説明

装置間ケーブルの誤接続検出方法及び装置

【課題】通信路が二重化されたシステムにおいて、装置間ケーブルの誤接続を正確かつ容易に検出する。
【解決手段】診断元の装置(演算装置100)が、二重化された通信路105a,106aの片方ずつへ通信先の各装置(入出力装置103)宛のテストフレームを送出し、次に、通信先の各装置(入出力装置103)が、二重化された通信路の双方から同一のテストフレームを受信しないことを検出して、通信路の異常を通知する応答フレームを、二重化された通信路105b,106bの双方を介して診断元の装置(演算装置100)に返送する。最後に、診断元の装置(演算装置100)が、両方の通信路へ送出したテストフレームに対しても、二重化された通信路の双方から同一の応答フレームを受信し、かつ当該応答フレームにて所期の異常が通知された場合に、当該通信先の装置(入出力装置103)への通信路を構成する装置間ケーブルの接続は正常であると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置間でデータの授受を行うための通信路が二重化されたシステムにおいて、装置間ケーブルの誤接続を検出するための誤接続検出方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラント制御等に用いられる制御システムにおいては、制御装置と被制御装置との間を接続する装置間ケーブルを介して、制御に関する通信(以下、「制御通信」という。)が行われる。この制御通信には一般に高い信頼性が要求されるため、装置間を接続する通信路を冗長化することによって信頼性を向上させる方式が多く採用されている。通信路の冗長化の方式としては、例えば特許文献1に記載の方式がある。この方式では、冗長化した複数の通信路に同一のタイミングで同一データを送信する方式を採用している。また、特許文献2には、ケーブル誤接続を検出するための従来技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−43680号公報
【特許文献2】特開2005−231229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これら制御通信に用いられる通信回線は一般的にシリアル回線であり、制御装置と被制御装置との間をそれぞれ異なる通信ケーブルである装置間ケーブルにて接続する必要がある。プラント制御等に用いられる制御システムでは、大規模なものでは百台以上の装置構成となることも多く、制御通信を行うための装置間ケーブルの敷設並びに接続作業工数は莫大なものとなる。また、特許文献1の方式のように、制御通信の信頼性を向上させるために例えば回線を二重化した場合、配線数は2倍となる。
【0005】
また、これら制御通信においては、プラント等の制御を正確かつ安全に運用するために、当然ながら装置間ケーブルの誤接続は許されず、装置間ケーブルの敷設並びに接続作業後には誤接続の有無を確認するための接続確認作業が必須である。しかし、従来の接続確認作業は、作業員による全装置間ケーブルの目視確認によって行われており、作業工数が非常に大きくなってしまうという課題があった。また、作業員による目視確認時のヒューマンエラーによって、誤接続箇所が見落とされる可能性もあった。
【0006】
さらに、特許文献2に開示されている装置間が1対1接続されていることを前提とした従来の誤接続検出の技術は、通信路が二重化されたシステムには適用することができない。
【0007】
本発明は、これら従来技術の課題を解決するためになされたものであり、通信路が二重化されたシステムにおいて、装置間ケーブルの誤接続を正確かつ容易に検出するための誤接続検出方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本発明は、通信路が二重化されたシステムにおける装置間ケーブルの誤接続を検出する手順として、まず、診断元の装置が、二重化された通信路のそれぞれについて、その一方へ通信先の各装置宛に送信する診断用通信フレームを送出し、次に、通信先の各装置が、二重化された通信路の双方から同一の診断用通信フレームを所定時間差内で受信しない場合に、当該診断用通信フレームを受信しなかった側の通信路の異常を通知する応答フレームを、二重化された通信路の双方を介して診断元の装置に返送し、最後に、診断元の装置が、一方の通信路へ送出したいずれの診断用通信フレームに対しても、所定時間内に二重化された通信路の双方から同一の応答フレームを受信し、かつ、当該応答フレームにて診断用通信フレームを送出しなかった側の通信路の異常が通知された場合に、当該通信先の装置への二重化された通信路を構成する装置間ケーブルの接続は正常であると判定する構成を備えるものとした。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、通信路が二重化されたシステムにおいて、装置間ケーブルの誤接続を正確かつ容易に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る制御システムの構成例を示すブロック図である。
【図2】ケーブル誤接続診断プログラムのフローチャートである。
【図3】中継装置におけるテストフレーム受信処理のフローチャートである。
【図4】入出力装置におけるアンサーバック機能のフローチャートである。
【図5】ケーブル誤接続診断に用いる通信フレームの構成及びデータ例である。
【図6】演算装置における異常検出動作についての説明図である。
【図7】誤接続判定処理のフローチャートである。
【図8】誤接続判定に用いる照合データの構成及びデータ例である。
【図9】演算装置−中継装置間の誤接続時に格納される通信データ例である。
【図10】中継装置−入出力装置間の誤接続時に格納される通信データ例である。
【図11】演算装置−中継装置間が誤接続されている制御システムの例である。
【図12】中継装置−入出力装置間が誤接続されている制御システムの例である。
【図13】拡張構成の制御システムにおける誤接続の例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を、プラント等の制御システムを例にとり、適宜図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る制御システムの構成例を示すブロック図である。図1に示すように、制御システム10は、プラント等を構成する各種の被制御装置である制御対象104と、制御対象104の制御を行う演算装置100と、制御対象104の制御に必要な制御信号の入出力を行う入出力装置103と、演算装置100と入出力装置103との間の通信データの中継を行う2台の中継装置(第一回線中継装置101、第二回線中継装置102)とを備えて構成されている。演算装置100から見て接続段数1段目に第一回線中継装置101と第二回線中継装置102とが接続され、接続段数2段目に入出力装置103が接続されている。
【0013】
演算装置100と入出力装置103との間の通信路は、第一回線105a及び105bを経由するルートと、第二回線106a及び106bを経由するルートとに二重化されており、制御通信は、送信元の装置からそれら2つのルートに同時に同じ通信データを送出し、受信先の装置はそれら2つのルートから同じ通信データを受信することによって、行われる。これにより、通信データの信頼度が向上し、仮に一方のルートに障害等が発生しても運転を継続できる構成となっている。
【0014】
演算装置100は、不図示のCPU(Central Processing Unit)を備える制御演算部107と、通信制御部108と、メモリ109とを備えるコンピュータによって構成され、制御演算部107が不図示の演算装置制御プログラムを実行することによってその機能が具現化される。入出力装置103は、不図示のCPU及び入出力インタフェースを備える入出力制御部115と、通信制御部114と備えるコンピュータによって構成され、入出力制御部115が不図示の入出力装置制御プログラムを実行することによってその機能が具現化される。第一回線中継装置101及び第二回線中継装置102は、不図示の中継装置制御プログラムを実行する通信制御部112または113を備えるコンピュータによって構成される。
【0015】
以下では、演算装置100が診断元の装置となり、その通信先の装置である入出力装置103との間を接続する装置間ケーブル105a,105b,106a,106bの誤接続を診断する場合について説明する。
【0016】
図2は、制御システム10の起動時などに診断元の装置(演算装置100)によって実行されるケーブル誤接続診断プログラムのフローチャートである。以下、図2のフローチャートに沿って装置間ケーブルの誤接続を診断する動作を説明する。
【0017】
ケーブル誤接続診断プログラムが起動されると、演算装置100は、まず、ステップS201にて、入出力装置103にアンサーバック機能ONを要求する。これは、入出力装置103宛のアンサーバック機能のONを要求する制御データを、第一回線105a及び第二回線106aの双方へ送出し、第一回線中継装置101及び第二回線中継装置102が当該制御データを入出力装置103へ中継することによって行われる。この制御データを受信した入出力装置103は、回線異常の有無を演算装置100に対して応答するアンサーバック機能をONにする(詳細は図4を用いて後記する)。
【0018】
次に、演算装置100は、ステップS202にて、第一回線へのテストデータの送信を実行する。すなわち、演算装置100は、片系通信により、第一回線中継装置101宛のテストデータを第一回線105aへ送出する。そののち、第一回線中継装置101からの応答を待ち、所定時間内に応答を受信した場合は(ステップS203で「Yes」)、次に、ステップS204にて、受信した応答に通信ステータスが含まれていればそれを取得し、ステップS205にて、応答を受信したことを示す通信データ(「validフラグ=1」)を、第一回線中継装置101の診断データとしてメモリ109に格納する。また、所定時間内に応答を受信できなかった場合は(ステップS203で「No」)、次に、ステップS206にて、応答を受信できなかったことを示す通信データ(「validフラグ=0」)を、第一回線中継装置101の診断データとしてメモリ109に格納する。
【0019】
次に、演算装置100は、ステップS207にて、第一回線105a,105bに接続される全装置に対してテストデータを送信済みか否かを判定し、ここでまだ入出力装置103への送信を実行していない場合は(ステップS207で「No」)、再び、ステップS202に処理を戻して、今度は入出力装置103宛のテストデータを第一回線105aへ送出する。そののち、前記と同様に、入出力装置103からの応答を所定時間内に受信した場合は、受信した応答から取得した通信ステータス(正常時は「validフラグ=1」、「第一回線異常=0」、「第二回線異常=1」)を、所定時間内に応答を受信できなかった場合は、応答を受信できなかったことを示す通信データ(「validフラグ=0」)を、入出力装置103の第一回線送信時の診断データとしてメモリ109に格納する(詳細は図6を用いて後記する。)。
【0020】
また、ステップS207の判定で、第一回線105a,105bに接続される全装置に対してテストデータを送信済みである場合は(ステップS207で「Yes」)、第一回線側へのテストデータの送信を終了し、次に、ステップS208〜ステップS213にて、第二回線側について、同様なテストデータの送信と通信データのメモリ109への格納とを行う。それにより、第二回線中継装置102との通信の成否を示す通信データ(正常時は「validフラグ=1」)と、入出力装置103との通信の成否及び回線異常を示す第二回線送信時の通信データ(正常時は「validフラグ=1」、「第一回線異常=1」、「第二回線異常=0」)がメモリ109に格納される。
【0021】
ここで、各装置間で交信されるデータのフォーマットについて説明する。図5(a)は、データの交信単位となる通信フレームの基本的な構造を示すものである。図5(a)に示すように、通信フレームFは、例えば、それぞれが8ビットデータであるTN(送信元アドレス)、RN(受信先アドレス)、C(フレーム種別)、L(データ長)と、L個の16ビットデータであるDATA(1),DATA(2),・・・,DATA(L)(ただし、データ長が0のときは存在しない。)と、16ビットのCRC(CRC(Cyclic Redundancy Check)用データ)とから構成される。
【0022】
TN(送信元アドレス)は、この通信フレームFの送信元装置の通信アドレスを示すものであり、例えば8ビットであれば最大256個の装置を識別することができる。同様に、RN(受信先アドレス)は、この通信フレームFの受信先(宛先)装置の通信アドレスを示すものである。以下、便宜的に、TN[=演算装置]やRN[=第一回線中継装置]などの表記は、該当する装置の通信アドレスを表すものとする。
【0023】
C(フレーム種別)は、この通信フレームFの種別を示す識別子であり、以下、便宜的に、C[=テスト]はテストデータを送信するためのテストフレーム、C[=正常応答]は正常応答データを送信するための正常応答フレーム、C[=異常応答]は異常応答データを送信するための異常応答フレームを表すものとする。前記のアンサーバック機能をONにする要求を送信するための制御データなども含めて、例えば8ビットであれば最大256種類のフレーム種別を識別することができる。
【0024】
L(データ長)は、この通信フレームFに含まれるDATAの個数を示す。以下、便宜的に、L[=0]はDATAが存在しないことを、L[=1]やL[=2]などは、付加されているDATAの個数がそれぞれ1や2などであることを表すものとする。
【0025】
DATA(データ)は、この通信フレームFに含まれるデータであり、フレーム種別に応じて0または複数個のデータが付加される。以下、便宜的に、DATA[=通信ステータス]などの表記は、付加されているデータが通信ステータスを示すデータなどであることを表すものとする。
【0026】
CRC(CRC用データ)は、この通信フレームF全体のデータ誤りを検出するために付される検査用のデータである。
【0027】
また、図5(b)は、演算装置100から第一回線中継装置101宛にテストデータを送信するときのテストフレームF1のデータ例であり、図5(c)は、第二回線中継装置102から演算装置100宛に正常応答データを送信するときの正常応答フレームF2のデータ例であり、図5(d)は、入出力装置103から演算装置100宛に異常応答データを送信するときの異常応答フレームF3のデータ例である。図5(e)は、通信ステータスSTのデータフォーマットを示すものであり、V(validフラグ)は、正しいデータを受信したことを示すフラグ、E1(第一回線異常)は、第一回線の異常を検出したことを示すフラグ、E2(第二回線異常)は、第二回線の異常を検出したことを示すフラグである。
【0028】
図3は、第一回線中継装置101及び第二回線中継装置102におけるテストフレーム受信処理のフローチャートである。第一回線中継装置101及び第二回線中継装置102は、それぞれスイッチ等によって設定される固有の通信アドレスを有しており、自宛のテストフレームに対してのみ応答する。図3に示すように、第一回線中継装置101及び第二回線中継装置102のテストフレーム受信処理では、通信制御部112または113が自宛のテストフレームを受信するまで待機し(ステップS301で「未受信」)、自宛のテストフレームを正常受信すると(ステップS301で「正常受信」)、次に、ステップS302にて、演算装置100宛の正常応答フレームを自身が接続されている第一回線105aまたは第二回線106aへ送出して処理を終了する。
【0029】
図4は、入出力装置103におけるアンサーバック機能のフローチャートである。演算装置100からアンサーバック機能のONを要求する制御データを、第一回線105bまたは第二回線106bのいずれかを介して受信すると、このアンサーバック機能が起動され、入出力装置103は、演算装置100から送信される各通信フレームに対して回線異常の有無を応答するように動作する。
【0030】
アンサーバック機能が起動されると、まず、ステップS401にて、入出力装置103の通信制御部114が自宛の通信フレームを受信するまで待機し(ステップS401で「未受信」)、第一回線105bまたは第二回線106bを介して自宛の通信フレームを正常受信すると(ステップS401で「第一回線または第二回線にて正常受信」)、次に、ステップS402にて、所定時間差内でもう一方の回線からも同一内容の通信フレームを受信して両回線正常受信完了したか否かを判定する。
【0031】
所定時間差内で両回線から同一内容の通信フレームを受信した場合は(ステップS402で「Yes」)、次に、ステップS405にて正常応答フレームを生成したのち、ステップS406にて、第一回線105b及び第二回線106bの両回線へ正常応答フレームを送出して処理を終了する。また、所定時間差内でもう一方の回線から同一内容の通信フレームを受信しなかった場合は(ステップS402で「No」)、次に、ステップS403にて異常検出部117が当該もう一方の回線の異常を検出し、ステップS404にて通信ステータスに当該検出した回線異常を反映させた異常応答フレームを生成したのち、ステップS406にて、第一回線105b及び第二回線106bの両回線へ異常応答フレームを送出して処理を終了する。
【0032】
前記のように、ケーブル誤接続診断時においては、演算装置100から第一回線105aと第二回線106aとのいずれか一方にテストフレームが送出されるため、ステップS402の判定では両回線正常受信完了とならず(ステップS402で「No」)、次のステップS403にて、テストフレームが送出されなかった側の回線の異常が検出され、検出された回線異常が異常応答フレームによって演算装置100に通知されることになる。
【0033】
なお、ケーブル誤接続診断時に異常検出部117において回線異常を検出する機能は、装置間の二重化された通信路において回線異常を検出するために備えられる機能をそのまま流用することによって実現することができる。
【0034】
続いて、ケーブル誤接続診断時に前記した各装置から応答フレームを受信したとき、または受信しなかったときの、演算装置100による通信データのメモリ109への格納処理につき図6を用いて説明する。
【0035】
演算装置100の通信制御部108は、通信データ制御部110と異常検出部111とを備える。異常検出部111は、入出力装置103の異常検出部117と同様に、第一回線105aまたは第二回線106aのいずれかを介して自宛の通信フレームを正常受信すると、所定時間差内でもう一方の回線からも同一内容の通信フレームを受信するのを待つ。所定時間差内で両回線から同一内容の通信フレームを受信した場合は、回線異常がないことを示す「0」の信号を、通信データ制御部110が備える第一回線OR回路205及び第二回線OR回路206へ出力する。また、所定時間差内でもう一方の回線から同一内容の通信フレームを受信しなかった場合は、当該もう一方の回線の異常を検出し、異常を検出した回線側のOR回路205または206へ、回線異常を検出したことを示す「1」の信号を出力する。
【0036】
また、入出力装置103へ送信したテストフレームに対して、所定時間内に両回線から同一内容の異常応答フレームを受信した場合には、受信フレームデコード部200が、受信した異常応答フレームの通信ステータスから入出力装置103が異常を検出した回線の情報(図5(e)参照)を読み出し、異常を検出した回線側のOR回路205または206へ、回線異常を検出したことを示す「1」の信号を出力する。
【0037】
第一回線OR回路205及び第二回線OR回路206は、異常検出部111と受信フレームデコード部200との2つの出力信号の論理和をとることにより、それぞれの回線の異常が検出されたことを示す「1」を、メモリ109の当該診断対象装置の通信アドレスに対応付けられた通信データのなかの第一回線異常203または第二回線異常204の各ビットへ格納する。また、validフラグ202へは、応答を受信したことを示す「1」を格納する。
【0038】
一方、入出力装置103に送信したテストフレームに対して、所定時間内にいずれの回線からも異常応答フレームを受信しなかった場合には、メモリ109の当該診断対象装置の通信アドレスに対応付けられた通信データのなかのvalidフラグ202へ、応答を受信しなかったことを示す「0」を格納する。
【0039】
なお、メモリ109に格納される通信データの記憶領域は、第一回線送信時用と第二回線送信時用との2つ領域に区分されており、第一回線送信時に格納される第一回線中継装置101及び入出力装置103の通信データは第一回線送信時用の領域に、第二回線送信時に格納される第二回線中継装置102及び入出力装置103の通信データは第二回線送信時用の領域にそれぞれ格納される。
【0040】
図7は、診断元の装置(演算装置100)が、前記のケーブル誤接続診断プログラムによって取得した通信データを用いて装置間ケーブルの誤接続を判定する、誤接続判定処理のフローチャートである。以下、図7のフローチャートに沿って誤接続の判定動作を説明する。
【0041】
演算装置100は、前記のケーブル誤接続診断プログラムによって、制御システム10に接続されているすべての中継装置及び入出力装置についての通信データを取得してメモリ109へ格納したのちに、図7の誤接続判定処理を起動する。
【0042】
誤接続判定処理では、まず、ステップS701にて、接続段数が最も少ない装置から順に照合対象を設定する。例えば、図1の制御システム10の場合は、接続段数1段目の第一回線中継装置101及び第二回線中継装置102のあとに、入出力装置103が照合対象に設定される。
【0043】
次に、ステップS702にて、通信データを格納したメモリ109から設定した照合対象の通信データを読み出して所期の照合データとの照合を行う。図8は、演算装置100の記憶部に予め保持される照合データであり、装置間ケーブルが正しく接続されている場合にケーブル誤接続診断プログラムを実行したときに、中継装置101,102及び入出力装置103について取得される正しい通信データのパターンである。
【0044】
図8(a)は、中継装置用照合データV1のパターンであり、第一回線送信時には、第一回線中継装置101の通信データのvalidフラグが「1」となり、第二回線送信時には、第二回線中継装置102の通信データのvalidフラグが「1」となるべきことを表している。また、図8(b)は、入出力装置用照合データV2のパターンであり、第一回線送信時には、入出力装置103の通信データのvalidフラグが「1」、第一回線異常が「0」、第二回線異常が「1」となり、第二回線送信時にはvalidフラグが「1」、第一回線異常が「1」、第二回線異常が「0」となるべきことを表している。
【0045】
次に、ステップS703にて、演算装置100は、照合結果を判定し、メモリ109から読み出した照合対象装置の通信データが、図8の照合データと一致する場合は(ステップS703で「一致(正常接続)」)、当該装置への装置間ケーブルの接続は正常と判定し、次のステップS704にて全装置が照合済みでなければ(ステップS704で「No」)、ステップS701に処理を戻して次の照合対象を設定して同様の処理を繰り返す。また、ステップS704にて全装置が照合済みであれば(ステップS704で「Yes」)、次に、ステップS705にて、すべての装置間ケーブルは正常接続されている旨を報告して処理を終了する。
【0046】
また、ステップS703にて照合結果が不一致の場合は(ステップS703で「不一致(誤接続)」)、次に、ステップS706にて、当該照合対象装置との間を接続する装置間ケーブルが誤接続となっている旨を報告して処理を終了する。
【0047】
[誤接続診断例1]
続いて、図11に例示するような演算装置−中継装置間が誤接続されている制御システム10Aにおけるケーブル誤接続診断の動作例について説明する。
【0048】
ここでは、図11の誤接続発生箇所Eにて示すように、本来は演算装置100と第一回線中継装置101との間を接続すべき第一回線105aが第二回線中継装置102に誤接続され、本来は第二回線中継装置102に接続されるべき第二回線106aが第一回線中継装置101に誤接続されているものとする。
【0049】
この場合、図2のケーブル誤接続診断プログラムを実行すると、第一回線送信時に演算装置100から第一回線中継装置101宛に送信するテストフレームは、第一回線105aを介して第二回線中継装置102へ送信されることとなり、第二回線中継装置102は自宛の通信フレームではないので応答フレームを返送しない。そこで、演算装置100は、所定時間内に応答が受信されないので、図9の中継装置の通信データD1の1行目に示すように、第一回線中継装置101の通信データのvalidフラグ202へ、応答を受信しなかったことを示す「0」を格納する。同様に、第二回線送信時には、通信データD1の2行目に示すように、第二回線中継装置102の通信データのvalidフラグ202に「0」が格納される。
【0050】
その結果、図7の誤接続判定処理において、メモリ109から読み出した第一回線中継装置101の通信データが、図8(a)の中継装置用照合データV1の1行目と不一致となり、演算装置100と第一回線中継装置101との間を接続する第一回線105aが誤接続である旨が報告される。このように、図11に例示したような演算装置−中継装置間の装置間ケーブルの誤接続が発生した場合であっても、誤接続箇所を正しく検出することができる。
【0051】
[誤接続診断例2]
同様に、図12に例示するような中継装置−入出力装置間が誤接続されている制御システム10Bにおけるケーブル誤接続診断の動作例について説明する。
【0052】
ここでは、図12の誤接続発生箇所Eにて示すように、本来は第一回線中継装置101と入出力装置103の第一回線側とを接続すべき第一回線105bが入出力装置103の第二回線側に誤接続され、本来は第二回線中継装置102と入出力装置103の第二回線側とを接続すべき第二回線106bが入出力装置103の第一回線側に誤接続されているものとする。
【0053】
この場合、図2のケーブル誤接続診断プログラムを実行すると、第一回線送信時に演算装置100から第一回線105aを介して入出力装置103宛に送信するテストフレームは、第一回線105bを介して入出力装置103の第二回線側へ送信されることとなり、入出力装置103は、第二回線側からしかテストフレームが受信されないので、第一回線の異常を検出してその旨を示す異常応答フレームを演算装置100宛送信する。そこで、演算装置100は、図10の入出力装置の通信データD2の1行目に示すように、入出力装置103に対応する第一回線送信時の通信データのなかの第一回線異常203のビットへ、回線の異常を検出したことを示す「1」を格納する。同様に、第二回線送信時には、通信データD2の2行目に示すように、第二回線異常204のビットに「1」が格納される。
【0054】
その結果、図7の誤接続判定処理において、メモリ109から読み出した入出力装置103に対応する第一回線送信時の通信データが、図8(b)の入出力装置用照合データV2の1行目と不一致となり、処理順序により第一回線105aはすでに正常接続と判定されているので、第一回線中継装置101と入出力装置103との間を接続する第一回線105bが誤接続である旨が報告される。このように、図12に例示したような中継装置−入出力装置間の装置間ケーブルの誤接続が発生した場合であっても、誤接続箇所を正しく検出することができる。
【0055】
[誤接続診断例3]
続いて、中継装置が2段に接続された拡張構成の制御システムにおけるケーブル誤接続診断の動作について説明する。ここでは、図13に例示するような2段目の中継装置101b,102bと入出力装置103bとの間を接続する第一回線105dと第二回線106dとの両者が相互に誤接続されている制御システム10Cにおけるケーブル誤接続診断の動作例を説明する。
【0056】
図13に示すように、拡張構成の制御システム10Cでは、第一回線中継装置101a及び101bと第二回線中継装置102a及び102bとによって、中継装置がそれぞれ2段に接続されており、接続段数2段目の中継装置101b及び102bにそれぞれ2台の入出力装置103a及び103bが接続されている。演算装置100と入出力装置103aとの間の通信路は、第一回線105a,105b及び105cを経由するルートと、第二回線106a及び106b及び106cを経由するルートとに二重化されており、演算装置100と入出力装置103bとの間の通信路は、第一回線105a,105b及び105dを経由するルートと、第二回線106a及び106b及び106dを経由するルートとに二重化されている。ただし、本来は第一回線中継装置101bと入出力装置103bの第一回線側とを接続すべき第一回線105dが入出力装置103bの第二回線側に誤接続され、本来は第二回線中継装置102bと入出力装置103bの第二回線側とを接続すべき第二回線106dが入出力装置103bの第一回線側に誤接続されているものとする。
【0057】
この場合、図2のケーブル誤接続診断プログラムを実行すると、第一回線送信時に演算装置100から第一回線105aを介して入出力装置103b宛に送信するテストフレームは、第一回線105dを介して入出力装置103bの第二回線側に送信されることとなり、入出力装置103bは、第二回線側からしかテストフレームが受信されないので、第一回線の異常を検出してその旨を示す異常応答フレームを演算装置100宛送信する。そこで、演算装置100は、図10の入出力装置の通信データD2の1行目に示すように、入出力装置103bに対応する第一回線送信時の通信データのなかの第一回線異常203のビットへ、回線の異常を検出したことを示す「1」を格納する。同様に、第二回線送信時には、通信データD2の2行目に示すように、第二回線異常204のビットに「1」が格納される。入出力装置103bを除いた他の中継装置101a,101b,102a,102b及び入出力装置103aについては、正常動作を表す所期の通信データがメモリ109に格納される。
【0058】
その結果、図7の誤接続判定処理において、メモリ109から読み出した入出力装置103bに対応する第一回線送信時の通信データが、図8(b)の入出力装置用照合データV2の1行目と不一致となり、処理順序により第一回線105a及び105bはすでに正常接続と判定されているので、第一回線中継装置101bと入出力装置103bとの間を接続する第一回線105dが誤接続である旨が報告される。
【0059】
なお、図13のような拡張構成において、演算装置100と1段目の中継装置101a,102aとを接続する第一回線105aと106aとが相互に誤接続となっている場合の診断動作は、図11を用いて前記した誤接続診断例1と同様である。また、1段目の中継装置101a,102aと2段目の中継装置101b,102bとを接続する第一回線105bと第二回線106bと相互に誤接続となっている場合には、1段目の中継装置101a,102aに対応する通信データが正常動作を示し、2段目の中継装置101b,102b宛のテストフレームに対する応答が受信されなくなることから、前記した誤接続診断例1と同様な動作によって、第一回線105bが誤接続である旨が報告される。
【0060】
また、図13では中継装置が2段に接続される場合について説明したが、中継装置の接続段数は3段以上であってもよいし、中継装置間をツリー上に分岐接続することによって多数の入出力装置を接続するようにした構成であってもよい。つまり、本実施形態によれば、中継装置が多段接続された拡張構成の制御システムにおいて装置間ケーブルの誤接続が発生した場合であっても、誤接続箇所を正しく検出することができる。
【0061】
以上説明したように、本実施形態によれば、通信路が二重化されたシステムにおいて、作業ミス等によって装置間ケーブルの誤接続が発生した場合であっても、システムの稼動に先立って装置間ケーブルの誤接続を正確かつ容易に検出することができる。また、中継装置が多段接続されるシステムにおいては、接続段数の最も少ない装置から順に接続の正常性を判定していくことにより、誤接続の発生箇所を最小範囲で特定できるので、中継装置が多段接続される大規模なシステムにも本発明を適用することができる。
【0062】
以上にて、本発明を実施するための形態の説明を終えるが、本発明の実施の態様はこれに限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において各種変更が可能である。
【符号の説明】
【0063】
10,10A,10B,10C 制御システム
100 演算装置(診断元の装置、誤接続検出装置)
101,101a,101b 第一回線中継装置(中継装置)
102,102a,102b 第二回線中継装置(中継装置)
103,103a,103b 入出力装置(通信先の装置)
104 制御対象(被制御装置)
105a,105b,105c,105d 第一回線(装置間ケーブル)
106a,106b,106c,106d 第二回線(装置間ケーブル)
107 制御演算部(判定手段)
108 通信制御部(送出手段)
109 メモリ(記憶部)
110,116,116a,116b 通信データ制御部
111,117,117a,117b 異常検出部
112,112a,112b,113,113a,113b 通信制御部
114,114a,114b 通信制御部
115,115a,115b 入出力制御部
200 受信フレームデコード部
205,206 OR回路
D1 中継装置の通信データ(診断データ)
D2 入出力装置の通信データ(診断データ)
E 誤接続発生箇所
F 通信フレーム
F1 テストフレーム(診断用通信フレーム)
F2 正常応答フレーム
F3 異常応答フレーム(通信路の異常を通知する応答フレーム)
ST 通信ステータス
V1 中継装置用照合データ(照合データ)
V2 入出力装置用照合データ(照合データ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信路が二重化されたシステムにおける装置間ケーブルの誤接続検出方法であって、
診断元の装置は、二重化された前記通信路のそれぞれについて、その一方へ通信先の各装置宛に送信する診断用通信フレームを送出し、
前記通信先の各装置は、前記二重化された前記通信路の双方から同一の前記診断用通信フレームを所定時間差内で受信しない場合に、当該診断用通信フレームを受信しなかった側の前記通信路の異常を通知する応答フレームを、前記二重化された前記通信路の双方を介して前記診断元の装置に返送し、
前記診断元の装置は、一方の前記通信路へ送出したいずれの前記診断用通信フレームに対しても、所定時間内に前記二重化された前記通信路の双方から同一の前記応答フレームを受信し、かつ、当該応答フレームにて前記診断用通信フレームを送出しなかった側の前記通信路の異常が通知された場合に、当該通信先の装置への前記二重化された前記通信路を構成する装置間ケーブルの接続は正常であると判定する
ことを特徴とする装置間ケーブルの誤接続検出方法。
【請求項2】
請求項1に記載の装置間ケーブルの誤接続検出方法において、
前記診断元の装置は、前記二重化された前記通信路を構成する装置間ケーブルの接続が正常である場合に、送信した前記診断用通信フレームに対して前記通信先の各装置から返送されるべき応答フレームのデータパターンを照合データとして記憶部に記憶しており、
前記診断元の装置は、前記通信先の各装置宛に送信した前記診断用通信フレームに対して、前記所定時間内に前記二重化された前記通信路の双方からの同一の前記応答フレームの受信に成功しなかった場合、及び、前記所定時間内に前記二重化された前記通信路の双方から受信した同一の前記応答フレームのデータが前記照合データと一致しない場合に、当該通信先の装置への前記二重化された前記通信路を構成する装置間ケーブルが誤接続されていると判定する
ことを特徴とする装置間ケーブルの誤接続検出方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の装置間ケーブルの誤接続検出方法において、
前記二重化された前記通信路のそれぞれは、前記診断元の装置と前記通信先の各装置との間で交信される通信フレームを中継する1台以上の中継装置を含んで構成されており、
前記診断元の装置は、各前記中継装置宛に診断用通信フレームを個別に送信し、前記中継装置宛に送信したそれぞれの前記診断用通信フレームに対して、所定時間内に正常受信を示す応答フレームを受信しなかった場合は、当該中継装置への通信路を構成する装置間ケーブルが誤接続されていると判定する
ことを特徴とする装置間ケーブルの誤接続検出方法。
【請求項4】
請求項3に記載の装置間ケーブルの誤接続検出方法において、
前記診断元の装置は、自身からの接続段数が少ない順に、前記中継装置宛の前記診断用通信フレームを送信する
ことを特徴とする装置間ケーブルの誤接続検出方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の装置間ケーブルの誤接続検出方法において、
前記診断元の装置は、前記診断用通信フレームを送信した送信先の前記各装置からの応答の有無、及び、当該各装置から受信した前記応答フレームに含まれる前記通信路の異常を通知する情報からなる診断データを記憶部に格納して保持させる
ことを特徴とする装置間ケーブルの誤接続検出方法。
【請求項6】
通信路が二重化されたシステムにおける装置間ケーブルの誤接続検出装置であって、
二重化された前記通信路のそれぞれについて、その一方へ通信先の各装置宛に送信する診断用通信フレームを送出する送出手段と、
前記通信路へ送出したいずれの前記診断用通信フレームに対しても、当該通信先の装置から返送される同一の応答フレームを所定時間内に前記二重化された前記通信路の双方から受信し、かつ、当該応答フレームにて前記診断用通信フレームを送出しなかった側の前記通信路の異常が通知された場合に、当該通信先の装置への前記二重化された前記通信路を構成する装置間ケーブルの接続は正常であると判定する判定手段と
を備えることを特徴とする装置間ケーブルの誤接続検出装置。
【請求項7】
請求項6に記載の装置間ケーブルの誤接続検出装置において、
前記二重化された前記通信路を構成する装置間ケーブルの接続が正常である場合に、送信した前記診断用通信フレームに対して前記通信先の各装置から返送されるべき応答フレームのデータパターンを照合データとして記憶する記憶部を備え、
前記判定手段は、前記通信先の各装置宛に送信した前記診断用通信フレームに対して、前記所定時間内に前記二重化された前記通信路の双方からの同一の前記応答フレームの受信に成功しなかった場合、及び、前記所定時間内に前記二重化された前記通信路の双方から受信した同一の前記応答フレームのデータが前記照合データと一致しない場合に、当該通信先の装置への前記二重化された前記通信路を構成する前記装置間ケーブルが誤接続されていると判定する
ことを特徴とする装置間ケーブルの誤接続検出装置。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の装置間ケーブルの誤接続検出装置において、
前記二重化された前記通信路のそれぞれは、前記誤接続検出装置と前記通信先の各装置との間で交信される通信フレームを中継する1台以上の中継装置を含んで構成されており、
前記送出手段は、各前記中継装置宛に診断用通信フレームを個別に送信し、
前記判定手段は、前記中継装置宛に送信したそれぞれの前記診断用通信フレームに対して、所定時間内に正常受信を示す応答フレームを受信しなかった場合は、当該中継装置への通信路を構成する装置間ケーブルが誤接続されていると判定する
ことを特徴とする装置間ケーブルの誤接続検出装置。
【請求項9】
請求項8に記載の装置間ケーブルの誤接続検出装置において、
前記送出手段は、自身からの接続段数が少ない順に、前記中継装置宛の前記診断用通信フレームを送信する
ことを特徴とする装置間ケーブルの誤接続検出装置。
【請求項10】
請求項6から請求項9のいずれか一項に記載の装置間ケーブルの誤接続検出装置において、
前記判定手段は、前記診断用通信フレームを送信した送信先の前記各装置からの応答の有無、及び、当該各装置から受信した応答フレームに含まれる前記通信路の異常を通知する情報からなる診断データを記憶部に格納して保持させる
ことを特徴とする装置間ケーブルの誤接続検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−235335(P2012−235335A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102967(P2011−102967)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】