説明

薬物搭載エマルジョンの製造方法

薬物搭載エマルジョンの製造方法を開示する。本発明は下記のステップを含んでなる:有効成分を含まない非自己乳化水中油型空エマルジョンを製造するステップ;次に、水中油型空エマルジョンへ治療的有効量の有効成分を添加し、pH値を調整して膜を通して有効成分を分配し、所望のエマルジョンを得るステップ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非自己乳化水中油型薬物搭載エマルジョンの製造方法に関する。具体的には本発明は、薬物を空のエマルジョンに添加することによる非自己乳化水中油型薬物搭載エマルジョンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エマルジョンは病院で広く使用される。脂肪エマルジョンは非経口系における薬物送達担体として、薬物の安定性向上、毒性の低減、薬物放出特性の遅延化又は制御及び薬物ターゲティングの改善という利点のため40年以上にわたり利用されてきた。近年、脂肪エマルジョンの製造方法の発展に基づき、薬物搭載エマルジョンの研究がますます関心を引くようになった。薬物搭載製品は、治療効果を有し、また患者に活力を与えることができ、患者の回復を助けるのに好ましい。
【0003】
先行技術には、自己乳化技術を使用した薬物搭載エマルジョンの製造方法がいくつかある。例えばXiujuan Li及びLiwei Zhangは、自己乳化技術を使用して、アスピリン油中水型マイクロエマルジョンを調製した(Chemical
Research and Application, 2008年3月、20巻3号353〜355頁)。穏やかに撹拌すると、自己乳化エマルジョンは自発的に、粒子径1000 nm未満のエマルジョンを形成することができる。従って、水相又は油相を調製する際に薬物をこの系に添加することができ、エマルジョン内部相の内側に薬物を容易に封入することができる。しかしながら自己乳化エマルジョンの調製中には大量の乳化剤が必要であり、一般的には有機溶媒である共乳化剤が必然的に添加されるので、注射剤としてはより毒性の高い自己乳化エマルジョンをもたらす。
【0004】
自己乳化エマルジョン中の乳化剤と共乳化剤に起因する毒性を低減するため、粒子径1000 nm未満の非自己乳化水中油型エマルジョンを調製した。この非自己乳化水中油型エマルジョンは優れた動態安定性と血管透過性を有しており、油と水との間の強い界面張力を克服するため、一般的に高速撹拌、高圧均質化又は微小流動化などにより調製した。現在のところ、非自己乳化水中油型薬物搭載エマルジョンの一般的な製造方法には、下記のステップが含まれる:すなわち、第1に、油相と水相を調製し、混合する;第2に、その粗エマルジョンを調製する;第3に、最終的なエマルジョンを得るため、上記の過酷な条件を適応して、エマルジョンの粒子径を減少させる。通常、薬物の組み込みは、第1ステップ又は第2ステップで行う。薬物組み込み方法には、下記のような方法が含まれる:(1)薬物が油溶性である場合、最初に薬物を油相中に溶解し、次に、その溶解した薬物をエマルジョンとする;(2)薬物が水溶性である場合、最初に薬物を水相中に溶解し、次に、その溶解した薬物をエマルジョンとする;(3)薬物が油相と水相の両方に不溶の場合、最初に薬物、油相又は/及び乳化剤を適切な有機溶媒中に溶解し、次に、その有機溶媒を除去して、その溶解した薬物をエマルジョンとする。
【0005】
多くの先行技術には、油相及び水相の調製の第1ステップで行う薬物の組み込みについて開示されている。これらの先行技術には、例えば中国特許出願公開第1399959A号明細書「エトミデート脂肪エマルジョン注射剤の製造方法」(特許文献1);同第1546016A号明細書「天然ビタミンEのナノ製剤及びその製造方法」(特許文献2);同第1634021A号明細書「静脈内注射用新規パクリタキセルエマルジョン及びその製造方法」(特許文献3);同第1679576A号明細書「静脈用ビンカアルカロイドの安定化水中油型エマルジョン及びその製造」(特許文献4);同第1732936A号明細書「ニモジピンエマルジョン注射剤及びその製造方法」(特許文献5);同第1947720A号明細書「クラリスロマイシン脂質微粒子注射剤及びその製造方法」(特許文献6);同第1861085A号明細書「イソプロピルフェノールスフィンゴリン脂質脂肪エマルジョン及びその製造方法」(特許文献7)などがある。しかしながら中国特許出願公開第1771954A号明細書「ビノレルビン脂質微粒子注射剤及びその製造方法」(特許文献8)には、粗エマルジョン調製の第2ステップで薬物を組み込む方法が開示されている。
【0006】
先行技術における薬物搭載エマルジョンの一般的製造プロセスによれば、薬物が水相又は油相に可溶である場合には、薬物は通常、第1ステップ又は第2ステップで組み込まれる。すなわち、薬物は製造プロセスの初期に組み込まれ、その系に存在するが、その一方で長時間系中に留まることになり、系中において薬物と他の物質とが共に何回かの均質化を経て、最終エマルジョンが得られる。不安定な薬物では、製造プロセスにおける長い滞留時間や上記の均質化条件により引き起こされる何回かの均質化、特に強いずり応力、高温及び高圧のため、変性、不活性化、構造破壊又は分解する確率がより高まる。しかし、薬物が油相及び水相の両方に不溶である場合、通常、有機溶媒、他の共溶媒又は添加物を系に添加し、薬物の溶解性を改善しなければならない。従って、有機溶媒残留物又は製剤の複雑化が生じ、さらにはエマルジョンの安全性の問題が起こる。
【0007】
中国特許出願公開第1620283A号明細書(特許文献9)には、わずかに可溶又はほとんど不溶の有効成分を分散させて製造する方法が開示されている。有効成分は、市販の水中油型エマルジョンを用いて、分散系を生成するために粉砕された。この分散系は、有効成分が主に水相で見いだされるが、同時に、内部相として油滴及び有効成分結晶から成る。次に、この分散系は高圧均質化(例えば1500バールで5〜20均質化サイクル)にかけられた。均質化後、有効成分は油滴の内部相中に組み込まれ、溶解した。この薬物搭載エマルジョンの製造方法において、薬物取り込み手順は水中油型空エマルジョンを得た後にあり、系全体において薬物の滞留時間を短縮するが、一般に薬物は、水中油型空エマルジョン中に取り込まれる前に、粒子径が1000 nm未満になるまで細かく砕かれなければならない。しかしながらこの取り込みプロセスにおいては、高エネルギーの均質化が必要であり、薬物がエマルジョンの油相中に溶解する際に強力な機械エネルギーとなる。従ってこの方法は、不安定な薬物には不適当である。一方この方法では、可溶化のための有機溶媒の使用が回避されるが、多大なエネルギーを消費するエマルジョン製造装置が必要となる。
【0008】
Gong Mingtao及びZhang
Junshouらは、10−ヒドロキシカンプトテシン・ナノエマルジョンの調製に相転移温度法を用いた(Chinese
Journal of Natural Medicines, 2005年、3巻1号41〜43頁)(非特許文献1)。この方法では、薬物はあらかじめ調製された水中油型空エマルジョン中に取り込まれるが、温度が70℃(相転移温度)を上回る場合、薬物はエマルジョンの内部相に封入される。薬物取り込みは相転移温度以上で行われるので、熱的に不安定な薬物は制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】中国特許出願公開第1399959A号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第1546016A号明細書
【特許文献3】中国特許出願公開第1634021A号明細書
【特許文献4】中国特許出願公開第1679576A号明細書
【特許文献5】中国特許出願公開第1732936A号明細書
【特許文献6】中国特許出願公開第1947720A号明細書
【特許文献7】中国特許出願公開第1861085A号明細書
【特許文献8】中国特許出願公開第1771954A号明細書
【特許文献9】中国特許出願公開第1620283A号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Chinese Journal of Natural Medicines, 2005年、3巻1号41〜43頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
薬物の不安定性及び不溶性は、薬物搭載エマルジョン調製物の品質を低下させることがある。特に当該薬物が化学的に不安定又は油相若しくは/及び水相に不溶である場合、また特に当該エマルジョンの平均粒子径が1000 nm未満である場合に品質が低下する。先行技術における薬物搭載エマルジョンの欠点を克服するため、本発明では、薬物の自動搭載技術を取り入れ、緩和な条件下で効率的に薬物を搭載する非自己乳化エマルジョン、特に粒子径が1000 nm未満の非自己乳化エマルジョンを製造した。本発明は下記のステップを含んでなる:
薬物を含まない非自己乳化水中油型空エマルジョンを製造するステップ、好ましくは、粒子径が1000 nm未満の非自己乳化水中油型空エマルジョンを製造するステップ;
空エマルジョンへ治療的有効量の薬物を添加し、pH値を調整して、好ましくは、pH値を調整して薬物の油水分配係数を増加させ、混合することにより薬物をエマルジョンの油滴中に膜を通して移行させ、薬物搭載エマルジョンを得るステップ。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、最初に、薬物を含まない非自己乳化水中油型空エマルジョンを常法により製造する。ここでのエマルジョンの粒子径は臨床的必要性を満たすべきであり、例えば1000 nm未満の粒子径である。次に、薬物を空エマルジョンに添加し、空エマルジョンの外側の水相に薬物を溶解又は分散させる。最後に、この外側相のpH値を調整し、外側相中の薬物を遊離分子型といったより脂溶性になるよう変換し、続いて、薬物の油水分配係数logPを増加させる。濃度差により、薬物は水中油型エマルジョンの外側の水相から内側の油相に自発的に移行し、その結果、薬物の自動搭載が緩和に達成される。
【0013】
本発明によれば、非自己乳化水中油型空エマルジョンは、治療的有効量の薬物を含まない非自己乳化水中油型エマルジョンを指している。これは先行技術によれば空の最終エマルジョンに相当する。またその粒子径は最終薬物搭載エマルジョンと等しい。このことは、本発明において薬物は、初期に油相、水相又は粗エマルジョンに添加されるということに加え、空の最終エマルジョンが製造された後に添加されることを意味する。従って、系における薬物の滞留時間が短縮される。薬物は、空の最終エマルジョンが製造された後にそのエマルジョンに添加されるので、それに続く製造プロセスは、エマルジョン粒子径を小さくするための過酷な条件を必要としない。そのため、敏感な薬物分子の構造と安定性への障害、すなわち高速撹拌や高圧下での均質化などの過酷な条件から生じる強いずり応力や高温、高圧によって引き起こされる障害を効率的に回避することができる。
【0014】
さらに本発明によれば、薬物が空の最終エマルジョンに添加された後、その外側相のpH値を調整し、外側相の薬物を遊離分子型といったより脂溶性になるよう変換し、続いて、薬物の油水分配係数logPを増加させる。このようにして、エマルジョンの内側相と外側相の間の薬物濃度差が生じる。濃度差により、薬物は水中油型エマルジョンの外側の水相から内側の油相に自発的に移行する。これらの手順は、薬物の溶解を促進し、さらに内側相への薬物の封入を促進するために必要な機械エネルギーを低減する。一方では、薬物封入効率が改善され得る。他方では、薬物は緩和な混合方式により、水中油型エマルジョンの内側の油相中に運搬され得る。
【0015】
本発明によれば、先行技術におけるいくつかの製造方法、例えば、機械的方法、代替添加法、相転移温度法、相転移法などを、非自己乳化水中油型空エマルジョンの製造に使用することができる。例として機械的方法を取り上げると、非自己乳化水中油型空エマルジョンの製造方法は下記のステップを含んでなる:(1)油相を調製する;(2)水相を調製する;(3)油相と水相とを混合し、これらを不均一に分散させた後、乳化機を使用して水中油型空エマルジョンを調製する。乳化機は、乳鉢、攪拌機、コロイド粉砕機、超音波乳化装置、高圧ホモジナイザー又は微細流動化機などである。
【0016】
本発明によれば、薬物は、水溶性、油溶性、又は油相及び/若しくは水相に少し可溶、わずかに可溶若しくは極めてわずかに可溶でよい。ここで少し可溶とは、1 g(又はmL)の溶質が、30〜100 mLの溶媒に溶解することを意味する;わずかに可溶とは、1 g(又はmL)の溶質が、100〜1000 mLの溶媒に溶解することを意味する;極めてわずかに可溶とは、1 g(又はmL)の溶質が、1000〜10000 mLの溶媒に溶解することを意味する。油溶性薬物は水中油型エマルジョン中に溶解した状態で存在してもよい。油溶性薬物は油滴に封入され、不均一に分散した油滴で形成されるエマルジョンを得る。水溶性薬物は、外側相のpH値を調整することにより油溶性薬物に変換することができる。その次に、当該薬物は緩和な撹拌により膜を通過することができる。そして当該薬物は油滴に封入され、不均一に分散した油滴で形成されるエマルジョンを得る。少し可溶、わずかに可溶又は極めてわずかに可溶の薬物については、これらの薬物を油相に部分的に溶解させ、かつ高度に分散したナノ結晶の形態にあるエマルジョン中に部分的に存在させ、不均一に分散した油滴と薬物結晶とが組み合わさって形成されるエマルジョンを得る。本発明によれば、薬物は、油溶性、水溶性、又は油相及び/若しくは水相に少し可溶、わずかに可溶若しくは極めてわずかに可溶のどのようなものであっても、好ましくは、pH値によって異なる溶解性を示す薬物である。
【0017】
本発明によれば、薬物は、ヒト又は動物の疾患の治療のための有効成分を指し、抗腫瘍薬、心血管治療薬、抗感染薬、抗真菌薬、抗ウイルス薬、抗アレルギー薬、抗炎症薬、内分泌薬、抗精神病薬、抗菌薬、免疫抑制薬、ビタミン及び麻薬からなる群より選ばれる。特に薬物は、パクリタキセル、ドセタキセル、ビノレルビン、ビンクリスチン、ヒドロキシカンプトセシン、オキサリプラチン、リポPGE、ニモジピン、シクロスポリン、イトラコナゾール、アンホテリシン、アシクロビル、デキサメタゾン、パルミチン酸デキサメタゾン、インドメタシン、ジアゼパム、クラリスロマイシン、ピンヤンマイシン、ドキソルビシン、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ブピバカイン、プロポフォール、エトミデート、フルルビプロフェン アキセチルなどでもよい。
【0018】
前記薬物は、粉末、溶液又は分散の形態で空エマルジョンに添加することができる。最初に薬物を空エマルジョンに添加する。次に外側の水相のpH値を調整し、前記エマルジョンを均一に撹拌して、最終容量になるよう水を添加する。ろ過、充填、密封及び滅菌後、本発明の製造物が得られる。
【0019】
上記のように、本発明における混合は、エマルジョンの粒子径を減少させることには向けられていないが、濃度差のもとに薬物を内側の油相に移送する補助的な機械的方法としての役割を果たす。機械的撹拌、高速度せん断、超音波乳化、高圧均質化又は微細流動化など、好ましくは機械的撹拌及び高速度せん断という先行技術において使用される一般的な混合方法は、本発明に適用することができる。本発明の製造方法では、薬物が添加された空エマルジョン系のpH値が調整されるため、油水分配係数が改善される。濃度差を受けて薬物は自発的に内側の油相に封入され、より迅速に油相に分散する。従って本発明の混合は、高いエネルギー又はより高いエネルギー条件を必要とせず、濃度差のもとに薬物を内側の油相に移送する補助的な機械的方法としての役割を果たす。過酷な条件を伴ういくつかの混合方法、例えば超音波乳化、高圧均質化、微細流動化などであっても採用され、いくつかの条件は制御することができる。例えば、超音波周波数は下げることができ、また超音波乳化法では製造時間を短縮することができ、高圧均質化法では圧力と繰り返し時間を制御することができる。これらの方法は混合エネルギーを減少させることができ、そのため、薬物が内側の油相に入るのを促進し、その一方で薬物への悪影響を避けることができる。
【0020】
滅菌法は、先行技術におけるオートクレーブ、無菌ろ過、及び一般的なエマルジョン滅菌に使用される他の方法からなる群より選ぶことができる。
【0021】
本発明によれば、薬物搭載エマルジョンは、薬物、油溶剤、界面活性剤及び水を含んでなる。この薬物搭載エマルジョンは、薬物の異なる物理的及び化学的特性により、安定剤、可溶化剤、共溶媒、金属キレート剤、浸透圧調整剤、抗酸化剤及び防腐剤からなる群より選ばれる1種以上の成分をさらに含んでなる。
【0022】
本発明によれば、油溶剤は1種以上の鉱物油、植物油、動物油又は合成油を含む。前記植物油は、大豆油、ベニバナ油、トウモロコシ油、ヤシ油、ヒマシ油、ニガキモドキ油、パーム油、中鎖脂肪酸トリグリセリド、ピーナッツ油、綿実油及びこれらの混合物からなる群より選ばれる。前記動物油は、魚油、鯨油及びこれらの混合物からなる群より選ばれる。適切な油溶剤は、搭載された薬物とそのエマルジョンの投与方法に応じて選択することができる。前記油溶剤は、エマルジョン中で2〜40 w/v%の範囲にある。
【0023】
本発明によれば、界面活性剤はリン脂質、非イオン性界面活性剤及びこれらの混合物を含み、油相中に溶解させるか又は水相中に分散させることができる。本発明によれば、前記リン脂質は、卵レシチン、大豆レシチン、水素化卵レシチン、水素化大豆ホスファチジルコリン及び合成リン脂質からなる群より選ばれる。前記非イオン性界面活性剤は、Tween 20、Tween 40、Tween 60、Tween 80、Tween 85、Span 20、Span 40、Span 60、Span 80、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリ(エチレンオキシド)水素ヒマシ油、ポリ(エチレンオキシド)ステアリン酸エステル、ポロクサマー188、ポリエチレングリコールステアリン酸エステル15、ポリエチレングリコール−ビタミンEコハク酸エステル及びこれらの混合物からなる群より選ばれる。前記界面活性剤は、エマルジョン中で0.5〜50 w/v%の範囲にある。
【0024】
本発明によれば、抗酸化剤は、水溶性抗酸化剤及び油溶性抗酸化剤からなる群より選ばれる。水溶性抗酸化剤は水相に溶解し、油溶性抗酸化剤は油相に溶解する。前記水溶性抗酸化剤は、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、二亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、L−システイン及びこれらの混合物からなる群より選ばれる。前記油溶性抗酸化剤は、α−トコフェロール、α−トコフェロール酢酸エステル、α−トコフェロールコハク酸エステル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHA)及びこれらの混合物からなる群より選ばれる。
【0025】
本発明によれば、金属キレート剤は、EDTA、EDTA二ナトリウム塩、EDTA二カルシウム塩及びこれらの混合物からなる群より選ばれる。
【0026】
本発明によれば、浸透圧調整剤は、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、グルコース、塩化ナトリウム及びこれらの混合物からなる群より選ばれる。
【0027】
本発明によれば、安定剤は、オレイン酸、オレイン酸ナトリウム、コレステロール、コール酸、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸、デオキシコール酸ナトリウム及びこれらの混合物からなる群より選ばれる。
【0028】
本発明によれば、防腐剤は、チョウジ油、プロピレングリコール、ソルビトール、ソルビン酸、メタン酸、ブチルパラベンカルシウム、メチルパラベンナトリウム、プロピルパラベンナトリウム、ベンジルアルコール、安息香酸及びこれらの混合物からなる群より選ばれる。
【0029】
本発明によれば、共溶媒は、オレイン酸エチル、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール、乳酸エチル、エタノール、1,2−プロピレングリコール、ポリエチレングリコール及びこれらの混合物からなる群より選ばれる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、薬物搭載エマルジョンは、局所投与、経口投与又は非経口投与することができ、特に静脈内投与、経皮投与、皮下投与、筋肉内投与、関節内投与又は胸膜内投与することができ、好ましくは静脈内投与することができる。静脈内投与については、薬物搭載エマルジョンの平均粒子径は1000 nm未満である。
【0031】
先行技術と比較して、本発明には下記のような利点がある:
(1)本発明によれば、薬物の油水分配係数logPはpH値の調整により変化し、薬物は、空エマルジョンの油相と水相との間で再分配する。その結果、薬物は膜を通して移動し、緩和な方法により油相に分配する。従って有機溶媒は必要ではない。また、得られる製造物には残留溶媒の問題がない。
(2)薬物搭載エマルジョンの一般的な製造方法と比較して、本発明によれば、薬物は水中油型空最終エマルジョンの製造後に添加される。従って、系における薬物の滞留時間は減少する。さらに、高圧又は高エネルギーの機械的撹拌又は均質化は、薬物添加手順中又はその後に行われるので、製造過程における薬物の分解を低減又は回避することができる。
(3)本発明によれば、製造方法は簡便であり、高エネルギーを生み出す乳化装置のような特別なエマルジョン製造装置は必要ではない。本発明の製造方法は、製剤の大量工業生産に有利である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
下記の実施例は本発明を説明しようとするものであり、本発明の範囲をなんら限定しようとするものではない。
【実施例1】
【0033】
酒石酸ビノレルビン 0.05%
大豆油 5%
卵レシチン 2%
注射用水 1000 mLになるまで

不活性ガスによる保護下、50 gの大豆油を取り、75℃に予熱した;また20 gの卵レシチンを適量の注射用水に添加した後、この液を均一に撹拌し水相を得た。この水相は75℃に予熱した。高速撹拌下、当該水相を前記油相に添加し、この液を高圧ホモジナイザーにより均一にホモジナイズして、粒子径1000 nm未満の水中油型空エマルジョンを得た。このエマルジョンに0.5 gの酒石酸ビノレルビンを添加し、pH値を8.0に調整して機械的に撹拌した後、定容積の1000 mLまで注射用水を添加した。エマルジョンは0.22 μmフィルターでろ過滅菌した後、窒素の保護下で充填し、容器を密封した。
【実施例2】
【0034】
塩酸ブピバカイン 0.1%
ヒマシ油 10%
大豆レシチン 2%
無水亜硫酸ナトリウム 0.2%
グリセリン 2.5%
注射用水 1000 mLになるまで

不活性ガスによる保護下、100 gのヒマシ油を取り、60℃に予熱した;また20 gの大豆レシチン、2 gの無水亜硫酸ナトリウム及び25 gのグリセリンを適量の注射用水に添加した後、この液を均一に撹拌し水相を得た。この水相は60℃に予熱した。高速撹拌下、油相と水相とを均一に混合し、高圧ホモジナイザーによりホモジナイズして、粒子径1000 nm未満の水中油型空エマルジョンを得た。このエマルジョンに1 gの塩酸ブピバカインを添加し、pH値を7.0に調整して機械的に撹拌した後、定容積の1000 mLまで注射用水を添加した。エマルジョンは0.22 μmフィルターでろ過滅菌した後、窒素の保護下で充填し、容器を密封した。
【実施例3】
【0035】
工程中pH値が4.0に調整されたことを除き、ここでの製剤は実施例2と同一である。
【実施例4】
【0036】
工程中pH値が5.0に調整されたことを除き、ここでの製剤は実施例2と同一である。
【実施例5】
【0037】
工程中pH値が6.0に調整されたことを除き、ここでの製剤は実施例2と同一である。
【実施例6】
【0038】
工程中pH値が8.0に調整されたことを除き、ここでの製剤は実施例2と同一である。
【0039】
実施例2〜6の含有量、類縁物質、封入効率及び粒子径を測定し、その結果を図1及び2に示した:

【0040】

【0041】
実施例2〜6より、エマルジョンのpH値は、塩酸ブピバカインの油水分配係数を変化させることによって封入効率に明らかに影響することが示される。pH値が低くなるほど薬物の油水分配係数は低くなる。pH値が低いと、エマルジョンの内側相に入る薬物の量が少なくなり、また封入効率が低くなる。pH値が上がるに従い、封入効率は明らかに増加する。
【0042】
製剤が異なると、1ヵ月間の加速試験後の平均粒子径、含有量及び類縁物質の変化は異なった。この考えられる理由は、pH値が低い場合、塩酸ブピバカインは水溶性塩酸塩の形態にあったということである。pH値が低いと油水分配係数も低く、脂溶性遊離塩基の形態にある薬物より安定である。また類縁物質は、pH値が高い製剤より少ない。pH値は、含有量及び粒子径には有意な影響を及ぼさなかった。
【実施例7】
【0043】
塩酸イリノテカン 0.05%
大豆油 10%
卵レシチン 2%
ポロクサマー 2%
グリセリン 2.5%
注射用水 1000 mLになるまで

不活性ガスによる保護下、100 gの大豆油を油相として取った;また20 gの卵レシチン、20 gのポロクサマー及び25 gのグリセリンを適量の注射用水に添加した後、この液を均一に撹拌し水相を得た。高速撹拌下、油相と水相とを均一に混合し、高圧ホモジナイザーによりホモジナイズして、粒子径1000 nm未満の水中油型空エマルジョンを得た。このエマルジョンに0.5 gの塩酸イリノテカンを添加し、pH値を8.0に調整して、微小ジェット流ホモジナイザーで乳化した後、定容積の1000 mLまで注射用水を添加した。エマルジョンは0.22 μmフィルターでろ過滅菌した後、窒素の保護下で充填し、容器を密封した。
【実施例8】
【0044】
ビノレルビン 0.2%
大豆油 5%
卵レシチン 2%
注射用水 1000 mLになるまで

不活性ガスによる保護下、50 gの大豆油を取り、75℃に予熱した;また20 gの卵レシチンを適量の注射用水に添加した後、この液を均一に撹拌し水相を得た。この水相は75℃に予熱した。高速撹拌下、当該水相を前記油相に添加し、この液を高圧ホモジナイザーにより均一にホモジナイズして、粒子径1000 nm未満の水中油型空エマルジョンを得た。このエマルジョンに2 gのビノレルビンを添加し、pH値を8.0に調整して機械的に撹拌した後、定容積の1000 mLまで注射用水を添加した。エマルジョンは0.22 μmフィルターでろ過滅菌した後、窒素の保護下で充填し、容器を密封した。
【実施例9】
【0045】
ドセタキセル 0.05%
中鎖脂肪酸トリグリセリド 15%
卵レシチン 2%
Tween 80 0.5%
オレイン酸 0.4%
グリセリン 2.5%
α−トコフェロール 0.05%
注射用水 1000 mLになるまで

不活性ガスによる保護下、150 gの中鎖脂肪酸トリグリセリド、4 gのオレイン酸、0.5 gのα−トコフェロール及び5 gのTween 80を均一に撹拌し油相を得た。この油相は70℃に予熱した;20 gの卵レシチン及び25 gのグリセリンを適量の注射用水に添加した後、この液を均一に撹拌し水相を得た。この水相は70℃に予熱した。高速撹拌下、油相と水相とを均一に混合し、高圧ホモジナイザーによりホモジナイズして、粒子径1000 nm未満の水中油型空エマルジョンを得た。このエマルジョンに0.5 gのドセタキセルを添加し、pH値を5.0に調整して、微小ジェット流ホモジナイザーで乳化した後、定容積の1000 mLまで注射用水を添加した。エマルジョンは0.22 μmフィルターでろ過滅菌した後、窒素の保護下で充填し、容器を密封した。
【実施例10】
【0046】
アンホテリシンB 0.2%
魚油 10%
卵レシチン 2%
オレイン酸ナトリウム 0.1%
グリセリン 2.5%
EDTA二ナトリウム塩 0.01%
注射用水 1000 mLになるまで

不活性ガスによる保護下、100 gの魚油を取り、70℃に予熱した;また20 gの卵レシチン、1 gのオレイン酸ナトリウム、0.1 gのEDTA二ナトリウム塩及び25 gのグリセリンを適量の注射用水に添加した後、この液を均一に撹拌し水相を得た。この水相は70℃に予熱した。高速撹拌下、油相と水相とを均一に混合し、高圧ホモジナイザーによりホモジナイズして、水中油型空エマルジョンを得た。このエマルジョンに2 gのアンホテリシンBを添加し、pH値を7.0に調整して、粒子径が1000 nm未満になるまで高圧ホモジナイザーで乳化した後、定容積の1000 mLまで注射用水を添加した。エマルジョンは0.22 μmフィルターでろ過滅菌した後、窒素の保護下で充填し、容器を密封した。
【実施例11】
【0047】
リポPGE 0.001%
大豆油 10%
卵レシチン 1.2%
オレイン酸 0.1%
グリセリン 2.5%
注射用水 1000 mLになるまで

不活性ガスによる保護下、100 gの大豆油及び1 gのオレイン酸を均一に撹拌し油相を得た;12 gの卵レシチン及び25 gのグリセリンを適量の注射用水に添加した後、この液を均一に撹拌し水相を得た。高速撹拌下、油相と水相とを均一に混合し、高圧ホモジナイザーによりホモジナイズして、粒子径1000 nm未満の水中油型空エマルジョンを得た。このエマルジョンに10 mgのリポPGEを添加し、pH値を5.0に調整して、高圧ホモジナイザーで乳化した後、定容積の1000 mLまで注射用水を添加した。エマルジョンは0.22 μmフィルターでろ過滅菌した後、窒素の保護下で充填し、容器を密封した。
【実施例12】
【0048】
ジアゼパム 0.1%
大豆油 10%
卵レシチン 1.2%
オレイン酸ナトリウム 0.05%
グリセリン 2.5%
注射用水 1000 mLになるまで

不活性ガスによる保護下、100 gの大豆油を油相として取った;また12 gの卵レシチン、0.5 gのオレイン酸ナトリウム及び25 gのグリセリンを適量の注射用水に添加した後、この液を均一に撹拌し水相を得た。高速撹拌下、油相と水相とを均一に混合し、高圧ホモジナイザーによりホモジナイズして、粒子径1000 nm未満の水中油型空エマルジョンを得た。このエマルジョンに1 gのジアゼパムを添加し、pH値を8.0に調整して、高圧ホモジナイザーで乳化した後、定容積の1000 mLまで注射用水を添加した。エマルジョンは0.22 μmフィルターでろ過滅菌した後、窒素の保護下で充填し、容器を密封した。
【実施例13】
【0049】
エトミデート 0.1%
大豆油 10%
卵レシチン 1.2%
グリセリン 2.5%
注射用水 1000 mLになるまで

不活性ガスによる保護下、100 gの大豆油を取り、50℃に予熱した;また12 gの卵レシチン及び25 gのグリセリンを適量の注射用水に添加した後、この液を均一に撹拌し水相を得た。この水相は50℃に予熱した。高速撹拌下、油相と水相とを均一に混合し、高圧ホモジナイザーによりホモジナイズして、粒子径1000 nm未満の水中油型空エマルジョンを得た。このエマルジョンに1 gのエトミデートを添加し、pH値を5.0に調整して、高圧ホモジナイザーで乳化した後、定容積の1000 mLまで注射用水を添加した。エマルジョンは0.22 μmフィルターでろ過滅菌した後、窒素の保護下で充填し、容器を密封した。
【実施例14】
【0050】
プロポフォール 0.1%
大豆油 5%
中鎖脂肪酸トリグリセリド 5%
卵レシチン 1.2%
グリセリン 2.5%
注射用水 1000 mLになるまで

不活性ガスによる保護下、50 gの大豆油及び50 gの中鎖脂肪酸トリグリセリドを均一に撹拌し油相を得た。この油相は60℃に予熱した;12 gの卵レシチン及び25 gのグリセリンを適量の注射用水に添加した後、この液を均一に撹拌し水相を得た。この水相は60℃に予熱した。高速撹拌下、油相と水相とを均一に混合し、高圧ホモジナイザーによりホモジナイズして、粒子径1000 nm未満の水中油型空エマルジョンを得た。このエマルジョンに1 gのプロポフォールを添加し、pH値を8.0に調整して、高圧ホモジナイザーで乳化した後、定容積の1000 mLまで注射用水を添加した。エマルジョンは0.22 μmフィルターでろ過滅菌した後、窒素の保護下で充填し、容器を密封した。
【実施例15】
【0051】
シクロスポリン 0.1%
中鎖脂肪酸トリグリセリド 3%
ポリオキシエチレンヒマシ油 10%
PEG-400 5%
NaCl 0.4%
注射用水 1000 mLになるまで

不活性ガスによる保護下、30 gの中鎖脂肪酸トリグリセリドを取り、60℃に予熱した;100 gのポリオキシエチレンヒマシ油、50 gのPEG-400及び4 gのNaClを適量の注射用水に添加した後、この液を均一に撹拌し水相を得た。この水相は60℃に予熱した。高速撹拌下、油相と水相とを均一に混合し、高圧ホモジナイザーによりホモジナイズして、粒子径1000 nm未満の水中油型空エマルジョンを得た。このエマルジョンに1 gのシクロスポリンを添加し、pH値を7.4に調整して、高速度せん断で乳化した後、定容積の1000 mLまで注射用水を添加した。エマルジョンは0.22 μmフィルターでろ過滅菌した後、窒素の保護下で充填し、容器を密封した。
【実施例16】
【0052】
ニモジピン 0.1%
大豆油 15%
大豆レシチン 1.2%
オレイン酸ナトリウム 0.05%
グリセリン 2.25%
注射用水 1000 mLになるまで

不活性ガスによる保護下、150 gの大豆油及び12 gの大豆レシチンを均一に撹拌し油相を得た。この油相は60℃に予熱した;22.5 gのグリセリン及び0.5 gのオレイン酸ナトリウムを適量の注射用水に添加した後、この液を均一に撹拌し水相を得た。この水相は60℃に予熱した。高速撹拌下、油相と水相とを均一に混合し、高圧ホモジナイザーによりホモジナイズして、粒子径1000 nm未満の水中油型空エマルジョンを得た。このエマルジョンに1 gのニモジピンを添加し、pH値を8.0に調整して、高圧ホモジナイザーで乳化した後、定容積の1000 mLまで注射用水を添加した。エマルジョンは0.22 μmフィルターでろ過滅菌した後、窒素の保護下で充填し、容器を密封した。
【実施例17】
【0053】
ビタミンD 0.5%
大豆油 5%
大豆レシチン 1.5%
グリセリン 2.25%
注射用水 1000 mLになるまで

不活性ガスによる保護下、50 gの大豆油及び15 gの大豆レシチンを均一に撹拌し油相を得た。この油相は70℃に予熱した;22.5 gのグリセリンを適量の注射用水に添加した後、この液を均一に撹拌し水相を得た。この水相は70℃に予熱した。高速撹拌下、油相と水相とを均一に混合し、高圧ホモジナイザーによりホモジナイズして、粒子径1000 nm未満の水中油型空エマルジョンを得た。このエマルジョンに5 gのビタミンDを添加し、pH値を8.0に調整して、高圧ホモジナイザーで乳化した後、定容積の1000 mLまで注射用水を添加した。エマルジョンは0.22 μmフィルターでろ過滅菌した後、窒素の保護下で充填し、容器を密封した。
【実施例18】
【0054】
アシクロビル 0.5%
大豆油 10%
大豆レシチン 2%
オレイン酸ナトリウム 0.05%
グリセリン 2.25%
注射用水 1000 mLになるまで

不活性ガスによる保護下、100 gの大豆油を取り、70℃に予熱した;20 gの大豆レシチン、22.5 gのグリセリン及び0.5 gのオレイン酸ナトリウムを適量の注射用水に添加した後、この液を均一に撹拌し水相を得た。この水相は70℃に予熱した。高速撹拌下、油相と水相とを均一に混合し、高圧ホモジナイザーによりホモジナイズして、粒子径1000 nm未満の水中油型空エマルジョンを得た。このエマルジョンに5 gのアシクロビルを添加し、pH値を8.0に調整して、高圧ホモジナイザーで乳化した後、定容積の1000 mLまで注射用水を添加した。エマルジョンは0.22 μmフィルターでろ過滅菌した後、窒素の保護下で充填し、容器を密封した。
【実施例19】
【0055】
薬物がクラリスロマイシンに置き換わり、製剤中の濃度が0.1%であることを除き、ここでの製剤は実施例18と同一である。
【実施例20】
【0056】
薬物がデキサメタゾンに置き換わり、製剤中の濃度が0.1%であることを除き、ここでの製剤は実施例18と同一である。
【実施例21】
【0057】
薬物がドキソルビシンに置き換わり、製剤中の濃度が0.1%であることを除き、ここでの製剤は実施例18と同一である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
非自己乳化水中油型薬物搭載エマルジョンの製造方法であって、下記のステップを含んでなることを特徴とする方法:
薬物を含まない非自己乳化水中油型空エマルジョンを製造するステップ、好ましくは、粒子径が1000 nm未満の非自己乳化水中油型空エマルジョンを製造するステップ;
空エマルジョンへ治療的有効量の薬物を添加し、pH値を調整して、好ましくは、pH値を調整して薬物の油水分配係数を増加させ、混合することにより薬物をエマルジョンの油滴中に膜を通して移行させ、薬物搭載エマルジョンを得るステップ。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記薬物はエマルジョン中に溶解した状態で存在し、かつ油滴に封入され、不均一に分散した油滴で形成されるエマルジョンを得る;または、前記薬物は高度に分散したナノ結晶の形態にあるエマルジョン中に部分的に存在し、かつ油相に部分的に溶解し、不均一に分散した油滴と薬物結晶とが組み合わさって形成されるエマルジョンを得ることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であって、前記薬物は、粉末、溶液又は分散の形態で空エマルジョンに添加することを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法であって、前記混合が、機械的撹拌、高速度せん断、超音波乳化、高圧均質化及び微細流動化からなる群より選ばれることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法であって、前記薬物搭載エマルジョンが薬物、油溶剤、界面活性剤及び水を含んでなることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、前記油溶剤が鉱物油、植物油、動物油、合成油及びこれらの混合物からなる群より選ばれることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、前記植物油が大豆油、ベニバナ油、トウモロコシ油、ヤシ油、ヒマシ油、ニガキモドキ油、パーム油、中鎖脂肪酸トリグリセリド、ピーナッツ油、綿実油及びこれらの混合物からなる群より選ばれ;前記動物油が魚油、鯨油及びこれらの混合物からなる群より選ばれることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項5に記載の方法であって、前記界面活性剤がリン脂質、非イオン性界面活性剤及びこれらの混合物からなる群より選ばれ;前記界面活性剤が油相中に溶解されるか又は水相中に分散されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、前記リン脂質が卵レシチン、大豆レシチン、水素化卵レシチン、水素化大豆ホスファチジルコリン及び合成リン脂質からなる群より選ばれ;前記非イオン性界面活性剤が、Tween 20、Tween 40、Tween 60、Tween 80、Tween 85、Span 20、Span 40、Span 60、Span 80、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリ(エチレンオキシド)水素化ヒマシ油、ポリ(エチレンオキシド)ステアリン酸エステル、ポロクサマー188、ポリエチレングリコールステアリン酸エステル15、ポリエチレングリコール−ビタミンEコハク酸エステル及びこれらの混合物からなる群より選ばれることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法であって、前記薬物搭載エマルジョンが安定剤、可溶化剤、共溶媒、金属キレート剤、浸透圧調整剤、抗酸化剤及び防腐剤からなる群より選ばれる1種以上の成分をさらに含んでなることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、前記抗酸化剤が水溶性抗酸化剤及び油溶性抗酸化剤からなる群より選ばれ、水溶性抗酸化剤は水相に溶解し、また油溶性抗酸化剤は油相に溶解し、前記水溶性抗酸化剤は、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、二亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、L−システイン及びこれらの混合物からなる群より選ばれ、また前記油溶性抗酸化剤は、α−トコフェロール、α−トコフェロール酢酸エステル、α−トコフェロールコハク酸エステル、ブチルヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン及びこれらの混合物からなる群より選ばれることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法であって、前記金属キレート剤がEDTA、EDTA二ナトリウム塩、EDTA二カルシウム塩及びこれらの混合物からなる群より選ばれることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項10に記載の方法であって、前記浸透圧調整剤はグリセリン、ソルビトール、マンニトール、グルコース、塩化ナトリウム及びこれらの混合物からなる群より選ばれることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項10に記載の方法であって、前記安定剤がオレイン酸、オレイン酸ナトリウム、コレステロール、コール酸、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸、デオキシコール酸ナトリウム及びこれらの混合物からなる群より選ばれることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項10に記載の方法であって、前記防腐剤がチョウジ油、プロピレングリコール、ソルビトール、ソルビン酸、メタン酸、ブチルパラベンカルシウム、メチルパラベンナトリウム、プロピルパラベンナトリウム、ベンジルアルコール、安息香酸及びこれらの混合物からなる群より選ばれることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項10に記載の方法であって、前記共溶媒がオレイン酸エチル、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール、乳酸エチル、エタノール、1,2−プロピレングリコール、ポリエチレングリコール及びこれらの混合物からなる群より選ばれることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法であって、前記薬物がヒト又は動物の疾患の治療のための有効成分を指し、好ましくは、前記薬物が抗腫瘍薬、心血管治療薬、抗感染薬、抗真菌薬、抗ウイルス薬、抗アレルギー薬、抗炎症薬、内分泌薬、抗精神病薬、抗菌薬、免疫抑制薬、ビタミン及び麻薬からなる群より選ばれることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法であって、前記薬物搭載エマルジョンが局所投与、経口投与又は非経口投与の剤形あり、好ましくは静脈内投与、経皮投与、皮下投与、筋肉内投与、関節内投与又は胸膜内投与の剤形にあり、より好ましくは静脈内投与の剤形にあることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、前記薬物搭載エマルジョンが静脈内投与される場合には、当該エマルジョンの油滴の平均粒子径は1000 nm未満であることを特徴とする方法。


【公表番号】特表2012−528804(P2012−528804A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513464(P2012−513464)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際出願番号】PCT/CN2010/073500
【国際公開番号】WO2010/139278
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(510166892)ジエンス ヘンルイ メデイシンカンパニー リミテッド (13)
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU HENGRUI MEDICINE CO.,LTD.
【出願人】(508209602)シャンハイ ヘンルイ ファーマスーティカル カンパニー リミテッド (10)
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI HENGRUI PHARMACEUTICAL CO., LTD.
【Fターム(参考)】