血液成分濃度測定装置及び血液成分濃度測定方法
【課題】血液浄化回路において、血液成分の濃度を正確かつ安定的に測定する。
【解決手段】血液成分濃度測定装置1は、血液浄化回路20の血液中に光を入射する発光部と血液浄化回路20の血液中を透過した光を検出する受光部を有するセンサ部60と、受光部により検出された光強度の時間変化から、血液ポンプ30の駆動により血液浄化回路20内に生じる血液の拍動と同じ周期Fの周期成分を抽出し、当該周期成分に基づいて酸素濃度を算出する算出部72と、を有する。センサ部60は、血液浄化回路20の血液ポンプ30の下流側に設けられている。
【解決手段】血液成分濃度測定装置1は、血液浄化回路20の血液中に光を入射する発光部と血液浄化回路20の血液中を透過した光を検出する受光部を有するセンサ部60と、受光部により検出された光強度の時間変化から、血液ポンプ30の駆動により血液浄化回路20内に生じる血液の拍動と同じ周期Fの周期成分を抽出し、当該周期成分に基づいて酸素濃度を算出する算出部72と、を有する。センサ部60は、血液浄化回路20の血液ポンプ30の下流側に設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液浄化療法等において、血液中の酸素飽和濃度などの血液成分の濃度を測定する血液成分濃度測定装置及び血液成分濃度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血液浄化療法は、体内から取り出された血液中の有害物質や不要物質を、膜や吸着剤を用いて除去して体内に戻す療法で、血液透析、血液濾過透析、血液濾過、血液吸着などの種類がある。
【0003】
例えば血液透析療法中の患者の管理は、血圧変動と全身症状の両方を観察することで行われている。例えば透析中の患者の血圧低下は、除水に伴う循環血流量の減少が主原因とされているため、各種血液量測定モニターを用いて患者の血液量をモニタリングしながら、透析治療が行われている。しかし、この循環血液量測定モニターは、患者の全身症状を示すものでないため、全身症状である呼吸状態や血液循環動態を把握することはできない。
【0004】
一般に患者の呼吸は血液循環に大きな影響を与えており、特に、循環血液量が減少している患者では、呼吸変動が大きくなると報告されている(非特許文献1)。全身症状の一つの呼吸状態を把握する手段として、血液中の動脈血酸素飽和度(SpO2)を測定する方法がある。血液中の動脈血酸素飽和度を計測する装置として、経皮的酸素飽和度モニター(パルスオキシメータ)が広く知られており、これは、例えば指先に付けた発光部と受光部を用いて血液中に光を入射させ、その透過光を検出し、その光信号を分析することで、血液中の動脈血酸素飽和度を算出することができる。この経皮的酸素飽和度モニターは、検出した光強度の波形から、動脈血に関係する人体の拍動の周期成分を抽出して最終的に酸素飽和度を算出している(特許文献1参照)。人体の拍動の周期成分を抽出するのは、この拍動の周期成分では、酸素濃度に応じて変動する赤色光(R)と赤外光(IR)透過光量の変動比率が大きく、酸素飽和度をより正確に算出できるからである。よって、この測定方法では、酸素飽和度を算出する際に、光強度の波形から人体の拍動の周期を把握する必要がある。
【0005】
しかしながら、この測定方法では、例えば寒さや痙攣等により患者に末梢循環不全等が生じると、光強度の波形における拍動の周期成分が相対的に弱くなるため、検出した光強度の波形から拍動の周期を正確に把握するのが困難になり、その結果酸素飽和度が正確に測定できないことがある。
【0006】
患者の状態に影響されずに血液中の酸素飽和度を測定する手段として、体外循環を行う血液浄化回路にポンプ部手前に酸素飽和度モニターを設置することが報告されている(非特許文献1、2参照)。しかしながら、この場合では、例えば血液浄化回路特有の外乱等の影響を受けて、人体の拍動の周期の把握が正確かつ安定的に行われない可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭53−26437号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】丸山一男:呼吸と循環、循環制御 1998年、19(4)、P・484−488
【非特許文献2】今井勝、他:日本医工学治療学会 医工学治療 2006年、18(2)、P・85−93
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来技術の有する前記課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、患者の状態の影響を受けにくい血液浄化回路において、血液中の酸素飽和度などの血液成分の濃度を正確かつ安定的に測定できる血液成分濃度測定装置及び血液成分濃度測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明は、体内から取り出された血液を浄化して体内に戻すための血液浄化回路において血液中の所定の血液成分の濃度を測定する血液成分濃度測定装置であって、前記血液浄化回路の血液中に光を入射する発光部と、前記血液浄化回路の血液中を透過した前記光を検出する受光部と、前記受光部により検出された光強度の時間変化から、前記血液浄化回路の血液ポンプの駆動により前記血液浄化回路内に生じる血液の拍動に対応する前記光強度の時間変化の周期成分を抽出し、当該周期成分に基づいて所定の血液成分の濃度を算出する算出部と、を有し、前記発光部及び前記受光部は、前記血液浄化回路の前記血液ポンプの下流側に設けられているものである。
【0011】
本発明によれば、血液浄化回路では、血液ポンプの駆動により血液の拍動が生じる。この血液浄化回路内の血液の拍動を用いて、周期的に変化する光強度から血液成分の濃度を算出することにより、当該血液成分の濃度を正確かつ安定的に測定できる。また、発光部と受光部が、血液の拍動の乱れが少ない血液浄化回路の血液ポンプの下流側に設けられるので、血液成分の濃度の算出がより正確かつ安定的に行われる。
【0012】
前記血液浄化回路は、前記血液ポンプの下流側に血液を浄化する血液浄化器を有し、前記発光部と前記受光部は、前記血液浄化回路の前記血液ポンプと前記血液浄化器の間に設けられていてもよい。
【0013】
前記血液浄化回路は、前記血液ポンプと前記血液浄化器の間に動脈側ドリップチャンバーを有している場合、前記発光部と前記受光部は、前記血液浄化回路の前記血液ポンプと前記動脈側ドリップチャンバーの間に設けられていてもよい。
【0014】
前記血液ポンプは、前記血液浄化回路の流路に接続され他の部分よりも径が大きいチューブを有するチューブポンプであり、前記発光部と前記受光部は、前記血液ポンプのチューブに設けられていてもよい。
【0015】
以上の血液成分濃度測定装置は、前記発光部と前記受光部を前記血液浄化回路に固定する固定部材を有していてもよい。
【0016】
前記固定部材は、前記発光部と前記受光部を前記血液浄化回路に押し付けて固定するものであってもよい。
【0017】
血液成分濃度測定装置は、前記血液浄化回路の前記発光部と前記受光部が固定される部分を覆う流路カバーを有し、前記固定部材は、前記流路カバーを外側から押さえていてもよい。
【0018】
前記流路カバーは、前記血液浄化回路の前記発光部と前記受光部が固定された部分を圧迫し、弾力性を有していてもよい。
【0019】
前記流路カバーは、前記血液浄化回路の前記発光部と前記受光部が固定された部分を外部の光が入らないように覆っていてもよい。
【0020】
前記流路カバーは、前記血液浄化回路に対し取り外し自在に構成されていてもよい。
【0021】
血液成分濃度測定装置は、前記発光部と前記受光部を保持する保持部材をさらに有し、前記固定部材の前記血液浄化回路側の面には、前記保持部材を収容する凹部が形成されていてもよい。
【0022】
前記保持部材と前記固定部材との間には、弾力性のある部材が介在されていてもよい。
【0023】
前記固定部材は、前記血液浄化回路に対し取り外し自在に構成されていてもよい。
【0024】
前記発光部と前記受光部は、前記血液浄化回路において気泡が滞留しない部分に設けられていてもよい。
【0025】
前記発光部は、波長850nm〜1000nmの光(赤外光)を発する第1発光部と、波長500nm〜700nmの光(赤色光)を発する第2発光部を備え、前記血液成分の濃度が血液中の酸素飽和度であってもよい。
【0026】
別の観点による本発明は、体内から取り出された血液を浄化して体内に戻すための血液浄化回路において血液中の所定の血液成分の濃度を測定する血液成分濃度測定方法であって、前記血液浄化回路の血液ポンプの下流側の血液中に光を入射し、前記血液浄化回路の血液中を透過した前記光を検出する工程と、前記検出された光強度の時間変化から、血液ポンプの駆動により前記血液浄化回路内に生じる血液の拍動に対応する前記光強度の時間変化の周期成分を抽出し、当該周期成分に基づいて所定の血液成分の濃度を算出する工程と、を有するものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、血液浄化療法時の血液成分の濃度測定を正確かつ安定的に行うことができる。この結果、例えば患者の症状発現の前兆となる所定の血液成分の濃度変化を正確かつ確実に把握することができる。よって、症状発現前に患者に対する早期処置が可能となり、患者QOLの著しい向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】血液浄化装置の構成の概略を示す説明図である。
【図2】センサ部が設けられた血液ポンプのチューブの説明図である。
【図3】センサ部の構成の概略を示す断面図である。
【図4】センサ部の構成の概略を示す横面図である。
【図5】血液の酸素飽和度測定の主な工程を示すフローチャートである。
【図6】ピロー状の流路に設けられたセンサ部の構成を示す縦断面図である。
【図7】実施例1で測定された酸素飽和度の推移を示すグラフである。
【図8】実施例2で測定された酸素飽和度の推移を示すグラフである。
【図9】比較例1におけるセンサ部の位置を示す血液浄化回路の説明図である。
【図10】比較例1のセンサ部の構成を示す説明図である。
【図11】比較例1で測定された酸素飽和度の推移を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態に係る血液成分濃度測定装置1が搭載される血液浄化装置10の構成の概略を示す説明図である。
【0030】
図1に示すように血液浄化装置10は、体内から取り出した血液を浄化させて体内に戻すための血液浄化回路20を有している。
【0031】
血液浄化回路20には、血液と接するため生体適合性に優れた軟質素材が用いられ、特に、フタル酸ジエチルヘキシル(DOP)入り塩化ビニルアルコール、2−エチルヘキシルトリメート(TOTM)入り塩化ビニルアルコール、シリコンゴムが好適である。
【0032】
血液浄化回路20には、血液を圧送して血流を生じさせる血液ポンプ30、回路内の気泡を取り除く動脈側ドリップチャンバー31、血液を浄化処理する血液浄化器32、血液浄化器32の下流側に設けられる静脈側ドリップチャンバー33などが設けられている。
【0033】
血液ポンプ30は、例えばチューブポンプであり、複数のローラを有する回転体が回転し、複数のローラが順次一定の間隔で血液浄化回路20の流路(チューブ)を扱いて血液に拍動を生じさせながら血液を圧送できる。血液ポンプ30は、図2に示すように血液浄化回路20の他の流路21aよりも径が大きいポンプチューブである流路21bを有している。
【0034】
血液ポンプ30の駆動により生じる血液の拍動の周期は、回転体の回転数(ポンプの回転数)とローラの数により設定される。血液ポンプ30の駆動は、図1に示すポンプ制御部40により制御される。血液ポンプ30による血液の拍動の周期Fは、例えばポンプ制御部40から後述の血液成分濃度測定装置1の算出部62に出力できる。
【0035】
動脈側ドリップチャンバー31は、例えば血液ポンプ30と血液浄化器32の間の流路21に設けられている。
【0036】
血液浄化器32は、血液浄化回路20の動脈側ドリップチャンバー31の下流側に設けられている。血液浄化器32には、血液中の有害物質や不要物質などの所定成分を分離する中空糸膜や所定成分を吸着する吸着材などが設けられている。
【0037】
血液成分濃度測定装置1は、例えばセンサ部60と、センサ制御部61と、算出部62を有している。
【0038】
センサ部60は、例えば、血液ポンプ30と動脈側ドリップチャンバー31との間であって図2に示すように血液ポンブ30の流路21bに設けられている。なお、センサ部60が設けられる血液ポンプ30の流路21bの肉厚は、4mm以下、より好ましくは3mm以下に設定されている。こうして、流路21bは、例えば、ショアA硬度が30〜70程度に設定され、血液浄化回路20の他の部分21aよりも柔軟に形成されている。また、流路21bは、反射光を効率的に受光するために、上述のように内径が血液浄化回路20の他の流路21aよりも大きくなっている。例えば他の流路21aの内径が3.5mm程度に対し、流路21bの内径は5mm以上になっている。
【0039】
例えばセンサ部60は、図3に示すように血液浄化回路20の血液中に光を入射する発光部70と、血液中を透過した光を検出する受光部71と、発光部70と受光部71を保持する保持部材72と、発光部70と受光部71を流路21bに固定する固定部材73と、発光部70と受光部71が固定された部分の流路21bを覆う流路カバー74を有している。
【0040】
流路カバー74は、例えば不透明の材質で弾力性を有している。図4に示すように流路カバー74は、2つに分割されており、それぞれが板状に形成され、内側に流路21bの形状に適合する半円柱状の凹部が形成されている。これにより、流路カバー74は、血液浄化回路20の流路21bを両側から挟み込んで覆って、流路21bを圧迫固定できる。また、流路カバー74は、流路21bに対し取り外し可能になる。さらに、流路カバー74は、発光部70と受光部71が固定された部分の流路21bを外部の光が入いらないように覆っている。
【0041】
流路カバー74には、図3に示すように例えば発光部70と受光部71が嵌め込まれ、当該発光部70と受光部71の光が通過する2つの貫通孔80が設けられている。貫通孔80は、血液浄化回路20の流路方向Xに沿って設けられている。また、貫通孔80は、図4に示すように流路21bに対し直角方向Yの中央に設けられている。
【0042】
図3に示すように保持部材72は、例えば薄板状に形成され、表面に発光部70と受光部71を流路方向Xに沿って所定の間隔で保持している。
【0043】
固定部材73は、例えば四角状の一対の平板部100と、当該平板部100同士を固定する締結部材101を有している。
【0044】
平板部100は、例えば流路カバー74よりも剛性のある例えば金属により形成されている。一方の平板部100の内側中央には、凹部102が形成され、当該凹部102に保持部材72が嵌め込まれて位置決めされている。保持部材72と平板部100の凹部102の底面との間には、弾力性のある緩衝シート103が介在されている。
【0045】
上記流路カバー74や緩衝シート103には、弾性を有する軟質素材が用いられており、ショアA硬度が1〜85、特に4〜70程度に設定されている(JIS K 7215準拠)。具体的には、シリコンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、ウレタンゴムなどが用いられている。
【0046】
一対の平板部100は、流路カバー74を両側から挟んで、締結部材101により互いに内側に締め付けられることによって、流路カバー74を外側から押さえている。これにより、保持部材72の発光部70と受光部71が貫通孔80に嵌め込まれた状態で流路21bの表面に接触し押し付けられる。また、締結部材101の締め付けを弛めることによって、固定部材73を流路21bや流路カバー74から取り外すことができる。なお。流路カバー74による流路21bの最終的な圧迫固定率は、100〜175%であることが好ましい。圧迫固定率とは、圧迫されていない状態の測定部40の径をDとし、圧迫によって変動した径をΔdとした場合に、(D+Δd)/D×100(%)で表したものである。なお、圧迫固定できれば、上記方法にこだわる必要はない。
【0047】
締結部材101は、例えばネジやナットからなり、平板部100の四隅に設けられている。
【0048】
発光部70は、発光用のLEDまたはレーザーダイオードを備えており、少なくとも二種類の波長の光を発することができる。例えば発光部70は、血液による影響の少ない500nm以上の波長の光を発し、血液中の酸化ヘモグロビンに吸収され易い波長850nm〜1000nmの第1の光(赤外光)を発する第1発光部70aと、血液中の還元ヘモグロビンに吸収され易い波長500〜700nmの第2の光(赤色光)を発する第2発光部70bを有している。
【0049】
センサ部60が設けられた血液浄化回路20の流路21bは、当該流路21bに気泡が滞留しないようになっており、例えば、上下方向に向けられている。これにより、センサ部60による光の検出が気泡に邪魔されることがなく適正に行われる。なお、センサ部60のある流路21bは、鉛直方向に対し傾斜していてもよい。
【0050】
センサ制御部61は、センサ部60における発光と受光を制御している。センサ部60の受光部71で受光された光は、センサ制御部61に出力される。センサ制御部61は、当該光の情報を算出部62に出力できる。
【0051】
算出部62は、例えば信号処理回路やコンピュータにより構成され、血液ポンプ30の駆動により血液浄化回路20内に血液の拍動が生じ、受光部71により検出された光強度の時間変化(波形)から、血液の拍動に対応する周期成分を抽出し、当該周期成分に基づいて所定の血液成分の濃度としての血液酸素飽和度を算出できる。
【0052】
次に、以上のように構成された血液成分濃度測定装置1で行われる血液酸素飽和度測定について説明する。図5は、当該血液酸素飽和度測定の主な工程を示すフローチャートである。例えば血液浄化装置10における血液浄化処理中は、血液ポンプ30により血液が圧送され、血液浄化回路20内に血液が流れている。このとき血液ポンプ30のローラの駆動により、血液浄化回路20内に所定の周期Fの血液の拍動が生じる。そして、この血液浄化処理中に、センサ部60において発光部70から血液浄化回路20内の血液中に光が連続的に入射される(図5の工程S1)。このとき、第1発光部70aと第2発光部70bの発光が交互に行われ、血液中の酸化ヘモグロビンに吸収され易い波長の第1の光と、血液中の還元ヘモグロビンに吸収され易い波長の第2の光が血液中に交互に入射される。この発光の周期は、拍動の周期Fより十分に短く設定されている。
【0053】
発光部70から発光された光は、血液中で反射し、受光部71で検出される(図5の工程S2)。受光部71の光信号は、算出部62に出力される。算出部62では、先ず受光部71の出力信号から、第1の光と第2の光の光強度がそれぞれ抽出される。これにより、第1の光の光強度の時間変化と、第2の光の光強度の時間変化が求められる(図5の工程S3)。また、ポンプ制御部40から算出部62に、血液浄化回路20における血液の拍動の周期Fが提供される(図5の工程S4)。なお、血液の拍動の周期Fは、ポンプ制御部40から、センサ制御部61を経由して算出部62に出力されてもよい。この拍動の周期Fは、血液ポンプ30のポンプ回転数とローラ数の駆動設定から計算により得てもよいし、ポンプ回転数をモニタリングすることにより得てもよい。また、拍動の周期Fは、血液ポンプ30の出口部分で圧力変動をモニタリングすることにより得てもよい。そして、ポンプ制御部40から得た血液の拍動の周期Fを用いて、第1の光と第2の光の光強度の時間変化から、上記拍動の周期Fに対応した周期成分のみが抽出される。次に、第1の光と第2の光の周期Fに対応した周期成分の強度比が求められ、予め求められている当該第1の光の光強度と第2の光の光強度との強度比と、血液酸素飽和度との関係式を用いて、前記第1の光と第2の光の周期Fに対応した周期成分の強度比から血液酸素飽和度が算出される(図5の工程S5)。なお、拍動の周期Fは第1の光あるいは第2の光の光強度の時間変化から求めても良い。
【0054】
本実施の形態によれば、血液浄化回路20において、血液ポンプ30の駆動により安定した周期の血液の拍動が生じる。そして、発光部70及び受光部71により血液浄化回路20の血液を通過した光の強度を検出し、前記血液ポンプ30の駆動により生じる血液の拍動の周期Fを用いて、前記光の強度から血液酸素飽和度を算出している。これにより、血液酸素飽和度を正確かつ安定的に測定できる。また、発光部70と受光部71が、血液の拍動の乱れが少ない血液浄化回路20の血液ポンプ30の下流側に設けられるので、血液酸素飽和度の算出がより正確かつ安定的に行われる。
【0055】
発光部70と受光部71は、血液浄化回路20の血液ポンプ30と血液浄化器32の間に設けられているので、血液浄化回路20で血液の拍動の乱れが少ない部分で光の検出を行うことができる。よって、血液ポンプ30の駆動による血液の拍動の周期Fと、発光部70及び受光部71による光強度を用いた血液酸素飽和度の算出がより正確かつ安定的に行われる。
【0056】
さらに発光部70と受光部71は、血液浄化回路20の血液ポンプ30と動脈ドリップチャンバー31の間に設けられているので、血液浄化回路20で血液の拍動の乱れがさらに少ない部分で光の検出を行うことができる。よって、血液ポンプ30の駆動による血液の拍動の周期Fと、発光部70及び受光部71による光強度を用いた血液酸素飽和度の算出がさらに正確かつ安定的に行われる。
【0057】
また発光部70と受光部71は、他の流路21aよりも径が大きい血液ポンプ30のチューブである流路21bに設けられているので、血液浄化回路20で血液の拍動の乱れが最も少ない部分で光の検出を行うことができる。よって、血液ポンプ30の駆動による血液の拍動の周期Fと、発光部70及び受光部71による光強度を用いた血液酸素飽和度の算出がさらに正確かつ安定的に行われる。また、流路21bの径が大きく、発光部70から入射された光が血液中で十分に反射するので、当該反射光を効率的に受光し、光強度の検出を効率的かつ確実に行うことができる。
【0058】
血液成分濃度測定装置1は、発光部70と受光部71を流路21bに流路カバー74を介して固定する固定部材73を有しているので、発光部70及び受光部71が流路21bに対しずれることがなく、血流に対する光の発光や受光を正確かつ安定的に行うことができる。
【0059】
固定部材73は、発光部70と受光部71を血液浄化回路20側に押し付けて固定しているので、発光部70及び受光部71と流路21bが常に接触し、血流に対する光の発光や受光を正確かつ安定的に行うことができる。
【0060】
血液成分濃度測定装置1は、血液浄化回路20の発光部70と受光部71が固定される部分の流路21bを覆う流路カバー74を有し、固定部材73は、流路カバー74を外側から押さえている。これにより、外部の振動や流路21b自体の振動などの外乱が血液の拍動に影響することを抑制できる。
【0061】
流路カバー74は、発光部70と受光部71が固定された部分の流路21bを圧迫し、弾力性を有しているので、血液の拍動を抑制しない程度に流路21b自体の動きを規制できる。これにより、例えば長時間の体外循環により生じる血液浄化回路20の振動より発光部70及び受光部71と流路21bが位置ずれすることを防止できる。よって、発光部70と受光部71による光の強度の検出を正確かつ安定的に行うことができる。
【0062】
流路カバー74は、発光部70と受光部71が固定された部分の流路21bを外部の光が入らないように覆っているので、外部自然光によるノイズを防ぐことができ、受光部71により検出された光の強度に基づく血液酸素飽和度を正確かつ安定的に行うことができる。また、本実施の形態では、流路カバー74が流路21bに密着しているので、流路21b内から外部への光の散乱も防止され、発光部70と受光部71による血液への発光と受光が効率的かつ確実に行われる。
【0063】
流路カバー74は、血液浄化回路20に対し取り外し自在に構成されているので、血液浄化回路20の適正な部分に発光部70や受光部71を取り付けることができる。
【0064】
血液成分濃度測定装置1は、発光部70と受光部71を保持する保持部材72を有し、固定部材73の血液浄化回路20側の面には、保持部材72を収容する凹部103が形成されている。これにより、発光部70と受光部71を固定部材73にしっかり固定することができ、位置ずれしないので、発光部70及び受光部71による光の強度の検出を正確かつ安定的に行うことができる。
【0065】
保持部材72と固定部材73との間には、弾力性のある緩衝シート103が介在されているので、発光部70と受光部71を適正な力で流路21に押し付けることができる。また外部から固定部材73に伝わった振動などを吸収し、当該振動が血液の拍動に影響することを抑制できる。なお、緩衝シート103を流路カバー74と保持部材72との間に入れて緩衝度合いを調整してもよい。
【0066】
固定部材73は、血液浄化回路20に対し取り外し自在に構成されているので、必要に応じて血液浄化回路20の適正な部分に発光部70や受光部71を取り付けることができる。
【0067】
センサ部60は、血液浄化回路20の気泡が滞留しない部分に設けられているので、例えば治療中の圧力の変化や気温の変化により、血液浄化回路20内に微小気泡が発生しても、微小気泡がセンサ部60に留まることはない。この結果、気泡により入射光が影響を受けることがなく、酸素飽和度測定をより正確に行うことができる。
【0068】
発光部70は、波長850nm〜1000nmの光を発する第1発光部と、波長500〜700nmの光を発する第2発光部を備え、各光を用いて、血液中の酸素飽和度を測定している。かかる場合、酸素飽和度の精度よく測定できる。
【0069】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。酸素飽和度モニターの反射型を用いて説明したが、発光部70と受光部71を血液浄化回路20を挟んだ対向する位置に設置して、透過型酸素飽和度モニターを用いることも可能である。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0070】
例えば以上の実施の形態では、センサ部60が血液ポンプ30のポンプチューブである流路21bに設置されていたが、血液ポンプ30より下流側であれば血液浄化回路20の他の部分に設定されていてもよい。また、例えば図6に示すようにセンサ部60が設けられる血液浄化回路20の流路21cが、軟質で径が大きいピロー状に形成されていてもよい。流路21cには、例えば血液と接するため生体適合性に優れた軟質素材が用いられ、特に、フタル酸ジエチルヘキシル(DOP)入り塩化ビニルアルコール、2−エチルヘキシルトリメート(TOTM)入り塩化ビニルアルコール、シリコンゴムが好適である。また、流路21cの肉厚は、4mm以下、より好ましくは3mm以下に設定されている。こうして、流路21cは、ショアA硬度が30〜70程度に設定され、血液浄化回路20の流路21の他の部分よりも柔軟に形成されている。また、流路21cは、反射光を効率的に受光するために、内径が血液浄化回路20の他の部分よりも大きくなっており、例えば他の部分の内径が3.5mm程度に対し、流路21cの内径は5mm以上になっている。
【0071】
上記実施の形態において、血液浄化回路20のセンサ部60が設置された流路21bが上下方向、または傾斜され、気泡が上方に血液と共に流れるように設置されていたが、気泡に影響を受けにくい他の構造として、例えば血液浄化回路20が水平に設置されても、発光部70と受光部71を血液浄化回路20の下面若しくは側面に配置し、当該発光部70と受光部71の近くに気泡が滞留しないようにしてもよい。例えば発光部70と受光部71のある水平面から3mm以上上方まで気泡が滞留しないように血液浄化回路20の径や、発光部70及び受光部71の位置を設定してもよい。
【0072】
固定部材73や流路カバー74は、他の構成であってもよく、一体化していてもよい。また一対の固定部材73の片同士が一端側で連結され、当該連結部を軸に回動できるようにしてもよい。この場合、血液浄化回路20を、固定部材73の二つの片の間に入れて挟み込み、固定部材73の2つの片を閉めて互いに固定することによって、血液浄化回路20を固定してもよい。流路カバー74も固定部材73と同様に2つの片同士が一端側で連結され、当該連結部を軸に回動できるようにしてもよい。
【0073】
以上の実施の形態では、血液中に酸素飽和度を測定する例であったが、本発明は、酸素飽和度以外の血糖などの血液成分の濃度を測定する場合にも適用できる。
【実施例】
【0074】
以下、本発明を実施例にしたがって具体的に説明するが、本説明はこれらに限定されるものではない。
【0075】
(実施例1)
実施例1は、図1に示したようにセンサ部60を血液ポンプ30の下流側(血液ポンプ30と動脈側ドリップチャンバー31の間)に設定し、図6に示すようにセンサ部60の流路21cをピロー状に形成した血液成分濃度測定装置1を使用した。具体的には、センサ部60として、反射型センサーであるマシモSETラディカルパルスオキシメータを用い、ラディカルにおける酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの吸光度割合を測定する発光部70の赤色光と赤外光の波長は、それぞれ660nmと905nmを使用した。
【0076】
ピロー状の流路21cとして、透析用血液回路(日本工業規格 JIS T 3248 )の陰圧検出部分(縦15.6mm、横36.7mm、高さ15.9mm、硬度52(ショアA硬度)を用いた。固定部材73における、発光部70及び受光部71側の平板部100には、縦40mm、横78mm、厚さ10mmのもの用い、その反対側の平板部100には、縦40mm、横78mm、厚さ3mmのものを用いた。固定部材73及び流路カバー74により、ピロー状の流路21cを挟み込み、107%の圧迫固定率で圧迫固定した。
【0077】
流路カバー74には、シリコン素材を用いた。発光部70及び受光部71側の流路カバー74の片は、縦30mm 横50mm、厚み6mmとした。当該流路カバー74の片には、6mmΦの穴を開け貫通孔80とした。反対側の流路カバー74の片は、縦30mm 横50mm、厚み8mmとした。また、緩衝シート103は、縦25mm、横30mm、厚み1.5mmとした。緩衝シート103の硬度は、14(ショアA硬度)、流路カバー74の硬度は、32(ショアA硬度)であった。なお、センサ部60における血液の流れは、下から上である。
【0078】
酸素飽和度の測定は、マシモ社製情報解析ソフトVer.1.7.0 Sat partnerにより行った。測定時の透析条件としては、血液流量200mL/分、透析液流量500mL/分、透析液温度36.4℃から36.8℃で行った。
【0079】
透析処理時、除水により患者の酸素飽和度が一旦低下することが起こる。その時に血液濃度測定装置1を用いて行われた酸素飽和度および血圧の測定結果を図7に示した。図7に示すように、実施例1の血液濃度測定装置1を用いて測定された酸素飽和度は、時間と共に明確にかつ滑らかに低下しており、当該測定が正確かつ安定的に行われている。また、図7のグラフ中の(4)の圧力測定時には、患者の圧力が低下している。実施例1の酸素飽和度測定によれば、(4)の圧力測定時に向けて次第に酸素飽和度が低下していくことが正確に把握できるため、この患者の圧力低下を事前に正確に予測することができる。この実施例1の場合、センサ部60を用いて、血液ポンプ30の陽圧の拍動による光強度の周期的な波形も安定しており周期成分を確実に測定することができ、その周期成分から計算された酸素飽和度は、図7に示す様に、ばらつきが少ない結果が得られた。
【0080】
拍動波形の内容成分である、拍動成分と非拍動成分の割合を表す還流指標(%)(Perfusion Index 以下 PIと略す)は10.0±1.5と拍動成分の割合が高い数値が得られた。一般にPIが0.2以上が好ましく、数値が高い程、測定精度が高いと言われているが、この事からも本実施例1の酸素飽和度測定値が拍動成分から精度よく得られた数値であることが確認できた。以上、酸素飽和度の精度向上により、生体反応である酸素飽和度の変動が明確に把握でき、血液透析治療中における酸素飽和度が明らかに低下の8分後に血圧(収縮期血圧)低下が出現したことを確認できた(図7)。
【0081】
(実施例2)
実施例2は、図1に示したようにセンサ部60を血液ポンプ30の下流側(血液ポンプ30と動脈側ドリップチャンバー31の間)に設定し、図3及び図4に示すように血液ポンプ30のポンプチューブである流路21bにセンサ部60を設けた血液成分濃度測定装置1を使用した。具体的には、センサ部60として、反射型センサーであるマシモSETラディカルパルスオキシメータを用い、ラディカルにおける酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの吸光度割合を測定する発光部70の赤色光と赤外光の波長は、それぞれ660nmと905nmを使用した。
【0082】
血液ポンプ30の流路21bとして、透析用血液回路(日本工業規格 JIS T 3248 )の血液ポンプ用チューブ部分(内径8.0mm、外径12.0mm、長さ325mm:硬度45(ショアA硬度))を用いた。固定部材73における、発光部70及び受光部71側の平板部100には、縦40mm、横44mm、厚さ10mmのもの用い、その反対側の平板部100には、縦40mm、横44mm、厚さ3mmのものを用いた。固定部材73及び流路カバー74により、流路21bを挟み込み、103%の圧迫固定率で圧迫固定した。
【0083】
流路カバー74には、シリコン素材を用いた。発光部70及び受光部71側の流路カバー74の片は、縦30mm、横44mm、厚み5mmとした。当該流路カバー74の片には、6mmΦの穴を開け貫通孔80とした。反対側の流路カバー74の片は、縦30mm、横44mm、厚み6mmとした。また、緩衝シート103は、縦25mm、横30mm、厚み1.5mmとした。緩衝シート103の硬度は、14(ショアA硬度)、流路カバー74の硬度は、32(ショアA硬度)であった。なお、センサ部60における血液の流れは、下から上である。
【0084】
酸素飽和度の測定は、マシモ社製情報解析ソフトVer.1.7.0 Sat partnerにより行った。測定時の透析条件としては、血液流量200mL/分、透析液流量500mL/分、透析液温度36.4℃から36.8℃で行った。
【0085】
透析処理時、除水により患者の酸素飽和度が低下した時に実施例2の血液濃度測定装置1を用いて行われた酸素飽和度および血圧の測定結果を図8に示した。図8に示すように、実施例2の血液濃度測定装置1を用いて測定された酸素飽和度は、時間と共に明確にかつ滑らかに低下しており、当該測定が正確かつ安定的に行われている。また、図8のグラフ中の(4)の血圧測定時には、患者の血圧が低下している。実施例2の酸素飽和度測定によれば、(4)の血圧測定時に向けて次第に酸素飽和度が低下していくことが正確に把握できるため、この患者の血圧低下を事前に正確に予測することができる。この実施例2の場合、センサ部60は、血液ポンプ30の拍動による圧送の直後であり、且つ、同一回路径であり、回路特有の外乱等の影響も少なく、血液ポンプ30の周波性成分を確実に測定することができた。また、実施例2と実施例1を比較した場合、実施例2では、酸素飽和度の測定時のばらつきは減少し、ノイズの減少も確認した。実施例2が血液浄化回路20におけるセンサ部60を設置する場所としてより好ましいことが判明した。
【0086】
実施例2の場合、実施例1でも表したPIが15.0±2.0とかなり高値を示し、センサ部60を設置する場所としての信頼性が実施例1よりも高いことが確認できた。
【0087】
図8に示すように、実施例2により、血液透析治療中における酸素飽和度が明らかに低下の10分後に血圧(収縮期血圧)低下が出現したことを確認できた。
【0088】
一般に、血液透析治療の除水に伴う循環血液量の変化に対し、正常時には自律神経による血管収縮により血圧の恒常性が維持されるが、異常時には自律神経バランスがくずれ、肺血流量減少、呼吸性変動の影響により、酸素飽和度減少及び血圧低下が起こると言われている。本発明における血液成分濃度測定装置1により、血液透析治療における循環血液量変化への対応が出来なくなった体の不調において、呼吸性変動の影響による血圧低下を確実に予測することができる。
【0089】
(比較例1)
比較例1は、図9に示すようにセンサ部120を血液ポンプ30の上流側(血液ポンプ30と患者の脱血穿刺部の間)に設定し、図10に示したようにセンサ部120が設けられる血液浄化回路20の流路21dをピロー状に形成した血液成分濃度測定装置を使用した。センサ部120は、発光部130と、受光部131と、発光部130と受光部131の保持部133と、緩衝シート132と、これらの収納部134を備え、発光部130と受光部131がピロー状の流路21dに接触されている。具体的には、センサ部120として、反射型センサーであるマシモSETラディカルパルスオキシメータを用い、ラディカルにおける酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの吸光度割合を測定する発光部130の赤色光と赤外光の波長は、それぞれ660nmと905nmを使用した。
【0090】
ピロー状の流路21dとして、透析用血液回路(日本工業規格 JIS T 3248 )の陰圧検出部分(縦15.6mm、横36.7mm、高さ15.9mm、硬度52(ショアA硬度))を用いた。収納部134(縦31.0mm、横71.0mm、高さ31.0mm、板厚み5.0mm)内で、発光部130、受光部131によりピロー状の流路21dを挟み込み、125%の圧迫固定率で圧迫固定した。保持部132は、シリコン素材を用い、縦25mm横30mm、厚み2.5mm、15(ショアA硬度)とした。発光部130、受光部131のある部分には6mmΦの穴を開け光路とした。
【0091】
酸素飽和度の測定は、マシモ社製情報ソフトフィジオログを用いて行った。測定時の透析条件としては、血液流量200mL/分、透析液流量500mL/分、透析液温度36.4℃から36.8℃で行った。なお、センサ部120における血液の流れは水平であり、センサ部120は血液浄化回路20の下面に配置した。
【0092】
図11に酸素飽和度および血圧の測定結果を示した。血液ポンプ30の拍動により、測定部では陰圧となり拍動波形が乱れ、周期成分が確実には得られにくくなった。その結果、酸素飽和度のばらつきが大きくなり、変化を的確に捉えにくくなり、酸素飽和度の変化による血圧低下を予測が難しくなった。
【0093】
拍動成分の割合を示すPIにおいて1.0±0.5と数値が低くなり、実施例と比べ、センサ部120の設置箇所における測定は安定性に欠けることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、血液中の老廃物等の有害物質を除去する血液浄化療法において広く応用可能である。血液成分の濃度測定が血液浄化回路を介して行えるので、特殊な測定部位を血液浄化回路内に取り付ける必要なく、また血液に触れないので、経済的になおかつ安全に使用できる。
【符号の説明】
【0095】
1 血液成分濃度測定装置
20 血液浄化回路
30 血液ポンプ
31 動脈側ドリップチャンバー
32 血液浄化器
33 静脈側ドリップチャンバー
40 ポンプ制御部
60 センサ部
61 センサ制御部
62 算出部
70 発光部
71 受光部
72 保持部材
73 固定部材
74 流路カバー
F 周期
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液浄化療法等において、血液中の酸素飽和濃度などの血液成分の濃度を測定する血液成分濃度測定装置及び血液成分濃度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血液浄化療法は、体内から取り出された血液中の有害物質や不要物質を、膜や吸着剤を用いて除去して体内に戻す療法で、血液透析、血液濾過透析、血液濾過、血液吸着などの種類がある。
【0003】
例えば血液透析療法中の患者の管理は、血圧変動と全身症状の両方を観察することで行われている。例えば透析中の患者の血圧低下は、除水に伴う循環血流量の減少が主原因とされているため、各種血液量測定モニターを用いて患者の血液量をモニタリングしながら、透析治療が行われている。しかし、この循環血液量測定モニターは、患者の全身症状を示すものでないため、全身症状である呼吸状態や血液循環動態を把握することはできない。
【0004】
一般に患者の呼吸は血液循環に大きな影響を与えており、特に、循環血液量が減少している患者では、呼吸変動が大きくなると報告されている(非特許文献1)。全身症状の一つの呼吸状態を把握する手段として、血液中の動脈血酸素飽和度(SpO2)を測定する方法がある。血液中の動脈血酸素飽和度を計測する装置として、経皮的酸素飽和度モニター(パルスオキシメータ)が広く知られており、これは、例えば指先に付けた発光部と受光部を用いて血液中に光を入射させ、その透過光を検出し、その光信号を分析することで、血液中の動脈血酸素飽和度を算出することができる。この経皮的酸素飽和度モニターは、検出した光強度の波形から、動脈血に関係する人体の拍動の周期成分を抽出して最終的に酸素飽和度を算出している(特許文献1参照)。人体の拍動の周期成分を抽出するのは、この拍動の周期成分では、酸素濃度に応じて変動する赤色光(R)と赤外光(IR)透過光量の変動比率が大きく、酸素飽和度をより正確に算出できるからである。よって、この測定方法では、酸素飽和度を算出する際に、光強度の波形から人体の拍動の周期を把握する必要がある。
【0005】
しかしながら、この測定方法では、例えば寒さや痙攣等により患者に末梢循環不全等が生じると、光強度の波形における拍動の周期成分が相対的に弱くなるため、検出した光強度の波形から拍動の周期を正確に把握するのが困難になり、その結果酸素飽和度が正確に測定できないことがある。
【0006】
患者の状態に影響されずに血液中の酸素飽和度を測定する手段として、体外循環を行う血液浄化回路にポンプ部手前に酸素飽和度モニターを設置することが報告されている(非特許文献1、2参照)。しかしながら、この場合では、例えば血液浄化回路特有の外乱等の影響を受けて、人体の拍動の周期の把握が正確かつ安定的に行われない可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭53−26437号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】丸山一男:呼吸と循環、循環制御 1998年、19(4)、P・484−488
【非特許文献2】今井勝、他:日本医工学治療学会 医工学治療 2006年、18(2)、P・85−93
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来技術の有する前記課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、患者の状態の影響を受けにくい血液浄化回路において、血液中の酸素飽和度などの血液成分の濃度を正確かつ安定的に測定できる血液成分濃度測定装置及び血液成分濃度測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明は、体内から取り出された血液を浄化して体内に戻すための血液浄化回路において血液中の所定の血液成分の濃度を測定する血液成分濃度測定装置であって、前記血液浄化回路の血液中に光を入射する発光部と、前記血液浄化回路の血液中を透過した前記光を検出する受光部と、前記受光部により検出された光強度の時間変化から、前記血液浄化回路の血液ポンプの駆動により前記血液浄化回路内に生じる血液の拍動に対応する前記光強度の時間変化の周期成分を抽出し、当該周期成分に基づいて所定の血液成分の濃度を算出する算出部と、を有し、前記発光部及び前記受光部は、前記血液浄化回路の前記血液ポンプの下流側に設けられているものである。
【0011】
本発明によれば、血液浄化回路では、血液ポンプの駆動により血液の拍動が生じる。この血液浄化回路内の血液の拍動を用いて、周期的に変化する光強度から血液成分の濃度を算出することにより、当該血液成分の濃度を正確かつ安定的に測定できる。また、発光部と受光部が、血液の拍動の乱れが少ない血液浄化回路の血液ポンプの下流側に設けられるので、血液成分の濃度の算出がより正確かつ安定的に行われる。
【0012】
前記血液浄化回路は、前記血液ポンプの下流側に血液を浄化する血液浄化器を有し、前記発光部と前記受光部は、前記血液浄化回路の前記血液ポンプと前記血液浄化器の間に設けられていてもよい。
【0013】
前記血液浄化回路は、前記血液ポンプと前記血液浄化器の間に動脈側ドリップチャンバーを有している場合、前記発光部と前記受光部は、前記血液浄化回路の前記血液ポンプと前記動脈側ドリップチャンバーの間に設けられていてもよい。
【0014】
前記血液ポンプは、前記血液浄化回路の流路に接続され他の部分よりも径が大きいチューブを有するチューブポンプであり、前記発光部と前記受光部は、前記血液ポンプのチューブに設けられていてもよい。
【0015】
以上の血液成分濃度測定装置は、前記発光部と前記受光部を前記血液浄化回路に固定する固定部材を有していてもよい。
【0016】
前記固定部材は、前記発光部と前記受光部を前記血液浄化回路に押し付けて固定するものであってもよい。
【0017】
血液成分濃度測定装置は、前記血液浄化回路の前記発光部と前記受光部が固定される部分を覆う流路カバーを有し、前記固定部材は、前記流路カバーを外側から押さえていてもよい。
【0018】
前記流路カバーは、前記血液浄化回路の前記発光部と前記受光部が固定された部分を圧迫し、弾力性を有していてもよい。
【0019】
前記流路カバーは、前記血液浄化回路の前記発光部と前記受光部が固定された部分を外部の光が入らないように覆っていてもよい。
【0020】
前記流路カバーは、前記血液浄化回路に対し取り外し自在に構成されていてもよい。
【0021】
血液成分濃度測定装置は、前記発光部と前記受光部を保持する保持部材をさらに有し、前記固定部材の前記血液浄化回路側の面には、前記保持部材を収容する凹部が形成されていてもよい。
【0022】
前記保持部材と前記固定部材との間には、弾力性のある部材が介在されていてもよい。
【0023】
前記固定部材は、前記血液浄化回路に対し取り外し自在に構成されていてもよい。
【0024】
前記発光部と前記受光部は、前記血液浄化回路において気泡が滞留しない部分に設けられていてもよい。
【0025】
前記発光部は、波長850nm〜1000nmの光(赤外光)を発する第1発光部と、波長500nm〜700nmの光(赤色光)を発する第2発光部を備え、前記血液成分の濃度が血液中の酸素飽和度であってもよい。
【0026】
別の観点による本発明は、体内から取り出された血液を浄化して体内に戻すための血液浄化回路において血液中の所定の血液成分の濃度を測定する血液成分濃度測定方法であって、前記血液浄化回路の血液ポンプの下流側の血液中に光を入射し、前記血液浄化回路の血液中を透過した前記光を検出する工程と、前記検出された光強度の時間変化から、血液ポンプの駆動により前記血液浄化回路内に生じる血液の拍動に対応する前記光強度の時間変化の周期成分を抽出し、当該周期成分に基づいて所定の血液成分の濃度を算出する工程と、を有するものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、血液浄化療法時の血液成分の濃度測定を正確かつ安定的に行うことができる。この結果、例えば患者の症状発現の前兆となる所定の血液成分の濃度変化を正確かつ確実に把握することができる。よって、症状発現前に患者に対する早期処置が可能となり、患者QOLの著しい向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】血液浄化装置の構成の概略を示す説明図である。
【図2】センサ部が設けられた血液ポンプのチューブの説明図である。
【図3】センサ部の構成の概略を示す断面図である。
【図4】センサ部の構成の概略を示す横面図である。
【図5】血液の酸素飽和度測定の主な工程を示すフローチャートである。
【図6】ピロー状の流路に設けられたセンサ部の構成を示す縦断面図である。
【図7】実施例1で測定された酸素飽和度の推移を示すグラフである。
【図8】実施例2で測定された酸素飽和度の推移を示すグラフである。
【図9】比較例1におけるセンサ部の位置を示す血液浄化回路の説明図である。
【図10】比較例1のセンサ部の構成を示す説明図である。
【図11】比較例1で測定された酸素飽和度の推移を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態に係る血液成分濃度測定装置1が搭載される血液浄化装置10の構成の概略を示す説明図である。
【0030】
図1に示すように血液浄化装置10は、体内から取り出した血液を浄化させて体内に戻すための血液浄化回路20を有している。
【0031】
血液浄化回路20には、血液と接するため生体適合性に優れた軟質素材が用いられ、特に、フタル酸ジエチルヘキシル(DOP)入り塩化ビニルアルコール、2−エチルヘキシルトリメート(TOTM)入り塩化ビニルアルコール、シリコンゴムが好適である。
【0032】
血液浄化回路20には、血液を圧送して血流を生じさせる血液ポンプ30、回路内の気泡を取り除く動脈側ドリップチャンバー31、血液を浄化処理する血液浄化器32、血液浄化器32の下流側に設けられる静脈側ドリップチャンバー33などが設けられている。
【0033】
血液ポンプ30は、例えばチューブポンプであり、複数のローラを有する回転体が回転し、複数のローラが順次一定の間隔で血液浄化回路20の流路(チューブ)を扱いて血液に拍動を生じさせながら血液を圧送できる。血液ポンプ30は、図2に示すように血液浄化回路20の他の流路21aよりも径が大きいポンプチューブである流路21bを有している。
【0034】
血液ポンプ30の駆動により生じる血液の拍動の周期は、回転体の回転数(ポンプの回転数)とローラの数により設定される。血液ポンプ30の駆動は、図1に示すポンプ制御部40により制御される。血液ポンプ30による血液の拍動の周期Fは、例えばポンプ制御部40から後述の血液成分濃度測定装置1の算出部62に出力できる。
【0035】
動脈側ドリップチャンバー31は、例えば血液ポンプ30と血液浄化器32の間の流路21に設けられている。
【0036】
血液浄化器32は、血液浄化回路20の動脈側ドリップチャンバー31の下流側に設けられている。血液浄化器32には、血液中の有害物質や不要物質などの所定成分を分離する中空糸膜や所定成分を吸着する吸着材などが設けられている。
【0037】
血液成分濃度測定装置1は、例えばセンサ部60と、センサ制御部61と、算出部62を有している。
【0038】
センサ部60は、例えば、血液ポンプ30と動脈側ドリップチャンバー31との間であって図2に示すように血液ポンブ30の流路21bに設けられている。なお、センサ部60が設けられる血液ポンプ30の流路21bの肉厚は、4mm以下、より好ましくは3mm以下に設定されている。こうして、流路21bは、例えば、ショアA硬度が30〜70程度に設定され、血液浄化回路20の他の部分21aよりも柔軟に形成されている。また、流路21bは、反射光を効率的に受光するために、上述のように内径が血液浄化回路20の他の流路21aよりも大きくなっている。例えば他の流路21aの内径が3.5mm程度に対し、流路21bの内径は5mm以上になっている。
【0039】
例えばセンサ部60は、図3に示すように血液浄化回路20の血液中に光を入射する発光部70と、血液中を透過した光を検出する受光部71と、発光部70と受光部71を保持する保持部材72と、発光部70と受光部71を流路21bに固定する固定部材73と、発光部70と受光部71が固定された部分の流路21bを覆う流路カバー74を有している。
【0040】
流路カバー74は、例えば不透明の材質で弾力性を有している。図4に示すように流路カバー74は、2つに分割されており、それぞれが板状に形成され、内側に流路21bの形状に適合する半円柱状の凹部が形成されている。これにより、流路カバー74は、血液浄化回路20の流路21bを両側から挟み込んで覆って、流路21bを圧迫固定できる。また、流路カバー74は、流路21bに対し取り外し可能になる。さらに、流路カバー74は、発光部70と受光部71が固定された部分の流路21bを外部の光が入いらないように覆っている。
【0041】
流路カバー74には、図3に示すように例えば発光部70と受光部71が嵌め込まれ、当該発光部70と受光部71の光が通過する2つの貫通孔80が設けられている。貫通孔80は、血液浄化回路20の流路方向Xに沿って設けられている。また、貫通孔80は、図4に示すように流路21bに対し直角方向Yの中央に設けられている。
【0042】
図3に示すように保持部材72は、例えば薄板状に形成され、表面に発光部70と受光部71を流路方向Xに沿って所定の間隔で保持している。
【0043】
固定部材73は、例えば四角状の一対の平板部100と、当該平板部100同士を固定する締結部材101を有している。
【0044】
平板部100は、例えば流路カバー74よりも剛性のある例えば金属により形成されている。一方の平板部100の内側中央には、凹部102が形成され、当該凹部102に保持部材72が嵌め込まれて位置決めされている。保持部材72と平板部100の凹部102の底面との間には、弾力性のある緩衝シート103が介在されている。
【0045】
上記流路カバー74や緩衝シート103には、弾性を有する軟質素材が用いられており、ショアA硬度が1〜85、特に4〜70程度に設定されている(JIS K 7215準拠)。具体的には、シリコンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、ウレタンゴムなどが用いられている。
【0046】
一対の平板部100は、流路カバー74を両側から挟んで、締結部材101により互いに内側に締め付けられることによって、流路カバー74を外側から押さえている。これにより、保持部材72の発光部70と受光部71が貫通孔80に嵌め込まれた状態で流路21bの表面に接触し押し付けられる。また、締結部材101の締め付けを弛めることによって、固定部材73を流路21bや流路カバー74から取り外すことができる。なお。流路カバー74による流路21bの最終的な圧迫固定率は、100〜175%であることが好ましい。圧迫固定率とは、圧迫されていない状態の測定部40の径をDとし、圧迫によって変動した径をΔdとした場合に、(D+Δd)/D×100(%)で表したものである。なお、圧迫固定できれば、上記方法にこだわる必要はない。
【0047】
締結部材101は、例えばネジやナットからなり、平板部100の四隅に設けられている。
【0048】
発光部70は、発光用のLEDまたはレーザーダイオードを備えており、少なくとも二種類の波長の光を発することができる。例えば発光部70は、血液による影響の少ない500nm以上の波長の光を発し、血液中の酸化ヘモグロビンに吸収され易い波長850nm〜1000nmの第1の光(赤外光)を発する第1発光部70aと、血液中の還元ヘモグロビンに吸収され易い波長500〜700nmの第2の光(赤色光)を発する第2発光部70bを有している。
【0049】
センサ部60が設けられた血液浄化回路20の流路21bは、当該流路21bに気泡が滞留しないようになっており、例えば、上下方向に向けられている。これにより、センサ部60による光の検出が気泡に邪魔されることがなく適正に行われる。なお、センサ部60のある流路21bは、鉛直方向に対し傾斜していてもよい。
【0050】
センサ制御部61は、センサ部60における発光と受光を制御している。センサ部60の受光部71で受光された光は、センサ制御部61に出力される。センサ制御部61は、当該光の情報を算出部62に出力できる。
【0051】
算出部62は、例えば信号処理回路やコンピュータにより構成され、血液ポンプ30の駆動により血液浄化回路20内に血液の拍動が生じ、受光部71により検出された光強度の時間変化(波形)から、血液の拍動に対応する周期成分を抽出し、当該周期成分に基づいて所定の血液成分の濃度としての血液酸素飽和度を算出できる。
【0052】
次に、以上のように構成された血液成分濃度測定装置1で行われる血液酸素飽和度測定について説明する。図5は、当該血液酸素飽和度測定の主な工程を示すフローチャートである。例えば血液浄化装置10における血液浄化処理中は、血液ポンプ30により血液が圧送され、血液浄化回路20内に血液が流れている。このとき血液ポンプ30のローラの駆動により、血液浄化回路20内に所定の周期Fの血液の拍動が生じる。そして、この血液浄化処理中に、センサ部60において発光部70から血液浄化回路20内の血液中に光が連続的に入射される(図5の工程S1)。このとき、第1発光部70aと第2発光部70bの発光が交互に行われ、血液中の酸化ヘモグロビンに吸収され易い波長の第1の光と、血液中の還元ヘモグロビンに吸収され易い波長の第2の光が血液中に交互に入射される。この発光の周期は、拍動の周期Fより十分に短く設定されている。
【0053】
発光部70から発光された光は、血液中で反射し、受光部71で検出される(図5の工程S2)。受光部71の光信号は、算出部62に出力される。算出部62では、先ず受光部71の出力信号から、第1の光と第2の光の光強度がそれぞれ抽出される。これにより、第1の光の光強度の時間変化と、第2の光の光強度の時間変化が求められる(図5の工程S3)。また、ポンプ制御部40から算出部62に、血液浄化回路20における血液の拍動の周期Fが提供される(図5の工程S4)。なお、血液の拍動の周期Fは、ポンプ制御部40から、センサ制御部61を経由して算出部62に出力されてもよい。この拍動の周期Fは、血液ポンプ30のポンプ回転数とローラ数の駆動設定から計算により得てもよいし、ポンプ回転数をモニタリングすることにより得てもよい。また、拍動の周期Fは、血液ポンプ30の出口部分で圧力変動をモニタリングすることにより得てもよい。そして、ポンプ制御部40から得た血液の拍動の周期Fを用いて、第1の光と第2の光の光強度の時間変化から、上記拍動の周期Fに対応した周期成分のみが抽出される。次に、第1の光と第2の光の周期Fに対応した周期成分の強度比が求められ、予め求められている当該第1の光の光強度と第2の光の光強度との強度比と、血液酸素飽和度との関係式を用いて、前記第1の光と第2の光の周期Fに対応した周期成分の強度比から血液酸素飽和度が算出される(図5の工程S5)。なお、拍動の周期Fは第1の光あるいは第2の光の光強度の時間変化から求めても良い。
【0054】
本実施の形態によれば、血液浄化回路20において、血液ポンプ30の駆動により安定した周期の血液の拍動が生じる。そして、発光部70及び受光部71により血液浄化回路20の血液を通過した光の強度を検出し、前記血液ポンプ30の駆動により生じる血液の拍動の周期Fを用いて、前記光の強度から血液酸素飽和度を算出している。これにより、血液酸素飽和度を正確かつ安定的に測定できる。また、発光部70と受光部71が、血液の拍動の乱れが少ない血液浄化回路20の血液ポンプ30の下流側に設けられるので、血液酸素飽和度の算出がより正確かつ安定的に行われる。
【0055】
発光部70と受光部71は、血液浄化回路20の血液ポンプ30と血液浄化器32の間に設けられているので、血液浄化回路20で血液の拍動の乱れが少ない部分で光の検出を行うことができる。よって、血液ポンプ30の駆動による血液の拍動の周期Fと、発光部70及び受光部71による光強度を用いた血液酸素飽和度の算出がより正確かつ安定的に行われる。
【0056】
さらに発光部70と受光部71は、血液浄化回路20の血液ポンプ30と動脈ドリップチャンバー31の間に設けられているので、血液浄化回路20で血液の拍動の乱れがさらに少ない部分で光の検出を行うことができる。よって、血液ポンプ30の駆動による血液の拍動の周期Fと、発光部70及び受光部71による光強度を用いた血液酸素飽和度の算出がさらに正確かつ安定的に行われる。
【0057】
また発光部70と受光部71は、他の流路21aよりも径が大きい血液ポンプ30のチューブである流路21bに設けられているので、血液浄化回路20で血液の拍動の乱れが最も少ない部分で光の検出を行うことができる。よって、血液ポンプ30の駆動による血液の拍動の周期Fと、発光部70及び受光部71による光強度を用いた血液酸素飽和度の算出がさらに正確かつ安定的に行われる。また、流路21bの径が大きく、発光部70から入射された光が血液中で十分に反射するので、当該反射光を効率的に受光し、光強度の検出を効率的かつ確実に行うことができる。
【0058】
血液成分濃度測定装置1は、発光部70と受光部71を流路21bに流路カバー74を介して固定する固定部材73を有しているので、発光部70及び受光部71が流路21bに対しずれることがなく、血流に対する光の発光や受光を正確かつ安定的に行うことができる。
【0059】
固定部材73は、発光部70と受光部71を血液浄化回路20側に押し付けて固定しているので、発光部70及び受光部71と流路21bが常に接触し、血流に対する光の発光や受光を正確かつ安定的に行うことができる。
【0060】
血液成分濃度測定装置1は、血液浄化回路20の発光部70と受光部71が固定される部分の流路21bを覆う流路カバー74を有し、固定部材73は、流路カバー74を外側から押さえている。これにより、外部の振動や流路21b自体の振動などの外乱が血液の拍動に影響することを抑制できる。
【0061】
流路カバー74は、発光部70と受光部71が固定された部分の流路21bを圧迫し、弾力性を有しているので、血液の拍動を抑制しない程度に流路21b自体の動きを規制できる。これにより、例えば長時間の体外循環により生じる血液浄化回路20の振動より発光部70及び受光部71と流路21bが位置ずれすることを防止できる。よって、発光部70と受光部71による光の強度の検出を正確かつ安定的に行うことができる。
【0062】
流路カバー74は、発光部70と受光部71が固定された部分の流路21bを外部の光が入らないように覆っているので、外部自然光によるノイズを防ぐことができ、受光部71により検出された光の強度に基づく血液酸素飽和度を正確かつ安定的に行うことができる。また、本実施の形態では、流路カバー74が流路21bに密着しているので、流路21b内から外部への光の散乱も防止され、発光部70と受光部71による血液への発光と受光が効率的かつ確実に行われる。
【0063】
流路カバー74は、血液浄化回路20に対し取り外し自在に構成されているので、血液浄化回路20の適正な部分に発光部70や受光部71を取り付けることができる。
【0064】
血液成分濃度測定装置1は、発光部70と受光部71を保持する保持部材72を有し、固定部材73の血液浄化回路20側の面には、保持部材72を収容する凹部103が形成されている。これにより、発光部70と受光部71を固定部材73にしっかり固定することができ、位置ずれしないので、発光部70及び受光部71による光の強度の検出を正確かつ安定的に行うことができる。
【0065】
保持部材72と固定部材73との間には、弾力性のある緩衝シート103が介在されているので、発光部70と受光部71を適正な力で流路21に押し付けることができる。また外部から固定部材73に伝わった振動などを吸収し、当該振動が血液の拍動に影響することを抑制できる。なお、緩衝シート103を流路カバー74と保持部材72との間に入れて緩衝度合いを調整してもよい。
【0066】
固定部材73は、血液浄化回路20に対し取り外し自在に構成されているので、必要に応じて血液浄化回路20の適正な部分に発光部70や受光部71を取り付けることができる。
【0067】
センサ部60は、血液浄化回路20の気泡が滞留しない部分に設けられているので、例えば治療中の圧力の変化や気温の変化により、血液浄化回路20内に微小気泡が発生しても、微小気泡がセンサ部60に留まることはない。この結果、気泡により入射光が影響を受けることがなく、酸素飽和度測定をより正確に行うことができる。
【0068】
発光部70は、波長850nm〜1000nmの光を発する第1発光部と、波長500〜700nmの光を発する第2発光部を備え、各光を用いて、血液中の酸素飽和度を測定している。かかる場合、酸素飽和度の精度よく測定できる。
【0069】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。酸素飽和度モニターの反射型を用いて説明したが、発光部70と受光部71を血液浄化回路20を挟んだ対向する位置に設置して、透過型酸素飽和度モニターを用いることも可能である。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0070】
例えば以上の実施の形態では、センサ部60が血液ポンプ30のポンプチューブである流路21bに設置されていたが、血液ポンプ30より下流側であれば血液浄化回路20の他の部分に設定されていてもよい。また、例えば図6に示すようにセンサ部60が設けられる血液浄化回路20の流路21cが、軟質で径が大きいピロー状に形成されていてもよい。流路21cには、例えば血液と接するため生体適合性に優れた軟質素材が用いられ、特に、フタル酸ジエチルヘキシル(DOP)入り塩化ビニルアルコール、2−エチルヘキシルトリメート(TOTM)入り塩化ビニルアルコール、シリコンゴムが好適である。また、流路21cの肉厚は、4mm以下、より好ましくは3mm以下に設定されている。こうして、流路21cは、ショアA硬度が30〜70程度に設定され、血液浄化回路20の流路21の他の部分よりも柔軟に形成されている。また、流路21cは、反射光を効率的に受光するために、内径が血液浄化回路20の他の部分よりも大きくなっており、例えば他の部分の内径が3.5mm程度に対し、流路21cの内径は5mm以上になっている。
【0071】
上記実施の形態において、血液浄化回路20のセンサ部60が設置された流路21bが上下方向、または傾斜され、気泡が上方に血液と共に流れるように設置されていたが、気泡に影響を受けにくい他の構造として、例えば血液浄化回路20が水平に設置されても、発光部70と受光部71を血液浄化回路20の下面若しくは側面に配置し、当該発光部70と受光部71の近くに気泡が滞留しないようにしてもよい。例えば発光部70と受光部71のある水平面から3mm以上上方まで気泡が滞留しないように血液浄化回路20の径や、発光部70及び受光部71の位置を設定してもよい。
【0072】
固定部材73や流路カバー74は、他の構成であってもよく、一体化していてもよい。また一対の固定部材73の片同士が一端側で連結され、当該連結部を軸に回動できるようにしてもよい。この場合、血液浄化回路20を、固定部材73の二つの片の間に入れて挟み込み、固定部材73の2つの片を閉めて互いに固定することによって、血液浄化回路20を固定してもよい。流路カバー74も固定部材73と同様に2つの片同士が一端側で連結され、当該連結部を軸に回動できるようにしてもよい。
【0073】
以上の実施の形態では、血液中に酸素飽和度を測定する例であったが、本発明は、酸素飽和度以外の血糖などの血液成分の濃度を測定する場合にも適用できる。
【実施例】
【0074】
以下、本発明を実施例にしたがって具体的に説明するが、本説明はこれらに限定されるものではない。
【0075】
(実施例1)
実施例1は、図1に示したようにセンサ部60を血液ポンプ30の下流側(血液ポンプ30と動脈側ドリップチャンバー31の間)に設定し、図6に示すようにセンサ部60の流路21cをピロー状に形成した血液成分濃度測定装置1を使用した。具体的には、センサ部60として、反射型センサーであるマシモSETラディカルパルスオキシメータを用い、ラディカルにおける酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの吸光度割合を測定する発光部70の赤色光と赤外光の波長は、それぞれ660nmと905nmを使用した。
【0076】
ピロー状の流路21cとして、透析用血液回路(日本工業規格 JIS T 3248 )の陰圧検出部分(縦15.6mm、横36.7mm、高さ15.9mm、硬度52(ショアA硬度)を用いた。固定部材73における、発光部70及び受光部71側の平板部100には、縦40mm、横78mm、厚さ10mmのもの用い、その反対側の平板部100には、縦40mm、横78mm、厚さ3mmのものを用いた。固定部材73及び流路カバー74により、ピロー状の流路21cを挟み込み、107%の圧迫固定率で圧迫固定した。
【0077】
流路カバー74には、シリコン素材を用いた。発光部70及び受光部71側の流路カバー74の片は、縦30mm 横50mm、厚み6mmとした。当該流路カバー74の片には、6mmΦの穴を開け貫通孔80とした。反対側の流路カバー74の片は、縦30mm 横50mm、厚み8mmとした。また、緩衝シート103は、縦25mm、横30mm、厚み1.5mmとした。緩衝シート103の硬度は、14(ショアA硬度)、流路カバー74の硬度は、32(ショアA硬度)であった。なお、センサ部60における血液の流れは、下から上である。
【0078】
酸素飽和度の測定は、マシモ社製情報解析ソフトVer.1.7.0 Sat partnerにより行った。測定時の透析条件としては、血液流量200mL/分、透析液流量500mL/分、透析液温度36.4℃から36.8℃で行った。
【0079】
透析処理時、除水により患者の酸素飽和度が一旦低下することが起こる。その時に血液濃度測定装置1を用いて行われた酸素飽和度および血圧の測定結果を図7に示した。図7に示すように、実施例1の血液濃度測定装置1を用いて測定された酸素飽和度は、時間と共に明確にかつ滑らかに低下しており、当該測定が正確かつ安定的に行われている。また、図7のグラフ中の(4)の圧力測定時には、患者の圧力が低下している。実施例1の酸素飽和度測定によれば、(4)の圧力測定時に向けて次第に酸素飽和度が低下していくことが正確に把握できるため、この患者の圧力低下を事前に正確に予測することができる。この実施例1の場合、センサ部60を用いて、血液ポンプ30の陽圧の拍動による光強度の周期的な波形も安定しており周期成分を確実に測定することができ、その周期成分から計算された酸素飽和度は、図7に示す様に、ばらつきが少ない結果が得られた。
【0080】
拍動波形の内容成分である、拍動成分と非拍動成分の割合を表す還流指標(%)(Perfusion Index 以下 PIと略す)は10.0±1.5と拍動成分の割合が高い数値が得られた。一般にPIが0.2以上が好ましく、数値が高い程、測定精度が高いと言われているが、この事からも本実施例1の酸素飽和度測定値が拍動成分から精度よく得られた数値であることが確認できた。以上、酸素飽和度の精度向上により、生体反応である酸素飽和度の変動が明確に把握でき、血液透析治療中における酸素飽和度が明らかに低下の8分後に血圧(収縮期血圧)低下が出現したことを確認できた(図7)。
【0081】
(実施例2)
実施例2は、図1に示したようにセンサ部60を血液ポンプ30の下流側(血液ポンプ30と動脈側ドリップチャンバー31の間)に設定し、図3及び図4に示すように血液ポンプ30のポンプチューブである流路21bにセンサ部60を設けた血液成分濃度測定装置1を使用した。具体的には、センサ部60として、反射型センサーであるマシモSETラディカルパルスオキシメータを用い、ラディカルにおける酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの吸光度割合を測定する発光部70の赤色光と赤外光の波長は、それぞれ660nmと905nmを使用した。
【0082】
血液ポンプ30の流路21bとして、透析用血液回路(日本工業規格 JIS T 3248 )の血液ポンプ用チューブ部分(内径8.0mm、外径12.0mm、長さ325mm:硬度45(ショアA硬度))を用いた。固定部材73における、発光部70及び受光部71側の平板部100には、縦40mm、横44mm、厚さ10mmのもの用い、その反対側の平板部100には、縦40mm、横44mm、厚さ3mmのものを用いた。固定部材73及び流路カバー74により、流路21bを挟み込み、103%の圧迫固定率で圧迫固定した。
【0083】
流路カバー74には、シリコン素材を用いた。発光部70及び受光部71側の流路カバー74の片は、縦30mm、横44mm、厚み5mmとした。当該流路カバー74の片には、6mmΦの穴を開け貫通孔80とした。反対側の流路カバー74の片は、縦30mm、横44mm、厚み6mmとした。また、緩衝シート103は、縦25mm、横30mm、厚み1.5mmとした。緩衝シート103の硬度は、14(ショアA硬度)、流路カバー74の硬度は、32(ショアA硬度)であった。なお、センサ部60における血液の流れは、下から上である。
【0084】
酸素飽和度の測定は、マシモ社製情報解析ソフトVer.1.7.0 Sat partnerにより行った。測定時の透析条件としては、血液流量200mL/分、透析液流量500mL/分、透析液温度36.4℃から36.8℃で行った。
【0085】
透析処理時、除水により患者の酸素飽和度が低下した時に実施例2の血液濃度測定装置1を用いて行われた酸素飽和度および血圧の測定結果を図8に示した。図8に示すように、実施例2の血液濃度測定装置1を用いて測定された酸素飽和度は、時間と共に明確にかつ滑らかに低下しており、当該測定が正確かつ安定的に行われている。また、図8のグラフ中の(4)の血圧測定時には、患者の血圧が低下している。実施例2の酸素飽和度測定によれば、(4)の血圧測定時に向けて次第に酸素飽和度が低下していくことが正確に把握できるため、この患者の血圧低下を事前に正確に予測することができる。この実施例2の場合、センサ部60は、血液ポンプ30の拍動による圧送の直後であり、且つ、同一回路径であり、回路特有の外乱等の影響も少なく、血液ポンプ30の周波性成分を確実に測定することができた。また、実施例2と実施例1を比較した場合、実施例2では、酸素飽和度の測定時のばらつきは減少し、ノイズの減少も確認した。実施例2が血液浄化回路20におけるセンサ部60を設置する場所としてより好ましいことが判明した。
【0086】
実施例2の場合、実施例1でも表したPIが15.0±2.0とかなり高値を示し、センサ部60を設置する場所としての信頼性が実施例1よりも高いことが確認できた。
【0087】
図8に示すように、実施例2により、血液透析治療中における酸素飽和度が明らかに低下の10分後に血圧(収縮期血圧)低下が出現したことを確認できた。
【0088】
一般に、血液透析治療の除水に伴う循環血液量の変化に対し、正常時には自律神経による血管収縮により血圧の恒常性が維持されるが、異常時には自律神経バランスがくずれ、肺血流量減少、呼吸性変動の影響により、酸素飽和度減少及び血圧低下が起こると言われている。本発明における血液成分濃度測定装置1により、血液透析治療における循環血液量変化への対応が出来なくなった体の不調において、呼吸性変動の影響による血圧低下を確実に予測することができる。
【0089】
(比較例1)
比較例1は、図9に示すようにセンサ部120を血液ポンプ30の上流側(血液ポンプ30と患者の脱血穿刺部の間)に設定し、図10に示したようにセンサ部120が設けられる血液浄化回路20の流路21dをピロー状に形成した血液成分濃度測定装置を使用した。センサ部120は、発光部130と、受光部131と、発光部130と受光部131の保持部133と、緩衝シート132と、これらの収納部134を備え、発光部130と受光部131がピロー状の流路21dに接触されている。具体的には、センサ部120として、反射型センサーであるマシモSETラディカルパルスオキシメータを用い、ラディカルにおける酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの吸光度割合を測定する発光部130の赤色光と赤外光の波長は、それぞれ660nmと905nmを使用した。
【0090】
ピロー状の流路21dとして、透析用血液回路(日本工業規格 JIS T 3248 )の陰圧検出部分(縦15.6mm、横36.7mm、高さ15.9mm、硬度52(ショアA硬度))を用いた。収納部134(縦31.0mm、横71.0mm、高さ31.0mm、板厚み5.0mm)内で、発光部130、受光部131によりピロー状の流路21dを挟み込み、125%の圧迫固定率で圧迫固定した。保持部132は、シリコン素材を用い、縦25mm横30mm、厚み2.5mm、15(ショアA硬度)とした。発光部130、受光部131のある部分には6mmΦの穴を開け光路とした。
【0091】
酸素飽和度の測定は、マシモ社製情報ソフトフィジオログを用いて行った。測定時の透析条件としては、血液流量200mL/分、透析液流量500mL/分、透析液温度36.4℃から36.8℃で行った。なお、センサ部120における血液の流れは水平であり、センサ部120は血液浄化回路20の下面に配置した。
【0092】
図11に酸素飽和度および血圧の測定結果を示した。血液ポンプ30の拍動により、測定部では陰圧となり拍動波形が乱れ、周期成分が確実には得られにくくなった。その結果、酸素飽和度のばらつきが大きくなり、変化を的確に捉えにくくなり、酸素飽和度の変化による血圧低下を予測が難しくなった。
【0093】
拍動成分の割合を示すPIにおいて1.0±0.5と数値が低くなり、実施例と比べ、センサ部120の設置箇所における測定は安定性に欠けることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、血液中の老廃物等の有害物質を除去する血液浄化療法において広く応用可能である。血液成分の濃度測定が血液浄化回路を介して行えるので、特殊な測定部位を血液浄化回路内に取り付ける必要なく、また血液に触れないので、経済的になおかつ安全に使用できる。
【符号の説明】
【0095】
1 血液成分濃度測定装置
20 血液浄化回路
30 血液ポンプ
31 動脈側ドリップチャンバー
32 血液浄化器
33 静脈側ドリップチャンバー
40 ポンプ制御部
60 センサ部
61 センサ制御部
62 算出部
70 発光部
71 受光部
72 保持部材
73 固定部材
74 流路カバー
F 周期
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内から取り出された血液を浄化して体内に戻すための血液浄化回路において血液中の所定の血液成分の濃度を測定する血液成分濃度測定装置であって、
前記血液浄化回路の血液中に光を入射する発光部と、
前記血液浄化回路の血液中を透過した前記光を検出する受光部と、
前記受光部により検出された光強度の時間変化から、前記血液浄化回路の血液ポンプの駆動により前記血液浄化回路内に生じる血液の拍動に対応する前記光強度の時間変化の周期成分を抽出し、当該周期成分に基づいて所定の血液成分の濃度を算出する算出部と、を有し、
前記発光部及び前記受光部は、前記血液浄化回路の前記血液ポンプの下流側に設けられている、血液成分濃度測定装置。
【請求項2】
前記血液浄化回路は、前記血液ポンプの下流側に血液を浄化する血液浄化器を有し、
前記発光部と前記受光部は、前記血液浄化回路における前記血液ポンプと前記血液浄化器の間に設けられている、請求項1に記載の血液成分濃度測定装置。
【請求項3】
前記血液浄化回路は、前記血液ポンプと前記血液浄化器の間に動脈側ドリップチャンバーを有し、
前記発光部と前記受光部は、前記血液浄化回路における前記血液ポンプと前記動脈側ドリップチャンバーの間に設けられている、請求項2に記載の血液成分濃度測定装置。
【請求項4】
前記血液ポンプは、前記血液浄化回路の流路に接続され他の部分よりも径が大きいチューブを有するチューブポンプであり、
前記発光部と前記受光部は、前記血液ポンプのチューブに設けられている、請求項1〜3のいずれかに記載の血液成分濃度測定装置。
【請求項5】
前記発光部と前記受光部を前記血液浄化回路に固定する固定部材を有する、請求項1〜4のいずれかに記載の血液成分濃度測定装置。
【請求項6】
前記固定部材は、前記発光部と前記受光部を前記血液浄化回路に押し付けて固定する、請求項5に記載の血液成分濃度測定装置。
【請求項7】
前記血液浄化回路の前記発光部と前記受光部が固定される部分を覆う流路カバーを有し、
前記固定部材は、前記流路カバーを外側から押さえている、請求項5又は6に記載の血液成分濃度測定装置。
【請求項8】
前記流路カバーは、前記血液浄化回路の前記発光部と前記受光部が固定された部分を圧迫し、弾力性を有する、請求項7に記載の血液成分濃度測定装置。
【請求項9】
前記流路カバーは、前記血液浄化回路の前記発光部と前記受光部が固定された部分を外部の光が入らないように覆っている、請求項7又は8に記載の血液成分濃度測定装置。
【請求項10】
前記流路カバーは、前記血液浄化回路に対し取り外し自在に構成されている、請求項7〜9のいずれかに記載の血液成分濃度測定装置。
【請求項11】
前記発光部と前記受光部を保持する保持部材をさらに有し、
前記固定部材の前記血液浄化回路側の面には、前記保持部材を収容する凹部が形成されている、請求項5〜10のいずれかに記載の血液成分濃度測定装置。
【請求項12】
前記保持部材と前記固定部材との間には、弾力性のある部材が介在されている、請求項11に記載の血液成分濃度測定装置。
【請求項13】
前記固定部材は、前記血液浄化回路に対し取り外し自在に構成されている、請求項5〜12のいずれかに記載の血液成分濃度測定装置。
【請求項14】
前記発光部と前記受光部は、前記血液浄化回路において気泡が滞留しない部分に設けられている、請求項1〜13のいずれかに記載の血液成分濃度測定装置。
【請求項15】
前記発光部は、波長850nm〜1000nmの光を発する第1発光部と、波長500nm〜700nmの光を発する第2発光部を備え、前記血液成分の濃度が血液中の酸素飽和度である、請求項1〜14のいずれかに記載の血液成分濃度測定装置。
【請求項16】
体内から取り出された血液を浄化して体内に戻すための血液浄化回路において血液中の所定の血液成分の濃度を測定する血液成分濃度測定方法であって、
前記血液浄化回路の血液ポンプの下流側の血液中に光を入射し、前記血液浄化回路の血液中を透過した前記光を検出する工程と、
前記検出された光強度の時間変化から、前記血液ポンプの駆動により前記血液浄化回路内に生じる血液の拍動に対応する前記光強度の時間変化の周期成分を抽出し、当該周期成分に基づいて所定の血液成分の濃度を算出する工程と、を有する、血液成分濃度測定方法。
【請求項1】
体内から取り出された血液を浄化して体内に戻すための血液浄化回路において血液中の所定の血液成分の濃度を測定する血液成分濃度測定装置であって、
前記血液浄化回路の血液中に光を入射する発光部と、
前記血液浄化回路の血液中を透過した前記光を検出する受光部と、
前記受光部により検出された光強度の時間変化から、前記血液浄化回路の血液ポンプの駆動により前記血液浄化回路内に生じる血液の拍動に対応する前記光強度の時間変化の周期成分を抽出し、当該周期成分に基づいて所定の血液成分の濃度を算出する算出部と、を有し、
前記発光部及び前記受光部は、前記血液浄化回路の前記血液ポンプの下流側に設けられている、血液成分濃度測定装置。
【請求項2】
前記血液浄化回路は、前記血液ポンプの下流側に血液を浄化する血液浄化器を有し、
前記発光部と前記受光部は、前記血液浄化回路における前記血液ポンプと前記血液浄化器の間に設けられている、請求項1に記載の血液成分濃度測定装置。
【請求項3】
前記血液浄化回路は、前記血液ポンプと前記血液浄化器の間に動脈側ドリップチャンバーを有し、
前記発光部と前記受光部は、前記血液浄化回路における前記血液ポンプと前記動脈側ドリップチャンバーの間に設けられている、請求項2に記載の血液成分濃度測定装置。
【請求項4】
前記血液ポンプは、前記血液浄化回路の流路に接続され他の部分よりも径が大きいチューブを有するチューブポンプであり、
前記発光部と前記受光部は、前記血液ポンプのチューブに設けられている、請求項1〜3のいずれかに記載の血液成分濃度測定装置。
【請求項5】
前記発光部と前記受光部を前記血液浄化回路に固定する固定部材を有する、請求項1〜4のいずれかに記載の血液成分濃度測定装置。
【請求項6】
前記固定部材は、前記発光部と前記受光部を前記血液浄化回路に押し付けて固定する、請求項5に記載の血液成分濃度測定装置。
【請求項7】
前記血液浄化回路の前記発光部と前記受光部が固定される部分を覆う流路カバーを有し、
前記固定部材は、前記流路カバーを外側から押さえている、請求項5又は6に記載の血液成分濃度測定装置。
【請求項8】
前記流路カバーは、前記血液浄化回路の前記発光部と前記受光部が固定された部分を圧迫し、弾力性を有する、請求項7に記載の血液成分濃度測定装置。
【請求項9】
前記流路カバーは、前記血液浄化回路の前記発光部と前記受光部が固定された部分を外部の光が入らないように覆っている、請求項7又は8に記載の血液成分濃度測定装置。
【請求項10】
前記流路カバーは、前記血液浄化回路に対し取り外し自在に構成されている、請求項7〜9のいずれかに記載の血液成分濃度測定装置。
【請求項11】
前記発光部と前記受光部を保持する保持部材をさらに有し、
前記固定部材の前記血液浄化回路側の面には、前記保持部材を収容する凹部が形成されている、請求項5〜10のいずれかに記載の血液成分濃度測定装置。
【請求項12】
前記保持部材と前記固定部材との間には、弾力性のある部材が介在されている、請求項11に記載の血液成分濃度測定装置。
【請求項13】
前記固定部材は、前記血液浄化回路に対し取り外し自在に構成されている、請求項5〜12のいずれかに記載の血液成分濃度測定装置。
【請求項14】
前記発光部と前記受光部は、前記血液浄化回路において気泡が滞留しない部分に設けられている、請求項1〜13のいずれかに記載の血液成分濃度測定装置。
【請求項15】
前記発光部は、波長850nm〜1000nmの光を発する第1発光部と、波長500nm〜700nmの光を発する第2発光部を備え、前記血液成分の濃度が血液中の酸素飽和度である、請求項1〜14のいずれかに記載の血液成分濃度測定装置。
【請求項16】
体内から取り出された血液を浄化して体内に戻すための血液浄化回路において血液中の所定の血液成分の濃度を測定する血液成分濃度測定方法であって、
前記血液浄化回路の血液ポンプの下流側の血液中に光を入射し、前記血液浄化回路の血液中を透過した前記光を検出する工程と、
前記検出された光強度の時間変化から、前記血液ポンプの駆動により前記血液浄化回路内に生じる血液の拍動に対応する前記光強度の時間変化の周期成分を抽出し、当該周期成分に基づいて所定の血液成分の濃度を算出する工程と、を有する、血液成分濃度測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−40058(P2012−40058A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181413(P2010−181413)
【出願日】平成22年8月13日(2010.8.13)
【出願人】(000116806)旭化成クラレメディカル株式会社 (133)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月13日(2010.8.13)
【出願人】(000116806)旭化成クラレメディカル株式会社 (133)
【Fターム(参考)】
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