説明

表面処理装置

【課題】被清掃面の全域に亘って良好なクリーニング能力を得ることができる表面処理装置及を提供する。
【解決手段】芯部112の直径は、被清掃面2aの半径よりも大きく設定され、ワークWと芯部112とを相対移動させる移動機構83を備え、移動機構83は、回転可能に支持され、駆動力が付与されるシャフト87を備え、パッドシャフト95の中心軸O2と、シャフト87の中心軸O1とをオフセットさせた状態で、中心軸O1回りにパッドシャフト95を公転させるとともに、公転に連動してパッドシャフト95を中心軸O2回りに回動させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、レンズやディスク等の円盤状のワークの表面をクリーニングするための拭き取り装置(表面処理装置)が知られている。
このような拭き取り装置としては、ブラシ状やパッド状に形成されたクリーニング部材をワークの表面(被清掃面)に対して摺動させて、ワーク表面の汚れ等を除去するものがある(例えば、特許文献1,2参照)。
ところが、上述した従来技術では、使用するうちにワークから拭き取った汚れや、クリーニング液がクリーニング部材に付着したまま残存することで、クリーニング部材のクリーニング能力が経時劣化するという問題があった。クリーニング能力を維持するためには、クリーニング部材の交換作業やメンテナンス作業を頻繁に行う必要があり、それらの作業が煩雑であった。
【0003】
これに対して、例えば特許文献3に示されるように、連続的に走行するテープ状のクリーニング部材をワーク表面に対して摺動させることにより、ワーク表面をクリーニングするような構成が知られている。
【0004】
ところで、拭き取り装置によりクリーニングするワークとしては、例えば鏡筒レンズのように、被清掃面がワークの先端から凹状に窪んだ位置に配置されている場合がある。この場合、被清掃面の全域にクリーニング部材を到達させることが難しく、被清掃面に拭き残し等が生じるという問題がある。
そこで、例えば、特許文献4に示されるように、テープ状のクリーニング部材を厚さ方向に挟んで一端側にワーク、他端側にワークの凹部内に押し込まれる凸部を有し、この凸部を凹部内に配置した状態で、ワークの軸方向に直交する方向に凸部を往復移動させながらワークの被清掃面をクリーニングするような構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−96392号公報
【特許文献2】特開2008−269685号公報
【特許文献3】特開平2−134784号公報
【特許文献4】特開平7−138034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、凹状のワークの被清掃面をクリーニングする際、上述の特許文献4の構成では、クリーニング能力が不充分であった。すなわち、クリーニング部材を一定方向に往復移動させながらクリーニングしても、被清掃面の面方向全域に亘ってクリーニング部材が到達せず、例えば、被清掃面の外周部分等において汚れが残存するという問題がある。
【0007】
また、ブラシ状のクリーニング部材を用い、クリーニング部材を回転させることも考えられる。
ところが、この構成ではクリーニング部材が回転することによりブラシが捩れて絡まるという問題がある。また、クリーニング部材の回転中心及びその近傍では、被清掃面とクリーニング部材との周方向における相対的な摺動が少ない。そのため、被清掃面上に付着した汚れを完全に除去することができず、汚れが残存する虞がある。
【0008】
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、被清掃面の全域に亘って良好なクリーニング能力を得ることができる表面処理装置及を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明に係る表面処理装置は、円筒状のワークにおける凹部底面を被処理面とし、前記被処理面の面方向に沿って前記被処理面と処理部材とを相対的に摺動させることで、前記被処理面を処理する表面処理装置において、前記処理部材における前記被処理面との接触面の直径は、前記被処理面の半径よりも大きく設定され、前記ワークと前記処理部材とを相対移動させる移動機構を備え、前記移動機構は、回転可能に支持され、駆動力が付与されるシャフトを備え、前記シャフトの中心を通る第1法線と、前記処理部材の中心を通る第2法線とをオフセットさせた状態で、前記第1法線回りに前記処理部材を公転させるとともに、公転面内において、前記処理部材を前記第2法線回りに回動させることを特徴としている。
【0010】
この構成によれば、処理部材における接触面の直径が被清掃面の半径よりも大きくなるように設定したため、処理部材が第1法線回りに1回転(公転)することで被処理面の全域に接触することになる。
しかも、処理部材を、第1法線回りに公転させつつ、この公転に連動して第2法線回りに回動させることで、処理部材が公転のみを行う場合と異なり、処理部材の全体が被清掃面上を摺動するようにして移動する。
これにより、被処理面と処理部材とが、被処理面の面方向全域において充分に相対移動するので、被処理面の全域で均一な処理を行うことができる。したがって、ワークの被処理面がワークの先端から窪んでいる場合であっても、被処理面を効率的に処理することができ、処理能力の向上を図ることができる。
【0011】
また、前記移動機構は、前記処理部材を前記第1法線回りに公転させる公転機構と、前記処理部材を前記第2法線回りに回動させるリンク機構とを備え、前記公転機構は、前記第2法線上において、一端が前記シャフトに回動可能に連結され、他端に前記処理部材が固定されたパッドシャフトとを備え、前記リンク機構は、前記第2法線から所定距離オフセットさせた位置に配置された支持シャフトと、前記支持シャフトと前記パッドシャフトとを連結するアームとを備え、前記アームは、一端が前記パッドシャフトに固定される一方、他端が前記支持シャフトの中心を通る第3法線回りに回動可能に、なおかつ前記アームの軸方向に沿ってスライド可能に、前記支持シャフトに支持されていることを特徴としている。
この構成によれば、シャフトに駆動力が付与されてシャフトが第1法線回りに回転すると、まずパッドシャフトが処理部材とともに第1法線回りに公転しようとする。この場合、パッドシャフトにはアームが固定されているので、パッドシャフトが公転しようとすると、この公転に連動してアームが第3法線回りに回動するとともに、アームが軸方向にスライドする。そして、パッドシャフトはシャフトに回動可能に支持されているので、アームがスライドすることでパッドシャフトが第2法線回りに回動することになる。
その結果、処理部材は、その全体が被処理面上を摺動するようにして移動する。これにより、被処理面の中央部分においても、被処理面とパッドとが被処理面の面方向において充分に相対移動するため、処理部材により被処理面の全域に亘って均一な処理を行うことができる。これにより、処理能力の向上を図ることができるため、信頼性の高い製品を提供することができる。
また、モーター等の駆動手段を1つだけで動作させることができるので、構成の簡素化及び装置コストの低減が可能になる。
【0012】
また、前記処理部材は、前記被処理面のクリーニングを行うためのクリーニングテープと、前記クリーニングテープを介して前記被処理面を押圧するパッドとを備え、前記クリーニングテープは、前記被処理面の面方向に沿って順次送られるように構成されていることを特徴としている。
この構成によれば、被処理面をクリーニングするためのクリーニング部材にクリーニングテープを用いることで、従来のようにパッド状のクリーニング部材を用いた場合と異なり、クリーニング部材の交換等を要することなく、常に清潔な状態で被清掃面をクリーニングすることができる。これにより、さらなる作業効率の向上を図ることができる。
また、クリーニング部材にブラシを用いた場合のように、ブラシが絡まって捩れたりする虞もないので、メンテナンス性の向上も図ることができる。
【0013】
また、前記クリーニングテープに向けてクリーニング液を供給するためのクリーニング液供給ユニットが、前記クリーニングテープの送り方向の上流側で前記パッドに隣接配置されていることを特徴としている。
この構成によれば、クリーニング液供給ユニットをパッドに隣接配置することで、ワークをクリーニングする直前でクリーニング部材にクリーニング液を供給することができる。これにより、クリーニング液の揮発等を防ぎ、効率的にクリーニングを行うことができる。
【0014】
また、前記パッドは、前記被処理面に向けて付勢されていることを特徴としている。
この構成によれば、パッドが付勢手段によって被処理面に向けて付勢されているので、被処理面に向けて所定の押圧力が付与された状態で摺動することになる。これにより、被処理面の表面形状に倣って付勢手段が伸長または縮退するため、パッドの先端面が常に被処理面の法線方向に直交した状態で摺動することになる。これにより、被処理面の面方向全域に亘って、均一な押圧力が付与された状態で、処理部材が摺動するので、被処理面の全域で均一な処理を行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る表面処理装置によれば、被処理面と処理部材とが、被処理面の面方向全域において充分に相対移動するので、被処理面の全域で均一な処理を行うことができる。したがって、ワークの被処理面がワークの先端から窪んでいる場合であっても、被処理面を効率的に処理することができ、処理能力の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態における拭き取り装置の斜視図である。
【図2】本発明の実施形態におけるワークの斜視図である。
【図3】本発明の実施形態における要部拡大図であり、図1のA部拡大図である。
【図4】本発明の実施形態における拭き取りユニットの断面斜視図である。
【図5】本発明の実施形態における拭き取りユニットの平面図である。
【図6】本発明の実施形態における作用を説明するための説明図であり、拭き取りユニットの平面図である。
【図7】本発明の実施形態における作用を説明するための説明図であり、拭き取りユニットの平面図である。
【図8】本発明の実施形態における作用を説明するための説明図であり、拭き取りユニットの平面図である。
【図9】従来の拭き取りユニットの動作を示す説明図である。
【図10】従来の拭き取りユニットの動作を示す説明図である。
【図11】従来の拭き取りユニットの動作を示す説明図である。
【図12】従来の拭き取りユニットの動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は拭き取り装置(表面処理装置)の斜視図であり、図2はワークWの斜視図である。
図1に示すように、本実施形態の拭き取り装置1は、クリーニング工程において、鏡筒レンズ等のワークWのレンズ2表面(被清掃面2a)をクリーニングする装置である。まず、本実施形態のクリーニング対象であるワークWは、図2に示すように、筒部3と、筒部3の軸方向中途部において、筒部3の開口部3aを閉塞するように設けられたレンズ2とを備えている。すなわち、レンズ2は、筒部3の開口縁よりも軸方向内側に配置されている。
【0018】
(拭き取り装置)
拭き取り装置1は、クリーニングテープ(処理部材)Tを供給するためのテープ繰り出し機構10と、テープ繰り出し機構10の上流側から第1ダンサーロールユニット11と、第1テンションユニット12と、クリーニング液供給ユニット13と、拭き取りユニット14と、昇降ユニット15と、第2テンションユニット16と、第2ダンサーロールユニット17とで主に構成されている。
【0019】
テープ繰り出し機構10は、フレーム20の上部(上流端)に配置され、クリーニングテープTを供給するための供給源である供給リール21と、下部(下流端)に配置され、クリーニングテープTを巻き取るための巻取りリール22とを備えている。
【0020】
供給リール21は、X方向に沿って延出するシャフト25に回転可能に支持されたリール本体26と、リール本体26に隣接配置され、図示しない歯車伝達機構を介してリール本体26を回転させるモーター等の駆動手段27とを備えている。リール本体26には、未使用のクリーニングテープTが巻回されており、リール本体26が回転(図1矢印B参照)することでクリーニングテープTが下流側へ順次繰り出されるようになっている。なお、本実施形態で用いるクリーニングテープTの材料としては、例えば不織布等をテープ状に延伸したものが好適に用いられている。
一方、巻取りリール22は、供給リール21と同一の構成からなり、供給リール21の下方に配置されている。具体的には、シャフト28に回転可能に支持されたリール本体29と、駆動手段30とを備えている。そして、上述した各ユニット11〜17は、クリーニングテープTの走行方向(図1中矢印TA)に沿う両リール21,22間に順次配置されており、クリーニングテープTは各ユニット11〜17間を架け渡された状態で、両リール21,22を連結している。そして、リール本体29が回転(図1矢印C参照)することで、上流側から走行されるクリーニングテープTが順次巻き取られるようになっている。
【0021】
供給リール21の下流側には、第1ダンサーロールユニット11が配置されている。第1ダンサーロールユニット11は、ダンサーロール33と、ダンサーロール33をZ方向に沿って案内支持するガイド34とを備えている。
【0022】
ガイド34は、厚さ方向(X方向)で対向する一対の板材35,36からなり、その上端部には両板材35,36を連結するための一対の支柱37が設けられている。これら支柱37は、クリーニングテープTが走行する走行路としても機能するものであり、板材35,36の幅方向(Y方向)の両端に回転可能に支持され、クリーニングテープTが支柱37を介して折り返されることにより走行方向が変化するようになっている。各板材35,36の幅方向(Y方向)中央部、すなわち支柱37の間には板材35,36の上端縁から下方(Z方向)に沿って切り込まれたガイド溝38が形成されている。
【0023】
ダンサーロール33は、軸方向をX方向に一致させた状態でガイド溝38に支持された円柱状のものであり、その軸方向両端部がガイド溝38の周縁を摺動することで、ガイド溝38に上下動可能(図1中矢印D参照)に支持されている。また、ダンサーロール33は、クリーニングテープTを案内するガイドローラーの機能を有しており、ガイド溝38に回転可能に支持されている。すなわち、ダンサーロール33は、クリーニングテープTの張力に応じて、ガイド溝38内を上下動するように構成されている。なお、一方の板材35には、ガイド溝38の深さ方向(Z方向)に沿って複数のセンサー39が配列されている。これらセンサー39は、レーザー光の投光部及び受信部を備えた光センサーであり、投光部からガイド溝38をY方向に横切るようにレーザー光を出射するとともに、受光部によってダンサーロール33で反射した反射光を受信することで、ダンサーロール33のZ方向における位置を検出できるようになっている。
【0024】
第1ダンサーロールユニット11の下流側には、回転可能に支持されたガイドローラー40を挟んで第1テンションユニット12が配置されている。この第1テンションユニット12は、クリーニングテープTを挟持可能な押さえ機構43と、押さえ機構43の下流側に配置され、クリーニングテープTに張力を付与するテンション機構44とを備えている。
【0025】
押さえ機構43は、フレーム20に固定された押さえプレート45と、クリーニングテープTを間に挟んだ状態で対向配置され、クリーニングテープTの走行方向に直交する方向(Y方向)に沿ってスライド可能(図1中矢印E参照)に支持された押さえヘッド46と、この押さえヘッド46を駆動させるエアシリンダー等の駆動手段(不図示)とで構成されている。
また、押さえヘッド46における押さえプレート45との対向面には、クリーニングテープTとの間の摩擦係数を向上させるために、ゴム等からなるグリップ部材47が貼付されている。
【0026】
また、テンション機構44は、クリーニングテープTの走行方向に直交する方向(Y方向)に沿ってスライド可能(図1中矢印F参照)に支持されたスライドプレート49と、スライドプレート49を駆動させるエアシリンダー等の駆動手段(不図示)と、スライドプレート49上に回転可能に支持されたテンションローラー50とで構成されている。
【0027】
図3は、図1のA部拡大図である。
図1,3に示すように、第1テンションユニット12の下流側には、回転可能に支持されたガイドローラー54を挟んでクリーニング液供給ユニット13が配置されている。
クリーニング液供給ユニット13は、クリーニングテープTに対してクリーニング液を供給するためのものであり、フレーム20からに延出するアングル55に保持されたディスペンサー56を備えている。このディスペンサー56は、クリーニングテープTの厚さ方向に対して傾斜して保持されており、図示しないクリーニング液の供給源から供給されたクリーニング液を、クリーニングテープTの上面に対して噴射するように構成されている。なお、本実施形態のクリーニング液は、例えばアルコールと精製水との混合液からなる。
【0028】
ここで、クリーニング液供給ユニット13の下流側には、ワークWを搬送する搬送ユニット60が配置されている。搬送ユニット60は、クリーニングテープTの走行方向に直交する方向(X方向)に延出する搬送レール61を備えている。この搬送レール61は、拭き取り装置1と拭き取り装置1の前段に配置された図示しない加工装置との間を連結するものであり、加工装置で加工されたワークWを、パレットPに載置した状態で拭き取りユニット14まで搬送するようになっている。すなわち、搬送レール61は、一端側が加工装置の下流端に連結される一方、他端側が拭き取りユニット14と昇降ユニット15との間を通過するように構成されている。なお、パレットPは、平板状の部材であり、その中央部にはパレットPを厚さ方向に貫通する貫通孔P1が形成されている。そして、この貫通孔P1を塞ぐようにワークWが載置されるようになっている。
【0029】
また、拭き取りユニット14の下方(Z方向)には、拭き取りユニット14に対向するように昇降ユニット15が配置されている。この昇降ユニット15は、クリーニングテープTの厚さ方向(Z方向)に沿って上下動可能(図1中矢印J参照)に支持されたスライドテーブル57と、スライドテーブル57の先端に設けられ、ワークWをクリーニングポジションまで搬送するための搬送アーム58とを備えている。
搬送アーム58は、平面視L字型の部材であり、一端側がスライドテーブル57の上端に固定される一方、他端側は上方に向かって延出している。また搬送アーム58の他端側には、上方に向かってワークステージ59が延出している。このワークステージ59は、上述したパレットPの貫通孔P1内に挿入可能な円柱形状の部材であり、パレットPの下方から貫通孔P1内に挿入されワークWを上方(Z方向)に向けて押し上げるようになっている。
【0030】
図1に示すように、クリーニング液供給ユニット13の下流側には、拭き取りユニット14を間に挟んで第2テンションユニット16が配置されている。この第2テンションユニット16は、クリーニングテープTを厚さ方向に挟持可能な複数(例えば、2つ)の押さえ機構64,65を備え、これら押さえ機構64,65がクリーニングテープTの走行方向に沿って並んで配置されている。
まず、各押さえ機構64,65は、上述した第1テンションユニット12の押さえ機構43と同一の構成であり、押さえプレート66と、クリーニングテープTを間に挟んだ状態で対向配置され、クリーニングテープTの走行方向に直交する方向(Z方向)に沿ってスライド可能(図1中矢印G参照)に支持された押さえヘッド67と、この押さえヘッド67を駆動させるエアシリンダー等の駆動手段(不図示)とで構成されている。また、押さえヘッド67における押さえプレート66との対向面にはゴム等からなるグリップ部材68が貼付されている。
【0031】
ここで、各押さえ機構64,65のうち、下流側の押さえ機構65は、図示しないエアシリンダー等の駆動手段を介して、クリーニングテープTの走行方向(Y方向)に沿ってスライド可能(図1中矢印H参照)に構成されている。そして、押さえ機構64,65によって、クリーニングテープTを挟持した状態で押さえ機構65を下流側(Y方向)にスライドさせることにより、クリーニングテープTを所定長さだけ下流側に走行させるようになっている。
【0032】
そして、第2テンションユニット16の下流側には、第2ダンサーロールユニット17が配置されている。第2ダンサーロールユニット17は、上述した第1ダンサーロールユニット11とほぼ同一の構成からなり、ダンサーロール70と、ダンサーロール70をZ方向に沿って往復移動可能(図1中矢印I参照)に支持するガイド71とを備えている。
【0033】
ガイド71の板材72,73の両端には、各板材72,73を連結するための円柱状の支柱74が回転可能に支持されている。また、各板材72,73の幅方向(Y方向)中央部、すなわち支柱74の間には板材の上端縁から下方(Z方向)に沿って切り込まれたガイド溝75が形成されている。このガイド溝75内において、ダンサーロール70が上下動可能、かつ回転可能に支持されている。
そして、ダンサーロール70の軸方向中央部には、ダンサーロール70の下半部を回り込んで約180度折り返されるようにクリーニングテープTがガイドされており、第2ダンサーロールユニット17の下流側でクリーニングテープTが巻取りリール22に巻回されるようになっている。なお、一方の板材72には、ガイド溝75の深さ方向(Z方向)に沿って複数のセンサー76が配列されている。
【0034】
(拭き取りユニット)
図4は拭き取りユニットの断面斜視図であり、図5は拭き取りユニットの平面図である。
ここで、図1に示すように、上述した拭き取りユニット14は、クリーニングテープTの走行方向に沿ってクリーニング液供給ユニット13の下流側に隣接配置されるとともに、クリーニングテープTを間に挟んで昇降ユニット15の反対側に配置されている。具体的には、図4,5に示すように、拭き取りユニット14は、フレーム20(図1参照)から延出したブラケット80にシャフトベース84を介して固定され、摺動部の粉塵対策の機能を有するカバー81と、カバー81の下方に配置され、クリーニングテープTを間に挟んだ状態でワークWの被清掃面2aに接触可能な拭き取りヘッド82と、拭き取りヘッド82を被清掃面2aの面方向に沿って摺動させる移動機構83とをそなえている。
【0035】
カバー81は、クリーニングテープTの走行方向(Y方向)と長手方向とを一致した状態で配置された直方体形状のものであり、その長手方向の両側面81a,81bには、シャフトベース84,85が固定されている。シャフトベース84,85は、Z方向に沿って貫通する貫通孔84a、85a内にそれぞれ軸受け86(例えば、ボールベアリング)が内嵌固定されている。なお、シャフトベース84,85は、ユニットとして一体形成されている。
【0036】
移動機構83は、シャフトベース84に軸受け86を介して回転可能に支持されたシャフト87と、シャフト87を中心軸O1回りに回転させるモーター88と、シャフト87の回転(図4中矢印K参照)によりシャフト87の中心軸O1回りに拭き取りヘッド82を公転させる公転機構91と、シャフト87に対して拭き取りヘッド82を回動(往復回転運動)させるリンク機構92とを備えている。
モーター88は、シャフトベース84の直上にモーターシャフト89とシャフト87との軸線を一致させた状態でブラケット80の上部に連結されており(不図示)、モーターシャフト89とシャフト87の一端側とがカラー90を介して連結されている。
【0037】
シャフト87の他端側は、径方向外側に張り出すフランジ部87aが形成されており、このフランジ部87aにシャフトカラー93のフランジ部93aが締結固定されている。シャフトカラー93は、軸受け(例えば、ボールベアリング)94が内嵌固定された筒部93bと、筒部93bの上端側から径方向外側に向かって張り出した上述したフランジ部93aとで形成されている。筒部93bの貫通孔93cは、その中心軸(第2法線)O2とシャフト87の中心軸(第1法線)O1とが所定距離Qだけオフセットした状態で形成されている。そして、貫通孔93c内には、軸受け94を介してパッドシャフト95が中心軸O2回りに回動可能に支持されている。なお、シャフト87及びパッドシャフト95により、パッドシャフト95がシャフト87の中心軸O1回りに公転する公転機構91が構成されている。
【0038】
一方、シャフトベース85には、軸受け86を介して支持シャフト97が中心軸O3回りに回動可能に支持されている。この支持シャフト97は、一端側にストップリング98が固定される一方、他端側にはスライドヘッド99が形成されている。このスライドヘッド99は、その軸方向が支持シャフト97の中心軸O3(Z方向)に直交するように形成された筒状の部材であり、その貫通孔99a内にはボールブッシュ101が内嵌固定されている。
【0039】
そして、上述した支持シャフト97とパッドシャフト95との間には、両者を連結するアーム103が設けられている。このアーム103は、一端側が支持シャフト97のスライドヘッド99内にボールブッシュ101を介してスライド可能に支持される一方、他端側が連結ピン104を介してパッドシャフト95に固定されている。なお、支持シャフト97がアーム103によってパッドシャフト95に連動可能に連結されることで、本実施形態のリンク機構92が構成されている。また、移動機構83の動作については、後に詳述する。
【0040】
パッドシャフト95の他端側は、カバー81の底面81cに形成された貫通孔81dからカバー81の下方へ向けて突出しており、この突出した部分に拭き取りヘッド82が連結されている。この拭き取りヘッド82は、筒状のホルダ部材109を備えている。ホルダ部材109は、パッドシャフト95の中心軸O2の軸方向に一致させた状態で配置され、その軸方向中央部は内径が拡大した拡径部109aが形成されている。ホルダ部材109内には、拭き取りパッド(処理部材)110が保持されている。この拭き取りパッド110は、筒状の保持部111と、この保持部111の貫通孔111a内に圧入された芯部112とで構成されている。保持部111の上端部には、径方向外側に張り出す外フランジ部111bが形成され、この外フランジ部111bがホルダ部材109の下端側の内フランジ部109cに当接した状態で、拭き取りパッド110がホルダ部材109に保持されている。また、ホルダ部材109の上端側の内フランジ部109bと、保持部111の外フランジ部111bとの間には、拭き取りパッド110を下方(内フランジ部109bと外フランジ部111bとが離間する方向)に向けて付勢する付勢手段113が介在されている。
【0041】
芯部112は、その軸線がパッドシャフト95の中心軸O2に一致した状態で保持部111に圧入されており、その先端(下端)が保持部111の下端面よりも下方に突出している。そして、芯部112の下方には、芯部112の軸方向(Z方向)に直交する方向(Y方向)に、クリーニングテープTが走行するようになっており、クリーニング時には搬送アーム58(図1参照)に保持されたワークWとの間にクリーニングテープTを挟んだ状態で被接触面2aに押圧されるようになっている。また、芯部112の構成材料としては、例えばウレタン等が好適に用いられている。なお、芯部112は、その直径D1がワークWの被清掃面2aの半径R1よりも長くなるように設定されている(D1>R1/2)。また、本実施形態のシャフトカラー93や拭き取りヘッド82は、パッドシャフト95に対して着脱可能に構成されており、ワークWの大きさに応じて芯部112の直径D1や、シャフト87とパッドシャフト95とのオフセット量を適宜調整できるようになっている。
【0042】
(クリーニング方法)
次に、上述した拭き取り装置1を用いたワークWのクリーニング方法を説明する。なお、拭き取り装置1の作動前には、各ダンサーロールユニット11,17のダンサーロール33,70は、ガイド溝38,75の最上点にあるものとする。
【0043】
まず、図1に示すように、拭き取り装置1を作動させると、テープ繰り出し機構10の駆動手段27が駆動し、供給リール21のリール本体26を矢印B方向に回転させる。リール本体26が回転すると、リール本体26に巻回されたクリーニングテープTが下流側へ供給される。この時、クリーニングテープTはダンサーロール33の自重によって、下流側へ引っ張られるようにして走行する。これに伴い、ダンサーロール33は、ガイド溝38内を下降する。すなわち、ダンサーロール33の下半部を回り込んで約180度折り返されるように、クリーニングテープTがガイドされる。そして、第1ダンサーロールユニット11のセンサー39(最下部のセンサー39)によって、ダンサーロール33の位置を検出した時点で駆動手段27の駆動を停止し、リール本体26の回転を停止させる。これにより、クリーニングテープTは、各ユニット11〜17を通って、各ダンサーロールユニット11,17のダンサーロール33,70間に架け渡された状態となる。
【0044】
また、本実施形態では、支柱37間で弛んだ分だけ予めクリーニングテープTを余分に供給し、この状態でクリーニングテープTをダンサーロール33によって保持させておく。このように、クリーニングテープTを予め余計にダンサーロール33に保持させておくことで、未使用のクリーニングテープTを所定長さだけ供給する度に駆動手段27を毎回駆動させることがない。その結果、クリーニングテープTの張力を維持させた状態で、作業効率の向上及び作業コストの低減を図ることができる。
【0045】
そして、クリーニングテープTの供給が終了したら、押さえ機構65の押さえヘッド67を押さえプレート66に向けてスライド(図1中矢印G参照)させ、押さえプレート66とグリップ部材68との間にクリーニングテープTを挟持させる。そして、クリーニング液供給ユニット13のディスペンサー56から、クリーニングテープTに向けてクリーニング液を供給するとともに、クリーニングテープTを挟持させた状態で、押さえ機構65を下流側へスライドさせる(図1中矢印H参照)。これにより、所定長さ(押さえ機構65のスライド幅)のクリーニングテープTが、クリーニング液が浸透した状態で拭き取りユニット14の下方まで供給することができる。
【0046】
その後、押さえ機構43,64の押さえヘッド46,67をそれぞれ押さえプレート45,66に向けてスライド(図1中矢印E,G参照)させ、押さえプレート45,66とグリップ部材47,68との間にクリーニングテープTを挟持させる。
そして、テンション機構44をスライド(図1中矢印F参照)させ、両者間に架け渡されたクリーニングテープTに所定の張力を付与する。
【0047】
一方、拭き取り装置1の前段の加工装置で加工されたワークWは、搬送レール61上をパレットPにセットされた状態で、拭き取りユニット14と昇降ユニット15との間まで搬送される。この時点で、スライドテーブル57を上昇(図1中矢印J参照)させると、搬送アーム58のワークステージ59がパレットPの貫通孔P1を通ってワークWの下面側に当接する。そして、さらにスライドテーブル57を上方に向けてスライドさせると、ワークWの被清掃面2aがクリーニングテープTを間に挟んで拭き取りパッド110の芯部112の先端面に接触する。このポジションが、ワークWの被清掃面2aのクリーニングが行われる、クリーニングポジションである(図3参照)。なお、このクリーニングポジションでは、図5に示すように、付勢手段113を介して芯部112からワークWの被清掃面2aに向けて、所定の押圧力が付与された状態で芯部112と被清掃面2aとが接触しているとともに、シャフト87の中心軸O1がワークW(被清掃面2a)の中心に一致した状態で保持されている。
【0048】
ここで、図5〜8は、図4に相当する拭き取りユニットの平面図であって、クリーニング時における拭き取りユニットの動作方法を示す説明図である。なお、図5〜8では、被清掃面2a上を芯部112が90度毎公転する図を示しており、図5〜8中白三角は芯部112の周方向における基準点を示す基準マークMである。
図4,5に示すように、ワークWがクリーニングポジションにある状態で、モーター88を駆動させると、モーター88の駆動力がシャフト87に伝達され、シャフト87が中心軸O1回りに回転し始める。すると、図4,6に示すように、パッドシャフト95とシャフト87とが、シャフト87の径方向外側に所定距離Qだけオフセットした状態で連結されているため、パッドシャフト95はシャフト87の回転に連動して中心軸O1回りに公転することになる。
【0049】
図9〜12は、従来の拭き取りユニットの動作を示す説明図である。なお、以下の説明では、本実施形態と同様の構成については同様の符号を付して説明は省略する。
ところで、図9に示すように、従来の拭き取りユニット200において、例えばパッドシャフト95がシャフト87に対して所定距離Qだけオフセットされた状態で固定されている場合、シャフト87を回転させると、上述した動作と同様の動作によって、図10〜12に示すようにシャフト87の中心軸O1回りにパッドシャフト95が公転する(図9〜12中基準マークM参照)。
この場合、被清掃面2aの外周部分では、パッドシャフト95と同軸上に連結された拭き取りヘッド201が、クリーニングテープ(不図示)を介して被清掃面2a上を摺動することになる。すなわち、被清掃面2aと拭き取りヘッド201とが周方向において相対移動するため、被清掃面2aの汚れが除去される。これに対して、被清掃面2aの中央部分、すなわち被清掃面2aの中心(シャフト87の中心軸O1)からの距離が近くなるにつれ、拭き取りヘッド201と被清掃面2aとの相対的な摺動が少ない。そのため、被清掃面2a上に付着した汚れを除去することができず、汚れが残存する虞がある。
【0050】
これに対して、本実施形態では、パッドシャフト95(公転機構91)は、シャフトカラー93の軸受け94に、シャフト87に対して回動可能に支持されるとともに、アーム103を介してリンク機構92に連結されている。この場合、図6に示すように、パッドシャフト95が中心軸O1回りに公転すると、これに連動して中心軸O2と中心軸O3とが離間する方向(アーム103の伸長方向)に向けて、アーム103がスライドヘッド99上をスライド(図6中矢印L参照)する。これと同時に、支持シャフト97が中心軸O3回りに回動する(図6中矢印N参照)。
【0051】
すると、パッドシャフト95はシャフト87に回動可能に支持されているので、アーム103がスライドすることで、パッドシャフト95が軸受け94を介してパッドシャフト95の公転方向Kとは反対の方向(図6中矢印S参照)に中心軸O2回りに回動し始める。その結果、パッドシャフト95の基準マークMの向きは、アーム103の軸方向に一致している。すなわち、パッドシャフト95の中心軸O1回りの公転に伴って、パッドシャフト95自体も中心軸O2回りに回動していることになる。
【0052】
すなわち、上述した従来の拭き取りユニットの構成を示す図9〜12では、パッドシャフト95の公転時には、基準マークMが常時中心軸O1を向いていることになり、被清掃面2aの中央部分では被清掃面2a上に付着した汚れを効率的に除去することができない。これに対して、本実施形態ではパッドシャフト95が軸受け94を介してシャフト87に回動可能に支持されているとともに、パッドシャフト95の公転面内(被清掃面2a)において、パッドシャフト95の公転に連動してパッドシャフト95を回動させるリンク機構92が連結されているので、パッドシャフト95を回動させつつ公転させることができる。
【0053】
よって、被清掃面2aの外周部分では、パッドシャフト95と同軸上に連結された拭き取りパッド110の芯部112が、クリーニングテープTを介して被清掃面2aの周縁に沿った状態で、被清掃面2a上を摺動することになる。すなわち、被清掃面2aと芯部112とが周方向において充分に相対移動するため、クリーニングテープTが被清掃面2a上に付着した汚れを拭き取りながら移動する。
一方、本実施形態では、パッドシャフト95の公転に連動して、その公転方向Kとは反対の方向にパッドシャフト95が中心軸O2回りに回動するため、芯部112は、その全体が被清掃面2a上を摺動するようにして移動する。これにより、被清掃面2aの中央部分において、芯部112と被清掃面2aとの相対的な摺動が、上述した図9〜12の動作に比べて大きい。すなわち、芯部112の全体が被清掃面2a上を摺動しながら中心軸O1回りに公転することになる。その結果、被清掃面2aの中央部分においても、被清掃面2aと芯部112とが被清掃面2aの面方向において充分に相対移動することで、クリーニングテープTが被清掃面2a上に付着した汚れを拭き取りながら移動する。これにより、被清掃面2aのクリーニングが効率的に行われる。
【0054】
その後、図7に示すように、シャフト87が図6の状態から中心軸O1回りにさらに90度回転すると、シャフト87の回転に連動してパッドシャフト95が中心軸O2回りに90度公転する。すると、上述した動作と同様にアーム103がスライドヘッド99上をスライド(図7中矢印L参照)するとともに、支持シャフト97が中心軸O3回りに回動する(図7中矢印N参照)。なお、この時点で中心軸O2と中心軸O3とは最も離間しており、アーム103が最も伸長した状態になる。これにより、パッドシャフト95(芯部112)は、矢印S方向(公転方向Kと反対方向)に中心軸O2回りに回動しつつ、中心軸O1回りに公転する。この場合も、芯部112の基準マークMは、アーム103の軸方向に一致しており、芯部112全体が被清掃面2a上を摺動しながら中心軸O1回りを公転することになる。
【0055】
さらに、図8に示すように、パッドシャフト95が図7の状態からさらに中心軸O1回りに90度回転すると(図8中矢印K参照)、シャフト87の回転に連動してパッドシャフト95が中心軸O2回りに90度公転する。これに連動して中心軸O2と中心軸O3とが接近する方向(アーム103の縮退方向)に向けて、アーム103がスライドヘッド99上をスライド(図8中矢印L参照)する。これと同時に、支持シャフト97が中心軸O3回りに回動する(図8中矢印N参照)。その結果、パッドシャフト95(芯部112)は矢印S方向(公転方向Kと反対方向)に中心軸O2回りに回動しつつ、中心軸O1回りに公転する。そして、芯部112の基準マークMは、アーム103の軸方向に一致しており、芯部112全体が被清掃面2a上を摺動しながら中心軸O1回りを公転することになる。
【0056】
その後、図5に戻り、パッドシャフト95が図8の状態からさらに中心軸O1回りに90度回転すると(図5中矢印K参照)、シャフト87の回転に連動してパッドシャフト95が中心軸O2回りに90度公転する。これに連動して中心軸O2と中心軸O3とが接近する方向(アーム103の縮退方向)に向けて、アーム103がスライドヘッド99上をスライド(図5中矢印L参照)する。これと同時に、支持シャフト97が中心軸O3回りに回動する(図5中矢印N参照)。その結果、パッドシャフト95(芯部112)は矢印S方向(公転方向Kと反対方向)に中心軸O2回りに回動しつつ、中心軸O1回りに公転するそして、芯部112の基準マークMは、アーム103の軸方向に一致しており、芯部112全体が被清掃面2a上を摺動しながら中心軸O1回りを公転することになる。
【0057】
このように、本実施形態の拭き取りパッド110が中心軸O1回りに公転することで、この公転に連動して拭き取りパッド110自体が公転方向Kとは反対の方向Sに向けて回動することになる。これにより、拭き取りパッド110の芯部112全体が被清掃面2a上を摺動する。
さらに、拭き取りパッド110(芯部112)は、付勢手段113によって下方に向けて付勢されており、被清掃面2aに向けて所定の押圧力が付与された状態で摺動しているので、被清掃面2aの表面形状に倣って付勢手段113が伸長または縮退する。これにより、芯部112の先端面が、常に被清掃面2aの法線方向に直交した状態で摺動することになる。
その結果、被清掃面2aの面方向全域に亘って、均一な押圧力が付与された状態で、クリーニングテープTが被清掃面2a上に付着した汚れを拭き取りながら摺動する。これにより、被清掃面2aの全域で均一なクリーニング能力を発揮させることができる。
【0058】
なお、図1に示すように、ワークWのクリーニングが終了すると、搬送アーム58を下降させ、再びワークWをパレットP上に載置する。そして、ワークWをパレットPとともに拭き取り装置1から搬出する。
【0059】
その後、次のワークWをクリーニングするには、押さえ機構65の押さえプレート66をスライド(図1中矢印G参照)させ、クリーニングテープTを解除するとともに、押さえ機構65をクリーニングテープTの上流側(図1中矢印H参照)にスライドさせる。そして、押さえ機構43,64からクリーニングテープTを解除するとともに、テンション機構44をクリーニングテープTから離間する方向にスライドさせる。
次に、押さえ機構65により再びクリーニングテープTを挟持させ、この状態で押さえ機構65を下流側にスライドさせる。すると、クリーニングテープTが下流側に沿って引っ張られる。これにより、ダンサーロール33がガイド溝38内を上昇し、ダンサーロール33に保持されたクリーニングテープTを所定長さだけ下流側に供給することができる。その後、上述した動作と同様の動作によりワークWの被清掃面2aをクリーニングする。
【0060】
なお、ワークWのクリーニングに用いられた使用済みのクリーニングテープTは、送り機構65の下流側においてダンサーロール70に保持されている。すなわち、クリーニングテープTが下流側に走行する度に、ダンサーロール70はガイド溝75内を下降し、クリーニングテープTは支柱74間に弛んだ状態で保持される。そして、クリーニングが行われ続けると、ダンサーロール70は徐々にガイド溝75内を下降していく。この場合、ダンサーロール70がセンサー76(最下部のセンサー76)によって検出された時点で、巻取りリール22の駆動手段30を駆動させる。これにより、リール本体29が回転(図1中矢印C参照)し、ダンサーロール70で保持された使用済みのクリーニングテープTは一斉に巻取りリール22のリール本体29に巻き取られることになる。これにより、ダンサーロール70は、再びガイド溝70の最上点まで上昇する。このような動作を繰り返すことで、クリーニングテープTを下流側に供給する度に駆動手段30を駆動させることがないので、クリーニングテープTの張力を維持させた状態で、作業効率の向上及び作業コストの低減を図ることができる。
【0061】
以上、本実施形態によれば、芯部112の直径D1が被清掃面2aの半径R1よりも大きくなるように設定したため、芯部112が中心軸O1回りに1回転(公転)することで被清掃面2aの全域に接触することになる。
特に、本実施形態では、拭き取りパッド110(芯部112)を、その中心軸O2周りに回動させつつ、中心軸O1回りに公転させる構成とした。
この構成によれば、芯部112は、中心軸O2回りに回動しながら被清掃面2a上を摺動することになる。これにより、被清掃面2aの外周部分において、拭き取りパッド110の芯部112が、クリーニングテープTを介して被清掃面2aの周縁に沿った状態で、被清掃面2a上を摺動することになる。すなわち、被清掃面2aと芯部112とが周方向において充分に相対移動するため、クリーニングテープTが被清掃面2a上に付着した汚れを拭き取りながら移動する。
一方、被清掃面2aの中央部分においても、被清掃面2aと芯部112とが被清掃面2aの面方向において充分に相対移動することで、クリーニングテープTが被清掃面2a上に付着した汚れを拭き取りながら移動する。
【0062】
すなわち、公転機構91及びリンク機構92を用いて、芯部112全体を被清掃面2a上で摺動させることで、本実施形態のワークWのように、被清掃面2aがワークWの先端から窪んでいる場合であっても、被清掃面2aの全面に亘って均一な押圧力を付与した状態で芯部112を摺動させることができる。これにより、クリーニングテープTが被清掃面2a上に付着した汚れを拭き取りながら移動し、被清掃面2aを効率的にクリーニングすることができる。したがって、例えば拭き取りヘッドが公転のみを行う場合に比べて、クリーニング能力の向上を図ることができる。その結果、汚れ等の付着がない、信頼性の高い製品を提供することができる。
しかも、本実施形態では、モーター等の駆動手段を1つだけで動作させることができるので、構成の簡素化及び装置コストの低減が可能になる。
【0063】
また、本実施形態では、クリーニング液供給ユニット13を拭き取りユニット14に隣接配置することで、ワークWをクリーニングする直前でクリーニングテープTにクリーニング液を供給することができる。これにより、クリーニング液の揮発等を防ぎ、効率的にクリーニングを行うことができる。
さらに、本実施形態では、クリーニング部材にクリーニングテープTを用いているため、クリーニングテープTを順次走行させることで、従来のようにパッド状のものを用いた場合に異なり、クリーニング部材の交換等を要することなく、常に清潔な状態で被清掃面2aをクリーニングすることができる。これにより、さらなる作業効率の向上を図ることができる。また、クリーニング部材にブラシを用いた場合のように、ブラシが絡まって捩れたりする虞もないので、メンテナンス性の向上も図ることができる。
なお、本実施形態では、拭き取りユニット14における各シャフト87,95,97の動作支持部にボールベアリング等の軸受け86,94を採用するとともに、アーム103の動作支持部にボールブッシュ101を採用することで、動作支持部での金属摩擦により生じる磨耗粉の発生を抑制することができる。また、万が一磨耗粉が発生したとしても、これら動作支持部がカバー81により覆われているため、これら磨耗粉がレンズ2の被清掃面2aに付着することを防ぐことができる。その結果、被清掃面2aを清潔な状態に維持することができる。
【0064】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこれら実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0065】
例えば、上述した実施形態では、拭き取りパッド110(芯部112)の中心軸O2回りに回動させながら中心軸O1回りに公転させる構成であれば、上述の移動機構83に限らず種々の機構を採用することが可能である。また、拭き取りパッド110の回動角度は、適宜設計変更が可能である。
また、上述した実施形態では、クリーニング部材にクリーニングテープTを用いた場合について説明したが、これに限らず、クリーニング部材となるパッドを拭き取りパッド110に直接取り付ける構成にしてもよい。また、クリーニング部材にブラシを用いても構わない。
【0066】
さらに、上述した実施形態では、鏡筒レンズ等のワークWの被清掃面2aに対して清掃を行う場合について説明したが、これに限らず、被清掃面が先端から凹状に窪んだ位置に配置された種々のワークWに対して用いることが可能である。また、レンズ2は、曲面を有する凸レンズ等であってもよい。
また、拭き取りパッド110の芯部112の先端面形状は、円形に限らず、矩形等に形成してもよい。
【0067】
さらに、上述の実施形態では、本発明の表面処理装置をワークWの被清掃面2aをクリーニングする場合について説明したが、これに限らず被処理面を研磨したり、塗料を塗布したりする場合についても本発明の表面処理装置を採用することが可能である。
【符号の説明】
【0068】
1…拭き取り装置(表面処理装置) 2a…被清掃面(被処理面) 13…クリーニング液供給ユニット 15…昇降ユニット 82…拭き取りパッド(パッド) 83…移動機構 87…シャフト 91…公転機構 92…リンク機構 95…パッドシャフト 97…支持シャフト 103…アーム T…クリーニングテープ(処理部材) W…ワーク O1…シャフトの中心軸(第1法線) O2…パッドシャフトの中心軸(第2法線) O3…支持シャフトの中心軸(第3法線)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のワークにおける凹部底面を被処理面とし、前記被処理面の面方向に沿って前記被処理面と処理部材とを相対的に摺動させることで、前記被処理面を処理する表面処理装置において、
前記処理部材における前記被処理面との接触面の直径は、前記被処理面の半径よりも大きく設定され、
前記ワークと前記処理部材とを相対移動させる移動機構を備え、
前記移動機構は、回転可能に支持され、駆動力が付与されるシャフトを備え、前記シャフトの中心を通る第1法線と、前記処理部材の中心を通る第2法線とをオフセットさせた状態で、前記第1法線回りに前記処理部材を公転させるとともに、
公転面内において、前記処理部材を前記第2法線回りに回動させることを特徴とする表面処理装置。
【請求項2】
前記移動機構は、前記処理部材を前記第1法線回りに公転させる公転機構と、前記処理部材を前記第2法線回りに回動させるリンク機構とを備え、
前記公転機構は、前記第2法線上において、一端が前記シャフトに回動可能に連結され、他端に前記処理部材が固定されたパッドシャフトとを備え、
前記リンク機構は、前記第2法線から所定距離オフセットさせた位置に配置された支持シャフトと、前記支持シャフトと前記パッドシャフトとを連結するアームとを備え、
前記アームは、一端が前記パッドシャフトに固定される一方、他端が前記支持シャフトの中心を通る第3法線回りに回動可能に、なおかつ前記アームの軸方向に沿ってスライド可能に、前記支持シャフトに支持されていることを特徴とする請求項1記載の表面処理装置。
【請求項3】
前記処理部材は、前記被処理面のクリーニングを行うためのクリーニングテープと、前記クリーニングテープを介して前記被処理面を押圧するパッドとを備え、
前記クリーニングテープは、前記被処理面の面方向に沿って順次送られるように構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の表面処理装置。
【請求項4】
前記クリーニングテープに向けてクリーニング液を供給するためのクリーニング液供給ユニットが、前記クリーニングテープの送り方向の上流側で前記パッドに隣接配置されていることを特徴とする請求項3記載の表面処理装置。
【請求項5】
前記パッドは、前記被処理面に向けて付勢されていることを特徴とする請求項3または請求項4記載の表面処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−184213(P2010−184213A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−30988(P2009−30988)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】