説明

衝撃吸収ユニットおよびリクライニング装置

【課題】好適に後突衝撃を吸収しながら、既存の車両用シートに後付け可能な衝撃吸収ユニットおよびリクライニング装置を提供する。
【解決手段】衝撃吸収部材25は、シートクッション11にリクライニング機構21等を介して連結されるリム部31が外周側になり、シートバック12に26等を介して連結されるハブ部32が内周側になるように、両部材31,32が同軸的に回動可能に各スポーク部33により連結されて構成されている。そして、各スポーク部33の半径方向中間部位には、周方向の幅を狭くした幅狭部33bがそれぞれ設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートのシートクッションに対してシートバックを傾動させるリクライング装置に用いられる衝撃吸収ユニットおよびこの衝撃吸収ユニットを備えるリクライニング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用シートは、一般に、座部となるシートクッションに対して背部となるシートバックがリクライング装置によって、傾動つまりシートクッションに対する傾き角度が調整できるようになっていて、着座者により快適な着座状態を提供している。
【0003】
一方、車両に追突事故が発生した場合、着座者は車両用シートのシートバックに強く押し付けられる後突衝撃を受けるが、この後突衝撃の影響をできるだけ少なくするため、この後突衝撃を吸収しながら、シートクッションに対してシートバックの後方への傾きを序序に変化させる後突衝撃吸収技術が提案されている。
【0004】
図6(A)は、そのような後突衝撃吸収技術のうち、本発明の背景技術となる車両用衝撃吸収シートを示す図であり、図6(B)は図6(A)の要部詳細図であり、特許文献1に記載されたものである。
【0005】
この車両用衝撃吸収シート1は、シートクッション2と、このシートクッション2に対して傾動可能なシートバック3と、このシートバック3の上方に出し入れ可能に設置されたベッドレスト4とを備えている。
【0006】
シートクッション2の骨格となる座部フレーム5と、シートバック3の骨格となる背部フレーム6とが、座部フレーム5の端部に回動可能に設置された背部基端フレーム7により連結されて、シートバック3がシートクッション2に対して傾動可能となっている。
【0007】
このような構成において、この車両用衝撃吸収シート1は、背部基端フレーム7に対して背部フレーム6を固定連結する部分を、衝撃吸収部8とした点を特徴とする。
【0008】
衝撃吸収部8は、背部基端フレーム7と背部フレーム6との重なり部分で、その重なりの長手方向の両端と中央に設けられ、双方をボルト・ナット手段で固定締結することを基本とするフューズ機構8aと、リバウンド抑制素子8bと、支点部8cとを備えている。
【0009】
フューズ機構8a、リバウンド抑制素子8b、支点部8cは、それぞれ、このシート1の前方側(図6(A)の左側、シートクッション2側)から、後方側(図6(A)の右側、シートバック3側)となるように配置されている。
【0010】
フューズ機構8aは、背部フレーム6に設けられた固定孔に遊び無く挿通されるフューズボルト6aと、背部基端フレーム7に設けられ、通常状態(後突衝撃のない状態)でフューズボルト6aを遊び無く挿通させる挿通孔と、これに連続して設けられ、一旦前記挿通孔より小径となり序序に該挿通孔の径となるように拡径しているテーパー状衝撃吸収溝とを備えた長穴状のフューズ孔7aとを備えている。
【0011】
リバウンド抑制素子8bは、背部フレーム6側に設けられた固定孔により小径の先端側が遊び無く挿通され、首下側により大径の部分を備えたリバウンド抑制ボルト6bと、通常状態(後突衝撃のない状態)で、リバウンド抑制ボルト6bの小径先端側を遊び無く挿通させる挿通孔とこれに連続して設けられ、後突衝撃吸収時に、リバウンド抑制ボルト6bの大径首下側を遊び無く挿通させる大径孔とを備えた長穴状のリバウンド抑制孔7bとを備えている。
【0012】
支点部8cは、背部フレーム6に設けられた固定孔に遊び無く挿通される支点ボルト6cと、背部基端フレーム7に設けられ常に支点ボルト6cを遊び無く挿通させる支点孔7cとを備えている。
【0013】
後突衝撃(図6(A)で白矢印で示す)を受けると、背部フレーム6が背部基端フレーム7に対して後に傾き、その際、衝撃吸収部8においては、支点部8cを中心としてフューズ機構8aとリバウンド抑制素子8bとがその長穴の範囲内で、背部フレーム6の後傾を許容し、その後傾間に後突衝撃のエネルギーを吸収する。
【0014】
つまり、フューズ機構8aは、フューズボルト6aがフューズ孔7aを拡大変形させながら、このフューズ孔7a内を大径方向に移動することで、後方への後突衝撃エネルギーを吸収する。
【0015】
一方、リバウンド抑制素子8bは、背部フレーム6が最大限後傾した際に、リバウンド抑制ボルト6bの大径首下側がリバウンド抑制孔7bの大径孔に嵌まり込んで、背部フレーム6がリバウンドするのを抑制し、このリバウンドエネルギーを吸収する。
【0016】
なお、この衝撃吸収部8の詳細は、特許文献1の記載に譲る。
【0017】
こうして、この衝撃吸収部8を備えた車両用衝撃吸収シート1によれば、リバウンド抑制素子により、「着座者の上体のリバウンド運動は確実に抑制され(特許文献1の段落[0060])」、また、フューズ機構により「後突の際の衝撃エネルギーが確実に吸収(特許文献1の段落[0062])」される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開平10−309968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、この車両用衝撃吸収シート1においては、シートバックフレーム(背部フレーム6と背部基端フレーム7)に一体に衝撃吸収部8を設けたものであり、つまり、いずれもシートバック3側となる背部フレーム6と背部基端フレーム7との間に衝撃吸収部8を設けたものであり、従来のシートに後付けできない、という問題があると本出願人には思われた。
【0020】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、好適に後突衝撃を吸収しながら、既存の車両用シートに後付け可能な衝撃吸収ユニットおよびリクライニング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1の衝撃吸収ユニットでは、車両用シートのシートクッションに対してシートバックを傾動させるリクライング装置に用いられる衝撃吸収ユニットであって、前記シートクッションに連結されるためのシートクッション側部材と、前記シートバックに連結されて前記傾動時に前記シートクッション側部材に対して相対回動するためのシートバック側部材と、前記シートクッション側部材および前記シートバック側部材のいずれか一方が外周側であり他方が内周側になるように両部材を同軸的に回動可能に連結する複数の連結部と、を備え、前記各連結部の半径方向中間部位には、周方向の幅を狭くした幅狭部がそれぞれ設けられることを特徴とする。
【0022】
請求項2の発明は、請求項1に記載の衝撃吸収ユニットにおいて、前記シートクッション側部材および前記シートバック側部材は、前記各連結部により同軸的に回動可能であって一体的に連結されることを特徴とする。
【0023】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の衝撃吸収ユニットにおいて、前記シートクッション側部材および前記シートバック側部材は、前記各連結部により同一平面上にて同軸的に回動可能に連結されることを特徴とする。
【0024】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の衝撃吸収ユニットにおいて、前記幅狭部の周方向の幅寸法は、前記シートバックを後方へ傾動させる衝撃に応じて前記シートバック側部材が前記シートクッション側部材に対して相対回動するように前記各連結部が塑性変形し始めるときの前記衝撃に基づいて設定されることを特徴とする。
【0025】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の衝撃吸収ユニットにおいて、前記幅狭部は、前記シートバックを後方へ傾動させる衝撃に応じて前記シートバック側部材が回動する方向を後倒回動方向とするとき、前記各連結部の半径方向中間部位のうち反後倒回動方向側に切欠部を設けることでこの切欠部の後倒回動方向側に形成され、前記切欠部は、後倒回動方向側ほど半径方向の幅が狭くなるように形成されることを特徴とする。
【0026】
請求項6の発明は、請求項5に記載の衝撃吸収ユニットにおいて、前記切欠部の半径方向の幅寸法は、前記シートバックを後方へ傾動させる衝撃が作用する際に前記シートバック側部材と前記シートクッション側部材との相対回動が許容される回動角度に基づいて設定されることを特徴とする。
【0027】
請求項7のリクライニング装置では、車両用シートのシートクッションに対してシートバックを傾動させるリクライング装置であって、請求項1〜6のいずれか一項に記載の衝撃吸収ユニットを備え、前記シートクッション側部材が前記シートクッションに連結されるとともに前記シートバック側部材が前記シートバックに連結されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
請求項1の発明では、シートクッションに連結されるシートクッション側部材およびシートバックに連結されるシートバック側部材のいずれか一方が外周側であり他方が内周側になるように、両部材が同軸的に回動可能に複数の連結部により連結されている。そして、各連結部の半径方向中間部位には、周方向の幅を狭くした幅狭部がそれぞれ設けられている。
【0029】
これにより、例えば、追突された車両に搭乗している着座者が車両用シートのシートバックに強く押し付けられる等によりシートバックを後方へ傾動させる後突衝撃が作用すると、この後突衝撃に応じてシートバック側部材を急激に回動させる回動力が作用する。そして、シートクッションに連結されるシートクッション側部材は現回動位置を維持することから、上記回動力が各連結部のうちシートバック側部材に連結する部位のみを回動させるように作用する。
【0030】
このとき、各連結部の半径方向中間部位には周方向の幅を狭くした幅狭部がそれぞれ設けられているので、上記回動力に応じて各幅狭部を起点に塑性変形が始まることとなる。このように各幅狭部が設けられていることから、各連結部がいきなり破断することなく上記回動力に応じて各幅狭部近傍が徐々に塑性変形するので、この塑性変形により上記回動力、すなわち、シートバックに作用する後突衝撃を好適に吸収することができる。また、衝撃吸収ユニットは、車両用シートのリクライニング装置のシートクッション側、あるいは、シートバック側に設置できるようなユニットとして構成することができるので、シートクッション側部材およびシートバック側部材の取り回り寸法や、関連部品を考慮することで、既設の車両用シートのリクライニング装置に後付け設置が可能となる。
したがって、リクライニング装置において上記衝撃吸収ユニットを採用することにより、好適に後突衝撃を吸収しながら、既存の車両用シートに後付けすることができる。
【0031】
請求項2の発明では、シートクッション側部材およびシートバック側部材は、各連結部により同軸的に回動可能であって一体的に連結されるので、当該衝撃吸収ユニットを採用することによるリクライニング装置の組付作業性の低下を抑制することができる。
【0032】
請求項3の発明では、シートクッション側部材およびシートバック側部材は、各連結部により同一平面上にて同軸的に回動可能に連結されるため、当該衝撃吸収ユニットを採用することによる回動軸方向の長さが短縮されるので、当該衝撃吸収ユニットを採用することによるリクライニング装置の省スペース化を図ることができる。
【0033】
請求項4の発明では、幅狭部の周方向の幅寸法は、シートバックを後方へ傾動させる衝撃に応じてシートバック側部材がシートクッション側部材に対して相対回動するように各連結部が塑性変形し始めるときの当該衝撃に基づいて設定されるため、例えば、想定される後突衝撃が大きくなるほど幅狭部の周方向の幅寸法を大きく設定することにより、当該後突衝撃を各連結部の塑性変形でもって好適に吸収することができる。
【0034】
請求項5の発明では、幅狭部は、各連結部の半径方向中間部位のうち反後倒回動方向側に切欠部を設けることでこの切欠部の後倒回動方向側に形成され、切欠部は、後倒回動方向側ほど半径方向の幅が狭くなるように形成される。
【0035】
これにより、後倒回動方向に作用する回動力に応じて各連結部が幅狭部を起点として塑性変形し始めると、幅狭部近傍が後倒回動方向に移動するので、切欠部が潰れるように塑性変形することとなる。そして、切欠部が潰れてしまい切欠部を構成する両切欠面が互いに当接してしまうとさらなる後突衝撃が作用しない限り幅狭部近傍の塑性変形が止まるので、シートクッション側部材に対するシートバック側部材の相対回動が所定の回動角度で止まり、シートバックの後方への傾動が停止する。したがって、後突衝撃を各連結部の塑性変形でもって好適に吸収するとともに、この衝撃吸収時のシートバックの後方への傾動を所定の傾動位置で止めることができる。
【0036】
請求項6の発明では、切欠部の半径方向の幅寸法は、シートバックを後方へ傾動させる衝撃が作用する際にシートバック側部材とシートクッション側部材との相対回動が許容される回動角度に基づいて設定される。
【0037】
幅狭部近傍の塑性変形時に切欠部の両切欠面が互いに当接するときに、シートクッション側部材に対するシートバック側部材の相対回動が所定の回動角度で止まるので、上記相対回動が許容される回動角度(以下、許容相対回動角度という)に基づいて切欠部の切欠形状の寸法、すなわち、半径方向の幅寸法を設定することにより、塑性変形時にはシートバック側部材がシートクッション側部材に対して許容相対回動角度まで回動することとなる。この許容相対回動角度は、後突衝撃によりシートクッションに対するシートバックの後方への傾動が許容される許容相対傾動角度に相当するので、想定される許容相対傾動角度に基づいて切欠部の半径方向の幅寸法を設定することにより、衝撃吸収ユニットによる衝撃吸収時のシートバックの後方への傾動角度を調整することができる。
【0038】
請求項7の発明では、請求項1〜6のいずれか一項に記載の衝撃吸収ユニットを備え、シートクッション側部材がシートクッションに連結されるとともにシートバック側部材がシートバックに連結されるので、好適に後突衝撃を吸収しながら既存の車両用シートに後付けすることができる等の、請求項1〜6の各発明による作用・効果を享受したリクライニング装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の衝撃吸収部材25を備えるリクライニング装置20を採用する車両用シート10の一例を概念的に示す側面図である。
【図2】図1のリクライニング装置20の斜視図である。
【図3】図1のリクライニング装置20の分解斜視図である。
【図4】図4(A)は、衝撃吸収部材25の正面図であり、図4(B)は、側面図である。
【図5】図5(A)は、後突衝撃が作用しない状態の衝撃吸収部材25を示す一部正面図であり、図5(B)は、後突衝撃が作用した状態の衝撃吸収部材25を示す一部正面図である。
【図6】図6(A)は、本発明の背景技術となる車両用衝撃吸収シートを示す図であり、図6(B)は図6(A)の要部詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明に係る衝撃吸収部材25が適用されたリクライニング装置20を搭載する車両用シート10の一実施形態について図を参照して説明する。
本発明の衝撃吸収部材25を備えた車両用シート10は、着座者の座部を受けるシートクッション11と、このシートクッション11に対して傾動可能であって着座者の背部を受けるシートバック12とを備えている。
【0041】
シートクッション11の骨格となる座部フレーム11aと、シートバック12の骨格となる背部フレーム12aとが、座部フレーム11aの端部に設置されたリクライニング装置20により連結されて、当該リクライニング装置20の操作レバー(図示略)の操作に応じて、シートバック12がシートクッション11に対して傾動可能となっている。
【0042】
図2および図3に示すように、リクライニング装置20は、リクライニング機構21と、ボス22と、第1プレート23と、第2プレート24と、衝撃吸収部材25と、シートバック側プレート26とを備えている。
【0043】
リクライニング機構21は、本体フレーム21aとこの本体フレーム21aに対して相対回動可能に支持される回動軸21bとを備えており、本体フレーム21aは、座部フレーム11aに対して固定可能に形成されるとともに、シートバック側には第1プレート23と連結するための複数の突起21cが周方向等間隔に形成されている。
【0044】
回動軸21bは、上記操作レバーの操作により本体フレーム21aに対して相対回動するように構成されており、回動軸21bの先端にはセレーション部21dが形成されている。このセレーション部21dが背部フレーム12aの連結軸(不図示)に回転位相調整可能に挿嵌されることにより、背部フレーム12aと回動軸21bとが当該回動軸21bを中心に同期回動するように構成されている。
【0045】
第1プレート23は、中心側円盤部23aと外周側円盤部23bとの間に段差のある段付きの円盤状に形成されており、中心側円盤部23aには本体フレーム21aの各突起21cに係合可能な複数の貫通孔23cが周方向等間隔に形成され、外周側円盤部23bには当該第1プレート23と第2プレート24および衝撃吸収部材25を連結するための4つの貫通孔23dが周方向等間隔に形成されている。また、中心側円盤部23aは、その内周面にてボス22の外周面に係合可能に形成されている。
【0046】
第2プレート24は、円環状に形成される円環部24aとその内縁の一部から軸方向に平行に突出する4つのストッパ24bとを備えている。円環部24aには、各貫通孔23dにそれぞれ対応する貫通孔24cが周方向等間隔に4つ形成されている。
【0047】
衝撃吸収部材25は、適度の可撓性を有する鋼板から板金加工により製造されるもので、素材となる鋼板の板厚は、当該衝撃吸収部材25の一部が後述するように後突衝撃を受けて塑性変形して、その後突衝撃エネルギーを吸収できるということを考慮して決定される。
【0048】
図4(A)(B)に示すように、衝撃吸収部材25は、略円環状のリム部31と、略円環状のハブ部32と、4つのスポーク部33とを備えており、リム部31の内縁の一部およびハブ部32部の外縁の一部が各スポーク部33により同一平面上にて同軸的に回動可能であって一体的に連結されている。なお、衝撃吸収部材25は、特許請求の範囲に記載の「衝撃吸収ユニット」の一例に相当する。また、リム部31、ハブ部32およびスポーク部33は、特許請求の範囲に記載の「シートクッション側部材」、「シートバック側部材」および「連結部」の一例に相当する。
【0049】
リム部31には、各スポーク部33に連結される部位の間に、各貫通孔23dおよび各貫通孔24cにそれぞれ対応する貫通孔31aが周方向等間隔に4つ形成されている。
【0050】
ハブ部32のシートバック側には、シートバック側プレート26と連結するための複数の突起32aが周方向等間隔に形成されている。また、ハブ部32は、第1プレート23の中心側円盤部23aと同様に、その内周面にてボス22の外周面に係合可能に形成されている。
【0051】
衝撃吸収部材25の外周側であるリム部31は、第2プレート24、第1プレート23およびリクライニング機構21を介して座部フレーム11aに連結され、衝撃吸収部材25の内周側であるハブ部32は、シートバック側プレート26を介して背部フレーム12aに連結される。このため、例えば、追突された車両に搭乗している着座者が車両用シート10のシートバック12に強く押し付けられる等によりシートバック12を後方へ傾動させる後突衝撃が作用する際には、ハブ部32に対して図4(A)における時計方向(以下、後倒回動方向αという)に回動させる回動力が作用することとなる。
【0052】
上記回動力を緩和するために、各スポーク部33の半径方向中間部位にうち後倒回動方向αとは反対側に略V字状の切欠部33aを設けることで周方向の幅を狭くした幅狭部33bがそれぞれ設けられている。切欠部33aの形状および幅狭部33bの周方向の幅寸法の設定については後述する。
【0053】
シートバック側プレート26は、その上端部に背部フレーム12aに連結するための貫通孔26aが形成されるとともに、その下端部にボス部26bがシートクッション側に突出するように形成されている。このボス部26bには、ハブ部32の各突起32aに係合可能な複数の貫通孔26cが周方向等間隔に形成されている。
【0054】
上述のように構成されるリクライニング装置20は、以下のようにして組み付けられる。まず、第1プレート23の中心側円盤部23aにボス22を係合した後、このボス22にリクライニング機構21の回動軸21bを挿通させるとともに第1プレート23の各貫通孔23cにリクライニング機構21の各突起21cをそれぞれ係合させて溶接することで、リクライニング機構21の本体フレーム21aに第1プレート23を固定する。そして、第2プレート24の各ストッパ24bを衝撃吸収部材25の各スポーク部33間に挿入するとともに中心側円盤部23aに係合したボス22をハブ部32に係合し、貫通孔31a、貫通孔24cおよび貫通孔23dをそれぞれ位置合わせした状態でリベット27でかしめることで、第2プレート24および衝撃吸収部材25を第1プレート23に固定する。そして、衝撃吸収部材25の各突起32aをシートバック側プレート26の貫通孔26cにそれぞれ係合させて溶接することで、衝撃吸収部材25にシートバック側プレート26を固定する。これにより、図2に示すリクライニング装置20が完成する。
【0055】
このようにリクライニング装置20が構成されているため、衝撃吸収部材25を採用していない既存のリクライニング装置に対して、リクライニング機構21とシートバック側プレート26とを連結する各部材に代えて、これら各部材の取り回り寸法や、関連部品を考慮した衝撃吸収部材25や両プレート23,24を取り付けるだけで後突衝撃を好適に吸収可能であり、既存の車両用シートに対して容易に後付け設置することができる。
【0056】
また、衝撃吸収部材25のリム部31およびハブ部32が各スポーク部33により同軸的に回動可能であって一体的に連結されているので、各部材が別部材としてそれぞれ組み付けて衝撃吸収ユニットを構成する場合と比較して、当該衝撃吸収部材25を採用することによるリクライニング装置20の組付作業性の低下が抑制される。
【0057】
また、衝撃吸収部材25のリム部31およびハブ部32が各スポーク部33により同一平面上にて同軸的に回動可能に連結されているため、当該衝撃吸収部材25を採用することによる回動軸方向の長さが短縮されるので、リクライニング装置20の省スペース化を図ることができる。
【0058】
次に、衝撃吸収部材25による作用効果を図5(A)(B)を用いて説明する。
シートバック12に対して上述したような後突衝撃が作用しない場合には、図5(A)に示すように、リム部31とハブ部32との相対回動位置が維持されて各スポーク部33が塑性変形することもない。
【0059】
一方、例えば、追突された車両に搭乗している着座者が車両用シート10のシートバック12に強く押し付けられる等によりシートバック12を後方へ傾動させる後突衝撃が作用すると、この後突衝撃に応じてシートバック側プレート26を介して衝撃吸収部材25のハブ部32を後倒回動方向αへ急激に回動させる回動力が作用する。そして、シートクッション11の座部フレーム11aに連結されるリクライニング機構21の本体フレーム21aおよび衝撃吸収部材25のリム部31は現回動位置を維持することから、上記回動力が各スポーク部33のうちハブ部32に連結する部位のみを回動させるように作用する。
【0060】
このとき、各スポーク部33の半径方向中間部位には反後倒回動方向側に切欠部33aを形成することで周方向の幅を狭くした幅狭部33bがそれぞれ設けられているので、図5(B)に示すように、上記回動力に応じて各幅狭部33bを起点に塑性変形が始まることとなる。
【0061】
上述のように各スポーク部33が塑性変形し始めると、幅狭部33b近傍が後倒回動方向αに移動するので、切欠部33aが潰れるように塑性変形することとなる。そして、各切欠部33aが潰れてしまい当該切欠部33aを構成する両切欠面が互いに当接してしまうとさらなる後突衝撃が作用しない限り幅狭部33b近傍の塑性変形が止まるので、リム部31に対するハブ部32の相対回動が所定の回動角度で止まり、シートバック12の後方への傾動が停止することとなる。
【0062】
このように各幅狭部33bが設けられていることから、各スポーク部33がいきなり破断することなく上記回動力に応じて各幅狭部33b近傍が徐々に塑性変形するので、この塑性変形により上記回動力、すなわち、シートバック12に作用する後突衝撃を好適に吸収することができる。
【0063】
ここで、幅狭部33bの周方向の幅寸法は、上記後突衝撃に応じてハブ部32がリム部31に対して相対回動するように当該幅狭部33b近傍が塑性変形し始めるときの当該後突衝撃に基づいて設定される。これにより、例えば、想定される後突衝撃が大きくなるほど幅狭部33bの周方向の幅寸法を大きく設定することにより、当該後突衝撃を各スポーク部33の塑性変形でもって好適に吸収することができる。
【0064】
また、切欠部33aの半径方向の幅寸法は、シートバック12を後方へ傾動させる衝撃が作用する際にハブ部32とリム部31との相対回動が許容される回動角度に基づいて設定される。
【0065】
上述のように幅狭部33b近傍の塑性変形時に切欠部33aの両切欠面が互いに当接するときに、リム部31に対するハブ部32の相対回動が所定の回動角度で止まるので、上記相対回動が許容される回動角度(以下、許容相対回動角度という)に基づいて切欠部33aの切欠形状の寸法、すなわち、半径方向の幅寸法を設定することにより、塑性変形時にはハブ部32がリム部31に対して許容相対回動角度まで回動することとなる。この許容相対回動角度は、後突衝撃によりシートクッション11に対するシートバック12の後方への傾動が許容される許容相対傾動角度に相当するので、想定される許容相対傾動角度に基づいて切欠部33aの半径方向の幅寸法を設定することにより、衝撃吸収部材25による衝撃吸収時のシートバック12の後方への傾動角度を調整することができる。
【0066】
なお、衝撃吸収部材25の各スポーク部33間に挿入している第2プレート24の各ストッパ24bの周方向の長さを調整することにより、各スポーク部33の塑性変形時に当該各スポーク部33に接触して塑性変形することで上記回動力を吸収するように構成されてもよい。
【0067】
以上説明したように、本実施形態に係る衝撃吸収部材25では、シートクッション11にリクライニング機構21等を介して連結されるリム部31が外周側になり、シートバック12にシートバック側プレート26等を介して連結されるハブ部32が内周側になるように、両部材31,32が同軸的に回動可能に各スポーク部33により連結されている。そして、各スポーク部33の半径方向中間部位には、周方向の幅を狭くした幅狭部33bがそれぞれ設けられている。
【0068】
これにより、上述のように後突衝撃に応じた回動力が作用する場合には、各幅狭部33bを起点に当該各幅狭部33b近傍が徐々に塑性変形するので、この塑性変形により上記回動力、すなわち、シートバック12に作用する後突衝撃を好適に吸収することができる。また、衝撃吸収部材25は、車両用シート10のリクライニング装置20のシートクッション側、あるいは、シートバック側に設置できるようなユニットとして構成することができるので、リム部31およびハブ部32の取り回り寸法や、関連部品を考慮することで、既設の車両用シートのリクライニング装置に後付け設置が可能となる。
したがって、リクライニング装置20において上記衝撃吸収部材25を採用することにより、好適に後突衝撃を吸収しながら、既存の車両用シートに後付けすることができる。
【0069】
また、本実施形態に係る衝撃吸収部材25では、リム部31およびハブ部32は、各スポーク部33により同軸的に回動可能であって一体的に連結されるので、当該衝撃吸収部材25を採用することによるリクライニング装置20の組付作業性の低下を抑制することができる。
【0070】
さらに、本実施形態に係る衝撃吸収部材25では、リム部31およびハブ部32は、各スポーク部33により同一平面上にて同軸的に回動可能に連結されるため、当該衝撃吸収部材25を採用することによる回動軸方向の長さが短縮されるので、当該衝撃吸収部材25を採用することによるリクライニング装置20の省スペース化を図ることができる。
【0071】
また、本実施形態に係る衝撃吸収部材25では、幅狭部33bの周方向の幅寸法は、シートバック12を後方へ傾動させる衝撃に応じてハブ部32がリム部31に対して相対回動するように各スポーク部33が塑性変形し始めるときの当該衝撃に基づいて設定されるため、例えば、想定される後突衝撃が大きくなるほど幅狭部33bの周方向の幅寸法を大きく設定することにより、当該後突衝撃を各スポーク部33の塑性変形でもって好適に吸収することができる。
【0072】
さらに、本実施形態に係る衝撃吸収部材25では、幅狭部33bは、各スポーク部33の半径方向中間部位のうち反後倒回動方向側に切欠部33aを設けることでこの切欠部33aの後倒回動方向α側に形成され、切欠部33aは、後倒回動方向α側ほど半径方向の幅が狭くなるように形成される。
【0073】
これにより、後倒回動方向αに作用する回動力に応じて各スポーク部33が幅狭部33bを起点として塑性変形し始めると、切欠部33aが潰れてしまい当該切欠部33aを構成する両切欠面が互いに当接しさらなる後突衝撃が作用しない限り幅狭部33b近傍の塑性変形が止まるので、リム部31に対するハブ部32の相対回動が所定の回動角度で止まり、シートバック12の後方への傾動が停止する。したがって、後突衝撃を各スポーク部33の塑性変形でもって好適に吸収するとともに、この衝撃吸収時のシートバック12の後方への傾動を所定の傾動位置で止めることができる。
【0074】
特に、切欠部33aの半径方向の幅寸法は、シートバック12を後方へ傾動させる衝撃が作用する際にハブ部32とリム部31との相対回動が許容される回動角度(許容相対傾動角度)に基づいて設定されるので、衝撃吸収部材25による衝撃吸収時のシートバック12の後方への傾動角度を調整することができる。
【0075】
また、本実施形態に係るリクライニング装置20では、上述のような衝撃吸収部材25を備え、リム部31が両プレート23,24およびリクライニング機構21等を介してシートクッション11に連結されるとともにハブ部32がシートバック側プレート26等を介してシートバック12に連結されている。これにより、好適に後突衝撃を吸収しながら既存の車両用シートに後付けすることができる等の、上記衝撃吸収部材25による作用・効果を享受したリクライニング装置を実現することができる。
【0076】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよく、その場合でも、上記実施形態と同等の作用・効果が得られる。
(1)衝撃吸収部材25において、上述したようにリム部31およびハブ部32を連結するスポーク部33は、周方向等間隔に4つ設けられることに限らず、5つ以上設けてもよいし、想定される回動力が小さい場合には2つまたは3つ設けるようにしてもよい。
【0077】
(2)衝撃吸収部材25の各スポーク部33において、上述したように略V字状の切欠部33aを設けることで周方向の幅を狭くした幅狭部33bを形成することに限らず、例えば、矩形状の切欠等、潰れるときに各構成面が当接するような切欠部を設けて上記幅狭部33bを形成してもよい。
【0078】
(3)衝撃吸収部材25のうち外周側であるリム部31が両プレート23,24等を介してシートバック12に連結されて、内周側であるハブ部32が所定のプレート等を介してシートクッション11に連結されてもよい。
【0079】
(4)衝撃吸収部材25において、リム部31およびハブ部32は、回動軸方向のスペースに余裕があれば、同一平面上に配置されなくてもよい。
【0080】
(5)衝撃吸収部材25において、上述したようにリム部31、ハブ部32および各スポーク部33を一体に形成することに限らず、例えば、素材強度を最適化するために各部材の少なくともいずれか1つを別体として構成してもよい。
【符号の説明】
【0081】
10…車両用シート
11…シートクッション
12…シートバック
20…リクライニング装置
21…リクライニング機構
25…衝撃吸収部材(衝撃吸収ユニット)
31…リム部(シートクッション側部材)
32…ハブ部(シートバック側部材)
33…スポーク部(連結部)
33a…切欠部
33b…幅狭部
α…後倒回動方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートのシートクッションに対してシートバックを傾動させるリクライング装置に用いられる衝撃吸収ユニットであって、
前記シートクッションに連結されるためのシートクッション側部材と、
前記シートバックに連結されて前記傾動時に前記シートクッション側部材に対して相対回動するためのシートバック側部材と、
前記シートクッション側部材および前記シートバック側部材のいずれか一方が外周側であり他方が内周側になるように両部材を同軸的に回動可能に連結する複数の連結部と、
を備え、
前記各連結部の半径方向中間部位には、周方向の幅を狭くした幅狭部がそれぞれ設けられることを特徴とする衝撃吸収ユニット。
【請求項2】
前記シートクッション側部材および前記シートバック側部材は、前記各連結部により同軸的に回動可能であって一体的に連結されることを特徴とする請求項1に記載の衝撃吸収ユニット。
【請求項3】
前記シートクッション側部材および前記シートバック側部材は、前記各連結部により同一平面上にて同軸的に回動可能に連結されることを特徴とする請求項1または2に記載の衝撃吸収ユニット。
【請求項4】
前記幅狭部の周方向の幅寸法は、前記シートバックを後方へ傾動させる衝撃に応じて前記シートバック側部材が前記シートクッション側部材に対して相対回動するように前記各連結部が塑性変形し始めるときの前記衝撃に基づいて設定されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の衝撃吸収ユニット。
【請求項5】
前記幅狭部は、前記シートバックを後方へ傾動させる衝撃に応じて前記シートバック側部材が回動する方向を後倒回動方向とするとき、前記各連結部の半径方向中間部位のうち反後倒回動方向側に切欠部を設けることでこの切欠部の後倒回動方向側に形成され、
前記切欠部は、後倒回動方向側ほど半径方向の幅が狭くなるように形成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の衝撃吸収ユニット。
【請求項6】
前記切欠部の半径方向の幅寸法は、前記シートバックを後方へ傾動させる衝撃が作用する際に前記シートバック側部材と前記シートクッション側部材との相対回動が許容される回動角度に基づいて設定されることを特徴とする請求項5に記載の衝撃吸収ユニット。
【請求項7】
車両用シートのシートクッションに対してシートバックを傾動させるリクライング装置であって、
請求項1〜6のいずれか一項に記載の衝撃吸収ユニットを備え、
前記シートクッション側部材が前記シートクッションに連結されるとともに前記シートバック側部材が前記シートバックに連結されることを特徴とするリクライニング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−254054(P2010−254054A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−104631(P2009−104631)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(000143639)株式会社今仙電機製作所 (258)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】