説明

薬理学的に活性な化合物の塩

本発明は、少なくとも2つの薬理学的に活性な成分を含む組成物に関する。該組成物は、プロトン供与性の薬理学的に活性な成分及びプロトン受容性の薬理学的に活性な成分を中性の塩の形態中に含む。該塩は、溶媒中に溶解可能である。薬理学的に活性な成分の投与方法及び薬理学的に活性な成分を必要とする動物に、それを投与することを含む、動物における障害の治療方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つの薬理学的に活性な成分から形成される塩を含む組成物及び本発明の塩をそれを必要とする動物に投与することを含む動物における障害を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景に関する以下の議論は、単に、読者が本発明を理解することを助けるために提供されるものであり、そして、本発明に対する先行技術を記述または構成することを認められるものではない。
【0003】
動物(ヒト及び非ヒト)における細菌感染は、しばしば、激しい疼痛とそれに続く高い体温を生じる。一般に、細菌感染の治療は、疼痛を制御しそして高い体温を下げるために、抗炎症剤とともに抗感染剤及び抗菌剤の投与を含む。一般に、抗感染剤組成物は、細菌によって引き起こされた病気を治療し、そしてウイルスまたは原虫に対する有用性はないかまたは限られている。これらの組成物は、さらに抗菌剤及び抗生物質に分類される。抗菌剤は一般に、原虫、ウイルス、または真菌病原体に対する生物学的活性を有するが、細菌病原体に対しても活性を有する。
【0004】
知られた抗生物質は、例えば、アジスロマイシン、ロキシスロマイシン、チルミコシン、などのマクロライド、オキシテトラサイクリン及びドキシサイクリンなどのテトラサイクリン、エンロフロキサシンなどのフルオロキノロン、並びにセファロスポリン及びペニシリンなどのβ−ラクタム、並びにアミノグリコシドを含む。
【0005】
知られた非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDs)は、例えば、フルニキシン、カルプロフェン、イブプロフェン、ナプロキセン及びケトプロフェンを含む。これらの化合物の不利益は、それらが患者の系から比較的急速に排除され(すなわち、それらは短い半減期を有する)、そして一般に、治療効果を達成するために複数の日用量を必要とすることである。例えば、家畜における乳腺炎は、3〜4日のフルニキシン(抗炎症剤)の毎日の注射を伴う抗感染剤(単一または複数用量の、チルミコシン、オキシテトラサイクリン、ドキシサイクリンなどの好適な抗生物質)で治療される。(1.1mg/kg用量の)単一用量のフルニキシン投与の直後に、血清濃度は8〜13μg/mlの範囲のいずれかまで上昇するが、投与の4時間以内にはμグラム/ml未満まで、そして投与の6〜12時間後には検出不能なレベルまで急速に低下する。
【0006】
抗炎症剤などの薬物療法は、手術の前後の状況で外傷及び疼痛に起因しうる苦痛を軽減するために、抗感染剤と同時投与される。これらの化合物の多くは、強力なシクロオキシゲナーゼ阻害剤であり、したがって、プロスタグランジンの合成をブロックする。プロスタグランジン類は、プロトンポンプを阻害し、それによって胃酸の生成を低下させることによって胃粘膜において細胞保護的役割を演じる。それらはまた、粘膜の保護障壁及び炭酸水素塩の生成も促進する。薬物療法によるプロスタグランジン合成の阻害は、消化管潰瘍を生じさせることができる。イヌにおける試験は、例えば、2.2、6.6及び11.0mg/kgの抗炎症剤フルニキシンの経口投与後は、嘔吐、下痢、血便及び消化管潰瘍が共通していたことを示した。
【0007】
一定の薬用化合物は、注射部位反応を起こす。例えば、フルニキシンは筋肉内または皮下のいずれかにより投与された場合に組織の損傷を起こすことができ、そしてしたがって静脈内投与が一般に薦められる。オキシテトラサイクリンは、激しい注射部位の炎症そしてさらに壊死さえ起こすことができ、チルミコシンは、散逸するのに2〜3日かかるかもしれない弱い注射部位反応を引き起こすことができる。
【0008】
もし、より低頻度またはさらに「単一用量」の医薬製剤が、必要な時間にわたる制御された方法で、抗菌及び抗炎症薬両方の完全な治療計画を提供することができるなら、それは有益である。もし、そのような製剤が、抗感染剤または抗炎症剤どちらか単独の投与に関連する負の副作用なしに使用されることができるなら、それもまた有益である。
【発明の開示】
【0009】
発明の要約
本発明は、2つ以上の薬理学的に活性な成分から形成される塩を含む組成物に関する。薬理学的に活性な成分は、併合されてイオン吸引力に基づく塩を形成する。塩は、プロトン受容性の(すなわち、「塩基性」)薬理学的に活性な成分及びプロトン供与性の(すなわち、「酸性」)薬理学的に活性な成分から形成される。1つの実施態様において、塩はプロトン受容性または塩基性の抗生物質(例えば、アジスロマイシン、ロキシスロマイシン、チルミコシン、オキシテトラサイクリン、及びドキシサイクリン)とプロトン供与性または酸性の抗炎症剤(例えば、フルニキシン、カルプロフェン、及びナプロキセン)を併合することによって形成される。塩の形成は、塩の形成以外の薬理学的に活性な成分の構造のいかなる化学的修飾も含まない。1つの実施態様においては、塩は固体である。他の実施態様においては、塩は、水混和性の有機溶媒(例えば、プロピレングリコール、グリセロールフォーマル(glycerol formal)、N-メチルピロリドン(NMP)、エタノール、及びポリエチレングリコール(PEG))、または非水混和性の溶媒(例えば、ミリスチン酸イソプロピル、乳酸エチル、ヒマシ油、サフラワー油、及び大豆油)などの医薬として許容可能な溶媒に溶解される。塩及び医薬として許容可能な溶媒を含む組成物は、真の注射可能な溶液であることができるが、懸濁液及び局所、経口、または鼻腔内送達などの他の送達手段も考慮される。薬理学的に活性な成分は、「遊離」または塩形態に比べて非結合形態にあるとき、典型的には異なる純電荷を有する。少なくとも1つの薬理学的に活性な成分はプロトン供与体であり、少なくとも1つはプロトン受容体である。
【0010】
したがって、第1の側面において、本発明は、プロトン供与性の薬理学的に活性な成分及びプロトン受容性の薬理学的に活性な成分の塩を含む。1つの実施態様において、プロトン供与性の薬理学的に活性な成分は抗炎症活性を有する。様々な実施態様において、薬理学的に活性な成分は抗感染剤、抗菌剤、または抗生物質であることができる。1つの実施態様において、プロトン供与性の薬理学的に活性な成分は、イオン吸引力によって、プロトン受容性の薬理学的に活性な成分に結合される。
【0011】
様々な実施態様において、プロトン供与性の薬理学的に活性な成分は、フルニキシン、カルプロフェン、ナプロキセン、イブプロフェン、ジクロフェナック、またはケトプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)であり;プロトン受容性の薬理学的に活性な成分は、アジスロマイシン、ロキシスロマイシン、チルミコシン、オキシテトラサイクリン、またはドキシサイクリンなどの抗生物質である。本発明の1つの実施態様において、プロトン供与性の薬理学的に活性な成分はフルニキシンであり、プロトン受容性の薬理学的に活性な成分はチルミコシンである。組成物は、注射可能な組成物または懸濁液として、医薬として許容可能な担体中で提供されることができる。好ましい実施態様において、組成物はさらに、水中へ注入されたときに沈殿する、医薬として許容可能な有機溶媒を含む。注射可能な組成物は、真の溶液であることができる。様々な実施態様において、組成物は液体、懸濁液、または溶液の形態で提供される。組成物はまた、固体(例えば、結晶)または注射可能な製剤としても提供されることができる。チルミコシン−フルニキシンは、本発明の塩の例である。
【0012】
「注射可能な製剤」または「注射可能な組成物」によって、注射可能な、すなわち、シリンジに引き込まれそして、組成物中の固体物質の存在による有害作用を引き起こさずに、動物に皮下注射、腹腔内注射、または筋肉内注射される、製剤または組成物が意味される。固体物質は、結晶、ゴム状の集団、及びゲルを含むが、これらに限定されない。
【0013】
本明細書中で使用される「懸濁液」という用語は、水性または非水性であることのできる溶媒中に均一に分散された固体粒子を意味する。1つの実施態様において、粒子は、Microtrac Inc. of Montgomeryville, PA.などから商業的に入手可能な粒子サイズ分析機を用いて約100μm未満であると測定される、平均粒子サイズを有する。
【0014】
「薬理学的に活性な」によって、化合物または成分が、治療される動物において薬理学的効果を生じることが意味される。例えば、該効果は、治療される動物における細菌、寄生生物、若しくは真菌の増殖を破壊、妨害、若しくは予防すること、または、動物の組織における炎症を軽減すること、或いは、治療された動物における他の薬理学的、治療的に有意かつ測定可能な効果であることができ、そして合理的な便益/リスク比を有する。合理的な便益/リスク比は、少ないまたは最少のそして医学的に許容可能なリスク(すなわち、該化合物の使用に関連する有意かつ負の効果の低い発生率及び重篤度)を伴う、該化合物の使用によって得られる有意な利益(例えば、治療を必要とする病気または状態の有効な治療)をさす。この定義の目的のためには、無機イオン(例えば、Na、Cl、Mg、Mn)は通常は治療的に有用でなく、治療される動物において薬理学的効果を有さないため、薬理学的に活性でない。
【0015】
「水混和性」は、2つの相が分離せずにその溶媒がいかなる比率で水と混合することもできることを意味する。「水溶解性」は、その溶媒が水性溶液中でのなんらかの有意なレベルの溶解性を有することを意味し、例えば、トリアセチンは約1:14までの比率で水に溶解可能であるため、水溶解性であると考えられる。「真の溶液」は、懸濁された粒状物を実質的に含まない溶液を意味する。「懸濁された粒子を実質的に含まない」とは、製剤を37℃の周囲温度でフィルターを通して濾過した場合に、製剤の10%以下が0.22μmフィルター上に保持されることを意味する。
【0016】
他の実施態様においては、プロトン供与性またはプロトン受容性の薬理学的に活性な成分は、例えば、セレコキシブなどのCOX-2阻害剤或いはマクロライド、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、エンロフロキサシンなどのフルオロキノロン、セファロスポリン、ペニシリン、などのβラクタム、アミノグリコシド、または抗真菌剤(例えば、テルビナフィン)である。プロトン供与性または受容性の薬理学的に活性な成分として使用可能な他の分子は、NSAIDsフェニルブタゾン、トルフェナミン酸、ジクロフェナック、及びベダプロフェンを含む。
【0017】
他の実施態様においては、組成物はさらに、プロトン供与性の薬理学的に活性な成分またはプロトン受容性の薬理学的に活性な成分及び親油性の対イオン、すなわち親油性分子に由来する対イオン、から作られる塩を含む。親油性の対イオンは、例えば、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21または22個のような、8及び22の間のいかなる特定の炭素数の飽和または不飽和脂肪酸の陰イオンであることもできる。代表的なC8〜C22脂肪酸は、カプロン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、パルミックアシッド(palmic acid)、オレイン酸、リノール酸、及びリノレン酸を含むが、これらに限定されない。1つの実施態様において、脂肪酸は、C8〜C18脂肪酸であり、他の実施態様においては、ラウリン酸、リノール酸、デカン酸、ミリスチン酸、またはオレイン酸などのC10〜C18脂肪酸である。他の親油性の酸、例えば、ジカルボン酸、親油性ポリカルボン酸、及び芳香族酸もまた、使用されることができる。代表的なジカルボン酸は、セバシン酸である。代表的な芳香族酸は安息香酸である。代表的なポリカルボン酸は、ポリアスパラギン酸、ポリアクリル酸、ポリセバシン酸、ポリ安息香酸、またはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0018】
塩基性の親油性分子もまた、親油性の対イオンを形成するために使用されることができる(すなわち、酸性の薬理学的に活性な成分によってプロトン化されることによって)。代表的な塩基性の親油性分子は、スフィンゴミエリン及び長鎖脂肪族アミン(例えば、8及び22個の間の炭素を有するアミン)を含むが、これらに限定されない。
【0019】
さらに他の実施態様においては、本明細書に記載のいかなる塩の混合物も組成物中で提供されることができる。
【0020】
したがって、プロトン供与性及びプロトン受容性の薬理学的に活性な成分の塩を含み、また、プロトン供与性またはプロトン受容性の薬理学的に活性な成分と親油性の対イオンの1つ以上の塩、そしてそれらの組み合わせを含む、組成物が考慮される。「親油性の対イオン」により、脂溶性の分子のイオン形態が意味される。親油性対イオンは、脂肪酸の陰イオンであることができるが、プロトン化長鎖脂肪族アミンなどの脂溶性の他の分子であることもできる。親油性分子は、プロトン供与体またはプロトン受容体であることができる。親油性分子の特別な水/オクタノール分配係数は変動するであろう。1つの実施態様において、親油性分子は、100以上の水/オクタノール分配係数を有する。他の実施態様において、該係数は50以上(安息香酸など)、または40以上、または25以上、または10以上である。
【0021】
1つの実施態様において、プロトン供与性の薬理学的に活性な成分はフルニキシンであり、プロトン受容性の薬理学的に活性な成分はチルミコシンである。しかし、チルミコシンは2つの塩基性アミン部分を有し、したがってフルニキシンの2つの分子と塩を形成することができる。しかしながら、本発明の塩製剤は2当量未満のフルニキシンをチルミコシン1当量あたりで有することがしばしば望ましい。2当量未満のフルニキシンがチルミコシン−フルニキシン塩を形成するために使用される場合(例えば、1当量のフルニキシン及び1当量のチルミコシン)、いくつかのチルミコシン分子が2回プロトン化され、そして、他のチルミコシン分子は全くプロトン化されない、言い換えれば、すべてのチルミコシン分子が1回プロトン化されるわけではない。この場合、プロトン化されないチルミコシン分子は所望の速度よりも速く製剤から放出されることができる。これを防ぐかまたは制御するために、脂肪酸などの親油性の酸が使用されてチルミコシン分子のいくつかをプロトン化する。例えば、該塩は1当量のフルニキシン、1当量の脂肪酸、及び1当量のチルミコシンを含むことができる。これは、チルミコシンの各分子が両方の塩基性部位でプロトン化されることを確かにする。
【0022】
本発明の他の側面は、薬理学的に活性な組成物を動物に投与することを含む、動物の状態を治療する方法を提供する。該方法は、該動物に上記の本発明の組成物を投与することを含む。1つの実施態様においては、固体組成物が、動物の皮膚の下に該固体を移植することによって投与される。さらに医薬として許容可能な有機溶媒を含む組成物は、注射によって投与されることができる。他の実施態様においては、プロトン供与性の薬理学的に活性な成分及びプロトン受容性の薬理学的に活性な成分は、本発明の塩として投与された場合、遊離の形態で投与された場合よりもより遅い動物中での放出動態を有する。さらに他の実施態様においては、医薬として許容可能な有機溶媒をさらに含む組成物は、注射され、薬理学的に活性な成分を時間の経過とともに動物の血液中または組織中へ放出する薬物デポーを動物中で形成する。「遊離の形態」は、薬理学的に活性な成分の非イオン性形態を意味する。
【0023】
「塩」は、イオン吸引力によって化学結合した2つの化合物を意味する。吸引力は、イオン結合及び水素結合の組み合わせの結果であることもでき、そして部分的な共有結合特性を有することもできる。したがって、例えば、フルニキシン及びチルミコシンの塩は、イオン吸引力によってチルミコシンに結合したフルニキシンを意味する。この定義に関しては、本分野の当業者には、化学結合がしばしば共有結合だけでもイオン結合だけでもないということは理解されている。したがって、結合(または引力)が「イオン性」であるとされた場合、それは、結合された種の間の引力の少なくとも90%がイオン吸引により生じることを意味する。1つの実施態様においては、結合種間の引力の好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、又は最も好ましくは少なくとも99%がイオン吸引により生じる。結合が「共有結合」であるとされる場合、結合種間の引力の少なくとも90%が共有結合により生じる。1つの実施態様においては、結合種間の引力の少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、または最も好ましくは少なくとも99%が共有結合による引力から生じる。「陽性に荷電」は、分子または薬理学的に活性な成分が陽性純電荷を有することを意味する。「陰性に荷電」は、分子または薬理学的に活性な成分が陰性純電荷を有することを意味する。様々な分子が陽性電荷または陰性電荷を有する分子の部分を有することができるにもかかわらず、「陽性に荷電」及び「陰性に荷電」についての定義は全体としての分子に関することを意味する。「酸性」により、プロトン供与体である化合物の形態が意味される。「塩基性」により、プロトン受容体である化合物の形態が意味される。「プロトン供与体」によって、(時にBronstedの酸も意味する)H+イオンまたはプロトンを失うことのできるイオンまたは分子が意味される。「プロトン受容体」によって、H+イオンまたはプロトンを得ることのできるイオンまたは分子が意味される。プロトン供与体及びプロトン受容体は塩を形成することができ、そしてイオン吸引力によって結合される。「結合」によって、共有結合、イオン性またはH-結合のいずれかのある種の化学結合によって構成要素が結合させられることが意味される。
【0024】
「抗感染剤」は、感染性物質の拡がりを阻害し、または感染性物質を全部殺すことによって感染に対して作用する化学物質を意味する。抗感染剤は、抗細菌剤、抗生物質、抗真菌剤、抗原虫剤、及び抗ウイルス剤を包含する一般的な用語である。「抗菌剤」は、微生物を破壊またはその増殖を阻害する化学物質を意味する。「抗生物質」は、他の微生物、特に細菌を殺すかまたは増殖を遅くする、カビまたは細菌から作られる抗菌剤である。例は、ペニシリン、ストレプトマイシン、アジスロマイシン、ロキシスロマイシン、チルミコシン、オキシテトラサイクリン、及びドキシサイクリンを含む。「抗真菌剤」は、1つ以上の真菌を破壊またはその増殖を妨害する化学物質である。
【0025】
「沈殿」は、溶液または懸濁液から不溶性の固体として分離された物質を意味する。
【0026】
「医薬として許容可能な溶媒」は、本発明の塩を溶解し、そしてヒト及び/または動物に、(毒性、刺激、及びアレルギー応答などの)過度の有害な副作用なしに使用するのに好適であり、そして合理的な便益/リスク比とつりあうものである。
【0027】
「放出動態」という用語は、医薬として活性な分子が動物の血液または組織中へ放出される時間経過である。
【0028】
「薬物デポー」は、治療される動物の体内の薬理学的に活性な成分の濃縮物または沈殿であって、時間の経過とともに活性化合物の医薬としての有効量を放出するものを意味する。「医薬としての有効量」は、測定可能で医学的に有意な効果を治療される動物に表し、結果として対象の病気の治癒、抑止または予防を進行させ、或いは治療の理由である状態を緩和または予防する量を意味する。
【0029】
様々な他の側面において、本発明は動物における疼痛の治療方法、動物における炎症の治療方法、動物への抗生物質の投与方法、動物への抗感染剤の投与方法、動物における細菌感染の治療方法、及び動物における(肺など)真菌感染の治療方法を提供する。これらのすべての方法は、本発明の組成物を動物に投与することによって達成される。投与様式は、皮下、真皮下、腹腔内、胸膜内及び他の注射形態などのいずれの注射形態であることもできる。医薬組成物は、局所的、経口、または鼻腔内にも投与されることができる。1つの実施態様において、細菌または真菌感染は、肺の感染である。様々な実施態様において、動物は、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、両生類、爬虫類、または鳥類であることができる。1つの実施態様において、動物は哺乳動物である。1つの実施態様において、動物はヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、またはブタである。
【0030】
他の側面において、本発明は、組成物の製造方法を提供する。該方法は、プロトン供与性(または「酸性」)の薬理学的に活性な成分及びプロトン受容性(または「塩基性」)の薬理学的に活性な成分を接触させて塩を提供することを含む。1つの実施態様において、該方法はさらに、溶媒中でプロトン供与性の薬理学的に活性な成分及びプロトン受容性の薬理学的に活性な成分を接触させることを含む。1つの実施態様において、該溶媒は医薬として許容可能な溶媒である。固体形態は、該溶媒を単に蒸発させて固体剤型を提供することによって得られる。代表的な溶媒は、グリセロールフォーマル、プロピレングリコール、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセタミド、及びポリエチレングリコールを含むがこれらに限定されない。プロトン供与性の薬理学的に活性な成分及びプロトン受容性の薬理学的に活性な成分は、本明細書中に特定されたもののようないかなるプロトン供与性及びプロトン受容性の薬理学的に活性な化合物であることもできる。上記方法によって形成される組成物は、本明細書中で特定されるいずれであることもできる。
【0031】
上記の本発明の要約は、限定的なものではなく、そして本発明の他の特徴及び利益は、以下の好ましい実施態様の詳細な説明並びに請求項から明らかとなるであろう。
【0032】
好ましい実施態様の詳細な説明
本発明は、2つ以上の薬理学的に活性な成分から形成される塩を含む組成物に関し、ここで、該薬理学的に活性な成分の少なくとも1つはプロトン供与体(すなわち、酸性)であり、他の薬理学的に活性な成分はプロトン受容体(すなわち、塩基性)である。本発明はさらに、薬理学的に活性な成分の投与方法およびそれを必要とする動物に本発明の塩を投与することを含む動物における障害の治療方法に関する。本明細書中で使用される「状態」という用語は、体の機能、系、又は器官の妨害、休止又は障害を意味し、そして病気、欠陥、及び障害を含む。代表的な状態は、細菌、ウイルス、酵母、及び寄生生物感染などの感染;癌などの病気;炎症;糖尿病;及び器官不全症を含むが、これらに限定されない。1つの実施態様において、上記塩は、プロトン供与性(又は「酸性」)の抗炎症剤(例えば、フルニキシン、カルプロフェン、及びナプロキセン)とプロトン受容性(又は「塩基性」)の抗菌剤(例えば、アジスロマイシン、ロキシスロマイシン、チルミコシン、オキシテトラサイクリン及びドキシサイクリン)を併合することにより形成される。該2つの薬理学的に活性な成分は、純電荷ゼロの中性の塩を形成する。1つの実施態様においては、該塩は、塩の形成以外は薬理学的に活性な成分の構造に対するいかなる化学的修飾もなしに形成される。本明細書中に開示される塩は、水混和性の有機溶媒などの薬理学的に許容可能な溶媒中で提供されることができる。例えば、水混和性の溶媒は、ピロリドン、N-メチルピロリドン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール(例えば、安定化剤を含むか含まずに、グリセロールフォーマル中に約10%)、グリセロールフォーマル、イソソルビドジメチルエーテル、エタノール、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフルフリルアルコール、トリアセチン、又はこれらのいかなる併合比率のいかなる組み合わせ、或いは水中で無毒性かつ溶解性であるような同様の許容可能な性質を有することがわかった他の溶媒であることができる。該溶媒は非水混和性の溶媒であることもできる。例えば、非水混和性の溶媒は、ミリスチン酸イソプロピル、乳酸エチル、ヒマシ油、サフラワー油、大豆油、ソーフラワー油(saw flower oil)、ヒマシ油、綿実油、コーン油、ヒマワリ油、ピーナツ油、オリーブ油、中鎖又は長鎖脂肪酸、オレイン酸エチル、リノール酸、パルミチン酸イソプロピル、グリセロールエステル、ポリオキシル水素化ヒマシ油、肝油、魚由来の油、ココナツ油、又はこれらの組み合わせであることができる。他の非水混和性溶媒も、本発明において用途を見出すものとして同定されることができる。1つの実施態様において、活性化合物及び非水混和性の溶媒は、清澄な真の溶液を室温で形成する。
【0033】
1つの実施態様において、塩と溶媒の併合は、真の注射可能な溶液を生じるが、懸濁液及び局所、経口または鼻腔内送達などの他の送達手段が考慮される。
【0034】
本発明の他の実施態様においては、追加の対イオンが組成物中に存在して、本発明の塩を含む剤型からの薬理学的に活性な成分の放出動態を制御する。チルミコシン及びフルニキシンの塩の場合、2モル当量のフルニキシンが1モル当量のチルミコシンと塩を形成する。さらなるいくつかの実施態様においては、チルミコシンに比べてより多量の/より少量のフルニキシンを投与することが望ましい。したがって、組成物は、プロトン供与性及び/またはプロトン受容性の薬理学的に活性な成分を置換するための追加の対イオンを含むことができる。追加の対イオンは、上記の脂肪酸の陰イオンなどの親油性の対イオンであることができる。より少量の酸性の薬理学的に活性な成分を投与することが望ましい場合、脂肪酸は酸性の薬理学的に活性な成分を置換するための必要量に含まれる。したがって、チルミコシン−フルニキシン塩中のフルニキシンの量を減らそうとする場合、ある量の脂肪酸がフルニキシンの適切な量の代わりに組成物中に供給される。
【0035】
本発明のさらに他の実施態様においては、第3のプロトン供与性またはプロトン受容性の薬理学的に活性な成分が組成物中に提供される。第3の薬理学的に活性な成分は、組成物中の他の薬理学的に活性な成分と塩を形成することができる。例えば、2当量のフルニキシンが1当量のチルミコシンにとって必要である場合、フルニキシンのうちの1当量(またはそのいかなる部分も)が他のプロトン供与性の薬理学的に活性な成分(例えば、カルプロフェンまたはナプロキセン)で置換されることができる。したがって、形成された塩はフルニキシンとチルミコシンの塩、及び第2のプロトン供与性の薬理学的に活性な成分(例えば、カルプロフェンまたはナプロキセン)とチルミコシンの塩を含むであろう。プロトン供与性及びプロトン受容性の薬理学的に活性な成分のいかなる組み合わせも組成物中で提供されて、所望の効果を達成することができる。追加の薬理学的に活性な化合物が望まれない場合、脂肪酸または他の親油性の対イオンもまた、上記のように置換されることができる。
【0036】
なおさらなる実施態様においては、過剰の薬理学的に活性な成分が提供されて、治療される動物において活性の最初の「突発出現」を与える。したがって、チルミコシンとフルニキシンの塩が提供され、フルニキシン濃度の最初の突発出現が望ましい場合、モル過剰のフルニキシンが最初の突発出現にとって望ましい量で提供される。したがって、チルミコシン/フルニキシン塩が投与されて、治療される動物の組織中で薬物デポーを形成するであろうが、一定量の遊離形態のフルニキシンがただちに治療される動物の系にとって利用可能となり、フルニキシンの最初の突発出現濃度を形成する。
【0037】
特別な理論にとらわれることを望まずに、プロトン供与性の薬理学的に活性な成分とプロトン受容性の薬理学的に活性な成分との塩の溶液が、(水混和性溶媒などの)医薬として許容可能な溶媒中に溶解または懸濁され、そして患者に注射される場合、可溶性の溶媒が注射部位から拡散して、上記塩を含む薬物デポーを形成すると考えられる。プロトン供与性及びプロトン受容性の薬理学的に活性な成分は通常、平衡状態で溶液中に存在し、ここで、薬理学的に活性な成分のいくらかは常に塩の形態で、そしていくらかは遊離形態で存在する。時間の経過につれて、塩は動物の体内で好適な対イオンと再平衡化し、そして両方の薬理学的に活性な成分が、制御された徐放性の方式で放出される。
【0038】
本発明によっていくつかの利益が得られる。例えば、以下に示すように、本明細書の開示にしたがって製造されたチルミコシン−フルニキシン塩の単一用量の注射が、4日以内、または5日以内、または6日以内などの一定の日数の期間、治療される動物の血中または組織中に存在した抗炎症性のフルニキシンの医薬としての有効量を提供することが実証された。従来の方法によって投与されたフルニキシン注射は、慣用の様式で投与された場合、通常、医薬としての有効量で組織中に6〜12時間しか存在しない。他の実施態様においては、他の薬理学的に活性な化合物が、動物の血中または組織中に医薬としての有効量で、特定の薬理学的に活性な化合物によって、4日以内、6日以内、8日以内、10日以内または12日以内、または15日以内または18日以内または20日以内または25日以内または30日以内などの異なる期間存在する。
【0039】
薬理学的に活性な化合物の毒性も、本発明によって投与された場合、軽減される。以下の実施例11は、(本明細書の開示にしたがって調製した)チルミコシン−フルニキシン塩をイヌに1週間の間隔で8mg/kgの用量で皮下注射によって3回繰り返し投与した場合(すなわち、1週間に1用量で3週間)、毒性も注射部位反応もなかったことを示している。イヌの完全な剖検はさらに、胃腸管を含むいかなる器官にも有害な効果がなかったことを実証した。また、上記のように、フルニキシン注射とチルミコシン注射は注射部位反応を起こすことが知られている。本発明によって調製され、投与されたチルミコシン−フルニキシン塩の場合にはそれがない。
【0040】
以下の実施例は、本発明の様々な組成物がいかに首尾よく調製されたかを例解する。これらの実施例は、単に例示のためであり、そして限定的であることを意図しない。本明細書の開示を参照すれば、本分野の当業者は多くの異なる組成物が本発明の方法を用いて形成可能であり、そしてこれらも本発明の範囲に包含されることを認識するであろう。
【実施例】
【0041】
実施例1:アジスロマイシン−フルニキシンの組み合わせ
この実施例は、アジスロマイシン及びフルニキシンを含む本発明の組成物をいかに調製するかを例解する。20グラムのアジスロマイシン二水和物及び15.46グラムのフルニキシンを重量を量って100mLのメスフラスコに入れた。これらの固体に、5mLのプロピレングリコールを加え、その後、安定化させたグリセロールフォーマルを体積で75%まで加えた。フラスコを約15分間ソニケーションし、そして、清澄な溶液が得られるまでシェーカー上に放置した。最後に、安定化させたグリセロールフォーマルで体積を100mLにして、均一な溶液を得るまでよく混合した。
【0042】
実施例2:ロキシスロマイシン−フルニキシンの組み合わせ
この実施例は、ロキシスロマイシン及びフルニキシンを含む本発明の組成物をいかに調製するかを例解する。5グラムのロキシスロマイシン及び2.16グラムのフルニキシンを重量を量って25mLのメスフラスコに入れた。これらの固体に、1.25mLのプロピレングリコールを加え、その後、安定化させたグリセロールフォーマルを体積で75%まで加えた。フラスコを約15分間ソニケーションし、そして、清澄な溶液が得られるまでシェーカー上に放置した。最後に、安定化させたグリセロールフォーマルで体積を25mLにして、均一な溶液を得るまでよく混合した。
【0043】
実施例3:オキシテトラサイクリン−フルニキシンの組み合わせ
この実施例は、オキシテトラサイクリン及びフルニキシンを含む本発明の組成物をいかに調製するかを例解する。7.5グラムのオキシテトラサイクリン及び4.822グラムのフルニキシンを重量を量って50mLのメスフラスコに入れた。これらの固体に、N-メチルピロリドン(NMP)を体積で90%まで加えた。フラスコを約15分間ソニケーションし、そして、清澄な溶液が得られるまでシェーカー上でさらに30分間放置した。最後に、NMPで体積を50mLにして、均一な溶液を得るまでよく混合した。
【0044】
実施例4:ドキシサイクリン−フルニキシンの組み合わせ
7.5グラムのオキシテトラサイクリン及び4.8グラムのフルニキシンを重量を量って50mLのメスフラスコに入れた。これらの固体に、N-メチルピロリドン(NMP)を体積で90%まで加えた。フラスコを約15分間ソニケーションし、そして、清澄な溶液が得られるまでシェーカー上でさらに30分間放置した。最後に、NMPで体積を50mLにして、均一な溶液を得るまでよく混合した。
【0045】
実施例5:チルミコシン−フルニキシンの組み合わせ
方法A:7.5グラムのチルミコシン及び5.37グラムのフルニキシンを重量を量って50mLのメスフラスコに入れた。これらの固体に、2.5mLのプロピレングリコール、続いて安定化させたグリセロールフォーマルを体積で75%まで加えた。フラスコを約15分間ソニケーションし、そして、清澄な溶液が得られるまでシェーカー上でさらに放置した。最後に、安定化させたグリセロールフォーマルで体積を50mLにして、均一な溶液を得るまでよく混合した。
【0046】
方法B:10グラムのチルミコシン及び7.161グラムのフルニキシンを重量を量って50mLのメスフラスコに入れた。これらの固体に、NMPを体積で75%まで加えた。フラスコを約15分間ソニケーションし、そして、清澄な溶液が得られるまでシェーカー上でさらに放置した。最後に、NMPで体積を50mLにして、均一な溶液を得るまでよく混合した。
【0047】
実施例6:チルミコシン−カルプロフェン−リノール脂肪酸の組み合わせ
7.5グラムのチルミコシン、2.362グラムのカルプロフェン及び2.54グラムのリノール酸を重量を量って50mLのメスフラスコに入れた。この混合物に、2.5mLのプロピレングリコール、続いて安定化させたグリセロールフォーマルを75%の体積となるまで加えた。フラスコを約15分間ソニケーションし、そして、清澄な溶液が得られるまでシェーカー上でさらに放置した。最後に、安定化させたグリセロールフォーマルで体積を50mLにして、均一な溶液を得るまでよく混合した。
【0048】
実施例7:チルミコシン−フルニキシン−脂肪酸の組み合わせ
7.5グラムのチルミコシン、2.56グラムのフルニキシン、及び2.54グラムのリノール酸を重量を量って50mLのメスフラスコに入れた。この混合物に、2.5mLのプロピレングリコール、続いて安定化させたグリセロールフォーマルを75%の体積となるまで加えた。フラスコを約15分間ソニケーションし、そして、清澄な溶液が得られるまでシェーカー上でさらに放置した。最後に、安定化させたグリセロールフォーマルで体積を50mLにして、均一な溶液を得るまでよく混合した。
【0049】
実施例8:チルミコシン−ナプロキセンの組み合わせ
7.5グラムのチルミコシン及び4.17グラムのナプロキセンを重量を量って50mLのメスフラスコに入れた。これらの固体に、N-メチルピロリドン(NMP)を90%の体積となるまで加えた。フラスコを約15分間ソニケーションし、そして、清澄な溶液が得られるまでシェーカー上でさらに30分間放置した。最後に、NMPで体積を50mLにして、均一な溶液を得るまでよく混合した。
【0050】
実施例9:テルビナフィン−フルニキシンの組み合わせ
7.5グラムのテルビナフィン及び8.0グラムのフルニキシンを重量を量って50mLのメスフラスコに入れた。これらの固体に、N-メチルピロリドン(NMP)を90%の体積となるまで加えた。フラスコを約15分間ソニケーションし、そして、清澄な溶液が得られるまでさらに30分間シェーカー上で放置した。最後に、NMPで体積を50mLにして、均一な溶液を得るまでよく混合した。
【0051】
実施例10:チルミコシン−フルニキシン−デカン酸脂肪酸組成物
82.97グラムのチルミコシン、53.7グラムのフルニキシン、及び31.23グラムのデカン酸を重量を量って、清潔な乾燥した500mLのメスフラスコに入れた。25mLのプロピレングリコールをピペットでフラスコに入れ、続いてグリセロールフォーマルを体積の75%とした。フラスコをシェーカー上におき、約30分間、時々ソニケーションして清澄な溶液とした。その後、フラスコを500mLまでグリセロールフォーマルで満たした。
【0052】
実施例11:放出動態の調節
薬理学的に活性な成分の放出動態は、以下の変数を変更することによって調節されることができる。1つの変数は、プロトン供与性の薬理学的に活性な成分の、プロトン受容性の薬理学的に活性な成分及びそのような置換が起こる場合にはプロトン供与性の薬理学的に活性な成分を一部置換した脂肪酸に対する比率である。この実施例では、チルミコシンが塩基性であり、フルニキシンが酸性である。2当量のフルニキシンが、2つの塩基性の3級窒素を有するチルミコシンを中和するのに必要である。脂肪酸は、塩形成においてプロトン供与性成分としてフルニキシンを部分的に置換し、それによってインビトロの放出動態に影響を与えるのに使用可能である。チルミコシン:フルニキシン:ラウリン酸を1:1:1及び1:2:0の比率で使用して、2つの製剤を作った。時間の関数としてのチルミコシン及びフルニキシンの放出速度を、密封した透析バッグ中に各1mLアリコートの得られた製剤をいれ、そして、150mLのpH7.4のリン酸緩衝生理食塩水を入れたフラスコ中に透析バッグを吊るすことによって決定した。約1時間以内に透析バッグ中に沈殿の形成を観察した。食塩水のアリコートを様々な間隔で取り出し、そして食塩水中のチルミコシンの濃度を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて決定した。
【0053】
HPLC分析のために、100μLを1.7mL/分の流速で操作したPhenomenex Luna 5μMフェニルへキシル100A、250×4.6mm分析カラム上に注入した。HPLCを285nmで操作したUV検出器にインターフェースした。以下のプロフィールによって、HPLCカラムをグラジエント溶出した。
時間 パーセントポンプA パーセントポンプB
0 30 70
10.5 85 15
ここで、ポンプA中の溶媒は、pH2.4の25mMリン酸緩衝液であり、ポンプB中の溶媒はアセトニトリルであった。総流出時間は25分であった。その後、フルニキシンまたはチルミコシンに相当するHPLCピークについての曲線の下の面積を、リン酸緩衝生理食塩水中の既知の濃度のフルニキシンまたはチルミコシンの標準曲線のピーク面積に比較することによって、フルニキシン及びチルミコシンの血清濃度を決定した。以下の濃度:4、2、1、0.5及び0μg/mLの濃度のフルニキシン及びチルミコシンを使用して、標準曲線を作成した。
【0054】
図1及び2に示すように、結果は、1つの薬理学的に活性な成分を部分的に置換した脂肪酸を含む製剤が、脂肪酸を含まないものよりも薬理学的に活性な成分を速く放出することを示した。
【0055】
使用する脂肪酸の疎水性炭素鎖長は、放出動態を調節するのに使用可能な他の変数である。デカン酸、ラウリン酸、リノール酸などの脂肪酸は本発明における用途を見出す。脂肪酸のより長い鎖長は、より遅い放出動態と相関する。したがって、18個の炭素を有するリノール酸は、12個の炭素を有するラウリン酸よりもより遅い放出動態を有するであろう。
【0056】
薬理学的に活性な成分の放出動態を調節するために使用可能な他の変数は、使用される医薬として許容可能な溶媒、及び製剤の濃度を含む。
【0057】
実施例12:イヌにおけるインビボ試験
イヌに本発明によって調製したチルミコシン−フルニキシン塩(1:2の比率)の製剤(実施例5aを参照のこと)を8mg/kgの用量で3つの相において皮下注射した。相の間で1週間の間隔を用い、血清サンプルを集めて、HPLCによってチルミコシン及びフルニキシンについてアッセイした。
【0058】
血液サンプルを処理し、そして以下の手順にしたがって、チルミコシン及びフルニキシンについて分析した:
(i)重力にしたがって、1mLのメタノール及び1mLの脱イオン水を流して洗浄することによって、Strata X-C 33μm Cation Mixed -Mode Polymer 30mg/mLカートリッジを馴化し;
(ii)20μlのリン酸で酸性化した血清1mLを上記馴化カートリッジに適用し;
(iii)1mLの0.1%H3PO4/H2O、1mLのアセトニトリル、及び2mLのメタノールでカラムを洗浄し;
(iv)4mLのメタノール中アンモニア(メタノール中、15%の2M NH4OH)でカラムを溶出し;
(v)窒素ガス流を用いて、溶出液から溶媒を除去し;そして
(vi)得られた残渣を1mLの50:50メタノール/pH2.3の50mMリン酸緩衝液で再構成し、そして実施例11で記載したHPLC法を用いてHPLCによって分析した。
【0059】
フルニキシン及びチルミコシンについての血清の分析を表1に表す。
【表1】

【0060】
第28日に、動物をと殺し、そして完全な剖検を行って、大用量のフルニキシンが胃腸管または肝臓、腎臓、肺及び心臓などの他の臓器になんらかの有害な効果をもたらしたか否かを判定した。血清サンプルの分析は、フルニキシンが生理学的に関連する濃度で4日間にわたって放出されたことを示唆した。剖検の結果は、胃腸管を含む検査したいかなる器官にもいかなる有害な効果の徴候もなかったことを示した。さらに、注射部位において、有意な反応は観察されなかった。
【0061】
実施例13:子ウマにおけるインビボ試験
ロドコッカス・エクイ(Rhodococcus equi)に感染した300ポンド(136キログラム)の子ウマをチルミコシン及びフルニキシンの組み合わせで治療した。第1日目に、子ウマに実施例5aのチルミコシン/フルニキシン製剤10mLの皮下注射2回を、首の各側に1回で投与した(総注射容量20mL)。第7日目に、さらに20mL用量を、胸の各側の10mLの皮下注射として投与した。これは、1用量あたり、10mg/kgのチルミコシン及び7.16mg/kgのフルニキシンと同等である。血液サンプルを異なる時点で採取し、チルミコシン及びフルニキシンの両方について分析した。血液サンプルを実施例12に記載のとおりに処理し、そして分析した。時間の関数としての血液中のチルミコシン及びフルニキシン濃度を図12に表す。図12に示したデータは、チルミコシン及びフルニキシンが各投与後の7日間にわたって徐々に放出されることを示す。
【0062】
治療前(図13a)及び治療後(図13b)の子ウマの肺のラジオグラフィーは、子ウマが治療に応答したことを示す。
【0063】
実施14:イヌにおけるインビボ試験
4頭のイヌそれぞれに、(実施例10に記載のとおりに調製した)チルミコシン:フルニキシン:デカン酸が1:1:1の製剤を注射して、11.2mg/kgのチルミコシンの用量及び8mg/kgのフルニキシンの用量を提供した。血液サンプルを異なる時点で採取し、チルミコシン及びフルニキシンの両方について分析した。血液サンプルを実施例12に記載のとおりに処理し、そして分析した。時間の関数としての血液中のチルミコシン及びフルニキシン濃度を図14に表す。図14に示したデータは、チルミコシン及びフルニキシンが3日及び4日の間の期間にわたって生理学的に有意なレベルで時間の経過とともに徐々に放出されることを示す。
【0064】
対照的に、1mg/kgの単一用量の商業的に入手可能なフルニキシン(Flunixamine(登録商標)、Phoenix Scientific, Inc.から商業的に入手可能)を8mg/kgの用量でイヌに皮下注射で投与すると、3時間で21.5μg/mLのCMaxという結果となり、そして6時間後にはμg/mL未満まで急速に低下し、注射の12時間後には血液中で検出不可能である。血中のフルニキシン濃度対時間のプロットを図15に提供する。
【0065】
本発明が、当業者がそれを製造しそして使用することができるように記載され、そして十分に詳細に例示された一方、本発明の精神及び範囲から離れることのない様々な変更、修飾及び改善が明らかであるはずである。
【0066】
当業者は、本発明が目的を実施し、そして示された結果及び利益並びにそれらに固有のものを得るためによく適合されていることを容易に理解するであろう。その中の修飾及び他の用途を当業者は思いつくであろう。これらの修飾は、本発明の精神に包含され、そして請求の範囲によって定義される。
【0067】
異なる置換及び修飾が、本発明の範囲及び精神を離れることなく本明細書中に開示された発明に対して行われうることは、容易に当業者に明らかとなるであろう。
【0068】
明細書中で示されたすべての特許及び刊行物は、本発明が属する分野の当業者のレベルの指標である。
【0069】
本明細書中に例示的に記載された発明は、本明細書中に特別に開示されていない要素、限定の非存在下で適切に実施されることができる。使用された用語及び表現は、説明のために使用され、制限のためのものではなく、そして、そのような用語及び表現は、示され記載された特徴またはその一部のいかなる等価物を排除することを意図するものでもないが、さまざまな修飾が権利請求された本発明の範囲内で可能である。したがって、本発明は好ましい実施態様及び任意の特徴によって特別に開示されるが、本明細書に開示された概念の修飾及び変更は、当業者に依存することができ、そしてかかる修飾及び変更は、添付した請求項によって定義された本発明の範囲内にあると理解されなければならない。
【0070】
さらに、本発明の特徴または側面がマーカッシュ群によって記載される場合、当業者は本発明がマーカッシュ群の個々の構成要素または構成要素の亜群によっても記載されることを理解するであろう。例えば、Xが臭素、塩素、及びヨウ素から成る群から選ばれると記載される場合、Xが臭素である請求項、並びにXが塩素及びヨウ素である請求項も完全に記載される。
【0071】
他の実施態様は、以下の請求項中に示される。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】図1は、チルミコシン及びフルニキシンを1:2の比率で含む組成物についてのインビトロの放出動態を図解したものを提供する。黒菱形は、放出されたフルニキシンのパーセントを表し、白四角は放出されたチルミコシンのパーセントを表す。
【図2】図2は、チルミコシン、フルニキシン及びラウリン酸を1:1:1の比率で含む組成物について、20重量パーセントのチルミコシン及び20重量パーセントのフルニキシンを含む製剤、ここで、大きな白四角及び小さな白四角は、それぞれチルミコシン及びフルニキシンの放出速度を表し、並びに、10重量パーセントのチルミコシン及び10重量パーセントのフルニキシンを含む製剤、ここで、黒三角及び白丸は、それぞれチルミコシン及びフルニキシンの放出速度を表す、についてのインビトロの放出動態を図解したものを提供する。
【図3】図3は、オキシテトラサイクリンの構造式を示す。
【図4】図4は、ドキシサイクリンの構造式を示す。
【図5】図5は、カルプロフェンの構造式を示す。
【図6】図6は、フルニキシンの構造式を示す。
【図7】図7は、ナプロキセンの構造式を示す。
【図8】図8は、チルミコシンの構造式を示す。
【図9】図9は、ロキシスロマイシンの構造式を示す。
【図10】図10は、アジスロマイシンの構造式を示す。
【図11】図11は、テルビナフィンの構造式を示す。
【図12】図12は、実施例5aの製剤を第1日に子ウマの首の各側に10mLで2回注射し、続いて第7日に胸の各側に10mLで2回注射した場合の、フルニキシン(黒菱形)及びチルミコシン(黒四角)の血清濃度を時間の関数としてプロットしたものである。
【図13】図13は、ロドコッカッス・エクイにかかった子ウマの、実施例5bの製剤による、実施例12に記載の治療の前(図13a)及び治療後(図13b)の肺のラジオグラフィーである。
【図14】図14は、実施例11のチルミコシン:フルニキシン:デカン酸の1:1:1が、10mg/kgのチルミコシン用量及び8mg/kgのフルニキシン用量でイヌに投与された場合の、フルニキシン(黒菱形)及びチルミコシン(黒四角)の血清濃度を時間の関数としてプロットしたものである。各時間点は、4頭のイヌのフルニキシンまたはチルミコシンの血清濃度の平均値を表す。
【図15】図15は、商業的に入手可能なフルニキシン(Flunixamine(登録商標)、Phoenix Scientific, Inc. of St. Joseph, MOから商業的に入手可能)が1mg/kgの単一用量としてイヌに投与された場合の、時間の関数としてのフルニキシンの血清濃度をプロットしたものである。各時間点は、2頭のイヌのフルニキシン血清濃度の平均値を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロトン供与性の薬理学的に活性な成分及びプロトン受容性の薬理学的に活性な成分の塩を含む組成物。
【請求項2】
前記プロトン供与性の薬理学的に活性な成分が抗炎症活性を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記プロトン供与性の薬理学的に活性な成分が非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記NSAIDが、以下の:フルニキシン、カルプロフェン、イブプロフェン、ジクロフェナック、及びナプロキセンから成る群から選ばれる、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記NSAIDが、フルニキシンである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記プロトン受容性の薬理学的に活性な成分が抗感染活性又は抗菌活性を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記プロトン受容性の薬理学的に活性な成分が抗生物質である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記プロトン受容性の薬理学的に活性な成分が、以下の:アジスロマイシン、ロキシスロマイシン、チルミコシン、オキシテトラサイクリン及びドキシサイクリンから成る群から選ばれる、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記プロトン受容性の薬理学的に活性な成分がチルミコシンである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記プロトン供与性の薬理学的に活性な成分が、以下の:フルニキシン、カルプロフェン、及びナプロキセンから成る群から選ばれ;そして、
前記プロトン受容性の薬理学的に活性な成分が、以下の:アジスロマイシン、ロキシスロマイシン、チルミコシン、オキシテトラサイクリン及びドキシサイクリンから成る群から選ばれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記プロトン供与性の薬理学的に活性な成分がフルニキシンであり、前記プロトン受容性の薬理学的に活性な成分がチルミコシンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
さらに、医薬として許容可能な担体を含む請求項1に記載の組成物であって、該組成物が水中に注入された場合に沈殿を形成する注射可能な組成物である、前記組成物。
【請求項13】
前記注射可能な組成物が溶液である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記薬理学的に活性な成分の少なくとも1つがCOX-2阻害剤である、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記COX-2阻害剤がセレコキシブである、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記プロトン供与性のまたはプロトン受容性の薬理学的に活性な成分が、以下の:マクロライド、テトラサイクリン、アミノグリコシド、β−ラクタム、及び抗真菌剤から成る群から選ばれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
さらに、プロトン受容性の薬理学的に活性な成分及びプロトン供与性の親油性分子から形成される塩を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記親油性分子が脂肪酸である、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記脂肪酸が、以下の:ラウリン酸、リノール酸、デカン酸、ミリスチン酸、及びオレイン酸から成る群から選ばれる、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
さらに、薬理学的に活性な成分を遊離の形態で含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
薬理学的に活性な成分を動物に投与する方法であって、該動物に、以下の:
(i)プロトン供与性の薬理学的に活性な成分及びプロトン受容性の薬理学的に活性な成分の塩、及び
(ii)医薬として許容可能な担体、
を含む組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項22】
前記プロトン供与性の薬理学的に活性な成分が、以下の:フルニキシン、カルプロフェン、及びナプロキセンから成る群から選ばれ;そして
前記プロトン受容性の薬理学的に活性な成分が、以下の:アジスロマイシン、ロキシスロマイシン、チルミコシン、オキシテトラサイクリン及びドキシサイクリンから成る群から選ばれる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記組成物が注射によって投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記プロトン供与性の薬理学的に活性な成分及び前記プロトン受容性の薬理学的に活性な成分が、前記動物において、前記塩として投与された場合に遊離の形態で投与された場合よりもより遅い放出動態を有する、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記動物が、以下の:ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、またはブタからなる群から選ばれる、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
プロトン供与性の薬理学的に活性な成分及びプロトン受容性の薬理学的に活性な成分を接触させることを含む、組成物の製造方法。
【請求項27】
前記プロトン供与性の薬理学的に活性な成分及び前記プロトン受容性の薬理学的に活性な成分が溶媒中で接触させられる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記プロトン供与性の薬理学的に活性な成分が抗炎症活性を有する、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記プロトン供与性の薬理学的に活性な成分が、非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記プロトン供与性の薬理学的に活性な成分が、以下の:フルニキシン、カルプロフェン、及びナプロキセンから成る群から選ばれ;そして、
前記プロトン受容性の薬理学的に活性な成分が、以下の:アジスロマイシン、ロキシスロマイシン、チルミコシン、オキシテトラサイクリン及びドキシサイクリンから成る群から選ばれる、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記プロトン供与性の薬理学的に活性な成分がフルニキシンであり、そして前記プロトン受容性の薬理学的に活性な成分がチルミコシンである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
約10〜30重量パーセントのチルミコシン、チルミコシン1当量あたり約2当量のフルニキシン、及びグリセロールフォーマル中約10パーセントのプロピレングリコールを含む、注射可能な組成物。
【請求項33】
約10〜30重量パーセントのチルミコシン、チルミコシン1当量あたり約1当量のフルニキシン、チルミコシン1当量あたり約1当量の脂肪酸、及びグリセロールフォーマル中約10パーセントのプロピレングリコールを含む、注射可能な組成物。
【請求項34】
前記脂肪酸が、デカン酸またはラウリン酸である、請求項33に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13a】
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【図13b】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2007−509949(P2007−509949A)
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538191(P2006−538191)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【国際出願番号】PCT/US2004/035540
【国際公開番号】WO2005/044254
【国際公開日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(505388551)アイデックス ラボラトリーズ,インコーポレイティド (11)
【Fターム(参考)】