説明

補償装置および試験装置

【課題】消費電力を抑制する。
【解決手段】電源装置から印加された電源電圧により動作する対象回路の消費電流を補償する補償装置であって、電源装置から対象回路へと電源電圧を供給するための電源配線に接続され、電源配線に流れる電流を消費する電流消費部と、電流消費部に印加される電源電圧に応じて電流消費部により消費される電流を変化させる電流制御部と、電流消費部の基準電流量を変更する設定部と、を備え、設定部は、対象回路がスタンバイ状態において、基準電流量を低減する補償装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補償装置および試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
C−MOS論理回路等は、その動作内容によって消費電流が大きく変動する。C−MOS論理回路等の消費電流が大きく変動すると、電源配線に流れる電流の変動により電源ノイズが発生される。特許文献1および特許文献2には、C−MOS論理回路等の消費電流の変動を補償することにより、消費電流の変動に伴い発生する電源ノイズを低減する補償回路が記載されている。
特許文献1 特開2006−229622号公報
特許文献2 特開2007−096520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述の従来の補償回路は、C−MOS論理回路が安定動作している状態でも一定の電流を消費する。これにより、従来の補償回路は、消費電力が高くなってしまっていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、電源装置から印加された電源電圧により動作する対象回路の消費電流を補償する補償装置であって、前記電源装置から前記対象回路へと電源電圧を供給するための電源配線に接続され、前記電源配線に流れる電流を消費する電流消費部と、前記対象回路の電源電圧に応じて前記電流消費部により消費される電流を変化させる電流制御部と、前記電流消費部の基準電流量を変更する設定部と、を備える補償装置、および、このような補償装置を備える試験装置を提供する。
【0005】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本実施形態に係る電源補償システム10の構成を示す。
【図2】本実施形態に係る補償装置40の第1の構成例を対象回路30とともに示す。
【図3】本実施形態に係る補償装置40の第2の構成例を対象回路30とともに示す。
【図4】図4(A)は対象回路30の消費電流の時間変化を示し、図4(B)は補償装置40に流れる電流の時間変化を示し、図4(C)は対象回路30の消費電流および補償装置40に流れる電流の合計電流の時間変化を示す。
【図5】本実施形態に係る試験装置100の構成を被試験デバイス200とともに示す。
【図6】本実施形態に係る試験装置本体部110の構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0008】
図1は、本実施形態に係る電源補償システム10の構成を示す。本実施形態に係る電源補償システム10は、電源装置20と、対象回路30と、補償装置40とを備える。
【0009】
電源装置20は、予め定められた直流の電源電圧を発生する。電源装置20は、発生した電源電圧を電源配線22を介して対象回路30に印加する。
【0010】
対象回路30は、電源配線22に流れる電流を消費して動作する。即ち、対象回路30は、電源装置20から電源配線22を介して印加された電源電圧により動作する。
【0011】
対象回路30は、一例として、C−MOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)の論理回路である。対象回路30は、動作内容によって消費電流が変化する。対象回路30は、一例として、通常の動作を行うアクティブ状態と消費電力を抑制した動作を行うスタンバイ状態とに動作状態が切り替わる。対象回路30は、スタンバイ状態においては、主な内部回路の動作が停止され、消費電流の変動も抑制される。
【0012】
補償装置40は、電源配線22に流れる電流を消費する。即ち、補償装置40は、電源装置20から供給された電力を消費する。
【0013】
補償装置40は、電源配線22上における電源装置20より対象回路30の近くに、対象回路30に対して並列に接続される。補償装置40は、電源配線22上における対象回路30の直近に接続されてもよい。また、補償装置40は、対象回路30と同一の基板上に設けられてもよい。また、補償装置40は、対象回路30と同一のチップ上に形成されてもよい。
【0014】
補償装置40は、当該補償装置40に印加される電源電圧の変動に応じて、消費する電流量を変化させる。より詳しくは、補償装置40は、印加される電源電圧が予め定められた値の状態において一定の電流量(基準電流量)を消費する。そして、補償装置40は、印加される電源電圧が増加した場合には電圧増加量に応じて消費電流量を大きくし、印加される電源電圧が減少した場合には電圧減少量に応じて消費電流量を小さくする。これにより、補償装置40は、対象回路30の消費電流を補償して、電源装置20から対象回路30側に流れる電流を一定として、電流変動に伴い発生する電源ノイズを低減することができる。
【0015】
さらに、補償装置40は、電源電圧が予め定められた値の状態において流れるべき基準電流量を、対象回路30の状態に応じて変更する。補償装置40は、一例として、対象回路30がスタンバイ状態の場合には、アクティブ状態の場合と比較して、基準電流量を低減する。これにより、補償装置40は、スタンバイ状態において消費電力を抑制することができる。
【0016】
図2は、本実施形態に係る補償装置40の第1の構成例を対象回路30とともに示す。補償装置40は、電流消費部42と、電流制御部44と、設定部46とを有する。
【0017】
電流消費部42は、電源装置20から対象回路30へと電源電圧を供給するための電源配線22に接続され、電源配線22に流れる電流を消費する。また、電流消費部42は、電流制御部44により消費電流量が制御される。
【0018】
電流消費部42は、一例として、DAコンバータである。このDAコンバータは、抵抗ラダー回路と、抵抗ラダー回路の合成抵抗値を切り替えるスイッチ群とを含む。このDAコンバータは、リファレンス電圧に代えて電源配線22から電源電圧が印加され、電流制御部44によりスイッチ群が切り替えられる。これにより、このDAコンバータは、電流制御部44により合成抵抗値が切り替えられて、消費電流が変更される。
【0019】
電流制御部44は、電流消費部42に印加される電源電圧に応じて電流消費部42により消費される電流を変化させる。より具体的には、電流制御部44は、電流消費部42に印加される電源電圧が予め定められた基準電圧値の場合には、電流消費部42により消費される電流を一定の電流量とする。また、電流制御部44は、電流消費部42に印加される電源電圧が増加した場合には電圧増加量に応じて電流消費部42の消費電流量を大きくし、印加される電源電圧が減少した場合には電圧減少量に応じて電流消費部42の消費電流量を小さくする。
【0020】
第1の構成例においては、電流制御部44は、発振器52と、周期調整部54と、位相比較器56と、カウンタ部58とを含む。発振器52は、電流消費部42に印加される電源電圧に応じて周波数が変化する周期信号を出力する。発振器52は、一例として、電源配線22上における電流消費部42への配線の分岐部分の電源電圧に応じて周期信号の周波数を変化させる。発振器52は、リングオシレータであってもよい。この場合、リングオシレータは、電源配線22からの電源電圧が駆動電圧として印加される複数のインバータ素子を含み、これら複数のインバータ素子がリング状に接続された構成となっている。
【0021】
周期調整部54は、対象回路30の電源電圧が予め定められた電圧のときに発振器52から出力されるべき周期信号の周波数を調整する。より具体的には、周期調整部54は、対象回路30の電源電圧が予め定められた電圧のときに発振器52から出力されるべき周期信号の周波数が、外部から入力される基準クロックの整数倍の周波数または整数分の1の周波数と一致するように調整する。また、この場合、周期調整部54は、発振器52から出力される周期信号の周期を周波数カウンタで測定して、対象回路30の電源電圧が予め定められた電圧のときに発振器52から出力されるべき周期信号の周波数を調整してもよい。
【0022】
位相比較器56は、外部から入力される基準クロックの位相と、発振器52から出力される周期信号の位相とを比較する。位相比較器56は、一例として、基準クロックおよび周期信号のうちの一方の位相が進んでいればH論理となり、他方の位相が進んでいればL論理となる比較信号を出力する。
【0023】
カウンタ部58は、位相比較器56の比較結果に応じてカウント値を増減させる。カウンタ部58は、一例として、位相比較器56による位相の比較結果を表す比較信号がH論理であればカウント値を増加させ、L論理であればカウント値を減少させる。
【0024】
そして、カウンタ部58は、カウント値に応じて、電流消費部42の電流消費量を変更する。カウンタ部58は、一例として、カウント値をDAコンバータである電流消費部42の入力に与えて合成抵抗値を変化させて、DAコンバータの消費電流量を変更する。これにより、電流消費部42は、カウント値に応じた電流を消費することができる。
【0025】
カウンタ部58は、比較信号の時系列変化をデジタルフィルタリングするフィルタ機能を有してもよい。カウンタ部58は、比較信号の値を増幅または減衰させてカウント値のゲインを調整する機能を有してもよい。また、カウンタ部58は、比較信号のサンプルを間引くことによりカウント値のゲインを調整する機能を有してもよい。このようなカウンタ部58は、適切な応答特性で電流消費部42の電流消費量を制御することができる。
【0026】
設定部46は、電流消費部42の基準電流量を、当該補償装置40の外部からの設定に応じて変更する。ここで、基準電流量とは、電流消費部42に印加される電源電圧が予め定められた値の場合に、電流消費部42に流すべき電流量をいう。電源電圧が予め定められた値とは、例えば、対象回路30の設計仕様で定められた電源電圧である。即ち、対象回路30の消費電流が一定で、設計仕様で定められた電源電圧が対象回路30に安定して印加されている状態においては、電流消費部42は、基準電流量の電流を流す。
【0027】
設定部46は、カウンタ部58の基準となるカウント値を変更することにより、電流消費部42の基準電流量を変更する。カウンタ部58の基準となるカウント値とは、基準クロックと発振器52から出力される周期信号との位相差が0で安定している状態(例えば比較信号のH論理およびL論理がほぼ同一の割合で出力される状態)におけるカウント値である。例えば、設定部46は、カウンタ部58から出力されるカウント値のオフセット量を変更することにより、基準となるカウント値を変更する。
【0028】
設定部46は、一例として、対象回路30がアクティブ状態において、基準電流量を予め定められた第1設定値に設定する。また、設定部46は、対象回路30がスタンバイ状態の場合には、基準電流量を第1設定値よりも低い第2設定値に低減する。例えば、第2設定値は、0であってもよい。これにより、設定部46は、対象回路30がスタンバイ状態の場合に、電流消費部42が消費する電流量を低減することができる。
【0029】
設定部46は、一例として、対象回路30から、当該対象回路30のモードを表すモード信号を受け取って、基準電流量を変更してもよい。また、設定部46は、一例として、対象回路30のモードを制御する制御装置からの信号に応じて、基準電流量を変更してもよい。
【0030】
以上のような補償装置40によれば、対象回路30がアクティブ状態で動作している場合には、対象回路30の消費電流を補償して、電源装置20から対象回路30側に流れる消費電流を一定の値に安定化させることができる。さらに、補償装置40によれば、対象回路30がスタンバイ状態で動作している場合には、消費電流を抑制することができる。
【0031】
なお、設定部46は、アクティブ状態とスタンバイ状態の切り換え時のみならず、対象回路30の交換により対象回路30の種類が変更された場合に、基準電流量を変更してもよい。設定部46は、一例として、消費電流の変動が大きい種類の対象回路30が接続された場合には、基準電流量を大きくし、消費電流の変動が小さい種類の対象回路30が接続された場合には、基準電流量を小さくしてもよい。これにより、補償装置40は、接続された対象回路30を補償するために適した電流を消費することができる。
【0032】
図3は、本実施形態に係る補償装置40の第2の構成例を対象回路30とともに示す。補償装置40の第2の構成例は、図2に示した第1の構成例と略同一の構成および機能であるので、略同一および機能の構成要素には、図面中に同一の符号を付けて、相違点を除き説明を省略する。
【0033】
第2の構成例に係る電流制御部44は、発振器52および周期調整部54に代えて、可変遅延回路62および遅延量調整部64を含む。可変遅延回路62は、基準クロックが入力され、入力された基準クロックを電流消費部42に印加された電源電圧に応じた遅延時間分遅延させた周期信号を出力する。可変遅延回路62は、一例として、電源配線22上における電流消費部42への配線の分岐部分の電源電圧に応じて、基準クロックの遅延時間を変化させる。可変遅延回路62は、直列に接続された複数のバッファであってもよい。この場合、複数のバッファは、電源配線22から電源電圧が供給され、供給された電源電圧により駆動する。
【0034】
遅延量調整部64は、対象回路30の電源電圧が予め定められた電圧のときに可変遅延回路62から出力されるべき周期信号の遅延量を調整する。より具体的には、遅延量調整部64は、対象回路30の電源電圧が予め定められた電圧のときに可変遅延回路62から出力されるべき周期信号の遅延時間が、基準クロックの整数倍の周期または整数分の1の周期と一致するように調整する。また、この場合、遅延量調整部64は、可変遅延回路62から出力される周期信号の遅延時間を周波数カウンタで測定して、対象回路30の電源電圧が予め定められた電圧のときに可変遅延回路62から出力されるべき周期信号の遅延時間を調整してもよい。
【0035】
図4(A)は対象回路30の消費電流の時間変化を示し、図4(B)は補償装置40に流れる電流の時間変化を示し、図4(C)は対象回路30の消費電流および補償装置40に流れる電流の合計電流の時間変化を示す。
【0036】
対象回路30は、スタンバイ状態においては、例えば、リーク電流、アナログ回路のDC電流およびクロックの入力に関わる電流等を消費する。従って、図4(A)のスタンバイ期間に示されるように、対象回路30は、スタンバイ状態においては、消費する電流の変動が少なく安定している。
【0037】
これに対して、対象回路30は、アクティブ状態においては、基本的に全ての回路が動作する。従って、図4(A)のアクティブ期間に示されるように、対象回路30は、アクティブ状態においては、動作率およびマーク率によって消費電流が大きく変動する。
【0038】
また、図4(B)のアクティブ期間に示されるように、補償装置40は、アクティブ期間においては、アクティブ時の基準電流量(第1設定値)を中心として、対象回路30の消費電流と同一の絶対値であって逆符号の電流を流す。これにより、補償装置40は、図4(C)のアクティブ期間に示されるように、対象回路30による消費電流の変化を相殺して、対象回路30に流れる電流と当該補償装置40に流れる電流との合計電流を、一定とすることができる。これにより、補償装置40は、対象回路30の消費電流の変化による電源ノイズを抑制することができる。
【0039】
また、図4(B)のスタンバイ期間に示されるように、補償装置40は、スタンバイ期間においては、スタンバイ時の基準電流量(第2設定値、例えば0)を流す。これにより、図4(C)のスタンバイ期間に示されるように、補償装置40は、合計電流を非常に小さくすることができる。
【0040】
また、図4(B)の遷移期間(増加)に示されるように、補償装置40の設定部46は、スタンバイ期間からアクティブ期間へと移る遷移期間においては、基準電流量を第2設定値から第1設定値へと徐々に増加させる。また、図4(B)の遷移期間(減少)に示されるように、補償装置40の設定部46は、アクティブ期間からスタンバイ期間へと移る遷移期間においては、基準電流量を第1設定値から第2設定値へと徐々に減少させる。
【0041】
ここで、設定部46は、対象回路30がアクティブ状態となる前に基準電流量を増加させて、対象回路30がアクティブ状態となった時点においては、基準電流量を第1設定値としている。また、設定部46は、対象回路30がスタンバイ状態となった後に基準電流量を減少させて、対象回路30がアクティブ状態である時点においては、基準電流量を第1設定値としている。これにより、設定部46は、対象回路30がアクティブ状態において、確実に、消費電流を補償することができる。
【0042】
さらに、設定部46は、基準電流量を変化させる場合、電源装置20の時定数よりも大きな時定数により変化させる。即ち、設定部46は、電源装置20の応答帯域の上限よりも低い帯域で、基準電流量を変化させる。更に、言い換えれば、設定部46は、電源装置20の応答速度の上限よりも低い速度で基準電流量を変化させる。これにより、設定部46は、電流消費部42の基準電流量の変化によって電源配線22上の電源電圧の変動が生じないので、電流制御部44の回路が応答せずに、精度良く基準電流量を設定することができる。
【0043】
図5は、本実施形態に係る試験装置100の構成を被試験デバイス200とともに示す。本実施形態の試験装置100は、試験装置本体部110と、パフォーマンスボード120と、ボード上補償装置130とを備え、被試験デバイス200を試験する。
【0044】
試験装置本体部110は、被試験デバイス200を試験するための試験信号を発生して、被試験デバイス200に印加する。更に、試験装置本体部110は、試験信号を印加したことに応じて被試験デバイス200から出力される応答信号を取得し、取得した応答信号を期待値と比較して被試験デバイス200の良否を判定する。
【0045】
パフォーマンスボード120は、被試験デバイス200を載置する。パフォーマンスボード120は、被試験デバイス200と試験装置本体部110との間を接続するための配線が形成されている。また、パフォーマンスボード120は、被試験デバイス200に電源電圧を供給するための電源配線122が形成されている。
【0046】
ボード上補償装置130は、パフォーマンスボード120上における被試験デバイス200の近傍に設けられる。ボード上補償装置130は、電源配線122に流れる電流を消費して被試験デバイス200の消費電流を補償する。これにより、ボード上補償装置130は、被試験デバイス200の消費電流の変動に応じた電源ノイズの発生を抑制することができる。なお、ボード上補償装置130は、図1〜図4を参照して説明した補償装置40と同一の機能および構成を有しており、詳細な説明を省略する。
【0047】
さらに、ボード上補償装置130内の設定部46は、被試験デバイス200から、パフォーマンスボード120上の配線を介して、当該被試験デバイス200のモードを示すモード信号を受け取る。そして、ボード上補償装置130は、受け取ったモード信号に応じて基準電流量を変更する。これにより、ボード上補償装置130は、試験装置本体部110の制御負担を軽減し、更に、試験装置本体部110とボード上補償装置130との間の制御線を無くすことができる。なお、ボード上補償装置130は、試験装置本体部110からの制御に応じて基準電流量を変更するものであってもよい。また、ボード上補償装置130は、試験装置本体部110からモードを示すモード信号を受け取ってもよい。
【0048】
また、ボード上補償装置130の設定部46は、被試験デバイス200に電源ノイズを印加する耐性試験において、電流消費部42により消費される電流を予め定められたパターンに応じて変化させてもよい。例えば、ボード上補償装置130の設定部46は、メモリ等に記録されたパターンに応じてカウント値の値を変更する。これにより、試験装置100は、比較的に容易にノイズ耐性試験を実行させることができる。
【0049】
図6は、本実施形態に係る試験装置本体部110の構成を示す。試験装置本体部110は、タイミング発生器140と、パターン発生器142と、信号供給部144と、信号取得部146と、電源装置150と、本体内補償装置160とを有する。
【0050】
タイミング発生器140は、試験信号の発生タイミングの基準となるタイミング信号および応答信号と期待値とを比較タイミングの基準となるストローブ信号を発生する。パターン発生器142は、試験信号の波形パターンを表すパターン信号および応答信号の期待値を表す期待値信号を発生する。
【0051】
信号供給部144は、タイミング発生器140により発生されたタイミング信号およびパターン発生器142により発生されたパターン信号に基づき、被試験デバイス200に印加すべき試験信号を生成する。そして、信号供給部144は、生成した試験信号を被試験デバイス200に印加する。
【0052】
信号取得部146は、被試験デバイス200から出力された応答信号を取得する。そして、信号取得部146は、タイミング発生器140により発生されたストローブ信号のタイミングにおいて、応答信号の論理値とパターン発生器142により発生された期待値とを比較して、被試験デバイス200の良否を判定する。
【0053】
電源装置150は、タイミング発生器140の駆動電圧となる直流の電源電圧を発生する。電源装置150は、発生した電源電圧を電源配線152を介してタイミング発生器140に供給する。
【0054】
本体内補償装置160は、タイミング発生器140の近傍に設けられる。本体内補償装置160は、電源配線152に流れる電流を消費してタイミング発生器140の消費電流を補償する。これにより、本体内補償装置160は、タイミング発生器140の消費電流の変動に応じた電源ノイズの発生を抑制することができる。なお、本体内補償装置160は、図1〜図4を参照して説明した補償装置40と同一の機能および構成を有しており、詳細な説明を省略する。
【0055】
さらに、本体内補償装置160の設定部46は、当該試験装置本体部110を制御する制御装置から、基準電流量を変更するための制御信号を受け取る。本体内補償装置160の設定部46は、制御装置からの制御に対応して、被試験デバイスを試験する場合に、予め定められた精度に応じて基準電流量を変化させる。例えば、本体内補償装置160の設定部46は、制御装置からの制御に応じて、予め定められた精度以上のタイミングで被試験デバイスを試験する場合に、基準電流量を予め定められた値に設定し、他の試験においては基準電流量を0とする。
【0056】
即ち、本体内補償装置160の補償装置40は、比較的にタイミング精度が厳しい試験を実行する場合には、タイミング発生器140を補償して電源ノイズを抑制した状態で試験を実行させる。また、本体内補償装置160の補償装置40は、比較的にタイミング精度が緩い試験を実行する場合には、タイミング発生器140を補償せずに、消費電力が低い状態で試験を実行させる。これにより、本体内補償装置160は、試験内容に応じて消費電力を制御することができる。
【0057】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0058】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0059】
10 電源補償システム、20 電源装置、22 電源配線、30 対象回路、40 補償装置、42 電流消費部、44 電流制御部、46 設定部、52 発振器、54 周期調整部、56 位相比較器、58 カウンタ部、62 可変遅延回路、64 遅延量調整部、100 試験装置、110 試験装置本体部、120 パフォーマンスボード、122 電源配線、130 ボード上補償装置、140 タイミング発生器、142 パターン発生器、144 信号供給部、146 信号取得部、150 電源装置、152 電源配線、160 本体内補償装置、200 被試験デバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源装置から印加された電源電圧により動作する対象回路の消費電流を補償する補償装置であって、
前記電源装置から前記対象回路へと電源電圧を供給するための電源配線に接続され、前記電源配線に流れる電流を消費する電流消費部と、
前記電流消費部に印加される電源電圧に応じて前記電流消費部により消費される電流を変化させる電流制御部と、
前記電流消費部の基準電流量を変更する設定部と、
を備える補償装置。
【請求項2】
前記設定部は、前記対象回路がスタンバイ状態において、前記基準電流量を低減する
請求項1に記載の補償装置。
【請求項3】
前記設定部は、前記基準電流量を変更する場合に、前記電源装置の応答帯域の上限よりも低い帯域で前記電流消費部に流れる電流を変化させる
請求項1または2に記載の補償装置。
【請求項4】
前記設定部は、前記対象回路がアクティブ状態となる前に前記基準電流量を増加させ、前記対象回路がスタンバイ状態となった後に前記基準電流量を低減する
請求項1から3の何れか1項に記載の補償装置。
【請求項5】
前記電流制御部は、
印加される前記電源電圧に応じて周波数が変化する周期信号を出力する発振器と、
基準クロックの位相と前記周期信号の位相とを比較する位相比較器と、
前記位相比較器の比較結果に応じてカウント値を増減させるカウンタ部と、
を有し、
前記電流消費部は、前記カウント値に応じた電流を消費する
請求項1から4の何れか1項に記載の補償装置。
【請求項6】
前記電流制御部は、
基準クロックを印加される前記電源電圧に応じた遅延時間分遅延させた周期信号を出力する可変遅延回路と、
前記基準クロックの位相と前記周期信号の位相とを比較する位相比較器と、
前記位相比較器の比較結果に応じてカウント値を増減させるカウンタ部と、
を有し、
前記電流消費部は、前記カウント値に応じた電流を消費する
請求項1から4の何れか1項に記載の補償装置。
【請求項7】
前記設定部は、前記カウンタ部の基準となるカウント値を変更することにより前記基準電流量を変更する
請求項5または6に記載の補償装置。
【請求項8】
被試験デバイスを試験する試験装置であって、
前記被試験デバイスを載置するボードと、
前記ボード上に設けられ、前記被試験デバイスの消費電流を補償する請求項1から7の何れか1項に記載の補償装置と、
を備える試験装置。
【請求項9】
前記補償装置の前記設定部は、前記被試験デバイスから出力された前記被試験デバイスのモードを示すモード信号または当該試験装置により生成されたモードを示すモード信号に応じて、前記基準電流量を変更する
請求項8に記載の試験装置。
【請求項10】
前記補償装置の前記設定部は、前記被試験デバイスに電源ノイズを印加する耐性試験において、前記電流消費部により消費される電流を予め定められたパターンに応じて変化させる
請求項8から9の何れか1項に記載の試験装置。
【請求項11】
被試験デバイスを試験する試験装置であって、
前記被試験デバイスを試験するための試験信号の発生タイミングを生成するタイミング発生器と、
前記タイミング発生器の消費電流を補償する請求項1から7の何れか1項に記載の補償装置と、
を備える試験装置。
【請求項12】
前記補償装置の前記設定部は、前記被試験デバイスを試験する場合に、予め定められた精度に応じて前記基準電流量を変化させる
請求項11に記載の試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−58908(P2013−58908A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196057(P2011−196057)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(390005175)株式会社アドバンテスト (1,005)
【Fターム(参考)】