説明

表示機能付きICカード

【課題】 専用端末から、持続性のあるチケット等の情報を反復して印字記録でき、かつ非接触ICカードとして利用できる表示機能付きICカードを提供する。
【解決手段】 本表示機能付きICカード1は、均一な厚みの薄板状に形成された札入れサイズのカード表面に、書き込み消去可能なメモリー性電子ペーパーによる表示部5と接触端子板4を有し、カード基体10内に該電子ペーパー表示制御用IC2と該電子ペーパードライバIC3とを有し、表示部とは電気的に分離した非接触IC回路を有する非接触ICカードであって、非接触ICカードが外部専用リーダライタ20に接続している間に、前記接触端子板4を介して表示データを取得し、同じく、表示駆動電力により該電子ペーパー表示部5に情報記録し、非接触ICカード1が当該外部専用リーダライタから切り離された後も持続的な情報表示を行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、札入れサイズのいわゆる非接触ICカード表面に、メモリー性電子ペーパーによる表示部を設け、パーソナルコンピュータで作成された表示データを専用の外部リーダライタ端末を介して、当該非接触ICカードに転送してメモリー性電子ペーパーに表示させ、その表示特性を利用して長期間持続表示させようとするものである。
将来的な目標としては、家庭や店頭でパーソナルコンピュータと専用リーダライタ端末を用いて各種券類を発券し、そのまま新幹線等に乗車することを企図するものである。
このような表示機能付きICカードは、交通機関用のチケットや定期券、搭乗券や乗船券、あるいは各種入場券や娯楽施設券、当選券等に好適に用いられるものである。
【背景技術】
【0002】
近年、非接触ICカードは、簡易迅速に読み取りできる特性とリーダライタのメンテナンスの容易性から広範に使用されるようになっている。例えば、交通機関のゲートパスや特定施設への入場パスとしての用途である。この非接触ICカードに、「残高」や「残期間」等の可変情報を表示できれば使用勝手を高められることは明らかである。
しかし、非接触ICカードの交信時間は瞬間的であって十分な電力が得られない問題がある。そのため、実用的な可変情報を表示させることは困難であり、一定の用途のものに制限されているのが実情である。特に内部に電源や蓄電池を持たない非接触ICカードに実用的な書き換え可能表示部を持たせた例は見られないと考えられる。
【0003】
近年開発された電子ペーパーは消去可能、多数回の書き換え可能で、かつメモリー性を有していて好ましいが、書き込みに高電圧が必要とされ、通常の非接触通信では十分な電圧が得られないことが確認されている。特許文献3のように、可逆性感熱記録材料によるリライト記録層をICカードの表面に持たせる例はあるが、非接触交信による電力により動作するものではない。また、書き換え表示するためには、サーマルヘッドによるプリンタ装置が必要になることや繰り返し印字性に乏しい問題がある。
【0004】
一方、太陽電池は光が不十分では電力が得られないこと、内蔵電池は電池交換に手間のかかることのほか、一般にカード構造が複雑化し製造コストが増大する問題がある。
そこで、本発明は非接触ICカードに、非接触IC回路とは別に、外部リーダライタから接触端子板により直接表示データと電力の供給を受ける回路を設けて、表示部を書き換えすることを検討するものである。
【0005】
他方、非接触ICカードに可視情報を表示させることは各種提案されている。例えば、特許文献1は、非接触ICカードに強誘電性液晶を使用した表示装置を設けることを提案し、特許文献2は、接触型または非接触型ICカードにおいて、マイクロカプセル電気泳動方式の表示部を設けることを提案している。しかし、いずれも本願の電子粉流体やコレステリック液晶を使用するものと相違している。
【0006】
【特許文献1】特開平10−154215号公報
【特許文献2】特開2004−102384号公報
【特許文献3】特開2003−346111号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非接触ICカードのCPUやRF回路を有する本体ICチップにより表示駆動用電力を得て、表示装置を表示させることは特許文献では各種提案されているが、一般に非接触交信時間は極めて短時間であることから十分な表示駆動電力を得ることは困難である。
一般的に、電子ペーパーは40V〜90Vの高電圧駆動であり、通常の非接触交信で得られる電力で表示書き換えをすることは、実際上困難である。
そこで、本願は非接触ICの通信制御回路とは切り離して、ICカードが外部リーダライタに接続している間に、当該リーダライタから表示データと書き換え電力を得て、非接触ICカードの表示部に持続的な表示を行おうとするものである。
【0008】
また、ICカードに用いられる表示装置は、薄くて高い屈曲性を備えることが求められる。これらの目的を達成するために本願は、電子ペーパー、特に電子粉流体を用いる場合とコレステリック液晶タイプを用いる場合とを研究し本願発明を完成するに至ったものである。なお、電子粉流体を用いる電子ペーパーに関しては、特許文献4、特許文献5等がある。コレステリック液晶を使用する電子ペーパーに関連するものとしては、特許文献6、特許文献7等がある。ただし、同文献は、セグメント表示を主体に記載している。
【0009】
【特許文献4】特開2005−326436号公報
【特許文献5】特開2007− 47262号公報
【特許文献6】WO2005/024504号公報
【特許文献7】WO2005/024499号公報
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決する本発明の要旨は、均一な厚みの薄板状に形成された札入れサイズのカード表面に、書き込み消去可能なメモリー性電子ペーパーによる表示部と接触端子板とを有し、カード基体内に該電子ペーパー表示制御用ICと該電子ペーパードライバICとを有し、該表示部とは電気的に分離した非接触IC回路を別に有する非接触ICカードであって、非接触ICカードが外部専用リーダライタに接続している間に、前記接触端子板を介して表示データを取得し、同じく当該リーダライタから供給される表示駆動電力により該電子ペーパーに情報記録し、非接触ICカードが当該外部専用リーダライタから切り離された後も持続的な情報表示を行うことを特徴とする表示機能付きICカード、にある。
【0011】
上記において、メモリー性電子ペーパーを電子粉流体を利用したパッシブ駆動型の電子ペーパーである、ようにすることができ、コレステリック液晶を利用したパッシブ駆動型の電子ペーパーである、ようにすることもできる。
また上記において、接触端子板が、ICカード用ICモジュールの接触端子板の形状にされ、非接触IC回路のアンテナコイルの内側に位置するようにされている、ようにもでき、表示機能付きICカードの厚みを、0.68mmから0.84mmの間である、ようにすることもできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の表示機能付きICカードは、専用端末からチケット情報等をメモリー性の電子ペーパーに記録でき、当該情報が長時間保持できるので、デジタルチケットとして、紙媒体に印字したチケットや入場券の代替として繰り返して使用できる。
本発明の表示機能付きICカードは、均一な薄板状に形成されていて電子ペーパーによる情報表示部を有し、かつ電子ペーパーによる情報表示部が高い耐屈曲性を有するので、通常の取り扱いにおいて、表示情報が損傷して消滅するようなことはない。
請求項4記載の表示機能付きICカードは、接触端子板が、ICカード用ICモジュールの接触端子板の形状にされ、非接触IC回路のアンテナコイルの内側に位置するようにできるので、表示制御回路の形成が容易になる。また、利用者も通常のICカードと同様の感覚で使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について図面を参照して説明する。図1は、本発明の表示機能付きICカードの概略ブロック構成を示す図、図2は、表示機能付きICカードのハードウェアの概略配置図、図3は、表示機能付きICカードの概略断面構造を示す図、図4は、ICカード表示書き換えシステムの構成を示す図、図5は、電子粉流体を使用した電子ペーパーを説明する図、である。
【0014】
図1のように、本発明の表示機能付きICカード1は、カード表面に接触端子板4と電子ペーパー表示部5を有し、カード基体10内に表示制御用IC2と電子ペーパードライバIC3を備えている。これらのICは、電子ペーパー表示部5を表示制御するためのものであり、表示機能付きICカード1が非接触通信を行う目的のものではない。
従って、表示機能付きICカード1は、通常の非接触通信のためのアンテナコイル6と非接触ICチップ7とからなる非接触IC回路を別途に備えている。本発明の表示機能付きICカード1では、表示制御回路と非接触IC回路は切り離されており、相互に表示データの授受や電力の供給を直接行うことはない。表示制御回路は、ICカード1の使用開始時や更新時に電子ペーパー表示部5を書き換え表示するもので、書き換え表示以外の通常のICカード1の使用時における非接触通信は非接触IC回路により行われる。
【0015】
表示機能付きICカード1は、接触端子板4を介して外部の専用リーダライタ20から、(1)ロジック電源、(2)外部クロック(CLK)信号、(3)表示データ用信号、(4)GND(接地)線、(5)表示駆動電源、の供給を受ける。ロジック電源は表示制御用IC2、電子ペーパードライバIC3を駆動するもので、通常5V程度である。
接触端子板4は単に、上記表示データ用信号等の授受と電力供給を受けるために介在するので、通常の接触型ICカードのように、背面に制御部(CPU)やメモリを有する半導体チップを備えていない。チップを持たないので、もちろん接触型ICカードの機能をすることはない。従って通常のように、接触端子板4は表面が8端子程に分岐した金属板であり、絶縁性基板を中心層とし、その背面に、スルーホールで表面側と導通した必要数の端子またはバンプを有する形態となる。
【0016】
接触端子板4は、ICカード1のカード基体10の端面(概略図1の位置等)に小さな端子板面を配列した形態として差し込みにより外部専用リーダライタ20との接触を確保するものとしてもよいが、ISO7816の規格に準拠した端子数、位置の外観を呈する接触端子板に構成するのが好ましい。カードの外周に設けるアンテナコイル6との関係で、カードの内側に接触端子板4がある方が回路の構成が容易になり、専用外部リーダライタ20も接触型ICカードと同様の接点構造を採用できる利点があるからである。
また、利用者も通常の接触型ICカードを使用するのと異ならない感触が得られる。この場合、接触端子板4は、表面に8個の端子板面を有するが、上記用途の場合、全ての端子板を使用することにはならない。接触端子板4は背面に端子またはバンプを設け、表示制御用IC2と該電子ペーパードライバIC3との間の配線により電気的接続を行うことができる。
【0017】
接触端子板4と表示制御用IC2の間は、(1)ロジック電源、(2)外部クロック信号、(3)表示データ用信号、(4)接地(GND)線、が接続される。接地電圧は分岐して電子ペーパー用ドライバIC3にも供給される。ロジック電源は表示制御用IC(CPU)を駆動する電源である。表示制御用IC2により制御された表示データ用信号は電子ペーパードライバIC3に供給される。接触端子板4と電子ペーパードライバIC3の間には、(5)表示駆動電源の回路が形成される。電子ペーパードライバIC3は、表示データ信号を電子ペーパー表示部5に送信する。
【0018】
表示制御用IC2には、8ビットCPU等を採用できる。外形寸法は、7mm×7mm程度、市販品の厚みは1mm程度であるが、本発明のICカードに使用する場合は、背面を研磨して、0.2mm程度にして使用する必要がある。電子ペーパードライバIC3の外形寸法は、1.3mm×9.4mmや1.6mm×22.5mm程度である。かなりの厚みがあるので、同様に研磨して使用する必要がある。非接触ICチップ7は、機能にもよるが通常、4.0mm角以内の平面サイズ、厚みは、200μm程度以内となる。これらの部品をカード表面が平滑になるように埋め込みする。
【0019】
図2は、表示機能付きICカードのハードウェアの概略配置図である。接触端子板4は接触型ICカードのICモジュールの端子板面の形態にされたものを示している。各端子板の機能は接触型ICカードとは異なるが、同様の機能のものは同様の位置に接続してよい。例えば、表示駆動電圧はC1、クロック信号はC3、接地(GND)はC5、ロジック電源はC6、表示データ信号はC7端子、等である。ただし、各端子板の配置は自由にできるのでカード内側にある部品との接続関係で配線部8の形成が容易になるように定めることができる。なお、配線部8とは、接触端子板4、表示制御用IC2、電子ペーパードライバIC3、電子ペーパー表示部5間の配線をいうものとする。
【0020】
アンテナコイル6は非接触ICチップ7と共に、非接触IC回路を構成するものであり、表示機能付きICカード1の周囲を周回する形態等に形成され、その両端が非接触ICチップ7に接続している。ICカード1の周囲を周回しない形態にする場合もある。
表示制御回路は、接触端子板4と表示制御用IC2と該電子ペーパードライバIC3と電子ペーパー表示部5とそれらの間の配線部8からなっている。これらは、アンテナコイル6の内部に納まるように形成することができる。ただし、アンテナコイル6等の非接触IC回路と表示制御回路が平面視交錯する形態であっても、アンテナシートの表裏に回路形成するか、2枚の回路シートに形成して短絡を防止することはできる。
電子ペーパードライバIC3は、図2とは異なり、通常は電子ペーパー表示部5の縁辺部にマトリックス配線と一体にして設けられる。
【0021】
上記において、電子ペーパー表示部5には、コレステリック液晶をマトリックス回路を形成したフィルム基板に塗工してパッシブ駆動するもの、または電子粉流体を用いた電子ペーパーのいずれかを採用することができる。コレステリック液晶を用いる場合は、配向状態をプレーナ状態とフォーカルコニック状態との間で変化させて、光を透過または反射させることにより所定の情報を表示させるものである。例えばプレーナ状態の反射光の波長帯域を550nm付近とし、液晶層の下に光吸収層(黒)を設け、背景色黒の上で緑色の単色表示を行うことができる。コレステリック液晶の発色機構等の詳細内容は、特許文献6、7等に記載されている。このコレステリック液晶タイプ電子ペーパーは、富士通フロンテック株式会社が開発している。
【0022】
電子粉流体を用いる電子ペーパーには、QR−LPD(Quick Response−Liquid Powder Display)といわれるものがある。このものは、粒子と液体の中間的な特性を備え、浮遊状態に匹敵する高流動性を有し、かつ電気に敏感に反応する白と黒の電子粉流体をパネル内に納めて、前面板の電圧を背面板より高くすると、白い電子粉流体が前面板側に移動しディスプレイは白く見えるようになり、その逆の電圧にすると黒い電子粉流体が前面板側に移動しディスプレイは黒く見えるというものである。表示駆動電圧でパッシブ駆動する。白黒の切り替えが0.2msec以内で行われるといわれる。この電子ペーパーは株式会社ブリヂストンが開発している。
【0023】
図5は、電子粉流体を使用した電子ペーパーを説明する図である。透明な前面板51と背面板52との間に黒の電子粉流体5bと白の電子粉流体5wを封入した構造になっている。黒の電子粉流体5bはプラスに、白の電子粉流体5wはマイナスに帯電している。
前面板51と背面板52の内面側には、ITOによる透明マトリックス電極54,55が形成されている。前面板51の電圧を背面板52よりも高くすると、白い電子粉流体5wが前面板51側に移動するので、前面板51側から見れば、ディスプレイは白く見え(図5(A))、その逆の電圧にすると黒い電子粉流体5bが前面板51側に移動しディスプレイは黒く見えるようになる(図5(B))。マトリックス駆動による白と黒のドットの組み合わせにより文字(ひらがな、英数字、漢字)や画像の表示が可能となる。
前面板51と背面板52の間は空気で満たされ、リブ53により一定の間隔に保たれている。従来、前面板51と背面板52はガラス板が使用されていたが、最近、プラスチックシートを使用したフレキシブル構造が可能となった。
【0024】
電子ペーパー表示部5は、縦30mm×横40mm程度の大きさにするのが、表示量を十分にし見易い表示とする上で好ましい。電子粉流体の場合は黒文字と白地の2色表示となり、コレステリック液晶の場合は、緑文字と黒地の2色表示を採用できる。もっとも、コレステリック液晶電子ペーパーはカラー表示も可能である。解像度は、100〜110dpiを実現できる。
【0025】
電子ペーパーの電力消費は表示書き換え時のみで、電力消費なしで表示画面を保持でき、ディスプレイの視認性も確保できる。表示画面は通常の温度(0°C〜40°C)、湿度(40〜60%)の条件で、30日間は保持できる。1画面の書き換え時間は実行開始から10秒以内に可能である。10000回の書き換え回数を満足することができる。
【0026】
図3は、表示機能付きICカードの概略断面構造を示す図である。概略図であり、電子ペーパードライバIC3は図示していない。表示制御用IC2等の厚みも概略のものである。カード基体10は、アンテナおよび配線シート101を中心層とし、その両側に接着シート106,107を介してスペーサーシート102,103を配置し、さらにその外面に白色コアシート104,105を積層し、最表裏面に透明オーバーシート108,109をさらに積層する。この例に限定されるものではないが、図3の場合は、都合9層の積層構造とし、全体で0.68mmから0.84mmの厚みになるようにされている。
【0027】
電子ペーパー表示部5の厚みを吸収するために、貫通孔H1が設けられている。そのため積層の際、スペーサシート102、コアシート104、接着シート106に開口を設ける。同様に表示制御用IC2のために貫通孔H2とH4、非接触ICチップ7のために貫通孔H3とH5が設けられている。ICチップ2,7の厚みが薄い場合は貫通孔H4とH5はなくても良い場合がある。それらはICの厚み等に応じて適宜調製すればよい。
接触端子板4は、カード基体10を熱圧プレスして積層した後に、表面側から接触端子板4の面積と厚みの凹部をざぐり掘削して、その開口した凹部に納めるようにする。接触端子板4の背面と凹部の間は、接着シートや液状接着剤58により固定する。
【0028】
接触端子板4の凹部を掘削する際、接触端子板4の背面の回路または端子41,42と配線部8を接続するための導通孔43,44を同時に掘削する。そして、導通孔43,44に導電性接着剤を充填してから接触端子板4を被せて固定するようにする。導通孔は接触端子板4に接続する回路の本数だけ形成する必要がある。接続が多数本数になるので、異方性導電接着シートを使用して一括接続してもよい。その場合には、接触端子板4背面の接続端子41,42等は凸状のバンプ状にしたものが好ましい。
【0029】
図4は、ICカード表示書き換えシステムの構成を示す図である。ICカード表示書き換えシステム100は、ホストコンピュータ30、専用リーダライタ20および表示機能付きICカード1から構成されている。ホストコンピュータ30は、表示機能付きICカード1に送信する表示データ用信号の生成を行うコンピュータである。ホストコンピュータ30は、インターネットまたは専用回線によりさらに上位機に接続するものとする。
ホストコンピュータ30は、表示書き換え用ソフトウェアを備え、当該ソフトウェアにより生成した表示データをUSB(Universal Serial Bus)接続により、専用リーダライタ20にシリアル供給する。USBは2本の信号線(Data+,Data−)とGND線と5V程度のバス電力供給線を有している。
【0030】
専用リーダライタ20は、ホストコンピュータ30にUSB接続して、シリアルデータを受信し、表示機能付きICカード1に表示データ用信号と表示駆動電源を供給する役割をする。表示機能付きICカード1は非接触ICカードであるが、リーダライタ20から取得する表示データ等を接触端子板4から受信する。
【0031】
専用リーダライタ20は、USBデータを電子ペーパー表示部5に適合したシリアルフォーマットに変換するCPU21と、バス電圧を昇圧する昇圧回路22と、およびクロック信号生成回路23と、を有している。このように昇圧回路22をリーダライタ30に持たせることにより、表示機能付きICカード1の部品数を軽減することができる。ロジック電源、クロック信号、表示データ用信号、表示駆動電源等は、接点端子24を介して表示機能付きICカード1に供給される。専用リーダライタ20もホストコンピュータ30からのUSBバス電源により駆動させてもよい。
【0032】
表示機能付きICカード1の非接触通信は、専用リーダライタ20が別に備える非接触R/W(リーダライタ)25とのアンテナと表示機能付きICカード1のアンテナコイル6間を介した非接触通信により通常のように行われる。非接触リーダライタ25とホストコンピュータ30との間もUSB接続される。表示機能付きICカード1の非接触IC回路と非接触リーダライタ25は通常採用される周知のものであり、特には詳述しない。
【0033】
次に、表示機能付きICカードの製造方法について簡単に説明することとする。
識別カードの厚みは、0.76mm±0.08mmとされている。本カードは、表示制御用IC2、電子ペーパードライバIC3、電子ペーパー表示部5、非接触ICチップ7等の多数の部品を内蔵し、それぞれある程度の厚みを有している。従って、当該厚みに納めカード表面に凹凸が生じないようにする製造上の工夫が必要となる。一般に、非接触ICカードではアンテナコイルとそれに装着した非接触ICからなるアンテナシートを予め準備し、その表裏にオーバーシートを積層する製造方法が行われる。
【0034】
本表示機能付きICカード1も、アンテナおよび配線シートに、アンテナコイル6と非接触IC7とからなる非接触IC回路と、表示制御用IC2、電子ペーパードライバIC3と電子ペーパー表示部5を接続する配線部8を形成し、それぞれの部品を装着した後、表裏のコアシート、オーバーシートをスペーサーシートと接着シートを介して積層する製造方法を採用することができる。スペーサーシートやコアシート、接着シートには、各部品の厚みを納める貫通孔を形成しておくことが好ましい。接触端子板4は、カード基体を積層後にオーバーシート108とコアシート104の一部を掘削して、予め形成してある配線部8と接続しながら固定する製造方法を採用できる。
【実施例1】
【0035】
アンテナおよび配線シート101として、厚み100μmのPETシートの片面に、厚み20μmのアルミ箔を接着剤を介して貼り合わせ、このアルミ箔をエッチングすることで、アンテナコイル6、および電子ペーパー表示用の配線部8を図2のように形成した。 なお、配線部8はアンテナコイル6の内側に納まるようにし、アンテナおよび配線シート101の電子ペーパー表示部5が搭載される側の同一面に形成した。
【0036】
アンテナコイル6の内側に、大きさが、縦31mm×40mmで、厚み0.3〜0.4mmの電子粉流体からなる電子ペーパー表示部[株式会社ブリヂストン製造]5を接着シートで固定した。このものは、解像度100dpiのものである。電子ペーパードライバIC3間との配線を異方性導電接着テープを使用して接続し、表示制御用IC2を配線部8の所定箇所に同様に異方性導電接着テープを使用して固定した。表示制御用IC2と電子ペーパードライバIC3間の接続も同様にして行った。表示制御用IC2には、外形寸法7.1×7.3mmのものを使用し、チップ背面を研磨して厚みが0.2mm程度になるようにした。電子ペーパードライバIC3には、外形1.6mm×22.5mm程度のものを使用し、チップ背面を研磨して厚みが0.2mm程度になるようにした。 さらに、アンテナコイル6の両端に、通常の非接触用ICチップ(厚み190μm)7を装着してアンテナおよび配線シート101を完成した。
【0037】
カード基体10の層構成は、図3のように、厚み100μmのアンテナおよび配線シート101を中心層とし、その表裏に、厚さ50μmの接着シート106,107を介して、厚さ100μmのPET−G製スペーサシート102,103を置き、さらにその表面側に厚さ200μmのPET−G製白色コアシート104と裏面側にPET−G製白色コアシート105を重ね、さらに表裏面に厚み50μmの透明オーバーシートを重ねる都合9層の層構成となるようにした。
【0038】
接着シート106,107には、アンテナシート101のPETフィルムとスペーサシート102,103のPET−Gとの接着性を考慮して、ポリエステル系ホットメルト接着剤(溶融粘度2000poise:190°C)を採用した。
スペーサシート102とコアシート104、接着シート106には電子ペーパー表示部5が実装される位置に、電子ペーパー表示部5よりはやや大きい面積(約31mm×41mm)の貫通孔H1を打ち抜きして形成した。同様に、表示制御用IC2、非接触ICチップ7が納まるように、各ICチップよりはやや大きい大きさの貫通孔H2,H3を、図3のように打ち抜きして形成した。電子ペーパードライバIC3は図示していないが、同様に貫通孔を形成した。
【0039】
上記9層からなる積層体をピンに嵌め込みして位置合わせし、プレス機の熱板上に載置して、プレスラミネートした。プレス工程の条件は、熱板温度120°C、圧力2.0MPa、成形(加熱)時間20min.に設定して行った。
このようにして総厚、0.81mmの電子ペーパー表示部5内蔵の非接触ICカードが完成した。使用した材料の総厚が900μmであるから、シート全体として、約10%の収縮があったことになる。非接触ICカード1の全体は平坦に仕上がり、電子ペーパー表示部5部分を含めた撓み性も実用上、十分であることが確認できた。
【0040】
上記実施例1で完成した表示機能付きICカード1を、専用リーダーライタ20に接続して、表示データ用信号と表示駆動電源を与えると、電子ペーパー表示部5に、白黒の文字表示をすることができ、当該表示情報は専用リーダーライタ20から切り離した後も、長時間(約30日間)持続することが確認できた。
【実施例2】
【0041】
電子ペーパー表示部5に、コレステリック液晶を利用したパッシブ駆動の電子ペーパー表示部[富士通フロンテック株式会社製]5を使用した以外は、実施例1と同一の条件で表示機能付きICカード1を製造した。電子ペーパー表示部5は、大きさが、縦28mm×37mmで、厚み0.3〜0.4mmのものである。このものは、解像度110dpiとされる。
【0042】
上記実施例2で完成した表示機能付きICカード1を、専用リーダーライタ20に接続して、表示データ用信号と表示駆動電源を与えると、電子ペーパー表示部5に、緑と黒の文字表示をすることができ、当該表示情報は専用リーダーライタ20から切り離した後も、長時間(約30日間)持続することが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の表示機能付きICカードの概略ブロック構成を示す図である。
【図2】表示機能付きICカードのハードウェアの概略配置図である。
【図3】表示機能付きICカードの概略断面構造を示す図である。
【図4】ICカード表示書き換えシステムの構成を示す図である。
【図5】電子粉流体を使用した電子ペーパーを説明する図である。
【符号の説明】
【0044】
1 表示機能付きICカード
2 表示制御用IC
3 電子ペーパードライバIC
4 接触端子板
5 電子ペーパー表示部
6 アンテナコイル
7 非接触ICチップ
8 配線部
10 カード基体
20 専用リーダライタ
21 CPU
22 昇圧回路
23 クロック信号生成回路
30 ホストコンピュータ
100 ICカード表示書き換えシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
均一な厚みの薄板状に形成された札入れサイズのカード表面に、書き込み消去可能なメモリー性電子ペーパーによる表示部と接触端子板とを有し、カード基体内に該電子ペーパー表示制御用ICと該電子ペーパードライバICとを有し、該表示部とは電気的に分離した非接触IC回路を別に有する非接触ICカードであって、非接触ICカードが外部専用リーダライタに接続している間に、前記接触端子板を介して表示データを取得し、同じく当該リーダライタから供給される表示駆動電力により該電子ペーパーに情報記録し、非接触ICカードが当該外部専用リーダライタから切り離された後も持続的な情報表示を行うことを特徴とする表示機能付きICカード。
【請求項2】
メモリー性電子ペーパーが電子粉流体を利用したパッシブ駆動型の電子ペーパーであることを特徴とする請求項1記載の表示機能付きICカード。
【請求項3】
メモリー性電子ペーパーがコレステリック液晶を利用したパッシブ駆動型の電子ペーパーであることを特徴とする請求項1記載の表示機能付きICカード。
【請求項4】
接触端子板が、ICカード用ICモジュールの接触端子板の形状にされ、非接触IC回路のアンテナコイルの内側に位置するようにされていることを特徴とする請求項1記載の表示機能付きICカード。
【請求項5】
表示機能付きICカードの厚みが、0.68mmから0.84mmの間であることを特徴とする請求項1記載の表示機能付きICカード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−276435(P2008−276435A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−117977(P2007−117977)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】