説明

表示装置

【課題】本体の小型化と、ユーザに表示する仮想画像の遠方表示による大画面(広画角)化とを両立できる表示装置を提供する。
【解決手段】表示装置1は、レーザ光を出力する光源101と、レーザ光を照明光として出射する照明光学系102と、回折パターンを表示することで照明光を回折する空間変調素子103と、使用者の頭部に装着するための装着部111と、を備える。装着部111が使用者の頭部に装着された状態で、空間変調素子103と使用者の眼球190の位置として想定される眼球想定位置191aとの位置関係が固定される。空間変調素子103は、回折パターンとして、回折パターンにより回折された回折光が眼球想定位置191へ至ることで、使用者に仮想画像を表示するような回折パターンを表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計算機ホログラムによる回折パターンでレーザ光を回折させることにより情報を表示させる、頭部装着型の表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヘッドマウントディスプレイ(Head−Mounted Display、以下「HMD」と記す)は、ユーザが頭部に装着した状態で、ユーザに情報を表示する装置である。HMDは一般的に、装着性の観点から、小型軽量であることが望ましく、一方で、表示性能の観点からは、大画面で高画質であることが望ましい。従来、HMDでは、小型の液晶パネル等に表示した画像を、凸レンズや自由曲面プリズム等で光学的に拡大することで、拡大された仮想画像をユーザへ表示する方式があった(以下「光学拡大方式」と記す)。例えば、光学拡大方式のHMDとして、特許文献1の「画像表示装置」がある。
【0003】
また一方、計算機ホログラム(Computer Generated Hologram、以下「CGH」と記す)を用いた表示装置では、表示したい画像を入力データとして計算機で求めた回折パターンを、位相変調型の液晶パネル等に表示し、その液晶パネルにレーザ光を照射して回折させることで、仮想画像位置からの表示光の波面を再現し、仮想画像をユーザへ表示する。CGH方式では液晶パネルの手前や奥の位置に3次元立体画像を表示できる特徴がある。例えば、CGH方式で3次元立体表示させるものとして、特許文献2の「3次元シーンのホログラフィック再構成用装置」がある。また、CGH方式ではないが、回折パターンにより3次元立体画像をユーザに表示する先行例もある(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−240773号公報
【特許文献2】特表2008−541145号公報
【特許文献3】特開平6−202575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の光学拡大方式では、本体小型化のため小型の液晶パネルをユーザの眼球近くに配置しつつ、ユーザに表示する仮想画面を、前記液晶パネルサイズより大きく、液晶パネルまでの距離より遠くに表示しようとしても、拡大光学系が大きくなるため、表示装置の小型化と、大画面遠方表示を両立しにくい課題がある。
【0006】
また、前記従来のCGHでは、回折パターンを表示する液晶パネルのドットピッチが細かいほど回折角度を大きくできるため、ドットピッチが細かい液晶パネルを用いる結果、液晶パネルサイズも比較的小さくなってしまい、大画面化が困難な課題がある。
【0007】
前記特許文献2では液晶パネルを照射するレーザ平行光を、光源を複数設けることで、複数角度から照射して大画面化(広画角化)を実現しており、また前記特許文献3では、液晶パネルを照射するレーザ平行光の入射角を時間で変える走査方式で、大画面化を実現しているが、いずれの方式もレーザ平行光の入射角を変えるために、複数光源や走査手段が必要となり、本体の小型化への課題がある。
【0008】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、本体の小型化と、ユーザに表示する仮想画像の遠方表示による大画面(広画角)化とを両立できる表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一局面に係る表示装置は、レーザ光を出力する光源と、前記レーザ光を照明光として出射する照明光学系と、回折パターンを表示することで前記照明光を回折する空間変調素子と、使用者の頭部に装着するための装着部と、を備え、前記装着部が前記使用者の頭部に装着された状態で、前記空間変調素子と前記使用者の眼球の位置として想定される眼球想定位置との位置関係が固定され、前記空間変調素子は、前記回折パターンとして、前記回折パターンにより回折された回折光が前記眼球想定位置へ至ることで前記使用者に仮想画像を表示するような回折パターンを表示する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の表示装置によれば、小型化と、使用者に表示する仮想画像の遠方表示による大画面(広画角)化とを両立できる表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1における頭部装着型の表示装置の構成を模式的に示す図である。
【図2】図1に示される表示装置1の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示される表示装置の空間変調素子を照明する照明光学系を示す図である。
【図4】図1に示される表示装置の反射ミラーの構成を示す図である。
【図5】図1に示される表示装置の出射窓を示す図である。
【図6】眼球、反射ミラー、空間変調素子及び仮想画像等の位置関係を説明する図である。
【図7】眼球、反射ミラー、空間変調素子及び仮想画像等の位置関係を説明する図である。
【図8】(a)は、仮想画像を示す図であり、(b)は、(a)に示される仮想画像を実現する回折パターンを示す図である。
【図9】図3に示される照明光学系と別の照明光学系を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態2における表示装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の実施の形態3における表示装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図12】本発明の実施の形態4における表示装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図13】本発明の実施の形態5における表示装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図14】本発明の実施の形態6における表示装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図15】本発明の実施の形態7における表示装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図16】本発明の実施の形態7の表示装置の要部の構成を示す図である。
【図17】メガネ形状と異なる形状の表示装置の一例を模式的に示す図である。
【図18】従来の表示装置における照明光学系を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における頭部装着型の表示装置1の構成を模式的に示す図である。図2は、図1に示される表示装置1の電気的構成を示すブロック図である。図3は、図1に示される表示装置1の空間変調素子を照明する照明光学系を示す図である。図4は、図1に示される表示装置1の反射ミラーの構成を示す図である。図5は、図1に示される表示装置1の出射窓を示す図である。実施の形態1における表示装置1はメガネ型形状をしており、図1は上方から見た図である。
【0014】
図1において、光源101はレーザ光を出力するレーザ光源である。図1では光源として、緑色波長のレーザ光を出力する半導体レーザ(レーザダイオード)を用いる。なお、赤色や青色の単色でもよいし、赤緑青の3色を合波してカラー表示としてもよい。また、半導体レーザ以外のレーザを用いてもよいし、半導体レーザと他との組合せでもよい。赤外線の半導体レーザと、赤外線を緑色に変換する第2次高調波発生(SHG)素子の組合せでもよい。なお、光源101は、例えば、0.1nm以上のスペクトル幅を有するレーザ光を出力する。
【0015】
照明光学系102は、光源101からのレーザ光の波面形状や強度分布を変更した照明光を出射する。実施の形態1では照明光学系102は、図3に示されるように、拡散光のレーザ光を収束光へ変換する凸レンズ511と、レーザ光の強度を減衰させる減光フィルタ(NDフィルタ)512とを含む。なお、照明光の波面形状を変えるのはレンズでもよいしミラーでもよいし、液晶レンズのように動的に変更できる素子でもよい。また強度分布を変更する光学系を含んでもよい。不要照明光の除去フィルタを含んでもよい。照明光学系102については、さらに後述される。
【0016】
空間変調素子103は、回折パターンを表示することによって、照明光学系102からの照明光を回折させる。実施の形態1では空間変調素子103として、位相変調型の反射型液晶パネルを用いる。なお、空間変調素子103は、液晶パネルに限られず、回折パターンを表示することで照明光を回折できれば、別の表示素子でもよい。
【0017】
反射ミラー104は、空間変調素子103からの回折光をユーザの眼球190の方向へ反射させる。実施の形態1では反射ミラー104として、図4に示されるように、フレネルレンズ742を用いる。反射ミラー104は、フレネルレンズ742に薄い金属膜を蒸着させることで半透過フレネルミラーとされている。フレネルレンズ742は、フロント部112のレンズ部113に接着剤741で接着されている。
【0018】
図4において、眼球190の側(図4の下側)から反対側(図4の上側)へ順に、フレネルレンズ742、接着剤741、レンズ部113が配置される。接着剤741で接着されたフレネルレンズ742及びレンズ部113は、境界面として、眼球190の側から反対側へ順に、眼球190側の表面104a、フレネルレンズ面104b、接着面104c、反対側の表面104dを有する。空間変調素子103からの回折光は、フレネルレンズ面104bで反射して瞳孔191へと向かう。フレネルレンズ742の屈折率と接着剤741の層の屈折率が近いほど、透過する外景の歪を減少できる効果がある。なお、フレネルレンズ742として、光学倍率が1のプリズムシートを用いてもよいし、光学倍率を有するフレネルレンズを用いてもよい。
【0019】
なお、反射ミラー104を用いずに、液晶パネルをユーザが直接見るHMDとしてもよい。なお、反射ミラーは、レンズ型でもよいし、ホログラム等の回折格子で実現してもよい。また、実施の形態1の反射ミラー104は表示光を反射しつつ、外景を透過させるが、外景を透過させない構成としてもよい。また、この実施形態では、フロント部112のレンズ部113の表面に反射ミラー104が配置されているが、レンズ部113の内部に反射ミラー104を配置するようにしてもよい。
【0020】
眼球190は、表示装置1の眼球想定位置にある眼球を図示している。実施の形態1では、眼球想定位置は、ユーザが表示装置1を装着している際の眼球190の瞳孔191の瞳孔中心191aとしている。なお、眼球想定位置は、瞳孔中心191aから多少ずれても構わない。反射ミラー104で反射された回折光は、眼球想定位置にある眼球190の瞳孔191を経由して、網膜に像を結像する。これによってユーザに画像を表示する。言い換えると、ユーザは画像を視認することができる。図1における眼球中心192は、眼球190の中心位置であり、眼球190の回転中心でもある。使用者が表示装置1を装着すると(つまりテンプル部111を耳に掛けると)、空間変調素子103と眼球想定位置との位置関係は固定される。なお、頭部に対する眼球190の位置のユーザによる個人差や、表示装置1の装着ずれを考慮して、眼球想定位置に許容誤差を設けてもよく、眼球想定位置を調整する機能を有するようにしてもよい。
【0021】
制御部105は、光源制御部11及び通信制御部12を含む。光源制御部11は、光源101の駆動を制御し、光源101を点灯消灯させ、眼球190に適切な光量が入射するように、光源101が出力するレーザ光の強度を調整する。通信制御部12は、無線通信機能を有し、外部装置から送信される回折パターンを取得する。通信制御部12は、空間変調素子103を制御して、取得した回折パターンを空間変調素子103(実施の形態1では液晶パネル)に表示させる。また、通信制御部12は、回折パターンの変更を行ってもよい。また、制御部105は、バッテリー106の制御を行ってもよいし、照明光学系102や反射ミラー104が制御可能な場合は制御してもよい。
【0022】
バッテリー106は、制御部105や空間変調素子103など表示装置1の各部へ電源を供給する。図1のバッテリー106は充電式であり、ユーザが表示装置1を装着していない時に充電される。バッテリー106は、テンプル部111の耳側の後端近くに配置されることで、全体の重量バランスを耳側に近づけ、フロント部112のずり落ちを軽減できる効果もある。なお、バッテリー106は充電式でなくてもよく、表示装置1の使用中に電源供給されてもよい。また、表示装置1がバッテリー106を備えずに、外部から電源供給されてもよい。また、バッテリー106に代えて、発電機能を有する部材を表示装置1が有してもよい。
【0023】
ここで、図3を参照して、照明光学系102がさらに詳述される。照明光学系102は、上述のように、凸レンズ511と減光フィルタ512を含む。図3に示されるように、照明光学系102は、光源101から出力されたレーザ光を、凸レンズ511によって、眼球190の瞳孔191の瞳孔中心191aに収束させる。減光フィルタ512は、眼球190の視認に適した強度になるようにレーザ光の強度を低減する。照明光学系102から出射された照明光は、空間変調素子103に表示された回折パターンによって回折される。空間変調素子103は、この実施形態では反射型素子であるが、図示の便宜上、図3では透過型素子として図示されている。また、この実施形態では、図1に示されるように、空間変調素子103は、照明光学系102の光軸に対して斜めに配置されているが、図示の便宜上、図3では光軸に対して垂直に配置されている。
【0024】
図18は、背景技術で説明された例(特許文献2、特許文献3)における照明光学系を示す図である。図18では、平行光の照明光は、空間変調素子900で回折され、ユーザの眼球190の瞳孔191へと至る。空間変調素子900の端付近の光を瞳孔191に向けて回折するには、図18に示されるように、回折角901が必要となる。
【0025】
一方、この実施形態では、図3に示されるように、空間変調素子103の端付近での回折角は、回折角501で充分である。この実施形態の照明光学系102は、照明光を瞳孔191の瞳孔中心への収束光としているために、回折角501は、回折角901(図18)より小さくてよい。
【0026】
この実施形態では、必要回折角を図18に示される場合より小さくできる結果、回折パターンを表示する空間変調素子103のドットピッチは、図18に示される空間変調素子900より大きくてもよい。これによって、同じピクセル数の空間変調素子なら、従来の空間変調素子900より大きな空間変調素子を使えるので、大画面化が可能となる。もしくは、従来の空間変調素子900と同じ大きさの空間変調素子を使う場合でも、反射ミラー104の光学倍率を上げることで、大画面化してもよい。
【0027】
このように収束光照明により必要回折角を減少できる効果は、空間変調素子103の大きさが瞳孔191のサイズと比べて大きいほど有効となる。また、反射ミラー104等で空間変調素子103が光学拡大されている場合は、空間変調素子103の虚像の大きさが瞳孔191のサイズと比べて大きいほど有効となる。眼球190への収束光照明は、表示装置1のように空間変調素子103と眼球190との位置関係がほぼ固定されている表示装置において特に有効となる。空間変調素子103と眼球190との位置関係が固定されていない場合は、収束中心を変えるしくみが別途必要となる。
【0028】
図1に戻って、メガネ形状の表示装置1は、側頭部のテンプル部111と、眼前のフロント部112を含む。テンプル部111の内部には空洞が形成され、この空洞内に、光源101、照明光学系102、空間変調素子103、制御部105、バッテリー106が配置される。テンプル部111には出射窓114が設けられ、空間変調素子103からの回折光が反射ミラー104へと出射されるようになっている。
【0029】
出射窓114の周囲は、図5に示されるように、例えば黒塗りされて、テンプル部111に配置された空間変調素子103の周辺が遮光されている。これによって、空間変調素子103への照明光学系102からの照明光以外の光が入射することにより発生する不要回折光が眼球190に到達しないようにすることができる。
【0030】
また、空間変調素子103による回折をレンズ部113でなくテンプル部111の内部で行うので、レンズ部113での不要回折光対策をしなくてよい効果がある。不要回折光対策が容易になるので、一般的に不要回折光が発生しやすい屋外や夜間などの状況でも不要回折光の少ない表示装置1を実現できる効果がある。表示装置1が仮想画像の表示を行っていなくて、単なるメガネとして使用中でも、不要光の少ない状態を実現できる効果がある。
【0031】
出射窓114の形状は、図5に示されるように、台形形状とし、耳側(図5中、右側)の縦辺を前側(図5中、左側)の縦辺より長くしている。これによって、反射ミラー104に斜めに入射して眼球190へ反射することにより、仮想画像の左右の高さを揃えられる効果がある。
【0032】
なお、出射窓114の形状は、台形に限られず、円形、楕円形、長方形などの四角形、その他の多角形や、自由曲面でもよい。なお、出射窓114には、穴が開いていてもよい。出射窓114に穴が開いていると、テンプル部111の内部の換気や排熱に有効な効果がある。出射窓114には透明な蓋がされていてもよい。出射窓114に蓋が設けられることにより、ホコリ等の進入を減少させ、汚れを防止できる効果がある。出射窓114に蓋を設ける場合において、透明な蓋にレンズ機能を持たせてもよい。出射窓114の蓋は、反射ミラー104に斜めに入射させること等によって発生する収差を、補正するレンズとしてもよい。例えば、ウェッジプリズムを出射窓114の蓋または蓋と空間変調素子103の間に配置することで、コマ収差を補正してもよい。
【0033】
フロント部112はレンズ部113を含み、レンズ部113の表面に、反射ミラー104が配置されている。また、フロント部112とテンプル部111は、携帯性を向上させるために、折れ曲がるようにしてもよい。この場合において、折れ曲がる位置はテンプル部111の端でもよいし、空間変調素子103より耳側でもよい。レンズ部113は、通常のメガネレンズと同様に、近視用の度数が入ったレンズでもよいし、遠視や乱視を補正するレンズでもよい。また、レンズ部113は、サングラスのように、透過率を下げてもよく、偏光機能を有してもよい。また、レンズ部113は、不要光の反射を防止してもよく、汚れを防止する機能を有する膜を含んでもよい。
【0034】
図1に示される実施の形態1では、片目のみに仮想画像を表示しているが、これに限られない。例えば、反対側のテンプル部115にも空間変調素子を設けて、両眼対応の表示装置としてもよい。また、1つの空間変調素子を両眼で共有してもよい。さらに、単眼に複数の空間変調素子を用いてもよい。
【0035】
図1に符号121で示される距離A(図6)は、ユーザの眼球想定位置(この実施形態では、上述のように瞳孔中心191a)から反射ミラー104までの距離を示す。図1に符号122で示される距離B(図6)は、反射ミラー104から空間変調素子103までの距離を示す。距離Aと距離Bの和を、眼球想定位置から空間変調素子103までの距離(あるいは光軸距離)と称す。
【0036】
図6および図7は、眼球190、反射ミラー104、空間変調素子103及び仮想画像等の位置関係を説明する図である。図8(a)は、仮想画像を示す図であり、図8(b)は、図8(a)に示される仮想画像を実現する回折パターンを示す図である。
【0037】
図6に示すように、眼球190、反射ミラー104、空間変調素子103が配置されている。反射ミラー104の光学倍率が1である場合、空間変調素子103の虚像202は図6に示した位置にある。眼球190の瞳孔191の瞳孔中心から虚像202までの距離210は、眼球190から反射ミラー104までの距離Aと、反射ミラー104から空間変調素子103までの距離Bとの和である眼球190の瞳孔191の瞳孔中心から空間変調素子103までの距離に等しい。なお、図6の例では、空間変調素子103が光軸220に対して斜めに配置してあるが、この場合の距離は、空間変調素子103の中央の点を基準とした距離である。なお、中央以外の点を基準として用いてもよい。
【0038】
また、図7に示すように、反射ミラー104の光学倍率が1より大きい場合は、空間変調素子103の虚像302は図7に示した位置にある。この場合、眼球190の瞳孔191の瞳孔中心から空間変調素子103の虚像302までの距離310は、図6の場合の距離210よりも長くなり、虚像302は虚像202に比べて大きくなる。
【0039】
本実施形態の表示装置1では、図1のように空間変調素子103はテンプル部111の内部に配置される。このため、眼球190の瞳孔191の瞳孔中心191aから空間変調素子103までの距離210は、約7cmである。この距離210の大きさは、メガネ形状の種類によって若干変わるが、空間変調素子103をテンプル部111に配置する場合は、概ね10cm以内となり、下限は約2cm以上となる。
【0040】
一方、図6及び図7に符号211で示される、ユーザの眼球190が無理なく物体を見られる最短距離である「明視距離」は、ユーザ毎に異なるが、一般的には25cm程度とされている。図6の例では、空間変調素子103の虚像202は、明視距離211よりも近くにある。このため、空間変調素子103に表示された回折パターンや画像をユーザが視認するのは困難である。
【0041】
前記従来の光学拡大方式では、眼球と空間変調素子の間に、拡大光学系を設けることで、空間変調素子の虚像の位置を明視距離以上とする必要があるが、拡大光学系が大型化する課題があった。
【0042】
本実施形態では、ユーザに表示する画像を空間変調素子に表示する従来方式とは異なり、ユーザに表示したい仮想画像が明視距離より遠方に見えるような回折パターンをCGHの計算で求め、その求めた回折パターンを空間変調素子103が表示する。これによって、空間変調素子103の虚像までの距離が明視距離より近くても、明視距離より遠い位置に仮想画像を表示できる。これにより、空間変調素子103をテンプル部111に配置しても、拡大光学系の光学倍率を上げて大型化する必要がないので、小型でメガネ型のHMDである表示装置1を実現できる。
【0043】
図6の例では、空間変調素子103に、回折パターン402(図4)を表示させることにより、明視距離211より遠い仮想画像201の位置において、例えば仮想画像401(図4)をユーザは見ることができる。ここで、眼球190から仮想画像までの距離212は、回折パターンの算出結果で変えることができ、例えば200cmとすることができる。その結果、距離212を明視距離211より長くできる。図7の例でも同様に、眼球190の瞳孔191から仮想画像301までの距離312を明視距離211より長くできる。
【0044】
本実施形態において、テンプル部111が装着部の一例に相当し、瞳孔191の瞳孔中心191aが眼球想定位置の一例に相当し、出射窓114が透過窓の一例に相当し、表面104aが眼球想定位置側の表面の一例に相当し、表面104dが反対側の表面の一例に相当し、通信制御部12が受信部の一例に相当する。
【0045】
このように、本実施の形態1の表示装置1は、眼球想定位置である瞳孔191の瞳孔中心191aから空間変調素子103までの光軸距離が10cm以下となるよう空間変調素子103を配置し、瞳孔中心191aから空間変調素子103の虚像202までの距離より遠方に画像201を仮想表示させるような回折パターンを、空間変調素子103が表示する。
【0046】
本構成によって、空間変調素子103を眼球190の近くに配置できる結果、メガネ形状のような小型で頭部装着性に優れた表示装置1を実現できる効果がある。テンプル部111に配置する照明光学系102をより小型にできる効果がある。またその際に、CGH方式を用いるために、ユーザの眼球190は空間変調素子103の虚像202にピントを合わせる必要がなく、より遠方の仮想画像201にピントを合わせれば画像が見えるので、眼球190のピント調整能力に制約されずに、空間変調素子103を眼球190に近づけて表示装置1を小型化できる効果がある。
【0047】
従来の光学拡大方式のように、空間変調素子103上の画像を見る必要がないため、拡大倍率を上げる必要性も低下するので、収差の発生も抑えられて、高画質化できる効果もある。また、空間変調素子103を眼球190に近づけられるので、広画角で大画面化できる効果もある。また、仮想画像201までの距離をCGHの計算によって遠ざけることもできるので、眼球190のピント調整疲労を軽減できる効果もある。また近視度数や乱視等の各個人の眼の特性に合わせた表示を、CGHの計算で実現できるため、照明光学系102を簡易化・共通化でき、小型化や低コスト化や信頼性向上につながる効果がある。
【0048】
また、本実施の形態1の表示装置1では、瞳孔191の位置から空間変調素子103の虚像202までの距離が、ユーザの眼球190が無理なく物体を見られる最短距離である明視距離25cmより短くなるよう空間変調素子103を配置し、瞳孔191の位置からユーザに視認させる仮想画像201までの距離が長くなるような回折パターンを空間変調素子103が表示する。
【0049】
本構成によって、空間変調素子103を、眼球190のピントの合わないほど近くに配置でき、本体の小型化、メガネ型化しつつ、眼球190のピントの合う遠方に仮想画像201を表示できる効果がある。また、空間変調素子103を光学拡大するレンズやミラーを用いる場合でも、その拡大倍率を低減できる結果、より小型化で高画質な表示装置1を実現できる効果がある。
【0050】
また、本実施の形態1の表示装置1は、空間変調素子103によって回折された回折光を、瞳孔191の位置へ反射させる反射ミラー104を有し、表示装置1はメガネ形状であって、光源101と照明光学系102と空間変調素子103とは、テンプル部111の内部に配置され、反射ミラー104は、フロント部112のレンズ部113の表面に配置される。
【0051】
本構成によって、表示装置1の形状をメガネに近づけられる効果がある。また、メガネ形状の形状自由度を上げられる効果がある。特に、メガネのフロント部112の形状自由度を上げられる効果がある。レンズ部113には反射ミラー104があればよいので、レンズ部113の透過性を上げられる効果がある。レンズ部113の形状の自由度を上げられる効果もある。レンズ部113及び反射ミラー104の透過性能や反射性能を空間変調素子103の特徴とは分けて設計できる効果がある。
【0052】
反射ミラー104が回折ミラーでない場合は、迷光や波長の違いによる回折ずれなどの、回折の影響を低減できる効果もある。光源101と照明光学系102と空間変調素子103とをテンプル部111の内部に配置するので、テンプル部111以外を小型化でき、デザイン自由度を上げられる効果がある。また、テンプル部111の照明光学系102を小型化することで、テンプル部111を小型化できる効果がある。照明光学系102を薄型に設計すれば、テンプル部111も薄型にできる効果がある。例えば、テンプル部111の厚みを高さより小さく薄くできる効果がある。
【0053】
また、本実施の形態1の表示装置1では、空間変調素子103は反射型素子であり、照明光学系102からの照明光が空間変調素子103に斜めに入射して斜めに反射する。表示装置1は、入射光と反射光を分離させる分離光学系を含まない。空間変調素子103は、ユーザに表示される仮想画像201の表示面が、空間変調素子103の表面と比べて、回折光の光軸に対して垂直面に近くなる回折パターンを表示する。
【0054】
本構成によって、空間変調素子103として反射型素子を用いているため、透過型素子を用いる場合と比較して、光の利用効率を上げて、省電力にできる効果がある。また、空間変調素子103の画素以外の面積を減らしやすいので、高画質化できる効果もあり、素子の小型化や挟ドットピッチ化できる効果もある。分離光学系が含まれないため、小型の表示装置1を実現できる効果がある。また、分離光学系が含まれないため、テンプル部111を小型化でき、テンプル部111の厚みを薄くできる効果がある。光軸に対して、空間変調素子103が傾いていても、CGHの計算によって、仮想画像201を垂直に近づけられる効果がある。照明光学系102の収差補正をCGHの計算で行うことで、照明光学系102を小型化できる効果がある。空間変調素子103を斜め配置してもよいことで、テンプル部111の設計自由度を上げ、例えばテンプル部111の厚みを薄くできる効果がある。また、空間変調素子103を斜めに配置することで、光軸基準でのドットピッチが狭められる結果、回折角を広げて、広画角化・高画質化できる効果もある。
【0055】
また、本実施の形態1の表示装置1は、照明光学系102が空間変調素子103へ出射する照明光が、瞳孔中心191aへの収束光である。
【0056】
本構成によって、空間変調素子103において必要な回折角を減少できる。その結果、より広画角・大画面の表示装置1を実現できる効果がある。また、従来例のように平行光を振り分ける必要がない、簡素な照明光学系102を実現でき、小型化できる効果がある。眼球190の瞳孔中心191aへの収束光とする結果、瞳孔191の位置に集中して画質や画角を上げられる効果がる。眼球190の位置以外への不要な光が減り、必要光量が減るため、より小型化、高輝度化、省電力化を実現できる効果がある。省電力はバッテリー106の小型化にもなるので、小型化及び軽量化できる効果もある。
【0057】
また、本実施の形態1の表示装置1は、光源101は、照明光学系102へ出力するレーザ光のスペクトル幅が0.1nm以上である。
【0058】
本構成によって、照明光学系102の収束光照明によって、空間変調素子103において必要な回折角を減少できる。このため、よりスペクトル幅の広いレーザ光を出力する光源101を使える効果がある。これにより、光源101を、小型化、低コスト化できる効果がある。
【0059】
また、本実施の形態1の表示装置1では、空間変調素子103からの回折光が反射ミラー104でユーザの眼球190の方向へ反射する反射光の光量に対し、反射ミラー104を透過してユーザの眼球190とは逆の方向へ出力される透過光の光量が、100倍以内である。
【0060】
本構成によって、レンズ部113の透過率を高めつつ、反射によって表示もできる表示装置1を実現できる効果がある。100倍以内とすることで、表示光の透過光の光量の反射光の光量に対する比率を2桁までとできる。よって、反射光による仮想画像201の輝度を落とすことなく、表示光の不要透過光の光量を抑えられる効果がある。これにより、眼球想定位置以外の場所に、ユーザやユーザ以外の眼球があった場合でも、眼球への入射光を軽減でき不快感を低減できる効果がある。また、光源101の出力を低減し、小型化、省電力化できる効果もある。なお、反射光の光量に対する透過光の光量の比率の下限は特に限定されないが、例えば10倍以上とすることで、反射ミラー104を通して外景を好適に見ることができる。
【0061】
また、本実施の形態1の表示装置1では、空間変調素子103から入射する回折光の入射角と、瞳孔191に向けて反射する回折光の反射角とを比べたとき、反射ミラー104の反射領域において、入射角が反射角より大きい領域が、入射角が反射角より小さい領域に比べて広い。また、反射ミラー104の反射領域において、テンプル部111を頭部に装着したユーザが直立した状態における水平方向の入射角が垂直方向の入射角より大きい領域が、水平方向の入射角が垂直方向の入射角より小さい領域に比べて広い。
【0062】
本構成によって、レンズ部113の傾きやテンプル部111の形状を、HMD機能のない従来のメガネに似た形状にすることができる効果がある。仮想画像201の左右位置を、ユーザの正面に近づけることができる効果もある。テンプル部111の空間変調素子103の位置を、テンプル部111の前寄りとでき、テンプル部111の耳寄りより前端のレンズ部113寄りのほうが高さのあるテンプル形状を実現できる効果がある。また、空間変調素子103から反射ミラー104へ向かう表示光を、空間変調素子103と反射ミラー104との間に位置するユーザの目尻周辺の顔の一部が遮蔽しない表示装置1を実現できる効果がある。
【0063】
なお、反射ミラー104の光学倍率が、水平方向と垂直方向とで異なっていてもよい。反射ミラー104の水平方向の倍率を垂直方向の倍率より大きくすることで、横幅の広い仮想画像201を実現できる効果や、空間変調素子103を照明光の光軸に対して斜めに配置することにより狭まった横幅を優先して拡大できる効果もある。
【0064】
また、本実施の形態1の表示装置1では、反射ミラー104は、フレネルレンズ742を含む。接着剤741により接着されたフレネルレンズ742及びレンズ部113は、境界面として、顔側から外側へ順に、顔側表面104a、フレネルレンズ面104b、接着面104c、外側表面104dを有する。顔側表面104aとフレネルレンズ面104bとの間の媒質(つまりフレネルレンズ742)の屈折率と、フレネルレンズ面104bと接着面104cとの間の媒質(つまり接着剤741)の屈折率が等しい。
【0065】
本構成によって、レンズ部113の形状や傾きを、HMD機能のない従来のメガネに近づけられる効果がある。反射ミラー104の形状を薄くし、入射角や反射角を自由に設計できる効果がある。テンプル部111に配置された空間変調素子103からの回折光が、あたかもユーザの正面から来るかのように反射しつつ、外界の透過光が直進透過して外景の歪みを抑えた、表示装置1を実現できる効果がある。また、反射ミラー104に回折素子ではなくてフレネルレンズ742を用いているため、不要回折光の影響や回折角度変化の影響を回避できる効果がある。
【0066】
また、本実施の形態1の表示装置1は、空間変調素子103として、1画素以上の動作不良画素を有する素子を用いてもよい。
【0067】
本構成によって、より低コストの空間変調素子103を用いた、低コストの表示装置1を実現できる効果がある。回折パターンの1画素が不良でも、仮想画像401の全体のノイズが僅かに増すだけで、仮想画像401の1画素が欠けるわけではないので、動作不良画素の影響が局所化されない表示装置1を実現できる効果がある。
【0068】
また、本実施の形態1の表示装置1は、通信制御部12を備え、通信制御部12は、回折パターンを無線通信で外部から受信して、受信した回折パターンを空間変調素子103に表示させる。
【0069】
本構成によって、回折パターンの計算を表示装置1の本体では行わない。その結果、表示装置1を小型化、軽量化できる効果がある。また、回路パターンの計算を行う回路の発熱を低減できる効果もある。また、バッテリー106を備えているため、制御線や電源供給線のない、ワイヤレスの表示装置1を実現できる効果がある。また、ワイヤレスの表示装置1を省電力できるので、バッテリー106の充電までの連続使用時間を延ばす効果がある。
【0070】
なお、上記実施の形態1において、さらに、無線通信で、外部装置から照明光の波長変動に繋がりうる情報を送信するようにしてもよい。そして、通信制御部12は、受信した情報に基づき、取得した回折パターンを変更し、波長変動の影響を軽減させてもよい。これにより、環境変化等に伴う画質劣化を軽減できる効果がある。送信する情報は、光源101など光学系の温度、気温、レーザ戻り光の状態、レーザ強度、回折角などを含んでもよく、またそれらの変化でもよい。外部装置からの送信は、表示装置1の電源入力後、一定時間内に行ってもよい。
【0071】
また、上記実施の形態1では、図3に示されるように、照明光学系102は、照明光を眼球190の瞳孔191の瞳孔中心191aに収束させているが、本発明は、これに限られない。例えば、照明光を眼球190の眼球中心に収束させるようにしてもよい。
【0072】
図9は、図3に示される照明光学系と別の照明光学系を示す図である。照明光が眼球190への収束光であることは図3と同様であるが、照明光の収束中心が瞳孔の中心ではなく、眼球190の眼球中心192になっている。空間変調素子103の虚像が大きく、仮想画像の画角が広がってくるほど、仮想画像の端を中心視野で見る際に、眼球190が回転して瞳孔が移動するようになる。例えば、図9の空間変調素子103の中央からの回折光を中心視野で見る際には、瞳孔は位置621にあるが、空間変調素子103の上端からの回折光を中心視野で見る際には、瞳孔は位置622に移動する。
【0073】
よって、収束光の瞳孔位置での幅612は、位置621及び622の瞳孔を含むように、瞳孔サイズより広くすることが望ましい。ここで、図9に示すように、照明光を眼球中心192への収束光とし、かつ、回折角601に相当する、回折範囲の瞳孔位置での幅613を、幅612より小さくすることにより、空間変調素子103において必要な回折角を減少できる効果がある。必要回折角を減少できれば、前述のとおり、空間変調素子103のドットピッチ拡大を許容でき、さらなる大画面化が可能となる。また、図9に示されるように、瞳孔位置における収束光の幅612は、空間変調素子103の幅611より小さい。図9に示される形態において、眼球中心192が眼球想定位置の一例に相当し、空間変調素子103の幅611がW1の一例に相当し、瞳孔位置における収束光の幅612がW2の一例に相当し、瞳孔位置での回折範囲の幅613がW3の一例に相当する。
【0074】
このように、図9に示される形態の表示装置は、空間変調素子103の幅611、収束光のユーザの瞳孔位置での幅612と、回折パターン縞の精細度に応じて定まる回折角上限による、瞳孔位置での回折範囲の幅613において、幅612が幅611以下で幅613以上である。
【0075】
本構成によって、より広画角な表示装置を実現できる効果がある。より大きな空間変調素子103を使える効果がある。眼球190を回転しても仮想画像を表示しつづけられる効果がある。注視点(中心視野)での画質を、周辺視野より向上できる効果もある。
【0076】
また、上記実施の形態1では、図3に示されるように、照明光学系102は、照明光を眼球190の瞳孔中心191aに収束させており、図9に示される形態では、照明光を眼球190の眼球中心192に収束させているが、本発明は、これに限られない。例えば、照明光学系102は、瞳孔中心191aから眼球中心192までの線分上の位置を照明光の収束中心とするようにしてもよい。
【0077】
本構成によって、照明光の収束中心が瞳孔中心191aにある場合は、瞳孔191がユーザの頭部に対して正面にある場合の表示性能を優先した表示装置1を実現できる効果がある。照明光の収束中心が眼球中心192にある場合は、眼球190が回転して仮想画像を視認する場合の表示性能を優先した表示装置1を実現できる効果がある。照明光の収束中心を瞳孔中心191aから眼球中心192までの線分上の位置とすることで、それらのバランスを自由に決められる効果がある。
【0078】
さらに、上記実施の形態1において、照明光学系102は、照明光の収束中心が水平方向と垂直方向とにおいて異なり、水平方向における収束中心が垂直方向における収束中心より眼球中心192に近くなるように、照明光を収束するようにしてもよい。つまり、照明光学系102は、水平方向と垂直方向とで照明光の収束度合を異ならせてもよい。
【0079】
本構成によって、横長の仮想画像に適した表示装置1を実現できる効果がある。
【0080】
(実施の形態2)
図10は、本発明の実施の形態2における表示装置の電気的構成を示すブロック図である。実施の形態2では、実施の形態1と同様の要素に対して、同様の符号が割り当てられている。以下、実施の形態1との相違点を中心に、実施の形態2が説明される。
【0081】
図10に示される実施の形態2の表示装置1aは、図2に示される実施の形態1の表示装置1において、制御部105は、通信制御部12に代えて素子制御部13を備える。これ以外の実施の形態2の構成は、実施の形態1と同様である。
【0082】
素子制御部13は、所望の仮想画像(例えば図8(a)に示される仮想画像401)から回折パターン(例えば図8(b)に示される回折パターン402)を算出する。素子制御部13は、空間変調素子103を制御して、算出した回折パターンを空間変調素子103に表示させる。
【0083】
素子制御部13が仮想画像401から回折パターン402を求める方法は、CGHで一般的な方法でよい。例えば点充填法では、仮想画像の各ピクセルから出射される光の波面の強度と位相より、空間変調素子103の各ピクセル位置での波面の強度と位相を求めて、空間変調素子103の各ピクセル毎に、求めた強度と位相の2次元ベクトル値を1次元の位相値に変換することで、位相変調型の空間変調素子103に表示する回折パターンを生成できる(特許文献2参照)。点充填法では、仮想画像から空間変調素子103までの距離や、空間変調素子103を照明するレーザ光の発散や収束度合いなど、自由に設定して計算できる。また、点充填法を高速化するために、一部に高速フーリエ変換(FFT)を用いる、回折パターン算出法としてもよい。本実施形態において、素子制御部13が演算部の一例に相当する。
【0084】
この実施の形態2でも、上記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。なお、図9に示されるように、幅613が幅612より小さい場合は、素子制御部13による回折パターンの算出法を簡略化してもよい。例えばユーザに表示する仮想画像の上端のピクセル値を、空間変調素子103に表示する回折パターン全面に適用する代わりに、回折パターンの上部の一部に限定して適用し、回折パターンの下部の算出では用いないようにしてもよい。これによって、回折パターンを算出する計算量を削減できる。
【0085】
(実施の形態3)
図11は、本発明の実施の形態3における表示装置の電気的構成を示すブロック図である。実施の形態3では、実施の形態1,2と同様の要素に対して、同様の符号が割り当てられている。以下、実施の形態1,2との相違点を中心に、実施の形態3が説明される。
【0086】
図11に示される実施の形態3の表示装置1bは、図2に示される実施の形態1の表示装置1において、通信制御部12に代えて素子制御部13aを備え、さらに、新たに回折角度情報取得部107を備える。これ以外の実施の形態3の構成は、実施の形態1と同様である。
【0087】
回折角度情報取得部107は、空間変調素子103における回折角度の変化に繋がる情報を取得する。回折角度情報取得部107は、この実施形態では例えば、温度センサ21、タイマー22、光センサ23,24を含む。温度センサ21は、光源101の温度を検出する。タイマー22は、光源101の点灯時間をカウントする。光センサ23は、光源101から出力されるレーザ光の強度を検出する。光センサ24は、空間変調素子103により回折される回折光の回折角度を検出する。
【0088】
素子制御部13aは、所望の仮想画像(例えば図8(a)に示される仮想画像401)から回折パターン(例えば図8(b)に示される回折パターン402)を算出する。素子制御部13aは、回折角度情報取得部107で検出された値を用いて、回折パターンを変更する。素子制御部13aは、空間変調素子103を制御して、変更した回折パターンを空間変調素子103に表示させる。
【0089】
光源101の温度が上昇して、光源101から出力されるレーザ光の波長が変化すると、空間変調素子103により回折される回折光の回折角度が変化する。また、光源101の点灯時間が長くなると光源101の温度が上昇し、光源101から出力されるレーザ光の強度が増大すると光源101の温度が上昇して、同様に、空間変調素子103により回折される回折光の回折角度が変化する。このため、回折角度が変化したときに、空間変調素子103に表示される回折パターンが同じままであれば、所望の仮想画像が得られなくなる。そこで、この実施の形態3では、回折角度情報取得部107により、空間変調素子103における回折角度の変化に繋がる情報を取得し、この情報に基づき、素子制御部13aは、算出する回折パターンを変更する。本実施形態において、素子制御部13aが演算部の一例に相当し、回折角度情報取得部107が取得部の一例に相当する。
【0090】
これによって、実施の形態3によれば、光源101の波長変動等による回折角度変化に伴う画質劣化を軽減できる効果がある。また、実施の形態3では、回折角度の変化に対して、照明光学系102や反射ミラー104の移動制御でなく、素子制御部13aによるCGHの計算で対応している。このため、照明光学系102や反射ミラー104を小型化、簡素化、低コスト化、長寿命化、できる効果がある。また、表示装置1bの使用時の温度範囲等の環境適応能力を向上させられる効果もある。
【0091】
なお、回折角度情報取得部107は、温度センサ21、タイマー22、光センサ23,24のうちのいずれか1つを含み、それ以外を含まないようにしてもよい。この形態でも、回折角度情報取得部107は、回折角度の変化に繋がる情報を取得することができる。すなわち、回折角度情報取得部107は、温度センサ21、タイマー22、光センサ23,24のうちの少なくとも1つを含んでいればよい。
【0092】
(実施の形態4)
図12は、本発明の実施の形態4における表示装置の電気的構成を示すブロック図である。実施の形態4では、実施の形態1と同様の要素に対して、同様の符号が割り当てられている。以下、実施の形態1との相違点を中心に、実施の形態4が説明される。
【0093】
図12に示される実施の形態4の表示装置1cは、図2に示される実施の形態1の表示装置1において、光源制御部11に代えて光源制御部11aを備え、通信制御部12に代えて通信制御部12aを備える。また、光源101は、赤色光源31、緑色光源32、青色光源33を備える。これ以外の実施の形態4の構成は、実施の形態1と同様である。
【0094】
赤色光源31は、赤色波長のレーザ光を出力する半導体レーザを含む。緑色光源32は、緑色波長のレーザ光を出力する半導体レーザを含む。青色光源33は、青色波長のレーザ光を出力する半導体レーザを含む。なお、緑色光源32は、赤外レーザ光を出力する半導体レーザと、赤外光を緑色に変換する第2次高調波発生(SHG)素子とを含むようにしてもよい。
【0095】
光源制御部11aは、3色の赤色光源31、緑色光源32、青色光源33を時分割駆動する。通信制御部12aは、無線通信機能を有し、外部装置から送信される3色それぞれに対応した回折パターンを取得する。通信制御部12aは、空間変調素子103を制御して、取得した回折パターンを時分割駆動される赤色光源31、緑色光源32、青色光源33に同期させて空間変調素子103に表示させる。これによって、カラーの仮想画像を表示することができる。
【0096】
この実施形態では、赤色光源31、緑色光源32、青色光源33は、それぞれ、照明光学系102へ出力するレーザ光のスペクトル幅が、常時点灯時と比べてパルス点灯時に広がる特徴を持つ。
【0097】
このように、実施の形態4では、実施の形態1と同様に、照明光学系102による収束光照明によって、空間変調素子103において必要な回折角を減少できる。このため、空間変調素子103は、光源101から出力されるレーザ光のスペクトル幅として、よりスペクトル幅の広い状態を許容できる。その結果、赤色光源31、緑色光源32、青色光源33の3色光源の時分割駆動によって、カラー表示を好適に実現できる効果がある。また、光源101に用いる赤色光源31、緑色光源32、青色光源33を、小型化、低コスト化できる効果がある。
【0098】
なお、上記実施の形態4では、3色の光源31,32,33を実施の形態1に適用しているが、これに限られず、実施の形態2に適用してもよい。すなわち、実施の形態2において、光源101が赤色光源31、緑色光源32、青色光源33を備えるようにしてもよい。そして、素子制御部13は、3色それぞれに対応した回折パターンを算出し、時分割駆動される光源31,32,33に同期して、各回折パターンを空間変調素子103に表示させるようにしてもよい。
【0099】
(実施の形態5)
図13は、本発明の実施の形態5における表示装置の電気的構成を示すブロック図である。実施の形態5では、実施の形態1と同様の要素に対して、同様の符号が割り当てられている。以下、実施の形態1との相違点を中心に、実施の形態5が説明される。
【0100】
図13に示される実施の形態5の表示装置1dは、図2に示される実施の形態1の表示装置1において、通信制御部12に代えて通信制御部12bを備え、さらに、記憶部108を新たに備える。これ以外の実施の形態5の構成は、実施の形態1と同様である。
【0101】
記憶部108は、使用者の近視度数を記憶する。通信制御部12bは、無線通信機能を有し、外部装置から送信される回折パターンを取得する。通信制御部12bは、取得した回折パターンにおいて、記憶部108に記憶されている近視度数に応じて眼球想定位置から仮想画像までの距離を変更する。通信制御部12bは、空間変調素子103を制御して、変更した回折パターンを空間変調素子103に表示させる。
【0102】
実施の形態5によれば、簡素な光学系で、ユーザ毎に異なる近視度数に対応できる効果がある。
【0103】
また、実施の形態5によれば、近視度数に対して、照明光学系102ではなくて空間変調素子103が表示する回折パターンによって対応しているので、照明光学系102が物理的に駆動する部分を減らし、より小型化、簡素化、低コスト化することができ、故障率を低減できる効果がある。また、記憶部108に使用者の近視度数を記憶させているため、使用毎に照明光学系102及び空間変調素子103を設定する手間を軽減できる効果がある。
【0104】
なお、上記実施の形態5では、記憶部108を実施の形態1に適用しているが、これに限られず、実施の形態2に適用してもよい。すなわち、実施の形態2において、記憶部108を備えるようにしてもよい。そして、素子制御部13は、眼球想定位置から仮想画像までの距離として、記憶部108に記憶されている近視度数に応じた距離を有する回折パターンを算出し、算出した回折パターンを空間変調素子103に表示させるようにしてもよい。
【0105】
(実施の形態6)
図14は、本発明の実施の形態6における表示装置の電気的構成を示すブロック図である。実施の形態6では、実施の形態1と同様の要素に対して、同様の符号が割り当てられている。以下、実施の形態1との相違点を中心に、実施の形態6が説明される。
【0106】
図14に示される実施の形態6の表示装置1eは、図2に示される実施の形態1の表示装置1において、通信制御部12に代えて通信制御部12cを備え、さらに、装着センサ109を新たに備える。これ以外の実施の形態6の構成は、実施の形態1と同様である。
【0107】
装着センサ109は、表示装置1eがユーザに装着されているか否かを検出する。装着センサ109として、例えばテンプル部111に設けられた圧力センサまたは反射型光センサを用いることができる。例えば圧力センサにより、頭部への装着による圧力を検出することができる。また、例えば反射型光センサにより、頭部からの光の反射を検出することができる。また、装着センサ109は、テンプル部111とフロント部112との開閉状態を検出し、開いているときは表示装置1eがユーザに装着されていると判定するようにしてもよい。
【0108】
通信制御部12cは、装着センサ109による検出結果に基づき、表示装置1eのユーザへの装着状態を認識して、空間変調素子103における表示の状態を変更する。通信制御部12cは、例えば、装着センサ109によって表示装置1eが頭部に装着されたことが検出されると、空間変調素子103への回折パターンの表示を自動的に開始する。通信制御部12cは、装着センサ109によって表示装置1eが頭部に装着されていないことが検出されると、空間変調素子103への回折パターンの表示を一定時間後に自動的に停止する。
【0109】
また、通信制御部12cは、表示装置1eが装着されていない際に、空間変調素子103に回折パターンを表示させる代わりに、通常の画像を表示させるようにしてもよい。これにより、メガネを掛ける(つまり表示装置1eを頭部に装着する)前でも、通信制御部12cによりメール着信などの情報を空間変調素子103に表示することで、ユーザに情報通知できる効果もある。あるいは、通信制御部12cは、空間変調素子103に回折パターンの表示と画像の表示とを同時に行ってもよい。
【0110】
なお、上記実施の形態6では、装着センサ109を実施の形態1に適用しているが、これに限られず、実施の形態2に適用してもよい。すなわち、実施の形態2において、装着センサ109を備えるようにしてもよい。そして、素子制御部13は、表示装置1aの頭部への装着状態に応じて、空間変調素子103の表示を制御するようにしてもよい。
【0111】
(実施の形態7)
図15は、本発明の実施の形態7における表示装置の電気的構成を示すブロック図である。図16は、本発明の実施の形態7の表示装置の要部の構成を示す図である。実施の形態7では、実施の形態1と同様の要素に対して、同様の符号が割り当てられている。以下、実施の形態1との相違点を中心に、実施の形態7が説明される。
【0112】
図15に示される実施の形態7の表示装置1fは、図2に示される実施の形態1の表示装置1において、通信制御部12に代えて通信制御部12dを備え、さらに、空間変調素子103とは別に、空間変調素子803を新たに備える。
【0113】
図16の表示装置1fは、実施の形態1と同様にメガネ形状であるが、実施の形態1と異なり、空間変調素子103がテンプル部111(図1)ではなく、レンズ部113に配置される特徴を持つ。本実施形態の表示装置1fは、空間変調素子103に加えて、別の空間変調素子803を有する。空間変調素子103と空間変調素子803とは、フロント部112(図1)のレンズ部113に、回折光の光軸方向に重なるように配置される。
【0114】
通信制御部12dは、空間変調素子803に、空間変調素子103での外景透過光に対する位相変調を打ち消すような回折パターン(例えば空間変調素子103が表示する回折パターンの反転パターン)を表示させる。照明光学系102は、空間変調素子103と空間変調素子803との間に配置され、光源101からのレーザ光で空間変調素子103を照明する。この実施形態では、空間変調素子103と空間変調素子803とは、共に透過型素子である。
【0115】
実施の形態7によれば、レンズ部113に表示機能を持たせるため、反射ミラーが不要になり、表示装置1fを小型化及び簡素化できる効果がある。また、実施の形態7によれば、テンプル部111(図1)に空間変調素子を配置する必要がなく、テンプル部111を小型化できる効果がある。また、実施の形態7では、眼球190の瞳孔191から空間変調素子103までの距離を近づけることができる。このため、実施の形態7によれば、表示装置1fをより広画角化・大画面化できる効果がある。また、実施の形態7では、空間変調素子803に、空間変調素子103での外景透過光に対する位相変調を打ち消すような回折パターンを表示させているため、空間変調素子103による外景の歪を軽減できる効果がある。
【0116】
なお、上記実施の形態7では、空間変調素子803を実施の形態1に適用しているが、これに限られず、実施の形態2に適用してもよい。すなわち、実施の形態2において、空間変調素子803を備えるようにしてもよい。そして、素子制御部13は、空間変調素子103での外景透過光に対する位相変調を打ち消すような回折パターンを算出し、この算出した回折パターンを空間変調素子803に表示させるようにしてもよい。
【0117】
(その他)
上記各実施の形態では、表示装置は、図1に示されるように、メガネ形状を有するものとしているが、本発明は、これに限られず、ユーザの頭部に装着される表示装置であればよい。
【0118】
図17は、メガネ形状と異なる形状の表示装置の一例を模式的に示す図である。図17に示される表示装置1gは、ユーザの頭部に装着するための例えばベルト状のフレーム部200と、このフレーム部200に接続されたテンプル部111aと、テンプル部111aに接続されたフロント部112aと、フロント部112aに形成されたレンズ部113aとを備える。表示装置1gでは、空間変調素子103(図1)等の各部材は、図1と同様に配置される。図17に示される表示装置1gでも、上記各実施の形態と同様の効果を得ることができる。図17の形態において、フレーム部200及びテンプル部111aが装着部の一例に相当する。
【0119】
また、上記各実施の形態で示した表示装置1等の各部機能の一部が、表示装置1等の本体とは別の装置で実現されていてもよい。また、表示装置1等に上記各実施の形態で示さなかった機能が搭載されていてもよい。表示装置1等の本体と、表示装置1等とは別の例えば携帯端末とで、機能を分担してもよい。また、表示装置1等とネットワークサーバとで機能を分担してもよい。
【0120】
また、上記実施の形態2では、回折パターンの計算を、表示装置1aの素子制御部13で行い、上記実施の形態1では、外部の装置で求めた回折パターンを表示装置1の通信制御部12が取得している。しかし、これに限られず、外部で回折パターンの計算の一部を行い、その結果を通信制御部12が取得し、通信制御部12が回折パターンの計算の残りを行ってもよい。
【0121】
また、上記各実施の形態において、光源101が外部の装置に設けられ、光ファイバで光源101から出力された光を伝送してもよい。また、バッテリー106が外部の装置に設けられ、電源コードが表示装置1等に接続されていてもよい。また、表示装置1等は、他の機能として、カメラ、角速度や温度やGPSなど各種センサ、スイッチなどの入力デバイス、スピーカー等の出力デバイスを含んでもよい。
【0122】
上記各実施の形態によれば、表示装置1等は、レーザ光の照明光を出射する照明光学系102と、回折パターンを表示することで照明光を回折する空間変調素子103と、使用者の頭部に装着するためのテンプル部111とを備える。また、表示装置1等では、テンプル部111が使用者の頭部に装着された状態で、空間変調素子103と使用者の眼球想定位置との位置関係が固定される。また、表示装置1等は、眼球190から空間変調素子103の虚像202までの距離を明視距離より短く、眼球190から仮想画像201までの距離を明視距離より長くする。これによって、小型でありながら、仮想画像201を遠方表示することにより、大画面化できる表示装置1等を実現できる。また、空間変調素子103が立体画像に対応する回折パターンを表示することによって、使用者に立体画像を表示することも可能である。
【0123】
なお、上述した具体的実施形態には以下の構成を有する発明が主に含まれている。
【0124】
本発明の一局面に係る表示装置は、レーザ光を出力する光源と、前記レーザ光を照明光として出射する照明光学系と、回折パターンを表示することで前記照明光を回折する空間変調素子と、使用者の頭部に装着するための装着部と、を備え、前記装着部が前記使用者の頭部に装着された状態で、前記空間変調素子と前記使用者の眼球の位置として想定される眼球想定位置との位置関係が固定され、前記空間変調素子は、前記回折パターンとして、前記回折パターンにより回折された回折光が前記眼球想定位置へ至ることで前記使用者に仮想画像を表示するような回折パターンを表示する。
【0125】
この構成によれば、光源は、レーザ光を出力する。照明光学系は、レーザ光を照明光として出射する。空間変調素子は、回折パターンを表示することで照明光を回折する。装着部は、使用者の頭部に装着するためのものである。装着部が使用者の頭部に装着された状態で、空間変調素子と使用者の眼球の位置として想定される眼球想定位置との位置関係が固定される。空間変調素子は、回折パターンとして、回折パターンにより回折された回折光が眼球想定位置へ至ることで使用者に仮想画像を表示するような回折パターンを表示する。したがって、従来の光学拡大方式とは異なり、使用者の眼球から空間変調素子までの距離とは別に、使用者の眼球から使用者に表示する仮想画像までの距離を、回折パターンにより定めることができる。その結果、装置の小型化と、使用者に表示する仮想画像の遠方表示による大画面(広画角)化とを両立できる表示装置を提供することができる。
【0126】
また、上記の表示装置において、前記装着部が前記使用者の頭部に装着された状態で、前記眼球想定位置から前記空間変調素子までの光軸距離が10cm以下となる位置に、前記空間変調素子が配置され、前記空間変調素子は、前記眼球想定位置から前記空間変調素子の虚像までの距離より遠方に前記仮想画像を表示させる前記回折パターンを表示することが好ましい。
【0127】
この構成によれば、装着部が使用者の頭部に装着された状態で、眼球想定位置から空間変調素子までの光軸距離が10cm以下となる位置に、空間変調素子が配置される。空間変調素子は、眼球想定位置から空間変調素子の虚像までの距離より遠方に仮想画像を表示させる回折パターンを表示する。したがって、空間変調素子を眼球近くに配置することができる。その結果、小型で頭部装着性に優れた表示装置を実現できる効果がある。また、空間変調素子に回折パターンを表示することにより仮想画像を使用者に表示しているので、使用者の眼球は空間変調素子の虚像にピントを合わせる必要がなく、より遠方の仮想画像にピントを合わせれば画像が見える。したがって、眼球のピント調整能力に制約されずに、空間変調素子を眼球に近づけることにより、装置を小型化できる効果がある。
【0128】
また、従来の光学拡大方式のように、空間変調素子上の画像を見る必要がないため、拡大倍率を上げる必要性も低下する。その結果、収差の発生も抑えられて、高画質化できる効果もある。また、空間変調素子を使用者の眼球に近づけられるので、広画角で大画面化できる効果もある。また、仮想画像までの距離を空間変調素子に表示する回折パターンによって遠ざけることもできるので、眼のピント調整疲労を軽減できる効果もある。
【0129】
また、上記の表示装置において、前記眼球想定位置から前記空間変調素子の虚像までの距離が明視距離25cmより短くなる位置に、前記空間変調素子が配置され、前記空間変調素子は、前記眼球想定位置から前記仮想画像までの距離が前記明視距離より長くなる前記回折パターンを表示することが好ましい。
【0130】
この構成によれば、眼球想定位置から空間変調素子の虚像までの距離が明視距離25cmより短くなる位置に、空間変調素子が配置される。空間変調素子は、眼球想定位置から使用者により視認される仮想画像までの距離が明視距離より長くなる回折パターンを表示する。したがって、空間変調素子を、眼球のピントが合わないほど眼球に近い位置に配置できる。その結果、本体を小型化しつつ、眼球のピントが合う遠方に仮想画面を表示できる効果がある。
【0131】
また、上記の表示装置において、前記空間変調素子によって回折された回折光を、前記眼球想定位置に向けて反射する反射ミラーをさらに備え、前記光源と前記照明光学系と前記空間変調素子とは、前記装着部の内部に形成された空洞内に配置され、前記反射ミラーは、前記装着部が前記使用者の頭部に装着された状態で、前記眼球想定位置の前方に配置されることが好ましい。
【0132】
この構成によれば、反射ミラーは、空間変調素子によって回折された回折光を、眼球想定位置に向けて反射する。光源と照明光学系と空間変調素子とは、装着部の内部に形成された空洞内に配置される。反射ミラーは、装着部が使用者の頭部に装着された状態で眼球想定位置の前方に配置される。したがって、反射ミラーの透過性能や反射性能を空間変調素子の特徴とは分けて設計できる効果がある。また、光源と照明光学系と空間変調素子とを装着部の内部に配置するので、装着部以外を小型化でき、デザイン自由度を上げられる効果がある。
【0133】
また、上記の表示装置において、前記空間変調素子は反射型素子であり、前記照明光学系から出射された照明光が前記空間変調素子の表面に対して斜めに入射するように、前記照明光学系に対して前記空間変調素子が配置され、前記空間変調素子は、前記使用者に表示される前記仮想画像の表示面が、前記空間変調素子の表面と比べて、前記回折光の光軸に対して垂直に近くなる前記回折パターンを表示することが好ましい。
【0134】
この構成によれば、空間変調素子は反射型素子である。照明光学系から出射された照明光が空間変調素子の表面に対して斜めに入射するように、照明光学系に対して空間変調素子が配置される。空間変調素子は、使用者に表示される仮想画像の表示面が、空間変調素子の表面と比べて、回折光の光軸に対して垂直面に近くなる回折パターンを表示する。したがって、空間変調素子が反射型であるため、透過型と比較して、光の利用効率を上げて、省電力にできる効果がある。また、空間変調素子の画素以外の面積を減らしやすいので、高画質化できる効果もあり、素子の小型化や挟ドットピッチ化できる効果もある。
【0135】
また、照明光が空間変調素子の表面に対して斜めに入射するため、入射光と反射光とを分離するための光学系が必要ない。このため、装着部を小型化でき、装着部の厚みを薄くできる効果がある。その結果、小型の表示装置を実現できる効果がある。また、空間変調素子は、使用者に表示される仮想画像の表示面が、空間変調素子の表面と比べて、回折光の光軸に対して垂直に近くなる回折パターンを表示する。このため、光軸に対して、空間変調素子が傾いていても、仮想画像を垂直に近づけられる効果がある。空間変調素子を照明光学系に対して斜めに配置してもよいことで、装着部の設計自由度を上げ、例えば装着部の厚みを薄くできる効果がある。また、空間変調素子を斜めに配置することで、光軸基準でのドットピッチが狭められる結果、回折角を広げて、広画角化・高画質化できる効果もある。
【0136】
また、上記の表示装置において、前記装着部には、前記空間変調素子により回折された前記回折光が前記眼球想定位置に到達するように、透過窓が設けられ、前記装着部における前記透過窓の周囲は、前記空間変調素子への前記照明光以外の外光の入射により発生する不要回折光が前記眼球想定位置に到達しないように、遮光されていることが好ましい。
【0137】
この構成によれば、装着部には、空間変調素子により回折された回折光が眼球想定位置に到達するように、透過窓が形成されている。装着部における透過窓の周囲は、空間変調素子への照明光以外の外光の入射により発生する不要回折光が眼球想定位置に到達しないように、遮光されている。したがって、回折に伴う不要光を軽減できる効果がある。空間変調素子による回折を反射ミラーでなくて装着部で行うので、反射ミラーにおいて不要回折光対策をしなくてよい効果がある。不要回折光対策が容易になるので、一般的に不要回折光が発生しやすい屋外や夜間などの状況でも不要回折光の少ない表示装置を実現できる効果がある。
【0138】
また、上記の表示装置において、前記回折光が前記反射ミラーで前記眼球想定位置に向けて反射される反射光の光量に対し、前記回折光が前記反射ミラーを透過して前記眼球想定位置と反対方向へ出力される透過光の光量が、100倍以内であることが好ましい。
【0139】
この構成によれば、回折光が反射ミラーで眼球想定位置に向けて反射される反射光の光量に対し、回折光が反射ミラーを透過して眼球想定位置と反対方向へ出力される透過光の光量が、100倍以内である。したがって、反射ミラーの透過率を高めつつ、反射ミラーによる回折光の反射によって仮想画像の表示も可能な表示装置を実現できる効果がある。100倍以内とすることで、回折光の透過光と反射光の比率を2桁までとできるので、反射光による仮想画像の輝度を低下させることなく、回折光の不要透過光の光量を抑えられる効果がある。これにより、眼球想定位置以外の場所に、使用者や使用者以外の眼球があった場合でも、当該眼球への入射光を軽減でき不快感を低減できる効果がある。また、光源の出力を低減し、小型化、省電力化できる効果もある。
【0140】
また、上記の表示装置において、前記装着部を頭部に装着した前記使用者が直立した状態における水平方向を第1方向と定義し、前記第1方向に垂直な方向を第2方向と定義し、前記反射ミラーに入射する前記回折光の入射角を第1入射角と定義し、前記反射ミラーにより反射される前記回折光の反射角を第1反射角と定義し、前記反射ミラーに入射する前記回折光の前記第1方向における入射角を第2入射角と定義し、前記反射ミラーに入射する前記回折光の前記第2方向における入射角を第3入射角と定義し、前記反射ミラーの反射領域において、前記第1入射角が前記第1反射角より大きい領域が、前記第1入射角が前記第1反射角より小さい領域に比べて広く、かつ、前記第2入射角が前記第3入射角より大きい領域が、前記第2入射角が前記第3入射角より小さい領域に比べて広くなるように、前記反射ミラーに対して前記空間変調素子が配置されていることが好ましい。
【0141】
この構成によれば、装着部を頭部に装着した使用者が直立した状態における水平方向を第1方向と定義する。第1方向に垂直な方向を第2方向と定義する。反射ミラーに入射する回折光の入射角を第1入射角と定義する。反射ミラーにより反射される回折光の反射角を第1反射角と定義する。反射ミラーに入射する回折光の第1方向における入射角を第2入射角と定義する。反射ミラーに入射する回折光の第2方向における入射角を第3入射角と定義する。反射ミラーの反射領域において、第1入射角が第1反射角より大きい領域が、第1入射角が第1反射角より小さい領域に比べて広く、かつ、第2入射角が第3入射角より大きい領域が、第2入射角が第3入射角より小さい領域に比べて広くなるように、反射ミラーに対して空間変調素子が配置されている。
【0142】
したがって、仮想画像の左右位置を、使用者の正面に近づけることができる効果がある。装着部における空間変調素子の位置を、装着部の前寄りにすることができ、その結果、装着部の耳寄りより前方の反射ミラー寄りのほうが高さのある装着部の形状を実現できる効果がある。また、空間変調素子から反射ミラーへ向かう回折光を、空間変調素子と反射ミラーとの間にある使用者の目尻周辺の顔の一部によって遮蔽されない表示装置を実現できる効果がある。
【0143】
また、上記の表示装置において、前記装着部が前記使用者の前記頭部に装着された状態で、前記眼球想定位置の前方に配置されるレンズ部をさらに備え、前記反射ミラーは、前記レンズ部の前記眼球想定位置側の表面に接着剤により接着されたフレネルレンズを含み、前記接着剤により接着された前記レンズ部及び前記フレネルレンズは、境界面として、前記眼球想定位置側から反対側へ順に、前記眼球想定位置側の表面、フレネルレンズ面、接着面及び前記反対側の表面を有し、前記眼球想定位置側の表面と前記フレネルレンズ面との間の前記フレネルレンズの屈折率と、前記フレネルレンズ面と前記接着面との間の前記接着剤の屈折率とが実質的に等しくなるように、前記フレネルレンズを形成する材料及び前記接着剤を形成する材料が選択されていることが好ましい。
【0144】
この構成によれば、レンズ部は、装着部が使用者の頭部に装着された状態で、眼球想定位置の前方に配置される。フレネルレンズは、レンズ部の眼球想定位置側の表面に接着剤により接着されている。接着剤により接着されたレンズ部及びフレネルレンズは、境界面として、眼球想定位置側から反対側へ順に、眼球想定位置側の表面、フレネルレンズ面、接着面及び反対側の表面を有する。眼球想定位置側の表面とフレネルレンズ面との間のフレネルレンズの屈折率と、フレネルレンズ面と接着面との間の接着剤の屈折率とが実質的に等しくなるように、フレネルレンズを形成する材料及び接着剤を形成する材料が選択されている。
【0145】
したがって、レンズ部の形状や傾きを、仮想画像を表示する機能のない従来のメガネに近づけられる効果がある。反射ミラーの形状を薄くし、入射角や反射角を自由に設計できる効果がある。装着部の空間変調素子からの回折光が、あたかも使用者の正面から来るかのように反射しつつ、外界の透過光が直進透過して外景の歪みを抑えた、表示装置を実現できる効果がある。また、反射ミラーが回折素子ではないフレネルレンズを含むことで、不要回折光の影響や回折角度変化の影響を回避できる効果がある。
【0146】
また、上記の表示装置において、前記照明光学系は、前記照明光を前記眼球想定位置に収束させることが好ましい。
【0147】
この構成によれば、照明光学系は、照明光を眼球想定位置に収束させる。したがって、空間変調素子において必要な回折角を減少できる。その結果、より広画角・大画面の仮想画像を表示する表示装置を実現できる効果がある。また、従来例のように平行光を振り分ける必要がない、簡素な照明光学系を実現でき、小型化できる効果がある。また、眼球想定位置に収束する照明光とする結果、眼球想定位置に集中して画質や画角を上げられる効果がある。また、眼球想定位置以外への不要な光が減り、必要光量が減るため、より小型化、高輝度化、省電力化を実現できる効果がある。
【0148】
また、上記の表示装置において、前記眼球想定位置は、前記使用者の眼球の中心の位置であり、前記空間変調素子の幅をW1と定義し、前記使用者の瞳孔の位置における前記照明光の幅をW2と定義し、前記回折パターンの縞の精細度に応じて定まる回折角の上限による、前記瞳孔の位置での回折範囲の幅をW3と定義し、W3≦W2≦W1となるように、前記照明光学系による前記照明光の収束度合と、前記空間変調素子の精細度とが、予め定められていることが好ましい。
【0149】
この構成によれば、眼球想定位置は、使用者の眼球の中心の位置である。空間変調素子の幅をW1と定義する。使用者の瞳孔の位置における照明光の幅をW2と定義する。回折パターンの縞の精細度に応じて定まる回折角の上限による、瞳孔の位置での回折範囲の幅をW3と定義する。W3≦W2≦W1となるように、照明光学系による照明光の収束度合と、空間変調素子の精細度とが、予め定められている。したがって、より広画角の仮想画像を表示する表示装置を実現できる効果がある。また、より大きな空間変調素子を使える効果がある。また、眼球を回転しても仮想画像を視認しつづけられる効果がある。眼球による注視点(中心視野)での画質を、周辺視野より向上できる効果もある。
【0150】
また、上記の表示装置において、前記照明光学系は、前記瞳孔の位置における瞳孔中心から前記使用者の眼球の眼球中心までの線分上の位置に収束中心が位置するように、前記照明光を収束させることが好ましい。
【0151】
この構成によれば、照明光学系は、瞳孔の位置における瞳孔中心から使用者の眼球の眼球中心までの線分上の位置に収束中心が位置するように、照明光を収束させる。すなわち、眼球想定位置は、瞳孔中心と眼球中心とを結ぶ線分上に位置する。本構成によって、照明光の収束中心が瞳孔中心に位置する場合は、瞳孔が頭部に対して正面にある場合の表示性能を優先した表示装置を実現できる効果がある。照明光の収束中心が眼球中心に位置する場合は、眼球を回転させて仮想画像を視認する場合の表示性能を優先した表示装置を実現できる効果がある。収束中心を瞳孔中心から眼球中心までの線分上の位置とすることで、それらのバランスを自由に決められる効果がる。
【0152】
また、上記の表示装置において、前記装着部を頭部に装着した前記使用者が直立した状態における水平方向を第1方向と定義し、前記第1方向に垂直な方向を第2方向と定義し、前記照明光学系は、前記第1方向と前記第2方向とにおいて前記照明光の収束度合が異なるように、かつ、前記第1方向における前記照明光の収束中心の位置が、前記第2方向における前記収束中心の位置より前記眼球中心に近くなるように、前記照明光を収束させることが好ましい。
【0153】
この構成によれば、装着部を頭部に装着した使用者が直立した状態における水平方向を第1方向と定義する。第1方向に垂直な方向を第2方向と定義する。照明光学系は、第1方向と第2方向とにおいて照明光の収束度合が異なるように、かつ、第1方向における照明光の収束中心の位置が、第2方向における収束中心の位置より眼球中心に近くなるように、照明光を収束させる。本構成によって、横長の仮想画像に適した表示装置を実現できる効果がある。
【0154】
また、上記の表示装置において、前記光源は、0.1nm以上のスペクトル幅を有する前記レーザ光を出力することが好ましい。
【0155】
この構成によれば、光源は、0.1nm以上のスペクトル幅を有するレーザ光を出力する。照明光学系により照明光が収束されているため、空間変調素子における必要な回折角を減少できる。その結果、よりスペクトル幅の広い光源を使用しても、問題が生じないという効果がある。これにより、光源を、小型化、低コスト化できる効果がある。
【0156】
また、上記の表示装置において、前記光源から出力されるレーザ光のスペクトル幅は、常時点灯時と比べてパルス点灯時に広がり、前記光源は、前記レーザ光として、赤、緑及び青の3色のレーザ光を時分割で出力し、前記空間変調素子は、前記3色の前記レーザ光の出力に同期して、前記色ごとに異なる前記回折パターンを表示することが好ましい。
【0157】
この構成によれば、光源から出力されるレーザ光のスペクトル幅は、常時点灯時と比べてパルス点灯時に広がる。光源は、レーザ光として、赤、緑及び青の3色のレーザ光を時分割で出力する。空間変調素子は、3色のレーザ光の出力に同期して、色ごとに異なる回折パターンを表示する。照明光学系により照明光が収束されているため、空間変調素子において必要な回折角を減少できる。したがって、よりスペクトル幅の広いレーザ光を用いることができる。その結果、3色のレーザ光を時分割駆動で出力することによってカラー表示できる効果がある。また、用いる光源を、小型化、低コスト化できる効果がある。
【0158】
また、上記の表示装置において、前記光源の温度、前記光源の点灯時間、前記光源から出力される前記レーザ光の強度及び前記空間変調素子による前記回折光の回折角度のうちの少なくとも1つを回折角度情報として取得する取得部をさらに備え、前記空間変調素子は、前記取得部により取得された前記回折角度情報を用いて表示する前記回折パターンを変更することが好ましい。
【0159】
この構成によれば、取得部は、光源の温度、光源の点灯時間、光源から出力されるレーザ光の強度及び空間変調素子による回折光の回折角度のうちの少なくとも1つを回折角度情報として取得する。空間変調素子は、取得部により取得された回折角度情報を用いて表示する回折パターンを変更する。光源の温度が上昇して、光源から出力されるレーザ光の波長が変化すると、空間変調素子により回折される回折光の回折角度が変化する。光源の点灯時間が長くなり、光源の温度が上昇して、光源から出力されるレーザ光の波長が変化すると、同様に回折角度が変化する。光源から出力されるレーザ光の強度が増大し、光源の温度が上昇して、光源から出力されるレーザ光の波長が変化すると、同様に回折角度が変化する。これに対して、空間変調素子は、取得部により取得された回折角度情報を用いて表示する回折パターンを変更する。このため、光源の波長変動等による回折角度変化に伴う画質劣化を軽減できる効果がある。回折角度の変化に対して、照明光学系の調整でなく、回折パターンの変更で対応しているために、照明光学系を小型化、簡素化、低コスト化、長寿命化できる効果がある。また、表示装置の使用時の温度範囲等の環境適応能力を向上させられる効果もある。
【0160】
また、上記の表示装置において、前記使用者の近視度数を記憶する記憶部をさらに備え、前記空間変調素子は、前記眼球想定位置から前記仮想画像までの距離が前記近視度数に応じた距離になる前記回折パターンを表示することが好ましい。
【0161】
この構成によれば、記憶部は、使用者の近視度数を記憶する。空間変調素子は、眼球想定位置から仮想画像までの距離が近視度数に応じた距離になる回折パターンを表示する。したがって、簡素な照明光学系で、使用者毎に異なる近視度数に対応できる効果がある。
【0162】
また、異なる近視度数に対して、照明光学系の調整でなく、表示する回折パターンで対応しているために、照明光学系が物理的に駆動される部分を減らし、照明光学系をより小型化、簡素化、低コスト化することができ、故障率を低減できる効果がある。また、記憶部に近視度数を記憶しているため、使用者毎に、照明光学系及び空間変調素子を設定する手間を軽減できる効果がある。
【0163】
また、上記の表示装置において、外部装置から無線通信で送信される前記回折パターンを受信する受信部をさらに備え、前記空間変調素子は、前記受信部により受信された前記回折パターンを表示することが好ましい。
【0164】
この構成によれば、受信部は、外部装置から無線通信により送信される回折パターンを受信する。空間変調素子は、受信部により受信された回折パターンを表示する。本構成によって、回折パターンの計算を表示装置の本体では行わない。その結果、表示装置を小型化、軽量化できる効果がある。また、回折パターンの計算を行う部材の発熱を低減できる効果もある。
【0165】
また、上記の表示装置において、前記仮想画像に対応する回折パターンを算出する演算部をさらに備え、前記空間変調素子は、前記演算部により算出された前記回折パターンを表示することが好ましい。
【0166】
この構成によれば、演算部は、仮想画像に対応する回折パターンを算出する。空間変調素子は、演算部により算出された回折パターンを表示する。したがって、使用者に仮想画像を好適に表示することができる。
【0167】
また、上記の表示装置において、前記装着部が前記使用者の頭部に装着された状態で、前記眼球想定位置の前方に配置されるレンズ部と、前記空間変調素子と別に設けられた第2空間変調素子と、をさらに備え、前記空間変調素子及び前記第2空間変調素子は、前記レンズ部に配置され、前記第2空間変調素子は、前記空間変調素子における外景透過光に対する位相変調を打ち消す回折パターンを表示することが好ましい。
【0168】
この構成によれば、レンズ部は、装着部が使用者の頭部に装着された状態で、眼球想定位置の前方に配置される。第2空間変調素子は、空間変調素子と別に設けられている。空間変調素子及び第2空間変調素子は、レンズ部に配置される。第2空間変調素子は、空間変調素子における外景透過光に対する位相変調を打ち消す回折パターンを表示する。したがって、レンズ部に仮想画像の表示機能を持たせることができる。このため、空間変調素子からの回折光を眼球想定位置に向ける反射ミラー等の部材を設ける必要がないので、表示装置を小型化及び簡素化できる効果がある。また、装着部に空間変調素子が配置されないため、装着部を小型化できる効果がある。また、眼球から空間変調素子までの距離を近づけられるので、より広画角化・大画面化できる効果がある。また、第2空間変調素子によって、外景の歪を軽減できる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0169】
本発明に係る表示装置は、回折パターンを表示することでレーザ光の照明光を回折する空間変調素子を眼球の近くに配置し、空間変調素子からの回折光が眼球想定位置へ至る、HMD等の表示装置として有用である。また、表示システム、表示方法、表示装置設計方法、等の用途にも応用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出力する光源と、
前記レーザ光を照明光として出射する照明光学系と、
回折パターンを表示することで前記照明光を回折する空間変調素子と、
使用者の頭部に装着するための装着部と、
前記空間変調素子によって回折された回折光を、前記眼球想定位置に向けて反射する反射ミラーと、
前記装着部が前記使用者の前記頭部に装着された状態で、前記眼球想定位置の前方に配置されるレンズ部と、
を備え、
前記装着部が前記使用者の頭部に装着された状態で、前記空間変調素子と前記使用者の眼球の位置として想定される眼球想定位置との位置関係が固定され、
前記空間変調素子は、前記回折パターンとして、前記回折パターンにより回折された回折光が前記眼球想定位置へ至ることで前記使用者に仮想画像を表示するような回折パターンを表示し、
前記光源と前記照明光学系と前記空間変調素子とは、前記装着部の内部に形成された空洞内に配置され、
前記反射ミラーは、前記装着部が前記使用者の頭部に装着された状態で、前記眼球想定位置の前方に配置され、
前記空間変調素子は反射型素子であり、
前記照明光学系から出射された照明光が前記空間変調素子の表面に対して斜めに入射するように、前記照明光学系に対して前記空間変調素子が配置され、
前記反射ミラーは、前記レンズ部の前記眼球想定位置側の表面に接着剤により接着されたフレネルレンズを含み、
前記接着剤により接着された前記レンズ部及び前記フレネルレンズは、境界面として、前記眼球想定位置側から反対側へ順に、前記眼球想定位置側の表面、フレネルレンズ面、接着面及び前記反対側の表面を有し、
前記眼球想定位置側の表面と前記フレネルレンズ面との間の前記フレネルレンズの屈折率と、前記フレネルレンズ面と前記接着面との間の前記接着剤の屈折率とが実質的に等しくなるように、前記フレネルレンズを形成する材料及び前記接着剤を形成する材料が選択されていることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記照明光学系は、前記照明光を前記眼球想定位置に収束させることを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記眼球想定位置は、前記使用者の眼球の中心の位置であり、
前記空間変調素子の幅をW1と定義し、
前記使用者の瞳孔の位置における前記照明光の幅をW2と定義し、
前記回折パターンの縞の精細度に応じて定まる回折角の上限による、前記瞳孔の位置での回折範囲の幅をW3と定義し、
W3≦W2≦W1となるように、前記照明光学系による前記照明光の収束度合と、前記空間変調素子の精細度とが、予め定められていることを特徴とする請求項2記載の表示装置。
【請求項4】
前記照明光学系は、前記瞳孔の位置における瞳孔中心から前記使用者の前記眼球の眼球中心までの線分上の位置に収束中心が位置するように、前記照明光を収束させることを特徴とする請求項2記載の表示装置。
【請求項5】
前記光源は、0.1nm以上のスペクトル幅を有する前記レーザ光を出力することを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記光源から出力されるレーザ光のスペクトル幅は、常時点灯時と比べてパルス点灯時に広がり、
前記光源は、前記レーザ光として、赤、緑及び青の3色のレーザ光を時分割で出力し、
前記空間変調素子は、前記3色の前記レーザ光の出力に同期して、前記色ごとに異なる前記回折パターンを表示することを特徴とする請求項2ないし5のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項7】
前記光源の温度、前記光源の点灯時間、前記光源から出力される前記レーザ光の強度及び前記空間変調素子による前記回折光の回折角度のうちの少なくとも1つを回折角度情報として取得する取得部をさらに備え、
前記空間変調素子は、前記取得部により取得された前記回折角度情報を用いて表示する前記回折パターンを変更することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項8】
外部装置から無線通信で送信される前記回折パターンを受信する受信部をさらに備え、
前記空間変調素子は、前記受信部により受信された前記回折パターンを表示することを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項9】
前記仮想画像に対応する回折パターンを算出する演算部をさらに備え、
前記空間変調素子は、前記演算部により算出された前記回折パターンを表示することを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−65022(P2013−65022A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−228697(P2012−228697)
【出願日】平成24年10月16日(2012.10.16)
【分割の表示】特願2012−524991(P2012−524991)の分割
【原出願日】平成24年3月14日(2012.3.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】