表皮一体内装品
【課題】表皮端末部及び基材の両コーナー部から樹脂が漏れるのを防止した外観見栄えのよい表皮一体型の内装部品。
【解決手段】可撓性を有する表皮と剛性を有する基材との間に樹脂中間層が一体に成型され、表皮端末部表面が基材表面に接して樹脂中間層が漏れないように両者間がシールされている内装品であって、たとえば、表皮端末部30,31及び基材9の各々のコーナー部33,28に、シール面のインストルメントパネル表側近傍からシール面の奥側に向かって次第に広がる面取部35,29を互いに沿うように設けることを特徴とする。
【解決手段】可撓性を有する表皮と剛性を有する基材との間に樹脂中間層が一体に成型され、表皮端末部表面が基材表面に接して樹脂中間層が漏れないように両者間がシールされている内装品であって、たとえば、表皮端末部30,31及び基材9の各々のコーナー部33,28に、シール面のインストルメントパネル表側近傍からシール面の奥側に向かって次第に広がる面取部35,29を互いに沿うように設けることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、表皮一体内装品の改良に関し、特にコーナー部における樹脂漏れ対策に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、表皮と基材との間に樹脂中間層が一体に成形された表皮一体内装品が開示されている。この特許文献1では、表皮の表皮端末部を厚肉にして剛性を高めることにより、表皮端末部表面を基材表面に密接させて両者間のシール性を向上させて樹脂漏れを防止し、外観見栄えのよい表皮一体内装品を成形している。
【特許文献1】特開平9−76256号公報(第4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、表皮一体内装品の表皮端末部表面と基材表面とのシール面にコーナー部がある場合、上記特許文献1に示すように表皮端末部の剛性が高くなっていると、表皮端末部表面が基材表面に沿い難く、両者間に隙間ができて表皮端末部表面と基材表面との間から樹脂漏れが起こるという問題がある。特に、表皮がスラッシュ成形で成形されていると、図12に示すように、表皮a成形時に表皮端末部bのコーナー部c内側に樹脂が多く付着して駄肉dが形成され、該コーナー部cの剛性が必要以上に高まる。このような表皮aを基材eにセットして表皮aと基材eとの間に樹脂を充填して、表皮aと基材eとの間に樹脂中間層fを一体に成形しようとすると、樹脂の充填圧が上記コーナー部cにかかっても該コーナー部cが基材eのシール面gに沿い難いため、両者間に隙間ができて樹脂漏れが起こる。
【0004】
この発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、表皮端末部及び基材の両コーナー部から樹脂が漏れるのを防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、この発明は、表皮端末部及び基材の両コーナー部の形状に工夫を凝らしたことを特徴とする。
【0006】
具体的には、この発明は、可撓性を有する表皮と剛性を有する基材との間に樹脂中間層が一体に成形され、上記表皮の表皮端末部表面が基材表面に接して上記樹脂中間層を構成する樹脂が漏れないように両者間がシールされ、各々のシール面にコーナー部が互いに対向するようにそれぞれ設けられた表皮一体内装品を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0007】
すなわち、請求項1に記載の発明は、上記表皮端末部及び基材の各々のコーナー部には、シール面の表皮一体内装品表側近傍からシール面の奥側に向かって次第に広がる面取部が互いに沿うように設けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記表皮はスラッシュ成形により成形されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、表皮端末部及び基材の各々のコーナー部に、シール面の表皮一体内装品の表側近傍からシール面の奥側に向かって次第に広がる面取部が設けられて上記表皮端末部の面取部が外力に対して変形し易くなっているので、表皮と基材との間に充填された樹脂の充填圧で、表皮端末部の面取部が撓んで基材の面取部に隙間無く沿い、表皮端末部表面と基材表面との間が確実にシールされて両者間からの樹脂漏れを防止して外観見栄えのよい表皮一体内装品とすることができる。また、上記両面取部は、表皮一体内装品の表側近傍から奥側に向かって形成されているので、内装品の表側から見えず、表皮端末部及び基材の両コーナー部の外観は各々の面取部に影響されずシャープな形状を保持することができる。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、表皮はスラッシュ成形により成形されているが、表皮端末部のコーナー部に面取部が設けられているので、該面取部に駄肉が形成され難く、該面取部の柔軟性を保持して基材の面取部に隙間無く沿わせて表皮端末部及び基材のコーナー部同士を確実にシールし、両コーナー部からの樹脂漏れを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。
【0012】
(実施形態1)
図2、図6、及び図7はこの発明の実施形態1に係る表皮一体内装品としての車両用インストルメントパネル1を示す。該インストルメントパネル1はアッパーパネル部3とロアパネル部5とから構成されている。上記アッパーパネル部3の車体前方端縁部を除く部分は、可撓性を有する樹脂製表皮7と剛性を有する樹脂製基材9との間に樹脂中間層11が一体に成形された3層構造のパッド部13を構成し、上記車体前方端縁部は、基材9が車室側に露出した単層であり、当該箇所にフロントデフロスタエア吹出口15が車幅方向に延びて形成されている。上記可撓性を有する樹脂製表皮7は、塩化ビニール、熱可塑性オレフィン等の可撓性を有する軟質材からなり、真空成形、スラッシュ成形等により所定形状に成形されている。剛性を有する樹脂製基材9はポリプロピレン、ABS樹脂等の剛性材からなり、インジェクション成形、スタッピング成形等により所定形状に成形されている。また、樹脂中間層11はポリウレタン、または、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂からなる樹脂接着材を流動状態で上記樹脂製表皮7と樹脂製基材9との間に注入充填し硬化して形成されている。上記パッド部13の車幅方向右側にはメータ機器収容凹部17が形成されているとともに、車幅方向両端にはサイドデフロスタエア吹出口19が形成されている。上記ロアパネル部5は、アッパーパネル部3の車体前方端縁部と同様に基材9が車室側に露出した単層であり、当該箇所の上記メータ機器収容凹部17下方にはステアリング装置取付用の開口21が形成されているとともに、車幅方向左側にはグローブボックス取付用の開口23が形成されている。
【0013】
上記基材9のフロントデフロスタエア吹出口15から手前には、図3にも示すように、車幅方向に延びる凹部25が上記フロントデフロスタエア吹出口15に沿って全幅に亙って形成されているとともに、該凹部25両端には車体後方向に延びる扁平面27が基材9内方の表面よりも低く形成され、上記扁平面27と上記凹部25との連結部であるコーナー部28には、インストルメントパネル1の表側近傍から奥側に向かって略水平にかつ次第に略扇状に広がる凹状湾曲面からなる面取部29がアール形状に形成されている。
【0014】
一方、上記表皮7は、図4及び図5に示すように、扁平な上面を構成する表皮本体部7aを備え、該表皮本体部7aの車体前方端縁部には、表皮本体部7aに対して車体前方下向きに傾斜する前方表皮端末部30が一体に形成されているとともに、車幅方向両端縁部には、表皮本体部7aに対して下向きに直角に延びる縦面31aと該縦面31a下端から内側に直角に延びる水平面31bとからなるL字状の側方表皮端末部31が一体に形成されている。そして、上記前方表皮端末部30と側方表皮端末部31の水平面31bとの連結部であるコーナー部33には、後述するシール面のインストルメントパネル1表側近傍から奥側に向かって略水平にかつ次第に略扇状に広がる凹状湾曲面からなる面取部35がアール形状に形成されている。
【0015】
上記表皮7の前方表皮端末部30表面は成形時に上記基材9の凹部25の前側縦面25aに接して樹脂中間層11を構成する樹脂が漏れないように両者間をシールし、各々をシール面としている。また、上記表皮7の両側方表皮端末部31の水平面31b表面は上記基材9の扁平面27と接して樹脂中間層11を構成する樹脂が漏れないように両者間をシールし、各々をシール面としている。さらに、図示しないが、表皮7の車体後方端縁部裏面は基材表面に接して樹脂中間層を構成する樹脂が漏れないように両者間をシールし、各々をシール面としている。この状態で表皮端末部30,31及び基材9の両コーナー部33,28の各々の面取部35,29が互いに対向して沿っている。そして、表皮7を基材9にセットした状態で両者間に樹脂を充填すると樹脂の充填圧が前方表皮端末部30と両側方表皮端末部31の水平面31bに作用し、表皮端末部30,31の面取部35が撓んで基材9の面取部29に隙間無く沿い、図1に示すように、表皮端末部30,31表面と基材9表面との間が確実にシールされて両者間から樹脂漏れを防止して外観見栄えのよいインストルメントパネル1とすることができる。
【0016】
なお、図5の仮想線で示すように、コーナー部33に面取部35が設けられていない場合には、コーナー部33の剛性が高くなっているため、樹脂の充填圧がかかっても表皮7のコーナー部33が基材9のコーナー部28に完全に沿わないため、表皮7及び基材9の両コーナー部33,28間に隙間ができて樹脂が漏れてしまう。
【0017】
また、樹脂製表皮7をスラッシュ成形で成形した場合、コーナー部33には樹脂原料が溜まって駄肉が形成されるため剛性がより高くなり、またヒケによる変形が生じるため、この樹脂漏れ傾向が大きくなる。しかし、本実施形態1に示すようにコーナー部33に面取部35を形成することで、コーナー部33は撓み易い所定の厚さで成形できるので、スラッシュ成形で成形した樹脂製表皮7を採用する場合、特に有効である。
【0018】
さらに、上記両面取部29,35は、上記シール面のインストルメントパネル1表側近傍からシール面の奥側に向かって形成されてインストルメントパネル1の表側からは見えないので、表皮端末部30,31表面及び基材9のコーナー部33,28近傍外観は各々の面取部35,29に影響されずシャープな形状を保持することができる。
【0019】
(実施形態2)
実施形態2では、上記実施形態1において車幅方向に延びる凹部25の両端から車体後方向に延びる扁平面27の代わりに、図8、9、及び図10に示すように、上記凹部25と同様の凹部37を上記凹部25両端に連続して設け、一方、表皮7の両側方表皮端末部31を実施形態1の側方表皮端末部31から水平面31bを除いた形状にして基材9凹部37の外側方縦面37aに接して、これらをシール面とし、かつ、両コーナー部33,28の各々の面取部35,29の向きを樹脂中間層11の略厚み方向にしている点が実施形態1と異なるほかは実施形態1と同様に構成されているので、インストルメントパネル1の全体構造及び同一の構成箇所には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0020】
このようにして、実施形態2では実施形態1と同様の効果を奏することができる。
【0021】
なお、実施形態1及び2で基材9の面取部29と表皮7の面取部35はアール形状に形成したが、図11(a),(b)に示すようにコーナー部の角が大きくなるよう、平面または多角形状に設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0022】
この発明は、表皮一体内装品の改良に関し、特にコーナー部における樹脂漏れ対策について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図2のA−A線における断面図である。
【図2】図7におけるインストルメントパネルのC部分を拡大した斜視図である。
【図3】実施形態1における基材の斜視図である。
【図4】実施形態1における表皮の斜視図である。
【図5】実施形態1における表皮を裏側から見た斜視図である。
【図6】図2のB−B線における断面図である。
【図7】実施形態1に係るインストルメントパネルの斜視図である。
【図8】実施形態2における図2相当図である。
【図9】実施形態2における図3相当図である。
【図10】実施形態2における図4相当図である。
【図11】面取部の他の例を示す図1相当図である。
【図12】従来例における図1相当図である。
【符号の説明】
【0024】
1 インストルメントパネル(表皮一体内装品)
7 表皮
9 基材
11 樹脂中間層
25a 前側縦面(シール面)
27 扁平面(シール面)
30 前方表皮端末部(シール面)
31b 水平面(シール面)
28,33 コーナー部
29,35 面取部
【技術分野】
【0001】
この発明は、表皮一体内装品の改良に関し、特にコーナー部における樹脂漏れ対策に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、表皮と基材との間に樹脂中間層が一体に成形された表皮一体内装品が開示されている。この特許文献1では、表皮の表皮端末部を厚肉にして剛性を高めることにより、表皮端末部表面を基材表面に密接させて両者間のシール性を向上させて樹脂漏れを防止し、外観見栄えのよい表皮一体内装品を成形している。
【特許文献1】特開平9−76256号公報(第4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、表皮一体内装品の表皮端末部表面と基材表面とのシール面にコーナー部がある場合、上記特許文献1に示すように表皮端末部の剛性が高くなっていると、表皮端末部表面が基材表面に沿い難く、両者間に隙間ができて表皮端末部表面と基材表面との間から樹脂漏れが起こるという問題がある。特に、表皮がスラッシュ成形で成形されていると、図12に示すように、表皮a成形時に表皮端末部bのコーナー部c内側に樹脂が多く付着して駄肉dが形成され、該コーナー部cの剛性が必要以上に高まる。このような表皮aを基材eにセットして表皮aと基材eとの間に樹脂を充填して、表皮aと基材eとの間に樹脂中間層fを一体に成形しようとすると、樹脂の充填圧が上記コーナー部cにかかっても該コーナー部cが基材eのシール面gに沿い難いため、両者間に隙間ができて樹脂漏れが起こる。
【0004】
この発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、表皮端末部及び基材の両コーナー部から樹脂が漏れるのを防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、この発明は、表皮端末部及び基材の両コーナー部の形状に工夫を凝らしたことを特徴とする。
【0006】
具体的には、この発明は、可撓性を有する表皮と剛性を有する基材との間に樹脂中間層が一体に成形され、上記表皮の表皮端末部表面が基材表面に接して上記樹脂中間層を構成する樹脂が漏れないように両者間がシールされ、各々のシール面にコーナー部が互いに対向するようにそれぞれ設けられた表皮一体内装品を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0007】
すなわち、請求項1に記載の発明は、上記表皮端末部及び基材の各々のコーナー部には、シール面の表皮一体内装品表側近傍からシール面の奥側に向かって次第に広がる面取部が互いに沿うように設けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記表皮はスラッシュ成形により成形されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、表皮端末部及び基材の各々のコーナー部に、シール面の表皮一体内装品の表側近傍からシール面の奥側に向かって次第に広がる面取部が設けられて上記表皮端末部の面取部が外力に対して変形し易くなっているので、表皮と基材との間に充填された樹脂の充填圧で、表皮端末部の面取部が撓んで基材の面取部に隙間無く沿い、表皮端末部表面と基材表面との間が確実にシールされて両者間からの樹脂漏れを防止して外観見栄えのよい表皮一体内装品とすることができる。また、上記両面取部は、表皮一体内装品の表側近傍から奥側に向かって形成されているので、内装品の表側から見えず、表皮端末部及び基材の両コーナー部の外観は各々の面取部に影響されずシャープな形状を保持することができる。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、表皮はスラッシュ成形により成形されているが、表皮端末部のコーナー部に面取部が設けられているので、該面取部に駄肉が形成され難く、該面取部の柔軟性を保持して基材の面取部に隙間無く沿わせて表皮端末部及び基材のコーナー部同士を確実にシールし、両コーナー部からの樹脂漏れを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。
【0012】
(実施形態1)
図2、図6、及び図7はこの発明の実施形態1に係る表皮一体内装品としての車両用インストルメントパネル1を示す。該インストルメントパネル1はアッパーパネル部3とロアパネル部5とから構成されている。上記アッパーパネル部3の車体前方端縁部を除く部分は、可撓性を有する樹脂製表皮7と剛性を有する樹脂製基材9との間に樹脂中間層11が一体に成形された3層構造のパッド部13を構成し、上記車体前方端縁部は、基材9が車室側に露出した単層であり、当該箇所にフロントデフロスタエア吹出口15が車幅方向に延びて形成されている。上記可撓性を有する樹脂製表皮7は、塩化ビニール、熱可塑性オレフィン等の可撓性を有する軟質材からなり、真空成形、スラッシュ成形等により所定形状に成形されている。剛性を有する樹脂製基材9はポリプロピレン、ABS樹脂等の剛性材からなり、インジェクション成形、スタッピング成形等により所定形状に成形されている。また、樹脂中間層11はポリウレタン、または、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂からなる樹脂接着材を流動状態で上記樹脂製表皮7と樹脂製基材9との間に注入充填し硬化して形成されている。上記パッド部13の車幅方向右側にはメータ機器収容凹部17が形成されているとともに、車幅方向両端にはサイドデフロスタエア吹出口19が形成されている。上記ロアパネル部5は、アッパーパネル部3の車体前方端縁部と同様に基材9が車室側に露出した単層であり、当該箇所の上記メータ機器収容凹部17下方にはステアリング装置取付用の開口21が形成されているとともに、車幅方向左側にはグローブボックス取付用の開口23が形成されている。
【0013】
上記基材9のフロントデフロスタエア吹出口15から手前には、図3にも示すように、車幅方向に延びる凹部25が上記フロントデフロスタエア吹出口15に沿って全幅に亙って形成されているとともに、該凹部25両端には車体後方向に延びる扁平面27が基材9内方の表面よりも低く形成され、上記扁平面27と上記凹部25との連結部であるコーナー部28には、インストルメントパネル1の表側近傍から奥側に向かって略水平にかつ次第に略扇状に広がる凹状湾曲面からなる面取部29がアール形状に形成されている。
【0014】
一方、上記表皮7は、図4及び図5に示すように、扁平な上面を構成する表皮本体部7aを備え、該表皮本体部7aの車体前方端縁部には、表皮本体部7aに対して車体前方下向きに傾斜する前方表皮端末部30が一体に形成されているとともに、車幅方向両端縁部には、表皮本体部7aに対して下向きに直角に延びる縦面31aと該縦面31a下端から内側に直角に延びる水平面31bとからなるL字状の側方表皮端末部31が一体に形成されている。そして、上記前方表皮端末部30と側方表皮端末部31の水平面31bとの連結部であるコーナー部33には、後述するシール面のインストルメントパネル1表側近傍から奥側に向かって略水平にかつ次第に略扇状に広がる凹状湾曲面からなる面取部35がアール形状に形成されている。
【0015】
上記表皮7の前方表皮端末部30表面は成形時に上記基材9の凹部25の前側縦面25aに接して樹脂中間層11を構成する樹脂が漏れないように両者間をシールし、各々をシール面としている。また、上記表皮7の両側方表皮端末部31の水平面31b表面は上記基材9の扁平面27と接して樹脂中間層11を構成する樹脂が漏れないように両者間をシールし、各々をシール面としている。さらに、図示しないが、表皮7の車体後方端縁部裏面は基材表面に接して樹脂中間層を構成する樹脂が漏れないように両者間をシールし、各々をシール面としている。この状態で表皮端末部30,31及び基材9の両コーナー部33,28の各々の面取部35,29が互いに対向して沿っている。そして、表皮7を基材9にセットした状態で両者間に樹脂を充填すると樹脂の充填圧が前方表皮端末部30と両側方表皮端末部31の水平面31bに作用し、表皮端末部30,31の面取部35が撓んで基材9の面取部29に隙間無く沿い、図1に示すように、表皮端末部30,31表面と基材9表面との間が確実にシールされて両者間から樹脂漏れを防止して外観見栄えのよいインストルメントパネル1とすることができる。
【0016】
なお、図5の仮想線で示すように、コーナー部33に面取部35が設けられていない場合には、コーナー部33の剛性が高くなっているため、樹脂の充填圧がかかっても表皮7のコーナー部33が基材9のコーナー部28に完全に沿わないため、表皮7及び基材9の両コーナー部33,28間に隙間ができて樹脂が漏れてしまう。
【0017】
また、樹脂製表皮7をスラッシュ成形で成形した場合、コーナー部33には樹脂原料が溜まって駄肉が形成されるため剛性がより高くなり、またヒケによる変形が生じるため、この樹脂漏れ傾向が大きくなる。しかし、本実施形態1に示すようにコーナー部33に面取部35を形成することで、コーナー部33は撓み易い所定の厚さで成形できるので、スラッシュ成形で成形した樹脂製表皮7を採用する場合、特に有効である。
【0018】
さらに、上記両面取部29,35は、上記シール面のインストルメントパネル1表側近傍からシール面の奥側に向かって形成されてインストルメントパネル1の表側からは見えないので、表皮端末部30,31表面及び基材9のコーナー部33,28近傍外観は各々の面取部35,29に影響されずシャープな形状を保持することができる。
【0019】
(実施形態2)
実施形態2では、上記実施形態1において車幅方向に延びる凹部25の両端から車体後方向に延びる扁平面27の代わりに、図8、9、及び図10に示すように、上記凹部25と同様の凹部37を上記凹部25両端に連続して設け、一方、表皮7の両側方表皮端末部31を実施形態1の側方表皮端末部31から水平面31bを除いた形状にして基材9凹部37の外側方縦面37aに接して、これらをシール面とし、かつ、両コーナー部33,28の各々の面取部35,29の向きを樹脂中間層11の略厚み方向にしている点が実施形態1と異なるほかは実施形態1と同様に構成されているので、インストルメントパネル1の全体構造及び同一の構成箇所には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0020】
このようにして、実施形態2では実施形態1と同様の効果を奏することができる。
【0021】
なお、実施形態1及び2で基材9の面取部29と表皮7の面取部35はアール形状に形成したが、図11(a),(b)に示すようにコーナー部の角が大きくなるよう、平面または多角形状に設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0022】
この発明は、表皮一体内装品の改良に関し、特にコーナー部における樹脂漏れ対策について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図2のA−A線における断面図である。
【図2】図7におけるインストルメントパネルのC部分を拡大した斜視図である。
【図3】実施形態1における基材の斜視図である。
【図4】実施形態1における表皮の斜視図である。
【図5】実施形態1における表皮を裏側から見た斜視図である。
【図6】図2のB−B線における断面図である。
【図7】実施形態1に係るインストルメントパネルの斜視図である。
【図8】実施形態2における図2相当図である。
【図9】実施形態2における図3相当図である。
【図10】実施形態2における図4相当図である。
【図11】面取部の他の例を示す図1相当図である。
【図12】従来例における図1相当図である。
【符号の説明】
【0024】
1 インストルメントパネル(表皮一体内装品)
7 表皮
9 基材
11 樹脂中間層
25a 前側縦面(シール面)
27 扁平面(シール面)
30 前方表皮端末部(シール面)
31b 水平面(シール面)
28,33 コーナー部
29,35 面取部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する表皮と剛性を有する基材との間に樹脂中間層が一体に成形され、上記表皮の表皮端末部表面が基材表面に接して上記樹脂中間層を構成する樹脂が漏れないように両者間がシールされ、各々のシール面にコーナー部が互いに対向するようにそれぞれ設けられた表皮一体内装品であって、
上記表皮端末部及び基材の各々のコーナー部には、シール面の表皮一体内装品表側近傍からシール面の奥側に向かって次第に広がる面取部が互いに沿うように設けられていることを特徴とする表皮一体内装品。
【請求項2】
請求項1に記載の表皮一体内装品において、
上記表皮はスラッシュ成形により成形されていることを特徴とする表皮一体内装品。
【請求項1】
可撓性を有する表皮と剛性を有する基材との間に樹脂中間層が一体に成形され、上記表皮の表皮端末部表面が基材表面に接して上記樹脂中間層を構成する樹脂が漏れないように両者間がシールされ、各々のシール面にコーナー部が互いに対向するようにそれぞれ設けられた表皮一体内装品であって、
上記表皮端末部及び基材の各々のコーナー部には、シール面の表皮一体内装品表側近傍からシール面の奥側に向かって次第に広がる面取部が互いに沿うように設けられていることを特徴とする表皮一体内装品。
【請求項2】
請求項1に記載の表皮一体内装品において、
上記表皮はスラッシュ成形により成形されていることを特徴とする表皮一体内装品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−297794(P2006−297794A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−124082(P2005−124082)
【出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(505142872)ダイキョーニシカワ株式会社 (79)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(505142872)ダイキョーニシカワ株式会社 (79)
【Fターム(参考)】
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