空間が生じるが、剥離層が設けられていない領域では空間が生じない。このように、剥離層を除去した後に、空間が生じない領域を設けることにより、剥離層を除去した後の薄膜集積回路の飛散を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜集積回路の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、絶縁基板上に設けられた薄膜集積回路を転置する技術開発が進められている。このような技術として、例えば、薄膜集積回路と基板の間に剥離層を設けて、当該剥離層を、ハロゲンを含む気体を用いて除去することにより、薄膜集積回路を支持基板から分離し、その後転置する技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−254686号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の特許文献によると、基板の一表面に剥離層を形成し、当該剥離層上に薄膜集積回路を形成し、続いて剥離層を除去する。そうすると、薄膜集積回路は基板から剥離され、基板と薄膜集積回路の間には空間が生じる。その後、薄膜集積回路を基体に接着させるが、当該薄膜集積回路は数μm程度と薄く、また大変軽いものである。そのため、薄膜集積回路を基体に接着させる前に、当該薄膜集積回路が基板から飛散してしまうことがあった。そこで本発明は、薄膜集積回路の飛散を防止することを課題とする。また、剥離層を除去した後の薄膜集積回路の基体への転置を容易に行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、基板の一表面に剥離層を形成した後に、当該剥離層を選択的に除去して、剥離層が設けられた第1の領域と、剥離層が設けられていない第2の領域を形成する。続いて、下地用の絶縁膜を全面に形成する。そうすると、絶縁膜は、第1の領域では剥離層に接し、第2の領域では基板に接する。
【0005】
次に、第1の領域の絶縁膜上に複数の素子とアンテナとして機能する導電層を含む薄膜集積回路を形成し、続いて開口部を形成し、その後開口部にエッチング剤を導入して剥離層を除去する。この際、剥離層が設けられていた第1の領域では、基板と絶縁膜の間に空間が生じるが、剥離層が設けられていない第2の領域では、基板と絶縁膜が密着したままである。
【0006】
このように、剥離層を除去した後も、基板と絶縁膜が密着した領域が設けられていることで、絶縁膜の上方に設けられた薄膜集積回路の飛散を防止することができる。また、基板と絶縁膜が密着した領域が設けられていることで、基板上に薄膜集積回路を保持することができ、当該薄膜集積回路の基体への転置を容易に行うことができる。
【0007】
本発明の薄膜集積回路の作製方法は、絶縁表面を有する基板上の第1の領域と第2の領域に剥離層を形成する工程と、第2の領域の剥離層のみを除去する工程と、絶縁基板又は剥離層に接するように絶縁膜を形成する工程と、第1の領域の絶縁膜上に複数の素子とアンテナとして機能する導電層を形成する工程と、複数の素子と導電層が設けられた領域以外に開口部を選択的に形成して剥離層を露出させる工程と、開口部にエッチング剤を導入して剥離層を除去する工程とを有することを特徴とする。
【0008】
本発明の薄膜集積回路の作製方法は、絶縁表面を有する基板上の第1の領域と第2の領域に剥離層を形成する工程と、第1の領域の剥離層を選択的に除去する工程と、第2の領域の剥離層を除去する工程と、絶縁基板又は剥離層に接するように絶縁膜を形成する工程と、第1の領域の絶縁膜上に複数の素子とアンテナとして機能する導電層を形成する工程と、複数の素子と導電層が設けられた第3の領域の周囲の第4の領域に開口部を選択的に形成して剥離層を露出させる工程と、開口部にエッチング剤を導入して剥離層を除去する工程とを有し、第1の領域の剥離層の選択的な除去の工程では、第1の領域が含む第3の領域と第4の領域以外の第5の領域の剥離層を除去し、第3の領域と第4の領域の剥離層を除去しないことを特徴とする。
【0009】
本発明の薄膜集積回路の作製方法は、絶縁表面を有する基板上の第1の領域と第2の領域に剥離層を形成する工程と、第1の領域の剥離層を選択的に除去する工程と、第2の領域の剥離層を除去する工程と、絶縁基板又は剥離層に接するように絶縁膜を形成する工程と、第1の領域の絶縁膜上に複数の素子とアンテナとして機能する導電層を形成する工程と、複数の素子と導電層が設けられた第3の領域と第3の領域の周囲の第5の領域以外の第4の領域に開口部を形成して剥離層を露出させる工程と、開口部にエッチング剤を導入して剥離層を除去する工程とを有し、第1の領域の剥離層の選択的な除去の工程では、第1の領域が含む第5の領域の剥離層を選択的に除去し、第3の領域と第4の領域の剥離層を除去しないことを特徴とする。
【0010】
本発明の薄膜集積回路の作製方法は、絶縁表面を有する基板上の第1の領域と第2の領域に剥離層を形成する工程と、第1の領域の剥離層を選択的に除去する工程と、第2の領域の剥離層を除去する工程と、絶縁基板又は剥離層に接するように絶縁膜を形成する工程と、第1の領域の絶縁膜上に複数の素子とアンテナとして機能する導電層を形成する工程と、複数の素子と導電層が設けられた第3の領域以外の第4の領域に開口部を選択的に形成して剥離層を露出させる工程と、開口部にエッチング剤を導入して剥離層を除去する工程とを有し、第1の領域の剥離層の選択的な除去の工程では、第1の領域が含む第3の領域の剥離層を選択的に除去し、第3の領域以外の剥離層を除去しないことを特徴とする。
【0011】
上記工程を有する薄膜集積回路の作製方法において、第2の領域の剥離層を除去する工程を、第2の領域の剥離層を選択的に除去する工程に置換してもよい。また、エッチング剤はフッ化ハロゲンを含む気体又は液体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、剥離層を除去した後も、基板と絶縁膜が密着した領域を設けることで、当該絶縁膜の上方に設けられた薄膜集積回路の飛散を防止することができる。また、基板と絶縁膜が密着した領域を設けることで、基板上に薄膜集積回路を保持することができるため、当該薄膜集積回路の基体への転置を容易に行うことができる。
【0013】
また、本発明のように、基板上に薄膜集積回路が保持された状態であれば、当該基板をそのまま搬送することができるため、搬送手段を含む量産装置に用いることができる。例えば、ラミネート装置に、薄膜集積回路が保持された基板を搬送すれば、当該薄膜集積回路のラミネート処理を連続的に行うことができる。
【0014】
また、上記の構成によると、薄膜集積回路を1つの単位として、第1の領域と第2の領域が作り分けられているため、任意の薄膜集積回路のみを基体に転置することができる。
【0015】
また、薄膜集積回路を1つの単位として、第1の領域と第2の領域が作り分けられているため、剥離層を除去後、複数の薄膜集積回路の各々を分断する必要がない。つまり、薄膜集積回路を基体に転置した段階で、複数の薄膜集積回路の各々は分断された状態となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する本発明の構成において、同じものを指す符号は異なる図面間で共通して用いる。
【0017】
本発明の薄膜集積回路の作製方法について、4つに大別して、図面を参照して説明する。
【0018】
まず、第1の作製方法について図1、2を参照して説明する。
【0019】
絶縁表面を有する基板101の一表面に剥離層を形成する。次に、剥離層を選択的に除去して、剥離層が設けられた第1の領域115と、剥離層を除去した第2の領域116を形成する(図1(A)の上面図参照)。剥離層が設けられた第1の領域115には、後に薄膜集積回路を形成する。剥離層を除去した第2の領域116には、薄膜集積回路を形成せず、後に形成する絶縁膜と基板101とが密着した領域となる。
【0020】
図1(A)に示す上面図では、第1の領域115(斜線の領域)は、第2の領域116に囲まれている。また、図1(A)に示す上面図では、第1の領域115は四角形状の領域である。なお、第1の領域115と第2の領域116の位置関係やその形状は特に制約されない。
【0021】
本発明では、薄膜集積回路を1つの単位として、第1の領域115と第2の領域116が作り分けられているため、任意の薄膜集積回路のみを基体に転置することができる。また、薄膜集積回路を1つの単位として、第1の領域115と第2の領域116が作り分けられているため、基体に転置する工程を経ると、複数の薄膜集積回路の各々は自動的に分断される。そのため、複数の薄膜集積回路を分断する工程を省略することができる。
【0022】
絶縁表面を有する基板101とは、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板、アクリル等の可撓性を有する合成樹脂からなる樹脂基板、金属基板に相当する。また、剥離層は、珪素を含む層をスパッタリング法やプラズマCVD法等の公知の方法により形成する。珪素を含む層とは、非晶質半導体層、非晶質状態と結晶質状態とが混在したセミアモルファス半導体層、結晶質半導体層に相当する。
【0023】
また、剥離層の選択的な除去は、フォトリソグラフィ法を用いて行うとよい。なお、上記の工程では、基板101の一表面の全面に剥離層を形成してから、選択的に剥離層を除去しているが、本発明はこの工程に制約されない。メタルマスク等のマスクを用いることで、予め、基板101上に剥離層を選択的に形成してもよい。
【0024】
続いて、以下の工程について、図1、2を用いて説明する。図1の上面図のA−Bは、図2の断面図のA−Bに対応する。
【0025】
まず、基板101又は剥離層102〜104に接するように、下地用の絶縁膜105を形成する(図1(B)と図2(A)参照)。絶縁膜105は、第1の領域115では剥離層102〜104に接し、第2の領域116では基板101に接する。絶縁膜105は、プラズマCVD法やスパッタリング法等の公知の方法を用いて、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、窒化酸化珪素等からなる薄膜を形成する。
【0026】
続いて、第1の領域115の絶縁膜105上に複数の素子を含む素子群106を形成する。素子群106は、例えば、薄膜トランジスタ、容量素子、抵抗素子、ダイオード等を1種又は複数種形成する。ここでは、素子群106として、2つのトランジスタ117、118を形成する。次に、素子群106を覆うように、絶縁膜107を形成し、絶縁膜107上に、絶縁膜108を形成する。続いて、絶縁膜108上に、導電層110を形成する。導電層110は、アンテナとして機能する。次に、導電層110上に、保護膜として機能する絶縁膜111を形成する。上記の工程を経て、素子群106と導電層110を含む薄膜集積回路109が完成する。なお図1(B)では、トランジスタ117、118が含む半導体層の上面図のみを示し、トランジスタ117、118上に設けられる導電層110の図示は省略している。
【0027】
絶縁膜107、108、111は、有機材料又は無機材料により形成する。有機材料は、ポリイミド、アクリル、ポリアミド、エポキシ等を用いる。また、絶縁膜107、108、111は、シロキサンにより形成する。シロキサンは、珪素と酸素との結合で骨格構造が構成され、置換基に少なくとも水素を含む有機基(例えばアルキル基、芳香族炭化水素)が用いられる。又は、置換基としてフルオロ基を用いてもよい。又は、置換基として、少なくとも水素を含む有機基と、フルオロ基とを用いてもよい。また、無機材料には、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、窒化酸化珪素等を用いる。
【0028】
続いて、素子群106と導電層110が設けられた領域以外に、開口部112、113を選択的に形成して、剥離層102〜104を露出させる(図1(C)と図2(B)参照)。つまり、素子群106と導電層110が設けられた領域の外周に開口部を選択的に形成する。開口部は、マスクを利用したエッチング等によって形成する。図1(C)の上面図では、開口部は点線の四角で示す。
【0029】
なお、開口部は、上述したエッチングという方法以外に、レーザービームを照射することによって形成してもよい。
【0030】
続いて、開口部112、113に、剥離層102〜104を除去するエッチング剤を導入して、剥離層102〜104を除去する(図2(C)参照)。エッチング剤には、フッ化ハロゲンを含む気体又は液体を使用する。フッ化ハロゲンを含む気体としては、例えば三フッ化塩素(ClF3)を使用する。
【0031】
次に、素子群106と導電層110を含む薄膜集積回路109を基体114に接着させて、薄膜集積回路109を基板101から剥離する(図2(D)参照)。この際、剥離層102〜104が除去された部分は基体114に接着して基板101から完全に剥離され、基板101と絶縁膜105が密着した部分は基板101に保持されたままとなる。
【0032】
なお、本発明は上記の形態に制約されない。薄膜集積回路109を基体114に接着させる際、基板101と絶縁膜105が密着した部分も基体114に接着され、基板101から剥離することがある。
【0033】
基体114には、プラスチック等からなる可撓性基板、両面テープなどを用いるとよい。可撓性基板には、熱硬化樹脂などの接着剤からなる接着面を設けていてもよい。また、基体114を用いずに、物品の表面に接着させてもよい。そうすれば、実装する物品の薄型化や軽量化に貢献することになる。
【0034】
上記の作製方法では、剥離層を選択的に形成することを特徴とする。上記特徴により、剥離層を除去した後も、絶縁膜105の一部が基板101に密着した状態にあるため、薄膜集積回路109を基板101上に保持することができ、薄膜集積回路109の飛散を防止することができる。
【0035】
次に、第2の作製方法について、図3〜5を参照して説明する。
【0036】
絶縁表面を有する基板101の一表面に剥離層を形成する。次に、剥離層を選択的に除去して、剥離層が選択的に設けられた第1の領域115と、剥離層を除去した第2の領域116を形成する(図3(A)の上面図と、図3(B)の断面図参照、図3(A)のC−Dは図3(B)のC−Dは対応する)。剥離層が選択的に設けられた第1の領域115には、後に薄膜集積回路を形成する。剥離層を除去した第2の領域116には、薄膜集積回路を形成せず、後に形成する絶縁膜と基板101とが密着した領域となる。
【0037】
図3(A)に示す上面図では、第1の領域115(斜線の領域)は、第2の領域116に囲まれている。また、図3(A)に示す上面図では、第1の領域115は四角形状の領域である。なお、第1の領域115と第2の領域116の位置関係やその形状は特に制約されない。
【0038】
本発明では、薄膜集積回路を1つの単位として、第1の領域115と第2の領域116が作り分けられているため、任意の薄膜集積回路のみを基体に転置することができる。また、薄膜集積回路を1つの単位として、第1の領域115と第2の領域116が作り分けられているため、基体に転置する工程を経ると、複数の薄膜集積回路の各々は自動的に分断される。そのため、複数の薄膜集積回路を分断する工程を省略することができる。
【0039】
続いて、以下の工程について、図4、5を用いて説明する。図3(A)と図4(A)(B)の上面図のA−Bは、図5(A)〜(D)の断面図のA−Bに対応する。
【0040】
基板101又は剥離層121、122に接するように、絶縁膜105を形成する(図4(A)と図5(A)参照)。絶縁膜105は、第1の領域115では剥離層121、122又は基板101に接し、第2の領域116では基板101に接する。
【0041】
続いて、絶縁膜105上に複数の素子を含む素子群106を形成する。ここでは、素子群106として、2つのトランジスタ117、118を形成する。次に、素子群106を覆うように、絶縁膜107を形成し、当該絶縁膜107上に、絶縁膜108を形成する。続いて、絶縁膜108上に、導電層110を形成する。導電層110は、アンテナとして機能する。次に、導電層110上に、保護膜として機能する絶縁膜111を形成する。上記の工程を経て、素子群106と導電層110を含む薄膜集積回路109が完成する。
【0042】
なお図4(A)(B)では、トランジスタ117、118が含む半導体層の上面図を示しており、トランジスタ117、118が含むゲート電極やトランジスタ117、118上に設けられる導電層の図示は省略している。
【0043】
続いて、素子群106と導電層110が設けられた領域(以下第3の領域135とよぶ)の周囲の領域(以下第4の領域136とよぶ)に、開口部123、124を選択的に形成して、剥離層121、122を露出させる(図4(B)と図5(B)参照)。つまり、素子群106と導電層110が設けられた第3の領域135の外周に、開口部123、124を選択的に形成する。
【0044】
続いて、開口部123、124に剥離層121、122を除去するエッチング剤を導入して、剥離層121、122を除去する(図5(C)参照)。エッチング剤には、フッ化ハロゲンを含む気体又は液体を使用する。
【0045】
次に、素子群106と導電層110を含む薄膜集積回路109を基体114に接着させて、薄膜集積回路109を基板101から完全に剥離する(図5(D)参照)。この際、剥離層が除去された部分は基体114に接着して、基板101と絶縁膜105が密着した部分は基板101に保持される。
【0046】
なお、本発明は上記の形態に制約されない。薄膜集積回路109を基体114に接着させる際、基板101と絶縁膜105が密着した部分も基体114に接着され、基板101から剥離することがある。
【0047】
本作製方法では、第1の領域115の剥離層の選択的な除去の工程において、第1の領域115が含む第3の領域135と第4の領域136以外の第5の領域137の剥離層を除去し、第3の領域135と第4の領域136の剥離層を除去しないことを特徴とする。また、開口部は、第4の領域136に選択的に設けられることを特徴とする。
【0048】
つまり、第1の領域115は、第3の領域135と、第4の領域136と、第5の領域137に大別され、第3の領域135は剥離層と素子群106と導電層110が設けられた領域、第4の領域136は剥離層が設けられ、素子群106と導電層110が設けられていない領域、第5の領域137は剥離層も素子群106も導電層110も設けられていない領域に相当する。
【0049】
上記のように、剥離層を設ける箇所を選択的にすることで、剥離層を除去した後も、絶縁膜105の一部は、基板101に密着した状態にある。従って、薄膜集積回路109を基板101に保持することができ、当該薄膜集積回路109の飛散を防止することができる。
【0050】
続いて、第3の作製方法について図6〜8を参照して説明する。
【0051】
絶縁表面を有する基板101の一表面に剥離層を形成する。次に、剥離層を選択的に除去して、剥離層が選択的に設けられた第1の領域115と、剥離層を除去した第2の領域116を形成する(図6(A)の上面図と、図6(B)の断面図参照、図6(A)の上面図のC−Dは、図6(B)の断面図のC−Dに対応する)。剥離層が選択的に設けられた第1の領域115には、後に薄膜集積回路を形成する。剥離層を除去した第2の領域116には、薄膜集積回路を形成せず、後に形成する絶縁膜と基板101とが密着した領域となる。
【0052】
本発明では、薄膜集積回路を1つの単位として、第1の領域115と第2の領域116が作り分けられているため、任意の薄膜集積回路のみを基体に転置することができる。また、薄膜集積回路を1つの単位として、第1の領域115と第2の領域116が作り分けられているため、基体に転置する工程を経ると、複数の薄膜集積回路の各々は自動的に分断される。そのため、複数の薄膜集積回路を分断する工程を省略することができる。
【0053】
続いて、以下の工程について、図7、図8を用いて説明する。図6(A)、図7(A)(B)の上面図のA−Bは、図8(A)〜(D)の断面図のA−Bに対応する。
【0054】
基板101又は剥離層125に接するように、下地用の絶縁膜105を形成する(図7(A)と図8(A)参照)。絶縁膜105は、第1の領域115では剥離層125又は基板101に接し、第2の領域116では基板101に接する。
【0055】
続いて、絶縁膜105上に複数の素子を含む素子群106を形成する。ここでは、素子群106として、2つのトランジスタ117、118を形成する。次に、素子群106を覆うように、絶縁膜107を形成し、当該絶縁膜107上に、絶縁膜108を形成する。続いて、絶縁膜108上に、導電層110を形成する。導電層110は、アンテナとして機能する。次に、導電層110上に、保護膜として機能する絶縁膜111を形成する。上記の工程を経て、素子群106と導電層110を含む薄膜集積回路109が完成する。
【0056】
なお図7(A)(B)では、トランジスタ117、118が含む半導体層の上面図を示しており、トランジスタ117、118が含むゲート電極やトランジスタ117、118上に設けられる導電層の図示は省略している。
【0057】
続いて、素子群106と導電層110が設けられた領域(以下第3の領域135とよぶ)と、第3の領域135の周囲の領域(以下第5の領域137とよぶ)以外の領域(以下第4の領域136とよぶ)に、開口部126を形成して、剥離層125を露出させる(図7(B)と図8(B)参照)。ここでは、第3の領域135は素子群106と導電層110が設けられた領域であり、第5の領域137は第3の領域135の外周の領域であり、第4の領域136は第3の領域135と第5の領域137以外の領域である。第4の領域136と第5の領域137は、第3の領域135との間の距離によって区別され、例えば、第3の領域135から、ある一定の距離の領域を第5の領域137とし、それ以外の領域を第4の領域136として区別するとよい。
【0058】
続いて、開口部126に、剥離層125を除去するエッチング剤を導入して、剥離層125を除去する(図8(C)参照)。エッチング剤には、フッ化ハロゲンを含む気体又は液体を使用する。
【0059】
次に、素子群106と導電層110を含む薄膜集積回路109を基体114に接着させて、薄膜集積回路109を基板101から完全に剥離する(図8(D)参照)。この際、剥離層が除去された部分は基体114に接着して、基板101と絶縁膜105が密着した部分は基板101に保持される。
【0060】
なお、本発明は上記の形態に制約されない。薄膜集積回路109を基体114に接着させる際、基板101と絶縁膜105が密着した部分も基体114に接着され、基板101から剥離することがある。
【0061】
本作製方法では、第1の領域115の剥離層の選択的な除去の工程において、第1の領域115が含む第5の領域137の剥離層を選択的に除去し、第3の領域135と第4の領域136の剥離層を除去しないことを特徴とする。
【0062】
つまり、第1の領域115は、第3の領域135と、第4の領域136と、第5の領域137に大別され、第3の領域135は剥離層と素子群106と導電層110が設けられた領域、第5の領域137は剥離層が選択的に設けられ、素子群106と導電層110が設けられていない領域、第4の領域136は剥離層が設けられ、素子群106と導電層110が設けられていない領域に相当する。また、第4の領域136は、開口部が設けられる領域に相当する。
【0063】
上記のように、剥離層を設ける箇所を選択的にすることで、剥離層を除去した後も、絶縁膜105の一部は、基板101に密着した状態にある。従って、薄膜集積回路109を基板101に保持することが可能となり、当該薄膜集積回路109の飛散を防止することができる。
【0064】
次に、第4の作製方法について、図9、10を参照して説明する。
【0065】
絶縁表面を有する基板101の一表面に剥離層を形成する。次に、剥離層を選択的に除去して、剥離層が選択的に設けられた第1の領域115と、剥離層を除去した第2の領域116を形成する(図6(A)の上面図と、図6(B)の断面図参照)。この工程は、上記の第3の方法と同じである。
【0066】
続いて、以下の工程について、図9、10を用いて説明する。図9の上面図のA−Bは、図10の断面図のA−Bに対応する。
【0067】
基板101又は剥離層131に接するように、下地用の絶縁膜105を形成する(図9(B)と図10(A)参照)。絶縁膜105は、第1の領域115では剥離層131又は基板101に接し、第2の領域116では基板101に接する。図9(A)において、剥離層131が設けられていない領域は、斜線が引かれていない四角で示す領域である。
【0068】
続いて、絶縁膜105上に複数の素子を含む素子群106を形成する。ここでは、素子群106として、2つのトランジスタ117、118を形成する。次に、素子群106を覆うように、絶縁膜107を形成し、当該絶縁膜107上に、絶縁膜108を形成する。続いて、絶縁膜108上に、導電層110を形成する。導電層110は、アンテナとして機能する。次に、導電層110上に、保護膜として機能する絶縁膜111を形成する。上記の工程を経て、素子群106と導電層110を含む薄膜集積回路109が完成する。
【0069】
なお図9(A)〜(C)では、トランジスタ117、118が含む半導体層の上面図を示しており、トランジスタ117、118が含むゲート電極やトランジスタ117、118上に設けられる導電層の図示は省略している。
【0070】
なお、本工程では、基板101と絶縁膜105が密着する領域は、薄膜集積回路109が設けられた領域と重なるように設けられる。このような基板101と絶縁膜105が密着する領域は、薄膜集積回路109を基体114に接着させる際に、基板101から剥離される。従って、基板101と絶縁膜105が密着する領域は、できる限り小さく設けるとよい。
【0071】
続いて、素子群106と導電層110が設けられた領域(以下第3の領域135とよぶ)以外の領域(以下第4の領域136とよぶ)に、開口部132を選択的に形成して、剥離層131を露出させる(図9(C)と図10(B)参照)。
【0072】
続いて、開口部132に剥離層131を除去するエッチング剤を導入して、剥離層131を除去する(図10(C)参照)。エッチング剤には、フッ化ハロゲンを含む気体又は液体を使用する。
【0073】
次に、素子群106と導電層110を含む薄膜集積回路109を基体114に接着させて、薄膜集積回路109を基板101から完全に剥離する(図10(D)参照)。この際、剥離層が除去された部分だけでなく、基板101と絶縁膜105が密着していた部分も基体114に接着される。
【0074】
なお、本発明は上記の形態に制約されない。薄膜集積回路109を基体114に接着させる際、基板101と絶縁膜105が密着した部分も基体114に接着され、基板101から剥離することがある。
【0075】
本作製方法では、第1の領域115の剥離層の選択的な除去の工程では、第1の領域115が含む第3の領域135の剥離層を選択的に除去し、第4の領域136の剥離層を除去しないことを特徴とする。
【0076】
つまり、第1の領域115は、第3の領域135と、第4の領域136に大別され、第3の領域135は選択的に設けられた剥離層と素子群106と導電層110が設けられた領域、第4の領域136は剥離層が設けられ、素子群106と導電層110が設けられていない領域に相当する。また、第4の領域136は、開口部が設けられる領域に相当する。
【0077】
上記のように、剥離層を設ける箇所を選択的にすることで、剥離層を除去した後も、絶縁膜105の一部は、基板101に密着した状態にある。従って、薄膜集積回路109を基板101に保持することが可能となり、当該薄膜集積回路109の飛散を防止することができる。
【0078】
なお、上記の第1乃至第4の作製方法において、第2の領域116の剥離層は全て除去していたが、本発明はこの工程に限定されない。第2の領域116の剥離層を選択的に除去してもよい。例えば、第1の作製方法の場合、第1の領域115の剥離層を除去せず、第2の領域116の剥離層は選択的に除去してもよい(図11(A)参照)。また、第2の作製方法の場合、第1の領域115と第4の領域116の剥離層を共に選択的に除去してもよい(図11(B)参照)。また、第3の作製方法と第4の作製方法の場合も、第1の領域115と第2の領域116の剥離層を共に選択的に除去してもよい(図11(C)参照)。
【0079】
図11(A)〜(C)の上面図において、第1の領域115は、四角形状で、かつ点線で囲まれた領域である。第2の領域116は、第1の領域115以外の領域である。第1の領域115は、第2の領域116に囲まれている。
【0080】
上記のように、第2の領域116の剥離層を選択的に除去することで、薄膜集積回路109の基板101に対する保持をより確実に行うことが可能となり、当該薄膜集積回路109の飛散を防止することができる。
【0081】
上記の工程を経て剥離された薄膜集積回路109は、そのまま用いてもよいし、基体により封止した後に用いてもよい。本発明は絶縁基板上に形成された薄膜集積回路109を用いるため、円形のシリコン基板から形成されたチップと比較して、母体基板の形状に制約がない。そのため、生産性を高め、大量生産を可能とし、低コスト化を実現する。また、本発明は、0.2μm以下、代表的には40nm〜170nm、好ましくは50nm〜150nmの膜厚の半導体膜を能動領域として用いることができるため、非常に薄型となり、物品に実装しても、薄膜集積回路の存在が認識しづらく、改ざん防止につながる。
【実施例1】
【0082】
本発明により作製される薄膜集積回路は、複数の素子と、アンテナとして機能する導電層とを有する。複数の素子とは、例えば、薄膜トランジスタ、容量素子、抵抗素子、ダイオード等に相当する。
【0083】
薄膜集積回路210は、非接触でデータを交信する機能を有し、当該薄膜集積回路210が含む複数の素子は様々な回路を構成する。例えば、電源回路211、クロック発生回路212、データ復調/変調回路213、制御回路214、インターフェイス回路215、メモリ216、データバス217、アンテナ(アンテナコイルともよぶ)218等を有する(図12参照)。
【0084】
電源回路211は、アンテナ218から入力された交流信号を基に、上記の各回路に供給する各種電源を生成する回路である。クロック発生回路212は、アンテナ218から入力された交流信号を基に、上記の各回路に供給する各種クロックを生成する回路である。データ復調/変調回路213は、リーダライタ219と交信するデータを復調又は変調する機能を有する。制御回路214は、例えば、中央処理ユニット(CPU、Central Processing Unit)やマイクロプロセッサ(MPU、MicroProcessor Unit)等に相当し、他の回路を制御する機能を有する。アンテナ218は、電磁界或いは電波の送受信を行う機能を有する。リーダライタ219は、薄膜集積回路との交信、制御及びそのデータに関する処理を制御する。
【0085】
なお、薄膜集積回路が構成する回路は上記構成に制約されず、例えば、電源電圧のリミッタ回路や暗号処理専用ハードウエアといった他の構成要素を追加した構成であってもよい。
【実施例2】
【0086】
本発明により作製される薄膜集積回路の用途は広範にわたるが、例えば、紙幣、硬貨、有価証券類、無記名債券類、証書類(運転免許証や住民票等、図13(A)参照)、包装用容器類(包装紙やボトル等、図13(B)参照)、記録媒体(DVDソフトやビデオテープ等、図13(C)参照)、乗物類(自転車等、図13(D)参照)、身の回り品(鞄や眼鏡等、図13(E)参照)、食品類、衣類、生活用品類、電子機器等に設けて使用することができる。電子機器とは、液晶表示装置、EL表示装置、テレビジョン装置(単にテレビ、テレビ受像機、テレビジョン受像機とも呼ぶ)及び携帯電話等を指す。
【0087】
なお、薄膜集積回路は、物品の表面に貼ったり、物品に埋め込んだりして、物品に固定される。例えば、物品が本なら紙に薄膜集積回路を埋め込んだり、物品が有機樹脂からなるパッケージなら有機樹脂に薄膜集積回路を埋め込んだりするとよい。紙幣、硬貨、有価証券類、無記名債券類、証書類等に薄膜集積回路を設けることにより、偽造を防止することができる。また、包装用容器類、記録媒体、身の回り品、食品類、衣類、生活用品類、電子機器等に薄膜集積回路を設けることにより、検品システムやレンタル店のシステムなどの効率化を図ることができる。乗物類に薄膜集積回路を設けることにより、偽造や盗難を防止することができる。
【0088】
また、薄膜集積回路を、物の管理や流通のシステムに応用することで、システムの高機能化を図ることができる。例えば、表示部294を含む携帯端末の側面にリーダライタ295を設けて、物品297の側面に薄膜集積回路296を設ける場合が挙げられる(図14(A)参照)。この場合、リーダライタ295に薄膜集積回路296をかざすと、表示部294に物品297の原材料や原産地、流通過程の履歴等の情報が表示されるシステムになっている。また、別の例として、ベルトコンベアの脇にリーダライタ295を設ける場合が挙げられる(図14(B)参照)。この場合、物品297の検品を簡単に行うことができる。このように、薄膜集積回路を、システムに応用することで、システムの多機能化を図ることができる。
【実施例3】
【0089】
上記の実施の形態では、剥離層は、珪素を含む層をスパッタリング法やプラズマCVD法等の公知の方法により形成するとあるが、本発明は、珪素を含む層に限定されない。剥離層は、例えば、公知の手段(スパッタリング法やプラズマCVD法等)により、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、珪素(Si)から選択された元素または前記元素を主成分とする合金材料若しくは化合物材料からなる層を、単層又は積層して形成してもよい。
【0090】
剥離層が単層構造の場合、好ましくは、タングステンを含む層、モリブデンを含む層、タングステンとモリブデンの混合物を含む層、タングステンの酸化物を含む層、タングステンの酸化窒化物を含む層、モリブデンの酸化物を含む層、モリブデンの酸化窒化物を含む層、タングステンとモリブデンの混合物の酸化物、タングステンとモリブデンの混合物の酸化窒化物を含む層を形成する。なお、タングステンとモリブデンの混合物とは、例えば、タングステンとモリブデンの合金に相当する。
【0091】
剥離層が積層構造の場合、好ましくは、1層目としてタングステンを含む層、モリブデンを含む層、又はタングステンとモリブデンの混合物を含む層を形成し、2層目として、タングステンを含む層、モリブデンを含む層、タングステンとモリブデンの混合物の酸化物を含む層、タングステンとモリブデンの混合物の窒化物を含む層、タングステンとモリブデンの混合物の酸化窒化物を含む層、タングステンとモリブデンの混合物の窒化酸化物を含む層を形成する。
【0092】
なお、剥離層として、タングステンを含む層、タングステンの酸化物を含む層の2層の積層構造を形成する場合、タングステンを含む層を形成し、その上層に酸化珪素を含む層を形成することで、タングステン層と酸化珪素層との界面に、タングステンの酸化物を含む層が形成されることを活用してもよい。これは、他の積層構造を形成する場合も同様であり、例えば、タングステンを含む層、タングステンの窒化物、酸化窒化物又は窒化酸化物を含む層の2層の積層構造を形成する場合、タングステンを含む層を形成後、その上層に窒化珪素層、酸素を含む窒化珪素層、窒素を含む酸化珪素層を形成する。
【0093】
また、エッチング剤として、ハロゲン化物を含む気体又は液体を用いてもよい。ハロゲン化物として、例えば、三フッ化塩素(ClF3)、三フッ化窒素(NF3)、三フッ化臭素(BrF3)、フッ化水素(HF)を用いてもよい。なお、フッ化水素(HF)を用いる場合 は、剥離層として、珪素の酸化物を用いる。本実施例は、他の実施の形態、実施例と自由に組み合わせることができる。
【実施例4】
【0094】
上記の実施の形態では、薄膜集積回路109を基体114に接着させることにより、薄膜集積回路109を基板101から剥離するまでの工程について述べた。本実施例では、その後の工程について、図15を参照して説明する。
【0095】
薄膜集積回路109の一方の面を基体114に接着させた後は、薄膜集積回路109の他方の面を基体140に接着させる。その後、基体114と基体140が互いに接着した部分を、切断手段141で切断する。そうすると、封止された1つの薄膜集積回路109が完成する。切断手段141は、ダイシング装置、スクライビング装置、レーザー照射装置(特にCO2レーザー照射装置)、ナイフ等に相当する。そして、封止された薄膜集積回路109は、出荷される。
【0096】
基体114と基体140(基板、フィルム、テープとよぶこともできる)は、フィルムや繊維質な材料からなる紙などに相当する。フィルムは、ポリプロピレン、ポリエステル、ビニル、ポリフッ化ビニル、塩化ビニル、エチレンビニルアセテート等の材料からなる。なお、基体114と基体140の表面は、二酸化珪素(シリカ)の粉末により、コーティングされていてもよい。このコーティングにより、高温で高湿度の環境下においても防水性を保つことができる。また、基体114と基体140の表面を、インジウム錫酸化物等の導電性材料によりコーティングされていてもよい。コーティングにより、静電気がチャージされ、薄膜集積回路109を保護することができる。また、基体114と基体140の一方又は両方は、保護膜として、炭素を主成分とする薄膜(ダイヤモンドライクカーボン膜)によりコーティングされていてもよい。
【0097】
また、基体114と基体140の一方又は両方は、一方の面に接着面を有していてもよい。接着面は、熱硬化樹脂、紫外線硬化樹脂、エポキシ樹脂系接着剤等の接着剤を塗布したものである。また、基体114と基体140の一方又は両方は、透光性を有していてもよい。本実施例は、他の実施の形態、実施例と自由に組み合わせることができる。
【実施例5】
【0098】
上述の実施の形態では、基板上に、剥離層、絶縁膜の順に積層して形成する方法について説明した。例えば、第1の作製方法では、基板101又は剥離層102〜104に接するように、絶縁膜105を形成している(図2(A)参照)。第2の作製方法では、基板101又は剥離層121、122に接するように、絶縁膜105を形成している(図5(A)参照)。第3の作製方法では、基板101又は剥離層125に接するように、絶縁膜105を形成している(図8(A)参照)。第4の作製方法では、基板101又は剥離層131に接するように、絶縁膜105を形成している(図10(A)参照)。しかしながら、本発明はこれに制約されない。基板上に、第1の絶縁膜、剥離層、第2の絶縁膜の順に積層して形成してもよい。
【0099】
つまり、基板の一表面に第1の絶縁膜を形成し、第1の絶縁膜上に剥離層を形成する。次に、剥離層を選択的に除去して、剥離層が設けられた第1の領域と、剥離層が設けられていない第2の領域を形成する。続いて、第2の絶縁膜を全面に形成する。具体的には、第1の領域では剥離層に接し、第2の領域では第1の絶縁膜に接するように、第2の絶縁膜を形成する。そうすると、第1の領域では、基板上に、第1の絶縁膜、剥離層、第2の絶縁膜が順に積層して設けられ、第2の領域では、第1の絶縁膜、第2の絶縁膜が順に積層して設けられる。
【0100】
次に、第1の領域の第2の絶縁膜上に複数の素子とアンテナとして機能する導電層を含む薄膜集積回路を形成し、続いて開口部を形成し、その後、開口部にエッチング剤を導入して剥離層を除去する。そうすると、第1の領域では、第1の絶縁膜と第2の絶縁膜の間に空間が生じるが、第2の領域では、基板、第1の絶縁膜、第2の絶縁膜が順に密着して積層されたままとなる。
【0101】
このように、剥離層を除去した後も、基板上に、第1の絶縁膜と第2の絶縁膜が密着した領域が設けられていることにより、第2の絶縁膜の上方に設けられた薄膜集積回路の飛散を防止することができる。また、基板上に、第1の絶縁膜と第2の絶縁膜が密着した領域が設けられていることで、基板上に薄膜集積回路を保持することができ、当該薄膜集積回路の基体への転置を容易に行うことができる。
【0102】
また、第1の絶縁膜を設けることにより、ガラス基板からの不純物の侵入を防止することができる。また、剥離層を選択的に形成する際、剥離層をパターン加工するが、その際、剥離層だけでなく、基板がエッチングされてしまうことがある。しかしながら、第1の絶縁膜を形成することにより、基板がエッチングされてしまうことを防止することができる。第1の絶縁膜は、プラズマCVD法やスパッタリング法等の公知の方法を用いて、珪素の酸化物、珪素の窒化物、窒素が添加された珪素の酸化物、酸素が添加された珪素の窒化物等からなる薄膜を形成する。
【0103】
以下には、基板上に、第1の絶縁膜、剥離層、第2の絶縁膜の順に作製する作製方法について説明する。
【0104】
第1の作製方法では、まず、基板101上に絶縁膜119(第1の絶縁膜に相当)を形成する(図16(A)参照)。次に、絶縁膜119上に、選択的に剥離層102〜104を形成する。続いて、絶縁膜119又は剥離層102〜104に接するように、絶縁膜105(第2の絶縁膜に相当)を形成する。そうすると、絶縁膜105は、第1の領域115では剥離層102〜104に接し、第2の領域116では絶縁膜119に接する。その後は、上述した通り、第1の領域115の絶縁膜105上に、複数の素子106とアンテナとして機能する導電層110を形成する。次に、第1の領域115に、剥離層102〜104が露出される開口部を選択的に形成する。次に、開口部にエッチング剤を導入して、剥離層102〜104を除去する。
【0105】
第2の作製方法では、まず、基板101上に絶縁膜119(第1の絶縁膜に相当)を形成する(図16(B)参照)。次に、絶縁膜119上に、選択的に剥離層121、122を形成する。続いて、絶縁膜119又は剥離層121、122に接するように、絶縁膜105(第2の絶縁膜に相当)を形成する。そうすると、絶縁膜105は、第1の領域115では、剥離層121、122又は絶縁膜119に接し、第2の領域116では、絶縁膜119に接する。その後は、上述した通り、第1の領域115の絶縁膜105上に、複数の素子106とアンテナとして機能する導電層110を形成する。次に、第1の領域115に、剥離層121、122が露出される開口部を選択的に形成する。次に、開口部にエッチング剤を導入して、剥離層121、122を除去する。
【0106】
第3の作製方法では、まず、基板101上に絶縁膜119(第1の絶縁膜に相当)を形成する(図17(A)参照)。次に、絶縁膜119上に、選択的に剥離層125を形成する。続いて、絶縁膜119又は剥離層125に接するように、絶縁膜105(第2の絶縁膜に相当)を形成する。そうすると、絶縁膜105は、第1の領域115では、剥離層125又は絶縁膜119に接し、第2の領域116では、絶縁膜119に接する。その後は、上述した通り、第1の領域115の絶縁膜105上に、複数の素子106とアンテナとして機能する導電層110を形成する。次に、第1の領域115に、剥離層125が露出される開口部を選択的に形成する。次に、開口部にエッチング剤を導入して、剥離層125を除去する。
【0107】
第4の作製方法では、まず、基板101上に絶縁膜119(第1の絶縁膜に相当)を形成する(図17(B)参照)。次に、絶縁膜119上に、選択的に剥離層131を形成する。続いて、絶縁膜119又は剥離層131に接するように、絶縁膜105(第2の絶縁膜に相当)を形成する。そうすると、絶縁膜105は、第1の領域115では、剥離層131又は絶縁膜119に接し、第2の領域116では、絶縁膜119に接する。その後は、上述した通り、第1の領域115の絶縁膜105上に、複数の素子106とアンテナとして機能する導電層110を形成する。次に、第1の領域115に、剥離層121が露出される開口部を選択的に形成する。次に、開口部にエッチング剤を導入して、剥離層121を除去する。
【0108】
なお、上記の作製方法では、薄膜集積回路として、複数の素子と、アンテナとして機能する導電層を形成しているが、本発明はこの構成に制約されない。電磁波を送受信する機能を有する半導体装置を形成する場合、複数の素子のみ、又は複数の素子とアンテナとして機能する導電層を形成するとよい。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の薄膜集積回路の作製方法を説明する図。
【図2】本発明の薄膜集積回路の作製方法を説明する図。
【図3】本発明の薄膜集積回路の作製方法を説明する図。
【図4】本発明の薄膜集積回路の作製方法を説明する図。
【図5】本発明の薄膜集積回路の作製方法を説明する図。
【図6】本発明の薄膜集積回路の作製方法を説明する図。
【図7】本発明の薄膜集積回路の作製方法を説明する図。
【図8】本発明の薄膜集積回路の作製方法を説明する図。
【図9】本発明の薄膜集積回路の作製方法を説明する図。
【図10】本発明の薄膜集積回路の作製方法を説明する図。
【図11】本発明の薄膜集積回路の作製方法を説明する図。
【図12】薄膜集積回路の構成を説明する図。
【図13】薄膜集積回路の使用形態について説明する図。
【図14】薄膜集積回路の使用形態について説明する図。
【図15】本発明の薄膜集積回路の作製方法を説明する図。
【図16】本発明の薄膜集積回路の作製方法を説明する図。
【図17】本発明の薄膜集積回路の作製方法を説明する図。
【符号の説明】
【0110】
101 基板
102 剥離層
103 剥離層
104 剥離層
105 絶縁膜
106 素子群
107 絶縁膜
108 絶縁膜
109 薄膜集積回路
110 導電層
111 絶縁膜
112 開口部
113 開口部
114 基体
115 第1の領域
116 第2の領域
117 トランジスタ
118 トランジスタ
119 絶縁膜
121 剥離層
122 剥離層
123 開口部
124 開口部
125 剥離層
126 開口部
131 剥離層
132 開口部
135 第3の領域
136 第4の領域
137 第5の領域
140 基体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁表面を有する基板上の第1の領域と第2の領域に剥離層を形成し、
前記第2の領域の前記剥離層を除去し、
前記第1の領域と前記第2の領域に、絶縁膜を形成し、
前記第1の領域の前記絶縁膜上に、複数の素子と導電層を形成し、
前記第1の領域に、前記剥離層が露出される開口部を形成し、
前記開口部にエッチング剤を導入して、前記剥離層を除去することを特徴とする薄膜集積回路の作製方法。
【請求項2】
絶縁表面を有する基板上の第1の領域と第2の領域に剥離層を形成し、
前記第2の領域の前記剥離層を選択的に除去し、
前記第1の領域と前記第2の領域に、絶縁膜を形成し、
前記第1の領域の前記絶縁膜上に、複数の素子と導電層を形成し、
前記第1の領域に、前記剥離層が露出される開口部を形成し、
前記開口部にエッチング剤を導入して、前記剥離層を除去することを特徴とする薄膜集積回路の作製方法。
【請求項3】
絶縁表面を有する基板上の第1の領域と第2の領域に剥離層を形成し、
前記第1の領域の前記剥離層を選択的に除去し、
前記第2の領域の前記剥離層を除去し、
前記第1の領域と前記第2の領域に、絶縁膜を形成し、
前記第1の領域の前記絶縁膜上に、複数の素子と導電層を形成し、
前記第1の領域に、前記剥離層が露出される開口部を形成し、
前記開口部にエッチング剤を導入して、前記剥離層を除去し、
前記第1の領域の前記剥離層を選択的に除去する工程では、前記複数の素子と前記導電層が設けられ、かつ前記第1の領域が含む第3の領域の前記剥離層は除去せず、前記開口部が設けられ、かつ前記第1の領域が含む第4の領域の前記剥離層は除去せず、前記第3の領域と前記第4の領域以外であり、かつ前記第1の領域が含む第5の領域の前記剥離層を除去することを特徴とする薄膜集積回路の作製方法。
【請求項4】
絶縁表面を有する基板上の第1の領域と第2の領域に剥離層を形成し、
前記第1の領域と前記第2の領域の前記剥離層を選択的に除去し、
前記第1の領域と前記第2の領域に、絶縁膜を形成し、
前記第1の領域の前記絶縁膜上に、複数の素子と導電層を形成し、
前記第1の領域に、前記剥離層が露出される開口部を形成し、
前記開口部にエッチング剤を導入して、前記剥離層を除去し、
前記第1の領域は、第3の領域、第4の領域及び第5の領域に分けられ、
前記第1の領域の前記剥離層を選択的に除去する工程では、前記複数の素子と前記導電層が設けられ、かつ、前記第1の領域が含む第3の領域の前記剥離層は除去せず、前記開口部が設けられ、かつ前記第1の領域が含む第4の領域の前記剥離層は除去せず、前記第3の領域と前記第4の領域以外であり、かつ前記第1の領域が含む第5の領域の前記剥離層を除去することを特徴とする薄膜集積回路の作製方法。
【請求項5】
絶縁表面を有する基板上の第1の領域と第2の領域に剥離層を形成し、
前記第1の領域の前記剥離層を選択的に除去し、
前記第2の領域の前記剥離層を除去し、
前記第1の領域と前記第2の領域に絶縁膜を形成し、
前記第1の領域の前記絶縁膜上に、複数の素子と導電層を形成し、
前記第1の領域に、前記剥離層が露出される開口部を形成し、
前記開口部にエッチング剤を導入して、前記剥離層を除去し、
前記第1の領域の前記剥離層を選択的に除去する工程では、前記複数の素子と前記導電層が設けられ、かつ前記第1の領域が含む第3の領域の前記剥離層は除去せず、前記開口部が設けられ、かつ前記第1の領域が含む第4の領域の前記剥離層は除去せず、前記第3の領域と前記第4の領域以外であり、かつ前記第1の領域が含む第5の領域の前記剥離層を選択的に除去することを特徴とする薄膜集積回路の作製方法。
【請求項6】
絶縁表面を有する基板上の第1の領域と第2の領域に剥離層を形成し、
前記第1の領域と前記第2の領域の前記剥離層を選択的に除去し、
前記第1の領域と前記第2の領域に絶縁膜を形成し、
前記第1の領域の前記絶縁膜上に、複数の素子と導電層を形成し、
前記第1の領域に、前記剥離層が露出される開口部を形成し、
前記開口部にエッチング剤を導入して、前記剥離層を除去し、
前記第1の領域の前記剥離層を選択的に除去する工程では、前記複数の素子と前記導電層が設けられ、かつ前記第1の領域が含む第3の領域の前記剥離層は除去せず、前記開口部が設けられ、かつ前記第1の領域が含む第4の領域の前記剥離層は除去せず、前記第3の領域及び前記第4の領域以外であり、前記第1の領域が含む第5の領域の前記剥離層を選択的に除去することを特徴とする薄膜集積回路の作製方法。
【請求項7】
絶縁表面を有する基板上の第1の領域と第2の領域に剥離層を形成し、
前記第1の領域の前記剥離層を選択的に除去し、
前記第2の領域の前記剥離層を除去し、
前記第1の領域と前記第2の領域に絶縁膜を形成し、
前記第1の領域の前記絶縁膜上に、複数の素子と導電層を形成し、
前記第1の領域に、前記剥離層が露出される開口部を形成し、
前記開口部にエッチング剤を導入して、前記剥離層を除去し、
前記第1の領域の前記剥離層を選択的に除去する工程では、前記複数の素子と前記導電層が設けられ、かつ前記第1の領域が含む第3の領域の前記剥離層を選択的に除去し、前記開口部が設けられ、かつ前記第1の領域が含む第4の領域の前記剥離層を除去しないことを特徴とする薄膜集積回路の作製方法。
【請求項8】
絶縁表面を有する基板上の第1の領域と第2の領域に剥離層を形成し、
前記第1の領域と前記第2の領域の前記剥離層を選択的に除去し、
前記第1の領域と前記第2の領域に絶縁膜を形成し、
前記第1の領域の前記絶縁膜上に、複数の素子と導電層を形成し、
前記第1の領域に、前記剥離層が露出される開口部を形成し、
前記開口部にエッチング剤を導入して、前記剥離層を除去し、
前記第1の領域の前記剥離層を選択的に除去する工程では、前記複数の素子と前記導電層が設けられ、かつ前記第1の領域が含む第3の領域の前記剥離層を選択的に除去し、前記開口部が設けられ、かつ前記第1の領域が含む第4の領域の前記剥離層を除去しないことを特徴とする薄膜集積回路の作製方法。
【請求項9】
請求項1又は請求項2において、
前記絶縁膜は、前記第1の領域の前記剥離層と前記第2の領域の前記基板に接するように、形成されることを特徴とする薄膜集積回路の作製方法。
【請求項10】
請求項3乃至請求項8のいずれか一項において、
前記絶縁膜は、前記第1の領域の前記基板及び前記剥離層と、前記第2の領域の前記基板に接するように、形成されることを特徴とする薄膜集積回路の作製方法。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれか一項において、
前記エッチング剤は、フッ化ハロゲンを含む気体又は液体であることを特徴とする薄膜集積回路の作製方法。
【請求項12】
請求項1乃至請求項10のいずれか一項において、
前記導電層は、アンテナとして機能することを特徴とする薄膜集積回路の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−41502(P2006−41502A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−185380(P2005−185380)
【出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】