説明

血小板糖タンパク質IBα改変体融合ポリペプチドおよびその使用法

本発明は、脈管関連障害を処置または予防するための組成物および方法を提供する。種々の実施形態において、この改変体は、凝集の減少、安定性の上昇、トロンビンへの結合の減少、またはこれらの特徴のうちの2以上を示す。糖タンパク質−Ibαタンパク質改変体の用途の1つは、血管の炎症、血栓症、アテローム性動脈硬化症、および血管形成関連の再狭窄に関連した血管の状態を処置するための融合タンパク質としてである。1つの局面において、上記ポリペプチドは、天然に存在するヒトGPIbαのアミノ酸配列、もしくはGPIb2Vと称されるポリペプチドのアミノ酸配列を含有するポリペプチドのαトロンビンへの結合に対して、より低い親和性でαトロンビンに結合する。上記ポリペプチドが、トロンビンにより低い親和性で結合する場合、より多くのトロンビンが血栓形成に利用可能となり、そして被験体における望ましくない出血が最小化される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
血管関連障害の有害な作用(例えば、脳卒中、心臓発作、および動脈硬化)は、少なくとも部分的に、血管の炎症反応および修復反応の不適切な誘発によって引き起こされると考えられる。血管の炎症反応および修復反応は、通常は血管内を自由に循環している種々の細胞型の間での接着性相互作用に関する。このような相互作用の例としては、血小板、白血球、および血管の内壁(すなわち、血管内皮)の間で生じ得るものが挙げられる。高い流体ずり応力の条件下において、血小板は、その表面上の糖タンパク質(GP)Ib−IX−V複合体と露出した血管内皮下層上に存在するフォン・ヴィレブランド因子(vWF)との間の相互作用を介して内皮に接着する。さらに、血管内皮への血小板接着は、vWF媒介性の拘束を介して、自由に循環している血小板に結合して捕獲し得、血小板の連続層を経て血栓の増殖を可能にする。GPIb−IX−V複合体のGPIbα鎖もまた、血小板表面へのα−トロンビンの結合を促進し得、GPVおよびプロテアーゼ活性化レセプター(PAR)のトロンビン媒介性切断を増強する。
【0002】
対照的に、白血球は、活性化された内皮に、直接的にか、もしくは最初にvWF固定血小板に接着することによって間接的にかのいずれかで接着し得る。どちらの例においても、セレクチンクラスの接着レセプターもしくはインテグリンクラスの接着レセプターのいずれかに結合する白血球細胞表面分子は、これらの接着現象を媒介する。白血球−血小板接着は、部分的に、白血球表面インテグリン分子MacIと血小板表面GPIb−IX−V複合体のGP1b成分との相互作用を介して生じると考えられる。
【0003】
血管障害(例えば、動脈硬化の粥腫崩壊)または機械的傷害(例えば、血管形成、ステント配置、心肺バイパス処置、虚血性障害もしくは狭窄により引き起こされる)に応答して、白血球および血小板は、血管の病変部位に蓄積し得、そして互いに対して複数の接着性基質を提供し得る。この白血球および血小板の蓄積は、因子(例えば、マイトジェン、サイトカイン、およびケモカインが挙げられる)の局所的産生をもたらし、さらに、望ましくない血管性疾患の進行を引き起こす。
【0004】
GPIbαに由来するvWF結合領域を含む治療用ポリペプチドが記載されている。
このようなポリペプチドの1つは、野生型ヒトGPIbαのアミノ酸配列において2アミノ酸置換(G233V M239V)を含む配列に基づく。この改変体の細胞外vWF結合ドメインの290アミノ酸を含む、この改変体のIg融合タンパク質(GPIb2V−Igと称する)は、冠状動脈血栓症を阻害する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
本発明は、血管障害を処置するための治療剤として有用な、改善された糖タンパク質−Ibα改変体ポリペプチドを提供する。種々の実施形態において、この改変体は、凝集の減少、安定性の上昇、トロンビンへの結合の減少、またはこれらの特徴のうちの2以上を示す。糖タンパク質−Ibαタンパク質改変体の用途の1つは、血管の炎症、血栓症、アテローム性動脈硬化症、および血管形成関連の再狭窄に関連した血管の状態を処置するための融合タンパク質としてである。
【0006】
1つの局面において、上記ポリペプチドは、天然に存在するヒトGPIbα(配列番号1)のアミノ酸配列、もしくはGPIb2V(配列番号2)と称されるポリペプチド(配列番号1のアミノ酸配列に対するアミノ酸置換G233VおよびM239Vを含む)のアミノ酸配列を含有するポリペプチドのαトロンビンへの結合に対して、より低い親和性でαトロンビンに結合する。上記ポリペプチドが、トロンビンにより低い親和性で結合する場合、より多くのトロンビンが血栓形成に利用可能となり、そして被験体における望ましくない出血が最小化される。トロンビン結合の低下を示すポリペプチドの例は、配列番号1もしくは配列番号2のアミノ酸配列に対する、1つ、2つもしくは3つのアミノ酸置換Y276F、Y278F、Y279Vを含むポリペプチド、またはそれらの保存的改変体が挙げられる。
【0007】
いくつかの実施形態において、上記ポリペプチドの凝集は、ヒト配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドの凝集に対して低下する。いくつかの実施形態において、凝集の減少は、細胞中でのポリペプチドの合成の間に観察される。凝集の減少を示すポリペプチドの例は、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列に対するアミノ酸置換C65Sを含むポリペプチドか、またはその保存的改変体である。
【0008】
いくつかの実施形態において、上記ポリペプチドは、配列番号1もしくは配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドよりも、タンパク質分解にしてより耐性である。このようなポリペプチドの例は、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列に対するアミノ酸置換K237Vを含むポリペプチドか、またはその保存的改変体である。
【0009】
適切なポリペプチドの例は、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列に対する以下のアミノ酸配列置換:Y276F Y276F K237V、Y276F C65S、Y276F Y278F Y279F、Y276F Y278F Y279F K237VおよびY276F Y278F Y279F K237V C65Sを有するものである。
【0010】
本発明のポリペプチドは、融合タンパク質として提供され得る。例えば、糖タンパク質Ibα融合タンパク質は、第二のポリペプチドに連結される第一のポリペプチドを含有し得る。この第一のポリペプチドは、糖タンパク質Ibαポリペプチド改変体の少なくとも一領域を含む。いくつかの実施形態において、この第二のポリペプチドは、マルチマー(例えば、ダイマー)を形成する。いくつかの実施形態において、この第二のポリペプチドは、免疫グロブリンポリペプチドの少なくとも一領域を含む。
【0011】
本発明はまた、糖タンパク質−Ibα改変体ポリペプチドをコードする核酸、ならびに糖タンパク質−Ibα改変体ポリペプチドをコードする核酸を用いてこの糖タンパク質−Ibα改変体ポリペプチドを発現するベクター、細胞、および方法を提供する。本発明はさらに、糖タンパク質Ibα改変体融合ポリペプチドをコードする核酸、および本明細書において記載される糖タンパク質Ibα融合ポリペプチドをコードする核酸を含むベクター、および本明細書に記載されるベクターもしくは核酸を含む細胞を包含する。
【0012】
本発明はまた、白血球と糖タンパク質Ibα融合ポリペプチドとを接触させる工程により生物学的組織への白血球接着を阻害する方法を提供する。白血球は、白血球と生物学的組織との接着を阻害するのに十分な量で接触する。
【0013】
別の局面において、本発明は、血小板活性化に関連する障害を処置する方法を提供する。本方法は、被験体に、有効量の糖タンパク質Ibα融合ポリペプチドを投与する工程を包含する。
【0014】
本発明はまた、糖タンパク質Ibα改変体ポリペプチドもしくは糖タンパク質Ibα改変体融合ポリペプチドを含有する、薬学的組成物を包含する。
【0015】
他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての科学技術用語は、本発明が属する分野の当業者によって共通に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書において記載される方法および材料と類似もしくは等価である方法および材料が、本発明の実施または試験において使用され得るが、適切な方法および材料が、以下に記載される。本明細書に記述される全ての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、その全体が本明細書において参考として援用される。矛盾する場合、本明細書が、定義を含め、対照となる。さらに、上記材料、方法および実施例は、単なる説明であり、限定することを意図されない。
【0016】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明、および特許請求の範囲から明らかになる。
【0017】
(発明の詳細な説明)
本発明による、αトロンビンへの結合の減少、凝集の減少および/またはタンパク質分解への耐性の上昇を伴う糖タンパク質Ibα由来ポリペプチドは、例えば、活性化した血小板細胞の血管細胞上のvWFへの結合を阻害することにより利益を得る種々の状態の処置における治療剤として、有用である。いくつかの実施形態において、このポリペプチドは、融合タンパク質として提供される。
【0018】
トロンビン結合の減少を伴う本発明のタンパク質改変体は、有利なことに、出血の減少をもたらす。血小板GPIbαレセプターへのトロンビンの結合は、凝固に必要である。治療用の可溶性GPIbに対するトロンビン結合は、血小板GPIbαレセプターからトロンビンを隔離することよって、インビボでの出血を増大させ得、これによりトロンビン誘発性血小板凝集が減少する。したがって、トロンビンについてより低い親和性を示すタンパク質改変体により、トロンビンが血小板IBαレセプターとの相互作用に利用可能になり、このことは、凝固を増強させる。
【0019】
適切なポリペプチドとしては、以下の配列番号1で示される天然に存在するヒトGPIbαタンパク質配列のアミノ酸65−279、またはそのアミノ酸配列が以下の配列番号2で示される改変体GPIb2Vのアミノ酸65−279の間、およびそれを含む領域におけるアミノ酸に対する1〜15のアミノ酸置換、欠失、または挿入を含むアミノ酸配列が挙げられる。1つ以上の実施形態において、このポリペプチドは、以下の活性の1つ以上を有する:(i)ヒト配列番号1もしくは配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドのαトロンビンへの結合に対して、より低い親和性での、αトロンビンへの結合;(ii)配列番号1もしくは配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドの凝集に対して、より低い凝集;または(iii)配列番号1もしくは配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドに対する、タンパク質分解への耐性の上昇。
【0020】
理論に拘束されることなく、これらの特性が、GPIB2V改変体(配列番号2)のポリペプチド配列中の標的領域における置換の結果に基づくことが考えられる。65位におけるシステイン残基からセリン残基への変化(すなわち、C65S)は、特に組み換え体作製プロセスの間、GPIbα分子の凝集の阻害をもたらす。野生型配列におおて276、278、および279位に見られるチロシン残基は、通常、翻訳後にスルホチロシンへと改変されて、これはαトロンビンとのアニオン性静電的相互作用を生じる。これらのチロシン残基をフェニルアラニンへと変換すること(すなわち、Y276F、Y278F、およびY279F置換)による、これらのチロシン残基の選択的除外は、αトロンビンへの結合を減少させ(Marcheseら,J.Biol.Chem.270:9571−78)、一方vWFへの所望される結合を保持する。237位におけるリジンからバリンへの置換は、組み換え体産生プロセスの間、この部位におけるタンパク質分解を妨げる。
【0021】
天然に存在するヒトの糖タンパク質Ibα鎖の290アミノ酸フラグメントを、以下に記載する:
【0022】
【化1】

GPIb2V改変体のアミノ酸配列を、配列番号2として以下に提供する。この改変体もまた、米国特許出願公開番号20030091576(およびその対応物WO 02/063003)において議論されている。
【0023】
【化2】

いくつかの実施形態では、このポリペプチドは、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列に対して、12を超えない置換、挿入、または欠失を有しているに過ぎない。例えば、配列番号1のアミノ酸または配列番号2のアミノ酸に対する10個、8個、7個、6個、5個またはそれより少ない数の置換、挿入、または欠失を有し得る。いくつかの実施形態において、この置換、挿入、または欠失は、アミノ酸65とアミノ酸279との間に含まれる領域にある。
【0024】
いくつかの実施形態において、このポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列または配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドのαトロンビンに対する結合より低い親和性でαトロンビンに結合する。結合の減少を示すポリペプチドの例は、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列に対して、Y276F、Y278F、Y279V、またはこれらの保存改変体のアミノ酸置換の一つ、二つまたは三つを含むポリペプチドである。
【0025】
いくつかの実施形態では、このポリペプチドの凝集は、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドの凝集に比べて低下する。いくつかの実施形態では、凝集の減少は、細胞内のこのポリペプチドの合成の間に観察される。凝集の減少を示すポリペプチドの例は、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列に対して、アミノ酸置換C65Sを含むポリペプチド、またはこの保存改変体である。
【0026】
いくつかの実施形態では、このポリペプチドは、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドよりもタンパク質分解(proteolysis)に対して抵抗性である。このようなポリペプチドプチドの例は、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列に対して、アミノ酸置換K237Vを含むポリペプチドであるか、またはこの保存改変体である。
【0027】
いくつかの実施形態において、このポリペプチドは、配列番号1または配列番号2のアミノ酸1〜290に対して、1〜10個のアミノ酸の置換、挿入、または欠失を有するアミノ酸を含む(ただし、少なくとも一つのアミノ酸置換がC65S、K237V、Y276F、Y278F、Y279F、K237Vである)。
【0028】
適切なポリペプチドの例は、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列に対して、以下のアミノ酸配列置換(Y276F、Y276F K237V、Y276F C65S、Y276F Y278F Y279F、Y276F Y278F Y279F K237VおよびY276F Y278F Y279F K237V C65S)を有するポリペプチドである。
【0029】
本発明はまた、配列番号1および配列番号2に対応するポリペプチドに加えて、糖タンパク質IBα配列プラス配列番号1および配列番号2に由来するポリペプチドにおける、一つ以上(例えば、2個、3個、5個、6個、8個、10個、15個またはそれより多い)のアミノ酸置換を有するポリペプチドを含む。これらとしては、例えば、GPIb302(配列番号3)、GPIb302/2A(配列番号4)GPIb/4X(配列番号5)、およびGBIb290/1A(配列番号6)が挙げられる。
【0030】
【化3−1】


糖タンパク質タンパク質改変体は、融合タンパク質の一部として提供され得る。例えば、糖タンパク質Ibαタンパク質−免疫グロブリン融合タンパク質は、血小板および白血球の生物学的組織(例えば、血管内皮など)への接着を阻害するために有用である。本発明のこの融合タンパク質、またはこれらの融合タンパク質をコードする核酸は、薬学的組成物中に組み込まれ、そして被験体に投与され、糖タンパク質Ibαリガンド(例えば、フォン・ヴィレブランド因子、Mac−1、P−セレクチンまたはトロンビン)と細胞表面上の糖タンパク質Ibαタンパク質との相互作用を阻害し得る。結合の阻害は、糖タンパク質Ibαタンパク質媒介性血小板凝集および関連するインビボでのシグナル伝達を抑制する。
【0031】
糖タンパク質Ibαタンパク質−免疫グロブリン融合タンパク質は、糖タンパク質Ibαタンパク質同族体リガンドの生体適合性を調節するために使用され得る。糖タンパク質Ibαタンパク質リガンド/糖タンパク質Ibαタンパク質相互作用の阻害は、とりわけ、血小板活性化に関連する血管の炎症および他の血管障害の処置に対して治療上有用である。
【0032】
(糖タンパク質改変体Ibα融合ポリペプチド)
種々の局面において、本発明は、第二のポリペプチドに作動可能に連結された糖タンパク質Ibαポリペプチド改変体の少なくとも一部を含む第一のポリペプチドを含む、融合タンパク質を提供する。本明細書中で用いられる場合、糖タンパク質Ibα「融合タンパク質」または「キメラタンパク質」は、非糖タンパク質Ibαポリペプチドに作動可能に連結された糖タンパク質Ibαポリペプチド改変体の少なくとも一部を含む。「糖タンパク質Ibαポリペプチド」または「糖タンパク質Ibαポリペプチド改変体」とは、少なくとも一部の糖タンパク質Ibαポリペプチドに対応するアミノ酸配列を有するポリペプチドをいい、その一方で、「非糖タンパク質Ibαポリペプチド」とは、実質的に糖タンパク質Ibαタンパク質と相同ではないタンパク質(例えば、同一または別個の生物に由来する、糖タンパク質Ibαポリペプチドまたはフラグメントとは異なるタンパク質)に対応するアミノ酸配列を有するポリペプチドをいう。糖タンパク質Ibα融合タンパク質内で、糖タンパク質Ibαポリペプチドは、Ibαタンパク質の全てまたは一部に合致し得る。
【0033】
一つの実施形態では、糖タンパク質Ibα融合タンパク質は、糖タンパク質Ibαタンパク質の少なくとも一つの生物学的に活性な部分を含む。別の実施形態では、糖タンパク質Ibα融合タンパク質は、糖タンパク質Ibαタンパク質の少なくとも2つの生物学的に活性な部分を含む。さらに別の実施形態では、糖タンパク質Ibα融合タンパク質は、糖タンパク質Ibαタンパク質の少なくとも3つの生物学的に活性な部分を含む。この融合タンパク質の範囲内において、用語「作動可能に連結した」は、第一のポリペプチドおよび第二のポリペプチドが、糖タンパク質Ibαポリペプチドと関連する少なくとも一つの機能を可能にする様式で連結されることを示すことを意図する。糖タンパク質Ibα融合ポリペプチドをコードする核酸をいうために使用される場合、用語「作動可能に連結された」は、糖タンパク質Ibαポリペプチドおよび非糖タンパク質Ibαポリペプチドをコードする核酸が、お互いにインフレームで融合されていることを意味する。この非糖タンパク質Ibαポリペプチドは、この糖タンパク質IbαポリペプチドのN末端またはC末端に融合され得る。
【0034】
さらなる実施形態では、この糖タンパク質Ibα融合タンパク質は、一種以上のさらなる部分に連結され得る。例えば、この糖タンパク質Ibα融合タンパク質は、GST融合タンパク質にさらに連結され得、このGST融合タンパク質中では、糖タンパク質Ibα融合タンパク質配列は、このGST(すなわち、グルタチオンS−トランスフェラーゼ)配列のC末端に融合される。このような融合タンパク質は、糖タンパク質Ibα融合タンパク質の精製を促進し得る。
【0035】
別の実施形態では、この融合タンパク質は、異種性のシグナル配列(すなわち、糖タンパク質Ibα核酸によりコードされたポリペプチド中に存在しないポリペプチド配列)をそのN末端に含む。例えば、ネイティブ糖タンパク質Ibαシグナル配列が除去され、そして別のタンパク質由来のシグナル配列で置き換えられ得る。特定の宿主細胞(例えば、哺乳類の宿主細胞)では、糖タンパク質Ibαの発現および/または分泌は、異種性シグナル配列を使用することにより増加し得る。代表的なシグナル配列は、MPLLLLLLLLPSPLHP(配列番号8)である。別の代表的なシグナル配列は、MPLQLLLLLILLGPGNSLQLWDTWADEAEKALGPLLARDRR(配列番号9)である。所望の場合、一つ以上のアミノ酸が、GPIbα部分を含む第一のポリペプチド部分と、第二のポリペプチド部分との間にさらに挿入され得る。
【0036】
本発明のキメラタンパク質または融合タンパク質は、標準的組換えDNA技術により産生され得る。GPIbαポリペプチドをコードする核酸配列、およびこれらのポリペプチドのアミノ酸配列(これから改変体GPIbαポリペプチド改変体が構築される)は、WO 02/063003において開示され、その内容は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【0037】
例えば、このポリペプチド改変体配列をコードするDNAフラグメントは、従来の技術(例えば、ライゲーションのために、平滑末端化末端または付着末端化末端を使用すること、適切な末端を提供するための制限酵素の消化、突出末端の適切な埋め込み、望ましくない接合を回避するためのアルカリフォスファターゼ処理、および酵素的ライゲーションによる)に従って、インフレームで共に連結される。別の実施形態では、融合遺伝子は、自動DNA合成機を含む従来の技術により合成され得る。あるいは、遺伝子フラグメントのPCR増幅は、アンカープライマーを用いて実行され得、このアンカープライマーは、2つの連続した遺伝子フラグメント間に相補的な突出部をもたらし、この2つの連続した遺伝子フラグメント間の相補的な突出部は、引き続いてアニーリングされ、そして再増幅されて、キメラ遺伝子配列(例えば、Ausubelら、(編)CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY,John Wiley & Sons,1992)を作製する。さらに、融合部分(例えば、免疫グロブリン重鎖のFc領域)をコードする多くの発現ベクターが、市販されている。糖タンパク質Ibαをコードする核酸は、このような発現ベクター中にクローニングされ得、その結果、この融合部分は、インフレームで免疫グロブリンタンパク質に連結される。
【0038】
糖タンパク質Ibα融合ポリペプチドは、オリゴマー(例えば、ダイマーまたはトリマー)として存在し得る。いくつかの実施形態では、この糖タンパク質Ibα融合ポリペプチドは、ダイマーである。
【0039】
いくつかの実施形態において、上記GP Ibαポリペプチド部分は、天然に存在するGP Ibα配列(野生型)において、GP Iβαポリペプチドの白血球細胞表面分子に対する(非変異配列と比べて)高い親和性の結合を生じる変異を有する改変体GP Ibαポリペプチドとして提供される。例えば、この変異ポリペプチドは、von Willebrand因子(vWF)に高い親和性で結合し得る。この増大した反応性または過応答性は、低濃度のリストセチンを用いて評価され得る。あるいは、vWFでポリペプチドの反応性を決定するための、任意の他の適切な手段もまた、vWFと「より」反応性である(すなわち、天然に存在する野生型GP Ibαよりも反応性である)ポリペプチドを同定するために使用され得る。vWFにより高い親和性で結合するGP Ibαポリペプチド改変体の例としては、GP Ibαポリペプチドのヒンジ領域において配列の変更を含むGP Ibα改変体が挙げられる。このヒンジ領域は、残基220〜310を含む領域として定義され、そしてGP Ibαポリペプチド内でのvWFに対する主要な結合部位であると報告されている。このヒンジ領域における変異としては、野生型のGP Ibαにおいてグリシンをコードする、残基233での変異が挙げられる。適切な置換の例は、位置233のグリシンが、バリンで置換される(すなわち、G233V)置換である。ヒンジ領域における変異のための第2の部位は、野生型GP Ibαにおいてメチオニンをコードする残基239である。メチオニン239に対するバリンの置換は、代表的な置換であるが、他のアミノ酸もまた置換され得る。さらに、GP Ibαポリペプチドのヒンジ領域改変体も、位置233および位置239の両方の残基での変異を有する、本発明の融合ポリペプチドにおける使用について適切である。(例えば、Dongら、JBC 275:36 27663−27670(2000)を参照のこと。)したがって、本発明は位置239(例えば、改変体GP IbαポリペプチドのM239V置換)での置換を有する融合タンパク質を含む。位置233での置換(例えば、G233V)を有する融合タンパク質もまた、本発明の範囲内であり、そして位置233および位置239両方での改変体GP Ibαポリペプチド(例えば、G233V置換およびM239V置換の両方)を含む融合タンパク質もまた、本発明の範囲内である。
【0040】
いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドとしては、全長GP Ibαポリペプチドが挙げられる。あるいは、この第1のポリペプチドは、全長未満のGP Ibαポリペプチドを含む。例えば、この第1のポリペプチドは、600アミノ酸長未満のポリペプチドであり、例えば、500アミノ酸長以下、250アミノ酸長以下、150アミノ酸長以下、100アミノ酸長以下、50アミノ酸長以下、または25アミノ酸長以下である。
【0041】
いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドは、可溶性である。いくつかの実施形態において、この第2のポリペプチドは、それが結合するポリペプチドの半減期(例えば、血清半減期)を長期化する。いくつかの実施形態において、この第2のポリペプチドは、第2のGP Ib αポリペプチドとの融合ポリペプチドの結合を促進する配列を含む。いくつかの実施形態において、その第2のポリペプチドは、免疫グロブリンポリペプチドの少なくとも1つの領域を含む。免疫グロブリン融合ポリペプチドは、当該分野で公知であり、そして、例えば、米国特許第5,516,964号;同第5,225,538号;同第5,428,130号;同第5,514,582号;同第5,714,147号;および同第5,455,165号に記載される。
【0042】
いくつかの実施形態において、その第2のポリペプチドは、全長免疫グロブリンポリペプチドを含む。あるいは、この第2のポリペプチドは、全長未満の免疫グロブリンポリペプチド、例えば、重鎖、軽鎖、Fab、Fab、Fv、またはFcを含む。例えば、いくつかの実施形態において、その第2のポリペプチドは、免疫グロブリンポリペプチドの重鎖を含む。さらなる実施形態において、その第2のポリペプチドは、免疫グロブリンポリペプチドのFc領域を含む。
【0043】
本発明の別の局面において、その第2のポリペプチドは、野生型免疫グロブリン重鎖のFc領域のエフェクター機能よりも低いエフェクター機能を有する。Fcエフェクター機能としては、例えば、Fcレセプター結合、補体固定(complement fixation)およびT細胞枯渇活性(depleting activity)が挙げられる(例えば、米国特許第6,136,310号)。T細胞枯渇活性、Fcエフェクター機能および抗体安定性を評価する方法は、当該分野において公知である。1つの実施形態において、その第2のポリペプチドは、Fcレセプターに対して低い活性を有するか、またはその活性を全く有さない。代替的な実施形態において、その第2のポリペプチドは、補体タンパク質C1qに対して低い親和性を有するか、またはその親和性を全く有さない。
【0044】
代表的な第2のポリペプチド配列は、配列番号10のアミノ酸配列を含む。この配列は、Fc領域を含む。下線を付したアミノ酸は、野生型免疫グロブリン配列の対応する位置において見出されるアミノ酸とは違うアミノ酸である:
【0045】
【化4】

このGPIαポリペプチド改変体は、具体的に示す置換されたアミノ酸置換物に加えて、その具体的に示された酸と同じ機能を満たす代替的なアミノ酸を含み得る。いくつかの実施形態において、その代替的アミノ酸は、示されたアミノ酸の保存的アミノ酸置換として具体的に示されたアミノ酸に関連する。「保存的アミノ酸置換」は、そのアミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換される置換である。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーが、当該分野で定義されている。アミノ酸のファミリーとしては、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、荷電していない極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β位分枝側鎖を有するアミノ酸(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が挙げられる。
【0046】
したがって、いくつかの実施形態では、第276位、第278位、または第279位において、チロシンをフェニルアラニンで置換される(Y276F、Y278FまたはY279F)よりも、そのチロシン残基は、トリプトファンまたはヒスチジンで置換され得る。
同様に、C65S改変体にとって、そのシステインは、代替的に、グリシン、アスパラギン、グルタミン、スレオニン、またはチロシンで置換され得る。L237V置換体にとって、そのリジンは、代替的に、アラニン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、またはトリプトファンで置換され得る。
【0047】
本発明はまた、配列番号1または2に開示される配列に80%、85%、90%、95%、98%または99%相同であるポリペプチドを含む。但し、この配列は、C65S、K237V、Y276F、Y278F、Y279F、K237Vというアミノ酸置換のうち1以上を含む。本発明の核酸またはタンパク質の誘導体またはアナログとしては、本発明の核酸またはタンパク質に実質的に相同な領域を含む分子が挙げられるが、これらに限定されない。これらの分子は、種々の実施形態において、同一の大きさの1つの核酸配列またはアミノ酸配列において少なくとも約70%、80%、85%、90%、95%、98%または99%同一(例えば、80〜99%の一致)であるかまたは、当該分野で公知のコンピューター相同性プログラムによって並置がなされた、並置させた配列と比較したときに、少なくとも約70%、80%、85%、90%、95%、98%または99%同一(例えば、80〜99%の一致)か、あるいは、そのコードする核酸が、上記のタンパク質をコードする配列の相補体に、ストリンジェントな条件下、中程度にストリンジェントな条件下または低度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得る。プログラムの一例は、デフォルトの設定を使用したGapプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package,Version 8 for UNIX(登録商標),Genetics Computer Group,University Research Park,Madison,WI)であり、これは、SmithおよびWatermanのアルゴリズムを使用する。
【0048】
本発明の別の局面は、糖タンパク質Ibα融合ポリペプチドまたはその誘導体、フラグメント、アナログあるいは相同物をコードする核酸を含むベクター(発現ベクターを含む)に関する。本発明の組換え発現ベクターは、真核細胞または原核細胞における糖タンパク質Ibα融合ポリペプチドの発現について設計され得る。
【0049】
別の実施形態において、糖タンパク質Ibα融合ポリペプチド発現ベクターは、酵母発現ベクターである。酵母Saccharomyces cervisiaeにおける発現に対するベクターの例は、当該分野で公知である。
【0050】
また、糖タンパク質Ibα融合ポリペプチドは、当該分野で公知の方法(例えば、バキュロウイルス発現ベクター)を用いて昆虫細胞において発現され得る。
【0051】
さらに別の実施形態において、本発明の1つの核酸は、哺乳動物発現ベクターを用いて哺乳動物細胞において発現される。
【0052】
別の実施形態において、組換え哺乳動物発現ベクターは、選択的に特定の細胞型においてその核酸を発現させ得る(例えば、組織特異的な調節エレメントがその核酸を発現させるために用いられる)。組織特異的な調節エレメントは、当該分野において公知である。
【0053】
本発明は、アンチセンス方向で発現ベクターにクローニングされた本発明のDNA分子を含む組換え発現ベクターをさらに提供する。すなわち、このDNA分子は、糖タンパク質Ibα融合ポリペプチドmRNAに対してアンチセンスであるRNA分子の発現を(このDNA分子の転写によって)可能にする様式で調節配列に作動可能に連結される。アンチセンス方向にクローニングされた核酸に作動可能に連結された調節配列は、種々の細胞型においてアンチセンスRNA分子が連続的に発現するように選択され得る。例えば、ウイルスプロモーターおよび/またはウイルスエンハンサーまたは調節配列は、アンチセンスRNAが連続的に組織特異的または細胞型特異的に発現するように選択され得る。このアンチセンス発現ベクターは、アンチセンス核酸が、高効率の調節領域の制御下で生成される(その活性は、このベクターが導入される細胞型によって決定され得る)、組換えプラスミド、ファージミドまたは弱毒ウイルスの形態であり得る。
【0054】
宿主細胞は、原核細胞または真核細胞のいずれであってもよい。例えば、糖タンパク質Ibα融合ポリペプチドは、E.coliのような細菌細胞、昆虫細胞、酵母または哺乳動物細胞(例えば、ヒト細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはCOS細胞)において発現され得る。他の適切な宿主細胞は、当業者に公知である。
【0055】
ベクターDNAは、従来の形質転換技術またはトランスフェクション技術を用いて原核細胞または真核細胞に導入され得る。
【0056】
哺乳動物宿主細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはCOS細胞)は、翻訳後修飾を介して糖タンパク質Ibα融合ポリペプチドのN結合型およびO結合型グリカン上のシアリルLewisエピトープの生成が可能である発現ベクターを用いてトランスフェクションされ得る。CHO細胞の場合、これは、α−1,3/1,4フコシルグルコサミニルトランスフェラーゼ(Kukowska−Latallo et al.Genes Dev.4:1288−303,1990)およびコア2β−1,6−N−アセチルグルコサミントランスフェラーゼ(Kumar et al.Blood 88: 3872−79,1996)の共発現を必要とする。糖タンパク質Ibα融合ポリペプチドのN結合型およびO結合型グルカン上のシアリルLewisエピトープの存在は、セレクチンとの結合を促進する。
【0057】
哺乳動物細胞の安定なトランスフェクションについて、使用する発現ベクターおよびトランスフェクション技術に依存して、少量の細胞画分だけが外来DNAをそれらのゲノム中に組み込み得る。これらの組み込み体を同定し、選択するために、選択マーカー(例えば、抗生物質耐性)をコードする遺伝子は、概して目的の遺伝子とともに宿主細胞へ導入される。種々の選択マーカーとしては、薬剤(例えば、G418、ハイグロマイシンおよびメトトレキサート)に耐性を付与するマーカーが挙げられる。選択マーカーをコードする核酸は、糖タンパク質Ibα融合ポリペプチドをコードするものと同じベクターで宿主細胞に導入され得るかまたは別のベクターで導入され得る。導入された核酸を用いて安定にトランスフェクションされた細胞は、薬物選択によって同定され得る(例えば、選択マーカー遺伝子が組み込まれた細胞は、生き残り、他の細胞は死滅する)。
【0058】
本発明の宿主細胞(例えば、培養物中の原核宿主細胞または真核宿主細胞)は、糖タンパク質Ibα融合ポリペプチドを産生する(すなわち、発現する)ために使用され得る。従って、本発明はさらに、糖タンパク質Ibα融合ポリペプチドを、本発明の宿主細胞を使用して産生するための方法を提供する。1つの実施形態において、上記方法は、糖タンパク質Ibα融合ポリペプチドが産生されるように、本発明の宿主細胞(この中に、糖タンパク質Ibα融合ポリペプチドをコードする組み換え発現ベクターが導入されている)を適切な培地中で培養する工程を包含する。別の実施形態において、上記方法はさらに、糖タンパク質Ibα融合ポリペプチドを培地または宿主細胞から単離する工程を包含する。
【0059】
融合ポリペプチドは、従来の条件(例えば、抽出、沈殿、クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、電気泳動など)に従って単離および精製され得る。
【0060】
ポリペプチドの化学合成は、改変アミノ酸または非天然アミノ酸(D−アミノ酸および他の有機小分子を含む)の組み込みを容易にする。ペプチド中の1種以上のL−アミノ酸を対応するD−アミノ酸イソ型で置換することが使用され、酵素的加水分解へのペプチドの耐性を増大し得、そして生物学的に活性なペプチドの1つ以上の特性(例えば、レセプター結合、機能効力または作用期間)を高め得る。
【0061】
ペプチド配列への共有結合的架橋の導入は、ポリペプチド骨格を立体配置的にかつ局所的に制約する。この戦略は、効力、選択性および安定性が増大している融合ポリペプチドのペプチドアナログを開発するために使用され得る。環状ペプチドの立体配置的エントロピーは、その線形対応物よりも小さいので、特定の立体配置の採用が、非環状アナログについてのエントロピーの減少よりも環状アナログについてのエントロピーの減少が少ないことにより起こり得、これにより、結合のための自由エネルギーをより好ましいものにする。大環状環化は、多くの場合、ペプチドのN末端とC末端との間、側鎖とN末端もしくはC末端との間(pH8.5においてKFe(CN)を用いて)、または2つのアミノ酸側鎖の間にアミド結合を形成することによって達成される。ジスルフィド架橋もまた、線形配列に導入されて、それらの可撓性を減少する。さらに、システイン残基をペニシラミン(Pen、3−メルカプと−(D)バリン)で置き換えることが、いくつかのオピオイド−レセプター相互作用の選択性を減少するために使用されている。
【0062】
(糖タンパク質Ibα融合ポリペプチドまたはそれをコードする核酸を含有する薬学的組成物)
本発明の糖タンパク質Ibα融合タンパク質またはそれらの融合タンパク質をコードする核酸分子(本明細書中で「治療剤」または「活性化合物」とも呼ばれる)、ならびにそれらの誘導体、フラグメント、アナログおよびホモログは、投与に適切な薬学的組成物中に組み込まれ得る。このような組成物は、代表的には、核酸分子、タンパク質、または抗体および薬学的に受容可能なキャリアを含有する。本明細書中で使用される場合、「薬学的に受容可能なキャリア」は、薬学的投与に適合性の、溶媒、分散媒体、コーティング、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などのいずれかおよび全てを包含することが意図される。適切なキャリアは、Remington’s Pharmaceutical Sciences(当該分野で標準的な参考文献)の最新版に記載されている。Remington’s Pharmaceutical Sciencesは、本明細書中で参考として援用される。このようなキャリアまたは希釈剤の例としては、水、生理食塩水、フィンガー溶液、デキストロース溶液、および5%ヒト血清アルブミンが挙げられるが、これらに限定されない。リポソームおよび非水性ビヒクル(例えば、不揮発性油)もまた、使用され得る。薬学的に活性な基剤のためのこのような媒体および薬剤の使用は、当該分野で周知である。任意の従来の培地または薬剤が上記活性化合物と不適合性である場合を除いて、組成物中でのそれらの使用が企図される。補助的に活性な化合物もまた、組成物中に組み込まれ得る。
【0063】
本明細書中で開示される活性剤はまた、リポソームとして処方され得る。リポソームは、当該分野で公知の方法によって調製される。向上した循環時間を有するリポソームは、米国特許第5,013,556号に開示される。
【0064】
特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール、およびPEG誘導体化ホスファチジルアミン(PEG−PE)を含有する脂質組成物を使用する逆相蒸発法によって生成され得る。リポソームは、規定の細孔サイズのフィルターを通して押し出され、所望の直径を有するリポソームを与える。
【0065】
本発明の薬学的組成物は、その意図される投与経路と適合するように処方される。投与経路の例としては、非経口的投与(例えば、静脈内、皮内、皮下)、経口的投与(例えば、吸入)、経皮投与(すなわち、局所的)、粘膜内投与、および直腸投与が挙げられる。非経口適用、皮内適用または皮下適用に使用される溶液または懸濁液としては、以下の成分が挙げられ得る:無菌希釈液(例えば、注射用の水、生理食塩水溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒);抗細菌剤(例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン);抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸または亜硫酸ナトリウム);キレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA));緩衝剤(例えば、アセテート、シトレートまたはホスフェート)、および張性調整のための薬剤(例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロース)。pHは、酸または塩基(例えば、塩酸または水酸化ナトリウム)を用いて調整され得る。非経口用調製物は、アンプル、使い捨てシリンジ、または、ガラスもしくはプラスチックで作製された複数用量バイアル中に入れられ得る。
【0066】
注射可能物の使用に適切な薬学的組成物としては、(水溶性である場合)無菌水溶液または無菌水性分散剤、および無菌注射可能溶液または無菌注射可能分散剤の即席の調製用の無菌散剤が挙げられる。静脈内投与に関して、適切なキャリアとしては、生理食塩水、静菌水、Cremophor ELTM(BASF、Parsippany、N.J.)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。全ての場合において、上記組成物は、無菌性でなければならず、容易な注射可能性が残存する程度まで流動性であるべきである。上記組成物は、製造および保存の下で安定でなければならず、微生物(例えば、細菌および真菌)の夾雑作用に対して保護されなければならない。上記キャリアは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、ならびに適切なこれらの混合物を含む、溶媒または分散媒体であり得る。適切な流動性は、例えば、コーティング(例えば、レシチン)の使用によって、分散剤の場合は必要とされる粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって、維持され得る。微生物作用の防御は、種々の抗細菌剤および抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなど)によって達成され得る。多くの場合において、等張剤が上記組成物中に含まれ得、この等張剤は、例えば、糖、ポリアルコール(例えば、マンニトールおよびソルビトール);ならびに塩化ナトリウムである。注射可能組成物の長期にわたる吸収は、組成物中に吸収を遅延させる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)を含有することによってもたらされ得る。
【0067】
無菌注射可能溶液は、必要とされる量の活性化合物(例えば、糖タンパク質Ibα融合タンパク質)を、上で列挙された成分のうちの1種またはそれらの組み合わせを含む適切な溶媒中に組み入れ、必要に応じて、その後に滅菌濾過することによって調製され得る。一般的に、分散剤は、上記活性化合物を、ベースの分散媒体および上で列挙される成分からの必要とされる他の成分を含む無菌ビヒクルに組み入れることによって、調製される。無菌注射可能溶液の調製用の無菌散剤の場合では、調製方法は、減圧乾燥および凍結乾燥であり、これにより、それらの予め濾過された滅菌溶液からの活性成分と任意のさらなる所望の成分との散剤を生じる。
【0068】
経口組成物は、一般的には、不活性希釈剤または食用のキャリアを含有する。その経口組成物は、ゼラチンカプセルに封入され得るか、または錠剤へと圧縮され得る。経口治療投与の目的で、上記活性化合物は、賦形剤と一緒に組み入れられ得、そして錠剤、トローチ剤、またはカプセル剤の形態で使用され得る。経口組成物はまた、うがい薬としての使用のための流体キャリアを使用して調製され得、ここで、その流体キャリア中の化合物は、経口的に適用され、うがいされ、吐き出されるかまたは飲み込まれる。薬学的に適合性の結合剤、および/またはアジュバント物質は、上記組成物の一部として含まれ得る。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などは、以下の成分のいずれか、または類似の性質の化合物を含み得る:結合剤(例えば、微結晶セルロース、トラガカントゴム、もしくはゼラチン);賦形剤(例えば、デンプンもしくはラクトース)、崩壊剤(例えば、アルギン酸、Primogel、もしくはコーンスターチ);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウムもしくはSterote);流動促進剤(glidant)(例えば、コロイド状二酸化ケイ素);甘味剤(例えば、スクロースもしくはサッカリン);または矯味矯臭剤(例えば、ペパーミント、サリチル酸メチル、もしくはオレンジ香料)。
【0069】
吸入による投与のために、上記化合物は、エアロゾルスプレーの形態で、適切なプロペラント(例えば、二酸化炭素のような気体)を含む加圧容器もしくは分配器、またはネブライザから送達される。
【0070】
全身投与もまた、経粘膜手段または経皮手段によってあり得る。経粘膜投与または経皮投与に関しては、透過されるべき障壁に対して適切な浸透剤が、処方物に使用される。このような浸透剤は一般的に、当該分野で公知であり、そしてその浸透剤としては、例えば、経粘膜投与については、界面活性剤、胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体が挙げられる。経粘膜投与は、鼻スプレーまたは坐剤の使用により達成され得る。経皮投与に関しては、上記活性化合物は、一般的に当該分野で公知のように、軟膏(ointment)、軟膏(salve)、ゲル、またはクリーム中に処方される。
【0071】
上記化合物はまた、直腸送達のために、(例えば、従来の坐剤のベース(例えば、カカオ脂および他のグリセリド)を用いて)坐剤の形態で、または保持浣腸の形態で調製され得る。
【0072】
1つの実施形態において、上記活性化合物は、身体からの素早い排出からその化合物を保護するキャリアを用いて調製される(例えば、制御放出処方物(移植物およびマイクロカプセル化送達システムを含む))。生分解性で生体適合性のポリマー(例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸)が使用され得る。このような処方物の調製のための方法は、当業者に明らかである。上記材料はまた、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals,Inc.から商業的に得られ得る。リポソームの懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を用いて感染細胞に標的化されたリポソームを含む)もまた、薬学的に受容可能なキャリアとして使用され得る。これらは、当業者に公知の方法に従って調製され得る。
【0073】
いくつかの実施形態において、経口組成物または非経口組成物は、投与および投薬均一性を容易にするための投薬単位形態で処方される。本明細書中で使用される場合、投薬単位形態とは、処置されるべき被験体に対する単位投薬量として適切な物理的に別々の単位をいう;各単位は、必要とされる薬学的キャリアと関連して所望の治療効果を生じるように計算された所定量の活性化合物を含む。本発明の投薬単位形態についての規格は、活性化合物の独特の特徴および達成されるべき特定の治療効果、ならびに個体の処置のためにこのような活性化合物を化合する技術に固有な制限により指示され、そしてそれらに直接依存している。
【0074】
本発明の核酸分子は、ベクターに挿入され得、そして遺伝子治療ベクターとして使用され得る。遺伝子治療ベクターは、例えば、静脈内注射、局所的投与または定位注射によって被験体に送達され得る。遺伝子治療ベクターの薬学的調製物は、受容可能な希釈剤中に遺伝子治療ベクターを含み得るか、または遺伝子送達ビヒクルが組み込まれている徐放マトリックスを含み得る。あるいは、完全な遺伝子送達ベクター(例えば、レトロウイルスベクター)が組換え細胞からインタクトに産生され得る場合、上記薬学的調製物は、遺伝子送達系を生じる1個以上の細胞を含み得る。
【0075】
徐放性調製物は、所望の場合、調製され得る。徐放性調製物の適切な例としては、抗体の含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが挙げられ、このマトリックスは、成形された物品の形態(例えば、フィルムまたはマイクロカプセル)である。徐放性マトリックスの例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド、L−グルタミン酸およびL−グルタミン酸γエチルのコポリマー、非分解性エチレン−酢酸ビニル、分解性乳酸−グリコール酸コポリマー(例えば、LUPRON DEPOTTM(乳酸−グリコール酸コポリマーおよび酢酸ロイプロリドから構成される注射用ミクロスフェア))、ならびにポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が挙げられる。エチレン−酢酸ビニルおよび乳酸−グリコール酸のようなポリマーは、100日間にわたって分子の放出を可能とするが、特定のヒドロゲルは、より短期間の間、タンパク質を放出する。
【0076】
薬学的組成物は、投与についての取扱説明書と一緒に、容器、パックまたはディスペンサ内に含まれ得る。
【0077】
(生物系において粘着を阻害する方法)
生物系において生物学的組織への血球の粘着を阻害するための方法が、本発明に含まれる。この方法は、生物学的組織への血球の粘着を阻害するために十分な量の、本発明の融合ポリペプチドを生物系に添加する工程を包含する。
【0078】
血球は、例えば、白血球、血小板または赤血球であり得る。この白血球は、生物学的組織に粘着し得る任意の白血球であり得る。種々の局面において、上記白血球は、顆粒球(すなわち、好中球、好塩基球または好酸球)、単球(すなわち、マクロファージ)またはリンパ球(例えば、Tリンパ球、Bリンパ球、腫瘍浸潤リンパ球もしくはナチュラルキラー細胞)である。いくつかの実施形態において、上記白血球は、β2インテグリン(例えば、Mac−1)を発現する。あるいは、上記白血球は、セレクチンリガンドを発現する。
【0079】
生物系において生物学的組織へのタンパク質の粘着を阻害する方法もまた、本発明に含まれる。この方法は、生物学的組織へのタンパク質の粘着を阻害するために十分な量の、本発明の融合ポリペプチドを生物系に添加する工程を包含する。
【0080】
上記タンパク質は、膜会合型(例えば、共有結合的、非共有結合的、またはイオン的)タンパク質であり得る。あるいは、上記タンパク質は、可溶型(すなわち、溶液中)タンパク質であり得る。上記タンパク質は、フォンビレブラント因子、トロンビン、糖タンパク質IbαのP−セレクチンである。
【0081】
本明細書中で使用される場合、生物系とは、生物学的構成要素(例えば、細胞、タンパク質、炭水化物、脂質または核酸)を含む任意の系を含むことが意図される。生物系は、インビボ系、エキソビボ系またはインビトロ系であり得る。
【0082】
「粘着」とは、白血球の任意の生物学的相互作用(例えば、ローリング、確固な付着または特異的な相互作用)を包含することが意図される。
【0083】
生物学的組織への血球またはタンパク質の粘着の阻害は、当該分野で公知の方法を使用して測定され得る。例えば、生物学的組織への糖タンパク質Ibαの結合を検出するためのアッセイは、Simonら,J.Exp.Med.192:193−204,2000,およびそこで引用される参考文献に記載される。種々の実施形態において、GP Ibα融合タンパク質の結合は、生物学的組織への血球またはタンパク質の粘着を、少なくとも30%、50%、75%、90%、95%、99%または99.9%阻害する。
【0084】
粘着はまた、生理学的フロー条件より大きいかまたは小さい条件(静的条件および静的かつ剪断条件の連続適用が挙げられる)において評価され得る。粘着はまた、例えば、フローサイトメトリーによるカラーメトリー(colormetrically)、フルオロメトリー(fluorometrically)で決定され得るか、または平行プレートフローチャンバアッセイを使用して決定され得る。
【0085】
生物学的に活性な治療化合物(以下「治療剤(Therapeutic)」)を被験体に投与する工程によって、被験体において血小板活性化が関連する障害を処置する方法もまた、本発明に含まれる。あるいは、上記被験体はまた、以下のうちの1つ以上を投与される:スタチン;アセチルサリチル酸(アスピリン);ヘパリン(未分画ヘパリンまたは低分子量ヘパリンを含む);糖タンパク質IIb/IIIaアンタゴニスト;クロピドグレル(clopidogrel);P−セレクチンアンタゴニスト;トロンビンインヒビター;および血栓溶解酵素。
【0086】
上記被験体は、例えば、任意の哺乳動物(例えば、ヒト、霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ)であり得る。
【0087】
上記治療剤としては、例えば、以下が挙げられる:(i)糖タンパク質Ibαポリペプチドならびにその誘導体、フラグメント、アナログおよびホモログのうちの任意の1種以上;(ii)(i)に記載される糖タンパク質Ibαポリペプチドに対する抗体;ならびに(iii)上記(i)に記載されるような糖タンパク質Ibαポリペプチドならびにその誘導体、フラグメント、アナログおよびホモログをコードする核酸。
【0088】
本質的に、血小板活性化に病原学的に関連する任意の障害は、予防または処置に影響を受けやすいと考えられる。上記障害は、例えば、以下であり得る:脈菅炎症;アテローム硬化;再狭窄(例えば、血管形成関連再狭窄);および/または血栓障害と関連する状態(例えば、アンギナ(安定性アンギナおよび不安定性アンギナを含む)、急性心筋梗塞、脳卒中、静脈血栓症または動脈血栓症)。
【0089】
本発明は、以下の非限定的な実施例においてさらに例示される。
【実施例】
【0090】
(実施例1.GPIb−Igチロシン硫酸化は、トロンビン結合において重要な役割を担うが、vWF結合についてはあまり重要ではない)
vWFおよびトロンビンへの結合におけるGPIbαの酸性カルボキシル末端の領域の役割を、以下の3つの型のGPIbα−IgGFc融合タンパク質の位置276、278、および/または279のチロシン残基によって検査した:野生型ヒトGPIbα配列を有する融合タンパク質;M239V(1V)置換を有する融合タンパク質;および二重G233V M239V(2V)置換を有する融合タンパク質。上記タンパク質を、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞で産生し、次いで、タンパク質A親和性クロマトグラフィーおよびアニオン交換クロマトグラフィーによって単離した。硫酸化状態が0〜6個に変動したダイマー形態の融合タンパク質を単離した。
【0091】
vWF A1ドメイン(A1)、インタクトなvWF、およびα−トロンビンへのイソ型の結合を、表面プラズモン共鳴(BiaCore)を使用して検査した。
【0092】
1Vポリペプチドおよび2Vポリペプチドは、WTポリペプチドと比較して有意に高い親和性でA1ドメインに結合した。上記1Vポリペプチドおよび2Vポリペプチドはまた、vWFについての野生型GPIbα配列を有する融合タンパク質の親和性と相対的に、インタクトなvWFについて親和性の優位な増強を示した。完全に硫酸化されたイソ型から非硫酸化イソ型について、2V改変体についてのKは、4nm〜12nmの範囲であり、1V改変体についてのKは、119nm〜284nMの範囲であった。vWFへの野生型GPIbαの結合は、同一条件下で検出されず、このことは、Kd>1mMを示す。WT、1V、および2Vにおける硫酸化状態を変動させることは、A1ドメインまたはインタクトなvWFへの結合における有意な変化と相関しない。最終的に、GPIbα−Ig−vWF相互作用は、疎水性相互作用の代表的なゆっくりくっついて/ゆっくり離れる(slow−on/slow−off)速度論を示した(それぞれ、K=約10−1−1およびK=および約10−3−1)。
【0093】
GP Ibα−Ig239VおよびGP Ib−Ig2V分子について、トロンビンに対する完全に硫酸化されたイソ型の結合親和性は、非硫酸化イソ型の結合親和性よりも約80倍高かった(それぞれ、0.5μMおよび40μMのK)。vWFの結合について、完全に硫酸化された分子は、非硫酸化型の両方の変異体より3〜4倍の活性だけだった(2V 6〜0個の硫酸化についてK=3.4〜15nM、1V 6〜0個の硫酸化についてK=113〜521nM)。また、硫酸化状態と、フォンビレブラント因子への結合およびトロンビンへの結合との間の関係を調査した。
【0094】
(ラット尾出血法)
体重250〜300gの成体オスSprague Dawleyラット(Taconic)を使用した。この動物は、到着する前に、ベンダーにより頚静脈カテーテルが備え付けられた。この動物を、本発明者らの施設的動物施設で12時間の明かり期間(午前6時〜午後6時)の下、室温にて個別のケージで飼育し、標準的な研究用齧歯類食餌および水を適宜提供した。少なくとも3日、この動物を、その新しい環境に順応させ、その後使用した。
【0095】
(GPIb−Igサンプル投与およびラット尾出血手順)
実験の当日、3方活栓および滅菌等張性の0.9%の生理食塩水を充填した1ccシリンジを備えた延長チューブ(20cmのPE 50チューブ)を、留置頚静脈カテーテルに取り付けた。ストックGPIb−Ig試験サンプルを、等張性の0.9%の生理食塩水を用いて希釈し、3方活栓の別のアームを通じて100gの体重あたり0.1mlの体積の指示用量で投与した。カテーテルを、0.2mlの生理食塩水でフラッシュした。注射後10分で、ラットを飼育ケージから取り出し、制止容器(restrainer)内にやさしく入れた。尾の先端の1〜2mmの区分をかみそりの刃を使用して切断し、この尾を、0.9%の等張性生理食塩水(温度37℃)を事前に満たした300mlのビーカー中に迅速に浸漬した。出血時間を、尾の出血開始から完全に止血する(一旦止血すると30秒以内に再出血がない)までの期間として定義した。実験の終わりに、ラットをCO吸入により安楽死させた。
【0096】
ラットの尾の出血アッセイにおいて、200μg/kg用量のi.v.の後10分で、硫酸化状態0個、1個、または2個を有するGPIbα改変体において、4分の出血時間が検出された。出血時間は、硫酸化状態が6個まで増加するにつれて、増加し、その6個のとき、出血時間は、10分であった。
【0097】
これらのデータは、上記硫酸化が、トロンビン結合における役割を担うが、vWF結合ではそれほどあまり役割を担わないことを実証する。しかしながら、この硫酸化状態は、α−トロンビンへの結合に有意に影響する。トロンビンとのGPIbα−Ig結合の化学両論は、1つのGPIbα−Igあたり2つ超のαートロンビンであった。このαートロンビン−GPIbα相互作用は、GPIbαのCys208〜Cys249ループ(これは、vWFに結合する)の疎水性と比較してGPIbα−Ig硫酸化状態に対してさらにより感受性である。これらの結果は、GPIbαが、以下の2つの機能的に区別可能なサブドメインを含むことを示す:vWF結合についてのサブドメインおよびトロンビン結合についてのサブドメイン。
【0098】
(実施例2.GPIbaのCys65は凝集に関与する)
結晶構造により、GPIbαのCys65がLRR領域に埋め込まれていることが明らかとなる。ネイティブな条件下での、チオール反応性プローブでの非常に低い標識比(約5%)は、このCys残基の近づきにくさを実証した。Ellmanのアッセイおよび予備的なネイティブペプチドマッピングは、Cys65には改変がなかったことを示した。しかし、ごく少量の露出されたチオールでさえ、分子間ジスルフィド結合を形成し得、凝集を生じた。凝集におけるこの残基の役割を試験した。
【0099】
GPIbαサンプルを、40℃にて80時間圧力をかけた場合、全タンパク質の約25%が凝集を形成した。この凝集は、縮小できたが、ほとんどはSDS安定であった。分析的な超遠心分離は、この凝集が、二量体〜八量体にわたることを示した。この凝集の非還元型のアルキル化Achro−Kペプチドマップは、遊離のCys含有ペプチド(K4ペプチド)がマップにおいて消失し、これが、別のK4を有する大きなペプチドおよび他のCys含有ペプチドを形成し得ることを示した。凝集における遊離のCysの役割を確認するために、GPIbαサンプルを1M GnHCl中で熱−圧力処理し、全体的に共有結合性の凝集を生じた。1M GnHClの存在下で、タンパク質の構造は、緩くなり、それによって、埋め込まれたCys65を露出し、凝集を加速するようである。これらのデータは、これらの条件下で、遊離のCys残基が凝集に関与し得ることを示唆する。
【0100】
(実施例3.GPIbα融合タンパク質は、vWFポリペプチドと相互作用する)
GPIbα融合タンパク質改変体とvWFポリペプチドとの間の直接的な相互作用についての証拠を試験した。
【0101】
試験したGPIbα融合タンパク質改変体には、1V、2V、3V、3V/C65S、2V/FFFおよび「短縮型(clipped)2V」という名称の改変体が含まれた。コントロール反応は、290アミノ酸のGPIbαタンパク質、vWFポリペプチド単独、または、無関係のコントロールポリペプチド(47.mFc、PSGL−1融合タンパク質)を含んだ。
【0102】
融合ポリペプチドまたはコントロールポリペプチドを、プロテインAセファロースビーズと混合した。このビーズは、融合タンパク質の免疫グロブリン部分と結合する。プロテインAセファロースビーズに結合したタンパク質を溶出し、3〜8% Trisアセテートゲルにより電気泳動した。次いで、このゲルをvWFに対するポリクローナル抗体で免疫ブロットし、抗体を検出した。ゲルを、還元的条件および非還元的条件の両方において泳動した。この手順を2回行なった。
【0103】
vEF A1フラグメント、または、インタクトなvWFフラグメントに対する結合の結果を以下に示す。vWFは、還元的条件および非還元的条件の両方においてアッセイしたとき、GPIBα改変体3Vおよび3V/C65Sに対して最も強い結合を示した。強い結合はまた、2V改変体でも観察されたが、1V改変体および2V/FFF改変体では、比較的少ない結合が検出された。GPIbα野生型ポリペプチドは、これらの実験においてvWFに対する弱い結合を示した。
【0104】
【化5】

(実施例5:反復性の冠動脈血栓症のインビボ抑制)
融合Ibαタンパク質−免疫グロブリンタンパク質が、インビボで冠動脈血栓症を抑制する能力を、Foltsら、Circulation 54:365−70、1976により記載された手順を使用して決定し、試験する。この融合タンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列に対して、置換G233V K237VおよびM239Vを有するGPIbα配列を含む。
【0105】
雑種犬(体重20〜25kg)をペントバルビタールナトリウム(30mg/kg i.v.)で麻酔し、次いで、挿管し、人工呼吸器を使用して、大気を通気する。静脈カテーテルおよび動脈カテーテルを配置する。第5肋間腔を通る左開胸術により心臓に接近する。心膜を開き、創傷の末端を縫合して、心臓を置換することなくクレードルを提供する。約2cmの左冠動脈回旋枝(LCX)を単離する。平均的および動的なLCXの流れを、動脈の近位に配置した血管周囲の超音波流れプローブを使用して連続的にモニタリングする。安定化期間の後、LCXの内皮を、止血鉗子を締付けることによって傷つける。プラスチック製の圧迫器を遠位に、そして、傷つけた内皮の領域の上に配置し、約70〜80%の脈管狭窄を与える。血流が0に減少すると、圧迫器を振動させて、凝集した血小板を除去することによって血流を回復させる。この血流の減少および回復は、CFRと呼ばれる。少なくとも5回の連続したCFRを、試験薬物を投与する前に記録する。
【0106】
3Vの量を増やすと、より高い血流が生じる。これらの結果は、融合糖タンパク質が、動物モデルにおいて血栓症を抑制することを実証する。
【0107】
(実施例6.不安定性狭心症(UA)または非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)を有する被験体のインビボ処置)
本発明によるGPIBα−Ig改変体を、不安定性狭心症または非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)を有する患者への単回静脈内ボーラス注射(10mg)によって融合タンパク質として投与する。改変体を用いた処置は、UAまたはNSTEMIを緩和する。リストセチン誘発性の血小板凝集アッセイ(RIPA)を、GPIb−Ig活性をモニタリングするために使用する。
【0108】
(実施例7.クロピドグレル(clopidogrel)およびGPIbα 2V改変体もしくはGPIbα 2V/FFF改変体を用いた出血時間の比較)
出血時間に対する効果を、クトピドグレルおよびGPIbα 2V、または2つの異なる用量のGPIba 2V/FFFで処置したラットにおける出血時間を比較することによって試験した。これらのラットは、トロンビン結合部位を欠失している。
【0109】
GPIbα改変体を、クロピドグレル(4.3mg/kg、po)投与の2時間後に、静脈内投与した。試験したGPIbα改変体としては、GPIbα 2V/290/FFF GPIba 2V/290 GPIba 2V/290 GPIba 2V/290、GPIba 2V/290/FFF(100mcg/kg)、およびGPIba 2V/290(50mcg/kg)が含まれた。RBTを、GPIα改変体の投与の15分後に測定した。6〜7匹の動物を、各処置について試験した。
【0110】
出血時間は、クロピドグレル単独で処置したラット(N=7)における8.2分から、クロピドグレルおよび50mcg/kgのGPIbα 2V/290で処置したラット(N=6)における24分まで増加した。出血時間は、50mcg/kgのGPIbα 2V/290/FFFで処置したラット(N=6)における13.9分、および100mcg/kgのGPIbα 2V/290/FFFで処置したラット(N=7)における19分まで増加した。従って、GPIba 2V/290改変体を与えた動物と比較して、GPIbα 2V/290/FFFの用量を2回与えた動物において、より短い出血時間が観察された。
【0111】
(実施例8.冠動脈血栓症のイヌモデルにおける組換え可溶性GPIbaキメラの硫酸化形態および非硫酸化形態の抗血栓効果の比較)
非硫酸化型の組換えヒトGPIbαキメラ(GPIb−290/2V/FFF−Ig)のリガンド結合能および抗血栓効果を、硫酸化型の組換えヒトGPIbαキメラ(GPIb−290/2V−Ig)のものと比較した。
【0112】
使用した可溶性の組換えGPIbαキメラには、GPIbaのN末端290アミノ酸から構成され、233位および239位に機能獲得置換を有し、ヒトIgG1 Fcドメインに融合した、GPIb−290/2V−Igが含まれた。3つのチロシン残基(Tyr−276、278、279)をフェニルアラニンでさらに置換して硫酸化を排除することによって、GPIbα−290/2V/FFF−Igを作製した。
【0113】
麻酔した雄性雑種犬の左冠動脈回旋枝の損傷を圧搾することによって循環血流の減少(cyclic flow reduction)(CFR)を誘導した。冠動脈の血流を、血管周囲超音波流プローブを使用して、連続的にモニタリングした。テンプレート出血時間を、自動化裁断デバイスを使用して内側の上唇の表面で測定した。この硫酸化型および非硫酸化型のGPIbaキメラにより引き起こされた出血時間の延長を、ラットの尾の出血モデルを使用して評価した。Foltsモデルの処置前、および処置後の種々の時点での全血の血小板機能を、Platelet Function Analyzer−100(PFA−100)を用いて測定した。
【0114】
vWFに対するGPIbα−290/2V−IgおよびGPIbα−290/2V/FFF−Ig、ならびにα−トロンビンの結合能を、Biacoreアッセイを用いてインビトロで評価した。結果を以下に示す:
【0115】
【化6】

野生型もしくはGPIbキメラのリストセチン誘発性のヒト血小板凝集に対する効果を、図1A〜1Dに示す。野生型GPIba(「正常」)、GPIb−Ig WT、GPIba−290/2V−IgおよびGPIba−290/2V/FFF−Igを示す。
【0116】
冠動脈血栓症のイヌFoltsモデルにおけるGPIb−290/2V−Ig(「2V」)およびGPIb−290/FFF−Ig(「FFF」)の用量応答を、以下に示す。CFRが完全に排除される場合に、4のスコアを付け、CFRが完全には消滅しなかったが、冠動脈は、自発的に開くことができた場合に、3のスコアを付けた。
【0117】
【化7】

GPIb−290/2V−IgおよびGPIb−290/2V/FFF−Igにより引き起こされたラットの尾の出血時間の延長もまた試験した:
【0118】
【化8】

図2は、冠動脈血栓症のイヌFoltsモデルにおけるGPIbαキメラの抗血栓効果を示すグラフである(y軸:LCX血液)。
【0119】
図3は、PFA−100により評価した、冠動脈血栓症のイヌモデルにおけるGPIb/290/2V−IgおよびGPIb/290/2V/FFF−Igによる血小板機能の抑制を示すグラフである。
【0120】
これらの結果は、6つの硫酸化チロシンのフェニルアラニンへの変換が、これらの研究において、vWF A1ドメイン結合を約3倍減少させ、ほとんど完全にトロンビンの結合を消滅させたことを実証する。GPIb/290/2V/FFF−Igは、PFA−100を使用して評価すると、循環血流の減少、出血時間の延長およびADP閉鎖時間において、GPIb−290/2V−Igと比較した場合、50%の効力の減少を実証した。これらの用量のGPIbaキメラによる動脈血栓の形成の防止は、vWF A1ドメインの抑制により生じ、そしてこの活性は、トロンビン結合と無関係である。
【0121】
(他の実施形態)
本発明は、その詳細な説明と組合せて説明されてきたが、上記の説明は、添付の特許請求の範囲により規定される本発明の範囲を例示することが意図され、添付の特許請求の範囲により規定される本発明の範囲を制限することは意図されない。他の局面、利点および改変は、添付の特許請求の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】図1は、GPIbαキメラのリストセチン誘導ヒト血小板凝集における阻害を示すグラフである。野生型GPIbα(「正常」)、およびGPIb−IgWTキメラ、GPIbα−290/2V−Igキメラ、GPIbα−290/2V/FFF−Igキメラについての光透過率(y軸)を示す。
【図2】図2は、イヌの冠状動脈血栓症(y軸:LCX血)のフォルツ(Folts’)モデルにおける、GPIbαキメラの抗血栓効果を示すグラフである。
【図3】図3は、PFA−100によって評価された、イヌの冠状動脈血栓症モデルにおける、GPIb/290/2V−IgおよびGPIb/290/2V/FFF−Igによる血小板機能の阻害を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトGPIbαタンパク質配列(配列番号1)のアミノ酸1〜290に対して1〜20アミノ酸の置換、欠失または挿入を有するアミノ酸配列を含むタンパク質であって、該ポリペプチドは、以下:
配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドのαトロンビンへの結合と比較して、αトロンビンに対する低い結合親和性;
配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドの凝集と比較して低い凝集;および
配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドよりも増加したタンパク質分解に対する抵抗性
からなる群より選択される少なくとも1つの活性を有する、タンパク質。
【請求項2】
前記第1のポリペプチドは、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列に対して、わずか15の置換、挿入または欠失を有する、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
前記第1のポリペプチドは、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列に対して、わずか12の置換、挿入または欠失を有する、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項4】
前記ポリペプチドは、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列に対して、わずか10の置換、挿入または欠失を有する、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項5】
前記ポリペプチドは、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列に対して、わずか5の置換、挿入または欠失を有する、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項6】
前記ポリペプチドが、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドのαトロンビンへの結合と比較して、低い親和性でαトロンビンに結合する、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項7】
前記ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列に対して、少なくとも1つのアミノ酸置換Y276F、Y278F、Y279V、またはその保存的改変体を含む、請求項6に記載のポリペプチド。
【請求項8】
前記ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列に対して、少なくとも2つのアミノ酸置換Y276F、Y278F、Y279V、またはその保存的改変体を含む、請求項6に記載のポリペプチド。
【請求項9】
前記ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列に対して、アミノ酸置換Y276F、Y278F、Y279V、またはその保存的改変体を含む、請求項6に記載のポリペプチド。
【請求項10】
前記ポリペプチドの凝集は、配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドの凝集と比較して、低下している、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項11】
前記ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列に対して、アミノ酸置換C65S、またはその保存的改変体を含む、請求項10に記載のポリペプチド。
【請求項12】
前記ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドよりもタンパク質分解に対して抵抗性である、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項13】
前記ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列に対して、アミノ酸置換K237V、またはその保存的改変体を含む、請求項12に記載のポリペプチド。
【請求項14】
配列番号2のアミノ酸1〜290に対して、1〜10アミノ酸の置換、挿入または欠失を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、但し、該アミノ酸配列は、233V、239Vを含み、そして、アミノ酸置換Y276Fを含む、ポリペプチド。
【請求項15】
前記アミノ酸配列は、アミノ酸置換K237Vを含む、請求項14に記載のポリペプチド。
【請求項16】
前記アミノ酸配列はさらに、アミノ酸置換C65Sを含む、請求項14に記載のポリペプチド。
【請求項17】
前記アミノ酸配列はさらに、アミノ酸置換Y278FまたはY279Fを含む、請求項14に記載のポリペプチド。
【請求項18】
前記アミノ酸配列はさらに、アミノ酸置換Y278FおよびY279Fを含む、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項19】
さらにアミノ酸置換K237Vを含む、請求項18に記載のポリペプチド。
【請求項20】
さらにアミノ酸置換C65Sを含む、請求項19に記載のポリペプチド。
【請求項21】
前記ポリペプチドは、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドよりも高い親和性でフォン・ビルブラント因子に結合する、請求項14に記載のポリペプチド。
【請求項22】
配列番号2のアミノ酸配列内に1つ以上の置換を含むポリペプチドであって、該1つ以上の置換は、
Y276F;
Y276F K237V;
Y276F C65S;
Y276F Y278F Y279F;
Y276F Y278F Y279F K237V;または
Y276F Y278F Y279F K237V C65S
である、ポリペプチド。
【請求項23】
第2のポリペプチドに連結した、請求項1に記載のポリペプチドを含む、融合ポリペプチド。
【請求項24】
前記第2のポリペプチドは、重鎖免疫グロブリンポリペプチドの領域を含む、請求項23に記載の融合ポリペプチド。
【請求項25】
前記第2のポリペプチドは、免疫グロブリン重鎖のFc領域を含む、請求項24に記載の融合ポリペプチド。
【請求項26】
前記第2のポリペプチドは、野生型免疫グロブリン重鎖のFc領域のエフェクター機能よりも弱いエフェクター機能を有する、請求項25に記載の融合ポリペプチド。
【請求項27】
前記第2のポリペプチドは、Fcレセプターに低い親和性で結合するか、または親和性を有さない、請求項24に記載の融合ポリペプチド。
【請求項28】
前記第2のポリペプチドは、補体タンパク質C1qに低い親和性で結合するか、または親和性を有さない、請求項24に記載の融合ポリペプチド。
【請求項29】
前記第2のポリペプチドは、重鎖免疫グロブリンポリペプチドの領域を含む、請求項24に記載の融合ポリペプチド。
【請求項30】
前記第2のポリペプチドは、免疫グロブリン重鎖のFc領域を含む、請求項24に記載の融合ポリペプチド。
【請求項31】
前記第2のポリペプチドは、野生型免疫グロブリン重鎖のFc領域のエフェクター機能よりも弱いエフェクター機能を有する、請求項24に記載の融合ポリペプチド。
【請求項32】
前記第2のポリペプチドは、配列番号3の配列を含む、請求項24に記載の融合ポリペプチド。
【請求項33】
さらにシグナル配列を含む、請求項24に記載の融合ポリペプチド。
【請求項34】
前記シグナル配列は、配列MPLLLLLLLLPSPLHP(配列番号8)または配列MPLQLLLLLILLGPGNSLQL WDTWADEAEK ALGPLLARDR R(配列番号9)を含む、請求項33に記載の融合ポリペプチド。
【請求項35】
請求項24に記載の融合ポリペプチドを含む、多量体ポリペプチド。
【請求項36】
前記多量体ポリペプチドは二量体である、請求項35に記載の多量体ポリペプチド。
【請求項37】
請求項1に記載のポリペプチドをコードする、DNA分子。
【請求項38】
請求項37に記載のDNAを含む、ベクター。
【請求項39】
請求項38に記載のベクターを含む、細胞。
【請求項40】
糖タンパク質Ibαポリペプチド−免疫グロブリン融合ポリペプチドを発現させるための方法であって、該方法は、請求項39に記載の細胞を、該糖タンパク質Ibα−免疫グロブリン融合ポリペプチドの発現を生じる条件下で培養する工程を包含する、方法。
【請求項41】
請求項1に記載のポリペプチドを含む、薬学的組成物。
【請求項42】
請求項23に記載の融合タンパク質を含む、薬学的組成物。
【請求項43】
生体系において生体組織への血球の接着を阻害する方法であって、該方法は、該生体組織への該血球の接着を阻害するのに十分な量の請求項23に記載の融合ポリペプチドを該生体系に添加する工程を包含する、方法。
【請求項44】
前記生体系がインビトロ系である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記生体系がエキソビボ系である、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記生体系がインビボ系である、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
前記血球が血小板である、請求項43に記載の方法。
【請求項48】
前記血小板が、糖タンパク質Ibα、P−セレクチンまたはトロンビンを発現する、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記血球が、白血球である、請求項43に記載の方法。
【請求項50】
前記白血球が、Mac−1またはセレクチンリガンドを発現する、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記生体組織が、フォン・ビルブラント因子、トロンビン、糖タンパク質Ibα、またはP−セレクチンと複合体化している、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
生体系において生体組織へのタンパク質の接着を阻害する方法であって、該方法は、該生体組織への該タンパク質の接着を阻害するのに十分な量の請求項1に記載の融合ポリペプチドを、該生体系に添加する工程を包含する、方法。
【請求項53】
前記生体系がインビトロ系である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記生体系がエキソビボ系である、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
前記生体系がインビボ系である、請求項52に記載の方法。
【請求項56】
前記タンパク質が膜共役型である、請求項52に記載の方法。
【請求項57】
前記タンパク質が、糖タンパク質Ibα、P−セレクチン、フォン・ビルブラント因子またはトロンビンである、請求項52に記載の方法。
【請求項58】
前記タンパク質が溶液中である、請求項52に記載の方法。
【請求項59】
前記タンパク質がフォン・フィルブラント因子またはトロンビンである、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記生体組織が、糖タンパク質Ibα、Mac−1、P−セレクチン、フォン・ビルブラント因子、およびトロンビンからなる群より選択されるタンパク質と複合体化している、請求項52に記載の方法。
【請求項61】
被験体における血小板活性化に関連する障害を処置する方法であって、該方法は、請求項1に記載の融合ポリペプチドを必要とする被験体に、該融合ポリペプチドを投与する工程を包含する、方法。
【請求項62】
前記障害は、血栓性疾患に関連する、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記障害は、虚血性心疾患、狭心症、急性心筋梗塞、心臓発作、静脈性血栓症、アテローム性動脈硬化症、または動脈性血栓症である、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
前記障害が狭心症である、請求項61に記載の方法。
【請求項65】
前記狭心症が、不安定狭心症である、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記被験体がヒトである、請求項61に記載の方法。
【請求項67】
アセチルサリチル酸、ヘパリン、糖タンパク質IIb/IIIaアンタゴニスト、クロピドグレル、P−セレクチンアンタゴニスト、トロンビンインヒビター、および血栓溶解酵素からなる群より選択される化合物を、上記被験体に投与する工程をさらに包含する、請求項61に記載の方法。
【請求項68】
ヒトGPIb2Vタンパク質配列(配列番号2)のアミノ酸1〜290に対して、1〜20アミノ酸の置換、欠失または挿入を有するアミノ酸配列を含むタンパク質であって、該第1のポリペプチドは、配列番号2を含むポリペプチドよりも、高い親和性でフォン・ビルブラント因子に結合する、タンパク質。
【請求項69】
前記タンパク質は、融合タンパク質である、請求項68に記載のタンパク質。
【請求項70】
前記タンパク質は、融合タンパク質である、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項71】
免疫グロブリンの領域を含む、請求項70に記載の融合タンパク質。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−537710(P2007−537710A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533797(P2006−533797)
【出願日】平成16年6月14日(2004.6.14)
【国際出願番号】PCT/US2004/019057
【国際公開番号】WO2004/111089
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(502161704)ワイス (51)
【Fターム(参考)】