説明

補修用光輝感塗膜及びこれを用いた光輝感塗膜補修方法

【課題】光輝感が均一となるように補修できる補修用光輝感塗膜及びこれを用いた光輝感塗膜補修方法を提供すること。
【解決手段】第1光輝性顔料と第1透明樹脂粒子とで構成され、第1光輝性顔料の顔料重量濃度が1〜20%であり、第1透明樹脂粒子の固形分全体に対する含有比率が5〜20%、粒径が1〜7μmである第1光輝感塗料組成物に、第2光輝感塗料組成物は、第2光輝性顔料と第2透明樹脂粒子とで構成され、第2光輝性顔料の顔料重量濃度が1〜20%であり、第2透明樹脂粒子の固形分全体に対する含有比率が5〜20%、粒径が4μm以下である第2光輝感塗料組成物を積層した補修用光輝感塗膜である。第1光輝性顔料の平均粒径Pと第1透明樹脂粒子の平均粒径Rの比が2/1〜20/1である。第2光輝性顔料の平均粒径Pと第2透明樹脂粒子の平均粒径Rの比が2/1〜20/1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補修用光輝感塗膜及びこれを用いた光輝感塗膜補修方法に係り、更に詳細には、光輝感塗膜に生じたブツ等の塗装不具合の補修に用いる補修用光輝感塗膜及びこれを用いた光輝感塗膜補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光輝感外観塗装された被塗装物の塗膜に、ブツなどによる塗装不良(不具合)が生じていれば、その部分に補修が施される。
かかる光輝感外観塗装の補修方法としては、塗装不具合が生じている補修部(不具合部位)を砥ぎ、光輝感外観塗装に用いた塗料と同一種の光輝感外観塗料を塗装して補修する方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−228807号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、かかる補修方法では、光輝感外観塗料が補修部周辺にも飛散し、非補修部には、塗料ダストが付着することによる凸状部分が形成されるため、被塗装物の外観が損なわれることがあった。
【0004】
このため、補修部周辺の凸状部分を研磨する必要があり、補修工程での研磨に要する時間が長くかかり、またこうした凸状部分の研磨作業は機械化が困難であり人手によらなければならず、コストアップにもつながるという問題点があった。
【0005】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、光輝感が均一となるように補修できる補修用光輝感塗膜及びこれを用いた光輝感塗膜補修方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、2種類の所定の光輝感塗料組成物を積層することにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明の補修用光輝感塗膜は、第1光輝感塗料組成物を用いて形成された第1メタリック塗膜層と、第2光輝感塗料組成物を用いて形成された第2メタリック塗膜層とを積層して成る補修用光輝感塗膜であって、
上記第1光輝感塗料組成物は、金属片を含有する第1光輝性顔料と第1透明樹脂粒子とで構成され、第1光輝性顔料の顔料重量濃度(PWC)が1〜20%であり、第1透明樹脂粒子の固形分全体に対する含有比率が5〜20%、粒径が1〜7μmであり、
上記第2光輝感塗料組成物は、金属片を含有する第2光輝性顔料と第2透明樹脂粒子とで構成され、第2光輝性顔料の顔料重量濃度(PWC)が1〜20%であり、第2透明樹脂粒子の固形分全体に対する含有比率が5〜20%、粒径が4μm以下である、ことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の補修用光輝感塗膜の好適形態は、第1光輝性顔料の平均粒径Pと第1透明樹脂粒子の平均粒径Rの比(P/R)が、2/1〜20/1であること、第2光輝性顔料の平均粒径Pと第2透明樹脂粒子の平均粒径Rの比(P/R)が、2/1〜20/1であることを特徴とする。
【0009】
更に、本発明の補修用光輝感塗膜の他の好適形態は、第1光輝感塗料組成物及び/又は第2光輝感塗料組成物において、溶剤とバインダー樹脂を含有することを特徴とする。
【0010】
更にまた、本発明の補修用光輝感塗膜の更に他の好適形態は、第1光輝感塗料組成物及び/又は第2光輝感塗料組成物において、上記金属片の最大径が、5〜80μmであることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の補修用光輝感塗膜の他の好適形態は、第1光輝感塗料組成物及び/又は第2光輝感塗料組成物において、上記金属片の厚さが、0.01〜2μmであることを特徴とする。
【0012】
更に、本発明の補修用光輝感塗膜の更に他の好適形態は、第1メタリック塗膜層の膜厚及び/又は第2メタリック塗膜層の膜厚が、1〜20μmであることを特徴とする。
【0013】
更にまた、本発明の光輝感塗膜補修方法は、金属片を有する光輝性顔料と透明樹脂粒子とを含有し、前記光輝性顔料の顔料濃度(PWC)が1〜20%で、前記透明樹脂粒子の固形分全体に対する含有比率が5〜20%である光輝感塗料組成物を用いて形成されたメタリック塗膜層、クリア塗膜層をこの順に積層して成る積層塗膜を、上記補修用光輝感塗膜を用いて補修する方法であって、
補修部を砥ぐ工程、
該補修部に、第1光輝感塗料組成物を用いて形成された第1メタリック塗膜層を形成する工程、
該補修部及びその近傍に、第2光輝感塗料組成物を用いて形成された第2メタリック塗膜層を形成する工程、
を行うことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の光輝感塗膜補修方法の好適形態は、更に、該補修部及びその近傍に、クリヤ塗膜層又は濁りクリヤ塗膜層を積層を形成する工程、を行うことを特徴とする。
【0015】
更に、本発明の光輝感塗膜補修方法の他の好適形態は、更に、該補修部を焼付ける工程、を行うこと、この焼付け工程を、該補修部と非補修部との境界に溶剤を塗布してから行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、2種類の所定の光輝感塗料組成物を積層することとしたため、光輝感が均一となるように補修できる補修用光輝感塗膜及びこれを用いた光輝感塗膜補修方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の補修用光輝感塗膜について詳細に説明する。なお、本明細書及び本特許請求の範囲において、「%」は特記しない限り質量百分率を示すものとする。
【0018】
上述の如く、本発明の補修用光輝感塗膜は、第1光輝感塗料組成物を用いて形成された第1メタリック塗膜層と、第2光輝感塗料組成物を用いて形成された第2メタリック塗膜層とを積層して成る。
【0019】
また、上記第1光輝感塗料組成物は、金属片を含有する比較的大粒径の第1光輝性顔料と第1透明樹脂粒子とで構成される。
【0020】
この第1光輝性顔料の顔料重量濃度(PWC)は1〜20%とする。
PWCが1%未満では、光輝感(キラキラ感)が発現しない。20%を超えると、アルミニウムなどの金属片の均一感が増加し、光輝感(キラキラ感)が減少する。より好ましくは7〜20%であることが良い。
【0021】
この第1透明樹脂粒子の固形分全体に対する含有比率は5〜20%、粒径は1〜7μmとする。
含有比率が5%未満では、外観を保つためにクリヤ膜厚が必要となる。20%を超えると、透明樹脂粒子により凹凸が形成されて塗膜の外観性を損なう。より好ましくは7〜18%であることが良い。
また、粒径が1μm未満では、光輝感が不十分となる。7μmを超えると、凸凹が発生し外観の意匠性が低下したり、得られる塗膜の平滑性が低下する。より好ましくは3〜4μmであることが良い。
なお、この場合の固形分としては、金属片、透明樹脂粒子及びバインダー樹脂などがある。
【0022】
更に、上記第2光輝感塗料組成物は、金属片を含有する第2光輝性顔料と第2透明樹脂粒子とで構成される。
【0023】
この第2光輝性顔料の顔料重量濃度(PWC)は1〜20%とする。
PWCが1%未満では、光輝感(キラキラ感)が発現しない。20%を超えると、アルミニウムなどの金属片の均一感が増加し、光輝感(キラキラ感)が減少する。より好ましくは7〜20%であることが良い。
【0024】
この第2透明樹脂粒子の固形分全体に対する含有比率は5〜20%、粒径は4μm以下とする。
含有比率が5%未満では、外観を保つためにクリヤー膜厚が必要となる。20%を超えると、透明樹脂粒子により凹凸が形成されて塗膜の外観性を損なう。より好ましくは7〜18%であることが良い。
また、粒径が4μmを超えると、凸凹が発生し外観の意匠性が低下したり、得られる塗膜の平滑性が低下する。より好ましくは1〜2μmであることが良い。
【0025】
本発明の補修用光輝感塗膜は、上述のような2種類の光輝感塗料組成物を積層する構成により、補修塗膜の膜厚や焼付け条件が周囲の非補修部に対して変動しても、これに起因する光輝性顔料の補修塗膜表面層における配向のばらつきが極めて小さくなり、非補修部と補修部との光輝感を(ほぼ実質的に)均一にすることができる。そのため、補修部及びその近傍の光輝感が均一となり、優れた商品性を確保できる。
また、補修部とその近傍との境界を研磨する必要がないため、補修に要する時間も短縮できる。
【0026】
ここで、第1光輝性顔料の平均粒径Pと第1透明樹脂粒子の平均粒径Rの比(P/R)は、2/1〜20/1であることが好適である。P/Rが、2/1より小さいと光輝感が不十分となることがあり、20/1より大きいと凹凸が発生し外観の意匠が低下したり、得られる塗膜の平滑性が低下したりすることがある。
同様に、第2光輝性顔料の平均粒径Pと第2透明樹脂粒子の平均粒径Rの比(P/R)は、2/1〜20/1であることが好適である。
【0027】
また、本発明の補修用光輝感塗膜においては、第1光輝感塗料組成物、第2光輝感塗料組成物のいずれか一方又は双方は、上述した光輝性顔料及び透明樹脂粒子を必須成分とするが、両成分以外には、溶剤、バインダー樹脂などの各種添加剤を適宜含有できる。
【0028】
上記溶剤としては、この光輝性塗料に用いる剥離剤やトップコート剤及び下地塗膜の種類などに応じて使用できる。
具体的には、有機溶剤として、芳香族炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤及びエーテル系溶剤などを挙げることができる。
なお、光輝性顔料がペーストのような市販品として入手される場合には、このペースト中に含有されている溶剤も対象となる。
【0029】
また、上記光輝感塗料組成物においては、光輝性顔料、透明樹脂粒子及び溶剤以外の成分はできるだけ少量であることが望ましいが、必要に応じて、バインダーとして機能する樹脂、各種の硬化剤や添加剤などを含有できる。
【0030】
具体的には、上記バインダー樹脂としては、一般的に使用されている塗膜形成樹脂、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、フッ素樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂などを挙げることができる。
なお、かかるバインダー樹脂は、塗料組成物が溶剤系の場合は、その溶剤に溶解する樹脂であり、上記透明樹脂粒子とは異なるものであることが良い。また、上記バインダー樹脂は、数平均分子量が1000〜30000であることが望ましい。1000未満では塗膜物性に劣ることがあり、30000を超えると塗料組成物自体の粘度が高くなることがある。
【0031】
また、上記添加剤としては、従来公知の添加剤、例えば、表面調整剤、粘性制御材、ワキ防止剤、有機溶剤等を挙げることができる。
上記粘性制御剤としては、脂肪酸アマイドの膨潤分散体、アマイド系脂肪酸、長鎖ポリアミノアマイドのリン酸塩等のポリアマイド系のもの、酸化ポリエチレンのコロイド状膨潤分散体等のポリエチレン系のもの、有機酸スメクタイト粘土、モンモリロナイト等の有機ベントナイト系のもの、ケイ酸アルミ、硫酸バリウム等の無機顔料、顔料の形状により粘性が発現する偏平顔料等、が挙げられる。
【0032】
更に、上記硬化材としては、特に限定されず、上記バインダーに合わせて選択することができる。例えば、メラミン樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物等を挙げることができる。
【0033】
更に、本発明の補修用光輝感塗膜において、第1光輝性顔料、第2光輝性顔料のいずれか一方又は双方に含まれる金属片は、金属を粉砕して得られるものであれば特に限定されるものではない。
【0034】
上記金属片の大きさは、その最大径(即ち、対象とする金属片を平面観察し、その輪郭(外形)と2点で交わる線分を想定した際の最長線分の長さ)が5〜80μm程度であることが好適であり、更に20〜60μm程度であることがより好適である。
最大径が5μm未満では、金属片が不規則に配向して光輝感が不足し易く、80μmを超えると、得られる塗膜の密着性が不十分となり易い。
【0035】
また、上記金属片の厚さは、一般に0.01〜2μm程度が好適である。厚さが0.01μm未満では薄すぎて反射光が少なくなり易く、2μmを超えると粒子感が強すぎて、いずれも光輝感(キラキラ感)が不足し易い。
【0036】
更に、上記金属片としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)及び銅(Cu)等を挙げることができる。人間が好ましく感じる金属感に近づける観点からは、アルミニウム膜から得るのが好適である。
【0037】
一方、本発明の補修用光輝感塗膜において、第1透明樹脂粒子及び第2透明樹脂粒子は、塗料組成物中において、光輝性顔料の金属片によって形成される凹凸の間に入り込むので、得られる塗膜表面を平滑なままとし、光輝感の良好な塗膜が形成できる。
よって、かかる透明樹脂粒子の使用により、クリヤ塗料の使用量を低減でき、薄くても外観性の良好なクリヤ層を形成することが可能である。また、クリヤ塗膜層の厚膜化などによって生ずるタレや生産効率の低下という従来の問題を解決することができる。
【0038】
また、かかる透明樹脂粒子は、透明性を満足していれば特に限定されるものではなく、例えば、架橋アクリル樹脂、架橋ポリスチレン、スチレン−アクリル共重合体、ポリメチルメタクリレート及びポリウレタンなどを挙げることができる。
なお、かかる透明樹脂粒子は、無色透明のみならず有色透明(代表的にはカラークリヤー)であってもよい。
【0039】
他方、本発明の補修用光輝感塗膜において、上述の光輝感塗料組成物を用いて形成された第1メタリック塗膜層の膜厚、第2メタリック塗膜層の膜厚のいずれか一方又は双方は、1〜20μmであることが好適である。
これにより、補修部とその近傍の光輝感をより均一化できる。
1μm未満では光輝性顔料(金属片)の存在量が不十分となり易く、20μmを超えると金属片の配向が不規則になり易く、いずれも光輝感(キラキラ感)が不十分になることがある。
【0040】
また、第2メタリック塗膜層の外表面には、クリヤ塗膜層又は濁りクリヤ塗膜層を積層することができる。
本発明では、クリヤ塗膜層や濁りクリヤ塗膜層を従来より薄膜化できるの有効である。また、薄膜化しても良好な光輝感を発現させることができる。
【0041】
ここで、上記クリヤ塗膜層は、着色顔料を含まないクリヤ塗料から形成され、上記濁りクリヤ塗膜層は、着色顔料を含む濁りクリヤ塗料から形成され、半透明感を有する。
また、クリヤ塗料及び濁りクリヤ塗料は、双方とも一般的な塗料を用いることができ、溶剤型塗料、粉体塗料のいずれでも使用可能である。溶剤型塗料としては、一液型塗料でも、二液型ウレタン樹脂塗料のような二液型塗料であっても良い。
【0042】
更に、上記クリヤ塗膜層又は上記濁りクリヤ塗膜層の膜厚は、30〜70μmであることが好適である。
これにより、補修部とその近傍の光輝感をより均一化できる。
膜厚が30μm未満では、光輝感が不足し易くなることがあり、70μmを超えると塗料使用時にタレが発生し易くなる。
【0043】
なお、第1メタリック塗膜層が下地塗膜層(プライマー)を有する場合には、下地塗膜層が被塗物表面と接するように配設されるのが通常であるが、鋼板などの金属板上に補修用光輝感塗膜を形成する際には、下地塗膜層と金属板表面との間に電着塗装などの更なる下地塗膜層を形成してもよい。
【0044】
次に、本発明の光輝感塗膜補修方法について説明する。
本発明の光輝感塗膜補修方法は、上述の補修用光輝感塗料組成物を塗装する方法である。
即ち、補修部を砥ぐ工程と、該補修部に、第1光輝感塗料組成物を用いて形成された第1メタリック塗膜層を形成する工程と、該補修部及びその近傍に、第2光輝感塗料組成物を用いて形成された第2メタリック塗膜層を形成する工程と、を行うことによる。
【0045】
具体的には、補修部を砥ぐ工程では、サンドペーパーなどを用いて、補修部やその近傍を砥ぐことができる。
【0046】
また、塗膜層を形成する工程では、1メタリック塗膜層及び第2メタリック塗膜層の塗布方法は、特に限定されず、例えば、スプレー塗装、ロールコーター法等を適宜採用できる。
このときは、補修用光輝感塗膜の乾燥膜厚が20〜40μmになるように塗装することが好適である。
【0047】
なお、上記塗装工程では、補修用光輝感塗料組成物の塗料形態は、溶剤系、ハイソリッド系、水性系又は粉体系のいずれでも良く、また一液型、二液型、多液型なども問わない。また、色相も、淡彩色、濃彩色を問わない。
【0048】
また、補修用光輝感塗料組成物には、上記光輝性顔料及び透明樹脂粒子のほかに、更に、着色顔料や体質顔料などを含有できる。
これら顔料は、1種又は2種以上を適宜組合わせて使用できる。
【0049】
上記着色顔料としては、特に限定されず、例えば、アゾキレート系顔料、不溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ顔料、ぺリノン系顔料、ぺリレン系顔料、ジオキサン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属錯体顔料等の有機系着色顔料や、黄鉛、黄色酸化鉄、ベンガラ、カーボンブラック、二酸化チタン等の無機系着色顔料などが挙げられる。
【0050】
上記体質顔料としては、例えば、上述した透明樹脂粒子と同様の材料を使用できる。
平滑化効果を目的とせずに、体質顔料として添加する場合は、平均粒径が1〜15μmのもので、且つ塗料組成物の固形分100重量部中、3重量部以下で添加することができる。
【0051】
更に、光輝性顔料、透明樹脂、その他の顔料、バインダー樹脂、その他の成分は、当業者に周知の方法、即ち、補修用光輝感塗料組成物の塗料形態に従って、サンドグラインダーミル、ディスパー等を用いて、混練・分散することなどにより製造できる。
【0052】
更にまた、上記塗装工程においては、補修用光輝感塗料組成物を塗装する基材は、例えば、プラスチック、金属、ガラス、発泡体及びこれらの成形品等が挙げられる。
また、塗装した塗膜上に、補修用光輝感塗料組成物を塗装することもできる。
【0053】
上記基材は、予めプライマーを塗装したものを用いることが望ましい。
このときは、プライマー層上にウェット・オン・ウェットで、補修用光輝感塗料組成物を塗装することができる。
上記プライマーとしては、通常プライマーが要求される性質、即ち、基材と補修用光輝感塗料組成物との密着性、耐溶剤性、塗膜硬度等が良好であれば、特に限定されず、既存のものを適宜使用できる。
【0054】
更に、第1メタリック塗膜層及び第2メタリック塗膜層の塗布後は、該補修部を、乾燥し焼付けることができる。
このとき、乾燥、塗膜化する方法は特に限定されず、例えば、常温乾燥、強制乾燥、常温硬化、焼付け硬化などを挙げることができる。また、焼付け時間は、例えば、80〜150℃で5〜30分などを採用できる。
【0055】
更にまた、上記焼付け工程は、該補修部と非補修部との境界に溶剤を塗布してから行うことが好適である。
このときは、該補修部と非補修部との金属感の差が少なくなり得る。
上記溶剤としては、例えば、酢酸エチル、トルエン、酢酸ブチル、エチル−3−エトキシプロピオネート、ソルベッソ150(エクソン石油社製炭化水素系溶剤)などを挙げることができる。
【0056】
また、該補修部及びその近傍に、クリヤ塗膜層又は濁りクリヤ塗膜層を積層する工程、を行うことが好適である。
このときは、より高外観となり得る。
【0057】
以上説明したように、本発明の光輝感塗膜補修方法によれば、補修部及びその近傍に、キラキラした強い光沢感を有する光輝感外観を付与することができる。
従って、取っ手等の自動車部品や自動車車体など、更には電化製品、その他の物品に、作業性が良好且つ安価な工程で光輝感塗膜を付与できる。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
また、以下の実施例及び比較例では、補修用光輝感塗膜に相当する光輝感外観塗膜を作製した。
【0059】
(実施例1〜9、比較例1〜7)
[塗板の作製]
リン酸亜鉛処理した厚み0.8mm、70mm×150mmのダル鋼板に、カチオン電着塗料(商品名:パワートップU600M、日本ペイント社製カチオン型電着塗料)を、乾燥膜厚が20μmとなるように電着塗装した後、160℃で30分間焼き付けた。
その後、グレーの中塗り(商品名:ハイエピコNo.560、日本油脂社製)を30μm塗装し、140℃で30分間焼き付けた。
【0060】
次に、第1層(下塗り塗膜層)、第2層(光輝感塗膜層)、第3層(クリヤ上塗り層)から成る積層塗膜を形成した。
第1層は、乾燥膜厚が3μmになるようにスプレー塗装した。第2層は、乾燥膜厚が15μmとなるようにスプレー塗装した。第3層は、乾燥膜厚が30μmとなるようにスプレー塗装した。
その後、140℃で30分間焼き付けた。
【0061】
なお、実施例1〜9及び比較例1〜7の第1層、第2層では、光輝感顔料の重量濃度、ビーズの重量濃度、ビーズの粒径を表1及び表2に示すように調製した。
また、第1〜3層の塗料としては、以下のものを用いた。
【0062】
・第1層用塗料
溶剤型シルバー塗料(商品名:ベルコートNo.6010、日本油脂社製アクリル・メラミン系塗料)を用いた。
【0063】
・第2層用塗料
光輝感塗料として、アルミニウム膜を粉砕して得られるアルミニウム粉を含有した塗料を調製した。かかるアルミニウム粉としては、市販のアルミニウム粉ペースト(商品名:アルペースト5422NS、東洋アルミニウム社製、アルミニウム粉含有量75%)を用いた。
透明樹脂粒子として、透明ビーズ(商品名:MX1000、総研化学社製、架橋アクリル粒子)を用いた。
【0064】
・第3層用塗料
溶剤型クリア(商品名:ベルコートNo.6200、日本油脂社製アクリル・メラミン系塗料)を用いた。
【0065】
[性能評価]
以上のようにして得られた実施例1〜9及び比較例1〜7の塗膜について、光輝感外観としての光沢感、クリヤ膜厚、及び物理的性能としての密着性を以下のようにして評価した。得られた結果を表1及び表2に示す。
【0066】
<光沢感>
塗膜外観を目視評価した。なお、表中の記号の意味は下記の通りである。
◎:かなり光沢感がある。
○:光沢感がある。
×:光沢感がない。
【0067】
<クリヤ膜厚>
膜厚と塗膜外観(目視)との関係で評価した。表中の記号の意味は下記の通りである。
◎:30μm程度でも光沢感がある。
○:40μm程度でも光沢感がある。
△:50μm程度でも光沢感がある。
×:60μm以上でも光沢感がない。
【0068】
<密着性>
カッターナイフ(JIS K 5400の7.2(2)(e)に規定)で塗膜に、塗膜素地に達する直交する縦横11本ずつの平行線を2mmの間隔で引き、正方形の碁盤目を形成した。碁盤目状の塗膜の上にセロハンテープ(JIS Z 1522に規定)を密着させて上方に一気に引き剥がし、100個の碁盤目中の塗膜の残った碁盤目の数を測定した。
【0069】
【表1】

【0070】
【表2】

【0071】
表1及び表2から明らかなように、本発明の範囲に属する実施例1〜9の光輝感外観塗膜は、比較例1〜7の光輝感外観塗膜に比べて、光輝感、補修部と非補修部との金属感の差、クリヤ膜厚、密着性において、良好な結果を示している。
【0072】
(実施例10)
[補修方法1]
図1に示すように、実施例1で得た光輝感外観塗膜にブツを生じさせ、これを補修した。
まず、工程1では、実施例1の光輝感塗膜5(焼付け硬化されている)において、ブツがある不具合部位(補修部)6をサンドペーパで砥いだ。
【0073】
次に、工程2では、補修部6に、光輝感外観塗膜層4と同一種類の塗膜を形成する光輝感外観塗料7(補修塗膜A)を塗装した。
【0074】
また、工程3では、補修塗膜A及びその周辺に、光輝感外観塗料7に平均粒径が4μm以下の透明な樹脂ビーズを含有した光輝感外観塗料8(補修塗膜B)を塗装した。
【0075】
更に、工程4では、補修塗膜B及びその周辺に、クリヤ塗膜9を形成するクリヤ上塗塗料9(補修塗料)を塗装した。
【0076】
また、工程5では、塗装された補修部と補修されていない部分との境界部にシンナーを塗布して、塗装された光輝感外観塗料7,8とクリヤ上塗塗料9を焼付けた(80℃×30分)。
【0077】
これらの工程により、補修部及びその周辺と補修部以外の部分との光輝感がほぼ同じになった。このため、補修部周辺を研磨することが省略でき、研磨に要する時間を短縮できる。
【0078】
(実施例11)
[補修方法2]
図2に、実施例2で得た光輝感塗膜を補修する方法を示す。
まず、工程1では、実施例2の光輝感塗膜5(焼付け硬化されている)において、ブツがある不具合部位(補修部)6をサンドペーパで砥いだ。
【0079】
次に、工程2では、補修部6に下塗り塗膜層10を塗装した。下塗り塗膜層10及びその周辺に、光輝感外観塗膜層4と同一種類の塗膜を形成する光輝感外観塗料7(補修塗膜A)を塗装した。
【0080】
また、工程3では、補修塗膜A及びその周辺に、光輝感外観塗料7に平均粒径が4μm以下の透明な樹脂ビーズを含有した光輝感外観塗料8(補修塗膜B)を塗装した。
【0081】
更に、工程4では、補修塗膜B及びその周辺に、クリヤ塗膜9を形成するクリヤ上塗塗料9(補修塗料)を塗装した。
【0082】
また、工程5では、塗装された補修部と補修されていない部分との境界部にシンナーを塗布して、塗装された光輝感外観塗料7及び8、クリヤ上塗塗料9を焼付けた(80℃×30分)。
【0083】
これらの工程により、補修部及びその周辺と補修部以外の部分との艶がほぼ同じになった。このため、補修部周辺を研磨することが省略でき、研磨に要する時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】光輝感塗膜補修方法の一例を示す断面概略図である。
【図2】光輝感塗膜補修方法の他の例を示す断面概略図である。
【符号の説明】
【0085】
1 電着塗膜層
2 中塗り塗膜層
3 下塗り塗膜層
4 光輝感外観塗膜層
5 クリヤ塗膜層
6 サンドペーパー砥ぎ部
7 光輝感外観補修塗料(A)
8 光輝感外観補修塗料(B)
9 クリヤ補修塗料
10 下塗り補修塗料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1光輝感塗料組成物を用いて形成された第1メタリック塗膜層と、第2光輝感塗料組成物を用いて形成された第2メタリック塗膜層とを積層して成る補修用光輝感塗膜であって、
上記第1光輝感塗料組成物は、金属片を含有する第1光輝性顔料と第1透明樹脂粒子とで構成され、第1光輝性顔料の顔料重量濃度(PWC)が1〜20%であり、第1透明樹脂粒子の固形分全体に対する含有比率が5〜20%、粒径が1〜7μmであり、
上記第2光輝感塗料組成物は、金属片を含有する第2光輝性顔料と第2透明樹脂粒子とで構成され、第2光輝性顔料の顔料重量濃度(PWC)が1〜20%であり、第2透明樹脂粒子の固形分全体に対する含有比率が5〜20%、粒径が4μm以下である、ことを特徴とする補修用光輝感塗膜。
【請求項2】
第1光輝性顔料の平均粒径Pと第1透明樹脂粒子の平均粒径Rの比(P/R)が、2/1〜20/1であることを特徴とする請求項1に記載の補修用光輝感塗膜。
【請求項3】
第2光輝性顔料の平均粒径Pと第2透明樹脂粒子の平均粒径Rの比(P/R)が、2/1〜20/1であることを特徴とする請求項1又は2に記載の補修用光輝感塗膜。
【請求項4】
第1光輝感塗料組成物及び/又は第2光輝感塗料組成物において、溶剤とバインダー樹脂を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の補修用光輝感塗膜。
【請求項5】
第1光輝感塗料組成物及び/又は第2光輝感塗料組成物において、上記金属片の最大径が、5〜80μmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つの項に記載の補修用光輝感塗膜。
【請求項6】
第1光輝感塗料組成物及び/又は第2光輝感塗料組成物において、上記金属片の厚さが、0.01〜2μmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つの項に記載の補修用光輝感塗膜。
【請求項7】
第1光輝感塗料組成物及び/又は第2光輝感塗料組成物において、上記金属片が、アルミニウム膜から得られたものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つの項に記載の補修用光輝感塗膜。
【請求項8】
第1メタリック塗膜層の膜厚及び/又は第2メタリック塗膜層の膜厚が、1〜20μmであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つの項に記載の補修用光輝感塗膜。
【請求項9】
第2メタリック塗膜層の外表面に、クリヤ塗膜層又は濁りクリヤ塗膜層を積層したことを特徴とする請請求項1〜8のいずれか1つの項に記載の補修用光輝感塗膜。
【請求項10】
上記クリヤ塗膜層又は上記濁りクリヤ塗膜層の膜厚が、30〜70μmであることを特徴とする請求項9に記載の補修用光輝感塗膜。
【請求項11】
被塗物上に、金属片を有する光輝性顔料と透明樹脂粒子とを含有し、前記光輝性顔料の顔料濃度(PWC)が1〜20%で、前記透明樹脂粒子の固形分全体に対する含有比率が5〜20%である光輝感塗料組成物を用いて形成されたメタリック塗膜層、クリア塗膜層をこの順に積層して成る積層塗膜を、請求項1〜10のいずれか1つの項に記載の補修用光輝感塗膜を用いて補修する方法であって、
補修部を砥ぐ工程、
該補修部に、第1光輝感塗料組成物を用いて形成された第1メタリック塗膜層を形成する工程、
該補修部及びその近傍に、第2光輝感塗料組成物を用いて形成された第2メタリック塗膜層を形成する工程、
を行うことを特徴とする光輝感塗膜補修方法。
【請求項12】
更に、該補修部及びその近傍に、クリヤ塗膜層又は濁りクリヤ塗膜層を積層する工程、を行うことを特徴とする請求項11に記載の光輝感塗膜補修方法。
【請求項13】
更に、該補修部を焼付ける工程、を行うことを特徴とする請求項11又は12に記載の光輝感塗膜補修方法。
【請求項14】
上記焼付け工程を、該補修部と非補修部との境界に溶剤を塗布してから行うことを特徴とする請求項13に記載の光輝感塗膜補修方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−54766(P2007−54766A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−245288(P2005−245288)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】