説明

被覆されたガラスシート

本発明によるガラスシートは、その表面上に与えられた被覆を有し、その被覆はガラスから順にエナメルを含む第一層及び樹脂を含む第二層を含む。かかるガラスシートは、熱処理されてもよく、熱処理前に被覆の損傷なしで取扱われ輸送されることができ、被覆が切断ラインの境界で損傷したり又は剥離したりせずに切断及び研磨されることができ、被覆の剥離又は破壊を避けながら流水下の良好な抵抗を与えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆されたガラスシート、特に表面上に形成されたラッカー層を有するガラスシートに関し、熱処理可能であり、かつかかる熱処理の前に取扱うことができるかかるガラスシートに関する。「ラッカー層」は、本明細書ではペイント、エナメル、ラッカー又は他のタイプの装飾的着色層を意味する。
【背景技術】
【0002】
本発明によるガラスシートは様々な用途を持つことができる。ラッカー仕上げのガラスシートは、例えば装飾的目的のために、家具、ワードローブに、家具のための扉として、仕切りとして、テーブル、棚に、浴室に、店のディスプレイに、壁紙として、スパンドレルとして使用されることができる。このようなラッカー仕上げのガラスシートはまた、自動車の窓ガラスパネルで、又はこれらの窓ガラスの少なくとも一部で、例えばフロンドウインドウの周囲部分で使用されることができる。これらの用途の多くは強化ガラスシートを必要とする。なぜならば強化ガラスシートは高い耐破損性を持つ利点を有するからである。他の熱処理もまた、使用されることが多く、例えば曲げが使用される。
【0003】
従来から、ラッカー仕上げのガラスシートは様々な方法によって製造されることができる。
【0004】
一つの既知の方法では、ガラスシートは有機系ペイントの層で覆われ、それは次いで乾燥され、炉の中で例えば150℃前後で約10分間ベークされる。有機系ペイントは例えばポリウレタン樹脂、アルキド樹脂、又はアクリル樹脂を含んでもよい。ペイント層を付与する前に、ガラスはシランで処理されてもよい。有機系ペイントの層で覆われた従来のラッカー仕上げのガラスシートが高温で熱処理されるとき、ラッカーは燃焼し、劣化され又は完全に破壊されうる。このような従来のラッカー仕上げのガラスシートは一般に、分解なしで200℃より高い温度で耐えることができない。ガラスシートがラッカー仕上げの前に強化されるとき、これは、ガラスシートがその最終的な寸法に既にあることを必要とする。なぜならば強化ガラスシートの切断及び研磨は可能でないからである。これは連続的な大量生産を可能にしない。
【0005】
別の既知の方法では、ガラスシートはIR又はUV硬化性エナメルの層で覆われ、次いで最初の工程では150℃前後の温度で加熱されるか又はUV硬化され、最後に600℃前後で熱処理される。第一加熱工程は、熱処理が行われる炉に到達するまでに製造ライン上で扱われることができるために被覆されたガラスシートに制限された機械抵抗を与える(Clemen試験結果が50g未満である)。それでもなお、第一工程は、被覆されたガラスシートが熱処理前に、例えばトラックによる輸送、切断、縁加工又は保管に耐えるのに十分な機械及び水抵抗を与えない。このような従来のエナメル仕上げのガラスは製造直後に同じ製造ラインで熱処理されることが必要である。
【0006】
他に特記しない限り、本明細書中の温度への言及は、炉の温度、即ち加熱又は熱処理が行われる雰囲気温度への言及である。
【発明の開示】
【0007】
本発明の態様の一つによれば、本発明は請求項1によって規定されたガラスシートを提供する。他の請求項は本発明の好適な及び/又は代替的な態様を規定する。
【0008】
この態様によれば、被覆されたガラスシートは、エナメルを含む第一層及び樹脂を含む第二層をこの順序で含む。
【0009】
これは熱処理前に有利な機械抵抗特性を与える。本発明によるガラスシートは、被覆を損傷させずに、例えば引っ掻き傷を作らずに熱処理前に取扱われかつ輸送されることができる。それらは、被覆を剥離させたり又は切断ラインの境界部で損傷を起こしたりせずに熱処理前に切断されたり又は研磨されることができる。さらに、それらは、熱処理前に、例えばガラスシートの洗浄又は縁加工時に被覆の剥離又は破壊を避ける流水下での良好な抵抗力を与える。本発明によるガラスシートは、熱処理前に、機械抵抗に関して良好な特性を有利に与えることができる。特に、本発明によるガラスシートは、熱処理前に、Clemen試験(ISO1518−1992による)下で350g又は450g、好ましくは500g又は650g、より好ましくは700g又は750g、さらに好ましくは800g又は1000gで、ガラス側から見たときに目に見える引っ掻き傷を全く示さないようにすることができる。
【0010】
本発明は熱処理可能なガラスシートに関して特別な効果を有する。本明細書で使用される用語「熱処理可能なガラスシート」は、ラッカー仕上げされたガラスシートが曲げ及び/又は熱強化及び/又は熱硬化操作及び/又は他の匹敵しうる熱処理工程を、欠陥(例えばラッカー中の美的欠陥)を作らずにガラスシートとラッカーの間の良好な接着性をなお持ちながら、受けるように適応されていることを意味する。このような熱処理工程は、ラッカーを担持するガラスシートを、使用される炉及びガラスシートの厚さによって、約560℃以上(例えば560℃〜750℃の雰囲気)に2分〜20分間(好ましくは最大10分間)加熱又は暴露することを伴うことができる。
【0011】
本発明によるガラスシートは、いったん熱処理されたら、ガラスに対する被覆の接着性、化学耐性、機械抵抗及び接着剤抵抗に関して従来の非熱処理のラッカー仕上げガラスと同様の特性をさらに有利に与えることができる。特に、本発明によるガラスシートは少なくともいったん熱処理されたら、以下の特性の一つ以上を与えてもよい:
【0012】

【0013】
Clemen試験、UV試験及び結露試験は全て以下に記載される。
【0014】
好ましくは、本発明によるガラスシートは、ガラスシート、エナメルを含む第一層、及び樹脂を含む第二層をこの順序で含む。この順序は特別に良好な機械抵抗特性を与えることができる。同様の理由のため、樹脂を含む第二層は、層の積重ねの最後の被覆であること、即ち空気にさらされることが有利である。
【0015】
好ましくは、第一層はガラス基板と直接接触している。あるいは、接着促進剤をガラスと被覆の間に存在させてガラスに対する被覆の接着性を改良してもよい。この接着促進剤はシランを含んでもよい。有利には、第二層は第一層と直接接触しているが、ここで再び接着促進剤を第一層と第二層の間に存在させてもよい。
【0016】
このような好ましい構造体は、輸送、切断及び研磨に対して特に良好な機械抵抗特性及び熱処理前の流水下の抵抗を与えることができる。
【0017】
本発明の第一層は、エナメルを含み、好ましくは本質的にエナメルからなる。これはガラスシートに対する被覆の適切な接着を確実にすることができる。用語「エナメル」は本明細書では、乾燥又は熱処理前のエナメル組成物、乾燥されているがまだ焼結されていないエナメル組成物、及び焼結されている熱処理後のエナメルに対して等しく使用される。エナメルは一般に、ガラスフリット及び顔料から作られる粉末、及びメジウムを含む。メジウムは、固体粒子が適切な懸濁にあることを確実にし、ガラス基板に対するエナメルの適用及び一時的な接着を可能にする。メジウムは有機のものであることができ、UV又はIR架橋可能な要素を含有することができる。好ましくは、第一層のエナメルに含まれるメジウムは有機のものであり、赤外線下で硬化可能である。これは流水下の被覆の抵抗を改善することができる(好ましくは剥離なし及び/又は溶解なし)。第一層の厚さは、いったん乾燥されて熱処理前には、5,10,20,30,40,50又は60μmより大きいか又はそれに等しくすることができる。それは150,130,120,110,100,80又は70μmより小さいか又はそれに等しくすることができる。第一層を形成するために適応されたエナメルの例は、FERRO社からのエナメル144001ブラック801029,JOHNSON MATTHEY社からのエナメルAF2600−65−96,FENZI社からのエナメルTEMPVER bianco3400−06−011である。
【0018】
本明細書中の層厚さに対する言及は層の平均幾何学的厚さへの言及である。
【0019】
好ましい実施形態では、本発明の第一層は、連続的であることができ、ガラスシートの実質的に全表面にわたって、即ちガラスシートの表面積の90%より多くにわたって、好ましくはガラスシートの表面積の95%より多くにわたって及ぶことができる。好ましくは、本発明の第一層は第二層によって実質的にその全表面にわたって、即ちその表面積の90%より多くにわたって、好ましくはその表面積の95%より多くにわたって覆われることができる。
【0020】
本発明の第二層は樹脂を含む。これは水及び引っ掻き傷から被覆を保護することができる。それはペイント、結合剤、ワニス又は接着剤であることができる。それはまた、メジウム、即ちエナメル組成物に使用されることができるがフリット及び顔料と関連がない媒質であることができる。あるいは、それは「クリアコート」、即ち充填剤(充填剤はエキステンダとも呼ばれることができる)のないペイントであってもよい。
【0021】
第二層の樹脂はUV硬化性樹脂又はIR硬化性樹脂であることができる。
【0022】
UV硬化性樹脂が使用される場合には、好ましい実施形態では、それはポリエステル樹脂を含むことができる。第二層の厚さは、いったん乾燥されて熱処理前には、5又は10μmより大きいか又はそれに等しくすることができる。それは50,30又は20μmより小さいか又はそれに等しくすることができる。もし第二層の厚さが小さすぎるなら、それは機械抵抗及び水抵抗に関して第一層を適切に保護できないかもしれない。もし第二層の厚さが大きすぎるなら、架橋は良くなく脱離が起こりうる。UV硬化性樹脂の例はUV接着剤LOCTITE,Johnson MattheyからのUV材料MS105及びGreen Isolight Internationalからのポリエステルを含むUVペイント(例えばGII206,GII207)であり、所望によりカーボンブラックを追加する。
【0023】
あるいは、IR硬化性樹脂が使用される場合には、IR硬化性樹脂は、アルキド、アクリル、アクリルアミド、アクリル−スチレン、ビニルアクリル、ウレタン、ポリウレタン、ポリエステル、ウレタンアルキド、アミノ樹脂、ポリアミド、エポキシ、エポキシエステル、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、PVC、PVB、及び水系樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの材料を含むことができる。第二層の厚さは、いったん乾燥されて熱処理前には、3,5,10,15,20又は25μmより大きいか又はそれに等しくすることができ、それは80,70,60,55又は50μmより小さいか又はそれに等しくすることができる。もし第二層の厚さが小さすぎるなら、それは機械抵抗及び水抵抗に関して第一層を適切に保護できないかもしれない。もし第二層の厚さが大きすぎるなら、それは第一層の色に影響を及ぼし、最後の熱処理後に様々な色の斑点を示すかもしれない。本発明の第二層のために好適でありうる材料の例はVALSPAR社からのSK1825ペイント(それはメラミン−ホルムアルデヒドのタイプのアミノプラスト樹脂と組み合わされたメタクリル樹脂を含む);FENZIからの鏡のためのグリーントップコートAWペイント(それはメラミン−ホルムアルデヒドのタイプのアミノプラスト樹脂と組み合わされたオルトフタルアルキド樹脂を含む);アクリル及びエポキシ樹脂を含むFENZIからのペイント;FENZIからのポリウレタンペイントであり、クリアコートの例は、充填剤を除去するように遠心分離されたVALSPAR社からのSK1825ペイントである。
【0024】
特別な実施形態では、本発明の第二層は本質的に樹脂からなることができる。
【0025】
あるいは、有利な実施形態では、本発明の第二層は樹脂及びエナメルの充填剤を含み、好ましくはそれは本質的に樹脂及びエナメルの充填剤からなる。「エナメルの充填剤」は、有機物でないエナメルの部分、即ちフリットを意味する。この実施形態の例は、(i)最初の充填剤が遠心分離によって除去され、エナメルの充填剤(例えばエナメルのフリット)が添加される、ポリエステル樹脂から本質的になる第二層、及び(ii)クリアコート及びエナメルのフリットから本質的になる第二層を含む。
【0026】
無機充填剤の添加は、第二層に存在する有機材料の量の減少を可能にし、それによって層の有機部分を熱処理時に優しく燃焼することを可能にし、第二層と第一層の間、第一層とガラスの間の脱離の危険を減少又は回避する。好ましくは、これらの無機充填剤はエナメルの充填剤であり、従って熱処理でそれらの充填剤は燃焼し、焼結されたエナメルの第一層の上に焼結されたエナメルの第二層を形成する。
【0027】
また、本発明の第二層のための樹脂を含む材料としての最終熱処理の温度で溶融しない無機充填剤を含むIR硬化性ペイントの使用は欠点を持ちうることを発見した:被覆されたガラスシートに接着しない粉末が熱処理後に表れるかもしれない。それは水で、おそらく高圧下の水で容易に洗浄されることができるが、もちろんこれは熱処理された被覆ガラスシートを得るための方法に工程を追加し、それは時間を消費し、新しい機械類に投資を必要としうる。我々は、本発明の第二層におけるエナメルの充填剤の使用が熱処理後に被覆されたガラスシート上に接着しない粉末の外観を減少又は回避することができることを発見した。それらの充填剤は第一層の熱処理時に溶融するからである。
【0028】
エナメルの充填剤が第二層のための樹脂に使用される実施形態では、熱処理前に最終生成物について測定された第二層中のエナメルの充填剤の量は好ましくは10,20,30,35又は40重量%より大きいか又はそれに等しくすることができる。それは90,80,70,60又は50重量%より小さいか又はそれに等しくすることができる。
【0029】
第二層に含有させるために適応されたエナメルの充填剤の例は、FERROからの144001,14251,14252,14253,14254,14054;JOHNSON MATTHEYからの1T1415,1T1430,1T1035,AF2000,AF2600,GB980BF,NK019,GB543AF,FENZIからのTEMPVERエナメルの充填剤である。
【0030】
装飾目的のために、被覆は着色されてもよい。被覆に与えられる色は第一層によって又は第二層によって又は両層が一緒に作用することによって与えられることができる。不透明度もまた、第一層又は第二層又は一緒に作用する両層の機能である。例えば、製品に黒色を与えるためには、ブラックエナメルが第一層のために、クリア樹脂が第二層のために使用されることができる。もしガラスシートが熱処理されるなら、色は層の組成によって熱処理時に変化してもよい。もしこうするなら、これは、熱処理後の最終的な色が望む通りになることを確実にするために、熱処理可能な製品について考慮されるべきである。
【0031】
使用されるガラス基板は平板ガラス、特に様々な厚さ(例えば1.8〜10.2mm)のフロートガラスであることができる。それはソーダライムガラスであることができ、透明、超透明、着色、エッチング又はサンドブラスチングされたガラスであることができる。本発明によるガラスシートは1m×1mより大きいサイズを持つことができる。それらは、例えば、3.21m×6m又は3.21m×5.50m又は3.21m×5.10m又は3.21m×4.50mのPLFとして知られるサイズ、又は例えば3.21m×2.50m又は3.21m×2.25mのDLFとして知られるサイズを持ってもよい。
【0032】
本発明の側面の別のものによれば、本発明は、請求項17によって規定される熱処理可能なラッカー仕上げのガラスシートを製造するための方法を提供する。
【0033】
好ましくは、本発明による方法は以下の工程を以下の順序で含むことができる。
− ガラスシートを準備する。
− エナメルを含む、好ましくはエナメルからなる第一層をガラスシートの表面上に、好ましくは液体状態で30〜300μm、好ましくは70〜200μmの厚さで付与する。
− 第一層をエナメルの性質によってUV又はIR線下で硬化し、従ってエナメルが乾燥され、即ち有機部分の主要部が蒸発又は架橋され、例えば溶媒が蒸発され、ガラスに粘着するがまだ実質的に溶融又は焼結されていない。好ましくは、IR硬化性エナメルが使用され、250℃以下、好ましくは200℃以下の温度で乾燥される。これは約1〜15分、好ましくは2〜10分間かけることができ(静止炉)、又は工業炉では、これは220〜240℃のガラス上で測定された最大温度で約7分間かけることができる。
− 樹脂を含む第二層を、好ましくは液体状態で20〜150μmの厚さで付与する。そして
− 第二層を樹脂の性質によってUV又はIR線下で硬化する。UV線下では、これは数秒、最大約5分かかることができる。IR線下では、これは130〜200℃の温度で数秒、最大約20分(静止炉)かけることができる。
【0034】
両層は従来公知の方法、例えばロール塗り又は流し塗りの工程、スプレー工程又は流し工程によって付与されてもよい。特に、もしガラスシートの部分だけが被覆されるべきであるなら、スクリーン印刷法も使用されることができる。
【0035】
本発明によるガラスシートが熱処理されるとき、第一層は溶融及び焼結し、第二層は部分的に除去されるか、又は全体的に破壊されうる。一般に言うと、第二層が本質的に樹脂からなるとき、即ち第二層に無機充填剤が存在しないとき、この層は破壊され、エナメルからではない無機充填剤が第二層に存在するとき、第二層から来る脱離した粒子(例えば粉末)が第一層の表面に存在することができるが、洗浄可能である。エナメルの充填剤が第二層に存在するとき、それらの充填剤は溶融及び焼結し、焼結されたエナメルの第一層の上に焼結されたエナメルの第二層を形成する。
【0036】
好ましくは、本発明によるガラスシートは、いったん熱強化されると、標準規格EN12150−1:2000に従って建築物の安全ガラスとして使用されることができる。好ましくは、本発明によるガラスシートは、いったん熱強化されたら、標準規格prEN14−179−1:2001又はEN1863−1:2000の破砕試験に従って破壊する。
【0037】
本発明の実施形態は実施例のみによってさらに説明される。
【実施例】
【0038】
実施例1
1枚のガラスシートがローラコンベヤによってある経路に沿って運搬される。それは最初に通常の方法で洗浄される。次いで、それは流し塗り機の下を通過し、そこでそれは白色エナメルを被覆される。被覆は適度な温度、約150℃で15分間乾燥される。次いで、ガラスシートはローラ塗り機の下を通過し、そこでカーボンブラックが添加されているGreen Isolight International(GII207)からのポリエステル樹脂を含むUV硬化性樹脂がエナメルの第一の層の上に付与される。この第二の層は付与直後に、UV炉で1分未満、好ましくは30秒未満硬化される。二つの実施形態が実現され、一方は8重量%のカーボングラックを有するもので、他方は40重量%のカーボンブラックを有するものである。両方とも同様の結果を示した。
【0039】
第一層の厚さは、いったん乾燥されて熱処理前では43μmであり、第二層の厚さは、いったん乾燥されて熱処理前では13μmである。熱処理前の最終製品は良好な流水下の水抵抗を示す。ガラスに対する被覆の接着性は良好である:これは縁上に欠陥のない良好な研磨を可能にする。耐引っ掻き性は良好である:1000gの重量下のClemen試験では引っ掻き傷は検出されなかった。
【0040】
熱処理後の最終製品は良好な不透明性で白色である(1%未満の視感透過率)。UV試験後に検出された色変化はなく、結露試験後にふくれは見えなかった。
【0041】
実施例2
1枚のガラスシートがローラコンベヤによってある経路に沿って運搬される。それは最初に通常の方法で洗浄される。次いで、それは流し塗り機の下で通過し、そこでそれはFENZI社からの白色エナメルTEMPVER bianco 3400−06−011を被覆される。被覆は適度な温度、約220℃のガラス上で測定される温度で8分間乾燥される。次いで、ガラスシートは流し塗り機の下を通過し、そこでValspar社からのポリウレタンワニスSK1690はエナメルの第一層上に付与される。樹脂に添加されるエナメルの充填剤はない。次いで、液体状態で約30μmの厚さのこの第二層は付与直後に、トンネル炉で約140℃のガラス上で測定される温度で約7分間乾燥される。
【0042】
第一層の厚さは、いったん乾燥されて熱処理前では50〜60μmであり、第二層の厚さは、いったん乾燥されて熱処理前では10〜15μmである。熱処理前の最終製品は、500gの重量下では引っ掻き傷が検出されないというClemen試験結果を示す。
【0043】
実施例3
メラミン−ホルムアルデヒドタイプのアミノプラスト樹脂と関連するメタクリル樹脂を含むVALSPAR社からのSK1825ペイントを、Beckman−Coulter社からの遠心分離機Allegra 25Rにおいて1時間半、13000rpmで遠心分離する。最初のペイントに存在する充填剤は除去される。次いで、JOHNSON MATTHEYエナメルの充填剤1T1415は40重量%の量で充填剤のないペイントに添加される。
【0044】
1枚のガラスシートは最初に通常の方法で洗浄される。次いで、それはバー塗布機を使用して、FERRO社からのブラックエナメル144001ブラック801029で、液体状態で約150μmの厚さで被覆される。被覆は適度な温度で、約150℃で15分間乾燥される。次いで、JOHNSON MATTHEYエナメルの充填剤1T1415を含む遠心分離されたSK1825ペイントはエナメルの第一層上にバー塗布機で付与される。次いで、液体状態で約60μmの厚さを有するこの第二層は付与直後に、静止炉で20分間約200℃の温度で乾燥される。
【0045】
熱処理前の最終製品は良好な流水下の水抵抗を示す。ガラスに対する被覆の接着性は良好である:これは縁上に欠陥のない良好な研磨を可能にする。そして、耐引っ掻き性は良好である:500gの重量下のClemen試験ではガラスを通して見たときに引っ掻き傷は検出されなかった。
【0046】
熱処理後の最終製品は良好な不透明性で黒色である(1%未満の視感透過率)。耐引っ掻き性は良好である:3000gの重量下のClemen試験では引っ掻き傷は検出されなかった。UV試験後又は結露試験後に検出される色変化はなかった。接着剤に対する抵抗性は良好である:分離はなく、ガラス側上に目に見える接着剤のマークはなかった。
【0047】
実施例4
メラミン−ホルムアルデヒドタイプのアミノプラスト樹脂と関連するオルトフタルアルキド樹脂を含むFENZI社からの鏡のための未処理のトップコートAWペイントを、Beckman−Coulter社からの遠心分離機Allegra 25Rにおいて1時間半、13000rpmで遠心分離する。最初のペイントに存在する充填剤は除去される。次いで、JOHNSON MATTHEYエナメルの充填剤1T1415は70重量%の量で添加される。
【0048】
1枚のガラスシートは最初に通常の方法で洗浄される。次いで、それはバー塗布機を使用して、FENZI社からの白色エナメルTEMPVER bianco 3400−06−011で、液体状態で約150μmの厚さで被覆される。被覆は適度な温度で、約150℃で15分間乾燥される。JOHNSON MATTHEYエナメルの充填剤1T1415を含む遠心分離された未処理のトップコートAWペイントはエナメルの第一層上にバー塗布機で付与される。次いで、液体状態で約60μmの厚さを有するこの第二層は付与直後に、静止炉で20分間約200℃の温度で乾燥される。
【0049】
熱処理前の最終製品は良好な流水下の水抵抗を示す。ガラスに対する被覆の接着性は良好である:それは縁上に欠陥のない良好な研磨を可能にする。そして、耐引っ掻き性は良好である:500gの重量下のClemen試験ではガラスを通して見たときに引っ掻き傷は検出されなかった。
【0050】
熱処理後の最終製品は良好な不透明性で白色である(1%未満の視感透過率)。耐引っ掻き性は良好である:3000gの重量下のClemen試験では引っ掻き傷は検出されなかった。UV試験後又は結露試験後に検出される色変化はなかった。接着剤に対する抵抗性は良好である:分離はなく、ガラス側上に目に見える接着剤のマークはなかった。
【0051】
実施例5
1枚のガラスシートは最初に通常の方法で洗浄される。次いで、それはバー塗布機を使用して、FENZI社からの白色エナメルTEMPVER bianco 3400−06−011で、220g/mの量(それは乾燥したら60μmの厚さを与える)で被覆される。被覆は適度な温度で、約220℃のガラス上で測定される温度で7分間乾燥される。次いで、JOHNSON MATTHEYエナメルの充填剤1T1415の40重量%を含むFENZI社からのポリウレタンペイントはエナメルの第一層上にバー塗布機で付与される。次いで、この第二層は付与直後に乾燥される。
【0052】
二つの連続した試料を、第二層に対して異なる厚さで評価した。一方の試料は液体状態で60μmの厚さを有し、他方の試料は液体状態で30μmの厚さを有していた。これはそれぞれ、46μm及び26μmの熱処理前の乾燥厚さにほぼ相当する。
【0053】
Clemen試験は、厚さが液体状態で60μmであるときに1000gの重量下では目に見える引っ掻き傷がなく、厚さが液体状態で30μmであるときに500gの重量下では目に見える引っ掻き傷がないことを示す。両厚さにおいて、Lucite試験は極めて良好である:ガラス側又は被覆側から見たとき、ガラスシートは1000サイクルで目に見える欠陥を示さない。
【0054】
充填剤1T1415をJOHNSON MATTHEYからの充填剤AF2000によって置換しても同じ結果が得られる。
【0055】
Clemen試験は、被覆の耐引っ掻き性を評価するために使用される。針に荷重をかけることによってタングステンカーバイドを先端に付けた針を被覆上に押す。針は約60mmの距離にわたって被覆を引っ掻くために使用される。幾つかの重さ(250g〜2500gで250gの間隔)を引っ掻き傷の各々の間にある距離で同じ試料上に付与することができる。従って、一連の平行な引っ掻き傷は試料中に作られることができる。この試験の完全な詳細は国際標準規格ISO 1518−1992に記載されている。
【0056】
UV試験は、太陽光によって生じる劣化をシミュレートするために使用される。この試験の完全な詳細はASTM標準規格G53−88に記載されている。試料は紫外光にさらされる。ここで使用される露光条件は次の通りである。340nmのUVAランプ;UVランプの出力:300W;UV露光の時間:1000時間;UV露光の温度:60℃;結露露光(condensation exposure)は行わなかった。試験後に色変化は現われないようにすべきであり、好ましくは色変化ΔEは2未満にすべきである。ΔEは次のように計算される:ΔE=√(L*2+a*2+b*2)であり、式中、L,a,bはCIElabスケールで測定される。
【0057】
結露試験は、湿った周囲雰囲気における試料の挙動を評価し、腐食に対する試料の保護の欠陥を示すために使用される。この試験の完全な詳細は標準規格DIN50017に記載されている。ここで使用される条件は次の通りである:98%相対湿度;40℃の温度;20日間。ふくれ(即ち、ラッカーの局所的剥離)は試験後に見えないべきである。
【0058】
Lucite試験は、被覆の耐引っ掻き性を評価するために使用される。試料はLucite(登録商標)4F又は47Gで被覆側上にまき散らされ(15×25cmの試料上にティースプーンの1/4)、次いで1枚の6mm厚のクリアガラス(10×10cm)で覆い、その上に3.938kgの重りを置く。上のガラスと重りの集成体を100サイクル以上、前後の運動に供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスシートであって、その表面上に与えられた被覆を有し、その被覆がガラスから順にエナメルを含む第一層及び樹脂を含む第二層を含む、ガラスシート。
【請求項2】
第一層が本質的にエナメルからなる、請求項1に記載のガラスシート。
【請求項3】
第一層がガラスシートと直接接触している、請求項1又は2に記載のガラスシート。
【請求項4】
第二層が第一層と直接接触している、請求項1〜3のいずれかに記載のガラスシート。
【請求項5】
第一層のエナメルが、赤外線下で硬化されているように適応された有機材料を含む、請求項1〜4のいずれかに記載のガラスシート。
【請求項6】
第二層が本質的に樹脂からなる、請求項1〜5のいずれかに記載のガラスシート。
【請求項7】
第二層がさらにエナメルの充填剤を含む、請求項1〜5のいずれかに記載のガラスシート。
【請求項8】
第二層が本質的にエナメルの充填剤及び樹脂からなる、請求項7に記載のガラスシート。
【請求項9】
第二層の樹脂がUV硬化性樹脂及びIR硬化性樹脂からなる群から選択される、請求項1〜8のいずれかに記載のガラスシート。
【請求項10】
第二層の樹脂がUV材料、ポリエステル樹脂、アルキド、アクリル、アクリルアミド、アクリル−スチレン、ビニル−アクリル、ウレタン、ポリウレタン、ポリエステル、ウレタンアルキド、アミノ樹脂、ポリアミド、エポキシ、エポキシエステル、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、PVC、PVB、及び水系樹脂からなる群の少なくとも一つの材料を含む、請求項1〜9のいずれかに記載のガラスシート。
【請求項11】
エナメルの充填剤が20重量%〜60重量%の量で第二層に存在する、請求項7又は8に記載のガラスシート。
【請求項12】
第一層の厚さは5〜120μmの範囲である、請求項1〜11のいずれかに記載のガラスシート。
【請求項13】
第二層の厚さは5〜50μmの範囲である、請求項1〜12のいずれかに記載のガラスシート。
【請求項14】
第一層が、ガラスシートの実質的に全表面にわたって拡がり、かつその実質的に全表面にわたって第二層によって覆われている、請求項1〜13のいずれかに記載のガラスシート。
【請求項15】
微量の接着促進剤がガラスシートの表面に存在する、請求項1〜14のいずれかに記載のガラスシート。
【請求項16】
ガラスシートが熱処理可能である、請求項1〜15のいずれかに記載のガラスシート。
【請求項17】
熱処理可能なラッカー仕上げのガラスシートの製造方法であって、以下の工程を以下の順序で含む方法:
− ガラスシートを準備する;
− ガラスシートの表面上にエナメルを含む第一層を付与する;
− エナメルが乾燥されてガラスに粘着するがまだ溶融又は焼結されないようにUV又はIR線を使用して第一層を硬化する;
− 樹脂を含む第二層を付与する;及び
− UV又はIR線を使用して第二層を硬化する。
【請求項18】
第二層がさらにエナメルの充填剤を含む、請求項17に記載の方法。

【公表番号】特表2009−530215(P2009−530215A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−558803(P2008−558803)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【国際出願番号】PCT/EP2007/052328
【国際公開番号】WO2007/104752
【国際公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(507303620)エージーシー フラット グラス ユーロップ エスエー (21)
【Fターム(参考)】