説明

表示装置用基板の製造方法および表示装置用基板

【課題】表示装置用基板の製造方法および表示装置用基板を提供する。
【解決手段】基板上に金属固着促進因子層を塗布するステップと、フルオロ化前駆体層を塗布するステップと、複数の導電性ラインを塗布するステップと、を含む複数の導電性ラインを有する表示装置用基板の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷により形成された複数の導電性ラインを有する表示装置用基板およびそれを製造する方法に関し、さらに詳細には、本発明は、アドレス電極およびバス電極用のインクジェット印刷により形成された複数の導電性ラインを有するプラズマディスプレイパネル用基板に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(PDP)でのインクジェット印刷型のバス電極およびアドレス電極は、ナノ粒子インクを使用して印刷される。銀ナノ粒子インクは、個々にに分散した金属ナノ粒子、界面活性剤および有機粒子で構成される(特許文献1、および、特許文献2(ULVAC,Inc.))。
【0003】
特許文献3(富士通株式会社)には、サブトラクティブ法によってフロートガラス基板の底面に複数の溝を形成して、それぞれの溝の間に存在する突出部を備える隔壁を形成するステップと、その後、インクジェット工程または散布工程によって前記溝の底面上に電極を形成するステップと、を含む平板表示装置用基板の製造方法が開示されている。ナノ粒子インクを使用して、ガラスまたはインジウムスズ酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)表面上に狭い金属ラインを形成する他の方法としては、基板を適度に処理してナノ粒子インクに対して60°の接触角を付与する方法がある(特許文献4(セイコーエプソン株式会社、古沢ら、SID 02 Digest,p.753〜755))。CF、C、Cまたはフルオロアルキル基含有シランでフッ素化する従来の表面処理方法では、20°ないし60°の接触角が達成されうるが、印刷および硬化された金属ラインの固着時における損失が欠点となる。
【0004】
特許文献5(キヤノン株式会社)には、疎水基板上に液滴を付着させることが開示されている。疎水化は、HMDS(Hexamethyldisilazane)、PHAMS、AMP(Adenosine MonoPhosphate)またはPES(PolyEther Sulfone)のようなシラン化合物によって実現され、PDPに適用されうる。
【0005】
また、特許文献6(セイコーエプソン株式会社)は、金属粒子を含有した液体を基板の表面上に付着させて制御することを開示している。液体材料の中間膜は、電気接点となる。ここでは、フルオロアルキル化シランが自己組織化単分子層(Self−Assembled Monolayer:SAM)を形成するために使われる。また、前記発明には、電界放出表示装置(FED:Field Emission Display)の製造が開示されている。一対の電極は、基板上の導電性薄膜と接触する。この膜は、金属をベースとする液体を使用する「液滴方法」(特許文献5)によって実現される。基板上に金属粒子を含有した液体を放出することによって、導電性の構造化された薄い中間膜が形成される。この薄い中間膜が、基板と導電性膜との固着を改善する(特許文献6)。
【0006】
また、有機流体が、薄膜のパターニングされた層を形成するために使われている(特許文献7(セイコーエプソン))。
【特許文献1】欧州特許出願公開第1349135A1号明細書
【特許文献2】米国特許第20040043691A1号明細書
【特許文献3】米国特許第20040038616A1号明細書
【特許文献4】米国特許第20030083203A号明細書
【特許文献5】韓国特許第0229232号明細書
【特許文献6】韓国公開特許第2003−0084608号明細書
【特許文献7】米国特許第6,677,238号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、基板上のインクジェット印刷型の導電性ライン、例えば、インクジェット印刷型のアドレス電極およびバス電極の固着を改善することである。
【0008】
本発明が解決しようとする他の課題は、前記基板上に高解像度の表示装置を取り付けられるようにインクジェット印刷型の導電性ラインの接触角を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、基板上に金属固着促進因子層を塗布するステップと、フルオロ化前駆体層を塗布するステップと、複数の導電性ラインを塗布するステップと、を含む複数の導電性ラインを有する表示装置用基板の製造方法を提供する。
【0010】
基板上のインクジェット印刷型の導電性ラインの固着および接触角を改善するために、本発明は、基板と導電性ラインとの間に少なくとも一つの中間層を導入することを提案する。
【0011】
前記中間層は、金属固着促進因子層およびフルオロ化前駆体層を有する。金属固着促進因子層およびフルオロ化前駆体層は、順次に塗布されて二つの中間層として配置されてもよい。また、金属固着促進因子層およびフルオロ化前駆体層を同時に塗布して、金属固着促進因子シランおよびフルオロ化前駆体の両者を含む一つの中間層として配置されてもよい。このような層は、フルオロ化前駆体の存在内で金属固着促進因子の自己組織化によって製造されうる。
【0012】
前記フルオロ前駆体層を塗布するためには、フルオロ化有機分子が使われることが望ましい。前記フルオロ化有機分子としては、アミン、ジアミン、トリアミン、テトラアミン、ポリアミン、ピリジン、イミダゾール、カルボン酸、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸エステル、およびフェノールよりなる群から選択される少なくとも一種の化合物の作用基を有するフルオロ化有機分子が望ましく挙げられる。
【0013】
望ましくは、前記フルオロ化前駆体層は、湿式化学工程によって塗布される。前記フルオロ化前駆体層の湿式化学工程は、前記基板を前記フルオロ化有機分子を含む溶液内に浸漬することによって前記フルオロ化前駆体層を塗布することにより行われるのが望ましい。
【0014】
前記フルオロ化有機分子を含む溶液において、前記フルオロ化有機分子を10−1ないし10−5mol/lの濃度で含むのが望ましい。
【0015】
前記金属固着促進因子層は、a)NH、HSおよび/またはPHのプラズマ処理、b)化学式(1)の物質のプラズマ処理、c)化学式(2)のシラン化合物のシランのプラズマ重合、またはd)化学式4の物質が使われること、によって塗布されるのが望ましい。
【0016】
【化1】

【0017】
(前記化学式(1)において、Yは、窒素原子、硫黄原子、またはリン原子であり、Rは、水素原子および/または少なくとも一つのアルキル基であり、
【0018】
【化2】

【0019】
前記化学式(2)において、Zは、窒素原子、硫黄原子、またはリン原子であり、R’は、水素原子および/または下記化学式(3)の少なくとも一つのシラン基であり、
【0020】
【化3】

【0021】
前記化学式(3)において、R’’は、同一でも異なっていてもよく、アルキル基であり、
【0022】
【化4】

【0023】
前記化学式(4)において、R’’’は、水素原子、ヒドロキシル基、塩素原子、またはアルコキシ基であり、Xは、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシル基、塩素原子、アルコキシ基、アルキル基、または有機基であり、前記有機基は、少なくとも一つの金属結合基を含む。)
前記化学式(1)のR、および、前記化学式(3)のR’’におけるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、ペンチル基、iso−アミル基、ヘキシル基などが挙げられる。
【0024】
前記化学式(2)のシラン化合物は、化学式(3)で示されるシラン基を少なくとも一つ含有する。前記化学式(2)のシラン化合物として、具体的には、へキサメチルジシラザン(Hexamethyldisilazane:HMDS)などが望ましく挙げられる。前記化学式(2)のシラン化合物プラズマ重合は、ヘキサメチルジシラザンのプラズマ重合であることが望ましい。
【0025】
前記化学式(4)のR’’’およびXにおけるアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ブトキシ基、n−ヘキシロキシ基、2−エチルヘキシロキシ基、3,5,5−トリメチルヘキシルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基等などが挙げられる。
【0026】
前記化学式(4)の物質において、前記Xにおける有機基としては、アミン、ジアミン、トリアミン、テトラアミン、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、ポリアミン、アミド、ポリアミド、ヒドラジン、ピリジン、イミダゾール、チオフェン、カルボン酸、カルボン酸ハロゲン化物、硫化物、二硫化物、三硫化物、四硫化物、ポリスルフィド、スルホン酸、スルホン酸ハロゲン化物、リン酸、ホスホン酸エステル、エポキシド、フェノール、およびポリエーテルよりなる群から選択される少なくとも一種の化合物の残基が望ましく挙げられる。
【0027】
また、前記化学式(4)の物質として、具体的には、(3−アミノプロピル)トリエトキシシランなどが望ましく挙げられる。
【0028】
前記化学式(4)の物質からなる金属固着促進因子層は、湿式化学工程によって塗布されるのが望ましい。前記金属固着促進因子層の湿式化学工程による塗布は、前記基板を前記化学式(4)の物質を含む溶液内に浸漬することによって行われるのが望ましい。
【0029】
前記化学式(4)の物質を含む溶液において、前記化学式(4)の物質を10−1ないし10−5mol/lの濃度で含むのが望ましい。
【0030】
本発明の方法において、中間層が金属固着促進因子層およびフルオロ化前駆体層の二つの層からなる場合、基板上に、金属固着促進因子層が先に塗布され、フルオロ化前駆体層がその後に塗布される方法が用いられる。
【0031】
また、中間層が金属固着促進因子層およびフルオロ化前駆体層が複合された一つの層からなる場合、前記基板上に金属固着促進因子層を塗布するステップ、および、前記フルオロ化前駆体層を塗布するステップは同時に行われるのが望ましい。具体的には、基板を溶液内に浸漬することによって行われるのが望ましく、前記溶液は、前記化学式(4)の物質、および、アミン、ジアミン、トリアミン、テトラアミン、ポリアミン、ピリジン、イミダゾール、カルボン酸、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸エステル、およびフェノールよりなる群から選択される少なくとも一種の作用基を有するフルオロ化有機分子を含む。
【0032】
また、前記フルオロ化有機分子として、具体的には、4−ヒドロキシベンゾトリフルオライドなどが望ましく挙げられる。前記化学式(4)の物質については、上述したのと同様である。
【0033】
上述した本発明による方法は、最終解像度に重要な基板上のインク液滴の接触角の改善と、硬化された導電性ライン、例えば、金属ラインの固着の改善と、がなされた、インクジェット印刷型の導電性ラインが形成される中間層を形成することができる。したがって、インクジェット印刷型の導電性ラインは、基板上の固着が非常に向上してPDP製造の工程要件を充足させるため、アドレス電極およびバス電極として用いられるのが望ましい。
【0034】
上述した本発明の方法によれば、基板上に形成される金属固着促進因子層およびフルオロ化前駆体層は、単層または複層である。また、金属固着促進因子層およびフルオロ化前駆体層は、1nmないし10nmの厚さに塗布されるのが望ましい。
【0035】
前記複層とは、金属固着促進因子層およびフルオロ化前駆体層が複合化されて一つの層として形成されたものである。この場合、金属固着促進因子層およびフルオロ化前駆体層は、化学式(4)の物質と、アミン、ジアミン、トリアミン、テトラアミン、ポリアミン、ピリジン、イミダゾール、カルボン酸、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸エステル、およびフェノールよりなる群から選択される少なくとも一種の化合物の作用基を有するフルオロ化有機分子とが架橋結合され、並列に配置された一つの中間層として形成される。前記中間層は、1nmないし10nmの厚さとするのが望ましい。
【0036】
前記基板は、平坦であるのが望ましい。前記基板として、具体的には、可撓性のガラス基板、インジウムスズ酸化物(ITO)がコーティングされたガラス基板、または重合体基板となりうる。
【0037】
前記複数の導電性ラインは、インクジェット印刷によって塗布されることが望ましい。前記インクジェット印刷に用いられるインクは、金属ナノ粉末および/または金属ナノ化合物が分散された液体分散溶液と、溶媒とで構成され得る。前記金属ナノ粉末および前記金属ナノ化合物は、銀、金、白金、パラジウムまたは銅を含む。また、前記前記金属ナノ粉末および前記金属ナノ化合物は、ナノメーターサイズの粒径を有する。
【0038】
また、前記インクは、金属安定化有機重合体からなる添加剤を含むのが望ましい。
【0039】
本発明による表示装置用基板は、複数の導電性ラインを有する基板を含み、金属固着促進因子層およびフルオロ化前駆体層が前記基板と前記導電性ラインとの間に配置される。
【0040】
前記導電性ラインは、粒径が1nmないし100nmの金属ナノ粉末を含みうる。前記金属ナノ粉末は、銀、金、白金、パラジウムまたは銅からなるものが好ましく挙げられる。また、前記金属ナノ粉末は、焼結されたものであるのが望ましい。
【0041】
本発明による表示装置用基板において、前記金属固着促進因子層および前記フルオロ化前駆体層は、基板上に前記金属固着促進因子層および前記フルオロ化前駆体層が順次、配置されて二つの層として存在していてもよく、前記金属固着促進因子層および前記フルオロ化前駆体層が複合された一つの層として基板上に存在していてもよい。
【0042】
前記金属固着促進因子層および前記フルオロ化前駆体層が二つの層として存在する場合、金属固着促進因子層は、前記化学式(1)の物質、前記化学式(2)のシラン化合物、または前記化学式(4)の物質が架橋結合されることにより形成され得る。前記化学式(1)の物質、前記化学式(2)のシラン化合物、および前記化学式(4)の物質については、上記と同様である。前記化学式(2)のシラン化合物としては、へキサメチルジシラザンが望ましく挙げられる。
【0043】
また、前記フルオロ化前駆体層は、アミン、ジアミン、トリアミン、テトラアミン、ポリアミン、ピリジン、イミダゾール、カルボン酸、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸エステル、およびフェノールよりなる群から選択される少なくとも一種の化合物の作用基を有するフルオロ化有機分子が架橋結合されることにより形成され得る。
【0044】
また、前記金属固着促進因子層および前記フルオロ化前駆体層が複合された一つの層として存在する場合、前記化学式(1)の物質、前記化学式(2)のシラン化合物、または前記化学式(4)の物質と、アミン、ジアミン、トリアミン、テトラアミン、ポリアミン、ピリジン、イミダゾール、カルボン酸、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸エステル、およびフェノールよりなる群から選択される少なくとも一種の化合物の作用基を有するフルオロ化有機分子と、が架橋結合されてなる一つの層であってもよい。この場合、前記化学式(1)、(2)、または(4)いずれかの物質と、前記フルオロ化有機分子とは、架橋結合されて、並列に配置される。
【発明の効果】
【0045】
本発明の表示装置用基板の製造方法および表示装置用基板によれば、基板上にアドレス電極およびバス電極として好適に用いられるインクジェット印刷型の導電性ラインの固着を改善することができる。これにより、導電性ラインの固着促進および幅や位置を選定でき、高解像度の表示装置が可能なインクジェット印刷型の導電性ラインを基板上に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下、本発明について添付した図面を参照して説明する。
【0047】
導電性ラインの固着促進および幅や位置を選定できる中間層の代表的な製造工程について、図1を参照して説明する。
【0048】
ITOコーティングされたガラス基板1には、2ステップの自己組織化工程が行われる。
【0049】
第1ステップで、基板は、(3−アミノプロピル)トリエトキシシランである金属固着促進因子シラン2を10−1ないし10−5mol/l含む溶液内に10ないし90秒間浸漬され、1ないし60分間で、50ないし200℃で乾燥された後、室温に冷却される。これにより、金属固着促進因子シラン層7が得られる。
【0050】
第2ステップで、前記基板は、さらに、4−ヒドロキシベンゾトリフルオライド(4−hydroxylbenzotrifluoride)であるフルオロ化前駆体3を10−1ないし10−5mol/l含む溶液内に、10ないし90秒間浸漬され、1ないし60分間で、50ないし200℃で乾燥される。これにより、フルオロ化前駆体層6が得られる。
【0051】
フルオロ化前駆体3で表面エネルギーを減少させることによって、アドレス電極およびバス電極として好適に用いられるインクジェット印刷型の金属ナノ粒子4により形成される導電性ラインの最終解像度が制御されうる。また、この表面処理によって、インクジェット印刷型の銀ナノ粒子などからなる金属ナノ粒子4を、アミノ基のような特定の金属固着促進作用基に結合させることを可能にする。フルオロ化前駆体3が特定のライン解像度を確保するように表面エネルギーを減少させる。
【0052】
最後に、金属ナノ粒子4を含む銀ナノインクが多重ノズルインクジェットプリンタを使用してインクジェット印刷される。インクジェット印刷された基板を乾燥した後、20分間250℃で熱処理されて、インクジェット印刷されたライン4は、導電性を有する。
【0053】
次に、本発明による固着促進および線幅位置選定中間層の製造工程の他の実施形態について、図2を参照して説明する。図2は、上述した図1において、金属固着促進因子シラン2の代わりに、重合HMDSの層5を発生させ得る金属固着促進因子が用いられる。前記重合HMDSの層5は、プラズマ化学気相成長法(Plasma Enhanced Chemical Vapour Deposition:PECVD)などのプラズマ重合によって、HMDSのプラズマ重合膜が塗布されることにより形成される。
【0054】
次に、本発明による固着促進および線幅位置選定中間層の製造工程の他の実施形態について、図3を参照して説明する。金属固着促進因子シランおよびフルオロ化前駆体の二ステップの自己組織化工程、または、二ステップの工程からなる重合HMDS/フルオロ化前駆体処理(図1および図2)だけでなく、中間層はまた、フルオロ化前駆体3の存在内で金属固着促進因子シラン2の自己組織化を行う工程によって形成されうる(図3)。
【0055】
これにより、金属固着促進因子シランおよびフルオロ化前駆体層8が得られる。このような混合型の自己組織化単分子層(Mixed Self−Assembly Monolayer:MSAM)が基板の表面エネルギーを調整すると同時に導電性ラインの固着改善することができ、これによってアドレス電極およびバス電極に好適に用いられるインクジェット印刷型の導電性ライン4の高解像度を実現する。
【0056】
本発明において、各層におけるSi−C−Si、Si−N、Si−N−CおよびC−N−C結合(HMDSの場合と類似している)を基礎とした架橋結合高分子構造、または、C−N、C−O、C−S、C−P、Si−N、Si−O、Si−SおよびSi−Pを基礎とした金属固着促進有機作用基の存在は、X線光電子分光法(ESCA:Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)および全反射吸収フーリエ変換赤外分光法(ATR−FTIR:Attenuated Total Reflectance Fourier Transform Infrared Spectroscopy)によって検出されうる。
【0057】
本発明の方法では、最後に、銀ナノ粒子などの金属ナノ粒子4を含む金属ナノインクが多重ノズルインクジェットプリンタを使用して層6または8上にインクジェット印刷される。インクを乾燥させた後に印刷された基板は、20分間150℃ないし250℃で熱処理されて、インクジェット印刷されたライン4は、導電性を呈するする。
【0058】
本発明の方法により得られた表示装置用基板は、これから、PDPにおける前面基板および背面基板などとして、PDPの製造のための後続工程ステップのために使われうる。
【0059】
本発明がその特定実施形態に関連して説明されたが、当業者には、複数の変形、改造および変更が可能であることは明白である。したがって、本願に開示されたような本発明の望ましい実施形態は、制限的なものではなく、例示的なものと意図される。特許請求の範囲に限定されたように、本発明の精神から逸脱せず、多様な変更が行われうる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、PDP用基板関連の技術分野に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】金属固着促進因子層およびフルオロ化前駆体層が順次に配置された本発明の実施形態による表示装置用基板の製造方法の必須的なステップの断面図である。
【図2】金属固着促進因子層およびフルオロ化前駆体層が順次に配置された本発明の実施形態による表示装置用基板の製造方法の必須的なステップの断面図である。
【図3】金属固着促進因子層およびフルオロ化前駆体層が同時に塗布された本発明の実施形態による表示装置用基板の製造方法の必須的なステップの断面図である。
【符号の説明】
【0062】
1・・・基板
2・・・金属固着促進因子シラン
3・・・フルオロ化前駆体
4・・・導電性ライン/金属ナノ粒子
5・・・重合HMDS層
6・・・フルオロ化前駆体層
7・・・金属固着促進因子シラン層
8・・・金属固着促進因子シランおよびフルオロ化前駆体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の導電性ラインを有する表示装置用基板の製造方法であって、
基板上に金属固着促進因子層を塗布するステップと、
フルオロ化前駆体層を塗布するステップと、
複数の導電性ラインを塗布するステップと、を含む表示装置用基板の製造方法。
【請求項2】
前記金属固着促進因子層は、
NH、HSおよび/またはPHのプラズマ処理、または
下記化学式(1)の物質のプラズマ処理、または
下記化学式(2)のシラン化合物によるシランのプラズマ重合、によって塗布されることを特徴とする請求項1記載の表示装置用基板の製造方法。
【化1】

(前記化学式(1)において、Yは、窒素原子、硫黄原子、またはリン原子であり、Rは、水素原子および/または少なくとも一つのアルキル基であり、
【化2】

前記化学式(2)において、Zは、窒素原子、硫黄原子、またはリン原子であり、R’は、水素原子および/または下記化学式(3)の少なくとも一つのシラン基であり、
【化3】

前記化学式(3)において、R’’は、同一でも異なっていてもよく、アルキル基である。)
【請求項3】
前記金属固着促進因子層を塗布するために、下記化学式(4)の物質が使われることを特徴とする請求項1に記載の表示装置用基板の製造方法。
【化4】

(前記化学式(4)において、R’’’は、水素原子、ヒドロキシル基、塩素原子、またはアルコキシ基であり、Xは、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシル基、塩素原子、アルコキシ基、アルキル基、または有機基であり、前記有機基は、少なくとも一つの金属結合基を含む。)
【請求項4】
前記有機基が、アミン、ジアミン、トリアミン、テトラアミン、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、ポリアミン、アミド、ポリアミド、ヒドラジン、ピリジン、イミダゾール、チオフェン、カルボン酸、カルボン酸ハロゲン化物、硫化物、二硫化物、三硫化物、四硫化物、ポリスルフィド、スルホン酸、スルホン酸ハロゲン化物、リン酸、ホスホン酸エステル、エポキシド、フェノールおよびポリエーテルよりなる群から選択される少なくとも一種の化合物の残基を含むことを特徴とする請求項3に記載の表示装置用基板の製造方法。
【請求項5】
前記金属固着促進因子層は、湿式化学工程によって塗布されることを特徴とする請求項3または4に記載の表示装置用基板の製造方法。
【請求項6】
前記金属固着促進因子層は、前記基板を前記化学式(4)の物質を含む溶液内に浸漬することによって塗布されることを特徴とする請求項5に記載の表示装置用基板の製造方法。
【請求項7】
前記フルオロ化前駆体層を塗布するために、フルオロ化有機分子が使われることを特徴とする請求項1に記載の表示装置用基板の製造方法。
【請求項8】
前記フルオロ化有機分子は、アミン、ジアミン、トリアミン、テトラアミン、ポリアミン、ピリジン、イミダゾール、カルボン酸、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸エステルおよび、フェノールよりなる群から選択される少なくとも一種の化合物の作用基を有することを特徴とする請求項7に記載の表示装置用基板の製造方法。
【請求項9】
前記フルオロ化前駆体層は、湿式化学工程によって塗布されることを特徴とする請求項7または8に記載の表示装置用基板の製造方法。
【請求項10】
前記フルオロ化前駆体層は、前記基板を前記フルオロ化有機分子を含む溶液内に浸漬することによって塗布されることを特徴とする請求項9に記載の表示装置用基板の製造方法。
【請求項11】
前記溶液は、前記化学式(4)の物質を10−1ないし10−5mol/lの濃度で含むことを特徴とする請求項6に記載の表示装置用基板の製造方法。
【請求項12】
前記溶液は、前記フルオロ化有機分子を10−1ないし10−5mol/lの濃度で含むことを特徴とする請求項10に記載の表示装置用基板の製造方法。
【請求項13】
前記基板上に金属固着促進因子層を塗布するステップ、および、前記フルオロ化前駆体層を塗布するステップが同時に行われることを特徴とする請求項1に記載の表示装置用基板の製造方法。
【請求項14】
前記基板上に金属固着促進因子層を塗布するステップ、および、前記フルオロ化前駆体層を塗布するステップは、基板を溶液内に浸漬することによって行われ、
前記溶液は、下記化学式(4)の物質、および、アミン、ジアミン、トリアミン、テトラアミン、ポリアミン、ピリジン、イミダゾール、カルボン酸、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸、およびフェノールよりなる群から選択される少なくとも一種の化合物の作用基を有するフルオロ化有機分子を含むことを特徴とする請求項13に記載の表示装置用基板の製造方法。
【化5】

(前記化学式(4)において、R’’’は、水素原子、ヒドロキシル基、塩素原子、またはアルコキシ基であり、Xは、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシル基、塩素原子、アルコキシ基、アルキル基、または有機基であり、前記有機基は、少なくとも一つの金属結合基を含む。)
【請求項15】
前記金属固着促進因子層および前記フルオロ化前駆体層は、単層または複層であり、および/または、1nmないし10nmの厚さに塗布されることを特徴とする請求項1に記載の表示装置用基板の製造方法。
【請求項16】
前記基板は、平坦であり、および/または、可撓性のガラス基板、インジウムスズ酸化物がコーティングされたガラス基板、もしくは重合体基板である特徴とする請求項1または15に記載の表示装置用基板の製造方法。
【請求項17】
前記複数の導電性ラインは、インクジェット印刷によって塗布されることを特徴とする請求項1または15に記載の表示装置用基板の製造方法。
【請求項18】
前記インクジェット印刷において、金属ナノ粉末および/または金属ナノ化合物の液体分散溶液と、溶媒と、を含むインクが使われることを特徴とする請求項17に記載の表示装置用基板の製造方法。
【請求項19】
前記金属ナノ粉末および/または前記金属ナノ化合物は、金、銀、白金、パラジウムまたは銅を含むことを特徴とする請求項18に記載の表示装置用基板の製造方法。
【請求項20】
前記インクは、金属安定化有機重合体からなる添加剤を含むことを特徴とする請求項18に記載の表示装置用基板の製造方法。
【請求項21】
複数の導電性ラインを有する基板を備えた表示装置用基板であって、
金属固着促進因子層およびフルオロ化前駆体層を前記基板と前記導電性ラインとの間に有することを特徴とする表示装置用基板。
【請求項22】
前記導電性ラインは、粒径が1nmないし100nmである金属ナノ粉末を含むことを特徴とする請求項21に記載の表示装置用基板。
【請求項23】
前記金属固着促進因子層は、下記化学式(1)の物質、下記化学式(2)のシラン化合物、または、下記化学式(4)の物質が架橋結合されてなることを特徴とする請求項21に記載の表示装置用基板。
【化6】

(前記化学式(1)において、Yは、窒素原子、硫黄原子、またはリン原子であり、Rは、水素原子および/または少なくとも一つのアルキル基であり、
【化7】

前記化学式(2)において、Zは、窒素原子、硫黄原子、またはリン原子であり、R’は、水素原子および/または下記化学式(3)の少なくとも一つのシラン基であり、
【化8】

前記化学式(3)において、R’’は、同一でも異なっていてもよく、アルキル基であり、
【化9】

前記化学式(4)において、R’’’は、水素原子、ヒドロキシル基、塩素原子、またはアルコキシ基であり、Xは、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシル基、塩素原子、アルコキシ基、アルキル基、または有機基であり、前記有機基は、少なくとも一つの金属結合基を含む。)
【請求項24】
前記フルオロ化前駆体層は、アミン、ジアミン、トリアミン、テトラアミン、ポリアミン、ピリジン、イミダゾール、カルボン酸、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸エステル、およびフェノールよりなる群から選択される少なくとも一種の化合物の作用基を有するフルオロ化有機分子が架橋結合されてなることを特徴とする請求項21に記載の表示装置用基板。
【請求項25】
前記金属固着促進因子層および前記フルオロ化前駆体層は、順次に配置されることを特徴とする請求項21ないし24のうち何れか1項に記載の表示装置用基板。
【請求項26】
前記金属固着促進因子層および前記フルオロ化前駆体層は、
下記化学式(1)の物質、下記化学式(2)のシラン化合物、または下記化学式(4)の物質と、
アミン、ジアミン、トリアミン、テトラアミン、ポリアミン、ピリジン、イミダゾール、カルボン酸、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸エステル、およびフェノールよりなる群から選択される少なくとも一種の化合物の作用基を有するフルオロ化有機分子と、が架橋結合され、並列に配置されてなる一つの層で形成されることを特徴とする請求項21に記載の表示装置用基板。
【化10】

(前記化学式(1)において、Yは、窒素原子、硫黄原子、またはリン原子であり、Rは、水素原子および/または少なくとも一つのアルキル基であり、
【化11】

前記化学式(2)において、Zは、窒素原子、硫黄原子、またはリン原子であり、R’は、水素原子および/または下記化学式(3)の少なくとも一つのシラン基であり、
【化12】

前記化学式(3)において、R’’は、同一でも異なっていてもよく、アルキル基であり、
【化13】

前記化学式(4)において、R’’’は、水素原子、ヒドロキシル基、塩素原子、および/またはアルコキシ基であり、Xは、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシル基、塩素原子、アルコキシ基、アルキル基、および/または有機基であり、前記有機基は、少なくとも一つの金属結合基を含む。)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−165574(P2006−165574A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−353223(P2005−353223)
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】