説明

血液冷却軸受け付き移植可能電気軸流血液ポンプ

【課題】血栓を生成しない懸架部を備えた血液浸潤ロータを使用する移植可能な軸流血液ポンプに関し、中でも、血液を軸受け流体として使用しない血液冷却自動調心式ボールカップロータ支持部を用いたポンプ構成を提供する。
【解決手段】軸流血液ポンプ(10)はボールカップ軸受け(38、42)に懸架されたロータ(20)を備えている。この軸受けは血液冷却ではあるが血液潤滑ではない。ボールカップ構造は熱伝導性の高い材質から形成され、軸受けの吸熱材として作用する熱伝導性固定子羽根(30)と熱が転移するように接触している。ボールカップ構造は固定子羽根より半径方向でははるかに小さい。ボールとカップの境界面の隙間は非常に小さいので、ボール対カップ構造は血流にほぼ連続する表面を提供することになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、血栓を生成しない懸架部を備えた血液浸潤ロータを使用する移植可能な軸流血液ポンプに関し、中でも、血液を軸受け流体として使用しない血液冷却自動調心式ボールカップロータ支持部を用いたポンプ構成に関する。
関連出願
本件は、1995年4月19日に出願された特許出願番号第08/424165号の一部継続出願である。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
米国特許第4625712号(特許文献1)に開示されたポンプなど、心臓の支援に使用される流体力学式軸受けを備えた従来の軸流血液ポンプでは、血液が流体力学ジャーナルやスラスト軸受けに入って血栓が形成されたり、溶血現象が発生したり、軸受けが動かなくなったりしないようにパージ流体を送らなければならない。外部から流体を送らなければならないので、この種のポンプは長期間の移植には不向きである。
【0003】
理想的には、移植可能血液ポンプが、軸受け流体を必要としないか、あるいは、ポンプで送られる血液そのもの、またはポンプで送られる血液血液の成分を軸受け流体として使用することである。これを可能にする構成としては、R.K. Jarvikによる米国特許第4994078号(特許文献2)とIsaacsonその他による米国特許第5112200号(特許文献3)により提案されたものがある。これらの構成は、半径方向の移動に対してロータを機構的に支持する円筒形のラジアルまたはジャーナル軸受けを必要としているという問題がある。従来技術の代表的な実施例では、軸受けは、内膜軸受け、すなわち、血液潤滑円筒形流体力学軸受けであり、この内部を通過して血清が円筒の両端部の間の圧力差により引きだされる。血液細胞が軸受けに入ったり溶血しないように、軸受けの公差を極めて小さくしているので血液細胞はほぼ軸受けから排除される。
【0004】
代わるものとして、Moiseの米国特許第4704121号(特許文献4)に教唆してあるように、磁気駆動血液ポンプ用の軸受け流体を、血液細胞とたんぱく質を保持するが血清だけは通すフィルタによりポンプで送られた血液の一部をろ過することで確保することができる。
【0005】
「軸流心室支援装置:システム性能考慮事項(Axial Flow Ventricular Assist Device: System Performance Considerations)」(人工器官(Artificial Organs)、Vol. 18, No. 1 pp., 44-48 (1994)(非特許文献1)および「基本の小型非密封式遠心式心室支援装置;ベイラCジャイロポンプ(An Ultimate, Compact, Seal-less Centrifugal Ventricular Assist Device; Baylor C-Gyro Pump)」(人工器官(Artificial Organs)、Vol. 18, No. 1, pp.17-24 (1994)(非特許文献2)などの論文には、血液循環ピボット軸受けを用いた軸流血液ポンプと遠心式血液ポンプが記載されている。
【0006】
従来技術のジャーナル軸受けまたはラジアル軸受けの考え方には、軸受けを作動停止にしたり、さらに/または最終的に軸受け材料が過度に摩耗してしまう潜在的な欠点を備えている。基本的には、これは軸受けの長さによるもので、ロータまたは固定子内の軸受けの位置による熱除去容量が低下し、内膜設計の軸受けに通気性がないからである。血液が通過しなければならない比較的長く極端に狭い隙間は変質した血液により塞がれることになる。このことは従来の実施例においては特に当てはまる。こうした従来の実施例では、ジャーナル軸受けが一端で閉鎖されるので、血液はそれを通過できない。モータが残留物を機械加工するのに十分なトルクをもっているような設計でさえも、長期間にわたってかなり材質が摩耗され、ポンプの有効寿命が短くなる。さらに、血液細胞が入るのを防ぐのに必要な極めて小さなすきま(公差)を使用するジャーナル軸受けでは、固定子とロータの調整不良が最も小さくても、ポンプの機能が低下し、寿命が短くなる。最後に、内膜血液軸受けなどジャーナル軸受けの性能と寿命は、血液潤滑を使用しない構成よりも血液化学や出血など制御不可能な患者の変数にはるかに依存している。
【0007】
したがって、能動血液潤滑が不必要で、調整が自動式で、回転要素と固定要素の間の境界領域が極めて小さく、境界の熱除去機能がすぐれており、境界が摩耗による形状の変化に耐性をもつ移植可能血液ポンプが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4625712号
【特許文献2】R.K. Jarvikによる米国特許第4994078号
【特許文献3】Isaacsonその他による米国特許第5112200号
【特許文献4】Moiseの米国特許第4704121号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】「軸流心室支援装置:システム性能考慮事項(Axial Flow Ventricular Assist Device: System Performance Considerations)」(人工器官(Artificial Organs)、Vol. 18, No. 1 pp., 44-48 (1994)
【非特許文献2】「基本の小型非密封式遠心式心室支援装置;ベイラCジャイロポンプ(An Ultimate, Compact, Seal-less Centrifugal Ventricular Assist Device; Baylor C-Gyro Pump)」(人工器官(Artificial Organs)、Vol. 18, No. 1, pp.17-24 (1994)
【発明の概要】
【0010】
発明の要約
同時継続出願番号第08/424165号では、間に考慮すべき隙間のない極めて小さい係合表面をもつボールカップ支持部をポンプロータに備えることで従来技術の上記の問題が解決される。ボールカップ支持部は、摩擦係数が低く熱伝導性が高い非常に硬い材質から構成される乾式軸受けである。この支持部は、係合表面間に潤滑血清膜を備える必要はない(事実、その装備を回避しようとしている)。この支持部は、回転−静止境界面で生成される摩擦熱を除去するために、ポンプにより送られた自由血液流により外部で洗われる。ボールソケット式組立材質は熱伝導性が高く、ボールカップ式組立体のサイズが比較的小さいので、軸受けと血液流の間で効率的な熱転移が可能になる。本出願の態様によると、ポンプの入口の固定子羽根をボールカップ式軸受けの冷却フィンとして使用することで熱転送が増大する。
【0011】
軸受け材料−好ましくは、本明細書に開示されているように、炭化ケイ素により裏打ちされたダイヤモンド膜−は硬いので、ポンプの有効寿命中は、軸受けから血清を排除するに十分な極めて狭い公差が維持される。本出願では炭化ケイ素が好ましい、というのはこの材質の熱伝導性は高いので血清により洗われているときに軸受けが冷たくなるからである。さらに、ボールカップ材質の硬度に関わらず発生する摩耗は、半球状の表面の形状が摩耗により互いに対して変わらないようにボールカップを形造り、摩耗に関わらず、柔軟なバイアス部材の支援を受けて予荷重を選択的に維持することで補償される。
【0012】
本発明の他の態様によると、ポンプロータは、ポンプの出口端部の固定子の羽根の内部に装備された排気コーンを備えるよう形成されている。この構成には2つの利点がある。ポンプの全長を実質的に短くしてその主容量を低下させることと、ほぼ周縁の速度要素を依然としてもっている血清により出口とボールカップ構造を洗浄して熱除去動作を改良することである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明のポンプの実施例の縦断面である。
【図2】図2は、図1のポンプのポンプロータの斜視図である。
【図3】図3は、図1のポンプのロータと固定子の組立体からハウジングとモータを取り除いた斜視図である。
【図4】図4は、図1のポンプを一部破断して示す分解組立図である。
【図5】図5は、本発明のポンプの他の実施例の縦断面である。
【図6】図6は、図5のポンプのロータと固定子の詳細な部分断面である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
好適実施例の説明
図1は、本発明のポンプ10の実施例の軸方向横断面図である。ポンプハウジング12は円筒形血液導管14を画定し、導管14内を通って血液が入口16から出口18に図2に最もよく示されているポンプロータ20により送られる。ポンプロータ20の原動力は、ハウジング12内の固定子チューブ23を取り巻くモータ固定子22と軸25の周りのポンプロータ20に固着されたモータロータ24の相互作用により提供される。電動力は、配線導管28を通過するケーブル26によりモータ固定子22に供給される。
【0015】
血液導管14内で、熱伝導性が高い材質で形成された真直ぐな入口の固定子羽根30が、熱伝導性が高い材質から形成された入口のハブ32を支持している。入口のハブ32はカップ部材34を含む。炭化ケイ素などの硬質で熱伝導性が高い材質から構成されたカップ部材34は緊密にハブ32に嵌まる。ハブ32に固定された主組立体は、カップ部材34の熱膨張空間31と、カップ部材34が回転しないように保持するためにカップ部材34のスロット37に係合する複数のキー35とを備えている。
【0016】
本発明によると、複数の固定子羽根30が、ハブ32の入口端部付近からカップ部材34の下流端部、すなわち、ボール38とカップ間の境界面までの全経路分、に延在している。熱転送係合状態にカップ部材34を羽根30に緊密に嵌めこみ、ボール部材38を円錐頭40に嵌め込むことで、羽根30は、ハブ32に沿ってだけでなく、軸受けの摩擦熱が発生するカップ34とボール38の間の回転/静止境界面で吸熱材としての役割を果たすことになる。同様に、円錐頭40はボール部材38に対する吸熱材として機能する。羽根30の半径方向の距離がカップ部材34の直径よりかなり長いと、羽根30は摩擦熱を実質的に放散させることができる。固定子羽根30は止めネジ41により血液導管14に適切に保持される。緊密に保持されると、血液導管14に堅く羽根30がくさび留めされるようにハウジング12が変形する。
【0017】
第1に、熱の発生を低下させるために、ボール38(円錐頭40にねじ込まれる)とカップ34の相互係合面に、耐耗性の高いダイヤモンド膜から成る薄い(約1.0μ)の層を被覆させるのが好ましい。この材料の摩擦係数は、他の硬質軸受け材料と比べて、比較的低いので、摩擦熱が最少化すべき重要なパラメータである本出願では特にふさわしい。
【0018】
ポンプロータ20の本体42と円錐頭40は、血液導管14中を流れる血液を加速させ周辺スピンを血液流に伝えるロータ羽根44を支持している。本発明によると、ポンプロータ20の排気コーン46が出口固定子羽根48内に装備されている。出口固定子羽根48は血液流の速度を下げ、回転を止めて出口18に排出される。出口固定子羽根48は出口ハブ50も支持している。この出口ハブ50内に、出口ボール52が緊密に嵌まってねじ込まれている。ボール52は、排気コーン46に緊密に嵌まってねじ込まれている出口カップ54と協働する。
【0019】
ロータ排気コーン46を出口固定子羽根48に装備するといくつかの利点が発生する。1つは、ポンプ10が実質的に短くなるので、その主容量(外科処置では重要な要因)が著しく減少することである。他には、出口ボールソケット組立体52、54の冷却が改良される。これは、出口固定子羽根48の長手方向中央の周囲のボールソケット組立体の位置に、冷却血流がその軸流要素に加えて回転流要素を依然として含んでいるからである。さらに、固定子羽根30に関連して上記のように、ボール部材52を固定子羽根48にプレスばめし、排気コーン46をカップ部材54にプレスばめすることで、羽根48と排気コーン46がボール52とカップ54の回転/静止境界面の過大な吸熱材として機能する。
【0020】
ポンプロータ20の2つの半体62と64は軸25にそれらをねじ込むことで一緒に保持される。
【0021】
実際のボールまたはカップの面を除いて、ボール部材38とカップ部材34は同一であることに注意すべきである。結果として、望まれれば、それらの部材は図1の相対位置とは逆にされる。ただしそれが望ましければである。
【0022】
カップ部材34とボール部材38の背後に熱膨張空間31を備えれば、ハブ32とロータ20それぞれの部材の熱膨張が吸収される。したがって、広い範囲の軸受け温度に渡ってカップ部材34とボール部材38の相互係合面の間の極めて近接した公差を維持することができる。
【0023】
バイアスをかけることなく組立てている間にカップ部材34とボール部材38(およびロータ20の他端でのカップ部材54とボール部材)を正確に係合させたり予荷重をかけるのは、ハブおよび固定子部分組立体を適切な位置に係合させる止めネジ41を締めつける前にハブ32と固定子羽根30を極めて正確に位置づけることで実行される。その結果発生する出荷時の予荷重は、ポンプ10の寿命の間、相互係合したボール面およびカップ面に被覆されているダイヤモンド膜が硬いので維持される。
【0024】
図5と図6に示す本発明の他の実施例によると、ポンプロータ20は、固定軸部分72と、ロータ20内で軸方向に摺動可能であるがロータ20に関しては回転しない軸部分70と、それらの間の柔軟なプラグ74とから構成された軸組立体を備えている。軸部分70は、ロータ20に血液や血清が入らないほどの小さい公差(たとえば、50μ)をとってロータ20に嵌められる、ただし血液や血清がはいってもたいしたことはない、というのは軸部分70がロータ20に関して回転しないからである。摺動可能な部分70はロータ20の出口端部にあるのが好ましい、というのはロータに働く推進力はその端部では小さいからである。
【0025】
本発明によると、ボール80、82および各カップ76、78は製造中に重なるので、それらの半球の係合表面の半径は製造時には同一である。結果として、ボールとカップが互いにプラグ74によりバイアスをかけられていると、ボールとそれらの各カップの係合面の間の隙間は極めて小さくなる−約0.25ないし0.5μである。
【0026】
本発明のポンプが新しい時には、組立中に加えられた微量の潤滑材がこの極めて狭い隙間に充填されている。ポンプが摩耗するにつれて、少量の血清が隙間を通過するが、ポンプの有効寿命中には、係合面の相互作用に影響を及ぼすほどには血清が漏洩することはない。
【0027】
ボール80、82とカップ76、78の半球面は、半球の半分より小さいのが好ましい。たとえば、ボールまたはカップの半径は約2mmであり、軸部分70または72の直径は約3mmである。これによりカップの縁が一層堅牢になり、その結果摩耗が一層均一になる。さらに、カップ部材34とボール部材38の直径はそれらの境界面では同一になるので、血流はこの境界では軸方向に連続した面を通過する。この境界面を横切るときには血流は円滑で、乱されることはない。製造を容易にして製造潤滑剤を受け取る溜め部を備えるために凹部88をカップ76または78の中央に形成できる。
【0028】
図6の細部図から明らかなように、ボールとカップの軸角度がややずれていてもボールカップ構造の動作には影響が及ぼされることはない、というのは軸方向の角度上の整合がやや変動してもボールとカップの係合面は正確に同じように係合するからである。
【0029】
図5と図6の実施例を組立てている間に、軸部分70と72は柔軟プラグ74を変形させることができるほどの力で圧接される。カップ76と78が摩耗したり、ボールとカップが摩擦熱のために膨張するにつれて、プラグ74は、カップ76と78に対してボール80と82が均一に圧接されるように膨張したり縮小したりする。オプションとして、予荷重は、カップ34とボール52がポンプロータ20の長手方奥の移動に続くようにカップ部材34とボール部材52をバネ(図示せず)でロードすることで達成される。境界面が小さいのにも関わらずボールカップ構造に十分な有効寿命(最高5年の信頼性がこの種の長期インプラントに期待される)を付与するには、図5の実施例の軸部分70はアルミナから構成されるのが好ましい。軸部分72は合成ルビーから形成されるのが好ましいが、カップ78は炭化ケイ素ホイスカ強化アルミナから形成される。これらの材質が好ましいが、硬質で、耐摩耗性を備え、加工可能で、生物適合性があり、熱伝導性が比較的高く、摩擦係数が比較的低ければ他の材質と置換できる。これらの極めて硬い材質(一例としては、上記のダイヤモンド膜被覆)により本発明によるボールカップ構造のすでに低い摩耗を長寿命要求に応える点またはそれを越える点まで低下させることができる。同時に、炭化ケイ素と合成ルビーの熱伝導性が優れていれば、血栓の形成を促進させる可能性のある熱の蓄積を防ぐのに役に立つ。
【0030】
本発明によるボールカップ軸受けの利点は、構造58、60および84、86が高レベルで洗浄されており、効率的に冷却された外部軸受けである。こうした軸受けでは、ポンプロータまたは固定子内に配置された溝に血が流れることがない。軸受けの表面は極めて小さく、軸受け中に一方向血流が流れることはないので、軸受け境界面の周りの血液細胞(大きすぎて軸受けを通過できない)が累積することはなく、境界面で血栓が形成されることはなく、さらに、軸受け面の周囲が滑らかに流れる、混乱のない主血流により連続して洗浄される。さらに、出口ボールカップ構造60または86は一層効率的に洗浄される、というのは上記に述べられているように、固定子羽根48に沿って半分ほどより短いその構造の位置で、血流はすでにかなりの周辺速度を有しているからである。
【0031】
血流により洗浄される必要のないポンプのすべての部分が66で全体的に示してあるOリングにより血流から密封されている。
【0032】
本明細書に記載され図示された移植可能電気軸流血液ポンプは、本発明の目下の好ましい実施例を表しているに過ぎない。実際、本発明の精神や範囲を逸脱しないかぎり様々な修正や追加をこうした実施例に加えることができる。したがって、他の修正や追加は当業者には明らかであり、多様な適用分野での使用に本発明を適用させることが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液導管(14)と、
第1端部、第2端部及び第1と第2の端部の間に延びる長手方向軸を有する細長いロータ(20)と、
前記ロータの第1端部を回転可能に支持する第1の軸受け構造(76)であって、前記ロータの第1端部及び第1の軸受け構造が、第1の実質的に球状の軸受け境界面を画定し、前記第1の軸受け境界面(58)はその中に血液が実質的に入らないように構成されていることを特徴とする第1の軸受け構造(76)と、
前記ロータの第2端部(54)を回転可能に支持する第2の軸受け構造(82)であって、前記ロータの第2端部及び第2の軸受け構造が、第2の実質的に球状の軸受け境界面を画定している第2の軸受け構造(82)と、
長手方向軸を中心にロータが回転するように作動させるモータ固定子(22)と、
前記ロータの回転中に、導管を介して血液を流動させる、ロータと連繋された羽根車構造(44)と、からなる移植可能血液ポンプ。
【請求項2】
前記第2の軸受け境界面はその中に血液が実質的に入らないように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の移植可能血液ポンプ。
【請求項3】
前記第1の軸受け境界面はその中に血清が実質的に入らないように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の移植可能血液ポンプ。
【請求項4】
前記ロータの第1端部が凸状かつ実質的に半球状の部材(38)を画定し、第1の軸受け構造が凹状かつ実質的に半球状の部材(76)を画定し、前記凸状及び凹状部材は互いに係合した際、前記第1の軸受け境界面を画定するように実質的に相互に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の移植可能血液ポンプ。
【請求項5】
前記ロータの第2端部が第2の凹状かつ実質的に半球状の部材(54)を画定し、第2の軸受け構造が第2の凸状かつ実質的に半球状の部材(82)を画定し、前記第2の凸状部材及び第2の凹状部材は互いに係合した際、前記第2の軸受け境界面を画定するように実質的に相互に形成されていることを特徴とする請求項4に記載の移植可能血液ポンプ。
【請求項6】
前記第1の軸受け構造を支持するように前記血液導管内に配置される第1の固定子羽根(30)、及び前記第2の軸受け構造を支持するように前記血液導管内に配置される第2の固定子羽根(48)をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の移植可能血液ポンプ。
【請求項7】
前記第1の軸受け構造及び第1の固定子羽根が熱伝導性材料から形成され、互いに熱転送状態に接触しており、第2の軸受け構造及び第2の固定子羽根が熱伝導性材料から形成され、互いに熱転送状態に接触していることを特徴とする請求項6に記載の移植可能血液ポンプ。
【請求項8】
前記第1及び第2の軸受け構造は熱伝導性材料から形成されている請求項1に記載の血液ポンプ。
【請求項9】
前記ロータの第1の端部及び第1の軸受け構造の、前記第1の軸受け境界面を画定している部分が、摩擦係数を有した硬質材料から形成されており、
前記ロータの第2の端部及び第2の軸受け構造の、前記第2の軸受け境界面を画定している部分が、摩擦係数を有した硬質材料から形成されている請求項1に記載の血液ポンプ。
【請求項10】
前記血液ポンプは、バイアス部材(74)をさらに備えており、該バイアス部材により、前記ロータの第1端部及び前記第1の軸受け構造が、前記第1の軸受け境界面内に血液が実質的に入らないように互いにバイアスをかけ合っていることを特徴とする請求項1に記載の移植可能血液ポンプ。
【請求項11】
前記第1の軸受け構造及び前記ロータの第1端部の前記境界面の外側部分が血流にさらされることによって、前記第1の軸受け構造を洗浄し冷却を促進することを特徴とする請求項1に記載の移植可能血液ポンプ。
【請求項12】
血液導管(14)と、
第1端部、第2端部及び第1と第2の端部の間に延びる長手方向軸を有する細長いロータ(20)と、
前記ロータの第1端部(38)を回転可能に支持し、半径方向の動作及び長手方向軸に沿った第1の方向の動作に対して前記ロータを実質的に制御する第1の軸受け構造(76)と、
前記ロータの第2端部(54)を回転可能に支持し、半径方向の動作及び長手方向軸に沿った第2の方向の動作に対して前記ロータを実質的に制御する第2の軸受け構造(82)と、
前記ロータ内及び第1及び第2の端部の間に配置されるバイアス部材(74)であって、該部材は前記第1及び第2の端部に長手方向軸に沿って互いに反対方向にバイアスをかけており、それによって第1端部には第1の軸受け構造に、第2端部には第2の軸受け構造に向かってバイアスをかけているバイアス部材(74)と、
長手方向軸を中心にロータが回転するように作動させるモータ固定子(22)と、
前記ロータの回転中に、導管を介して血液を流動させる、ロータと連繋された羽根車構造(44)と、からなる移植可能血液ポンプ。
【請求項13】
前記第1の端部及び第1の軸受け構造が、第1軸受け境界面(58)内において血液の流れを実質的に妨げるように構成されているその第1の軸受け境界面を画定しており、前記第2の端部及び第2の軸受け構造が、第2の軸受け境界面内において血液の流れを実質的に妨げるように構成されているその第2の軸受け境界面を画定していることを特徴とする請求項12に記載の移植可能血液ポンプ。
【請求項14】
前記第1の軸受け境界面及び第2の軸受け境界面のいずれかが、前記第1の軸受け境界面内において、血液が実質的に入らない程小さい隙間を形成するように構成されていることを特徴とする請求項12に記載の移植可能血液ポンプ。
【請求項15】
前記第1の軸受け構造と前記ロータの第1端部の連結部の外側部分が血流にさらされることによって、前記第1の軸受け構造を洗浄し冷却を促進することを特徴とする請求項12に記載の移植可能血液ポンプ。
【請求項16】
血液導管(14)と、
第1端部、第2端部及び第1と第2の端部の間に延びる長手方向軸を有する細長いロータ(20)と、
前記ロータの第1端部を回転可能に支持する第1の軸受け構造(76)であって、前記第1の軸受け構造及び第1の端部(38)が実質的に相互関係にあるボールカップ式軸受け表面の第1の組を形成しており、その第1の組は血液の流入を実質的に遮断する第1の軸受け境界面(58)を画定していることを特徴とする第1の軸受け構造(76)と、
前記第1の軸受け構造を支持するように血液導管内に配置され、長手方向軸に対して半径方向に延びている第1の固定子羽根(30)と、
前記ロータの第2端部を回転可能に支持する第2の軸受け構造(82)であって、前記第2の軸受け構造及び第2の端部が実質的に相互関係にあるボールカップ式軸受け表面の第2の組を形成しており、その第2の組は血液の流入を実質的に遮断する第2の軸受け境界面を画定していることを特徴とする第2の軸受け構造(82)と、
前記第2の軸受け構造を支持するように血液導管内に配置されている第2の固定子羽根(48)と、
長手方向軸を中心にロータが回転するように作動させるモータ固定子(22)と、
前記ロータの回転中に、導管を介して血液を流動させる、ロータと連繋された羽根車構造(44)と、からなる移植可能血液ポンプ。
【請求項17】
前記第1の軸受け構造及び前記ロータの第1端部の連結部(58)の外側部分が血流にさらされることによって、前記第1の軸受け構造を洗浄し冷却を促進することを特徴とする請求項16に記載の移植可能血液ポンプ。
【請求項18】
血液導管(14)と、
第1端部、第2端部及び第1と第2の端部の間に延びる長手方向軸を有し、その回転中に前記導管を介して血液を流動させる構造を有する細長いロータ(20)と、
長手方向軸を中心にロータが回転するように作動させるモータ固定子(22)と、
前記ロータの第1端部を回転可能に支持する軸受けであり、該軸受けは半径方向及び長手方向軸に沿った第1の方向の両方向への動作に対して前記ロータを実質的に制御する実質的に連続している軸受け面を有する軸受け(76)であり、前記軸受け面と前記ロータの第1端部は、血液が実質的に入らないように構成された隙間によって隔てられていることを特徴とする前記軸受け(76)と、からなる移植可能血液ポンプ。
【請求項19】
前記軸受けとロータの連結部の外側部分が、血流にさらされることによって、前記軸受けを洗浄し冷却を促進することを特徴とする請求項18に記載の移植可能血液ポンプ。
【請求項20】
移植可能血液ポンプの組立方法であって、
血液導管を有するハウジング(12)を備えること、
前記血液導管に第1の軸受け構造(76)を取り付けること、
前記血液導管に第2の軸受け構造(82)を取り付けること、
第1端部、第2端部及び第1と第2の端部の間に延びる長手方向軸を有する細長いロータ(20)を備えること、
前記ロータの第1端部と前記第1軸受け構造が、半径方向及び前記長手方向軸に沿った第1方向の両方向への動作に対して前記ロータを実質的に制御する連続している軸受け境界面(58)を画定するように実質的に相互に形成していることを特徴として、前記第1軸受け構造に前記ロータの第1端部を取り付けること、
前記第2の軸受け構造に前記ロータの第2端部を取り付けること、及び
前記軸受け境界面がその内部に血液が実質的に入らないような隙間を形成するように、前記ロータ及び第1軸受け構造を調整すること、からなることを特徴とする移植可能血液ポンプの組立方法。
【請求項21】
血液導管(14)と、
ロータ(20)と、
前記軸受けが、前記ロータと軸受けの間に血球及び血清が実質的に入らないように構成された実質的に半球状の軸受け境界面(58)を画定しており、血液導管内に前記ロータを回転可能に支持するための軸受け(76)と、
前記第1及び第2の軸受け構造内で回転する前記ロータを作動させるモータ固定子(22)と、
前記ロータ回転中に血液導管を介して血液を流動させる、ロータと連繋された羽根車(44)と、からなる移植可能血液ポンプ。
【請求項22】
(a)円筒形血液導管(14)と、
(b)前記血液導管の周りのモータの固定子(22)と、
(c)入口端(16)と出口端(18)を備え、前記モータの固定子と相互に力を作用するモータのロータ(24)を含み、前記ポンプのロータは前記血液導管内で回転するよう構成されているポンプのロータ(20)と、
(d)前記血液導管に配置され、入口のハブ(32)を支持する複数の入口固定子羽根(30)と、
(e)前記血液導管に配置され、出口のハブ(50)を支持する複数の出口固定子羽根(48)と、
(f)前記ポンプのロータの前記入口端と出口端のそれぞれと前記ロータを支持する前記ハブの対応するものの間に配置され、前記血液導管を通る血液の流れによって洗浄されるボールカップ構造であって、該ボールカップ構造はボールとカップの境界面を形成し、前記境界面は、血清が前記境界面に実質的に入らないほど小さい隙間をもつボールカップ構造と、
(g)前記ボールカップ構造の対応する1つと熱が転移するように接触している前記ポンプのロータの各端部にある前記複数の固定子羽根とを含み、前記ボールカップ構造の外径は前記ハブと前記血液導管の間の前記固定子羽根の半径方向の長さより実質的に短いことを特徴とする移植可能血液ポンプ。
【請求項23】
前記ボールカップ構造は、断続なしに前記境界面の周辺を血液が流れるように前記境界面上に十分連続する表面を備えている請求項22に記載の血液ポンプ。
【請求項24】
前記ボールカップ構造、ハブ、固定子羽根はすべて熱伝導性材料から形成され、互いに熱転送状態に接触している請求項22に記載の血液ポンプ。
【請求項25】
前記境界面は摩擦係数を有した硬質材料から形成されている請求項22に記載の血液ポンプ。
【請求項26】
前記ボールカップ構造は、ダイヤモンド膜を前記境界面に被覆した炭化ケイ素から形成されている請求項22に記載の血液ポンプ。
【請求項27】
前記ボールカップ構造のボールとカップの係合面はほぼ同じ半径である請求項22に記載の血液ポンプ。
【請求項28】
前記血液ポンプは、バイアス部材(74)をさらに備えており、該バイアス部材により、前記ボールとカップは、前記係合面の間を実質的に血液が通過しないほどの力で互いにバイアスがかけられる請求項27に記載の血液ポンプ。
【請求項29】
(a)円筒形血液導管(14)と、
(b)前記血液導管の周りのモータの固定子(22)と、
(c)入口端(16)と出口端(18)を備え、前記モータの固定子と相互に力を作用するモータのロータ(24)を含み、前記ポンプのロータは前記血液導管内で回転するよう構成されているポンプのロータ(20)と、
(d)前記血液導管に配置され、入口のハブ(32)を支持する複数の入口固定子羽根(30)と、
(e)前記血液導管に配置され、出口のハブ(50)を支持する複数の出口固定子羽根(48)と、
(f)前記ポンプのロータの前記入口端と出口端のそれぞれと前記ロータを支持する前記ハブの対応するものの間に配置されたボールカップ構造と、
(g)前記ボールカップ構造の対応する1つと熱が転移するように接触している前記ポンプのロータの各端部にある前記複数の固定子羽根(30,48)とを含み、前記ボールカップ構造の外径は前記ハブと前記血液導管の間の前記固定子羽根の半径方向の長さより実質的に短くなっており、
(h)前記入口及び出口ハブは、前記モータ固定子に対して軸方向に固定されており、前記モータのロータは軸(72)を有し、前記軸は互いに軸方向に移動可能であるが前記ロータに関して回転不可能な一対の軸部分(70)を含み、
(i)柔軟要素(74)が前記軸部分の間に挿入されて、お互いが軸方向に離れるように前記軸部分にバイアスをかけるよう構成されていることを特徴とする移植可能血液ポンプ。
【請求項30】
前記柔軟要素はプラグである請求項29に記載の血液ポンプ。
【請求項31】
前記軸部分の一方は前記ロータに関して軸方向に固定され、他方の軸部分は前記ロータに関して軸方向に摺動可能である請求項29に記載の血液ポンプ。
【請求項32】
前記摺動可能な軸部分は前記ロータの出口側にある請求項31に記載の血液ポンプ。
【請求項33】
前記摺動可能な軸部分はその入口端部にボールをもち、合成ルビーから形成され、固定された前記軸部分はその端部にカップをもち、炭化ケイ素ホイスカ強化アルミナから形成されている請求項32に記載の血液ポンプ。
【請求項34】
前記ボールカップ構造は、合成ルビー及び炭化ケイ素ホイスカ強化アルミナから構成されている請求項29に記載の血液ポンプ。
【請求項35】
前記ポンプのロータは長手方向シャフトをもち、その各端部は前記ボールカップ構造の1つの要素であり、前記シャフトはアルミナから構成された前記要素である請求項34に記載の血液ポンプ。
【請求項36】
(a)円筒形血液導管(14)と、
(b)前記血液導管の周りのモータの固定子(22)と、
(c)入口端(16)と出口端(18)を備え、前記モータの固定子と相互に力を作用するモータのロータ(24)を含み、前記ポンプのロータは前記血液導管内で回転するよう構成されているポンプのロータ(20)と、
(d)前記血液導管に配置され、入口のハブ(32)を支持する複数の入口固定子羽根(30)と、
(e)前記血液導管に配置され、出口のハブ(50)を支持する複数の出口固定子羽根(48)と、
(f)前記ポンプのロータの前記入口端と出口端のそれぞれと前記ロータを支持する前記ハブの対応するものの間に配置されたボールカップ構造と、
(g)前記ボールカップ構造の対応する1つと熱が転移するように接触している前記ポンプのロータの各端部にある前記複数の固定子羽根(30,48)とを含み、前記ボールカップ構造の外径は前記ハブと前記血液導管の間の前記固定子羽根の半径方向の長さより実質的に短くなっており、
(h)前記ボールカップ式構造は、熱伝導性を有する硬質で耐摩耗性を備え加工可能な生体適合性のある材料で形成されていることを特徴とする移植可能血液ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−99536(P2013−99536A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−266350(P2012−266350)
【出願日】平成24年12月5日(2012.12.5)
【分割の表示】特願2008−54326(P2008−54326)の分割
【原出願日】平成8年12月27日(1996.12.27)
【出願人】(502114526)ソラテク コーポレーション (3)
【Fターム(参考)】