説明

表示装置

【課題】液晶パネルに印加する電圧を調整することによってシリンドリカルレンズを形成する液晶レンズを用いた表示装置での3D表示時におけるクロストークを低減させることが可能な技術を提供することである。
【解決手段】
画像表示を行う表示パネルと、前記表示パネルの表示面側に配置され、第1の方向に延在し、前記第1の方向と交差する第2の方向に並設されるシリンドリカルレンズ状に屈折率を制御し視差障壁を形成する第2の液晶表示パネルとを備え、2次元表示と3次元表示とを切り替えて画像表示させる表示装置であって、前記第2の液晶表示パネルは、前記第1基板と前記第2基板とが液晶層を介して対向配置される一対の透明基板を備え、前記第1基板は、面状の透明電極を備え、前記第2基板は、透明電極材料からなり、前記第1の方向に延在し前記第2の方向に並設される透光性の短冊状電極と、前記短冊状電極に重ねて形成され、前記第1の方向に延在してなる線状の遮光部とを備えてなる表示装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に係わり、特に、画像を表示する表示パネルの表示面側にレンズ機能を有する液晶表示パネルを配置した液晶レンズ方式の3次元表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
眼鏡等を使用することなく裸眼による2次元(2D)表示と3次元(3D)表示とが切り替え可能な表示装置は、例えば、画像表示を行う第1の液晶表示パネルと、該第1の液晶表示パネルの表示面側(観察者側)に配置され、3D表示時には観察者の左右眼に別々の光線を入射させる視差障壁を形成する第2の液晶表示パネルとを備える構成となっている。このような2D表示と3D表示を切り替え可能な液晶表示装置では、第2の液晶表示パネルの液晶分子の配向を制御することにより、第2の液晶表示パネル内の屈折率を変化させ、表示面の上下方向に延在し左右方向に並設されるレンズ(レンチキュラレンズ、シリンドリカルレンズアレイ)領域を形成し、左右眼に対応する画素の光を観察者の視点へと振り向ける構成となっている。
【0003】
このような構成からなる液晶レンズ方式の3次元表示装置は、例えば、特許文献1に記載の自動立体視表示装置がある。この特許文献1に記載の表示装置では、液晶層を介して対向配置される一方の透明基板上に面状の電極が形成されると共に、他方の透明基板にはレンズの形成方向に延在する短冊状電極(線状電極)が形成され、レンズの配列方向に線状電極が並設される構成となっている。この構成により、短冊状電極に印加する電圧と面状電極に印加する電圧とを制御して液晶分子の屈折率を制御し、2D表示と3D表示とを切り替え制御可能な構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2009−520231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の表示装置では、3D表示時において、所定の目のみに表示される視差画像が他方の目にも見えるいわゆるクロストークの発生が懸念されている。このクロストークが発生すると、本来、見えるべきでない他方の目の画像が重なって表示されるために、3D表示の品質が大きく低下してしまうので、クロストークの低減が切望されている。
【0006】
本発明はこれらの問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、液晶パネルに印加する電圧を調整することによってシリンドリカルレンズを形成する液晶レンズを用いた表示装置での3D表示時におけるクロストークを低減させることが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)前記課題を解決すべく、画像表示を行う表示パネルと、前記表示パネルの表示面側に配置され、第1の方向に延在し、前記第1の方向と交差する第2の方向に並設されるシリンドリカルレンズ状に屈折率を制御し視差障壁を形成する第2の液晶表示パネルとを備え、2次元表示と3次元表示とを切り替えて画像表示させる表示装置であって、前記第2の液晶表示パネルは、前記第1基板と前記第2基板とが液晶層を介して対向配置される一対の透明基板を備え、前記第1基板は、面状の透明電極を備え、前記第2基板は、透明電極材料からなり、前記第1の方向に延在し前記第2の方向に並設される透光性の短冊状電極と、前記短冊状電極に重ねて形成され、前記第1の方向に延在してなる線状の遮光部とを備えてなる表示装置である。
【0008】
(2)前記課題を解決すべく、画像表示を行う表示パネルと、前記表示パネルの表示面側に配置され、第1の方向に延在し、前記第1の方向と交差する第2の方向に並設されるシリンドリカルレンズ状に屈折率を制御し視差障壁を形成する第2の液晶表示パネルとを備え、2次元表示と3次元表示とを切り替えて画像表示させる表示装置であって、前記第2の液晶表示パネルは、前記第1基板と前記第2基板とが液晶層を介して対向配置される一対の透明基板を備え、前記第1基板は、面状の透明電極を備え、前記第2基板は、遮光性を有する金属材料からなり、前記第1の方向に延在し前記第2の方向に並設される短冊状電極を備えてなる表示装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、液晶パネルに印加する電圧を調整することによってシリンドリカルレンズを形成する液晶レンズを用いた表示装置において、3D表示時のクロストークを低減させ表示画質を向上させることができる。
【0010】
本発明のその他の効果については、明細書全体の記載から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態1の表示装置である液晶表示装置の全体構成を説明するための断面図である。
【図2】本発明の実施形態1の表示装置を構成する第1の液晶表示パネルの概略構成を説明するための図である。
【図3】実施形態1の第1の液晶表示パネルにおける第1基板側の薄膜トランジスタ構成を形成するための図である。
【図4】実施形態1の第1の液晶表示パネルにおける画素構成を説明するための図である。
【図5】本発明の表示装置における第2の液晶表示パネルの詳細構成を説明するための平面図である。
【図6】図5に示すA−A’線での断面図である。
【図7】従来の第2の液晶表示パネルにおける液晶分子の配向状態を説明するための図である。
【図8】従来の第2の液晶表示パネルにおける短冊状電極位置と液晶レンズの屈折率との関係を説明するための図である。
【図9】本発明の実施形態1の第2の液晶表示パネルにおける短冊状電極と液晶レンズの屈折率との関係説明するため図である。
【図10】液晶レンズを用いた3D表示時の観察者と第1の液晶表示パネルとの関係を説明するため図である。
【図11】本発明の表示装置である液晶表示装置における遮光部占有率とモアレ強度との計測結果を示す図である。
【図12】本発明の表示装置である液晶表示装置における電極占有率とクロストークとの計測結果を示す図である。
【図13】本発明の実施形態1の第2の液晶表示パネルにおける短冊状電極及び遮光部と対向電極との他の構成例を説明するため図である。
【図14】本発明の実施形態2の表示装置である液晶表示装置の概略構成を説明するための図である。
【図15】本発明の実施形態3の表示装置における第2の液晶表示パネルLCD2の概略構成を説明するための図である。
【図16】本発明の実施形態4の表示装置における第2の液晶表示パネルの概略構成を説明するための図である。
【図17】本発明の実施形態5の表示装置である液晶表示装置の概略構成を説明するための図である。
【図18】本発明の実施形態6の表示装置における第2の液晶表示パネルの概略構成を説明するための図である。
【図19】本発明の実施形態7の表示装置における第2の液晶表示パネルの概略構成を説明するための図である。
【図20】本発明の実施形態8の表示装置における第2の液晶表示パネルの概略構成を説明するための図である。
【図21】本発明の実施形態9の表示装置である液晶表示装置の概略構成を説明するための図である。
【図22】本発明の表示装置を備える実施形態10の情報機器の概略構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。ただし、以下の説明において、同一構成要素には同一符号を付し繰り返しの説明は省略する。
【0013】
〈実施形態1〉
〈全体構成〉
図1は本発明の実施形態1の表示装置である液晶表示装置の全体構成を説明するための断面図であり、以下、図1に基づいて、実施形態1の表示装置の全体構成を説明する。ただし、以下の説明では、画像表示を行う表示パネルとして非発光型の第1の液晶表示パネルLCD1を用いる場合について説明するが、画像表示を行う表示パネルは他の非発光型の表示パネルや有機EL表示パネル等の自発光型の表示パネル等を用いる構成であってもよい。
【0014】
実施形態1の液晶表示装置は、画像表示用の液晶表示パネルである第1の液晶表示パネルLCD1と、透過光の屈折率を制御してレンズ(レンチキュラレンズ、シリンドリカルレンズアレイ)として機能する第2の液晶表示パネルLCD2とを備える構成となっている。この構成からなる実施形態1の液晶表示装置は、図1に示すように、バックライトユニット(バックライト装置)BLUから順番に、第1の液晶表示パネルLCD1、及び第2の液晶表示パネルLCD2がそれぞれ重ねて配置されている。すなわち、第1の液晶表示パネルLCD1の表示面側(観察者側)に第2の液晶表示パネルLCD2が配置されている。このとき、第1の液晶表示パネルLCD1と第2の液晶表示パネルLCD2との位置合わせがずれるのを防止するために、第1の液晶表示パネルLCD1と第2の液晶表示パネルLCD2とは接着部材ADHにより固定されている。なお、接着部材ADHとしては、周知の樹脂部材等からなり、第1基板SUB11,SUB21及び第2基板SUB12,SUB22として使用する透明基板(例えば、ガラス基板)と略同等の屈折率を有する部材を用いる。
【0015】
実施形態1の第2の液晶表示パネルLCD2は、例えば、ねじれネマティック方式(以下、TN(Twisted Nematic)方式と記す)の液晶表示パネルで形成されており、各電極(短冊状電極)に電圧を印加しない状態で第1の液晶表示パネルLCD1からの出射光(表示画像)をそのままで透過(通過)させる2D表示となり、電圧の印加により第1の液晶表示パネルLCD1からの出射光(表示画像)を観察者の左右眼に別々入射させる両眼視差を与えるための視差障壁となるレンズ作用を行う3D表示となる。このように、実施形態1の第2の液晶表示パネルLCD2は、液晶に電界を印加しない状態においては入射光をそのまま透過させる液晶表示パネルであり、その詳細については後に詳述する。ただし、第2の液晶表示パネルLCD2はTN方式に限定されることはなく、他の方式であってもよい。
【0016】
また、第1の液晶表示パネルLCD1は、TN方式の液晶表示パネル、VA(Vertical Alignment)方式の液晶表示パネル、及びIPS(In-Plane Switching)方式の液晶表示パネル等の何れの方式の液晶表示パネルを用いる構成であってもよい。なお、第1の液晶表示パネルLCD1は周知の液晶表示パネルとなるので、拡散板等の光学シートや偏光板等は省略する。
【0017】
〈第1の液晶表示パネルの構成〉
図2は本発明の実施形態1の表示装置を構成する第1の液晶表示パネルの概略構成を説明するための図、図3は実施形態1の第1の液晶表示パネルにおける第1基板側の薄膜トランジスタ構成を形成するための図、図4は実施形態1の第1の液晶表示パネルにおける画素構成を説明するための図である。ただし、図中に示すX,Yは、それぞれX軸,Y軸を示す。
【0018】
図2に示すように、実施形態1の液晶表示パネルLCD1は周知の液晶表示パネルであり、液晶層LCを介して、ガラス基板等の周知の一対の透明基板(第1基板SUB11,第2基板SUB12)が対向配置される構成となっている。第1基板SUB11には周知の薄膜トランジスタや画素電極等が形成され、第2基板SUB12にはカラーフィルタや周知のブラックマトリクス等が形成されている。このとき、例えば、第1基板SUB11は第2基板SUB12よりも大きな透明基板で形成され、周辺部に外部との接続のための接続端子等が形成されている。また、第1基板SUB11と第2基板SUB12と固定及び液晶の封止は、第2基板SUB12の周辺部に沿って環状に塗布された周知のシール材で固定され、液晶も封止される。さらには、第1基板SUB11のバックライト装置側(液晶側の面と対向する面)には、第1の偏光板POL1が配置され、第2基板SUB12の表示面側(液晶側の面と対向する面)には、第2の偏光板POL2が配置され、第1の偏光板POL1と第2の偏光板POL2は偏光方向が90°をなすように配置されている。
【0019】
ただし、実施形態1の液晶表示パネルLCD1では、液晶が封入された領域の内で、カラー表示用の赤(R),緑(G),青(B)の各副画素からなる画素領域(以下、画素と略記する)の形成される領域が表示領域となる。従って、液晶が封入されている領域内であっても、画素が形成されておらず表示に係わらない領域は表示領域とはならない。
【0020】
実施形態1の液晶表示パネルLCD1では、図3に示すように、第1基板SUB11の液晶側の面であって表示領域内には、図中X方向に延在しY方向に並設されるゲート線GLが形成されている。また、図中Y方向に延在しX方向に並設されるドレイン線DLが形成されている。ドレイン線DLとゲート線GLとで囲まれる矩形状の領域は、第2基板SUB12に形成される赤(R),緑(G),青(B)のカラーフィルタに対応しており、このRGBの3つの副画素SPLからなる各画素が、図4に示すように、表示領域内においてマトリックス状に配置される。なお、実施形態1においては、RGBの各副画素SPLがY方向に並設される構成としたが、これに限定されることはなく、RGBの各副画素SPLがX方向に並設される構成等の他の配列であってもよい。
【0021】
各副画素SPLは、例えば、ゲート線GLからの走査信号によってオンされる薄膜トランジスタTFTと、このオンされた薄膜トランジスタTFT及び該薄膜トランジスタTFTのソース線に接続されるコンタクトホールCHを介してドレイン線DLからの階調信号(階調電圧)が供給される図示しない画素電極と、隣接するゲート線GLとの間に形成される寄生容量Csとを備えている。また、IPS方式の液晶表示パネルの場合には、薄膜トランジスタTFTが形成される側の第1基板SUB11に、階調信号の電位に対して基準となる電位を有する共通信号が供給される図示しない共通電極を備える。また、VA方式やTN方式の液晶表示パネルの場合には、第2基板SUB12の側に、カラーフィルタ等と共に共通電極が形成される。
【0022】
〈第2の液晶表示パネルの構成〉
図5は本発明の表示装置における第2の液晶表示パネルの詳細構成を説明するための平面図、図6は図5に示すA−A’線での断面図であり、以下、図5及び図6に基づいて、実施形態1の第2の液晶表示パネルについて詳細に説明する。ただし、図中に示すX,Y,Zは、それぞれX軸,Y軸,Z軸を示す。
【0023】
図5に示すように、実施形態1の第2の液晶表示パネルLCD2は、Y方向に延在しX方向に並設される複数の短冊状電極PXを備え、各短冊状電極PXの一端は第2の液晶表示パネルLCD2の長辺側の一方の辺縁部に沿ってX方向に延在して形成される配線部WRに接続される構成となっている。このとき、第2の液晶表示パネルLCD2における短冊状電極PXは、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)やZnO(酸化亜鉛)系の透明電極で形成され、配線部WRは透明電極に限定されない。この構成により、後に詳述するように、実施形態1の第2の液晶表示パネルLCD2では、隣接して配置される一対の短冊状電極PXの間にY方向に延在するシリンドリカルレンズがX方向に並設され、レンチキュラル状にシリンドリカルレンズアレイが形成される。このとき、第2の液晶表示パネルLCD2のシリンドリカルレンズアレイが形成される領域は、第1の液晶表示パネルLCD1の表示領域に対応する位置である。その結果、実施形態1の液晶表示装置では、観察者の左右両眼がX方向に並んでいる場合に、異なる画素の光すなわち異なる視点の画像を観察者の左右両眼にそれぞれ振り分けることが可能となり、立体視が可能となる。
【0024】
このとき、図6のA−A’線での断面図に示すように、実施形態1の第2の液晶表示パネルLCD2は、液晶(液晶層)LCを介して一対の透明基板(第1基板SUB21,第2基板SUB22)が対向配置される構成となっている。図中上側に配置される第2基板22の対向面側(液晶側の面)には、例えば、周知のブラックマトリクス等の樹脂部材からなり、Y方向に延在しX方向に並設される遮光部BMが形成されている。この遮光部BMの上層すなわち液晶側には、短冊状電極PXが形成されている。また、実施形態1の遮光部BMでは、短冊状電極PXの並設方向に対する幅が当該短冊状電極PXと同じ幅となる。
【0025】
なお、前述のように、短冊状電極PXと遮光部BMとは近接して配置したほうが、視差が生じず透過率が高くなるために、近接して配置することが望ましいが、これに限定されることはなく、短冊状電極PXと遮光部BMを別々の透明基板(第1基板SUB21,第2基板SUB22)に形成する構成であってもよい。また、遮光部BMの形成材料は、ブラックマトリクス等と同様の樹脂材料に限定されることはなく、遮光性を有する他の材料であってもよい。さらには、短冊状電極PXの断面形状は矩形状に限定されることはなく、他の形状であってもよい。例えば、斜め方向に電界が生じるように、台形や円弧状としてもよい。
【0026】
一方、第1基板SUB21の対向面側(液晶側の面)には、ITOやZnO等の透明導電膜で形成される平板状の電極(対向電極)CTが形成されている。このように、実施形態1の第2の液晶表示パネルLCD2では、短冊状電極PXと遮光部BMとを重ねて形成することにより、後に詳述するように、短冊状電極PXの形成個所における屈折率の乱れに伴うクロストークの影響を大幅に低減することが可能となるので、3D表示時における画質を大幅に向上することが可能となる。
【0027】
〈第2の液晶表示パネルの詳細説明〉
次に、図7に従来の第2の液晶表示パネルにおける液晶分子の配向状態を説明するための図、図8に従来の第2の液晶表示パネルにおける短冊状電極位置と液晶レンズの屈折率との関係を説明するための図、図9に本発明の実施形態1の第2の液晶表示パネルにおける短冊状電極と液晶レンズの屈折率との関係説明するため図、図10に液晶レンズを用いた3D表示時の観察者と第1の液晶表示パネルとの関係を説明するため図を示し、以下、図7〜図10に基づいて、実施形態1の液晶表示装置による3D表示について説明する。ただし、図7(a)は短冊状電極と対向電極とに電界を印加した3D表示時における液晶レンズの形成部分での電界の状態を示す図であり、図7(b)は短冊状電極と対向電極とに電界を印加しない2D表示時における液晶レンズの形成部分での液晶分子の状態を示す図であり、図7(c)は短冊状電極と対向電極とに電界を印加した3D表示時における液晶レンズの形成部分での液晶分子の状態を示す図である。
【0028】
図7(a)に示すように、従来の第2の液晶表示パネルLCD3は、観察者側に配置される第2基板SUB32の対向面側に透明導電材料からなる短冊状電極PXが形成され、液晶層LCを介して対向配置される第1基板SUB31の対向面側に透明導電材料からなる平板状の対向電極CTが形成されている。このような構成からなる従来の第2の液晶表示パネルLCD3を用いた液晶表示装置において、2D表示を行う場合には、第1の液晶表示パネルLCD1には2D表示に対応した画像、すなわち従来の2D表示と同じ画像が表示される。このときは、第1の液晶表示パネルLCD1の観察者側に配置される第2の液晶表示パネルLCD2では、短冊状電極PXと対向電極CTとには同じ電圧が印加され、その間には電界が生じない構成となる。その結果、図7(b)に示すように、液晶分子LCは初期配向状態のままとなり、第1の液晶表示パネルLCD1の全ての画素からの表示光が観察者の左右の目に到達し、2D表示の画像が認識されることとなる。
【0029】
一方、3D表示を行う場合には、実施形態1の第2の液晶表示パネルLCD2では、図7(a)に示すように、短冊状電極PXと対向電極CTとの間に矢印で示す電界EFを印加することによって、隣接配置される各短冊状電極PXとの間にY方向に延在しX方向に並設されるシリンドリカルレンズを形成する構成としている。すなわち、図7(c)に示すように、短冊状電極PXと対向電極CTとの間に印加される電界EFにより、液晶分子の配向方向を制御し、その屈折率を隣接する短冊状電極PXとの間で変化させ、シリンドリカルレンズを形成している。
【0030】
ここで、本願発明者は、図7(a)に示すように、短冊状電極PXが形成される領域では、電界EFの方向がX方向に対して反対方向となるために液晶分子LCの配向方向の制御が困難となり、点線Bで示す領域に液晶配向の乱れであるディスクリネーションが生じ、その結果、屈折率分布が乱れてしまうことを発見した。図8に示す従来構成の1つのシリンドリカルレンズを形成するための一対の短冊状電極PX間におけるX方向の屈折率の計測結果のグラフG1から明らかなように、隣接する短冊状電極PXとの間である区間P2〜区間P3においてはシリンドリカルレンズが形成される。これに対して、短冊状電極PXが形成される区間P1〜区間P2及び区間P3〜区間P4では、液晶レンズであるシリンドリカルレンズの屈折率が大きく乱れてしまい、その結果、クロストークが増大してしまうことが判明した。
【0031】
このように、本願発明者らは液晶パネルを用いて形成したシリンドリカルレンズアレイの特性を計測し、隣接するレンズ(シリンドリカルレンズ)との境界部分で生じる液晶分子の配向乱れが最も大きな原因であることを突き止めた。すなわち、それぞれのシリンドリカルレンズを形成するための電界を印加する短冊状電極の内で、隣接するレンズ間に形成される電極部分では、短冊状電極と面状電極との間の領域にディスクリネーションすなわち液晶分子の配向乱れが発生し、この配向乱れにより屈折率分布がレンズ形状とならないために、クロストークが生じてしまう。
【0032】
従って、実施形態1の第2の液晶表示パネルLCD2では、前述する図6に示すように、短冊状電極PXに重畳して遮光部BMを形成する構成としているので、図9に示す実施形態1の第2の液晶表示パネルLCD2におけるシリンドリカルレンズを形成するための一対の短冊状電極PX間でのX方向の屈折率の計測結果のグラフG2から明らかなように、一対の短冊状電極PXとの間の区間P2〜区間P3においてはシリンドリカルレンズを形成することができると共に、短冊状電極PXが形成される区間P1〜区間P2及び区間P3〜区間P4の領域では屈折率の乱れた表示光を遮蔽している。その結果、実施形態1の第2の液晶表示パネルLCD2では、クロストークを低減させた視差障壁となるシリンドリカルレンズを形成することが可能となり、3D表示時における画質を向上させることが可能となる。このとき、従来の構成では6%のクロストークが生じていたが、実施形態1の液晶表示装置ではクロストークを3%に半減させることができる。なお、屈折率は、位置の二次関数で変化することが好ましいが、二次関数の屈折率からずれていてもクロストークが生じない程度に屈折率分布が生じていればよい。例えば、2視点の場合には、レンズ中心では屈折率変化が小さくてもクロストークは小さいからである。
【0033】
また、実施形態1の表示装置では、観察者の両眼に視差を与えることによって裸眼3D表示を可能としているので、短冊状電極PXの間隔は、例えば、図10に示すように、観察者の右目REには第1の液晶表示パネルLCD1に表示される右目用画像Rが入射され、左目LEには左目用画像Lが入射されるように形成されている。ただし、短冊状電極PXの間隔は、観察者の視点位置に応じて変化することとなるので、左右の目の間隔B、第1の液晶表示パネルLCD1の画素ピッチP、第2の液晶表示パネルLCD2に形成されるレンズLZのピッチ(レンズピッチ)Qの間には、下記の式1に示す関係がある。
【0034】
(数1)
Q=2P/(1+P/B) ・・・(式1)
従って、実施形態1の液晶表示装置を構成する第1の液晶表示パネルLCD1と第2の液晶表示パネルLCD2とは、予め設定した視点に対して、式1に従った画素ピッチP及びレンズピッチQを有する構成となっている。なお、実施形態1の液晶表示装置は2視点に限定されることはなく、2視点以上の他視点方式にも応用できるものである。
【0035】
図11は本発明の表示装置である液晶表示装置における遮光部占有率とモアレ強度との計測結果を示す図、図12は本発明の表示装置である液晶表示装置における電極占有率とクロストークとの計測結果を示す図である。特に、図11に示すモアレ強度はモアレの見えやすさを示しており、遮光部占有率cは遮光部BMのX方向幅SとレンズピッチQとから、c=S/Qで定義される。また、図12に示す電極占有率rは、短冊状電極PXのX方向幅WとレンズピッチQとから、r=W/Qで定義される。
【0036】
図11のグラフG3から明らかなように、モアレの強度は、画素の輝度変化とレンズ電極による透過率変化の基本空間周波数における振幅に比例する。すなわち、電極幅を小さくすると、基本空間周波数での振幅が小さくなるためモアレが発生しにくくなる。従って、モアレを発生させないためには、遮光部BMの幅すなわち遮光幅は小さいことが望ましい。一方、モアレを気にならない程度に低減するためには、モアレ強度を0.3以下とする必要があり、グラフG3から遮光部占有率は0.1以下とすることが望ましい。また、バリア方式の3Dに用いられる電極占有率0.5のITO電極と同程度のモアレ強度0.15以下とするためには,遮光部占有率は0.05以下とすることが望ましい。
【0037】
また、図12に示す短冊状電極PXの幅と遮光部BMの幅とが同じ実施形態1においては、電極幅と遮光部幅とが同じ場合のグラフG6から明らかなように、電極占有率を0.05以上とすることが望ましい。
【0038】
以上説明したように、実施形態1の表示装置である液晶表示装置では、画像表示を行う第1の液晶表示パネルLCD1の表示面側に第2の液晶表示パネルLCD2を配置され、3D表示時には第2の液晶表示パネルLCD2に視差障壁となるシリンドリカルレンズを形成すると共に、第1の液晶表示パネルLCD1に3D表示に対応した映像を表示させる構成となっている。
【0039】
また、第2の液晶表示パネルLCD2の一方の透明基板に短冊状電極PXが形成され、液晶層を介して対向配置される他方の透明基板に平板状の対向電極CTが形成され、3D表示時には短冊状電極PXと対向電極CTとの間に電界を印加して短冊状電極PXの延在方向に延在すると共に、その並設方向に並設されるシリンドリカルレンズを形成することにより、3D表示時における視差障壁としており、さらには、短冊状電極PXに沿って重ねて形成される遮光部が形成される構成となっているので、液晶分子の配向乱れに伴う屈折率分布の乱れる領域を通過する表示光を遮光することができるので、3D表示時におけるクロストークを大幅に低減させることが可能となり、その結果、3D表示画像を高画質で表示させることが可能となる。
【0040】
また、実施形態1の第2の液晶表示パネルLCD2では、図13(a)に示すように、第2基板SUB22の表面に近い側に遮蔽部BMを形成し、該遮蔽部BMの上層に側に対向電極CTを形成する構成としたが、これに限定されることはない。例えば、図13(b)に示すように、第2基板SUB22に近い側に短冊状電極PXを形成し、該短冊状電極PXの上層に遮光部BMを形成する構成であってもよい。また、図13(c)に示すように、第2基板SUB22の側に平板状の対向電極CTを形成し、第1基板SUB21の側に遮光部BMと短冊状電極PXとをこの順番で形成する構成であってもよい。さらには、図13(d)に示すように、第2基板SUB22の側に平板状の対向電極CTを形成し、第1基板SUB21の側に短冊状電極PXと遮光部BMとをこの順番で形成する構成であってもよい。特に、図13(b)や図13(d)に示すように、短冊状電極PXよりも液晶層LCの側に遮光部BMを形成する場合には、遮光部BMをレジストとして短冊状電極PXをエッチングすることができるので、遮光部BMの形成に伴う製造工程の増加を防止することができるという格別の効果を得ることができる。
【0041】
〈実施形態2〉
図14は本発明の実施形態2の表示装置である液晶表示装置の概略構成を説明するための図であり、以下、図14に基づいて実施形態2の液晶表示装置について説明する。ただし、実施形態2の液晶表示装置は、第2の液晶表示パネルLCD2に形成される遮光部BMの構成を除く他の構成は実施形態1と同様となる。従って、以下の説明では、遮光部BMと短冊状電極PXとについて詳細に説明する。また、説明を簡単にするために、図14は第2基板SUB22を図中下側にし、第1基板SUB21を図中上側としている。
【0042】
図14に示すように、実施形態2の第2の液晶表示パネルLCD2は、X方向すなわち短冊状電極PXの並設方向に対する遮光部BMの幅Sが当該短冊状電極PXの幅Wよりも小さい構成となっている。このとき、図14に示す遮光部BMのX方向側の辺縁部は短冊状電極PXのX方向側の辺縁部よりも中心に寄った構成となっている。すなわち、実施形態2の短冊状電極PXの幅Wは遮光部BMの幅Sよりも大きく形成され、当該遮光部BMのX方向に対向する辺縁部よりも短冊状電極PXの辺縁部が外側に形成されている。その結果、短冊状電極PXの液晶側面の一部が遮光部BMより露出する構成となっている。
【0043】
このような構成とすることにより、実施形態2の第2の液晶表示パネルLCD2では、透明電極からなる短冊状電極PXのX方向幅Wと遮光部BMのX方向幅Sとをそれぞれ異なる幅で形成することが可能となる。このとき、図12に示す透明電極のみで形成した場合の電極占有率とクロストークとの計測結果のグラフG4、及び遮光部占有率が0.06時の電極占有率とクロストークとの計測結果のグラフG5から明らかなように、電極占有率rが0.05以下、及び0.2以上の領域でクロストークが急激に増加することが分かる。電極占有率rが小さい場合は、屈折率分布の形成が不十分でクロストークが生じると考えられる。一方、電極占有率rが大きい場合は、短冊状電極PX上からクロストークが生じると考えられる。したがって、ITOの透明電極材料により短冊状電極PXを形成する場合、電極占有率rは0.05以上、又は0.2以下が望ましい。
【0044】
すなわち、モアレの低減を重視する場合には、遮光部BMの幅Sを短冊状電極PXの幅Wよりも狭くすることが望ましい。また、遮光部BMによる遮光部占有率cは電極占有率rよりも小さく、0.1以下、特に、0.05以下とすることが望ましい。
【0045】
ここで、実施形態2の液晶表示装置では、短冊状電極PXを透明電極材料で形成する構成としているので、グラフG4及びグラフG5並びに図11のグラフG3から明らかなように、遮光部の幅Sを狭くすることにより、モアレの発生を低減することができ、2D表示時の輝度を向上させることが可能となる。このとき、遮光部BMのX方向幅Sの下限は3D表示時のクロストークによって制約され、遮光部BMの幅の上限はモアレ及び2D表示時の輝度によって制約される。
【0046】
このように、実施形態2の液晶表示装置における第2の液晶表示パネルLCD2では、短冊状電極PXのX方向の幅Wよりも遮光部BMのX方向幅Sを小さくする構成となっているので、実施形態1の効果に加えて、2D表示時の輝度を向上させることが可能となる。
【0047】
なお、実施形態2においては、短冊状電極PXが第2基板SUB22に近い側に形成される場合について説明したが、図13に示す実施形態1と同様に、短冊状電極PXよりも遮光部BMを第2基板SUB22に近い側に形成する構成であってもよい。さらには、第1基板SUB21に短冊状電極PXと遮光部BMとを形成し、第2基板SUB22に対向電極CTを形成する構成であってもよい。
【0048】
〈実施形態3〉
図15は本発明の実施形態3の表示装置における第2の液晶表示パネルLCD2の概略構成を説明するための図であり、特に、図15(a),(d)は短冊状電極PXと液晶分子LCのプレチルト角と初期配向方向とを示す図であり、図15(b),(e)は電界印加時の配向不良個所と短冊状電極PXとの関係を示す図であり、図15(c),(f)は短冊状電極PXと遮光部BMとの位置関係を示す図である。ただし、実施形態3の第2の液晶表示パネルLCD2は、短冊状電極PXと重ねて配置される遮光部BMのX方向の形成位置が異なるのみであり、他の構成は実施形態2と同様の構成である。従って、以下の説明では、遮光部BMの形成位置について詳細に説明する。
【0049】
図15(a)に示すように、液晶分子LCの長軸方向がX方向に初期配向されると共に、当該液晶分子LCの長軸方向の図中右側が第2基板SUB22よりも持ち上がるようなプレチルト角を有する場合、短冊状電極PXと図示しない対向電極CTとの間に電界EFが印加されると、図15(b)に示すように、短冊状電極PXの図中左端側すなわち液晶分子LCの長軸方向の端部の内で持ち上がっていない側に配向不良個所DDPが形成される。従って、図15(c)に示すように、短冊状電極PXのX方向の図中左側端部に遮光部BMを形成することにより、前述する実施形態2の効果に加えて、遮光部BMのX方向幅を増加させることなく、効果的に配向不良個所すなわち屈折率分布が乱れる領域を遮光することができるという格別の効果を得ることが可能となる。
【0050】
同様にして、図15(d)に示すように、X方向に初期配向される液晶分子LCの長軸方向の図中左側が第2基板SUB22よりも持ち上がるようなプレチルト角を有する場合では、短冊状電極PXと対向電極CTとの間への電界EFの印加により、図15(e)に示すように、短冊状電極PXの図中右端側すなわち液晶分子LCの長軸方向の端部の内で持ち上がっていない側に配向不良個所DDPが形成される。従って、図15(c)に示すように、短冊状電極PXのX方向の図中右側端部に遮光部BMを形成することにより、前述する実施形態2の効果に加えて、遮光部BMのX方向幅を増加させることなく、効果的に配向不良個所すなわち屈折率分布が乱れる領域を遮光することが可能となる。
【0051】
なお、プレチルト角を有しない初期配向では、遮光部は短冊状電極PXの中央部付近に形成する。
【0052】
〈実施形態4〉
図16は本発明の実施形態4の表示装置における第2の液晶表示パネルの概略構成を説明するための図であり、実施形態2とは異なり、短冊状電極PXのX方向幅Wが遮光部BMのX方向幅Sよりも小さい場合である。従って、以下の説明では、短冊状電極PXと遮光部BMとの構成について詳細に説明する。
【0053】
図16から明らかなように、実施形態4の短冊状電極PXのX方向幅Wが遮光部BMのX方向幅Sよりも小さい場合である。このとき、第2基板SUB22に近い側に短冊状電極PXが形成され、該短冊状電極PXの上層に重ねて遮光部BMを形成する構成となっているので、短冊状電極PXはX方向すなわち並設方向に対して遮光部BMに覆われる構成となる。
【0054】
実施形態4の液晶表示装置においても、前述する実施形態2の液晶表示装置と同様の構成となるので、図11及び図12のグラフG3〜G6から明らかなように、ITOの透明電極材料により短冊状電極PXを形成する場合、電極占有率rは0.05以上、又は0.2以下が望ましい。また、遮光部BMによる遮光部占有率cは、0.1以下、特に、0.05以下とすることが望ましい。さらには、電極占有率rは遮光部占有幅よりも大きくし,かつ0.05以上0.2以下とすることが望ましい。
【0055】
このとき、実施形態4の液晶表示装置では、遮光部BMのX方向幅Sを大きくすることが可能となるので、3D表示時におけるクロストークを大幅に低減させる、すなわち3D表示時における画質を大幅に向上させることが可能となる。
【0056】
〈実施形態5〉
図17は本発明の実施形態5の表示装置である液晶表示装置の概略構成を説明するための図である。ただし、実施形態5の液晶表示装置では、第2の液晶表示パネルLCD2の短冊状電極PX1が遮光性を有する金属材料で形成される構成が異なるのみで、他の構成は実施形態1の第2の液晶表示パネルLCD2と同様となる。従って、以下の説明では、短冊状電極PX1について詳細に説明する。
【0057】
図17に示すように、実施形態5の第2の液晶表示パネルLCD2においても、短冊状電極PX1はY方向に延在しX方向に並設される構成となっており、各短冊状電極PX1の一端は第2の液晶表示パネルLCD2の長辺側の一方の辺縁部に沿ってX方向に延在して形成される配線部WRに接続される構成となっている。実施形態5の第2の液晶表示パネルLCD2は、液晶(液晶層)LCを介して対向配置される一対のガラス基板等の透明基板(第1基板SUB21,第2基板SUB22)からなり、図中上側に配置される第2基板22の対向面側(液晶側の面)には、例えば、反射率の小さいCr(クロム),Mo(モリブデン),W(タングステン),Ta(タンタル),Nb(ニオブ)等又はその合金からなる金属電極材料により短冊状電極PX1が形成されている。
【0058】
従って、実施形態1と同様に、短冊状電極PX1のX方向幅が遮光領域の幅となるので、実施形態1の液晶表示装置と同様の効果を得ることが可能となる。さらには、遮光性を有する金属材料で短冊状電極PX1を形成しているので、遮光部BMを形成する工程が不要となり、製造工程を増加させることなく遮光領域を形成できるという格別の効果を得ることが可能となる。ただし、実施形態1と同様に、短冊状電極PX1の断面形状は矩形に限定されることはなく、他の形状であってもよい。例えば、斜め方向に電界が生じるように、台形や円弧状としてもよい。
【0059】
また、第1基板SUB21の対向面側(液晶側の面)には、ITOやZnO等の透明導電膜で形成される平板状の電極(対向電極)CTが形成されている。
【0060】
以上に説明した構成により、実施形態1と同様に、短冊状電極PX1の形成個所における屈折率の乱れに伴うクロストークの影響を大幅に低減することが可能となり、3D表示時における画質を大幅に向上することが可能となる。
【0061】
また、短冊状電極PX1のX方向幅については、実施形態1と同様、図11のグラフG3から明らかなように、モアレを発生させないためには、遮光部BMの幅すなわち遮光幅は小さいことが望ましい。一方、モアレを気にならない程度に低減するためには、モアレ強度を0.3以下とする必要があるので、遮光部占有率は0.1以下とすることが望ましい。また、バリア方式の3Dに用いられる電極占有率0.5のITO電極と同程度のモアレ強度0.15以下とするためには,遮光部占有率は0.05以下とすることが望ましい。さらには、図12のグラフG6から明らかなように、電極占有率を0.05以上とすることが望ましい。
【0062】
〈実施形態6〉
図18は本発明の実施形態6の表示装置における第2の液晶表示パネルの概略構成を説明するための図であり、実施形態6の第2の液晶表示パネルLCD2では、金属薄膜からなる第1の短冊状電極PX1と第2の短冊状電極PX2との間に誘電体層DSを設けることによって短冊状電極を形成している構成が異なるのみであり、他の構成は実施形態5と同様の構成である。従って、以下の説明では、短冊状電極の構成について詳細に説明する。
【0063】
図18に示すように、実施形態6の第2の液晶表示パネルLCD2では、観察者側の基板である第2基板SUB22に短冊状電極を配置した構成となっており、第2基板SUB22側から金属材料からなる第1の短冊状電極PX1、誘電体材料からなる誘電体層DS、及び金属材料からなり第1の短冊状電極PX1よりも膜厚が厚く形成される第2の短冊状電極PX2が積層され、1つの短冊状電極が形成されている。この構成により、実施形態6では、金属材料を用いた短冊状電極の反射率を低下させ、観察者側の配置される第2基板SUB22に短冊状電極を形成した場合であっても、短冊状電極による外光等の反射に起因する画質低下を防止する構成としている。このとき、第1及び第2の短冊状電極PX1,PX2と誘電体層DSとのX方向の幅は、同じ幅で形成される。
【0064】
例えば、第1及び第2の短冊状電極PX1,PX2をCrで形成すると共に、誘電体層DSをSiN(窒化シリコン)で形成し、第1の短冊状電極PX1の膜厚を5nm、誘電体層DSの膜厚を65nm、第2の短冊状電極PX2の膜厚を100nmで形成した場合、電極の観察者側の反射率を2%に低減できる。特に、ITO等を短冊状電極とした場合の反射率と同じか、それ以下の反射率にするためには,反射率を3%以下とすることが望ましいので、実施形態6では画質の低下を防止できる。
【0065】
また、実施形態6の第2の液晶表示パネルLCD2では、第1の短冊状電極PX1よりも膜厚の厚い金属層である第2の短冊状電極PX2を液晶側(対向面側)に配することにより、前述する実施形態5の液晶表示装置の効果に加えて、第2の短冊状電極PX2との電気的なコンタクトが取りやすくできるという格別の効果を得ることができる。
【0066】
なお、第1及び第2の短冊状電極PX1,PX2を形成する金属材料としては、反射率の小さいCr,Mo,W,Ta,Nb等及びその合金が望ましい。また、誘電体層DSの材料としては、屈折率が高いことが望ましく、Si(窒化シリコン),ZnS(硫化亜鉛),TiO(酸化チタン),Ta,等が適している。さらには、ITOを用いてもよい。
【0067】
〈実施形態7〉
図19は本発明の実施形態7の表示装置における第2の液晶表示パネルの概略構成を説明するための図である。ただし、実施形態7の表示装置は、第2の液晶表示パネルLCD2を形成する観察者側の透明基板である第2基板SUB22に対向電極CTが形成され、遠い側の透明基板である第1基板SUB21に短冊状電極が形成される構成、及び短冊状電極の構成を除く他の構成は実施形態5の表示装置と同様である。従って、以下の説明では、短冊状電極の構成について詳細に説明する。
【0068】
図19から明らかなように、実施形態7では、金属材料からなる短冊状電極PX1の液晶側すなわち観察者側に、短冊状電極PX1とX方向の幅が同じであり、黒化金属からなり反射防止を行うための黒化金属層MTが重畳して形成されている。特に、実施形態7においては、短冊状電極PX1はCrで形成され、黒化金属層MTはCrを酸化させたCrOで形成する構成としている。このような構成とすることにより、観察者側からの外光等の反射率を低減させることが可能となり、画質の低下を防止することができるという格別の効果を得ることができる。
【0069】
また、黒化金属層MTにCrOを用いることにより、Crの酸化工程を追加するのみで黒化金属層MTを形成することが可能となるので、前述する実施形態5の液晶表示装置の効果に加えて、工程数の増加を最小限に抑えることができる。
【0070】
なお、短冊状電極PX1及び黒化金属層MTの形成材料はCr及びCrOに限定されることはなく、例えば、短冊状電極PX1をAL(アルミニウム)で形成し、黒化金属層MTとしてブラックアルマイト処理でALを黒化したものを用いる等の他の金属材料で形成してもよい。
【0071】
〈実施形態8〉
図20は本発明の実施形態8の表示装置における第2の液晶表示パネルの概略構成を説明するための図であり、誘電体層DS1の構成を除く他の構成は実施形態5の第2の液晶表示パネルLCD2と同様である。従って、以下の説明では、短冊状電極の構成について詳細に説明する。
【0072】
図20から明らかなように、実施形態8の第2の液晶表示パネルLCD2を構成する第2基板SUB22の液晶層LCの側すなわち対向面側の全面に、誘電体材料からなる誘電体層DS1が形成され、該誘電体層DS1の上層に遮光性を有する金属材料からなる短冊状電極PX1が形成される構成となっている。このとき、例えば、誘電体層DS1は誘電材料であるSiNを膜厚50nmで形成し、短冊状電極PX1としてCrを100nmで形成した場合、誘電体層を設けずに第2基板SUB22に金属材料からなるCrの短冊状電極PX1を直接形成した場合の反射率が52%であったが、SiNの誘電体層DS1を形成しその上層に短冊状電極PX1を形成することにより反射率を34%に低減することが可能となった。
【0073】
従って、実施形態8の表示装置は実施形態5の表示装置の効果に加えて、反射率を低下できるという格別の効果を得ることができる。また、実施形態8の第2の液晶表示パネルLCD2では、第2基板SUB22の全面に誘電体層DS1を形成する工程が追加するのみで金属材料からなる短冊状電極PX1の反射率を低減できるので、製造工程の増加を最小限に抑えることができるという効果も得ることができる。
【0074】
なお、短冊状電極PX1を形成する金属材料としては、反射率の小さいCr,Mo,W,Ta,Nb等及びその合金が望ましい。また、誘電体層DS1の材料としては、屈折率が高いことが望ましく、Si(窒化シリコン),ZnS(硫化亜鉛),TiO(酸化チタン),Ta,等が適している。
【0075】
〈実施形態9〉
図21は本発明の実施形態9の表示装置である液晶表示装置の概略構成を説明するための図であり、観察者側に配置される偏光板POL及び位相差板(λ/4板)RETを除く他の構成は実施形態5の構成と同様である。従って、以下の説明では、偏光板POL及び位相差板(λ/4板)RETについて詳細に説明する。
【0076】
図21から明らかなように、実施形態9ではλ/4板RETの観察者側に偏光板POLを配置することにより、λ/4板RETと偏光板POLとの組み合わせからなる円偏光板を形成するものである。このような構成とすることにより、金属材料からなる短冊状電極PX1による金属反射を見えなくすることが可能となるので、実施形態5の表示装置の効果に加えて、短冊状電極PX1での外光等の反射に伴う画質の低下を防止できるという格別の効果を得ることができる。
【0077】
〈実施形態10〉
図22は本発明の表示装置を備える実施形態10の情報機器の概略構成を説明するための図であり、図22(a)は本願発明の表示装置LCDを携帯情報端末MPに応用した場合を示しており、図22(b)は本願発明の表示装置DISをテレビ装置TVに応用した場合を示している。
【0078】
図22(a)に示すように、携帯ゲームや携帯電話等の携帯情報端末MPに本願発明の表示装置DISを適用することにより、2D表示時のモアレを低減させつつ、3D表示時のクロストークも低減させることができる。その結果、2D表示時と3D表示時の画質を向上させることが可能となる。同様にして、テレビ装置TVに本願発明の表示装置DISを適用した場合であっても2D表示時のモアレを低減させつつ、3D表示時のクロストークも低減させることができ、2D表示時と3D表示時の画質を向上させることが可能となる。
【0079】
以上、本発明者によってなされた発明を、前記発明の実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、前記発明の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【符号の説明】
【0080】
BLU……バックライトユニット、LCD1……第1の液晶表示パネル、LC……液晶
ADH……接着部材、LCD2,3……第2の液晶表示パネル、Cs……寄生容量
TFT……薄膜トランジスタ、GL……ゲート線、DL……ドレイン線、LZ……レンズ
CH……コンタクトホール、POL,POL1,POL2……偏光板、SPL……副画素
PX,PX1,2……短冊状電極、WR……配線部、BM……遮光部、CT……対向電極
DS,DS1……誘電体層、MT……黒化金属層、RET……位相差板(λ/4板)
MP……携帯情報端末、TV……テレビ装置、DIS……表示装置
SUB11,21,31……第1基板、SUB12,22,32……第2基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示を行う表示パネルと、前記表示パネルの表示面側に配置され、第1の方向に延在し、前記第1の方向と交差する第2の方向に並設されるシリンドリカルレンズ状に屈折率を制御し視差障壁を形成する第2の液晶表示パネルとを備え、
2次元表示と3次元表示とを切り替えて画像表示させる表示装置であって、
前記第2の液晶表示パネルは、前記第1基板と前記第2基板とが液晶層を介して対向配置される一対の透明基板を備え、
前記第1基板は、面状の透明電極を備え、
前記第2基板は、透明電極材料からなり、前記第1の方向に延在し前記第2の方向に並設される透光性の短冊状電極と、
前記短冊状電極に重ねて形成され、前記第1の方向に延在してなる線状の遮光部とを備えてなることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記短冊状電極の前記第2の方向の幅は、前記遮光部幅と同じ幅で形成されることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記短冊状電極の前記第2の方向の幅は、前記遮光部幅と異なる幅で形成されることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記短冊状電極の前記第2の方向の幅が前記遮光部幅よりも大きく形成されると共に、前記液晶層を形成する液晶分子の初期配向の長軸方向が前記第1の方向と交差し、初期配向時における前記液晶分子が前記第2基板と水平でない場合に、
前記液晶分子の長軸方向の端部が大きく離れている側に近い側の前記短冊状電極の辺縁部に、前記遮光部を形成することを特徴とする請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
画像表示を行う表示パネルと、前記表示パネルの表示面側に配置され、第1の方向に延在し、前記第1の方向と交差する第2の方向に並設されるシリンドリカルレンズ状に屈折率を制御し視差障壁を形成する第2の液晶表示パネルとを備え、
2次元表示と3次元表示とを切り替えて画像表示させる表示装置であって、
前記第2の液晶表示パネルは、前記第1基板と前記第2基板とが液晶層を介して対向配置される一対の透明基板を備え、
前記第1基板は、面状の透明電極を備え、
前記第2基板は、遮光性を有する金属材料からなり、前記第1の方向に延在し前記第2の方向に並設される短冊状電極を備えてなることを特徴とする表示装置。
【請求項6】
前記短冊状電極は、誘電材料からなる誘電膜を備えることを特徴とする請求項5に記載の表示装置。
【請求項7】
前記短冊状電極は、少なくとも2層以上の金属薄膜からなることを特徴とする請求項5に記載の表示装置。
【請求項8】
前記表示パネルは、液晶表示パネルとバックライト装置とからなることを特徴とする請求項1乃至7の内の何れかに記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−108194(P2012−108194A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254918(P2010−254918)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】