説明

被記録媒体検出装置、記録装置、液体噴射装置

【課題】 単一形態のレバー部材を用いて高精度に用紙の通過を検出可能であるとともに、用紙が紙送り方向とは逆の方向から挿入された場合でもレバー部材を破損させることのない用紙検出装置を得る。
【解決手段】 紙検出器17は、用紙搬送路に設けられるとともに、用紙搬送路を遮るように配置されて搬送される記録用紙と接触し、または、接触が解除されることによりその回動軸を中心に回動変位するレバー15と、レバー15の回動変位を検出する検出部16とを備えて構成されている。レバー15は、回動軸15aを中心に、用紙搬送路の上流側方向及び下流側方向の双方向に回動可能に設けられているとともに、搬送される記録用紙との接触が解除された状態における当該レバー15の姿勢を保持する姿勢保持手段が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被記録媒体を搬送する搬送路に設けられ、被記録媒体の通過を検出する被記録媒体検出装置およびこれを備えた記録装置に関する。また、本発明は液体噴射装置に関する。
【0002】
ここで、液体噴射装置とは、インクジェット式記録ヘッドが用いられ、該記録ヘッドからインクを吐出して被記録媒体に記録を行うプリンタ、複写機およびファクシミリ等の記録装置に限らず、インクに代えてその用途に対応する液体を前記インクジェット式記録ヘッドに相当する液体噴射ヘッドから被記録媒体に相当する被噴射媒体に噴射して、前記液体を前記被噴射媒体に付着させる装置を含む意味で用いる。
液体噴射ヘッドとして、前記記録ヘッドの他に、液晶ディスプレー等のカラーフィルター製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレーや面発光ディスプレー(FED)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド、精密ピペットとしての試料噴射ヘッド等が挙げられる。
【背景技術】
【0003】
記録装置或いは液体噴射装置の一例としてプリンタがある。プリンタにおいては、被記録媒体或いは被噴射媒体の一例としての用紙を搬送する用紙搬送路の所定の位置に、用紙の先端および後端の通過を検出する用紙検出装置を設け、用紙の先端或いは後端の通過を検出することで、必要な紙送り制御を行う。代表的な用紙検出装置としては、用紙搬送路に回動可能に設けられるレバー状部材と、当該レバー状部材の回動変位を検出する検出手段とを備えたものがある。レバー状部材は、用紙との非接触状態では、付勢手段の付勢力を受けて用紙搬送路に突出し、用紙の通過に伴って用紙と接触すると、回動して用紙搬送路から退避する。
【0004】
引用文献1には、レバー状部材に対して用紙搬送路の下流側から上流側に用紙が送られて来る場合、および上流側から下流側に送られて来る場合の、いずれの向きにも支障をきたすことのないよう、紙送り方向にのみ回動し得るよう枢支された主レバーの先端に、立位姿勢への自己復帰習性が付与され、且つ反紙送り方向にのみ回動し得る補助レバーを設けた紙検出装置が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平8−259037号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記引用文献1記載の紙検出装置によれば、いずれの向きの紙送りにも支障をきたすことがないので、例えば紙ジャム処理時にユーザが用紙を上流側から引き抜いた場合でも、レバー状部材を破損させるといった不具合を回避できる。
しかし当該紙検出装置においてレバー状部材は、主レバーと補助レバーの2体構造となっていることから、部品精度或いは組立精度の関係上、単一形態のレバー状部材に比べて用紙の通過を検出する際の検出精度が劣るとともに、上記のように紙ジャム処理時等に強い力が加えられると、破損し易いという欠点を有していた。
【0007】
一方で近年、ホームDPEと称されるが如く、銀塩写真並の超高画質印刷を家庭で容易に実現可能なインクジェットプリンタが一般に広く普及しており、そしてこの様なインクジェットプリンタにおいては、銀塩写真と同等な出力結果を得る為に印刷用紙の四辺に余白無しで印刷する所謂縁無し印刷を実行可能に構成されたものが主流となっている。
【0008】
縁無し印刷においては、用紙の端部から外れた領域にもインクを吐出することによって用紙端部に余白無く印刷を行うため、元の画像データの周縁が破棄されるという性質を有しており、従って縁無し印刷においては画像データの破棄量を極力少なくすること、即ち打ち捨てるインク量を少なくすることが望まれている。その為には用紙を高精度に位置決めする必要が生じるが、上記のように2体構造のレバー状部材であると、用紙を高精度に位置決めすることができない場合が生じてしまう。その一方で従来のように紙送り方向にのみ回動可能な単一形態のレバー状部材を用いると、紙ジャム処理時にユーザが用紙を上流側から引き抜いた場合に、レバー状部材を破損させるといった不具合を招く虞がある。
【0009】
そこで本発明はこの様な状況に鑑みなされたものであり、その課題は、単一形態のレバー状部材を用いて高精度に用紙の通過を検出可能であるとともに、ジャム処理時等に用紙が用紙搬送路の上流側から引き抜かれた場合でもレバー状部材を破損させることのない用紙検出装置を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様は、被記録媒体を搬送する搬送路に設けられるとともに、前記搬送路を遮るように配置されて搬送される被記録媒体と接触し、または、接触が解除されることによりその回動軸を中心に回動変位するレバー状部材と、前記レバー状部材の回動変位を検出する検出手段とを備えた被記録媒体検出装置であって、前記レバー状部材が、前記回動軸を中心に、前記搬送路の上流側方向及び下流側方向の双方向に回動可能に設けられているとともに、搬送される被記録媒体との接触が解除された状態における当該レバー状部材の姿勢を保持する姿勢保持手段を有していることを特徴とする。
【0011】
上記態様によれば、レバー状部材は、当該レバー状部材そのものが回動軸を中心に搬送路の上流側方向及び下流側方向の双方向に回動可能に設けられていることから、ジャム処理時にユーザが被記録媒体を前記搬送路の上流側から引き抜いた場合でも、レバー状部材がこれに従って上流側方向(本来の動作方向とは反対側の方向)に回動することができ、これによってレバー状部材に強い力が加わることによる当該レバー状部材の破損を防止することができる。また、レバー状部材そのものが回動軸を中心に上流側及び下流側の双方向に回動するので、レバー状部材を二体構造とすることで上流側及び下流側の双方向に回動可能に構成する場合のように、部品精度或いは組立精度の関係で被記録媒体の先端或いは後端の通過を検出する精度を低下させることがないとともに、強度の低下も防止することができる。
【0012】
更に、レバー状部材は上流側及び下流側の双方向に回動可能に設けられているが、搬送される被記録媒体との接触が解除された状態においては姿勢保持手段によってその姿勢が保持されるので、被記録媒体との接触が解除された状態であるにもかかわらず上流側方向或いは下流側方向に回動してしまうことを防止することができ、即ち誤検出を防止することができる。
【0013】
本発明の第2の態様は、上記第1の態様において、前記姿勢保持手段が、前記レバー状部材が前記搬送路の下流側方向へ回動する方向に前記レバー状部材を付勢する第1の付勢手段と、前記レバー状部材が前記搬送路の上流側方向へ回動する方向に前記レバー状部材を付勢する、前記第1の付勢手段より付勢力が大なる前記第2の付勢手段と、前記回動軸の軸線方向に移動可能に設けられた前記レバー状部材の回動面に形成された凹凸形状と係合可能に設けられるとともに、前記レバー状部材の前記搬送路の上流側方向への回動を規制し、且つ前記レバー状部材の前記搬送路の下流側方向への回動は許容する凹凸形状を備える規制部と、前記レバー状部材を前記規制部に向けて付勢する第3の付勢手段と、を備えて構成されていることを特徴とする。本態様によれば、前記姿勢保持手段が、前記第1乃至第3の付勢手段および前記規制部を備えて構成されていることから、前記姿勢保持手段を構造簡単にして且つ低コストに構成することができる。
【0014】
本発明の第3の態様は、被記録媒体に記録を行う記録ヘッドを備えた記録装置であって、被記録媒体を搬送する搬送路に、上記第1のまたは第2の態様に記載の前記被記録媒体検出装置を備えていることを特徴とする。本態様によれば、記録装置において上記第1のまたは第2の態様と同様な作用効果を得ることができる。
【0015】
本発明の第4の態様は、被噴射媒体に液体噴射を行う液体噴射ヘッドと、被噴射媒体を搬送する搬送路に設けられるとともに、前記搬送路を遮るように配置されて搬送される被噴射媒体と接触し、または、接触が解除されることによりその回動軸を中心に回動変位するレバー状部材及び、前記レバー状部材の回動変位を検出する検出手段を備えた被噴射媒体検出装置と、を備えた液体噴射装置であって、前記レバー状部材が、前記回動軸を中心に、前記搬送路の上流側方向及び下流側方向の双方向に回動可能に設けられているとともに、搬送される被噴射媒体との接触が解除された状態における当該レバー状部材の姿勢を保持する姿勢保持手段が設けられていることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について説明する。以下では先ず、本発明の一実施形態に係る「記録装置」、「液体噴射装置」の一例としてのインクジェットプリンタ(以下「プリンタ」と略称する)1の構成について図1を参照しながら概説する。ここで、図1はプリンタ1の用紙搬送路の側断面図である。尚、以下では用紙搬送路(副走査方向)の上流側(図1の右側)を単に「上流側」と言い、用紙搬送路の下流側(図1の左側)を単に「下流側」と言うこととする。
【0017】
プリンタ1は、装置後部に「被記録媒体」、「被噴射媒体」の一例としての記録用紙Pを傾斜姿勢で複数枚セット可能な給送装置2を備えている。給送装置2は、ホッパ10と、給送ローラ11と、アイドルローラ14と、摩擦分離材13と、戻しレバー12と、更に例示したこれら以外の種々の構成要素を備えている。ホッパ10は記録用紙Pを傾斜姿勢に支持するとともに、揺動支点10aを中心にカム機構(図示せず)によって揺動駆動され、給送ローラ11に記録用紙Pを圧接させる姿勢と、離間させる姿勢とを切換可能となっている。
【0018】
給送ローラ11は側面視略D形の形状を成し、外周にはゴム材が巻回され、図示しないモータによって用紙給送時にのみ選択的に回転駆動される。用紙給送時には、給送ローラ11はその円弧部分によって給送ローラ11に圧接した記録用紙Pの最上位のものを下流側へ給送し、用紙給送が終了すると、下流側の搬送駆動ローラ21による用紙搬送動作の際に搬送負荷を生じさせない様、図示する様に側面視略D形の形状における平坦部が摩擦分離材13と対向する様に駆動制御される。尚、符号14で示すローラは自由回転可能なアイドルローラであり、搬送中の記録用紙Pが給送ローラ11に接して搬送負荷を生じさせない様、搬送中の記録用紙Pと接して従動回転する。
【0019】
給送ローラ11と対向する位置には摩擦分離材13が設けられている。摩擦分離材13は用紙給送時に給送ローラ11の円弧部分と圧接して圧接点を形成し、これにより、給送されるべき最上位の記録用紙Pと、重送されようとする次位以降の記録用紙Pとを分離する。また、給送ローラ11と対向する位置には紙戻しレバー12が設けられている。紙戻しレバー12は揺動支点12aを中心に揺動可能に設けられ、給送ローラ11の1回転動作中に、図1に示す待機状態から記録用紙Pの給送経路を開放する様に一旦倒れ、そして再び図1に示す様に起き上がることにより、重送されようとした次位以降の記録用紙Pをホッパ10上に戻す。
【0020】
以上が給送装置2であり、給送装置2の下流側には、給送ローラ11と搬送駆動ローラ21との間に、「レバー状部材」としてのレバー15と、「検出手段」としての検出部16とを備えて構成された、「被記録媒体(被噴射媒体)検出装置」としての紙検出器17が設けられている。レバー15は回動軸15aを中心に、用紙搬送路を側視して時計回り方向および反時計回り方向に回動可能に設けられ、且つ、上部の接触端15bが、給送される記録用紙Pと接触可能に構成されている。
【0021】
レバー15の回動変位を検出する検出部16は光学センサであり、レバー15の回動軸15aから下側に延びる接触端15cが図示する様に検出部16に入り込むことにより、発光部から受光部へ向かう光が遮断され、記録用紙Pの未通過状態が検出される。そして、レバー15が、記録用紙Pの通過に伴って回動すると、接触端15cが検出部16から外れ、これにより、記録用紙P先端の通過を検出することができる様になっている。また、記録用紙P後端が通過すると、再び接触端15cが検出部16に入り込み、これにより、記録用紙P後端の通過を検出可能となる。尚、紙検出器17については後に詳述する。
【0022】
次に、紙検出器17の下流側には、搬送駆動ローラ21と搬送従動ローラ22とが設けられている(以下当該ローラ対を適宜「搬送ローラ」と言う)。搬送駆動ローラ21は図示しないモータによって回転駆動され、搬送従動ローラ22は、搬送駆動ローラ21に圧接して従動回転する。そして、給送ローラ11によって給送された記録用紙Pは当該搬送ローラにニップされ、インクジェット記録ヘッド(以下「記録ヘッド」と言う)26の下へと搬送される。
【0023】
搬送従動ローラ22を軸支する搬送従動ローラホルダ20の下流側端部には、自由回転可能なガイドローラ23が設けられている。ガイドローラ23は、記録用紙Pのプラテン28からの浮き上がりを防止する為のローラであり、これにより、記録用紙Pと記録ヘッド14との距離が一定に保たれ、記録品質の低下やヘッド擦れを防止する。
【0024】
次に、搬送ローラの下流側には、記録ヘッド26とプラテン28とが上下に対向する様に設けられている。記録ヘッド26はキャリッジ25の底部に設けられ、液体の一例としてのインク滴を記録用紙Pに向けて吐出(噴射)することにより、記録(印刷)を実行する。キャリッジ25は主走査方向に延びるキャリッジガイド板27によって主走査方向に案内されつつ、図示しないモータの動力によって主走査方向に駆動される。
【0025】
プラテン28は、記録用紙Pを下から支持することにより、記録用紙Pと記録ヘッド26との間のギャップを規定する。プラテン28において記録ヘッド26と対向する面には、凹部28aが形成されている。これは、記録用紙Pに余白無く印刷を行う為のものであり、記録用紙Pの端部にインク滴を吐出する際に、記録用紙P端部から外れた部分にもインク滴を吐出し、そして凹部28aへと打ち捨てることにより、所謂縁無し印刷が実行される。尚、凹部28aには、インク滴を吸収するインク吸収材29が配設されている。凹部28aに打ち捨てられたインク滴は図示しない排出孔から下部へ排出され、そしてプラテン28の下部には、この排出されたインク滴を受ける廃液トレイ30が設けられている。廃液トレイ30の内部には廃液吸収材31が設けられ、廃液トレイ30内のインク廃液を確実に保持する。
【0026】
記録ヘッド26の下流側には、第1排出駆動ローラ36と、第1排出従動ローラ37と、第2排出駆動ローラ38と、第2排出従動ローラ39とが設けられている。第1排出駆動ローラ36及び第2排出駆動ローラ38は図示しない駆動モータによって回転駆動され、第1排出従動ローラ37は、第1排出駆動ローラ36に接して従動回転する。そして、記録が行われた記録用紙Pは、第1排出駆動ローラ36と第1排出従動ローラ37とによってニップされることにより、図示しないスタッカへ向けて排出される。尚、第2排出駆動ローラ38及び第2排出従動ローラ39は、第1排出駆動ローラ36及び第1排出従動ローラ37から送り出された記録用紙Pの後端を、図示しないスタッカに向けて確実に落とす機能を果たす。
【0027】
以上がプリンタ1の大略構成であり、以下図2乃至図5を参照しながら紙検出器17について詳説する。ここで図2は紙検出器17の斜視図、図3は同側面図、図4及び図5は紙検出器17を下方から見た平面図であり、図4はレバー15が記録用紙Pと接触していない状態(立位姿勢にある状態)を、図5はレバー15が上流側方向に回動した状態を示している。
【0028】
図2及び図3に示すように、レバー15は、回動軸15aと、回動軸15aから上側の接触端15bと、回動軸15aから下側の被検出端15cと、「第1の付勢手段」としての引っ張りコイルばね40を掛止するばね掛止部15dと、「第2の付勢手段」としての引っ張りコイルばね41を掛止するばね掛止部15eと、が樹脂成形によって一体的に(単一体として)形成されて成る。
【0029】
回動軸15aは、用紙搬送路の下側に設けられた紙案内部材18(図1)に回動可能に軸支され、これによってレバー15そのものが、用紙搬送路を側視して上流側方向及び下流側方向の双方向に回動可能に軸支される(詳細は後述)。尚、レバー15が下流側方向に回動するとは、図3の符号15b’で示すように接触端15bが下流側方向に回動する(倒れる)場合のレバー15の回動を意味し、レバー15が上流側方向に回動するとは、図3の符号15b’’で示すように接触端15bが上流側方向に回動する(倒れる)場合のレバー15の回動を意味する。
【0030】
被検出端15cは、レバー15が記録用紙Pと接触しない状態において、回動軸15aからほぼ真っ直ぐ下に延び、その下端部が、レバー15が記録用紙Pと接触しない状態においては検出部16に入り込み、レバー15が記録用紙Pと接触して回動することにより、検出部16から外れる。
【0031】
ばね掛止部15d、15eはフック形状を成し、ばね掛止部15dは用紙搬送路の上流側(図3の右側)に、ばね掛止部15eは用紙搬送路の下流側(図3の左側)に形成されていて、それぞれ引っ張りコイルばね40、41の一端が掛止する。引っ張りコイルばね41、41の他端は図示しないばね掛止部に掛止し、これによってレバー15は、給送装置2から送られてくる記録用紙Pと接触して下流側に回動する場合(図3において符号15b’)には、引っ張りコイルばね41の付勢力に抗して回動することになる。
【0032】
また、紙ジャム処理時等に記録用紙Pが上流側から引き抜かれることで上流側に回動する場合(図3において符号15b’’)には、引っ張りコイルばね40の付勢力に抗して回動することになる。即ち、引っ張りコイルばね40は、レバー15が下流側方向へ回動する方向に当該レバー15を付勢し、引っ張りコイルばね41は、レバー15が上流側方向へ回動する方向に当該レバー15を付勢する。
【0033】
接触端15bは、図3に示すように給送装置2から送られてくる(上流側から下流側に進む)記録用紙Pの先端が当接する当接面Aと、記録用紙Pのうら面と接する接触面(平坦面)Bと、紙ジャム処理時等に上流側から引き抜かれる記録用紙Pの先端が当接する当接面Cとを備え、図示する様に略逆L字形の形状を成す様に形成されている。
【0034】
ここで、接触端15bは、図示するように回動軸15aから真っ直ぐに上方に延びるのではなく、一旦下流側に向けて斜め上方に延びた後に、ほぼ真っ直ぐ上方に延び、そしてその先端が下流側に向けて折れ曲がることで、略逆L字形の形状を成す様に形成されている。つまり、記録用紙Pとの非接触状態において、接触面Bが、回動軸15aに対して下流側に位置する様に形成されているので、レバー15の揺動角度を小さく抑えることができ、レバー15の配置スペースを小さくすることができる。
【0035】
また、当接面Aが、用紙搬送路をほぼ垂直に横切る様に設けられていることから、記録用紙Pの先端が当接面Aのどの部分に当接しても、レバー15は殆ど同じタイミングで回動し、従って記録用紙P先端の通過タイミングにばらつきが生じることがなく、記録用紙Pの通過を正確に検出することができる。
【0036】
更に、記録用紙Pの後端が搬送駆動ローラ21(図1)の上流側近傍に到達した状態では、記録用紙Pの後端が上方に反り返る様な状態となるので、この様な状態の記録用紙P後端に、接触端15bが下から接触し、しかも引っ張りコイルばね41の付勢力によって記録用紙P後端を上方に持ち上げる様な力を記録用紙P後端に付与することから、接触端15bが記録用紙P後端から外れ易い状態となっている。しかし、接触端15bの頂部が、平坦面から成る接触面Bによって成されているので、記録用紙Pと面接触することにより、レバー15の状態が安定し、記録用紙P後端が通過する際にも、不適切な位置で接触端15bが外れることがなく、記録用紙P後端の通過を正確に検出することができる。
【0037】
加えて、接触端15bは、その先端が下流側を向くような略逆L字形の形状に形成されている為、記録用紙Pへ与える力の成分がより一層用紙搬送路と直交する方向に向かい、これによって接触端15bが更に記録用紙P後端から外れ難くなり、この様な作用効果により、記録用紙P後端の通過をより一層正確に検出することが可能となる。
更に加えて、本実施形態においては、レバー15を用紙搬送路の下から上に突出する様に設けていることから、接触端15bは記録用紙Pのうら面と接触し、これにより、記録面にダメージを与えることがない。
【0038】
続いてレバー15を立位姿勢(図3に示す姿勢)に保持する姿勢保持手段17について説明する。図4及び図5に示すように、レバー15の回動軸15aには、レバー15を挟むようにストッパ46と規制部45とが配設されている。このストッパ46と規制部45は、回動軸15aが軸通するとともに、レバー15が回動しても、これにつられて回動しないように図示しないフレーム部材に固定的に設けられている。
【0039】
ストッパ46と規制部45との間においてレバー15は回動軸15aの軸線方向(図4及び図5の左右方向)に移動可能となっており、更にストッパ46とレバー15との間には圧縮バネ42が設けられて、これによってレバー15の回動面Dが規制部45に圧接するように設けられている。
【0040】
レバー15において回動面Dには「凹凸形状」としての段部15fが形成されていて、規制部45において回動面Dと対向する側には、段部15fとちょうど嵌合する「凹凸形状」としての段部45aが形成されている。段部15fと段部45aの嵌合形状は、レバー15の上流側方向への回動を規制し、且つ下流側方向への回動は許容するような凹凸形状であり、即ちレバー15が下流側方向へ回動する場合にはレバー15は規制部45から規制力を受けないが、レバー15が上流側方向へ回動する場合には、図5に示すように圧縮ばね42の付勢力に抗して段部15fが段部45aの斜面を乗り越える必要があるので、レバー15は上流側方向への回動に際して規制部45から規制(所定の力)を受ける様になっている。
【0041】
尚、引っ張りコイルばね41の付勢力は、引っ張りコイルばね40の付勢力よりも大なるように設定されており、これによって図4に示すような段部15fと段部45aとの嵌合状態が保持される、即ちレバー15の立位姿勢が保持されるようになっている。以上により、引っ張りコイルばね40、41と、圧縮ばね42と、規制部45は、レバー15の姿勢を保持する姿勢保持手段47を構成する。
【0042】
以上のように構成された紙検出器17においては、上述の通りレバー15は回動軸15aを中心に用紙搬送路の上流側方向及び下流側方向の双方向に回動可能に設けられていることから、ジャム処理時にユーザが記録用紙Pを上流側から引き抜いた場合でも、レバー15がこれに従って上流側方向(本来の動作方向とは反対側の方向)に回動することができ、これによってレバー15に強い力が加わることによる当該レバー15の破損を防止することができる。
【0043】
また、レバー15そのものが回動軸15aを中心に上流側及び下流側の双方向に回動するので、レバー15を二体構造とすることで上流側及び下流側の双方向に回動可能に構成する場合のように、部品精度或いは組立精度の関係で記録用紙Pの先端或いは後端の通過を検出する精度を低下させることがないとともに、強度の低下も防止することができる。特に、記録用紙Pを高精度に位置決めすることができることで、記録用紙Pの始端や終端に縁無し印刷を行う場合にあっては、始端や終端の画像の破棄量を極めて少なくすることができる。
【0044】
更に、レバー15は上流側及び下流側の双方向に回動可能に設けられているが、搬送される記録用紙Pとの接触が解除された状態においては姿勢保持手段47によってその姿勢が保持されるので、上流側或いは下流側のいずれの方向に回動した場合にも図3に示す立位姿勢に復帰することとなり、記録用紙Pとの接触が解除された状態であるにもかかわらず上流側方向或いは下流側方向に回動してしまうことを防止することができ、即ち記録用紙Pの先端或いは後端の通過を誤検出することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係るプリンタの用紙搬送路の側断面図。
【図2】本発明に係る紙検出器の斜視図。
【図3】本発明に係る紙検出器の側面図
【図4】本発明に係る紙検出器を下から見た平面図。
【図5】本発明に係る紙検出器を下から見た平面図。
【符号の説明】
【0046】
1 インクジェットプリンタ、2 給送装置、10 ホッパ、11 給送ローラ、12 紙戻しレバー、13 摩擦分離材、14 アイドルローラ、15 レバー、15a 回動軸、15b 接触端、15c 被検出端、15d、15e ばね掛止部、15f 段部、16 検出部、17 紙検出器、20 搬送従動ローラホルダ、21 搬送駆動ローラ、22 搬送従動ローラ、23 ガイドローラ、25 キャリッジ、26 記録ヘッド、27 キャリッジガイド板、28 プラテン、29 インク吸収材、30 廃液トレイ、31 廃液吸収材、33 フレーム、36 第1排出駆動ローラ、37 第1排出従動ローラ、38 第2排出駆動ローラ、39 第2排出従動ローラ、40、41 引っ張りコイルばね、42 圧縮ばね、45 規制部、45a 段部、46 ストッパ、P 記録用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体を搬送する搬送路に設けられるとともに、前記搬送路を遮るように配置されて搬送される被記録媒体と接触し、または、接触が解除されることによりその回動軸を中心に回動変位するレバー状部材と、前記レバー状部材の回動変位を検出する検出手段とを備えた被記録媒体検出装置であって、
前記レバー状部材が、前記回動軸を中心に、前記搬送路の上流側方向及び下流側方向の双方向に回動可能に設けられているとともに、搬送される被記録媒体との接触が解除された状態における当該レバー状部材の姿勢を保持する姿勢保持手段を有している、
ことを特徴とする被記録媒体検出装置。
【請求項2】
請求項1において、前記姿勢保持手段が、前記レバー状部材が前記搬送路の下流側方向へ回動する方向に前記レバー状部材を付勢する第1の付勢手段と、
前記レバー状部材が前記搬送路の上流側方向へ回動する方向に前記レバー状部材を付勢する、前記第1の付勢手段より付勢力が大なる前記第2の付勢手段と、
前記回動軸の軸線方向に移動可能に設けられた前記レバー状部材の回動面に形成された凹凸形状と係合可能に設けられるとともに、前記レバー状部材の前記搬送路の上流側方向への回動を規制し、且つ前記レバー状部材の前記搬送路の下流側方向への回動は許容する凹凸形状を有する規制部と、
前記レバー状部材を前記規制部に向けて付勢する第3の付勢手段と、を備えて構成されている、
ことを特徴とする被記録媒体検出装置。
【請求項3】
被記録媒体に記録を行う記録ヘッドを備えた記録装置であって、被記録媒体を搬送する搬送路に、請求項1または2に記載の前記被記録媒体検出装置を備えている、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項4】
被噴射媒体に液体噴射を行う液体噴射ヘッドと、
被噴射媒体を搬送する搬送路に設けられるとともに、前記搬送路を遮るように配置されて搬送される被噴射媒体と接触し、または、接触が解除されることによりその回動軸を中心に回動変位するレバー状部材及び、前記レバー状部材の回動変位を検出する検出手段を備えた被噴射媒体検出装置と、を備えた液体噴射装置であって、
前記レバー状部材が、前記回動軸を中心に、前記搬送路の上流側方向及び下流側方向の双方向に回動可能に設けられているとともに、搬送される被噴射媒体との接触が解除された状態における当該レバー状部材の姿勢を保持する姿勢保持手段が設けられている、
ことを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−273486(P2006−273486A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−93832(P2005−93832)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】