衛星を利用した測位に関する方法および装置
本発明は、移動局が衛星(SV1乃至SV4)から受信した測距信号(RS1乃至RS4)についての測定結果を報告するための、または、前記測定結果に基づいて位置を計算するための、諸方法および諸装置並びに測定報告信号に関するものであって、前記測距信号の各々が、拡散符号(203)によって拡散されたデータビット(202)のストリーム(201)を備えている。測距信号についてのデータビットのストリームの中のデータビットエッジに同期した(501)後、選択した時刻点に関して、前記データビットのストリームについてのデータビット長を法として、時刻位置が測定される(502)。測定された時刻位置は、受信した測距信号についての測定を行う装置によって、移動局の位置を計算する(504)のに利用されることができよう。あるいは、その装置は、移動局の位置が別の装置(101)の中で判断できるように、前記測定された時刻位置を表すデータを有する無線信号を送信(503)してもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に移動装置の衛星を利用した測位に関するものであり、詳細には、地上にある通信ノードによって支援された測位に関するものである。
【背景技術】
【0002】
物体、装置、あるいは装置を携行する人物の地理的位置の決定は、近年、多くの応用分野において益々関心を集めるようになってきている。測位を解決する一つの方法は、衛星から放出される信号を使って位置を判断することである。そのようなシステムの例として良く知られているのは、全地球測位システム(GPS)(例えば[1]を参照)や来るべきガリレオシステムである。衛星から受信した複数の信号に基づく三角測量/三辺測量として、特定の座標系に関して位置が与えられる。
【0003】
単体のGPSレシーバは、公称(nominal)搬送周波数と、信号によって搬送されるデータが変調される規則とを除けば、システムについてのそれ以外の情報を持たなくても、GPS衛星信号への完全な同期を得ることができる。基本的に、位置計算のステップにおいては、3次元位置、および受信機(レシーバ)のクロックの衛星時刻に対するバイアスを判定する必要がある。
【0004】
アシステッドGPS(AGPS)は、GPSレシーバをユーザ装置、すなわちセルラー通信システムの移動局、と統合するため、GPSを改良したものとして定義されてきた(例えば、第3世代パートナーシップ・プロジェクト(3GPP)の仕様TS 25.331またはTS 44.031、あるいは、セキュア・ユーザ・プレーン・ロケーション(SUPL)用のオープン・モバイル・アライアンス(OMA)の仕様を参照)。概してアシステッドGPSは、検出感度、位置推定値の取得に要する時間、精度、バッテリの節電など、さまざまな点でGPSレシーバの性能を高めることを目的としている。これは、移動局の中のGPSレシーバから一部の機能をネットワークに移し、GPSレシーバ自身の中のGPSタスクのサブセットだけを実行することによって、行われる。
【0005】
AGPSには、移動局(すなわち、ユーザ装置)ベーストAGPSと移動局(すなわち、ユーザ装置)アシステッドAGPSの2種類がある。移動局ベーストAGPSでは、移動局の位置は、移動局が判断する測距信号の測定結果およびネットワークが提供する支援データを用いて、移動局の中で計算される。移動局アシステッドAGPS(ネットワークベーストAGPSと言及されることもある)では、移動局は、宇宙船(すなわち衛星)への疑似距離を反映する受信した測距信号のタイミングを測定して報告するだけである。AGPSの両タイプとも、測距信号の測定のタイミングは1ミリ秒を法として切り捨てられ、これは300kmの距離に相当する。移動局自身においてまたはネットワークの位置サーバにおいて移動局位置を計算するとき、正確な移動局位置を計算するためには、移動局位置についての事前情報および移動局によって判断された測距信号の測定結果を用いて、完全な擬似距離を再構成する必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の発明者らは、受信した測距信号の端数の(truncated)タイミングを測定して報告するステップは、移動局位置についての事前情報の精度が低すぎる場合には、すなわち、前記事前情報において移動局位置の不確実性が高すぎる場合には、GPS衛星への疑似距離を判断する際に不確実性を招きうるという点で、AGPSの問題を認識した。結果として、もし不正確な擬似距離が選択され、移動局位置を判断する根拠として利用されるならば、計算による移動局位置に、例えば100kmのオーダで、重大なエラーが起きる可能性がある。
【0007】
本発明の発明者らのうちの1人による米国特許出願第60/545175号では、この問題に取り組む一方法として、可能性が低い疑似距離値を廃棄するステップに関して記述が行われている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によって扱われる問題は、支援データを使う衛星を利用した測位という文脈において、不確実な疑似距離の再構成に対して、ロバスト性を高めることである。
【0009】
この問題は、請求項1および3の方法、請求項11、13、および27の装置、そして、請求項21の測定報告信号によって解決される。
【0010】
本発明によって提供される利点は、アシステッドGPS(AGPS)のような支援データを使う衛星を利用した測位に関連した、不確実な疑似距離の再構成に対するロバスト性の向上である。
【0011】
本発明の別の利点は、ロバスト性の向上が、検出感度を低下させずに達成されることである。
【0012】
本発明の更に別の利点は、ロバスト性の向上が、処理の遅延をそれほど増加させることなく達成されることである。
【0013】
これから本発明について、発明の典型的な実施形態および添付の図面を参照しながら、より詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、本発明が適用されてもよい、限定的でないシナリオの一例を図解する図である。このシナリオ例では、移動局アシステッドAGPSを提供するため、基本的な無線通信システムSYS1が全地球測位システム(GPS)と合わせて使用されている。図1に図解された典型的な無線通信システムSYS1は、汎用移動通信システム(UMTS)である。通信システムSYS1は、ネットワーク部分NET1と、移動局(MS)とも呼ばれるユーザ装置(UE)とを有する。ネットワーク部分NET1は、コアネットワークCN1とUMTS地上無線アクセスネットワーク(UTRAN)RAN1とを備えている。コアネットワークCN1は、回路交換方式のサービスを提供する移動通信交換局(MSC)ノードMSC1と、ときどき在圏GPRSサポートノード(SGSN)とも呼ばれ、パケット交換方式のサービスを提供するように適合されている汎用パケット無線サービス(GPRS)ノードSGSN1とを有している。
【0015】
コアネットワークノードであるMSC1とSGSN1とはそれぞれ、Iuインタフェースと呼ばれる無線アクセスネットワーク・インタフェース上で、無線アクセスネットワークRAN1に接続している。無線アクセスネットワークRAN1は、1つ以上の無線ネットワーク制御装置(RNC)を有している。簡潔にするため、図1の無線アクセスネットワークRAN1では、無線ネットワーク制御装置ノードRNC1を1つだけ示している。各無線ネットワーク制御装置は、複数の無線基地局(RBS)に接続していて、それらを制御している。例えば、やはり簡潔にするため、図1では、無線ネットワーク制御装置ノードRNC1に接続されている第1の無線基地局ノードRBS1および第2の無線基地局ノードRBS2だけを図解している。無線ネットワーク制御装置RNC1と基地局RBS1およびRBS2との間のインタフェースは、Iubインタフェースと呼ばれる。移動局、例えば図1に示す移動局MS1は、Uuインタフェースと呼ばれる無線インタフェースまたはエアインタフェース上で1つ以上の無線基地局RBS1乃至RBS2と通信する。
【0016】
無線インタフェースUu、Iuインタフェース、およびIubインタフェースはそれぞれ、図1に点線で示す。
【0017】
図1において、GPSシステムは、宇宙船、すなわち衛星SV1乃至SV4によって表されている。各GPS衛星SV1乃至SV4は、対応する測距信号RS1乃至RS4を送信する。留意していただきたいが、簡潔にするために、図1では4つのGPS衛星SV1乃至SV4だけを図解している。
【0018】
図1において移動局アシステッドAGPSを用いて移動局MS1の位置を判断するとき、移動局MS1は支援データを位置サーバ101から受信して、測定結果を位置サーバ101に報告する。報告された測定結果と、移動局がどこに位置しているかについての事前情報とに基づいて、位置サーバは移動局MS1の位置を計算する。位置サーバがセルラーネットワークにどのように接続しているかによって、AGPSを「AGPSに対する制御プレーン・ソリューション」と「AGPSに対するユーザ・プレーン・ソリューション」との2つのカテゴリに分けることができる。
【0019】
「AGPSに対する制御プレーン・ソリューション」において、位置サーバの機能(サービス提供移動位置センタ(SMLC)またはスタンドアロンSMLC(SAS)と呼ばれることもある別個の位置サーバノードの中に実装されてもよいし、あるいは、無線ネットワーク制御装置のような他のネットワークノードの中に他の機能と一緒に統合されてもよい)は、セルラーネットワークに強固に統合されており、支援データおよび測定結果はいわゆる制御プレーン・シグナリングを用いて通信される。このソリューションのさらなる特徴は、一般に、その時点でどのセルの中で移動局が動作中であるかという情報を位置サーバが受信して、移動局の位置を計算するときにその情報を位置サーバが移動局に関する事前(apriori)位置情報として適用するであろうということである。従って、事前位置情報の不確実性はセルの大きさに対応する。
【0020】
「AGPSに対するユーザ・プレーン・ソリューション」において、位置サーバの機能とセルラーネットワークとの統合度はそれほど密接ではなく、支援データおよび測定結果はいわゆるユーザ・プレーン・シグナリングを用いて通信される(すなわち、通常のユーザデータパケットが、この情報をセルラーネットワークに透過的に伝達するのに使用される)。このソリューションのさらなる特徴は、移動局がどのセルの中に位置するかという情報を位置サーバが受信しない、あるいは、少なくとも、所与のセルの識別情報をそのセルがカバーしているエリアに対応する特定の地理的エリアに常に関連付けることができるわけではないことである。従って、AGPSに対するユーザ・プレーン・ソリューションについては、移動局の事前位置情報の不確実性は、セルの大きさより相当大きいことがあり、例えば、移動局がそのとき動作している国の大きさに対応することもある。
【0021】
図1のシナリオ例では、インターネットプロトコル(IP)をベースにしたパケット・データ・ネットワーク102を介して位置サーバ101がセルラーネットワークNET1に接続されている場合の、AGPSに対するユーザ・プレーン・ソリューションが図解されている。
【0022】
GPS衛星であるSV1乃至SV4は、1575.42MHzを中心にした帯域を使って測距信号RS1乃至RS4を送信する。図2は、各測距信号RS1乃至RS4が、信号を送信しているGPS衛星にとって一意である、いわゆるCoarse/Acquisition(C/A)コード203によって定義された拡散符号によって拡散された航法データビット202のストリーム201を、どのように有しているかを図解している。C/Aコード203は、1023チップの長さと1/1.023×106秒のチップ持続時間を有しており、すなわち、C/Aコードは、1.023×106Hzの速さで変化して1ミリ秒毎に繰り返す+/−1のシーケンスを含む。航法ビット202は、20ミリ秒のビット周期、すなわち、20回のC/Aコードの反復に相当するビット周期を有している。
【0023】
航法データは特に、信号送信時の衛星の正確な位置を受信機が計算できるようにする、一連のいわゆるエフェメリスパラメータを有する。航法データからは、正確な送信時刻も読み取ることができる。
【0024】
図3は、航法データが、各々の長さが6秒である5個のサブフレーム301乃至305に更に分割される様子をより詳細に図解している。各サブフレーム301乃至305は10ワードに分割され、各ワードの長さは0.6秒であって30データビットを有している。タイムスタンプ、すなわちGPS TOW(Time Of Week:1週間のうちの時刻)が、すべてのサブフレーム301乃至305の2番目のワードであるHandover Word(HOW)の中で送信される。表示される時刻は、当該サブフレームの最後での送信時刻である。従って、TOWは6秒毎に繰り返される。
【0025】
各測距信号RS1乃至RS4は基本的に、移動局MS1が測定したクロックを定義する。クロックは信号送信の時刻を表示する。もし移動局MS1がGPSシステム時刻を知っているならば、クロックの表示は、時間的遅延を判断するのに直接使用でき、従って、測距信号を送信中のGPS衛星から移動局MS1までの距離を決めるのに直接使用できる。3つの距離を測定し、送信時のGPS衛星の位置についての知識を活用することによって、3次元での移動局MS1の位置が判断できる。しかしながら、通常は、移動局MS1は正確なGPSシステム時刻についての知識を有していないため、移動局のクロックバのイアスを除去するためもう1つの測定が必要である。
【0026】
図4のシーケンスは、図1に図解したシステムのさまざまな部分について、クロックの関係を(ミリ秒で表して)図解している。各GPS衛星SV1乃至SV4は正確な原子時計を持っていてクロックの安定性を維持している。しかし、GPS衛星の送信は図4に図解するように、完全にGPSシステム時刻に同期しているわけではない。図4において、シーケンス401はGPSシステム時刻を表し、シーケンス411はGPS衛星1のクロックを表し、シーケンス41NはGPS衛星Nのクロックを表し、シーケンス402は図1の移動局MS1のクロックを表し、他方、シーケンス421と42Nとはそれぞれ、移動局MS1が受信したGPS衛星1およびGPS衛星Nの各々からの測距信号の中で読まれたとおりの時刻を表す。タイミング図を通る垂直線431を引くことによって、宇宙のさまざまなポイントで観察されたすべてのクロックの表示に関するスナップショットが得られる。GPSシステム時刻401は、地上局のクロックの集合とGPS衛星のクロックの部分集合に基づくアンサンブル平均として定義される。図4に示すとおり、個々のGPS衛星のクロック411および41Nと移動局のクロック402とは、GPSシステム時刻401に比べてわずかにずれている(SVクロックバイアス412および413と移動局クロックバイアス414をそれぞれ参照のこと)。GPS衛星のクロックの個々のずれ(オフセット)に関するモデルは、各GPS衛星から航法メッセージの一部として送信される。信号が地表面上の点(例えば移動端末MS1の現在位置)に到達するとき、信号は遅延されており、遅延の量は、該当するGPS衛星から前記地表面上の点までの距離に依存する。遅延は、図4のクロックの表示によって示されているように、通常は60乃至85ミリ秒(ms)である。
【0027】
AGPSを用いて移動局の位置を判断するとき、移動局は、受信した測距信号について、選択された時刻点(時間軸における点、point in time)に関するC/Aコードの境界位置の時刻位置(時間軸における位置、position in time)、すなわち、C/Aコード位相を測定する。C/Aコード位相は1ミリ秒(すなわち、1C/Aコード周期)を法として判断される。
【0028】
移動局ベーストAGPSを実装する移動局は、選択された時刻点における自分の位置を、受信した測距信号に関して測定されたC/Aコード位相と、(ネットワークから受信した)GPS衛星のエフェメリスとクロックの補正データと共に移動局位置についての事前情報を含む支援データとに基づいて計算する。
【0029】
図1の移動局MS1のような、移動局アシステッドGPSを実装する移動局は、その代わりに、選択された時刻点に対応するGPSシステム時刻の推定値と共に、受信した測距信号についての(選択された時刻点から次のC/Aコード反復の開始までのC/Aコードの(1以上の)完全なチップおよび断片のチップ(whole and fractional chips)に関して表現された)C/Aコード位相を報告する無線信号を送信する。移動局が報告した情報と移動局の位置についての事前情報とに基づいて、セルラーネットワーク内、あるいは別のネットワーク内の位置サーバ、例えば図1の位置サーバ101が、移動局の位置を計算する。
【0030】
本発明の発明者らは、1ミリ秒を法としてC/Aコード位相を測定し、それによって1ミリ秒を法とする時刻によって各測距信号を特徴付けるAGPSの方法は、移動局の位置の事前情報の不確実性が大きすぎる場合には問題を引き起こすということを認識した。付録1で論証するとおり、事前位置情報の不確実性が75kmを超える場合、GPS衛星までのいわゆる疑似距離は、不確実性無しに再構成されることができない。
【0031】
測距信号のタイミングの測定結果の切り捨てと、事前位置情報の不確実性が大きすぎることとが組み合わさって発生する、不確実な疑似距離再構成という問題は、切り捨てを一切せずに各測距信号について、移動局に測距信号を測定させることによって対応できよう。しかしながら、そのためには測定された測距信号それぞれについてのTime Of Week情報を復号するステップが必要だが、Time Of Week情報を復号する方がC/Aコードの境界を検出するよりはるかに難しいことから、それによって処理の遅延が大幅に増加し、移動局の中に一体化されたGPS受信機の検出感度が低下する恐れもある。
【0032】
本発明は、(移動局ベーストAGPSと移動局アシステッドAGPSの両方の)AGPSの文脈において、移動局の事前位置情報の不確実性によって不確実な疑似距離再構成がもたらされるというリスクを大幅に減少させる諸方法を提供することによって、上記の複雑な問題に対応する。同時に本発明は、測定された測距信号それぞれに関するTime Of Weekを復号するステップの必要性とそれに関連する短所とを回避する。
【0033】
図5は、移動局が衛星(すなわち宇宙船)から受信した測距信号に関する測定結果を報告するステップと、そのような(複数の)測定結果それぞれに基づいて移動局の位置を計算するステップとのための、本発明の基本的な方法を図解しており、本方法は、前記測距信号の各々が、拡散符号(例えばGPS Coarse Acquisition code)によって拡散されたデータビット(例えば、GPS航法データビット)のストリームを備えている。どちらの方法も、受信した測距信号のうち少なくとも1つについてステップ501および502を実行するステップを有しているが、基本的な方法のうちの最後のステップは異なる。
【0034】
ステップ501において、データビットのストリームの中のデータビットエッジに同期することが行われる。これは通常、データビット長を法として(すなわち、AGPSに対して20ミリ秒を法として)データビットエッジの位置を判断すること/識別することを含む。
【0035】
ステップ502において、選択された時刻点に関して、データビットのストリームについてデータビット長を法として時刻位置が測定される。
【0036】
ステップ501および502の後、測定結果を報告するための基本的方法は、ステップ502で測定された前記時刻位置を表すデータを有する信号を無線で送信する、さらなるステップ503を有する。
【0037】
ステップ501および502の後、移動局の位置を計算するための基本的方法は、前記選択された時刻点に関して前記データビットのストリームについての前記測定された時刻位置と、無線通信ネットワークの少なくとも1つの基地局を介して移動局が受信した支援データとを利用して前記移動局位置を計算する、さらなるステップ504を有する。受信した支援データは、エフェメリスパラメータと、受信した測距信号を送信する衛星のクロック補正値とを含み、これらより、測距信号送信時における衛星の位置を計算できるようになる。受信した支援データは、更に、移動局位置の事前推定値を有するであろう。
【0038】
通常、前記の同期するステップ501と測定するステップ502とは、複数の受信した測距信号について行われるが、できれば検出された測距信号すべてについて行われることが望ましい。その後、ステップ503で送信された信号は、前記複数の受信した測距信号の各々について、前記選択された時刻点に関して測定された時刻位置を表すデータを有するであろうし、他方、ステップ504で行われる計算は、前記複数の受信した測距信号の各々について、前記選択された時刻点に関して測定された時刻位置を利用するであろう。
【0039】
ステップ501、502、および503を有する、測定結果を報告するための基本的な方法の実施形態は、例えば、移動局が報告した測定結果に基づいてネットワーク側のどこかにあるノードで実際の位置計算が行われるような移動局アシステッドAGPSをサポートするための処理工程を、移動局の中に実装するのに使用できよう。
【0040】
ステップ501、502、および504を有する、移動局の位置を計算するための基本的な方法の実施形態は、例えば、移動局ベーストAGPSをサポートするための処理工程を移動局の中に実装するのに使用できよう。
【0041】
(移動局アシステッドAGPSであるか移動局ベーストAGPSであるかを問わず)AGPSの文脈の中で図5の諸方法を適用することによって、移動局は、受信した測距信号のタイミングを(先行技術のAGPSでは1ミリ秒を法とするのに対して)20ミリ秒を法として測定することになる。もし移動局の位置に関する事前情報の不確実性が(先行技術の1ミリ秒での切り捨てを適用する場合の75km未満に対して)1500km未満ならば、20ミリ秒の切り捨てによって、完全な疑似距離を不確実性無しに再構成することが可能になる。
【0042】
図1の移動局MS1に実装された、測距信号の測定結果を報告するための方法および装置の第1の典型的実施形態、および、本発明による位置計算のための装置の第1の典型的実施形態を、図6乃至9に図解する。本発明による測定報告信号の第1の典型的実施形態を図10に図解する。
【0043】
図6は、本発明のこの典型的実施形態による移動局MS1の構造を図解するブロック図である。移動局MS1は、セルラー通信モジュール601、測位モジュール602、GPS RFフロントエンド603、セルラーネットワークとの通信用のアンテナ604、そしてGPSアンテナ605を有している。測位モジュール602は、CPU612、メモリ610、そしてデジタル信号プロセッサ(DSP)611を有している。セルラー通信モジュール601は、無線でセルラーネットワークから支援データを受信し、セルラーネットワーク内の基地局を介して無線で測定結果をセルラーネットワークに送信する。支援データは、可視衛星用のエフェメリスとクロック補正情報、移動局MS1のおおよその位置、およびおおよそのGPSシステム時刻で構成されることができよう。あるいは、支援データは、相関処理を支援するためだけの明示的な支援データを有することができよう。通信モジュール601は、受信した支援データを、インタフェース606を用いて測位モジュール602に送信し、他方、測定結果は、測位モジュール602からインタフェース613を用いて通信モジュール601に提供される。通信モジュール601はまた、GPS RFフロントエンド603と測位モジュール602に、クロック基準607を提供する。GPS RFフロントエンドモジュール603は、インタフェース608を用いて測位モジュール602によって制御される。
【0044】
図7は、測位要求を受信した時に移動局MS1が行う処理工程を図解する。
【0045】
測位モジュール602は、通信モジュール601から測位要求を受信すると、ステップ701で、GPS信号のサンプルを提供するようGPS RFフロントエンド603に要求する。GPS RFフロントエンド603は、アンテナ605を通じてGPS周波数帯を受信し、信号をベースバンドにダウンコンバートし、信号を同相(I)成分と直交(Q)成分に分離し、信号をサンプリングしてデジタル形式に変換し、そしてインタフェース609を通じてこれらを測位モジュール602に出力する。測位モジュール602は受信したIデータとQデータとをメモリ610に保存する。
【0046】
ステップ702乃至703は、ステップ707で送信される測定報告の中に含まれる個々の測距信号RS1乃至RS4それぞれについて行われる処理工程を定義する。ここで留意していただきたいが、図7は個々の測距信号それぞれの処理(ステップ704を参照)を順次的に図解しているけれども、異なる測距信号に関する処理はできれば並行して行われる方が望ましい。
【0047】
任意のGPS衛星SV1乃至SV4から移動局MS1が受信した、時刻tの関数としての測距信号yは、次式のように簡易な方法で表すことができる。
【0048】
y(t)=a・c(t-τ)・d(t-τ)・exp{i・(ω0t+ωdt+Φ)}+e(t) (20)
ここで、aは受信信号の振幅、c(t)はGPS衛星のC/Aコード、そして、d(t)は航法データビットストリームである(図2を参照)。項τはGPS衛星から移動局MS1の位置までの距離の関数である、信号の未知の遅延、ω0はGPS搬送周波数、ωdは信号のドップラー周波数、Φは未知の位相、そして、e(t)はノイズである。
【0049】
ステップ702において、測距信号のC/Aコードの境界は、測距信号についての可能性のあるコード位相とドップラー偏移とをすべてテストする相関を用いて、測位モジュール602内のデジタル信号プロセッサ611によって判断される。
【0050】
いったんステップ702で測距信号のC/Aコードの境界が判断されると、この測距信号の航法データビットストリームのビットエッジに同期するため、前記測距信号の処理がステップ703でデジタル信号プロセッサ611によって継続される。ビットエッジ同期は、実質上、d(t)シーケンスのデータビット遷移を判断することに等しい。ビットエッジ同期を行うステップについてのいくつかの既知の方法が、文献の中に記載されている(例えば[2]の第8章を参照のこと)。いかにしてビットエッジ同期を行いうるかという一例をあげるとすれば、生の「疑似ビット」を1ミリ秒の(すなわち、各C/Aコードの反復に相当する)ビットレートにしたままで、受信データをまず逆拡散することであろう。ここで留意すべきだが、航法データビットあたり疑似ビットが20個存在する。数式(20)に関して(そして雑音成分を無視すれば)これは次式で表される。
【0051】
s(kT)=a・d(kT-τ)・exp(iΦ);T=0.001s, k=1,2,...,N (21)
その後、図8に図解するとおり、20個の連続した疑似ビットを加算するような加算器の第1の集合801に疑似ビットが送り込まれる。この後、その合計が2乗され、加算器の第2の集合802において新たな加算が始まる。この手順がM回繰り返される。Mは、現在の信号対雑音比に適応されてもよいし、固定値、例えばM=50として選択されてもよい。これがすべて、疑似ビットシーケンスの20通りの異なる遅延について行われる。出力ビン(bin)、すなわち、累計を最大化する、加算器の第2の集合802の中の加算器が、当該GPS衛星についてのデータビットエッジを判断する。これは0と19の間の数として表現することができ、それが最新の航法データビットの境界以後のC/Aコード周期の整数をカウントすることから、本明細書ではこれ以降、整数コード位相(「icp」)と呼ぶ。
【0052】
ある測距信号についていったんステップ702および703が最初に完了したら、DSP611は、前記測距信号のC/Aコード境界/ビットエッジタイミングの変化を追跡することによって、前記測距信号との同期を維持する。
【0053】
もし、もっと多くの測距信号を取得する必要があるのなら(ステップ704の、「YES」の選択肢」)、ステップ702と703とが次の測距信号に対しても繰り返される(すでに述べたように、ステップ702−703の処理は、できれば複数の測距信号について図7に示すように順次的ではなく、並行して行われることが望ましい)。もっと多くの測距信号が取得されるべきか否かについてのステップ704における決定は、それまでに取得した測距信号の数(少なくとも3個、できれば4個の測距信号が取得されるべきだが、もっと多くの測距信号を取得すれば、計算された位置の精度が向上する)とタイミングの要件(測定報告信号を提供するための応答時間は、例えば測位要求を受信して16秒以内というようにパラメータによって設定可能である)とに基づくことができよう。
【0054】
もし測距信号が十分に取得されたならば(ステップ704の「NO」の選択枝)、選択された時刻点のGPS Time Of Week(TOW)がステップ705において推定される。ここで留意していただきたいが、できれば、ステップ702乃至703が第1の測距信号について完了すると同時に、追加の測距信号を取得するステップと並行して前記測距信号に基づいてステップ705が行われることが望ましい。
【0055】
ステップ705を行ってもよい方法には、複数の選択肢がある。TOWの推定は通常、1つの測距信号(図3を参照)、できれば最初に取得された測距信号のいわゆるハンドオーバ・ワード(HOW)の中で送信されるTOWを判断するステップと、その後、GPS衛星による信号送信から移動局MS1による信号受信までの伝搬遅延を補償するステップとに基づいて行われる。
【0056】
送信されたTOWを判断するステップは、送信されたTOWを直接復号化するステップによって行われうる。この選択肢は、データが20ミリ秒の速さで復調されることを意味し、ハンドオーバ・ワードの復号化に続いてサブフレーム境界が決定されることを通常は必要としており、ハンドオーバ・ワードからはTOW、すなわち送信時刻ttiが導出できる。各サブフレームは、6秒の長さを有しており、従って、この手順では、約8秒の航法データを収集する必要があろう。0dBアンテナを使うと想定すれば、TOWの復調はおよそ−172dBWまで低下するまで機能するため、これは事実上、検出感度の限定因子である。
【0057】
あるいは、送信されたTOWは、相関技法を用いた再構成によって判断されうる。この手順でも、復調されたデータビットが生成されることが必要だが、直接復号化の代わりに、相関検出が、既知の送信された航法データビット(例えば、支援データの一部として移動局に対して送信されてもよいいわゆるテレメトリ・ワードとHOWワードとの内容)を使って行われる。これには、GPS時刻が数秒以内に事前に知られることが必要である。この手順では、直接TOW復号化より幾分低い信号レベルであっても機能するが、その性能は、そのような低い信号レベルではロックを失ってしまうことのある追跡(tracking)ループによって制限される可能性が高い。通常は位相ロックループか自動周波数制御ループがこのために採用される。しかし、これは、例えば−179dBW程度低下しても機能することが期待されている。
【0058】
77ミリ秒という予想される平均伝搬遅延を適用することによって、伝搬遅延の補償を実行できよう。あるいは、2004年9月29日に発明者Ari KangasおよびJanos Toth−Egetoによって出願された同時係属の米国特許出願の中に詳しく述べられた原理に従って移動局MS1がセルラーネットワークから受信した支援データから、もっと精確な伝搬遅延の補償を導出することもできる。
【0059】
ステップ706において、取得された各測距信号の中で、選択された時刻点に隣接する航法データビットエッジについて、選択された時刻点に関する時刻位置が測定される。より詳細には、取得された測距信号の各々について、選択された時刻点から次のC/Aコード境界までの完全なチップの数および断片のチップと、加えて、選択された時刻点と最も近い先行する航法データビットエッジとの間のC/Aコード周期の整数とを登録することによって、選択された時刻点に先行する最も近いビットエッジの位置がステップ706で測定される。C/Aコード位相シフト(完全なチップおよび断片のチップ)と整数のC/Aコード位相(C/Aコードの繰り返しの回数)とを測定することによって、各測距信号の位相が航法データビット長(すなわち20ミリ秒)を法としてこのように判断される。
【0060】
最後に、ステップ707において、測定報告信号が移動局MS1によって無線でセルラーネットワークNET1に送信される。
【0061】
図10は、本発明のこの典型的実施形態において用いられる測定報告信号1001の典型的なフォーマットを概略的に図解する。ここで留意いただきたいが、図10は本発明に関連のあるデータに着目した単純化した図を提供しており、測定報告信号は図10に図解されていない(例えば、3GPP TS 44.031のMEASURE POSITION RESPONSEメッセージや3GPP TS 25.331のMEASUREMENT REPORTメッセージについて記載されているような)追加データを有するであろう。
【0062】
測定報告信号1001は、測定された各測距信号について下記のデータを有している。
【0063】
測定データが有効である特定の衛星を識別する、衛星ID1002。
【0064】
選択された時刻点から次のC/Aコード境界までの完全なチップ1003および断片のチップ1004の数。
【0065】
選択された時刻点と先行する最も近い航法データビットエッジとの間のC/Aコード周期の整数1005。
【0066】
測定報告信号はまた、選択された時刻点におけるTOWの推定値1006も有している。
【0067】
測定報告信号は、本発明の第1の典型的実施形態において、ユーザプレーンにおける通常のユーザデータとして、位置サーバ101に対してアドレス指定されて送信される。従って、測定報告信号は、セルラーネットワークNET1を通り、IPベースネットワーク102を経由して位置サーバ101まで透過的にルーティングされる。
【0068】
図9は、位置サーバ101の構造を概略的に図解する。位置サーバは、通信モジュール901と測位モジュール903とを有している。通信モジュール901は、測定報告を受信して、測定データを測位モジュール903に転送する。測位モジュール903は、提供された測定データ(報告された測距信号の各々についての測定されたタイミング情報を含む)と移動局の位置についての事前情報とを用いて、移動局MS1の位置を計算する。事前情報は、例えば公衆陸上移動通信網(PLMN) IDから導出されうるが、そのPLMN IDは、移動局MS1からの信号に含まれていて、移動局MS1がその中で動作中であるネットワークを表示している。PLMN IDは、例えば、移動局がその時点でその中で動作中であるセルのセルIDの一部として含まれることができよう。提供されたPLMN IDを用いて、測位モジュール903は、例えば移動局MS1がその中で動作中である国の中心の座標と、前記中心から前記国の境界線までの最大距離に対応する半径とをテーブルから検索することによって、事前位置情報を導出できよう。大きい国の場合は特に、移動局がその中で動作中である国の中の特定の地域を識別するため、セルIDの階層的性質も活用できよう。さまざまな国、または前記国の中の地域について中心/半径情報のテーブルを維持することは、各セルの地理的座標についての情報を備えたグローバルなデータベースを維持しようとすることに較べて、著しく負担が軽い。
【0069】
本発明の典型的な第1の実施形態において、移動局MS1の測位モジュール602は、受信した測距信号についてのデータビットのストリームの中のデータビットエッジに同期するための同期手段、および、選択された時刻点に関して受信した測距信号についてのデータビットのストリームの位置を測定するための測定手段の両方として機能し、他方、セルラー通信モジュール601は、前記測定された時刻位置を表すデータを含んだ信号を無線で送信するための送信手段として機能する。位置サーバ101において、通信モジュール901は、前記測定された時刻位置を含む測定報告信号を受信するための手段として機能し、他方、測位モジュール903は、受信した測定結果に基づいて移動局の位置を計算するための手段として機能する。
【0070】
上で開示した本発明の典型的な第1の実施形態とは別に、第1の実施形態の再構成、修正、および代替を提供する方法がいくつかあり、それらは本発明のさらなる実施形態をもたらす。
【0071】
図7のステップ707を、移動局MS1の測位モジュール602の中で移動局MS1の位置を計算するステップによって実質的に置き換えることによって、移動局ベーストAGPSの文脈で使用する典型的な実施形態が、図解された本発明の第1の実施形態から導出できよう。こうして、第1の典型的実施形態において位置サーバ101の測位モジュール903によって行われた計算は、代わりに、移動局MS1の測位モジュール602によって行われるであろう。移動局の位置の事前推定値と共に衛星のエフェメリスデータおよびクロック補正データが、位置計算に使用する支援データとしてネットワークによって提供されるであろう。
【0072】
本発明はもちろん、AGPSに対する制御プレーン・ソリューションとAGPSに対するユーザ・プレーン・ソリューションとの両方の文脈に適用できよう。AGPSに対する制御プレーン・ソリューションに関しては、拡張範囲セル(GSMにおいては、拡張範囲セルは最大100kmの半径を有しうる)の文脈において本発明を適用するか、あるいは、セルIDによる測位(これは通常、事前位置情報を判断する根拠として用いられる)がネットワーク内に実装されていない場合に本発明を適用する場合に、おそらく最も興味深い。移動局アシステッドAGPSに対する制御プレーン・ソリューションにおいて本発明を適用すると、それは、航法データビット長(すなわち20ミリ秒)を法とする測定された測距信号の位相を定義するデータを含めるため、移動局から測定結果を報告するのに使用するシグナリングメッセージを修正することを意味するであろう。これは、第1の典型的実施形態の測定報告信号について提案されたとおり、最も近い先行する航法データビットエッジからのC/Aコード周期の整数を追加することによって好適に達成可能である。修正が必要なシグナリングメッセージの例として、3GPP TS 44.031に規定されたMEASURE POSITION RESPONSEメッセージと、3GPP TS 25.331に規定されたMEASUREMENT REPORTメッセージとがある。
【0073】
もちろん、上の説明および図10で提案されたフォーマットとは別に、測距信号の中のデータビットストリームのデータビット長を法として測定された時刻位置が測定報告信号の中でどのように表されうるかについては、いくつかの選択肢がある。1つの選択肢は、選択された時刻点に続く最も近いビットエッジまでのC/Aコード周期の整数を含むことであろう。別の選択肢は、コード繰り返しの整数を完全なチップおよび断片のチップの数と合わせて、完全および断片のミリ秒で表された時間に翻訳することであろう。
【0074】
十分な精度のリアルタイムクロック、例えば、通常は1秒あたりわずか数ナノ秒しかドリフトせず、1ミリ秒を上回る十分な時間について長期の安定性を有するセルラーシステムのクロックを使用すれば、Time Of Weekの推定には、各測位要求のたびに測距信号の中で送信されるTOWを復号化して再構成することは必要ないであろう。同様に、TOWの推定を行うことの選択肢として、未知の測距信号受信時刻を推定するため追加の測距信号を測定することがあるであろうし、また移動局アシステッドAGPSについては、TOW推定値の代わりに測定報告信号の中で追加の測距信号のデータを含むことがあるであろう。
【0075】
AGPSに関連して1500kmを超える事前位置情報の不確実性をも処理することが望ましいと思われる状況においては、本発明を米国特許出願第60/545175号の教示内容に結び付けることができるであろうし、それは、本願に詳述されているとおり、受信した測距信号についての航法データビット長を法として測定を行い、その後、前記米国特許出願において開示されているとおり、可能性の低い疑似距離を削除することによって実行することができよう。
【0076】
本発明は、その第1の典型的実施形態ではアシステッドGPSの文脈において適用されてきたけれども、本発明はもちろん、送信された測距信号が拡散符号によって拡散されたデータビットを含むような、衛星を利用した他の測位システムとの関連で適用されてもよい。
【0077】
[付録1]
本付録は、75kmを超える事前位置情報の不確実性が、なぜ先行技術のAGPSの1ミリ秒での切り捨てによって疑似距離が不確実性無しに再構成できないことを意味するのかを説明する。
【0078】
図11は、移動局が、第1のGPS衛星SV1の完全なクロックtsv1を測定する、すなわち、GPS衛星SV1から受信した測距信号に関する完全なTOW再構成を行う、そして、第2のGPS衛星SV2のクロックtsv2の断片の部分(ミリ秒未満)を測定する、すなわち、GPS衛星SV2から受信した測距信号についてのC/Aコード位相の決定だけを行う場合における、最悪の場合のシナリオを図解する。移動局は、例えば、サービス提供中のセルのセル境界に対応する、半径Δを有する円内に位置することが知られており、すなわち、移動局の事前位置情報の不確実性はΔである。GPS衛星SV1から円の中心までの距離はd1であり、他方、GPS衛星SV2から円の中心までの距離はd2である。測定は(未知の)時刻t0において行われる。さて、問題はこうである。どのような条件なら、クロックtsv2の整数のミリ秒部分が不確実性無しに再構成できるか。
【0079】
移動局の仮の位置AおよびBにおける、クロックtsv1とtsv2とは、次式で計算される。
【0080】
Aにおいて、
tsv1=t0−(d1−Δ)/c (1)
tsv2=t0−(d2+Δ)/c (2)
ここで、cは無線信号が真空中で伝搬する速さである。
【0081】
(2)から(1)を引いて再構成すると、次式のような結果が得られる。
【0082】
tsv2=tsv1+(d1−d2−2Δ)/c (3)
【0083】
Bにあるとき。
【0084】
tsv1=t0−(d1+Δ)/c (4)
tsv2=t0−(d2−Δ)/c (5)
(5)から(4)を引いて再構成すると、次式のような結果が得られる。
【0085】
tsv2=tsv1+(d1−d2+2Δ)/c (6)
【0086】
(3)と(6)を結合すると、tsv2は、以下の間隔の中にある。
【0087】
tsv2∈(tsv1+(d1−d2−2Δ)/c, tsv1+(d1−d2+2Δ)/c) (7)
この間隔の大きさは4Δ/cである。tsv2の整数ミリ秒部分を不確実性無しに再構成するには、この間隔が1ミリ秒未満である必要がある。従って、
4Δ/c<0.001 (8)
【0088】
これから、以下の要件が導かれる。
Δ<c*0.001/4 〜 75km (9)
[参考文献]
[1]Navstar GPS Space Segment/Navigation user Interfaces、ICD−GPS−200、Revision IRN−200C−003、1999年10月11日
[2]Parkinson、Spilker Global Positioning System:Theory and Applications、Volume 1、AIAA、1996年
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明が適用される移動局アシステッドAGPSのシナリオの一例の概略図である。
【図2】GPS測距信号の中のC/Aコードと航法データビットとを図解する図である。
【図3】GPS測距信号の中のGPS航法データのフォーマットを図解するブロック図である。
【図4】図1に図解されたシステムのさまざまな部分における時刻を図解する図である。
【図5】本発明の基本的な方法を図解するフロー図であり、衛星からの測距信号を測定するステップと、衛星からの測距信号に関する測定に基づいて位置を計算するステップとをそれぞれ図解している。
【図6】本発明の第1の典型的な実施形態による移動局の概略ブロック図である。
【図7】図6の移動局によって行われる処理を図解するフロー図である。
【図8】ビットエッジ同期に関連する相関を図解するブロック図である。
【図9】位置サーバの概略ブロック図である。
【図10】測定報告信号フォーマットの典型的な実施形態を図解するブロック図である。
【図11】不確実性無しに疑似距離の再構成を依然として提供するために先行技術のAGPSが対処可能な、当初の位置不確実性の限界を導出するための最悪の場合のシナリオを図解する図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に移動装置の衛星を利用した測位に関するものであり、詳細には、地上にある通信ノードによって支援された測位に関するものである。
【背景技術】
【0002】
物体、装置、あるいは装置を携行する人物の地理的位置の決定は、近年、多くの応用分野において益々関心を集めるようになってきている。測位を解決する一つの方法は、衛星から放出される信号を使って位置を判断することである。そのようなシステムの例として良く知られているのは、全地球測位システム(GPS)(例えば[1]を参照)や来るべきガリレオシステムである。衛星から受信した複数の信号に基づく三角測量/三辺測量として、特定の座標系に関して位置が与えられる。
【0003】
単体のGPSレシーバは、公称(nominal)搬送周波数と、信号によって搬送されるデータが変調される規則とを除けば、システムについてのそれ以外の情報を持たなくても、GPS衛星信号への完全な同期を得ることができる。基本的に、位置計算のステップにおいては、3次元位置、および受信機(レシーバ)のクロックの衛星時刻に対するバイアスを判定する必要がある。
【0004】
アシステッドGPS(AGPS)は、GPSレシーバをユーザ装置、すなわちセルラー通信システムの移動局、と統合するため、GPSを改良したものとして定義されてきた(例えば、第3世代パートナーシップ・プロジェクト(3GPP)の仕様TS 25.331またはTS 44.031、あるいは、セキュア・ユーザ・プレーン・ロケーション(SUPL)用のオープン・モバイル・アライアンス(OMA)の仕様を参照)。概してアシステッドGPSは、検出感度、位置推定値の取得に要する時間、精度、バッテリの節電など、さまざまな点でGPSレシーバの性能を高めることを目的としている。これは、移動局の中のGPSレシーバから一部の機能をネットワークに移し、GPSレシーバ自身の中のGPSタスクのサブセットだけを実行することによって、行われる。
【0005】
AGPSには、移動局(すなわち、ユーザ装置)ベーストAGPSと移動局(すなわち、ユーザ装置)アシステッドAGPSの2種類がある。移動局ベーストAGPSでは、移動局の位置は、移動局が判断する測距信号の測定結果およびネットワークが提供する支援データを用いて、移動局の中で計算される。移動局アシステッドAGPS(ネットワークベーストAGPSと言及されることもある)では、移動局は、宇宙船(すなわち衛星)への疑似距離を反映する受信した測距信号のタイミングを測定して報告するだけである。AGPSの両タイプとも、測距信号の測定のタイミングは1ミリ秒を法として切り捨てられ、これは300kmの距離に相当する。移動局自身においてまたはネットワークの位置サーバにおいて移動局位置を計算するとき、正確な移動局位置を計算するためには、移動局位置についての事前情報および移動局によって判断された測距信号の測定結果を用いて、完全な擬似距離を再構成する必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の発明者らは、受信した測距信号の端数の(truncated)タイミングを測定して報告するステップは、移動局位置についての事前情報の精度が低すぎる場合には、すなわち、前記事前情報において移動局位置の不確実性が高すぎる場合には、GPS衛星への疑似距離を判断する際に不確実性を招きうるという点で、AGPSの問題を認識した。結果として、もし不正確な擬似距離が選択され、移動局位置を判断する根拠として利用されるならば、計算による移動局位置に、例えば100kmのオーダで、重大なエラーが起きる可能性がある。
【0007】
本発明の発明者らのうちの1人による米国特許出願第60/545175号では、この問題に取り組む一方法として、可能性が低い疑似距離値を廃棄するステップに関して記述が行われている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によって扱われる問題は、支援データを使う衛星を利用した測位という文脈において、不確実な疑似距離の再構成に対して、ロバスト性を高めることである。
【0009】
この問題は、請求項1および3の方法、請求項11、13、および27の装置、そして、請求項21の測定報告信号によって解決される。
【0010】
本発明によって提供される利点は、アシステッドGPS(AGPS)のような支援データを使う衛星を利用した測位に関連した、不確実な疑似距離の再構成に対するロバスト性の向上である。
【0011】
本発明の別の利点は、ロバスト性の向上が、検出感度を低下させずに達成されることである。
【0012】
本発明の更に別の利点は、ロバスト性の向上が、処理の遅延をそれほど増加させることなく達成されることである。
【0013】
これから本発明について、発明の典型的な実施形態および添付の図面を参照しながら、より詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、本発明が適用されてもよい、限定的でないシナリオの一例を図解する図である。このシナリオ例では、移動局アシステッドAGPSを提供するため、基本的な無線通信システムSYS1が全地球測位システム(GPS)と合わせて使用されている。図1に図解された典型的な無線通信システムSYS1は、汎用移動通信システム(UMTS)である。通信システムSYS1は、ネットワーク部分NET1と、移動局(MS)とも呼ばれるユーザ装置(UE)とを有する。ネットワーク部分NET1は、コアネットワークCN1とUMTS地上無線アクセスネットワーク(UTRAN)RAN1とを備えている。コアネットワークCN1は、回路交換方式のサービスを提供する移動通信交換局(MSC)ノードMSC1と、ときどき在圏GPRSサポートノード(SGSN)とも呼ばれ、パケット交換方式のサービスを提供するように適合されている汎用パケット無線サービス(GPRS)ノードSGSN1とを有している。
【0015】
コアネットワークノードであるMSC1とSGSN1とはそれぞれ、Iuインタフェースと呼ばれる無線アクセスネットワーク・インタフェース上で、無線アクセスネットワークRAN1に接続している。無線アクセスネットワークRAN1は、1つ以上の無線ネットワーク制御装置(RNC)を有している。簡潔にするため、図1の無線アクセスネットワークRAN1では、無線ネットワーク制御装置ノードRNC1を1つだけ示している。各無線ネットワーク制御装置は、複数の無線基地局(RBS)に接続していて、それらを制御している。例えば、やはり簡潔にするため、図1では、無線ネットワーク制御装置ノードRNC1に接続されている第1の無線基地局ノードRBS1および第2の無線基地局ノードRBS2だけを図解している。無線ネットワーク制御装置RNC1と基地局RBS1およびRBS2との間のインタフェースは、Iubインタフェースと呼ばれる。移動局、例えば図1に示す移動局MS1は、Uuインタフェースと呼ばれる無線インタフェースまたはエアインタフェース上で1つ以上の無線基地局RBS1乃至RBS2と通信する。
【0016】
無線インタフェースUu、Iuインタフェース、およびIubインタフェースはそれぞれ、図1に点線で示す。
【0017】
図1において、GPSシステムは、宇宙船、すなわち衛星SV1乃至SV4によって表されている。各GPS衛星SV1乃至SV4は、対応する測距信号RS1乃至RS4を送信する。留意していただきたいが、簡潔にするために、図1では4つのGPS衛星SV1乃至SV4だけを図解している。
【0018】
図1において移動局アシステッドAGPSを用いて移動局MS1の位置を判断するとき、移動局MS1は支援データを位置サーバ101から受信して、測定結果を位置サーバ101に報告する。報告された測定結果と、移動局がどこに位置しているかについての事前情報とに基づいて、位置サーバは移動局MS1の位置を計算する。位置サーバがセルラーネットワークにどのように接続しているかによって、AGPSを「AGPSに対する制御プレーン・ソリューション」と「AGPSに対するユーザ・プレーン・ソリューション」との2つのカテゴリに分けることができる。
【0019】
「AGPSに対する制御プレーン・ソリューション」において、位置サーバの機能(サービス提供移動位置センタ(SMLC)またはスタンドアロンSMLC(SAS)と呼ばれることもある別個の位置サーバノードの中に実装されてもよいし、あるいは、無線ネットワーク制御装置のような他のネットワークノードの中に他の機能と一緒に統合されてもよい)は、セルラーネットワークに強固に統合されており、支援データおよび測定結果はいわゆる制御プレーン・シグナリングを用いて通信される。このソリューションのさらなる特徴は、一般に、その時点でどのセルの中で移動局が動作中であるかという情報を位置サーバが受信して、移動局の位置を計算するときにその情報を位置サーバが移動局に関する事前(apriori)位置情報として適用するであろうということである。従って、事前位置情報の不確実性はセルの大きさに対応する。
【0020】
「AGPSに対するユーザ・プレーン・ソリューション」において、位置サーバの機能とセルラーネットワークとの統合度はそれほど密接ではなく、支援データおよび測定結果はいわゆるユーザ・プレーン・シグナリングを用いて通信される(すなわち、通常のユーザデータパケットが、この情報をセルラーネットワークに透過的に伝達するのに使用される)。このソリューションのさらなる特徴は、移動局がどのセルの中に位置するかという情報を位置サーバが受信しない、あるいは、少なくとも、所与のセルの識別情報をそのセルがカバーしているエリアに対応する特定の地理的エリアに常に関連付けることができるわけではないことである。従って、AGPSに対するユーザ・プレーン・ソリューションについては、移動局の事前位置情報の不確実性は、セルの大きさより相当大きいことがあり、例えば、移動局がそのとき動作している国の大きさに対応することもある。
【0021】
図1のシナリオ例では、インターネットプロトコル(IP)をベースにしたパケット・データ・ネットワーク102を介して位置サーバ101がセルラーネットワークNET1に接続されている場合の、AGPSに対するユーザ・プレーン・ソリューションが図解されている。
【0022】
GPS衛星であるSV1乃至SV4は、1575.42MHzを中心にした帯域を使って測距信号RS1乃至RS4を送信する。図2は、各測距信号RS1乃至RS4が、信号を送信しているGPS衛星にとって一意である、いわゆるCoarse/Acquisition(C/A)コード203によって定義された拡散符号によって拡散された航法データビット202のストリーム201を、どのように有しているかを図解している。C/Aコード203は、1023チップの長さと1/1.023×106秒のチップ持続時間を有しており、すなわち、C/Aコードは、1.023×106Hzの速さで変化して1ミリ秒毎に繰り返す+/−1のシーケンスを含む。航法ビット202は、20ミリ秒のビット周期、すなわち、20回のC/Aコードの反復に相当するビット周期を有している。
【0023】
航法データは特に、信号送信時の衛星の正確な位置を受信機が計算できるようにする、一連のいわゆるエフェメリスパラメータを有する。航法データからは、正確な送信時刻も読み取ることができる。
【0024】
図3は、航法データが、各々の長さが6秒である5個のサブフレーム301乃至305に更に分割される様子をより詳細に図解している。各サブフレーム301乃至305は10ワードに分割され、各ワードの長さは0.6秒であって30データビットを有している。タイムスタンプ、すなわちGPS TOW(Time Of Week:1週間のうちの時刻)が、すべてのサブフレーム301乃至305の2番目のワードであるHandover Word(HOW)の中で送信される。表示される時刻は、当該サブフレームの最後での送信時刻である。従って、TOWは6秒毎に繰り返される。
【0025】
各測距信号RS1乃至RS4は基本的に、移動局MS1が測定したクロックを定義する。クロックは信号送信の時刻を表示する。もし移動局MS1がGPSシステム時刻を知っているならば、クロックの表示は、時間的遅延を判断するのに直接使用でき、従って、測距信号を送信中のGPS衛星から移動局MS1までの距離を決めるのに直接使用できる。3つの距離を測定し、送信時のGPS衛星の位置についての知識を活用することによって、3次元での移動局MS1の位置が判断できる。しかしながら、通常は、移動局MS1は正確なGPSシステム時刻についての知識を有していないため、移動局のクロックバのイアスを除去するためもう1つの測定が必要である。
【0026】
図4のシーケンスは、図1に図解したシステムのさまざまな部分について、クロックの関係を(ミリ秒で表して)図解している。各GPS衛星SV1乃至SV4は正確な原子時計を持っていてクロックの安定性を維持している。しかし、GPS衛星の送信は図4に図解するように、完全にGPSシステム時刻に同期しているわけではない。図4において、シーケンス401はGPSシステム時刻を表し、シーケンス411はGPS衛星1のクロックを表し、シーケンス41NはGPS衛星Nのクロックを表し、シーケンス402は図1の移動局MS1のクロックを表し、他方、シーケンス421と42Nとはそれぞれ、移動局MS1が受信したGPS衛星1およびGPS衛星Nの各々からの測距信号の中で読まれたとおりの時刻を表す。タイミング図を通る垂直線431を引くことによって、宇宙のさまざまなポイントで観察されたすべてのクロックの表示に関するスナップショットが得られる。GPSシステム時刻401は、地上局のクロックの集合とGPS衛星のクロックの部分集合に基づくアンサンブル平均として定義される。図4に示すとおり、個々のGPS衛星のクロック411および41Nと移動局のクロック402とは、GPSシステム時刻401に比べてわずかにずれている(SVクロックバイアス412および413と移動局クロックバイアス414をそれぞれ参照のこと)。GPS衛星のクロックの個々のずれ(オフセット)に関するモデルは、各GPS衛星から航法メッセージの一部として送信される。信号が地表面上の点(例えば移動端末MS1の現在位置)に到達するとき、信号は遅延されており、遅延の量は、該当するGPS衛星から前記地表面上の点までの距離に依存する。遅延は、図4のクロックの表示によって示されているように、通常は60乃至85ミリ秒(ms)である。
【0027】
AGPSを用いて移動局の位置を判断するとき、移動局は、受信した測距信号について、選択された時刻点(時間軸における点、point in time)に関するC/Aコードの境界位置の時刻位置(時間軸における位置、position in time)、すなわち、C/Aコード位相を測定する。C/Aコード位相は1ミリ秒(すなわち、1C/Aコード周期)を法として判断される。
【0028】
移動局ベーストAGPSを実装する移動局は、選択された時刻点における自分の位置を、受信した測距信号に関して測定されたC/Aコード位相と、(ネットワークから受信した)GPS衛星のエフェメリスとクロックの補正データと共に移動局位置についての事前情報を含む支援データとに基づいて計算する。
【0029】
図1の移動局MS1のような、移動局アシステッドGPSを実装する移動局は、その代わりに、選択された時刻点に対応するGPSシステム時刻の推定値と共に、受信した測距信号についての(選択された時刻点から次のC/Aコード反復の開始までのC/Aコードの(1以上の)完全なチップおよび断片のチップ(whole and fractional chips)に関して表現された)C/Aコード位相を報告する無線信号を送信する。移動局が報告した情報と移動局の位置についての事前情報とに基づいて、セルラーネットワーク内、あるいは別のネットワーク内の位置サーバ、例えば図1の位置サーバ101が、移動局の位置を計算する。
【0030】
本発明の発明者らは、1ミリ秒を法としてC/Aコード位相を測定し、それによって1ミリ秒を法とする時刻によって各測距信号を特徴付けるAGPSの方法は、移動局の位置の事前情報の不確実性が大きすぎる場合には問題を引き起こすということを認識した。付録1で論証するとおり、事前位置情報の不確実性が75kmを超える場合、GPS衛星までのいわゆる疑似距離は、不確実性無しに再構成されることができない。
【0031】
測距信号のタイミングの測定結果の切り捨てと、事前位置情報の不確実性が大きすぎることとが組み合わさって発生する、不確実な疑似距離再構成という問題は、切り捨てを一切せずに各測距信号について、移動局に測距信号を測定させることによって対応できよう。しかしながら、そのためには測定された測距信号それぞれについてのTime Of Week情報を復号するステップが必要だが、Time Of Week情報を復号する方がC/Aコードの境界を検出するよりはるかに難しいことから、それによって処理の遅延が大幅に増加し、移動局の中に一体化されたGPS受信機の検出感度が低下する恐れもある。
【0032】
本発明は、(移動局ベーストAGPSと移動局アシステッドAGPSの両方の)AGPSの文脈において、移動局の事前位置情報の不確実性によって不確実な疑似距離再構成がもたらされるというリスクを大幅に減少させる諸方法を提供することによって、上記の複雑な問題に対応する。同時に本発明は、測定された測距信号それぞれに関するTime Of Weekを復号するステップの必要性とそれに関連する短所とを回避する。
【0033】
図5は、移動局が衛星(すなわち宇宙船)から受信した測距信号に関する測定結果を報告するステップと、そのような(複数の)測定結果それぞれに基づいて移動局の位置を計算するステップとのための、本発明の基本的な方法を図解しており、本方法は、前記測距信号の各々が、拡散符号(例えばGPS Coarse Acquisition code)によって拡散されたデータビット(例えば、GPS航法データビット)のストリームを備えている。どちらの方法も、受信した測距信号のうち少なくとも1つについてステップ501および502を実行するステップを有しているが、基本的な方法のうちの最後のステップは異なる。
【0034】
ステップ501において、データビットのストリームの中のデータビットエッジに同期することが行われる。これは通常、データビット長を法として(すなわち、AGPSに対して20ミリ秒を法として)データビットエッジの位置を判断すること/識別することを含む。
【0035】
ステップ502において、選択された時刻点に関して、データビットのストリームについてデータビット長を法として時刻位置が測定される。
【0036】
ステップ501および502の後、測定結果を報告するための基本的方法は、ステップ502で測定された前記時刻位置を表すデータを有する信号を無線で送信する、さらなるステップ503を有する。
【0037】
ステップ501および502の後、移動局の位置を計算するための基本的方法は、前記選択された時刻点に関して前記データビットのストリームについての前記測定された時刻位置と、無線通信ネットワークの少なくとも1つの基地局を介して移動局が受信した支援データとを利用して前記移動局位置を計算する、さらなるステップ504を有する。受信した支援データは、エフェメリスパラメータと、受信した測距信号を送信する衛星のクロック補正値とを含み、これらより、測距信号送信時における衛星の位置を計算できるようになる。受信した支援データは、更に、移動局位置の事前推定値を有するであろう。
【0038】
通常、前記の同期するステップ501と測定するステップ502とは、複数の受信した測距信号について行われるが、できれば検出された測距信号すべてについて行われることが望ましい。その後、ステップ503で送信された信号は、前記複数の受信した測距信号の各々について、前記選択された時刻点に関して測定された時刻位置を表すデータを有するであろうし、他方、ステップ504で行われる計算は、前記複数の受信した測距信号の各々について、前記選択された時刻点に関して測定された時刻位置を利用するであろう。
【0039】
ステップ501、502、および503を有する、測定結果を報告するための基本的な方法の実施形態は、例えば、移動局が報告した測定結果に基づいてネットワーク側のどこかにあるノードで実際の位置計算が行われるような移動局アシステッドAGPSをサポートするための処理工程を、移動局の中に実装するのに使用できよう。
【0040】
ステップ501、502、および504を有する、移動局の位置を計算するための基本的な方法の実施形態は、例えば、移動局ベーストAGPSをサポートするための処理工程を移動局の中に実装するのに使用できよう。
【0041】
(移動局アシステッドAGPSであるか移動局ベーストAGPSであるかを問わず)AGPSの文脈の中で図5の諸方法を適用することによって、移動局は、受信した測距信号のタイミングを(先行技術のAGPSでは1ミリ秒を法とするのに対して)20ミリ秒を法として測定することになる。もし移動局の位置に関する事前情報の不確実性が(先行技術の1ミリ秒での切り捨てを適用する場合の75km未満に対して)1500km未満ならば、20ミリ秒の切り捨てによって、完全な疑似距離を不確実性無しに再構成することが可能になる。
【0042】
図1の移動局MS1に実装された、測距信号の測定結果を報告するための方法および装置の第1の典型的実施形態、および、本発明による位置計算のための装置の第1の典型的実施形態を、図6乃至9に図解する。本発明による測定報告信号の第1の典型的実施形態を図10に図解する。
【0043】
図6は、本発明のこの典型的実施形態による移動局MS1の構造を図解するブロック図である。移動局MS1は、セルラー通信モジュール601、測位モジュール602、GPS RFフロントエンド603、セルラーネットワークとの通信用のアンテナ604、そしてGPSアンテナ605を有している。測位モジュール602は、CPU612、メモリ610、そしてデジタル信号プロセッサ(DSP)611を有している。セルラー通信モジュール601は、無線でセルラーネットワークから支援データを受信し、セルラーネットワーク内の基地局を介して無線で測定結果をセルラーネットワークに送信する。支援データは、可視衛星用のエフェメリスとクロック補正情報、移動局MS1のおおよその位置、およびおおよそのGPSシステム時刻で構成されることができよう。あるいは、支援データは、相関処理を支援するためだけの明示的な支援データを有することができよう。通信モジュール601は、受信した支援データを、インタフェース606を用いて測位モジュール602に送信し、他方、測定結果は、測位モジュール602からインタフェース613を用いて通信モジュール601に提供される。通信モジュール601はまた、GPS RFフロントエンド603と測位モジュール602に、クロック基準607を提供する。GPS RFフロントエンドモジュール603は、インタフェース608を用いて測位モジュール602によって制御される。
【0044】
図7は、測位要求を受信した時に移動局MS1が行う処理工程を図解する。
【0045】
測位モジュール602は、通信モジュール601から測位要求を受信すると、ステップ701で、GPS信号のサンプルを提供するようGPS RFフロントエンド603に要求する。GPS RFフロントエンド603は、アンテナ605を通じてGPS周波数帯を受信し、信号をベースバンドにダウンコンバートし、信号を同相(I)成分と直交(Q)成分に分離し、信号をサンプリングしてデジタル形式に変換し、そしてインタフェース609を通じてこれらを測位モジュール602に出力する。測位モジュール602は受信したIデータとQデータとをメモリ610に保存する。
【0046】
ステップ702乃至703は、ステップ707で送信される測定報告の中に含まれる個々の測距信号RS1乃至RS4それぞれについて行われる処理工程を定義する。ここで留意していただきたいが、図7は個々の測距信号それぞれの処理(ステップ704を参照)を順次的に図解しているけれども、異なる測距信号に関する処理はできれば並行して行われる方が望ましい。
【0047】
任意のGPS衛星SV1乃至SV4から移動局MS1が受信した、時刻tの関数としての測距信号yは、次式のように簡易な方法で表すことができる。
【0048】
y(t)=a・c(t-τ)・d(t-τ)・exp{i・(ω0t+ωdt+Φ)}+e(t) (20)
ここで、aは受信信号の振幅、c(t)はGPS衛星のC/Aコード、そして、d(t)は航法データビットストリームである(図2を参照)。項τはGPS衛星から移動局MS1の位置までの距離の関数である、信号の未知の遅延、ω0はGPS搬送周波数、ωdは信号のドップラー周波数、Φは未知の位相、そして、e(t)はノイズである。
【0049】
ステップ702において、測距信号のC/Aコードの境界は、測距信号についての可能性のあるコード位相とドップラー偏移とをすべてテストする相関を用いて、測位モジュール602内のデジタル信号プロセッサ611によって判断される。
【0050】
いったんステップ702で測距信号のC/Aコードの境界が判断されると、この測距信号の航法データビットストリームのビットエッジに同期するため、前記測距信号の処理がステップ703でデジタル信号プロセッサ611によって継続される。ビットエッジ同期は、実質上、d(t)シーケンスのデータビット遷移を判断することに等しい。ビットエッジ同期を行うステップについてのいくつかの既知の方法が、文献の中に記載されている(例えば[2]の第8章を参照のこと)。いかにしてビットエッジ同期を行いうるかという一例をあげるとすれば、生の「疑似ビット」を1ミリ秒の(すなわち、各C/Aコードの反復に相当する)ビットレートにしたままで、受信データをまず逆拡散することであろう。ここで留意すべきだが、航法データビットあたり疑似ビットが20個存在する。数式(20)に関して(そして雑音成分を無視すれば)これは次式で表される。
【0051】
s(kT)=a・d(kT-τ)・exp(iΦ);T=0.001s, k=1,2,...,N (21)
その後、図8に図解するとおり、20個の連続した疑似ビットを加算するような加算器の第1の集合801に疑似ビットが送り込まれる。この後、その合計が2乗され、加算器の第2の集合802において新たな加算が始まる。この手順がM回繰り返される。Mは、現在の信号対雑音比に適応されてもよいし、固定値、例えばM=50として選択されてもよい。これがすべて、疑似ビットシーケンスの20通りの異なる遅延について行われる。出力ビン(bin)、すなわち、累計を最大化する、加算器の第2の集合802の中の加算器が、当該GPS衛星についてのデータビットエッジを判断する。これは0と19の間の数として表現することができ、それが最新の航法データビットの境界以後のC/Aコード周期の整数をカウントすることから、本明細書ではこれ以降、整数コード位相(「icp」)と呼ぶ。
【0052】
ある測距信号についていったんステップ702および703が最初に完了したら、DSP611は、前記測距信号のC/Aコード境界/ビットエッジタイミングの変化を追跡することによって、前記測距信号との同期を維持する。
【0053】
もし、もっと多くの測距信号を取得する必要があるのなら(ステップ704の、「YES」の選択肢」)、ステップ702と703とが次の測距信号に対しても繰り返される(すでに述べたように、ステップ702−703の処理は、できれば複数の測距信号について図7に示すように順次的ではなく、並行して行われることが望ましい)。もっと多くの測距信号が取得されるべきか否かについてのステップ704における決定は、それまでに取得した測距信号の数(少なくとも3個、できれば4個の測距信号が取得されるべきだが、もっと多くの測距信号を取得すれば、計算された位置の精度が向上する)とタイミングの要件(測定報告信号を提供するための応答時間は、例えば測位要求を受信して16秒以内というようにパラメータによって設定可能である)とに基づくことができよう。
【0054】
もし測距信号が十分に取得されたならば(ステップ704の「NO」の選択枝)、選択された時刻点のGPS Time Of Week(TOW)がステップ705において推定される。ここで留意していただきたいが、できれば、ステップ702乃至703が第1の測距信号について完了すると同時に、追加の測距信号を取得するステップと並行して前記測距信号に基づいてステップ705が行われることが望ましい。
【0055】
ステップ705を行ってもよい方法には、複数の選択肢がある。TOWの推定は通常、1つの測距信号(図3を参照)、できれば最初に取得された測距信号のいわゆるハンドオーバ・ワード(HOW)の中で送信されるTOWを判断するステップと、その後、GPS衛星による信号送信から移動局MS1による信号受信までの伝搬遅延を補償するステップとに基づいて行われる。
【0056】
送信されたTOWを判断するステップは、送信されたTOWを直接復号化するステップによって行われうる。この選択肢は、データが20ミリ秒の速さで復調されることを意味し、ハンドオーバ・ワードの復号化に続いてサブフレーム境界が決定されることを通常は必要としており、ハンドオーバ・ワードからはTOW、すなわち送信時刻ttiが導出できる。各サブフレームは、6秒の長さを有しており、従って、この手順では、約8秒の航法データを収集する必要があろう。0dBアンテナを使うと想定すれば、TOWの復調はおよそ−172dBWまで低下するまで機能するため、これは事実上、検出感度の限定因子である。
【0057】
あるいは、送信されたTOWは、相関技法を用いた再構成によって判断されうる。この手順でも、復調されたデータビットが生成されることが必要だが、直接復号化の代わりに、相関検出が、既知の送信された航法データビット(例えば、支援データの一部として移動局に対して送信されてもよいいわゆるテレメトリ・ワードとHOWワードとの内容)を使って行われる。これには、GPS時刻が数秒以内に事前に知られることが必要である。この手順では、直接TOW復号化より幾分低い信号レベルであっても機能するが、その性能は、そのような低い信号レベルではロックを失ってしまうことのある追跡(tracking)ループによって制限される可能性が高い。通常は位相ロックループか自動周波数制御ループがこのために採用される。しかし、これは、例えば−179dBW程度低下しても機能することが期待されている。
【0058】
77ミリ秒という予想される平均伝搬遅延を適用することによって、伝搬遅延の補償を実行できよう。あるいは、2004年9月29日に発明者Ari KangasおよびJanos Toth−Egetoによって出願された同時係属の米国特許出願の中に詳しく述べられた原理に従って移動局MS1がセルラーネットワークから受信した支援データから、もっと精確な伝搬遅延の補償を導出することもできる。
【0059】
ステップ706において、取得された各測距信号の中で、選択された時刻点に隣接する航法データビットエッジについて、選択された時刻点に関する時刻位置が測定される。より詳細には、取得された測距信号の各々について、選択された時刻点から次のC/Aコード境界までの完全なチップの数および断片のチップと、加えて、選択された時刻点と最も近い先行する航法データビットエッジとの間のC/Aコード周期の整数とを登録することによって、選択された時刻点に先行する最も近いビットエッジの位置がステップ706で測定される。C/Aコード位相シフト(完全なチップおよび断片のチップ)と整数のC/Aコード位相(C/Aコードの繰り返しの回数)とを測定することによって、各測距信号の位相が航法データビット長(すなわち20ミリ秒)を法としてこのように判断される。
【0060】
最後に、ステップ707において、測定報告信号が移動局MS1によって無線でセルラーネットワークNET1に送信される。
【0061】
図10は、本発明のこの典型的実施形態において用いられる測定報告信号1001の典型的なフォーマットを概略的に図解する。ここで留意いただきたいが、図10は本発明に関連のあるデータに着目した単純化した図を提供しており、測定報告信号は図10に図解されていない(例えば、3GPP TS 44.031のMEASURE POSITION RESPONSEメッセージや3GPP TS 25.331のMEASUREMENT REPORTメッセージについて記載されているような)追加データを有するであろう。
【0062】
測定報告信号1001は、測定された各測距信号について下記のデータを有している。
【0063】
測定データが有効である特定の衛星を識別する、衛星ID1002。
【0064】
選択された時刻点から次のC/Aコード境界までの完全なチップ1003および断片のチップ1004の数。
【0065】
選択された時刻点と先行する最も近い航法データビットエッジとの間のC/Aコード周期の整数1005。
【0066】
測定報告信号はまた、選択された時刻点におけるTOWの推定値1006も有している。
【0067】
測定報告信号は、本発明の第1の典型的実施形態において、ユーザプレーンにおける通常のユーザデータとして、位置サーバ101に対してアドレス指定されて送信される。従って、測定報告信号は、セルラーネットワークNET1を通り、IPベースネットワーク102を経由して位置サーバ101まで透過的にルーティングされる。
【0068】
図9は、位置サーバ101の構造を概略的に図解する。位置サーバは、通信モジュール901と測位モジュール903とを有している。通信モジュール901は、測定報告を受信して、測定データを測位モジュール903に転送する。測位モジュール903は、提供された測定データ(報告された測距信号の各々についての測定されたタイミング情報を含む)と移動局の位置についての事前情報とを用いて、移動局MS1の位置を計算する。事前情報は、例えば公衆陸上移動通信網(PLMN) IDから導出されうるが、そのPLMN IDは、移動局MS1からの信号に含まれていて、移動局MS1がその中で動作中であるネットワークを表示している。PLMN IDは、例えば、移動局がその時点でその中で動作中であるセルのセルIDの一部として含まれることができよう。提供されたPLMN IDを用いて、測位モジュール903は、例えば移動局MS1がその中で動作中である国の中心の座標と、前記中心から前記国の境界線までの最大距離に対応する半径とをテーブルから検索することによって、事前位置情報を導出できよう。大きい国の場合は特に、移動局がその中で動作中である国の中の特定の地域を識別するため、セルIDの階層的性質も活用できよう。さまざまな国、または前記国の中の地域について中心/半径情報のテーブルを維持することは、各セルの地理的座標についての情報を備えたグローバルなデータベースを維持しようとすることに較べて、著しく負担が軽い。
【0069】
本発明の典型的な第1の実施形態において、移動局MS1の測位モジュール602は、受信した測距信号についてのデータビットのストリームの中のデータビットエッジに同期するための同期手段、および、選択された時刻点に関して受信した測距信号についてのデータビットのストリームの位置を測定するための測定手段の両方として機能し、他方、セルラー通信モジュール601は、前記測定された時刻位置を表すデータを含んだ信号を無線で送信するための送信手段として機能する。位置サーバ101において、通信モジュール901は、前記測定された時刻位置を含む測定報告信号を受信するための手段として機能し、他方、測位モジュール903は、受信した測定結果に基づいて移動局の位置を計算するための手段として機能する。
【0070】
上で開示した本発明の典型的な第1の実施形態とは別に、第1の実施形態の再構成、修正、および代替を提供する方法がいくつかあり、それらは本発明のさらなる実施形態をもたらす。
【0071】
図7のステップ707を、移動局MS1の測位モジュール602の中で移動局MS1の位置を計算するステップによって実質的に置き換えることによって、移動局ベーストAGPSの文脈で使用する典型的な実施形態が、図解された本発明の第1の実施形態から導出できよう。こうして、第1の典型的実施形態において位置サーバ101の測位モジュール903によって行われた計算は、代わりに、移動局MS1の測位モジュール602によって行われるであろう。移動局の位置の事前推定値と共に衛星のエフェメリスデータおよびクロック補正データが、位置計算に使用する支援データとしてネットワークによって提供されるであろう。
【0072】
本発明はもちろん、AGPSに対する制御プレーン・ソリューションとAGPSに対するユーザ・プレーン・ソリューションとの両方の文脈に適用できよう。AGPSに対する制御プレーン・ソリューションに関しては、拡張範囲セル(GSMにおいては、拡張範囲セルは最大100kmの半径を有しうる)の文脈において本発明を適用するか、あるいは、セルIDによる測位(これは通常、事前位置情報を判断する根拠として用いられる)がネットワーク内に実装されていない場合に本発明を適用する場合に、おそらく最も興味深い。移動局アシステッドAGPSに対する制御プレーン・ソリューションにおいて本発明を適用すると、それは、航法データビット長(すなわち20ミリ秒)を法とする測定された測距信号の位相を定義するデータを含めるため、移動局から測定結果を報告するのに使用するシグナリングメッセージを修正することを意味するであろう。これは、第1の典型的実施形態の測定報告信号について提案されたとおり、最も近い先行する航法データビットエッジからのC/Aコード周期の整数を追加することによって好適に達成可能である。修正が必要なシグナリングメッセージの例として、3GPP TS 44.031に規定されたMEASURE POSITION RESPONSEメッセージと、3GPP TS 25.331に規定されたMEASUREMENT REPORTメッセージとがある。
【0073】
もちろん、上の説明および図10で提案されたフォーマットとは別に、測距信号の中のデータビットストリームのデータビット長を法として測定された時刻位置が測定報告信号の中でどのように表されうるかについては、いくつかの選択肢がある。1つの選択肢は、選択された時刻点に続く最も近いビットエッジまでのC/Aコード周期の整数を含むことであろう。別の選択肢は、コード繰り返しの整数を完全なチップおよび断片のチップの数と合わせて、完全および断片のミリ秒で表された時間に翻訳することであろう。
【0074】
十分な精度のリアルタイムクロック、例えば、通常は1秒あたりわずか数ナノ秒しかドリフトせず、1ミリ秒を上回る十分な時間について長期の安定性を有するセルラーシステムのクロックを使用すれば、Time Of Weekの推定には、各測位要求のたびに測距信号の中で送信されるTOWを復号化して再構成することは必要ないであろう。同様に、TOWの推定を行うことの選択肢として、未知の測距信号受信時刻を推定するため追加の測距信号を測定することがあるであろうし、また移動局アシステッドAGPSについては、TOW推定値の代わりに測定報告信号の中で追加の測距信号のデータを含むことがあるであろう。
【0075】
AGPSに関連して1500kmを超える事前位置情報の不確実性をも処理することが望ましいと思われる状況においては、本発明を米国特許出願第60/545175号の教示内容に結び付けることができるであろうし、それは、本願に詳述されているとおり、受信した測距信号についての航法データビット長を法として測定を行い、その後、前記米国特許出願において開示されているとおり、可能性の低い疑似距離を削除することによって実行することができよう。
【0076】
本発明は、その第1の典型的実施形態ではアシステッドGPSの文脈において適用されてきたけれども、本発明はもちろん、送信された測距信号が拡散符号によって拡散されたデータビットを含むような、衛星を利用した他の測位システムとの関連で適用されてもよい。
【0077】
[付録1]
本付録は、75kmを超える事前位置情報の不確実性が、なぜ先行技術のAGPSの1ミリ秒での切り捨てによって疑似距離が不確実性無しに再構成できないことを意味するのかを説明する。
【0078】
図11は、移動局が、第1のGPS衛星SV1の完全なクロックtsv1を測定する、すなわち、GPS衛星SV1から受信した測距信号に関する完全なTOW再構成を行う、そして、第2のGPS衛星SV2のクロックtsv2の断片の部分(ミリ秒未満)を測定する、すなわち、GPS衛星SV2から受信した測距信号についてのC/Aコード位相の決定だけを行う場合における、最悪の場合のシナリオを図解する。移動局は、例えば、サービス提供中のセルのセル境界に対応する、半径Δを有する円内に位置することが知られており、すなわち、移動局の事前位置情報の不確実性はΔである。GPS衛星SV1から円の中心までの距離はd1であり、他方、GPS衛星SV2から円の中心までの距離はd2である。測定は(未知の)時刻t0において行われる。さて、問題はこうである。どのような条件なら、クロックtsv2の整数のミリ秒部分が不確実性無しに再構成できるか。
【0079】
移動局の仮の位置AおよびBにおける、クロックtsv1とtsv2とは、次式で計算される。
【0080】
Aにおいて、
tsv1=t0−(d1−Δ)/c (1)
tsv2=t0−(d2+Δ)/c (2)
ここで、cは無線信号が真空中で伝搬する速さである。
【0081】
(2)から(1)を引いて再構成すると、次式のような結果が得られる。
【0082】
tsv2=tsv1+(d1−d2−2Δ)/c (3)
【0083】
Bにあるとき。
【0084】
tsv1=t0−(d1+Δ)/c (4)
tsv2=t0−(d2−Δ)/c (5)
(5)から(4)を引いて再構成すると、次式のような結果が得られる。
【0085】
tsv2=tsv1+(d1−d2+2Δ)/c (6)
【0086】
(3)と(6)を結合すると、tsv2は、以下の間隔の中にある。
【0087】
tsv2∈(tsv1+(d1−d2−2Δ)/c, tsv1+(d1−d2+2Δ)/c) (7)
この間隔の大きさは4Δ/cである。tsv2の整数ミリ秒部分を不確実性無しに再構成するには、この間隔が1ミリ秒未満である必要がある。従って、
4Δ/c<0.001 (8)
【0088】
これから、以下の要件が導かれる。
Δ<c*0.001/4 〜 75km (9)
[参考文献]
[1]Navstar GPS Space Segment/Navigation user Interfaces、ICD−GPS−200、Revision IRN−200C−003、1999年10月11日
[2]Parkinson、Spilker Global Positioning System:Theory and Applications、Volume 1、AIAA、1996年
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明が適用される移動局アシステッドAGPSのシナリオの一例の概略図である。
【図2】GPS測距信号の中のC/Aコードと航法データビットとを図解する図である。
【図3】GPS測距信号の中のGPS航法データのフォーマットを図解するブロック図である。
【図4】図1に図解されたシステムのさまざまな部分における時刻を図解する図である。
【図5】本発明の基本的な方法を図解するフロー図であり、衛星からの測距信号を測定するステップと、衛星からの測距信号に関する測定に基づいて位置を計算するステップとをそれぞれ図解している。
【図6】本発明の第1の典型的な実施形態による移動局の概略ブロック図である。
【図7】図6の移動局によって行われる処理を図解するフロー図である。
【図8】ビットエッジ同期に関連する相関を図解するブロック図である。
【図9】位置サーバの概略ブロック図である。
【図10】測定報告信号フォーマットの典型的な実施形態を図解するブロック図である。
【図11】不確実性無しに疑似距離の再構成を依然として提供するために先行技術のAGPSが対処可能な、当初の位置不確実性の限界を導出するための最悪の場合のシナリオを図解する図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動局(MS1)が衛星(SV1−SV4)から受信した、拡散符号(203)によって拡散されたデータビット(202)のストリーム(201)をそれぞれが含む測距信号(RS1−RS4)に関する測定結果を報告するための、前記移動局(MS1)における方法であって、前記受信した測距信号(RS1−RS4)のうちの少なくとも1つに対して、
前記データビット(202)のストリーム(201)においてデータビットエッジに同期するステップ(501,702−703)と、
選択された時刻点に関して、前記データビット(202)のストリーム(201)に関するデータビット長を法とした、時刻位置を測定するステップ(502,706)と、
を備え、
前記測定された時刻位置を表すデータを含む信号を無線で送信するステップ(503,707)を更に備える
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記同期するステップと前記測定するステップとは、複数の受信した測距信号(RS1−RS4)に対して実行され、
前記無線で送信される信号は、前記複数の受信した測距信号それぞれに対して前記選択された時刻点に関して前記測定された時刻位置を表すデータを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
移動局(MS1)が衛星(SV1−SV4)から受信した、拡散符号(203)によって拡散されたデータビット(202)のストリーム(201)をそれぞれが含む測距信号(RS1−RS4)に関する測定結果に基づいて前記移動局の位置を計算するための、前記移動局(MS1)における方法であって、前記受信した測距信号(RS1−RS4)のうちの少なくとも1つに対して、
前記データビット(202)のストリーム(201)においてデータビットエッジに同期するステップ(501,702−703)と、
選択された時刻点に関して、前記データビット(202)のストリーム(201)に関するデータビット長を法とした、時刻位置を測定するステップ(502,706)と、
を備え、
前記選択された時刻点に関して前記データビットのストリームに対して前記測定された時刻位置、および無線通信ネットワーク(NET1)の少なくとも1つの基地局(RBS1,RBS2)を介して前記移動局(MS1)が受信した支援データを利用して、前記移動局の位置を計算するステップを更に備える
ことを特徴とする方法。
【請求項4】
前記同期するステップと前記測定するステップとは、複数の受信した測距信号(RS1−RS4)に対して実行され、
前記位置の計算は、前記複数の受信した測距信号(RS1−RS4)それぞれに対して前記選択された時刻点に関して前記測定された時刻位置を利用して実行される
ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記測定するステップは、前記選択された時刻点に関して、前記データビットのストリームにおいて隣接するビットエッジに対する時刻位置を判断するステップを含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記隣接するビットエッジは、前記選択された時刻点の後に続く最も近いビットエッジであることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記隣接するビットエッジは、前記選択された時刻点に先行する最も近いビットエッジであることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記衛星は、全地球測位システムの一部であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記拡散符号は、Coarse Acquisitionコードであり、
前記データビットのストリームは、前記全地球測位システムの規格におけるフォーマットに従う航法データビットのストリームである
ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記同期するステップは、
Coarse Acquisitionコード境界を判断するステップ(702)と、
航法データビットエッジを判断するステップ(703)と、
を含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
移動局が衛星(SV1−SV4)から受信した、拡散符号(203)によって拡散されたデータビット(202)のストリーム(201)をそれぞれが含む測距信号(RS1−RS4)に関する測定を実行する装置であって、
少なくとも1つの受信した測距信号のデータビットの前記ストリームにおいてデータビットエッジに同期する同期手段(602)と、
選択された時刻点に関して、前記少なくとも1つの受信した測距信号のデータビットの前記ストリームに関するデータビット長を法とした、時刻位置を測定する測定手段(602)と、
前記測定された時刻位置を表すデータを含む信号を無線で送信する送信手段(601)と、
を備えることを特徴とする装置。
【請求項12】
前記同期手段と前記測定手段とは、複数の受信した測距信号(RS1−RS4)に関して動作するように適合され、
前記送信手段は、前記複数の受信した測距信号それぞれに対して前記選択された時刻点に関して前記測定された時刻位置を表すデータを前記信号に含ませるように適合される
ことを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
移動局が衛星(SV1−SV4)から受信した、拡散符号(203)によって拡散されたデータビット(202)のストリーム(201)をそれぞれが含む測距信号(RS1−RS4)に関する測定結果に基づいて前記移動局の位置を計算する装置であって、
少なくとも1つの受信した測距信号のデータビットの前記ストリームにおいてデータビットエッジに同期する同期手段(602)と、
選択された時刻点に関して、前記少なくとも1つの受信した測距信号のデータビットの前記ストリームに関するデータビット長を法とした、時刻位置を測定する測定手段(602)と、
前記選択された時刻点に関して前記データビットのストリームに対して前記測定された時刻位置、および無線通信ネットワーク(NET1)の少なくとも1つの基地局(RBS1,RBS2)を介して前記移動局が受信した支援データを利用して、前記移動局の位置を計算する計算手段と、
を備えることを特徴とする装置。
【請求項14】
前記同期手段と前記測定手段とは、複数の受信した測距信号に関して動作するように適合され、
前記計算手段は、前記複数の受信した測距信号それぞれに対して前記選択された時刻点に関して前記測定された時刻位置を活用するように適合される
ことを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記測定手段は、前記選択された時刻点に関して、前記データビットのストリームにおいて隣接するビットエッジに対する時刻位置を判断するように適合されることを特徴とする請求項11乃至14のいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】
前記隣接するビットエッジは、前記選択された時刻点の後に続く最も近いビットエッジであることを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記隣接するビットエッジは、前記選択された時刻点に先行する最も近いビットエッジであることを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項18】
前記衛星は、全地球測位システムの一部であることを特徴とする請求項11乃至17のいずれか1項に記載の装置。
【請求項19】
前記拡散符号は、Coarse Acquisitionコードであり、
前記データビットのストリームは、前記全地球測位システムの規格におけるフォーマットに従う航法データビットのストリームである
ことを特徴とする請求項18に記載の装置。
【請求項20】
請求項11乃至19のいずれか1項に記載の装置を含む移動局(MS1)。
【請求項21】
移動局(MS1)が衛星(SV1−SV4)から受信した、拡散符号(203)によって拡散されたデータビット(202)のストリーム(201)をそれぞれが含む測距信号(RS1−RS4)に関する測定結果を報告する、デジタルデータストリーム内に組み込まれた測定報告信号(1001)であって、
少なくとも1つの受信した測距信号について、選択された時刻点に関して、前記少なくとも1つの受信した測距信号における前記データビットのストリームに関するデータビット長を法とした時刻位置を表すデータ(1003−1005)を含む
ことを特徴とする測定報告信号。
【請求項22】
前記選択された時刻点に関して、複数の受信した測距信号における前記データビットのストリームに対する前記位置を表すデータを含むことを特徴とする請求項21に記載の測定報告信号。
【請求項23】
前記選択された時刻点に関して前記測定報告信号に含まれるデータによって表されるそれぞれの時刻位置は、前記選択された時刻点に隣接するビットエッジに対する時刻位置であることを特徴とする請求項21又は22に記載の測定報告信号。
【請求項24】
それぞれの拡散符号(203)は、有限長のチップシーケンスを含み、
前記選択された時刻点に関するそれぞれの時刻位置は、前記測定報告信号において、前記選択された時刻点から次の拡散符号の繰り返しまでの完全なチップ(1003)と断片のチップ(1004)との数と、前記選択された時刻点に先行する最も近いビットエッジと前記選択された時刻点との間における拡散符号の繰り返しの整数(1005)と、を含むデータによって表される
ことを特徴とする請求項21乃至23のいずれか1項に記載の測定報告信号。
【請求項25】
前記衛星は、全地球測位システムの一部であることを特徴とする請求項21乃至24のいずれか1項に記載の測定報告信号。
【請求項26】
前記拡散符号は、Coarse Acquisitionコードであり、
前記データビットのストリームは、前記全地球測位システムの規格におけるフォーマットに従う航法データビットのストリームである
ことを特徴とする請求項25に記載の測定報告信号。
【請求項27】
移動局(MS1)の位置を計算する装置(101)であって、
請求項21乃至26のいずれか1項に記載の測定報告信号を受信する手段(901)と、
前記測定報告信号において報告された少なくとも1つの時刻位置を利用して前記移動局の位置を計算する手段(903)と、
を備えることを特徴とする装置。
【請求項1】
移動局(MS1)が衛星(SV1−SV4)から受信した、拡散符号(203)によって拡散されたデータビット(202)のストリーム(201)をそれぞれが含む測距信号(RS1−RS4)に関する測定結果を報告するための、前記移動局(MS1)における方法であって、前記受信した測距信号(RS1−RS4)のうちの少なくとも1つに対して、
前記データビット(202)のストリーム(201)においてデータビットエッジに同期するステップ(501,702−703)と、
選択された時刻点に関して、前記データビット(202)のストリーム(201)に関するデータビット長を法とした、時刻位置を測定するステップ(502,706)と、
を備え、
前記測定された時刻位置を表すデータを含む信号を無線で送信するステップ(503,707)を更に備える
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記同期するステップと前記測定するステップとは、複数の受信した測距信号(RS1−RS4)に対して実行され、
前記無線で送信される信号は、前記複数の受信した測距信号それぞれに対して前記選択された時刻点に関して前記測定された時刻位置を表すデータを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
移動局(MS1)が衛星(SV1−SV4)から受信した、拡散符号(203)によって拡散されたデータビット(202)のストリーム(201)をそれぞれが含む測距信号(RS1−RS4)に関する測定結果に基づいて前記移動局の位置を計算するための、前記移動局(MS1)における方法であって、前記受信した測距信号(RS1−RS4)のうちの少なくとも1つに対して、
前記データビット(202)のストリーム(201)においてデータビットエッジに同期するステップ(501,702−703)と、
選択された時刻点に関して、前記データビット(202)のストリーム(201)に関するデータビット長を法とした、時刻位置を測定するステップ(502,706)と、
を備え、
前記選択された時刻点に関して前記データビットのストリームに対して前記測定された時刻位置、および無線通信ネットワーク(NET1)の少なくとも1つの基地局(RBS1,RBS2)を介して前記移動局(MS1)が受信した支援データを利用して、前記移動局の位置を計算するステップを更に備える
ことを特徴とする方法。
【請求項4】
前記同期するステップと前記測定するステップとは、複数の受信した測距信号(RS1−RS4)に対して実行され、
前記位置の計算は、前記複数の受信した測距信号(RS1−RS4)それぞれに対して前記選択された時刻点に関して前記測定された時刻位置を利用して実行される
ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記測定するステップは、前記選択された時刻点に関して、前記データビットのストリームにおいて隣接するビットエッジに対する時刻位置を判断するステップを含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記隣接するビットエッジは、前記選択された時刻点の後に続く最も近いビットエッジであることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記隣接するビットエッジは、前記選択された時刻点に先行する最も近いビットエッジであることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記衛星は、全地球測位システムの一部であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記拡散符号は、Coarse Acquisitionコードであり、
前記データビットのストリームは、前記全地球測位システムの規格におけるフォーマットに従う航法データビットのストリームである
ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記同期するステップは、
Coarse Acquisitionコード境界を判断するステップ(702)と、
航法データビットエッジを判断するステップ(703)と、
を含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
移動局が衛星(SV1−SV4)から受信した、拡散符号(203)によって拡散されたデータビット(202)のストリーム(201)をそれぞれが含む測距信号(RS1−RS4)に関する測定を実行する装置であって、
少なくとも1つの受信した測距信号のデータビットの前記ストリームにおいてデータビットエッジに同期する同期手段(602)と、
選択された時刻点に関して、前記少なくとも1つの受信した測距信号のデータビットの前記ストリームに関するデータビット長を法とした、時刻位置を測定する測定手段(602)と、
前記測定された時刻位置を表すデータを含む信号を無線で送信する送信手段(601)と、
を備えることを特徴とする装置。
【請求項12】
前記同期手段と前記測定手段とは、複数の受信した測距信号(RS1−RS4)に関して動作するように適合され、
前記送信手段は、前記複数の受信した測距信号それぞれに対して前記選択された時刻点に関して前記測定された時刻位置を表すデータを前記信号に含ませるように適合される
ことを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
移動局が衛星(SV1−SV4)から受信した、拡散符号(203)によって拡散されたデータビット(202)のストリーム(201)をそれぞれが含む測距信号(RS1−RS4)に関する測定結果に基づいて前記移動局の位置を計算する装置であって、
少なくとも1つの受信した測距信号のデータビットの前記ストリームにおいてデータビットエッジに同期する同期手段(602)と、
選択された時刻点に関して、前記少なくとも1つの受信した測距信号のデータビットの前記ストリームに関するデータビット長を法とした、時刻位置を測定する測定手段(602)と、
前記選択された時刻点に関して前記データビットのストリームに対して前記測定された時刻位置、および無線通信ネットワーク(NET1)の少なくとも1つの基地局(RBS1,RBS2)を介して前記移動局が受信した支援データを利用して、前記移動局の位置を計算する計算手段と、
を備えることを特徴とする装置。
【請求項14】
前記同期手段と前記測定手段とは、複数の受信した測距信号に関して動作するように適合され、
前記計算手段は、前記複数の受信した測距信号それぞれに対して前記選択された時刻点に関して前記測定された時刻位置を活用するように適合される
ことを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記測定手段は、前記選択された時刻点に関して、前記データビットのストリームにおいて隣接するビットエッジに対する時刻位置を判断するように適合されることを特徴とする請求項11乃至14のいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】
前記隣接するビットエッジは、前記選択された時刻点の後に続く最も近いビットエッジであることを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記隣接するビットエッジは、前記選択された時刻点に先行する最も近いビットエッジであることを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項18】
前記衛星は、全地球測位システムの一部であることを特徴とする請求項11乃至17のいずれか1項に記載の装置。
【請求項19】
前記拡散符号は、Coarse Acquisitionコードであり、
前記データビットのストリームは、前記全地球測位システムの規格におけるフォーマットに従う航法データビットのストリームである
ことを特徴とする請求項18に記載の装置。
【請求項20】
請求項11乃至19のいずれか1項に記載の装置を含む移動局(MS1)。
【請求項21】
移動局(MS1)が衛星(SV1−SV4)から受信した、拡散符号(203)によって拡散されたデータビット(202)のストリーム(201)をそれぞれが含む測距信号(RS1−RS4)に関する測定結果を報告する、デジタルデータストリーム内に組み込まれた測定報告信号(1001)であって、
少なくとも1つの受信した測距信号について、選択された時刻点に関して、前記少なくとも1つの受信した測距信号における前記データビットのストリームに関するデータビット長を法とした時刻位置を表すデータ(1003−1005)を含む
ことを特徴とする測定報告信号。
【請求項22】
前記選択された時刻点に関して、複数の受信した測距信号における前記データビットのストリームに対する前記位置を表すデータを含むことを特徴とする請求項21に記載の測定報告信号。
【請求項23】
前記選択された時刻点に関して前記測定報告信号に含まれるデータによって表されるそれぞれの時刻位置は、前記選択された時刻点に隣接するビットエッジに対する時刻位置であることを特徴とする請求項21又は22に記載の測定報告信号。
【請求項24】
それぞれの拡散符号(203)は、有限長のチップシーケンスを含み、
前記選択された時刻点に関するそれぞれの時刻位置は、前記測定報告信号において、前記選択された時刻点から次の拡散符号の繰り返しまでの完全なチップ(1003)と断片のチップ(1004)との数と、前記選択された時刻点に先行する最も近いビットエッジと前記選択された時刻点との間における拡散符号の繰り返しの整数(1005)と、を含むデータによって表される
ことを特徴とする請求項21乃至23のいずれか1項に記載の測定報告信号。
【請求項25】
前記衛星は、全地球測位システムの一部であることを特徴とする請求項21乃至24のいずれか1項に記載の測定報告信号。
【請求項26】
前記拡散符号は、Coarse Acquisitionコードであり、
前記データビットのストリームは、前記全地球測位システムの規格におけるフォーマットに従う航法データビットのストリームである
ことを特徴とする請求項25に記載の測定報告信号。
【請求項27】
移動局(MS1)の位置を計算する装置(101)であって、
請求項21乃至26のいずれか1項に記載の測定報告信号を受信する手段(901)と、
前記測定報告信号において報告された少なくとも1つの時刻位置を利用して前記移動局の位置を計算する手段(903)と、
を備えることを特徴とする装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2008−516222(P2008−516222A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−535255(P2007−535255)
【出願日】平成16年10月11日(2004.10.11)
【国際出願番号】PCT/IB2004/052040
【国際公開番号】WO2006/040616
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(598036300)テレフオンアクチーボラゲット エル エム エリクソン(パブル) (2,266)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月11日(2004.10.11)
【国際出願番号】PCT/IB2004/052040
【国際公開番号】WO2006/040616
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(598036300)テレフオンアクチーボラゲット エル エム エリクソン(パブル) (2,266)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]