説明

表示装置および駆動方法

【課題】 異なる色の発光素子を時間順に発光させる表示装置では、動画表示に際して色割れが生じる。
【解決手段】 1対の電極間に流れる電流によってそれぞれの色で発光する複数の発光素子(103−105)と、前記発光素子の第1電極に接続される複数の駆動回路(10)と、前記発光素子の第2電極に接続される複数の電源線(206−208)とを有し、
前記複数の駆動回路の各々に、互いに異なる色の光で発光する前記発光素子の群の前記第1電極が共通に接続され、
前記第1電極が共通の駆動回路に接続された前記発光素子の群(100)の前記第2電極は、別々に、前記複数の電源線のいずれか1つに接続され、
前記複数の電源線の各々に前記第2電極が接続された前記発光素子が、異なる色の前記発光素子を含んでいることを特徴とする表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置、詳しくは、異なる色の発光素子を時分割で発光させてカラー表示を行う表示装置とその駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー表示を実現する方法として、R(赤)、G(緑)、B(青)のいずれかの色で発光する3種類の発光素子を並べて配置し、同時に発光させて混色表示させる方法がある。この方式は従来から多用されてきたカラー表示方式である。
【0003】
これに対して、1つの画素で3色を順次発光させ、それを短時間で繰り返し行う事で、時間的に混色させる時間分割駆動方式が特許文献1で提案されている。
【0004】
時間分割駆動方式は、1つの画素でR、G、Bの3色を順次表示するため、駆動回路を共通化できる利点がある。発光素子として有機EL素子を用いることもできる。R、G、Bの3色の有機EL素子を積層して、上下端と層間に電極を設けて独立に駆動することにより、画素全体を各色の発光エリアとすることもできる。
【0005】
上記特許文献1の時間分割駆動方式では、R,G,Bの各発光素子を時間で切り替えて駆動するために、駆動回路と各発光素子の電極の間に、切り替えのためのスイッチが設けられている。このスイッチをなくし、その代わりに、駆動回路に接続された電極と対向する側の電極をR,G,Bそれぞれの発光素子に個別に設け、それらに時間別に電圧を与えて順次発光させる方法が特許文献2に提案されている。R,G,Bの各対向電極は別々の時間に電圧が与えられ、かつ中間調を表示するためにさらに細かくサブフレームに分解されて階段状に変化する電圧が与えられる。
【0006】
特許文献1、2の時間分割駆動方法では、R、G、Bの3色の画面が時間別に高速で切り替わって混色された結果、1つのカラー画像が表示される。この方式では、動画を表示したときに、動いている物体の縁が色づいて見えることが知られている。この現象はカラーブレイク(色割れ)と呼ばれ、R,G,Bの各画像が時分割で表示されることによるものである。
【0007】
色割れを解決するために、R,G,Bの切り替えの順序を画素ごとに入れ替える方法が特許文献3に提案されている。駆動回路と発光素子の間にスイッチを設け、それらのスイッチを隣接する3つの画素で互いに異なる3つの制御信号で開閉することにより、時間分割で切り替わる画像のそれぞれがR,G,Bのすべての色を含むようになり、色割れが見えなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4494214号公報
【特許文献2】特開平9−138659号公報
【特許文献3】特開2006−163371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献3の駆動方式においては、時間分割で切り替わる画像のそれぞれがR,G,Bのすべての色を含むようにするために、特許文献1と同様に、駆動回路と発光素子の間にスイッチの役割を持つトランジスタを設ける必要がある。そのため、画素サイズを小さくして高精細な表示装置にすることが困難である。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、時間分解カラー表示における画素駆動回路のトランジスタ数を増やすことなく、色割れのない動画像を表示する表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、第1に、
第1電極と第2電極の間に流れる電流によってそれぞれの色で発光する複数の発光素子と、
前記発光素子の前記第1電極に接続されて電流を供給する複数の駆動回路と、
前記発光素子の前記第2電極に接続されて前記第2電極に電圧を供給する複数の電源線と
を有する表示装置であって、
前記複数の駆動回路の各々に、互いに異なる色の光で発光する前記発光素子の群の前記第1電極が共通に接続され、
前記第1電極が共通の駆動回路に接続された前記発光素子の群の前記第2電極は、別々に、前記複数の電源線のいずれか1つに接続され、
前記複数の電源線の各々に前記第2電極が接続された前記発光素子が、異なる色の前記発光素子を含んでいることを特徴とする。
【0012】
第2に、本発明は、
上記の表示装置において、前記複数の電源線の1つに前記発光素子を発光させる電圧を印加するとともに、他の電源線に前記発光素子を消灯する電圧を印加する工程を、前記複数の電源線に対して順次行うことを特徴とする駆動方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、画素を構成するR、G、Bの発光素子の第2電極が別々の電源線に接続され、かつ電源線の各々には異なる色の発光素子の第2電極が共通に接続されるようにしたので、時分割で発光する画面の1つ1つが異なる色を含むようになり、色割れが防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例である表示装置の有機EL素子とその駆動回路の図である。
【図2】実施例1の表示装置における有機EL素子とカソード配線の図である。
【図3】実施例1の表示装置の電源線のスイッチ回路である。
【図4】実施例1の表示装置の動作を示すタイミングチャートである。
【図5】実施例1の(a)有機EL素子の配置と、(b)フィールドごとの発光色を示す図である。
【図6】実施例2の(a)有機EL素子の配置と、(b)フィールドごとの発光色を示す図である。
【図7】実施例2の表示装置の動作を示すタイミングチャートである。
【図8】実施例3の(a)有機EL素子の配置と、(b)フィールドごとの発光色を示す図である。
【図9】実施例3の表示装置の動作を示すタイミングチャートである。
【図10】実施例1の表示装置における有機EL素子の断面構造を示す図である。
【図11】実施例4の表示装置の有機EL素子とその駆動回路の図である。
【図12】実施例4の表示装置における有機EL素子とカソード配線の図である。
【図13】実施例4の表示装置の電源線のスイッチ回路である。
【図14】実施例4の表示装置の動作を示すタイミングチャートである。
【図15】実施例4の(a)有機EL素子の配置と、(b)フィールドごとの発光色を示す図である。
【図16】実施例4の有機EL素子の断面を示す図である。
【図17】実施例4の有機EL素子の製造工程を説明する図である。
【図18】実施例5の表示装置の有機EL素子とその駆動回路の図である。
【図19】実施例5の表示装置における有機EL素子とカソード配線の図である。
【図20】実施例5の(a)有機EL素子の配置と、(b)フィールドごとの発光色を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
有機EL素子などの発光素子は、ダイオード特性を持ち、一定方向の電流によってのみ発光する。アノードとカソードのうち一方の電極(第1電極とする)を電流源に接続し、他方の電極(第2電極とする)に電流源の電源電圧に対して十分低い電圧を印加すると電流が流れる。逆に、第2電極に第1電極の電流源電圧より高い電圧を与えると電流が流れない。第2電極に与える電圧によって、電流のオン・オフが制御できる。
【0016】
表示装置の画面は複数の画素で構成される。各画素は、R、G、Bの3色、またはそれとは別の色を含んでいてもよいが、異なる色の発光素子を含んでいる。これらの発光素子の一方の第1電極を共通接続して電流源となる駆動回路につなぎ、他方の第2電極を分離して形成し、独立に電圧を与える。第2電極は、それぞれが独立に、他の画素の同色または異色の発光素子の第2電極の各々と接続され、それによって全画素の各第2電極に同時に同じ電圧が印加される。
【0017】
第2電極の電圧を制御して、各画素の発光素子の1つを発光させ、他の発光素子を消灯状態にすることができる。発光する素子を順次切り替えることにより、異なる色の画像が切り替えて表示される。切り替えが高速に行われ、繰り返されると、混合された色の画像として見える。
【0018】
以下、本発明の実施例を図面を参照しながら説明する。以下の実施例では、発光素子として有機EL素子を例にとるが、本発明はそれに限定されるものではない。また、駆動回路に接続される第1電極をアノード、もう一方の第2電極をカソードして説明するが、電流の向きが逆の、第1電極をカソード、第2電極をアノードとする有機EL素子であってもよい。本発明は、有機EL表示装置のような自発光型表示装置に好適に利用される。本発明の表示装置は、放送波を受信し表示するテレビジョン受像機のようにそれ単体で動作する表示装置であってもよいし、デジタルカメラなど別の装置の内部に組み込まれる表示装置であっても良い。
【実施例1】
【0019】
図1は、本発明の第1の実施例である表示装置の1つの画素を示す回路図である。画素100には、選択トランジスタ101と駆動トランジスタ102、駆動トランジスタ102のゲートとソースの間に接続された保持容量60を含む駆動回路10が設けられている。
【0020】
選択トランジスタ101は、ドレインがデータ線30に接続され、ソースが駆動トランジスタ102のゲートおよび保持容量60の一端に接続されている。選択トランジスタ101は、データ線30を駆動トランジスタ102のゲート電極につなぐスイッチである。画素を行単位で選択する選択線20の信号が選択トランジスタ101のゲートに入り、そのオン・オフが制御される。
【0021】
駆動トランジスタ102はPチャネルであり、ソースが電流供給線40に接続され、ドレインが3つの有機EL素子103−105のアノード(陽極)に共通に接続されている。
【0022】
選択トランジスタ101がオンになり、データ線30からデータ信号が伝達されると、それが保持容量60の電圧として保持される。保持容量60の電圧は駆動トランジスタ102のゲート−ソース間電圧であるから、この電圧に基づいて駆動トランジスタ102のドレイン電流が決まり、駆動回路10から駆動電流として出力される。
【0023】
3つの有機EL素子103−105のカソード(陰極)は別々に後述のカソード配線203−205に接続されている。
【0024】
図1では有機EL素子のアノードが共通接続されて駆動回路に接続されているが、アノードとカソードが図1とは逆に配置されていてもよい。その場合は、電源線の電圧極性を反転し、かつ駆動トランジスタ102をNチャネル型にして、電流の向きを反対にする必要がある。
【0025】
有機EL素子の駆動回路10は、図1に示すもののほか多数提案されている。それらに共通しているのは、選択線20とデータ線30とに接続されてそれらから信号が供給され、選択線20の信号によってデータ線30から供給されたデータ信号を取り込んで保持し、保持したデータ信号に応じて電流または電圧を生成し、有機EL素子103−105に出力するという構成である。駆動回路10に接続される選択線20は1本とは限らず、有機EL素子103−105の発光期間をコントロールするための選択線が別に設けられることもある。本発明はそれらのいずれの駆動回路にも適用できる。
【0026】
表示装置は、図1に示す画素100を、横方向に1920(=640×3)個、縦方向に480個、マトリクス状に並べて構成される。表示装置は、この画素を配列させた表示部の周辺に配置され、各画素に電流や電圧を供給する電源配線、同じく周辺に配置され、各信号線を駆動するドライバおよび表示信号を生成し加工するコントロール部を含んで構成されることもある。
【0027】
図2は、R,G,B3色の有機EL素子とカソード線の配置図である。
【0028】
各画素100は、3つの領域に分割され、各領域には、赤(R)の光で発光する有機EL素子103、緑(G)の光で発光する有機EL素子104、青(B)の光で発光する有機EL素子105が配置されている。この配置は全画素で同じであり、周期的に繰り返されている。
【0029】
画素を構成する発光素子の数と色の組み合わせは、本実施例のRGB1個ずつに限らない。各画素は2以上の発光素子からなり、発光素子の個数はすべての画素で同じとする。各画素は少なくとも異なる色の発光素子を含んでいる。
【0030】
1つの画素に同じ色の発光素子が2つ以上含まれるような表示装置もある。同じ電流または電圧が与えられ、同時に発光するならそれらは1つの発光素子と見做し得る。しかし、同色であっても、電極が別であり、別々の信号で駆動されるばあいは、異なる発光素子と見做すべきである。
【0031】
各画素100におけるRGB3つの有機EL素子103−105のカソードは、互いに分離され、色の並びとは直角方向、すなわち図2の上下方向に延びて、帯状のカソード配線203−205となっている。3本のカソード配線203−205は画素100の各列にある。
【0032】
カソード配線203−205は、上と下で隣接する画素100の同色の有機EL素子のカソードを共通に接続する。図2では、カソード配線203−205の延びている方向はデータ線30と同じ方向である。
【0033】
カソード配線203−205は、画素100がマトリクス状に配列する表示領域の外に延長されて、3本の電源線206−208のいずれかに接続されている。電源線206−208は、画素配列領域の外で、各画素のカソード配線203−205を1本ずつ選択して結線する。各列のカソードを共通に接続するカソード配線203−205と電源線206−208とは、各画素の有機EL素子のカソード同士を全画素にわたって接続する3系統の配線を構成している。1つの画素100の有機EL素子103−105のカソードは、別々に、他の画素の3つのカソードのどれかに接続され、この接続は全画素にわたっている。
【0034】
本実施例においては、電源線206は、第1列のRのカソード配線203と、第2列のGのカソード配線204と、第3列のBのカソード配線205とを接続している。また、電源線207は、第1列のGのカソード配線204と、第2列のBのカソード配線205と、第3列のRのカソード配線203とを接続しており、電源線208は、第1列のBのカソード配線205と、第2列のRのカソード配線203と、第3列のGのカソード配線204とを接続している。第4列以降も同じ結線が3列周期で繰り返されている。
【0035】
したがって、電源線206−208は、それぞれ、各列から1色ずつを、引き続く3列が別々の色となるように選んで共通に接続していることになる。
【0036】
図3は、電源線206−208に電圧を与える電圧源とその電圧を切り替えるスイッチ回路の図である。
【0037】
電源線206は、2つのスイッチ214aと214bを介して1対の電圧源212、213に接続されている。スイッチ回路200は1対の電圧源212,213の出力と電源線206,207,208との接続を切り替える回路で、トランジスタからなるスイッチ214a−216bを含んでいる。スイッチ214a、214bは、それぞれ、信号209とインバータ217によって作られるその反転信号209iによって制御され、一方がオンのとき他方がオフになるというように相補的に動作する。
【0038】
電源線207、208もそれぞれ2つのスイッチ215aと215b、216aと216bを介して同じ1対の電圧源212、213に接続されている。スイッチ215a、215bは、それぞれ、信号210とインバータ218によって作られるその反転信号210iによって相補的に制御され、また、スイッチ216a、216bは、それぞれ、信号211とインバータ219によって作られるその反転信号211iによって相補的に制御される。
【0039】
第1のカソード電源212は駆動回路10の電流供給線40の電位Vccより十分低い第1電圧V1を出力し、第2のカソード電源213は電流供給線40の電位Vccより高い第2電圧V2を出力する。以下で説明するように、第1電圧V1が有機EL素子103−105のカソードに伝達されると有機EL素子の両電極間に順バイアス電圧がかかり、発光する。一方、第2電圧V2が画素のカソードに伝達されると逆バイアス電圧がかかり、有機EL素子は発光しない。以下、V1を発光レベル、V2を消灯レベルと呼ぶ。
【0040】
図4は、各信号線の信号電圧を示すタイミングチャートである。
【0041】
時刻t1からt10までが1つの画像を表示するための期間であって、1フレーム期間と呼ばれる。1つのフレーム期間は第1から第3の3つのフィールドに分けられる。
【0042】
時刻t1−t4の第1のフィールドにおいて、まず、t1−taの時間にデータの書き込みが行われる。t1、t2、t3・・・のタイミングで第1行、第2行、第3行・・・が順次選択され、選択線20に制御信号Scan1,Scan2,Scan3・・・が与えられる。これに同期して各列のデータ線30にData1,Data2,Data3・・・のデータ信号が印加される。Scan1は時刻t1とt2の間で選択電位となり、このときの各列のデータ線30に印加されたデータ信号Data1=R11、Data2=G12、Data3=B13(Data4以降も同じ色順のデータ信号)が第1行の画素に取り込まれる。これらのデータ信号は、駆動トランジスタ102のゲート−ソース間にある寄生容量に電圧として保持される。
【0043】
時刻t2とt3の間で制御信号Scan2が選択電位となり、第2行の画素回路にデータ信号Data1=R21、Data2=G22、Data3=B23が保持される。
【0044】
同様にして、taまでの時間に、すべての行にわたってデータ信号が書き込まれる。第1のフィールドで画素に書き込まれるデータ信号は、第1列がR、第2列がG、第3列がB(以下この繰り返し)のデータ信号である。
【0045】
全行の書き込みが終了した後、第1フィールドの残りの期間ta−t4で、制御信号209が選択レベル(低レベル)になり、スイッチ214aがオン、214bがオフになる。制御信号210と211は非選択レベル(高レベル)にあり、スイッチ215a、216aはオフ、215b、216bはオンである。
【0046】
これにより電源線206とそれに接続されている各画素列の有機EL素子のカソード配線203は発光レベルV1となる。電源線207と208は電源213に接続されたままなので、各列のGの有機EL素子のカソード配線204とBの有機EL素子のカソード配線205の電位は消灯レベルV2にある。その結果、第1列では、赤の有機EL素子103のみ順バイアス電圧がかかって、保持された信号電圧に応じて発光する。第1列の緑と青の有機EL素子104と105には逆バイアス電圧がかかって発光しない。第2列では緑、第3列では青の有機EL素子が発光する。
【0047】
時刻t4で電源線206が消灯レベルV2になり、すべての有機EL素子が消灯状態になって第1のフィールド期間が終了する。
【0048】
t4で第2のフィールド期間が始まると、t4、t5、t6・・・のタイミングで第1のフィールドと同様に制御信号Scan1、Scan2、・・・が順次選択電位になり、それに同期して、第1列のデータ線からデータ信号Data1=G11,G21,G31,・・・が、第2列のデータ線からデータ信号Data2=B12,B22,B32,・・・が、第3列のデータ線からデータ信号R13,R23,R33,・・・が取り込まれる。これらのデータ信号は画素に伝達されて緑の有機EL素子104の発光輝度を定める信号となる。
【0049】
t4−tbの期間にすべての画素に緑のデータ信号が書き込まれる。第2のフィールド期間の残りのtb−t7の時間、制御信号210が選択電位になり、電源線207およびカソード配線204が発光レベルV1になる。制御信号209と211は非選択電位にあり、電源線206と208およびカソード配線203と205は消灯レベルV2に設定される。この結果、第1列では緑、第2列では青、第3列では赤の有機EL素子104に順バイアス電圧がかかり、発光が起きる。
【0050】
時刻t7−t10の第3のフィールドでも同じ動作が繰り返される。t7、t8、t9、・・・のタイミングでデータが書き込まれ、時刻tc−t10の間、第1列では青、第2列では赤、第3列では緑の有機EL素子が発光する。
【0051】
図5に(a)カソード配線の接続と、(b)第1−第3のフィールドの発光状態を示す。(a)のカソード配線と電源線の接続は図3と同じである。(b)では、赤の有機EL素子が発光する画素にR、緑の有機EL素子が発光する画素にG、青の有機EL素子が発光する画素にBの符号をつけた。
【0052】
第1フィールドでは左から列ごとにRGBR・・・と並んで発光し、第2フィールドではこれがGBRG・・・、第3フィールドではBRGB・・・となる。1つの画素に注目すると、3つのフィールドで赤、緑、青の有機EL素子が順次発光し、1フレーム期間が終了する。この発光が60分の1秒の周期で繰り返される。
【0053】
各フィールドにおいて3列周期で赤、緑、青が同時に発光し、その色が3つのフィールドで順次サイクリックに入れ替わる。また、同じフィールドでは、行方向に隣接する画素の発光色が異なる。
【0054】
画面全体が同じ色の画像を表示すると、動く画像を目で追う時に画像の端が色づいて見えるいわゆるカラーブレイクを生じるが、本実施例では各フィールドで3色が混じった画像が表示されるため、3列ごとに白となるような特別な画像をのぞき、カラーブレイクは生じない。
【実施例2】
【0055】
図6(a)は、本発明の第2の実施例における画素のマトリクス配列とカソード配線の結線を示す図である。図5(a)と異なり、行が下に行くにつれてRGBの色の配置が1列ずつ右にずれている。
【0056】
カソード配線と電源線の結線は実施例1と同じである。すなわち、電源線206は、第1列のRのカソード配線203と、第2列のGのカソード配線204と、第3列のBのカソード配線205とを接続し、電源線207は、第1列のGのカソード配線204と、第2列のBのカソード配線205と、第3列のRのカソード配線203とを接続しており、電源線208は、第1列のBのカソード配線205と、第2列のRのカソード配線203と、第3列のGのカソード配線204とを接続している。第4列以降も同じ結線が3列周期で繰り返されている。
【0057】
データ信号は実施例1と同じ列に同じ順に与えられる。タイミングチャートを図7に示す。
【0058】
列方向に並ぶ有機EL素子の色が同じでないので、図4とは異なり、1フィールド内で各列にRGBのデータ信号が混在して与えられる。すなわち、第1のフィールドでは、時間順に、第1列のデータ線にData1=R11、B21,G31,・・・のデータ信号が入力され、第2列のデータ線にData2=G12、R22,B32,・・・のデータ信号が入力され、第3列のデータ線にData3=B13、G23,R33,・・・のデータ信号が入力される。第2のフィールドでは、第1のフィールドの各列のR→B→Gの順のデータ信号がG→R→Bの順のデータ信号に入れ替わり、第3のフィールドでは、B→G→Rの順のデータ信号に入れ替わる。
【0059】
この結果、フィールドごとの画素の発色の様子は図6(b)のようになる。RGBの配置が行ごとにずれていることにより、各フィールドで、行方向だけでなく列方向にもRGBが混じって表示される。実施例1の配置では列方向には同色が表示されるので、画像の縦(列方向)の縁が動いたときに色づくカラーブレイクが生じるが、図6(a)の配置ではどのような画像にもカラーブレイクが生じない。
【実施例3】
【0060】
図8(a)は、3色の有機EL素子を上下方向にRGBの順に周期的に並べて配置した表示装置のカソード配線の結線の様子を示す。各画素のカソードは上下方向(列方向)に3つに分離され、色の周期配列と直行する左右方向(行方向)に延びたカソード配線203―205を形成する。電源線206−208は、画素配列の左辺に上下(列方向)に延びる配線として設けられている。
【0061】
選択線20とデータ線30は、実施例1、2と同じく、それぞれ行方向と列方向に延びる配線として設けられている。
【0062】
駆動回路も図1に示したものと同じである。
【0063】
電源線206−208は、各行の3本のカソード配線の中から1本ずつ、引き続く3行で互いに異なる色となるようにカソード配線203−205を選んで共通に接続している。カソード配線203−205と電源線206−208の接続は、行と列が入れ替わっているほかは実施例1、2と同じである。
【0064】
本実施例のタイミングシートを図9に示す。
【0065】
各列のデータ線30に与えられるデータ信号Data1,2、3・・・は、第1のフィールドでは、Data1=R11、B21,G31・・・、Data2=R12、B22,G32・・・、Data3=R13、B23,G33・・・など、各列で同じR→B→Gの順、第2のフィールドでは、Data1=G11、R21,B31・・・、Data2=G12、R22,B32・・・、Data3=G13、R23,B33・・・など、各列で同じG→R→Bの順、第3のフィールドでは、Data1=B11、G21,R31・・・、Data2=B12、G22,R32・・・、Data1=B13、G23,R33・・・など、各列で同じB→G→Rの順である。
【0066】
フィールドごとの画素の表示色を図8(b)に示す。カソード配線203−205が行方向に共通に接続されているため、発光色は各フィールドで行方向に同色となり、列方向にRGBが混じって表示される。したがって画像の縦の縁が色づくというカラーブレイクは生じない。
【0067】
本実施例は、同色の有機EL素子が行方向にストライプ状に並んでいるので、実施例1の図5(a)の配置と同じく、カラーフィルタの形成やメタルマスクによるRGBの塗分け蒸着のプロセスが容易になる利点がある。
【0068】
図10は、図2の一点鎖線MM’における断面図である。図1と同じ部分には同じ符号をつけた。
【0069】
有機EL素子103−105は、それぞれ、アノード103a−105aと有機発光層7R,7G,7Bとカソード103c−105cからなり、アノードからカソードに向かって流れる電流によって発光する。基板1の上に、選択トランジスタ101と駆動トランジスタ102が形成され、各トランジスタの半導体層3は、絶縁層2aに開けられたコンタクトホール5aを介してソース/ドレイン電極に接続されている。選択トランジスタ101のソース電極はデータ線30に接続されている。選択トランジスタ101のドレイン電極5は不図示の配線によって駆動トランジスタ102のゲート電極4に接続されている。駆動トランジスタ102のソース電極は電流供給線40である。駆動トランジスタ102のドレイン電極5は第2の絶縁層2bに開けられたコンタクトホール5aを介して有機EL素子のアノード6に接続されている。図10では、有機EL素子103−105の各アノード103a−105aは1枚の電極6で形成され、互いに接続されている。選択トランジスタ101、駆動トランジスタ102とそれらのゲート電極およびソース/ドレイン電極は、有機EL素子103−105の駆動回路10を構成する。基板1には、この他に、データ信号を保持する容量が形成されていることもある。
【0070】
カソード103c−105cはITO(インジウム・チタン酸化物)などの透明電極で形成されている。分離されたカソード103c−105cを形成するには、全面に蒸着またはスパッタでITOを成膜した後にレーザー照射によってITOを分断する方法、金属マスクによってパターニングする方法、逆テーパーの画素分離膜を用いてパターニングする方法等などのいずれを用いても良い。画素は、図10のようにそれぞれR(赤)、G(緑)、B(青)の色で発光する3つの有機EL素子で構成するほか、白色を発光する有機EL素子にRGBのカラーフィルタを配置してもよい。3つの有機EL素子を並べた画素は、メタルマスクを用いて発光材料を蒸着することによって得られる。もしくは、有機EL材料を塗布した基板からレーザー転写によってRGBの有機EL層を得ることもできる。
【0071】
有機EL素子103は、アノード103aとカソード103cの間に有機発光層7Rが挟まれた構造を有しており、有機発光層7Rは、図10では1層に描かれているが、実際には、下から順にホール注入・輸送層、発光層、電子注入・輸送層の3層からなる。ホール注入・輸送層はホールを多数キャリアとして含み、電子注入・輸送層は電子を多数キャリアとして含む半導体層である。
【0072】
有機EL素子104、105も、有機発光層の材料や各層の厚さが異なる以外は同様の構造を有している。
【0073】
アノードをカソードより高電位にする電圧(順バイアス電圧)を有機EL素子103に印加すると、ホール注入層から発光層にホールが注入され、電子注入層から発光層に電子が注入される。これらが発光層中で再結合することにより光を発する。逆極性の、アノードをカソードより低電位にする電圧(逆バイアス電圧)を印加したときは、キャリアの注入が起こらず発光は生じない。このように有機EL素子はダイオードと類似の整流特性を有している。
【実施例4】
【0074】
図11は、本発明の第4の実施例における画素の構成とカソード配線の結線を示す図である。図1と同じ部分には同じ符号を付した。
【0075】
行方向に、赤の有機EL素子103、第1の緑の有機EL素子104、青の有機EL素子105、第2の緑の有機EL素子106が、この順に4個で並んで画素100を構成している。行方向にはこの4個の有機EL素子103−106が周期的に配列しており、不図示の列方向には同じ色の有機EL素子が並んでいる。
【0076】
各画素は2つの緑の有機EL素子を含む。人間の眼の中にあり視力や色覚を担当する感覚器官の数が最も多いのが緑色であり、1画素内の緑の有機EL素子を赤と青の有機EL素子の2倍の数とすることで、3色の副画素数を均等にした場合に比べて解像度を高める効果が得られる。以下、第1の緑を緑I、第2の緑を緑IIと略記する。
【0077】
駆動回路10は各画素で同じ構成であり、選択トランジスタ101、伝達トランジスタ107、駆動トランジスタ102、ならびに2つの保持容量CH1,CH2を含んでいる。
【0078】
各駆動回路10の駆動トランジスタ102は、有機EL素子の駆動電流を供給する電流供給線40と有機EL素子103−106のアノード電極に接続されて、これらの有機EL素子103−106に電流を供給する。赤の有機EL素子103と緑Iの有機EL素子104が1つの駆動回路10で共通に駆動され、青の有機EL素子105と緑IIの有機EL素子106が別の1つの駆動回路10で共通に駆動される。本実施例では、赤と緑Iの有機EL素子が1つの副画素100aを構成し、青と緑IIの有機EL素子が別の副画素100bを構成している。
【0079】
副画素100aの有機EL素子103,104のカソードは、個別に、隣の副画素100bの有機EL素子105,106のカソードと接続される。副画素100aの赤の有機EL素子103は隣の副画素100bの緑IIの有機EL素子106とカソード同士が接続され、副画素100aの緑Iの有機EL素子104は隣の副画素100bの青の有機EL素子104とカソード同士が接続されている。
【0080】
副画素100aと100bは行方向に1280(=640×2)個、列方向に480個、マトリクス状に配列して表示装置の表示部を構成している。
【0081】
図12は本実施例における有機EL素子の平面配置とカソード配線の結線を示すレイアウト図である。
【0082】
図12では、副画素単位で行と列に番号を付け、I行J列の副画素の有機EL素子にRIJなどの符号をつけてある。赤の有機EL素子103は奇数列目にあり、R11、R13、・・・の符号で示され、緑Iの有機EL素子104も奇数列目にあり、G11、G13、・・・の符号で示されている。青の有機EL素子105は偶数列目にあり、B12、B14、・・・の符号で示され、緑IIの有機EL素子106も偶数列目にあり、G12、G14、・・・の符号で示されている。
【0083】
各有機EL素子のカソードは、列方向に延長されて、上下の有機EL素子のカソードと共通の1つの電極になっている。この電極は、列方向にすべての有機EL素子のカソードに共通の電極であり、カソード配線233,234を構成する。
【0084】
本実施例では、列方向のみならず、同じ行の隣りあう有機EL素子もカソード同士が連続して形成されており、隣接する2列の有機EL素子のカソード配線は、1つながりの配線になっている。副画素100aの緑Iの有機EL素子G11と右隣の副画素100bの青の有機EL素子B12が共有するカソードはカソード配線234を形成し、副画素100aの赤の有機EL素子R13とその左隣の副画素100bの緑IIの有機EL素子G12が共有するカソードはカソード配線233を形成する。一番端の列は例外で、1列の有機EL素子R11、R21、R31、・・・のカソードだけでカソード配線233が構成されている。
【0085】
カソード配線233,234は、表示領域の外に延長され、そこでコンタクトホール209を通じて1本おきに電源線216,217に接続されている。本実施例では電源線は2本あり、2つのカソード電源212,213から点灯電圧V1と消灯電圧V2が切り替えられて供給される。
【0086】
図13は本実施例の電源線の電圧を切り替えるスイッチ回路である。図3のスイッチ回路から3本目の電源線208をなくしたもので、同じ部分には同じ符号を付した。その動作は図3と同じであり、電源線206と207は、点灯電圧V1を出力する電源212と消灯電圧V2を出力する電源213に交互に接続される。
【0087】
図14は本実施例の駆動方法を示すタイミングチャートである。Scan1、Scan2、Scan3は選択線20に印加される電圧パルス、Transferは伝達信号線21に印加される電圧パルス、Data1−Data4はデータ線のデータ信号、Cathode1はカソード配線213の電圧、Cathode2はカソード配線214の電圧を表している。
【0088】
1フレームは前半の第1フィールドと後半の第2フィールドに分けられる。
【0089】
第1フィールドで、信号Scan1、Scan2、・・・が各行の選択線20に印加され、選択トランジスタ101のゲート電極に、1行ずつ順次選択電位(Highレベル)が供給される。1行目の選択線Scan1はt1の期間選択電位となり、データ線(Data1−4)のデータ信号が画素回路10の第1段の保持容量CH1に伝達される。期間t2に2行目、期間t3に3行目が選択され、同じ動作が順次繰り返されて、全行の画素回路にデータ信号が書き込まれる。
【0090】
ついで、全行の伝達信号線21の信号Transferがt11の期間一斉にHighレベルになり、画素回路10の伝達トランジスタ107がオン状態になる。これによって第1段の保持容量CH1の電圧が第2段の保持容量CH2に伝達される。トランスファー信号線がLowレベルに戻った後も、第2段の保持容量CH2に保持された電圧が駆動トランジスタ102のゲートに与え続けられる。
【0091】
期間t11終了後、第1の電源線206(Cathode1)には点灯電圧V1が印加され、第2の電源線207(Cathode2)には消灯電圧V2が印加される。第1の電源線206(Cathode1)に接続されたカソード配線233上の有機EL素子は順方向バイアスになり、電流が流れて発光する。第2の電源線207(Cathode2)に接続されたカソード配線234上の有機EL素子は逆方向バイアスになり、電流が流れず、発光しない。したがって、第1フィールドの発光期間中、各副画素100a,100bの2つの有機EL素子のうちの一方だけが点灯し、他方が消灯状態になる。
【0092】
第2フィールドでは、Scan1がt4の期間、Scan2がt5の期間、以下の行も同様に順次選択電位となり、同じ書き込み動作が行われる。次いで伝達信号線が期間t12で選択電位(Hレベル)になり、データ信号が駆動トランジスタ102のゲートに転送される。
【0093】
第2フィールドの発光期間は、第1の電源線206に消灯電圧V2、第2の電源線207には点灯電圧V1が印加される。これにより、各副画素100a,100bの第1フィールドの発光期間中点灯しなかったほうの有機EL素子が点灯状態になり、第1フィールドで点灯した有機EL素子は消灯状態になる。
【0094】
図15は、(a)がカソード配線の結線図、(b)が各フィールドで点灯する有機EL素子を示した図である。(a)のカソード配線の結線は、図12に示したものと同じである。
【0095】
(b)に示されるように、第1フィールドでは、画素100aの赤の有機EL素子と画素100bの緑IIの有機EL素子が発光し、第2フィールドでは、画素100aの緑Iの有機EL素子と画素100bの青の有機EL素子が発光する。2つのフィールドで1フレームの画像表示が完了し、目には2つのフィールドの平均化されたカラー画像が見える。
【0096】
実施例1−3では1つのフィールドでRGBの3色が混在して発光する。本実施例では、各フィールドの画像は全部の色を含んでおらず、部分的な色の発光になる。しかし、各フィールドの画像が少なくとも異なる2色を含んでいるので、カラーブレイク防止の効果が発揮される。
【0097】
以下、本実施例の有機EL素子の構造とその製造方法について説明する。
【0098】
図16は図12の一点鎖線MM‘に沿った有機EL素子の断面図である。図10と同じ部分には同じ符号を付した。また、駆動トランジスタ102以外の画素回路要素は省略した。
【0099】
隔壁9に囲まれた図の左側の領域に、赤と緑Iの有機EL素子103と104が形成されている。また、右の領域にもう1つの副画素を構成する青と緑IIの2つの有機EL素子105と106が形成されている。このように、隔壁に囲まれた1つの領域は1つの副画素を形成する。
【0100】
各領域内の2つの有機EL素子は、アノード電極61,62が共通しており、それぞれ1つの駆動トランジスタ102で駆動される。発光物質を含む赤、緑、青の有機層7R,7G,7Bは、1つの領域内に2色が分離して形成されている。また、領域内の2つの有機EL素子のカソードは分離して形成されているが、緑Iと青の有機EL素子のカソード104C,105Cは、隔壁を超えてつながっている。図では示されていないが、緑IIと隣の画素の赤の有機EL素子も、隔壁を超えてカソード同士がつながっている。
【0101】
隔壁で囲まれた領域に2つの有機EL素子を形成する方法について以下で説明する。
【0102】
2分割されたカソード電極を形成するには、全面に蒸着またはスパッタでAg、ITO、IZO等の電極材料を成膜した後にレーザー照射によって分断する方法、あるいは金属マスクによってパターニングする方法、逆テーパー形状の画素分離膜を用いてパターニングする方法があり、いずれを用いてもよい。
【0103】
2色の有機層を分離して形成するには、白色有機ELにカラーフィルタを組み合わせる方法、レーザー転写によってR、G、Bの3種類の有機EL層を配する方法、メタルマスクを用いて蒸着する方法があり、いずれを用いてもよい。
【0104】
分割された有機層とカソードを一連のプロセスで形成する方法を、図17によって説明する。
【0105】
図17(a)はケイ素やガラス等の基板1である。基板1の上に、有機EL素子を駆動するための回路パターン及び電極が形成されているが、図では省略した。
【0106】
この基板1に、画素を区画するためのフォトレジスト材料からなる隔壁9をパターニングして設けたのが図17(b)である。このような隔壁9はシャドーウォールとも呼ばれ、その作製方法については詳しくは特開2000−155538号公報に記載されている。
【0107】
隔壁9を付けた基板に対して、図17(c)のように、RGBの各有機EL材料を斜め方向から蒸着する。図17(c)は、左側からの蒸着で緑の有機層7Gを、右側からの蒸着で赤と青の有機層7Rと7Bを重ねて蒸着したものである。7Rと7Bの有機層は積層されることになる。隔壁9の影の領域には蒸着材料が付着しないので、隔壁9に挟まれた領域に2つの有機層が分離して形成される。
【0108】
次に、有機層7Gと有機層7R+7Bの上に、カソード電極材料を、斜め方向左側と右側の両方からから蒸着する。この結果、隔壁9内の2つの有機層に分離してカソード電極材料が付着し、図17(d)のようなカソードが作られる。隔壁9の上面は両側からカソード電極材料が蒸着されるため、隔壁9を挟んで隣接した2つの有機EL素子は、カソードどうしが電気的につながって形成される。
【0109】
最後に、赤のカラーフィルタCFRと青のカラーフィルタCFBを1つおきに積層有機EL素子の上に配置する。緑の有機EL素子にはカラーフィルタを設けない。この結果、図17(e)のカラー有機EL素子103−106が完成する。
【0110】
カラーフィルタによりRB積層の有機EL素子から、別々に、RとBの単独光が取り出される。カラーフィルタは、カソード上を窒化ケイ素膜のような無機膜により平坦化し、その上に直接パターニング形成する。もしくは、別個のガラス基板にカラーフィルタをパターニングして形成し、位置を決めて有機EL素子を形成した基板と貼り合わせてもよい。
【0111】
以上、説明したような工程で作製された表示装置は、白色有機ELにカラーフィルタを用いた組み合わせに比較して、フィルタに吸収される光のロスが少なく消費電力の点で有利である。
【実施例5】
【0112】
図18は、本発明に係る第5の実施例の構成を示す回路図である。有機EL素子103−106の配列、電源線の電圧、タイミングチャートは実施例4と同じであるが、有機EL素子と駆動回路の結線、およびカソード配線と電源線の結線が実施例4とは異なっている。
【0113】
図18に示されているように、左端を第1列として、奇数列の副画素100aでは、駆動回路10が同じ副画素の赤の有機EL素子103と別の副画素(隣の隣の副画素100a)の緑Iの有機EL素子104とに接続されている。偶数列の副画素100bでは、駆動回路10が同じ副画素の青の有機EL素子105と緑IIの有機EL素子106とに接続されている。
【0114】
図19は、本実施例のカソード配線と電源線の接続を示す図である。同じ結線は、後で説明する図20(a)にも示されている。
【0115】
本実施例のカソード配線233,234と電源線206,207の結線は、図12および図15(a)に示した実施例4の結線とは異なり、カソード配線233,234の2本ずつが1本の電源線に接続されている。この結果、端の列を除いて、奇数列の2つの有機EL素子とその両側の隣接する偶数列の各1つの有機EL素子の計4つの行方向に連なる有機EL素子が同じ電源線に接続される。その隣の4つの有機EL素子の組はもう1つの電源線に接続される。
【0116】
4つの行方向に連なる有機EL素子は、カソードに点灯電圧または消灯電圧が交互に供給されて、同時に点灯し、同時に消灯される。したがって、これら4つの有機EL素子は、別々の駆動回路で独立に駆動される。図19の駆動回路と有機EL素子の接続は、そのようにして決定されたものである。第2列の緑IIの有機EL素子106は第2列の駆動回路で駆動され、第3列の赤の有機EL素子103は第3列の駆動回路で駆動され、第3列の緑Iの有機EL素子104は第1列の駆動回路で駆動され、第4列の青の有機EL素子105は第4列の駆動回路で駆動される。そして、これら第1列から第4列の4つの駆動回路は、もう一方のフィールドで点灯する他の4つの有機EL素子にも接続されているのである。
【0117】
図20(a)は、本実施例のカソード配線と電源線の結線図、(b)は各フィールドで点灯状態にある有機EL素子を示す図である。(a)の結線は図19に示したものと同じである。
【0118】
本実施例のカソード配線の接続によって、第1フィールドでは、第1列の赤の有機EL素子R11、R21,R31、・・・と緑Iの有機EL素子G11,G21,G31,・・・と第2列の青の有機EL素子B12,B22,B32,・・・が点灯状態になる。同時に、第4列の緑IIの有機EL素子G14,G24,G34,・・・、第5列の赤の有機EL素子R15、R25,R35、・・・と緑Iの有機EL素子G15,G25,G35,・・・、第6列の青の有機EL素子B16,B26,B36,・・・も点灯状態になる。
【0119】
また、第2フィールドでは、第2列の緑IIの有機EL素子G12、G22,G32、・・・、第3列の赤の有機EL素子R13,R23,R33,・・・と緑Iの有機EL素子G13,G23,G33,・・・、第4列の青の有機EL素子B14,B24,B34,・・・が点灯状態になる。同時に、第6列の緑IIの有機EL素子G16,G26,G36,・・・、第7列の赤の有機EL素子R17、R27,R37、・・・と緑Iの有機EL素子G17,G27,G37,・・・、第8列の青の有機EL素子B18,B28,B38,・・・も点灯状態になる。
【0120】
すなわち、画素を構成する4種類の有機EL素子103−106のすべてが、1つのフィールドで点灯状態として出現する。もう一方のフィールドでも同様である。各フィールドで赤、緑、青が混じり合って発光するので、自然画などの通常の動画表示においてはカラーブレイクは生じない。
【0121】
本実施例では、奇数列の駆動回路10が異なる2画素の有機EL素子を駆動する。このように、1つの駆動回路から電流が供給される有機EL素子の群は、必ずしも1つの画素を構成しない。
【0122】
実施例1−3では、各画素のRGBの3つの有機EL素子が別々の電源線に接続されるので、これらを1つの駆動回路で駆動することができる。すなわち、駆動回路を共通にする有機EL素子の群は画素を構成する有機EL素子と一致する。
【0123】
実施例4では、各画素の有機EL素子の一部(R,GI,B,GIIのうちGIとB)がカソードを共通にするので、少なくともこの2つの有機EL素子は別の駆動回路で駆動されなければならない。そのために各画素に2つの駆動回路が設けられている。
【0124】
さらに実施例5では、2画素にまたがって連なる4つの有機EL素子、1つの画素のR、GI、Bとその隣の画素のGIIを同時に発光させ、それにより1フィールドにすべての色の発光が混在するようにした。この4つの有機EL素子を別々の駆動回路で駆動するため、1つの画素の駆動回路が画素をまたがって隣の画素の有機EL素子を駆動するようにした。
【符号の説明】
【0125】
6 アノード(第1電極)
9 隔壁
10 駆動回路
60 保持容量
100 画素(発光素子群)
101 選択トランジスタ
102 駆動トランジスタ
103,104,105 有機EL素子(発光素子)
103c、104c、105c カソード(第2電極)
200 スイッチ回路
203、204、205 カソード配線(配線)
206、207、208 電源線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と第2電極の間に流れる電流によってそれぞれの色で発光する複数の発光素子と、
前記発光素子の前記第1電極に接続されて電流を供給する複数の駆動回路と、
前記発光素子の前記第2電極に接続されて前記第2電極に電圧を供給する複数の電源線と
を有する表示装置であって、
前記複数の駆動回路の各々に、互いに異なる色の光で発光する前記発光素子の群の前記第1電極が共通に接続され、
前記第1電極が共通の駆動回路に接続された前記発光素子の群の前記第2電極は、別々に、前記複数の電源線のいずれか1つに接続され、
前記複数の電源線の各々に前記第2電極が接続された前記発光素子が、異なる色の前記発光素子を含んでいることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記複数の電源線の各々に、前記発光素子の群のすべての発光色を含む前記発光素子の第2電極が接続されていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記発光素子の群の前記第2電極が延長されてなる配線により、前記発光素子の群の前記第2電極同士が接続され、前記配線がさらに延長されて前記複数の電源線のいずれかに結線されていることを特徴とする請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記配線により異なる色の前記発光素子の前記第2電極同士が接続されていることを特徴とする請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記配線により同色の前記発光素子の前記第2電極同士が接続されており、色が異なる前記発光素子についての前記配線が、同じ前記電源線に結線されていることを特徴とする請求項3に記載の表示装置。
【請求項6】
前記発光素子の群が隣接する前記発光素子の群と隔壁で隔てられて配置され、前記隔壁を隔てて隣接する2つの前記発光素子の前記第2電極が、前記隔壁を越えて相互に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項7】
前記駆動回路が、
ドレインが前記発光素子の前記第1電極に接続され、ゲートが容量の1端子に接続された駆動トランジスタと、
データ線と前記駆動トランジスタのゲートの間に設けられた選択トランジスタと、
前記駆動トランジスタのゲートに一端が接続された保持容量と
を含む回路であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項8】
前記電源線が、前記発光素子を発光させる電圧と消灯する電圧とを切り替えるスイッチ回路に接続されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の表示装置において、前記複数の電源線の1つに前記発光素子を発光させる電圧を印加するとともに、他の電源線に前記発光素子を消灯する電圧を印加する工程を、前記複数の電源線に対して順次行うことを特徴とする駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−18386(P2012−18386A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89375(P2011−89375)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】