説明

表示システム、及び、表示システムの制御方法

【課題】効果的な情報伝達ができる表示システムを提供する。
【解決手段】複数の画像を、それぞれ異なる特定の方向からのみ視認可能なように液晶表示パネル10に同時に表示する表示装置2と、特定の方向に音声を出力する超指向性スピーカ4と、表示装置2の液晶表示パネル10の前方を撮影して撮影画像を生成するカメラ装置5と、カメラ装置5が生成した撮影画像に基づいて、撮影画像に写っている人物を検出すると共に、この人物の移動方向及び位置を検出する移動方向検出部31bと、移動方向検出部31bが検出した人物の移動方向及び位置に基づいて、人物が視認可能な画像に対応する音声を人物に向けて超指向性スピーカ4から出力する制御部31と、を備えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の画像を、それぞれ異なる特定の方向からのみ視認可能なように表示画面に同時に表示する表示装置を備える表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、1の視野角方向から視認することができる画像と、この1の視野角方向と異なる視野角方向から視認することができる画像とを同時に表示する表示手段を備えた表示装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この種の表示装置は、視野角に応じて異なる画像を同時に表示できるため、例えば、カーナビゲーション装置のディスプレイに用いられ、運転席に座る運転手と、助手席に座る搭乗者とに、同時に、それぞれ異なる画像を表示する、といった形で使用されている。
【特許文献1】特開2005−284592号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した表示装置を、建物内の廊下等の歩行者が往来する場所に設置し、歩行者の視野角に応じて異なる画像を表示して、画像が示す情報を歩行者に伝達することを考えた場合、視野角に応じて同時に異なる画像を表示できるという表示装置の特性を利用して、歩行者に効果的に情報伝達を行いたい、とするニーズがある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、効果的な情報伝達ができる表示システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明は、表示システムにおいて、複数の画像を、それぞれ異なる特定の方向からのみ視認可能なように表示画面に同時に表示する表示装置と、特定の方向に音声を出力する超指向性スピーカと、前記表示装置の前記表示画面の前方を撮影して撮影画像を生成する撮影手段と、前記撮影手段が生成した前記撮影画像に基づいて、前記撮影画像に写っている人物を検出すると共に、この人物の移動方向及び位置を検出する移動方向検出手段と、前記移動方向検出手段が検出した前記人物の移動方向及び位置に基づいて、前記人物が視認可能な前記画像に対応する音声を前記人物に向けて前記超指向性スピーカから出力する音声出力制御手段と、を備えること、を特徴とする。
この構成によれば、超指向性スピーカから1人の人物に向かって音声を出力する際、この人物の移動方向及び位置に基づいて、この人物から視認可能な画像に対応する音声が出力される。このため、この人物から視認可能な画像に対応し、かつ、この人物の進行方向に基づくこの人物の状況が反映された、この人物に適した情報を有する音声を出力することができ、効果的な情報伝達を実現できる。
【0005】
ここで、上記発明の表示システムにおいて、前記超指向性スピーカの音声出力の方向を移動可能に構成し、前記撮影手段が生成した前記撮影画像に基づいて、前記撮影画像に写っている人物を検出し、この人物の移動を検出すると共に、検出した前記人物の移動に対応して前記超指向性スピーカの音声出力の方向を移動するスピーカ制御手段をさらに備えるようにしてもよい。
この構成によれば、特定の方向に音声を出力するという超指向性スピーカの特性を利用し、1人の人物が移動しても、この人物に対して特定の音声を出力するという状態を維持することができ、音声による効果的な情報伝達を実現できる。特に、人物に対して出力される特定の音声は、この人物に適した情報を有する音声であるため、より効果的な情報伝達を実現できる。
【0006】
また、上記発明の表示システムにおいて、前記撮影手段が生成した前記撮影画像に基づいて、前記撮影画像に写っている人物を検出すると共に、この人物の属性を判別する属性判別手段をさらに備え、前記音声出力制御手段は、前記位置等検出手段が検出した前記人物の移動方向及び位置、及び、前記属性判別手段が判別した前記人物の属性に基づいて、前記人物が視認可能な前記画像に対応する音声を前記人物に向けて前記超指向性スピーカから出力するようにしてもよい。
この構成によれば、人物に対し超指向性スピーカから音声を出力する場合、人物の位置、及び、進行方向のみならず、人物の属性に応じた情報を有する音声が出力される。従って、人物の属性が反映され、よりこの人物に適した音声を出力することができ、さらに効果的な情報伝達を実現できる。
【0007】
また、上記発明の表示システムにおいて、前記超指向性スピーカを複数備えるようにしてもよい。
この構成によれば、複数の人物に対し、それぞれに適した音声を、同時に、出力できるため、効果的な情報伝達を実現できる。
【0008】
また、上記目的を達成するために、本発明は、複数の画像を、それぞれ異なる特定の方向からのみ視認可能なように表示画面に同時に表示する表示装置と、特定の方向に音声を出力する超指向性スピーカと、を備える表示システムを制御する制御方法であって、前記表示装置の前記表示画面の前方を撮影して撮影画像を生成し、前記撮影画像に基づいて、前記撮影画像に写っている人物を検出すると共に、この人物の移動方向及び位置を検出し、検出した前記人物の移動方向及び位置に基づいて、前記人物が視認可能な前記画像に対応する音声を前記人物に向けて前記超指向性スピーカから出力すること、を特徴とする。
この制御方法によれば、超指向性スピーカから1人の人物に向かって音声を出力する際、この人物の移動方向及び位置に基づいて、この人物から視認可能な画像に対応する音声が出力される。このため、この人物から視認可能な画像に対応し、かつ、この人物の進行方向に基づくこの人物の状況が反映された、この人物に適した情報を有する音声を出力することができ、効果的な情報伝達を実現できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、画像を表示する表示システムを用いて、人物の移動方向、及び、位置に応じて、この人物に適した情報を有する音声を出力できるため、効果的な情報伝達を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、本実施形態に係る表示システム1の構成を示す図である。
表示システム1は、表示制御装置3に、同時に複数の画像を表示可能な表示装置2、複数(2台)の超指向性スピーカ4L、4R(以下、特に区別しない場合は符号4を付す)、及び、カメラ装置5(撮影手段)を接続して構成される。表示装置2が表示する画像は、静止画像及び動画像のいずれであってもよい。
【0011】
表示装置2は、図1に平面視で示すように、表示装置2に向かって右側(目視方向ER)から見た場合と、表示装置2に向かって左側(目視方向EL)から見た場合とで、異なる画像が視認されるように、複数の画像を表示する。ここで、目視方向とは、表示装置2の外部から表示装置2を見る視線の方向(ビューアングル)を指す。
本実施形態において、表示装置2は液晶表示パネル10(表示画面)を有する液晶表示装置として構成され、液晶表示パネル10と、液晶表示パネル10の背面側から照明するバックライト(図示略)と、を備えている。また、液晶表示パネル10には、右用表示画素10Aと左用表示画素10Bとが水平方向に並べて設けられ、液晶表示パネル10は、右用表示画素10Aを通った光を目視方向ER側だけに出射させるとともに、左用表示画素10Bを通った光を目視方向EL側だけに出射させる偏光部材を備えている。このため、表示装置2が、右用表示画素10Aのみを用いて目視方向ER用の画像を表示する一方、左用表示画素10Bのみを用いて目視方向EL用の画像を表示することで、目視方向ERから表示装置2を見る場合と、目視方向ELから表示装置2を見る場合とで、異なる画像を見ることができる。
【0012】
図2は、本実施形態に係る表示装置2を歩行路6の壁7に設けた場合の状態を上から見た図である。また、図3(A)は、目視方向EL用の画像である画像GLの一例を示す図であり、図3(B)は、目視方向ER用の画像である画像GRの一例を示す図である。
図2における歩行路6とは、ある店舗の出入口に設けられた歩行用の道であり、店舗に入店する入店者は、歩行路6を進行方向Y1へ向かって進むことによって店舗に入店し、また、店舗から退店する退店者は、歩行路6を進行方向Y2へ向かって進むことによって店舗から退店するものとする。
本実施形態では、液晶表示パネル10に画像を表示することにより、この画像を視認する入店者及び退店者の各々に、各々にとって有益な情報を提供し、さらに、これら入店者及び退店者に対し超指向性スピーカ4を介して音声を出力し、音声が示す情報を提供することを目的として、歩行路6の壁7に表示装置2が設けられている。
【0013】
図2において、エリアALは、目視方向EL用の画像である画像GL(図3(A))が視認可能なエリアである。具体的には、エリアAL内に存在し、進行方向Y1へ進んで店舗へ入店しようとしている入店者J1が表示装置2を目視した場合、目視方向が目視方向ELとなるため、目視方向EL用の画像として表示装置2に表示されている画像GL(図3(A))が視認されることとなる。図3(A)に示すように、画像GLは、入店者向けの情報(「いらっしゃいませ」という表示)、及び、入店者にとって有益な情報(「本日の目玉商品」という表示)が表示されており、入店者J1は、表示装置2を目視することにより有益な情報を取得できる。
また、図2において、エリアARは、目視方向ER用の画像である画像GR(図3(B))が視認可能なエリアである。具体的には、エリアAR内に存在し、進行方向Y2へ進んで退店しようとしている退店者J2が表示装置2を目視した場合、目視方向が目視方向ERとなるため、目視方向ER用の画像として表示装置2に表示されている画像GR(図3(B))が視認されることとなる。図3(B)に示すように、画像GRは、退店者向けの情報(「ありがとうございました」という表示)、及び、退店者にとって有益な情報(「明日の目玉商品」という表示)が表示されており、退店者J2は、表示装置2を目視することにより有益な情報を取得できる。
【0014】
図4は、液晶表示パネル10の概略構造を示す要部断面図であり、図5は図4中に符号Aで示す部分の拡大断面図であり、図6は、図4の液晶表示パネルのマトリックス配線とストライプ状の遮光膜の説明のための平面図である。
液晶表示パネル10は、ガラス基板11の表面に、半導体スイッチング素子であるTFT(図示せず)、画素電極12、水平方向に延びる走査線13(図6参照)、及び、鉛直方向に延びる信号線14をマトリックス状に配置した上に、表面が平らになるように有機絶縁膜15を設け、その絶縁膜15上にCr(クロム)等の金属を含む材料からなる遮光膜16を設けたアクティブマトリクス基板18と、このアクティブマトリクス基板18に対向させて、別のガラス基板19の表面にカラーフィルタ層20を設け、さらにこのカラーフィルタ層20の上にITO(Indium Tin Oxide)等からなる透明な対向電極21を設けたカラーフィルタ基板23を有している。そして、アクティブマトリクス基板18及びカラーフィルタ基板23を対向させた間隙に液晶24が充填されている。
これらアクティブマトリクス基板18及びカラーフィルタ基板23は一体となって液晶表示パネル10を構成し、液晶表示パネル10の外側の面、すなわちアクティブマトリクス基板18の裏側とカラーフィルタ基板23の表側には、それぞれ、偏光板17及び偏光板22が設けられている。また、液晶表示パネル10の内側の面、すなわち、アクティブマトリクス基板18の表側とカラーフィルタ基板23の裏側の面には、配光膜25、26が形成され、これら配光膜25、26が対向している。配光膜25は、アクティブマトリクス基板18を構成する遮光膜16の上に形成され、配光膜26は、カラーフィルタ基板23を構成する対向電極21の上に形成されている。
【0015】
液晶表示パネル10においては、広幅の信号線14と狭幅の信号線14’とが、左右方向に交互に並べて配置され、各々の信号線14、14’の間には、右視点用画素電極12R1、12G1、12B1と左視点用画素電極12R2、12G2、12B2とが配置される。その並び順は、図4及び図6に示したように、右視点用画素電極12R1、広幅の信号線14、左視点用画素電極12R2、狭幅の信号線14’、右視点用画素電極12G1、広幅の信号線14、左視点用画素電極12G2という順になる。
信号線14、14’及び走査線13は、Al(アルミニウム)/Mo(モリブデン)等の金属を含む遮光性の導体材料で形成されるので、液晶表示パネル10においては、少なくとも信号線14、14’が下部遮光膜として機能し、信号線14と信号線14’との間は光を透過させる経路となる。また、画素電極12を覆う絶縁膜15には、ストライプ状の遮光膜16が形成される。遮光膜16には縦方向に延びるスリット状の開口部27が形成され、この開口部27においてのみ光が透過可能となっている。このため、液晶表示パネル10の背面側に設けられたバックライト(図示せず)が発した光は、信号線14、14’及び遮光膜16により遮られ、信号線14と信号線14’との間、及び、開口部27を通った光のみが、液晶表示パネルの前面にいる人物の目に入射する。
【0016】
従って、液晶表示パネル10においては、信号線14、14’とストライプ状の遮光膜の開口部27との相互の位置関係により、光の透過方向、すなわち指向性を制御することができ、これによって、液晶表示パネル10の前面における複数の位置から、それぞれ異なる画像を異なる方向から同時に観察可能とすることができる。
なお、本第1の実施形態の液晶表示パネル10は、目視方向ER(図1)及び目視方向EL(図1)に対応する方向に向けて、2種類の画像を同時に表示する。このため、液晶表示パネル10の正面方向へ向かう光をブラックマトリクス28により遮ることで、正面方向への光漏れを防止し、目視方向ER、ELから異なる画像を明瞭に視認可能としている。また、狭幅の信号線14’に重なる位置において、遮光膜16には開口部27を設けてもよく設けなくてもよい。この位置に開口部を設ける場合は、液晶表示パネル10の正面から垂線方向に出てくる光を遮光するために、別途、カラーフィルタ層20の対応する位置にブラックマトリクスを設ける方がよい。
【0017】
液晶表示パネル10においては、広幅の信号線14と狭幅の信号線14’とが左右いずれかの視点用の画素電極12を介して交互に設けられているため、広幅の信号線14の左右に位置する各画素電極12を視認できる視野角が大きくなるので、左右の別方向に位置する人物がそれぞれの情報を明確に視認しやすくなる。
また、液晶表示パネル10においては、幅広の信号線14の上に当たる絶縁膜15の表面にストライプ状の遮光膜16が、信号線の幅方向の左側を幅w1だけ、右側を幅w2だけ被覆するように設けられており、その他の部分は開口部27となっている。そして、目視方向ER、ELからは、開口部27を通して右視点用画素電極12R1、12G1、12B1又は左視点用画素電極12R2、12G2、12B2を透視することで、各画素電極により表示される画像を見ることになる。この場合、w1=w2であれば、左右対称の指向性を実現でき、また、w1≠w2とすれば左右非対称の指向性を実現できるため、目視方向ER、ELのバランス及び絶縁膜15の厚みも考慮した上で、w1及びw2を定めることにより開口部27の位置及び大きさが決定される。なお、w1及びw2の少なくとも一方は「0」であってもかまわない。
【0018】
図7は、表示システム1の機能的構成を示すブロック図である。
表示システム1を構成する表示制御装置3は、例えば、パーソナルコンピュータとして実現されるものであり、図7に示すように、制御部31と、入力部32と、表示部33と、記録媒体読取装置34と、インタフェース部35と、音声出力部36と、台座駆動部37と、記憶部38と、を備えている。
制御部31は、表示制御装置3の各部を中枢的に制御するものであり、演算実行手段としてのCPU(Central Processing Unit)や、このCPUに実行される基本制御プログラムや、この基本制御プログラムに係るデータ等を不揮発的に記憶するROM(Read Only Memory)、CPUに実行されるプログラムやこのプログラムに係るデータ等を一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)、その他の周辺回路等を備えている。また、制御部31は、図7に示すように、エリア進入退出検出部31aと、移動方向検出部31b(移動方向検出手段)と、スピーカ台座制御部31c(スピーカ制御手段)と、属性判別部31d(属性判別手段)と、を備えているが、これらの機能及び動作については後述する。
【0019】
入力部32は、マウスやキーボード等の入力デバイスに接続され、オペレータによるこれら入力デバイスの操作を検出して、この操作に対応する操作信号を制御部31に出力する。
表示部33は、制御部31の制御の下、各種情報を表示するものであり、例えば液晶表示パネルを用いて構成される。
記録媒体読取装置34は、CD、DVD、或いは次世代型DVD等の光ディスク型記録媒体、MO等の光磁気記録媒体、磁気記録媒体、半導体記憶素子を利用した記憶装置、磁気的記録媒体を利用した記録装置等から、プログラムやデータを読み取る装置である。記録媒体読取装置34は、制御部31の制御の下、液晶表示パネル10に表示する画像に係るデータ、及び、超指向性スピーカ4から出力する音声に係るデータを読み取り、制御部31に出力する。制御部31は、記録媒体読取装置34が読み取った画像に係るデータ、及び、音声に係るデータを記憶部38に記憶させる。
インタフェース部35は、信号伝送ケーブル等を介して表示装置2に接続され、制御部31の制御に従って、表示装置2との間で各種信号を送受信する。また、インタフェース部35は、信号伝送ケーブル等を介してカメラ装置5に接続され、制御部31の制御に従って、カメラ装置5との間で各種信号を送受信する。
【0020】
音声出力部36は、超指向性スピーカ4に接続され、制御部31の制御の下、記憶部38に記憶された音声データに係る音声を超指向性スピーカ4から出力する。超指向性スピーカ4とは、特定の方向に音声を出力できるスピーカであり、例えば、超音波トランスデューサを備え、この超音波トランスデューサによって超音波帯域の搬送波を可聴帯域の音声信号によって変調した変調波を出力することで、高い指向性を備える音声を出力可能な超音波スピーカが用いられる。本実施形態に係る表示システム1は、図2及び図3に示すように、複数(2台)の超指向性スピーカ4を備えており、それぞれの超指向性スピーカ4が、スピーカ台座41L,41R(以下、特に区別しない場合は符号41を付す)に載置されている。
台座駆動部37は、制御部31の制御の下、スピーカ台座41に内蔵されているモータ(不図示)を駆動することにより、超指向性スピーカ4を回転するものである。具体的には、超指向性スピーカ4は、スピーカ台座41に内蔵されているモータの動力を伝える回転軸に接続されており、モータの駆動に応じて、図2に示すように、中心軸Tを中心に、回転方向Y3及び回転方向Y4が示す水平方向に回転する構成となっている。台座駆動部37は、超指向性スピーカ4が出力する音声の方向を所望の方向にすべく、制御部31の制御の下、モータにモータ駆動制御信号を送信して超指向性スピーカ4を回転する。
記憶部38は、磁気的、光学的記録媒体または半導体記憶素子を用いた記憶装置を備え、各種のプログラムやデータ等を不揮発的に記憶する。また、記憶部38は、図7に示すように、画像データテーブル38aと、音声データテーブル38bとが記憶されているが、これらテーブルの内容については後述する。
【0021】
表示装置2は、表示制御装置3に接続されるインタフェース部201と、インタフェース部201を介して入力された表示信号を取得する描画制御部202と、描画制御部202に接続された描画メモリ203と、描画制御部202の制御に従って液晶表示パネル10を駆動する液晶駆動回路204と、液晶表示パネル10とを備えている。
描画制御部202は、インタフェース部201を介して表示制御装置3から入力された表示信号を取得し、描画メモリ203に一時的に記憶する。そして、描画制御部202は、液晶表示パネル10における描画タイミングに合わせて描画メモリ203から表示信号を読み出し、液晶表示パネル10における右用表示画素10A、左用表示画素10Bの構成に合わせて液晶駆動回路204に順次出力する。描画メモリ203は、描画制御部202の制御に従って表示信号を一時的に記憶する。
液晶駆動回路204は、描画制御部202から入力される表示信号に従って液晶表示パネル10を駆動することにより、液晶表示パネル10に画像を表示させる。また、液晶駆動回路204は、描画制御部202からの表示信号の入力状態等に合わせてバックライト(図示略)の点灯制御等を行う。
【0022】
カメラ装置5は、表示制御装置3に接続されるインタフェース部501と、撮影制御部502と、撮影部503と、を備えている。
撮影制御部502は、表示制御装置3の制御部31の制御の下、撮影部503を制御する。
撮影部503は、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等の撮像素子(図示略)、撮影レンズ群(図示略)、ズームやフォーカス等の調整を行うためにレンズ群を駆動するレンズ駆動部(図示略)等を備え、撮影制御部502の制御に従って撮影を行う。撮影制御部502は、撮影部503が備える撮像素子から出力されるデータを所定形式のデータに変換し、撮影画像データとして表示制御装置3の制御部31に出力する。
図2及び図3に示すように、カメラ装置5は、表示装置2の天部に設けられ、液晶表示パネル10の前方を撮影する。このカメラ装置5は、例えば広角カメラが用いられ、少なくともエリアAL及びエリアARに対応する空間を撮影できるよう構成されている。従って、エリアALまたはエリアARに人物が存在する場合、カメラ装置5によってこの人物が撮影される。
【0023】
次いで、表示制御装置3の制御部31が備える、エリア進入退出検出部31a、移動方向検出部31b、スピーカ台座制御部31c、及び、属性判別部31dについて説明する。
エリア進入退出検出部31aは、カメラ装置5から入力された撮影画像データに基づいて、エリアALまたはエリアARのいずれかに人物が進入したこと、及び、エリアALまたはエリアARのいずれかから人物が退出したこと、を検出するものである。ここで、エリア進入退出検出部31aの具体的な動作について一例を挙げて説明する。
例えば、エリア進入退出検出部31aは、撮影画像データのサンプリングを行い、サンプリングした撮影画像データを分析し、この撮影画像データに写っている人物の顔を検出し、検出した顔の領域を特定する。顔の検出、及び、顔領域の特定は、例えば、顔を表すテンプレートを用いたパターンマッチング等の既存の技術を用いることができる。さらに、エリア進入退出検出部31aは、撮影画像データにおける顔領域の位置に基づいて、この人物の位置を推定すると共に、この人物がエリアAL、エリアAR、または、これらエリアの外、のいずれに存在するのかを検出する。エリア進入退出検出部31aは、サンプリングした各撮影画像データにおいて特定した顔領域を追跡すると共に、撮影画像データ毎に上述した動作を行い、人物がエリアALまたはエリアARのいずれかに進入したこと、及び、エリアALまたはエリアARのいずれかから人物が退出したこと、を検出する。
【0024】
移動方向検出部31bは、カメラ装置5から入力された撮影画像データに基づいて、この撮影画像データに写っている人物を検出すると共に、この人物の進行方向、及び、位置を検出するものである。本実施形態において、人物の位置とは、人物がエリアARまたはエリアALに存在する場合において、この人物が存在するエリアのことである。ここで、移動方向検出部31bの具体的な動作について一例を挙げて説明する。
例えば、移動方向検出部31bは、撮影画像データのサンプリングを行い、サンプリングした撮影画像データを分析し、この撮影画像データに写っている人物の顔を検出し、検出した顔の領域を特定する。次いで、移動方向検出部31bは、撮影画像データにおける顔領域の位置に基づいて、この人物の位置を推定すると共に、この人物がエリアALまたはエリアARのいずれかに存在するか否か、存在する場合いずれのエリアに存在するかを検出する。
さらに、顔領域を検出した場合、移動方向検出部31bは、サンプリングした各撮影画像データにおいて顔領域を追跡し、顔領域の移動ベクトルを検出し、検出した移動ベクトルに基づいて、この人物が進んでいる方向、具体的には、この人物が進行方向Y1または進行方向Y2のいずれの進行方向に進んでいるかを検出する。
【0025】
図8は、スピーカ台座制御部31cの動作を説明するための図である。
スピーカ台座制御部31cは、カメラ装置5から入力された撮影画像データに基づいて、この撮影画像データに写っている人物を検出し、この人物に向かって音声が出力されるよう超指向性スピーカ4の向きを変更すると共に、この人物の移動を検出し、検出した人物の移動に応じて、超指向性スピーカ4を回転することにより、超指向性スピーカ4から出力される音声の方向がこの人物に向かっている状態を維持するものである。例えば、図8に示すように、人物J5が矢印Y6に向かって移動する場合、この移動に合わせて超指向性スピーカ4を回転方向Y3に回転し、超指向性スピーカ4から出力される音声の方向が人物J5に向けられた状態を維持する。ここで、スピーカ台座制御部31cの具体的な動作について一例を挙げて説明する。
例えば、スピーカ台座制御部31cは、カメラ装置5から入力される撮影画像データのサンプリングを行い、サンプリングした撮影画像データを分析し、この撮影画像データに写っている人物の顔を検出し、検出した顔の領域を特定する。さらに、スピーカ台座制御部31cは、撮影画像データにおける顔領域の位置を分析し、この分析結果に基づいて、超指向性スピーカ4から出力される音声の方向をこの人物の顔に向けるためには、超指向性スピーカ4をどの方向にどれだけ回転させればよいかを算出する。この際、記憶部38に、撮影画像データにおける顔領域の位置と、この顔領域に係る人物の顔に向けて音声を出力する際の超指向性スピーカ4の向きと、を対応付けて記憶するテーブルを記憶し、このテーブルの内容に基づいて超指向性スピーカ4の回転方向、及び、回転量を算出する構成としてもよい。次いで、スピーカ台座制御部31cは、台座駆動部37を制御して、算出した超指向性スピーカ4の回転方向、及び、回転量に応じたモータ駆動制御信号をスピーカ台座41に内蔵されたモータに出力し、超指向性スピーカ4を回転する。この動作を、撮影画像データから顔領域が検出されている間継続することにより、スピーカ台座制御部31cは、超指向性スピーカ4から出力される音声の方向を人物の顔に向けた状態を維持する。
【0026】
属性判別部31dは、カメラ装置5から入力された撮影画像データに基づいて、この撮影画像データに写っている人物を検出し、この人物の属性を判別するものである。本実施形態において、人物の属性とは、この人物の性別のことである。ここで、属性判別部31dの具体的な動作について一例を挙げて説明する。
例えば、属性判別部31dは、カメラ装置5から入力される撮影画像データのサンプリングを行い、サンプリングした撮影画像データを分析し、この撮影画像データに写っている人物の顔を検出し、検出した顔の領域を特定する。次いで属性判別部31dは、特定した顔領域の特徴を抽出し、抽出した顔領域の特徴に基づいて性別を判別する。
【0027】
次いで、記憶部38に記憶されている画像データテーブル38a、及び、音声データテーブル38bについて図9を用いて説明する。
図9(A)は、記憶部38に記憶された画像データテーブル38aの構成を模式的に示す図である。
図9(A)に示すように、画像データテーブル38aは、画像名称フィールドと、左方向用画像データフィールドと、右方向用画像データフィールドと、を備えている。左方向用画像データフィールドには、左方向用画像データが記憶される。左方向用画像データとは、目視方向EL用の画像データのことであり、例えば、図3(A)に示す画像GLに係る画像データLD1が左方向用画像データとして記憶部38に記憶される。また、右方向用画像データフィールドには、右方向用画像データが記憶される。右方向用画像データとは、目視方向ER用の画像データのことであり、例えば、図3(B)に示す画像GRに係る画像データRD1が右方向用画像データとして記憶部38に記憶される。図9(A)に示すように、画像データテーブル38aにおいては、1の左方向用画像データと、1の右方向用画像データとが対応付けて記憶されており、液晶表示パネル10に画像が表示される際は、対応付けて記憶されている左方向用画像データに係る画像と、右方向用画像データに係る画像とが同時に表示される。
画像名称フィールドには画像名称が記憶される。画像名称とは、対応付けて記憶された左方向用画像データ及び右方向用画像データに一意に付される総称のことであり、図9(A)の例では、対応する画像データLD1及び画像データRD1の画像名称として画像名称GD1が付されている。
【0028】
図9(B)は、記憶部38に記憶された音声データテーブル38bの構成を模式的に示す図である。
上述したように、表示システム1は、歩行路6を歩行する人物に対して超指向性スピーカ4から音声を出力し、音声に係る情報を人物に対し提供する。ここで、本実施形態に係る表示システム1は、超指向性スピーカ4による音声の出力に際し、歩行路6を歩行する1人の人物に対し、この人物の位置、この人物の進行方向、この人物の属性という3つの条件に応じて、この人物に向けて特定の超指向性スピーカ4から特定の音声を出力する構成となっている。そして、音声データテーブル38bでは、これら3つの条件と、この条件が成立した場合に出力する音声に係る音声データと、この音声を出力する特定の超指向性スピーカ4を示す値と、を関連付けて記憶している。
【0029】
図9(B)に示すように、音声データテーブル38bは、条件名フィールドと、条件フィールドと、出力対象音声データフィールドと、出力対象超指向性スピーカフィールドと、を備えている。
条件名フィールドには、条件毎に一意に付与される条件名が記憶される。
条件フィールドは、上述した条件が記憶されるフィールドであり、人物の位置フィールドと、進行方向フィールドと、属性フィールドと、を備えている。
人物の位置フィールドは、1人の人物の位置についての条件が記憶されるフィールドであり、図2のエリアALを示す値またはエリアARを示す値が記憶される。上述したように、人物の位置は、移動方向検出部31bによって検出される。
進行方向フィールドは、1人の人物の進行方向についての条件が記憶されるフィールドであり、図2の進行方向Y1を示す値または進行方向Y2を示す値が記憶される。上述したように、人物の進行方向は、移動方向検出部31bによって検出される。
属性フィールドには、1人の人物の属性についての条件が記憶されるフィールドであり、属性としての性別を示す値、具体的には、男性を示す値または女性を示す値が記憶される。上述したように、人物の属性は、属性判別部31dによって検出される。
出力対象音声データフィールドには、条件フィールドに記憶された条件が成立した場合に、出力される音声データが条件毎に記憶される。
出力対象超指向性スピーカフィールドには、条件フィールドに記憶された条件が成立した場合に、音声を出力する一方の超指向性スピーカ4を示す値が記憶される。
例えば、図9(B)を参照して、1人の人物について、この人物がエリアALに存在し、この人物の進行方向が進行方向Y1であり、この人物が男性である場合、条件P1が成立するため、音声データLMが超指向性スピーカ4Lから出力されることになる。
【0030】
ここで、本実施形態における条件と、出力対象音声データと、出力対象超指向性スピーカと、の関係について図2及び図9(B)を用いて詳述する。
1人の人物について、図9(B)の音声データテーブル38bが示す条件P1が成立する場合、この人物は、図2の入店者J1のように、エリアALに存在して進行方向Y1に進む男性の入店者ということになる。この場合、この人物に対して、エリアALから目視できる画像、すなわち、図3(A)に示す画像GLに対応し、かつ、入店者向けかつ男性向けの音声を出力すれば、この人物に対し効果的に情報伝達できる。また、超指向性スピーカ4L、4Rのうち、エリアALに近い、つまり、この人物に近い場所に位置する超指向性スピーカ4Lから音声を出力すれば、効率よく音声を出力できる。これを鑑み、条件P1が成立した場合に出力される音声データLMに係る音声は、画像GLに対応し、かつ、入店者向けかつ男性向けの音声となっている。例えば、音声データLMに係る音声は男性用化粧品を本日の目玉商品として紹介する音声となっている。また、条件P1が成立した場合、音声データLMに係る音声は、人物に近い場所に位置する超指向性スピーカ4Lから出力される。
また、1人の人物について、条件P2が成立する場合、この人物は、エリアALに存在して進行方向Y1に進む女性の入店者ということになる。これを鑑み、条件P2が成立した場合に出力される音声データLWは、エリアALから視認可能な画像GLに対応すると共に、入店者向けかつ女性向けの内容を含む音声となっている。なお、条件P2が成立した場合、音声データLWに係る音声は、この人物に近い場所に位置する超指向性スピーカ4Lから出力される。
また、1人の人物について、条件P3が成立する場合、この人物は、エリアARに存在して進行方向Y2に進む男性の退店者ということになる。これを鑑み、条件P3が成立した場合に出力される音声データRMは、エリアARから視認可能な画像GRに対応すると共に、退店者向けかつ男性向けの内容を含む音声となっている。なお、条件P3が成立した場合、音声データRMに係る音声は、この人物に近い場所に位置する超指向性スピーカ4Rから出力される。
また、1人の人物について、条件P4が成立する場合、この人物は、エリアARに存在して進行方向Y2に進む女性の退店者ということになる。これを鑑み、条件P4が成立した場合に出力される音声データRWは、エリアARから視認可能な画像GRに対応すると共に、退店者向けかつ女性向けの内容を含む音声となっている。なお、条件P4が成立した場合、音声データRWに係る音声は、この人物に近い場所に位置する超指向性スピーカ4Rから出力される。
【0031】
このように本実施形態では、歩行路6を歩行する1人の人物について超指向性スピーカ4から音声を出力する際、この人物の位置、及び、進行方向に応じて出力する音声データが特定され、この音声が出力される。ここで、人物の位置によってこの人物から視認可能な画像が特定されると共に、人物の進行方向からこの人物が入店者か退店者かが特定される。従って、人物の位置、及び、進行方向に応じて出力する音声が定められることにより、この人物から視認可能な画像に対応し、かつ、この人物が入店者または退店者のいずれであるかに応じた、最適な音声をこの人物に出力することができ、表示システム1において効果的な情報伝達を実現できる。
また、本実施形態では、歩行路6を歩行する1人の人物について超指向性スピーカ4から音声を出力する場合、人物の位置、及び、進行方向のみならず、人物の属性に応じて出力する音声データが定められ、この音声が出力される。従って、人物の属性が反映され、よりこの人物に適した音声を、この人物に出力することができ、さらに効果的な情報伝達を実現できる。
なお、図9(B)の音声データテーブル38bの例では、図2のエリアAL内に存在し、進行方向Y2へ進んで退店しようとしている退店者J3に対しては、何ら音声が出力されないこととなる。しかしながら、この退店者J3は、歩行の過程でエリアARを通過しており、このエリアARにおいて退店者J3にとって有益な情報を画像及び音声によって取得しているため、退店者J3にとって何ら不利益を及ぼさない。このことは、エリアAR内に存在し、進行方向Y1へ進んで入店しようとしている入店者J4についても、同様である。
【0032】
次いで、表示システム1の動作について説明する。
図10は、表示システム1の動作を示すフローチャートである。
なお、図10に示すフローチャートの動作の前提として、図9(A)の画像データテーブル38aの画像名称GD1に係る画像が液晶表示パネル10に表示されており、図3に示すように、目視方向EL用の画像として左方向用画像データである画像データLD1に係る画像GLが、目視方向ER用の画像として右方向用画像データである画像データRD1に係る画像GRが、液晶表示パネル10に表示されている状態であるものとする。また、カメラ装置5によって、液晶表示パネル10の前方が撮影されている状態であるものとする。なお、図10のフローチャートにおいて、表示制御装置3の制御部31は、音声出力制御部として機能する。
表示制御装置3の制御部31のエリア進入退出検出部31aは、エリアALまたはエリアARへの人物の進入があったか否かを監視する(ステップS11)。エリアALまたはエリアARへの人物の進入があった場合(ステップS11:YES)、制御部31の移動方向検出部31bは、この人物の位置、すなわち、この人物が存在するエリアと、この人物の進行方向を検出する(ステップS12)。次いで、制御部31の属性判別部31dは、この人物の属性、すなわち、この人物が男性か女性かを判別する(ステップS13)。
【0033】
人物の位置、進行方向を検出し、人物の属性を判別した後、制御部31は、記憶部38に記憶された音声データテーブル38bを参照し、条件フィールドに記憶されている条件のうち、成立する条件があるか否かを判別する(ステップS14)。
成立する条件がない場合(ステップS14:NO)、制御部31は、処理をステップS11に戻す。一方、成立する条件がある場合(ステップS14:YES)、制御部31は、出力対象音声データフィールドを参照し、成立する条件に対応する音声データを特定すると共に、出力対象超指向性スピーカフィールドを参照し、特定した音声データに係る音声を出力する一方の超指向性スピーカ4を特定する(ステップS15)。上述したように、このステップS15で特定された音声データは、人物の位置、進行方向、及び、属性に基づくこの人物にとって最適の音声データである。また、特定された超指向性スピーカ4は、2台の超指向性スピーカ4のうち、この人物に近い場所に位置する超指向性スピーカ4である。
次いで、制御部31のスピーカ台座制御部31cは、台座駆動部37を制御して、ステップS16で特定された超指向性スピーカ4を回転し、この超指向性スピーカ4から出力される音声の方向を人物に向けると共に、この人物の移動に対応して超指向性スピーカ4を回転する(ステップS16)。さらに、制御部31は、ステップS16で特定された音声データを記憶部38から読み出し、音声出力部36を制御して、読み出した音声データに係る音声を超指向性スピーカ4から出力する(ステップS17)。
【0034】
音声を出力した後、制御部31は、移動方向検出部31bによって現在の人物の位置及び進行方向を検出すると共に、音声データテーブル38bの条件フィールドを参照し、この人物について現在も条件が成立しているか否かを監視する(ステップS18)。条件が成立している場合(ステップS18:YES)、制御部31のスピーカ台座制御部31cによって超指向性スピーカ4から出力される音声の方向が人物に向けられると共に、音声の出力が継続される(ステップS19)。
このように、本実施形態では、条件が成立している間、スピーカ台座制御部31cが1人の人物に向かって音声が出力されるよう超指向性スピーカ4の向きを変更すると共に、この人物の移動を検出し、検出した人物の移動に応じて、超指向性スピーカ4を回転し、この人物に向かって音声が出力されている状態が維持される。このため、音声による効果的な情報伝達を実現できる。
一方、条件が成立していない場合(ステップS18:NO)、制御部31は、音声の出力を停止する(ステップS20)。
【0035】
以上説明したように、本実施形態では、歩行路6を歩行する1人の人物について超指向性スピーカ4から音声を出力する場合、移動方向検出部31bによってこの人物の位置、及び、進行方向が検出され、検出された人物の位置、及び、進行方向に応じて出力する音声データが定められ、この音声が出力される。ここで、人物の位置によってこの人物から視認可能な画像が特定されると共に、人物の進行方向からこの人物が入店者か退店者かが特定される。従って、人物の位置、及び、進行方向に応じて出力する音声が定められることにより、この人物から視認可能な画像に対応し、かつ、この人物が入店者または退店者のいずれに該当するかに対応した最適な音声をこの人物に出力することができ、表示システム1において効果的な情報伝達を実現できる。
【0036】
また、本実施形態では、1人の人物に対し音声を出力する際、スピーカ台座制御部31cが、1人の人物に向かって音声が出力されるよう超指向性スピーカ4の向きを変更すると共に、この人物の移動を検出し、検出した人物の移動に応じて、超指向性スピーカ4を回転することにより、この人物に向かって音声が出力されている状態を維持する。従って、特定の方向に音声を出力するという超指向性スピーカ4の特性を利用し、1人の人物に対してのみ特定の音声を出力するという状態を維持することができ、音声による効果的な情報伝達を実現できる。
【0037】
また、本実施形態では、歩行路6を歩行する1人の人物について超指向性スピーカ4から音声を出力する場合、人物の位置、及び、進行方向のみならず、属性判別部によって判別された人物の属性に応じて出力する音声データが定められ、この音声が出力される。従って、人物の属性が反映され、よりこの人物に適した音声を、この人物に出力することができ、さらに効果的な情報伝達を実現できる。
【0038】
また、本実施形態に係る表示システム1は、複数の超指向性スピーカ4を備えている。従って、歩行路6を歩行する複数の人物に対し、それぞれに適した音声を、同時に、出力できる。なお、本実施形態では、超指向性スピーカ4を2台備える構成であったが、超指向性スピーカ4の台数はこれに限らない。
【0039】
なお、上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能である。
本実施形態では、属性判別部31dが属性として人物の性別を判別する構成としたが、判別される属性は性別に限らない。例えば、属性判別部31dが人物が日本人であるか外国人であるかを判別する構成とし、日本人の場合にはこの人物に対し日本語の音声が出力されるようにし、外国人の場合にはこの人物に対し外国語の音声が出力されるようにしてもよい。
また、本実施形態では、歩行路6の壁7に表示装置2を設けた場合を例にして説明したが、表示装置2が設けられる場所はこれに限らず、移動する人物が目視可能な様々な場所に設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】表示システムの概略構成を示す図である。
【図2】表示装置が歩行路の壁に設けられた様子を示す図である。
【図3】表示装置に表示される画像の例を示す図である。
【図4】液晶表示パネルの概略構造を示す要部断面図である。
【図5】図4中に符号Aで示す部分の拡大断面図である。
【図6】液晶表示パネルの配線の構成を示す要部平面図である。
【図7】表示システムの機能的構成を示すブロック図である。
【図8】スピーカ台座制御部の動作を説明するための図である。
【図9】記憶部に記憶されるテーブルの構成を模式的に示す図である。
【図10】表示システムの動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0041】
1…表示システム、2…表示装置、4、4L、4R…超指向性スピーカ、5…カメラ装置(撮影手段)、10…液晶表示パネル(表示画面)、31…制御部(音声出力制御手段)、31b…移動方向検出部(移動方向検出手段)、31c…スピーカ台座制御部(スピーカ制御手段)、31d…属性判別部(属性判別手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画像を、それぞれ異なる特定の方向からのみ視認可能なように表示画面に同時に表示する表示装置と、
特定の方向に音声を出力する超指向性スピーカと、
前記表示装置の前記表示画面の前方を撮影して撮影画像を生成する撮影手段と、
前記撮影手段が生成した前記撮影画像に基づいて、前記撮影画像に写っている人物を検出すると共に、この人物の移動方向及び位置を検出する移動方向検出手段と、
前記移動方向検出手段が検出した前記人物の移動方向及び位置に基づいて、前記人物が視認可能な前記画像に対応する音声を前記人物に向けて前記超指向性スピーカから出力する音声出力制御手段と、を備えること、
を特徴とする表示システム。
【請求項2】
前記超指向性スピーカの音声出力の方向を移動可能に構成し、
前記撮影手段が生成した前記撮影画像に基づいて、前記撮影画像に写っている人物を検出し、この人物の移動を検出すると共に、検出した前記人物の移動に対応して前記超指向性スピーカの音声出力の方向を移動するスピーカ制御手段をさらに備えること、
を特徴とする請求項1に記載の表示システム。
【請求項3】
前記撮影手段が生成した前記撮影画像に基づいて、前記撮影画像に写っている人物を検出すると共に、この人物の属性を判別する属性判別手段をさらに備え、
前記音声出力制御手段は、前記位置等検出手段が検出した前記人物の移動方向及び位置、及び、前記属性判別手段が判別した前記人物の属性に基づいて、前記人物が視認可能な前記画像に対応する音声を前記人物に向けて前記超指向性スピーカから出力すること、
を特徴とする請求項1または2に記載の表示システム。
【請求項4】
前記超指向性スピーカを複数備えること、
を特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の表示システム。
【請求項5】
複数の画像を、それぞれ異なる特定の方向からのみ視認可能なように表示画面に同時に表示する表示装置と、特定の方向に音声を出力する超指向性スピーカと、を備える表示システムの制御方法であって、
前記表示装置の前記表示画面の前方を撮影して撮影画像を生成し、
前記撮影画像に基づいて、前記撮影画像に写っている人物を検出すると共に、この人物の移動方向及び位置を検出し、
検出した前記人物の移動方向及び位置に基づいて、前記人物が視認可能な前記画像に対応する音声を前記人物に向けて前記超指向性スピーカから出力すること、
を特徴とする表示システムの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−26551(P2010−26551A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−183358(P2008−183358)
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】