説明

装置間距離判定システム、無線端末装置、プログラム及び記憶媒体

【課題】簡単な構成で、少なくとも2種類の境界において無線端末装置間距離の境界判定を行う。
【解決手段】無線端末装置10の送信部12がN(N≧2)種類の送信電力の無線信号を送信する。無線端末装置20は受信部22で無線信号を受信し、その距離判定部24が、何種類の送信電力の無線信号が無線端末装置の受信部22に受信されたかを判定することにより、無線端末装置10と無線端末装置20との間の距離を判定し、その判定結果に基づき、本体部25の或る機能をロックしたり、本体部25に警告情報を出力させたりする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信技術に関し、特に、無線端末装置間の距離判定を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話・PCなどの端末装置の置き忘れ、盗難に対応する仕組みとして、これらの起動時に暗証番号や指紋などを入力させ、認証処理を行う仕組みが普及している。しかし、このような仕組みでは、既に起動された端末装置の置き忘れ・盗難などの場合に、第三者がそれを不正に利用できてしまうという問題点がある。起動時以外にも端末装置から一定の時間間隔で定期的に暗証番号認証や指紋認証を要求するというやり方も存在するが、実際に使っている最中に暗証番号や指紋を入力する必要が生じ、利便性が悪く、あまり実用的ではない。また、このような方式を実行したとしても、端末装置から暗証番号認証や指紋認証を要求されるまでの間に、そこからデータが盗まれたり、その設定を変更されたりするというリスクも存在する。
【0003】
近年になり、上記問題を解決する技術として、「あんしんキー(登録商標)」というシステムが実用化された(例えば、特許文献1,非特許文献1参照)。このシステムは、無線通信機能を具備する携帯電話・PCなどの無線端末装置に適用可能な技術であり、このような無線端末装置と対になる別の無線端末装置(利用制限解除信号送出ユニット「あんしんキー」)を利用し、上記問題を解決する。以下にこのシステムの概要を示す。
利用制限解除信号送出ユニットは、無線端末装置に対して一定の間隔で使用制限解除信号を送信する。利用制限解除信号送出ユニットと無線端末装置との距離が近い場合、無線端末装置はこの使用制限解除信号を一定の間隔で受信でき、使用可能な状態を維持する。一方、利用制限解除信号送出ユニットと無線端末装置との距離が離れ、無線端末装置が使用制解除信号を受信できない期間が一定時間継続すると、無線端末装置は自身を自動的にロックする。また、ロック後に利用制限解除信号送出ユニットと無線端末装置との距離が再び近くなり、無線端末装置が使用制解除信号を受信できるようになると、無線端末装置は自動的に自身のロックを解除する。そして、利用者が、利用制限解除信号送出ユニットを鞄に、携帯電話・PCなどの無線端末装置をポケットに入れるなどの運用を行うことにより、利用制限解除信号送出ユニットと無線端末装置を一緒に紛失しない限りは、セキィリティが担保できる。
【特許文献1】特開平9−233542
【非特許文献1】”あんしんキー”、[online]、NTTドコモ、 [平成20年1月29日検索]、インターネット<http://www.nttdocomo.co.jp/service/anshin/anshinkey/index.html>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、「あんしんキー」の実際の運用にあたっては、携帯電話・PCなどの無線端末装置と利用制限解除信号送出ユニットを一緒に携帯して持ち運ぶ(同じポケットに入れたり、同じ鞄の中に入れる、同一のキーホルダーに付ける等)場合が多く、一緒に置き忘れたり、盗難にあったりする例が非常に多い。
例えば、企業が従業員に「あんしんキー」を使って、モバイル通信のセキュリティを確保しようとした場合、携帯電話・PCなどの無線端末装置と「あんしんキー」のような利用制限解除信号送出ユニットとを持ち運ぶ際に、それらをいかに一緒に携帯させないようにするかが重要な課題となっていた。
【0005】
本課題を解決する方法として、携帯電話・PCなどの無線端末装置とあんしんキーのような利用制限解除信号送出ユニットとが一定の距離以下に接近すると、無線端末装置もしくは、利用制限解除信号送出ユニットが何らかの手段によって、これらが接近していることを利用者に伝えるといった方法が考えられる。これにより、利用者はこれらを別々に所有して持ち運ぶようになり、これらを一緒に紛失する危険性が下がる。
このような方法を実現するためには、無線端末装置と利用制限解除信号送出ユニットとが離れすぎた場合と近づきすぎた場合の両方を検出しなければならず、少なくとも2種類の境界において装置間距離の境界判定を行わなければならない。これを一般的な技術で実現する場合、無線端末装置が受信した使用制限解除信号の電界強度を測定し、その測定値に基づいて装置間距離を推定し、装置間距離の境界判定を行うことになる。しかし、この場合には、使用制限解除信号の電界強度を測定する機能を無線端末装置に設けなければならず、無線端末装置の構成が複雑になってしまう。このような問題は「あんしんキー」を用いたシステムに限らず、少なくとも2種類の境界において2つの無線端末装置間距離の境界判定を行う必要があるシステムに共通するものである。
【0006】
本発明は、このような問題を鑑みてなされたものであり、簡単な構成で、少なくとも2種類の境界において無線端末装置間距離の境界判定を行うことが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では上記課題を解決するために、N(N≧2)種類の送信電力の無線信号を送信する送信部を有する第1無線端末装置と、無線信号を受信する受信部を有する第2無線端末装置と、を有し、第1無線端末装置及び第2無線端末装置の少なくとも一方は、何種類の送信電力の無線信号が第2無線端末装置の受信部に受信されたかを判定することにより、第1無線端末装置と第2無線端末装置との間の距離を判定する距離判定部をさらに有する装置間距離判定システムが提供される。なお、本発明における「送信電力」とは、無線信号が送信部から出力された時点における当該無線信号の電力(無線信号の強さ)を意味する。
【0008】
ここで、第1無線端末装置はN(N≧2)種類の送信電力の無線信号を送信する。送信された無線信号は空中伝搬過程で減衰し、第2無線端末装置に到達する。第1無線端末装置から第2無線端末装置までの距離が同じであっても、第1無線端末装置での送信電力が大きければ、送信電力が小さい場合と比較して、第2無線端末装置で受信される無線信号の強さ(一般的には、電界強度や電力密度といった概念で表現される。)は強くなり、受信回路で正確に受信できる確率が高くなる。本発明は、これを利用し、第1無線端末装置から送信されたN(N≧2)種類の送信電力の無線信号のうち、何種類の送信電力の無線信号が第2無線端末装置の受信部で受信されたと判定されたかを判定指標として、少なくとも2種類の境界において装置間距離の境界判定を行う。
【0009】
また、本発明では、受信電力の電界強度を測定するための複雑な機能を追加することなく、通信装置が通常具備する機能を本発明独自の方法によって利用し、無線端末装置間の距離判定を行っている。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明では、簡単な構成で、少なくとも2種類の境界において無線端末装置間距離の境界判定を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。
〔第1実施形態〕
まず、本発明の第1実施形態について説明する。
第1実施形態は、N(N≧2)種類の送信電力の無線信号を送信する送信部を有する第1無線端末装置と、無線信号を受信する受信部を有する第2無線端末装置とを有し、第2無線端末装置が、何種類の送信電力の無線信号が上記第2無線端末装置の受信部に受信されたかを判定することにより、第1無線端末装置と第2無線端末装置との間の距離を判定する距離判定部を有する形態である。
【0012】
<原理>
まず、N=2の場合を例にとって第1実施形態の原理を説明する。
図1は、N=2の場合における第1実施形態の原理を説明するための概念図である。
図1(a)は、第1無線端末装置と第2無線端末装置との間の距離が或る第1距離以下である状態を示し、図1(b)は、この距離が第1距離よりも大きく或る第2距離以下である状態を示し、図1(c)は、この距離が第2距離よりも大きい状態を示す。
図1(a)に示す状態では、第1無線端末装置の送信部から送信された2種類の送信電力の無線信号(強い信号及び弱い信号)の何れもが、第2無線端末装置に到達した時点で十分な強さを持つため、これらの無線信号は何れも第2無線端末装置の受信部に受信されたと判定される。第2無線端末装置は、この2種類の送信電力の無線信号が第2無線端末装置の受信部に受信されたという判定結果をもって、第1無線端末装置と第2無線端末装置との間の距離が或る第1距離以下であると判定する。なお、本形態の「無線信号が第2無線端末装置の受信部に受信された」とは、無線信号に含まれる情報が第2無線端末装置で再現可能な状態で第2無線端末装置の受信部で受信されたことを意味する。ここで、再現可能とは、誤り訂正なしに再現可能な概念、及び、誤り訂正を行うことによって再現可能な概念の両方を含む。
【0013】
図1(b)に示す状態では、第1無線端末装置の送信部から送信された2種類の送信電力の無線信号のうち、強い送信電力の無線信号(強い信号)は第2無線端末装置に到達した時点で十分な強さを持つが、弱い送信電力の無線信号(弱い信号)は第2無線端末装置に到達した時点で十分な強さを持たない。この場合、強い信号は第2無線端末装置の受信部に受信されたと判定されるが、弱い信号は第2無線端末装置の受信部に受信されたと判定されない。第2無線端末装置は、この1種類の送信電力の無線信号が第2無線端末装置の受信部に受信されたという判定結果をもって、第1無線端末装置と第2無線端末装置との間の距離が第1距離よりも大きく第2距離以下であると判定する。
【0014】
図1(c)に示す状態では、第1無線端末装置の送信部から送信された2種類の送信電力の無線信号がいずれも第2無線端末装置に到達した時点で十分な強さを持たず、これらの無線信号は何れも第2無線端末装置の受信部に受信されたと判定されない。第2無線端末装置は、無線信号が第2無線端末装置の受信部に受信されない(0種類の送信電力の無線信号が第2無線端末装置の受信部に受信された)という判定結果をもって、第1無線端末装置と第2無線端末装置との間の距離が第2距離よりも大きいと判定する。
なお、図1では、N=2とし、第1距離及び第2距離の2つの境界において装置間距離の境界判定を行う原理を示したが、本発明はこれに限定されない。一般的には、第1無線端末装置がN(N≧2)種類の送信電力の無線信号を送信し、第2無線端末装置が何種類の送信電力の無線信号が第2無線端末装置の受信部に受信されたかを判定して装置間距離を判定する場合、第2無線端末装置は、N個の境界において装置間距離の境界判定を行うことができる。また、第1無線端末装置から送信される無線信号は、使用制限解除信号として機能してもよいし、利用許可信号として機能してもよい。
【実施例1】
【0015】
次に、第1実施形態の一実施例である実施例1を説明する。
実施例1では、第1無線端末装置の送信部が、一定の時間内の送信数が送信電力毎に固定された無線信号をそれぞれ異なる時刻に送信する。そして、第2無線端末装置の距離判定部は、一定の時間内に第2無線端末装置の受信部で受信されたと判定された無線信号の数に基づき、何種類の送信電力の無線信号が第2無線端末装置の受信部に受信されたかを判定する。以下、実施例1を詳細に説明する。
<構成>
図2は、第1実施形態の一実施例である実施例1の装置間距離推定システム1の構成を例示したブロック図である。また、図3は、図2の無線端末装置10の構成を例示したブロック図であり、図4は図2の無線端末装置20の構成を例示したブロック図である。
【0016】
図2に示すように、本実施例の装置間距離推定システム1は、無線端末装置10(「第1無線端末装置」に相当)と無線端末装置20(「第2無線端末装置」に相当)とを有する。
図2に示すように、本実施例の無線端末装置10は、識別符号のデジタル信号を出力する信号作成部11と、識別符号をもとに生成した無線信号をN(N≧2)種類の送信電力で送信する送信部12と、送信された無線信号を空中に放出するアンテナ13とを有する。図3に示すように、信号作成部11は、識別符号を格納する識別符号レジスタ11aと、識別符号のデジタル信号を発生する識別符号発生回路11bを有し、送信部12は、変調回路12aと、VCO(voltage controlled oscillator)やPLL(Phase-locked loop)回路等からなる周波数シンセサイザ回路12bと、パワーアンプ12cと、パワーアンプ12cの出力を制御する出力制御回路12dとを有する。
【0017】
また、図2に示すように、本実施例の無線端末装置20は、アンテナ21,26と、無線信号を受信する受信部22と、何種類の送信電力の無線信号が受信部22に受信されたかを判定することにより、無線端末装置10と無線端末装置20との間の距離を判定する距離判定部23と、距離判定部23の判定結果に基づき指示信号を生成する指示信号生成部24と、携帯電話やPDA(Personal Digital Assistant)等の移動体通信端末装置である本体部25を有する。図4に示すように、受信部22は、低ノイズアンプ22aと、ミキサ22bと、周波数シンセサイザ回路22cと、復調回路22dとを有する。また、距離判定部23は、識別符号を格納する識別符号レジスタ23aと、比較部23c,23gと、カウンタ23eと、所定の閾値を格納する閾値レジスタ23fとを有する。また、本体部25は、アンテナ共用器25aと、低ノイズアンプ25bと、ミキサ25cと、復調回路25dと、パワーアンプ25eと、変調回路25fと、周波数シンセサイザ25gと、ベースバンド処理回路25jと、ROM(Read Only Memory)25kと、RAM(Random Access Memory)25mと、汎用的な処理を行う処理部25nと、本体部25の少なくとも一部の機能をロックさせるロック制御部25pと、入出力制御を行う入出力制御部25qと、ナンバーキーやカメラ等の入力デバイスとそれらの駆動回路等とからなる入力部25rと、スピーカとその駆動回路等とからなるスピーカ部25sと、表示パネルや発光ダイオード等とその駆動回路等からなる表示部25tと、モーターとその駆動回路等からなるバイブレータ部25uとを有する。なお、スピーカ部25sと表示部25tとバイブレータ部25uとは、出力部に相当する。
【0018】
なお、処理部25n、ロック制御部25p、入出力制御部25q及び指示信号生成部24は、CPUに所定のプログラムが読み込まれて構成される処理部であってもよいし、集積回路などのハードウェアによって構成されてもよい。また、無線端末装置10と無線端末装置20との間の通信には、例えば、ブルートゥース(Bluetooth)や無線LANに代表される近距離無線通信の技術を用いることができる。その仕様に関しては主に米国に本部を持つ電気・電子技術の学会である、IEEE(アイトリプルイー、The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.)などで標準化が進められ、広く普及している(例えば、http://www.ieee.org/portal/site等参照)。
【0019】
<処理>
次に、本実施例の装置間距離判定処理について説明する。なお、以下の前提として、無線端末装置10の識別符号レジスタ11aと無線端末装置20の識別符号レジスタ23aとに、同一のデジタルビット列である識別符号が格納されているものとする。なお、この識別符号は、各無線端末装置10と無線端末装置20との対に対して固有のものであってもよいし、固有のものでなくてもよい。
[無線端末装置10の処理]
装置間距離判定システム1が起動すると、制御回路(図示せず)が、一定の規則(この規則を規則Aと呼ぶ)に従って、識別符号レジスタ11aに読み出し信号を入力する。識別符号レジスタ11aは、読み出し信号が入力されるたびに識別符号を識別符号発生回路11bに出力する。識別符号発生回路11bは、入力された識別符号にその開始位置を特定するための情報等を付加したデジタル信号を生成し、それを変調回路12aに出力する。変調回路12aには、さらに周波数シンセサイザ回路12bからの発信信号が入力され、変調回路12aは、識別符号に対応する例えば2.4GHz帯の変調信号を生成して出力する。変調回路12aから出力された変調信号はパワーアンプ12cに入力される。パワーアンプ12cの出力電力は、出力制御回路12dによってN(N≧2)種類に制御される(この制御規則を規則Bと呼ぶ)。これにより、各変調信号はN(N≧2)種類の送信電力の何れかで増幅され、アンテナ13に出力され、そこから放射される。これにより、N(N≧2)種類の送信電力の無線信号が送信される。また、本実施例の送信部21は、一定時間内の無線信号の送信数を送信電力毎に固定し、それぞれ異なる時刻に送信する。以下、このような無線信号を送信するための規則A,Bを例示する。
【0020】
≪規則例1≫
規則A:読み出し信号が識別符号レジスタ11aに一定間隔τで入力される。これにより、識別符号レジスタ11aは、識別符号を一定間隔τで出力する。
規則B:出力制御回路12dは、一定間隔τで入力される変調信号が交互に2種類の出力電力で増幅されるように、パワーアンプ12cの出力電力を交互に2種類に切り替える。これにより、送信部12は、2種類の送信電力の無線信号を交互に一定間隔τで送信する。
【0021】
≪規則例2≫
規則A:読み出し信号が識別符号レジスタ11aに一定間隔τで入力される。これにより、識別符号レジスタ11aは、識別符号を一定間隔τで出力する。
規則B:出力制御回路12dは、一定間隔τで連続して入力されるα(α≧2)個の変調信号がそれぞれ出力電力βで増幅され、その次に入力される1個の変調信号が出力電力γ(β≦γ)で増幅される処理が繰り返されるように、パワーアンプ12cの出力電力を一定の順序で2種類に切り替える。これにより、送信部12は、第1送信電力の無線信号をα(α≧2)個送信した後、第2送信電力(>第1送信電力)の無線信号を1個送信する処理を繰り返す。このように送信電力が小さい方の無線信号の送信頻度を送信電力が大きい方の無線信号よりも上げることにより、消費電力を低減できる。
【0022】
≪規則例3≫
規則A:読み出し信号が識別符号レジスタ11aに一定間隔τで入力される。これにより、識別符号レジスタ11aは、識別符号を一定間隔τで出力する。
規則B:出力制御回路12dは、一定間隔τで入力される変調信号が順次3種類の出力電力で増幅されるように、パワーアンプ12cの出力電力を一定の順序で3種類に切り替える。送信部12は、3種類の送信電力の無線信号を一定順序及び一定間隔τで送信する。
【0023】
≪規則例4≫
規則A:読み出し信号が識別符号レジスタ11aに、ランダムな間隔で一定期間内にα(αは2以上の固定値)個入力される。これにより、識別符号レジスタ11aは、識別符号をランダムな間隔で一定期間内にα個出力する。
規則B:出力制御回路12dは、一定期間内にα個入力される変調信号がそれぞれ順次3種類の出力電力で増幅されるように、パワーアンプ12cの出力電力を一定の順序で3種類に切り替える。送信部12は、3種類の送信電力の無線信号を一定順序で送信する)。
【0024】
[無線端末装置20の処理]
無線端末装置20は、アンテナ21で無線信号を受波し、低ノイズアンプ22aに送る。低ノイズアンプ22aは、その無線信号を増幅してミキサ22bに送る。ミキサ22bは周波数シンセサイザ回路22cから出力された発信信号を用い、無線信号を数MHz程度の中間周波数信号に変換し、復調回路22dに出力する。復調回路22dはその信号を復調し、その復調信号を比較部23cに送る。これをトリガに、制御回路(図示せず)が識別符号レジスタ23aに読み出し信号を入力し、識別符号レジスタ23aは識別符号を比較部23cに出力する。比較部23cは、入力された復調信号から識別符号を取り出し、取り出した識別符号と、識別符号レジスタ23aから入力された識別符号とを比較し、それらが一致するか否かを判定する。そして、比較部23cは、それらが一致すれば値1をカウンタ23eに出力し、一致しなければ値0をカウンタ23eに出力する。ここで、無線端末装置10から送信された無線信号が十分な受信電力で無線端末装置20に受信されていたならば、復調信号から正確に識別符号を取り出されるため、比較部23cの出力は値1となる。一方、無線端末装置10から送信された無線信号が十分な受信電力で無線端末装置20に受信されていなかったならば、復調信号から正確に識別符号を取り出せないため、比較部23cの出力は値0となる。
【0025】
カウンタ23eは、値1が入力された場合にのみカウントアップを行い、そのカウント値を格納する。また、カウンタ23eは、一定の時間が経過する毎にそのカウント値を比較部23gに送信する。なお、この時点でのカウント値が、「一定の時間内に無線端末装置20の受信部22で受信されたと判定された無線信号の数」に相当する。カウンタ23eは、カウント値を比較部23gに出力した後、カウント値を0にリセットする。
また、カウント値の出力をトリガに、制御回路(図示せず)が閾値レジスタ23fに読み出し信号を入力し、閾値レジスタ23fは閾値を比較部23gに出力する。比較部23gは、入力されたカウント値と閾値とを比較し、無線端末装置10から送信された何種類の送信電力の無線信号が無線端末装置20の受信部22に受信されたかを判定する。前述のように無線端末装置10は、一定の時間内の送信数が送信電力毎に固定された無線信号を、それぞれ異なる時刻に送信する。そのため、一定の時間内に無線端末装置20の受信部22で受信されたと判定された無線信号の数、すなわちカウント値と、閾値とを比較することによって、無線端末装置10から送信された何種類の送信電力の無線信号が無線端末装置20の受信部22に受信されたかを判定できる。そして、その判定結果は、無線端末装置10と無線端末装置20との装置間距離の判定結果にも相当する(図1参照)。
【0026】
以下、この判定内容を上述の規則例1〜4について例示する。
≪規則例1の場合≫
例えば、無線端末装置10が、カウンタ23eがリセットされるまでの一定の時間内(例えば1分間)に2種類の送信電力の無線信号を交互にそれぞれ5個送信していたとする。無線端末装置20の受信部22がこれらを正しく受信できていたならば(図1(a)参照)、理想的にはカウンタ23eから出力されるカウント値は10となる。また、無線端末装置20の受信部22が送信電力の大きな無線信号のみを正しく受信していたならば(図1(b)参照)、理想的にはカウンタ23eから出力されるカウント値は5となる。無線端末装置20の受信部22が何れの無線信号も正しく受信できていなかったならば(図1(c)参照)、理想的にはカウンタ23eから出力されるカウント値は0となる。実際には環境の影響等によってカウント値に誤差が生じるが、各装置間距離に対応する理想的なカウント値に所定のマージンを設定した値を閾値とすることによって装置間距離の判定ができる。上記の例では、例えば、8と2の2つの値を閾値とし、比較部23gは、2つの閾値とカウント値との比較結果を出力する。この場合、例えば、カウント値が8以上であることが、2種類の送信電力の無線信号が無線端末装置20の受信部22に受信されたことの判定結果に相当し、カウント値が2以上8未満であることが、1種類の送信電力の無線信号が無線端末装置20の受信部22に受信されたことの判定結果に相当し、カウント値が2未満であることが、0種類の送信電力の無線信号が無線端末装置20の受信部22に受信されたこと(何れの無線信号も受信されていないこと)の判定結果に相当する。
【0027】
≪規則例2の場合≫
例えば、無線端末装置10が、カウンタ23eがリセットされるまでの一定の時間内(例えば1分間)に強い送信電力の無線信号を2回送信し、弱い送信電力の無線信号を10回送信していたとする。
この場合、例えば、5と1の2つの値を閾値とし、比較部23gは、2つの閾値とカウント値との比較結果を出力する。そして、例えば、カウント値が5以上であることが、2種類の送信電力の無線信号が無線端末装置20の受信部22に受信されたことの判定結果に相当し、カウント値が1以上5未満であることが、1種類の送信電力の無線信号が無線端末装置20の受信部22に受信されたことの判定結果に相当し、カウント値が1未満であることが、0種類の送信電力の無線信号が無線端末装置20の受信部22に受信されたこと(何れの無線信号も受信されていないこと)の判定結果に相当する。
【0028】
≪規則例3,4の場合≫
例えば、無線端末装置10が、カウンタ23eがリセットされるまでの一定の時間内(例えば1分間)に最も強い送信電力の無線信号を2回送信し、中間の送信電力の無線信号を5回送信し、最も弱い送信電力の無線信号を10回送信していたとする。
この場合、例えば、10と5と1の3つの値を閾値とし、比較部23gは、3つの閾値とカウント値との比較結果を出力する。そして、例えば、カウント値が10以上であることが、3種類の送信電力の無線信号が無線端末装置20の受信部22に受信されたことの判定結果に相当し、カウント値が5以上10未満であることが、2種類の送信電力の無線信号が無線端末装置20の受信部22に受信されたことの判定結果に相当し、カウント値が1未満であることが、0種類の送信電力の無線信号が無線端末装置20の受信部22に受信されたことの判定結果に相当する(判定内容の例示の説明終わり)。
比較部23gから出力された比較結果は指示信号生成部24に入力され、指示信号生成部24は、入力された比較結果を用いて指示信号を生成して出力する。指示信号とは、本体部25に対する指示内容を示す信号である。以下、指示信号の具体例を説明する。
【0029】
≪指示信号の具体例1≫
この例の指示信号生成部24は、比較部23gから出力された比較結果が「M(N≧M≧2, Mは固定値)種類以上の送信電力の無線信号が無線端末装置20の受信部22に受信されたとの判定結果」に相当する場合、無線端末装置20が具備する本体部25の或る機能をロックさせる指示信号を生成して出力する。例えば、N=2,M=2の場合、指示信号生成部24は、比較部23gから出力された比較結果が「2種類の送信電力の無線信号が無線端末装置20の受信部22に受信されたとの判定結果(≪規則例1の場合≫の例ではカウント値が8以上である旨の判定結果)」に相当する場合、本体部25の或る機能をロックさせる指示信号を生成して出力する。
【0030】
なお、この場合の本体部25の或る機能をロックさせる指示信号は、暗証番号等の秘密情報の入力なしでは解除できないロックを実行させる旨の指示を含んでいてもよい。
また、指示信号生成部24が、本体部25の或る機能をロックさせる指示信号を複数回生成・出力することとしてもよい。例えば、1回目に上記の条件を具備した場合、本体部25の第1機能をロックさせる第1指示信号が生成・出力され、当該第1指示信号の生成・出力から一定時間経過後も上記の条件を具備していた場合、本体部25の第2機能をロックさせる第2指示信号が生成・出力されてもよい。或いは、1回目に上記の条件を具備した場合、本体部25の或る機能に対して秘密情報の入力なしに解除可能なロックを実行させる第1指示信号が生成・出力され、当該第1指示信号の生成・出力から一定時間経過後も上記の条件を具備していた場合、当該機能に対して秘密情報の入力なしに解除できないロックを実行させる第2指示信号が生成・出力されてもよい。また、例えば、N=3とし、比較部23gから出力された比較結果が「2種類の送信電力の無線信号が無線端末装置20の受信部22に受信されたとの判定結果」に相当する場合、本体部25の第1機能をロックさせる第1指示信号が生成・出力され、比較部23gから出力された比較結果が「3種類の送信電力の無線信号が無線端末装置20の受信部22に受信されたとの判定結果」に相当する場合、本体部25の第2機能をロックさせる第2指示信号が生成・出力されてもよい。
【0031】
また、比較部23gから出力された比較結果が、M種類以上の送信電力の無線信号が無線端末装置20の受信部22に受信されたとの判定結果に相当し、さらに別の条件を満たしたときに、本体部25の或る機能をロックさせる指示信号が生成・出力されてもよい。なお「別の条件」の具体例としては、例えば、「前回指示信号が生成・出力されてから一定時間以上経過していること」などがある。
≪指示信号の具体例2≫
この例の指示信号生成部24は、比較部23gから出力された比較結果が「P(N≧P≧2)種類以上の送信電力の無線信号が無線端末装置20の受信部22に受信されたとの判定結果」に相当する場合、無線端末装置20が具備する本体部25に警告情報を出力させるための指示信号を生成する。なお、警告情報の例としては、警告音の出力、バイブレータの駆動、警告画面表示、発光ダイオードの発光やその発光色の変更等がある。
【0032】
なお、指示信号生成部24が、本体部25に警告情報を出力させるための指示信号を複数回生成・出力してもよい。たとえば、1回目に上記の条件を具備した場合、バイブレータを駆動させるための第1指示信号が生成・出力され、当該第1指示信号の生成・出力から一定時間経過後も上記の条件を具備していた場合、警告音を出力させるための第2指示信号が生成・出力されてもよい。
また、≪指示信号の具体例1,2≫を組み合わせてもよい。例えば、N=3とし、比較部23gから出力された比較結果が「2種類の送信電力の無線信号が無線端末装置20の受信部22に受信されたとの判定結果」に相当する場合、本体部25に警告情報を出力させるための第1指示信号が生成・出力され、比較部23gから出力された比較結果が「3種類の送信電力の無線信号が無線端末装置20の受信部22に受信されたとの判定結果」に相当する場合、本体部25の或る機能をロックさせる第2指示信号が生成・出力されてもよい。
また、比較部23gから出力された比較結果が「M種類以上の送信電力の無線信号が無線端末装置20の受信部22に受信されたとの判定結果」に相当し、さらに別の条件を満たしたときに、本体部25に警告情報を出力させるための指示信号が生成・出力されてもよい。
【0033】
≪指示信号の具体例3≫
さらに、≪指示信号の具体例1,2≫で例示した指示信号に加え、比較部23gから出力された比較結果が「Q(1≦Q<N)種類以上の送信電力の無線信号が第2無線端末装置の受信部に受信されていないとの判定結果」に相当する場合、本体部25の或る機能をロックさせる指示信号が生成されてもよい。例えば、N=2とし、Q=1とし、比較部23gから出力された比較結果が「何れの送信電力の無線信号も無線端末装置20の受信部22に受信されていないとの判定結果」に相当する場合、本体部25の或る機能をロックさせる指示信号が生成されてもよい(指示信号の具体例の説明終わり)。
【0034】
指示信号生成部24から生成された指示信号は、ロック制御部25p又は入出力制御部25qに入力され、ロック制御部25p及び入出力制御部25qは、それぞれ、入力された指示信号に示される処理を実行する。
例えば、ロック制御部25pに本体部25の或る機能をロックさせる指示信号が入力された場合、ロック制御部25pは、指示信号に示される本体部25の或る機能をロックする。これにより、ロック制御部25pは、M(N≧M≧2)種類以上の送信電力の無線信号が無線端末装置20の受信部22に受信されたと距離判定部23で判定されたこと、又は、Q(1≦Q<N)種類以上の送信電力の無線信号が無線端末装置20の受信部22に受信されていないと距離判定部23で判定されたことを必要条件として、無線端末装置10の或る機能をロックすることになる。
【0035】
また、この指示信号が、秘密情報の入力なしでは解除できないロックを実行させる旨の指示を含んでいた場合、ロック制御部25pは、指示信号に示される本体部25の或る機能を、秘密情報の入力なしでは解除できないようにロックする。このようなロックは、入力部25rにロックを解除するために必要な秘密情報が入力されなければロックされない。すなわち、この場合のロック制御部25pは、入力部25rにロックを解除するために必要な秘密情報が入力されたことを必要条件としてロックを解除する。
また、例えば、入出力制御部25qに警告情報を出力させるための指示信号が入力された場合、入出力制御部25qは、その指示信号に示される警告情報を、スピーカ部25s、表示部25t又はバイブレータ部25uの出力部に出力させる。これにより、出力部は、P(N≧P≧2)種類以上の送信電力の無線信号が無線端末装置20の受信部22に受信されたと距離判定部23で判定されたことを必要条件として警告情報を出力する。
【0036】
<実施例1の特徴>
以上のように、実施例1の装置間距離判定システムは、N(N≧2)種類の送信電力の無線信号を送信する送信部12を有する無線端末装置10と、無線信号を受信する受信部22、何種類の送信電力の無線信号が無線端末装置20の受信部22に受信されたかを判定することにより、無線端末装置10と無線端末装置20との間の距離を判定する距離判定部23とを有する無線端末装置20とからなる。これにより、電界強度を測定するための複雑な構成をとることなく、無線端末装置10と無線端末装置20との間の距離を判定することが可能となる。
【0037】
また、実施例1では、無線端末装置10の12送信部が、一定の時間内の送信数が送信電力毎に固定された無線信号を、それぞれ異なる時刻に送信し、距離判定部23が、一定の時間内に無線端末装置20の受信部22で受信されたと判定された無線信号の数に基づき、何種類の送信電力の無線信号が無線端末装置20の受信部22に受信されたかを判定することとした。これにより、無線端末装置10から送信されたN(N≧2)種類の送信電力の無線信号に送信電力以外の違いがない場合であっても、距離判定部23は、何種類の送信電力の無線信号が無線端末装置20の受信部22に受信されたかを判定できる。また、本実施例の距離判定部23は、レジスタ、比較器、カウンタ等を用いて簡単に構成でき、一般にそのコストも安い。
【0038】
また、無線端末装置20のロック制御部25pが、M(N≧M≧2)種類以上の送信電力の無線信号が無線端末装置20の受信部22に受信されたと距離判定部23で判定されたことを必要条件として、無線端末装置20の本体部25の或る機能をロックすることとした場合、無線端末装置10と無線端末装置20との間を一定距離以上離さないと本体部25を利用できない。これにより、利用者が、無線端末装置10と無線端末装置20とを持ち運ぶ際に、これらを同じ鞄に入れたりキーホルダーで接続したりする確率を減らすことができる。これにより、無線端末装置10と無線端末装置20とを同時に紛失したり、盗難されたりする確率を減らすことができる。
【0039】
また、一度ロックされた機能のロック解除に必ず暗証番号等の秘密情報の入力を必要とした場合、さらに安全性を向上することができる。すなわち、無線端末装置10と無線端末装置20とを同時に紛失又は盗難された場合、これらの装置間距離が近いと想定され、紛失又は盗難された時点で本体部25の或る機能がロックされていると想定される。これにより、紛失又は盗難された無線端末装置20の本体部25の或る機能が第三者に不正に利用されることを防止できる。
また、実施例1において、さらにQ(1≦Q<N)種類以上の送信電力の無線信号が無線端末装置20の受信部22に受信されていないと距離判定部23で判定されたことを必要条件として、無線端末装置20の本体部25の或る機能をロックすることとした場合、上述の「あんしんキー」と同様なシステムでの安全性向上が図れる。
【0040】
また、実施例1において、P(N≧P≧2)種類以上の送信電力の無線信号が第2無線端末装置20の受信部22に受信されたと距離判定部23で判定されたことを必要条件として警告情報を出力する構成とした場合、利用者が、無線端末装置10と無線端末装置20とを持ち運ぶ際に、これらを同じ鞄に入れたりキーホルダーで接続したりする確率を減らすことができる。これにより、無線端末装置10と無線端末装置20とを同時に紛失したり、盗難されたりする確率を減らすことができる。
なお、本発明は実施例1には限定されない。例えば、実施例1では、無線端末装置20の指示信号生成部24で生成された指示信号を、無線端末装置20の本体部25に送り、本体部25の或る機能をロックしたり、警告情報を出力させたりした。しかし、ロック制御部や入出力制御部や入力部や出力部を無線端末装置10に設け、無線端末装置20の指示信号生成部24で生成された指示信号を無線端末装置10に送信し、無線端末装置10のロック制御部が無線端末装置10やそれに接続された機器の或る機能を上述のようにロックしたり、その入出力制御部が警告情報を出力部に出力させたりする構成であってもよい。さらに、そのロックを解除するために、無線端末装置10又は無線端末装置20の入力部から入力される秘密情報を必要とする構成としてもよい。具体的には、例えば、無線端末装置20の指示信号生成部24で生成された指示信号を無線端末装置10に送信し、これを受け取った無線端末装置10のロック制御部が無線端末装置10の信号作成部11又は送信部12の機能をロックし、無線端末装置10の入力部に秘密情報が入力されるまで、無線端末装置10による無線信号の送信を停止させる構成であってもよい。これにより、無線端末装置20には無線端末装置10からの無線信号が受信されなくなるため、秘密情報が入力されるまで、無線端末装置20の本体部25の機能もロックされる。
【0041】
また、例えば、無線端末装置10がさらに無線端末装置20の機能を具備し、無線端末装置20がさらに無線端末装置10の機能を具備し、無線端末装置10と無線端末装置20とが、互いに複数種類の送信電力の無線信号の送受信を行い、上述したロジックに従って互いに装置間距離判定を行い、お互いの距離が離れて通信が出来なくなった場合に片方もしくは両方の機能をロックし、利用を制限することとしてもよい。さらにこの場合に、無線端末装置10と無線端末装置20との両方もしくは片方が、複数種類の送信電力の無線信号の送受信を行い、上述したロジックに従って装置間距離判定を行い、お互いの距離が離れて通信が出来なくなった場合だけでなく、互いの距離が近づきすぎた場合にも片方もしくは両方の機能をロックし、利用を制限することとしてもよい。
【0042】
また、図4に例示した距離判定部23は、CPUやメモリ等からなるコンピュータに所定のプログラムを読み込ませて構成することもできる。図5は、コンピュータに所定のプログラムを読み込ませて構成された距離判定部の構成を例示した図であり、図6はその処理を説明するためのフローチャートである。以下、この場合の構成と処理を説明する。
この場合の距離判定部23は、メモリからなる受信信号記憶領域23h、識別符号記憶領域23i、カウント記憶領域23j及び閾値記憶領域23kと、CPUに所定のプログラムが読み込まれて構成される比較部23m,23p、カウンタ23n及び制御部23qとを有する。なお、識別符号記憶領域23iには前述の識別符号が格納され、閾値記憶領域23kには前述の閾値が格納される。
【0043】
カウント記憶領域23jのカウント値をリセット(ステップS1)後に前述の復調回路22d(図4)から出力された復調信号は、まず、受信信号記憶領域23hに格納される(ステップS2)。これをトリガに、比較部23mは、受信信号記憶領域23hから復調信号を読み込み、識別符号記憶領域23iから識別符号を読み込む。さらに、比較部23mは、入力された復調信号から識別符号を取り出し、取り出した識別符号と識別符号記憶領域23iから読み込んだ識別符号とを比較し、それらが一致するか否かを判定する(ステップS3)。そして、比較部23mは、それらが一致すれば値1をカウンタ23nに出力し、一致しなければ値0をカウンタ23nに出力する。カウンタ23eは、値1が入力された場合にのみカウント記憶領域23jのカウント値をカウントアップし、そのカウント値をカウント記憶領域23jに格納する(ステップS4,5)。次に、制御部23qが、カウンタリセットから一定時間が経過したか否かを判定する(ステップS6)。ここで、カウンタリセットから一定時間が経過していないと判定されると処理がステップS2に戻される。一方、カウンタリセットから一定時間が経過していると判定された場合、比較部23pがカウント記憶領域23jからカウント値を読み込み、閾値記憶領域23kから閾値を読み込み、これらを比較する(ステップS7)。その比較結果は指示信号生成部24に送られる。
【実施例2】
【0044】
次に、第1実施形態の一実施例である実施例2を説明する。
実施例2では、第1無線端末装置の送信部が、送信電力毎に送信間隔が異なる無線信号を、それぞれ異なる時刻に送信する。そして、第2無線端末装置の距離判定部は、第2無線端末装置の受信部で受信されたと判定された無線信号の受信間隔に基づき、何種類の送信電力の無線信号が第2無線端末装置の受信部に受信されたかを判定する。以下、実施例1との相違点を中心に実施例2を説明する。
実施例1と実施例2との相違点は、第1無線端末装置の送信部が送信する無線信号に要求される特徴と、距離判定部のみである。以下では、これらの相違点のみについて説明を行い、その他の点については実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0045】
図7(a)は、実施例2の無線端末装置120(「第2無線端末装置」に相当)が具備する距離判定部123の構成を例示したブロック図である。なお、図7(a)において、実施例1と共通する部分については図4と同じ符号を付した。
図7(a)に示すように、実施例2の距離判定部123は、実施例1の距離判定部23のカウンタ23eを、入力パルスの時間間隔を出力するパルス間隔検出回路123eに置換した構成である。以下、実施例2の距離判定部123の処理を説明する。
無線端末装置120の受信部22で受信された無線信号は、前述のように復調信号に変換されて比較部23cに入力される。これをトリガに、制御回路(図示せず)が識別符号レジスタ23aに読み出し信号を入力し、識別符号レジスタ23aは識別符号を比較部23cに出力する。比較部23cは、入力された復調信号から識別符号を取り出し、取り出した識別符号と識別符号レジスタ23aから入力された識別符号とを比較し、それらが一致するか否かを判定する。そして、比較部23cは、それらが一致すれば値1をパルス間隔検出回路123eに出力し、一致しなければ値0をパルス間隔検出回路123eに出力する。
【0046】
パルス間隔検出回路123eは、比較部23cから順次入力される値1の信号のパルス間隔値(無線端末装置120の受信部22で受信されたと判定された無線信号の受信間隔値に相当)を比較部23gに出力する。これをトリガに、制御回路(図示せず)が閾値レジスタ23fに読み出し信号を入力し、閾値レジスタ23fは閾値を比較部23gに出力する。比較部23gは、入力されたパルス間隔値と閾値とを比較し、無線端末装置10から送信された何種類の送信電力の無線信号が無線端末装置120の受信部22に受信されたかを判定する。前述のように実施例2の無線端末装置10は、送信電力毎に送信間隔が異なる無線信号を、それぞれ異なる時刻に送信する。そのため、無線端末装置120の受信部22で受信されたと判定された無線信号の受信間隔、すなわち値1の信号のパルス間隔値と、閾値とを比較することによって、無線端末装置10から送信された何種類の送信電力の無線信号が無線端末装置120の受信部22に受信されたかを判定できる。そして、その判定結果は、無線端末装置10と無線端末装置120との装置間距離の判定結果にも相当する。以下、この判定内容を上述の規則例1,3について例示する。
【0047】
≪規則例1の場合≫
例えば、無線端末装置10が、一定の時間内(例えば1分間)に2種類の送信電力の無線信号を交互にそれぞれ5個送信していたとする。無線端末装置120の受信部22がこれらを正しく受信できていたならば、理想的には上述のパルス間隔値は6秒となる。また、無線端末装置120の受信部22が送信電力の大きな無線信号のみを正しく受信していたならば、理想的には上述のパルス間隔値は12秒となる。無線端末装置120の受信部22が何れの無線信号も正しく受信できていなかったならば、理想的には上述のパルス間隔値は無限大となる。
【0048】
実際には環境の影響等によってパルス間隔値に誤差が生じるが、各装置間距離に対応する理想的なパルス間隔値に所定のマージンを設定した値を閾値とし、複数の比較結果に基づき判断を行うことによって装置間距離の判定ができる。上記の例では、例えば、8秒と14秒の2つの値を閾値とし、比較部23gは、2つの閾値とパルス間隔検出回路123eから出力されたパルス間隔値とを比較する。この場合、例えば、パルス間隔値が8秒以下となる比較結果がδ(δは1以上の定数)回連続するとの比較結果が2種類の送信電力の無線信号が無線端末装置120の受信部22に受信されたことの判定結果に相当し、パルス間隔値が8秒を超え14秒以下となる比較結果がδ回連続するとの比較結果が1種類の送信電力の無線信号が無線端末装置120の受信部22に受信されたことの判定結果に相当する。また、例えば、パルス間隔値が比較部23gに入力されない時間が60秒以上継続したとの判定結果を、何れの種類の無線信号も無線端末装置120の受信部22に受信されていないとの判定結果としてもよい。
【0049】
≪規則例3の場合≫
例えば、無線端末装置10が、3種類の送信電力の無線信号を一定順序及び一定間隔5秒で送信していたとする。無線端末装置120の受信部22がこれらをすべて正しく受信できていたならば、理想的には上述のパルス間隔値は5秒となる。また、無線端末装置120の受信部22が最大及び2番目の送信電力の無線信号のみを正しく受信していたならば、理想的には上述のパルス間隔値は5秒又は10秒となる。また、無線端末装置120の受信部22が最大の送信電力の無線信号のみを正しく受信していたならば、理想的には上述のパルス間隔値は15秒となる。無線端末装置120の受信部22が何れの無線信号も正しく受信できていなかったならば、理想的には上述のパルス間隔値は無限大となる。
【0050】
この例において、例えば、7秒と12秒と17秒の3つの値を閾値とし、比較部23gは、3つの閾値とパルス間隔検出回路123eから出力されたパルス間隔値とを比較する。この場合、例えば、パルス間隔値が7秒以下となる比較結果がδ(δは2以上の定数)回連続するとの比較結果が3種類の送信電力の無線信号が無線端末装置120の受信部22に受信されたことの判定結果に相当し、パルス間隔値が7秒以下となる比較結果と7秒を超え12秒以下となる比較結果とが交互にδ回繰り返すとの比較結果が2種類の送信電力の無線信号が無線端末装置120の受信部22に受信されたことの判定結果に相当し、パルス間隔値が12秒を超え17秒以下となる比較結果がδ回連続するとの比較結果が1種類の送信電力の無線信号が無線端末装置120の受信部22に受信されたことの判定結果に相当する。また、例えば、パルス間隔値が比較部23gに入力されない時間が60秒以上継続したとの判定結果を、何れの種類の無線信号も無線端末装置120の受信部22に受信されていないとの判定結果としてもよい(判定内容の例示の説明終わり)。
【0051】
なお、実施例1と同様、比較部23pから出力された比較結果は指示信号生成部24に入力され、実施例1と同様な指示信号の生成に利用される。
<実施例2の特徴>
実施例2では、無線端末装置10の12送信部が、送信電力毎に送信間隔が異なる無線信号を、それぞれ異なる時刻に送信し、距離判定部123は、無線端末装置120の受信部22で受信されたと判定された無線信号の受信間隔に基づき、何種類の送信電力の無線信号が無線端末装置120の受信部22に受信されたかを判定する。これにより、無線端末装置10から送信されたN(N≧2)種類の送信電力の無線信号に送信電力以外の違いがない場合であっても、距離判定部23は、何種類の送信電力の無線信号が無線端末装置20の受信部22に受信されたかを判定できる。
【0052】
また、図7(a)に例示した距離判定部123は、CPUやメモリ等からなるコンピュータに所定のプログラムを読み込ませて構成することもできる。図7(b)は、コンピュータに所定のプログラムを読み込ませて構成された距離判定部の構成を例示した図であり、図8はその処理を説明するためのフローチャートである。以下、この場合の構成と処理を説明する。
この場合の距離判定部123は、メモリからなる受信信号記憶領域23h、識別符号記憶領域23i、受信時刻記憶領域123j及び閾値記憶領域23kと、CPUに所定のプログラムが読み込まれて構成される比較部23m,23p、受信間隔検出部123n及び制御部23qとを有する。なお、識別符号記憶領域23iには前述の識別符号が格納され、閾値記憶領域23kには前述の閾値が格納される。
【0053】
復調回路22d(図4)から出力された復調信号は、まず、受信信号記憶領域123hに格納される(ステップS21)。これをトリガに、比較部23mは、受信信号記憶領域23hから復調信号を読み込み、識別符号記憶領域23iから識別符号を読み込む。さらに、比較部23mは、読み込まれた復調信号から識別符号を取り出し、取り出した識別符号と、識別符号記憶領域23iから読み込んだ識別符号とを比較し、それらが一致するか否かを判定する(ステップS22)。そして、比較部23mは、それらが一致すれば値1を受信間隔検出部123nに出力し、一致しなければ値0を受信間隔検出部123nに出力する(ステップS23)。受信間隔検出部123nは、値1が入力された場合にのみ現在の時刻を受信時刻tとして受信時刻記憶領域123jに格納する(ステップS24)。次に、受信間隔検出部123nが、受信時刻記憶領域123jからステップS24で格納された受信時刻tとそれより前の最新の受信時刻t-1とを読み込み、それらの時間差を受信間隔値として算出し、受信時刻記憶領域123jに格納する(ステップS25)。次に、比較部23pが受信時刻記憶領域123jから受信間隔値を読み込み、閾値記憶領域23kから閾値を読み込み、これらを比較する(ステップS26)。その比較結果は指示信号生成部24に送られる。
【実施例3】
【0054】
次に、第1実施形態の一実施例である実施例3を説明する。
実施例3では、第1無線端末装置の送信部が、送信電力以外の相違点をも持つN種類の無線信号を当該種類毎に異なる送信電力で送信する。第2無線端末装置の距離判定部は、この相違点に基づき、何種類の送信電力の無線信号が第2無線端末装置の受信部に受信されたかを判定する。以下、実施例1との相違点を中心に実施例3を説明する。
実施例1と実施例3との相違点は、第1無線端末装置の信号作成部と第2無線端末装置の距離判定部のみである。以下では、これらの相違点のみについて説明を行い、その他の点については実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0055】
図9(a)は、実施例3の無線端末装置210(「第1無線端末装置」に相当)が具備する距離判定部223の構成を例示したブロック図である。また、図9(b)は、実施例3の無線端末装置220(「第2無線端末装置」に相当)が具備する距離判定部223の構成を例示したブロック図である。なお、図9において、実施例1と共通する部分については図4と同じ符号を付した。
図9(a)に示すように、実施例3の無線端末装置210の信号作成部211は、N種類のフォーマットの識別符号をそれぞれ格納する識別符号レジスタ211a−1〜Nと、識別符号発生回路211b−1〜Nとを有する。また、図9(b)に示すように、実施例3の距離判定部223は、識別符号レジスタ211a−1〜Nに格納されたN種類のフォーマットの識別符号をそれぞれ格納する識別符号レジスタ223a−1〜Nと、比較部223c−1〜Nと、カウンタ223e−1〜Nと、比較部223g−1〜Nと、閾値レジスタ223fとを有する。
以下、実施例1との相違点と中心に実施例3の処理を説明する。
【0056】
[無線端末装置210の処理]
装置間距離判定システムが起動すると、制御回路(図示せず)が、一定の規則に従って、何れかの識別符号レジスタ211a−1〜Nに対して読み出し信号を入力し、各識別符号レジスタ211a−1〜Nは、読み出し信号が入力されるたびに識別符号を識別符号発生回路211b−1〜Nにそれぞれ出力する。識別符号発生回路211b−1〜Nは、それぞれ、入力された識別符号その開始位置を特定するための情報等を付加したデジタル信号を生成し、それを変調回路12aに出力する。変調回路12aは識別符号に対応する変調信号を生成してパワーアンプ12cに出力し、パワーアンプ12cは、当該変調信号に対応する識別符号のフォーマットの種類に一対一で対応する出力電力で、当該変調信号を増幅し、アンテナ13を通じて送信する。これにより、送信部12は、送信電力以外の相違点をも持つN種類の無線信号を当該種類毎に異なる送信電力で送信することになる。
【0057】
[無線端末装置220の処理]
以下では、実施例1との相違点である距離判定部223の処理のみを説明し、その他の無線端末装置220の処理については説明を省略する。
受信部22から出力された復調信号は各比較部223c−1〜Nに入力される。これをトリガに、制御回路(図示せず)が識別符号レジスタ223a−1〜Nに読み出し信号を入力し、識別符号レジスタ223a−1〜nはそれぞれに保持する識別符号を、それぞれ比較部223c−1〜Nに出力する。各比較部223c−1〜Nは、それぞれ、入力された復調信号から識別符号を取り出し、取り出した識別符号と識別符号レジスタ223a−1〜Nからそれぞれ入力された識別符号とを比較し、それらが一致するか否かを判定する。そして、各比較部223c−1〜Nは、それらが一致すれば値1をそれぞれカウンタ223e−1〜Nに出力し、一致しなければ値0をカウンタ223e−1〜Nに出力する。各カウンタ223e−1〜Nは、値1が入力された場合にのみカウントアップを行い、そのカウント値を格納する。また、各カウンタ223e−1〜Nは、一定の時間が経過する毎にそのカウント値を、それぞれ比較部223g−1〜Nに出力する。なお、この時点で各カウンタ223e−1〜Nから出力される各カウント値は、それぞれ、「一定の時間内に無線端末装置220の受信部22で受信されたと判定された無線信号を、送信電力毎に集計した数」に相当する。これらのカウント値により、何種類の送信電力の無線信号が受信部22に受信されたかを判定できる。なお、各カウンタ223e−1〜Nは、カウント値を出力した後、カウント値を0にリセットする。
【0058】
また、各カウント値の出力をトリガに、制御回路(図示せず)が閾値レジスタ223fに読み出し信号を入力し、閾値レジスタ223fは閾値を各比較部223g−1〜Nに出力する。各比較部223g−1〜Nは、入力されたカウント値と閾値とを比較し、無線端末装置210から送信された何種類の送信電力の無線信号が無線端末装置220の受信部22に受信されたかを判定する。例えば、各比較部223g−1〜Nは、入力されたカウント値と閾値とを比較し、カウント値が閾値を超える場合に値1を出力し、カウント値が閾値以下である場合に値0を出力する。この場合、各比較部223g−1〜Nから出力された値1の合計数が、無線端末装置220の受信部22に受信されたと判定された無線信号の送信電力の種類となる。なお、各比較部223g−1〜Nから出力された値は指示信号生成部224に入力され、実施例1と同様な指示信号の生成に利用される。
【0059】
<実施例3の特徴>
実施例3では、無線端末装置210の送信部12が、送信電力以外の相違点をも持つN種類の無線信号を当該種類毎に異なる送信電力で送信することとした。これにより、何れの送信電力の無線信号が無線端末装置220の受信部22で受信されたかの判定の精度が向上する。その結果、多くの種類の送信電力の無線信号を用い、きめ細かい装置間距離判定を行うことが可能となる。
また、図9(b)に例示した距離判定部223は、CPUやメモリ等からなるコンピュータに所定のプログラムを読み込ませて構成することもできる。図10は、コンピュータに所定のプログラムを読み込ませて構成された距離判定部の構成を例示した図であり、図11はその処理を説明するためのフローチャートである。以下、この場合の構成と処理を説明する。
【0060】
この場合の距離判定部223は、メモリからなる受信信号記憶領域223h、識別符号記憶領域223i、カウント記憶領域223j及び閾値記憶領域223kと、CPUに所定のプログラムが読み込まれて構成される比較部223m,223p、カウンタ223n及び制御部23qとを有する。なお、識別符号記憶領域223iには前述のN種類のフォーマットの識別符号が格納され、閾値記憶領域223kには前述の閾値が格納される。
カウント記憶領域223jのカウント値をリセット(ステップS31)後、受信部22から出力された復調信号は、まず、受信信号記憶領域223hに格納される(ステップS32)。これをトリガに、比較部223mは、受信信号記憶領域223hから復調信号を読み込み、識別符号記憶領域223iから識別符号を読み込む。さらに、比較部223mは、読み込まれた復調信号から識別符号を取り出し、取り出した識別信号と識別符号記憶領域223iから読み込んだ識別符号とを比較し、当該特定した信号が何れかのフォーマットの識別符号と一致するか否かを判定する(ステップS33)。
【0061】
比較部223mは、それらの一致を検出した場合、一致したフォーマットを特定する情報をカウンタ223nに送る。この情報を受け取った場合にのみ、カウンタ223nは、それによって特定されるフォーマットに対応するカウント値をカウントアップし、カウント記憶領域223jに格納する(ステップS35)。
次に、制御部23qがカウンタのリセットから一定時間が経過したか否かを判定する(ステップS36)。ここで、カウンタのリセットから一定時間が経過していないと判定された場合には、処理がステップS32に戻される。一方、カウンタのリセットから一定時間が経過したと判定された場合には、比較部223pが閾値記憶領域223kから閾値を読み込み、カウント値が閾値を超えるフォーマットの数を求め、その数を出力する。
【0062】
なお、本実施例は本発明を限定するものではない。例えば、本実施例では、N種類のフォーマットの識別信号を用い、そのフォーマットの違いをN種類の無線信号の送信電力以外の相違点とした。しかし、例えば、無線端末装置210が送信電力の種類毎に異なる周波数で無線信号を送信し、周波数の違いで無線端末装置220が受信した無線信号の送信電力を判別する構成であってもよい。また、例えば、無線端末装置210が送信電力の種類毎に異なる識別符号に対応する無線信号を送信し、識別符号の違いで無線端末装置220が受信した無線信号の送信電力を判別する構成であってもよい。また、例えば、無線端末装置210が送信電力の種類毎に異なる付加信号を含む無線信号を送信し、付加信号の違いで無線端末装置220が受信した無線信号の送信電力を判別する構成であってもよい。
【0063】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態は、第1無線端末装置からの無線信号の送信に対して、第2無線端末装置が応答信号を返すという形態である。
すなわち、第2実施形態では、第1無線端末装置の送信部がN(N≧2)種類の送信電力の無線信号を送信し、それらが第2無線端末装置の受信部で受信された場合に第2無線端末装置の送信部が応答信号を送信する。そして、第1無線端末装置の受信部が応答情報を受信し、その距離判定部が、当該応答情報を用い、何種類の送信電力の無線信号が第2無線端末装置の受信部に受信されたかを判定することにより、第1無線端末装置と第2無線端末装置との間の距離を判定する。
【0064】
<原理>
N=2の場合を例にとって第2実施形態の原理を説明する。
図12,13は、N=2の場合における第2実施形態の原理を説明するための概念図である。
図12(a)は、第1無線端末装置と第2無線端末装置との間の距離が或る第1距離以下である状態を示し、図12(b)は、この距離が第1距離よりも大きく或る第2距離以下である状態を示し、図13は、この距離が第2距離よりも大きい状態を示す。
【0065】
図12(a)に示す状態では、第1無線端末装置の送信部から送信された2種類の送信電力の無線信号(強い信号及び弱い信号)の何れもが、第2無線端末装置に到達した時点で十分な強さを持つため、これらの無線信号は何れも第2無線端末装置の受信部に受信されたと判定される。第2無線端末装置は、無線信号が第2無線端末装置の受信部に受信されたと判定するたびに、応答信号を第1無線端末装置に送信する。第1無線端末装置は、この2種類の送信電力の無線信号に対応する応答信号を受信したということをもって、第1無線端末装置と第2無線端末装置との間の距離が或る第1距離以下であると判定する。なお、本形態の「無線信号が第2無線端末装置の受信部に受信された」とは、無線信号に含まれる情報が第2無線端末装置で再現可能な状態で第2無線端末装置の受信部で受信されたことを意味する。また、本形態の「第1無線端末装置が応答信号を受信した」とは、応答信号に含まれる情報が第1無線端末装置で再現可能な状態で第1無線端末装置の受信部で受信されたことを意味する。ここで、再現可能とは、誤り訂正なしに再現可能な概念、及び、誤り訂正を行うことによって再現可能な概念の両方を含む。
【0066】
図12(b)に示す状態では、第1無線端末装置の送信部から送信された2種類の送信電力の無線信号のうち、強い送信電力の無線信号(強い信号)は第2無線端末装置に到達した時点で十分な強さを持つが、弱い送信電力の無線信号(弱い信号)は第2無線端末装置に到達した時点で十分な強さを持たない。この場合、強い信号は第2無線端末装置の受信部に受信されたと判定されるが、弱い信号は第2無線端末装置の受信部に受信されたと判定されない。第2無線端末装置は、無線信号が第2無線端末装置の受信部に受信されたと判定するたびに、応答信号を第1無線端末装置に送信する。第1無線端末装置は、1種類の送信電力の無線信号に対応する応答信号を受信したということをもって、第1無線端末装置と第2無線端末装置との間の距離が第1距離よりも大きく第2距離以下であると判定する。
【0067】
図13に示す状態では、第1無線端末装置の送信部から送信された2種類の送信電力の無線信号がいずれも第2無線端末装置に到達した時点で十分な強さを持たず、これらの無線信号は何れも第2無線端末装置の受信部に受信されたと判定されない。よって、第2無線端末装置は応答信号を第1無線端末装置に送信しない。第1無線端末装置は、応答信号を受信しないということをもって、第1無線端末装置と第2無線端末装置との間の距離が第2距離よりも大きいと判定する。なお、図13では、N=2とし、第1距離及び第2距離の2つの境界において装置間距離の境界判定を行う原理を示したが、本発明はこれに限定されない。
【実施例4】
【0068】
次に、第2実施形態の一実施例である実施例4を説明する。
実施例4では、第1無線端末装置の送信部が、一定の時間内の送信数が送信電力毎に固定された無線信号を、それぞれ異なる時刻に送信する。第2無線端末装置の送信部は、その受信部で無線信号が受信されたと判定されるたびに応答信号を送信する。第1無線端末装置は応答信号を受信し、第1無線端末装置が有する距離判定部は、一定の時間内に第1無線端末装置の受信部で受信されたと判定された応答信号の数を、当該一定の時間内に第2無線端末装置の受信部で受信されたと判定された無線信号の数として、何種類の送信電力の無線信号が第2無線端末装置の受信部に受信されたかを判定する。以下、実施例4を詳細に説明する。
【0069】
<構成>
図14は、第2実施形態の一実施例である実施例4の装置間距離推定システム301の構成を例示したブロック図である。また、図15(a)は、図14の無線端末装置310の構成を例示したブロック図であり、図15(b)は図14の無線端末装置320の構成を例示したブロック図である。なお、実施例1で説明した構成については、図3,4と同じ符号を用い、それらの説明を省略する。
図14に示すように、本実施例の装置間距離推定システム301は、無線端末装置310(「第1無線端末装置」に相当)と無線端末装置320(「第2無線端末装置」に相当)とを有する。
【0070】
図14(a)に示すように、本実施例の無線端末装置310は、信号作成部11と、送信部12と、アンテナ13,311、受信部312、距離判定部313と、指示信号生成部314と、本体部25と、アンテナ26とを有する。また、図15(a)に示すように、距離判定部313は、識別符号レジスタ313aと、比較部313cと、カウンタ313eと、比較部313gと、閾値レジスタ313fとを有する。
また、図14(b)に示すように、本実施例の本実施例の無線端末装置320は、アンテナ312,325と、受信部22と、受信判定部322と、応答信号作成部323と、送信部324とを有する。また、図15(b)に示すように、受信判定部322は、識別符号レジスタ322aと、比較部322cとを有し、応答信号作成部323は、識別符号発生回路323bと、識別符号レジスタ323aとを有する。
【0071】
<処理>
次に、本実施例の装置間距離判定処理について説明する。なお、以下の前提として、無線端末装置310の識別符号レジスタ313aと、無線端末装置320の識別符号レジスタ313a,323aには、実施例1で説明した信号作成部11の識別符号レジスタ11a(図3)と同一の識別符号が格納されているものとする。
[無線端末装置310の無線信号送信処理]
装置間距離判定システム301が起動すると、実施例1と同様に、無線端末装置310の送信部12が、N(N≧2)種類の送信電力の無線信号を、一定の時間内の送信数を送信電力毎に固定し、それぞれ異なる時刻に送信する。
【0072】
[無線端末装置320の処理]
無線端末装置320は、アンテナ21で無線信号を受波し、実施例1と同様に受信部22で受信する。受信部22から出力された復調信号は比較部322cに送られる。これをトリガに、制御回路(図示せず)が識別符号レジスタ322aに読み出し信号を入力し、識別符号レジスタ322aは識別符号を比較部322cに出力する。比較部322cは、入力された復調信号から識別符号を取り出し、取り出した識別符号と識別符号レジスタ322aから入力された識別符号とを比較し、それらが一致するか否かを判定する。そして、比較部322cは、それらが一致すれば読み出し信号を識別符号レジスタ323aに出力する。これにより、識別符号レジスタ323aは、識別符号を識別符号発生回路323bに出力し、識別符号発生回路323bは入力された識別符号にその開始位置を特定するための情報等を付加した応答信号を生成し、送信部324に出力する。送信部324はこの応答信号を変調・増幅し、アンテナ325を介して送信する。なお、混信を避けるため、無線端末装置310からの無線信号の送信と、無線端末装置320からの応答信号の送信とには、相互に異なる周波数が用いられる。
【0073】
[無線端末装置310の応答信号受信処理]
応答信号は、無線端末装置310のアンテナ311で受波され、受信部312で受信され、その復調信号が比較部313cに送られる。これをトリガに、制御回路(図示せず)が識別符号レジスタ313aに読み出し信号を入力し、識別符号レジスタ313aは識別符号を比較部313cに出力する。比較部313cは、入力された復調信号から識別符号を取り出し、取り出した識別符号と識別符号レジスタ313aから入力された識別符号とを比較し、それらが一致するか否かを判定する。そして、比較部313cは、それらが一致すれば値1をカウンタ313eに出力し、一致しなければ値0をカウンタ313eに出力する。
【0074】
カウンタ313eは、値1が入力された場合にのみカウントアップを行い、そのカウント値を格納する。また、カウンタ313eは、一定の時間が経過する毎にそのカウント値を比較部313gに送信する。なお、この時点でのカウント値が「一定の時間内に第1無線端末装置310の受信部312で受信されたと判定された応答信号の数」に相当する。カウンタ313eは、カウント値を比較部313gに出力した後、カウント値を0にリセットする。
また、カウント値の出力をトリガに、制御回路(図示せず)が閾値レジスタ313fに読み出し信号を入力し、閾値レジスタ313fは閾値を比較部23gに出力する。比較部313gは、入力されたカウント値と閾値とを比較し、一定の時間内に無線端末装置310の受信部312で受信されたと判定された応答信号の数を、当該一定の時間内に無線端末装置320の受信部22で受信されたと判定された無線信号の数として、何種類の送信電力の無線信号が無線端末装置320の受信部22に受信されたかを判定する。なお、閾値の設定や比較部313gの処理は、実施例1の閾値や比較部23gの処理と同様である。また、比較部313gから出力された比較結果は指示信号生成部314に入力され、指示信号生成部314は、実施例1の指示信号生成部24と同様な処理を実行して指示信号を生成し、本体部25に出力する。それ以降は実施例1と同じである。
【0075】
<実施例4の特徴>
本実施例では、送信電力の無線信号を送信する無線端末装置310側に携帯電話等の本体部25を設けることができ、無線端末装置320側の消費電力を低く抑えることができる。そのため、RFIDのように、受信した電波信号を元にコイルで電流を作成して、その電流を使って応答信号を返信する方式に本発明を適用することができる。この場合には、例えば、無線端末装置310がRFIDのリーダ/ライタ装置として機能し、無線端末装置320がRFタグとして機能する。
【実施例5】
【0076】
実施例5は実施例1,3,4の変形例であり、第1無線端末装置は送信電力以外の相違点をも持つN種類の無線信号を当該種類毎に異なる送信電力で送信するが、第2無線端末装置はその相違点に拘わらず同じ応答信号を返信する例である。以下では実施例1,3,4との相違点を中心に説明する。
【0077】
<構成>
図16(a)は実施例5の無線端末装置410(「第1無線端末装置」に相当)の構成を例示したブロック図であり、図16(b)は無線端末装置420(「第2無線端末装置」に相当)の構成を例示したブロック図である。なお、実施例1,3,4で説明した構成については、図3,4,9,15と同じ符号を用い、それらの説明を省略する。
図16(a)に示すように、実施例5の無線端末装置410と実施例4の無線端末装置310との相違点は、信号作成部11が実施例3の信号作成部211に置換された点である。また、図16(b)に示すように、実施例5の無線端末装置420と実施例4の無線端末装置320との相違点は、受信判定部322が、N個の識別符号レジスタ423a−1〜Nと比較部423c−1〜Nとを有する受信判定部423に置換された点である。
【0078】
<処理>
以下、実施例1,3,4との相違点と中心に実施例5の処理を説明する。なお、以下の前提として、さらに各識別符号レジスタ423a−1〜Nには、実施例3の各識別符号レジスタ211a−1〜Nに格納されたN種類のフォーマットの識別符号がそれぞれ格納されているものとする。
【0079】
[無線端末装置410の処理]
装置間距離判定システムが起動すると、実施例3と同様に、送信部12は、対応する識別符号のフォーマットが異なるN種類の無線信号を当該種類毎に異なる送信電力で送信する。
[無線端末装置420の処理]
以下では、実施例4との相違点である受信判定部423の処理を中心に説明し、実施例4との共通点の説明は省略する。
【0080】
受信部22から出力された復調信号は各比較部423c−1〜Nに入力される。これをトリガに、制御回路(図示せず)が識別符号レジスタ423a−1〜Nに読み出し信号を入力し、識別符号レジスタ423a−1〜nはそれぞれに保持する識別符号を、それぞれ比較部423c−1〜Nに出力する。各比較部423c−1〜Nは、それぞれ、入力された復調信号から識別符号を取り出し、取り出した識別符号と識別符号レジスタ423a−1〜Nからそれぞれ入力された識別符号とを比較し、それらが一致するか否かを判定する。そして、各比較部423c−1〜Nは、それらが一致すれば読み出し信号を識別符号レジスタ323aに出力する。それ以降の処理は実施例4と同じであるため説明を省略する。
【0081】
なお、本実施例は本発明を限定するものではない。例えば、本実施例では、N種類のフォーマットの識別信号を用い、そのフォーマットの違いをN種類の無線信号の送信電力以外の相違点とした。しかし、例えば、無線端末装置410が送信電力の種類毎に異なる周波数で無線信号を送信し、周波数の違いで無線端末装置420が無線信号の送信電力を判別する構成であってもよい。また、例えば、無線端末装置410が送信電力の種類毎に異なる識別符号に対応する無線信号を送信し、識別符号の違いで無線端末装置420が受信した無線信号の送信電力を判別する構成であってもよい。また、例えば、無線端末装置410が送信電力の種類毎に異なる付加信号を含む無線信号を送信し、付加信号の違いで無線端末装置420が受信した無線信号の送信電力を判別する構成であってもよい。
【実施例6】
【0082】
実施例6は実施例1,2,4の変形例である。本実施例では、第1無線端末装置の送信部が、送信電力毎に送信間隔が異なるN種類の送信電力の無線信号を、それぞれ異なる時刻に送信する。また、第2無線端末装置の送信部は、その受信部で無線信号が受信されたと判定されるたびに応答信号を送信する。そして、第1無線端末装置が応答信号を受信し、第1無線端末装置が有する距離判定部は、第1無線端末装置の受信部で受信されたと判定された応答信号の受信間隔を、第2無線端末装置の受信部で受信されたと判定された無線信号の受信間隔として、何種類の送信電力の無線信号が第2無線端末装置の受信部に受信されたかを判定する。以下、実施例1,2,4との相違点を中心に説明する。
【0083】
図17は実施例6の無線端末装置510(「第1無線端末装置」に相当)の構成を例示したブロック図である。なお、実施例1,4で説明した構成については、図3,4,14,15と同じ符号を用い、それらの説明を省略する。
本実施例の装置間距離判定システムは、実施例4の装置間距離判定システム301(図14)を構成する無線端末装置310を無線端末装置510に置換したものである。
図17(a)に示すように、本実施例の無線端末装置510は、実施例4の無線端末装置310の距離判定部313(図15(a))を距離判定部513に置換した構成となる。また、距離判定部513は、距離判定部313のカウンタ313eを、入力パルスの時間間隔を出力するパルス間隔検出回路513eに置換した構成である。以下、実施例1,4との相違点を中心に実施例6の処理を説明する。
【0084】
まず、無線端末装置510の送信部12が、アンテナ13を通じて、送信電力毎に送信間隔が異なるN種類の送信電力の無線信号を、それぞれ異なる時刻に送信する。実施例4と同様に、これらの無線信号が無線端末装置320(図15)に受信されたと判定された場合、無線端末装置320は応答信号を送信する。送信された応答信号は、無線端末装置510のアンテナ311で受波され、受信部312で受信され、その復調信号が比較部313cに送られる。これをトリガに、制御回路(図示せず)が識別符号レジスタ313aに読み出し信号を入力し、識別符号レジスタ313aは識別符号を比較部313cに出力する。比較部313cは、入力された復調信号から識別符号を取り出し、取り出した識別符号と識別符号レジスタ313aから入力された識別符号とを比較し、それらが一致するか否かを判定する。そして、比較部313cは、それらが一致すれば値1をカウンタ313eに出力し、一致しなければ値0をパルス間隔検出回路513eに出力する。
【0085】
パルス間隔検出回路513eは、比較部313cから順次入力される値1の信号のパルス間隔値(無線端末装置320の受信部22で受信されたと判定された無線信号の受信間隔値に相当)を比較部23gに出力する。これをトリガに、制御回路(図示せず)が閾値レジスタ313fに読み出し信号を入力し、閾値レジスタ313fは閾値を比較部313gに出力する。比較部313gは、入力されたパルス間隔値と閾値とを比較し、無線端末装置510から送信された何種類の送信電力の無線信号が無線端末装置320の受信部22に受信されたかを判定する。前述のように実施例6の無線端末装置510は、送信電力毎に送信間隔が異なる無線信号を、それぞれ異なる時刻に送信する。そのため、無線端末装置320の受信部22で受信されたと判定された無線信号の受信間隔、すなわち値1の信号のパルス間隔値と、閾値とを比較することによって、無線端末装置510から送信された何種類の送信電力の無線信号が無線端末装置320の受信部22に受信されたかを判定できる。そして、その判定結果は、無線端末装置510と無線端末装置320との装置間距離の判定結果にも相当する。なお、この判定内容の具体例は、実施例2で説明したのと同様である。
【実施例7】
【0086】
実施例7は実施例1,4の変形例であり、第1無線端末装置から送信された無線信号に対する応答信号が第1無線端末装置に返信されるまでの時間に基づいて、何種類の送信電力の無線信号が第2無線端末装置の受信部に受信されたかを判定する。すなわち、本形態の第1無線端末装置の送信部は、N種類の送信電力の無線信号を、それぞれ固定時間長Tを超える間隔をおいて送信する。第2無線端末装置は、その受信部で無線信号が受信されたと判定されるたびに応答信号を送信する。第1無線端末装置は応答信号を受信し、その距離判定部は、送信部が無線信号を送信してから固定時間長R(0<R≦T)以内に、第1無線端末装置の受信部に応答信号が受信されたと判定された場合、当該送信部が送信した無線信号が第2無線端末装置の受信部に受信されたと判定して、何種類の送信電力の無線信号が第2無線端末装置の受信部に受信されたかを判定する。以下、実施例1,4との相違点を中心に説明する。
【0087】
<構成>
図18は、実施例7の無線端末装置610(「第1無線端末装置」に相当)の構成を例示したブロック図である。なお、図18において、実施例1,4と共通する部分については図3,4,15と同じ符号を付した。
本実施例の装置間距離判定システムは、実施例4の装置間距離判定システム301(図14)を構成する無線端末装置310を無線端末装置610に置換したものである。また、図18に示すように、無線端末装置610は、無線端末装置310を構成する距離判定部313を距離判定部613に置換した構成である。また、距離判定部613は、距離判定部313を構成するカウンタ313eを、クロック信号数をカウントするクロックカウンタ613eに置換し、そのクロック信号を発生するクロック613dと、スイッチ613hと、N種類の送信電力にそれぞれ対応するN個のカウンタ613e−1〜Nとが追加された構成となる。
【0088】
<処理>
以下、実施例1,4との相違点と中心に実施例7の処理を説明する。
[無線端末装置610の処理]
装置間距離判定システムが起動すると、無線端末装置610の送信部12は、N種類の送信電力の無線信号を、それぞれ固定時間長Tを超える間隔をおいて送信する。また、信号作成部11は、識別符号のデジタル信号を送信部12に出力するたびにカウント開始信号をクロックカウンタ613eに出力する。カウント開始信号が入力されたクロックカウンタ613eは、カウント値を0にリセットした後、クロック信号のカウントを開始する。また、送信部12は、無線信号を送信するたびに、その送信電力の種類を特定するための送信電力信号を制御信号としてスイッチ613hに入力する。これにより、スイッチ613hは、比較部313gと、送信電力信号が示す送信電力に対応する何れかのカウンタ613e−1〜Nとを接続する。この状態はスイッチ613hに新たな送信電力信号が入力されるまで維持される。
【0089】
実施例4と同様、無線信号が無線端末装置320(図15)に受信されたと判定された場合、無線端末装置320は応答信号を送信する。送信された応答信号は、無線端末装置510のアンテナ311で受波され、受信部312で受信され、その復調信号が比較部313cに送られる。これをトリガに、制御回路(図示せず)が識別符号レジスタ313aに読み出し信号を入力し、識別符号レジスタ313aは識別符号を比較部313cに出力する。比較部313cは、入力された復調信号から識別符号を取り出し、取り出した識別符号と識別符号レジスタ313aから入力された識別符号とを比較し、それらが一致するか否かを判定する。そして、比較部313cは、それらが一致すればカウント終了信号をクロックカウンタ613eに出力する。カウント終了信号が入力されたクロックカウンタ613eは、そのカウント値を比較部313gに出力する。ここで、比較部313gに出力されるカウント値が、無線端末装置610が無線信号を送信してから応答信号を受信するまでの応答時間に対応する。
【0090】
このカウント値の出力をトリガに、制御回路(図示せず)が閾値レジスタ313fに読み出し信号を入力し、閾値レジスタ313fは閾値(固定時間長R(0<R≦T)に対応するカウント値)を比較部313gに出力する。比較部313gは、カウント値と閾値とを比較し、カウント値≦閾値であれば値1をスイッチ613hに出力し、そうでなければ値0をスイッチ613hに出力する。なお、この比較結果は、無線端末装置610の送信部12が無線信号を送信してから固定時間長R以内に、無線端末装置610の受信部312に応答信号が受信されたと判定されたか否かを示すものとなる。
【0091】
スイッチ613hに出力された値は、その時点で接続されている何れかのカウンタ613e−1〜Nに入力され、その値が1である場合にのみそのカウンタをカウントアップする。一定時間経過後、各カウンタ613e−1〜Nのカウント値が指示信号生成部614に出力され、各カウンタ613e−1〜Nのカウント値が0にリセットされる。なお、指示信号生成部614に出力される各カウンタ613e−1〜Nの各カウント値は、一定時間内に何種類の送信電力の無線信号が無線端末装置320の受信部22に受信されたかの判定結果となる。
【0092】
<実施例7の特徴>
実施例7では、無線端末装置610の送信部12が、N種類の送信電力の無線信号を、それぞれ固定時間長Tを超える間隔をおいて送信し、第2無線端末装置320が、その受信部22で無線信号が受信されたと判定されるたびに応答信号を送信する。そして、無線端末装置610は、当該応答信号を受信し、送信部が無線信号を送信してから固定時間長R(0<R≦T)以内に応答信号が受信されたと判定された場合、当該送信部が送信した無線信号が無線端末装置320の受信部22に受信されたと判定して、何種類の送信電力の無線信号が無線端末装置320の受信部22に受信されたかを判定する。この場合、線端末装置610から送信されたN(N≧2)種類の送信電力の無線信号に送信電力以外の違いがない場合であっても、何種類の送信電力の無線信号が無線端末装置320の受信部22に受信されたかを判定できる。
【0093】
なお、本発明はこの実施例に限定されない。信号作成部11は、識別符号のデジタル信号を送信部12に出力するたびにカウント開始信号をクロックカウンタ613eに出力することとしたが、「特定の送信電力の無線信号」を送信する場合にのみ、カウント開始信号をクロックカウンタ613eに出力する構成であってもよい。この場合には、スイッチ613hやカウンタ613e−1〜Nを設けなくてもよく、比較部313gから出力される比較結果のみで、無線端末装置610と無線端末装置320との間の距離が所定距離(「特定の送信電力の無線信号」が無線端末装置320で受信できる距離)以下であるか否かを判定できる。
【実施例8】
【0094】
実施例8は実施例1,3,4,5の変形例である。本実施例の場合、第1無線端末装置は、送信電力以外の相違点をも持つN種類の無線信号を当該種類毎に異なる送信電力で送信する。第2無線端末装置は、その受信部で無線信号が受信されたと判定されるたびに、その無線信号の種類毎に異なる応答信号を送信する。第1無線端末装置は、当該応答信号を受信し、応答信号毎の相違点に基づき、何れの応答信号が第1無線端末装置の受信部に受信されたかを判定し、何種類の送信電力の無線信号が第2無線端末装置の受信部に受信されたかを判定する。以下では実施例1,3,4,5との相違点を中心に説明する。
【0095】
<構成>
図19は実施例8の無線端末装置710(「第1無線端末装置」に相当)の構成を例示したブロック図であり、図20は無線端末装置720(「第2無線端末装置」に相当)の構成を例示したブロック図である。なお、実施例1,3,4,5で説明した構成については、図3,4,9,15,16と同じ符号を用い、それらの説明を省略する。
図19に示すように、実施例8の無線端末装置710は、実施例4の無線端末装置310(図15)の信号作成部11を実施例3の信号作成部211に置換し、距離判定部313を距離判定部713に置換した構成である。また、距離判定部713は、N個の識別符号レジスタ713a−1〜Nと、比較部713c−1〜Nと、カウンタ713e−1〜Nと、比較部713g−1〜Nと、閾値レジスタ713fとを有する。
【0096】
また、図20に示すように、実施例8の無線端末装置720は、実施例4の無線端末装置320(図15)の受信判定部322を受信判定部723に置換し、応答信号作成部323を応答信号作成部723に置換した構成である。また、受信判定部723は、識別符号レジスタ423a−1〜Nと、比較部423c−1〜Nを有する。また、応答信号作詞部723は、識別符号レジスタ723a−1〜Nと、識別符号発生回路723b−1〜Nを有する。
【0097】
<処理>
以下、実施例1,3,4,5との相違点と中心に実施例8の処理を説明する。なお、以下の前提として、さらに各識別符号レジスタ423a−1〜Nには、実施例3の各識別符号レジスタ211a−1〜Nに格納されたN種類のフォーマットの識別符号がそれぞれ格納され、各識別符号レジスタ713a−1〜Nには、実施例3の各識別符号レジスタ211a−1〜Nに格納されたN種類のフォーマットの識別符号がそれぞれ格納され、各識別符号レジスタ723a−1〜Nには、実施例3の各識別符号レジスタ211a−1〜Nに格納されたN種類のフォーマットの識別符号がそれぞれ格納されているものとする。
【0098】
[無線端末装置710の送信処理]
装置間距離判定システムが起動すると、実施例3と同様に、送信部12は、対応する識別符号のフォーマットが異なるN種類の無線信号を当該種類毎に異なる送信電力で送信する。
【0099】
[無線端末装置720の処理]
以下では、実施例4との相違点である受信判定部423及び応答信号作成部723の処理を中心に説明し、実施例4との共通点の説明は省略する。
受信部22から出力された復調信号は各比較部423c−1〜Nに入力される。これをトリガに、制御回路(図示せず)が識別符号レジスタ423a−1〜Nに読み出し信号を入力し、識別符号レジスタ423a−1〜nはそれぞれに保持する識別符号を、それぞれ比較部423c−1〜Nに出力する。各比較部423c−1〜Nは、それぞれ、入力された復調信号から識別符号を取り出し、取り出した識別符号と識別符号レジスタ423a−1〜Nからそれぞれ入力された識別符号とを比較し、それらが一致するか否かを判定する。そして、各比較部423c−1〜Nは、それらが一致した場合にのみ、それぞれ、読み出し信号を対応する識別符号レジスタ723a−1〜Nに出力する。読み出し信号が入力された識別符号レジスタ723a−1〜Nは、それぞれが保持する識別符号を出力する。各識別符号レジスタ723a−1〜Nから出力された識別符号のデジタル信号は、送信部324に入力され、送信部324で変調・増幅されて応答信号として送信され、アンテナ325から放出される。
【0100】
[無線端末装置710の受信処理]
応答信号が無線端末装置710のアンテナで受波され、受信部312で受信されると、その復調信号が各比較部713c−1〜Nに入力される。これをトリガに、制御回路(図示せず)が識別符号レジスタ713a−1〜Nに読み出し信号を入力し、識別符号レジスタ713a−1〜nはそれぞれに保持する識別符号を、それぞれ比較部713c−1〜Nに出力する。各比較部713c−1〜Nは、それぞれ、入力された復調信号から識別符号を取り出し、取り出した識別符号と識別符号レジスタ713a−1〜Nからそれぞれ入力された識別符号とを比較し、それらが一致するか否かを判定する。そして、各比較部713c−1〜Nは、それらが一致すれば値1をそれぞれカウンタ713e−1〜Nに出力し、一致しなければ値0をカウンタ713e−1〜Nに出力する。各カウンタ713e−1〜Nは、値1が入力された場合にのみカウントアップを行い、そのカウント値を格納する。また、各カウンタ713e−1〜Nは、一定の時間が経過する毎にそのカウント値を、それぞれ比較部713g−1〜Nに出力する。なお、この時点で各カウンタ713e−1〜Nから出力される各カウント値は、それぞれ、「一定の時間内に無線端末装置710の受信部312で受信されたと判定された応答信号を、その種別毎に集計した数」に相当し、さらに「一定の時間内に無線端末装置720の受信部22で受信されたと判定された無線信号を、送信電力毎に集計した数」に相当する。これらのカウント値により、何種類の送信電力の無線信号が受信部22に受信されたかを判定できる。なお、各カウンタ713e−1〜Nは、カウント値を出力した後、カウント値を0にリセットする。
【0101】
また、各カウント値の出力をトリガに、制御回路(図示せず)が閾値レジスタ713fに読み出し信号を入力し、閾値レジスタ713fは閾値を各比較部713g−1〜Nに出力する。各比較部713g−1〜Nは、入力されたカウント値と閾値とを比較し、何れの応答信号が無線端末装置710の受信部312に受信されたかを判定することによって、無線端末装置710から送信された何種類の送信電力の無線信号が無線端末装置720の受信部22に受信されたかを判定する。例えば、各比較部713g−1〜Nは、入力されたカウント値と閾値とを比較し、カウント値が閾値を超える場合に値1を出力し、カウント値が閾値以下である場合に値0を出力する。この場合、各比較部713g−1〜Nから出力された値1の合計数が、無線端末装置720の受信部22に受信されたと判定された無線信号の送信電力の種類となる。なお、各比較部713g−1〜Nから出力された値は指示信号生成部714に入力され、実施例1と同様な指示信号の生成に利用される。
【0102】
<実施例8の特徴>
実施例8では、無線端末装置710の送信部312が、送信電力以外の相違点をも持つN種類の無線信号を当該種類毎に異なる送信電力で送信し、無線端末装置720が、その受信部で無線信号が受信されたと判定されるたびに、その無線信号の種類毎に異なる応答信号を送信することとした。これにより無線端末装置710が有する距離判定部713は、何れの応答信号が無線端末装置710の受信部312に受信されたかを判定することによって、何種類の送信電力の無線信号が無線端末装置720の受信部22に受信されたかを判定できる。これにより、何れの送信電力の無線信号が無線端末装置720の受信部22で受信されたかの判定の精度が向上する。その結果、多くの種類の送信電力の無線信号を用い、きめ細かい装置間距離判定を行うことが可能となる。
【0103】
なお、本実施例は本発明を限定するものではない。例えば、本実施例では、N種類のフォーマットの識別信号を用い、そのフォーマットの違いをN種類の無線信号の送信電力以外の相違点とした。しかし、例えば、無線端末装置710が送信電力の種類毎に異なる周波数で無線信号を送信し、周波数の違いで無線端末装置720が無線信号の送信電力を判別する構成であってもよい。また、例えば、無線端末装置710が送信電力の種類毎に異なる識別符号に対応する無線信号を送信し、識別符号の違いで無線端末装置720が受信した無線信号の送信電力を判別する構成であってもよい。また、例えば、無線端末装置710が送信電力の種類毎に異なる付加信号を含む無線信号を送信し、付加信号の違いで無線端末装置720が受信した無線信号の送信電力を判別する構成であってもよい。同様に、本実施例では、無線信号の種類毎にフォーマットの異なる応答信号を送信することとしたが、受信した無線信号の種類毎に応答信号の周波数を相違させたり、受信した無線信号の種類毎に異なる付加信号に対応する応答信号を生成したりしてもよい。
【0104】
〔その他の変形例〕
なお、上記の各実施例では、第1無線端末装置の送信部がパワーアンプの出力を制御し、N種類の送信電力の無線信号を生成することとした。しかし、その他の方法でN種類の送信電力の無線信号を生成する構成であってもよい。例えば、パワーアンプ12cから出力された無線信号の信号経路をN通り設け、各信号経路の減衰量やインピーダンスマッチング等を相違させることによって、N種類の送信電力の無線信号が生成される構成でもよい。
【0105】
図21は、信号経路の減衰量を相違させることによって2種類の送信電力の無線信号を生成する無線端末装置810の構成を例示するブロック図である。図21の例では、パワーアンプ12cから出力された無線信号の信号経路がスイッチ812eによって2通りに切り替えられ、これらの2通りの経路の一方には減衰器812dが介在している。これにより、スイッチ812eが減衰器812d側の信号経路側に切り替えられたときよりも、スイッチ812eが他方の経路側に切り替えられたときのほうが、送信される無線信号の送信電力が大きくなる。これにより、2種類の送信電力の無線信号を生成できる。また、スイッチを用いるのではなく、第1無線端末装置にNチャネルの系列を設け、系列ごとの減衰量やインピーダンスマッチング等を相違させてN種類の送信電力の無線信号を生成する構成であってもよい。
【0106】
また、上記の各実施形態・実施例では、第1無線端末装置がN(N≧2)種類の送信電力の無線信号を送信し、第2無線端末装置が無線信号を受信し、第1無線端末装置及び第2無線端末装置の少なくとも一方が、何種類の送信電力の無線信号が第2無線端末装置の受信部に受信されたかを判定することにより、第1無線端末装置と第2無線端末装置との間の距離を判定することとした。
しかし、少なくとも第1無線信号を送信する送信部と、無線信号を受信する受信部とを有する第1無線端末装置と、少なくとも第2無線信号を送信する送信部と、無線信号を受信する受信部とを有する第2無線端末装置と、を有し、第1無線信号と第2無線信号とは送信電力が異なり、第1無線端末装置及び第2無線端末装置の少なくとも一方は、第1無線信号が第2無線端末装置の受信部で受信されたか、及び、第2無線信号が第1無線端末装置の受信部で受信されたかを判定することにより、第1無線端末装置と第2無線端末装置との間の距離を判定する距離判定部をさらに有する、ことを特徴とする装置間距離判定システムでも課題解決は可能である。
【0107】
図22は、このような装置間距離判定システム901の構成の一例を示したブロック図である。
図22に示すように、装置間距離判定システム901は、無線端末装置910(「無線端末装置」に相当)と無線端末装置(「第2無線端末装置」に相当)とを有する。ここで、送信部912,922は、それぞれ、少なくとも1種類の送信電力の無線信号を送信する。また、送信部912から送信される無線信号の送信電力は、送信部922から送信される無線信号の送信電力よりも小さい。また、その他の構成部は、これまで説明した通りである。
【0108】
このシステムでは、無線端末装置910の送信部912からアンテナ13を通じて第1無線信号が送信されるとともに、無線端末装置920の送信部922からもアンテナ321を通じて第2無線信号が送信される。ここで、これらの無線信号の送信電力及び送信周波数は異なる。無線端末装置920は、受信部22で無線端末装置910から送信された第1無線信号を受信するたびに、送信部324からアンテナ325を通じて応答信号を送信する。
無線端末装置920から送信された第2無線信号及び応答信号は、アンテナ311で受波されて受信部312で受信され、それらの復調信号が距離判定部313に送られる。距離判定部313は、送られた復調信号を用い、第1無線信号が無線端末装置920の受信部22で受信されたか、及び、第2無線信号が無線端末装置910の受信部312で受信されたかを判定することにより、無線端末装置910と無線端末装置920との間の距離を判定する。
【0109】
すなわち、第1無線信号と第2無線信号との送信電力が互いに異なるため、無線端末装置910と無線端末装置920との距離に応じ、以下の3つの状態が考えられる。
状態1:第1無線信号が無線端末装置920の受信部22で受信され、かつ、第2無線信号が無線端末装置910の受信部312で受信される状態
状態2:第1無線信号が無線端末装置920の受信部22で受信される、又は、第2無線信号が無線端末装置910の受信部312で受信される状態
状態3:第1無線信号が無線端末装置920の受信部22で受信されず、かつ、第2無線信号が無線端末装置910の受信部312で受信されない状態
ここで、第1無線信号と第2無線信号との距離は、状態1の場合が最も近く、状態2の場合がその次に近く、状態3の場合が最も遠い。よって、第1無線信号が無線端末装置920の受信部22で受信されたか、及び、第2無線信号が無線端末装置910の受信部312で受信されたかを判定することにより、無線端末装置910と無線端末装置920との間の距離を判定できる。また、第1無線信号の送信電力<第2無線信号の送信電力とした場合、本システムに関係する無線端末装置910の消費電力を無線端末装置920の消費電力よりも抑えることができる。そのため、例えば、無線端末装置910を携帯電話等の特に省電力化が望まれる装置側とし、無線端末装置910をデスクトップコンピュータ等のそれほど省電力化が必要でない装置側とする等の応用が可能となる。また、その逆に第1無線信号の送信電力>第2無線信号の送信電力とした場合には、逆の応用が可能となる。
【0110】
上記の各実施例では、無線信号又は応答信号を受信した無線端末装置がそれに含まれる識別符号を再現できたか否かで、当該無線端末装置の受信部で無線信号又は応答信号が受信されたか否かを判定していた。しかし、その他の方法で無線信号又は応答信号に含まれる情報(デジタル情報等)が再現可能な状態で受信されたか否かを判定し、その判定結果をもって無線端末装置の受信部で無線信号又は応答信号が受信されたか否かを判定してもよい。例えば、チャレンジ・アンド・レスポンスの技術を用いて、無線信号又は応答信号に含まれる情報が再現可能な状態で受信されたか否かを判定し、その判定結果をもって無線端末装置の受信部で無線信号又は応答信号が受信されたか否かを判定してもよい(例えば、「http://www.spc-c.com/about/sasakura/CCR_sasakura_WEBdoc.pdf」参照)。 また、第2無線端末装置に電界強度を測定する構成が必要となるが、携帯電話・PCなどの第2無線端末装置の受信回路に複数の電界強度閾値判定手段を設け、第2無線端末装置が高い方の閾値を超えて電波を受信できた場合は、安心キーなどの第1無線端末装置との距離が近づきすぎたものと判断して、自身をロックしたり、アラームを発したりする方式も考えられる。
【0111】
また、無線端末装置の或る機能をロックする方法も上述の実施形態には限定されない。例えば、無線端末装置が起動されるたびに無線端末装置の機能がロックされる構成とし、ロック制御部が無線端末装置を再起動させることで無線端末装置の或る機能がロックされる構成であってもよい。
また、上記の各構成に加えて、既に存在するセキィリティ機能(無線端末装置の起動時に暗証番号の入力を要求したり、起動中であっても無線端末装置のキー操作を実施しない場合に暗証番号の入力を要求したり、無線端末装置内のハードディスク等の記憶領域を暗号化したりすることなど)も併用することで、さらにセキィリティ機能を高めることが可能であるのはいうまでもない。また、各実施例の少なくとも一部の構成を複合した構成であってもよい。さらに、3以上の無線端末装置からなる通信システムに本発明を適用してもよい。また、各実施例の距離判定部の出力信号は、装置間距離を直接的に示す信号ではないが、その範囲を一義的に特定できる信号である。各実施例の変形として、各実施例の距離判定部が、上述した各判定結果を用いて装置間距離の範囲(例えば、第1距離範囲<第2距離範囲<第3距離範囲)を直接的に示す信号を生成する処理部を具備してもよい。同様に、上記実施例の距離判定部の出力信号の中には、何種類の送信電力の無線信号が第2無線端末装置の受信部に受信されたかを直接的に示していないものもあるが、その場合であってもそれらの信号は、何種類の送信電力の無線信号が第2無線端末装置の受信部に受信されたかを一義的に特定できる信号である。上記実施例の変形として、上記実施例の距離判定部が、上述した各判定結果を用いて何種類の送信電力の無線信号が第2無線端末装置の受信部に受信されたかを直接的に示す信号を生成する処理部を具備してもよい。このような処理部は、集積回路によって構成しても良いし、その処理部の処理内容が記述されたプログラムをCPU上で実行して構成してもよい。
【0112】
また、各実施例では携帯電話やPDAを本体部としたが、PC、ICカード、RFタグ等その他のアプリケーション装置を本体部としてもよい。
また、上述のように、信号作成部、距離判定部、受信判定部、指示信号生成部、ロック制御部、入出力制御部、処理部その他の構成は、CPU(central processing unit)、メモリ等を具備するコンピュータによって実現できる。この場合、これらの各部分が有すべき処理内容はプログラムに記述され、CPUがそれを実行することにより、上記各部分の処理機能が実現される。このようにプログラムが読み込まれたCPUは、そのプログラムに従い、それぞれの処理ステップに必要なデータをメモリから読み込み、演算処理を行い、その処理結果をメモリに格納するという処理を繰り返すことによって上記各部分の処理機能を実現する。
【0113】
この処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体としては、例えば、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、半導体メモリ等どのようなものでもよいが、具体的には、例えば、磁気記録装置として、ハードディスク装置、フレキシブルディスク、磁気テープ等を、光ディスクとして、DVD(Digital Versatile Disc)、DVD−RAM(Random Access Memory)、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、CD−R(Recordable)/RW(ReWritable)等を、光磁気記録媒体として、MO(Magneto-Optical disc)等を、半導体メモリとしてEEP−ROM(Electronically Erasable and Programmable-Read Only Memory)等を用いることができる。
【0114】
また、このプログラムの流通は、例えば、そのプログラムを記録したDVD、CD−ROM等の可搬型記録媒体を販売、譲渡、貸与等することによって行う。さらに、このプログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することにより、このプログラムを流通させる構成としてもよい。
このようなプログラムを実行するコンピュータは、例えば、一旦そのプログラムを自己の記憶装置に格納する。そして、処理の実行時、このコンピュータは、自己の記憶装置に格納されたプログラムを読み取り、読み取ったプログラムに従った処理を実行する。また、コンピュータが可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することとしてもよく、さらに、このコンピュータにサーバコンピュータからプログラムが転送されるたびに、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することとしてもよい。なお、本形態におけるプログラムには、電子計算機による処理の用に供する情報であってプログラムに準ずるもの(コンピュータに対する直接の指令ではないがコンピュータの処理を規定する性質を有するデータ等)を含むものとする。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明の利用分野と一例として、携帯電話やPDA端末等を例示できる。本発明をこれらに適用することにより、これらの紛失・盗難時におけるセキュリティが向上する。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】図1は、N=2の場合における第1実施形態の原理を説明するための概念図である。図1(a)は、第1無線端末装置と第2無線端末装置との間の距離が或る第1距離以下である状態を示し、図1(b)は、この距離が第1距離よりも大きく或る第2距離以下である状態を示し、図1(c)は、この距離が第2距離よりも大きい状態を示す。
【図2】図2は、第1実施形態の一実施例である実施例1の装置間距離推定システムの構成を例示したブロック図である。
【図3】図3は、図2の無線端末装置(第1無線端末装置)の構成を例示したブロック図である(実施例1)。
【図4】図4は、図2の無線端末装置(第2無線端末装置)の構成を例示したブロック図である(実施例1)。
【図5】図5は、コンピュータに所定のプログラムを読み込ませて構成された距離判定部の構成を例示した図である(実施例1)。
【図6】図6は、コンピュータに所定のプログラムを読み込ませて構成された距離判定部の処理を説明するためのフローチャートである(実施例1)。
【図7】図7(a)は、実施例2の無線端末装置が具備する距離判定部の構成を例示したブロック図である。図7(b)は、コンピュータに所定のプログラムを読み込ませて構成された距離判定部の構成を例示した図である。
【図8】図8は、コンピュータに所定のプログラムを読み込ませて構成された距離判定部の処理を説明するためのフローチャートである(実施例2)。
【図9】図9(a)は、実施例3の無線端末装置が具備する距離判定部の構成を例示したブロック図である。また、図9(b)は、実施例3の無線端末装置が具備する距離判定部の構成を例示したブロック図である。
【図10】図10は、コンピュータに所定のプログラムを読み込ませて構成された距離判定部の構成を例示した図である(実施例3)。
【図11】図11は、コンピュータに所定のプログラムを読み込ませて構成された距離判定部の処理を説明するためのフローチャートである(実施例3)。
【図12】図12は、N=2の場合における第2実施形態の原理を説明するための概念図である。
【図13】図13は、N=2の場合における第2実施形態の原理を説明するための概念図である。
【図14】図14は、第2実施形態の一実施例である実施例4の装置間距離推定システム301の構成を例示したブロック図である。
【図15】また、図15(a)は、図14の無線端末装置(第1無線端末装置)の構成を例示したブロック図であり、図15(b)は、図14の無線端末装置(第2無線端末装置)の構成を例示したブロック図である(実施例4)。
【図16】図16(a)は、実施例5の無線端末装置(第1無線端末装置)の構成を例示したブロック図であり、図16(b)は、実施例5の無線端末装置(第2無線端末装置)の構成を例示したブロック図である。
【図17】図17は、実施例6の無線端末装置(第1無線端末装置)の構成を例示したブロック図である。
【図18】図18は、実施例7の無線端末装置(第1無線端末装置)の構成を例示したブロック図である。
【図19】図19は、実施例8の無線端末装置(第1無線端末装置)の構成を例示したブロック図である。
【図20】図20は、実施例8の無線端末装置(第2無線端末装置)の構成を例示したブロック図である。
【図21】図21は、信号経路の減衰量を相違させることによって2種類の送信電力の無線信号を生成する無線端末装置の構成を例示するブロック図である。
【図22】図22は、装置間距離判定システムの構成の変形例を示したブロック図である。
【符号の説明】
【0117】
10,310,410,510,610,710,810,910 無線端末装置(第1無線端末装置)
20,120,220,320,420,720,920 無線端末装置(第2無線端末装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
N(N≧2)種類の送信電力の無線信号を送信する送信部を有する第1無線端末装置と、
無線信号を受信する受信部を有する第2無線端末装置と、を有し、
上記第1無線端末装置及び上記第2無線端末装置の少なくとも一方は、
何種類の送信電力の無線信号が上記第2無線端末装置の受信部に受信されたかを判定することにより、上記第1無線端末装置と上記第2無線端末装置との間の距離を判定する距離判定部をさらに有する、
ことを特徴とする装置間距離判定システム。
【請求項2】
請求項1に記載の装置間距離判定システムであって、
上記送信部は、一定の時間内の送信数が送信電力毎に固定された上記無線信号を、それぞれ異なる時刻に送信し、
上記距離判定部は、一定の時間内に上記第2無線端末装置の受信部で受信されたと判定された無線信号の数に基づき、何種類の送信電力の無線信号が上記第2無線端末装置の受信部に受信されたかを判定する構成を含む、
ことを特徴とする装置間距離判定システム。
【請求項3】
請求項2に記載の装置間距離判定システムであって、
上記第2無線端末装置は、その受信部で上記無線信号が受信されたと判定されるたびに応答信号を送信する送信部をさらに有し、
上記第1無線端末装置は、上記応答信号を受信する受信部と、上記距離判定部とを有し、
上記第1無線端末装置が有する上記距離判定部は、一定の時間内に上記第1無線端末装置の受信部で受信されたと判定された上記応答信号の数を、当該一定の時間内に上記第2無線端末装置の受信部で受信されたと判定された無線信号の数として、何種類の送信電力の無線信号が上記第2無線端末装置の受信部に受信されたかを判定する構成を含む、
ことを特徴とする装置間距離判定システム。
【請求項4】
請求項1から3の何れかに記載の装置間距離判定システムであって、
上記送信部は、送信電力毎に送信間隔が異なる上記無線信号を、それぞれ異なる時刻に送信し、
上記距離判定部は、上記第2無線端末装置の受信部で受信されたと判定された無線信号の受信間隔に基づき、何種類の送信電力の無線信号が上記第2無線端末装置の受信部に受信されたかを判定する構成を含む、
ことを特徴とする装置間距離判定システム。
【請求項5】
請求項4に記載の装置間距離判定システムであって、
上記第2無線端末装置は、その受信部で上記無線信号が受信されたと判定されるたびに応答信号を送信する送信部をさらに有し、
上記第1無線端末装置は、上記応答信号を受信する受信部と、上記距離判定部とを有し、
上記第1無線端末装置が有する上記距離判定部は、上記第1無線端末装置の受信部で受信されたと判定された応答信号の受信間隔を、上記第2無線端末装置の受信部で受信されたと判定された無線信号の受信間隔として、何種類の送信電力の無線信号が上記第2無線端末装置の受信部に受信されたかを判定する構成を含む、
ことを特徴とする装置間距離判定システム。
【請求項6】
請求項1から5の何れかに記載の装置間距離判定システムであって、
上記送信部は、上記無線信号を、それぞれ固定時間長Tを超える間隔をおいて送信し、
上記第2無線端末装置は、その受信部で上記無線信号が受信されたと判定されるたびに応答信号を送信する送信部をさらに有し、
上記第1無線端末装置は、上記応答信号を受信する受信部と、上記距離判定部とを有し、
上記第1無線端末装置が有する上記距離判定部は、上記送信部が上記無線信号を送信してから固定時間長R(0<R≦T)以内に、上記第1無線端末装置の受信部に上記応答信号が受信されたと判定された場合、当該送信部が送信した無線信号が上記第2無線端末装置の受信部に受信されたと判定して、何種類の送信電力の無線信号が上記第2無線端末装置の受信部に受信されたかを判定する構成を含む、
ことを特徴とする装置間距離判定システム。
【請求項7】
請求項1から6の何れかに記載の装置間距離判定システムであって、
上記送信部は、送信電力以外の相違点をも持つN種類の無線信号を当該種類毎に異なる送信電力で送信する、
ことを特徴とする装置間距離判定システム。
【請求項8】
請求項7に記載の装置間距離判定システムであって、
上記第2無線端末装置は、その受信部で上記無線信号が受信されたと判定されるたびに、その無線信号の種類毎に異なる応答信号を送信する送信部をさらに有し、
上記第1無線端末装置は、上記応答信号を受信する受信部と、上記距離判定部とを有し、
上記第1無線端末装置が有する上記距離判定部は、何れの応答信号が上記第1無線端末装置の受信部に受信されたかを判定することによって、何種類の送信電力の無線信号が上記第2無線端末装置の受信部に受信されたかを判定する構成を含む、
ことを特徴とする装置間距離判定システム。
【請求項9】
請求項1から8の何れかに記載の装置間距離判定システムであって、
上記第1無線端末装置及び上記第2無線端末装置の少なくとも一方は、
M(N≧M≧2)種類以上の送信電力の無線信号が上記第2無線端末装置の受信部に受信されたと上記距離判定部で判定されたことを必要条件として、上記第1無線端末装置及び上記第2無線端末装置の少なくとも一方の或る機能をロックする第1ロック制御部をさらに有する、
ことを特徴とする装置間距離判定システム。
【請求項10】
請求項9に記載の装置間距離判定システムであって、
上記第1無線端末装置及び上記第2無線端末装置の少なくとも一方は、
ロックを解除するために必要な秘密情報の入力を受け付ける入力部をさらに有し、
上記第1ロック制御部によってなされた機能のロックは、上記入力部に秘密情報が入力されたことを必要条件として解除される、
ことを特徴とする装置間距離判定システム。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の装置間距離判定システムであって、
上記第1無線端末装置及び上記第2無線端末装置の少なくとも一方は、
Q(1≦Q<N)種類以上の送信電力の無線信号が上記第2無線端末装置の受信部に受信されていないと上記距離判定部で判定されたことを必要条件として、上記第1無線端末装置及び上記第2無線端末装置の少なくとも一方の或る機能をロックする第2ロック制御部をさらに有する、
ことを特徴とする装置間距離判定システム。
【請求項12】
請求項1から11の何れかに記載の装置間距離判定システムであって、
上記第1無線端末装置及び上記第2無線端末装置の少なくとも一方は、
P(N≧P≧2)種類以上の送信電力の無線信号が上記第2無線端末装置の受信部に受信されたと上記距離判定部で判定されたことを必要条件として、警告情報を出力する出力部をさらに有する、
ことを特徴とする装置間距離判定システム。
【請求項13】
N(N≧2)種類の送信電力の無線信号を送信する送信部と、
何種類の送信電力の無線信号が他の無線端末装置の受信部に受信されたかを判定することにより、当該他の無線端末装置との間の距離を判定する距離判定部と、
を有することを特徴とする無線端末装置。
【請求項14】
無線信号を受信する受信部と、
他の無線端末装置から送信されたN(N≧2)種類の送信電力の無線信号のうち、何種類の送信電力の無線信号が上記受信部に受信されたかを判定することにより、当該他の無線端末装置との間の距離を判定する距離判定部と、
を有することを特徴とする無線端末装置。
【請求項15】
請求項13又は14に記載の無線端末装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【請求項16】
請求項15に記載のプログラムを格納したコンピュータ読取り可能な記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2009−192279(P2009−192279A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−31199(P2008−31199)
【出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(399035766)エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社 (321)
【Fターム(参考)】