説明

表面情報計測装置及び表面情報計測方法

【課題】 試料を大気暴露させることなく、試料の設置から測定まで制御された環境下で試料の形状情報や物性情報を計測できる装置を提供すること。
【解決手段】 先端に微小な探針を有するカンチレバー6と、カンチレバー6を保持するためのプレート2と、試料7を設置するための試料固定台4と、筺体3などからなる気密性が保たれるロードロック室1と、カンチレバー6の変位を検出する変位検出機構8と、試料7を移動させる試料移動機構である微動機構18、XY粗動機構19、Z粗動機構20が設けられた密封容器17と、密封容器17を真空排気する真空排気機構21とガス導入機構22と、密封容器17にロードロック室1を取付けるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料表面の表面粗さや段差などの形状情報や、誘電率や粘弾性などの物理情報を計測する表面情報計測装置及び表面情報計測方法に関するものである。具体的な表面情報計測装置としては、走査型プローブ顕微鏡、表面粗さ計、硬度計や電気化学顕微鏡等である。
【背景技術】
【0002】
走査型プローブ顕微鏡は、先端が鋭く尖った探針を試料表面で走査することにより、試料の微細な表面形状を観察するものであるが、大気中における測定だけでなく、試料の周囲環境依存性を調べるために、環境を種々制御して測定可能とした走査型プローブ顕微鏡としても発展してきた。真空中やガスによる置換など制御されたガス環境下での測定がその代表的なものであり、その装置構成は様々なものが開発されている。
【0003】
環境制御可能な密閉容器内にプローブ顕微鏡構成部材を配置し、密封容器内全体を制御された環境制御下に置いた状態で、測定を行う走査型プローブ顕微鏡について、図8を用いて説明する。
【0004】
プローブ41と、試料42と、ピエゾアクチュエータなどのプローブ走査ユニット43と、試料走査ユニット44とからなる走査型プローブ顕微鏡システムを、高圧ガス導入口46と高圧ガス排出口47を設けた高圧容器45内に配置されている。高圧ガス導入口46から高圧ガスを導入することで、高圧容器45内全体を高圧ガス環境下に保持し、走査型プローブ顕微鏡で測定を行うものである(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
同様の形態としては、高圧ガス容器の代わりに真空容器内にプローブ顕微鏡システムを配置することで、真空環境下での測定を行うことも行われている。
【0006】
しかしながら、これらの場合、試料を容器内に設置した後の環境制御は可能であるが、試料を容器内に設置する際に必ず周辺空気に暴露しなければならないという課題があった。試料が空気中の酸素で酸化したり、水分などの影響で劣化したりする場合は、変質した状態の試料を測定することとなり、正確な材料評価、解析を行うことはできないという問題があった。
【特許文献1】特開平8―292197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点を解決し、試料を大気暴露することなく測定部へ設置ができ、制御された環境下での表面形状測定または加工を行える走査型プローブ顕微鏡を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題を解決するために、本発明に係る表面情報計測装置は、先端に微小な探針を有するカンチレバーと、カンチレバーを保持するためのカンチレバーホルダと、試料を設置するための試料台と、試料保持容器とからなる気密性が保たれるロードロック室と、前記カンチレバーの変位を検出する変位検出機構と、前記試料を移動させる試料移動機構が設けられた密封容器と、密封容器の内部環境を制御する機構と、密封容器に前記ロードロック室を取付けることを特徴とするものである。
【0009】
または、探針と探針と試料間に流れるトンネル電流を検出するトンネル電流検出機構と、探針を保持するための探針ホルダと、試料を設置するための試料台と、試料保持容器とからなる気密性が保たれるロードロック室と、試料を移動させる試料移動機構が設けられた密封容器と密封容器の内部環境を制御する機構と、密封容器にロードロック室を取付けることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明に係る表面情報計測方法は、試料が固定された試料台を試料保持容器の内側に取り付ける工程と、先端に微小な探針を有するカンチレバーが取り付けられたカンチレバーホルダを試料保持容器に取り付ける工程と、試料を移動させる試料移動機構が設けられた密封容器にカンチレバーホルダと試料台と試料保持容器とからなるロードロック室を取り付ける工程と、カンチレバーの変位を検出する変位検出機構をロードロック室に取り付ける工程と、試料移動機構により該試料台を移動させて、ロードロック室と密封容器間の密閉を解除する工程と、さらに該試料移動機構により該試料台を移動させて該カンチレバーと接近させ、該変位検出機構により、試料の表面情報を計測する工程と、からなることを特徴とするものである。
【0011】
または、試料が固定された試料台を試料保持容器の内側に取り付ける工程と、探針が取り付けられた探針ホルダを試料保持容器に取り付ける工程と、試料を移動させる試料移動機構が設けられた密封容器に探針ホルダと試料台と試料保持容器とからなるロードロック室を取り付ける工程と、試料移動機構により試料台を移動させて、ロードロック室と密封容器間の密閉を解除する工程と、さらに試料移動機構により試料台を移動させて探針と接近させ、探針と試料間のトンネル電流を検出し制御することで、試料の形状情報を得る工程と、からなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る表面情報計測装置及び表面情報計測方法によれば、制御された環境下で試料の搬送から計測するまで制御された環境下で行うことができるようになる。つまり、試料を大気暴露させることなく行えるため、空気による前記試料の酸化および劣化などを防止することが可能であり、有効な材料評価、解析を行うことが出来る効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
本発明の第一実施形態である走査型プローブ顕微鏡を図1から図3を用いて説明する。
【0015】
図1は本実施形態の走査型プローブ顕微鏡のロードロック室部分の構成を示す図である。ロードロック室1は大別すると、カンチレバーホルダAと試料保持容器Bと試料台Cとから構成される。
【0016】
カンチレバーホルダAは図1の(a)に示すように、金属からなるプレート2と、先端に微小な探針を有するカンチレバー6を固定するためのカンチレバー保持部5と、カンチレバー6や試料7の光学顕微鏡などで観察やカンチレバー6の変位を検出する光学系を用いた変位検出機構8の光路を確保するための透明窓9と、カンチレバー6を加振するための圧電素子10とから構成されている。
【0017】
試料保持容器Bは図1の(b)に示すように、両端に開口11a、11bを有する試料筺体3と、開口11bの周辺にOリング16と、開口11aの周辺にOリング12と、Oリング12の外側にマグネット13が設けられている。
【0018】
試料台Cは図1の(b)に示すように、少なくとも試料筺体3の底面のOリング12よりも大きな径を有する試料固定台4と、試料7を固定する試料固定治具14とから構成される。
【0019】
次に、本実施形態の走査型プローブ顕微鏡の全体構成を示す図2を用いて説明する。
【0020】
本実施形態における走査型プローブ顕微鏡は、ロードロック室1と、カンチレバー6の変位を測定する変位検出機構8と、真空処理が可能な密封容器17と、密封容器17内には、試料移動機構となるZ上下方向に大まかに位置合わせを行うステッピングモータなどのZ粗動機構20と、試料7をXY面内方向に大まかに位置合わせを行うステッピングモータなどのXY粗動機構19と、試料7を面内XY方向、および垂直Z方向に微少移動させるためのピエゾ素子からなる微動機構18が設けられ、内部環境制御機構として密封容器17内を排気するためのドライポンプなどの真空排気機構21と、ドライ窒素や調湿された空気などの密封容器17内に導入するためのガス導入機構22とが接続されている。
【0021】
ロードロック室1と密封容器17はOリング23を介してねじで固定され、ロードロック室1上に半導体レーザー24とフォトディテクタ25からなる変位検出機構8が設置される。半導体レーザー24は透明窓9を通してカンチレバー6の背面に照射され、その反射光をフォトディテクタ25で検出される。そして、カンチレバー6の変位を前記反射光の到達位置を検出することにより測定することができる。
【0022】
本実施形態に係るフローチャートを図4に示し、図1から図3を用いて説明する。
【0023】
環境が制御された空間で、図1(c)に示すように、試料7を試料固定治具14で試料固定台4に固定し、試料筺体3の内部から開口11aを塞ぐようにして、試料筺体3内にマグネット13で固定する。
【0024】
これにより、着磁性材料から成る試料固定台4としたことにより、試料台保持容器と試料台との間の気密性を高める効果がある。
【0025】
次に、試料保持容器Bのプレート2がねじ15で試料筺体3に固定する。これにより、プレート2と試料筺体3との間はOリング16、試料固定台4と試料筺体3との間はOリング12を介して気密性を有することができる。
【0026】
これらを、試料作成装置または試料調整装置または試料準備装置などで環境が制御された空間内で行うことにより、ロードロック室1内を制御された環境下で保持することができる
尚、環境が制御された空間とは、ドライ窒素やドライエアーや調湿された空気などで置換された空間や、真空ポンプなどで減圧された空間のことをいう。
尚、本実施形態ではドライ窒素の環境下で行う。
【0027】
これにより、ロードロック1室は、制御された空間から取り出し搬送しても、試料7を大気暴露することは無く、試料が酸化したり、水分で劣化したり、変質したりするのを防ぐことが出来る。
【0028】
次に、ロードロック室1を運搬し、密封容器17にねじで固定する。
【0029】
次に、図2に示すように密封容器17内を真空排気機構21にて真空排気し、密封容器17内部の空気を排除する。
【0030】
続いて、真空排気機構21を停止したのち、ガス導入機構22により、ドライ窒素、ドライエアー、や調湿されたエアーなどのガスを導入することで、密封容器17内の環境を制御する。本実施形態では、ロードロック室1に試料7を設置すると同様にドライ窒素を導入する。これにより、効率的に密封容器17内の置換が行うことができる。
【0031】
本実施形態に係る走査型プローブ顕微鏡(表面情報計測装置)計測方法で、微動機構が試料台を持ち上げた状態を示す図である。
【0032】
次に、図3(a)に示すようにZ粗動機構20を用いて、微動機構18を上方へ移動させる。微動機構18の上方には、試料固定台4が位置しており、微動機構18が上方へ移動するに従って、図3(a)に示すように、試料7と共に試料固定台4は持ち上げられ、微動機構18と一体となって上方へ移動し、試料固定台4は試料筺体3から分離する。これにより、ロードロック室1の空間と密封容器17の空間とが一続きとなる。
【0033】
さらに、微動機構18が上方へ移動し、図3(b)に示すように、試料固定台4上に載置された試料7はカンチレバー6に接近させる。
【0034】
次に、図3(b)に示すようにカンチレバー6に設けられた微小な探針を試料7に接触または接近させることにより、微動機構18により試料7を面内XY方向に走査すると、試料7の凹凸などの形状や弾粘性や摩擦性などの物性に応じて、カンチレバー6が変位する。このカンチレバー6の変位を変位検出機構8で検出し、変位が一定になるように微動機構18により試料7を垂直Z方向に移動させることで、試料の形状や物性などが計測可能である。
このカンチレバー6の変位を変位検出機構8で検出して、一定になるように制御することで、試料の形状や物性などが計測する。
【0035】
尚、真空排気機構を有するとしたことにより、密封容器17とロードロック室1が同一空間の状態で真空廃棄することも可能で真空中での試料の形状や物性の測定も可能になる効果もある。
【0036】
また、本実施形態において、カンチレバー6の変位検出機構8の調整などは、密封容器やロードロック室1の外側に配置されるため、変位検出機構8を調整する場合に調整つまみで簡単に実施ができ操作性を損なうことはない。また、変位検出機構8を構成するフォトディテクタ25や半導体レーザー24が、高湿度や高温度などの制御された環境下にないために、性能の劣化などを起こすことがないという効果がある。
【0037】
また、本実施形態において、試料7とカンチレバー6とをXYZ方向に相対的に微小位置決めする手段として試料7側に位置する微動機構18を用いて、試料7をXYZ方向に微動移動させたが、カンチレバー移動機構として面内XY方向微動機構をカンチレバー6側に配置し、さらに垂直Z方向微動機構を試料7側に配置し、面内XY方向の微小位置決めはカンチレバー6を移動させ、垂直Z方向の微小位置決めは試料7を移動させることとしてもよい。
【0038】
さらに、カンチレバー移動機構としてXYZ方向微動機構をカンチレバー6側に配置し、XYZ方向の微小位置決めはカンチレバー6を移動させることとしてもよい。
【0039】
尚、本実施例では、内部環境制御機構として真空排気機構と、ガス導入機構とを接続しているが、この実施例に限定されず、真空排気機構とガス導入機構の少なくとも一方を備えることでもよい。
【実施例2】
【0040】
本発明の第二実施形態である走査型プローブ顕微鏡について図5から図6を用いて説明する。
【0041】
尚、図1及び図2で示した第一実施形態と共通の構成要素には同じ符号を記し、その詳細説明は省略する。
【0042】
図5は本実施形態の走査型プローブ顕微鏡のロードロック室1の構成の概観図である。ロードロック室1は、探針ホルダAと試料保持容器Bと試料台Cとから構成される。
プレート31と、先端を先鋭化させた探針30を固定する探針保持部32とから構成されている探針ホルダCに、本実施例では加圧機構としてロードロック室1内を高圧ガスで加圧するためのガス導入口33とを設けている。
試料保持容器Bは、試料筺体3に底面に開口11aを有しており、開口11a周囲には、Oリング12が設けられている。試料台Cの試料7を載置するための試料固定台4は、Cuなどの熱伝導率の高い材質からなり、少なくとも試料筺体3のOリング12よりも大きな径を有している。
試料固定台4は試料筺体3底面の開口を塞ぐようにして、試料筺体3内に設置される。
探針30が設置されたプレート31は試料筺体3にねじで固定される。
【0043】
これらを、試料作成装置または試料調整装置または試料準備装置などで環境が制御された空間内で行うことにより、ロードロック室1内を制御された環境下で保持することができる
尚、環境が制御された空間とは、ドライ窒素や調湿された空気などで置換された空間や、真空ポンプなどで減圧された空間のことをいう。
【0044】
これにより、ロードロック1室は、制御された空間から取り出しても、試料7を大気暴露することは無く、試料の酸化、水分で劣化や変質などを防ぐことが出来る。
【0045】
次に、本実施形態の走査型プローブ顕微鏡の全体構成を示す図6を用いて説明する。
【0046】
本実施形態における走査型プローブ顕微鏡は、ロードロック室1と、加圧処理が可能な密封容器17と密封容器17内には試料移動機構となるZ上下方向に大まかに位置合わせを行うステッピングモータなどのZ粗動機構20と、試料7をXY面内方向に大まかに位置合わせを行うステッピングモータなどのXY粗動機構19と、試料7をXY面内方向及びZ上下方向に微少移動させるためのピエゾ素子からなる微動機構18が設けられ、内部環境制御機構として密封容器17内にガスを導入するためのガス導入機構22を有している。
【0047】
さらに、微動機構18上には、試料7の温度を制御するための試料温度制御機構29が設置され、試料と探針間のトンネル電流を検出できるようにトンネル電流検出器34が接続される。
【0048】
ロードロック室1と密封容器17はOリング23を介してねじで固定され、密封容器17の気密性を確保することできる。
【0049】
本実施形態に係るフローチャートを図7に示し、図5から図6を用いて説明する。
【0050】
環境が制御された空間で、図5に示すように、試料7を試料台4に配置し、試料筺体3の内部から開口11aを塞ぐようにして、試料筺体3内に配置する。
【0051】
次に、プレート31を試料筺体3に載せた状態する。尚、本実施形態ではドライエアーの環境下で行う。
【0052】
これらを、試料作成装置または試料調整装置または試料準備装置などで環境が制御された空間内で行うことにより、ロードロック室1内を制御された環境下で保持することができる。
【0053】
尚、環境が制御された空間とは、ドライ窒素やドライエアーや調湿された空気などで置換された空間や、真空ポンプなどで減圧された空間のことをいう。
【0054】
これにより、プレート2と試料筺体3との間はOリング16、試料台4と試料筺体3との間はOリング12を介して気密性を有することができる。
【0055】
次に、図5に示すロードロック室1にガス導入口33からドライエアーを導入し、ロードロック室1内部をドライエアーで置換した後に、プレート31と試料筺体3をねじで固定し、ロードロック室1を大気圧以上に加圧する。
【0056】
これで、プレート31と試料筺体3との間はOリング16を介してねじで、ロードロック室1が大気圧以上に加圧しているので試料台4は試料筺体3との間はOリング12を介して押し付けられるので、ロードロック室1の気密性さらに有することができる。
【0057】
この状態でロードロック1室を制御された空間から取り出し搬送しても、試料7を大気暴露することは無く、試料の酸化や水分による劣化や変質などを防ぐことが出来る。
【0058】
次に、図6に示すようにロードロック室1を運搬して、密封容器17に載せた状態で、ガス導入機構22からドライガスを導入し、密封容器17内部をドライエアーで置換した後に、ロードロック室1と密封容器17をねじ固定し、密封容器17を大気圧以上に加圧する。このとき、ロードロック室1の圧力以上にすることが望ましい。
【0059】
次に、Z粗動機構20を用いて、微動機構18を上方へ移動させる。微動機構18の上方には、試料台4が位置しており、微動機構18が上方へ移動することにより、試料台4は持ち上げられ、微動機構18と一体となって上方へ移動し、試料台4は試料筺体3から分離する。これにより、ロードロック室1の空間と密封容器17の空間とが一続きとなる。
【0060】
さらに、微動機構18が上方へ移動し、試料台4上に載置された試料7は探針30に接近させる。
【0061】
次に、探針30を試料7に接近させる状態で、微動機構18により試料7を面内XY方向に走査すると試料7と探針30の距離に応じて、試料7と探針30間に流れるトンネル電流が変化する。このトンネル電流が一定になるように微動機構18により試料7を垂直Z方向に移動させることで、試料の形状を計測することができる。
【0062】
これにより、試料温度制御機構29を使用し、試料台4に熱伝導率のよいCu材を使用したことで、効率よく試料7の温度を制御することが可能である。試料7の温度を制御した状態で測定を行うことにより、試料7の温度依存性に関する情報を得ることが出来る効果がある。
【0063】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0064】
例えば、上記各実施形態において、表面情報計測装置の一例として、走査型プローブ顕微鏡を採用したが、これに限られず、試料表面の形状情報や、様々な物理情報(例えば、誘電率、磁化状態、透過率、粘弾性、摩擦係数等)を計測する装置であれば構わない。例えば、表面粗さ計、硬度計、電気化学顕微鏡等でも良い。
【0065】
また、上記第1実施形態において、真空排気機構としてドライポンプとしたが、これに限られず、ロータリーポンプやクライオポンプ等の真空ポンプおよびそれらの併用した構成しても構わない。
【0066】
また、本実施形態において、試料7と探針30とをXYZ方向に相対的に微小位置決めする手段として試料7下に位置する微動機構18を用い、試料7をXYZ方向に移動させたが、探針移動機構として面内XY方向微動機構を探針30側に配置し、さらに垂直Z方向微動機構を試料7側に配置し、面内XY方向の微小位置決めは探針30を移動させ、垂直Z方向の微小位置決めは試料7を移動させることとしてもよい。
【0067】
さらに、探針移動機構としてXYZ方向微動機構を探針30側に配置し、XYZ方向の微小位置決めは探針30を移動させることとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明に係る走査型プローブ顕微鏡(表面情報計測装置)の第一実施形態を示す、ロードロック室部分の構成図である。
【図2】本発明に係る走査型プローブ顕微鏡(表面情報計測装置)の第一実施形態を示す、全体構成図である。
【図3】図1から図3に示す走査型プローブ顕微鏡により、試料表面の形状情報や物性情報を計測する本発明に係る表面情報計測方法の際に、微動機構が試料台を持ち上げた状態を示す図である。
【図4】図1から図3に示す走査型プローブ顕微鏡により、試料表面の形状情報や物性情報を計測する本発明に係る表面情報計測方法の一工程を示す、フローチャートである。
【図5】本発明に係る走査型プローブ顕微鏡(表面情報計測装置)の第二実施形態を示す、ロードロック室部分の構成図である。
【図6】本発明に係る走査型プローブ顕微鏡(表面情報計測装置)の第二実施形態を示す、全体構成図である。
【図7】図5から図6に示す走査型プローブ顕微鏡により、試料表面の形状情報や物性情報を計測する本発明に係る表面情報計測方法の一工程を示す、フローチャートである。
【図8】従来の走査型プローブ顕微鏡の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0069】
A カンチレバーホルダ
B 試料保持容器
C 試料台
1 ロードロック室
2 プレート
3 筺体
4 試料固定台
5 カンチレバー保持部
6 カンチレバー
7 試料
8 変位検出機構
9 透明窓
10 圧電素子
11a開口
11b開口
12 Oリング
13 マグネット
14 試料固定治具
15 ねじ
16 Oリング
17 密封容器
18 微動機構
19 XY粗動機構
20 Z粗動機構
21 真空排気機構
22 ガス導入機構
23 Oリング
24 半導体レーザー
25 フォトディテクタ
29 試料温度制御機構
30 探針
31 プレート
32 探針保持部
33 ガス導入口
34 トンネル電流検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を載置する試料台と、前記試料の上方に配された先端に微小な探針を有するカンチレバーと、該カンチレバーを先端に固定するカンチレバーホルダと、試料保持容器とからなる気密性が保たれるロードロック室と、
前記カンチレバーの変位を検出する変位検出機構と、
前記試料を移動させる試料移動機構が設けられた密封容器と
内部環境制御機構とからなり、
前期密封容器に前記ロードロック室を取付けることを特徴とする表面情報計測装置。 OLE_LINK1
OLE_LINK1
【請求項2】
OLE_LINK2 試料を載置する試料台と、前記試料の上方に配された探針と前記探針と試料間に流れるトンネル電流を検出するトンネル電流検出器と、前記探針を保持するための探針ホルダと、試料保持容器とからなる気密性が保たれるロードロック室と、
前記試料を移動させる試料移動機構が設けられた密封容器と
内部環境制御機構とからなり、
前期密封容器に前記ロードロック室を取付けることを特徴OLE_LINK2とする表面情報計測装置。
【請求項3】
カンチレバー側にカンチレバーを移動させるカンチレバー移動機構を備えたことを特徴とする請求項1記載の表面情報計測装置。
【請求項4】
探針側に探針移動機構を備えたことを特徴とする請求項2記載の表面情報計測装置。
【請求項5】
試料保持容器の開口周囲にマグネットを設け、前記試料台は着磁性である材料であることを特徴とする請求項1または2に記載の表面情報計測装置。
【請求項6】
前記内部環境を制御する機構がガス導入機構であることを特徴とする請求項1または2に記載の表面情報計測装置。
【請求項7】
前記密封容器に真空排気機構を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の表面情報計測装置。
【請求項8】
前記ロードロック室に加圧機構を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の表面情報計測装置。
【請求項9】
前記試料の温度を制御する試料温度制御機構を有することを特徴とする請求項1または2に記載の表面情報計測装置。
【請求項10】
前記試料台が熱伝導性の優れた材料からなることを特徴とする請求項9に記載の表面情報計測装置。
【請求項11】
OLE_LINK3試料が固定された試料台を試料保持容器の内側に取り付ける工程と、
先端に微小な探針を有するカンチレバーが取り付けられたカンチレバーホルダを該試料保持容器に取り付ける工程と、
該試料を移動させる試料移動機構が設けられた密封容器に該カンチレバーホルダと該試料台と該試料保持容器とからなるロードロック室を取り付ける工程と、
該カンチレバーの変位を検出する変位検出機構を該ロードロック室に取り付ける工程と、
該試料移動機構により該試料台を移動させて、該ロードロック室と該密封容器間の密閉を解除する工程と、
さらに該試料移動機構により該試料台を移動させて該カンチレバーと接近させ、該変位検出機構により、試料の表面情報を計測する工程と、からなることを特徴OLE_LINK3とする表面情報計測方法。
【請求項12】
該試料が固定された試料台を試料保持容器の内側に取り付ける工程の後に、密封容器を真空排気する工程を追加することを特徴とする請求項11に記載の表面情報計測方法。
【請求項13】
該密封容器を真空排気する工程の後に、密封容器にガスを導入する工程を追加することを特徴とする請求項12に記載の表面情報計測方法。
【請求項14】
先端に微小な探針を有するカンチレバーが取り付けられたカンチレバーホルダを該試料保持容器に取り付ける工程で、加圧機構によりガスを導入して内部を置換して加圧した後に固定することを特徴とする請求項12に記載の表面情報計測方法。
【請求項15】
OLE_LINK4試料が固定された試料台を試料保持容器の内側に取り付ける工程と、
探針が取り付けられた探針ホルダを該試料保持容器に取り付ける工程と、
該試料を移動させる試料移動機構が設けられた密封容器に該探針ホルダと該試料台と該試料保持容器とからなるロードロック室を取り付ける工程と、
該試料移動機構により該試料台を移動させて、該ロードロック室と該密封容器間の密閉を解除する工程と、
さらに該試料移動機構により該試料台を移動させて該探針と接近させ、該探針と該試料間の電流を検出し制御することで、試料の形状情報を得る工程と、からなることを特徴OLE_LINK4とする表面情報計測方法。
【請求項16】
該試料が固定された該試料台を該試料保持容器の内側に取り付ける工程の後に、該密封容器を真空排気する工程を追加することを特徴とする請求項15に記載の表面情報計測方法。
【請求項17】
該密封容器を真空排気する工程の後に、該密封容器にガスを導入する工程を追加することを特徴とする請求項15に記載の表面情報計測方法。
【請求項18】
探針が取り付けられた探針ホルダを該試料保持容器に取り付ける工程で、加圧機構によりガスを導入して内部を置換して加圧した後に固定することを特徴とする請求項15に記載の表面情報計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−234500(P2006−234500A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−47662(P2005−47662)
【出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【出願人】(503460323)エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社 (330)
【Fターム(参考)】