説明

蛋白質安定化した薬理学的活性薬剤、その製造方法およびその使用方法

【課題】実質的に水不溶性の薬理活性物質のインビボ送達に有用な組成物および方法を提供する。
【解決手段】蛋白質で被覆されている固体または液体の実質的に水不溶性の薬理学的活性薬剤の粒子を含む組成物であって、上記粒子の平均径は200nm未満であり、該蛋白質被覆は、それに結合されている遊離蛋白質を有しており、上記実質的に水不溶性の薬理学的活性薬剤の一部が、上記蛋白質被覆物内に含有されており、上記実質的に水不溶性の薬理学的活性薬剤の一部が、上記蛋白質被覆物で取り囲まれている、上記遊離蛋白質に結合されており、上記粒子は0.22ミクロンのフィルターに通して濾過することができる、組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬理学的活性薬剤を静脈投与するための粒状ベヒクルの製造方法およびこの方法によって製造される新規組成物に関する。特定の態様において、本発明は、実質的に水不溶性の薬理学的活性薬剤[例えば、抗癌薬タキソール(taxol)]のインビボ放出方法に関する。もう一つの態様において、水不溶性の薬理学的活性薬剤を含有する分散性コロイド状系が提供される。この懸濁粒子は、生体適応性ポリマーから構成されたポリマー殻中に封入されており、約1ミクロンよりも小さい径を有する。本発明によるコロイド状系は、慣用の界面活性剤またはいずれのポリマー芯マトリックスも使用することなく製造される。本発明の特に好適な態様において、殺菌濾過することができる格別に小さい粒子の製造方法が提供される。ポリマー殻は、薬理学的活性薬剤の粒子および任意に、生体適応性分散剤を含有し、薬理学的活性薬剤はそこに溶解または懸濁することができる。従って、本発明は、液体形態または再分散性粉末形態の医薬放出系を提供する。どちらの形態も、生体有効医薬分子(すなわち、蛋白質に分子結合される医薬分子)および蛋白質で覆われた医薬粒子の両方を直ちに提供する。
【背景技術】
【0002】
静脈内医薬放出は、身体の残りの部分に医薬を運ぶ血流との迅速で、直接的な平衡を可能にする。静脈注入した後の短時間内にピーク血清レベルに到達するのを回避するために、安定な担体内に保有されている医薬を投与すると、治療性極微小粒子(nanoparticles)の団塊的静脈注入後に、静脈隔室の内部で医薬を徐々に放出することが可能になる。
注射可能な制御放出性極微小粒子は、一回の注入で数日から一週間までの範囲にわたり、作用の予め計画された持続を提供することができる。これらはまた、習慣的に投与される医薬全体に数種の際立った利点を提供することができ、この利点には、投与計画に従う自動的に保証された患者の応諾および特定の組織または臓器への目標を定めた医薬の投与が包含される(非特許文献1および非特許文献2)。
【0003】
血液中に存在する微小粒子および異種物体は一般に、「血液濾過臓器」、すなわち脾臓、肺および肝臓により循環系から浄化される。正常全血中に含有される粒子状物質には、赤血球(代表的に8ミクロンの直径を有する)、白血球(代表的に6〜8ミクロンの直径を有する)、および血小板(代表的に1〜3ミクロンの直径を有する)が包含されている。大部分の臓器および組織の微細循環系は、これらの血液細胞を自由に通過させる。10〜15ミクロンよりも大きい大きさの微小血栓(血液凝固物)が循環系に存在すると、毛細管の梗塞または遮断の危険が生じ、虚血または酸素枯渇そして多分組織の死滅を生じさせる。従って、10〜15ミクロンよりも大きい径の粒子の循環系への注入は、回避されなければならない。しかしながら、7〜8ミクロンよりも小さい径の懸濁液は、比較的安全であり、リポソームおよびエマルジョンの形態の薬理学的活性薬剤、栄養剤、および撮影用造影剤の供給に使用されている。
粒子の大きさおよびそれらの放出モードは、それらの生物学的挙動を決定する。Strand等は、粒子の運命が、それらの大きさに依存するものと開示した(非特許文献3)。数ナノメーター(nm)から100nmまでの大きさ範囲の粒子は、間質内注入後にリンパ系毛細管に入り、リンパ節内で、食作用をおこすことがある。静脈内/間質内注入の後に、約2ミクロンよりも小さい粒子は、細網内皮系(RES)により血液流から迅速に浄化される。これはまた、単核食作用系(MPS)としても知られている。約7ミクロンよりも大きい粒子は、静脈流入後に、肺毛細管で捕獲される。動脈内注入後、粒子は、到達した最初の毛細管床に捕獲される。存続する粒子は、肺胞マクロファージにより捕獲される。
【0004】
水不溶性または水難溶性医薬であって、胃内の酸性環境に敏感な医薬は、常習的に投与することはできない(例えば、静脈注射または経口投与による)。このような医薬の非経口投与は、油溶解した医薬を界面活性剤またはエマルジョン安定剤の存在下に、水性液体(例えば、生理食塩水)により乳化し、安定なミクロエマルジョンを形成することによって達成されている。これらのエマルジョンは、当該エマルジョンの成分が薬理学的に不活性であるかぎり、静脈注入することができる。特許文献1には、油中に溶解し、次いで卵ホスファチド、プルロニクス(pluronics)(ポリプロピレングリコールとポリエチレングリコールとのコポリマー)、オレイン酸ポリグリセロールなどの界面活性剤の存在下に水により乳化した薬理学的活性薬剤を投与することが記載されている。特許文献2には、筋肉内または静脈内注入に適する寸法を有するジメリストイルホスファチジルコリンなどのリン脂質により被覆された麻酔薬の医薬微小滴が記載されている。
【0005】
水不溶性医薬の例には、タキソールがある。タキソールは、パシフィック イチイ樹木[タキサス ブレビホリス(Taxus brevifolis)]から最初に単離された天然産物である[非特許文献4]。抗有糸分裂剤の中で、ジテルペン炭素骨格を有するタキソールは、有糸分裂紡錘体の形成に関与する微小管蛋白質に対して特異な作用モードを示す。微小管の組立てを防止する、ビンブラスチンまたはコルチシンなどの別の抗有糸分裂剤とは相違して、タキソールは、微小管の解重合を阻止する、すなわち細胞複製プロセスを阻止することが知られている唯一つの植物産物である。
天然産出ジテルペノイイドであるタキソールは、薬剤−抵抗性卵巣癌において、格別の抗新生物および抗癌作用を有することが証明されている。タキソールは、広く種々の腫瘍モデル、例えばB16メラノーマ、L1210白血病、MX−1乳癌およびC6−1結腸腫瘍異種移植片などにおいて、優れた抗腫瘍活性を示した。最近の数種の報道は、新規抗癌性の素晴らしい医薬としてタキソールの名前を挙げている。確かなこととして、タキソールは最近、Federal Drug Administrationから卵巣癌の処置用に承認された。しかしながら、タキソールは、水溶性が貧弱であることから、ヒト投与において問題を提起する。確かなこととして、経口投与が有効ではない場合に、水性媒質中で固有に不溶性または水難溶性の医薬の放出は、重大な問題であることがある。従って、最近使用されているタキソール製剤は、当該医薬を溶解可能にするために、クレマホールを要求する。ヒト医療の用量範囲は、200〜500mgである。この用量を、エタノール−クレマホールの1:1溶液中に溶解し、次いで静脈投与用液体1リットルに希釈する。最近使用されているクレマホールは、ポリエトキシル化ヒマシ油である。
【0006】
フェース1臨床実験では、タキソールそれ自体は、過度の毒作用を示さないが、数種のアレルギー反応が、医薬の可溶化に使用される乳化剤により生じている。最近の投与計画は、当該医薬を投与する前に、抗ヒスタミン剤およびステロイドにより患者を処置し、クレマホールのアレルギー副作用を減少させることを包含している。
タキソールの水溶性を改善する研究において、数人の研究者は、増大した水溶性を付与する官能性基により、その化学構造を修飾した。これらの中には、スルホン化誘導体(Kingston等による特許文献3)およびアミノ酸エステル(非特許文献5)があり、これらは相当の生物学的活性を示した。水溶性誘導体を生成させるための修飾は、生理食塩水などの無毒担体中に溶解したタキソールの静脈内供給を促進した。しかしながら、このような修飾は、医薬の製造価格に加えて、望ましくない副反応および(または)アレルギー反応を誘発することがあり、そして(あるいは)医薬の効力を減少させることがある。
蛋白質微小球体は、薬理学的または診断学的薬剤の担体として刊行物に報告されている。アルブミンの微小球体は、熱変性または化学的架橋によって製造されている。熱変性された微小球体は、乳化した混合物(例えば、アルブミン、配合される薬剤および適当な油)から、100℃〜150℃の温度で製造される。この微小球体を次いで、適当な溶剤で洗浄し、次いで保存する。Leucuta等は、熱変性した微小球体の製造を開示している(非特許文献6)。
【0007】
化学的に架橋された微小球体の製造方法は、エマルジョンをグルタルアルデヒドにより処理し、蛋白質を架橋させ、次いで洗浄し、保存することを包含する。Lee等(非特許文献7)および特許文献4は、この製造方法を教示している。
薬理学的活性薬剤の担体としての蛋白質微小球体を製造するための上記技術は、水溶性薬剤の放出には適しているが、水不溶性薬剤を捕獲することはできない。この限界は、蛋白質成分を油中水型エマルジョンの水性相で架橋または熱変性する際に頼る製造技術に固有である。蛋白質含有水性相中に溶解した水溶性薬剤は、生じる架橋したまたは熱変性された蛋白質マトリックス内に捕獲されることもあるが、貧弱な水溶性を有するか、または油溶性薬剤は、これらの技術により形成された蛋白質マトリックス中に配合することはできない。
極微小粒子を含有する医薬の慣用の製造方法の一つは、ポリ乳酸(またはその他の生体適応性で、水不溶性のポリマー)を、水−不混和性溶剤(例えば、メチレンクロライドまたはその他の塩素化脂肪族または芳香族溶剤)中に溶解し、次いでこのポリマー溶液に薬理学的活性薬剤を溶解し、この油性相または水性相に界面活性剤を添加し、適当な手段で水中油型エマルジョンを形成し、次いでこのエマルジョンを減圧で蒸発させることを包含する。この油小滴が充分に小さく、かつまた蒸発中に安定である場合、水中のポリマー懸濁液が得られる。医薬はポリマー溶液中に最初から存在していることから、この方法によって、医薬分子がポリマーマトリックスからなる粒子内部に捕獲されている組成物を得ることができる。この溶剤蒸発法を用いることによる微小球体および極微小粒子の形成は、数人の研究者により報告されている(例えば、種々の医薬を用いている、非特許文献8;非特許文献9;非特許文献10;および特許文献5参照)。
【0008】
Bazile等は、非特許文献11において、またSpenlehauer等は、特許文献6において、2種の生体適応性ポリマーを用いることによる極微小粒子の形成を報告している。1種(例えば、ポリラクチド)は、医薬などの活性成分とともに有機相に溶解し、そして他の1種のポリマー、例えばアルブミンは、界面活性剤として使用する。乳化させ、次いで溶剤を除去した後、医薬がポリラクチド粒子のポリマーマトリックス内部に存在する極微小粒子が形成される。
そこからポリマーマトリックスが形成されるポリマー溶液の性質は、第一段階で適当なエマルジョンを得るために非常に重要である。例えば、ポリラクチ(このポリマーは注射可能な極微小粒子の製造に慣用される)は、界面活性を有しており、ジクロロメタン−水でその迅速な吸収を生じさせ、減少した界面張力を生じさせ(例えば、Boury等による非特許文献12参照)、次いで乳化プロセスを改良する。さらにまた、同一研究者は、ウシ血清アルブミン(BSA)がポリラクチドと相互反応し、次いで油−水界面に存在するポリラクチド単層中に浸透することを見出した。従って、上記参考刊行物に基づき、慣用の溶剤蒸発法中の乳化には、界面活性ポリマー(ポリラクチド)の存在が極めて好ましいことが予想される。実際に、ポリラクチドの存在は、充分な条件であるばかりでなく、また適当な大きさの極微小粒子の形成にとって実際に必要である。
【0009】
溶剤蒸発法に基づくもう一つの方法は、有機溶剤中にいかなるポリマーも溶解させることなく、疎水性溶剤(例えば、トルエンまたはシクロヘキサン)中に医薬を溶解し、この混合物に慣用の界面活性剤を乳化剤として添加し、水中油型エマルジョンを形成し、次いで溶剤を蒸発させ、医薬の乾燥粒子を得ることを包含する(例えば、非特許文献13参照)。非極性溶剤を分離すると、溶剤小滴内部で医薬の沈殿が生じ、準ミクロン単位の粒子が得られる。
この粒子の大きさは、エマルジョン小滴の初期寸法により主として制御されることが見出された。さらにまた、最終粒子の大きさは、有機相中の医薬濃度が減少するほど、減少することが報告されていることに留意することは重要である。この発見は、極微小粒子の製造に慣用の界面活性剤を使用しない、上記報告の結果に反している。さらにまた、使用された医薬、すなわちコレステリルアセテートがトルエン中で界面活性であり、油−水界面で配向されることがあることに、このSjostromの論文の著者は気付いている。従って、この界面における医薬濃度が大きいほど、沈殿力は増大する。
準ミクロン単位の粒子の形成はまた、非特許文献14により開示されているように、沈殿法により達成されている。この方法は、医薬(例えば、インドメタシン)およびポリマー(ポリ−カプロラクトン)をメチレンクロライドおよびアセトン中に溶解し、次いでこの溶液を、界面活性剤[ポロキサマー(Poloxamer 188)]含有水性相中に注ぎ入れ、準ミクロン単位の粒子(216nm)を生成する。しかしながら、この方法は、エマルジョンが形成されない溶剤濃度で行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許No.4,073,943
【特許文献2】PCT国際公開No.WO85/00011
【特許文献3】米国特許5,059,699(1991)
【特許文献4】米国特許No.4,671,954
【特許文献5】WO94/10980
【特許文献6】Fr特許2,660,556
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】TiceおよびGilleyによるJournal of Controlled Release,2:343〜352(1985))。
【非特許文献2】GilleyによるJournal of Controlled Release,2:343〜352(1985))。
【非特許文献3】Microspheres−Biomedical Applications,A.Rembaum編集、193〜227頁、CRC出版社(1988)
【非特許文献4】J.Am.Chem.Soc.,93:2325(1971)]。
【非特許文献5】Mathew等によるJ.Med,Chem.,35:145〜151(1992)
【非特許文献6】International Journal of Pharmaceutics,41,213〜217 (1988)
【非特許文献7】Science,213:233〜235(1981)
【非特許文献8】TiceおよびGilleyによるJournal of Controlled Release,2:343〜352(1985)
【非特許文献9】BodmeierおよびMcGinityによるInt.J.Pharmaceutics,43:179 (1988)
【非特許文献10】Cavalier等によるJ.Pharm.Pharmacol.,38:249(1985)
【非特許文献11】Biomaterials,13:1093(1992)
【非特許文献12】Boury等によるLanqmuir,11:1636(1996)
【非特許文献13】Sjostrom等によるJ.Dispersion Science and Technology,15:89〜117(1994)
【非特許文献14】Calvo等によりJ.Pharm.Sci.,85:530(1996)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の目的は、医薬放出系で現在使用されている添加乳化剤および可溶化剤の存在によるアレルギー反応を生じさせない組成物に、非修飾形態で薬理学的活性薬剤(例えば、タキソール、タキサン、タキソテレ(Taxotere)など)を供給することにある。
本発明のもう一つの目的は、適当な生体適応性液体中に懸濁されていてもよい、微小粒子または極微小粒子の組成物に、薬理学的活性薬剤を供給することにある。
本発明のさらにもう一つの目的は、いかなる慣用の界面活性剤も存在させずに、かつまたいかなるポリマー系芯材料も存在させずに、安定剤として蛋白質を使用する水中油型エマルジョンから、溶剤蒸発技術によって、薬理学的活性薬剤の準ミクロン単位の粒子(極微小粒子)を形成する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のこれらの目的およびその他の目的は、本明細書および請求の範囲を見ることによって明白になるものと見做される。
本発明に従い、我々は、実質的に水不溶性の薬理学的活性薬剤を、水性懸濁液として非経口投与するのに適する微小粒子または極微小粒子の形態で供給することができることを見出した。この供給方式は、生理食塩水中で稀釈された、例えばエタノールおよびポリエトキシ化ヒマシ油を含有するエマルジョン中の実質的に水不溶性の薬理学的活性薬剤(例えば、タキソール)の投与を不要にすることは明白である(例えば、Norton等によるAbstracts of the 2nd National Cancer institute Workshop on Taxol & Taxus,1992年9月23〜24日参照)。このような公知組成物の欠点は、アレルギー副作用を生じさせるそれらの性質にある。
【0014】
従って、本発明に従い、いかなる慣用の界面活性剤も存在させずに、かつまた極微小粒子のマトリックスの形成にいかなるポリマー芯材料も存在させずに、高剪断状態下(音波処理、高圧ホモジェニゼーションなど)に製造された水中油型エマルジョンから溶剤蒸発技術によって、薬理学的活性薬剤の極微小粒子を形成する方法が提供される。その代わりとして、蛋白質(例えば、ヒト血清アルブミン)を安定剤として使用する。
さらにまた、本発明は、特異的に小さい極微小粒子(200nmよりも小さい径)の再現性形成方法を提供し、この極微小粒子は0.22ミクロンのフィルターを通して殺菌濾過することができる。これは、有機相に水溶性溶剤(例えば、エタノール)を添加し、有機相のタイプ、相フラクションおよび有機相中の医薬濃度を注意深く選択することによって達成される。0.22ミクロンのフィルターによって濾過することができる大きさの極微小粒子の形成可能性は、格別に重要であり、際立っている。その理由は、いずれかの蛋白質(例えば、アルブミン)を相当な量で含有する組成物は、当該蛋白質が熱凝固することから、オートクレーブなどの慣用の方法によっては殺菌することができないことにある。
【0015】
本発明のもう一つの態様に従い、我々は、実質的に水不溶性の薬理学的活性薬剤のインビボ放出に有用な組成物を開発した。本発明による組成物は、ポリマー殻内に含有されている(例えば、固形または液体として)、実質的に水不溶性の薬理学的活性薬剤を包含する。このポリマー殻は、架橋した生体適応性ポリマーである。その中に実質的に水不溶性の薬理学的活性薬剤を含有するポリマー殻は次いで、投与用の生体適応性水性液体中に懸濁することができる。
本発明はさらにまた、薬理学的活性薬剤の分子の一部が蛋白質(例えば、ヒト血清アルブミン)に結合しており、従って哺乳動物に投与されると直ちに生体利用される医薬放出系を提供する。薬理学的活性薬剤のその他の部分は、蛋白質により覆われている極微小粒子内に含有されている。この薬理学的活性薬剤を含有する極微小粒子は、いかなるポリマーマトリックスによる稀釈も伴わずに、純粋活性成分として存在する。
【0016】
大多数の慣用の薬理学的活性薬剤は、担体蛋白質に結合して(疎水性またはイオン性相互反応を経る)、血液流中を循環する。この担体蛋白質の最も慣用の例は血清アルブミンである。本発明による方法およびそれにより生成される組成物は、投与前に蛋白質に予備結合されている(疎水性またはイオン性相互反応を経る)薬理学的活性薬剤を提供する。
本記載は、ヒト血清アルブミンに結合させることができる抗癌性医薬である、タキソール[ファクリタキセル(Faclitaxel)]のための、上記両方の生体有効性方式について証明している(例えば、Kumar等によるResearch Communications in Chemical Pathology and Pharmacology,80:337(1993)参照)。タキソールに比較して高い、本発明の粒子中のアルブミンの濃度は、相当な量の医薬を、アルブミン結合した分子の形態で提供する。このアルブミンはまた、血液流中の医薬の天然担体である。
さらにまた、ヒト血清アルブミンのタキソールおよびその他の医薬を結合させる能力は、考慮される利点であり、これはタキソールが粒子表面上に吸着する能力を増大させる。アルブミンは、コロイド状医薬粒子(有機溶剤の除去後に形成される)の上に存在することから、延長された期間にわたり安定であるコロイド状分散液の形成が、電気的反発作用および立体安定化の組合わせにより促進される。
【0017】
本発明に従いまた、準ミクロン単位の粒子が、水または塩類溶液中で容易に再構成することができる粉末形態で提供される。この粉末は、凍結乾燥により水を除去した後に得られる。ヒト血清アルブミンは、本発明による極微小粒子の構造要素として作用し、また凍結防止剤および再構成剤としての役目も果たす。本明細書に記載の本発明による方法に従い、次いで乾燥または凍結乾燥させることによる、0.22ミクロンのフィルターを通して濾過することができる粒子の製造は、静脈内注入に有用な無菌の固形製剤を生成させる。
本発明は、特別の態様において、液体分散液中の極微小粒子の形態で、あるいは投与用に容易に再構成することができる固形物として、抗癌医薬、例えばタキソールの組成物を提供する。或る種の医薬、例えばタキソールは特別の性質を有することから、このような組成物は、界面活性剤の使用に依存する慣用の溶剤蒸発法により得ることはできない。種々の界面活性剤が存在すると、非常に大型(例えば、約5ミクロンから数百ミクロンの大きさ)の医薬結晶が、保存中に製造プロセスから数分以内に生成される。このような結晶の大きさは、代表的に静脈内注入に許容される大きさよりもかなり大きい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に従い生成される粒子が、結晶、無定型またはその混合物のいずれでもあることができることは認識されるが、一般に、医薬は、組成物中に無定型で存在させると好ましい。これにより、溶解および吸収がより容易になり、良好な生体利用性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、腫瘍を有するマウス[各群5匹(n=5)]に対するパクリタキセル極微小粒子の静脈投与の結果を示しており、塩類溶液を摂取した対照群(●)に比較した、処置群(■)における腫瘍の完全な退行を示している。対照群には、ほとんど無制御の腫瘍増殖が見られる。処置群の投与量は、パクリタキセル20mg/kgであり、これは、5日連続して静脈内団塊投与された。
【図2】図2は、コラーゲンを皮内注射した後に、その肢に発症した関節炎を患っているラットに、パクリタキセル極微小粒子を腹腔内投与した結果を示している。肢の容積を測定し、病気の重篤度を示す。この肢の容積は、処置の開始時点で100%とする。0日は、処置の開始日を示す。3群、すなわち塩類溶液を摂取した対照群(n=2、細い線で示されており、この図で、「無処置」の標識が付けられている)、パクリタキセル極微小粒子を1mg/kgの用量で摂取した第一処置群(n=4、太い線で示されており、この図で、「パクリタキセル極微小粒子、1.0mg/kg」の標識が付けられている)および0.5mg/kgの用量のパクリタキセル極微小粒子および0.2mg/kgの用量のプレドニソロンの組合わせ治療を受けた第二処置群(n=4、太い線で示されており、この図で、「プレドニソロン0.2mg/kg+パクリタキセル極微小粒子0.5mg/kg」の標識が付けられている)を用いる。2つの処置群は、時間経過に従い、肢の容積の劇的減少を示すのに対して、対照群は、同一期間にわたり肢の容積の増加を示した。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明において、インビボ送達のための実質的に水不溶性の薬理活性物質の製造法であって、
その中に上記薬理活性物質が分散された有機相と、
生体適合性ポリマーを含有する水性媒体とを、含む混合物(この混合物は実質的に界面活性剤を含有しない)を、
約3,000〜30,000psiの範囲の圧力の高圧ホモジナイザーに付することからなる、方法が提供される。高剪断条件下に付された後、有機相および/または水相は次に、混合物から随時除去される。
また本発明において、上記方法により製造される組成物が提供される。
本発明のさらなる実施態様において、タンパク質で被覆された、固体または液体の実質的に水不溶性の薬理活性物質の粒子を含む、薬剤送達システムであって、
タンパク質被覆は、そこに結合した遊離のタンパク質を含有し、
薬理活性物質の一部は、タンパク質被覆中に含有され、かつ薬理活性物質の一部は遊離のタンパク質が会合しており、そして
粒子の平均直径は約1ミクロン以下である、
システムが提供される。
【0021】
上記組成物は、種々の薬理活性物質の非常に毒性の低い型を提供することが観察されているため、特に有効であり、例えば、タキソールとアルブミン(生体適合性ポリマーとして)の組合せは、その低毒性のために本発明の好適な組合せである。タキソールとアルブミンの組合せはまた、実質的に非骨髄抑制性であるという付加的利点を有する。
好適な実施態様において、上記粒子の平均直径は約200nm以下である。このような粒子は、無菌ろ過することができ、従って所望の薬理活性物質を含有する溶液を滅菌するためにさらに激しい処理をする必要がないために、特に有効である。
本明細書において「インビボ送達」という用語は、経口、静脈内、皮下、腹腔内、くも膜下、筋肉内、吸入、局所、経皮、坐剤(直腸)、ペッサリー(膣)、などの投与経路による、薬理活性物質の送達を意味する。
本明細書において「ミクロン」という用語は、1ミリメートルの1000分の1の単位を意味する。
本明細書において「生体適合性」という用語は、導入される生物学的システムを有害な方法で大幅に改変または影響しない物質を示す。
本発明のポリマー殻中に含有される薬理活性物質と先行技術のタンパク質ミクロスフェアとの間の主要な差は、粒子の形成の本質、および形成後のタンパク質の最終的状態、ならびに水溶性の低い物質または実質的に水不溶性の物質を運搬する能力にある。本発明においてポリマー(例えば、タンパク質)は、高圧ホモジナイザー中で高剪断力条件に暴露した結果として架橋される。高剪断力は、随時スルフヒドリル基またはジスルフィド基を有する生体適合性ポリマー(例えば、アルブミン)の水溶液中に溶解または懸濁した薬理活性物質を含有する分散剤を分散し、こうして非水性媒体の微小液滴の周りに架橋ポリマーの殻を形成するのに使用される。高剪断力条件は、液体中の空洞形成を引き起こし、これは非常に大きな局所的加熱を引き起こし、従って例えばスルフヒドリル残基を酸化(および/または、存在するジスルフィド結合を破壊)して新しい架橋ジスルフィド結合を形成することができるポリマーを、架橋することができるスーパーオキシドイオンを形成する。
【0022】
本発明の方法に対して、先行技術のグルタルアルデヒド架橋法は非特異的であり、タンパク質構造中に存在するすべての求核性の基(例えば、アミンおよびヒドロキシル)と基本的に反応する。先行技術は、加熱により、タンパク質構造が大きくかつ不可逆的に変化すると教示している。これに対して本発明の意図するジスルフィド結合形成は、タンパク質を実質的に変性させない。さらに、本発明により製造されるポリマー殻は被覆粒子の直径と比較して比較的うすいため、殻内に含有される実質的に水不溶性の薬理活性物質の粒子は、先行技術の架橋または熱変性したタンパク質ミクロスフェアとは異なる。ポリマー被覆の「殻の厚さ」は、1ミクロン(1000ナノメートル)の直径を有する被覆粒子について約25ナノメートルであることが(透過電子顕微鏡により)測定されている。これに対して先行技術のミクロスフェアはタンパク質殻を有さず、むしろミクロスフェアの容量中にタンパク質が分散している。
【0023】
すなわち本発明において、薬理活性物質は適当な溶媒(例えば、クロロホルム、塩化メチレン、酢酸エチル、エタノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、アセトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、メチルピロリドンなど、ならびにこれらの任意の2つまたはそれ以上の混合物)中に溶解される。本発明での実施において意図されるさらなる溶媒は、大豆油、ココナツ油、オリーブ油、べにばな油、綿実油、ゴマ油、オレンジ油、リモネン油、C1−C20アルコール、C2−C20エステル、C3−C20ケトン、ポリエチレングリコール、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素およびこれらの組合せがある。
ナノ粒子形成の従来法とは異なり、ポリマー(例えば、ポリ乳酸)は溶媒に溶けない。本発明の組成物の製造で使用される油相は、溶媒中に溶解した薬理活性物質のみを含有する。
次にタンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)を(水相に)加えて、安定なナノ液滴の形成のための安定剤として作用させる。タンパク質は、約0.05〜25%(w/v)の範囲、より好ましくは約0.5〜5%(w/v)の範囲の濃度で加える。ナノ粒子形成の従来法とは異なり、混合物に界面活性剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、レシチン、ツイーン80、プルロニックF−68など)を加えない。
【0024】
次に高圧かつ高剪断力下でホモジナイズすることによりエマルジョンが形成される。このようなホモジナイズは、高圧ホモジナイザー中で、典型的には約3,000〜30,000psiの範囲の圧力で行うことが便利である。好ましくはこのような方法は、約6,000〜25,000psiの範囲の圧力で行われる。得られるエマルジョンは、非水性溶媒(溶解した薬理活性物質を含有する)の非常に小さなナノ液滴、およびタンパク質安定剤の非常に小さなナノ液滴を有する。許容されるホモジナイズ法には、大きな剪断力と空洞形成を与える方法(例えば、高圧ホモジナイズ、高剪断力ミキサー、超音波処理、高剪断力回転翼、など)がある。
【0025】
最後に減圧下で溶媒を留去して、薬理活性物質とタンパク質とのタンパク質被覆ナノ粒子からなるコロイドシステムを得る。許容される蒸発法には、ロータリーエバポレーター、落下フィルムエバポレーター、噴霧乾燥機、凍結乾燥機などの使用がある。
溶媒を留去した後、懸濁液を乾燥して、薬理活性物質とタンパク質を含有する粉末を得る。得られる粉末は、任意の時間に適当な水性媒体(例えば、食塩水、緩衝化食塩水、水、緩衝化水性媒体、アミノ酸の溶液、ビタミンの溶液、炭水化物の溶液、など)、ならびにこれらの任意の2つまたはそれ以上の組合せ中に再分散して、哺乳動物に投与可能な懸濁物を得る。この粉末を得るのに意図される方法には、凍結乾燥、噴霧乾燥などがある。
【0026】
本発明の具体的な実施態様において、非常に小さいサブミクロン粒子(ナノ粒子)、すなわち直径が200ナノメートル未満の粒子の形成のための方法が提供される。このような粒子は、液体懸濁物の形で使用される前に滅菌ろ過することができる。高濃度のタンパク質(例えば、血清アルブミン)を含有する分散物を従来法(例えば、オートクレーブ法)により滅菌するのは不可能なため、本発明の製剤プロセスの最終生成物(すなわち、薬剤粒子)を滅菌ろ過できる能力は非常に重要である。
滅菌ろ過可能な粒子(すなわち、粒子<200nm)を得るために、薬理活性物質をまず高濃度で実質的に水と混ざらない有機溶媒(例えば、水での溶解度が約5%以下の溶媒、例えばクロロホルム)中に溶解し、こうして薬理活性物質を含有する有機相を生成させる。適切な溶媒は上記したものである。ナノ粒子形成の従来法とは異なり、ポリマー(例えば、ポリ乳酸)は溶媒に溶解しない。本発明の方法で使用される油相は、溶媒中に溶解した薬理活性物質のみを含有する。
次に水と混ざる有機溶媒(例えば、水での溶解度が約10%以上の溶媒、例えばエタノール)を、最終濃度が総有機相の約1%〜99%v/v、より好ましくは約5%〜25%v/vの範囲で、油相に加える。水と混ざる有機溶媒は、酢酸エチル、エタノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、アセトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、メチルピロリドンなどのような溶媒から選択することができる。あるいは水と混ざらない溶媒と水と混ざる溶媒との混合物を初めに調製し、次に混合物中の薬理活性物質を溶解させる。
次に上記したようにヒト血清アルブミンまたは任意の他の適当な安定剤を、水性媒体に溶解する。この成分は、安定なナノ液滴の形成のための安定剤として作用する。充分量の第1の有機溶媒(例えば、クロロホルム)を水相に随時溶解して、飽和濃度の近くにもってくる。別の測定した量の有機相(これは、ここで薬理活性物質と、第1の有機溶媒と、第2の有機溶媒とを含有する)を、飽和水相に加えると、有機相の相画分は、約0.5%〜15%v/v、より好ましくは1%〜8%v/vとなる。
【0027】
次に低剪断力で、ミクロ液滴とナノ液滴からなる混合物を形成させる。これは、当業者が容易に認識できるように、種々の方法で行われ、例えば、約2,000〜約15,000rpmの範囲で作動する従来の実験室ホモジナイザーが使用される。次にこれは、高圧下で(すなわち、約3,000〜30,000psiの範囲で)ホモジナイズされる。得られる混合物は、水性タンパク質溶液(例えば、ヒト血清アルブミン)、水不溶性の薬理活性物質、第1の溶媒、および第2の溶媒を含む。最後に、真空下で急速に溶媒を留去して、極端に小さなナノ粒子(すなわち、直径約10nm〜200nmの範囲の粒子)の形でコロイド分散系(薬理活性物質とタンパク質)を得て、従って滅菌することができる。粒子の好適なサイズ範囲は、製剤と使用パラメータに依存するが、約50nm〜170nmである。
本発明に従って調製されるコロイド系は、例えば適当な温度−時間プロフィールで凍結乾燥することにより、そこから水を除去してさらに粉末型に変換される。タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)自身は低温保護物質として作用し、粉末は水、食塩水または緩衝液を加えることにより、従来の低温保護物質(例えば、マンニトール、ショ糖、グリシンなど)を用いる必要がなく、容易に復元される。特に必要ではないが、所望の場合はもちろん従来の低温保護物質を本発明の製剤に加えてもよい。
【0028】
薬理活性物質の固体または液体コアを含有するポリマー殻は、比較的少量で多量の薬理活性物質の送達を可能にする。これは、大量の液体を投与される患者の不快感を低下させ、入院日数を減少させる。さらにポリマー殻または被覆の壁は一般的に、タンパク質分解酵素によりインビボで完全に分解され(例えば、ポリマーがタンパク質である時)、本発明の製剤のように送達システムからの副作用が完全になくなる。
【0029】
本発明の実施態様において、実質的に水不溶性の薬理活性物質の粒子は、約10ミクロン以下の断面直径を有する。5ミクロン未満の断面直径がより好ましく、静脈内投与には1ミクロン未満の断面直径が最も好ましい。
本発明の実施において意図される実質的に水不溶性の薬理活性物質は、薬理活性物質、診断用物質、栄養的価値のある物質などを含有する。薬理活性物質の例には以下のものがある:
【0030】
鎮痛薬/解熱薬(例えば、アスピリン、アセトアミノフェン、イブプロフェン、ナプロキセンナトリウム、塩酸ブプレノルフィン、塩酸プロポキシフェン、プロポキシフェンナプシレート、塩酸メペリジン、塩酸ヒドロモルホン、硫酸モルヒネ、塩酸オキシコドン、リン酸コデイン、バルビツール酸ジヒドロコデイン、塩酸ペンタゾシン、バルビツール酸ヒドロコドン、酒石酸レボルファノール、ジフルニサール、サリチル酸トロラミン、塩酸ナルブフィン、メフェナム酸、酒石酸ブトルファノール、サリチル酸コリン、ブタルビタール、クエン酸フェニルトロキサミン、クエン酸ジフェンヒドラミン、メトトリメプラジン、塩酸シナメドリン、メプロバメートなど);
麻酔薬(例えば、シクロプロパン、エンフルラン、ハロセン、イソフルラン、メトキシフルラン、一酸化窒素、プロポフォルなど);
抗喘息薬(例えば、アゼラスチン、ケトチフェン、トラキサノックスなど);
抗生物質(例えば、ネオマイシン、ストレプトマイシン、クロラムフェニコール、セファスポリン、アンピシリン、ペニシリン、テトラサイクリンなど);
抗うつ薬(例えば、ネフォパム、オキシペルチン、塩酸ドキセピン、アモキサピン、塩酸トラゾドン、塩酸アミトリプチリン、塩酸マプロチリン、硫酸フェネルジン、塩酸デシプラミン、塩酸ノルトリプチリン、硫酸トラニルシプロミン、塩酸フルオキセチン、塩酸ドキセピン、塩酸イミプラミン、パモ酸イミプラミン、ノルトリプチリン、塩酸アミトリプチリン、イソカルボキサジド、塩酸デシプラミン、マレイン酸トリミプラミン、塩酸プロトリプチリンなど);
【0031】
抗糖尿病薬(例えば、ブグアニド剤、ホルモン、スルホン酸尿素誘導体など);
抗真菌薬(例えば、グリセオフルビン、ケロコナゾール、アンホテリシンB、ナイスタチン、カンジシジンなど);
抗高血圧薬(例えば、プロプラノロール、プロパフェノン、オキシプレノロール、ニフェジピン、レセルピン、カンシル酸トリメタファン、塩酸フェノキシベンズアミン、塩酸パルグリン、デセルピジン、ジアゾキシド、モノ硫酸グアネチジン、ミノキシジル、レスシナミン、ニトロプルシドナトリウム、ラウウォルフィアセルペンチナ(rauwolfia serpentina)、アルセロキシロン、メシル酸フェントラミン、レセルピンなど);
抗炎症薬(例えば、(非ステロイド性)インドメタシン、ナプロキセン、イブプロフェン、ラミフェナゾン、ピロキシカム、(ステロイド性)コルチゾン、デキサメタゾン、フルアザコルト、ヒドロコーチゾン、プレドニソロン、プレドニソンなど);
【0032】
抗新生物薬(例えば、アドリアマイシン、シクロホスファミド、アクチノマイシン、ブレオマイシン、デュアノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、マイトマイシン、メトトレキセート、フルオロウラシル、カルボプラチン、カルムスチン(BCNU)、メチル−CCNU、シスプラチン、エトポシド、インターフェロン、カンプトテシンおよびその誘導体、フェネステリン、タキソールおよびその誘導体、タキソテレおよびその誘導体、ビンブラスチン、ビンクリスチン、タモキシフェン、エトポシド、ピポスルファンなど);
抗不安薬(例えば、ロラゼパム、塩酸ブスピロン、プラゼパム、塩酸クロロジアゼポキシド、オキサゼパム、クロラゼペート二カリウム、ジアゼパム、パモ酸ヒドロキシジン、塩酸ヒドロキシジン、アルプラゾラム、ドロペリドール、ハラゼパム、クロルメザノン、ダントロレンなど);
【0033】
免疫抑制薬(例えば、サイクロスポリン、アザチオプリン、ミゾリビン、FK506(タクロリムス)など);
抗扁桃痛薬(例えば、酒石酸エルゴタミン、塩酸プロパノロール、イソメテプテンムケート(isometheptene mucate)、ジクロロアルフェナゾンなど);
鎮静薬/睡眠薬(例えば、バルビツール酸塩(例えば、ペントバルビタール、ペントバルビタールナトリウム、セコバルビタールナトリウム)、ベンゾジアザピン(例えば、塩酸フルラゼパム、トリアゾラム、トマゼパム、塩酸ミダゾラムなど);
抗狭心症薬(例えば、ベータ−アドレナリンブロッカー、カルシウムチャネルブロッカー(例えば、ニフェジピン、塩酸ジルチアゼムなど)、硝酸塩(例えば、ニトログリセリン、二硝酸イソソルビド、四硝酸ペンタエリトリトール、四硝酸エリトリチルなど));
【0034】
抗精神病薬(例えば、ハロペリドール、コハク酸ロキサピン、塩酸ロキサピン、チオリダジン、塩酸チオリダジン、チオチキセン、塩酸フルフェナジン、デカン酸フルフェナジン、エナン酸フルフェナジン、塩酸トリフルオペラジン、塩酸クロロプロマジン、ペルフェナジン、クエン酸リチウム、プロクロルペラジンなど);
抗うつ病薬(例えば、炭酸リチウム);
抗不整脈薬(例えば、トシル酸ブレチリウム、塩酸エスモロール、塩酸ベラパミル、アミオダロン、塩酸エンカイニド、ジゴキシン、ジギトキシン、塩酸メキシレチン、リン酸ジソピラミド、塩酸プロカインアミド、硫酸キニジン、グルコン酸キニジン、ポリガラクツロン酸キニジン、酢酸フレカイニド、塩酸トカイニド、塩酸リドカインなど);
抗関節炎薬(例えば、フェニルブタゾン、スリンダック、ペニシラミン、サルサレート、ピロキシカム、アザチオプリン、インドメタシン、メクロフェナメートナトリウム、金チオリンゴ酸ナトリウム、ケトプロフェン、アウラノフィン、アウロチオグルコース、トルメチンナトリウムなど);
【0035】
抗通風薬(例えば、コルヒシン、アロプリノールなど);
抗凝固薬(例えば、ヘパリン、ヘパリンナトリウム、ワーファリンナトリウムなど);
血栓溶解薬(例えば、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、アルトプラーゼなど);
抗線維素溶解薬(例えば、アミノカプロン酸);
血液レオロジー薬(例えば、ペントキシフィリン);
抗血小板薬(例えば、アスピリン、エンピリン、アスクリプチンなど);
抗けいれん薬(例えば、バルプロ酸、ジバルプロ酸ナトリウム、フェニトイン、フェニトインナトリウム、クロナゼパム、プリミドン、フェノバルビタール、フェノバルビタールナトリウム、カルバマゼピン、アモバルビタールナトリウム、メトスクシミド、メタルビタール、メフォバルビタール、メフェニトイン、フェンスクシミド、パラメタジオン、エトトイン、フェナセミド、セコバルビトール、クロラゼペート二カリウム、トリメタジオンなど);
抗パーキンソン病薬(例えば、エトスクシミドなど);
抗ヒスタミン薬/鎮痒薬(例えば、塩酸ヒドロキシ亜鉛、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロロフェニラミン、マレイン酸ブロモフェニラミン、塩酸シプロヘプタジン、テルフェナジン、フマル酸クレマスチン、塩酸トリプロリジン、マレイン酸カルビノキサミン、塩酸ジフェニルピラリン、酒石酸フェニンダミン、マレイン酸アザタジン、塩酸トリペレナミン、マレイン酸デキスクロロフェニラミン、塩酸メチジラジン、酒石酸トリムプラジンなど);
カルシウム調節に有効な物質(例えば、カルシトニン、副甲状腺ホルモンなど);
抗細菌薬(例えば、セファロスポリン類(例えば、セファゾリンナトリウム、セファラジン、セファクロア、セファピリンナトリウム、セフチゾキシムナトリウム、セフォペラゾンナトリウム、セフォテタンジソヂウム、セフトキシムアゾチル、セフォタキシムナトリウム、セファドロキシル一水塩、セフタジジム、セファレキシン、セファロチンナトリウム、塩酸セファレキシン1水塩、セファマンドールナフェート、セフォキシチンナトリウム、セフォニシドナトリウム、セフォラニド、セフトリアキソンナトリウム、セフタジジム、セファドロキシル、セフラジン、セフロキシムナトリウムなど)、ペニシリン類(例えば、アンピシリン、アモキシリン、ペニシリンGベンザジン、シクラシリン、アンピシリンナトリウム、ペニシリンGカリウム、ペニシリンVカリウム、ピペラシリンナトリウム、オキサシリンナトリウム、塩酸バカムピシリン、クロキサシリンナトリウム、チカルシリン二ナトリウム、アズロシリンナトリウム、カルベニシリンインダニルナトリウム、ペニシリンGカリウム、ペニシリンGプロカイン、メチシリンナトリウム、ナフシリンナトリウムなど)、エリスロマイシン類(エチルコハク酸エリスロマイシン、エリスロマイシン、エリスロマイシンエストレート、エリスロマイシンラクトビオネート、エリスロマイシンシエアレート、エチルコハク酸エリスロマイシンなど)、テトラサイクリン類(塩酸テトラサイクリン、ドキシシクリンヒシレート、塩酸ミノシクリンなど)など);
【0036】
抗感染症薬(例えば、GM−CSF);
気管支拡張薬(例えば、交感神経作用薬(例えば、塩酸エピネフリン、硫酸メタプロテレノール、硫酸テルブタリン、イソエタリン、メシル酸イソエタリン、塩酸イソエタリン、硫酸アルブテロール、アルブテロール、ビトルテロール、塩酸メシル酸イソプロテレノール、硫酸テルブタリン、バルビツール酸エピネフリン、硫酸メタプロテレノール、エピネフリン、二酒石酸エピネフリン)、抗コリン作用薬(例えば、臭化イプラトロピウム)、キサンチン(例えば、アミノフィリン、ジフィリン、硫酸メタプロテレノール、アミノフィリン)、肥満細胞安定剤(例えば、クロモリンナトリウム)、吸入性コルチコステロイド(例えば、フルリソリデベクロメタソンジプロピオネート、ベクロメタソンジプロピオネート一水和物)、サルブタモール、ベクロメタソンジプロピオネート(BDP)、臭化イプラトロピウム、ブデソニド、ケトチフェン、サルメテロール、キシナフォエート、硫酸テルブタリン、トリアムシノロン、テオフィリン、ネドクロミルナトリウム、硫酸メタプロテレノール、アルブテロール、フルニソリドなど);
ホルモン(例えば、アンドロゲン(例えば、ダナゾール、テストステロンシピオネート、フルオキシメステロン、エチルトストステロン、テストステロンエナニヘート、メチルテストステロン、フルオキシメステロン、テストステロンシピオネート)、エストロゲン(例えば、エストラジオール、エストロピペート、抱合エストロゲン)、プロゲスチン(例えば、酢酸メトキシプロゲステロン、酢酸ノルエチンドロン)、コルチコステロイド(例えば、トリアムシノロン、ベータメタゾン、リン酸ベータメタゾンナトリウム、デキサメタゾン、リン酸デキサメタゾンナトリウム、酢酸デキサメタゾン、プレドニソン、酢酸メチルプレドニソロン懸濁物、トリアムシノロンアセトニド、メチルプレドニソロン、リン酸プレドニソロンナトリウム、コハク酸メチルプレドニソロンナトリウム、コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム、コハク酸メチルプレドニソロンナトリウム、トリアムシノロンヘキサカトニド、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンシピオネート、プレドニソロン、酢酸フルオロコルチゾン、酢酸パラメタゾン、プレドニソロンテブレート、酢酸プレドニソロン、リン酸プレドニソロンナトリウム、コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウムなど)、甲状腺ホルモン(例えば、レボチロキシンナトリウム)など)など;
【0037】
低血糖薬(例えば、ヒト挿入、精製ウシインスリン、精製ブタインスリン、グリブリド、クロルプロパミド、グリピジド、トルブタミド、トラザミドなど);
低脂血症薬(例えば、クロフィブレート、デキストロチロキシンナトリウム、プロブコール、ロバスタチン、ナイアシンなど);
タンパク質(例えば、DNase、アルギナーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、リパーゼなど);
核酸(例えば、上記タンパク質のいずれかを含む治療的に有効なタンパク質をコードするセンスまたはアンチセンス核酸など);
赤血球形成刺激に有用な薬剤(例えば、エリスロポエチン);
抗潰瘍/抗反射薬(例えば、ファモチジン、シメチジン、塩酸ラニチジンなど);
【0038】
制吐薬/鎮吐薬(例えば、塩酸メクリジン、ナビロン、プロクロルペラジン、ジメンヒドリネート、塩酸プロメタジン、チエチルペラジン、スコポラミンなど);
脂溶性ビタミン(例えば、ビタミンA、D、E、Kなど);
ならびに、ミトタン、ビサジン、ハロニトロソ尿素、アントロシクリン、エリプチシンなどの他の薬剤。
【0039】
本発明の実施での使用が意図される診断用物質の例には、超音波造影剤、放射性造影剤(例えば、ヨード−オクタン、ハロカーボン、レノグラフィンなど)、磁性造影剤(例えば、フルオロカーボン、脂溶性常磁性化合物など)、ならびにその実質的な水不溶性を許容するためのその一部の物理的および/または化学的修飾無しでは容易に送達できない診断用物質がある。
本発明の実施での使用が意図される栄養的価値のある物質の例には、アミノ酸、糖、タンパク質、炭水化物、脂溶性ビタミン(例えば、ビタミンA、D、E、Kなど)または脂肪、またはこれらの任意の2つまたはそれ以上の組合せがある。
多くの生体適合性ポリマーが、実質的に水不溶性薬理活性物質を取り囲むポリマー殻の形成のための、本発明の実施に使用できる。その構造内にスルフヒドリル基またはジスルフィド結合を随時有する、天然のまたは合成の基本的にすべてのポリマーは、実質的に水不溶性薬理活性物質の粒子の周りにジスルフィド架橋した殻を調製するのに使用される。スルフヒドリル基またはジスルフィド結合は、ポリマー構造中にあらかじめ存在してもよいし、または適当な化学的修飾により導入してもよい。例えば、タンパク質、ペプチド、ポリ核酸、多糖(例えば、デンプン、セルロース、デキストラン、アルギン酸塩、キトサン、ペクチン、ヒアルロン酸など)、プロテオグリカン、脂質タンパク質などの天然のポリマーは、そのような修飾のための候補である。
【0040】
本発明に従って安定剤としての使用が意図されるタンパク質には、アルブミン(35個のシステイン残基を有する)、免疫グロブリン、カゼイン、インスリン(6個のシステイン残基を有する)、ヘモグロビン(6個のシステイン残基を有する)、リゾチーム(9個のシステイン残基を有する)、免疫グロブリン、α−2−マクログロブリン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、フィブリノゲン、リパーゼなどがある。タンパク質、ペプチド、酵素、抗体、およびこれらの組合せは、本発明での使用が意図される一般的なクラスの安定剤である。
ポリマー殻の形成に使用される本発明の好適なタンパク質は、アルブミンである。既知のオプソニンであるα−2−マクログロブリンのようなタンパク質が、殻に入ったマクロファージ様細胞による、実質的に水不溶性の薬理活性物質の粒子の摂取を増強するために、または肝臓や脾臓への殻に入った粒子の摂取を増強するために、使用できるであろう。具体的な位置のナノ粒子をターゲティングするために、具体的な抗体も使用される。
【0041】
同様にシステイン残基を含有する合成ポリペプチドも、実質的に水不溶性の薬理活性物質の周りの殻の形成のための良好な候補である。さらにポリビニルアルコール、メタクリル酸ポリヒドロキシエチル、ポリアクリル酸、ポリエトキシオキサゾリン、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドンなどは、化学的修飾(例えば、スルフヒドリル基および/またはジスルフィド結合の導入による)および殻形成(その架橋を引き起こすことによる)の良好な候補である。例えば本発明での実施が意図されるものは、システイン残基および/またはジスルフィド基を含有する合成ポリアミノ酸;遊離スルフヒドリル基および/またはジスルフィド基を含有するように修飾したポリビニルアルコール;遊離スルフヒドリル基および/またはジスルフィド基を含有するように修飾したメタクリル酸ポリヒドロキシエチル;遊離スルフヒドリル基および/またはジスルフィド基を含有するように修飾したポリアクリル酸;遊離スルフヒドリル基および/またはジスルフィド基を含有するように修飾したポリエチルオキサゾリン;遊離スルフヒドリル基および/またはジスルフィド基を含有するように修飾したポリアクリルアミド;遊離スルフヒドリル基および/またはジスルフィド基を含有するように修飾したポリビニルピロリドン;遊離スルフヒドリル基および/またはジスルフィド基を含有するように修飾したポリアルキレングリコール;遊離スルフヒドリル基および/またはジスルフィド基を含有するように修飾した、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、またはこれらの共重合体;ならびにこれらの任意の2つまたはそれ以上の組合せがある。
【0042】
本発明の組成物の製造において、実質的に水不溶性の薬理活性物質を懸濁または溶解するために多種類の有機媒体を使用することができる。本発明の実施での使用が意図される有機媒体には、薬理活性物質を懸濁または溶解することができるが、殻を作成するために使用されるポリマーと化学的に反応しない任意の非水性液体、または薬理活性物質自身を含む。例としては、植物油(例えば、大豆油、オリーブ油など)、ココナツ油、べにばな油、綿実油、ゴマ油、オレンジ油、リモネン油、4〜30個の炭素原子を有する脂肪族、脂環式、または芳香族炭化水素(例えば、n−ドデカン、n−デカン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、ベンゼンなど)、2〜30個の炭素原子を有する脂肪族または芳香族アルコール(例えば、エチルカプリレート(オクタノエート)など)、2〜30個の炭素原子を有するアルキルi、アリール、または環状エーテル(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなど)、1〜30個の炭素原子を有するアルキルまたはアリールハロゲン化物(および随時2つ以上のハロゲン置換基を有する、例えばCHCl、CHCl、CHCl−CHClなど)、3〜30個の炭素原子を有するケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトンなど)、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコールなど)、またはこれらの任意の2つまたはそれ以上の組合せがある。
【0043】
本発明の実施での使用が意図される有機媒体の特に好適な組合せは、典型的には沸点が約200℃以下であり、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル、ベンゼンなどの揮発性液体(すなわち、薬理活性物質に対して高度の溶解度を有し、かつ使用される他の有機媒体に可溶性である溶媒)を、高分子量(揮発性が低い)有機媒体とともに含有する。他の有機媒体に加えられる時、これらの揮発性添加物は、有機媒体への薬理活性物質の溶解を促進する。この工程は通常時間がかかるため、これは好ましいことである。溶解後、揮発性成分は溶媒の留去(随時、真空下で)により除去することができる。
【0044】
上記のように調製されたポリマー殻と会合した薬理活性物質の粒子は、生体適合性水性液体中の懸濁物として送達される。この液体は、水、食塩水、適当な緩衝物を含有する溶液、栄養物質(例えば、アミノ酸、糖、タンパク質、炭水化物、ビタミンまたは脂肪など)を含有する溶液から選択される。
本発明の範囲と精神内にあっていくつかの変更が可能であることを、当業者は容易に理解するであろう。ポリマー殻の壁の形成において、ポリマー殻内の有機媒体は多様であり、種々の薬理活性物質が利用でき、かつ広範囲のタンパク質ならびに他の天然および合成のポリマーが使用できる。応用もまた広範囲である。薬剤、診断用物質(イメージング応用において)、人工血液および非経口性栄養物質の送達のような生物医学的応用以外に、本発明のポリマー殻構造物は、スキンクリームまたはヘアケア製品のような化粧品での応用、香水への応用、感圧性インクなどへの応用に導入される。
【0045】
以下の非限定例を参照して本発明をさらに詳細に説明する。
【0046】
実施例1
高圧ホモジナイゼーションによるナノ粒子の製造
30mgのパクリタキセルを3.0mlの塩化エチレンに溶解する。この溶液を27.0mlのヒト血清アブミン(abumin)溶液(1%w/v)に加えた。粗エマルジョンを形成するために、この混合物を低RPM(Vitrisホモジナイザー、モデル:Tempest I.Q.)で5分間ホモジナイズし、次に高圧ホモジナイザー(Avestin)に移した。エマルジョンを少なくとも5サイクル再循環させながら、エマルジョン化を9000〜18,000psiにおいて行なった。得られた系をRotaxy蒸発器中に移し、塩化メチレンを40℃、減圧(30mmHg)において20〜30分間にわたって迅速に除去した。得られた分散系は半透明であり、得られたパクリタキセル粒子の典型的な直径は160〜220(Z−平均、Malvern Zetasizer)であった。
この分散系をクリオプロテクタント(cryoprotectant)を加えずにさらに48時間凍結乾燥した。得られたケーキは無菌水又は生理食塩水の添加によってオリジナル分散系に容易に再構成することができた。再構成後の粒度は凍結乾燥前と同じであった。
【0047】
実施例2
超音波処理によるナノ粒子の製造
この実施例の目的は、超音波処理プロセス中にキャビテーションと高い剪断力とを用いることによる、パクリタキセルのナノ粒子(nanoparticle)の形成を実証することである。したがって、20mgのパクリタキセルを1.0mlの塩化エチレンに溶解する。この溶液を4.0mlのヒト血清アブミン溶液(5%w/v)に加える。粗エマルジョンを形成するために、この混合物を低RPM(Vitrisホモジナイザー、モデル:Tempest I.Q.)で5分間ホモジナイズし、次に40KHzソニケーター・セル(sonicator cell)に移す。ソニケーターを60〜90%出力で0度において1分間作用させる(550 Sonic Dismembrator)。この混合物をRotary蒸発器に移して、塩化メチレンを40℃、減圧(30mmHg)において20〜30分間にわたって迅速に除去する。得られたパクリタキセル粒子の典型的な直径は350〜420nm(Z−平均、Malvern Zetasizer)であった。
この分散系をクリオプロテクタントを加えずにさらに48時間凍結乾燥した。得られたケーキは無菌水又は生理食塩水の添加によってオリジナル分散系に容易に再構成することができた。再構成後の粒度は凍結乾燥前と同じであった。
【0048】
実施例3
慣用的な界面活性剤とタンパク質との使用は大きい結晶の形成を生じる
以下の実施例は、慣用的な溶媒蒸発方法に用いられる界面活性剤を加えることの効果を実証する。実施例1に述べた方法と同様な方法を用いて、一連の実験を行ったが、例えばTween 80(1%〜10%)のような界面活性剤を有機溶媒に加える。塩化メチレンの除去後に、光学顕微鏡検査によって及び偏光下で観察すると、1〜2ミクロンの平均サイズを有する多数のパクリタキセル結晶が得られることが発見された。これらの結晶は数時間内に成長して、約5〜15ミクロンの範囲内のサイズを有する非常に大きい針状結晶を形成する。他の一般的に用いられる界面活性剤、例えばPluronic F−68、Pluronic F 127、Cremophor ELとBrij 58によっても、同様な現象が観察される。
【0049】
これらの結果から、例えばアルブミンのようなタンパク質と組み合わせて慣用的な界面活性剤を用いた、慣用的な溶媒蒸発方法が極性溶媒(例えば、塩化メチレン)を用いる、ポリマーコアなしの、ミクロン未満薬物粒子(例えば、パクリタキセル)の形成に適さないと結論することができる。
【0050】
実施例4
慣用的な界面活性剤のみの使用は大きい結晶を生じる
この実施例は、極性の水不混和性溶剤(例えば、クロロホルム)中に溶解性である薬理学的活性剤に関して、慣用的界面活性剤を、ポリマーコア物質なしで、用いて、ナノ粒子を形成することが不可能であることを実証する。
30mgのTaxolを0.55mlのクロロホルム及び0.05mlのエタノールに溶解する。この溶液を、1%クロロホルムによって前飽和された(presaturated)、29.4mlのTween 80溶液(1%w/v)に加える。粗エマルジョンを形成するために、この混合物を低RPM(Vitrisホモジナイザー、モデル:Tempest I.Q.)で5分間ホモジナイズし、次に高圧ホモジナイザー(Avestin)に移す。エマルジョンを少なくとも6サイクル再循環させながら、エマルジョン化を9000〜18,000psiにおいて行なう。得られた系をRotaxy蒸発器中に移し、クロロホルムを40℃、減圧(30mmHg)において15〜30分間にわたって迅速に除去した。得られた分散系は不透明であり、薬物の大きい針状結晶を含有した。結晶の初期サイズ(偏光によっても観察した)は0.7〜5ミクロンであった。この分散系を室温において数時間貯蔵すると、結晶サイズはさらに増大し、最後には沈降した。
【0051】
実施例5
200nm未満の無菌−濾過可能なナノ粒子の製造
この実施例は、無菌−濾過可能な薬物粒子を得ることができる方法を説明する。したがって、30mgのTaxolを0.55mlのクロロホルム及び0.05mlのエタノールに溶解する。この溶液を、1%クロロホルムによって前飽和された、29.4mlのヒト血清アブミン溶液(1%w/v)に加える。粗エマルジョンを形成するために、この混合物を低RPM(Vitrisホモジナイザー、モデル:Tempest I.Q.)で5分間ホモジナイズし、次に高圧ホモジナイザー(Avestin)に移す。エマルジョンを少なくとも6サイクル再循環させながら、エマルジョン化を9000〜18,000psiにおいて行なう。得られた系をRotaxy蒸発器中に移し、クロロホルムを40℃、減圧(30mmHg)において15〜30分間にわたって迅速に除去する。得られた分散系は半透明であり、得られたTaxol粒子の典型的な直径は140〜160nm(Z−平均、Malvern Zeta Sizer)である。この分散系を0.22ミクロン・フィルター(Millipore)に通して、濁り度又は粒度の有意な変化なしに、濾過する。Taxol含量のHPLC分析は、濾過後に97%を越えるTaxolが回収され、したがって、無菌Taxol分散系が生じたことを明らかにした。
【0052】
この無菌分散系をクリオプロテクタントを加えずにさらに48時間凍結乾燥した。得られたケーキは無菌水又は生理食塩水の添加によってオリジナル分散系に容易に再構成することができた。再構成後の粒度は凍結乾燥前と同じであった。
【0053】
実施例6
200nm未満の無菌−濾過可能なナノ粒子の製造
この実施例は、無菌−濾過可能な薬物粒子を得ることができる方法を説明する。したがって、225mgのTaxolを2.7mlのクロロホルム及び0.3mlのエタノールに溶解する。この溶液を97mlのヒト血清アブミン溶液(3%w/v)に加える。粗エマルジョンを形成するために、この混合物を低RPM(Vitrisホモジナイザー、モデル:Tempest I.Q.)で5分間ホモジナイズし、次に高圧ホモジナイザー(Avestin)に移す。エマルジョンを少なくとも6サイクル再循環させながら、エマルジョン化を9000〜18,000psiにおいて行なう。得られた系をRotaxy蒸発器中に移し、クロロホルムを40℃、減圧(30mmHg)において15〜30分間にわたって迅速に除去する。得られた分散系は半透明であり、得られたタキソール粒子の典型的な直径は140〜160nm(Z−平均、Malvern Zeta Sizer)である。この分散系を0.22ミクロン・フィルター(Sartorius、Sartobran 300)に通して、濁り度又は粒度に有意な変化なしに、濾過する。Taxol含量のHPLC分析は典型的に、用いる条件に依存して、濾過後に70〜100%のタキソールが回収されうることを明らかにした。したがって、無菌Taxol分散系が得られた。
【0054】
この無菌分散系を無菌的に無菌ガラスバイアル中に充填して、クリオプロテクタントを加えずに凍結乾燥した。得られたケーキは無菌水又は生理食塩水の添加によってオリジナル分散系に容易に再構成することができた。再構成後の粒度は凍結乾燥前と同じであった。
【0055】
実施例7
有機溶剤の相フラクションの粒度に対する効果
以下の実施例は系中に有機溶剤の異常に低い相フラクション(phase fraction)を有することの重要性を実証する。
したがって、有機溶剤の相フラクションを変えて、有機相中のエタノール含量を10%v/vに維持したことを除いて、実施例5に述べた方法と同じ方法に従って、一連の実験を行った。相フラクションを高めると、粒度の顕著な増大が生じる:4%v/vの相フラクション(飽和濃度又は5%v/v総クロロホルム濃度を越える)では、得られる粒子は250nmの直径を有する;3%v/vの相フラクションでは、粒子は200nmの直径を有する;2%v/vの相フラクションでは、粒子は150nmの直径を有することが発見された。
明らかに、非常に低い相フラクションで製造された粒子のみを無菌−濾過することができた。
【0056】
実施例8
粒度に対する薬物濃度の効果
有機相中の薬物濃度の役割を以下の実施例で実証する。有機相中のTaxol濃度が50mg/ml又は75mg/mlであり、他の全てのパラメーターが実施例3に述べたものと同じである2回の実験をおこなった。低い薬物濃度は約150nmの直径を有する粒子を生じ、高い薬物負荷で製造された粒子はより小さい、即ち130〜138nmであることが発見された。有機相中の約50%のエタノール濃度によって同様な実験を行った場合に、同様な傾向が観察された、即ち、25mg/mlと50mg/mlの薬物濃度に対して粒子はそれぞれ直径210nmと156nmであった。
【0057】
これらの発見はSjostrom等が上記文献において界面活性剤の存在下でのナノ粒子の形成に関して報告した結果を直接否定する。
【0058】
実施例9
モデル薬物のナノ粒子形成
30mgのIsoresorpine(モデル薬物)を3.0mlの塩化メチレンに溶解する。この溶液を27.0mlのヒト血清アブミン溶液(1%w/v)に加える。粗エマルジョンを形成するために、この混合物を低RPM(Vitrisホモジナイザー、モデル:Tempest I.Q.)で5分間ホモジナイズし、次に高圧ホモジナイザー(Avestin)に移す。エマルジョンを少なくとも5サイクル再循環させながら、エマルジョン化を9000〜18,000psiにおいて行なう。得られた系をRotaxy蒸発器中に移し、塩化メチレンを40℃、減圧(30mmHg)において20〜30分間にわたって迅速に除去する。得られた分散系は半透明であり、得られたパクリタキセル粒子の典型的な直径は120〜140nm(Z−平均、Malvern Zetasizer)であった。この分散系を0.22ミクロン・フィルター(Millipore)に通して濾過した。
【0059】
この無菌分散系を、クリオプロテクタントを加えずに、さらに48時間凍結乾燥した。得られたケーキは無菌水又は生理食塩水の添加によってオリジナル分散系に容易に再構成することができた。再構成後の粒度は凍結乾燥前と同じであった。
【0060】
実施例10
モデル薬物による極小粒子の形成
粒度の縮小に対するエタノール添加の効果をIsoreserpineに関して実証する。したがって、30mgのIsoresorpineを2.7mlの塩化メチレン及び0.3mlのエタノールに溶解する。この溶液を27.0mlのヒト血清アブミン溶液(1%w/v)に加える。粗エマルジョンを形成するために、この混合物を低RPM(Vitrisホモジナイザー、モデル:Tempest I.Q.)で5分間ホモジナイズし、次に高圧ホモジナイザー(Avestin)に移す。エマルジョンを少なくとも5サイクル再循環させながら、エマルジョン化を9000〜18,000psiにおいて行なう。得られた系をRotaxy蒸発器中に移し、塩化メチレンを40℃、減圧(30mmHg)において20〜30分間にわたって迅速に除去する。得られた分散系は半透明であり、得られたパクリタキセル粒子の典型的な直径は90〜110nm(Z−平均、Malvern Zetasizer)であった。この分散系を0.22ミクロン・フィルター(Millipore)に通して濾過した。
【0061】
この無菌分散系を、クリオプロテクタントを加えずに、さらに48時間凍結乾燥した。得られたケーキは無菌水又は生理食塩水の添加によってオリジナル分散系に容易に再構成することができた。再構成後の粒度は凍結乾燥前と同じであった。
【0062】
実施例11
薬物によって過飽和された、水混和性溶剤のみの使用
−本発明の方法に適さず
30mgのTaxolを0.6mlのエタノール中に分散させる。この濃度(50mg/ml)において、Taxolは完全には溶解せず、過飽和分散系を形成する。この分散系を29.4mlのヒト血清アブミン溶液(1%w/v)に加える。粗エマルジョンを形成するために、この混合物を低RPM(Vitrisホモジナイザー、モデル:Tempest I.Q.)で5分間ホモジナイズし、次に高圧ホモジナイザー(Avestin)に移す。エマルジョンを少なくとも6サイクル再循環させながら、エマルジョン化を9000〜18,000psiにおいて行なう。得られた系をRotaxy蒸発器中に移し、エタノールを40℃、減圧(30mmHg)において15〜30分間にわたって迅速に除去する。得られた分散系の粒度は極めて広範囲であり、約250nmから数ミクロンまでの範囲である。
【0063】
顕微鏡下での観察は、Taxolの大きい粒子と典型的な針状結晶との存在を明らかにした。これらの粒子は静脈内注射のために大きすぎた。この実験は、水中に自由に混和する例えばエタノールのような溶剤を本発明の方法に用いると、非常に広範囲な粒度分布を有し、そのようなものとして単独では本発明の方法に用いられることができない大きい粒子の形成を生じることを実証する。したがって、本発明の方法は特に、薬物成分の溶解又は分散のために単独で用いる場合の水混和性溶剤の使用を排除する。本発明の方法は、このような溶剤を用いる場合には、本発明のナノ粒子の製造を可能にするために、このような溶剤を本質的に水不混和性溶剤と混合しなければならないことを要求する。
【0064】
実施例12
溶解した薬物を含有する水混和性溶剤のみの使用
−本発明の方法に適さず
30mgのTaxolを1.3mlのエタノール中に分散させる。この濃度(約24.5mg/ml)において、Taxolはエタノール中に完全に溶解する。この溶液を28.7mlのヒト血清アブミン溶液(1%w/v)に加える。粗分散系を形成するために、この混合物を低RPM(Vitrisホモジナイザー、モデル:Tempest I.Q.)で5分間ホモジナイズし、次に高圧ホモジナイザー(Avestin)に移す。エマルジョンを少なくとも6サイクル再循環させながら、エマルジョン化を9000〜18,000psiにおいて行なう。得られた系をRotaxy蒸発器中に移し、エタノールを40℃、減圧(30mmHg)において15〜30分間にわたって迅速に除去する。得られた分散系の粒度は極めて広範囲であり、約250nmから数ミクロンまでの範囲である。
【0065】
上記実施例11の他に、この実施例は、水中で自由に混和性である例えばエタノールのような溶剤を本発明の方法に用いると、非常に広範囲な粒度分布を有し、そのようなものとして単独では本発明の方法に用いられることができない大きい粒子の形成を生じることを実証する。したがって、本発明の方法は特に、薬物成分の溶解又は分散のために単独で用いる場合の水混和性溶剤の使用を排除する。本発明の方法は、このような溶剤を用いる場合には、本発明のナノ粒子の製造を可能にするために、このような溶剤を本質的に水不混和性溶剤と混合することを必要とする。
【0066】
実施例13
X粉末回折によるナノ粒子形中のパクリタキセルの物理的状態の測定
パクリタキセル原料物質は通常、典型的に5〜500ミクロンの種々なサイズの針状結晶として存在する。静脈内注射用の薬物製剤中の結晶の存在は、結晶が数ミクロンを越えるサイズで存在する場合には、毛細血管の閉塞の可能性のために明らかに不利である。さらに、薬物結晶の溶解性は一般に、非晶質薬物の溶解性よりも低いので、静脈内投与後の薬物の生体内利用可能性(bioavailability)を低下させる。製剤中の薬物負荷(drug loading)が増加すると、結晶化傾向も増大することも知られている。したがって、製剤が本質的に非晶質形の薬物を含有することが有利である。
【0067】
X線粉末回折を用いて、凍結乾燥した粉末製剤中のパクリタキセルが結晶質であるか又は非晶質であるかを判定した。下記サンプルを分析した、サンプル1−パクリタキセル粉末;サンプル2−凍結乾燥した血清アルブミン;サンプル3−パクリタキセルとアルブミンとの物理的混合物;及びサンプル4−製剤化されたパクリタキセル。各サンプルを、CuKα線、40KeV/30mAの加速電圧(accelerating voltage)、0.05゜2θのステップサイズ(step size)及び2.0秒間/ステップのデータ獲得時間(data acquisition time)を用いて、2゜から70゜2θ角度までX線分析した。サンプル1は結晶質サンプルに典型的な強いピークを示した。最も強いピークは5.1゜2θに存在した。サンプル2は非晶質物質に典型的な幅広い丘(hump)を示した。サンプル3は大ざっぱにはサンプル2の幅広い丘を示したが、さらに、パクリタキセルの5.1゜2θにおけるピークも見られた。サンプル4、製剤化されたパクリタキセルはパクリタキセルに特徴的な結晶質の徴候を示さず、サンプル2と同じであるように見え、このことは製剤化サンプル中の実質的に非晶質な薬理学的活性剤の存在を示唆した。
【0068】
本発明によって製造されたナノ粒子の非晶質性は、ナノ粒子の製造に関して当該技術分野において述べられた他の方法によって製造された製品とは直接対照的である。例えば、米国特許第5,145,684号(Liversidge等)に述べられたような、またLiversidgeーMerisko等によってPharmaceutical Research 13(2):272〜278(1996)に述べられたような磨砕方法の使用は、実質的に結晶質の製品を生じる。
【0069】
実施例14
動物モデルでの腫瘍のパクリタキセル・ナノ粒子による治療
パクリタキセル(paclitaxel)(タキソール:taxol)のナノ粒子を実施例1で前記したようにして製造した。薬剤のこの製剤をマウスのMX−1ヒト乳腺癌異種移植モデルで試験した。マウスにMX−1ヒト乳腺癌を皮下移植し、その腫瘍の大きさが約150−300mgに達したとき治療を開始した。これは12日目までに起こり、従って治療を最初の接種後13日目に開始した。
【0070】
腫瘍を持つマウスを、食塩水中懸濁液としてボーラス静脈注射することにより連続5日間与えられる用量20mg/kgのパクリタキセル・ナノ粒子により治療した。治療群に含まれるマウスは5匹であった。5匹の対照腫瘍保持群は、同じスケジュールで食塩水だけを受けたものであった。腫瘍の大きさを時間の関数としてモニターした。対照群は腫瘍重量にはなはだしい増加を示した。この群のマウスは全て28日目と39日目の間に犠牲にされた。他方、治療群は顕著な治療効力を示し、その全マウスに25日目までに測定可能な腫瘍はなかった。この群のマウスは39日目に全て犠牲にされたが、この時点でそれらマウスには再発の形跡及び腫瘍の形跡を認められなかった。結果を図1に示す。
【0071】
実施例15
動物モデルでのリウマチ性関節炎のパクリタキセル・ナノ粒子による治療
ローベインラット(Louvain rat)のコラーゲン誘発関節炎モデルを用いて関節炎に対するパクリタキセル・ナノ粒子の治療効果を試験した。この実験動物の足サイズをモニターして関節炎のひどさを評価した。
関節炎を完全に発症させた後(通常はコラーゲンを注射して〜9−10日後)、実験動物を、3週間にわたり6用量/週、次いで1用量/週について、パクリタキセル・ナノ粒子1mg/kg q.o.d.か、またはパクリタキセル・ナノ粒子0.5mg/kg+プレドニゾン(Prednison)0.2mg/kg q.o.d.(組み合わせ治療)のいずれかを腹膜内に受ける異なる群に分けた。足サイズを治療開始時(0日目)および薬剤が注射される度毎に測定した。1つの群は対照として標準食塩水だけを受けたものであった。実験の終わりまでに、パクリタキセル・ナノ粒子を受けた群は足サイズに42%低下を達成し、組み合わせ治療群は33%の足サイズの低下を示したが、他方対照群は足サイズに約20%の増加があった。関節炎誘発前の元の足サイズは50%であった。結果を図2に示す。
【0072】
結論として、パクリタキセル含有ナノ粒子には関節炎に対して治療効果があることが証明された。パクリタキセルとステロイドの両者の長期使用による副作用を避けるためには、同様の効果が得られるが、各薬剤の投与量が半分に過ぎない組み合わせ治療を選ぶ方が多分よい。
【0073】
実施例16
ナノ粒子の生体内標的化
ナノ粒子の蛋白質のコーティングに蛋白質、抗体、酵素、ペプチド、オリゴヌクレオチド、糖、多糖類等のようなある種特定の標的成分を組み込むことにより、体の特定部位を標的化することが可能である。この標的能は治療または診断の目的に利用することができる。
【0074】
実施例17
各種材料から処方した静脈デリバリーシステム
静脈デリバリーシステムの製造に使用される材料は、高分子材料(例えば、ポリエチレン、ポリビニル、ポリプロピレンの管材料等)またはガラスであることができる。標準的な医療等級管材料はその内表面に疎水性成分を含むことが知られている。これらの成分は従って注射液と接触するのに利用可能である。実際、そのような管材料は、カテーテルがそうであるように、疎水性成分を治療溶液と接触状態で存在させ、かくしてその管材料に対する水性材料の吸収を低下させるべく特注で製造される。しかし、治療溶液においては如何なる疎水性成分もカテーテルの管材料と、デリバリーシステムの他の成分の両方に結合する可能性がある。その結果、薬理活性のある疎水性試剤の実質的な部分が管材料のカテーテルおよびデリバリー容器の内壁中に補足されるようになる可能性がある。結局、薬理活性のある疎水性試剤の実質的な部分が管材料の壁に吸着されるようになり得るので、その活性試剤の投与は不規則である。薬理活性のある疎水性試剤が疾病の治療に用いられる臨界治療処置では、活性試剤の有効用量に有意の低下があると、治療の失敗に至る可能性がある。この失敗は、活性試剤がある一定レベル以上存在することを必要とし、しかも治療の窓が狭い治療成分を用いるとき、特に顕著である。
【0075】
薬理活性のある疎水性試剤の新規な動脈内導入法が今やここに開発された。この活性試剤の疎水性成分を生体適合性コーティング(例えば、アルブミン)の疎水性成分との会合を通じて保護することによって、管材料に結合されるようになる活性試剤の性向は劇的に低下される。かくして、本発明は、高度に疎水性の薬剤の、薬剤が保護され、従って表面には吸着されない標準的な医療等級重合体および疎水性ガラスとの併用を可能にする。本発明の方法は、生体適合性重合体(例えば、アルブミン)の保護コーティングを疎水性薬剤の囲りに配置し、そして得られた組成物を疎水性の高分子デリバリーシステム中に入れることから成る。本発明の方法は、従って、各種の疎水性治療薬の送達性を改善する能力がある。
【0076】
実施例18
治療薬の静脈内投与
治療薬、例えば薬剤、撮像剤等の静脈内投与は治療薬をして肝臓を少なくとも1回前もって通過させるようにする。その治療薬は肝臓により濾過されるので、その治療薬の有意の部分が肝臓で吸収、捕捉され、従って全身性分布には役に立たなくなる。さらに、肝臓で一旦吸収されると、それは代謝される可能性があり、得られる代謝副産物は全身性の一般毒性を持っていることが多い。薬剤、その他の治療剤を、(例えば、アルブミンのようなタンパク質を用いる)本発明によるコーティングの中にカプセル封入することによって、静脈内投与時の肝臓による捕捉が緩和される。アルブミンは、例えば、肝臓を通過し、そして患者の全身に一般に分布するようになることが知られている。しかして、アルブミンの肝臓による捕捉は、肝臓レセプタ(または他の機構)を有し、それらレセプタを血流から除去するプロセスを開始する有毒化合物または薬剤と同程度には起こらない。治療薬を生体適合性重合体のコーティング(例えば、ヒトアルブミンのコーティング)で保護することにより、薬剤は次いで肝臓を迂回し、そして一般にあらゆる器官の系を通って分布される。本発明の1つの態様によれば、薬剤をヒトの肝臓アルブミン(本質的には生理的成分)中にカプセル封入することから成る、新規な肝臓迂回法が提供される。こうして、薬剤のより多くのものが全身性治療に利用可能になる。薬剤の利用可能性の増大に加えて、肝細胞の薬剤分解代謝副産物の生成が減少する。肝臓迂回の増加と薬剤の代謝副産物の減少は、薬剤の総合的な効力を相乗的に改善する。この改善された効力は、ヒトアルブミン中にカプセル封入されるあらゆる薬剤及び物質に及ぶ。
【0077】
実施例19
薬剤の骨髄球抑制作用と一般毒性の低下
幾つかの化学療法剤にはそれらの骨髄球抑制作用に因る用量制限毒性がある。タキソール(パクリタキセル)がそのような薬剤の標準的な1例である。それが現在承認されているクレマフォア(cremaphor)/エタノール製剤として投与されると、タキソールは、患者の血球数を正常値に戻すのを可能にするために、薬剤の反復投与を制限し、患者の再治療を少なくとも3週間妨げる骨髄球抑制作用を生む。本発明の薬剤キャリアー、即ちヒトアルブミンが持つ毒性のない相溶性に因り、骨髄球抑制の有毒な副作用は著しく低下される得ることが仮定された。
スプラグ・ドーレイ・ラット(Sprague dawley rat)に、市販の製剤(ブリストール・マイヤー・スクイッブ社(Bristol Myers Squibb:BMS)からクレマフォア/エタノールとして入手できる)としての、または本発明の方法によりアルブミンを含むナノ粒子として製造されたパクリタキセルが与えられた。両製剤は尾の静脈注射により投与された。BMS製剤については5mg/kgと言う単一用量レベルが投与されたが、これに対して本発明の製剤[キャプキソール(Capxol)]については5mg/kgと12mg/kgと言う2つの用量レベルが投与された。骨髄球抑制指数としてラットの白血球数を投与後毎日モニターした。
【0078】
BMS製剤(5mg/kg)については、WBC数が投与1日後と2日後にそれぞれ47.6%と63.5%減少したのに対して、5mg/kgレベルのキャプキソール製剤では、、WBC数が1日目と2日目にそれぞれ14.7%と2.4%増加した。12mg/kgレベルのより高用量のキャプキソールでは、WBC数が1日目と2日目にそれぞれ6.5%と3.6%増加した。
これらの結果は薬剤を本発明の製剤で投与することによって短期の骨髄球抑制が著しく低下されることを示している。
【0079】
一般毒性のもう1つのインジケーターは動物の体重である。ラットの体重もパクリタキソールの投与に続いてモニターした。5mg/kgの用量において、BMS製剤は投与3日後に体重を10.4%低下させたが、これに対して本発明の製剤(キャプキソール)で投与された同用量のパクリタキソールは3.9%の体重低下しかもたらさず、本発明製剤では毒性が著しく低下していることが示された。
【0080】
実施例20
ナノ粒子製剤のボーラス用量投与
クレマフォア/エタノールを持つ市販BMS製剤としてのパクリタキソールなる抗癌剤は静脈内ボーラスとして投与することはできない。これは、ひどいアナフィラキシー反応をもたらす賦形剤の広範な毒性に因るもので、その薬剤を受ける患者にステロイド、抗ヒスタミン剤等を予め投薬することが必要とされる。このBMS製剤はどこにおいても1時間から24時間続く静脈内注入として投与される。これに対して、本発明による製剤は、非毒性キャリアーの使用に因り、今日臨床的に私用されているBMS製剤に認められる特性問題なしに、患者に静脈内ボーラスとして容易に(即ち、1時間未満の時間で)投与することができる。
【0081】
パクリタキセルの患者に対する有効用量は、典型的には、患者の体重または体表面に依存して200−500mgである。BMS製剤は(典型的には、約300−1000mLの範囲の)大注入容量を必要とする0.6mg/mLと言う最終投与濃度で投与しなければならない。これに対して、本発明の製剤(例えば、キャプキソール)にはこれらの制限がなく、所望の濃度で投与することができる。このことは、臨床医が数分程度の短時間で投与することができる急速静脈内ボーラスで患者を治療するのを可能にする。例えば、本発明の製剤を20mg/mLの投与濃度に再構成するならば、200−500mgの総用量に対する注入容量はそれぞれ10−25mLに過ぎない。これは臨床実務では大きな利点である。
【0082】
実施例21
市販クレマフォア/エタノール製剤と比較しての、
ナノ粒子中のパクリタキセルの毒性低下
抗癌剤のパクリタキセルはクレマフォア/エタノールを含む市販BMS製剤中で広範な毒性を有し、その毒性がひどいアナフィラキシー反応をもたらし、その薬剤を受ける患者にステロイド、抗ヒスタミン剤等を予め投薬する必要があることはよく知られている.BMS製剤の毒性を本発明のナノ粒子製剤と比較した。
かくして、これら製剤を色々な用量レベルでC57BLマウスの尾の静脈を通して静脈注射し、そしてその注射後マウスを一般的に観察することによりモニターした。
【0083】
BMS製剤では、30mg/kgの用量が、静脈内投与5分以内に一律致死性であった。同じ用量について、本発明によるナノ粒子製剤は明白な毒性作用を示さなかった。用量103mg/kgのナノ粒子製剤がマウスの体重にある低下を示したが、この高用量でも致死性ではなかった。約1000mg/kg、800mg/kgおよび550mg/kgの各用量が全て致死量であったが、致死率に対する時間は異なり、数時間から24時間の範囲であった。本発明製剤の致死量は103mg/kgより多いが、550mg/kgより少ない。
しかして、本発明のパクリタキセル製剤の致死量は市販のBMS製剤の致死量より実質的に高い。これは、毒性が著しく低い、さらに有効な腫瘍細胞崩壊活性を目的として、より高用量の化学療法剤を投与することになろう臨床実務における意義が大きい。
【0084】
実施例22
高圧均質化によるシクロスポリン・ナノ粒子の製造
30mgのシクロスポリンを3.0mLの塩化メチレンに溶かす。その溶液を次にヒト血清アルブミン溶液(1%w/v)27.0mLに添入する。この混合物を、粗エマルジョンを形成するために、低RPM[ビトリス(Vitris)ホモジェナイザー、モデル;テンペスト(Tempest)I.Q.]で5分間均質化処理し、次いで高圧ホモジェナイザー[アベンスチン(Avenstin)]に移す。乳化は9000−18,000psiで行い、同時にそのエマルジョンを少なくとも5サイクル再循環させた。得られた系をロタバップ(Rotavap)に移し、そして塩化メチレンを40℃、減圧(30mm Hg)で20−30分間急速除去した。得られた分散液は半透明で、得られたシクロスポリン粒子の典型的直径は160−200[Z−平均、マルバーン・ゼータサイザー(Malvern Zetasizer)]であった。
【0085】
この分散液をいかなる凍結保護物質も加えずに48時間さらに凍結乾燥した。得られたケーキは滅菌水または食塩水の添加により元の分散液に容易に再構成することができた。再構成後の粒径は凍結乾燥前と同じであった。
【0086】
実施例23
高圧均質化によるシクロスポリン・ナノ液滴
[キャプソリン・オーラル(Capsorine Oral)]の製造
30mgのシクロスポリンを3.0mLの適当なオイル(オレンジ油を10%含むゴマ油)に溶解する。その溶液を次にヒトの血清アルブミン溶液(1%w/v)27.0mLに添入する。この混合物を、粗エマルジョンを形成するために、低RPM[ビトリスホモジェナイザー、モデル;テンペスト(Tempest)I.Q.]で5分間均質化処理し、次いで高圧ホモジェナイザー(アベンスチン)に移す。乳化は9000−18,000psiで行い、同時にそのエマルジョンを少なくとも5サイクル再循環させる。得られた分散液の典型的な直径は160−200(Z−平均、マルバーン・ゼータサイザー)であった。
【0087】
この分散液は所望によって適当な凍結保護物質を加えることにより直接私用することができるか、または48時間凍結乾燥することができた。得られたケーキは滅菌水または食塩水の添加により元の分散液に容易に再構成することができた。
【0088】
実施例24
静脈内投与に続いてのシクロスポリン・ナノ粒子
(キャプソリンI.V.)の薬物動力学(PK)データー
サンドイミューン(Sandimmune)I.V.
[サンドツ社(Sandoz)が現在市販する製剤]との比較
前記(実施例22および23)のようにして製造されたシクロスポリンのナノ粒子(キャプソリンI.V.)を食塩水中で再構成し、スプラグ・ドーレイ・ラット3匹の第一群に静脈ボーラスで投与した。ラット3匹の第二群には、食塩水での希釈後にクレマフォア/エタノールを含むサンドイミューンI.V.を与えた。各群は2.5mg/kgと言う同じ用量を受けた。0、5、15、30(分)、1、2、4、8、24、36および48(時間)の各時間に血液試料を採取した。血液中のシクロスポリンレベルをHPLCで検定し、そして典型的なPKパラメーターを求めた。そのPKカーブは次のとおり時間の経過に対して典型的な減衰挙動を示した:
【0089】
経過時間に対する減衰
AUC,mg-時/mL C最大,ng/mL
キャプソリンI.V. 12,228 2,853
キャプソリンI.V.) 7,791 2,606
【0090】
加えて、サンドイミューンI.V.製剤の毒性に起因して、その群のラット3匹の内2匹が投与後4時間以内に死亡した。しかして、本発明によるナノ粒子製剤(キャプソリンI.V.)は商業的に入手できる製剤(キャプソリンI.V.)と比較してより大きなAUCを示し、かつ毒性がないことを示す。
【0091】
実施例25
経口投与に続いてのシクロスポリン・ナノ液滴
(キャプソリン・オーラル)の薬物動力学(PK)データー
ネオラル(Neoral)(サンドツ社が現在市販する製剤)との比較
前記で製造したシクロスポリンのナノ液滴をオレンジジュースに入れてスプラグ・ドーレイ・ラット3匹の第一群に経口胃管栄養法で投与した。ラット3匹の第二群には、オレンジジュースでの希釈後に乳化剤を含むネオラルを同様に経口胃管栄養法で与えた。各群は同容量のオレンジジュース中の12mg/kgと言う同一用量を受けた。0、5、15、30(分)、1、2、4、8、24、36および48(時間)の各時間に血液試料を採取した。血液中のシクロスポリンレベルをHPLCで検定し、そして典型的なPKパラメーターを求めた。そのPKカーブは次のとおり時間の経過に対して典型的な減衰挙動を示した:
【0092】
経過時間に対する減衰
AUC,mg-時/mL C最大,ng/mL
キャプソリン・オーラル 3,195 887
ネオラル 3,213 690
【0093】
しかして、本発明のナノ液滴製剤(キャプソリン・オーラル)は商業的に入手できる製剤(ネオラル)と同様のPK挙動を示す。
以上、本発明をある特定の好ましい態様を参照して詳細に説明したが、色々な修正および変更もここに説明され、かつ特許請求される本発明の精神と範囲内に入るものであることは了解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛋白質で被覆されている固体または液体の実質的に水不溶性の薬理学的活性薬剤の粒子を含む組成物であって、
上記粒子の平均径は200nm未満であり、該蛋白質被覆は、それに結合されている遊離蛋白質を有しており、
上記実質的に水不溶性の薬理学的活性薬剤の一部が、上記蛋白質被覆物内に含有されており、そして、上記実質的に水不溶性の薬理学的活性薬剤の一部が、上記蛋白質被覆物で取り囲まれている、上記遊離蛋白質に結合されており、
上記粒子は0.22ミクロンのフィルターに通して濾過することができる、
上記組成物。
【請求項2】
上記粒子は、直径200nm未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
上記粒子は、10−200nmのサイズ範囲を有する、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
上記粒子は、50−170nmのサイズ範囲を有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
滅菌濾過される、請求項1から4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
上記薬理学的活性薬剤が固体である、請求項1から5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
上記粒子が、アモルファス、結晶またはそれらの混合物である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
上記粒子が、実質的にアモルファスである、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
上記被覆された粒子が、生体適応性水性液に分散されている、請求項1から8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
上記実質的に水不溶性の薬理学的活性薬剤が、医薬活性剤、診断剤または栄養価を有する薬剤から選択される、請求項1から9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
上記実質的に水不溶性の薬理学的活性薬剤が医薬活性剤である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
上記実質的に水不溶性の薬理学的活性薬剤が、抗新生物剤、麻酔剤、抗炎症剤、免疫抑制剤およびホルモンからなる群から選ばれる、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
上記実質的に水不溶性の薬理学的活性薬剤が抗新生物剤である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
上記抗新生物剤が、アドリアマイシン(adriamycin)、シクロホスファミド(cyclophosphamide)、アクチノマイシン(actinomycin)、ブレオマイシン(bleomycin)、ドーノルビシン(duanorubicin)、ドキソルビシン(doxorubicin)、エピルビシン(epirubicin)、ミトマイシン(mitomycin)、メトトレキセート(methotrexate)、フルオロウラシル(fluorouracil)、カルボプラチン(carboplatin)、カルムスチン(carmustine)(BCNU)、メチル−CCNU、シスプラチン(cisplatin)、エトポシド(etoposide)、インターフェロン(interferon)、カンプトテシン(camptothecin)およびその誘導体、フェネステリン(phenesterine)、パクリタキセル(paclitaxel)およびその誘導体、タキソテレ(taxotere)およびその誘導体、ビンブラスチン(vinblastine)、ビンクリスチン(vincristine)、タモキシフェン(tamoxifen)、エトポシド(etoposide)またはピポスルファン(piposulfan)から選択される、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
上記実質的に水不溶性の薬理学的活性薬剤がタキサン(taxane)である、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
上記タキサン(taxane)がパクリタキセル(paclitaxel)またはその誘導体である、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
上記タキサン(taxane)がパクリタキセル(paclitaxel)である、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
上記ポリマーがアルブミンであり、医薬組成物におけるパクリタキセル全重量に対するアルブミン全重量の比が、9:1である、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
上記タキサン(taxane)がタキソテレ(taxotere)またはその誘導体である、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項20】
上記タキサン(taxane)がタキソテレ(taxotere)である、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
上記実質的に水不溶性の薬理学的活性薬剤が免疫抑制剤である、請求項12に記載の組成物。
【請求項22】
上記免疫抑制剤が、シクロスポリン(cyclosporine)、アザチオプリン(azathioprine)、ミゾリビン(mizoribine)またはFX506[タクロリムス(tacrolimus)]から選択される、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
上記実質的に水不溶性の薬理学的活性薬剤が麻酔剤である、請求項12に記載の組成物。
【請求項24】
上記麻酔剤がプロポフォール(propofol)である、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
上記実質的に水不溶性の薬理学的活性薬剤が抗炎症剤である、請求項12に記載の組成物。
【請求項26】
上記実質的に水不溶性の薬理学的活性薬剤がホルモンである、請求項12に記載の組成物。
【請求項27】
上記ホルモンが甲状腺ホルモンである、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
上記実質的に水不溶性の薬理学的活性薬剤が診断剤である、請求項10に記載の組成物。
【請求項29】
上記診断剤が、超音波造影剤、放射線造影剤、または磁気造影剤から選択される、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
上記実質的に水不溶性の薬理学的活性薬剤が栄養価を有する薬剤である、請求項10記載の組成物。
【請求項31】
上記栄養価を有する薬剤が、アミノ酸類、糖類、蛋白質類、炭水化物類、脂溶性ビタミン類、または脂肪、あるいはそのいずれか2種以上の組合わせから選択される、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
上記蛋白質被覆が、ジスルフィド結合により架橋させた蛋白質を含む、請求項1から31のいずれかに記載の組成物。
【請求項33】
上記蛋白質がアルブミンである、請求項1から32のいずれかに記載の組成物。
【請求項34】
上記アルブミンがヒト血清アルブミンである、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
実質的に界面活性剤を含まない、請求項1から34のいずれかに記載の組成物。
【請求項36】
上記粒子は、ポリマーコアマトリックスを含まない、請求項1から35のいずれかに記載の組成物。
【請求項37】
実質的に水不溶性の薬理学的活性薬剤を含む組成物であって、該組成物は、
そこに分散されている上記薬理学的活性薬剤を含有する有機相であって該有機相は実質的に水不混和性の有機溶剤と水溶性有機溶剤との混合物を含有する有機相、および生体適応性ポリマーを含有する水性媒質を含む混合物であり、かつ実質的に界面活性剤を含まない混合物を、約3000psiから30,000psiまでの範囲の圧力下に、高圧ホモジェナイザーにおいて、高剪断状態に付すことを包含する製造方法であって、かつ、0.22ミクロンのフィルターに通して濾過することができる粒子を製造する、製造方法により製造される生成物を含む、上記組成物。
【請求項38】
インビボ放出用の医薬を製造するための、請求項1から37のいずれかに記載の組成物の使用。
【請求項39】
腫瘍を治療する医薬を製造するための、請求項13から20および32から37のいずれかに記載の組成物の使用。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−185042(P2009−185042A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−89303(P2009−89303)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【分割の表示】特願平10−516657の分割
【原出願日】平成9年9月24日(1997.9.24)
【出願人】(508061974)アブラクシス バイオサイエンス, エルエルシー (18)
【Fターム(参考)】