説明

表面実装型パルストランス及びコモンモードチョークコイル一体型表面実装型パルストランス、並びにこれらを用いるモジュラジャック部品

【課題】貼り合わせコアを用いて好適に構成された表面実装型パルストランス及びコモンモードチョークコイル一体型表面実装型パルストランス、並びにこれらを用いるモジュラジャック部品を提供すること。
【解決手段】表面実装型パルストランス10において、導電性磁性材料からなるドラム型コア12及び板状コア13と、ドラム型コア12が収納され、表面に端子電極P21〜P26が形成された樹脂カバー11と、ドラム型コア12に巻回され、端子電極P21〜P26に接続されたコイルと、を有し、ドラム型コア12及び板状コア13は閉磁路を構成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面実装型パルストランス及びコモンモードチョークコイル一体型表面実装型パルストランス、並びにこれらを用いるモジュラジャック部品に関し、特に貼り合わせコアを用いて構成した表面実装型パルストランス及びコモンモードチョークコイル一体型表面実装型パルストランス、並びにこれらを用いるモジュラジャック部品に関する。
【背景技術】
【0002】
パソコンなどの機器をLANや電話網などのネットワークに接続する場合、ケーブルを通して侵入するESD(ElectroStatic Discharge,静電放電)や高電圧から機器を守る必要がある。そこで、ケーブルと機器の接続点を構成するコネクタにはパルストランスが用いられる。
【0003】
従来用いられているパルストランスはドーナツ型の磁心(トロイダルコア)に一次コイルと二次コイルを巻回して作られており、一次コイルに印加される電圧のうち交流成分(パルス)のみを二次コイルに伝えるという性質を有する。直流成分は二次コイルに伝わらないため、パルストランスはESDや高電圧を遮断することができる。
【特許文献1】特開平7−161535号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記トロイダルコアを用いるパルストランスには、自動巻きによるコイルの巻回ができないために製造コストが高くなってしまうという問題がある。また、近年はパルストランスの表面実装化が求められるが、そのためには特許文献1に示されるようなトロイダルコア全体を収納するケースが必要になるため、あまり小型化できないという問題もある。
【0005】
上記のような問題を解決するための方法として、コモンモードフィルタ等に用いられる貼り合わせコアを用いることが考えられる。すなわち、貼り合わせコアはドラム型コアと板状コアとを貼り合わせて閉磁路を構成する複合型のコアであり、ドラム型コアに一次コイルと二次コイルを重ねて巻回することになるため、貼り合わせる前に自動巻きによってコイルを巻回することが可能である。また、ドラム型コアの鍔部分を支えにして表面実装できるので、全体を収納するためのケースを用いずに表面実装でき、したがって小型化も可能である。
【0006】
しかしながら、貼り合わせコアでは端子電極がドラム型コアの鍔部分に直接形成されるため、従来、貼り合わせコアを用いてパルストランスを構成することはできなかった。以下、詳細に説明する。
【0007】
パルストランスではコモンモードフィルタに比べて高い透磁率の磁心が必要となるため、貼り合わせコアに比較的透磁率の高い材料を用いる必要がある。一例を挙げると、コモンモードフィルタではNi−Zn系材料を用いることが多いが、パルストランスではより透磁率の高いMn−Zn系材料を用いる必要がある。
【0008】
透磁率の高い材料は一般に導電性も高いため、その上に直接端子電極を形成すると、端子電極間で導通してしまう。したがって、貼り合わせコアを用いてパルストランスを構成することはできなかったのである。
【0009】
したがって、本発明の課題のひとつは、貼り合わせコアを用いて好適に構成された表面実装型パルストランス及びコモンモードチョークコイル一体型表面実装型パルストランス、並びにこれらを用いるモジュラジャック部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明による表面実装型パルストランスは、導電性磁性材料からなり、巻芯部を有する第1コアと、導電性磁性材料からなる第2コアと、第1コアが収納され、表面に複数の端子電極が形成された樹脂カバーと、巻芯部に巻回され、複数の端子電極に接続されたコイルと、を有し、第1コア及び第2コアは閉磁路を構成することを特徴とすることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、第1コアを樹脂カバーに収納し、その上に端子電極を形成しているので、端子電極間での導通は発生しない。したがって、貼り合わせコアを用いて好適に構成された表面実装型パルストランスを提供することが可能になっている。
【0012】
また、上記表面実装型パルストランスにおいて、コイルは樹脂カバー上に巻回されることとしてもよい。これによれば、コイルの巻線に被覆されてはいないものの表面に酸化絶縁膜を有する導線を用いた場合であっても、第1コアとの間に導通が発生することを防止できる。
【0013】
また、上記各表面実装型パルストランスにおいて、第1コアと第2コアとは樹脂カバーの開放部を介して面接触しており、第1コア及び第2コアの各接触面は接触面以外の部分に比べて平坦であることとしてもよい。これによれば、第1コアと第2コアの接触面で生ずる磁気ギャップを小さくすることができる。
【0014】
さらに、この表面実装型パルストランスにおいて、第1コア及び第2コアの各接触面のいずれか少なくとも一方は溝を有し、溝には樹脂が充填されていることとしてもよい。これによれば、確実にコア同士を固着できるようになる。
【0015】
また、本発明によるコモンモードチョークコイル一体型表面実装型パルストランスは、導電性磁性材料からなり、第1,第2の巻芯部を有する第1コアと、導電性磁性材料からなる第2コアと、第1コアが収納され、表面に複数の端子電極が形成された樹脂カバーと、第1の巻芯部に巻回され、複数の端子電極の少なくとも一部に接続されたパルストランス用コイルと、第2の巻芯部に巻回され、複数の端子電極の少なくとも一部に接続されたコモンモードチョークコイル用コイルと、を有し、第1コア及び第2コアは閉磁路を構成することを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、貼り合わせコアを用いて好適に構成されたコモンモードチョークコイル一体型表面実装型パルストランスを提供することが可能になっている。
【0017】
また、本発明によるモジュラジャック部品は、基板を有し、上記各表面実装型パルストランスのいずれか又は上記コモンモードチョークコイル一体型表面実装型パルストランスが基板上に表面実装されていることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、小型化されたモジュラジャック部品の提供が可能になる。
【発明の効果】
【0019】
このように、本発明によれば、貼り合わせコアを用いて好適に構成された表面実装型パルストランスを提供することが可能になっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい第1,第2の実施形態について詳細に説明する。
【0021】
[第1の実施形態]
図1は本発明の好ましい第1の実施形態による表面実装型パルストランス10の外観構造を示す略斜視図であり、(a)は表側から見た外観構造を示し、(b)は裏側から見た外観構造を示している。また、図2は表面実装型パルストランス10の略分解斜視図であり、図3は図1に示した表面実装型パルストランス10のA−A'線断面図である。以下、これらの図を参照しながら表面実装型パルストランス10の構成について説明する。
【0022】
図1及び図2に示すように、表面実装型パルストランス10は樹脂カバー11、ドラム型コア12(第1コア)、及び板状コア13(第2コア)を備えている。
【0023】
樹脂カバー11はポリイミド樹脂などの非磁性絶縁性樹脂によって作られている。一方、ドラム型コア12及び板状コア13は、比較的透磁率の高い磁性材料、例えばMn−Zn系フェライトの焼結体によって作られている。なお、Mn−Zn系フェライトなどの透磁率の高い磁性材料は、固有抵抗が低く導電性を有しているのが通常である。
【0024】
樹脂カバー11は、図2に示すように巻芯部11aを備えており、その両端には鍔部11b,11cが設けられている。ドラム型コア12も、図2に示すように巻芯部12aを備えており、その両端には鍔部12b,12cが設けられている。
【0025】
樹脂カバー11はドラム型コア12よりも一回り大きく、ドラム型コア12を収納可能に構成されている。図1には、ドラム型コア12を樹脂カバー11内に収納した状態を示している。同図に示すように、収納状態でも鍔部12b,12cの一部は樹脂カバー11上に露出している。これは、鍔部12b,12cの高さが鍔部11b,11cの内側の高さよりも高いためである。これに対し、巻芯部12aの高さは図3にも示すように巻芯部11aの内側の高さよりも低く、したがって巻芯部12aは巻芯部11a内に完全に収納されている。
【0026】
鍔部11b,11cの樹脂カバー11上に露出した部分には板状コア13が接着されている。なお、鍔部11b,11cと板状コア13は密着するための特徴的な構成を有しているが、この点については後述することにする。
【0027】
ドラム型コア12の巻芯部12aには、被覆された巻線S11〜S14が巻回される。各巻線は同一ターン数で巻回されており、それぞれがパルストランス用コイルを構成している。ただし、各巻線は、図1及び図3に示すように直接的には樹脂カバー11上に巻回され、巻芯部12aとは直接接触しないようになっている。
【0028】
なお、巻線S11〜S14として、被覆されてはいないものの表面に酸化絶縁膜を有する導線を用いることも可能である。このような導線は、導線同士が接触しても導通することはないが、導電性のドラム型コア12と接触すると導通してしまう場合がある。このような導通が好ましくないものであることは言うまでもないが、表面実装型パルストランス10ではドラム型コア12と巻線とが直接接触することはないので、このような導通の発生は避けられる。
【0029】
図1(b)に示すように、樹脂カバー11の鍔部11bの底面には3つの端子電極P21〜P23が形成されており、鍔部11cの底面には3つの端子電極P24〜P26が形成されている。端子電極P21〜P26には巻線S11〜S14の各端部が熱圧着により接続される。
【0030】
図4は巻線S11〜S14と端子電極P21〜P26との結線を説明するための模式図である。同図に示すように、端子電極P21には巻線S11の一方端部S11aが接続される。また、端子電極P22には巻線S11の他方端部S11bと巻線S12の一方端部S12aが接続される。また、端子電極P23には巻線S12の他方端部S12bが接続される。また、端子電極P24には巻線S13の一方端部S13aが接続される。また、端子電極P25には巻線S13の他方端部S13bと巻線S14の一方端部S14aが接続される。また、端子電極P26には巻線S14の他方端部S14bが接続される。
【0031】
図5は上記結線により実現される表面実装型パルストランス10の等価回路である。
【0032】
図5に示すように、巻線S11,S12が表面実装型パルストランス10の一次側巻線10Aとなり、巻線S13,S14が表面実装型パルストランス10の二次側巻線10Bとなる。端子電極P21,P22,P23は一次側巻線10Aの一方端子,中点端子,他方端子を構成し、端子電極P24,P25,P26は二次側巻線10Bの一方端子,中点端子,他方端子を構成する。また、ドラム型コア12と板状コア13はパルストランス10の閉磁路を構成している。
【0033】
巻線S11〜S14の巻き方について説明しておく。巻線S11〜S14の具体的な巻き方としては、いわゆるバイファイラ巻きを用いる。「バイファイラ巻き」とは2本の巻線を交互に並べて単層巻きすることであり、巻線間の磁気結合の向上という効果を有する巻き方である。
【0034】
図6はバイファイラ巻きを用いて巻回した巻線S11〜S14の巻線構造の詳細を示す略断面図である。
【0035】
図6に示すように、巻線S11〜S14は2層構造で巻回されている。まず、巻線S11,S14が巻芯部11aにバイファイラ巻きされており、1層目を構成している。また、巻線S13,S12は1層目の上にバイファイラ巻きされており、2層目を構成している。
【0036】
以上説明したように、表面実装型パルストランス10によれば、ドラム型コア12を樹脂カバー11に収納し、その上に端子電極P21〜P26を形成しているので、端子電極間での導通は発生しない。したがって、貼り合わせコアを用いて好適に構成された表面実装型パルストランスを提供することが可能になっている。また、各巻線を、ドラム型コア12上に直接巻回するのではなく、樹脂カバー11上に巻回することができるので、コイルの巻線に被覆されてはいないものの表面に酸化絶縁膜を有する導線を用いた場合であっても、ドラム型コア12との間に導通が発生することを防止できる。
【0037】
次に、ドラム型コア12の鍔部12b,12cと板状コア13とを密着させるために、これらに持たせた特徴的な構成について説明する。
【0038】
図1にも示したように、ドラム型コア12の鍔部12b,12cと板状コア13とは、樹脂カバー11の開放部を介して面接触している。鍔部12b,12cと板状コア13の各接触面(図2に鍔部12b,12c側の接触面12Hを示している。)には鏡面研磨加工処理が施され、接触面以外の部分に比べて平坦になっている。こうすることにより、ドラム型コア12と板状コア13の密着性がよくなり、接触面で生じ得る磁気ギャップを小さくすることが可能になっている。なお、具体的には、上記各接触面の面粗さRaを1μm以下とすることが好ましい。
【0039】
図7は鍔部12b,12cと板状コア13とを接着するための構成の説明図であり、図1に示した領域Xの拡大図である。また、同図には鍔部12b側の接着面付近を示しているが、鍔部12c側についても同様である。
【0040】
図7に示すように、鍔部12b側の接触面12Hと板状コア13側の接触面13Hとはともに鏡面化処理されているので互いに密着しており、間に接着剤の入る余地が少ない。そこで、接触面12Hには溝15が刻まれており、その中に接着剤としてのエポキシ樹脂が充填されている。この溝15と接着剤により、コア同士を確実に固着させることが可能になっている。
【0041】
なお、この接着はエポキシ樹脂の毛管現象を利用するものであるが、エポキシ樹脂は薄いほど強度が強いので、可能な限り溝15の深さHを浅くすることが好ましい。具体的には、H=0.1mm程度が好ましい。また、溝15の数や幅は必要最低限とすることが好ましい。具体的な例を挙げると、接触面の幅L1=2.7mmである場合、中央と両端部の3箇所に溝を設け、中央の溝の幅L2=0.3mm、両端部の溝の幅L3=0.2mm、とすることが好ましい。
【0042】
なお、ここでは接触面12Hに溝を作る例を説明したが、接触面13Hに溝を作ってもよいし、接着面12H,13Hの両方に溝を作ってもよいのはもちろんである。
【0043】
[第2の実施形態]
第2の実施形態では、表面実装型パルストランスと表面実装型コモンモードチョークコイルとを一体化したコモンモードチョークコイル一体型表面実装型パルストランスについて説明する。
【0044】
図8は本発明の好ましい第2の実施形態によるコモンモードチョークコイル一体型表面実装型パルストランス30(以下、一体型トランス30と略称する。)の外観構造を示す略斜視図であり、(a)は表側から見た外観構造を示し、(b)は裏側から見た外観構造を示している。また、図9は一体型トランス30の略分解斜視図である。
【0045】
図8及び図9に示すように、一体型トランス30は樹脂カバー31、ドラム型コア32(第1コア)、及び板状コア33(第2コア)を備えている。樹脂カバー31、ドラム型コア32、及び板状コア33の材質は、第1の実施形態で説明した樹脂カバー11、ドラム型コア12、及び板状コア13と同様である。
【0046】
樹脂カバー31は、図9に示すように巻芯部31a(第1の巻芯部),巻芯部31b(第2の巻芯部)が磁芯方向に並んだ構成を有しており、両端及び巻芯部31a,31bの間にはそれぞれ鍔部31c,31d,31eが設けられている。ドラム型コア12も同様に、巻芯部32a,32bが磁芯方向に並んだ構成を有しており、両端と巻芯部32a,32bの間には鍔部32c,32d,32eが設けられている。
【0047】
樹脂カバー31はドラム型コア32よりも一回り大きく、ドラム型コア32を収納可能に構成されている。同図に示すように、収納状態でも鍔部32c,32d,32eの一部は樹脂カバー31上に露出している。これは、鍔部32c,32d,32eの高さが鍔部31c,31d,31eの内側の高さよりも高いためである。これに対し、巻芯部32a,32bの高さは巻芯部31a,31bの内側の高さよりも低く、したがって巻芯部32a,32bはそれぞれ、巻芯部31a,31b内に完全に収納されている。
【0048】
鍔部32c,32d,32eの樹脂カバー31上に露出した部分には板状コア33が接着されている。鍔部32c,32d,32eと板状コア33は、第1の実施形態で説明した鍔部11b,11cと板状コア13の場合と同様の、密着するための特徴的な構成を有している。
【0049】
巻芯部32aには被覆された巻線S31〜S34が巻回され、それぞれパルストランス用コイルを構成している。各巻線は、図3に示した巻線S11〜S14と同様に、直接的には樹脂カバー31上に巻回され、巻芯部32aとは直接接触しないようになっている。その他巻き方の詳細は第1の実施形態で説明した巻線S11〜S14と同様である。
【0050】
巻線S33,S34は、鍔部32dを超えて巻芯部32bにも巻回される。両巻線は同一ターン数で巻回されており、それぞれがコモンモードチョークコイル用コイルを構成している。ここでも各巻線は直接的には樹脂カバー31上に巻回され、巻芯部32bとは直接接触しないようになっている。また、巻線S33,S34は上述したバイファイラ巻きにより巻芯部32bに巻回される。
【0051】
図8に示すように、鍔部31cの底面には3つの端子電極P41〜P43が形成されており、鍔部31dの底面には1つの端子電極P44が形成されており、鍔部31eの底面には2つの端子電極P25,P26が形成されている。端子電極P41〜P43には巻線S31〜S34の各端部が熱圧着により接続される。
【0052】
巻線S31〜S34と端子電極P41〜P46の結線は次のようになっている。すなわち、端子電極P41には巻線S31の一方端部S31aが接続される。また、端子電極P42には巻線S31の他方端部S31bと巻線S32の一方端部S32aが接続される。また、端子電極P43には巻線S32の他方端部S32bが接続される。また、端子電極P44には巻線S33の他方端部S33bと巻線S34の一方端部S34aが接続される。また、端子電極P45には巻線S33の一方端部S33aが接続される。また、端子電極P46には巻線S34の他方端部S34bが接続される。
【0053】
図10は上記結線により実現される一体型トランス30の等価回路である。
【0054】
図10に示すように、一体型トランス30はパルストランス51及びコモンモードチョークコイル52を備える。巻線S31,S32がパルストランス51の一次側巻線51Aとなり、巻線S33,S34がパルストランス51の二次側巻線51Bとなる。巻線S33,S34はそれぞれ、コモンモードチョークコイル52の一次側巻線52A,二次側巻線52Bも構成する。パルストランス51の二次側巻線51Bの一方端子,他方端子はそれぞれ、コモンモードチョークコイル52の一次側巻線52A,二次側巻線52Bの各一方端子と接続される。
【0055】
端子電極P41,P42,P43はパルストランス51の一次側巻線51Aの一方端子,中点端子,他方端子を構成し、端子電極P44はパルストランス51の二次側巻線51Bの中点端子を構成する。端子電極P45,P46はコモンモードチョークコイル52の一次側巻線52A,二次側巻線52Bの各他方端子を構成する。
【0056】
また、ドラム型コア32と板状コア33はパルストランス51及びコモンモードチョークコイル52の閉磁路を構成している。
【0057】
以上説明したように、一体型トランス30によれば、ドラム型コア32を樹脂カバー31に収納し、その上に端子電極P41〜P46を形成しているので、端子電極間での導通は発生しない。したがって、貼り合わせコアを用いて好適に構成されたコモンモードチョークコイル一体型表面実装型パルストランスを提供することが可能になっている。
【0058】
以下、本発明を用いて構成した一体型トランス30の具体的な機器への実装について、モジュラジャック部品を例として取り上げて説明する。
【0059】
図11,図12はモジュラジャック部品60の簡略化された模式図であり、図11(a)は正面図、図11(b)は右側面図、図12は図11(a)のA−A'線断面図である。
【0060】
各図に示すように、モジュラジャック部品60は、筐体61、基板64、及び各8つの端子電極を有する端子電極群100,110を備えている。
【0061】
筐体61は開口部62を有しており、開口部62はモジュラケーブルを挿入して固定可能に構成されている。挿入されるモジュラケーブルは8芯のケーブルであり、開口部62に挿入されたときに、各芯と端子電極群110を構成する8つの端子とがそれぞれ電気的に接触する。また、筐体61は図示しないマザーボードに取付可能に構成されており、端子電極群100を構成する8つの端子はそれぞれマザーボード上の電極と電気的に接続される。
【0062】
基板64は、図12に示すスルーホール群T1〜T4を有している。
【0063】
図13は基板64表面の結線を示す模式図である。(a)は正面側(開口部62側)を示し、(b)は裏面側を示している。
【0064】
図13に示すように、スルーホール群T1は8つのスルーホールからなり、それぞれに端子電極群110を構成する端子電極111〜118が挿入されている。また、スルーホール群T4も8つのスルーホールからなり、それぞれ端子電極群100を構成する端子電極101〜108が挿入されている。また、スルーホールT2,T3はそれぞれ6つずつのスルーホールからなり、それぞれスルーホール電極131〜136,121〜126が挿入されている。
【0065】
基板64の正面側表面には、図13(a)に示すように抵抗R10〜R13とキャパシタC10が実装されており、抵抗R10の一方端子はスルーホール電極134と、抵抗R11の一方端子は端子電極114,115と、抵抗R12の一方端子はスルーホール電極136と、抵抗R13の一方端子は端子電極117,118と、それぞれ接続されている。また、抵抗R10〜R13の各他方端子はキャパシタC10の一方端子と接続されており、キャパシタC10の他方端子は端子電極108に接続されている。
【0066】
また、基板64の正面側表面において、スルーホール電極131と端子電極111、スルーホール電極132と端子電極112、スルーホール電極133と端子電極113、スルーホール電極135と端子電極116、スルーホール電極121と端子電極101、スルーホール電極122と端子電極102、スルーホール電極123と端子電極103、スルーホール電極124と端子電極104、スルーホール電極125と端子電極105、スルーホール電極126と端子電極106がそれぞれ接続されている。
【0067】
基板64の裏面側表面には、図13(b)に示すように一体型トランス30−TX(送信側),30−RX(受信側)が実装されている。同図にはそれぞれの端子電極P41〜P46を示している。
【0068】
一体型トランス30−TXの端子電極P41,P42,P43,P44,P45,P46はそれぞれ、スルーホール電極121,123,122,134,131,132に接続されている。また、一体型トランス30−RXの端子電極P41,P42,P43,P44,P45,P46はそれぞれ、スルーホール電極124,126,125,136,133,135に接続されている。
【0069】
図14は以上の結線により実現される回路の等価回路である。
【0070】
図14に示すように、端子電極101,102,103はそれぞれ一体型トランス30−TX内のパルストランス51の一次側巻線の一方端子,他方端子,中点端子に接続される。端子電極104,105,106はそれぞれ一体型トランス30−RX内のパルストランス51の一次側巻線の一方端子,他方端子,中点端子に接続される。端子電極107はいずれにも接続されない。端子電極108はキャパシタC10の他方端子に接続される。
【0071】
また、端子電極111,112はそれぞれ一体型トランス30−TX内のコモンモードチョークコイル52の一次側巻線,二次側巻線の各他方端子と接続される。端子電極113は一体型トランス30−RX内のコモンモードチョークコイル52の一次側巻線の他方端子と接続される。端子電極114,115は抵抗R11の一方端子と接続される。端子電極116は一体型トランス30−RX内のコモンモードチョークコイル52の二次側巻線の他方端子と接続される。端子電極117,118は抵抗R13の一方端子と接続される。
【0072】
さらに、抵抗R10,R12の各一方端子はそれぞれ一体型トランス30−TX,30−RX内のパルストランス51の二次側巻線の中点端子に接続される。また、抵抗R10〜R13の各他方端子はキャパシタC10の一方端子に接続される。
【0073】
以上説明したように、一体型トランス30を用いてモジュラジャック部品を構成することができ、そうすることで、トロイダルコアによって構成されたパルストランスやコモンモードチョークコイルを用いる場合に比べて小型化されたモジュラジャック部品の提供が可能になる。
【0074】
なお、以上の説明では一体型トランス30を用いる場合を取り上げて説明したが、第1の実施形態で説明した表面実装型パルストランス10を用いてもよいことは言うまでもない。
【0075】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明が、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施され得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の好ましい第1の実施形態による表面実装型パルストランスの外観構造を示す略斜視図であり、(a)は表側から見た外観構造を示し、(b)は裏側から見た外観構造を示している。
【図2】本発明の好ましい第1の実施形態による表面実装型パルストランスの略分解斜視図である。
【図3】本発明の好ましい第1の実施形態による表面実装型パルストランスの図1のA−A'線断面図である。
【図4】本発明の好ましい第1の実施形態による巻線と端子電極との結線を説明するための模式図である。
【図5】本発明の好ましい第1の実施形態による表面実装型パルストランスの等価回路を示す図である。
【図6】バイファイラ巻きを用いて巻回した巻線の巻線構造の詳細を示す略断面図である。
【図7】本発明の好ましい第1の実施形態による鍔部と板状コアとを接着するための構成の説明図であり、図1に示した領域Xの拡大図である。
【図8】本発明の好ましい第2の実施形態によるコモンモードチョークコイル一体型表面実装型パルストランスの外観構造を示す略斜視図であり、(a)は表側から見た外観構造を示し、(b)は裏側から見た外観構造を示している。
【図9】本発明の好ましい第2の実施形態によるコモンモードチョークコイル一体型表面実装型パルストランスの略分解斜視図である。
【図10】本発明の好ましい第2の実施形態によるコモンモードチョークコイル一体型表面実装型パルストランスの等価回路を示す図である。
【図11】本発明の好ましい第2の実施形態によるモジュラジャック部品の簡略化された模式図であり、(a)は正面図、(b)は右側面図である。
【図12】本発明の好ましい第2の実施形態によるモジュラジャック部品の簡略化された模式図であり、図11(a)のA−A'線断面図である。
【図13】本発明の好ましい第2の実施形態による基板表面の結線を示す模式図である。(a)は正面側を示し、(b)は裏面側を示している。
【図14】本発明の好ましい第2の実施形態によるモジュラジャック部品の等価回路を示す図である。
【符号の説明】
【0077】
10 表面実装型パルストランス
10A,51A,52A 一次側巻線
10B,51B,52B 二次側巻線
11,31 樹脂カバー
11a,12a,31a,31b,32a,32b 巻芯部
11b,11c,12b,12c,31c,31d,31e,32c,32d,32e 鍔部
12,32 ドラム型コア
12H,13H 接着面
13,33 板状コア
15 溝
30 コモンモードチョークコイル一体型表面実装型パルストランス(一体型トランス)
51 パルストランス
52 コモンモードチョークコイル
60 モジュラジャック部品
61 筐体
62 開口部
64 基板
100,110 端子電極群
101〜108,111〜118 端子電極
121〜126,131〜136 スルーホール電極
C10 キャパシタ
P21〜P26,P41〜P46 端子電極
R10〜R13 抵抗
S11〜S14,S31〜S34 巻線
T1〜T4 スルーホール群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性磁性材料からなり、巻芯部を有する第1コアと、
導電性磁性材料からなる第2コアと、
前記第1コアが収納され、表面に複数の端子電極が形成された樹脂カバーと、
前記巻芯部に巻回され、前記複数の端子電極に接続されたコイルと、
を有し、前記第1コア及び前記第2コアは閉磁路を構成することを特徴とする表面実装型パルストランス。
【請求項2】
前記コイルは前記樹脂カバー上に巻回されることを特徴とする請求項1に記載の表面実装型パルストランス。
【請求項3】
前記第1コアと前記第2コアとは前記樹脂カバーの開放部を介して面接触しており、
前記第1コア及び前記第2コアの各接触面は接触面以外の部分に比べて平坦であることを特徴とする請求項1又は2に記載の表面実装型パルストランス。
【請求項4】
前記第1コア及び前記第2コアの前記各接触面のいずれか少なくとも一方は溝を有し、
前記溝には樹脂が充填されていることを特徴とする請求項3に記載の表面実装型パルストランス。
【請求項5】
導電性磁性材料からなり、第1,第2の巻芯部を有する第1コアと、
導電性磁性材料からなる第2コアと、
前記第1コアが収納され、表面に複数の端子電極が形成された樹脂カバーと、
前記第1の巻芯部に巻回され、前記複数の端子電極の少なくとも一部に接続されたパルストランス用コイルと、
前記第2の巻芯部に巻回され、前記複数の端子電極の少なくとも一部に接続されたコモンモードチョークコイル用コイルと、
を有し、前記第1コア及び前記第2コアは閉磁路を構成することを特徴とするコモンモードチョークコイル一体型表面実装型パルストランス。
【請求項6】
基板を有し、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の表面実装型パルストランス又は請求項5に記載のコモンモードチョークコイル一体型表面実装型パルストランスが前記基板上に表面実装されていることを特徴とするモジュラジャック部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−224649(P2009−224649A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−68975(P2008−68975)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】