説明

表示装置及びミシン

【課題】刺繍枠との位置合わせを行う装着機構部を備えることにより、加工布と縫製される刺繍模様との位置合わせが容易且つ正確な表示装置及びミシンを提供する。
【解決手段】表示装置23は、表示器41と、刺繍枠20が装着される装着機構部24とを備える。加工布を保持する刺繍枠20は、刺繍模様を縫製するための縫製可能領域A2を有する。表示装置23は、少なくとも縫製の対象となる刺繍模様を表示する表示領域A1を有する。装着機構部24には、表示器41の表示領域A1の少なくとも一部が縫製可能領域A2と重なるように刺繍枠20が着脱可能に装着される。表示器41は、裏面側が透視可能な電子ペーパを有しているので、表示領域A1の下方に位置する刺繍枠20に保持された加工布を透視しながら、刺繍模様と加工布とを位置合わせすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置及びミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、刺繍縫製可能なミシンは、例えば刺繍枠を所定の二方向へ移送する刺繍枠移送装置を備えている。このようなミシンの場合、刺繍模様等の種々の刺繍データに基づいて刺繍枠移送装置の駆動を制御することにより、刺繍枠に保持された加工布へ刺繍縫製を行っている。この種のミシンの場合、刺繍枠に保持した加工布における刺繍模様の位置は、刺繍を開始する始点に依存する。そのため、始点の位置が適正に設定されない場合、刺繍枠の内側に設定された刺繍縫製可能領域や所望の位置に刺繍縫製ができないおそれがある。
【0003】
そこで、特許文献1は、刺繍を開始する始点及び模様の配置の設定を行うための刺繍模様輪郭シートを開示している。特許文献1に開示されている刺繍模様輪郭シートは、原寸大の刺繍模様、刺繍模様の縫製時の始点を示す位置指標、及び基準線が予め印刷されたトレーシングペーパで構成されている。ユーザは、例えばチャコペーパなどを利用してこれらの刺繍模様、位置指標及び基準線を加工布に転写した後、基準線にあわせて加工布を刺繍枠に設置するとともに、位置指標に縫針をあわせて縫製を開始する。これにより、刺繍模様は、設定された刺繍縫製可能領域の所望の位置に形成される。しかしながら、特許文献1の場合、刺繍模様の種類が多くなる程、それに応じて多数の刺繍模様輪郭シートが必要となり、取り扱いが煩雑になるという問題がある。
【0004】
一方、刺繍模様輪郭シートにおける上記の問題点を解決することを目的として、特許文献2は、刺繍模様を表示する電子ペーパを利用したミシン用テンプレートを開示している。特許文献2で用いられている電子ペーパは、通電されなくても表示領域に表示された内容を保持する。そのため、特許文献2の場合、電子ペーパを利用したテンプレートには予め設定されている複数の刺繍模様から選択された一つ以上の所望の刺繍模様が表示される。ユーザは、テンプレートに表示された刺繍模様と加工布とを重ねることにより、縫製後の刺繍模様の位置及び形状を視覚的に確認可能である。これにより、特許文献2の場合、1枚のテンプレートで複数種類の刺繍模様を選択的に表示できるので、取り扱いを容易にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公昭61−13589号公報
【特許文献2】特開2007−252525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、電子ペーパを用いる特許文献2の場合、テンプレートと刺繍枠との位置合わせについては考慮されていない。そのため、ユーザは、加工布の所望の位置に刺繍模様が形成されるように、テンプレートに表示された刺繍模様と刺繍枠に取り付けた加工布との位置関係を確認しなければならないという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、刺繍枠との位置合わせを行う装着機構部を備えることにより、加工布と縫製される刺繍模様との位置合わせが容易且つ正確な表示装置及びミシンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、加工布を保持する刺繍枠が着脱可能に装着される表示装置であって、少なくとも縫製の対象となる縫製対象刺繍模様を含む刺繍縫製情報を表示可能な表示領域を有し、前記表示領域の裏側を透視可能な表示器と、前記表示領域と、前記刺繍枠に設定され前記刺繍枠に保持された前記加工布に刺繍模様を縫製するための縫製可能領域と、の少なくとも一部が重なる位置に、前記刺繍枠を着脱可能に装着する装着機構部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、刺繍縫製を開始する前に装着機構部に刺繍枠を装着することにより、刺繍枠に保持された加工布と表示器に表示された刺繍模様とは位置が合わせられる。このとき、表示器は、実際に縫製が施される刺繍枠の縫製可能領域に刺繍模様を重ねて表示する。また、この表示器は、表示領域の裏側が透視可能である。そのため、表示器を装着したとき、刺繍枠の縫製可能領域に保持された加工布に対する刺繍模様の大きさ、縫い位置及び縫い上がりのイメージ等が視覚的に把握される。従って、加工布と縫製される刺繍模様との位置合わせを容易且つ正確に行うことができる。
【0010】
請求項2記載の表示装置は、請求項1記載の表示装置において、前記装着機構部に装着された前記刺繍枠の種類を検知する枠種検出器と、前記枠種検出器で検出した前記刺繍枠の種類に基づいて前記表示器を制御して、前記刺繍模様縫製可能領域と重なる前記表示領域に前記縫製対象刺繍模様を表示する制御器と、をさらに備えることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の表示装置は、請求項1又は2記載の表示装置において、縫製の対象となる複数の刺繍模様を刺繍模様データとして記憶している刺繍模様記憶手段と、前記刺繍模様記憶手段に記憶されている前記刺繍模様データから所望の刺繍模様を選択する刺繍模様選択手段と、少なくとも前記刺繍模様選択手段で選択された刺繍模様の位置を変更する操作を含む刺繍模様の編集を行う刺繍模様編集手段と、前記刺繍模様編集手段による刺繍模様の編集を入力する操作入力手段と、をさらに備えることを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の表示装置は、請求項1から3のいずれか一項記載の表示装置において、外部と通信するための通信手段をさらに備えることを特徴とする。
請求項5記載の表示装置は、請求項1から4のいずれか一項記載の表示装置において、前記装着機構部は、前記表示器に設けられている係合部と、前記刺繍枠に設けられ前記係合部と着脱可能に係合する被係合部と、を有することを特徴とする。
請求項6記載のミシンは、請求項1から5のいずれか一項記載の表示装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の表示装置によれば、刺繍縫製を開始する前に装着機構部に刺繍枠を装着することにより、刺繍枠に保持された加工布と表示器に表示された刺繍模様とは位置が合わせられる。このとき、表示器は、実際に縫製が施される刺繍枠の縫製可能領域に刺繍模様を重ねて表示する。また、この表示器は、表示領域の裏側が透視可能である。そのため、表示器を装着したとき、刺繍枠の縫製可能領域に保持された加工布に対する刺繍模様の大きさ、縫い位置及び縫い上がりのイメージ等が視覚的に把握される。従って、加工布と縫製される刺繍模様との位置合わせを容易且つ正確に行うことができる。
【0014】
請求項2記載の表示装置によれば、請求項1記載の効果に加え、枠種検知器で装着された刺繍枠の種類を検知するので、例えば刺繍枠の大きさ等の刺繍枠の種類に応じて縫製対象刺繍模様を表示することができる。
請求項3記載の表示装置によれば、請求項1又は2記載の効果に加え、表示器の表示領域に表示された刺繍模様を選択して編集操作を行うことができる。
【0015】
請求項4記載の表示装置によれば、請求項1から3のいずれか一項記載の効果に加え、通信手段を備えているので、表示領域に表示された刺繍模様は通信手段を経由して外部に出力される。そのため、例えばミシンなどの外部の装置は、出力された刺繍模様に基づいて縫製を行うことができる。
請求項5記載の表示装置によれば、請求項1から4のいずれか一項記載の効果に加え、係合部と被係合部との係合により、表示器と刺繍枠本体との位置合わせを行うことができると共に、構成を簡単にすることができる。
請求項6記載のミシンによれば、請求項1から5のいずれか一項記載の表示装置を備えているので、請求項1から5のいずれか一項記載の効果に加え、表示器に表示された刺繍模様に基づいて刺繍模様を正確に縫製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態による表示装置及びミシンを示す概略斜視図
【図2】刺繍枠の概略を示す平面図
【図3】刺繍枠が装着された表示装置の概略を示す平面図
【図4】刺繍枠が装着された表示装置の概略を示す正面図
【図5】表示装置と刺繍枠との構成を模式的に示す斜視図
【図6】表示器及び保持ユニット部の概略を示す平面図
【図7】保持ユニット部への刺繍枠の装着過程の概略を示す部分断面図
【図8】第1実施形態による表示装置及びミシンの電気的構成を示すブロック図
【図9】ROMのメモリマップを示す模式図
【図10】刺繍枠が装着された表示装置の構成を模式的に示す斜視図
【図11】RAMのメモリマップを示す模式図
【図12】模様情報のデータ構成を示す模式図
【図13】第1実施形態による表示装置のメインルーチンの処理の流れを示す図
【図14】第1実施形態による表示装置の枠データ取得処理の流れを示す図
【図15】第1実施形態による表示装置の表示処理の流れを示す図
【図16】メインメニューが表示された表示器を示す模式図
【図17】模様一覧及び模様選択メニューが表示された表示器を示す模式図
【図18】模様配置メニューが表示された表示器を示す模式図
【図19】(A)は表示模様、(B)は表示模様を囲む選択枠、(C)は表示模様を囲む拡縮ハンドルを含む選択枠、(D)は表示模様を囲む回転ハンドルを含む選択枠を示す模式図
【図20】通信メニューが表示された表示器を示す模式図
【図21】第1実施形態によるマウスポインタ表示処理の流れを示す図
【図22】第1実施形態によるメインメニュー処理の流れを示す図
【図23】第1実施形態の変形例によるメインメニュー処理の流れを示す図
【図24】第1実施形態による模様選択処理の流れを示す図
【図25】第1実施形態による模様選択処理の流れを示す図
【図26】第1実施形態による模様配置処理の流れを示す図
【図27】第1実施形態による模様配置処理の流れを示す図
【図28】第1実施形態による模様配置処理の流れを示す図
【図29】第1実施形態による通信処理の流れを示す図
【図30】第2実施形態による表示装置及びミシンの処理の流れを示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の表示装置及びこれを適用したミシンの複数の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0018】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による表示装置及びこれを適用したミシンを図1に示す。本明細書中では、例えば図1の矢印で示すようにユーザが位置する側を前方として説明する。
ミシン10は、ベッド部11、脚柱部12、アーム部13及び頭部14を一体に備えている。ベッド部11は、ミシン10の下端に位置している。脚柱部12は、ベッド部11の右端部から上方へ立ち上がっている。アーム部13は、脚柱部12の上端からベッド部11と概ね平行に左方へ延びている。頭部14は、アーム部13の左端に設けられている。図示しないミシン主軸は、アーム部13の内側に左右方向へ延びて設けられている。また、ミシン主軸を回転駆動する図示しないミシンモータも、アーム部13の内側に設けられている。
【0019】
頭部14には、下端に縫針15を装着した針棒が設けられている。この縫針15の近傍には、刺繍縫製時に加工布を上方から押えるための布押さえ16が設けられている。また、アーム部13は、内部に、ミシン主軸の回転に応じて針棒を上下へ駆動する図示しない針駆動機構、針棒を布送り方向と直交する左右方向へ揺動させる図示しない針棒揺動機構、及び図示しない天秤を針棒の上下移動に同期して上下へ駆動する図示しない天秤駆動機構等を収容している。
【0020】
ベッド部11は、アーム部13と対向する上面に針板17を有している。ベッド部11は、内部に、針板17の下側に位置し送り歯を上下及び前後へ駆動する図示しない布送り機構、図示しない下糸ボビンを収容し縫針15と協働して縫目を形成する図示しない水平回転釜、並びに上糸及び下糸を切断する図示しない糸切り機構等を収容している。
【0021】
アーム部13は、前面に種々の操作スイッチ類18を有している。また、脚柱部12は、前面に大型でカラー表示可能な液晶ディスプレイ19を有している。この液晶ディスプレイ19は、複数の刺繍模様や縫目模様を含む種々の縫製模様、縫製作業に必要な各種の機能を実行させる機能名、及び各種の縫製関連情報等を表示する。また、液晶ディスプレイ19は、前面が透明電極からなる複数のタッチキーを有するタッチパネルで構成されている。このタッチキーが操作されることにより、縫製に供される刺繍模様の選択、各種機能の指示、及び送り量や針振り量等の各種の縫製パラメータの値の設定が可能である。
【0022】
ベッド部11は、左端側に刺繍枠20を移送する刺繍枠移送装置21が取り外し可能に装着されている。刺繍枠移送装置21は、刺繍枠20をベッド部11の上側において所定の二方向へ移送する。この刺繍枠移送装置21は、キャリッジ22、図示しないX方向移送機構及びY方向移送機構を備えている。キャリッジ22は、刺繍枠20を着脱可能に支持する。X方向移送機構及びY方向移送機構は、それぞれ図示しないステッピングモータを有しており、刺繍枠20を支持するキャリッジ22をX方向及びY方向へ駆動する。ミシン10の縫製モードは、刺繍枠移送装置21をベッド部11へ装着することにより、通常縫製モードから刺繍縫製モードへ切り替わる。選択された刺繍模様に基づいてステッピングモータがそれぞれ独立して駆動されることにより、キャリッジ22に装着された刺繍枠20は左右方向であるX方向及び前後方向であるY方向へ駆動される。
【0023】
次に、刺繍枠20の構成について、図2から図7に基づいて説明する。
刺繍枠20は、上面側に表示装置23を装着可能である。表示装置23は、装着機構部24を介して刺繍枠20と接続される。刺繍枠20は、被係合部32を備えている。刺繍枠20は、図2(A)及び図2(B)に示すように、大きさや形状が異なる複数種類が用意されている。なお、図2(A)及び図2(B)の刺繍枠20は、同一の構成部位に同一の符号を付している。
【0024】
刺繍枠20は、外枠33及び内枠34を有し、全体として概ね矩形の枠状に形成され、図3から図5に示すように加工布35を保持する。被係合部32は、図2に示すように連結部36を介して刺繍枠20の外枠33と接続している。連結部36は、図4に示すように上端側に表示装置23を刺繍枠20に対し平行な水平に支持する。刺繍枠20に取り付けられる加工布35は、締め付け機構部37により保持力が調整されると共に、締め付け機構部37により取り付け又は取り外しが行われる。締め付け機構部37は、図2(A)に示すような大型の刺繍枠20の場合、両端部に一対設けられ、図2(B)に示すような小型の刺繍枠20の場合、いずれか一方の端部に一つ設けられる。被係合部32は、図2に示すように刺繍枠20の左端側に設けられ、単数又は複数の凹凸で構成される被検知部38を有している。この被検知部38は、大きさや形状の異なる刺繍枠20ごとに、各刺繍枠20に固有のパターンの凸部又は凹部を有している。
【0025】
表示装置23は、表示器41及び表示器用枠部材42を有している。表示器41は、図1に示すように少なくとも刺繍模様43を含む刺繍縫製に関する情報を表示可能であると共に、裏側即ち刺繍枠20側を透視可能な透明又は半透明である。表示器用枠部材42は、内周側に表示器41を保持している。また、表示装置23は、表示器用枠部材42と一体に保持ユニット部44を備えている。表示器41を保持する表示器用枠部材42は、図6に示すように左端側が保持ユニット部44に着脱可能に接続している。表示器用枠部材42と保持ユニット部44との接続に伴い、詳しくは図示しないが、後述する電子ペーパ41と保持ユニット44が電気的にも接続される。表示装置23は、保持ユニット部44に係合部45を有している。係合部45は、刺繍枠20の被係合部32側に開口部46を有している。刺繍枠20が装着された表示装置23は、保持ユニット部44を介して刺繍枠移送装置21のキャリッジ22に接続される。
【0026】
ここで、表示器41について簡単に説明する。表示器41は、いわゆる電子ペーパを有している。電子ペーパは、柔軟性に優れた薄いシート状に形成され、例えば白及び黒の二色の表示が可能な周知のマイクロカプセル電気泳動方式で構成されている。電子ペーパは、表示層及び透明ドライバ層を有している。表示層は、例えば400dpiの密度で多数のマイクロカプセルが縦方向及び横方向へマトリクス状に配列されている。透明ドライバ層は、表示層の裏側に設けられ、マイクロカプセルを電気的に制御する透明電極で構成されている。これら表示層及び透明ドライバ層は、二枚の透明プラスチックシートで挟まれている。マイクロカプセルは、内部に黒色の絶縁性液体、及び例えば酸化チタン微粒子等の白色で正に帯電した帯電微粒子が封入されている。ドライバ層は、走査線、データ線、アクティブ素子及び微少電極を有する。走査線は、微細且つ多数の配線であり、マイクロカプセルの「行」即ちX方向に対応して配置されている。データ線は、走査線と同様に微細且つ多数の配線であり、マイクロカプセルの「列」即ちY方向に対応して配置されている。アクティブ素子は、走査線とデータ線とが交差する位置にそれぞれ配置されている。微少電極は、各マイクロカプセルに対応して配置されている。
【0027】
各アクティブ素子は、ドライバ層において、各走査線に対し微少時間おきに順に「H」レベル信号を供給し、各データ線に対し微少時間おきに走査線の信号供給に対応するタイミングで「H」又は「L」レベル信号を供給することにより、各交差点において選択的にオンされる。アクティブ素子がオンのとき、各マイクロカプセル即ち各交差点に対応する微少電極が瞬間的に「H」レベルになり、マイクロカプセルの「正」帯電側が表面側に反転して、表示層に白色のドットを表示する。アクティブ素子がオフのマイクロカプセルは、これに対応する微小電極が「L」レベルを維持して「正」帯電側を引き付けるため、表示層に黒色のドットを表示する。このように電子ペーパは、LCDと概ね同一のアクティブマトリクス方式で駆動及び制御される。そのため、電子ペーパは、例えば400dpiの解像度で図形及び文字等を表示可能であると共に、電源がオフされている状態でも電源がオフされる前の表示を継続する。また、本実施形態の場合、電子ペーパは、表示層において黒色の絶縁性液体及び耐電微粒子が封入されているマイクロカプセルと、いずれも封入されていない透明なマイクロカプセルとが所定間隔でマトリクス状に配置されている。その結果、電子ペーパは、光透過性を有する透明又は半透明に構成されている。
【0028】
表示装置23には、図5に示すように装着機構部24を利用して刺繍枠20が着脱可能に装着される。表示装置23の保持ユニット部44に設けられている係合部45は、刺繍枠20の被係合部32側に開口部46を有している。刺繍枠20の被係合部32は、図7に示すように開口部46を有する保持ユニット部44の係合部45に挿入される。装着機構部24は、ロック機構部51を有している。ロック機構部51は、ロックすることにより係合部45と被係合部32との係合を保持し、ロックを解除することにより刺繍枠20が取り外し可能となる。ロック機構部51はレバー52を有し、図7(A)及び図7(B)に示すようにレバー52を直立する側へ回転させることにより係合部45と被係合部32とのロックが解除され、刺繍枠20の取り外しが可能となる。一方、係合部45へ被係合部32を挿入した後、図7(C)に示すようにレバー52を倒すことにより、係合部45と被係合部32とはロックされ、刺繍枠20の取り外しは不能となる。このように、表示装置23の保持ユニット部44に設けられている係合部45は、刺繍枠20の被係合部32と共に装着機構部24を構成している。
【0029】
表示装置23は、図7に示すように保持ユニット部44の係合部45に、装着された刺繍枠20の種類を検出するための枠種検出器としての枠種検知スイッチ53を備えている。枠種検知スイッチ53は、刺繍枠20の被検知部38に対応して係合部45の前後方向へ複数配置されている。枠種検知スイッチ53は、刺繍枠20の被検知部38の凸部又は凹部との接触によって、それぞれ押圧又は押圧が解除される。これにより、枠種検知スイッチ53は、各スイッチの押圧又は押圧の解除の状態から装着された刺繍枠20に応じた検知信号を出力する。
【0030】
表示装置23は、表示器41が装着されているか否かを検出する検出器54を備えている。検出器54は、装着機構部24の係合部45に設けられている。検出器54は、例えば表示器用枠部材42に設けられている永久磁石55が近接又は離間することにより、接点が開閉する。これにより、検出器54は、接点の開閉によって表示器41が装着されているか否かを検出する。
【0031】
表示器41は、図3及び図5に示すように表示領域A1を有している。一方、刺繍枠20は、刺繍枠20の内側、特に内枠34の内側に刺繍縫製が可能な縫製可能領域A2を有している。表示装置23の係合部45と刺繍枠20の被係合部32とから構成される装着機構部24により、刺繍枠20と表示装置23とは所定の位置で一体に取り付けられる。これにより、表示装置23は、表示領域A1が刺繍枠20の縫製可能領域A2の少なくとも一部に重なる位置に装着される。
【0032】
保持ユニット部44は、図1及び図5に示すようにマウス61及び通信ケーブル62が接続されている。マウス61は、ポインティングデバイスを構成しており、表示装置23の表示領域A1に表示される模様の位置の変更を含む編集操作を入力するための操作入力手段を構成する。通信ケーブル62は、表示装置23とミシン10とをデータ通信可能に接続する通信手段を構成している。通信手段は、USBやLANなどを利用した有線通信、或はBluetoothや赤外線を利用した無線通信を採用してもよい。また、通信手段に代えて、EPPROMなどの不揮発性メモリカードなどを利用して刺繍枠20とミシン10との間でデータをやりとりする構成を採用してもよい。
【0033】
次に、上記の構成によるミシン10及び表示装置23の電気的な構成について図8に基づいて説明する。表示装置23は、制御器70を備えている。制御器70は、CPU71、ROM72、RAM73、入力インターフェイス74、出力インターフェイス75、通信用インターフェイス76及びこれらを接続するバス77を有するマイクロコンピュータを主体として構成されている。入力インターフェイス74には、マウス61、枠種検知スイッチ53及び検出器54等が接続している。出力インターフェイス75には、表示器41が接続している。通信用インターフェイス76には、通信ケーブル62を経由してミシン10が接続されている。ミシン10は、制御部81を備えている。制御部81は、操作スイッチ類18、液晶ディスプレイ19及び縫製機構部82と接続している。縫製機構部82は、図示しない駆動モータなど縫製を実行する機構を有している。なお、通信用インターフェイス76は、通信ケーブル62と共に通信手段を構成している。
【0034】
制御器70のROM72は、模様データ、枠データ、縫製模様選択プログラム、刺繍模様配置制御プログラム及び電子ペーパ表示制御プログラム等を予め記憶している。模様データは、複数の縫目模様や複数の刺繍模様に対応する運針データ及び模様形状データから構成されている。枠データは、刺繍枠20の種類に対応する縫製可能領域A2の位置や大きさ等のデータを含んでいる。電子ペーパ表示制御プログラムは、表示器41に縫目模様や刺繍模様等を表示させるためのプログラムである。RAM73は、一時的にデータを作業領域内の空き領域に記憶する一般的な構成である。このように、ROM72及びRAM73は、特許請求の範囲の刺繍模様記憶手段を構成している。
【0035】
制御器70は、これら模様データや表示制御プログラム等に従って、表示器41の走査線やデータ線に駆動制御信号を供給することで表示器41による画像の表示を制御する。また、制御器70は、枠種検知スイッチ53からの検知信号に基づいて、表示器41の表示領域A1に、刺繍模様43等の刺繍縫製に関する情報を刺繍枠20の縫製可能領域A2に対応させて表示する。この制御器70は、後述するように刺繍模様を選択する刺繍模様選択手段、及び選択された刺繍模様の位置を変更する操作を含む刺繍模様の編集を行う刺繍模様編集手段を構成している。また、制御器70は、マウス61と共に操作入力手段も構成している。
【0036】
次に、上記の構成による表示装置23の処理について説明する。
(データ構成)
まず、ROM72及びRAM73におけるデータ構成即ちメモリマップの概略について図9に基づいて説明する。ROM72に記憶されているデータのメモリマップ101は、制御プログラム102、内蔵刺繍の模様データ103、枠種類別の枠データ104及びGUIデータ105等から構成されている。制御プログラム102は、上述のように表示装置23を制御するためのプログラムである。内蔵刺繍の模様データ103は、形状データ及び運針データがIDと共に複数設定されている。ここで、形状データは、例えばビットマップなど表示装置23の表示領域A1に刺繍模様43を表示するための画像データである。一方、運針データは、その刺繍模様43を縫製する際にミシン10における縫針15の移動を設定したデータである。
【0037】
枠種類別の枠データ104は、刺繍枠20即ち縫製可能領域A2の大きさ、及び縫製可能領域A2の原点位置のオフセット量がIDと共に複数設定されている。図10に示すように表示装置23に刺繍枠20を装着したとき、表示装置23に設定される表示領域A1の左後方に位置する表示領域A1の原点位置P1と、刺繍枠20の内側に設定される縫製可能領域A2の左後方に位置する縫製可能領域A2の原点位置P2との間には、所定の距離Lが生じる。この表示領域A1の原点位置P1と縫製可能領域A2の原点位置P2との間の距離Lが原点位置のオフセット量である。従って、原点位置のオフセット量は、刺繍枠20の種類によって予め設定されている。そこで、枠種類別の枠データ104は、原点位置のオフセット量をIDと共に記憶している。
【0038】
GUIデータ105は、表示器41に表示されるアイコンなどの操作用のデータを含んでいる。図11に示すようにRAM73に記憶されているデータのメモリマップ111は、制御プログラムが動作するためのスタック領域や変数を格納する領域112と、模様情報リストを格納する領域113とから構成されている。模様情報リストには、ROM72に格納されている内蔵刺繍の模様データ103のうち選択された内蔵刺繍の模様データがIDと共に模様情報120として含まれる。
【0039】
模様情報120は、図12に示すように模様データ121、配置データ122及び枠データ123に細分される。そして、模様データ121は、上述のように模様形状データ1211及び運針データ1212から構成されている。配置データ122は、刺繍枠20の縫製可能領域A2のどの位置に縫製の対象となる刺繍模様を配置するかを示すデータであり、配置位置1221、回転角度1222、反転情報1223及び拡縮サイズ1224から構成されている。枠データ123は、刺繍枠20の種類ごとに固有の値であり、枠サイズ即ち縫製可能領域A2のサイズ1231と、縫製可能領域A2の原点位置オフセット量1232とから構成されている。
【0040】
(メインルーチン)
次に、図13に基づいて表示装置23の処理のメインルーチンについて説明する。なお、ここでは、メインルーチンの概略的な流れについて説明し、各処理の詳細については個別に説明する。
制御器70は、ミシン10及び表示装置23の電源がオンされると、各デバイス、変数値及び模様情報リストを初期化する(S101)。即ち、制御器70は、ミシン10及び表示装置23を構成する各機能部、設定される数値及び模様情報をいずれも初期状態に設定する。制御器70は、S101において初期化が終了すると、メインメニューモードに設定すると共に、表示更新要求を出す(S102)。続いて、制御器70は、枠データ取得処理(S103)、及び表示処理を実行する(S104)。S103における枠データ取得処理、及びS104における表示処理の詳細は、後述する。
【0041】
制御器70は、S104における表示処理が終了すると、メインメニューモードであるか否かを判断する(S105)。制御器70は、メインメニューモードであると判断すると(S105:Yes)、メインメニュー処理を実行する(S106)。このメインメニュー処理の詳細については、後述する。
【0042】
一方、制御器70は、メインメニューモードでないと判断すると(S105:No)、模様選択モードであるか否かを判断する(S107)。制御器70は、模様選択モードであると判断すると(S107:Yes)、模様選択処理を実行する(S108)。この模様選択処理の詳細については、後述する。制御器70は、模様選択モードでないと判断すると(S107:No)、模様配置モードであるか否かを判断する(S109)。制御器70は、模様配置モードであると判断すると(S109:Yes)、模様配置処理を実行する(S110)。この模様配置処理の詳細については、後述する。また、制御器70は、模様配置モードでないと判断すると(S109:No)、通信モードであるか否かを判断する(S111)。制御器70は、通信モードであると判断すると(S111:Yes)、通信処理を実行する(S112)。この通信処理の詳細については、後述する。さらに、制御器70は、通信モードでないと判断すると(S111:No)、S103へリターンし、ミシン10及び刺繍枠20の電源がオフになるまでS103からS112までの処理を繰り返す。
【0043】
(枠データ取得処理)
次に、図14に基づいて、上述のS103における枠データ取得処理の詳細を説明する。
制御器70は、メインルーチンのS103において枠データ取得処理に移行すると、枠装着状態に変化があったか否かを判断する(S201)。即ち、制御器70は、刺繍枠20の脱着又は交換があったか否かを判断する。制御器70は、枠装着状態に変化がないと判断すると(S201:No)、メインルーチンへリターンする。一方、制御器70は、枠装着状態に変化があったと判断すると(S201:Yes)、刺繍枠20が装着されているか否かを判断する(S202)。即ち、制御器70は、保持ユニット部44の係合部45に刺繍枠20の被係合部32が装着されているか否かを判断する。
【0044】
制御器70は、刺繍枠20が装着されていると判断すると(S202:Yes)、刺繍枠20の種類を取得する(S203)。制御器70は、被検知部38によって変化する枠種検知スイッチ53の出力に基づいて、保持ユニット部44に装着された刺繍枠20の種類即ち刺繍枠20に固有の枠IDを読み取る。制御器70は、取得した枠IDに基づいて枠データ104を取得し、模様情報120の枠データ123として設定する(S204)。具体的には、制御器70は、取得した枠IDに基づいてROM72に記憶されている枠種類別の枠データ104を取得し、模様情報120に含まれる枠データ123としてRAM73に書き込む。制御器70は、縫製可能領域A2を表示するために表示更新要求を出す(S205)。つまり、制御器70は、保持ユニット部44に装着された刺繍枠20に対応する縫製可能領域A2を表示器41に表示させるために表示更新要求を出す。
【0045】
一方、制御器70は、刺繍枠20が装着されていないと判断すると(S202:No)、模様情報120に含まれる枠データ123をクリアする(S206)。そして、制御器70は、表示器41に表示された縫製可能領域A2をクリアするために、表示更新要求を出す(S207)。即ち、制御器70は、刺繍枠20が装着されていないとき、表示器41への縫製可能領域A2の表示を停止するために、表示更新要求を出す。制御器70は、S205又はS206において表示更新請求を出した後、メインルーチンへリターンする。
【0046】
(表示処理)
図15に基づいて、上述のS104における表示処理の詳細を説明する。
制御器70は、メインルーチンのS104において表示処理に移行すると、マウスポインタ表示処理を実行すると共に(S301)、表示更新要求があるか否かを判断する(S302)。なお、マウスポインタ表示処理の詳細は後述する。
制御器70は、表示更新要求があるとき(S302:Yes)、刺繍枠20が装着されているか否かを判断する(S303)。一方、制御器70は、表示更新要求がないとき(S302:No)、メインルーチンへリターンする。
【0047】
制御器70は、刺繍枠20が装着されているとき(S303:Yes)、縫製可能領域A2を示す境界線Bを表示する(S304)。即ち、制御器70は、図10に示すように表示器41の表示領域A1に縫製可能領域A2の外縁を示す境界線Bを表示する。一方、制御器70は、刺繍枠20が装着されていないとき(S303:No)、縫製可能領域A2を示す境界線Bの表示をクリアする(S305)。即ち、刺繍枠20が装着されていないとき縫製可能領域A2の表示は不要であるため、制御器70は境界線Bの表示をクリアする。
【0048】
制御器70は、S304において境界線Bを表示又はS305において境界線Bをクリアすると、メインメニューモードであるか否かを判断する(S306)。即ち、制御器70は、現在の処理がメインメニューモードであるか否かを判断する。制御器70は、メインメニューモードであると判断すると(S306:Yes)、モードボタン等を表示する(S307)。メインメニューモードのとき、図16に示すように表示器41の表示領域A1にはモードボタン等のメインメニュー130が表示される。表示領域A1の右後方には、「メニュー」の文字131と共に、模様選択ボタン132、模様配置ボタン133及び通信ボタン134が表示される。「メニュー」の文字131は、選択可能なメニューがあることを示す。また、表示領域A1には、マウス61の指示位置を示すマウスポインタ135が表示されている。模様選択ボタン132は、マウスポインタ135を重ねてマウス61をクリックすることにより、模様選択モードへの移行が入力される。模様配置ボタン133は、マウスポインタ135を重ねてクリックすることにより模様配置モードへの移行が入力される。通信ボタン134は、マウスポインタ135を重ねてクリックすることにより通信モードへの移行が入力される。また、図16の場合、刺繍枠20が装着されているので、表示器41は表示領域A1に刺繍枠20の大きさに対応する縫製可能領域A2の外縁を示す境界線Bを表示する。このとき、表示器41は、上述のように透明又は半透明の電子ペーパを有するため、裏側の刺繍枠20に保持された加工布35を透視可能である。
【0049】
一方、制御器70は、メインメニューモードでないと判断すると(S306:No)、表示器41の表示領域A1にメインメニュー130のモードボタン等が表示されているか否かを判断する(S308)。表示器41の表示領域A1にメインメニュー130のモードボタン等が表示されているとき(S308:Yes)、制御器70は表示領域A1のメインメニュー130のモードボタン等の表示をクリアする(S309)。制御器70は、S307においてメインメニュー130のモードボタン等を表示、S308においてメインメニュー130のモードボタン等が表示されていないと判断すると(S308:No)、又はS309においてメインメニュー130のモードボタン等の表示をクリアすると、模様選択モードであるか否かを判断する(S310)。
【0050】
制御器70は、模様選択モードであると判断すると(S310:Yes)、表示器41の表示領域A1に模様一覧、模様選択状態及び決定ボタン等を表示する(S311)。模様選択モードであるとき、図17に示すように表示器41の表示領域A1の大部分には模様一覧140が表示される。また、模様選択モードであるとき、表示器41の表示領域A1において模様一覧140の右後方には、模様選択メニュー141を構成する改ページ入力ボタン142、決定ボタン143及び戻るボタン144等が表示される。矢印形状の改ページ入力ボタン142は、マウスポインタ135を重ねてクリックすることにより模様一覧の改ページが入力される。改ページ入力ボタン142は、右側にマウスポインタ135を重ねてクリックすることにより表示ページが次ページ側へ進み、左側にマウスポインタ135を重ねてクリックすることにより表示ページが前ページ側へ戻る。決定ボタン143は、マウスポインタ135を重ねてクリックすることにより模様一覧140から選択した模様が決定されると共に、模様配置モードへの移行が入力される。戻るボタン144は、マウスポインタ135を重ねてクリックすることによりメインメニューモードへの移行が入力される。
【0051】
模様一覧140の右後方の角部付近には、ページ表示145が表示される。ページ表示145は、例えば現在表示している模様一覧140が全7ページ中の1ページ目であるとき、「1/7」と表示される。なお、模様一覧140は、複数の刺繍模様から任意の縫製対象刺繍模様を選択するために表示される。この縫製対象刺繍模様の選択は刺繍枠20の大きさや加工布35を見ることなく判断可能であるため、模様一覧140を表示する際は表示領域A1を不透明にしてもよい。制御器70は、表示器41に模様一覧140、改ページ入力ボタン142、決定ボタン143及び戻るボタン144を表示すると、メインルーチンへリターンする。
【0052】
制御器70は、S310において模様選択モードでないと判断すると(S310:No)、表示器41の表示領域A1に模様一覧140や模様選択メニュー141等が表示されているか否かを判断する(S312)。表示器41の表示領域A1に模様一覧140等が表示されているとき(S312:Yes)、制御器70は表示領域A1の模様一覧140、改ページ入力ボタン142、決定ボタン143及び戻るボタン144等の表示をクリアする(S313)。
【0053】
制御器70は、S312において模様一覧140等が表示されていないと判断すると(S312:No)、又はS313において模様一覧140等の表示をクリアすると、模様配置モードであるか否かを判断する(S314)。制御器70は、模様配置モードであると判断すると(S314:Yes)、マウスポインタ135がメニュー表示ホットポイントにあるか否かを判断する(S315)。制御器70は、マウスポインタ135がメニュー表示ホットポイントにあると判断すると(S315:Yes)、編集ボタン等の模様配置メニューを表示する(S316)。
【0054】
図18に示すように、メニュー表示ホットポイント150は、表示器41の表示領域A1のうち右後方に設定されている。制御器70は、この部分にマウスポインタ135が触れたと判断すると、模様配置メニュー151を構成する模様選択ボタン152、拡大縮小ボタン153、回転ボタン154、反転ボタン155、削除ボタン156及び戻るボタン157を表示する。以下、模様選択ボタン152、拡大縮小ボタン153、回転ボタン154、反転ボタン155、削除ボタン156及び戻るボタン157は、総称して編集ボタンとする。
【0055】
矢印形状の模様選択ボタン152は、マウスポインタ135を重ねてクリックすることにより表示領域A1に表示されている表示模様158の選択開始が入力される。この表示模様158は、図1における刺繍模様43に対応する。拡大縮小ボタン153は、マウスポインタ135を重ねてクリックすることにより選択された表示模様158を拡大又は縮小する拡大縮小モードへの移行が入力される。回転ボタン154は、マウスポインタ135を重ねてクリックすることにより選択された表示模様158を回転する回転モードへの移行が入力される。反転ボタン155は、マウスポインタ135を重ねてクリックすることにより選択された表示模様158を反転する反転のオン又は反転のオフが入力される。削除ボタン156は、マウスポインタ135を重ねてクリックすることにより選択された表示模様158の削除が入力される。戻るボタン157は、マウスポインタ135を重ねてクリックすることによりメインメニューモードへの移行が入力される。
【0056】
制御器70は、編集ボタン等の模様配置メニュー151を表示すると、表示領域A1に表示された表示模様158の選択状態に対応するハンドルを表示する(S317)。表示領域A1に表示された表示模様158が非選択状態にあるとき、図19(A)に示すように表示模様158の周囲に何も表示されない。一方、表示模様158が選択状態にあるとき、図19(B)に示すように表示模様158の周囲に通常モードの選択枠161が表示される。そして、表示模様158が選択状態であるとき拡大縮小ボタン153がクリックされると、図19(C)に示すように表示模様158の周囲に拡縮ハンドル162を含む拡縮モードの選択枠163が表示される。さらに、表示模様158が選択状態であるとき回転ボタン154がクリックされると、図19(D)に示すように表示模様158の周囲に回転ハンドル164を含む回転モードの選択枠165が表示される。このように、表示器41は、表示領域A1に表示された表示模様158のモードに応じた拡縮ハンドル162、回転ハンドル164、及び選択枠161、163、165を表示する。
【0057】
制御器70は、S314において模様配置モードでないと判断すると(S314:No)、又はマウスポインタ135がメニュー表示ホットポイント150でないと判断すると(S315:No)、表示器41の表示領域A1に編集ボタン等の模様配置メニュー151が表示されているか否かを判断する(S318)。表示領域A1に編集ボタン等の模様配置メニュー151が表示されているとき(S318:Yes)、制御器70は表示領域A1における編集ボタン等の模様配置メニュー151の表示をクリアする(S319)。
【0058】
制御器70は、S317において拡縮ハンドル162、回転ハンドル164、又は選択枠161、163、165を表示したとき、S318において編集ボタン等の模様配置メニュー151が表示されていないと判断すると(S318:No)、又はS319で編集ボタン等の模様配置メニュー151の表示をクリアしたとき、通信モードであるか否かを判断する(S320)。制御器70は、通信モードであると判断すると(S320:Yes)、送信ボタン等を表示する。通信モードのとき、図20に示すように表示器41の表示領域A1の右後方には送信ボタン等の通信メニュー170が表示される。通信メニュー170は、送信ボタン171及び戻るボタン172を有している。送信ボタン171は、マウスポインタ135を重ねてクリックすることにより、選択された表示模様158に対応する模様情報120のミシン10への送信が入力される。戻るボタン172は、マウスポインタ135を重ねてクリックすることによりメインメニューモードへの移行が入力される。
【0059】
制御器70は、S320において通信モードでないと判断すると(S320:No)、表示器41の表示領域A1に送信ボタン171等の通信メニュー170が表示されているか否かを判断する(S322)。表示器41の表示領域A1に通信メニュー170が表示されているとき(S322:Yes)、制御器70は表示領域A1の通信メニュー170の表示をクリアする(S323)。
【0060】
制御器70は、S321において送信ボタン171等の通信メニュー170を表示したとき、S322において送信ボタン171等の通信メニュー170が表示されていないと判断すると(S322:No)、又はS323で送信ボタン171等の通信メニュー170の表示をクリアすると、表示器41の縫製可能領域A2に含まれる表示をクリアする(S324)。即ち、制御器70は、表示領域A1に表示される縫製可能領域A2に含まれる画像を一旦消去する。そして、制御器70は、模様情報120があるか否かを判断する(S325)。即ち、制御器70は、RAM73に表示の対象となる模様情報120があるか否かを判断する。制御器70は、模様情報120があると判断すると(S325:Yes)、模様情報120に含まれる配置データに基づいて、表示領域A1に表示される縫製可能領域A2中の所定の場所に、刺繍模様43に対応する表示模様158を表示する(S326)。制御器70は、模様情報120がないと判断すると(S325:No)、又は表示模様158を表示すると、メインルーチンへリターンする。
【0061】
(マウスポインタ表示処理)
図21に基づいて、上述のS301におけるマウスポインタ表示処理の詳細を説明する。
制御器70は、表示処理のS301においてマウスポインタ表示処理に移行すると、マウスポインタ135が指す位置に変化が生じたか否かを判断する(S401)。制御器70は、マウスポインタ135が指す位置に変化が生じたと判断すると(S401:Yes)、マウスポインタ135の表示を更新する(S402)。即ち、表示領域A1に表示されているマウスポインタ135は、視覚的に移動する。
【0062】
制御器70は、マウスポインタ135の表示を更新すると、模様配置モードであるか否かを判断する(S403)。制御器70は、模様配置モードであると判断すると(S403:Yes)、マウスポインタ135がメニュー表示ホットポイント150にあるか否かを判断する(S404)。制御器70は、マウスポインタ135がメニュー表示ホットポイント150にあると判断すると(S404:Yes)、表示更新要求を出す(S405)。即ち、制御器70は、図18に示す模様選択ボタン152や拡大縮小ボタン153などの編集ボタン等を含む模様配置メニュー151を表示するために、表示更新要求を出す。これにより、模様配置メニュー151が表示中であれば、表示の更新によってそれらが再表示される。一方、模様配置メニュー151が表示されていなければ、表示の更新によってそれらが表示される。これらの処理により、マウスポインタ135がメニュー表示ホットポイント150にあるとき、模様配置メニュー151の編集ボタンはプルダウン表示される。一方、マウスポインタ135がメニュー表示ホットポイント150にないとき、模様配置メニュー151はプルアップで収納される。即ち、マウスポインタ135の位置に応じて、模様配置メニュー151が伸縮する。そのため、模様配置メニュー151に複数の編集ボタンが含まれる場合でも、模様配置メニュー151が縫製可能領域A2に重なる機会が少なくなり、縫製可能領域A2及び表示模様158の視認が妨げられにくくなる。
【0063】
制御器70は、S401においてマウスポインタ135が指す位置に変化がない(S401:No)、又はS403において模様配置モードでないと判断すると(S403:No)、表示処理へリターンする。また、制御器70は、S404でマウスポインタがメニュー表示ホットポイント150でないと判断すると(S404:No)、又はS405で表示更新要求を出した後、表示処理へリターンする。
【0064】
(メインメニュー処理)
次に、図22に基づいて、メインルーチンのS106におけるメインメニュー処理の詳細を説明する。
メインメニュー処理は、メインルーチンのS102においてメインメニューモードが設定され、図16に示すように表示領域A1にメインメニュー130が表示されているときの処理である。制御器70は、メインメニュー処理に移行すると、マウス61がクリックされたか否かを判断する(S501)。即ち、制御器70は、図16に示すようにメインメニュー130が表示されているとき、表示領域A1のいずれかの位置でマウス61がクリックされたか否かを判断する。制御器70は、マウス61がクリックされたと判断すると(S501:Yes)、模様選択ボタン132が押されたか否かを判断する(S502)。一方、制御器70は、マウス61がクリックされていないと判断すると(S501:No)、メインルーチンへリターンする。
【0065】
制御器70は、模様選択ボタン132が押されたと判断すると(S502:Yes)、模様選択モードの初期設定を実行する(S503)。即ち、制御器70は、模様選択モードにおいて表示領域A1に表示する図17に示すような模様一覧140の表示ページを1ページ目に設定すると共に、模様一覧140に含まれる複数の表示模様のうちいずれも選択されていない未選択状態に設定する。そして、制御器70は、模様選択モードに設定すると共に、表示更新要求を出し(S504)、メインルーチンへリターンする。
【0066】
一方、制御器70は、模様選択ボタン132が押されていないと判断すると(S502:No)、模様情報リストの模様情報120の数は「0」であるか否かを判断する(S505)。即ち、制御器70は、図11に示すようにRAM73に記憶されている模様情報リストに含まれる模様情報120が「0」であるか否かを判断する。制御器70は、模様情報リストに含まれる模様情報120の数が「0」であると判断すると(S505:Yes)、メインルーチンへリターンする。
【0067】
制御器70は、模様情報リストに含まれる模様情報120の数が「0」でないと判断すると(S505:No)、S501で判断したマウス61のクリックによって模様配置ボタン133が押されたか否かを判断する(S506)。制御器70は、模様配置ボタン133が押されたと判断すると(S506:Yes)、模様配置モードの初期設定を実行する(S507)。即ち、制御器70は、模様配置モードにおいて表示領域A1に表示する表示模様158を、RAM73に記憶されている模様情報リストの1番目に含まれる模様情報120とし、この模様情報リストの1番目に含まれる模様情報120を選択状態に設定する。そして、制御器70は、模様配置モードに設定すると共に、表示更新要求を出し(S508)、メインルーチンへリターンする。
【0068】
一方、制御器70は、模様配置ボタン133が押されていないと判断すると(S506:No)、S501で判断したマウス61のクリックによって通信ボタン134が押されたか否かを判断する(S509)。制御器70は、通信ボタン134が押されたと判断すると(S509:Yes)、通信モードの初期設定を実行する(S510)。即ち、制御器70は、例えば通信手段であるUSB装置の初期化など通信機器の各部を初期化する。そして、制御器70は、通信モードに設定すると共に、表示更新要求を出し(S511)、メインルーチンへリターンする。また、制御器70は、S509において通信ボタン134が押されていないと判断すると(S509:No)、処理を終了してメインルーチンへリターンする。即ち、S509で通信ボタン134が押されていないとき、S501でマウス61はクリックされたと判断したものの、マウスポインタ135はメインメニュー130が表示されていない部分にあることを意味する。そのため、制御器70は、処理を終了し、メインルーチンへリターンする。
【0069】
ところで、刺繍枠20とミシン10との間の通信は、上述のようにUSB等の通信ケーブル62を経由することなく、不揮発性のメモリカードを利用してもよい。図示しないメモリカードを利用する場合、上述のS506において模様配置ボタン133が押されていないと判断すると(S506:No)、S509に代えて制御器70は図23に示すS521へ移行する。つまり、制御器70は、S501で判断したマウス61のクリックによって書込ボタンが押されたか否かを判断する(S521)。メモリカード等の着脱可能な媒体を利用して刺繍枠20とミシン10との間の通信を行う場合、表示領域A1のメインメニュー130には通信ボタン134に代えて書込ボタンが表示される。そのため、制御器70は、S521において、この書込ボタンが押されたか否かを判断する。
【0070】
制御器70は、書込ボタンが押されたと判断すると(S521:Yes)、RAM73に記憶されている模様情報120をメモリカードへ書き込むと共に(S522)、表示器41の表示領域A1にメモリカードへの書き込み中であることを示す「書込中」のメッセージを表示する(S523)。そして、制御器70は、メモリカードへの模様情報120の書き込みが完了したか否かを判断し(S524)、書き込みが完了していないと判断すると(S524:No)、S522及びS523を繰り返し実行する。一方、制御器70は、書き込みが完了したと判断すると(S524:Yes)、表示領域A1に表示した「書込中」のメッセージをクリアすると共に、メインルーチンへリターンする。また、制御器70は、S521において書込ボタンが押されていないと判断すると(S521:No)、処理を終了し、メインルーチンへリターンする。
【0071】
(模様選択処理)
次に、図24及び図25に基づいて、メインルーチンのS108における模様選択処理の詳細を説明する。
模様選択処理は、メインメニュー処理のS504において模様選択モードが設定され、図17に示すように表示領域A1に模様一覧140をはじめとする模様選択メニュー141が表示されているときの処理である。制御器70は、模様選択処理に移行すると、マウス61がクリックされたか否かを判断する(S601)。即ち、制御器70は、図17に示すように模様選択メニュー141が表示されているとき、表示領域A1のいずれかの位置でマウス61がクリックされたか否かを判断する。制御器70は、マウス61がクリックされたと判断すると(S601:Yes)、模様一覧140に含まれるいずれかの表示模様が押されたかを判断する(S602)。一方、制御器70は、マウス61がクリックされていないと判断すると(S601:Yes)、メインルーチンへリターンする。
【0072】
制御器70は、模様一覧140に含まれる表示模様のいずれかが押されたと判断すると(S602:Yes)、その表示模様が選択状態であるか否かを判断する(S603)。制御器70は、その表示模様が選択状態であると判断すると(S603:Yes)、既に選択されていた表示模様を未選択状態に設定すると共に(S604)、選択された表示模様を選択状態に設定する(S605)。また、制御器70は、選択された表示模様が選択状態でないと判断すると(S603:No)、S605に移行して選択された模様を選択状態に設定する。そして、制御器70は、表示更新要求を出し(S606)、メインルーチンへリターンする。
【0073】
一方、制御器70は、表示模様のいずれかが押されていないと判断すると(S602:No)、図17に示す決定ボタン143が押されたか否かを判断する(S607)。制御器70は、決定ボタン143が押されたと判断すると(S607:Yes)、模様一覧140に含まれる表示模様のいずれかが選択状態にあるか否かを判断する(S608)。即ち、制御器70は、上述のS603からS606で説明したように模様一覧140に含まれる表示模様のいずれかが選択されているか否かを判断する。
【0074】
制御器は70、模様一覧140に含まれる表示模様のいずれかが選択されていると判断すると(S608:Yes)、図9に示すようにROM72に記憶されている内蔵刺繍の模様データ103のうち選択された表示模様に対応する模様データを、図11に示すようにRAM73の模様情報リストに模様情報120として追加する(S609)。そして、制御器70は、RAM73の模様情報リストに追加された模様情報120に含まれる配置データ122を初期化する(S610)。さらに、制御器70は、模様配置モードに設定すると共に(S611)、表示更新要求を出し(S612)、メインルーチンへリターンする。また、制御器70は、S608において模様一覧140に含まれるいずれかの表示模様が選択状態でないと判断すると(S608:No)、S609からS612の処理を実行することなくメインルーチンへリターンする。
【0075】
一方、制御器70は、決定ボタン143が押されていないと判断すると(S607:No)、図17に示す戻るボタン144が押されたか否かを判断する(S613)。制御器70は、戻るボタン144が押されたと判断すると(S613:Yes)、模様選択処理からメインメニューへの復帰が入力されたと判断して、メインメニューモードに設定すると共に(S614)、表示更新要求を出し(S615)、メインルーチンへリターンする。
【0076】
制御器70は、S613において戻るボタン144が押されていないと判断すると(S613:No)、改ページ入力ボタン142の次ページ側、即ち改ページ入力ボタン142の右側が押されたか否かを判断する(S616)。制御器70は、改ページ入力ボタン142の次ページ側が押されたと判断すると(S616:Yes)、模様一覧140の表示ページを「+1」する(S617)。そして、制御器70は、「+1」された模様一覧140の表示ページが模様一覧140の総ページを超えたか否かを判断する(S618)。制御器70は、模様一覧140の総ページを超えたと判断すると(S618:Yes)、模様一覧140の表示ページを「1」即ち第1ページに設定する(S619)。制御器70は、S619で表示ページを第1ページ目に設定、又は模様一覧140の総ページを超えていないと判断すると(S618:No)、表示更新要求を出し(S620)、メインルーチンへリターンする。このように模様一覧140の表示ページが最終ページのとき、改ページ入力ボタン142の次ページ側を押すと、模様一覧140の表示ページは1ページ目に戻る。
【0077】
一方、制御器70は、改ページ入力ボタン142の次ページ側が押されていないと判断すると(S616:No)、改ページ入力ボタン142の前ページ側、即ち改ページ入力ボタン142の左側が押されたか否かを判断する(S621)。制御器70は、改ページ入力ボタン142の前ページ側が押されたと判断すると(S621:Yes)、模様一覧140の表示ページを「−1」する(S622)。そして、制御器70は、「−1」された模様一覧140の表示ページが「0」になったか否かを判断する(S623)。制御器70は、模様一覧140の表示ページが「0」と判断すると(S623:Yes)、模様一覧140の表示ページを最終ページに設定する(S624)。制御器70は、S625で表示ページを最終ページに設定、又は模様一覧140の表示ページが「0」になっていないと判断すると(S623:No)、表示更新要求を出し(S625)、メインルーチンへリターンする。このように模様一覧140の表示ページが1ページ目のとき、改ページ入力ボタン142の前ページ側を押すと、模様一覧140の表示ページは最終ページとなる。
【0078】
さらに、制御器70は、S621において改ページ入力ボタン142の前ページ側が押されていないと判断すると(S621:No)、模様一覧140に含まれるいずれかの表示模様が選択状態であるか否かを判断する(S626)。このように、改ページ入力ボタン142の前ページ側が押されていないと判断されるとき、マウス61は模様一覧140や模様選択メニュー141の各ボタンのないところでクリックされたことになる。制御器70は、S626において模様一覧140に含まれるいずれかの表示模様が選択状態であったと判断すると(S626:Yes)、選択された模様を未選択状態に設定すると共に(S627)、表示更新要求を出し(S628)、メインルーチンへリターンする。即ち、マウス61が模様一覧140や模様選択メニュー141の各ボタンがないところでクリックされたとき、模様一覧140に含まれる表示模様の選択状態は解除される。一方、制御器70は、模様一覧140に含まれる表示模様が選択状態にないと判断すると(S626)、S627及びS628の処理を実行することなく、メインルーチンへリターンする。
【0079】
(模様配置処理)
次に、図26から図28に基づいて、メインルーチンのS110における模様配置処理の詳細を説明する。
模様配置処理は、模様選択処理のS611において模様配置モードが設定され、図18に示すように表示領域A1に選択された表示模様158や模様配置メニュー151が表示されているときの処理である。制御器70は、模様配置処理に移行すると、マウス61がクリックされたか否かを判断する(S701)。即ち、制御器70は、図18に示すように選択された表示模様158や模様配置メニュー151が表示されているとき、表示領域A1のいずれかの位置でマウス61がクリックされたか否かを判断する。制御器70は、マウス61がクリックされたと判断すると(S701:Yes)、表示模様158が押されたか否かを判断する(S702)。
【0080】
制御器70は、表示模様158が押されたと判断すると(S702:Yes)、その表示模様158は選択状態であるか否かを判断する(S703)。制御器70は、表示模様158が選択状態である判断すると(S703:Yes)、先に選択されていた表示模様を未選択状態に設定すると共に(S704)、選択された表示模様158を選択状態に設定する(S705)。図18に示す場合、表示領域A1には一つの表示模様158しか表示されていない。しかし、縫製を希望する刺繍模様によっては、複数の刺繍模様に対応する複数の表示模様が表示領域A1に表示されることがある。そのため、表示領域A1に複数の表示模様が表示されている場合、マウス61でクリックされた表示模様が選択状態となり、その他の表示模様は非選択状態となる。制御器70は、選択された表示模様158を選択状態に設定すると、表示更新要求を出し(S706)、メインルーチンへリターンする。
【0081】
制御器70は、S702において表示模様158が押されていないと判断すると(S702:No)、図18に示す模様選択ボタン152が押されたか否かを判断する(S707)。制御器70は、模様選択ボタン152が押されたと判断すると(S707:Yes)、図18及び図19(A)に示すように表示模様158を囲む選択枠161を通常モードに設定すると共に(S708)、表示更新要求を出し(S706)、メインルーチンへリターンする。
【0082】
制御器70は、S707において模様選択ボタン152が押されていないと判断すると(S707:No)、図18に示す拡大縮小ボタン153が押されたか否かを判断する(S709)。制御器70は、拡大縮小ボタン153が押されたと判断すると(S709:Yes)、図19(C)に示すように表示模様158を囲む選択枠163を拡縮ハンドル162を含む拡縮モードに設定すると共に(S710)、表示更新要求を出し(S706)、メインルーチンへリターンする。
【0083】
制御器70は、S709において拡大縮小ボタン153が押されていないと判断すると(S709:No)、図18に示す回転ボタン154が押されたか否かを判断する(S711)。制御器70は、回転ボタン154が押されたと判断すると(S711:Yes)、図19(D)に示すように表示模様158を囲む選択枠165を回転ハンドル164を含む回転モードに設定すると共に(S712)、表示更新要求を出し(S706)、メインルーチンへリターンする。
【0084】
制御器70は、S711において回転ボタン154が押されていないと判断すると(S711:No)、図18に示す戻るボタン157が押されたか否かを判断する(S713)。制御器70は、戻るボタン157が押されたと判断すると(S613:Yes)、模様配置処理からメインメニューへの復帰が入力されたと判断して、メインメニューモードに設定すると共に(S714)、表示更新要求を出し(S715)、メインルーチンへリターンする。
【0085】
一方、制御器70は、S713において戻るボタン157が押されていないと判断すると(S713:No)、表示領域A1に表示されている表示模様158は選択状態であるか否かを判断する(S716)。制御器70は、表示模様158が選択状態であると判断すると(S716:Yes)、図18に示す反転ボタン155が押されたか否かを判断する(S717)。制御器70は、反転ボタン155が押されたと判断すると(S717:Yes)、RAM73に記憶されている模様情報120に含まれる配置データ122を反転に設定、即ち反転情報1223を「オン」にする(S718)。これにより、表示領域A1に表示される表示模様158は、表裏が反転した状態となる。制御器70は、S718において配置データ122の反転を設定すると、表示更新要求を出し(S719)、メインルーチンへリターンする。また、制御器70は、S716において表示模様158が選択状態でないと判断すると(S716:No)、メインルーチンへリターンする。即ち、S716において表示模様158が選択状態でないとき、マウス61は、表示模様158が未選択状態であって、模様配置メニュー151が表示されていない場所でクリックされたことになる。この場合、表示模様158や模様配置メニュー151の表示に変化は生じない。
【0086】
制御器70は、S717において反転ボタン155が押されていないと判断すると(S717:No)、図18に示す削除ボタン156が押されたか否かを判断する(S720)。制御器70は、削除ボタン156が押されたと判断すると、RAM73に記憶されている模様情報リストに含まれる模様情報120のうち選択状態となっている表示模様158の模様情報120を削除する(S721)。そして、制御器70は、S721で選択状態となっている表示模様158の模様情報120を削除すると、又はS720において削除ボタン156が押されていないと判断すると(S720:No)、選択状態の表示模様158を未選択状態に設定すると共に(S722)、表示更新要求を出し(S719)、メインルーチンへリターンする。
【0087】
一方、制御器70は、上述のS701においてマウス61がクリックされていないと判断すると(S701:No)、図28に示すS723へ移行し、表示領域A1に表示されている表示模様158がドラッグされたか否かを判断する(S723)。制御器70は、表示模様158がドラッグされたと判断すると(S723:Yes)、ドラッグされた表示模様158の移動先が縫製可能領域A2内であるか否かを判断する(S724)。そして、制御器70は、表示模様158の移動先が縫製可能領域A2内であると判断すると(S724:Yes)、模様情報120に含まれる配置データ122における表示模様158の配置位置1221を移動先に設定すると共に(S725)、表示更新要求を出し(S726)、メインルーチンへリターンする。制御器70は、表示模様158の移動先が縫製可能領域A2内でないと判断すると(S724:No)、S725の処理を実行することなく、表示更新要求を出し(S726)、メインルーチンへリターンする。上記の処理により、ドラッグによる表示模様158の移動先が縫製可能領域A2内であれば、表示模様158の表示位置は移動先に変更される。これに対し、ドラッグによる表示模様158の移動先が縫製可能領域A2内でないとき、表示模様158の表示位置は移動前の位置から変化しない。
【0088】
制御器70は、S723において模様がドラッグされていないと判断すると(S723:No)、図19(C)に示す拡縮ハンドル162がドラッグされたか否かを判断する(S727)。制御器70は、拡縮ハンドル162がドラッグされたと判断すると(S727:Yes)、拡縮ハンドル162のドラッグによって大きさが変更された表示模様158が縫製可能領域A2内にあるか否かを判断する(S728)。そして、制御器70は、サイズ変更後の表示模様158が縫製可能領域A2内にあると判断すると(S728:Yes)、模様情報120に含まれる配置データ122の拡縮サイズ1224を設定すると共に(S729)、表示更新要求を出し(S726)、メインルーチンへリターンする。また、制御器70は、サイズ変更後の表示模様158が縫製可能領域A2内にないと判断すると(S728:No)、S729の処理を実行することなく、表示更新要求を出し(S726)、メインルーチンへリターンする。上記の処理により、拡縮ハンドル162のドラッグによりサイズが変更された表示模様158が縫製可能領域A2内にあれば、表示模様158のサイズは変更される。これに対し、拡縮ハンドル162のドラッグによりサイズが変更された表示模様158が縫製可能領域A2内にないとき、表示模様158のサイズは変更されない。
【0089】
制御器70は、S727において拡縮ハンドル162がドラッグされていないと判断すると(S727:No)、図19(D)に示す回転ハンドル164がドラッグされたか否かを判断する(S730)。制御器70は、回転ハンドル164がドラッグされたと判断すると(S731:Yes)、回転ハンドル164のドラッグによって回転した表示模様158が縫製可能領域A2内にあるか否かを判断する(S731)。そして、制御器70は、回転した表示模様158が縫製可能領域A2内にあると判断すると(S731:Yes)、模様情報120に含まれる配置データ122の回転角度1222を回転後に設定すると共に(S732)、表示更新要求を出し(S726)、メインルーチンへリターンする。また、制御器70は、回転された表示模様158が縫製可能領域A2内にないと判断すると(S731:No)、S729の処理を実行することなく、表示更新要求を出し(S726)、メインルーチンへリターンする。上記の処理により、回転ハンドル164のドラッグによる回転後の表示模様158が縫製可能領域A2内にあれば、表示模様158は回転される。これに対し、回転ハンドル164のドラッグによる回転後の表示模様158が縫製可能領域A2内にないとき、表示模様158は回転されない。
【0090】
制御器70は、S730において回転ハンドル164がドラッグされていないと判断すると(S730:No)、メインルーチンへリターンする。即ち、S730において回転ハンドル164がドラッグされていないとき、マウス61はクリックもドラッグもされていないことになる。つまり、マウス61のマウスポインタ135が移動したに過ぎないので、表示模様158や模様配置メニュー151などの表示領域A1の表示に変化は生じない。
【0091】
(通信処理)
次に、図29に基づいて、メインルーチンのS112における通信処理の詳細を説明する。
通信処理は、メインメニュー処理のS511において通信モードが設定され、図20に示すように表示領域A1に通信モードの通信メニュー170が表示されているときの処理である。制御器70は、通信処理に移行すると、マウス61がクリックされたか否かを判断する(S801)。即ち、制御器70は、図20に示すように通信メニュー170が表示されているとき、表示領域A1のいずれかの位置でマウス61がクリックされたか否かを判断する。制御器70は、マウス61がクリックされたと判断すると(S801:Yes)、通信メニュー170の戻るボタン172が押されたか否かを判断する(S802)。制御器70は、戻るボタン172が押されたと判断すると(S802:Yes)、通信モードからメインメニューモードへの復帰が入力されたと判断し、メインメニューモードに設定すると共に(S803)、表示更新要求を出し(S804)、メインルーチンへリターンする。また、制御器70は、S801でマウス61がクリックされていないときも、メインルーチンへリターンする。
【0092】
一方、制御器70は、S802において戻るボタン172が押されていないと判断すると(S802:No)、送信ボタン171が押されたか否かを判断する(S805)。制御器70は、送信ボタン171が押されたと判断すると(S805:Yes)、USB等の通信手段による接続の準備を実行し(S806)、通信回線が確立したか否かを判断する(S807)。制御器70は、通信回線が確立していないと判断すると(S807:No)、通信回線が確立するまで待機する。
【0093】
制御器70は、通信回線が確立したと判断すると(S807:Yes)、RAM73に記憶している模様情報120を送信先であるミシン10へ送信すると共に(S808)、表示領域A1に模様情報120が送信中であることを示す「送信中」のメッセージを表示し(S809)、送信が完了したか否かを判断する(S810)。制御器70は、模様情報120の送信が完了していないと判断すると(S810:No)、送信が完了するまでS808及びS809の処理を継続する。
【0094】
制御器70は、模様情報120の送信が完了したと判断すると(S810:Yes)、模様情報120を送信中であることを示す「送信中」のメッセージをクリアし(S811)、メインルーチンへリターンする。また、制御器70は、S805において送信ボタン171が押されていないと判断すると(S805:No)、処理を終了してメインルーチンへリターンする。即ち、S805において送信ボタン171が押されていないとき、S801においてマウス61はクリックされたと判断したものの、そのときマウス61が指示するマウスポインタ135は通信メニュー170が表示されていない部分にあることを意味する。そのため、制御器70は、処理を終了し、メインルーチンへリターンする。
【0095】
以上、図13から図15及び図21から図29を用いて説明した各種の処理が終了すると、刺繍枠20で選択、及び加工布35に対し位置や大きさが決定された刺繍模様は、ミシン10によって縫製される。ミシン10によって刺繍模様を縫製する場合、加工布35を保持した刺繍枠20は、刺繍枠移送装置21のキャリッジ22に装着される。刺繍枠20からミシン10への模様情報120の送信は、刺繍枠20をキャリッジ22に装着する前、又はキャリッジ22を装着した後のいずれであってもよい。
【0096】
縫製を開始すると、ミシン10は、刺繍枠20から送信された模様情報120を利用して縫針15の運針などを制御すると共に、刺繍枠移送装置21による刺繍枠20の移送を制御する。これにより、選択された刺繍模様43は、送信された模様情報120に基づいて刺繍枠20に保持された加工布35の所望の位置に所望の形状で縫製される。このとき、表示装置23の検出器54が表示器41の装着を検知すると、制御器70はミシン10に対し縫製開始を規制する指示を出力する。そのため、ミシン10は、表示器41が装着されたままの状態では刺繍模様43の縫製を実行しない。
【0097】
以上説明した本発明の第1実施形態による刺繍枠20及びミシン10は、次のような効果を奏する。
刺繍縫製を開始する前に装着機構部24に刺繍枠20を装着することにより、刺繍枠20に保持された加工布35と表示器41に表示された刺繍模様とは位置が合わせられる。このとき、表示器41は、実際に縫製が施される刺繍枠20の縫製可能領域A2に表示模様158を重ねて表示する。また、この表示器41は、表示領域A1の裏側が透視可能な電子ペーパで構成されている。そのため、表示器41を装着したとき、刺繍枠20の縫製可能領域A2に保持された加工布35に対する刺繍模様の大きさ、縫い位置及び縫い上がりのイメージ等が視覚的に把握される。従って、加工布35と縫製される刺繍模様との位置合わせを容易且つ正確に行うことができる。
【0098】
また、制御器70は、装着された刺繍枠20の種類を枠種検知スイッチ53で検知する。そのため、表示器41は、刺繍枠20ごとに大きさや形状が異なる場合でも、検知した刺繍枠20の種類に応じて縫製可能領域A2及び縫製対象となる刺繍模様を表示する。従って、加工布35と縫製される刺繍模様との位置合わせを容易且つ正確に行うことができる。
【0099】
縫製を所望する刺繍模様に対応して表示器41の表示領域A1に表示された表示模様158は、マウス61からの入力によって、加工布35に対する縫製位置の変更、大きさの変更、及び形状の変更等を編集可能である。そのため、表示領域A1に表示された表示模様158及び刺繍枠20に保持された加工布35を確認しながら、所望の大きさ又は形状の刺繍模様を設定可能である。従って、加工布35に応じて容易且つ正確に刺繍模様を編集することができると共に、位置合わせも行うことができる。
表示領域A1に表示された表示模様は、例えばUSB等の通信手段を経由してミシン10へ出力される。従って、刺繍枠移送装置21を備えるミシン10を利用して、出力された刺繍模様に基づいた模様の縫製を行うことができる。
【0100】
装着機構部24は、表示装置23の係合部45と、刺繍枠20の被係合部32とで構成されている。これら係合部45と被係合部32との係合により、位置合わせされる。従って、位置合わせを確実且つ容易にすることができると共に、構成を簡単にすることができる。
また、第1実施形態のミシン10によれば、上述の効果を奏する表示装置23を備えているので、表示器41に表示された表示模様158に基づいて刺繍模様43を加工布35の所望の位置へ正確に縫製することができる。
【0101】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態による表示装置及びミシンについて図30に基づいて説明する。
なお表示装置23及びミシン10の機械的及び電気的な構成は、第1実施形態と同一である。また、第1実施形態の図9、図10及び図11に示した各種のデータの構成も第1実施形態と同一である。第2実施形態では、内蔵刺繍の模様データ103が表示装置23のROM72ではなくミシン10の図示しないROMに記憶されている点が第1実施形態と異なると共に、刺繍縫製を実行するための処理の流れが第1実施形態と異なる。即ち、ROM72及びRAM73だけでなく、ミシン10の図示しないROMも、刺繍模様記憶手段を構成している。
【0102】
まず、表示装置23側の処理の流れについて説明する。なお、上述の第1実施形態と同一の処理については、適宜第1実施形態のステップ番号を引用して説明を省略する。
制御器70は、処理が開始、即ち電源がオンになると、まず表示装置23の全体を初期化する(S1001)。また、制御器70は、上述した第1実施形態と同様に装着機構部24に装着された刺繍枠20の種類を取得する。そして、表示装置23は、ミシン10と接続される(S1002)。具体的には、表示装置23は、USB等の通信手段を介してミシン10と通信可能に接続される。制御器70は、ミシン10との接続が完了したか否かを判断する(S1003)。制御器70は、ミシン10との接続が完了していないと判断すると(S1003:No)、ミシン10と接続されるまで待機する。
【0103】
制御器70は、ミシン10との接続が完了したと判断すると(S1003:Yes)、模様情報120の受信要求があるか否かを判断する(S1004)。即ち、制御器70は、ミシン10と通信可能に接続されたとき、ミシン10側から模様情報120を送信してもよいかの問い合わせがあるか否かを判断する。制御器70は、模様情報120の受信要求がないと判断すると(S1004:No)、受信要求があるまで待機する。一方、制御器70は、模様情報120の受信要求があったと判断すると(S1004:Yes)、その模様情報120の受信を承諾する「アクセプト」信号をミシン10へ送信する(S1005)。これにより、制御器70は、ミシン10から模様情報120を取得し(S1006)、RAM73へ記憶する。制御器70は、模様情報120の受信が終了したか否かを判断し(S1007)、模様情報120の受信が終了していないと判断すると(S1007:No)、模様情報120の受信が終了するまでS1006の処理を継続する。
【0104】
制御器70は、模様情報120の受信が終了したと判断すると(S1007:Yes)、表示模様158を表示器41の表示領域A1に表示する(S1008)。即ち、制御器70は、ミシン10から取得した模様情報120に対応する表示模様158を表示器41の表示領域A1に表示する。ユーザは、表示器41に表示された表示模様158を利用して、表示模様158と加工布35との位置合わせを行う。この場合、ユーザは、マウス61を利用して表示領域A1に表示されている表示模様158を、移動、拡大又は縮小、並びに回転させることができる。これら表示模様158の移動、拡大又は縮小、並びに回転させる編集作業は、上述の第1実施形態の図26から図29に示す模様配置処理と同様に実行することができるので、詳細な説明を省略する。
【0105】
また、表示器41の表示領域A1に表示された表示模様158と加工布35との位置合わせは、表示装置23とミシン10との接続を解除した状態で実施可能である。上述のように電子ペーパからなる表示器41は、ミシン10との接続を解除した状態でも直前に表示した内容を保持している。そのため、刺繍枠20を装着した表示装置23をミシン10から取り外しても、表示模様158と加工布35との位置合わせが可能となる。これにより、刺繍枠20の周囲にミシン10や刺繍枠移送装置21などの操作の障害となる構造物が存在せず、表示模様158と加工布35との位置合わせを容易にすることができる。なお、ミシン10が刺繍枠20を縫製位置から退避させる枠退避機能を備えている場合、刺繍枠20の取り外しに代えて枠退避を実行してもよい。この場合でも、表示装置23をミシン10から取り外した場合と同様に、表示模様158と加工布35との位置合わせの際にミシン10や刺繍枠移送装置21が障害となることはない。
【0106】
制御器70は、S1009において模様配置処理が終了すると、表示装置23がミシン10と接続されているか否かを判断する(S1010)。制御器70は、表示装置23とミシン10とが接続されていないと判断すると(S1010:No)、表示装置23とミシン10とが接続されるまで待機すると共に(S1011)、S1010において表示装置23とミシン10との接続を確認する。
【0107】
制御器70は、表示装置23とミシン10とが接続されたと判断すると(S1010:Yes)、ミシン10へ送信要求を送信する(S1012)。具体的には、制御器70は、模様配置処理によって編集された模様情報120の送信をしてよいか否かをミシン10へ問い合わせる。制御器70は、ミシン10において送信要求が確認されたか否かを判断する(S1013)。制御器70は、送信要求が確認されていないと判断すると(S1013:No)、ミシン10が送信要求を確認するまでS1012の処理を継続する。
【0108】
制御器70は、ミシン10で送信要求が確認されたと判断すると(S1013:Yes)、模様情報120をミシン10へ送信する(S1014)。そして、制御器70は、模様情報120の送信が終了したか否かを判断し(S1015)、模様情報120の送信が終了していないと判断すると(S1015:No)、S1014における模様情報120の送信を継続する。また、制御器70は、模様情報120の送信が終了したと判断すると(S1015:Yes)、S1004へ移行し、S1004以降の処理を繰り返す。
【0109】
次に、ミシン10側の処理の流れについて説明する。
ミシン10の制御部81は、処理が開始、即ち電源がオンになると、ミシン10の全体を初期化する(S1021)。そして、制御部81は、模様選択処理を実行する(S1022)。即ち、第2実施形態の場合、刺繍模様43を選択する模様選択処理は、ミシン10において実行される。このとき、ユーザは、ミシン10の液晶ディスプレイ19に表示された模様一覧を参照して刺繍模様を選択する。つまり、第2実施形態の場合、表示装置23の表示器41で刺繍模様を選択するのではなく、ミシン10の液晶ディスプレイ19から刺繍模様を選択する。模様選択処理は、ミシン10の制御部81が主体として処理を実行することを除き、上述の第1実施形態の図24及び図25に示す模様選択処理と同様に実行することができるので、詳細な説明を省略する。
【0110】
制御部81は、模様選択処理が実行されると、模様選択処理が終了したか否かを判断する(S1023)。制御部81は、模様選択処理が終了していないと判断すると(S1023:No)、S1022における模様選択処理が終了するまで待機する。制御部81が模様選択処理が終了したと判断すると(S1022:Yes)、ミシン10は表示装置23と接続される(S1024)。制御部81は、表示装置23が接続されたか否かを判断する(S1025)。上述のように、表示装置23は、S1002においてミシン10に接続される。そのため、ミシン10は、S1024において表示装置23と接続され、S1024においてその接続が完了したか否かを判断する。即ち、S1024においてミシン10を表示装置23に接続する処理は、上述のS1002における表示装置23のミシン10への装着に対応する。また、S1025においてミシン10に表示装置23が接続されたか否かを判断する処理は、上述のS1003における表示装置23にミシン10が接続されたか否かを判断する処理に対応する。
【0111】
制御部81は、S1025において表示装置23が接続されたと判断すると(S1025:Yes)、表示装置23へ模様情報120の受信要求を送信する(S1026)。一方、制御部81は、S1025において表示装置23が接続されていないと判断すると(S1025:No)、表示装置23が接続されるまで待機する。また、このとき制御部81は、受信要求の送信と共に、表示装置23側から装着機構部24に取り付けられている刺繍枠20の種類を取得してもよい。
【0112】
表示装置23の制御器70は、上述のようにS1004においてミシン10から模様情報120の受信要求があるか否かを判断している。そのため、制御部81がS1026において表示装置23へ受信要求を送信することにより、表示装置23の制御器70はS1005において模様情報120の受信の承諾をミシン10へ送信する。ミシン10の制御部81は、S1026において表示装置23へ模様情報120の受信要求を送信した後、表示装置23で受信要求が確認されたか否か、即ちS1005において表示装置23から模様情報120の受信の承諾を取得したか否かを判断する(S1027)。
【0113】
制御部81は、表示装置23から受信要求に対する承諾を受信したと判断すると(S1027:Yes)、模様情報120を表示装置23へ送信する(S1028)。表示装置23の制御器70は、このS1028におけるミシン10による模様情報120の送信に対応して、S1006において模様情報120を受信する。一方、制御部81は、表示装置23から送信要求に対する承諾を受信していないと判断すると(S1027:No)、表示装置23から受信要求に対する承諾を受信するまで待機する。
【0114】
制御部81は、S1028において模様情報120を送信すると、模様情報120の送信が終了したか否かを判断する(S1029)。制御部81は、模様情報120の送信が終了したと判断すると、表示装置23からS1009における模様配置処理が実行された後の模様情報120、即ち編集後の模様情報120の送信要求があったか否かを判断する(S1030)。表示装置23の制御器70は、S1009において模様配置処理を実行すると、S1012においてミシン10へ送信要求を送信する。そのため、ミシン10は、これに対応してS1030において編集後の模様情報120の送信要求が表示装置23から送信されたか否かを判断する。また、表示装置23の制御器70は、S1010において表示装置23とミシン10とが接続されているか否かを判断している。そのため、ミシン10側でも、表示装置23が接続されているか否かを確認する処理を実行してもよい。制御部81は、S1030において編集後の模様情報120の送信要求が表示装置23から送信されていないと判断すると(S1030:No)、送信要求が表示装置23から送信されるまで待機する。
【0115】
制御部81は、S1030において編集後の模様情報120の送信要求が表示装置23から送信されたと判断すると(S1030:Yes)、編集後の模様情報120を表示装置23から受信する(S1031)。即ち、制御部81は、S1030において表示装置23がS1014で送信する模様情報120を受信する。そして、制御部81は、編集後の模様情報120の受信が終了したか否かを判断する(S1032)。制御部81は、編集後の模様情報120の受信が終了していないと判断すると(S1032:No)、この模様情報120の受信が終了するまで待機する。
【0116】
制御部81は、S1032において編集後の模様情報120の受信が終了したと判断すると(S1032:Yes)、刺繍模様の縫製処理へ移行する(S1033)。このとき、制御部81は、表示装置23に表示器41が取り付けられているか否かを判断する(S1034)。具体的には、制御部81は、検出器54によって表示装置23に表示器41が取り付けられているか否かを判断する。制御部81は、表示装置23に表示器41が取り付けられていると判断すると(S1034:Yes)、表示器41が取り付けられているため縫製が開始できないことを示す「エラー」メッセージを液晶ディスプレイ19に表示する(S1035)。一方、制御部81は、表示装置23に表示器41が取り付けられていないと判断すると(S1034:No)、刺繍模様の縫製を実行する(S1036)。そして、制御部81は、刺繍模様の縫製が終了したか否かを判断し(S1037)、縫製が終了していないと判断すると(S1037:No)、刺繍模様の縫製を継続する。一方、制御部80は、縫製が終了したと判断すると(S1037:Yes)、S1022へリターンする。
【0117】
以上、説明した第2実施形態では、第1実施形態と同様の効果に加え、以下のような効果を奏する。
複数の刺繍模様から任意の刺繍模様を選択する模様選択処理はミシン10側で実行し、選択した刺繍模様の模様配置処理は表示装置23側で実行している。そのため、ミシン10と表示装置23とで処理を分担することができ、ミシン10及び表示装置23の構成を最適化することができる。
【0118】
(その他の実施形態)
以上説明した複数の実施形態では、表示装置23が電子ペーパからなる表示器41を有する例について説明した。しかし、表示器41は、電子ペーパに限らず、例えば液晶ディスプレイ、有機EL、或はプロジェクタ等の裏面側が透視可能な表示手段であればよい。表示器41としてプロジェクタを採用する場合、裏面側が透視可能なスクリーンを表示領域A1とし、装着機構部24側に設けた投影手段からこの表示領域A1に向けて画像を投影する構成とすればよい。
【0119】
また、上述の実施形態では、表示器41に表示された表示模様158を編集するためのポインティングデバイスとして、マウス61を例に説明した。しかし、マウス61に限らず、表示器41をタッチパネルで構成し、表示器41に触れることにより表示模様158の編集を実行する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0120】
10 ミシン
20 刺繍枠
23 表示装置
24 装着機構部
32 被係合部
35 加工布
41 表示器
45 係合部
53 枠種検知スイッチ(枠種検出器)
54 検出器
61 マウス(操作入力手段)
62 通信ケーブル(通信手段)
70 制御器
72 ROM(刺繍模様記憶手段)
73 RAM(刺繍模様記憶手段)
76 通信用インターフェイス(通信手段)
A1 表示領域
A2 縫製可能領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工布を保持する刺繍枠が着脱可能に装着される表示装置であって、
少なくとも縫製の対象となる縫製対象刺繍模様を含む刺繍縫製情報を表示可能な表示領域を有し、前記表示領域の裏側を透視可能な表示器と、
前記表示領域と、前記刺繍枠に設定され前記刺繍枠に保持された前記加工布に刺繍模様を縫製するための縫製可能領域と、の少なくとも一部が重なる位置に、前記刺繍枠を着脱可能に装着する装着機構部と、
を備えることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記装着機構部に装着された前記刺繍枠の種類を検知する枠種検出器と、
前記枠種検出器で検出した前記刺繍枠の種類に基づいて前記表示器を制御して、前記刺繍模様縫製可能領域と重なる前記表示領域に前記縫製対象刺繍模様を表示する制御器と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
縫製の対象となる複数の刺繍模様を刺繍模様データとして記憶している刺繍模様記憶手段と、
前記刺繍模様記憶手段に記憶されている前記刺繍模様データから所望の刺繍模様を選択する刺繍模様選択手段と、
少なくとも前記刺繍模様選択手段で選択された刺繍模様の位置を変更する操作を含む刺繍模様の編集を行う刺繍模様編集手段と、
前記刺繍模様編集手段による刺繍模様の編集を入力する操作入力手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1または2記載の表示装置。
【請求項4】
外部と通信するための通信手段をさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載の表示装置。
【請求項5】
前記装着機構部は、前記表示器に設けられている係合部と、前記刺繍枠に設けられ前記係合部と着脱可能に係合する被係合部と、を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項記載の表示装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項記載の表示装置を備えることを特徴とするミシン。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2010−187838(P2010−187838A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−33932(P2009−33932)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】