説明

表面処理剤

【課題】粉体に対して優れた疎水性を付与するとともに、その洗い流し性を改善することを可能とする表面処理剤を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で示されるモノマー(A)を構成モノマーとして含有するポリマーからなることを特徴とする表面処理剤。


(式中、Rは水素又は炭素数1〜3のアルキル基、Rは炭素数4〜22のアルキレン基、Xは−NH−基又は酸素原子、Mは水素又は1価の無機又は有機カチオンを表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面処理剤、特に化粧料用粉体に対する疎水性の付与及び洗い流し性の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料、特にメーキャップ化粧料においては、人を美しく見せる美的効果は当然のことながら、その効果の持続性、すなわち化粧持ちも極めて重要な性能の一つとして要求される。このため、化粧料基剤の開発にあたって、化粧持ちの向上は重要な課題の一つとなっている。メーキャップ化粧料の分野においては、汗や涙、あるいは唾液等の水分によって化粧崩れが起こることのないように油性の基剤が用いられることが多いが、このような油性基剤中に親水性の粉体を配合した場合には、基剤との分離が生じやすく、また水分によって親水性粉体が流れ出してしまうため、化粧崩れの大きな原因となる。このような問題点から、従来、化粧料中に粉体を配合する場合には、粉体に予め疎水化処理を施した疎水化粉体を配合することが広く行なわれてきた。
【0003】
化粧料用粉体の疎水化に関しては、多くの方法が知られており、例えば、高級脂肪酸、高級アルコール、炭化水素、トリグリセライド、エステル、シリコーンオイル、シリコーン樹脂等のシリコーン類、あるいはフッ素化合物等を用いて、親水性粉体の表面を被覆して、粉体に疎水性を付与する方法が行なわれている。中でも、シリコーン類を表面処理剤として用いた粉体の疎水化処理は、特に優れた疎水性を付与することができることから、現在までに多くの方法が確立されている(例えば、特許文献1,2参照)。また、近年では、アクリル酸やアクリル酸エステルのコポリマーを粉体の表面処理剤として用いる方法も知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
一方、化粧料においてはその洗い流し性も重要な性能の一つとして要求される。しかしながら、前述した従来の疎水化処理粉体を配合した場合には、化粧持ちを向上することはできても、その優れた疎水性のため石鹸等を用いたとしても水では容易に洗い流すことができない。このため、油性の洗い落とし用製剤が広く用いられているが、この油性製剤はさらに石鹸等で洗い流す必要があり、使用者に対する負担が大きい。また、洗い流しを容易にする目的で親水性粉体を配合した場合には、前述したように化粧崩れが生じやすく、化粧持ちに劣る結果となる。このため、化粧をしている間にはその効果を長時間持続することができ、一方で化粧を落とす際には容易に洗い流すことができるという両者の性能を同時に満たすことは非常に困難な課題であった。
【0005】
【特許文献1】特開昭60−163973号公報
【特許文献2】特開昭62−177070号公報
【特許文献3】特開平8−337514号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前述の課題に鑑みて行なわれたものであり、その目的は、粉体に対して優れた疎水性を付与するとともに、その洗い流し性を改善することを可能とする表面処理剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが前述の課題に鑑み鋭意研究を行なった結果、pH応答性の疎水性−親水性変化に着目し、特定構造のアクリル系誘導体を構成モノマーとして含有するポリマーを粉体の表面処理剤として用いたところ、処理粉体の疎水性−親水性がpH変化に対して劇的に変化することが明らかとなった。すなわち、前記表面処理剤により処理した粉体は、一般的な化粧料が用いられる酸性〜中性領域では優れた疎水性を示す一方で、石鹸水等によって適度な塩基性環境とした場合には粉体の表面が親水性へと変化する。そして、この結果、化粧料中に当該処理粉体を配合した場合、化粧持ちに優れているにもかかわらず、石鹸等を用いて水で容易に洗い流すことが可能となる。このように、本発明者らは、前記表面処理剤によって粉体の表面を処理することにより、粉体に優れた疎水性が付与されるとともにに、その洗い流し性が著しく改善されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明にかかる表面処理剤は、下記一般式(1)で示されるモノマー(A)を構成モノマーとして含有するポリマーからなることを特徴とする。
【化1】

(式中、Rは水素又は炭素数1〜3のアルキル基、Rは炭素数4〜22のアルキレン基、Xは−NH−基又は酸素原子、Mは水素又は1価の無機又は有機カチオンを表す。)
また、前記表面処理剤において、前記モノマー(A)を構成モノマー全量中70モル%以上含有するポリマーからなることが好適である。
【0009】
また、前記表面処理剤において、さらに下記一般式(2)〜(7)のいずれかに示されるモノマー(B)を構成モノマーとして含有するポリマーからなることが好適である。
【化2】

(式中、Rは水素又は炭素数1〜3のアルキル基、Rは炭素数1〜4のアルキレン基、Xは−NH−基又は酸素原子、Mは水素又は1価の無機又は有機カチオンを表す。)
【0010】
【化3】

(式中、Rは水素又は炭素数1〜3のアルキル基、Rは炭素数1〜10のアルキル基、フッ化アルキル基、アミノアルキル基、又はヒドロキシアルキル基、Xは−NH−基又は酸素原子を表す。)
【0011】
【化4】

(式中、Rは水素又は炭素数1〜3のアルキル基、Rは炭素数1〜4のアルキレン基、Rは同一又は異なっていてもよい水素又は炭素数1〜4のアルキル基、Xは−NH−基又は酸素原子、Yは1価の有機又は無機アニオンを表す。)
【0012】
【化5】

(式中、R10は水素又は炭素数1〜3のアルキル基、R11は炭素数1〜4のアルキレン基、R12は水素又は炭素数1〜4のアルキル基、Xは−NH−基又は酸素原子、lは1〜100の整数を表す。)
【0013】
【化6】

(式中、R13は水素又は炭素数1〜3のアルキル基、R14は同一又は異なっていてもよい水素又は炭素数1〜4のアルキル基、R15は水素又は炭素数1〜4のアルキル基、Xは−NH−基又は酸素原子、mは1〜100の整数を表す。)
【0014】
【化7】

(式中、R16は水素又は炭素数1〜3のアルキル基、R17は炭素数1〜4のアルキレン基、Xは−NH−基又は酸素原子、Mは水素1価の無機又は有機カチオン、nは1〜100の整数を表す。)
【0015】
また、前記表面処理剤において、前記モノマー(A)と前記モノマー(B)との割合がモル比で(A):(B)=70:30〜99.9:0.1であることが好適である。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかる表面処理剤によって粉体の表面を処理することにより、粉体に対して優れた疎水性が付与されるとともに、その洗い流し性を著しく改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳述する。
なお、本発明にかかる表面処理剤は、前記一般式(1)に示されるモノマー(A)を構成モノマーとして含有するポリマーからなることを特徴とするものである。
一般式(1)に示されるモノマー(A)は、アクリル酸あるいはアルキル置換アクリル酸、又はアクリルアミドあるいはアルキル置換アクリルアミドにおいて脂肪酸が付加された化合物である。一般式(1)において、Rは水素又は炭素数1〜3のアルキル基である。Rがアルキル基である場合には直鎖状、分岐状いずれのものでも良い。Rは、水素又はメチル基であることが好ましい。また、一般式(1)において、Rは炭素数4〜22のアルキレン基である。アルキレン基は直鎖状、分岐状いずれのもので良い。Rとしては、例えば、炭素数8のオクチレン基、11のウンデシレン基、12のドデシレン基が挙げられる。また、Rとしては、構造中に芳香族環や炭素−炭素二重結合を含んでいてもよく、例えば、ビニレン基、メチルフェニレン基、ビニルフェニレン基等であっても構わない。また、一般式(1)において、Xは−NH−基又は酸素原子であり、特に−NH−基であることが好ましい。また、一般式(1)において、Mは水素又は1価の無機又は有機カチオンである。1価の無機又は有機カチオンはカルボン酸の塩を形成し得るものであればよく、1価の無機カチオンとしては、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン等が挙げられ、また、1価の有機カチオンとしては、例えば、アンモニウムイオン、モノエタノールアンモニウムイオン、トリエタノールアンモニウムイオン等が挙げられる。なお、Mに関しては、ポリマー製造後、希塩酸あるいは希水酸化ナトリウム溶液等を適当量用いて、カルボン酸(M=水素)あるいはナトリウム塩(M=ナトリウム)の形に可逆的に変換することも可能である。
【0018】
本発明に用いられるモノマー(A)としては、例えば、11−メタクリルアミドウンデカン酸、8−アクリルアミドオクタン酸、12−アクリルアミドドデカン酸、12−メタクリルアミドドデカン酸、3−{4−[(メタクリロキシ)メチル]フェニル}アクリル酸等が挙げられる。なお、本発明のポリマーにおいては、前記モノマー(A)の1種又は2種以上を構成モノマーとすることができる。
【0019】
本発明にかかるポリマーにおいては、前記モノマー(A)を構成モノマー全量中70モル%以上含有していることが好適である。モノマー(A)が70モル%未満であると、疎水性−親水性の調整効果が小さく、粉体に対して所望の性能を付与することができない場合がある。また、モノマー(A)が90モル%以上であることが特に好適である。なお、本発明にかかるポリマーにおいては、前記モノマー(A)が構成モノマーの全量を占めていても構わない。
【0020】
また、本発明のポリマーとしては、前記モノマー(A)以外の構成モノマーとして、さらに前記一般式一般式(2)〜(7)のいずれかに示されるモノマー(B)を好適に用いることができる。
一般式(2)に示されるモノマーは、アクリル酸あるいはアルキル置換アクリル酸、又はアクリルアミドあるいはアルキル置換アクリルアミドにおいてアルキルスルホン酸が付加された化合物である。一般式(2)において、Rは水素又は炭素数1〜3のアルキル基である。Rがアルキル基である場合には直鎖状、分岐状いずれのものでも良い。Rは、水素又はメチル基であることが好ましい。また、一般式(2)において、Rは炭素数1〜4のアルキレン基である。アルキレン基は直鎖状、分岐状いずれのもので良い。Rとしては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基が挙げられ、特にエチレン基、プロピレン基であることが好ましい。また、一般式(2)において、Xは−NH−基又は酸素原子であり、特に−NH−基であることが好ましい。また、一般式(2)において、Mは水素又は1価の無機又は有機カチオンである。1価の無機又は有機カチオンはスルホン酸の塩を形成し得るものであればよく、1価の無機カチオンとしては、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン等が挙げられ、また、1価の有機カチオンとしては、例えば、アンモニウムイオン、モノエタノールアンモニウムイオン、トリエタノールアンモニウムイオン等が挙げられる。なお、Mに関しては、ポリマー製造後、希塩酸あるいは希水酸化ナトリウム溶液等を適当量用いて、スルホン酸(M=水素)あるいはナトリウム塩(M=ナトリウム)の形に可逆的に変換することも可能である。
【0021】
一般式(2)に示されるモノマーとしては、例えば、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−メタクリロキシプロパンスルホン酸カリウム等が挙げられる。
【0022】
また、一般式(3)に示されるモノマーは、アクリル酸あるいはアルキル置換アクリル酸、又はアクリルアミドあるいはアルキル置換アクリルアミドのアルキル付加物である。一般式(3)において、Rは水素又は炭素数1〜3のアルキル基であり、Rがアルキル基である場合には直鎖状、分岐状いずれのものでも良い。Rは水素又はメチル基であることが好ましい。また、一般式(3)において、Rは炭素数1〜10のアルキル基、1以上のフッ素原子を含むフッ化アルキル基、1以上のアミノ基を含むアミノアルキル基、又は1以上の水酸基を含むヒドロキシアルキル基である。これらのアルキル基は直鎖状、分岐状いずれのもので良い。Rがアルキル基の場合、例えば、メチル基、エチル基、ペンチル基、オクチル基、デシル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられ、特に2−エチルヘキシル基であることが好ましい。Rがフッ化アルキル基の場合、例えば、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、テトラフルオロプロピル基等が挙げられ、特にトリフルオロエチル基、テトラフルオロプロピル基であることが好ましい。Rがアミノアルキル基の場合、例えば、アミノエチル基、アミノプロピル基、N,N−ジメチルアミノエチル基等が挙げられ、特にN,N−ジメチルアミノエチル基であることが好ましい。Rがヒドロキシアルキル基の場合、例えば、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ジヒドロキシプロピル基等が挙げられ、特にヒドロキシエチル基であることが好ましい。また、一般式(3)において、Xは−NH−基又は酸素原子である。
【0023】
一般式(3)に示されるモノマーとしては、例えば、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2,2,2−トリフルオロプロピル、メタクリル酸2,2,3,3−テトラフルオロプロピル基、アクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル、メタクリル酸2−ジメチルアミノエチル、N−ヒドロキシエチルアクリレート、グリセリンモノメタクリレート等が挙げられる。
【0024】
また、一般式(4)に示されるモノマーは、アクリル酸あるいはアルキル置換アクリル酸、又はアクリルアミドあるいはアルキル置換アクリルアミドのアルキルアンモニウム塩付加物である。一般式(4)において、Rは水素又は炭素数1〜3のアルキル基であり、Rがアルキル基である場合には直鎖状、分岐状いずれのものでも良い。Rは水素又はメチル基であることが好ましい。また、一般式(4)において、Rは炭素数1〜4のアルキレン基である。アルキレン基は直鎖状、分岐状いずれのもので良い。Rとしては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基が挙げられ、特にエチレン基、プロピレン基であることが好ましい。また、Rは、同一又は異なっていてもよい水素又は炭素数1〜4のアルキル基である。Rがアルキル基である場合には直鎖状、分岐状いずれのものでも良い。Rは水素又はメチル基であることが好ましい。また、一般式(4)において、Xは−NH−基又は酸素原子である。また、Yは1価の有機又は無機アニオンであり、4級アンモニウムの塩を形成し得るものであればどのようなものでも構わない。Yとしては、例えば、としては、例えば、塩化物イオン、フッ化物イオン、ヨウ化物イオン等の1価の無機アニオン、あるいは硫酸イオン、酢酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、リン酸イオン等の1価の有機アニオンが挙げられる。
【0025】
一般式(4)に示されるモノマーとしては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートメチルクロライド、N,N−ジメチルアミノアクリルアミドメチルクロライド等が挙げられる。
【0026】
また、一般式(5)に示されるモノマーは、アクリル酸あるいはアルキル置換アクリル酸、又はアクリルアミドあるいはアルキル置換アクリルアミドの(ポリ)アルキレンオキシド付加物である。一般式(5)において、R10は水素又は炭素数1〜3のアルキル基であり、R10がアルキル基である場合には直鎖状、分岐状いずれのものでも良い。R10は水素又はメチル基であることが好ましい。また、一般式(5)において、R11は炭素数1〜4のアルキレン基であり、アルキレン基は直鎖状、分岐状いずれのもので良い。R11としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基が挙げられ、特にエチレン基、プロピレン基であることが好ましい。また、R12は水素又は炭素数1〜4のアルキル基であり、例えば、水素、メチル基、エチル基等が挙げられる。R12は、メチル基であることが好ましい。また、一般式(5)において、Xは−NH−基又は酸素原子である。また、lはアルキレンオキシドの付加モル数であり、1〜100の整数である。
【0027】
一般式(5)に示されるモノマーとしては、例えば、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート等が挙げられる。
【0028】
また、一般式(6)に示されるモノマーは、アクリル酸あるいはアルキル置換アクリル酸、又はアクリルアミドあるいはアルキル置換アクリルアミドの(ポリ)シロキサン付加物である。一般式(6)において、R13は水素又は炭素数1〜3のアルキル基であり、R13がアルキル基である場合には直鎖状、分岐状いずれのものでも良い。R13は水素又はメチル基であることが好ましい。また、一般式(6)において、R14は、同一又は異なっていてもよい水素又は炭素数1〜4のアルキル基である。R14がアルキル基である場合には直鎖状、分岐状いずれのものでも良い。R14は水素又はメチル基であることが好ましい。また、R15は水素又は炭素数1〜4のアルキル基であり、例えば、水素、メチル基、エチル基等が挙げられる。R15は、水素又はメチル基であることが好ましい。また、一般式(6)において、Xは−NH−基又は酸素原子である。また、mはシロキサンの付加モル数であり、1〜100の整数である。
【0029】
一般式(6)に示されるモノマーとしては、例えば、メタクリロキシ基変性シリコーン等が挙げられる。
【0030】
また、一般式(7)に示されるモノマーは、アクリル酸あるいはアルキル置換アクリル酸、又はアクリルアミドあるいはアルキル置換アクリルアミドのアルキルリン酸(塩)付加物である。一般式(7)において、R16は水素又は炭素数1〜3のアルキル基であり、R16がアルキル基である場合には直鎖状、分岐状いずれのものでも良い。R16は水素又はメチル基であることが好ましい。また、一般式(7)において、R17は炭素数1〜4のアルキレン基であり、アルキレン基は直鎖状、分岐状いずれのもので良い。R17としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基が挙げられ、特にエチレン基、プロピレン基であることが好ましい。また、一般式(7)において、Xは−NH−基又は酸素原子である。また、nはアルキレンオキシドの付加モル数であり、1〜100の整数である。また、一般式(7)において、Mは水素又は1価の無機又は有機カチオンである。1価の無機又は有機カチオンはリン酸の塩を形成し得るものであればよく、1価の無機カチオンとしては、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン等が挙げられ、また、1価の有機カチオンとしては、例えば、アンモニウムイオン、モノエタノールアンモニウムイオン、トリエタノールアンモニウムイオン等が挙げられる。なお、Mに関しては、ポリマー製造後、希塩酸あるいは希水酸化ナトリウム溶液等を適当量用いて、リン酸(M=水素)あるいはナトリウム塩(M=ナトリウム)の形に可逆的に変換することも可能である。
【0031】
一般式(7)に示されるモノマーとしては、例えば、2−メタクリロキシエチルリン酸等が挙げられる。
【0032】
なお、本発明のポリマーにおいては、上記一般式(2)〜(7)のいずれかに示されるモノマー(B)の1種又は2種以上を構成モノマーとすることができる。
また、本発明にかかるポリマーにおいては、前記モノマー(B)を構成モノマー全量中1〜30モル%含有していることが好適である。モノマー(B)が1モル%未満であると配合による効果が得られず、30モル%を超えると相対的にモノマー(A)の含有量が減少してしまい、粉体に対して所望の性能を付与することができない場合がある。
【0033】
また、本発明のポリマーは、本発明の効果を損なわない範囲であれば、上記モノマー(A),(B)以外のモノマーを構成モノマーとして含有することもできる。含有量は、構成モノマー全量の30モル%以下の範囲であればよく、例えば、1〜20モル%程度含有することができる。このようなモノマーとしては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ビニルピロリドン、ε―カプロラクタム、ビニルアルコール、無水マレイン酸、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、スチレン等が挙げられる。
【0034】
本発明のポリマーは、上記モノマーを含有する各種モノマーを公知の重合方法を用いて重合することにより得ることができる。例えば、均一溶液重合法、不均一溶液重合法、乳化重合法、逆相乳化重合法、塊状重合法、懸濁重合法、沈殿重合法等を用いることができる。例えば、均一溶液重合法の場合には、各種モノマーを溶媒中に溶解し、窒素雰囲気下、ラジカル重合開始剤を添加して加熱撹拌することにより本発明のポリマーを得ることができる。なお、ポリアクリル酸あるいはポリアクリルアミドに官能基を付加させるポストモディフィケーションによって、本発明のポリマーを得ることも可能である。
【0035】
重合の際に用いられる溶媒としては、各種モノマーを溶解又は懸濁し得るものであって、水を含まない有機溶媒であればいかなる溶媒でも用いることが可能であり、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール系溶媒、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、流動パラフィンなどの炭化水素系溶媒、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等の塩化物系溶媒などの他、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン等が挙げられる。これらの溶媒は2種以上混合して用いてもよい。通常、用いる重合開始剤の開始温度よりも沸点が高い溶媒を選択することが好適である。
【0036】
重合開始剤としては、ラジカル重合を開始する能力を有するものであれば特に制限はなく、例えば、過酸化ベンゾイル等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル等のアゾ系化合物の他、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸系重合開始剤が挙げられる。なお、これらの重合開始剤によらずとも、光化学反応や、放射線照射等によっても重合を行うことができる。重合温度は各重合開始剤の重合開始温度以上とする。例えば、過酸化物系重合開始剤では、通常50〜70℃程度とすればよい。
【0037】
重合時間は特に制限されないが、通常30分〜24時間程度である。比較的高分子量のポリマーを得たい場合には、24時間程度反応させることが望ましい。反応時間が短すぎると未反応のモノマーが残存し、分子量も比較的小さくなることがある。本発明のポリマーの平均分子量は特に制限されず、オリゴマー以上の重合度を有していれば目的とする効果を発揮し得るが、特に平均分子量3000〜10万程度であることが好ましい。なお、2種以上のモノマーを混合して重合を行なうことにより、通常は各種モノマーがランダム状に付加されたコポリマーが得られる。
【0038】
本発明にかかる表面処理剤は、以上のようにして得られるポリマーからなることを特徴とするものである。
本発明のポリマーは、ポリマー側鎖に前記モノマー(A)に由来するカルボキシル基を有しており、このカルボキシル基は、酸性〜中性の条件下では疎水性のカルボン酸(−COOH)、塩基性条件下では親水性のカルボキシレートイオン(−COO)に変化する。このため、このポリマーによって粉体の表面を処理した処理粉体は、例えば、酸性〜中性環境において疎水性、塩基性環境において親水性といったように、pH応答性の疎水性−親水性変化を示すようになると考えられる。
そして、このような処理粉体を化粧料中に配合した場合、化粧料が通常用いられる酸性〜中性領域においては疎水性を示すために化粧持ちに優れているにもかかわらず、石鹸等を用いて適度な塩基性環境とした場合には粉体の表面が親水性へと変化するため、水によって容易に洗い流すことが可能となる。
【0039】
また、前記モノマー(B)は、pHに対する影響を受けにくく、幅広いpH範囲において安定した親水性あるいは疎水性の性質を示す。このため、構成モノマー中の前記モノマー(A)とモノマー(B)のモノマー比率を適宜調整してポリマーを製造することにより、粉体に付与する疎水性−親水性のバランスを好適に調整することが可能となる。例えば、前記モノマー(A)に対して、モノマー(B)として一般式(2)のモノマーを組み合わせることにより親水性を高めることができ、反対にモノマー(B)として一般式(6)のモノマーを組み合わせることにより疎水性を高めることができる。また、前記モノマー(B)を適当量用いることによって、粉体へのポリマーの吸着性を高めることもできる。
【0040】
本発明にかかる表面処理剤を化粧料用粉体に対して用いる場合には、モノマー(A)とモノマー(B)との割合がモル比で(A):(B)=70:30〜99.9:0.1となるように調整することが好適である。モノマー(A)の割合が70:30より少ないと、処理粉体が親水性に偏ってしまうため、十分な疎水性を付与することができない場合があり、一方でモノマー(A)の割合が99.9:0.1より多いと、粉体の表面にポリマーが吸着しにくくなり、粉体の安定性に悪影響を与える場合がある。
【0041】
本発明にかかる表面処理剤はどのようなものに対して用いても構わないが、特に化粧料用粉体に対して好適に用いることができる。このような粉体としては、例えば、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、タルク、カオリン、雲母、ベントナイト、チタン被覆雲母、オキシ塩化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、二酸化チタン、酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化鉄、群青、紺青、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック及びこれらの複合体等の無機粉体、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン、ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ジビニルベンゼン・スチレン共重合体、上記化合物の単量体の2種以上からなる共重合体、セルロイド、アセチルセルロース、セルロース、多糖類、タンパク質、CIピグメントイエロー、CIピグメントオレンジ、CIピグメントグリーン等の有機粉体が挙げられる。また、粉体の形状についても、例えば、板状、塊状、鱗片状、球状、多孔性球状等、どのような形状のものでも用いることができ、粒径についても特に制限されない。
【0042】
本発明にかかる表面処理剤は、通常の処理方法により用いればよく、その方法は特に限定されるものではない。例えば、本発明にかかる表面処理剤によって粉体を処理する場合には、表面処理剤をエチルアルコール等の適当な溶媒中に溶解し、この溶液中に粉体を混合、攪拌した後、溶媒を留去する方法、あるいは表面処理剤を高級アルコール等の不揮発性油分に溶解したものを直接混合攪拌する方法が挙げられる。また、本発明にかかる表面処理剤により処理した粉体を化粧料中に配合する場合には、化粧料の製造過程において、表面処理剤を粉体基剤中に直接混合攪拌してもよい。
【0043】
なお、本発明にかかる表面処理剤により粉体を処理する場合には、粉体のゼータ電位に注意する必要がある。ここで、粉体のゼータ電位とは、固相と液相とが相対運動をする場合に固相に密着して動く層の最外面(すべり面)における電位と溶液内部の電位との差を示すものである。溶液が中性付近の場合、酸化チタンやシリカ等のゼータ電位はマイナスとなり、反対に酸化亜鉛やアルミナ等のゼータ電位はプラスとなる。酸化亜鉛やアルミナ等のゼータ電位がプラスの粉体を処理する場合には、通常の方法で処理すると、pH応答性に重要なカルボン酸部位が粉体表面のプラス電荷により相殺されてしまい、得られた表面処理粉体がpH応答性を示さなくなる場合がある。このような粉体に対してpH応答性を付与するためには、予めシリカやポリスチレンスルホン酸等のマイナス電荷を帯びた無機物あるいは有機物を粉体表面に処理して、粉体表面のゼータ電位をマイナスに転じさせる必要がある。このような処理方法としては、例えば、粉体を水ガラス溶液中に分散させ、酸を滴下して表面上にシリカを析出させる方法、あるいは粉体をポリスチレンスルホン酸水溶液中に分散させた後、水を揮発させる等の方法が挙げられる。
【0044】
本発明にかかる表面処理剤を粉体に処理する場合、粉体に対するポリマーの被覆量は、質量比で、ポリマー:粉体=3:97〜40:60、より好ましくは5:95〜30:70である。3:97よりポリマーの被覆量が少ないと、粉体に対して所望の性能を付与することができない場合があり、40:60より被覆量が多いと、化粧料として用いた場合の使用感等について悪影響を与える場合がある。
【実施例1】
【0045】
以下に本発明の実施例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
まず最初に、本発明のポリマーの合成方法について説明する。
【0046】
合成例1:11−メタクリルアミドウンデカン酸(MAU)ホモポリマー
【化8】

【0047】
11−メタクリルアミドウンデカン酸ナトリウム(NaMAU)5.244g(18mmol)、アゾビスイソブチロニトリル7.4mg(0.045mmol)を、メタノール32.4mLと水3.6mLの混合溶媒(メタノール/水=9/1)に溶解した。30分間アルゴンをバブルして脱気を行ない、セプタムで容器に蓋をして60℃で12時間加熱して重合した。重合反応終了後に大過剰のエーテル中に反応溶液を滴下して沈殿物を吸引ろ過で回収した。この沈殿物を水に溶解して1週間純水に対して透析を行ない、凍結乾燥を行なうことにより、NaMAUホモポリマー2.64gを得た(収率:50.40%)。
回収したNaMAUホモポリマー1.10gを水に溶解し、塩酸を用いてpHを4に調整した。この溶液について1週間pH5の水に対して透析を行ない、凍結乾燥を行なうことにより、11−メタクリルアミドウンデカン酸(MAU)ホモポリマー0.97gを得た。
【0048】
合成例2:11−メタクリルアミドウンデカン酸(MAU)/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)コポリマー(MAU/AMPS=95/5)
【0049】
【化9】

【0050】
11−メタクリルアミドウンデカン酸ナトリウム(NaMAU)4.9823g(17.1mmol)、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)186.5mg(0.9mmol)、水酸化ナトリウム39.6mg(0.99mmol)、アゾビスイソブチロニトリル7.4mg(0.045mmol)を、メタノール32.4mLと水3.6mLの混合溶媒(メタノール/水=9/1)に溶解した。30分間アルゴンをバブルして脱気を行ない、セプタムで容器に蓋をして60℃で12時間加熱して重合した。重合反応終了後に大過剰のエーテル中に反応溶液を滴下して沈殿物を吸引ろ過で回収した。この沈殿物を水に溶解して1週間純水に対して透析を行ない、凍結乾燥を行なうことにより、ランダム状のNaMAU/AMPSコポリマー(95/5)2.78gを得た(収率:53.71%)。
回収したNaMAU/AMPSコポリマー1.54gを水に溶解し、塩酸を用いてpHを4に調整した。この溶液について1週間pH5の水に対して透析を行ない、凍結乾燥を行なうことにより、ランダム状のMAU/AMPSコポリマー(95/5)0.97gを得た。
【0051】
つづいて、本発明の表面処理剤による粉体の表面処理方法について説明する。
粉体処理例1
エタノール500mL中に、上記合成例1,2により製造したポリマー45g、ステアリン酸15gを溶解した。この溶液中に酸化チタン240gを混合、分散し、エバポレータによりエタノールを揮発させた。得られた塊状物質を粉砕し、表面処理粉体を得た。
得られた処理粉体をpH5及びpH10緩衝液中に、粉体:溶液=1:100の割合で混合溶解した。この溶液を遠心分離により粉体を分離し、さらに残存溶液を乾燥により除去した。得られた粉体について、元素分析により表面処理剤の被覆割合を測定したところ、粉体全量中、ポリマーが15質量%、ステアリン酸が5質量%であった。
【0052】
実施例1−1〜1−4,比較例1−1〜1−4
本発明者らは、本発明のポリマーによる表面処理を行なった表面処理粉体の特性について検討を行なうため、上記合成例1,2及び上記粉体処理例1に準じて各種ポリマーにより表面処理した酸化チタン粉体を製造し、酸性(pH5)及び塩基性(pH10)の各条件における当該処理粉体の水溶性の評価を行った。また、比較例として従来の疎水化表面処理剤であるシリコーン類、アクリル酸/アクリル酸エステルコポリマーを用いて同様の試験を行なった。評価結果を表1及び図1,2に示す。なお、評価方法は以下の通りである。
【0053】
処理粉体の水溶性
各種表面処理剤により表面処理した酸化チタン粉体0.1gを、pH5及びpH10の各種pH緩衝水溶液30mLとともにバイアル中に入れ、マグネチックスターラーにより1分間混合攪拌した後静値し、溶液の状態を確認した。
○:粉体が水中に均一に溶解し、白濁溶液となった。
×:粉体が水と溶解せず、水面上に分離した。
【0054】
【表1】

【0055】
表1及び図1,2に示すように、本発明のMAUホモポリマー、及びMAU/AMPSコポリマーにより表面処理された実施例1−1〜1−4の処理粉体は、pH5の酸性条件下においては水中に全く溶解しておらず、粉体が優れた疎水性を示すことがわかった。一方で、pH10の塩基性条件とした場合には、処理粉体が水中に均一に溶解しており、粉体が親水性に変化することが明らかとなった。すなわち、本発明のポリマーにより処理した処理粉体を化粧料に配合した場合、一般的な化粧料が用いられる酸性〜中性領域では優れた疎水性を示すため、化粧持ちに優れているにもかかわらず、石鹸等を用いて適度な塩基性環境とした場合には粉体の表面が親水性へと変化するため、水で容易に洗い流すことが可能になると考えられる。
【0056】
これに対して、従来、化粧料用粉体の疎水化処理剤として用いられているシリコーン類、及びアクリル酸/アクリル酸エステルコポリマーにより表面処理された比較例1−1〜1−4の処理粉体は、pH5の酸性条件下、pH10の塩基性条件下ともに、水中に全く溶解することができなかった。このことから、従来の表面処理剤により処理した粉体を化粧料に配合した場合には、化粧持ちを向上することはできたとしても、塩基性条件下においても優れた疎水性が保持されているため、石鹸水等で洗い流すことは困難であることがわかる。
【0057】
合成例3:3−{4−[(メタクリロキシ)メチル]フェニル}アクリル酸(MMPA)ホモポリマー
【0058】
【化10】

【0059】
1)MMPAモノマーの合成
4−ヒドロキシケイ皮酸2.46g(15mmol)、ブチルヒドロキシトルエン0.005gをアセトン25g中に溶解し、塩化メタクリロイル1.57g(15mmol)を滴下し、室温で3時間攪拌した。反応終了後、溶液中にトリエチルアミン1.67gを滴下し、さらに0.015N希塩酸溶液を100g添加し、沈殿物を吸引ろ過で回収した。この沈殿物を水洗し、30℃で減圧乾燥を行なうことにより、MMPAモノマー2.09gを得た(収率:60%)。なお、生成物についてのNMR分析により、MMPAモノマーの生成が確認された。NMR分析結果を図3に示す。
【0060】
2)MMPAモノマーの重合
以上で得られたMMPAモノマー2.01g(9mmol)をテトラヒドロフラン100g中に溶解し、40分間窒素によりバブリングした。次いで、アゾビスイソブチロニトリル0.038g(0.23mmol)をテトラヒドロフラン10g中に溶解したものを滴下し、さらに10分間窒素によるバブリングを行った後、60℃で24時間攪拌して重合した。重合反応終了後、反応溶液をエバポレーターで濃縮し、酢酸エチルを添加して沈殿物を除去した。再びエバポレーターで濃縮し、30℃で減圧乾燥を行なうことにより、MMPAホモポリマー1.64gを得た(収率82%)。
【0061】
粉体処理例2
テトラヒドロフラン50mL中に、上記合成例3により製造したMMPAホモポリマー1gを溶解した。この溶液中に酸化チタン9gを混合、分散し、エバポレータによりテトラヒドロフランを揮発させた。得られた塊状物質を粉砕し、表面処理粉体を得た。
【0062】
実施例1−5
本発明者らは、上記粉体処理例2に準じてMMPAホモポリマーにより表面処理した酸化チタン粉体を製造し、得られた処理粉体をpH5及びpH10緩衝液中に、粉体:溶液=1:100の割合で混合分散して、酸性(pH5)及び塩基性(pH10)の各条件における当該処理粉体の水溶性の評価を行った。結果を図4に示す。
【0063】
図4に示すように、本発明のMMPAホモポリマーにより表面処理された実施例1−5の処理粉体は、pH5の酸性条件下においては水中に全く溶解していないのに対して、pH10の塩基性条件とした場合には、処理粉体が水中に均一に溶解しており、pH変化により、粉体が疎水性から親水性へと変化していることが確認された。
【0064】
つづいて、本発明者らは、上記合成例3のMMPAポリマーについて、未処理及び1MNaOH溶液処理のそれぞれの条件で赤外分光測定を行った。結果を図5に示す。
【0065】
図5より、本発明のMMPAホモポリマーは、未処理の条件ではカルボン酸(−COOH)のピークが認められるのに対し、1MNaOH溶液処理条件下では前記カルボン酸のピークは消失し、新たにカルボキシレートイオン(−COO)のピークが現れることが確認された。そして、この結果から、本発明のポリマーは、酸性〜中性の条件下では疎水性のカルボン酸、塩基性条件下では親水性のカルボキシレートイオンに変化することによって、pH応答性の疎水性−親水性変化を示すものと考えられる。
【実施例2】
【0066】
実施例2−1
つづいて、本発明者らは、本発明のポリマーを用いて表面処理した粉体を配合した化粧料の調製を試み、その評価を行った。
表面処理粉体2−1
エタノール1000mL中に、上記合成例2に準じて製造したMAU/AMPSコポリマー(MAU/AMPS=95/5)34.5g、ステアリン酸34.5gを溶解した。この溶液中にタルク85g、セリサイト50.8g、酸化チタン10g、ナイロン粉末6g、黒酸化鉄0.4g、黄酸化鉄5.8g、ベンガラ2gを混合、分散し、エバポレータによりエタノールを揮発させた。得られた塊状物質を粉砕し、表面処理粉体2−1を得た。
【0067】
パウダー型ファンデーション 配合量(質量%)
(1)表面処理粉体2−1 86.6
(2)流動パラフィン 4.0
(3)ミリスチン酸オクチルドデシル 3.0
(4)イソステアリン酸ソルビタン 3.0
(5)オクチルドデカノール 3.0
(6)防腐剤 0.1
(7)殺菌剤 0.1
(8)酸化防止剤 0.1
(9)香料 0.1
(製法) (1),(7)〜(9)を加熱溶解した(2)〜(6)に加えて、ヘンシェルミキサーにて混合し、パウダー型ファンデーションを得た。
以上のようにして得られたパウダー型ファンデーションは、化粧持ちに優れており、さらに石鹸を用いて容易に水で洗い流すことが可能であった。
【実施例3】
【0068】
以下、他の実施例を挙げて本発明について更に詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、分子量は、サイズ排除クロマトグラフィーHLC−8220 GPC(東ソー社製)を用いて算出した。また、カラムとしては、Shodex Asahipak GF−7M HQ(昭和電工社製)を用い、移動相には過塩素酸リチウムを100mM添加したメタノールを使用した。標準物質にはポリエチレンオキシドを用い、得られた重量平均分子量はポリエチレンオキシド換算となっている。
【0069】
実施例3−1:11−メタクリルアミドウンデカン酸(MAU)ホモポリマー
11−メタクリルアミドウンデカン酸(MAU)75.0g(278.49mmol)、アゾビスイソブチロニトリル(ナカライテスク社製)0.31g(1.89mmol)を、メタノール224.69gに溶解した。60分間窒素をバブルして脱気を行ない、セプタムで容器に蓋をして60℃で20時間加熱して重合した。重合反応終了後に大過剰の酢酸エチル中に反応溶液を滴下して沈殿物を吸引ろ過で回収した。減圧乾燥の後、MAUホモポリマー45.6gを得た(収率:60.8%)。重量平均分子量は66000だった。
【0070】
実施例3−2:11−メタクリルアミドウンデカン酸(MAU)ホモポリマー
11−メタクリルアミドウンデカン酸(MAU)75.0g(278.49mmol)、アゾビスイソブチロニトリル(ナカライテスク社製)0.93g(5.66mmol)を、メタノール224.07gに溶解した。60分間窒素をバブルして脱気を行ない、セプタムで容器に蓋をして60℃で20時間加熱して重合した。重合反応終了後に大過剰の酢酸エチル中に反応溶液を滴下して沈殿物を吸引ろ過で回収した。減圧乾燥の後、MAUホモポリマー64.9gを得た(収率:86.5%)。重量平均分子量は61000だった。
【0071】
実施例3−3:12−メタクリルアミドドデカン酸(MAD)ホモポリマー
12−メタクリルアミドドデカン酸(MAD)40.0g(141.34mmol)、アゾビスイソブチロニトリル(ナカライテスク社製)0.58g(3.53mmol)を、メタノール120.0gに溶解した。アゾビスイソブチロニトリルは、定法に従い、メタノールから再結晶して用いた。60分間アルゴンをバブルして脱気を行ない、セプタムで容器に蓋をして60℃で20時間加熱して重合した。重合反応終了後に大過剰のジエチルエーテル中に反応溶液を滴下して沈殿物を吸引ろ過で回収した。減圧乾燥の後、MADホモポリマー124.15gを得た(収率:60.4%)。重量平均分子量は33000だった。
【0072】
実施例3−4:12−アクリルアミドドデカン酸(AAD)ホモポリマー
12−アクリルアミドドデカン酸(AAD)40.0g(148.70mmol)、アゾビスイソブチロニトリル(ナカライテスク社製)0.61g(3.71mmol)を、メタノール360.0gに溶解した。アゾビスイソブチロニトリルは、定法に従い、メタノールから再結晶して用いた。60分間アルゴンをバブルして脱気を行ない、セプタムで容器に蓋をして60℃で20時間加熱して重合した。重合反応終了後に大過剰のジエチルエーテル中に反応溶液を滴下して沈殿物を吸引ろ過で回収した。減圧乾燥の後、AADホモポリマー27.51gを得た(収率:68.8%)。重量平均分子量は44000だった。
【0073】
実施例3−5:11−メタクリルアミドウンデカン酸(MAU)/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)コポリマー(99/1)
11−メタクリルアミドウンデカン酸(MAU)74.23g(275.63mmol)、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS:シグマ−アルドリッチ・ジャパン社製)0.77g(3.72mmol)、水酸化ナトリウム0.15g(3.72mmol)、アゾビスイソブチロニトリル(ナカライテスク社製)0.93g(5.66mmol)を、メタノール223.92gに溶解した。60分間窒素をバブルして脱気を行ない、セプタムで容器に蓋をして60℃で20時間加熱して重合した。重合反応終了後に大過剰のジエチルエーテル中に反応溶液を滴下して沈殿物を吸引ろ過で回収した。減圧乾燥の後、ランダム状のMAU/AMPSコポリマー(99/1)52.0gを得た(収率:69.2%)。重量平均分子量は56000だった。
【0074】
実施例3−6:11−メタクリルアミドウンデカン酸(MAU)/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)コポリマー(99/1)
11−メタクリルアミドウンデカン酸(MAU)74.23g(275.63mmol)、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS:シグマ−アルドリッチ・ジャパン社製)0.77g(3.72mmol)、水酸化ナトリウム0.15g(3.72mmol)、アゾビスイソブチロニトリル(ナカライテスク社製)1.55g(9.44mmol)を、メタノール223.30gに溶解した。60分間窒素をバブルして脱気を行ない、セプタムで容器に蓋をして60℃で20時間加熱して重合した。重合反応終了後に大過剰の酢酸エチル中に反応溶液を滴下して沈殿物を吸引ろ過で回収した。減圧乾燥の後、ランダム状のMAU/AMPSコポリマー(99/1)52.3gを得た(収率:69.6%)。重量平均分子量は36000だった。
【0075】
実施例3−7:11−メタクリルアミドウンデカン酸(MAU)/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)コポリマー(99/1)
11−メタクリルアミドウンデカン酸(MAU)74.23g(275.63mmol)、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS:シグマ−アルドリッチ・ジャパン社製)0.77g(3.72mmol)、水酸化ナトリウム0.15g(3.72mmol)、アゾビスイソブチロニトリル(ナカライテスク社製)3.10g(18.88mmol)を、メタノール236.75gに溶解した。60分間窒素をバブルして脱気を行ない、セプタムで容器に蓋をして60℃で20時間加熱して重合した。重合反応終了後に大過剰の酢酸エチル中に反応溶液を滴下して沈殿物を吸引ろ過で回収した。減圧乾燥の後、ランダム状のMAU/AMPSコポリマー(99/1)60.1gを得た(収率:80.0%)。重量平均分子量は21000だった。
【0076】
実施例3−8:11−メタクリルアミドウンデカン酸(MAU)/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)コポリマー(90/10)
11−メタクリルアミドウンデカン酸(MAU)18.42g(68.41mmol)、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS:シグマ−アルドリッチ・ジャパン社製)1.58g(7.60mmol)、水酸化ナトリウム0.31g(7.60mmol)、アゾビスイソブチロニトリル(ナカライテスク社製)0.31g(1.89mmol)を、メタノール59.4gに溶解した。60分間窒素をバブルして脱気を行ない、セプタムで容器に蓋をして60℃で20時間加熱して重合した。重合反応終了後に大過剰の酢酸エチル中に反応溶液を滴下して沈殿物を吸引ろ過で回収した。減圧乾燥の後、ランダム状のMAU/AMPSコポリマー(90/10)17.8gを得た(収率:87.9%)。重量平均分子量は92000だった。
【0077】
実施例3−9:11−メタクリルアミドウンデカン酸(MAU)/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)コポリマー(99/1)
11−メタクリルアミドウンデカン酸(MAU)をクロロホルムに溶解させ、Inhibitor Remover, Disposable Column(ALDRICH社製)を通過させることで、MAUに含まれる重合禁止剤を除去した。重合禁止剤を除去したMAU19.85g(73.69mmol)、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS:シグマ−アルドリッチ・ジャパン社製)0.15g(0.74mmol)、水酸化ナトリウム0.03g(0.74mmol)、アゾビスイソブチロニトリル(ナカライテスク社製)0.06g(0.37mmol)を、メタノール59.91gに溶解した。60分間窒素をバブルして脱気を行ない、セプタムで容器に蓋をして60℃で20時間加熱して重合した。重合反応終了後に大過剰の酢酸エチル中に反応溶液を滴下して沈殿物を吸引ろ過で回収した。減圧乾燥の後、ランダム状のMAU/AMPSコポリマー(99/1)17.33gを得た(収率:86.6%)。重量平均分子量は740000だった。
【0078】
実施例3−10:11−メタクリルアミドウンデカン酸(MAU)/3−メタクリロキシプロパンスルホン酸カリウムコポリマー(90/10)
11−メタクリルアミドウンデカン酸(MAU)18.15g(67.41mmol)、3−メタクリロキシプロパンスルホン酸カリウム(東京化成工業社製)1.85g(7.49mmol)、アゾビスイソブチロニトリル(ナカライテスク社製)0.31g(1.89mmol)を、メタノール59.69gに溶解した。60分間窒素をバブルして脱気を行ない、セプタムで容器に蓋をして60℃で20時間加熱して重合した。重合反応終了後に大過剰の酢酸エチル中に反応溶液を滴下して沈殿物を吸引ろ過で回収した。減圧乾燥の後、ランダム状のMAU/3−メタクリロキシプロパンスルホン酸カリウムコポリマー(90/10)18.47gを得た(収率:92.4%)。重量平均分子量は240000だった。
【0079】
実施例3−11:12−メタクリルアミドドデカン酸(MAD)/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)コポリマー(99/1)
12−メタクリルアミドドデカン酸(MAD)19.85g(70.14mmol)、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS:シグマ−アルドリッチ・ジャパン社製)0.15g(0.72mmol)、水酸化ナトリウム0.028g(0.70mmol)、アゾビスイソブチロニトリル(ナカライテスク社製)0.29g(1.77mmol)を、メタノール60.0gに溶解した。アゾビスイソブチロニトリルは、定法に従い、メタノールから再結晶して用いた。60分間アルゴンをバブルして脱気を行ない、セプタムで容器に蓋をして60℃で20時間加熱して重合した。重合反応終了後に大過剰のジエチルエーテル中に反応溶液を滴下して沈殿物を吸引ろ過で回収した。減圧乾燥の後、ランダム状のMAD/AMPSコポリマー(99/1)13.5gを得た(収率:67.5%)。重量平均分子量は49000だった。
【0080】
実施例3−12:12−メタクリルアミドドデカン酸(MAD)/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)コポリマー(90/10)
12−メタクリルアミドドデカン酸(MAD)18.50g(65.37mmol)、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS:シグマ−アルドリッチ・ジャパン社製)1.50g(7.24mmol)、水酸化ナトリウム0.29g(7.25mmol)、アゾビスイソブチロニトリル(ナカライテスク社製)0.30g(1.83mmol)を、メタノール60.0gに溶解した。アゾビスイソブチロニトリルは、定法に従い、メタノールから再結晶して用いた。60分間アルゴンをバブルして脱気を行ない、セプタムで容器に蓋をして60℃で20時間加熱して重合した。重合反応終了後に大過剰のジエチルエーテル中に反応溶液を滴下して沈殿物を吸引ろ過で回収した。減圧乾燥の後、ランダム状のMAD/AMPSコポリマー(90/10)15.2gを得た(収率:75.1%)。重量平均分子量は50000だった。
【0081】
実施例3−13:12−メタクリルアミドドデカン酸(MAD)/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)コポリマー(80/20)
12−メタクリルアミドドデカン酸(MAD)16.90g(59.72mmol)、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS:シグマ−アルドリッチ・ジャパン社製)3.10g(14.96mmol)、水酸化ナトリウム0.60g(1.50mmol)、アゾビスイソブチロニトリル(ナカライテスク社製)0.31g(1.89mmol)を、メタノール60.0gに溶解した。アゾビスイソブチロニトリルは、定法に従い、メタノールから再結晶して用いた。60分間アルゴンをバブルして脱気を行ない、セプタムで容器に蓋をして60℃で20時間加熱して重合した。重合反応終了後に大過剰の酢酸エチル中に反応溶液を滴下して沈殿物を吸引ろ過で回収した。減圧乾燥の後、ランダム状のMAD/AMPSコポリマー(80/20)16.1gを得た(収率:78.6%)。重量平均分子量は95000だった。
【0082】
実施例3−14:12−メタクリルアミドドデカン酸(MAD)/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)コポリマー(70/30)
12−メタクリルアミドドデカン酸(MAD)15.22g(53.78mmol)、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS:シグマ−アルドリッチ・ジャパン社製)4.78g(23.06mmol)、水酸化ナトリウム0.92g(23.0mmol)、アゾビスイソブチロニトリル(ナカライテスク社製)0.32g(1.95mmol)を、メタノール60.0gに溶解した。アゾビスイソブチロニトリルは、定法に従い、メタノールから再結晶して用いた。60分間アルゴンをバブルして脱気を行ない、セプタムで容器に蓋をして60℃で20時間加熱して重合した。重合反応終了後に大過剰の酢酸エチル中に反応溶液を滴下して沈殿物を吸引ろ過で回収した。減圧乾燥の後、ランダム状のMAD/AMPSコポリマー(70/30)19.0gを得た(収率:91.6%)。重量平均分子量は108000だった。
【0083】
実施例3−15:12−メタクリルアミドドデカン酸(MAD)/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)コポリマー(60/40)
12−メタクリルアミドドデカン酸(MAD)13.44g(47.49mmol)、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS:シグマ−アルドリッチ・ジャパン社製)6.56g(31.65mmol)、水酸化ナトリウム1.27g(31.75mmol)、アゾビスイソブチロニトリル(ナカライテスク社製)0.32g(1.95mmol)を、メタノール60.0gに溶解した。アゾビスイソブチロニトリルは、定法に従い、メタノールから再結晶して用いた。60分間アルゴンをバブルして脱気を行ない、セプタムで容器に蓋をして60℃で20時間加熱して重合した。重合反応終了後に大過剰の酢酸エチル中に反応溶液を滴下して沈殿物を吸引ろ過で回収した。減圧乾燥の後、ランダム状のMAD/AMPSコポリマー(60/40)20.05gを得た(収率:95.4%)。重量平均分子量は129000だった。
【0084】
実施例3−16:12−メタクリルアミドドデカン酸(MAD)/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)コポリマー(50/50)
12−メタクリルアミドドデカン酸(MAD)11.55g(40.81mmol)、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS:シグマ−アルドリッチ・ジャパン社製)8.45g(40.77mmol)、水酸化ナトリウム1.63g(40.75mmol)、アゾビスイソブチロニトリル(ナカライテスク社製)0.33g(1.97mmol)を、メタノール60.0gに溶解した。アゾビスイソブチロニトリルは、定法に従い、メタノールから再結晶して用いた。60分間アルゴンをバブルして脱気を行ない、セプタムで容器に蓋をして60℃で20時間加熱して重合した。重合反応終了後に大過剰の酢酸エチル中に反応溶液を滴下して沈殿物を吸引ろ過で回収した。減圧乾燥の後、ランダム状のMAD/AMPSコポリマー(50/50)20.95gを得た(収率:98.4%)。重量平均分子量は176000だった。
【0085】
実施例3−17:11−メタクリルアミドウンデカン酸(MAU)/アクリル酸2−エチルヘキシルコポリマー(90/10)
11−メタクリルアミドウンデカン酸(MAU)18.59g(69.02mmol)、アクリル酸2−エチルヘキシル(シグマ−アルドリッチ・ジャパン社製)1.41g(7.67mmol)、アゾビスイソブチロニトリル(ナカライテスク社製)0.31g(1.89mmol)を、メタノール59.69gに溶解した。60分間窒素をバブルして脱気を行ない、セプタムで容器に蓋をして60℃で20時間加熱して重合した。重合反応終了後、黄色あめ状物質を得た。これにメタノールを80g加え、溶解させた。得られた溶液を大過剰の酢酸エチル中に滴下して沈殿物を吸引ろ過で回収した。減圧乾燥の後、ランダム状のMAU/アクリル酸2−エチルヘキシルコポリマー(90/10)13.01gを得た(収率:65.0%)。重量平均分子量は560000だった。
【0086】
実施例3−18:11−メタクリルアミドウンデカン酸(MAU)/アクリル酸2,2,2−トリフルオロエチルコポリマー(90/10)
11−メタクリルアミドウンデカン酸(MAU)18.80g(69.82mmol)、アクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル(東京化成工業社製)1.20g(7.76mmol)、アゾビスイソブチロニトリル(ナカライテスク社製)0.32g(1.95mmol)を、メタノール59.68gに溶解した。60分間窒素をバブルして脱気を行ない、セプタムで容器に蓋をして60℃で20時間加熱して重合した。重合反応終了後に大過剰の酢酸エチル中に反応溶液を滴下して沈殿物を吸引ろ過で回収した。減圧乾燥の後、ランダム状のMAU/アクリル酸2,2,2−トリフルオロエチルコポリマー(90/10)9.02gを得た(収率:45.1%)。重量平均分子量は35000だった。
【0087】
実施例3−19:11−メタクリルアミドウンデカン酸(MAU)/メタクリル酸2,2,3,3−テトラフルオロプロピルコポリマー(90/10)
11−メタクリルアミドウンデカン酸(MAU)18.47g(68.60mmol)、メタクリル酸2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(東京化成工業社製)1.53g(7.62mmol)、アゾビスイソブチロニトリル(ナカライテスク社製)0.31g(1.89mmol)を、メタノール59.69gに溶解した。60分間窒素をバブルして脱気を行ない、セプタムで容器に蓋をして60℃で20時間加熱して重合した。重合反応終了後に大過剰のジエチルエーテル中に反応溶液を滴下して沈殿物を吸引ろ過で回収した。減圧乾燥の後、ランダム状のMAU/メタクリル酸2,2,3,3−テトラフルオロプロピルコポリマー(90/10)16.15gを得た(収率:80.8%)。重量平均分子量は220000だった。
【0088】
実施例3−20:11−メタクリルアミドウンデカン酸(MAU)/アクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルコポリマー(90/10)
11−メタクリルアミドウンデカン酸(MAU)18.88g(70.12mmol)、アクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(東京化成工業社製)1.12g(7.79mmol)、アゾビスイソブチロニトリル(ナカライテスク社製)0.32g(1.95mmol)を、メタノール59.68gに溶解した。60分間窒素をバブルして脱気を行ない、セプタムで容器に蓋をして60℃で20時間加熱して重合した。重合反応終了後、溶液を減圧乾燥し、60gのジメチルホルムアミドに溶解させた。得られた溶液を大過剰のジエチルエーテル中に滴下して沈殿物を吸引ろ過で回収した。減圧乾燥の後、ランダム状のMAU/アクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルコポリマー(90/10)5.22gを得た(収率:26.1%)。重量平均分子量は130000だった。
【0089】
実施例3−21:11−メタクリルアミドウンデカン酸(MAU)/メタクリル酸2−ジメチルアミノエチルエステルコポリマー(90/10)
11−メタクリルアミドウンデカン酸(MAU)18.78g(69.74mmol)、メタクリル酸2−ジメチルアミノエチルエステル(東京化成工業社製)1.22g(7.75mmol)、アゾビスイソブチロニトリル(ナカライテスク社製)0.32g(1.95mmol)を、メタノール59.68gに溶解した。60分間窒素をバブルして脱気を行ない、セプタムで容器に蓋をして60℃で20時間加熱して重合した。重合反応終了後、溶液を減圧乾燥し、60gのジメチルホルムアミドに溶解させた。得られた溶液を大過剰のジエチルエーテル中に滴下して沈殿物を吸引ろ過で回収した。減圧乾燥の後、ランダム状のMAU/メタクリル酸2−ジメチルアミノエチルエステルコポリマー(90/10)7.78gを得た(収率:38.9%)。重量平均分子量は250000だった。
【0090】
実施例3−22:12−メタクリルアミドドデカン酸(MAD)/N−ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)コポリマー(90/10)
12−メタクリルアミドドデカン酸(MAD)19.14g(67.63mmol)、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA:興人社製)0.86g(7.51mmol)、アゾビスイソブチロニトリル(ナカライテスク社製)0.33g(1.97mmol)を、メタノール60.0gに溶解した。アゾビスイソブチロニトリルは、定法に従い、メタノールから再結晶して用いた。60分間アルゴンをバブルして脱気を行ない、セプタムで容器に蓋をして60℃で20時間加熱して重合した。重合反応終了後に大過剰のジエチルエーテル中に反応溶液を滴下して沈殿物を吸引ろ過で回収した。減圧乾燥の後、MAD/HEAAコポリマー(90/10)16.90gを得た(収率:84.5%)。
【0091】
実施例3−23:11−メタクリルアミドウンデカン酸(MAU)/N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートメチルクロライドコポリマー(90/10)
11−メタクリルアミドウンデカン酸(MAU)18.52g(68.77mmol)、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートメチルクロライド(興人社製)1.48g(7.64mmol)、アゾビスイソブチロニトリル(ナカライテスク社製)0.31g(1.89mmol)を、メタノール59.69gに溶解した。60分間窒素をバブルして脱気を行ない、セプタムで容器に蓋をして60℃で20時間加熱して重合した。重合反応終了後、得られた溶液を大過剰のアセトン中に滴下して沈殿物を吸引ろ過で回収した。減圧乾燥の後、ランダム状のMAU/N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートメチルクロライドコポリマー(90/10)9.43gを得た(収率:47.2%)。重量平均分子量は68000だった。
【0092】
実施例3−24:11−メタクリルアミドウンデカン酸(MAU)/N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドメチルクロライドコポリマー(90/10)
11−メタクリルアミドウンデカン酸(MAU)18.43g(68.43mmol)、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドメチルクロライド(興人社製)1.57g(7.60mmol)、アゾビスイソブチロニトリル(ナカライテスク社製)0.31g(1.89mmol)を、メタノール59.69gに溶解した。60分間窒素をバブルして脱気を行ない、セプタムで容器に蓋をして60℃で20時間加熱して重合した。重合反応終了後、得られた溶液を大過剰のアセトン中に滴下して沈殿物を吸引ろ過で回収した。減圧乾燥の後、ランダム状のMAU/N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドメチルクロライドコポリマー(90/10)9.60gを得た(収率:48.0%)。重量平均分子量は42000だった。
【0093】
実施例3−25:11−メタクリルアミドウンデカン酸(MAU)/メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレートコポリマー(90/10)
11−メタクリルアミドウンデカン酸(MAU)17.96g(66.67mmol)、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(ブレンマーPME−200:日本油脂社製)2.04g(7.41mmol)、アゾビスイソブチロニトリル(ナカライテスク社製)0.30g(1.83mmol)を、メタノール59.70gに溶解した。60分間窒素をバブルして脱気を行ない、セプタムで容器に蓋をして60℃で20時間加熱して重合した。重合反応終了後、得られた溶液を大過剰の酢酸エチル中に滴下して沈殿物を吸引ろ過で回収した。減圧乾燥の後、ランダム状のMAU/メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレートコポリマー(90/10)9.69gを得た(収率:48.5%)。重量平均分子量は110000だった。
【0094】
実施例3−26:11−メタクリルアミドウンデカン酸(MAU)/メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレートコポリマー(99/1)
11−メタクリルアミドウンデカン酸(MAU)19.80g(73.50mmol)、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(ブレンマーPME−200:日本油脂社製)0.20g(0.74mmol)、アゾビスイソブチロニトリル(ナカライテスク社製)0.30g(1.83mmol)を、メタノール59.70gに溶解した。60分間窒素をバブルして脱気を行ない、セプタムで容器に蓋をして60℃で20時間加熱して重合した。重合反応終了後、得られた溶液を大過剰の酢酸エチル中に滴下して沈殿物を吸引ろ過で回収した。減圧乾燥の後、ランダム状のMAU/メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレートコポリマー(99/1)10.28gを得た(収率:51.4%)。重量平均分子量は34000だった。
【0095】
実施例3−27:11−メタクリルアミドウンデカン酸(MAU)/メタクリロキシ基変性シリコーンコポリマー(90/10)
11−メタクリルアミドウンデカン酸(MAU)14.16g(52.57mmol)、メタクリロキシ基変性シリコーン(FM−0711:チッソ社製)5.84g(5.84mmol)、アゾビスイソブチロニトリル(ナカライテスク社製)0.24g(1.46mmol)を、メタノール30g、クロロホルム30gの混合溶液に溶解した。60分間窒素をバブルして脱気を行ない、セプタムで容器に蓋をして60℃で20時間加熱して重合した。重合反応終了後、減圧乾燥し、テトラヒドロフラン100gに溶解させた。得られた溶液を大過剰のn−ヘキサン中に滴下して沈殿物を吸引ろ過で回収した。減圧乾燥の後、ランダム状のMAU/メタクリロキシ基変性シリコーンコポリマー(90/10)12.15gを得た(収率:60.8%)。重量平均分子量は53000だった。
【0096】
実施例3−28:11−メタクリルアミドウンデカン酸(MAU)/2−メタクリロキシエチルリン酸コポリマー(90/10)
11−メタクリルアミドウンデカン酸(MAU)18.40g(68.32mmol)、2−メタクリロキシエチルリン酸(ホスマーM:ユニケミカル社製)1.60g(7.59mmol)、水酸化ナトリウム0.30g(7.59mmol)、アゾビスイソブチロニトリル(ナカライテスク社製)0.31g(1.89mmol)を、メタノール75g、イオン交換水25gの混合溶媒に溶解した。60分間窒素をバブルして脱気を行ない、セプタムで容器に蓋をして60℃で20時間加熱して重合した。重合反応終了後、ゲル状の生成物を得た。これを減圧乾燥の後、乾燥物6.0gをメタノール200gに加え、充分に撹拌し、不溶物をろ過で除去した。得られた溶液を大過剰の酢酸エチル中に滴下して沈殿物を吸引ろ過で回収した。減圧乾燥の後、ランダム状のMAU/2−メタクリロキシエチルリン酸コポリマー(90/10)2.01gを得た。重量平均分子量は190000だった。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明にかかる各種表面処理剤(MAUホモポリマー及びMAU/AMPSコポリマー)により処理した表面処理粉体のpH5緩衝溶液の写真図である。
【図2】本発明にかかる各種表面処理剤(MAUホモポリマー及びMAU/AMPSコポリマー)により処理した表面処理粉体のpH10緩衝溶液の写真図である。
【図3】本発明にかかる表面処理剤(MMPAホモポリマー)についてのNMR測定結果である。
【図4】本発明にかかる表面処理剤(MMPAホモポリマー)により処理した表面処理粉体のpH5緩衝溶液、及びpH10緩衝溶液の写真図である。
【図5】本発明にかかる表面処理剤(MMPAホモポリマー)についての未処理及び1MNaOH溶液処理の各条件における赤外分光測定結果である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるモノマー(A)を構成モノマーとして含有するポリマーからなることを特徴とする表面処理剤。
【化1】

(式中、Rは水素又は炭素数1〜3のアルキル基、Rは炭素数4〜22のアルキレン基、Xは−NH−基又は酸素原子、Mは水素又は1価の無機又は有機カチオンを表す。)
【請求項2】
請求項1に記載の表面処理剤において、前記モノマー(A)を構成モノマー全量中70モル%以上含有するポリマーからなることを特徴とする表面処理剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の表面処理剤において、さらに下記一般式(2)〜(7)のいずれかに示されるモノマー(B)を構成モノマーとして含有するポリマーからなることを特徴とする表面処理剤。
【化2】

(式中、Rは水素又は炭素数1〜3のアルキル基、Rは炭素数1〜4のアルキレン基、Xは−NH−基又は酸素原子、Mは水素又は1価の無機又は有機カチオンを表す。)
【化3】

(式中、Rは水素又は炭素数1〜3のアルキル基、Rは炭素数1〜10のアルキル基、フッ化アルキル基、アミノアルキル基、又はヒドロキシアルキル基、Xは−NH−基又は酸素原子を表す。)
【化4】

(式中、Rは水素又は炭素数1〜3のアルキル基、Rは炭素数1〜4のアルキレン基、Rは同一又は異なっていてもよい水素又は炭素数1〜4のアルキル基、Xは−NH−基又は酸素原子、Yは1価の有機又は無機アニオンを表す。)
【化5】

(式中、R10は水素又は炭素数1〜3のアルキル基、R11は炭素数1〜4のアルキレン基、R12は水素又は炭素数1〜4のアルキル基、Xは−NH−基又は酸素原子、lは1〜100の整数を表す。)
【化6】

(式中、R13は水素又は炭素数1〜3のアルキル基、R14は同一又は異なっていてもよい水素又は炭素数1〜4のアルキル基、R15は水素又は炭素数1〜4のアルキル基、Xは−NH−基又は酸素原子、mは1〜100の整数を表す。)
【化7】

(式中、R16は水素又は炭素数1〜3のアルキル基、R17は炭素数1〜4のアルキレン基、Xは−NH−基又は酸素原子、Mは水素又は1価の無機又は有機カチオン、nは1〜100の整数を表す。)
【請求項4】
請求項3に記載の表面処理剤において、前記モノマー(A)と前記モノマー(B)との割合がモル比で(A):(B)=70:30〜99.9:0.1であるポリマーからなることを特徴とする表面処理剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−131886(P2006−131886A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−270007(P2005−270007)
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】