説明

表皮付発泡成形品及びその製造方法

【課題】取付状態で外部に露出した状態となる意匠面の一部に形成される屈曲した断面形状の角状のコーナ部の形状を目的としシャープな形状とすることのできる表皮付発泡成形品を提供する。
【解決手段】発泡樹脂の原液を発泡成形して成る発泡基体12に対して、表皮18と軟質の発泡材から成るスラブフォーム層20とフィルム22とを一体に積層した表皮層16を接合状態に一体に成形して成る表皮付発泡成形品10において、取付状態で外部に露出した状態となる意匠面の一部の角状のコーナ部K1,K2でフィルム22を部分的に除去して、その除去部を通じてスラブフォーム層20に発泡樹脂の原液を含浸させ固化させておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車のヘッドレストやアームレスト,自動車のドアトリムその他の内装品に好適に用いられる表皮付発泡成形品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の内装品例えばドアトリムの上部部材であるドアトリムアッパーとして表皮付の樹脂の発泡成形品が用いられている。
通常この表皮付発泡成形品は、発泡樹脂の原液を発泡成形して成る、発泡成形品の本体としての発泡基体に対して、表面材となる表皮の裏側に発泡基体よりも軟質の発泡材から成るスラブフォーム層及び更にその裏面側のフィルムとを一体に積層した表皮層を、そのフィルムを介して接合状態に一体に成形した形態をなしている。
【0003】
ここで発泡基体よりも軟質の発泡材から成るスラブフォーム層は、その軟らかさによって発泡成形品を触ったときの触感を良くする働きをなしている。
通常このスラブフォーム層には、工場でスラブ成形した発泡材(一般にはウレタン発泡材)を所定厚みにスライスしたものが用いられる。
【0004】
このスラブ成形では、連続的に移動するコンベア上に発泡樹脂の原液を流し、これを所定の幅及び厚みを有する平坦な板状に圧力開放状態で連続発泡及び成形するもので、このスラブ成形品は主として中間製品としての意味を有し、その後に目的に応じてこのスラブ成形品から様々な形状のものが切り出される。
【0005】
従来、このスラブ成形品を上記の表皮層に用いる場合、スラブ成形品を所定厚み例えば3mmの厚みに切断(スライス)し、これにラミネート加工によりレザーや布その他材質の表皮を積層状態に接合し一体化したものを用いる。
【0006】
ところでスラブ成形品をスライスした形態のスラブフォーム層に表皮を積層一体化しただけのものを発泡成形型の内面に沿わせて配置し、その内側に形成される空間に発泡樹脂の原液を注入してこれを発泡させると、その原液がスラブフォーム層の内部に浸透してスラブフォーム層に含浸されてしまう(スラブフォーム層はスライス加工等によって破れた気泡が多数存在していて原液が含浸され易い)。
従ってそのまま原液を発泡及び固化させるとスラブフォーム層が硬くなってしまい、スラブフォーム層の有する本来の軟らかさ,良好な触感が減殺されてしまう。このため含浸分を考慮し予めフォーム厚みを上げておくといった対処方法もあるが、意匠性には悪影響が伴う。
【0007】
そこでこうしたことを防ぐため、従来、スラブフォーム層の裏面(表皮とは反対側の面)にスラブフォーム層への発泡樹脂の原液の浸透を防止するフィルム(通常は樹脂フィルム)をラミネート加工によって貼り合せ、3層構造としたものを表皮層として用いている。
このようにすれば、発泡樹脂の原液がスラブフォーム層に含浸され、スラブフォーム層を硬くしてしまうのを防ぐことができる。
【0008】
ところでこのような表皮層を用いて表皮付の樹脂の発泡成形品を成形した場合、スラブフォーム層の有する厚み及び弾性に起因して以下のような問題が生ずる。
発泡成形品が、取付状態で外部に露出した状態となる意匠面の一部に屈曲した断面形状の角状のコーナ部を有している場合、そのコーナ部が形状ダレを生じて、目指すところのシャープな形状のコーナ部が良好に成形できなくなってしまうのである。
その理由は次の通りである。
【0009】
表皮とスラブフォーム層とフィルムとを積層した表皮層は、通常は平坦な薄肉の板状ないしシート状をなしており、これを発泡成形型の内面に沿わせるように配置しセットしたとき、詳しくはコーナ部において発泡成形型の内面に沿わせるようにセットしたとき、表皮層を発泡成形型の内面に密着状態とすることが難しい。
【0010】
その状態で表皮層の内側に形成される空間に発泡樹脂の原液を注入し発泡させると、表皮層はその際の発泡圧によって発泡成形型の内面に押圧され、一旦はその内面に密着状態となる。
発泡基体はそうした状態の下で所定の形状に成形され、また型締状態の下で表皮層はコーナ部においても発泡成形型の内面に密着した状態を維持するが、その後発泡成形型を型開きして表皮付発泡成形品を取り出すと、表皮層がもとの形状に戻ろうとし、その結果コーナ部において発泡成形品が形状ダレを生じてしまう。
【0011】
これは、発泡樹脂の発泡時に表皮層がその発泡圧によって引張られ、テンションがかかった状態でコーナ部において発泡成形型の内面に押圧及び密着せしめられ、またそのときにスラブフォーム層が圧縮された状態となるため、その後において型開きして発泡成形品を取り出したとき、それまで加わっていた引張力,テンションが開放されるとともに、一旦圧縮させられたスラブフォーム層がもとの厚みに戻ろうとすることにより引き起されるものと考えられる。
【0012】
而してこのような形状ダレを生じると、表皮付発泡成形品の外観が損なわれてしまう。
またその形状ダレによって表皮付発泡成形品の形状,寸法が不安定となり、そのことによって表皮付発泡成形品を相手側に取り付ける際に隣接する部材との合せを行ったとき、表皮付発泡成形品が隣接部材と干渉したり或いは隙間を生じたり、またその隙間がばらついたりし、表皮付発泡成形品と隣接部材との合せ部分の美観が損なわれてしまう。
【0013】
こうした問題に対して、上記積層構造の表皮層を発泡基体の発泡成形に先立って製品として求められる形状に予め予備成形しておき、そうして予備成形した表皮層を発泡成形型にセットして発泡樹脂の原液を注入し、発泡させて表皮付発泡成形品を製造するといったことも考えらえる。
しかしながらこの場合、表皮層を予備成形するための工程が別途に必要となり、表皮付発泡成形品の製造コストを押し上げてしまう。
【0014】
尚、本発明に対する先行技術として、成形後に切断され除去される表皮層の余長部分に、硬質ポリウレタン等の樹脂溶液又は発泡合成樹脂の原液等を含浸させ、固まらせるようになした点が開示されているが、このものは表皮層の余長部分に且つ外観上表れない部分(意匠面とはならない部分)に原液を含浸させるもので、本発明とは解決課題において、また構成において異なった別異のものである。
【0015】
【特許文献1】特開平2−203891号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は以上のような事情を背景とし、取付状態で外部に露出した状態となる意匠面の一部に屈曲した断面形状の角状のコーナ部を有するものにおいて、そのコーナ部の形状を目的としたシャープな形状とすることのできる表皮付発泡成形品及びその製造方法を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
而して請求項1は表皮付発泡成形品に関するもので、発泡樹脂の原液を発泡成形して成る、発泡成形品の本体としての発泡基体に対して、表面材としての表皮の裏側に該発泡基体よりも軟質の発泡材から成るスラブフォーム層及び該スラブフォーム層の更に裏面側であって該発泡基体との間に介在し、前記発泡樹脂の原液の該スラブフォーム層への浸透を防止するフィルムとが一体に積層された表皮層を接合状態に一体に成形して成り、取付状態で外部に露出した状態となる意匠面の一部に屈曲した断面形状の角状のコーナ部を有している表皮付発泡成形品であって、前記フィルムは、前記コーナ部に位置する部分が除去されていて、その除去部を通じて前記スラブフォーム層に前記発泡樹脂の原液が含浸され固化していることを特徴とする。
【0018】
請求項2のものは、請求項1において、前記コーナ部が前記表皮層の末端に近接して位置していて、前記フィルムが該コーナ部から該末端まで除去されており、その除去部分を通じて前記発泡樹脂の原液が該コーナ部から該末端まで前記スラブフォーム層に含浸され固化していることを特徴とする。
【0019】
請求項3のものは、請求項2において、前記発泡基体には剛性を有する取付用の芯材が裏面側に積層状態に一体化されており、該芯材は前記末端まで延在していて、該芯材が前記発泡基体を介さないで直接前記スラブフォーム層の末端と重合されており、該末端で前記発泡樹脂の原液の固化によってそれら芯材とスラブフォーム層とが接着されていることを特徴とする。
【0020】
請求項4は表皮付発泡成形品の製造方法に関するもので、請求項1において、平坦な板状をなす前記表皮層を発泡成形型の内面に沿わせて配置し型締めした状態の下で、該表皮層の内側に形成される空間に前記発泡樹脂の原液を注入し、該原液を前記フィルムを除去した部分を通じて前記コーナ部の前記スラブフォーム層に含浸させ、前記空間内で該原液を発泡及び固化させて前記発泡基体を成形し前記表皮層と一体化するとともに、該コーナ部において前記スラブフォーム層に含浸した原液を固化させることを特徴とする。
【0021】
請求項5は表皮付発泡成形品の製造方法に関するもので、請求項2において、平坦な板状をなす前記表皮層を発泡成形型の内面に沿って配置し型締めした状態の下で、該表皮層の内側に形成される空間に前記発泡樹脂の原液を注入し、該原液を前記フィルムを除去した部分を通じて前記コーナ部から前記末端まで前記スラブフォーム層に含浸させ、前記空間内で該原液を発泡及び固化させて前記発泡基体を成形し前記表皮層と一体化するとともに、該コーナ部から前記末端まで前記スラブフォーム層に含浸した原液を固化させることを特徴とする。
【0022】
請求項6は表皮付発泡成形品の製造方法に関するもので、請求項3において、平坦な板状をなす前記表皮層を発泡成形型の内面に沿わせて配置するとともに、該表皮層の前記フィルムを除去した前記末端の前記スラブフォーム層を直接前記芯材に重合する状態に該芯材をインサートとして該発泡成形型の内部に配置し、該発泡成形型を型締めした状態の下でそれら表皮層と芯材との間に形成される空間に前記発泡樹脂の原液を注入し、該原液を前記フィルムを除去した部分を通じて前記コーナ部から前記末端まで前記スラブフォーム層に含浸させ、前記空間内で該原液を発泡及び固化させて前記発泡基体を成形し前記表皮層及び芯材と一体化するとともに、前記コーナ部から前記末端まで該スラブフォーム層に含浸した原液を固化させ、該スラブフォーム層の末端と前記芯材とを接着することを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0023】
以上のように請求項1の表皮付発泡成形品は、3層構造をなす表皮層のフィルムをコーナ部において除去し、そして発泡基体を成形する発泡樹脂の原液を、その除去部を通じてスラブフォーム層に含浸させ、これを固化させたものである。
【0024】
コーナ部において原液が発泡基体よりも低密度で軟質のスラブフォーム層に含浸され固化することによって、スラブフォーム層はそのコーナ部において部分的に硬くなり、そこに形状保持機能が付与される。
【0025】
従ってこの表皮付発泡成形品は、型締状態でのコーナ部の形状を脱型後においても良好に保持することができ、コーナ部において従来生じていた形状ダレを防止ないし抑制することができる。
これにより、かかる表皮付発泡成形品の取付状態での外観を良好とすることができる。
【0026】
また形状ダレによって表皮付発泡成形品のコーナ部の寸法,形状が不安定化する問題を解決でき、従って表皮付発泡成形品を相手側に取り付ける際に隣接部材と合せを行ったとき、表皮付発泡成形品が隣接部材と干渉を生じたり、或いは隣接部材との間に設定以上の隙間を生ぜしめ、或いはその隙間がばらついてしまうといった問題を解決でき、表皮付発泡成形品と隣接部材との合せ部分の美観を良好となすことができる。
【0027】
また表皮層は原液の含浸及び固化によって、成形時の形状を脱型後も保持できるので、表皮付発泡成形品を成形するに当って予め表皮層を製品形状に対応した形状に予備成形しておかなくてもよく、従ってその予備成形のための工程を省略し得て、表皮付発泡成形品の製造コストを低減することができる。
【0028】
次に請求項2は、表皮層のフィルムをコーナ部から末端まで除去し、その除去部分を通じて発泡樹脂の原液をコーナ部から末端までスラブフォーム層に含浸させ、固化させるようになしたものである。
【0029】
上記3層構造の表皮層を用いた表皮付発泡成形品の場合、表皮の末端がスラブフォーム層の破れを伴って剥れ、めくれ上る現象を生じる問題がある。
その対策として、従来にあっては表皮層の末端を長く延在させて巻込み処理(例えば後述の芯材に対する巻込み処理)を行ったり、或いはその末端を隣接部材や他の構成部材で押え込んだり、溶着したりする等の処理を行っていた。
【0030】
しかるにこの請求項2によれば、コーナ部からその末端までスラブフォーム層がそこに含浸された原液の固化によって硬くなり、形状保持機能が付与されるため、表皮の末端の剥れを良好に防止でき、従って従来必要とされていた表皮末端の巻込み処理等の工程を省略することが可能となる。
即ちこの請求項2によれば、コーナ部の形状ダレの防止と併せて表皮の末端の処理も不要となすことが可能となる。
【0031】
次に請求項3のものは、剛性のある芯材付の表皮付発泡成形品に関するもので、この請求項3のものは、発泡基体の裏面側に積層状態に一体化された芯材を末端まで延在させて、その末端において芯材と表皮層におけるスラブフォーム層とをフィルムを介さずに直接重合させ、そしてその末端において発泡樹脂の原液をスラブフォーム層に含浸させ且つこれを固化させたものである。
従来のように表皮層が末端に到るまでフィルムを有している場合、そのフィルムによって芯材と表皮層とが遮断されて非接着となり、表皮層がその末端で芯材から剥れ、めくれを生じてしまう。
【0032】
しかるにこの請求項3によれば、表皮層の末端のスラブフォーム層への原液の含浸及び固化によって、表皮層の末端に形状保持機能が与えられるのに加えて、表皮層の末端が芯材に対して接着され、固着状態となることから、表皮層の末端の芯材からの剥れ、めくれをより効果的に防止することができる。
【0033】
次に請求項4は、請求項1の表皮付発泡成形品の製造方法に関するもので、この製造方法では、平坦な板状をなす表皮層を発泡成形型の内面に沿わせて配置し、型締めした状態の下で表皮層の内側に形成される空間に発泡樹脂の原液を注入し、そしてその原液をフィルムを除去した部分を通じてコーナ部のスラブフォーム層に含浸させ、原液を発泡及び固化させて発泡基体を成形し表皮層と一体化するとともに、コーナ部においてスラブフォーム層に含浸した原液を固化させる。
この請求項4の製造方法によって、コーナ部において形状ダレを生じない表皮付発泡成形品を良好に製造することができる。
【0034】
次に請求項5は、請求項2の表皮付発泡成形品の製造方法に関するもので、この製造方法は、平坦な板状をなす表皮層を発泡成形型の内面に沿って配置し、型締状態の下で表皮層の内側に形成される空間に発泡樹脂の原液を注入し、そしてその原液をフィルムを除去した部分を通じてコーナ部から末端までスラブフォーム層に含浸させ、原液を発泡及び固化させて発泡基体を成形し表皮層と一体化するとともに、コーナ部から末端までスラブフォーム層に含浸した原液を固化させる。
この請求項5の製造方法により、コーナ部において形状ダレを生じず、また末端において表皮がめくれ上りを生じない表皮付発泡成形品を良好に製造することができる。
【0035】
次に請求項6は、請求項3の表皮付発泡成形品の製造方法に関するもので、この製造方法では、平坦な板状をなす表皮層のフィルムを除去した末端のスラブフォーム層を直接芯材に重合する状態に、芯材をインサートとして発泡成形型の内部に配置し、そして型締状態の下でそれら表皮層と芯材との間に形成される空間に発泡樹脂の原液を注入し、その原液をフィルムを除去した部分を通じてコーナ部から末端までスラブフォーム層に含浸させ、原液を発泡及び固化させて発泡基体を成形し表皮層及び芯材と一体化するとともに、コーナ部から末端までスラブフォーム層に含浸した原液を固化させ、スラブフォーム層の末端と芯材とを接着する。
【0036】
この請求項6の製造方法により、コーナ部において形状ダレを生じず、また表皮層の末端に形状保持機能が付与された上、その末端が芯材に固着され、めくれ防止された請求項3の表皮付発泡成形品を良好に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10は自動車内装品としてのドアトリムアッパーを構成する表皮付発泡成形品(以下単に発泡成形品とする)で、全体として図中上方に膨出した扁平な形状をなしている。
この発泡成形品10は、その本体としての樹脂の発泡基体12と、その裏面側の芯材14と、発泡基体12の表面を被覆する表皮層16とを有しており、それらが積層状態に一体化されている。
【0038】
発泡基体12は、ここではウレタン樹脂の発泡体から成っており、また芯材14は、剛性を有する硬質のポリプロピレン樹脂から成っている。
芯材14は全体として板状をなしており、発泡基体12及び表皮層16から露出して延び出した取付部28を有しており、この取付部28において相手側に取付固定されるようになっている。
尚芯材14は硬質のものであることが必要で、ここではロックウェル硬度(Rスケール)が80〜100、或いは100〜120程度のものが用いられているが、この芯材14としてはロックウェル硬度で50以上のものを用いるのが望ましい。
芯材14は、ここではその厚みが2.3mmである。芯材14としては厚みが1.5mm以上であることが望ましい。
【0039】
表皮層16はレザー,ファブリック,樹脂シートその他材質から成る表面材としての表皮18と、その裏面側のスラブフォーム層20と、更にその裏面側の樹脂のフィルム22との3層構造を成している。
これら表皮18,スラブフォーム層20及びフィルム22は、ラミネート加工によって互いに貼り合され一体化されている。
尚ここでは表皮16の厚みは約0.7mm,スラブフォーム層20の厚みは約3mm,フィルム22の厚みは約30μmである。
【0040】
スラブフォーム層20は、ここではポリウレタンの発泡材から成っていて弾性を有している。但しこのスラブフォーム層20は発泡基体12よりも密度が小さく、発泡基体12よりも軟質で軟らかく、また強度も低いものである。
【0041】
このスラブフォーム層20は、工場でスラブ成形されたスラブ成形品をスライスして形成してあるもので、多数の気泡を有しているが、そのスライスの加工等によって破れた気泡が多く存在しており、後述する発泡樹脂の原液を含浸可能である。
尚このようなスラブフォーム層20は広く市販されている。
詳しくは、ここではスラブフォーム層20に表皮16とフィルム22とをラミネート加工により3層構造に貼り合せた表皮層16そのものを、市販品を用いて構成している。
【0042】
図1は、発泡成形品10を相手側への取付状態で表しており、図中24,26は、発泡成形品10に隣接して取り付けられる隣接部材である。
発泡成形品10は、図中左側の端部近傍に略90°の急角度で屈曲した断面形状の角状のコーナ部K1を、また図中右側の端部近傍に90°の角度よりも鋭角に屈曲した断面形状の角状のコーナ部K2を、外観上表れる意匠面に有している。
ここでコーナ部K1,K2は、それぞれ発泡基体12から見て外向きの凸形状をなしている。
【0043】
更に図中左側且つ隣接部材24に隠れる位置において、外向きに凸形状をなすコーナ部k3及び内向きに凸形状をなすコーナ部k4を有している。
この実施形態ではまた、表皮層16の図中左側の末端M1と、右側の末端M2とが、芯材14の平坦部30,32に対して図中左右方向に所定長に亘り重合されている。
【0044】
図6に示すように、この種従来の発泡成形品10Aにあっては、表皮層16Aの末端までフィルム22Aが設けられていたが、ここでは図1に示すように図中左側においてコーナ部K1から末端M1までフィルム22が部分的に除去されている。
更に図中右側においても、コーナ部K2から末端M2までフィルム22が部分的に除去されている。
【0045】
そして発泡基体12を形成するための発泡樹脂の原液が、このフィルム22を除去した部分において、即ちコーナ部K1から末端M1まで、更にコーナ部K2から末端M2まで、表皮層16のスラブフォーム層20に含浸されて、そこで固化せしめられている。
【0046】
次にこの発泡成形品10の製造方法を図2〜図4に基づいて以下に詳しく説明する(ここでは主として発泡成形品10の図中左側の部分を中心として説明する)。
図2(I)は、成形前の表皮層16を表しており、図に示しているように成形前において表皮層16は、全体として所定厚みの薄肉の平坦な板状(ないしシート状)をなしている。
【0047】
この製造方法では、図2(II)に示しているように発泡成形型34の雌型36の内面に沿わせるようにして平坦形状の表皮層16を配置しセットするとともに、雄型38の内面に、予め所定形状に成形してある芯材14をインサートとしてセットし、続いて発泡成形型34を(II)に示すように型締状態とする。
【0048】
尚このとき、図2(II)に示すように表皮層16は、コーナ部K1から末端M1までフィルム22を除去しておく。
その除去の方法としては様々な方法を用いることができる。
例えばフィルム22を部分的に切断することによって除去しておくこともできるし、又はフレーム処理によりフィルム22を部分的に火炎にさらし、これを溶融させることによって除去するといったことも可能である。或いはその他の手段にてフィルム22を部分的に除去しておくことができる。
【0049】
図2(II)に示すように表皮層16を雌型36の内面に沿わせるように配置しセットしたとき、表皮層16のコーナ部K1と雌型36の対応する形状の内面との間に微小な隙間が生じた状態となる(コーナ部k3においても同様)。
尚、末端M1においてはスラブフォーム層20が雌型36と雄型38とにより挟まれて、圧縮によりその厚みが部分的に薄くなっている。
【0050】
次に成形型34の型締状態の下で、芯材14と表皮層16との間に形成される空間40に発泡樹脂の原液(ここではウレタン樹脂の原液)を注入し、そしてこれを発泡反応させる。
このとき、図3に示しているようにその発泡の圧力で表皮層16がコーナ部K1(k3においても同様)において雌型36の内面に押し付けられ、雌型36の内面に一時的に表皮伸び等により追従した部位が密着した状態となる。
その際、表皮層16のコーナ部K1(k3においても同様)には引張りの力が働くとともに、スラブフォーム層20が発泡圧力で雌型36の側に弾性的に圧縮せしめられる。
【0051】
上記の発泡樹脂の原液の発泡反応によって、発泡成形品10における本体としての中心部の発泡基体12が発泡成形されると同時に、かかる発泡基体12が芯材14と表皮層16とに一体化される。
またこのとき、コーナ部K1から末端M1まで、スラブフォーム層20に含浸された発泡樹脂の原液が反応により固化し、コーナ部K1から末端M1までスラブフォーム層20が固化層となる。
【0052】
そしてこの固化層によって発泡成形品10に対し、コーナ部K1から末端M1まで形状保持機能が付与される。
また併せて、末端M1の部分で原液が固化することによって、表皮層16と芯材14の平坦部30とが接着され固着される。
詳しくはフィルム22を除いた表皮18とスラブフォーム層20とが、末端M1において芯材14に固着される。
【0053】
以上発泡成形品10の図中左側のコーナ部K1から末端M1までの部分について成形時の作用を説明したが、図中右側のコーナ部K2から末端M2までの部分についても、その作用は図4に示しているように基本的に同様である。
【0054】
以上のような本実施形態によれば、コーナ部K1,K2において従来生じていた形状ダレを防止することができる。
これにより発泡成形品10の取付状態での外観を良好とすることができる。
また形状ダレによって発泡成形品10のコーナ部K1,K2の寸法,形状が不安定化する問題を解決でき、従って発泡成形品10を相手側に取り付ける際に隣接部材24,26と合せを行ったとき、発泡成形品10が隣接部材24,26と干渉を生じたり、或いは隣接部材24,26との間に設定以上の隙間を生ぜしめ、或いはその隙間がばらついてしまうといった問題を解決でき、発泡成形品10と隣接部材24,26との合せ部分の美観を良好となすことができる。
【0055】
因みに、図6は両末端に到るまでフィルム22Aを延在させた表皮層16Aを用いて発泡成形品10Aを成形したときの形状(脱型後の形状)を比較例として示している。
同図に示しているようにこの比較例の発泡成形品10Aでは、コーナ部K1Aから末端M1Aまでの部分において、スラブフォーム層20Aに発泡樹脂の原液が含浸されず、従ってその原液の固化も行われないため、同部分において発泡成形品10Aに形状保持機能が付与されず、そのため図6(B)に示しているように、発泡成形品10Aはコーナ部K1Aの部分(K2Aの部分も同様)が脱型後に形状ダレを生じてしまう。
【0056】
同様にコーナ部k3Aにおいても図中上向き(外向き)に大きく突出するような形状ダレを生じ、その結果として内向きに凸形状をなすコーナ部k4Aが内向きに押されて、本来の設計形状よりも内向きに大きく突出した形状の形状ダレを生じてしまう。
更にコーナ部K1Aとk3Aとの間の縦の壁42Aの付根側の図中下側部分が、本来の設計形状よりも外向きに張り出した形状となる。
【0057】
その結果、図7に示しているようにその縦の壁42Aの張り出した部分が隣接部材24と干渉を生じたり、或いはコーナ部K1Aと隣接部材との間に生じる隙間が、目的とする設計形状よりも大きくなってしまう。或いは形状ダレの程度によってその隙間が様々にばらついてしまう問題を生ずる。
【0058】
一方末端M1Aにおいては、表皮18Aが芯材14Aから離れる方向に拡がり、場合によってスラブフォーム層20Aの破れを伴って剥離を生じてしまう。
特に図6(A)中右側の端末M2Aについては、その剥れの対策のためにこれを長く延ばして巻込み処理をするといったことが必要となる場合がある。
【0059】
しかるに本実施形態では、コーナ部K1(コーナ部K2についても同様)が形状ダレ防止され、図1に示しているように目的とする設計形状にほぼ近いシャープな形状に成形されるため、図1の隣接部材24,26等と干渉を生じたり、或いはそれらとの合せの部分で大きな隙間を生ぜしめたり、またその隙間がばらついたりする問題を解決することができる。
【0060】
因みに図5は比較例におけるコーナ部K1Aと、本実施形態のコーナ部K1の成形形状を比較して表したもので、コーナ部K1Aの従来の曲率半径Raが5mm程度であったのが、本実施形態のコーナ部K1では曲率半径Rが2mm程度まで小さくできることが確認されている。
【0061】
本実施形態ではまた、表皮層16が原液の含浸及び固化によって成形時の形状を脱型後も保持できるので、発泡成形品10を成形するに当って、予め表皮層16を製品形状に対応した形状に予備成形しておかなくても良く、従ってその予備成形のための工程を省略し得て、発泡成形品10の製造コストを低減することができる。
【0062】
またこの実施形態では、発泡樹脂の原液をコーナ部K1から末端M1までスラブフォーム層20に含浸させ固化させてあるため、表皮層16の末端M1,M2において表皮18がめくれ上る現象を防止できる。
従って例えば表皮層16の図中右側の末端M2を長く延在させた上で巻込み処理を行うといったことを省略することが可能となる。
【0063】
加えて表皮層16は、末端M1,M2において固化により形状保持機能が付与されているのに加えて、芯材14の平坦部30,32に接着により固着されているため、かかる末端M1,M2が芯材14から剥離し、めくれるのを有効に防止することができる。
【0064】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示である。
例えば本発明は上例以外の他の様々な形状の或いはドアトリムアッパー以外の他の様々な種類,用途の発泡成形品に適用することが可能であるなど、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態,態様で構成,実施可能である。
更に、上例ではコーナ部K1,K2から末端M1,M2まで連続して表皮層16のフィルム22を除去し、同部分においてスラブフォーム層20に原液を含浸させ固化しているが、コーナ部K1,K2と末端M1,M2とでそれぞれ独立してフィルム22を部分的に除去し、それぞれにおいてスラブフォーム層20に原液を含浸及び固化させて各部分に形状保持の機能をもたせ、更に末端M1,M2において表皮層16と芯材14とを接着するようになすことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施形態の表皮付発泡成形品を隣接部材とともに取付状態で示した断面図である。
【図2】同実施形態の表皮付発泡成形品の製造方法の要部工程を示した説明図である。
【図3】図2に続く説明図である。
【図4】同実施形態の表皮付発泡成形品の要部の拡大図である。
【図5】同実施形態による効果の説明図である。
【図6】同実施形態の利点を説明するために示した比較例図である。
【図7】図6の比較例の表皮付発泡成形品における問題点の説明図である。
【符号の説明】
【0066】
10 表皮付発泡成形品
12 発泡基体
14 芯材
16 表皮層
18 表皮
20 スラブフォーム層
22 フィルム
K1,K2 コーナ部
M1,M2 末端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡樹脂の原液を発泡成形して成る、発泡成形品の本体としての発泡基体に対して、表面材としての表皮の裏側に該発泡基体よりも軟質の発泡材から成るスラブフォーム層及び該スラブフォーム層の更に裏面側であって該発泡基体との間に介在し、前記発泡樹脂の原液の該スラブフォーム層への浸透を防止するフィルムとが一体に積層された表皮層を接合状態に一体に成形して成り、取付状態で外部に露出した状態となる意匠面の一部に屈曲した断面形状の角状のコーナ部を有している表皮付発泡成形品であって
前記フィルムは、前記コーナ部に位置する部分が除去されていて、その除去部を通じて前記スラブフォーム層に前記発泡樹脂の原液が含浸され固化していることを特徴とする表皮付発泡成形品。
【請求項2】
請求項1において、前記コーナ部が前記表皮層の末端に近接して位置していて、前記フィルムが該コーナ部から該末端まで除去されており、その除去部分を通じて前記発泡樹脂の原液が該コーナ部から該末端まで前記スラブフォーム層に含浸され固化していることを特徴とする表皮付発泡成形品。
【請求項3】
請求項2において、前記発泡基体には剛性を有する取付用の芯材が裏面側に積層状態に一体化されており、該芯材は前記末端まで延在していて、該芯材が前記発泡基体を介さないで直接前記スラブフォーム層の末端と重合されており、該末端で前記発泡樹脂の原液の固化によってそれら芯材とスラブフォーム層とが接着されていることを特徴とする表皮付発泡成形品。
【請求項4】
請求項1の表皮付発泡成形品の製造方法であって
平坦な板状をなす前記表皮層を発泡成形型の内面に沿わせて配置し型締めした状態の下で、該表皮層の内側に形成される空間に前記発泡樹脂の原液を注入し、該原液を前記フィルムを除去した部分を通じて前記コーナ部の前記スラブフォーム層に含浸させ、前記空間内で該原液を発泡及び固化させて前記発泡基体を成形し前記表皮層と一体化するとともに、該コーナ部において前記スラブフォーム層に含浸した原液を固化させることを特徴とする表皮付発泡成形品の製造方法。
【請求項5】
請求項2の表皮付発泡成形品の製造方法であって
平坦な板状をなす前記表皮層を発泡成形型の内面に沿って配置し型締めした状態の下で、該表皮層の内側に形成される空間に前記発泡樹脂の原液を注入し、該原液を前記フィルムを除去した部分を通じて前記コーナ部から前記末端まで前記スラブフォーム層に含浸させ、前記空間内で該原液を発泡及び固化させて前記発泡基体を成形し前記表皮層と一体化するとともに、該コーナ部から前記末端まで前記スラブフォーム層に含浸した原液を固化させることを特徴とする表皮付発泡成形品の製造方法。
【請求項6】
請求項3の表皮付発泡成形品の製造方法であって
平坦な板状をなす前記表皮層を発泡成形型の内面に沿わせて配置するとともに、該表皮層の前記フィルムを除去した前記末端の前記スラブフォーム層を直接前記芯材に重合する状態に該芯材をインサートとして該発泡成形型の内部に配置し、該発泡成形型を型締めした状態の下でそれら表皮層と芯材との間に形成される空間に前記発泡樹脂の原液を注入し、該原液を前記フィルムを除去した部分を通じて前記コーナ部から前記末端まで前記スラブフォーム層に含浸させ、前記空間内で該原液を発泡及び固化させて前記発泡基体を成形し前記表皮層及び芯材と一体化するとともに、前記コーナ部から前記末端まで該スラブフォーム層に含浸した原液を固化させ、該スラブフォーム層の末端と前記芯材とを接着することを特徴とする表皮付発泡成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−105214(P2010−105214A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−277337(P2008−277337)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(000219668)東海化成工業株式会社 (39)
【Fターム(参考)】