説明

血管固定用キット

【課題】ボタンホール穿刺の成功率を飛躍的に向上せしめることが可能な、シャント血管等の血液透析の対象とされる血管の固定に有利に用いられるシャント血管固定用キットを提供すること。
【解決手段】血管をその周辺組織に固定するためのキット10を、血管に穿刺するための穿刺針12と、該穿刺針12に外挿される外筒体14と、該外筒体14の筒内に挿入される、血管を穿刺しない先端が鈍化された注入用ニードル16と、該注入用ニードル16に連結される注射器18と、該注射器18にて患者の体内に注入される液状生体接着剤20とで構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の血管、特に、ボタンホール穿刺において針が繰り返し挿入される穿刺口を形成せしめる血管部位の近傍を、その周辺組織に固定するための新規な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、腎不全患者の治療や生命の維持のために、患者の体内から取り出した血液を浄化して、再び体内に戻すようにした血液浄化、所謂人工腎臓を用いた血液透析(人工透析)が行われている。そして、そのような人工腎臓によって血液浄化を行うに際しては、体外循環に必要な血液量を確保すべく、生体の部位から血液を取り出すことが必要となるのであるが、針の穿刺が容易な体表面側にある静脈は、血流量が少なく、静脈から充分な量の血液を体外に取り出すことは困難であるため、通常、所謂シャント術と呼ばれる動脈・静脈吻合手術が為される。これは、腕等の部位において、体表面側に位置する静脈を、体の深部に位置する動脈のうちの1本に結合(吻合)して、血液をバイパスさせるものであり、これによって、血流量の多い血管、所謂シャント血管が形成される。そして、人工腎臓による治療中には、このようにして形成されたシャント血管に針を刺して、シャント血管から血液が取り出されるのである。
【0003】
そして、腎不全患者には、一般に、一週間に2〜3回の頻度で血液透析が行われるのであるが、この血液透析の度毎に、16〜17ゲージ(外径1.49〜1.65mm程度)の極太の針が穿刺されることとなり、これが、透析患者に大きな苦痛を与えている。また、この穿刺手技には熟練を要し、ときには、穿刺時乃至は透析中にシャント血管に挿入された鋭利な針の先端が穿刺口とは反対側の血管壁を傷付けることがあることも問題となっている。
【0004】
このような穿刺による問題を解消させるために、ピアスを通す穴のように、皮膚からシャント血管まで、針を挿入するための通路となる固定穿刺ルート(洋服のボタンホールの如きホール)を形成し、血液透析時に、かかる固定穿刺ルートを通じて、先端が鈍い針(ダルニードル)を、シャント血管壁に予め形成された穿刺口から血管内に挿入する方法、所謂「ボタンホール穿刺法」が、行われるようになっている(特許文献1参照)。このボタンホール穿刺法によれば、穿刺が容易になると共に、毎回、穿刺部位を変えながら鋭い針で皮膚表面からシャント血管を穿刺する場合とは異なり、毎回、同一の穿刺口から針が挿入されるところから、シャント血管が長持ちし、且つ、穿刺時の痛みが緩和されるといった利益が享受され得る。しかも、穿刺には、先端が鈍い針が用いられるところから、穿刺時乃至は透析中に、穿刺口とは反対側のシャント血管の内壁を傷付けるようなことも、有利に防止され得るようになっている。
【0005】
しかしながら、血管は、そもそも周辺組織に癒着して、固定されているものではないために、皮膚の引っ張り具合や駆血の程度によって、皮下で血管が動き、それに伴って血管に形成された穿刺口の位置も移動する。また、血管に形成された穿刺口は、皮膚の上から確認することもできない。このため、かかるボタンホール穿刺では、ダルニードルの先端を、固定穿刺ルートを通じてシャント血管の血管壁まで容易に到達せしめ得るにも拘わらず、シャント血管に形成された穿刺口を容易に探り当てることはできず、ダルニードルの先端を、血管腔内に挿入することが困難であるといった問題を内在しており、ボタンホール穿刺の成功率はあまり高いものではなかったのである。
【0006】
【特許文献1】国際公開第2004/011063号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決すべき課題とするところは、ボタンホール穿刺の成功率を飛躍的に向上せしめることが可能な、シャント血管等の血液透析の対象とされる血管の固定に有利に用いられる血管固定用キットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そして、かかる課題の解決のために、本発明の要旨とするところは、患者の血管に穿刺するための尖鋭な穿刺針と、先端部が該穿刺針よりも突出しないように、該穿刺針に外挿される所定長さの外筒体であって、該穿刺針に外挿された状態において、該穿刺針を前記患者の血管に穿刺することにより、該先端部が該患者の皮膚と血管壁との間の部位に位置するように挿入され、更にその状態において、該穿刺針を該患者から抜去することにより、長さ方向の一部分を該患者の体内に残留させて、筒内がニードルを該血管壁近傍まで導くための案内通路とされる外筒体と、該外筒体の筒内に挿入されて、前記患者の血管壁近傍まで案内される、血管を穿刺しないように先端が鈍化された注入用ニードルと、該注入用ニードルに連結される注射器と、該注射器にて、前記患者の血管壁の近傍に注入され、該血管を前記穿刺針の穿刺部位においてその周辺組織に癒着せしめて固定するための液状生体接着剤とを、含むことを特徴とする血管固定用キットにある。
【0009】
なお、かかる本発明に従う血管固定用キットの好ましい態様の一つによれば、前記注入用ニードルと前記注射器とを連結する連結部に、それらを軸方向に互いに離隔不能に係止する解除可能なロック機構が設けられることとなる。
【0010】
また、本発明に従う血管固定用キットにおける別の好ましい態様の一つによれば、前記穿刺針の太さが、23ゲージ以上、27ゲージ以下とされる。
【0011】
さらに、本発明に従う血管固定用キットにおける望ましい態様の一つによれば、前記注入用ニードルが、23ゲージ以上、27ゲージ以下の太さを有し、且つ前記穿刺針と同じ太さ、或いはそれよりも細い太さとされる。
【0012】
また更に、本発明の他の望ましい態様の一つによれば、前記注入用ニードルの先端面が、軸方向に対して垂直な方向の切断面にて構成されている。
【0013】
また、本発明に従う血管固定用キットの別の望ましい態様の一つによれば、前記穿刺針の先端部が、軸方向に対して傾斜した切断面にて尖鋭に構成されている。
【0014】
さらに、本発明に従う血管固定用キットの好ましい態様の別の一つによれば、前記穿刺針の先端部から前記外筒体の先端部までの最短距離が1mm以上とされる。
【0015】
加えて、本発明に従う血管固定用キットの他の好ましい態様の一つによれば、前記外筒体が、所定長さのチューブ部と該チューブ部の一端に固定的に連結された筒状ベース部とを有し、該筒状ベース部が、前記穿刺針を支持するホルダ部に外挿されて、該穿刺針が前記チューブ部に挿通せしめられるように構成される。
【0016】
なお、本発明においては、上述の如きキットを用いた血管の固定方法も、その対象とされ、具体的には、(a)尖鋭な穿刺針に、先端部が該穿刺針よりも突出しないように所定長さの外筒体を外挿した後、かかる穿刺針を患者の血管に穿刺して、該穿刺針に外挿された該外筒体の先端部を該患者の皮膚と血管壁との間の部位に位置するように挿入する工程と、(b)前記外筒体を挿入したままの状態で、前記穿刺針を前記患者から抜去して、該外筒体の長さ方向の一部分を該患者の体内に残留させた後、該外筒体の筒内に、血管を穿刺しないように先端が鈍化された注入用ニードルを挿入して、該注入用ニードルの先端部を、該患者の血管壁近傍まで案内する工程と、(c)前記注入用ニードルに連結された注射器にて、前記患者の血管壁の近傍に、液状生体接着剤を注入して、該血管をその周辺組織に部分的に癒着せしめて固定する工程とを、含むことを特徴とする血管の固定方法が、有利に採用されることとなる。
【発明の効果】
【0017】
このように、本発明に従う血管固定用キットを用いて、患者の血液透析に際して血液の取出しや返送の対象とされる血管、特に、ボタンホール穿刺において針が繰り返し挿入される穿刺口を形成せしめる部位の近傍を、周辺組織に部分的に癒着せしめて、固定するようにすれば、皮膚を引っ張ったり、駆血等を行ったとしても、シャント血管等の血管の穿刺口が、皮膚から血管まで続く固定穿刺ルート(ボタンホール)から大幅にズレることなく、ダルニードルの先端を、固定穿刺ルートを通じて、血管に形成された穿刺口に極めて容易に導入することができるようになって、ボタンホール穿刺の成功率が飛躍的に向上せしめられるのである。
【0018】
その結果、ボタンホール穿刺の度々の失敗によって、シャント血管等の血管上に新たな穿刺口を形成しなければならないような事態が、有利に減少せしめられ得るのである。
【0019】
また、患者の血管を液状生体接着剤にて部分的に固定するようにしているところから、固定した部分が、他の部分と比べて硬くなる。このため、皮膚の上から、手指等で触れることによって、血管の固定部位を確認することが出来、ひいては、かかる固定部位の近傍に形成された血管の穿刺口を、皮膚の上からでも確認することができるようになっているのである。つまり、かかる固定部位が、血管上に形成された穿刺口の位置を示すマーカーの如く作用し、これによっても、ボタンホール穿刺の成功率が格段に向上するようになっているのである。
【0020】
しかも、血管の全体を周辺組織に固定しているのではなく、部分的に固定しているところから、長い時間をかけて進行する動脈硬化に伴う血管の延長が阻害されるようなことが防止され得ると共に、血管狭窄に対する修復手術を行う際に不都合が生じるようなこともないのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0022】
先ず、図1には、本発明に従う血管固定用キットの構成を具体的に明らかにするために、その代表的な具体例が、概略的に示されている。そして、そこにおいて、血管固定用キット10は、穿刺針12と、外筒体14と、注入用ニードル16と、注射器18と、液状生体接着剤20とを含んで構成されている。
【0023】
より具体的には、穿刺針12は、血液透析等において留置針が穿刺されるシャント血管等の血管に穿刺するために用いられるものであって、公知の注射針と同様に、金属等の、剛性を有する材料からなる小径円筒状の穿刺針本体22が、該穿刺針本体22を保持する、透明な樹脂材料等からなる中空のホルダ部23に固着されて、構成されている。また、かかるホルダ部23の、穿刺針本体22が固定されていない側の開口端部には、段付円筒形状の透明な樹脂材料等からなるキャップ24が、その小径部において、液密に且つ着脱可能に取り付けられている。また、かかるキャップ24の大径側の開口端部には、空気は透過させるが、液体は透過させないフィルタ25が取り付けられており、穿刺針本体22側からキャップ24内に血液が流入しても、血液が外部に洩れ出ることがないようになっている。
【0024】
そして、図2(a),(b)には、それぞれ、穿刺針12(穿刺針本体22)の先端部が、正面形態及び側面形態において、拡大して示されているのであるが、かかる図からも明らかなように、穿刺針12(穿刺針本体22)の先端部は、穿刺針12の軸方向(図2中、上下方向)に対して、傾斜した切断面の複数(ここでは3つの切断面)にて構成され、これによって、最先端部が鋭く尖っており、穿刺時に、患者の皮膚や組織等を、大きな抵抗もなく、容易に刺し進むことができるようになっている。
【0025】
なお、本実施形態においては、そのような穿刺針12として、一般に、止血操作が不要となる、23ゲージ(G)以上、27ゲージ以下の太さのものが、有利に用いられることとなる。なぜなら、血管に穿刺される穿刺針12が太すぎると、抜針後に止血操作を施さなければならない事態が招来され易くなるからであり、またそのような止血操作を施す場合には、穿刺針12と共に患者の皮下に挿入されて留置される外筒体14が邪魔となって、穿刺部位上の皮膚を圧迫することができなくなるからである。逆に、穿刺針12が細すぎると、それに合わせて、穿刺針12に外挿される外筒体14も、細くしなければならず、ひいては、その外筒体14の筒内に挿入される、液状生体接着剤20を注入するための注入用ニードル16も、穿刺針12に合わせて細くせざるを得なくなって、不都合となるからである。なお、ここにおいて、上記の「G(ゲージ)」は、注射針の太さの単位であり、下記表1に示されるように、数が大きくなる程、細いものであることが、理解されるべきである。
【0026】
【表1】

【0027】
一方、外筒体14は、上記穿刺針12の穿刺針本体22よりも短い長さの、プラスチック等の、可撓性を有する透明な材料からなる円筒状の外筒体本体(チューブ部26)と、該チューブ部26の一端に固定的に連結された、樹脂等の材料からなる段付き円筒状のベース部28とを有して構成されており、チューブ部26の内径が、穿刺針12の本体22の外径と同じか、僅かに大きな大きさとされている。それ故、穿刺針12のチューブ部26に、穿刺針12の本体22を挿通せしめることが可能となっているのである。
【0028】
そして、穿刺針12に対して、外筒体14を、そのベース部28側から外挿することによって、換言すれば、外筒体14のベース部28側から、穿刺針12の本体22を挿入せしめ、更に穿刺針12のホルダ部23を内挿することによって、図3に示されるように、穿刺針12と外筒体14とが一体化され、外筒体14が穿刺針12に対して着脱可能に取り付けられるようになっているのである。また、このとき、外筒体14のベース部28の内周壁に対して、穿刺針12のホルダ部23に設けられた横断面略十字状のニードル支持部30が、その径方向外方に突出し、且つ周方向に90°の間隔で設けられたリブ状の4つの突部32で摺接することによって、外筒体14と穿刺針12とが同軸的に配置されるようになっていると共に、外筒体14のベース部28側の端部34が、穿刺針12のホルダ部23の段付部36に当接することによって、外筒体14が、そこから更に穿刺針12のホルダ部23側(図3中、下方)へ、外挿せしめられることが阻止され得るようになっている。
【0029】
また、本実施形態においては、穿刺針12に外筒体14を取り付けた状態において、外筒体14(チューブ部26)の先端部が、穿刺針本体22の先端部よりも突出しないようにされており、有利には、図4に示されるように、外筒体14の先端部から穿刺針12の先端部までの最短距離:D、換言すれば、外筒体14の先端部と、軸方向(図4中、上下方向)に対して斜めに切断された穿刺針12の切り口乃至は切断面のうち、ホルダ部23に最も近い縁部との軸方向の距離が、1mm以上、好ましくは、2〜3mmとされている。
【0030】
これによって、外筒体14が取り付けられた穿刺針12を患者の血管に穿刺した際に、穿刺針12の先端部は、患者の血管内に挿入される一方で、外筒体14の先端部は、患者の皮膚と血管壁との間の部位に有利に位置せしめられ得て、外筒体14の先端部が、穿刺針12と共に血管内に入ってしまうようなことが効果的に防止され得るようになっているのである。逆に言えば、かかる距離:Dが短かすぎると、外筒体14の先端部までもが、穿刺針12と共に患者の血管内に挿入せしめられるおそれがあるからである。
【0031】
なお、上述せる如き外筒体14のチューブ部26は、その内径が、上述せるように、穿刺針12の外径と同じか、それよりも僅かに大きな大きさとされる一方、その厚みは、外筒体14が取り付けられた穿刺針12を穿刺した際に、外筒体14のチューブ部26が、患者の皮下に穿刺針12と一緒にスムーズに挿入され得るように、且つ患者に強い穿刺痛を与えないように、0.08〜0.12mm程度とされることが望ましい。
【0032】
また一方、図1に示される注入用ニードル16は、患者の皮下に挿入され、留置された外筒体14の筒内に導入されて、その先端部が患者の血管壁近傍まで案内されるものであって、金属等の、剛性を有する材料からなる円筒状の注入用ニードル本体38と、該注入用ニードル本体38の一端部側に固定的に連結された、樹脂等の材料からなる段付き円筒状のベース部40とを有して、構成されている。
【0033】
そして、図5(a),(b)には、それぞれ、注入用ニードル本体38の先端部の側面図及び上面図が、拡大して示されているのであるが、注入用ニードル本体38の先端は、血管を穿刺しないように、尖鋭ではなく、鈍くされており、これにて、先端部が血管壁や周辺組織等に当たっても、それら血管壁や周辺組織を傷付けないようになっていると共に、注入用ニードル本体38を、外筒体14の筒内に挿入する際にも、注入用ニードル本体38の先端部が、外筒体14の筒壁に突き刺さって、筒内で引っかかったり、外筒体14の筒壁部を破損せしめて、その破片が体内に残留するようなことが有利に防止され得るようになっている。
【0034】
しかも、かかる図5からも明らかなように、本実施形態においては、先端が鈍化された注入用ニードル16(本体38)の先端面が、注入用ニードル16の軸方向に対して垂直な方向の切断面にて構成されているところから、注入用ニードル16が比較的に細いものであっても、注入用ニードル16(本体38)の先端部が、患者の血管壁を貫通して、血管内に入るようなことが、極めて効果的に防止され得るようになっていると共に、外筒体14の筒内への挿入時に、注入用ニードル本体38が外筒体14の筒壁に突き刺さるようなことも有利に防止され得て、スムーズに挿入され得るようになっている。
【0035】
また、注入用ニードル16の本体38は、その外径が、上記外筒体14のチューブ部26の内径よりも僅かに小さな大きさとされており、外筒体14のチューブ部26内に容易に内挿され得る太さとされている。そして、図6には、注入用ニードル16を外筒体14に内挿して取り付けた状態の説明図が示されているのであるが、この場合にも、上記穿刺針12を外筒体14に内挿して取り付けた場合と同様に、外筒体14と注入用ニードル16は、外筒体14のベース部28の内周部に、注入用ニードル16のベース部40に設けられた横断面略十字状のニードル支持部42が、その径方向外方に突出し、且つ周方向に90°の間隔で設けられたリブ状の4つの突部44で摺接することによって、同軸的に配置されるようになっていると共に、注入用ニードル16のベース部40の段付部46が、外筒体14のベース部28側の端部34に当接することによって、注入用ニードル16が、その位置から更に外筒体14のチューブ部26側(図6中、上方)へ、内挿されることが阻止され得るようになっている。
【0036】
また、かかる注入用ニードル16の長さとしては、特に限定されるものではないものの、有利には、注入用ニードル16のベース部40の段付部46を、外筒体14のベース部28側の端部34に当接せしめた状態で、注入用ニードル本体38の先端部と、チューブ部26の先端部とが軸方向において略一致するか、或いは、注入用ニードル本体38の先端部が、チューブ部26の先端部よりも僅かに突出するような長さとされることが望ましく、好適には、かかる突出長さが、1〜3mm程度とされることがより一層望ましい。このような突出長さとすることにより、注入用ニードル本体38の先端部が患者の血管壁を突いて、傷付けるようなことが有利に防止され得ると共に、後述する液状生体接着剤20を、患者の血管壁の近傍に、より一層有利に注入することができるようになる。
【0037】
なお、かかる注入用ニードル16(本体38)の太さとしては、上述せるように、外筒体14の内径と同じか、それよりも小さな外径を有するものが用いられることとなるのであるが、中でも、23ゲージ以上、27ゲージ以下の太さで、且つ上記穿刺針12の本体22と同じ太さか、或いはそれよりも細い太さのものが、特に、好適に用いられるのである。なぜなら、かかる注入用ニードル16が太すぎて、穿刺針12の本体22の太さよりも太いと、外筒体14の筒内に注入用ニードル16を内挿することができなくなるからであり、また、注入用ニードル16が細すぎると、先端が鈍化されていても、その先端部が、血管壁を突き進んで、血管内に入ってしまう危険があり、更に液状生体接着剤20を注入する際に、注射器18のピストンを押す注入圧が顕著に大きくなるからである。
【0038】
また、図7には、上述せる如き注入用ニードル16の平面図が示されているのであるが、注入用ニードル16のベース部40の端部には、径方向外方に突出する円環状の段部48が設けられており、かかる段部48には、更に、その径方向に対向する2箇所において、周方向に所定幅を有する、突出部50,50が形成されている。そして、本実施形態では、かかる二つの突出部50,50が、後述する注射器18に設けられたコネクタ58において係合されるようになっている。
【0039】
一方、図1に示される注射器18は、公知の注射器と同様に、ガラスや樹脂等の透明な材料からなるシリンダ52と、先端部にゴム等のシール部53が一体的に取り付けられた樹脂材料等からなるピストン54を有して構成されている。
【0040】
そして、図8(a),(b)には、それぞれ、かかる注射器18を構成するシリンダ52の縦断面図と平面図とが示されているのであるが、かかるシリンダ52の先端側に一体的に設けられた小径部56には、上述せる如き注入用ニードル16を連結するための、透明な樹脂材料等からなるコネクタ58が、先端小径部56に対して同軸的に且つ軸方向及び周方向に移動不能に固着せしめられている。
【0041】
より具体的には、コネクタ58は、上述せる如き注入用ニードル16のベース部40の端部に設けられた二つの突出部50,50の頂点間距離と同じか、それよりも僅かに大きな内径を有する略有底円筒形状を呈しており、その内壁59に、螺旋状の2本の突条60a,60bが、周方向に180°ずれた形態において、二重螺旋状に形成されている。そして、注射器18の先端小径部56の先端部を注入用ニードル16のベース部40の開口部で覆うようにして、注入用ニードル16のベース部40を、コネクタ58内に挿入し、そして、その内壁59に形成された2本の突条60a,60bに、それぞれ、上記注入用ニードル16の二つの突出部50,50を摺接させつつ、注入用ニードル16を軸中心に回転せしめることによって、注入用ニードル16がコネクタ58の突条60a,60bに沿ってねじ込まれるようになっており、これにて、注入用ニードル16と注射器18とが、軸方向に互いに離隔不能に係止されて、連結されるようになっているのであり(図9参照)、また、注入用ニードル16を反対側に回転せしめることによって、コネクタ58の突条60a,60bと注入用ニードル16の二つの突出部50,50との係合が解消されて、注入用ニードル16と注射器18との連結が解除され得るようになっている。つまり、本実施形態においては、注射器18の先端部に、所謂ルアーロック方式の解除可能なロック機構を有するコネクタ58が固設けられているところから、従来から一般的に用いられている、注射針と注射器とを嵌合して、それらの摩擦力だけで接続するルアースリップ方式の接続とは異なり、使用中に、注入用ニードル16が注射器18から外れてしまうようなことが、有利に防止され得るようになっているのである。
【0042】
他方、図1に示される液状生体接着剤20は、患者の体内において、血管をその周辺組織に部分的に癒着せしめて固定するために用いられる、液体状の生体接着剤であり、所定の構造の容器に、血管を部分的に固定するのに充分な量において、収容されている。
【0043】
かかる液状生体接着剤20としては、注入用ニードル16が装着された注射器18にて注入可能な粘度を有する液体状の生体接着剤であって、血管と軟部組織を接着することができるものであれば、従来から公知のものが何れも採用され得るのであり、例えば、エチル−2−シアノアクリレート、オクチル−2−シアノアクリレート等の2−シアノアクリレート又はその誘導体を有効成分とするシアノアクリレート系接着剤である、アロンアルファA(販売元:三共(株))、ダーマボンド(販売元:ジョンソン・エンド・ジョンソン(株))等として市販されているものを、例示することができる。
【0044】
かくして、上述せる如き穿刺針12、外筒体14、注入用ニードル16、注射器18及び液状生体接着剤20からなる血管固定用キット10を用いて、患者の血管を、その周辺組織に固定するには、例えば、以下の如き手法に従って実施されることとなる。
【0045】
先ず、鋭利な先端部を有する穿刺針12に、外筒体14を外挿して、取り付ける。このとき、外筒体14の先端部が、穿刺針12の先端部よりも突出しないように、好適には、穿刺針12の先端部から、外筒体14の先端部までの最短距離:Dが、1mm以上、好ましくは2〜3mmとなるように取り付ける。
【0046】
次いで、外筒体14が取り付けられた状態の穿刺針12を、図10に示されるように、血液透析用の留置針を穿刺する予定の部位(血管62の穿刺口形成予定部位)に目掛けて、皮膚64の上から、所定の傾斜角度で穿刺すると、穿刺針12と共に外筒体14も、皮下に挿入される。このとき、穿刺は、血液透析用の留置針の穿刺方向とは反対側の方向から、つまり、血液透析用の留置針を掌側から肘側に向かって穿刺する場合には、本実施形態の穿刺針12を、肘側から掌側に向かって穿刺するようにすることが望ましい。
【0047】
そして、穿刺針12の先端部が患者の皮膚64、軟部組織65及び血管62の血管壁66を貫通して、血管62内に導入せしめられると、かかる血管62内の血液68が、穿刺針12の本体22内を逆流して、透明なホルダ部23やキャップ24の中空部内に流入せしめられる。これにより、穿刺針12の穿刺を行っている看護婦や医師等は、穿刺針12の先端部が血管62内に導入されたことを即座に確認することができる。また、この際、穿刺針12の先端部は血管62内に挿入されている一方で、穿刺針12に外挿された外筒体14は、その先端部が、皮膚64と血管壁66との間の部位(図中、軟部組織65)、特に、血管壁66の近くに位置することとなる。
【0048】
このようにして、穿刺針12の先端部が血管62内に導入されたことを確認した後、図11に示されるように、外筒体14を皮下に挿入したままの状態で、穿刺針12を軸方向(図11中、矢印の方向)に移動せしめて抜去する。これにより、外筒体14が、長さ方向の一部分において、患者の体内に残留され、かかる外筒体14の筒内が、注入用ニードル16を血管壁66の近傍まで導くための案内通路となるのである。
【0049】
次いで、図12に示されるように、所定量の液状生体接着剤20を収容した注射器18が連結された注入用ニードル16を、穿刺針12のベース部28側から先端部側に向かって(図12中、矢印方向)、注入用ニードル16の段付部46が穿刺針12のベース部28の端部34に当接するまで、外筒体14の筒内に同軸的に差し込む。この操作により、注入用ニードル16の先端部が、外筒体14の筒内を通じて、血管壁66の近傍まで案内される(図13参照)。この際、注入用ニードル16は、先端部が鈍化されているところから、血管壁66に当たっても、血管壁66に刺さるようなことが有利に防止され得ているのである。
【0050】
そして、注入用ニードル16の先端部を、血管壁66の近傍、即ち、血管壁66の付近に位置せしめた状態で、注射器18のピストン54を押圧することによって、図13に示されるように、シリンダ52内に収容された液状生体接着剤20が、血管壁66の近傍に注入されることとなる。
【0051】
このようにして、血管壁66の近傍に注入された液状生体接着剤20は、注入用ニードル16の先端を中心にして組織内に広がると同時に、急速に硬化する。このため、所定量の液状生体接着剤20を注入する途中で、注入当初よりも注射器18のピストン54を押す注入圧が顕著に大きくなるものの、本実施形態においては、注入用ニードル16と注射器18とが、上述せる如き解除可能なロック機構を有するコネクタ58にて連結されているところから、液状生体接着剤20の注入中に、注入用ニードル16と注射器18との連結状態が解消されて、注入用ニードル16が注射器18から外れてしまうようなことが、極めて効果的に防止され得るようになっているのである。
【0052】
なお、この際、血管壁66の近傍に注入される液状生体接着剤20の注入量としては、特に制限されるものではないものの、一般に0.05〜0.30ml程度、好適には、0.1〜0.2ml程度、より好適には、0.1ml程度の量の液状生体接着剤20が注入されることとなる。
【0053】
そして、所定量の液状生体接着剤20を注入した後、注入用ニードル16が連結された注射器18と外筒体14は共に患者の体内から抜去され、抜去後の血管62は、注入された液状生体接着剤20によって、数分で、穿刺針12の穿刺部位において、その周辺組織と強固に癒着され、固定せしめられるのである(図14参照)。
【0054】
また、液状生体接着剤20にて固定された部位70は、液状生体接着剤20の硬化によって、石の如き硬さとなり、皮膚64の上から手指で触れることによって、直ぐにその位置を認識することができるようになっているのである。
【0055】
以上、本実施形態に係る血管固定用キット10を用いて、患者の血管を、その周辺組織に固定する方法の一例を具体的に説明したが、このようにして固定された血管62に対して、ボタンホール穿刺を行うには、先ず、図15,16に示されるように、固定穿刺ルート(ボタンホール)が作製されることとなる。
【0056】
具体的には、図15に示されるように、血液透析用の通常の太い鋭利な留置針72を、上述せる如き穿刺針12の穿刺方向とは反対側の方向(図15中、左側)から、固定部位70を目指して穿刺して、通常の血液透析を一通り行うのである。これにより、患者の皮膚64から血管壁66にかけて、太い留置針72による針穴74が形成されると共に、血管62に、血液透析用の針が繰り返し挿入される穿刺口76が形成される。
【0057】
そして、血液透析の終了後、通常通り、留置針72を抜去して止血する。その後、図16に示されるように、皮膚64表面から、留置針72によって形成された針穴74に沿って、血管壁66まで到達しない長さの画鋲形スティック78を挿入し、これを、留置する。そして、この画鋲形スティック78を、血液透析の度毎に、新しい画鋲形スティック78に取り替えつつ、数日〜数週間、画鋲形スティック78を針穴74に留置することによって、固定穿刺ルート80(図17参照)が形成される。
【0058】
かくして、上述のようにして形成された固定穿刺ルート80を利用して、ボタンホール穿刺を行うには、固定穿刺ルート80の入口に形成された痂皮(図示せず)を剥がした上で、図17(a),(b)に示されるように、先端が鈍い留置用ダルニードル82を、固定穿刺ルート80に沿って優しく挿入すればよいのである。このようにすれば、図17に示されるように、固定穿刺ルート80の血管壁66側の部位において、血管62が周辺組織に固定されているところから、駆血等を行ったとしても、血管62に形成された穿刺口76が固定穿刺ルート80から大幅にズレてしまうようなことがなく、以て、留置用ダルニードル82の先端を、穿刺口76に極めて簡単に導入することができるようになっている。その結果、留置用ダルニードル82を固定穿刺ルート80内でゴソゴソ動かしたり、挿入し直したり等して、穿刺口76を探り当てる必要がなくなって、穿刺による苦痛を患者に与えるようなことが有利に防止され得て、ボタンホール穿刺の成功率を、飛躍的に高めることができるようになる。
【0059】
また、皮膚64の上から触ることによって、液状生体接着剤20にて硬化された固定部位70を、ひいては、かかる固定部位70に近接して形成された穿刺口76の位置を確認することができるところから、万一、留置用ダルニードル82の先端部が、一発で穿刺口76に挿入されなくても、かかる固定部位70を目指して、留置用ダルニードル82の先端部を進めるようにすれば、血管62に形成された穿刺口76に、留置用ダルニードル82の先端部が容易に挿入され得るようになっているのである。要するに、血管62の固定部位70が、穿刺口76の位置を示すマーカーのような役割を奏し、これによっても、ボタンホール穿刺の成功率を顕著に向上することができるのである。
【0060】
従って、本実施形態に従う血管固定用キット10を用いて、患者の血管62、特に、穿刺口76を形成せしめる部位の近傍の血管部位を、周辺組織に部分的に癒着せしめて、固定するようにすれば、穿刺痛を効果的に防止し得ると共に、血管62上に新たな穿刺口を繰り返し形成するようなことも抑制され得る。その結果、穿刺によるシャント血管等の血管62の損傷が防止され、以て、シャント血管を半永久的に使えるようになる。
【0061】
加えて、血管62の全体を周辺組織に固定しているのではなく、部分的に固定しているところから、長い時間をかけて進行する動脈硬化に伴う血管の延長が阻害されるようなことが防止され得ると共に、血管狭窄に対する修復手術を行う際に不都合が生じるようなこともないのである。
【0062】
以上、本発明の具体的な構成について詳述してきたが、これはあくまでも例示に過ぎないのであって、本発明は、上記の記載によって、何等の制約を受けるものではない。
【0063】
例えば、上例では、注入用ニードル16と注射器18との連結構造として、コネクタ58の内壁59に設けられた、螺旋状の二つの突条60a,60bに、注入用ニードル16の二つの突出部50,50を摺接せしめて、ねじ込む構造のものが採用されていたが、注入用ニードル16と注射器18とを、軸方向に互いに離隔不能に係止する解除可能なロック機構を有するものであれば、上例の構造に何等限定されるものではなく、例えば、注入用ニードル16と注射器18の連結部に、雌ネジ部及び雄ネジ部を設けて、それらを螺合せしめるようにした構造を採用することも可能であり、この他にも、従来から公知のロック機構を有する構造が適宜に選択され得る。
【0064】
また、上記実施形態においては、穿刺針12の本体22の一端側に固着されたホルダ部23が、手指で摘みやすい長さを有していたが、ホルダ部23の大きさや形状は、上例のものに何等限定されるものではなく、穿刺針12の本体22を支持して、外筒体14に取り付けることが可能なものであれば、如何なる形状や大きさを有するものであっても良く、例えば、外筒体14や注入用ニードル16のベース部28,40の如き形状や大きさのものであっても良いのである。
【0065】
さらに、穿刺針12には、ホルダ部23の開口端部に、フィルタ25付きキャップ24が液密に装着されていたが、かかるホルダ部23とホルダ部24とは、一体物であっても何等差し支えない。要するに、穿刺針12を血管62に穿刺した際に、血管から穿刺針12の本体22を通って流入する血液68を受けるための血液受容器が、ホルダ部23とは別部材で設けられていても、或いは、ホルダ部24に一体的に設けられていても良いのである。
【0066】
また、上記実施形態においては、注入用ニードル16(本体38)の先端面が、注入用ニードル16の軸方向に対して垂直な方向の切断面にて構成されていたが、注入用ニードル16(本体38)の先端部が、患者の血管壁66に突き刺さらない限りにおいて、垂直面のみならず、図18に示されるように、注入用ニードル16’(本体38’)の先端面を、大なる傾斜角度(図18中、θ)の切断面にて構成することも、勿論可能である。
【0067】
加えて、本発明によれば、血液透析用針が一般に穿刺される、静脈と動脈を吻合したシャント血管のみならず、深部の動脈、或いは静脈を、その周辺組織に固定することも可能であり、ひいては、動脈や静脈に直接ボタンホール穿刺を行うことも期待され得る。
【0068】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。
【実施例】
【0069】
上述せる如き血管固定用キット(穿刺針:26ゲージ、外筒体:24ゲージ、注入用ニードル:27ゲージ、注射器:ルアーロック式注射器、液状生体接着剤:東亞合成株式会社製アロンアルファA、注入量:0.1ml)を用いて、透析患者のシャント血管をその周辺組織に固定してボタンホール穿刺を行った場合と、従来のように、シャント血管を固定しないでボタンホール穿刺を行った場合の成功率を調べ、その結果を、下記表2に併せて示した。なお、ここにおいて、「ボタンホール穿刺の成功」とは、血液透析用のダルニードルの先端を、固定穿刺ルートを通じて、シャント血管に形成された穿刺口に、極めて容易に挿入することができ、患者に対しても穿刺による苦痛を与えなかった穿刺をいうものとする。
【0070】
【表2】

【0071】
かかる表2からも明らかなように、本発明に従う血管固定用キットを用いて、シャント血管をその周辺組織に固定してボタンホール穿刺を行うと、ボタンホール穿刺の成功率が飛躍的に改善され、どの看護師も、95%以上の割合で穿刺を成功することができていることが、分かる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明に従う血管固定用キットの一実施形態を示す概略説明図である。
【図2】図1に示された穿刺針の先端部を示す図であって、(a)は、正面説明図、(b)は、側面説明図である。
【図3】図1に示された穿刺針に、外筒体を取り付けた状態を示す説明図である。
【図4】図3における部分拡大説明図である。
【図5】図1に示された注入用ニードルの先端部を示す図であって、(a)は、正面説明図、(b)は、平面説明図である。
【図6】図1に示された外筒体に、注入用ニードルを取り付けた状態を示す説明図である。
【図7】図1に示された注入用ニードルの平面説明図である。
【図8】図1に示された注射器を構成するシリンダを概略的に説明するための図であって、(a)は、縦断面説明図、(b)は、平面説明図である。
【図9】図1に示された注射器に、注入用ニードルを連結させた状態を示す説明図である。
【図10】本発明に従って、外筒体が取り付けられた穿刺針を、患者の血管に穿刺する工程を示す説明図である。
【図11】本発明に従って、外筒体を患者の皮下に挿入したままの状態で、穿刺針を軸方向に移動せしめて抜去する工程を示す説明図である。
【図12】本発明に従って、外筒体の筒内に、注射器に連結された注入用ニードルを差し込む工程を示す部分断面説明図である。
【図13】本発明に従って、患者の血管の血管壁の近傍に、液状生体接着剤を注入する工程を示す説明図である。
【図14】本発明に従って、周辺組織に癒着、固定された血管を示す説明図である。
【図15】本発明に従って固定された血管に対して、固定穿刺ルート(ボタンホール)を形成する工程の一つを示す説明図であって、通常の留置針をシャント血管に穿刺した状態を示している。
【図16】本発明に従って固定された血管に対して、固定穿刺ルート(ボタンホール)を形成する工程の別の一つを示す説明図であって、通常の留置針にて形成された穿刺孔に、画鋲形スティックを留置した状態を示している。
【図17】本発明に従って固定された血管に対して形成された固定穿刺ルート(ボタンホール)に対して、先端が鈍いダルニードルを挿入する工程を示す説明図であって、(a)は、ダルニードル挿入前の状態を、(b)は、ダルニードルを挿入した状態を示している。
【図18】図1に示された注入用ニードルとは異なる実施形態における注入用ニードルの先端部を示す側面説明図である。
【符号の説明】
【0073】
10 血管固定用キット 12 穿刺針
14 外筒体 16 注入用ニードル
18 注射器 20 液状生体接着剤
22 穿刺針本体 23 ホルダ部
24 キャップ 26 チューブ部体
28,40 ベース部 30 支持部
32,44 突部 34 端部
36,46 段付部 38 注入用ニードル本体
42 ニードル支持部 48 段部
50 突出部 52 シリンダ
53 シール部 54 ピストン
56 先端小径部 58 コネクタ
60a,60b 突条 62 シャント血管
64 皮膚 66 血管壁
68 血液 70 固定部位
72 留置針 74 針穴
76 穿刺口 78 画鋲形スティック
80 固定穿刺ルート 82 留置用ダルニードル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の血管に穿刺するための尖鋭な穿刺針と、
先端部が該穿刺針よりも突出しないように、該穿刺針に外挿される所定長さの外筒体であって、該穿刺針に外挿された状態において、該穿刺針を前記患者の血管に穿刺することにより、該先端部が該患者の皮膚と血管壁との間の部位に位置するように挿入され、更にその状態において、該穿刺針を該患者から抜去することにより、長さ方向の一部分を該患者の体内に残留させて、筒内がニードルを該血管壁近傍まで導くための案内通路とされる外筒体と、
該外筒体の筒内に挿入されて、前記患者の血管壁近傍まで案内される、血管を穿刺しないように先端が鈍化された注入用ニードルと、
該注入用ニードルに連結される注射器と、
該注射器にて、前記患者の血管壁の近傍に注入され、該血管を前記穿刺針の穿刺部位においてその周辺組織に癒着せしめて固定するための液状生体接着剤とを、
含むことを特徴とする血管固定用キット。
【請求項2】
前記注入用ニードルと前記注射器とを連結する連結部に、それらを軸方向に互いに離隔不能に係止する解除可能なロック機構が設けられている請求項1に記載の血管固定用キット。
【請求項3】
前記穿刺針の太さが、23ゲージ以上、27ゲージ以下である請求項1又は請求項2に記載の血管固定用キット。
【請求項4】
前記注入用ニードルが、23ゲージ以上、27ゲージ以下の太さを有し、且つ前記穿刺針と同じ太さ、或いはそれよりも細い太さとされている請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の血管固定用キット。
【請求項5】
前記注入用ニードルの先端面が、軸方向に対して垂直な方向の切断面にて構成されている請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の血管固定用キット。
【請求項6】
前記穿刺針の先端部が、軸方向に対して傾斜した切断面にて尖鋭に構成されている請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の血管固定用キット。
【請求項7】
前記穿刺針の先端部から前記外筒体の先端部までの最短距離が1mm以上とされている請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の血管固定用キット。
【請求項8】
前記外筒体が、所定長さのチューブ部と該チューブ部の一端に固定的に連結された筒状ベース部とを有し、該筒状ベース部が、前記穿刺針を支持するホルダ部に外挿されて、該穿刺針が前記チューブ部に挿通せしめられるように構成されている請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の血管固定用キット。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2009−45124(P2009−45124A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−211669(P2007−211669)
【出願日】平成19年8月15日(2007.8.15)
【出願人】(500277803)有限会社ネクスティア (17)
【Fターム(参考)】