説明

被覆型ワイヤロープ

クレーン用やエレベータ用などの動索として好適な被覆型ワイヤロープである。心ロープと外側ストランド間及び隣接する外側ストランド間の接触による摩耗防止と、シーブと外側ストランドとの直接接触による摩耗防止と、シーブとの良好な駆動力伝達と静粛性を実現するために、側ストランド(2)の隣接する谷間と心ロープ外周間にスペーサにより均等な隙間が形成され、それら隙間を側ストランドの外接円を越えた外層樹脂(300)と一体化した樹脂層(301)で埋めている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
この発明はクレーン用やエレベータ用などの動索として好適な被覆型ワイヤロープに関する。
【背景技術】
クレーンなどの荷役機械やエレベータなどで使用される動索は、ロープがシーブを経由して移動されたり、巻き取られたりするので、全長にわたって張力と曲げが作用する厳しい条件におかれる。
従来、かかる動索用のロープとしては、JIS・G・3525や3546等で規定されるように、繊維または鋼のストランド、ロープで作られた心ロープの外周に複数本の側ストランドを配して撚合した構造のものが使用されていた。
しかし、この構造では、心ロープと側ストランドに高い面圧が生じ、かつ、ロープがシーブなどで曲げられることにより心ロープと側ストランドの摩擦が発生する。これにより心ロープが摩滅してロープの直径が減少すると、ますます隣接している側ストランド同士の面圧が増加する。その結果、各ストランドが摩耗したり、心ロープと側ストランドを構成するそれぞれの素線の断線が発生するという問題があった。
また、側ストランドがシーブと常時メタルタッチして相対摺動するので、騒音が大きくなるばかりか、通常相対的に軟質であるシーブが摩耗し、高価なシーブの交換に多大な手間と時間がかかる問題があった。
さらに、錆の発生や疲労性向上のためにロープ使用中に塗油が必要であり、その油によってシーブとロープ間の摩擦係数が低下し、シーブとロープ間の滑りによってシーブの回転がロープに正確に伝達されにくくなり、ロープに連結された物体の位置制御の精度が低下する。たとえばエレベータにおいては、シーブの回転運動とかごの上下運動が正確に連動しなくなり、かごの正確な位置制御が困難になる。その対策として、シーブの溝にアンダーカットを設けるなど特殊な加工を施したり、ダブルラップ方式でロープを巻回するなどの処置をとらなければならず、結果として、設備コストが高くなったり、ロープの取り付け及び交換に非常に時間がかかる問題を生じさせていた。
側ストランド間の接触による摩耗の解決策としては、側ストランド相互間にスペースを設けることが効果的である。その方法としては、側ストランドを意図的に細い径に作り、そうした側ストランドを心ロープの周りに配することで各側ストランド間に空隙を作ることが行なわれているが、ロープを撚る際に、側ストランドの位置が不安定となり、各側ストランド間の空隙が不均等になることを避けられない。この結果、側ストランド同士が直接接触して摩耗したり、素線の断線を起すなどの問題が発生し、実効が得られない。また、側ストランドの金属的接触を防止するために被覆を設けようとしても、側ストランド間の樹脂層の厚さが不均等になり、樹脂介在層の薄い部分が破壊されたり、側ストランド同士が直接接触して摩耗することを防止できないので、有効ではなかった。
打開策として、心ロープと側ストランド間の各略三角形状の空隙に、この形状(三角形状)をなした部材を介在させ、側ストランドとともに撚り込む構造としたロープがある。この先行技術によれば、心ロープと側ストランド間の接触は防止されるが、側ストランドは相互に直接接触して摩耗が発生することを依然として回避できない。これを回避するには各側ストランド間にも成形充填材を介材させることが必要であるが、側ストランドは複数本の素線を撚り合わせているため複雑な凹凸を有する断面形状となっており、これに合致する断面形状の充填材を製作することが困難である。また、撚り合わせ時にかかる充填材を側ストランドの断面形状と正確に合致させて配置することが難しい。そのため、隙間の発生や充填材の破損を避けられず、ロープの使用中に成形充填材が脱落して側ストランドが相互に直接接触しやすい。また、側ストランドの外接円部分がシーブと常時メタルタッチして相対摺動するので、騒音が発生したり、軟質なシーブが摩耗してシーブの交換に多大な手間と時間がかかる問題は依然として解消されない。さらに、塗油が必要であるから、油によってシーブとロープ間の摩擦係数が変化し、シーブの回転がロープに正確に伝達されにくくなる問題も依然として残る。
本発明は前記のような問題点を解消するためになされたもので、その目的とするところは、心ロープと外側ストランドの接触による磨耗と外側ストランド相互の接触による摩耗を確実に防止して耐疲労性を向上させ、また同時にシーブと外側ストランドとの直接接触による摩耗を確実に防止し、シーブとの良好な駆動力伝達と静粛性をともに実現することができる被覆型ワイヤロープを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、心ロープと外側ストランドの接触防止および隣接する外側ストランド相互の接触防止を簡単な構造によって実現でき、特別な撚線機も用いずに低コストでの製作を行なうことが可能な被覆型ワイヤロープを提供することにある。
【発明の開示】
上記目的を達成するため、本発明の被覆型ワイヤロープは、心ロープとこれの外周に配されて撚合された複数本の側ストランドと、前記側ストランドの全体を囲む樹脂被覆を有するロープであって、心ロープが心ロープ本体とこれを外囲する樹脂被覆層を有し、該樹脂被覆層により心ロープ本体と側ストランドとが離隔されており、さらに心ロープの外周部分には側ストランドの各谷間に介在する樹脂質のスペーサーを有し、それらスペーサーにより各側ストランド間にほぼ均等な隙間が形成され、それら隙間を側ストランドの外接円を越えた外層樹脂と一体化した樹脂層が埋めていることを基本的な特徴としている。
この構成によれば、心ロープの心ロープ本体を外囲する樹脂被覆層により心ロープ本体と側ストランドとが実質的に離隔されているため、心ロープと外側ストランド間の接触による摩耗が防止される。また、側ストランドの各谷間に介在する樹脂質のスペーサーにより各側ストランド間にほぼ均等な隙間が形成されることにより外側ストランド同士の接触が防止され、かつ、前記隙間が側ストランドを覆う外層樹脂と一体化して求心状に伸びる樹脂層で埋められているので、ストランドの相互間隔に全く変動が生じない。また、各側ストランド間に介在している樹脂層が緩衝材として機能するので、各側ストランド間の摩耗が完全に防止される。これらにより、耐疲労性が向上し、ロープの寿命を長くすることができる。
また、側ストランドの外接円を越えた全体被覆樹脂層を有しているので、シーブと外側ストランドとのメタルタッチによる摩耗が防止され、全体被覆樹脂層はシーブよりも硬さが小さいのでシーブの摩耗を防止できる。しかも全体被覆樹脂層によりシーブとの接触時の騒音が低下され、静粛性が保たれる。それでいながらシーブと良好な摩擦係数が得られ、シーブからの力を側ストランド及び心ロープに確実に伝達することができる。また、ロープの断面が円形となるため、自転やねじれの影響も軽減される。ロープ使用上も無給油で済むので周囲の汚損が回避される。
本発明の好ましい第1の態様においては、スペーサーが、心ロープ本体を外囲する樹脂被覆層の外周部分に等間隔に形成された複数のらせん状の溝であり、各らせん状の溝はロープの撚りピッチと等しいピッチを有するとともに、各側ストランドの側素線の1本以上が入り込み得る幅を有し、かつ各らせん状の溝は、側ストランドの谷間に介在させるためのらせん状の突起によって隣り合う同士が区分されている。
この態様によれば、心ロープ本体の樹脂被覆層それ自体が、心ロープ本体と側ストランドとを離隔する手段と、各側ストランド間に均等な隙間を形成する手段を兼ねることになるので、使用部品数が少なくてすみ、撚り工程も汎用の撚線機で実施できる。また、ロープ使用中に各側ストランド間の隙間の大きさが変動せず、スペーサーの移動や摩耗損傷も起こらないので、素線寿命まで確実に緩衝材の役割を保持できる。
前記態様において、心ロープ本体を外囲する樹脂被覆層とらせん状の溝は、らせん状突起形成用の溝を等間隔に有するノズルを樹脂押出し機に組み込み、心ロープ本体を前記ノズルに挿通しつつノズルを回転させることで作られる。これによれば、樹脂被覆層とスペーサーの製作を能率よく、低コストで行なえる。
好適には、第1態様の被覆型ロープは、心ロープ本体を外囲する樹脂被覆層の外周部分にスペーサーとして複数のらせん状の溝を等間隔に形成した心ロープを使用し、各らせん状の溝に側素線の1本以上が入り込むように各側ストランドを配して撚り合わせて、各側ストランド間にほぼ均等な隙間が形成された素ロープを製作する工程と、押出し機に素ロープを通すことにより側ストランドの外接円を越える樹脂外層を形成する際に、溶融樹脂を前記各側ストランド間の隙間に圧入充填して介在樹脂層を形成する工程で作られる。この構成によれば、素ロープの製作を汎用の撚線機で行なえ、また、それぞれの側ストランドを囲む樹脂被覆を施さないで済み、被覆工程が1回で済むので、製作が容易であり、低コストで能率よくロープを製作できる。
本発明の好ましい第2の態様は、スペーサーが複数本の樹脂線状体からなり、それら樹脂線状体は心ロープの外周において各側ストランド間に位置するように配され、側ストランドと撚り合せられている。この態様によれば、各樹脂線状体により側ストランド相互間にほぼ均等な隙間が形成され、また側ストランドと心ロープ本体間にも隙間が形成される。樹脂線状体は心ロープと独立した部品であるから、製作するロープの側ストランドの本数が多くても少なくても自在に対応することができる。心ロープ本体を外囲する樹脂被覆層は薄い厚さでもよくなり、またらせん溝を要さないので、心ロープの製作に特別な被覆ノズルを要さない。樹脂線状体は、中心に補強線を有していることが好ましく、これにより、断面積中の鋼充填率を損なわずに、心ロープと側ストランド間の接触および側ストランド相互間の接触を確実に防止できる。
この第2態様では、前記樹脂線状体は、全体被覆樹脂層の内側から分岐する形で充填される樹脂層とは積極的に溶融・一体化されず、独立した固体の状態で存在している。この構成によれば、ロープを曲げた時に側ストランドの動きが滑らかになるので、可撓度を良好にすることができる。
本発明の好ましい第3の態様では、第2態様における樹脂線状体が少なくとも部分的に溶融して樹脂層の一部となっている。これによれば、樹脂線状体はスペーサーとして機能するだけでなく、介在樹脂層の一部となるので、隣接する側ストランドの隅々が樹脂で埋められ、各側ストランド間も樹脂で完全に埋められ、かつまた、側ストランドと心ロープ間にも樹脂が充填され、外層樹脂と一体化される。したがって、心ロープと外側ストランド間の接触による摩耗、及び隣接する外側ストランド間の接触による摩耗、シーブと外側ストランドとのメタルタッチによる摩耗が防止され、しかも、静粛性を保ちつつ、シーブと良好な摩擦係数の制御が得られ、シーブからの力を、樹脂層を介して側ストランド及び心ロープに確実に伝達することができる。
前記第2態様と第3態様のロープは、スペーサーとして中心に補強線を有する樹脂線状体を用意し、それら樹脂線状体を心ロープの外周において各側ストランド間に位置するように撚り合せて各側ストランド間に隙間が形成された素ロープを製作する工程と、押出し機に素ロープを通すことにより側ストランドの外接円を越える樹脂外層を形成するとともに、溶融樹脂を前記樹脂線状体で形成された各側ストランド間の隙間に圧入充填させる工程で作られる。
第3態様の場合には、押出し機に素ロープを通す以前に、樹脂線状体を含む素ロープを熱して樹脂線状体の樹脂を軟化あるいは表面を溶融させてべとつかせることが好ましい。これにより、スペーサーに対する側ストランドの座りがよくなり、かつ、樹脂線状体の樹脂が、熱と側ストランドの縮径(ロープ中心に近づく挙動)によって溶融させられ、側ストランド間に介在される樹脂層の一部となる。
樹脂線状体を溶融する態様の場合、心ロープの樹脂被覆層を省略し、樹脂線状体そのもので樹脂被覆層を形成して心ロープと側ストランド間をセパレートする樹脂層を形成してもよい。この態様によれば、樹脂被覆層を有さない心ロープ本体を用いることができるので、心ロープの製作コストを低減できる。また、1回の被覆ですむので工程も簡単になり、コストを低減できる。
本発明の他の形態や利点は以下の詳細な説明で明らかにするが、本発明の基本的特徴を備えている限り、実施例に示される構成に限定されるものではない。当業者は本発明の思想あるいは範囲から外れることなしに、種々の変更並びに修正が可能となることは明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の被覆型ワイヤロープの第1態様を示す部分切欠斜視図、第2図は第1図の拡大断面図、第3図は心ロープの拡大斜視図、第4図は全体被覆前の段階(素ロープ)を示す断面図、第5−A図は心ロープの製作状態を示す図、第5−B図は第5−A図の部分的拡大図、第5−Cは使用するノズルの断面図、第6図は第1態様のロープ製作状態を示す側面図である。
第7図は第1態様の別の例を示す斜視図、第8図はその拡大断面図、第9図は心ロープの断面図、第10図は素ロープの断面図である。
第11図は本発明の第2態様の部分切欠斜視図、図12−Aはスペーサーの一例を拡大して示す部分切欠斜視図、図12−Bはスペーサーの別例を拡大して示す部分切欠斜視図、第13図は素ロープの状態の断面図、第14図は完成ロープの断面図、第15図はロープ製作状態を示す側面図である。
第16図は本発明の第3態様のロープを素ロープの状態で示す断面図、第17図は完成ロープの断面図である。
第18図は、第3態様の別の例を素ロープの状態で示す断面図、第19図は完成ロープの断面図、第20図は外層被覆時の樹脂の挙動を模式的に示す説明図である。
第21図は本発明の第4態様のロープを素ロープの状態で示す断面図、第22図は完成ロープの断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明をより詳細に説述するために、添付図面に従って説明すると、第1図ないし第6図は本発明による被覆型ワイヤロープの第1態様を示しており、第7図ないし第10図は第1態様の他の例を示している。第11図ないし第15図は本発明の第2態様を示しており、第16図と図17は本発明の第3態様を示し、第18図ないし第20図は第3態様の別の例を示し、第21図と第22図は本発明の第4態様を示している。以下、各態様に分けて詳しく説明する。
〔第1態様について〕
図1において、符号RP1はロープ全体を指しており、単一の心ロープ1と、複数本の側ストランド2と、前記側ストランド2を内包するように施された全体被覆樹脂3とから構成されている。
心ロープ1は、図3のように、鋼素線またはストランドを撚合して構成された心ロープ本体1aを内包するように樹脂被覆層1bを設けている。前記心ロープ本体の構造は任意であるが、この例では、1×7構造の心メンバー103の周りに、同じ構造の6本の側メンバー104を配して撚合した7×7のIWRCからなっている。樹脂被覆層1bは、側ストランド2と心ロープ本体1aの直接的接触を阻止するために、心ロープ本体1aの外接円を十分に超える厚さを有している。
前記樹脂被覆層1bは、側ストランド相互間に隙間を形成するためのスペーサーを一体に有している。すなわち、樹脂被覆層1bの外周には、らせん状の溝10が側ストランド2の本数分だけ均等な間隔で形成されており、各らせん状溝10のピッチは、ロープの撚りピッチと等しくなっている。
各らせん状溝10は、側ストランド2の外層の素線202を少なくとも1本落し込め得る深さと幅を備えている。この例では3本の素線202が位置できるように弧状断面となっている。そして、隣り合う各らせん状溝10、10は、らせん状の連続する突起11で区分されており、各突起11は、図4のように、各側ストランド2の谷間に延び得る高さを有しており、突起頂部は平坦状になっている。
側ストランド2は複数本(図面では8本)用いられている。各側ストランド2の構造は任意であるが、この例では、8×S(19)、言い換えると8×S(1+9+9)構造からなっている。つまり、心素線201の周りに9本の相対的に細い素線203を配して撚り合せて内層2aとし、これの周りに相対的に径の太い側素線202を9本配して撚合した形態となっている。
それぞれの側ストランド2は、樹脂被覆層1bの各らせん状溝10に沿わせられ、その状態で撚り合わされている。この状態が第4図であり、それぞれの側ストランド2は、外層としての3本の側素線が円弧を描くらせん状の溝底に接することで安定的に保持され、そうした各側ストランド2の間に均等な間隔配置のらせん状の突起11が介在されるので、側ストランド間には、均等な大きさの隙間S1が確保されている。
なお、前記各素線は鋼素線が用いられる。鋼素線は、ロープに高い強度が要求される場合、引張り強さ240kg/cm以上の特性を有するものが使用される。かかる鋼素線は、炭素含有量が0.70wt%以上の原料線材を伸線することで得られる。素線は表面に薄い耐食性被覆たとえば亜鉛めっき、亜鉛・アルミ合金めっきなどを有しているものを含む。素線の径はシーブによる繰り返し曲げによる疲労に対応できるように選定される。
全体被覆樹脂3は、図2において一点鎖線で示す側ストランド外接円を越える円筒状の外層300と、側ストランド2、2間の輪郭を同形で囲みつつ各隙間S1に圧入された樹脂層301を有している。前記外層300の側ストランド2の外接円からの厚さtは、これが薄すぎると耐久性に乏しく、摩耗寿命も低下する。しかし、厚すぎると動索としての柔軟性が損なわれ、また、ロープ径が太くなって強度効率が低下するので、これらを考慮してロープ径の1/5程度以下、たとえば、0.3〜2.0mmとすることが好ましい。
各樹脂層301は外層300と一体をなし、側ストランド2間で外層300から分岐するような形で求心状に延び、樹脂被覆層1bの突起11にまで到っている。
ここで、外層被覆3の樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどでもよいが、耐摩耗性、耐候性、柔軟性(耐ストレスクラック性)に加え、シーブとの摩擦係数の調整を図るべく適度の弾性を有し摩擦係数が比較的高く、加水分解しない熱可塑性のものが好ましい。その例としては、アクリル系、ポリウレタン系たとえば、エーテル系ポリウレタンやそのエラストマーなどが挙げられる。
一方、心ロープ1の合成樹脂層4bの樹脂は、ポリ塩化ビニール、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン及びこれら樹脂の共重合体など心ロープ本体1aと接着性の良いものを用いることができる。しかし、ロープ全体として、内部の樹脂は物理的、化学的特性が同質ないし近似している方がよいので、合成樹脂層4bも、熱可塑性樹脂ことに全体被覆樹脂3と同じか近似した材質が好ましい。全体被覆樹脂3と異なる樹脂を使用する場合には、全体被覆樹脂3との接着性が良好であるものが好ましい。
第1態様のロープを製作する方法を説明すると、心ロープ本体1aを樹脂押出し機に連続的に通してらせん溝付きの樹脂被覆層1bを有する心ロープ1を製作する。
第5図−Aないし第5図−Cはこの工程を示しており、スクリュー式などの押出し機9の端部に特殊なノズル91を組み込んだ回転体92を組み込んでいる。ノズル91は溝10を成形するための内径方向に凸になった型部911と、突起11を成形するための外径方向に凹となった型部910が周方向で交互に繰り返された貫通穴を有している。このノズル91は外周に歯車を持つ回転体92に回り止めされた形で組み込まれている。回転体92はウォームギヤなどの駆動体93によって押し出し軸線の周りで回転されるようになっている。そして、駆動体93は、下流の引取りキャプスタン12と同期回転されるように駆動系14に組み込まれ、心ロープ1の引き出し速度と回転体92の回転が同期するようになっている。
したがって、心ロープ本体1aを押出し機9のノズル91に挿通し、引取りキャプスタン12を駆動して引き出し、巻取り機13に巻き取りつつ、押出し機9で加熱溶融した樹脂30を加圧すれば、ノズル91の型部911、910により、心ロープ本体1aの周りに、溝と突起を外径側に有する樹脂被覆層1bが成形される。しかも、引取りキャプスタン12の動力を伝達された駆動体93により回転体92およびこれと一体化しているノズル91が回転するので、溝と突起は継ぎ目のないらせん状になるのである。
次いで、第6図のように、らせん溝付きの樹脂被覆層1bを有する前記心ロープ1を繰り出すとともに、側ストランド2を繰り出し、鏡板6を通してボイス7に導きロープに撚り合せる。
鏡板6は中心に心ロープ1を挿通する孔60を有し、これよりも外周に等間隔で側ストランド2を挿通する孔62を有している。鏡板6を回転させつつこれに前記心ロープ1および側ストランド2を通してボイス7に導けば、各側ストランド2、2は樹脂被覆層1bの外周に等間隔にある各らせん状溝10にそれぞれ整然と配置され、この状態を維持しながら撚り合わされる。これにより、図4のような素ロープAとなる。側ストランドの撚り方向とロープの撚り方向は逆であることが好ましく、たとえば、側ストランドの撚り方向をS方向としたときには、ロープの撚り方向をZ方向とする。
かかる素ロープAにおいては、心ロープ1が被覆樹脂層1bを有している関係から、その分だけ心ロープ1の径が増径され、側ストランド2間に隙間を形成しやすい上に、らせん状の溝10と突起11の働きにより、各側ストランド2、2間に均等な隙間S1が正確に形成される。同時に側ストランド2と心ロープ1間は樹脂被覆層1bによって実質的に分離される。
素ロープAは一旦巻き取られるか巻き取られずに図示しない洗浄機で洗浄されたのち、溶融した樹脂30を加圧押出しする押出し機9のダイス90中に通されて連続的全体被覆が行われる。この被覆押出し時においては、たとえばショア硬度Dスケール90のエーテル系ポリウレタンであれば180〜200℃程度の溶融樹脂30が、素ロープAの全周から、各側ストランド2、2間の均等な隙間S1に圧入充填され、側ストランド2を構成している各素線の表面と素線間の谷間にも圧入される。これにより、側ストランド2,2間に均等な樹脂層301が形成される。
側ストランド2は凹凸の大きい複雑な断面形状となっており、溶融樹脂30はこの形状を満たし最終的に全側ストランド2を覆う。したがって、側ストランド2を取り囲むように出来上がった円筒状の外層300の内側部分と側ストランド2との接着力が高く、ずれに対する抵抗が大きい。
しかも、前記側ストランド2,2間は各樹脂層301により完全にセパレートされ、各樹脂層301は侵入先端が樹脂被覆層1bの突起11にまで達する。そして、最終的にダイス90で半径方向から圧縮されるため、隣接する側ストランド2、2間、側ストランド2と心ロープ1間は樹脂分で埋められたものとなる。
心ロープ1の樹脂と外層3の樹脂を同等ないし近似した材質とした場合、断面内の樹脂の物理的、化学的性質が均一であるため、シーブとの摩擦力やせん断力によって被覆が破れたり、ずれたりしにくくなる。
各樹脂層301と樹脂被覆層1bの突起11とは、少なくとも密に接する関係となる。被覆時に溶融樹脂30と被覆樹脂層1bの温度差が大きければ各樹脂層301と樹脂被覆層1bは一体化しにくいが、温度差が小さければ接着あるいは融着する。樹脂層301と樹脂被覆層1bができるだけ一体化されることが要求される場合には、図6のようにライン上に加熱器8を介在させ、素ロープAを、たとえば使用樹脂がエーテル系ポリウレタンであれば、150℃以下たとえば60〜120℃前後に予熱することが推奨される。
この第1の態様は、各側ストランド2をあらかじめ樹脂被覆する工程が不要であり、ロープの全体被覆時に側ストランドの被覆を行えるので、生産性がよく、コストを安価にすることができる。本発明の構造に代えて、側ストランド2をそれぞれあらかじめ樹脂被覆しておき、それを樹脂被覆した心ロープと撚り合わせ、その外周に樹脂被覆を施した場合には、円筒状の被覆側ストランドと心ロープとの間に樹脂が浸透せずに空隙が発生しやすく、側ストランドと心ロープの一体化が損なわれる可能性があるが、本発明はかかる懸念が解消される。また、鋼材充填率も高くすることができるため、ロープ強度も良好なものとなし得る。
なお、ロープ製作工程は、種々の形態を採用可能である。すなわち、心ロープ1の樹脂被覆層1bが完全に固化しないベトついた状態で側ストランド2を撚りあわせてもよい。すなわち、被覆樹脂付きの心ロープ1の製作と素ロープの製作と全体被覆とをインラインで一貫連続して行なってもよい。これに代えて、被覆樹脂付きの心ロープ1の製作と、素ロープの製作とを不連続で行い、一旦巻き取った素ロープをその後に繰り出して全体被覆を行なってもよい。
第7図ないし第10図は第1態様の別の例を示している。この態様のロープは、全体をRP11の符号で示している。基本的な構造は、既述したところと同じであるから、相違点のみ説明すると、心ロープ本体1aは、中心素線101の周りに6本の側素線102を配して撚合した1×7構造となっている。また、側ストランド2は6本が用いられ、前記心ロープ1の周りに配されて撚合されている。側ストランドは、この例では中心の素線201の周りに6本の側用の素線202を配して撚合した1×7構造からなっている。
樹脂被覆層外周のらせん状の溝10とらせん状の突起11の数はしたがって6本であり、各らせん状の溝10は、側ストランド2の側用素線202の1本あるいは2本を嵌めうる幅の逆台形状の断面となっている。もとより基本態様の場合と同じように弧状断面の溝であってもよい。その他の構成は既述した説明を援用することとし、同じ部分に同じ符号を付すにとどめる。
〔第2態様について〕
図11において、符号RP2はロープ全体を指しており、単一の心ロープ1と、複数本の側ストランド2と、これと同数のスペーサー4と、前記側ストランド2を内包するように施された全体被覆樹脂3とから構成されている。
前記心ロープ1は、第1態様と同じく、心ロープ本体1aとこれを囲む樹脂被覆層1bからなっているが、樹脂被覆層1bそれ自体にはスペーサーとしてのらせん状の溝やら線状の突起は形成されていない。心ロープ本体1aの構造は任意のものが選択される。側ストランド2は、この例では6本であり、構造は任意のものが選択される。
この第2態様の特徴は、スペーサー4として樹脂線状体を使用し、これを各側ストランド2,2の谷間と心ロープ1の間に配し、各側ストランド2,2と撚合していることであり、被覆前において、各側ストランド2,2は図13のように樹脂線状体4により均等に離間され、側ストランド2,2相互間に隙間S1が形成されている。
全体被覆樹脂3は前記側ストランド2を内包するように施され、図14のように、側ストランド2、2間に圧入された樹脂層301と、側ストランド2の外接円を越えて囲む円筒状の外層300を有している。樹脂線状体4は樹脂層301とは溶融一体化せず、固有の形で存在している。
側ストランド2は、第13図の素ロープAの状態では、樹脂被覆層1bとの間で適度の隙間があるが、完成したロープにおいては、製作過程での長手方向の引張りによりロープ中心に寄り、第14図のように樹脂被覆層1bと接触する。樹脂線状体4は側ストランド2の前記挙動による圧迫と、樹脂層になるべき溶融樹脂との接触による熱の授受とにより若干変形し、樹脂被覆層1bと少なくとも密着する。
前記樹脂線状体4は、側ストランド2,2間に溶融樹脂が十分に圧入される隙間を形成しうるように径が選定される。その径は側ストランドの本数などによって変化するが、6ストランドの場合には、通常、ストランド径の1/6〜1/2程度が好ましい。樹脂線状体4は溶融樹脂が圧入されるまでの間のスペーサーとして機能し、溶融樹脂が圧入されたときには前記機能を有する限り形状は変化してよいので、断面形状は、方向性のない単純な円形状でよい。
樹脂線状体4は全体が棒状あるいは撚り線状の熱可塑性樹脂で構成されていてもよいが、側ストランド2,2と撚合するときに適切な剛性を確保し、また、ロープ完成時には強度を補助するために、第12−A図や第12−B図のように、中心に補強線4aを配し、その周りに合成樹脂層4bを設けたものが好適である。合成樹脂層4bは、溶融した樹脂浴中に補強線4aを通して付着させ、出口で絞って付着量を調整したり、あるいは押出し機のダイス中に通すことによって連続的に得ることができる。
前記補強線4aは、第12−A図のように1本でもよいし、第12−B図のように複数本400を撚り合わせたものであってもよい。材質としては前記心ロープ本体や側ストランドの素線と同様な鋼素線が通常使用されるが、銅などの他の金属であってよいし、合成繊維であってもよい。合成繊維としては、アラミド、超高分子量ポリエチレン、全芳香族ポリエステルなどから選択される高強度低伸度繊維が好ましい。補強線は、かかる繊維からなるヤーンを多数本集めて束にし、その束を平行に引き揃えるかあるいは長いリードで撚ることで作られる。
合成樹脂層4bの樹脂は、心ロープ被覆層1bの樹脂及び全体被覆樹脂3と異なる樹脂を使用する場合には、耐摩耗性等を考慮して、ポリ塩化ビニール、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン及びこれら樹脂の共重合体などから選択すればよいが、心ロープ被覆層1bの樹脂及び全体被覆樹脂3とのなじみの点や、内部樹脂特性の均質性の観点から、心ロープ被覆層1bの樹脂及び全体被覆樹脂3と同質ないし近似した特性の熱可塑性樹脂であることが好ましい。具体的には、第1態様と同様であり、ポリウレタン系たとえばエーテル系ポリウレタンなどで代表される耐摩耗性、耐候性、柔軟性(耐ストレスクラック性)、適度の弾性を有する樹脂が用いられる。
第2態様のロープを得るには、心ロープ本体1aを押出し機に通して樹脂被覆層1b付きの心ロープ1を製作する。また、必要な本数の側ストランド2を製作しておく。一方、これとは別に、樹脂線状体4を必要本数製作しておく。
次いで、第15図のように、前記心ロープ1を繰り出すとともに、樹脂線状体4と側ストランド2を繰り出し、鏡板6を通してボイス7に導きロープに撚り合せる。鏡板6は、中心に心ロープ1を挿通する孔60を有し、これよりも外周に等間隔で樹脂線状体4を挿通する孔61を有し、さらにこれよりも外周に、円周上での位置が樹脂線状体4の孔61、61の中間に位置するように、側ストランド2を挿通する孔62を有している。
鏡板6を回転させつつこれに前記心ロープ1、樹脂線状体4および側ストランド2を通してボイス7に導けば、樹脂線状体4が各側ストランド2、2の間に位置するように撚りこまれつつ心ロープ1の外周に等間隔で配され、第13図のような素ロープAとなる。側ストランドの撚り方向とロープの撚り方向は逆であることが好ましく、たとえば、側ストランドの撚り方向をS方向としたときには、ロープの撚り方向をZ方向とする。
かかる素ロープAにおいては、らせん状の樹脂線状体4が心ロープ1の外周に等間隔で配置され、各側ストランド2、2間に均等な隙間S1が形成される。このときには、側ストランド2と心ロープ1間に樹脂線状体4によって適当な隙間S2が形成されていてもよい。
素ロープAは、一旦巻き取られるか巻き取られずに、図示しない洗浄機で洗浄され、第15図のように、溶融した樹脂30を加圧押出しする押出し機9のダイス90中に通されて連続的全体被覆が行われる。素ロープAの保有温度が低い場合には、溶融樹脂の圧入、流動が適切に行なわれるよう、加熱器8によって素ロープAを予熱することが推奨されるが、樹脂線状体4の溶融を意図していないので、高い温度での予熱は不可欠ではなく、第1態様の場合よりも低くてもかまわない。
この被覆押出し時においては、素ロープAの全周から、溶融樹脂30が各側ストランド2、2間の均等な隙間S1に圧入され、側ストランド2を構成している各素線の表面と素線間の谷間にも圧入される。
各樹脂線状体4は高温の溶融樹脂30との接触により熱せられ、かつ下流でのロープの引取りによる各側ストランド2、2のロープ中心方向への移動で圧迫されるため、幾分変形して心ロープ1の被覆樹脂層1bと密着する。そして、各側ストランド2、2は心ロープ1の被覆樹脂層1bと接する。
これらにより、第14図のように、側ストランド2,2間は均等な厚さと間隔の樹脂層301でセパレートされ、側ストランド2と心ロープ本体1aとは、リング状の被覆樹脂層1bで均等な間隔にセパレートされる。側ストランド2は凹凸の大きい複雑な断面形状となっており、溶融樹脂30はこの形状を満たし最終的に全側ストランド2を覆う。
第2態様は、各側ストランド2、2の谷間に樹脂線状体4を撚り込んでいるので、各側ストランド2をあらかじめ樹脂被覆する工程が不要であり、ロープの全体被覆時に側ストランドの被覆を行えるので、生産性がよく、コストを安価にすることができる。
また、樹脂線状体4は樹脂層301と一体ではないので、ロープを曲げた時の側ストランド2、2の動きが滑らかで、可撓性がよくなる。
その他は第1態様と同様であるから、説明は援用する。なお、側ストランド2と心ロープ1は第2図で代表される第1態様の構造と同じ場合もあり、その場合には、樹脂線状体4は8本用いられる。
〔第3態様について〕
この第3態様は、第16図と第17図に基本例が示されており、符号RP3が全体を指している。第18図ないし第20図は第3態様の別の例を示しており、符号RP31が全体を指している。
1は心ロープ、2は側ストランド、3は全体被覆樹脂であり、これらは第1,2態様と同じである。スペーサー4として樹脂線状体4を使用している点は第2態様と同じであり、そうした樹脂線状体4を各側ストランド2,2の谷間に配して撚合し、側ストランド2,2間に均等な隙間S1を有する素ロープAとすることも第2態様と同様である。
しかし、この第3態様は、素ロープAの状態では各側ストランド2,2の位置を拘束してスペースを形成させている樹脂線状体4が、全体被覆時に溶融して樹脂層301,302の一部となっていることが特徴である。すなわち、外層300は樹脂層301、301によって内層としての略円筒状の介在樹脂層302と一体化している。樹脂層302は心ロープ1の樹脂被覆層1bと接着一体化している。樹脂層301は側ストランド2の凹凸に合致して接着されている。樹脂線状体4は第17図のように原型をとどめない場合のほか、中心に近い部分だけ原型をとどめていてもかまわない。
樹脂線状体4は第2態様におけるものと同じでよく、溶融樹脂が圧入されるまでの間のスペーサーとして機能し、溶融樹脂が圧入されたときには熱で溶融してよいので、断面形状は、方向性のない単純な円形状でよい。
合成樹脂層4bの樹脂は、心ロープ被覆層1bの樹脂及び全体被覆樹脂3との一体性を得る点から、心ロープ被覆層1bの樹脂及び全体被覆樹脂3と同質ないし近似した特性の熱可塑性樹脂であることが好ましい。異なる樹脂を使用する場合には、全体被覆樹脂3との接着性が良好であることが好ましい。詳細については、第2態様の説明を援用する。
第3態様においても、心ロープ1の構造、側ストランド2の構造は特に限定はない。第16図と第17図では、心ロープ本体1aが7×7のIWRCから構成されており、側ストランド2はS(19)構造からなっており、ロープ全体として、IWRC8×S(19)となっている。第18図と第19図では心ロープ本体1aと側ストランド2が1×7構造であり、ロープ全体として7×7構造となっている。
この第3態様においても、樹脂線状体4は各側ストランド2、2の隣接する谷間と心ロープ1の間に配されて撚合されることで、被覆前の段階で各側ストランド2、2間に全体被覆樹脂の均等な圧入を確保するための隙間を形成している。そして、全体被覆によって、側ストランド2、2間に圧入された樹脂層301と、側ストランド2と心ロープ1間の樹脂層302と、側ストランド2の外接円を越えて囲む円筒状の外層300が形成され、樹脂線4は溶融して樹脂層301、302の一部となっている。
ロープの製作工程は基本的には第2態様と同じであるが、素ロープAは一旦巻き取られるか巻き取られずに、図示しない洗浄機で洗浄され、加熱器8によって予熱されたのち、溶融した樹脂30を加圧押出しする押出し機9のダイス90中に通されて連続的全体被覆が行われる。予熱温度は第1態様、たとえば使用樹脂がエーテル系ポリウレタンであれば、150℃以下たとえば90〜140℃前後と高めにするとよい。
この被覆押出し時においては、素ロープAの全周から、溶融樹脂30が図20のように前記各側ストランド2、2間の均等な隙間S1に圧入され、側ストランド2を構成している各素線の表面と素線間の谷間にも圧入される。
各樹脂線状体4は、高温の溶融樹脂30との接触により熱せられるため樹脂層4bが表層から順次溶融し、溶融した樹脂分が、側ストランド2と心ロープ1との隙間S2に流れ込み、これと併行して溶融樹脂30がボリューム(断面積)の減少した樹脂層4bと側ストランド2との隙間を通して側ストランド2と心ロープ1との隙間S2に圧入され、心ロープ1の被覆層1bと融着する。すなわち、樹脂線4は被覆用溶融樹脂の一部にもなり、ロープ内部からの樹脂分補給作用を営む。
これらにより、第17図と第19図のように、側ストランド2,2間に放射状の樹脂層301が、側ストランド2と心ロープ1間に前記樹脂層301と一連のリング状の介在樹脂層302が形成される。外層300は前記側ストランド2,2間では放射状の樹脂層301により側ストランド2と心ロープ1間のリング状の介在樹脂層302と一体接合される。そして、最終的にダイス90で半径方向から圧縮され、隣接する側ストランド2、2間、側ストランド2と心ロープ1間は樹脂で埋められたものとなる。
心ロープ1の樹脂、樹脂線状体4の樹脂、外層3の樹脂を同等ないし近似した材質とした場合、接着性がよく、断面内の樹脂の物理的、化学的性質が均一であるため、シーブとの摩擦力やせん断力によって被覆が破れたり、ずれたりしない。
その他は、第2態様と同じであるから、同じ部分に同じ符号を付すにとどめ、説明は省略する。
なお、第1態様を応用して、心ロープ1の樹脂被覆層1bの外周に、樹脂線状体4を位置決め配置するのに適したらせん状の溝を形成しておいてもよい。
〔第4態様について〕
この第4態様は、第21図と第22図に示されており、ロープ全体を符号RP4で表している。
この態様においては、心ロープ1が心ロープ本体1aのみで構成され、樹脂被覆層を有していない。心ロープ1や側ストランドの構成は任意である。
樹脂線状体4は心ロープ1の上層の素線又はストランドの各谷間に位置するように側ストランド2,2と撚合されている。したがって、この態様においては、樹脂線状体4は側ストランド2,2間に均等な隙間を形成するが、側ストランド2と心ロープ1との間の隙間は、前記態様の場合よりも小さい。また、この態様においては、樹脂線状体4の樹脂を活用して側ストランド2と心ロープ1間の介在樹脂層302を形成するので、樹脂線4としては、樹脂層4bのボリュームが大きく、したがって径の大きなものが好適である。
側ストランド2は1本のみを詳細に示し、他の側ストランドは簡略化している。その他は第1態様と同様であるから、同じ部分に同じ符号を付し、説明は省略する。
第4態様においては、各樹脂線状体4は、高温の溶融樹脂30との接触により熱せられるため樹脂層4bが表層から順次溶融し、溶融した樹脂分が側ストランド2と心ロープ1との隙間S2に流れ込み、これと併行して溶融樹脂30がボリューム(断面積)の減少した樹脂層4bと側ストランド2との隙間を通して側ストランド2と心ロープ1との隙間S2に圧入され、心ロープ1の被覆層302となる。すなわち、樹脂線4は心ロープ1の被覆用溶融樹脂にもなる。したがってこの第4態様においては、予熱が必須であり、かつできるだけ高い温度であることが好ましい。
この第4態様は、心ロープ1に被覆樹脂層を設ける必要がないので、コストが低減される。また、ロープの径を細くすることができ、鋼充填率も高くすることができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】


【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】


【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】

【図21】

【図22】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
心ロープ(1)とこれの外周に配されて撚合された複数本の側ストランド(2)と、前記側ストランドの全体を囲む樹脂被覆(3)を有するロープであって、心ロープ(1)が心ロープ本体(1a)とこれを外囲する樹脂被覆層(1b)、(302)を有し、該樹脂被覆層(1b)、(302)により心ロープ本体(1a)と側ストランド(2)とが離隔されており、さらに心ロープ(1)の外周部分には側ストランド(2)、(2)の各谷間に介在する樹脂質のスペーサーを有し、そのスペーサーにより各側ストランド(2),(2)間にそれぞれほぼ均等な隙間(S1)が形成され、それら隙間(S1)を側ストランドの外接円を越える外層樹脂層(300)と一体化した樹脂層(301)が埋めていることを特徴とする被覆型ワイヤロープ。
【請求項2】
スペーサーが、心ロープ本体(1a)を外囲する樹脂被覆層(1b)の外周部分に等間隔に形成された複数のらせん状の溝(10)であり、各らせん状の溝(10)はロープピッチと等しいピッチを有するとともに、各側ストランド(2)の側素線の1本以上が入り込み得る幅を有し、かつ各らせん状の溝(10)は、側ストランドの谷間に介在させるためのらせん状の突起(11)によって隣り合う同士が区分されている請求範囲第1項記載の被覆型ワイヤロープ。
【請求項3】
心ロープ本体(1a)を外囲する樹脂被覆層(1b)とらせん状の溝(10)が、等間隔でらせん状の突起形成用の溝を有するノズル(91)を組み込んだ押出し機(9)を使用して、心ロープ本体(1a)をノズル(91)に挿通しつつノズルを回転させることで作られたものである請求範囲第2項記載の被覆型ワイヤロープ。
【請求項4】
心ロープ(1)とこれの外周に配されて撚合された複数本の側ストランド(2)と、前記側ストランド(2)の全体を囲む樹脂被覆(3)を有するロープであって、心ロープ本体(1a)を外囲する樹脂被覆層(1b)の外周部分にスペーサーとして複数のらせん状の溝(10)を等間隔に形成した心ロープ(1)を使用し、各らせん状の溝(10)に側素線の1本以上が入り込むように各側ストランド(2)を配して撚り合わせて、各側ストランド間にほぼ均等な隙間(S1)が形成された素ロープ(A)を製作する工程と、押出し機(9)に素ロープ(A)を通すことにより側ストランド(2)の外接円を越える樹脂外層(300)を形成する際に溶融樹脂(30)を前記各側ストランド間の隙間(S1)に圧入充填して介在樹脂層(301)を形成する工程で作られた請求範囲第1項記載の被覆型ワイヤロープ。
【請求項5】
スペーサーが複数本の樹脂線状体(4)からなり、それら樹脂線状体(4)は心ロープ(1)の外周において各側ストランド間に位置するように配され、側ストランド(2)、(2)と撚り合せられられている請求範囲第1項記載の被覆型ワイヤロープ。
【請求項6】
樹脂線状体(4)は中心に補強線(4a)を有している請求範囲第5項記載の被覆型ワイヤロープ。
【請求項7】
樹脂線状体(4)は樹脂層(301)とは一体化せず、固体の形で存在している請求範囲5に記載の被覆型ワイヤロープ。
【請求項8】
樹脂線状体(4)は少なくとも部分的に溶融して樹脂層(301)の一部となっている請求範囲第5項記載の被覆型ワイヤロープ。
【請求項9】
スペーサーとして中心に補強線(4a)を有する樹脂線状体(4)を用意し、それら樹脂線状体(4)を心ロープ(1)の外周において各側ストランド間に位置するように撚り合せて各側ストランド間に隙間(S1)が形成された素ロープAを製作する工程と、押出し機(9)に素ロープAを通すことにより側ストランド2の外接円を越える樹脂外層(300)を形成するとともに、溶融樹脂(30)を前記樹脂線状体(4)で形成された各側ストランド間の隙間(S1)に圧入充填させる工程で作られた請求範囲第1項記載の被覆型ワイヤロープ。

【国際公開番号】WO2004/055263
【国際公開日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【発行日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−560613(P2004−560613)
【国際出願番号】PCT/JP2003/015724
【国際出願日】平成15年12月9日(2003.12.9)
【出願人】(000003528)東京製綱株式会社 (139)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】