説明

表示装置ギャップ形成用感エネルギー性ネガ型樹脂組成物及びそれを用いた表示素子基板にスペーサを形成する方法

【課題】表示ムラのない良好な表示品質で歩留まりのよいスペーサの製造が可能な表示装置ギャップ形成用感エネルギー性ネガ型樹脂組成物を提供する。
【解決手段】下記一般式(I)で表されるトリシクロ(5,2,1,02,6)デカ−8−イルメタタリレート30〜80重量%と、(a2)下記一般式(II)で表される架橋性多官能モノマー2〜20重量%と、(a3)他の共重合可能なビニル系モノマー0〜68重量%を全体が100重量%になるように配合した成分、(b)活性エネルギー線の照射により遊離ラジカルを生成する重合開始剤を含有してなる表示装置ギャップ形成用感エネルギー性ネガ型樹脂組成物。




(ただし、一般式(II)中、Rは2〜4価の脂肪族炭化水素基又はオキシアルキレン基、Aはアクリロイル基又はメタクリロイル基、nはAの結合数で2〜4の整数を示す)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置等における液晶層の厚みを一定に保つために配設された液晶スペーサに使用される表示装置ギャップ形成用感エネルギー性ネガ型樹脂組成物及びそれを用いた表示素子基板にスペーサを形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶カラーテレビ、液晶カラー表示のコンピューターなどが実用化されているが、これらの液晶表示装置は、透明電極等を設けたガラス等の透明な基板間に1〜10μm程度の間隙(ギャップ)を設けて、その間隙に液晶物質を封入し、電極間に印加した電圧により液晶物質を配向させ、画像を表示する仕組になっている。このような液晶表示装置において、液晶層のギャップが変化すると表示ムラやコントラスト異常となるため、均一な粒径分布を持つ球状のガラスビーズまたは樹脂ビーズを液晶層に配し、液晶層のギャップを一定に保持するためのスペーサが必要とされている。
【0003】
しかしながら、このような球状のガラスビーズや樹脂ビーズのスペーサは、一般に、対向する基板間の液晶層に散布されているだけで、基板に対して固定されていないため、スペーサの分布にバラツキが生じて表示ムラが発生したり、液晶表示装置の振動によりスペーサが移動して配向異常領域が大きくなったり、配向膜面にダメージを与える等の問題があった。また、このような球状のガラスビーズや樹脂ビーズのスペーサは、液晶表示装置の表示部分にも散布されているため、コントラストを低下させ、表示品質を低下させる等の問題があった。
【0004】
これらの問題を改良する方法として、一方の基板上に紫外線硬化型樹脂を塗布、乾燥後、露光・現像を行なうことでスペーサを形成する方法が開示されている(例えば特許文献1〜4参照)。
【0005】
また、あらかじめ光硬化性樹脂塗液を塗布したフィルムを使用し、これを転写した後に、露光・現像でパターニングを行い、スペーサを形成する方法も開示されている(例えば特許文献5参照)。
【0006】
これらの方法で形成されたスペーサは、柱状スペーサあるいは感光性スペーサと呼ばれ、前記の球状のガラスビーズや樹脂ビーズを用いた場合に発生していた表示ムラ、配向異常及びコントラスト低下等の問題点を解消し得る手段として提案されている。
【0007】
【特許文献1】特開平1−134336号公報
【特許文献2】特開平3−89320号公報
【特許文献3】特開平10−168134号公報
【特許文献4】特開平11−133600号公報
【特許文献5】特開平11−174461号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
スペーサビーズの散布が、均一でなかったり、散布密度が低かったり、凝集した場合、セルギャップが不均一になる問題がある。また、スペーサビーズの散布量が多いと、ある確率で開口部上に散布されるスペーサビーズは液晶機能を果たさないため、開口部上での光の制御面積が減少し、液晶表示装置のコントラストの低下を引き起こす。
【0009】
これらの課題は、特許文献1で開示される柱状スペーサを、フォトリソグラフィにより所望の位置に形成する方法で、開口部以外の領域に均一な分布密度で形成できる。しかし、液晶表示装置の大面積化に伴い、柱状スペーサを表示領域前面にわたり均一に所望の膜厚で形成するのは難しく、生産時の柱状スペーサ高さも液晶表示装置ごとのばらつきが大きく、表示特性の劣る不良液晶表示装置が発生しやすい。また、セルギャップの駆動時の安定性などにも課題がある。
【0010】
本発明は、開口部へのスペーサビーズ散布による表示装置のコントラスト低下を防ぎ、かつ表示装置の表示領域全面にわたり均一なセルギャップを得られ、かつ生産時でもスペーサビーズと同等のセルギャップ安定性を保障し、更に塑性変形に起因する表示ムラの抑制と硬度保持を両立でき、表示ムラのない良好な表示品質でかつ歩留まりのよい表示装置の製造が可能な表示装置ギャップ形成用感エネルギー性ネガ型樹脂組成物とそれを用いたスペーサを歩留まり良く製造でき、作業性に優れた表示素子用基板にスペーサを形成する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、(a1) 下記一般式(I)で表されるトリシクロ(5,2,1,02,6)デカ−8−イルメタタリレート30〜80重量%と、(a2)下記一般式(II)で表される架橋性多官能モノマー2〜20重量%と、(a3)他の共重合可能なビニル系モノマー0〜68重量%を全体が100重量%になるように配合した成分、(b)活性エネルギー線の照射により遊離ラジカルを生成する重合開始剤を、含有してなる表示装置ギャップ形成用感エネルギー性ネガ型樹脂組成物に関する。
【0012】
【化1】

【0013】
【化2】


(ただし、一般式(II)中、Rは2〜4価の脂肪族炭化水素基又はオキシアルキレン基、Aはアクリロイル基又はメタクリロイル基、nはAの結合数で2〜4の整数を示す)
【0014】
また、本発明は、(I)表示素子の基板上に、上記に記載の表示装置ギャップ形成用感エネルギー性ネガ型樹脂組成物を、インクジェット法で、所定の位置及び形状に形成する工程、(II)活性エネルギー線を照射し、表示素子基板にギャップ形成用スペーサを像的に形成する工程、を含むことを特徴とする表示素子基板にスペーサを形成する方法に関する。
また、本発明は、更に、(III)パターンを形成した感エネルギー性ネガ型樹脂組成物を加熱する工程を有する上記に記載の表示素子基板にスペーサを形成する方法に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、表示装置のコントラスト低下を防ぎ、面内に均一なセルギャップを得られ、かつ生産時でもスペーサビーズと同等のセルギャップ安定性を保障し、塑性変形に起因する表示ムラの抑制と硬度保持を両立でき、表示ムラのない良好な表示品質でかつ歩留まりのよい液晶表示装置の製造が可能な表示装置ギャップ形成用感エネルギー性ネガ型樹脂組成物、及びそれを用いたスペーサを歩留まり良く製造でき、表示素子基板にスペーサを作業性良く形成する方法を提供する。さらにインクジェット印刷によるため、安価に液晶表示装置の生産が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の表示装置ギャップ形成用感エネルギー性ネガ型樹脂組成物は、対向させて配設された基板間に液晶が封入された液晶表示装置で、該液晶層の厚さを一定に保つために配設されたスペーサに用いられる感エネルギー性ネガ型樹脂組成物である。図1は、液晶表示装置の一例であり、本発明の表示装置ギャップ形成用感エネルギー性ネガ型樹脂組成物は、対向させて配設された基板3間に液晶が封入された液晶表示装置で、該液晶層15の厚さを一定に保つために配設されたスペーサ16に好適に使用される。
【0017】
本発明の感エネルギー性ネガ型樹脂組成物は、(a1)一般式(I)で表されるトリシクロ(5,2,1,02,6)デカ−8−イルメタタリレート30〜80重量%と、(a2)一般式(II)で表される架橋性多官能モノマー2〜20重量%と、(a3)他の共重合可能なビニル系モノマー0〜68重量%を全体が100重量%になるように配合した成分、(b)活性エネルギー線の照射により遊離ラジカルを生成する重合開始剤を含むものである。液晶スペーサは、対向させて配設された基板間に液晶が封入された液晶表示装置で、該液晶層の厚さを一定に保つために配設されたスペーサである。
【0018】
本発明における(a1)一般式(I)で表されるトリシクロ(5,2,1,02,6)デカ−8−イルメタクリレート(以下、TCD−MAと略称する)は、下記一般式(I)に示される化合物であり、組成物中に,30〜80重量%使用される。TCD−MAは、スペーサとしての形状安定性すなわち、塑性変形に起因する表示ムラの抑制と硬度保持の観点で、また、耐熱性及び低吸湿性の面で30重量%以上必要であり,80重量%を超えるとスペーサが強度的に脆くなり実用に供しない。
【0019】
【化3】

【0020】
また、(a2)下記一般式(II)で表される架橋性多官能モノマーは、成形品の強度的な面で組成物中2重量%以上必要となり、20重量%を超えても強度的な改善効果は小さい。(a3)他の共重合可能なビニル系モノマーは、組成物中に68重量%を超えると、光学的特性、低吸湿性及び高耐熱性のいずれかに問題があり実用に供しない。
【0021】
【化4】

(ただし、一般式(II)中、Rは2〜4価の脂肪族炭化水素基又はオキシアルキレン基、Aはアクリロイル基又はメタクリロイル基、nはAの結合数で2〜4の整数を示す)
【0022】
本発明に用いる架橋性多官能モノマーとしては、インクジェット適性を損わないものであれば、特に限定されない。たとえば,エチレングリコールジアクリレート,ジエチレングリコールジアクリレート,トリエチレングリコールジアクリレート,テトラエチレングリコールジアクリレート,トリプロピレングリコールジアクリレート,1,3ブチレングリコールジアクリレート,1,4ブタンジオールジアクリレート,1,5ペンタジオールジアクリレート,1,6ヘキサンジオールジアクリレート,ネオペンチルグリコールジアクリレート,ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジアクリレート,オリゴエステルジアクリレート,ポリブタジエンジアクリレート等のジアクリレート,これらと同様のジメタクリレート,のような二官能性の架橋性モノマーあるいは,トリメチロールエタントリアクリレート,トリメチロールプロパントリアクリレート,ペンタエリストールトリアクリレート等のトリアクリレート,これらと同様のトリメタクリレート,のような三官能性の架橋性モノマーあるいはペンタエリストールテトラアクリレート,ペンタエリスリトールテトラメタクリレートのような四官能性の架橋性モノマーなどが挙げられる。また,比較的高分子量の主鎖を有するジアクリレート又はジメタクリレートも使用できる。
【0023】
これらのうち、特に好ましくは、1,4−ブタンジオールジアクリレート,1,6−ヘキサンジオールジアクリレート,ジエチレングリコールジアクリレート,トリエチレングリコールジアクリレート,トリメチロールプロパントリアクリレート等及びこれらと同様のジメタクリレート又はトリメタクリレートなどがある。
【0024】
本発明に用いられる他の共重合可能なビニル系モノマー(単量体)は,基本的にインクジェット印刷適性を損わないものであれば,特に限定されず,例えば,不飽和脂肪酸エステル,芳香族ビニル化合物,シアン化ビニル化合物,不飽和二塩基酸及びその誘導体,不飽和脂肪酸及びその誘導体などがある。
【0025】
上記不飽和脂肪酸エステルとしては,アクリル酸メチル,アクリル酸エチル,アクリル酸ブチル,アクリル酸2−エチルヘキシル,アクリル酸オクチル,アクリル酸ドデシル,アクリル酸オクタデシル等のアクリル酸アルキルエステル,アクリル酸シクロヘキシル,アクリル酸メチルシクロヘキシル,アクリル酸(イソ)ボルニル,アクリル酸アダマンチル等のアクリル酸シクロアルキルエステル,アクリル酸フェニル,アクリル酸ベンジル,アクリル酸ナフチル等のアクリル酸芳香族エステル,アクリル酸フルオロフェニル,アクリル酸クロロフェニル,アクリル酸ブロモフェニル,アクリル酸フルオロベンジル,アクリル酸クロロベンジル,アクリル酸ブロモベンジル等のアクリル酸置換芳香族エステル,アクリル酸フルオロメチル,アクリル酸フルオロエチル,アクリル酸クロロエチル,アクリル酸ブロモエチル等のアクリル酸ハロゲン化アルキルエステル,アクリル酸2−ヒドロキシエチル,アクリル酸ポリエチレングリコールエステル等のアクリル酸ヒドロキシアルキルエステル,アクリル酸グリシジル,アクリル酸アルキルアミノアルキルエステル,アクリル酸シアノアルキルエステルなどのアクリル酸エステル,メタクリル酸メチル,メタクリル酸エチル,メタクリル酸ブチル,メタクリル酸2−エチルヘキシル,メタクリル酸オクチル,メタクリル酸ドデシル,メタクリル酸オクタデシル等のメタクリル酸アルキルエステル,メタクリル酸シクロヘキシル,メタクリル酸メチルシクロヘキシル,メタクリル酸(イソ)ボルニル,メタクリル酸アダマンチル等のメタクリル酸シクロアルキルエステル,メタクリル酸フェニル,メタクリル酸ベンジル,メタクリル酸ナフチル等のメタクリル酸芳香族エステル,メタクリル酸フルオロフェニル,メタクリル酸クロロフェニル,メタクリル酸ブロモフェニル,メタクリル酸フルオロベンジル,メタクリル酸クロロベンジル,メタクリル酸ブロモベンジル等のメタクリル酸置換芳香族エステル,メタクリル酸フルオロメチル,メタクリル酸フルオロエチル,メタクリル酸クロロエチル、メタクリル酸ブロモエチル等のメタクリル酸ハロゲン化アルキルエステル,メタクリル酸ポリエチレングリコールエステル,メタクリル酸2−ヒドロキシエチル等のメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル,メタクリル酸グリシジル,メタクリル酸アルキルアミノアルキルエステル,メタクリル酸シアノアルキルエステルなどのメタクリル酸エステル,α−フルオロアクリル酸エステル,α−クロロアクリル酸エステル,α−シアノアクリル酸エステルなどのα−置換アクリル酸エステルなどがある。
【0026】
また、上記芳香族ビニル化合物としては,スチレン又はα−メチルスチレン,α−エチルスチレン,α−フルオロスチレン,α−クロルスチレン等のα−置換スチレン,フルオロスチレン,クロルスチレン,ブロモスチレン,メチルスチレン,ブチルスチレン,メトキシスチレン等の核置換スチレンがある。シアン化ビニル化合物としてはアクリロニトリル,メタクリロニトリル等がある。
【0027】
また、上記不飽和二塩基酸及びその誘導体としては,N−メチルマレイミド,N−エチルマレイミド,N−プロピルマレイミド,N−ブチルマレイミド,N−シクロヘキシルマレイミド,N−フェニルマレイミド,N−メチルフェニルマレイミド,N−クロロフェニルマレイミド,N−メトキシフェニルマレイミド,N−カルボキシフェニルマレイミド等のN−置換マレイミド,マレイン酸,無水マレイン酸,フマル酸等がある。
【0028】
また、上記不飽和脂肪酸及びその誘導体としては,アクリルアミド,メタクリルアミド,N−ジメチルアクリルアミド,N−ジエチルアクリルアミド,N−ジメチルメタクリルアミド,N−ジエチルメタクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類,アクリル酸カルシウム,メタクリル酸カルシウム,アクリル酸バリウム,メタクリル酸バリウム,アクリル酸鉛,メタクリル酸鉛,アクリル酸すず,メタクリル酸すず,アクリル酸亜鉛,メタクリル酸亜鉛などの(メタ)アクリル酸金属塩,アクリル酸,メタクリル酸などがある。
【0029】
本発明における(b)活性エネルギー線の照射により遊離ラジカルを生成する重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、N,N′−テトラメチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N′−テトラエチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4′−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン(イルガキュア−369、チバスペシャリティーケミカルズ(株)商品名)、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン(イルガキュア−907、チバスペシャリティーケミカルズ(株)商品名)等の芳香族ケトン、2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ベンズアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントラキノン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルアントラキノン等のキノン類、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物、ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9′−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体、N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシン誘導体、クマリン系化合物などが挙げられる。
【0030】
また、2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体において、2つの2,4,5−トリアリールイミダゾールに置換した置換基は同一でも相違していてもよい。また、ジエチルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸の組み合わせのように、チオキサントン系化合物と3級アミン化合物とを組み合わせてもよい。また、フォトリソグラフィ工程における密着性及び感度の観点から、2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体が好ましく、液晶スペーサとした場合の可視光線透過率の観点から2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オンがより好ましい。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0031】
本発明における(b)活性エネルギー線の照射により遊離ラジカルを生成する重合開始剤の使用量は、全固形分に対して、0.05〜20重量部とすることが好ましく、0.1〜15重量部とすることがより好ましく、0.15〜10重量部とすることが特に好ましい。この使用量が0.05重量部未満では、光硬化が不十分となる傾向があり、20重量部を超えると、後述する(II)インクジェット法で、所定の位置及び形状に形成した表示装置ギャップ形成用感エネルギー性ネガ型樹脂組成物に活性エネルギー線を照射する工程において、感エネルギー性ネガ型樹脂組成物の活性エネルギー線照射表面での活性エネルギー線の吸収が増大して、内部の硬化が不十分となる傾向がある。
【0032】
また、本発明の感エネルギー性ネガ型樹脂組成物には、着色目的あるいはインクジェット印刷適性の向上を目的に必要に応じて、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナまたは、酸化ケイ素からなる無機フィラーおよびカーボンを組成物の総量100重量部に対して各々0.01〜50重量部程度含有することができる。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0033】
また、本発明の感エネルギー性ネガ型樹脂組成物には、必要に応じて、希釈溶剤、シランカップリング剤などの密着性付与剤、レベリング剤、可塑剤、充填剤、消泡剤、難燃剤、安定剤、酸化防止剤、香料、熱架橋剤、重合禁止剤等を組成物の総量100重量部に対して各々0.01〜50重量部程度含有することができる。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0034】
また、本発明における感エネルギー性ネガ型樹脂組成物の粘度は、特に限定されないが、インクジェット印刷適性とスペーサとしての間隙幅を1〜10μm得るために、22℃において、1×10−3〜100×10−3Pa・secであることが好ましく、2×10−3〜90×10−3Pa・secであることがより好ましく、3×10−3〜80×10−3Pa・secであることが特に好ましい。
【0035】
また、本発明における感エネルギー性ネガ型樹脂組成物の基板上の接触角は、特に限定されないが、インクジェット印刷適性とスペーサとしての間隙幅を1〜10μm得るために、22℃において、20〜90度であることが好ましい。
【0036】
以下、本発明の表示装置ギャップ形成感エネルギー性樹脂組成物を用いて、液晶表示装置におけるスペーサの形成方法の一例を説明する。
〔(I)基板上に、インクジェット法で所定の位置及び形状に感エネルギー性ネガ型樹脂組成物を形成する工程〕
本発明で使用される基板は、特に制限はなく、例えば、セラミック板、プラスチック板、ガラス板等が挙げられる。この基板上には、絶縁層、ブラックマトリックスの層、カラーフィルターの層、ITO等の電極、TFT等が設けられていてもよい。
【0037】
次にインクジェット法により基板上の所定の位置に塗工する。インクジェット装置としては、インクの吐出方法の相違によりピエゾ変換方式と熱変換方式があり、特にピエゾ変換方式が好ましい。インクの粒子化周波数は5〜100KHz程度、ノズル径としては1μm〜80μm程度、1ヘッドにノズルを1〜1,000個組み込んだ装置が好適である。
【0038】
所定の位置としては、特に制限はないが、好ましくは表示したときに目に入らない位置であるブラックマトリクスの上に重なる位置、あるいは外周部、あるいは画素電極に重ならない位置が、表示素子の表示品質を下げない点で好ましい。これにより、スペーサにまつわる漏光を抑制できる。配置間隔は、ブラックマトリクスの上に重なる位置とした場合、ブラックマトリクスの配置間隔の整数倍となることは、おのずと定まる。
【0039】
スペーサの形状としては、特に制限は無いが、円柱や円錐形状が、インクジェット印刷による製造が容易である点で好ましい。円柱や円錐は、断面形状としては図2(a)〜(d)に示したように、面取りされた丸まった形状が製造上容易である。円柱や円錐の底面の直径としては、特に制限はないが2〜50μmが好ましい。2μm未満だと、アスペクト比のために柱が倒れて、所定のギャップを提供できなくなる場合がある。50μmを超えると目に入る表示エリアにスペーサの占める面が増え、表示素子の表示品質を劣化させる場合がある。円柱や円錐の高さは、表示素子の要求に従い、適宜調整する。一般に、液晶表示装置用途の場合、用途や方式によって異なるものの、2〜10μmである。
【0040】
基板上へインクジェット法により塗工する前に、予めインクの受容性やぬれ性を調整するために塗工液の樹脂、溶剤などと合わせた下ぬり層を設けてもよい。下ぬり層としてはポリイミド樹脂、PVA誘導体樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂組成物などを用いることができる。
【0041】
〔(II)感エネルギー性ネガ型樹脂組成物に活性エネルギー線を照射する工程〕
本発明において、インクジェット法により塗工して形成した感エネルギー性ネガ型樹脂組成物に活性エネルギー線を照射する方法としては、基板上に積層された前記感エネルギー性ネガ型樹脂組成物に、公知の活性エネルギー線を照射する方法等が挙げられる。
また、本発明における活性エネルギー線としては、公知の活性エネルギー源が使用でき、生産工程を簡便にする観点で、紫外線を有効に放射するものが好ましいが、特に制限されない。例えば、カーボンアーク灯、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ等が挙げられる。
【0042】
〔(III)パターンを形成した感エネルギー性樹脂組成物層を加熱する工程〕
本発明において、図2(a)〜(d)に示したようにスペーサをインクジェット法で、所定の位置及び形状に形成し、活性エネルギー線を照射し、表示素子基板にギャップ形成用スペーサを像的に形成した感エネルギー性ネガ型樹脂組成物を加熱することが好ましい。加熱する方法としては、熱風放射、赤外線照射加熱等の公知の方法が挙げられ、基板上にパターンが形成された感エネルギー性ネガ型樹脂組成物が有効に加熱される方法であれば特に制限されない。
加熱時の温度は、100〜180℃とすることが好ましく、100〜150℃とすることがより好ましく、100〜130℃とすることが特に好ましい。この加熱温度が、100℃未満では、熱硬化の効果が不十分となる場合があり、180℃を超えると、感エネルギー性ネガ型樹脂組成物の構成成分が熱分解する傾向がある。
【0043】
以上に挙げた方法により、液晶表示装置に好適な液晶スペーサを形成することができる。また、本発明における表示装置ギャップ形成用感エネルギー性ネガ型樹脂組成物及びそれを用いた表示素子基板にスペーサを形成する方法は、液晶表示装置の用途に限定されるものではなく、例えば、電気泳動ディスプレイや電子ペーパー等、対向する基板間に流動性を有する物質の層を構成してなる表示装置等のスペーサ用途にも好適に使用することができる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0045】
実施例1〜14及び比較例1〜4
表1に示した配合の混合液に活性エネルギー線の照射により遊離ラジカルを生成する重合開始剤(ラジカル重合開始剤)として、ラウロイルパーオキサイド0.5重量部を加え、さらに1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン0.2重量部を加えて充分撹拌した。
基板に表1の感エネルギー性ネガ型樹脂組成物とピエゾ変換方式のインクジェット印刷機および超高圧水銀灯露光機を用いて、30μm径のドットパターンの印刷と500mJ/cmの露光を行った。なお、表1中、TCD−MAは(a1)トリシクロ(5,2,1,02,6)デカ−8−イルメタタリレート(メタクリル酸トリシクロ〔5.2.1.02,6〕デカ−8−イル)、1.6HDDAは、(a2)の架橋性多官能モノマーである1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、STはスチレン、MMAはメタクリル酸メチルを示し、これらはa3)他の共重合可能なビニル系モノマーである。
表2に印刷適正、スペーサ形状、総合評価の結果をまとめて示した。実施例1〜14は、良好なスペーサとしての形状を備えていることが電子顕微鏡により確認できた。一方比較例1は、印刷パターンの再現性が低かった。比較例2〜4は、スペーサの形状不良があった。(a1)のトリシクロ(5,2,1,02,6)デカ−8−イルメタタリレート30〜80重量%、(a2)の架橋性多官能モノマー2〜20重量%、(a3)他の共重合可能なビニル系モノマー0〜68重量%を全体が100重量%になるように配合した組成物である実施例1〜14は、印刷適正、スペーサ形状、総合評価が良好である。一方、上記の(a1)、(a2)、(a3)の組成比を外れる比較例1〜4は、上記のように、印刷パターンの再現性が低かったり、スペーサ形状の不良が見られる。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
実施例15〜24
次に、各実施例1〜9のサンプルを熱風循環オーブンで加熱し、表3に示した加熱温度と時間を変化させた実施例を実施例15〜24とし、それぞれのスペーサ形状と総合評価の結果をまとめて示した。実施例15〜24は、良好なスペーサとしての形状を備えていることが電子顕微鏡により確認できた。一方参考例1は、スペーサの形状不良があった。加熱温度は、10分間の加熱の場合、100〜180℃とすることが好ましい。
【0049】
なお、本発明において、印刷適正は、形状の再現性、直径の大きさを評価し、良好なものを○で、印刷適正が不良なものを×として評価した。
スペーサ形状は、電子顕微鏡を用いて、スペーサの高さと直径を測定した。
総合評価は、印刷適正とスペーサ形状を総合的に評価し、何れも良好なものを○、評価の悪いものを×と共に悪い評価を示した。
【0050】
【表3】

【0051】
以上で示したように、本発明では、表示装置のコントラスト低下を防ぎ、面内に均一なセルギャップを得られ、かつ生産時でもスペーサビーズと同等のセルギャップ安定性を保障し、塑性変形に起因する表示ムラの抑制と硬度保持を両立でき、表示ムラのない良好な表示品質でかつ歩留まりのよい液晶表示装置の製造が可能な表示装置ギャップ形成用感エネルギー性ネガ型樹脂組成物を提供できると共に、それを用いてスペーサを歩留まり良く、安価に、作業性よく製造でき、優れた表示素子基板スペーサを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明を説明する液晶表示装置の一例。
【図2】(a)〜(d)は、本発明に関するスペーサの形状を説明する断面形状。
【符号の説明】
【0053】
3 ガラス基板
10 カラーフィルタ
11 ブラックマトリクス
12 透明電極
13 平坦化膜
14 配向膜
15 液晶層
16 スペーサ
17 位相差フィルム
18 偏向板
19 反射膜
20 反射下地層




【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a1)下記一般式(I)で表されるトリシクロ(5,2,1,02,6)デカ−8−イルメタタリレート30〜80重量%と、(a2)下記一般式(II)で表される架橋性多官能モノマー2〜20重量%と、(a3)他の共重合可能なビニル系モノマー0〜68重量%を全体が100重量%になるように配合した成分、(b)活性エネルギー線の照射により遊離ラジカルを生成する重合開始剤を含有してなる表示装置ギャップ形成用感エネルギー性ネガ型樹脂組成物。
【化1】

【化2】

(ただし、一般式(II)中、Rは2〜4価の脂肪族炭化水素基又はオキシアルキレン基、Aはアクリロイル基又はメタクリロイル基、nはAの結合数で2〜4の整数を示す)
【請求項2】
(I)表示素子の基板上に、請求項1に記載の表示装置ギャップ形成用感エネルギー性ネガ型樹脂組成物を、インクジェット法で、所定の位置及び形状に形成する工程、(II)活性エネルギー線を照射し、表示素子基板にギャップ形成用スペーサーを像的に形成する工程、を含むことを特徴とする表示素子基板にスペーサを形成する方法。
【請求項3】
更に、(III)パターンを形成した感エネルギー性ネガ型樹脂組成物を加熱する工程を有する請求項2に記載の表示素子基板にスペーサを形成する方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−284738(P2006−284738A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−102241(P2005−102241)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】