表示装置およびその製造方法
【課題】新規な立体映像表示技術を提供する。
【解決手段】本発明に係る立体映像表示装置10は、ガラス基板11と、ガラス基板11上に形成されており、発光層15を有する複数の有機EL素子1とを備えており、複数の有機EL素子1は、右目用画像を表示する1以上の右目用素子1R、および左目用画像を表示する1以上の左目用素子1Lを含み、
右目用素子1Rのそれぞれの出射光の主成分が観察者の右目2Rに進み、左目用素子1Lのそれぞれの出射光の主成分が観察者の左目2Lに進むように、1以上の右目用素子1Rの少なくとも1部および1以上の左目用素子1Lの少なくとも1部において、発光層15の発光面がガラス基板11に対して傾きを有している。
【解決手段】本発明に係る立体映像表示装置10は、ガラス基板11と、ガラス基板11上に形成されており、発光層15を有する複数の有機EL素子1とを備えており、複数の有機EL素子1は、右目用画像を表示する1以上の右目用素子1R、および左目用画像を表示する1以上の左目用素子1Lを含み、
右目用素子1Rのそれぞれの出射光の主成分が観察者の右目2Rに進み、左目用素子1Lのそれぞれの出射光の主成分が観察者の左目2Lに進むように、1以上の右目用素子1Rの少なくとも1部および1以上の左目用素子1Lの少なくとも1部において、発光層15の発光面がガラス基板11に対して傾きを有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置およびその製造方法に関し、特に、複数の対象に互いに異なる画像を認識させ得る表示装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3次元映像を表示する方式として、従来、専用の眼鏡を利用せずに表示する方式がある。これは、左右の目にそれぞれ違う映像を認識させることにより、映像を立体的に見せるという手法である。その代表方法として、パララックスバリア方式およびレンチキュラー方式が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図13は、パララックスバリア方式による立体映像表示の原理を示す図である。映像パララックスバリア方式は、ストライプ状の右目用画像101Rおよび左目用画像101Lを交互に表示し、バリアストライプと呼ばれる細かいストライプ状の遮光スリット103を用いて右目用画像101Rを右目102Rに、左目用画像101Lを左目102Lに到達させる方式である。図14は、レンチキュラー方式による立体映像表示の原理を示す図である。レンチキュラー方式は、多数の小さなレンズが組み込まれたものであるレンチキュラー104を用いて右目用画像101Rを右目102Rに、左目用画像101Lを左目102Lに到達するように、光の進行方向を制御する方式である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−91834号公報(平成17年4月7日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術においては以下のような問題がある。
【0006】
パララックスバリア方式では、遮光スリット103によってパネルからの光が遮断されるため、開口率が落ち、パネル輝度が低下してしまうといった問題がある。また、遮光スリット103自体も目障りとなる。レンチキュラー方式では、パネル輝度が低下しないものの、レンズによる集光を行っているため、画像に歪みが生じてしまう。
【0007】
そこで、本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、新たな立体映像表示に利用し得る表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る表示装置は、上記課題を解決するために、基板と、該基板上に形成されており、発光層を有する複数の発光素子とを備えており、互いに異なり得る第1対象用画像および第2対象用画像を表示する表示装置であって、上記複数の発光素子は、第1対象用画像を表示するための1以上の第1発光素子、および第2対象用画像を表示するための1以上の第2発光素子であり、上記複数の第1発光素子のそれぞれの出射光の主成分が第1対象に進み、上記複数の第2発光素子のそれぞれの出射光の主成分が第1対象とは異なる第2対象に進むように、上記1以上の第1発光素子の少なくとも1部および上記1以上の第2発光素子の少なくとも1部において、上記発光層の発光面が上記基板に対して傾きを有している構成である。
【0009】
上記構成によれば、表示装置は基板上に、第1対象用画像を表示するための1以上の第1発光素子と、第2対象用画像を表示するための1以上の第2発光素子とを有している。各第1発光素子からの出射光の主成分が第1対象に進むように、少なくとも一部の第1発光素子では、発光層が基板に対して傾いている。これにより、第1発光素子からの出射光の主成分のそれぞれは第1対象に向かって進むことになる。また、同様に、各第2発光素子からの出射光の主成分が第1対象とは異なる第2対象に進むように、少なくとも一部の第2発光素子では、発光層が基板に対して傾いている。これにより、第2発光素子からの出射光の主成分のそれぞれは第2対象に向かって進むことになる。そのため、第1対象用画像を第1対象に対して表示し、第2対象用画像を第2対象に対して表示することが可能となり、第1対象および第2対象に互いに異なる画像を表示させることが可能となる。
【0010】
例えば第1対象および第2対象がそれぞれ観察者の右目および左目である場合には、右目と左目とに異なる画像を見せることができるため、立体画像表示装置として機能し得る。また、例えば第1対象および第2対象とが互いに異なる位置から視聴する複数の観察者である場合には、各観察者に対して異なる画像を見せるいわゆるデュアルビュー表示装置として機能し得る。
【0011】
また、本発明に係る表示装置において、上記発光層は第1電極と第2電極とに挟まれており、上記第1電極および上記第2電極の何れか一方が反射電極であり、他方が半透過反射電極であり、上記発光素子がマイクロキャビティ構造を有していることが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、発光層で発光した光が第1電極と第2電極との間で反射を繰り返し、共振により強まった光が半透過反射電極側から出射する。このとき、出射する光に指向性が生じる。従って、第1発光素子からの光のより多くを第1対象に向かわせ、第2対象に向かう第1発光素子からの光を少なくし、同様に第2発光素子からの光のより多くを第2対象に向かわせ、第1対象に向かう第2発光素子からの光を少なくすることができる。これにより、第1対象および第2対象それぞれに異なる画像を良好に見せることができる。
【0013】
上記複数の発光素子を含んで構成される表示パネルにおける上記発光素子の配設位置が該表示パネルの中央部から端部に向かうに従って、上記傾きが大きくなることが好ましい。
【0014】
上記構成によれば、表示パネルの正面ほぼ中央から観察する観察者に対して良好な立体映像表示が可能となる。
【0015】
また、本発明に係る表示装置において、上記傾きは、0°より大きく17°以下であることが好ましい。
【0016】
上記構成によれば、表示パネルの大きさが何れの場合であっても、当該表示パネルの最適視聴距離に位置する観察者に対して良好な立体映像表示が可能となる。
【0017】
また、本発明に係る表示装置において、上記第1発光素子の上記発光層は、当該第1発光素子に隣接して設けられている上記第2発光素子の上記発光層に対して角θの傾きを有しており、角θは90°以上180°未満であることが好ましい。
【0018】
上記構成によれば、第1発光素子の出射面からの光が、隣接する第2発光素子の出射面によって遮られてしまうことを防ぐことができる。またその逆も同様である。これにより、各発光素子からの光を、より確実にそれぞれの対象に到達させることができる。
【0019】
また、本発明に係る表示装置において、上記発光素子は、上記発光層が有機エレクトロルミネッセンス層である有機エレクトロルミネッセンス素子であることが好ましい。
【0020】
上記構成によれば、高輝度で表示特性に優れた表示装置を実現できる。
【0021】
また、本発明に係る表示装置は、上記発光素子の前面に、特定方向に進む光のみ透過させる透光部と、それ以外の方向に進む光を遮光する遮光部とを有しているバリア素子が配設されていることが好ましい。
【0022】
上記構成によれば、第1発光素子からの出射光のうち第1対象に進む光のみをバリア素子から透過させることができ、第2対象に進む光を遮光することができる。その逆も同様である。そのため、第1対象には第1対象用画像を、第2対象には第2対象用画像をより特異的に見せることができる。したがって、第1対象および第2対象それぞれに異なる画像をより良好に見せることができる。
【0023】
また、本発明に係る表示装置は、上記発光素子の前面に、各発光素子からの出射光をそれぞれ集光するための球面レンズが配設されていることが好ましい。
【0024】
上記構成によれば、第1発光素子からの出射光のより多くを第1対象に進ませることができ、第2対象に進む光を少なくすることができる。またその逆も同様である。したがって、第1対象および第2対象それぞれに異なる画像をより良好に見せることができる。
【0025】
本発明に係る表示装置の製造方法は、上記課題を解決するために、基板上に配線、層間絶縁膜、第1電極、発光層および第2電極をこの順に設けることにより形成される複数の発光素子を備えた表示装置の製造方法であって、上記層間絶縁膜または上記第1電極の、上記基板と反対側の面に、傾斜を設ける工程を含む構成である。
【0026】
上記構成によれば、発光素子を形成する際に、層間絶縁膜の、基板とは反対側の面を、基板に対して傾いた面とすることができる。これにより層間絶縁膜上に形成される第1電極および発光層も基板に対して傾くことになり、その結果、発光層の発光面を基板に対して傾けることができる。同様に、層間絶縁膜ではなく、第1電極の、基板とは反対側を、基板に対して傾いた面とすることができる。この場合、第1電極上に形成される発光層は基板に対して傾くことになる。その結果、発光層の発光面を基板に対して傾けることができる。したがって、各発光層の傾斜角度を調節することにより、各発光素子を有する画素からの出射光の方向を制御できる。
【0027】
また、本発明に係る表示装置の製造方法では、上記層間絶縁膜または上記第1電極を形成した後に、表面に傾斜パターンが形成された加圧部材を用いて上記層間絶縁膜または上記第1電極を加圧することにより、上記傾斜を設けることが好ましい。
【0028】
また、本発明に係る表示装置の製造方法では、上記層間絶縁膜または上記第1電極を形成した後に、上記層間絶縁膜または上記第1電極に対してラビング処理を行うことにより、上記傾斜を設けることが好ましい。
【0029】
これらの構成によれば、層間絶縁膜または第1電極の表面を容易に傾斜させることができる。
【0030】
また、本発明に係る表示装置の製造方法では、上記層間絶縁膜または上記第1電極を形成する際に、上記層間絶縁膜または上記第1電極の材料を保持する蒸着材料保持具の蒸発面に対して上記基板を傾けて配置し、上記材料を蒸着させることにより上記層間絶縁膜または上記第1電極を形成することが好ましい。
【0031】
これらの構成によれば、製造工程数を増加させることなく、層間絶縁膜または第1電極の表面を容易に傾斜させることができる。
【発明の効果】
【0032】
以上のように、本発明に係る表示装置は、少なくとも一部の発光素子における発光層の発光面が基板に対して傾いており、第1発光素子からの出射光の主成分は第1対象に進み、第2発光素子からの出射光の主成分は第2対象に進む構成である。したがって、複数の画像を表示する際に、第1対象用画像を第1対象に見せ、第2対象用画像を第2対象に見せることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の表示装置の一実施形態における構成を表す部分断面図である。
【図2】マイクロキャビティ効果を利用した光の取り出しについて説明する図である。
【図3】マイクロキャビティ効果により得られる光の特質を表す図である。
【図4】マイクロキャビティ効果により得られる光の視野角特性を示す図である。
【図5】本発明の表示装置の構造を示す部分断面図であり、(a)はトップエミッション構造を有する表示装置であり、(b)はボトムエミッション構造を有する表示装置である。
【図6】本発明の表示装置を用いた立体映像表示の原理を示す図である。
【図7】発光層の角度と、表示パネルにおける位置との関係を示す図である。
【図8】本発明の別の実施形態における立体映像表示の原理を示す図である。
【図9】本発明の製造方法における傾斜形成方法の一実施形態を表す図である。
【図10】本発明の製造方法における傾斜形成方法の別の実施形態を表す図である。
【図11】本発明の製造方法における傾斜形成方法の別の実施形態を表す図である。
【図12】デュアルビュー表示装置における、隣接する光出射面の傾きを示す図である。
【図13】従来のパララックスバリア方式の立体映像表示の原理を表す図である。
【図14】従来のレンチキュラー方式の立体映像表示の原理を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
〔実施の形態1〕
(立体映像表示装置の構成)
本発明の一実施形態について、図1〜図11に基づいて説明すれば以下の通りである。本実施の形態では、特殊な眼鏡を用いずに3次元画像を観賞できる立体映像表示装置について説明する。
【0035】
まず、立体映像表示装置(表示装置)の構成について図1を参照して説明する。図1は、立体映像表示装置10の構成の一部を示す概略断面図である。図1に示すように、立体映像表示装置10は、ガラス基板11上に有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子(発光素子)1が形成されており、さらに封止基板19および円偏光板20が形成されている。有機EL素子1は、TFT回路の配線12、配線12を覆う層間絶縁膜13、層間絶縁膜13上に形成された陽極(第1電極)14、陽極(第2電極)14上に設けられた有機発光材料を含む発光層15、および発光層15上に設けられた陰極16を含んで構成され、さらに無機封止膜17および樹脂封止膜18により覆われている。なお、図1には示していないが、ガラス基板11上には、複数の有機EL素子1が形成されている。発光層15は、有機EL層である。
【0036】
図1に示すように、陽極14の発光層15側の面は、ガラス基板11に対して傾きを有している。これにより、発光層15全体がガラス基板11に対して傾いて設けられている。そのため、発光層15から出射する光のうち、発光層15の発光面の法線方向に出射する光30は、ガラス基板11の法線方向に対して傾きを有している。また、発光層15上に形成されている各膜も傾いているため、有機EL素子1から出射する光30もガラス基板11の法線方向に対して傾きを有している。なお、「発光層の傾き」、「発光面の傾き」および「出射面の傾き」は同じ意味のことを表現するものとして本明細書において交換可能に使用し得る。後述するように、有機EL素子1から出射される光は、有機EL素子1の出射面の法線方向において光の主成分を有している。よって、発光層15の発光面の法線方向に出射する光30が有機EL素子1からの光の主成分となり、その方向において最も輝度が高くなる。なお、発光層15の傾きは、有機EL素子1がガラス基板11上に設けられている位置によって異なり得る。
【0037】
有機EL素子1は、便宜上、右目用画像(第1対象用画像)を表示するための右目用素子1Rと左目用画像(第2対象用画像)を表示するための左目用素子1Lとに分けられる。右目用素子1Rと左目用素子1Lとは、発光層15の傾きが互いに異なる点以外は同一の構成である。
【0038】
陽極14は、ITOなどの透明電極およびAlを用いて形成されている。一方、陰極16は、AlおよびAgを用いて形成されている。このため、陽極14は反射電極として機能し、陰極16は半反射電極(半透過反射電極)として機能する。そのため、陽極14と陰極16との間の発光層15から発光23によって出た光が、反射電極である陽極14と半反射電極である陰極16との間で反射を繰り返す。また、有機EL素子1はマイクロキャビティ構造を有している。よって、マイクロキャビティ効果を利用することにより、特定波長の強度を強め、かつ出射光に指向性をもたせることができる。
【0039】
ここで、マイクロキャビティ効果を利用して取り出される発光素子からの出射光について図2〜4を参照して説明する。
【0040】
図2は電極間での光の共振を説明する図である。反射電極22と半反射電極21との間の発光層25から発光23によって出た光は、反射電極22と半反射電極21との間で反射を繰り返す。このとき反射電極22と半反射電極21との距離を調整することにより、光路長の一致した波長の光が共振によって光強度を強め、半反射電極21の側から波長の一致した光31のみが出射する。一方、それ以外の光路長のずれた波長の光32は強度が弱まる。
【0041】
図3は、下部電極として反射電極を用い、上部電極として半反射電極を用いた場合と、下部電極として反射電極を用い、上部電極として透明電極を用いた場合の出射光の特性を比較した結果を表す図である。図3に示すように、反射電極および透明電極を用いた場合と比較し、反射電極および半反射電極を用いた場合には、マイクロキャビティ効果により、特定波長の光の強度が強くなっていることが分かる。
【0042】
図4は、マイクロキャビティ効果の有無による視野角特性の違いを示した図である。マイクロキャビティ効果を利用しない場合、出射光は、0°〜50°の間でほぼ一定の輝度となる。一方、マイクロキャビティ効果を利用している場合、出射光は、0°において輝度がピークとなる。すなわち、発光素子の出射面の法線方向における光が、発光素子から出射される光の主成分となる。すなわち、マイクロキャビティの有無によって、視野角特性に違いが生じ、出射光が指向性を有することとなる。以上のように、外部に取り出される光は、正面輝度が最も高く、かつ色純度の高い光となる。
【0043】
ここまで、有機EL素子1の構造として、ガラス基板11とは反対側から光を出射させるトップエミッション(TE)構造について説明してきたが、ガラス基板11側から光を出射させるボトムエミッション(BE)構造を用いることも可能である。
【0044】
図5(a)は、TE構造を採用したときの光の出射を表しており、図5(b)は、BE構造を採用したときの光の出射を表している。説明の便宜上、一部の部材の記載を省略している。図5(a)に示すようなTE構造の有機EL素子1においては、陽極14を反射電極22とし、陰極16を半反射電極21とし、陰極16側から光を出射させている。これに対し、BE構造の有機EL素子1では、陰極16を反射電極22とし、陽極14を半反射電極21とし、陽極14側から光を出射させている。この場合であってもマイクロキャビティ効果が働き、指向性を有する高輝度の光を取り出すことができる。また、出射光30はガラス基板11から斜めに出射する。
【0045】
(立体映像表示の原理)
次に、図6を参照しながら、立体映像表示装置10による立体映像表示の原理について説明する。
【0046】
立体映像表示装置10では、右目用画像を表示する右目用表示部と左目用画像を表示する左目用表示部とが交互に繰り返し配置されている。右目用表示部には右目用素子1Rが設けられており、左目用表示部には左目用素子1Lが設けられている。図6では、説明の便宜上、各素子の光出射面のみを示している。また、右目用素子1Rと左目用素子1Rとが1つずつ交互に並んで設けられた図を示しているが、各表示部内で、右目用または左目用の有機EL素子1が複数個並んで設けられていてもよい。
【0047】
右目用素子1Rそれぞれの出射面は、観察者の右目(第1対象)2Rに面する方向に傾いて形成されており、左目用素子1Lそれぞれの出射面は、観察者の左目(第2対象)2Lに面する方向に傾いて形成されている。すなわち、右目用素子1Rは、出射面に垂直な出射光が観察者の右目2Rに進むように形成されている。同様に、左目用素子1Lは、出射面に垂直な出射光が観察者の左目2Lに進むように形成されている。上述のように、有機EL素子1では、素子の出射面に垂直な方向の光が、出射光の主成分となっている。そのため、右目用素子1Rの出射光の主成分が観察者の右目2Rに進み、左目用素子1Lの出射光の主成分が観察者の左目2Lに進む。このため、右目2Rは、右目用素子1Rの出射光によって形成される右目用画像を主に認識し、一方、左目2Lは、左目用素子1Lの出射光によって形成される左目用画像を主に認識することになる。したがって、右目2Rと左目2Lとは互いに異なる画像を見ることになり、3次元画像を観賞することになる。したがって、特殊な眼鏡を用いなくても3次元画像表示が行えるようになる。
【0048】
次に、有機EL素子1の発光層15の傾斜について図7を参照しながら説明する。
【0049】
本実施の形態では、観察者が立体映像表示装置10の表示パネルのほぼ中央正面から画像を見る場合を想定している。そのため、表示パネルの中央部では、発光層15に傾斜は設けられていないか、または傾斜角度はわずかである。有機EL素子1の配設位置が表示パネルの中央から端部に近づくに従って(図中矢印方向)、発光層15の傾斜角度は大きくなり、端部においてその傾斜角度が最大となる。具体的に、表示パネルの大きさが32型(横幅69.8cm)である場合には、表示パネル右端にある右目用素子1Rにおける発光層15の傾斜角度は内側に向かって15°であることが好ましく、表示パネル左端にある右目用素子1Rにおける発光層15の傾斜角度は内側に向かって17°であることが好ましい。この場合、観察者がパネル正面の中央に位置し、32型の表示パネルの最適視聴距離である120cmの距離から右目で見たときに、各右目用素子1Rの出射面に垂直な出射光が右目2Rに到達することになる。すなわち、各右目用素子1Rの出射光の主成分が右目2Rに到達する。一方、左目用素子1Lでは、パネル右端にある左目用素子1Lにおける発光層の傾斜角度は内側に向かって17°であり、パネル左端にある左目用素子1Lにおける発光層の傾斜角度は内側に向かって15°であることが好ましい。この場合には、各左目用素子1Lの出射光の主成分が左目2Lに到達する。
【0050】
また、表示パネルの大きさが20型(横幅44.4cm)である場合には、表示パネル右端にある右目用素子1Rにおける発光層15の傾斜角度は内側に向かって14°であることが好ましく、表示パネル左端にある右目用素子1Rにおける発光層15の傾斜角度は内側に向かって17°であることが好ましい。この場合、観察者がパネル正面の中央に位置し、20型の表示パネルの最適視聴距離である80cmの距離から右目で見たときに、各右目用素子1Rの出射面に垂直な出射光が右目2Rに到達することになる。一方、左目用素子1Lでは、パネル右端にある左目用素子1Lにおける発光層の傾斜角度は内側に向かって17°であり、パネル左端にある左目用素子1Lにおける発光層の傾斜角度は内側に向かって14°であることが好ましい。
【0051】
また、表示パネルの大きさが52型(横幅115.2cm)である場合には、表示パネル右端にある右目用素子1Rにおける発光層15の傾斜角度は内側に向かって16°であることが好ましく、表示パネル左端にある右目用素子1Rにおける発光層15の傾斜角度は内側に向かって17°であることが好ましい。この場合、観察者がパネル正面の中央に位置し、52型の表示パネルの最適視聴距離である190cmの距離から右目で見たときに、各右目用素子1Rの出射面に垂直な出射光が右目2Rに到達することになる。一方、左目用素子1Lでは、パネル右端にある左目用素子1Lにおける発光層の傾斜角度は内側に向かって17°であり、パネル左端にある左目用素子1Lにおける発光層の傾斜角度は内側に向かって16°であることが好ましい。
【0052】
図8は、立体映像表示装置10の別の実施形態を表す図である。図8に示すように、有機EL素子1の前面に、パララックスバリア(バリア素子)3を補助的に導入してもよい。パララックスバリア3は、特定方向に進む光のみ透過させる透光部と、それ以外の方向に進む光を遮光する遮光部とを有しているスリット状の部材である。これにより、右目用素子1Rから出射する光のうち、主成分以外の光を遮光することができる。これにより、右目用画像の光が左目2Lに進むことをより確実に防ぐことができる。その逆もまた同様である。
【0053】
立体映像表示装置10のさらに別の実施形態として、有機EL素子1の前面に、各有機EL素子1からの出射光をそれぞれ集光するための球面レンズが配設されていてもよい。
【0054】
(立体映像表示装置の製造方法)
立体映像表示装置の製造方法について、図1および図9から図11を参照して以下に説明する。
【0055】
まず、ガラス基板11上にTFTを作製し、その上に層間絶縁膜13を形成する。ガラス基板11上にTFTを作製する方法は、従来公知の方法を利用すればよい。次に陽極14として、膜厚100nmのAl膜を成膜する。透明電極(不図示)として膜厚10nmのITOを積層した後、後述する手法により、パターン化された金属を加圧し、150℃の熱を加えてITOに斜めのパターンを形作る。その後、発光層15を真空蒸着法によって形成する。その結果、陽極14の傾きに合わせて発光層15も傾きを有するように成膜される。発光層15上に電子注入層(不図示)として膜厚1nmのLiF膜を成膜し、さらに陰極16として膜厚2nmのAl膜および膜厚20nmのAg膜を成膜する。次いで、無機封止膜17としてPECVD(plasma−enhanced chemical vapor deposition)法によって膜厚1μmのSiN膜、および樹脂封止膜18として膜厚10μmのポリイミドをこの順に成膜する。最後に封止基板19により封止をして円偏光板20を形成する。以上により、陽極14以降、すべて傾斜して成膜されることになる。これによって発光層15の陰極16側から垂直方向に出射する光を、ガラス基板11に対して斜め方向に取り出すことができる。また、陽極14が反射電極となり、陰極16が半反射電極となる。
【0056】
上述の製造方法によれば、図1および図5(a)に示されるような、出射光30がガラス基板11とは反対側から得られるTE構造の有機EL素子1を製造できる。一方、上述の製造方法において、陽極14の膜厚を20nm、陰極16の膜厚を100nmとして成膜することにより、図5(b)に示されるような、出射光30がガラス基板11側から得られるBE構造の有機EL素子1を製造できる。
【0057】
次に、陽極14に傾斜を設ける方法について説明する。なお、本実施の形態では、陽極14に傾斜を設けているが、同様の方法によって、陽極14とガラス基板11とに挟まれた層間絶縁膜13に傾斜を設けるものであってもよい。また、傾斜を設ける方法として、上述の製造方法では、金属を加圧する方法を用いているが、他にもラビング処理を行うラビング法、およびガラス基板11を斜めに配置して成膜する方法が挙げられる。
【0058】
まず金属を加圧することにより傾斜を設ける方法について図9を参照して説明する。加圧による成膜では、予め金属(加圧部材)26に傾斜のパターンを形成しておき、それを陽極14に押し付ける(図9(a))。このとき金属26を加熱しておいてもよい。しばらくした後に金属26の加圧をやめる。金属26を陽極14から引き離すと、陽極14に金属26とは逆のパターンの傾斜が形成されている(図9(c))。以上により、陽極14に傾斜のあるパターンを形成できる。
【0059】
次にラビング法により傾斜を形成する方法ついて図10を参照して説明する。ラビング法による成膜では、陽極14を形成した後に、ラビングローラ27を回転させながら陽極14に押し当て(図10(a))、そのままラビングローラ27を移動させる(図10(b))。このときラビングローラ27を加熱しておいてもよい。しばらくした後にラビングローラ27の加圧をやめる。ラビングローラ27を陽極14から引き離すと、陽極14に傾斜が形成されている(図10(c))。以上により、陽極14に傾斜のあるパターンを形成できる。この後の発光層15等の製造方法は、上述の方法と同じである。
【0060】
次にガラス基板11を斜めに配置して陽極14を成膜することによって傾斜を形成する方法について図11を参照して説明する。ここでは、坩堝(蒸着材料保持具)28から陽極材料を蒸着させる方法について説明する。本方法では、陽極14を形成する際に、ガラス基板11を坩堝28の表面(蒸発面)に対して0°〜45°に傾けて配置する。これによってガラス基板11と坩堝28の表面との距離がガラス基板11の右と左とで異なることになる。そのため、ガラス基板11の左右で陽極14の厚さが異なるものとなり、結果として陽極14に傾斜を形成できる。図11(a)と(b)とはガラス基板11の傾斜角度が異なっている。図11(a)のガラス基板11の傾きでは、蒸着により生じる陽極14の膜厚は、紙面左側よりも右側の方が厚くなり、結果として、陽極14の表面がガラス基板11に対して傾くことになる。一方、図11(b)におけるガラス基板11の傾きでは、蒸着により生じる陽極14の膜厚は、紙面右側よりも左側の方が厚くなり、結果として、陽極14の表面がガラス基板11に対して、図11(a)の場合とは逆の方向に傾くことになる。ガラス基板11を配置するときの傾き角度を調節することにより、陽極14表面に設けられる傾きの角度を調節できる。陽極14形成後の、発光層15等の製造方法は、上述の方法と同じである。
【0061】
本実施の形態における製造方法によれば、上述の立体映像表示装置を製造できる。
【0062】
〔実施の形態2〕
本発明に係る表示装置の他の実施形態について、図12に基づいて説明すれば以下の通りである。なお、説明の便宜上、前述の実施の形態で用いたものと同じ機能を有する部材については、その説明を省略する。
【0063】
上述の実施の形態では、特殊な眼鏡を用いずに3次元画像を観賞できる立体映像表示装置について説明したが、本実施の形態における表示装置は、複数人が同時に互いに異なる画像を観賞できるいわゆるデュアルビュー表示装置である。
【0064】
デュアルビュー表示装置は、各発光層の傾きが上述の立体映像表示装置10と異なる点以外は、上述の立体映像表示装置10と同一の構成である。
【0065】
図12は、本実施の形態におけるデュアルビュー表示装置の、右側観察者用画像(第1対象用画像)を表示する右側観察者用画像表示部における右側観察者用発光素子1R’(第1発光素子)の光出射面と、この右側観察者用画像表示部に隣接している、左側観察者用画像(第2対象用画像)を表示する左側観察者用画像表示部における左側観察者用発光素子(第2発光素子)1L’の光出射面との関係を表す図である。図12に示すように、左側観察者用発光素子1L’の光出射面は、右側観察者用発光素子1R’の光出射面に対して傾いており、その傾斜角度θは90°以上180°未満である。これにより、右側観察者用発光素子1R’の光出射面から垂直に出射する出射光33Rを、他方の光出射面によって遮られることなく、右側観察者(第1対象)に到達させることができる。同様に左側観察者用発光素子1L’の光出射面から垂直に出射する出射光33Lを、他方の光出射面に遮られることなく、左側観察者(第2対象)に到達させることができる。以上のようにして、右側観察者と左側観察者にそれぞれ異なる画像を見せることが可能となる。
【0066】
デュアルビュー表示装置では、表示パネル端のさらに外側から視聴することを想定しているため、立体映像表示装置10と異なり、表示パネル端部における発光層15の傾きは、20°以上であってもよい。
【0067】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0068】
(付記事項)
なお、本発明を以下のように表現することも可能である。
(第1の構成)
有機EL素子において、マイクロキャビティ効果を用いて視野角を0〜120度以内に限定する右目用照明素子と左目用照明素子を有する有機EL素子。
(第2の構成)
前記照明素子は、層間絶縁膜、もしくは陽極において0〜20度以内の傾斜を有することを特徴とする第1の構成に記載の有機EL素子。
(第3の構成)
前記有機EL素子において、層間絶縁膜、もしくは陽極の傾斜がパネルの中心部から縁に向かって、徐々に傾斜が急になることを特徴とする第2の構成に記載の有機EL素子。
(第4の構成)
前記層間絶縁膜、もしくは陽極において、傾斜を作製する方法として、傾斜パターンが形成されたものと該層間絶縁膜、もしくは陽極とを加圧する方法を用いた第2、3の構成に記載の層間絶縁膜や陽極の傾斜作製方法。
(第5の構成)
前記層間絶縁膜、もしくは陽極において、傾斜を作製する方法としてラビング法を用いた第2、3の構成に記載の層間絶縁膜や陽極の傾斜作製方法。
(第6の構成)
前記陽極において、基板を斜めに配置し、陽極を作製する第2、3の構成に記載の陽極の傾斜作製方法。
(第7の構成)
右目用照明素子と左目用照明素子の前面に、遮光部と透光部をもつバリア素子を有することを特徴とする第1、2、3の構成に記載の有機EL素子。
(第8の構成)
右目用照明素子と左目用照明素子の前面に、右目用照明素子と左目用照明素子から出た光をそれぞれ集光するための球面レンズを有することを特徴とする第1、2、3の構成に記載の有機EL素子。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、特殊な眼鏡を必要とせずに3次元画像を観賞できる映像表示装置、複数の視聴者が同時に異なる画像を視聴できる表示装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 有機EL素子(発光素子)
1R 右目用素子(第1発光素子)
1L 左目用素子(第2発光素子)
1R’ 右側観察者用発光素子(第1発光素子)
1L’ 左側観察者用発光素子(第2発光素子)
2R 右目(第1対象)
2L 左目(第2対象)
3 パララックスバリア
10 立体映像表示装置(表示装置)
11 ガラス基板(基板)
12 配線
13 層間絶縁膜
14 陽極(第1電極)
15 発光層(有機EL層)
16 陰極(第2電極)
26 金属(加圧部材)
27 ラビングローラ
28 坩堝(蒸着材料保持具)
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置およびその製造方法に関し、特に、複数の対象に互いに異なる画像を認識させ得る表示装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3次元映像を表示する方式として、従来、専用の眼鏡を利用せずに表示する方式がある。これは、左右の目にそれぞれ違う映像を認識させることにより、映像を立体的に見せるという手法である。その代表方法として、パララックスバリア方式およびレンチキュラー方式が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図13は、パララックスバリア方式による立体映像表示の原理を示す図である。映像パララックスバリア方式は、ストライプ状の右目用画像101Rおよび左目用画像101Lを交互に表示し、バリアストライプと呼ばれる細かいストライプ状の遮光スリット103を用いて右目用画像101Rを右目102Rに、左目用画像101Lを左目102Lに到達させる方式である。図14は、レンチキュラー方式による立体映像表示の原理を示す図である。レンチキュラー方式は、多数の小さなレンズが組み込まれたものであるレンチキュラー104を用いて右目用画像101Rを右目102Rに、左目用画像101Lを左目102Lに到達するように、光の進行方向を制御する方式である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−91834号公報(平成17年4月7日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術においては以下のような問題がある。
【0006】
パララックスバリア方式では、遮光スリット103によってパネルからの光が遮断されるため、開口率が落ち、パネル輝度が低下してしまうといった問題がある。また、遮光スリット103自体も目障りとなる。レンチキュラー方式では、パネル輝度が低下しないものの、レンズによる集光を行っているため、画像に歪みが生じてしまう。
【0007】
そこで、本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、新たな立体映像表示に利用し得る表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る表示装置は、上記課題を解決するために、基板と、該基板上に形成されており、発光層を有する複数の発光素子とを備えており、互いに異なり得る第1対象用画像および第2対象用画像を表示する表示装置であって、上記複数の発光素子は、第1対象用画像を表示するための1以上の第1発光素子、および第2対象用画像を表示するための1以上の第2発光素子であり、上記複数の第1発光素子のそれぞれの出射光の主成分が第1対象に進み、上記複数の第2発光素子のそれぞれの出射光の主成分が第1対象とは異なる第2対象に進むように、上記1以上の第1発光素子の少なくとも1部および上記1以上の第2発光素子の少なくとも1部において、上記発光層の発光面が上記基板に対して傾きを有している構成である。
【0009】
上記構成によれば、表示装置は基板上に、第1対象用画像を表示するための1以上の第1発光素子と、第2対象用画像を表示するための1以上の第2発光素子とを有している。各第1発光素子からの出射光の主成分が第1対象に進むように、少なくとも一部の第1発光素子では、発光層が基板に対して傾いている。これにより、第1発光素子からの出射光の主成分のそれぞれは第1対象に向かって進むことになる。また、同様に、各第2発光素子からの出射光の主成分が第1対象とは異なる第2対象に進むように、少なくとも一部の第2発光素子では、発光層が基板に対して傾いている。これにより、第2発光素子からの出射光の主成分のそれぞれは第2対象に向かって進むことになる。そのため、第1対象用画像を第1対象に対して表示し、第2対象用画像を第2対象に対して表示することが可能となり、第1対象および第2対象に互いに異なる画像を表示させることが可能となる。
【0010】
例えば第1対象および第2対象がそれぞれ観察者の右目および左目である場合には、右目と左目とに異なる画像を見せることができるため、立体画像表示装置として機能し得る。また、例えば第1対象および第2対象とが互いに異なる位置から視聴する複数の観察者である場合には、各観察者に対して異なる画像を見せるいわゆるデュアルビュー表示装置として機能し得る。
【0011】
また、本発明に係る表示装置において、上記発光層は第1電極と第2電極とに挟まれており、上記第1電極および上記第2電極の何れか一方が反射電極であり、他方が半透過反射電極であり、上記発光素子がマイクロキャビティ構造を有していることが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、発光層で発光した光が第1電極と第2電極との間で反射を繰り返し、共振により強まった光が半透過反射電極側から出射する。このとき、出射する光に指向性が生じる。従って、第1発光素子からの光のより多くを第1対象に向かわせ、第2対象に向かう第1発光素子からの光を少なくし、同様に第2発光素子からの光のより多くを第2対象に向かわせ、第1対象に向かう第2発光素子からの光を少なくすることができる。これにより、第1対象および第2対象それぞれに異なる画像を良好に見せることができる。
【0013】
上記複数の発光素子を含んで構成される表示パネルにおける上記発光素子の配設位置が該表示パネルの中央部から端部に向かうに従って、上記傾きが大きくなることが好ましい。
【0014】
上記構成によれば、表示パネルの正面ほぼ中央から観察する観察者に対して良好な立体映像表示が可能となる。
【0015】
また、本発明に係る表示装置において、上記傾きは、0°より大きく17°以下であることが好ましい。
【0016】
上記構成によれば、表示パネルの大きさが何れの場合であっても、当該表示パネルの最適視聴距離に位置する観察者に対して良好な立体映像表示が可能となる。
【0017】
また、本発明に係る表示装置において、上記第1発光素子の上記発光層は、当該第1発光素子に隣接して設けられている上記第2発光素子の上記発光層に対して角θの傾きを有しており、角θは90°以上180°未満であることが好ましい。
【0018】
上記構成によれば、第1発光素子の出射面からの光が、隣接する第2発光素子の出射面によって遮られてしまうことを防ぐことができる。またその逆も同様である。これにより、各発光素子からの光を、より確実にそれぞれの対象に到達させることができる。
【0019】
また、本発明に係る表示装置において、上記発光素子は、上記発光層が有機エレクトロルミネッセンス層である有機エレクトロルミネッセンス素子であることが好ましい。
【0020】
上記構成によれば、高輝度で表示特性に優れた表示装置を実現できる。
【0021】
また、本発明に係る表示装置は、上記発光素子の前面に、特定方向に進む光のみ透過させる透光部と、それ以外の方向に進む光を遮光する遮光部とを有しているバリア素子が配設されていることが好ましい。
【0022】
上記構成によれば、第1発光素子からの出射光のうち第1対象に進む光のみをバリア素子から透過させることができ、第2対象に進む光を遮光することができる。その逆も同様である。そのため、第1対象には第1対象用画像を、第2対象には第2対象用画像をより特異的に見せることができる。したがって、第1対象および第2対象それぞれに異なる画像をより良好に見せることができる。
【0023】
また、本発明に係る表示装置は、上記発光素子の前面に、各発光素子からの出射光をそれぞれ集光するための球面レンズが配設されていることが好ましい。
【0024】
上記構成によれば、第1発光素子からの出射光のより多くを第1対象に進ませることができ、第2対象に進む光を少なくすることができる。またその逆も同様である。したがって、第1対象および第2対象それぞれに異なる画像をより良好に見せることができる。
【0025】
本発明に係る表示装置の製造方法は、上記課題を解決するために、基板上に配線、層間絶縁膜、第1電極、発光層および第2電極をこの順に設けることにより形成される複数の発光素子を備えた表示装置の製造方法であって、上記層間絶縁膜または上記第1電極の、上記基板と反対側の面に、傾斜を設ける工程を含む構成である。
【0026】
上記構成によれば、発光素子を形成する際に、層間絶縁膜の、基板とは反対側の面を、基板に対して傾いた面とすることができる。これにより層間絶縁膜上に形成される第1電極および発光層も基板に対して傾くことになり、その結果、発光層の発光面を基板に対して傾けることができる。同様に、層間絶縁膜ではなく、第1電極の、基板とは反対側を、基板に対して傾いた面とすることができる。この場合、第1電極上に形成される発光層は基板に対して傾くことになる。その結果、発光層の発光面を基板に対して傾けることができる。したがって、各発光層の傾斜角度を調節することにより、各発光素子を有する画素からの出射光の方向を制御できる。
【0027】
また、本発明に係る表示装置の製造方法では、上記層間絶縁膜または上記第1電極を形成した後に、表面に傾斜パターンが形成された加圧部材を用いて上記層間絶縁膜または上記第1電極を加圧することにより、上記傾斜を設けることが好ましい。
【0028】
また、本発明に係る表示装置の製造方法では、上記層間絶縁膜または上記第1電極を形成した後に、上記層間絶縁膜または上記第1電極に対してラビング処理を行うことにより、上記傾斜を設けることが好ましい。
【0029】
これらの構成によれば、層間絶縁膜または第1電極の表面を容易に傾斜させることができる。
【0030】
また、本発明に係る表示装置の製造方法では、上記層間絶縁膜または上記第1電極を形成する際に、上記層間絶縁膜または上記第1電極の材料を保持する蒸着材料保持具の蒸発面に対して上記基板を傾けて配置し、上記材料を蒸着させることにより上記層間絶縁膜または上記第1電極を形成することが好ましい。
【0031】
これらの構成によれば、製造工程数を増加させることなく、層間絶縁膜または第1電極の表面を容易に傾斜させることができる。
【発明の効果】
【0032】
以上のように、本発明に係る表示装置は、少なくとも一部の発光素子における発光層の発光面が基板に対して傾いており、第1発光素子からの出射光の主成分は第1対象に進み、第2発光素子からの出射光の主成分は第2対象に進む構成である。したがって、複数の画像を表示する際に、第1対象用画像を第1対象に見せ、第2対象用画像を第2対象に見せることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の表示装置の一実施形態における構成を表す部分断面図である。
【図2】マイクロキャビティ効果を利用した光の取り出しについて説明する図である。
【図3】マイクロキャビティ効果により得られる光の特質を表す図である。
【図4】マイクロキャビティ効果により得られる光の視野角特性を示す図である。
【図5】本発明の表示装置の構造を示す部分断面図であり、(a)はトップエミッション構造を有する表示装置であり、(b)はボトムエミッション構造を有する表示装置である。
【図6】本発明の表示装置を用いた立体映像表示の原理を示す図である。
【図7】発光層の角度と、表示パネルにおける位置との関係を示す図である。
【図8】本発明の別の実施形態における立体映像表示の原理を示す図である。
【図9】本発明の製造方法における傾斜形成方法の一実施形態を表す図である。
【図10】本発明の製造方法における傾斜形成方法の別の実施形態を表す図である。
【図11】本発明の製造方法における傾斜形成方法の別の実施形態を表す図である。
【図12】デュアルビュー表示装置における、隣接する光出射面の傾きを示す図である。
【図13】従来のパララックスバリア方式の立体映像表示の原理を表す図である。
【図14】従来のレンチキュラー方式の立体映像表示の原理を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
〔実施の形態1〕
(立体映像表示装置の構成)
本発明の一実施形態について、図1〜図11に基づいて説明すれば以下の通りである。本実施の形態では、特殊な眼鏡を用いずに3次元画像を観賞できる立体映像表示装置について説明する。
【0035】
まず、立体映像表示装置(表示装置)の構成について図1を参照して説明する。図1は、立体映像表示装置10の構成の一部を示す概略断面図である。図1に示すように、立体映像表示装置10は、ガラス基板11上に有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子(発光素子)1が形成されており、さらに封止基板19および円偏光板20が形成されている。有機EL素子1は、TFT回路の配線12、配線12を覆う層間絶縁膜13、層間絶縁膜13上に形成された陽極(第1電極)14、陽極(第2電極)14上に設けられた有機発光材料を含む発光層15、および発光層15上に設けられた陰極16を含んで構成され、さらに無機封止膜17および樹脂封止膜18により覆われている。なお、図1には示していないが、ガラス基板11上には、複数の有機EL素子1が形成されている。発光層15は、有機EL層である。
【0036】
図1に示すように、陽極14の発光層15側の面は、ガラス基板11に対して傾きを有している。これにより、発光層15全体がガラス基板11に対して傾いて設けられている。そのため、発光層15から出射する光のうち、発光層15の発光面の法線方向に出射する光30は、ガラス基板11の法線方向に対して傾きを有している。また、発光層15上に形成されている各膜も傾いているため、有機EL素子1から出射する光30もガラス基板11の法線方向に対して傾きを有している。なお、「発光層の傾き」、「発光面の傾き」および「出射面の傾き」は同じ意味のことを表現するものとして本明細書において交換可能に使用し得る。後述するように、有機EL素子1から出射される光は、有機EL素子1の出射面の法線方向において光の主成分を有している。よって、発光層15の発光面の法線方向に出射する光30が有機EL素子1からの光の主成分となり、その方向において最も輝度が高くなる。なお、発光層15の傾きは、有機EL素子1がガラス基板11上に設けられている位置によって異なり得る。
【0037】
有機EL素子1は、便宜上、右目用画像(第1対象用画像)を表示するための右目用素子1Rと左目用画像(第2対象用画像)を表示するための左目用素子1Lとに分けられる。右目用素子1Rと左目用素子1Lとは、発光層15の傾きが互いに異なる点以外は同一の構成である。
【0038】
陽極14は、ITOなどの透明電極およびAlを用いて形成されている。一方、陰極16は、AlおよびAgを用いて形成されている。このため、陽極14は反射電極として機能し、陰極16は半反射電極(半透過反射電極)として機能する。そのため、陽極14と陰極16との間の発光層15から発光23によって出た光が、反射電極である陽極14と半反射電極である陰極16との間で反射を繰り返す。また、有機EL素子1はマイクロキャビティ構造を有している。よって、マイクロキャビティ効果を利用することにより、特定波長の強度を強め、かつ出射光に指向性をもたせることができる。
【0039】
ここで、マイクロキャビティ効果を利用して取り出される発光素子からの出射光について図2〜4を参照して説明する。
【0040】
図2は電極間での光の共振を説明する図である。反射電極22と半反射電極21との間の発光層25から発光23によって出た光は、反射電極22と半反射電極21との間で反射を繰り返す。このとき反射電極22と半反射電極21との距離を調整することにより、光路長の一致した波長の光が共振によって光強度を強め、半反射電極21の側から波長の一致した光31のみが出射する。一方、それ以外の光路長のずれた波長の光32は強度が弱まる。
【0041】
図3は、下部電極として反射電極を用い、上部電極として半反射電極を用いた場合と、下部電極として反射電極を用い、上部電極として透明電極を用いた場合の出射光の特性を比較した結果を表す図である。図3に示すように、反射電極および透明電極を用いた場合と比較し、反射電極および半反射電極を用いた場合には、マイクロキャビティ効果により、特定波長の光の強度が強くなっていることが分かる。
【0042】
図4は、マイクロキャビティ効果の有無による視野角特性の違いを示した図である。マイクロキャビティ効果を利用しない場合、出射光は、0°〜50°の間でほぼ一定の輝度となる。一方、マイクロキャビティ効果を利用している場合、出射光は、0°において輝度がピークとなる。すなわち、発光素子の出射面の法線方向における光が、発光素子から出射される光の主成分となる。すなわち、マイクロキャビティの有無によって、視野角特性に違いが生じ、出射光が指向性を有することとなる。以上のように、外部に取り出される光は、正面輝度が最も高く、かつ色純度の高い光となる。
【0043】
ここまで、有機EL素子1の構造として、ガラス基板11とは反対側から光を出射させるトップエミッション(TE)構造について説明してきたが、ガラス基板11側から光を出射させるボトムエミッション(BE)構造を用いることも可能である。
【0044】
図5(a)は、TE構造を採用したときの光の出射を表しており、図5(b)は、BE構造を採用したときの光の出射を表している。説明の便宜上、一部の部材の記載を省略している。図5(a)に示すようなTE構造の有機EL素子1においては、陽極14を反射電極22とし、陰極16を半反射電極21とし、陰極16側から光を出射させている。これに対し、BE構造の有機EL素子1では、陰極16を反射電極22とし、陽極14を半反射電極21とし、陽極14側から光を出射させている。この場合であってもマイクロキャビティ効果が働き、指向性を有する高輝度の光を取り出すことができる。また、出射光30はガラス基板11から斜めに出射する。
【0045】
(立体映像表示の原理)
次に、図6を参照しながら、立体映像表示装置10による立体映像表示の原理について説明する。
【0046】
立体映像表示装置10では、右目用画像を表示する右目用表示部と左目用画像を表示する左目用表示部とが交互に繰り返し配置されている。右目用表示部には右目用素子1Rが設けられており、左目用表示部には左目用素子1Lが設けられている。図6では、説明の便宜上、各素子の光出射面のみを示している。また、右目用素子1Rと左目用素子1Rとが1つずつ交互に並んで設けられた図を示しているが、各表示部内で、右目用または左目用の有機EL素子1が複数個並んで設けられていてもよい。
【0047】
右目用素子1Rそれぞれの出射面は、観察者の右目(第1対象)2Rに面する方向に傾いて形成されており、左目用素子1Lそれぞれの出射面は、観察者の左目(第2対象)2Lに面する方向に傾いて形成されている。すなわち、右目用素子1Rは、出射面に垂直な出射光が観察者の右目2Rに進むように形成されている。同様に、左目用素子1Lは、出射面に垂直な出射光が観察者の左目2Lに進むように形成されている。上述のように、有機EL素子1では、素子の出射面に垂直な方向の光が、出射光の主成分となっている。そのため、右目用素子1Rの出射光の主成分が観察者の右目2Rに進み、左目用素子1Lの出射光の主成分が観察者の左目2Lに進む。このため、右目2Rは、右目用素子1Rの出射光によって形成される右目用画像を主に認識し、一方、左目2Lは、左目用素子1Lの出射光によって形成される左目用画像を主に認識することになる。したがって、右目2Rと左目2Lとは互いに異なる画像を見ることになり、3次元画像を観賞することになる。したがって、特殊な眼鏡を用いなくても3次元画像表示が行えるようになる。
【0048】
次に、有機EL素子1の発光層15の傾斜について図7を参照しながら説明する。
【0049】
本実施の形態では、観察者が立体映像表示装置10の表示パネルのほぼ中央正面から画像を見る場合を想定している。そのため、表示パネルの中央部では、発光層15に傾斜は設けられていないか、または傾斜角度はわずかである。有機EL素子1の配設位置が表示パネルの中央から端部に近づくに従って(図中矢印方向)、発光層15の傾斜角度は大きくなり、端部においてその傾斜角度が最大となる。具体的に、表示パネルの大きさが32型(横幅69.8cm)である場合には、表示パネル右端にある右目用素子1Rにおける発光層15の傾斜角度は内側に向かって15°であることが好ましく、表示パネル左端にある右目用素子1Rにおける発光層15の傾斜角度は内側に向かって17°であることが好ましい。この場合、観察者がパネル正面の中央に位置し、32型の表示パネルの最適視聴距離である120cmの距離から右目で見たときに、各右目用素子1Rの出射面に垂直な出射光が右目2Rに到達することになる。すなわち、各右目用素子1Rの出射光の主成分が右目2Rに到達する。一方、左目用素子1Lでは、パネル右端にある左目用素子1Lにおける発光層の傾斜角度は内側に向かって17°であり、パネル左端にある左目用素子1Lにおける発光層の傾斜角度は内側に向かって15°であることが好ましい。この場合には、各左目用素子1Lの出射光の主成分が左目2Lに到達する。
【0050】
また、表示パネルの大きさが20型(横幅44.4cm)である場合には、表示パネル右端にある右目用素子1Rにおける発光層15の傾斜角度は内側に向かって14°であることが好ましく、表示パネル左端にある右目用素子1Rにおける発光層15の傾斜角度は内側に向かって17°であることが好ましい。この場合、観察者がパネル正面の中央に位置し、20型の表示パネルの最適視聴距離である80cmの距離から右目で見たときに、各右目用素子1Rの出射面に垂直な出射光が右目2Rに到達することになる。一方、左目用素子1Lでは、パネル右端にある左目用素子1Lにおける発光層の傾斜角度は内側に向かって17°であり、パネル左端にある左目用素子1Lにおける発光層の傾斜角度は内側に向かって14°であることが好ましい。
【0051】
また、表示パネルの大きさが52型(横幅115.2cm)である場合には、表示パネル右端にある右目用素子1Rにおける発光層15の傾斜角度は内側に向かって16°であることが好ましく、表示パネル左端にある右目用素子1Rにおける発光層15の傾斜角度は内側に向かって17°であることが好ましい。この場合、観察者がパネル正面の中央に位置し、52型の表示パネルの最適視聴距離である190cmの距離から右目で見たときに、各右目用素子1Rの出射面に垂直な出射光が右目2Rに到達することになる。一方、左目用素子1Lでは、パネル右端にある左目用素子1Lにおける発光層の傾斜角度は内側に向かって17°であり、パネル左端にある左目用素子1Lにおける発光層の傾斜角度は内側に向かって16°であることが好ましい。
【0052】
図8は、立体映像表示装置10の別の実施形態を表す図である。図8に示すように、有機EL素子1の前面に、パララックスバリア(バリア素子)3を補助的に導入してもよい。パララックスバリア3は、特定方向に進む光のみ透過させる透光部と、それ以外の方向に進む光を遮光する遮光部とを有しているスリット状の部材である。これにより、右目用素子1Rから出射する光のうち、主成分以外の光を遮光することができる。これにより、右目用画像の光が左目2Lに進むことをより確実に防ぐことができる。その逆もまた同様である。
【0053】
立体映像表示装置10のさらに別の実施形態として、有機EL素子1の前面に、各有機EL素子1からの出射光をそれぞれ集光するための球面レンズが配設されていてもよい。
【0054】
(立体映像表示装置の製造方法)
立体映像表示装置の製造方法について、図1および図9から図11を参照して以下に説明する。
【0055】
まず、ガラス基板11上にTFTを作製し、その上に層間絶縁膜13を形成する。ガラス基板11上にTFTを作製する方法は、従来公知の方法を利用すればよい。次に陽極14として、膜厚100nmのAl膜を成膜する。透明電極(不図示)として膜厚10nmのITOを積層した後、後述する手法により、パターン化された金属を加圧し、150℃の熱を加えてITOに斜めのパターンを形作る。その後、発光層15を真空蒸着法によって形成する。その結果、陽極14の傾きに合わせて発光層15も傾きを有するように成膜される。発光層15上に電子注入層(不図示)として膜厚1nmのLiF膜を成膜し、さらに陰極16として膜厚2nmのAl膜および膜厚20nmのAg膜を成膜する。次いで、無機封止膜17としてPECVD(plasma−enhanced chemical vapor deposition)法によって膜厚1μmのSiN膜、および樹脂封止膜18として膜厚10μmのポリイミドをこの順に成膜する。最後に封止基板19により封止をして円偏光板20を形成する。以上により、陽極14以降、すべて傾斜して成膜されることになる。これによって発光層15の陰極16側から垂直方向に出射する光を、ガラス基板11に対して斜め方向に取り出すことができる。また、陽極14が反射電極となり、陰極16が半反射電極となる。
【0056】
上述の製造方法によれば、図1および図5(a)に示されるような、出射光30がガラス基板11とは反対側から得られるTE構造の有機EL素子1を製造できる。一方、上述の製造方法において、陽極14の膜厚を20nm、陰極16の膜厚を100nmとして成膜することにより、図5(b)に示されるような、出射光30がガラス基板11側から得られるBE構造の有機EL素子1を製造できる。
【0057】
次に、陽極14に傾斜を設ける方法について説明する。なお、本実施の形態では、陽極14に傾斜を設けているが、同様の方法によって、陽極14とガラス基板11とに挟まれた層間絶縁膜13に傾斜を設けるものであってもよい。また、傾斜を設ける方法として、上述の製造方法では、金属を加圧する方法を用いているが、他にもラビング処理を行うラビング法、およびガラス基板11を斜めに配置して成膜する方法が挙げられる。
【0058】
まず金属を加圧することにより傾斜を設ける方法について図9を参照して説明する。加圧による成膜では、予め金属(加圧部材)26に傾斜のパターンを形成しておき、それを陽極14に押し付ける(図9(a))。このとき金属26を加熱しておいてもよい。しばらくした後に金属26の加圧をやめる。金属26を陽極14から引き離すと、陽極14に金属26とは逆のパターンの傾斜が形成されている(図9(c))。以上により、陽極14に傾斜のあるパターンを形成できる。
【0059】
次にラビング法により傾斜を形成する方法ついて図10を参照して説明する。ラビング法による成膜では、陽極14を形成した後に、ラビングローラ27を回転させながら陽極14に押し当て(図10(a))、そのままラビングローラ27を移動させる(図10(b))。このときラビングローラ27を加熱しておいてもよい。しばらくした後にラビングローラ27の加圧をやめる。ラビングローラ27を陽極14から引き離すと、陽極14に傾斜が形成されている(図10(c))。以上により、陽極14に傾斜のあるパターンを形成できる。この後の発光層15等の製造方法は、上述の方法と同じである。
【0060】
次にガラス基板11を斜めに配置して陽極14を成膜することによって傾斜を形成する方法について図11を参照して説明する。ここでは、坩堝(蒸着材料保持具)28から陽極材料を蒸着させる方法について説明する。本方法では、陽極14を形成する際に、ガラス基板11を坩堝28の表面(蒸発面)に対して0°〜45°に傾けて配置する。これによってガラス基板11と坩堝28の表面との距離がガラス基板11の右と左とで異なることになる。そのため、ガラス基板11の左右で陽極14の厚さが異なるものとなり、結果として陽極14に傾斜を形成できる。図11(a)と(b)とはガラス基板11の傾斜角度が異なっている。図11(a)のガラス基板11の傾きでは、蒸着により生じる陽極14の膜厚は、紙面左側よりも右側の方が厚くなり、結果として、陽極14の表面がガラス基板11に対して傾くことになる。一方、図11(b)におけるガラス基板11の傾きでは、蒸着により生じる陽極14の膜厚は、紙面右側よりも左側の方が厚くなり、結果として、陽極14の表面がガラス基板11に対して、図11(a)の場合とは逆の方向に傾くことになる。ガラス基板11を配置するときの傾き角度を調節することにより、陽極14表面に設けられる傾きの角度を調節できる。陽極14形成後の、発光層15等の製造方法は、上述の方法と同じである。
【0061】
本実施の形態における製造方法によれば、上述の立体映像表示装置を製造できる。
【0062】
〔実施の形態2〕
本発明に係る表示装置の他の実施形態について、図12に基づいて説明すれば以下の通りである。なお、説明の便宜上、前述の実施の形態で用いたものと同じ機能を有する部材については、その説明を省略する。
【0063】
上述の実施の形態では、特殊な眼鏡を用いずに3次元画像を観賞できる立体映像表示装置について説明したが、本実施の形態における表示装置は、複数人が同時に互いに異なる画像を観賞できるいわゆるデュアルビュー表示装置である。
【0064】
デュアルビュー表示装置は、各発光層の傾きが上述の立体映像表示装置10と異なる点以外は、上述の立体映像表示装置10と同一の構成である。
【0065】
図12は、本実施の形態におけるデュアルビュー表示装置の、右側観察者用画像(第1対象用画像)を表示する右側観察者用画像表示部における右側観察者用発光素子1R’(第1発光素子)の光出射面と、この右側観察者用画像表示部に隣接している、左側観察者用画像(第2対象用画像)を表示する左側観察者用画像表示部における左側観察者用発光素子(第2発光素子)1L’の光出射面との関係を表す図である。図12に示すように、左側観察者用発光素子1L’の光出射面は、右側観察者用発光素子1R’の光出射面に対して傾いており、その傾斜角度θは90°以上180°未満である。これにより、右側観察者用発光素子1R’の光出射面から垂直に出射する出射光33Rを、他方の光出射面によって遮られることなく、右側観察者(第1対象)に到達させることができる。同様に左側観察者用発光素子1L’の光出射面から垂直に出射する出射光33Lを、他方の光出射面に遮られることなく、左側観察者(第2対象)に到達させることができる。以上のようにして、右側観察者と左側観察者にそれぞれ異なる画像を見せることが可能となる。
【0066】
デュアルビュー表示装置では、表示パネル端のさらに外側から視聴することを想定しているため、立体映像表示装置10と異なり、表示パネル端部における発光層15の傾きは、20°以上であってもよい。
【0067】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0068】
(付記事項)
なお、本発明を以下のように表現することも可能である。
(第1の構成)
有機EL素子において、マイクロキャビティ効果を用いて視野角を0〜120度以内に限定する右目用照明素子と左目用照明素子を有する有機EL素子。
(第2の構成)
前記照明素子は、層間絶縁膜、もしくは陽極において0〜20度以内の傾斜を有することを特徴とする第1の構成に記載の有機EL素子。
(第3の構成)
前記有機EL素子において、層間絶縁膜、もしくは陽極の傾斜がパネルの中心部から縁に向かって、徐々に傾斜が急になることを特徴とする第2の構成に記載の有機EL素子。
(第4の構成)
前記層間絶縁膜、もしくは陽極において、傾斜を作製する方法として、傾斜パターンが形成されたものと該層間絶縁膜、もしくは陽極とを加圧する方法を用いた第2、3の構成に記載の層間絶縁膜や陽極の傾斜作製方法。
(第5の構成)
前記層間絶縁膜、もしくは陽極において、傾斜を作製する方法としてラビング法を用いた第2、3の構成に記載の層間絶縁膜や陽極の傾斜作製方法。
(第6の構成)
前記陽極において、基板を斜めに配置し、陽極を作製する第2、3の構成に記載の陽極の傾斜作製方法。
(第7の構成)
右目用照明素子と左目用照明素子の前面に、遮光部と透光部をもつバリア素子を有することを特徴とする第1、2、3の構成に記載の有機EL素子。
(第8の構成)
右目用照明素子と左目用照明素子の前面に、右目用照明素子と左目用照明素子から出た光をそれぞれ集光するための球面レンズを有することを特徴とする第1、2、3の構成に記載の有機EL素子。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、特殊な眼鏡を必要とせずに3次元画像を観賞できる映像表示装置、複数の視聴者が同時に異なる画像を視聴できる表示装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 有機EL素子(発光素子)
1R 右目用素子(第1発光素子)
1L 左目用素子(第2発光素子)
1R’ 右側観察者用発光素子(第1発光素子)
1L’ 左側観察者用発光素子(第2発光素子)
2R 右目(第1対象)
2L 左目(第2対象)
3 パララックスバリア
10 立体映像表示装置(表示装置)
11 ガラス基板(基板)
12 配線
13 層間絶縁膜
14 陽極(第1電極)
15 発光層(有機EL層)
16 陰極(第2電極)
26 金属(加圧部材)
27 ラビングローラ
28 坩堝(蒸着材料保持具)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板上に形成されており、発光層を有する複数の発光素子とを備えており、互いに異なり得る第1対象用画像および第2対象用画像を表示する表示装置であって、
上記複数の発光素子は、上記第1対象用画像を表示するための1以上の第1発光素子、および上記第2対象用画像を表示するための1以上の第2発光素子を含み、
上記1以上の第1発光素子のそれぞれの出射光の主成分が第1対象に進み、上記1以上の第2発光素子のそれぞれの出射光の主成分が第1対象とは異なる第2対象に進むように、上記1以上の第1発光素子の少なくとも1部および上記1以上の第2発光素子の少なくとも1部において、上記発光層の発光面が上記基板に対して傾きを有していることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
上記発光層は第1電極と第2電極とに挟まれており、
上記第1電極および上記第2電極の何れか一方が反射電極であり、他方が半透過反射電極であり、上記発光素子がマイクロキャビティ構造を有していることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
上記複数の発光素子を含んで構成される表示パネルにおける上記発光素子の配設位置が該表示パネルの中央部から端部に向かうに従って、上記傾きが大きくなることを特徴とする請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項4】
上記傾きは、0°より大きく17°以下であることを特徴とする請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
上記第1発光素子の上記発光層は、当該第1発光素子に隣接して設けられている上記第2発光素子の上記発光層に対して角θの傾きを有しており、該角θは90°以上180°未満であることを特徴とする請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項6】
上記発光素子は、上記発光層が有機エレクトロルミネッセンス層である有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする請求項1から5までの何れか1項に記載の表示装置。
【請求項7】
上記発光素子の前面に、特定方向に進む光のみ透過させる透光部と、それ以外の方向に進む光を遮光する遮光部とを有しているバリア素子が配設されていることを特徴とする請求項1から6までの何れか1項に記載の表示装置。
【請求項8】
上記発光素子の前面に、各発光素子からの出射光をそれぞれ集光するための球面レンズが配設されていることを特徴とする請求項1から6までの何れか1項に記載の表示装置。
【請求項9】
基板上に配線、層間絶縁膜、第1電極、発光層および第2電極をこの順に設けることにより形成される複数の発光素子を備えた表示装置の製造方法であって、
上記層間絶縁膜または上記第1電極の、上記基板と反対側の面に、上記基板に対して傾斜を設ける工程を含むことを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項10】
上記層間絶縁膜または上記第1電極を形成した後に、表面に傾斜パターンが形成された加圧部材を用いて上記層間絶縁膜または上記第1電極を加圧することにより、上記傾斜を設けることを特徴とする請求項9に記載の表示装置の製造方法。
【請求項11】
上記層間絶縁膜または上記第1電極を形成した後に、上記層間絶縁膜または上記第1電極に対してラビング処理を行うことにより、上記傾斜を設けることを特徴とする請求項9に記載の表示装置の製造方法。
【請求項12】
上記層間絶縁膜または上記第1電極を形成する際に、上記層間絶縁膜または上記第1電極の材料を保持する蒸着材料保持具の蒸発面に対して上記基板を傾けて配置し、上記材料を蒸着させることにより上記層間絶縁膜または上記第1電極を形成することを特徴とする請求項9に記載の表示装置の製造方法。
【請求項1】
基板と、該基板上に形成されており、発光層を有する複数の発光素子とを備えており、互いに異なり得る第1対象用画像および第2対象用画像を表示する表示装置であって、
上記複数の発光素子は、上記第1対象用画像を表示するための1以上の第1発光素子、および上記第2対象用画像を表示するための1以上の第2発光素子を含み、
上記1以上の第1発光素子のそれぞれの出射光の主成分が第1対象に進み、上記1以上の第2発光素子のそれぞれの出射光の主成分が第1対象とは異なる第2対象に進むように、上記1以上の第1発光素子の少なくとも1部および上記1以上の第2発光素子の少なくとも1部において、上記発光層の発光面が上記基板に対して傾きを有していることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
上記発光層は第1電極と第2電極とに挟まれており、
上記第1電極および上記第2電極の何れか一方が反射電極であり、他方が半透過反射電極であり、上記発光素子がマイクロキャビティ構造を有していることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
上記複数の発光素子を含んで構成される表示パネルにおける上記発光素子の配設位置が該表示パネルの中央部から端部に向かうに従って、上記傾きが大きくなることを特徴とする請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項4】
上記傾きは、0°より大きく17°以下であることを特徴とする請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
上記第1発光素子の上記発光層は、当該第1発光素子に隣接して設けられている上記第2発光素子の上記発光層に対して角θの傾きを有しており、該角θは90°以上180°未満であることを特徴とする請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項6】
上記発光素子は、上記発光層が有機エレクトロルミネッセンス層である有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする請求項1から5までの何れか1項に記載の表示装置。
【請求項7】
上記発光素子の前面に、特定方向に進む光のみ透過させる透光部と、それ以外の方向に進む光を遮光する遮光部とを有しているバリア素子が配設されていることを特徴とする請求項1から6までの何れか1項に記載の表示装置。
【請求項8】
上記発光素子の前面に、各発光素子からの出射光をそれぞれ集光するための球面レンズが配設されていることを特徴とする請求項1から6までの何れか1項に記載の表示装置。
【請求項9】
基板上に配線、層間絶縁膜、第1電極、発光層および第2電極をこの順に設けることにより形成される複数の発光素子を備えた表示装置の製造方法であって、
上記層間絶縁膜または上記第1電極の、上記基板と反対側の面に、上記基板に対して傾斜を設ける工程を含むことを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項10】
上記層間絶縁膜または上記第1電極を形成した後に、表面に傾斜パターンが形成された加圧部材を用いて上記層間絶縁膜または上記第1電極を加圧することにより、上記傾斜を設けることを特徴とする請求項9に記載の表示装置の製造方法。
【請求項11】
上記層間絶縁膜または上記第1電極を形成した後に、上記層間絶縁膜または上記第1電極に対してラビング処理を行うことにより、上記傾斜を設けることを特徴とする請求項9に記載の表示装置の製造方法。
【請求項12】
上記層間絶縁膜または上記第1電極を形成する際に、上記層間絶縁膜または上記第1電極の材料を保持する蒸着材料保持具の蒸発面に対して上記基板を傾けて配置し、上記材料を蒸着させることにより上記層間絶縁膜または上記第1電極を形成することを特徴とする請求項9に記載の表示装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−217581(P2010−217581A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65040(P2009−65040)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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