説明

補強されたチューブを形成する方法

連続工程で補強されたチューブ状の医療装置を形成する方法、及び、該連続形成方法で形成される医療装置を提供する。線状に移動可能な細長いコアを準備する。官能化ポリマーとポリマー製のアウタージャケットの間が結合されるように、コアの移動した部分の周りに官能化ポリマーのコーティングを押出成形し、移動した部分に沿って官能化ポリマーコーティングの外側表面に補強材を形成し、移動した部分に沿って官能化ポリマー及び補強部材を覆うようにポリマー製のアウタージャケットを押出成形することによって、コアの移動した部分の周りに細長いチューブ状部材が形成される。細長いチューブ状部材はチューブ状の医療装置を形成するために所望の長さに切断され、コアが装置から取り除かれる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療用途のための補強されたチューブの分野に関する。より具体的には、補強されたチューブの形成方法、及び、その方法により形成されたチューブに関する。
【背景技術】
【0002】
ここ数十年の間に、医療外科技法において、注目に値する数多くの進展が起こっている。最も重要な進展の中に、今やルーチン作業である様々な低侵襲的処置の採用があった。そのような処置には、血管形成手術、内視鏡検査、腹腔鏡検査、関節鏡検査、並びに多くの他の診断及び治療行為が含まれる。これらの低侵襲的処置は、チューブ状の装置(例えば、導入シース)が比較的小さい切開を通して挿入又は導入され、患者内の懸念される部位へのアクセスが達成される点において、従来の開放手術の処置とは区別することができる。チューブ状の装置又は装置の一部は、該装置の内部(即ち、ルーメン)を通した目標部位へのアクセスを可能とする一方で、切開部を開いたままにしておく。
【0003】
導入装置が医療介在装置及び/又は液状製剤を導入するために使用される身体経路は、特に、食道、気管、結腸、胆道、尿路、及び脈管系のほとんど全ての部分を含んでいる。低侵襲的手術の1つの一般例は、患者の身体経路にステントなどの医療介在装置の一時的又は永久的な移植を伴うものである。他の例は目標部位への液状製剤の送達、及び/又は、身体経路からの体液の回収を伴う。
【0004】
これらや他の所望の手術を行うとき、典型的には、身体経路へ導入シースなどのチューブ状アクセス装置を挿入することによって、通路との連通が達成される。導入シースを挿入するための1つの典型的な方法は周知のセルジンガーの経皮的エントリ法である。セルジンガー法では、初めに針が脈管などの経路に入れられ、ワイヤーガイドが針の穴を通して脈管に挿入される。針は引き抜かれ、導入器アセンブリがワイヤーガイドに外挿され脈管の開口部に挿入される。
【0005】
通常、導入器アセンブリは、外側の導入シース及び該導入シースの遠位端を越えて(即ち、遠位側に)延在する、テーパ状遠位端を有する内部拡張器を含んでいる。拡張器のテーパ状の端部は管理された形で脈管の開口部を拡張するので、患者に対する最小限の苦痛で、より大きい径の導入シースの導入を行うことができる。導入シースの良好な配置に続いて、拡張器は取り除かれ、脈管の適所に少なくともより大きい径の導入シース遠位部分を残す。次に、該医療介在装置、例えばステント又は液状製剤を目標部位への送達のために導入シースに挿通することができる。
【0006】
経皮挿入法は歴史的に、主にシースの柔軟性及び/又は耐よじれ性の不足により問題を起こしていた。初期のシースは、一般に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又はエチレンプロピレン(FEP)などの比較的硬いフッ素ポリマーで形成された。該シースは、通常、薄壁の構造であり、特に身体内の蛇行経路を通り抜ける時は、屈曲する傾向があった。そのため、シースの厚さだけを最小限増加させて、シースの耐よじれ性が改良された。同時に、増加した厚さは脈管の貴重なスペースを占有し、その結果、そこを通過させることができる介入装置の径を最小限に抑えることになった。加えて、シースの厚さを増加させると、そうでない方法で必要とされるよりも大きい入口開口部の使用を余儀なくされた。
【0007】
屈曲したシースは基本的には使用できなくなり、一般に、患者の身体に留置されている間、真っすぐにすることはできない。その結果、シースがいったん屈曲すると取り外さなければならず、開口部は拡大して出血したままにされ、該シースは通常再使用ができなくなる。次に、代わりの部位で脈管へのアクセスを再び開始し、新しいシースで処置が繰り返されなければならなかった。ある場合には、代わりの適切な部位が利用できず、多くはより煩瑣な別の技法を認めて、経皮的処置を完全に放棄しなければならなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,380,304号
【特許文献2】米国特許公開第2001/0034514号
【特許文献3】米国特許第6,911,509号
【特許文献4】米国特許第7,220,807号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年、導入シースは柔軟性及び耐よじれ性を高めるために改良されてきた。そのようなシースは、以前は既存のシースでアクセスできなかったか、又は望ましくない数の試行錯誤を繰り返して配置を失敗したシースの廃棄を伴いつつアクセスすることが可能であった患者の生体構造の経皮的アクセス部位に対して、今やごく普通に使用されている。柔軟で耐よじれ性のある導入シースの一例が米国特許第5,380,304号に記載されている。この特許文献に記載されたシースは、その上に螺旋コイルが取り付けられた滑らかなインナーライナーを有している。ポリマー、例えば、ポリエーテルブロックアミド、ポリアミド(例えば、ナイロン)、又はウレタンのアウタージャケットが、コイルとライナーの上に取り付けられている。次に、アセンブリ全体が、典型的には熱収縮容器内に置かれ、アウタージャケットを溶かすことができる十分な熱に曝される。溶けたアウタージャケットはコイルの巻きを通してライナーの粗面化した表面に結合される。コイル補強材は広範囲の曲げに亘って、この薄壁のシースに耐よじれ性を与える。
【0010】
米国特許公開第2001/0034514号は、多くの点で米国特許第5,380,304号のシースと類似している導入シースを開示している。この公開された特許文献のシースは、シースの近位端が比較的高い剛性を有しており遠位端は比較的低い剛性を有するように形成されている。シースの遠位部分は近位部分より低い剛性を有する(従って、より柔軟である)ので、より硬いシースで移動することが、不可能ではないとしても困難になると思われる各部分を移動することができる。近位部分は遠位部分より高い剛性を有する(従って、柔軟性が低い)ので、シースは生体構造の蛇行部分を移動するための十分な追従性を保持している。また、該コイル補強材を備えることにより、該シースは広範囲の屈曲角度に亘って耐よじれ性を有することが可能となる。
【0011】
前述したような導入シースの開発は医療活動に変革をもたらした。特に、これらの進歩は、以前はさらに煩雑な開放外科手術を行う必要性なしに達成することが、不可能ではないとしても困難であった目標部位に医療介在装置や液状製剤を導入するために医師ができる範囲を向上させてきた。記載されている経皮法は、一般に、以前に用いられていた開放外科法より高価ではなく、患者にとって低外傷性であり、通常、必要とされる患者の回復時間はより短い。
【0012】
参照して援用する特許文献において説明されているシースなどの多くの導入シースでは、滑らかなインナーライナーはPTFEで形成されている。PTFEは、ステントなどの拡張器又は医療介在装置のシースの通路を通る挿入及び/又は引き抜きを容易にするように、滑り易い低摩擦の内面を提供するので、好都合である。また、PTFEは高い化学的耐性、及び低い血栓形成性を有している。しかしながら、この化学的耐性及び不活性のため、PTFEは特に、シースのアウタージャケットに使用されるポリマー材料などの他のポリマーと十分に結合しない。
【0013】
前述したようなシースは医学界で高い評価を得てきた。開放手術処置が以前必要であった状況下で、これらのシースは医師が低外傷性経皮処置を利用できる範囲を大いに向上させてきた。そのような導入シースの使用で達成された利益にもかかわらず、新たな課題に引き続き直面している。例えば、そのようなシースの準備は極めて労働集約的な作業である。シースは個別に、通常は手作業で準備しなければならず、一度に1つのシースが、記述されるように組み立てられて溶かされる。このことが高価な製品をもたらし、医療処置の費用を増加させる。この費用は、もし特定の処置を遂行するのに2つ以上のシースが必要となるなら、さらに増加する。さらに、PTFEライナーの一般的な化学的不活性及び反応不足のため、PTFEと外側のポリマー層との結合の強さは決して最適ではない。このことは、製造プロセスにおける、求められるものよりも高い不良率をもたらす。これはまたもちろん、医療処置の費用を増加させる。
【0014】
従来技術の問題点を克服する補強されたチューブ状部材を形成する方法を提供することが望まれる。また、本発明の方法で形成されるチューブ状部材を提供することも望まれる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】従来のハブとサイドアームの組み合わせとして示された、本発明の方法の実施形態に従って形成された補強されたチューブ状部材の側面図である。
【図2】図1の補強されたチューブ状部材の拡大部分断面図である。
【図3】本発明の方法の一実施形態に使用されるコーティング操作の工程概略図である。
【図4】本発明の方法の一実施形態に使用されるコイリング操作の工程概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の原理の理解を促進する目的のために、ここで図面に示す実施形態について述べ、具体的な表現を使用して同じものを表すことにする。それでもなお、それによって本発明の範囲を限定することは意図されておらず、本発明に関連する分野の当業者には通常思いつくような、図示した装置における改変及びさらなる変更、並びに図面に示した本発明の原理のさらなる応用が企図されることが理解されるべきである。
【0017】
以下の記載では、用語「近位」及び「遠位」は、補強されたチューブ状部材の相反する側の軸端又は様々な構成部品の軸端を表現するために使用される。用語「近位」は、チューブ状部材の使用中、施術者に最も近いチューブ状部材(又は、その構成部品)の端部を指す従来の意味で使用される。用語「遠位」は、初めに患者に挿入されるか、又は使用中、患者に最も近いチューブ状部材(又は、その構成部品)の端部を指す従来の意味で使用される。
【0018】
図1は当該発明の方法により製作することができるタイプの例示的な補強されたチューブ状部材10を示す。他の用途では、チューブ状部材10は、患者の身体経路にアクセスしてステントなどの医療介入装置を該経路へ移植するための、医療技術で一般的に使用される導入シースとして使用することができる。チューブ状部材10は、導入シースとして使用されるとき、通常は、セルジンガーの経皮的エントリ法によるなどの従来の方法で、予め身体経路に挿入されたワイヤーガイド(図示せず)上に導入される。チューブ状部材10は遠位部13及び近位部15を有するアウタージャケット12を含んでいる。好ましくは、遠位部13はテーパ状の遠位端14に向かって縮径している。内部ルーメン即ち通路16(図2)が周知の方法でチューブ状部材10を貫通して延在している。
【0019】
図1に示すように、チューブ状部材10はハブ20を備えてもよい。ハブ20は周知の方法でそこに配置された1個以上のバルブ(図示せず)を有してもよい。通常、該バルブは従来の流量チェック形のディスクバルブ(check-flow type disk valves)、及び/又は、流体の逆流を防止するための止血バルブを備えている。ハブ20は、そこから延在するサイドアーム22を有し、結合チューブ24及び従来型のコネクタ18を通して流体を導入する、及び/又は吸引するために、周知の方法で該サイドアームに係合することができる。
【0020】
図2は図1のチューブ状部材10の部分的拡大断面図である。ハブとサイドアームは図2では省略されている。図示するように、好ましくは、近位のチューブ端部15がなだらかなフレアを有している。また、図示するように、チューブ状部材10は、インナーライナー21と、該インナーライナーの周囲に取り付けた平坦なワイヤコイル23などの補強材と、該インナーライナーの外側表面に結合したアウタージャケット12とを備えている。
【0021】
ほとんどの従来型層構造の導入シースのインナーライナーはPTFEなどの滑らかなフッ素ポリマーで通常形成されている。PTFEは、ステントなどの拡張器又は医療介在装置のシース通路を通って、挿入及び/又は引き抜きが容易になるように、滑り易い低摩擦の内面を有している。また、低摩擦表面は、高い化学的耐性及び不活性を有し、且つ血栓形成性を低くしている。
【0022】
PTFEのインナーライナーを有するタイプの従来型の導入シース、コイル補強材、及びアウターポリマージャケットは、通常極めて労働集約的なバッチ工程で個別に形成される。PTFEは熱硬化性材料であるので、押出成形などの連続工程の一部として成形するようにできない。むしろ、各PTFEの長さは、PTFE樹脂からチューブを成形し、バッチ工程で使用するためにセグメントを個別に適切な長さに切断することによって、通常は形成される。一般に、従来技術の工程では、管状のインナーライナーは、外径がライナーの内径よりわずかに小さい円筒形マンドレルに摺動式に被せられる。次に、コイルなどの補強材が巻き付けられ、圧縮嵌合され、或いはインナーライナーの外側表面に適合される。その後、外側のポリマー材料層は、コイルとインナーライナーに摺動式に被せられる。
【0023】
次に、構造全体は、通常、FEPなどの材料で形成された熱収縮可能なカバーで覆われ、結果として得られたアセンブリはオーブンの中に置かれる。次に、該アセンブリは、外側の層を溶かすように(しかし、内側のPTFEライナーは溶かさないように)オーブンで十分な熱に曝される。外側の層が溶けるに従って、それぞれのコイルの巻きを通ってインナーライナーの粗面化した外側表面に結合するように、該アセンブリは収縮するFEPのカバーによって締め付けられる。熱収縮チューブは、熱収縮された後、シースから剥され、マンドレルが取り外される。従来技術の工程のさらなる詳細が、参照により援用された特許公報に記述されている。
【0024】
従来技術の工程によって形成されるシースは、個別に(即ち、バッチ工程によって)作られ、前述の記載で示したように、該工程は極めて労働集約的である。その結果、シースは比較的高コストとなる。さらに、シースの内側及び外側のそれぞれの層は、熱収縮の結果としてその間に形成される結合の一体性に依存している。PTFEを所望のライナー材料にする化学的耐性及び不活性などの要因の多くが、インナーライナーとアウタージャケットの間でのより確実な結合の形成を困難にしている。十分な結合が得られない場合、シースは廃棄される。
【0025】
本明細書に記述された本発明の方法では、個々に合わせた従来技術のバッチ工程とは対照的に、チューブ状部材は連続した工程によって形成され、前述のシースを形成するのに通常使用することができる。本発明のシースを形成する方法は、本明細書に記述された従来技術の方法より大幅に労働集約性が低く、結果として従来のシースと比べて低コストで製作できるシースをもたらす。さらに、本発明の方法は、内側及び外側の層の構成要素を使用し、該構成要素はそれらの間に高い信頼性を有する結合の形成を可能とする。
【0026】
本発明の方法によると、形成されたチューブ状部材のインナーライナーは官能化ポリマーを含む。「官能化ポリマー」という用語は、本明細書に使用されるとき、概ね1つ以上の官能基の結合によって改質された、押出成形可能なポリマー材料を指している。通常は非官能化ポリマーがもう一方のポリマーと確実な結合部として形成することができない反応条件の下で、該官能基は該ポリマーに別のポリマーとの確実な結合部を形成するように親和力を与える。
【0027】
多くの場合、官能化ポリマーは機能性熱可塑性材料であると考えられる。機能性熱可塑性フッ素ポリマーは、本発明の方法において使用するためのとりわけ好ましい種類の機能性熱可塑性材料である。フッ素化エチレンプロピレン(FEP)及びエチレンフッ素化エチレンプロピレン(EFEP)などの熱可塑性フッ素ポリマー及びコポリマーは、それらの高い化学的不活性、および低い摩擦係数により特に好まれる。
【0028】
前述の従来技術のバッチ工程に従って形成されたチューブ状部材と比べるとき、インナーライナー材料としての熱可塑性フッ素ポリマーやコポリマーなどの官能化ポリマーの使用は多くの利益をもたらす。例えば、官能化ポリマーの使用は、チューブ状部材を連続工程の一部として形成することを可能にする。その結果、連続工程用に、細長いチューブ状部材を形成して、スプールの周りに巻き付けることができる。工程が前述のように実行されると、細長いチューブ状部材は任意の所望の長さに切断することができる。
【0029】
連続工程で機能性熱可塑性材料を利用できることに加えて、機能性熱可塑性材料の使用により、典型的には、アウターポリマージャケットとの結合を形成するために、インナーライナー材料の能力の強化をするように、例えば化学的エッチング、機械的粗面化、接着剤の添加、又は同様の方法によってインナーライナーの外側表面を処理する必要性がなくなる。同様に、機能性熱可塑性材料の使用は、従来技術の工程のように熱収縮ステップを含む必要性をなくし、その結果、そのようなステップに伴う労働はもとより、高温のオーブンで加熱する必要性も回避される。
【0030】
機能性熱可塑性ポリマーを利用するとき、活性官能基は、インナーライナーを含む官能化ポリマーと、アウタージャケットを含むポリマーの間の結合親和力を強化する。その結果、それらの間で、従来技術の工程での熱収縮に必要である高い温度と比べると、全体に亘って比較的低い温度で安定した化学結合を形成することができる。機能性熱可塑性ポリマーとアウタージャケットとの間の安定した結合の形成に加えて、一般に、ポリマーのインナーライナーは、概ねそのようなポリマーに特有である滑らかさ、不活性、および化学的耐性を保有している。
【0031】
前述のように、従来技術では、チューブ状部材用に選択するインナーライナーの材料は、通常はPTFEである。PTFE(熱硬化性フッ素ポリマー)はチューブ状シースに使用するための、化学的な不活性及び極めて低い摩擦係数など多くの良好な特性を有している。しかしながら、PTFEは連続工程でのチューブ形状の生産にはつながらない。したがって、PTFEライナーを有するシースは、実際には相変わらず労働集約的なバッチ工程で形成される。
【0032】
本明細書での使用に適した官能化ポリマー及びコポリマーの非限定的な例は、参照により本明細書に援用される米国特許第6,911,509号及び第7,220,807号の両方に記述されている。米国特許第7,220,807号は適切なフッ素ポリマー及びコポリマーを処理するためのいくつかの工程について記述している。そのような工程の1つでは、官能化ポリマーは、1つ以上の機能性フッ素ポリマーを有機ボラン(例えば、トリアルキル基ボラン)及びフッ素モノマーを機能性フッ素ポリマーに重合させるための酸素などの重合開始剤で合成することによって形成される。
【0033】
上記特許によると、記載されているように、いかなるフッ化機能性モノマーもポリマー化に適していると見られている。提供される例は、以下の公式を有する機能性フッ素モノマーを含んでいる。

CXY=CX(CX(CH−J

ここでXとYは、単独の水素、フッ素、および塩素であり;oは0から10であり;pは1から6程度であり;少なくとも1つのX又はYがフッ素、好ましくは、X及びYがフッ素であるという条件でJは官能基である。一実施例では、JはOH、ハロゲン(即ち、Cl、Br)、エステル、エポキシ、チオール、SOH、O−Si−R、SiR、及びオレフィン基から成る群から選択され、ここで、R、R、及びRは単独のH、ハロゲン(即ち、Cl)、CからC10の直線状、分岐状、環状のアルキル基又はアリル基である。有用と考えられる他の機能性フッ素モノマーにはトリフルオロビニル機能性モノマーが含まれる。多くの適切なモノマーが市販されているか、又は市販の原料化合物から容易に抽出できる。
【0034】
この機能性フッ素ポリマーを処理するための工程の変形例は、酸素を有するフッ素モノマーと有機ボラン機能性開始剤とを合成するステップを含んでおり、該有機ボランは官能基を含んでいる。
【0035】
米国特許第7,220,807号で論じられている別の工程では、多数の機能性フッ素モノマーは、ペンダント官能性を有するフッ素コポリマーのアレイを形成するために、単独又は1つ以上の非機能性フッ素モノマーと結合して重合することができる。有機ボラン開始剤を使用して重合したものなどの機能性フッ素ポリマーは、アリル係プロトン(複数を含む)、Si−H基、またはシンナモイル基を含有する機能性ペンダント基を含んでいる。有機ボランの機能性開始剤を使用して重合した機能性フッ素ポリマーは、ポリマー鎖の開始時に、Si(OR)などの末端官能基及びOH基を含んでいる。
【0036】
本明細書で使用する適切な押出成形可能な化合物の他の製造方法が、参照により援用された特許に論じられている。典型的には、適切な機能性フッ素ポリマー及びコポリマーは、本明細書での使用に対して高い収率で重合し、且つ約5,000g/モルを越え、好ましくは、約50,000g/モルを越えるなどの比較的高い分子量に重合することができる。
【0037】
また、適切な押出成形可能なポリマーを処理することに加えて、本発明における使用に適した官能化ポリマーも市販されている。本発明における使用に特に好ましい官能化ポリマーは、機能性フッ素ポリマーFEP、並びにEFEPなどの誘導体を含んでいる。官能化EFEP(エチレンフッ素化エチレンプロピレン)はニューヨーク州オレンジバーク(Orangeburg)のダイキン・アメリカ社から入手可能である。商標NEOFLON(商標)の下に、これらのフッ素ポリマーが販売されている。特に好ましいEFEPの混合物には、EFEPのPR−4020及びPR−5000が挙げられる。EFEPは、低い摩擦係数、高い化学的耐性を有するコポリマーであり、強い化学薬品による腐食に対して不活性である。また、EFEPは透明性に優れている。さらに、エッチングの必要性なしに或いは接着剤を使用せずに、多くのポリマーに良好に接着する。
【0038】
また、前述の機能性熱可塑性フッ素ポリマーに加えて、官能基の添加で修飾された他の押出成形可能な熱可塑性ポリマーも特定の場合に有効である。別のポリマーとの確実な結合を形成するための親和力をポリマーに付与するために、官能化することができるポリマーの1つの非限定的な例が、高密度ポリエチレン(HDPE)である。HDPEは、本発明での使用に適した官能化ポリマーの形成に利用することができる、多数の「結合層」の(他のものはLLDPE、EVAである)材料の一例である。そのような材料は、ポリマーの異なる層を相互に接着する又は「結合する」ことができるようにするために、既知の方法で化学的に修飾される(例えば典型的には修飾された無水物である)ので、「結合層」材料と呼ばれる。
【0039】
結合層材料は、上述の出願などの多くの場合、他のポリマーを相互に接着する又は結合する能力によって多くは商業用途で利用されるが、適切なシース材料として独自に利用することもできる。また、本明細書に教示されるように、異なるポリマーと結合できる他の既知の押出成形可能な無水物で修飾されたポリオレフィンが利用されてもよい。本明細書に記述されたものなどの適切な結合層の樹脂は、例えば、テキサス州ヒューストンのライオンデル・ケミカル・カンパニー(LYONDELL Chemical Company)から市販されている。そのような結合層樹脂の1つはPLEXAR(登録商標) PX2049であり、押出成形可能な結合層樹脂は無水変性HDPEである。
【0040】
他の押出成形可能な材料を、本発明で使用するために、当技術分野において既知の他の手段によって官能化し、それによって、外側のシース層と結合する能力を高めることができることも、当業者は理解するであろう。任意のそのよう官能化材料を、本明細書に具体的に言及した非限定的な例に、置き換えることができる。加えて、適切な官能化ポリマーは、参照で組み込まれた特許文献に具体的に説明されたもの以外の方法で形成されてもよく、さらに他の市販元からも入手可能である。本発明の利点を最大にするために、通常、非官能化ポリマーがもう一方のポリマーとの結合を確実に形成できない状態下で、官能化ポリマーは押出成形可能であり、別のポリマーとの安定した結合を形成する親和力を有することになる。
【0041】
好ましくは、補強材は螺旋コイルである。コイル23は補強の目的のために医療技術で通常使用される、金属、合金(例えば、ステンレスかニチノールなどの形状記憶組成物)、多線条材料、または複合材料などの組成物から形成することができる。チューブ状部材の横断面輪郭(すなわち、外径)を最小にするために、従来型の平坦なワイヤ構造のコイルを利用することが好ましい。しかしながら、当業者は、円形、楕円形、そして、様々な他の幾何学図形などの他の断面形状のコイル材料により置き換えることができることを理解するであろう。必要であれば、コイル/ブレードハイブリッドのブレードなどの他の強化構造をコイルに代用するか、またはコイルと組み合わせて利用することができる。
【0042】
アウタージャケット12は、概括的にはチューブ状の医療機器で使用するのに適した任意の組成物から形成することができ、安定した結合を形成するために官能化ポリマーと反応することができる。適切なポリマーとしては、導入シースの外側の層を形成するのに一般的に使用される官能化ポリマーがある。適切なポリマーの非限定的な例としては、ポリエーテルブロックアミド、ポリアミド(ナイロン)、ポリウレタン、及びポリオレフィンが挙げられる。
【0043】
補強されたチューブを形成するための連続工程で、前述の官能化ポリマーなどの機能性熱可塑性材料の使用が可能である。図3及び図4は、本発明の方法による、補強されたチューブを製作する適切な一工程例の概略図を示す。当業者は、他の従来のコーティング(押出成形)とコイリングの工程が特定の場合において置換できることを理解するであろう。図3及び図4に示したシステムは、排他的であることを意図したものではなく、むしろ、本発明の範囲内で、補強されたチューブを形成するために考えられる工程を説明するものである。必要であれば、さらなるステップを、図3及び図4で示され説明されるように、本システムに追加することができる。或いは、本明細書に示され説明された全てのステップが、あらゆる場合に実施されなければならないというわけではない。本発明の特徴を考慮に入れると、当業者は特定の工程に対して適した製造方式を容易に構築できるものと考えられる。
【0044】
図3は補強されたチューブ状部材の形成において使用するのに適した1つのコーティング工程の概略図を示す。本実施例において、図3に示したコーティングシステムは、インナーライナーをマンドレルにコーティング(押出成形)し、そして該インナーライナーへのコイルの巻き付けに続いてインナーライナーにアウタージャケットをコーティングするために利用される。図4は適切なコイリング工程の工程概略図を示す。
【0045】
図3の工程概略図は、工程ステップ101から110を含んでいる。前述のように、図3に示され説明された工程は、1つの可能な操作手順を示すことを意図しているだけであるので、ステップ101から110が一つ残らず全ての場合に実施される必要はない。軽微な修正を幾つかのステップで行うことができ、ある場合には他のステップを全く省略することもでき、さらに、一連の工程中のさまざまな時点で、他のステップ(例えば、測定ステップ)を繰り返すこともできることが当業者には理解できるであろう。
【0046】
図3に示すシステムでは、繰出装置101は従来型のスプールに巻き付けられるマンドレルを備えている。「マンドレル」という用語は、ワイヤ又はコアを示すために本明細書で使用され、該ワイヤ又はコアは、初めにスプールに巻き付けられ、その後、後述のコーティング(押出成形)工程で内側コアを形成するために繰り出される。
【0047】
当業者は、押出成形工程用に、内側コアとしての使用に適したマンドレルを容易に選択することができる。本発明の方法による好ましい一例が、アセタールマンドレルである。アセタールマンドレルは、当技術分野においては既知のものであり、例えば、ニューヨーク州グレンフォールズ(Glen Falls)のプレシジョン・エクストリュージョン社(Precision Extrusion Inc.)から市販されている。他の適切なマンドレル組成物は、銅又はステンレス、及び他のポリマー材料(例えば、PEEK、ナイロン、その他)などの様々な金属及び合金を含んでいる。好ましくは、例えば、マンドレルは約1.5mmから3mmの間の外径を有する。
【0048】
マンドレルは、スプールから繰り出されながら、加熱装置102を通過する。加熱装置102はマンドレルの「歪み」を除去するために設けられている。繰出装置101のスプールに巻き付けられていると、通常、マンドレルは、永久的又は半永久的な湾曲、即ち歪みを持つようになり、該歪みはその先の処理の前に除去されることが好ましい。マンドレルがポリマーであるときには、歪みを取り除く1つの方法は加熱装置にマンドレルを通すことである。該加熱装置は、歪みを取り除き真っすぐにするのに十分な温度までポリマーを加熱するが、該ポリマーの融解温度までは加熱しない。押出成形で使用する加熱装置は当技術分野ではよく知られており、当業者は、容易に適切な加熱装置を選定し、更に特定のポリマー用の適切な熱量を決定できる。
【0049】
マンドレルが金属又は合金であるなら、歪みは、加熱装置よりむしろワイヤストレートナを利用することで、通常取り除かれる。この場合、一般に、加熱装置は必要ではなく、また有効でもない。代わりに、ワイヤストレートナは、マンドレルのどのような歪みも湾曲も取り除くために使用することができる。ワイヤストレートナは当技術分野でよく知られており、巻き付けられた金属又は合金マンドレルワイヤから歪みを取り除くために、どのような従来型のストレートナでも利用することができる。
【0050】
随意の潤滑剤をマンドレルに塗布するために、塗布装置103を設けることができる。本発明の方法に従って補強されたチューブ状部材が形成されると、補強されたチューブ状部材の内部ルーメンからマンドレルを取り外すことがもちろん必要となる。マンドレルの外側表面へシリコンなどの潤滑剤を少量塗布することにより、後のマンドレルの取り外しを容易にする。1つの好ましいタイプの塗布装置は、マンドレルの表面に周方向に潤滑剤を塗布できる従来型のサーキュラ・ブラシである。
【0051】
また、特定のマンドレル及びインナーライナーの材料として使用するために選択された官能化ポリマーにもよるが、潤滑剤がマンドレルと内側の管状層の官能化ポリマーとの間のいかなる反応の抑制にも役立つ。例えば、前述のアセタールマンドレルなどのポリマーのマンドレルが使用されるとき、機能性熱可塑性ポリマーの反応により、官能化ポリマーとマンドレルの間にある量の結合が生じることを可能にする。そのような結合は、後でチューブ状部材からマンドレルを取り外すのを困難にするので好ましくない。潤滑剤の存在はフッ素ポリマーとマンドレルの間の結合の生成を抑制する。
【0052】
測定装置104が、官能化ポリマーの押出成形に先立ちマンドレルの直径を測定するために、マンドレルワイヤ上に設けられてもよい。当業者は、官能化ポリマーの押出成形に先立ち、ポリマー層の厚さをモニターできるようにマンドレルの直径を測定することが好ましいことを理解するであろう。通常、測定装置104は当技術分野でよく知られているタイプの多軸レーザスキャナからなっている。
【0053】
潤滑にされたマンドレルに官能化ポリマーをコーティングするために、押出成形機105などのコーティング装置が設けられている。本明細書に説明されている機能性熱可塑性ポリマー樹脂などの官能化ポリマーを融解し且つ該融解した樹脂でマンドレルワイヤをコーティングすることができる押出成形装置は、当医療技術ではよく知られており、当業者は特定の使用のための適切な装置を容易に選択することができる。典型的な押出成形機は、直径1.25インチ(3.2センチメートル)×長さ24/1の直径比であり、1〜100rpmの範囲のスクリュー速度を有する。適切な押出成形装置が、例えば、(米国)ロードアイランド州アシャウェイ(Ashaway)のアメリカン・クーン社(American Kuhne,Inc.)から市販されている。
【0054】
冷却装置106は押し出された樹脂を冷却するために設けられている。通常、冷却装置106は押出成形体が貫通する(脱イオン化した)水槽を備えている。押出成形で使用する、冷却空気の封入などの他の従来型の冷却装置を代用することができる。また第2の測定装置104が、マンドレル上に押し出されたコーティングの直径を測定するために冷却装置に配置されてもよい。
【0055】
必要に応じて、マンドレル上で硬化した樹脂コーティングの直径を測定するために、冷却装置の次の工程に別の測定装置104を設けることができる。前述のような冷却装置中の測定装置を除いて、本明細書に記載されるもの及び他の全ての測定装置が多軸レーザスキャニング装置であってもよい。これらの装置は許容レベルの精度内で直径のデジタル読み出しを行うことができる。冷却槽の中で使用できる測定装置の一例が、超音波測定能力を有するベータ・レーザミック・データプロ 5000(Beta Lasermic DataPro 5000)である。
【0056】
引抜き/牽引装置107が、押出成形物をしっかりと牽引するために設けられる。この装置は製品の直径を制御する。押出速度対引張速度の相違によりサイズが決定される。適切なそのような装置の一例が、イリノイ州ブルーミングデール(Bloomingdale)のPDN マニファクチャリング(PDN Manufacturing)株式会社から入手可能な、RDN 牽引機/切断機システムのモデル#IC2−218−3である。
【0057】
図3に示す切断機構108とコンベア/部品回収装置109は現時点では素通りされており、コーティングされたマンドレルは引抜き/牽引装置107から直接巻取装置110まで通過し、巻取装置110に巻き付けられる。巻取装置110は、スプールに巻き付けられたコーティングされたマンドレル有する。
【0058】
コーティングされたマンドレルを有する巻取装置110は、図4の次の工程のコイリングシステムに人の手によって移送することができる。この段階では、(巻取装置110の)コーティングされたマンドレルが、コイリングシステムを通過するように、スプールから巻きが解かれるので、巻取装置110は繰出装置201として見なされる。以下の記載は、図4で示すように、巻取装置110(即ち、繰出装置201)の人の手による移送を、別個のコイリングユニットとしているが、当業者は別個のユニットを利用する必要がないことを理解するであろう。必要であれば、図4のコイリングシステムは図3に示したコーティングシステムと連続して表してもよい。
【0059】
加熱装置202は、コーティングされたマンドレルを受け入れるために設けられている。加熱装置202は図3の加熱装置102と同様の目的のために、即ち、コーティングされたマンドレルを加熱して、巻取装置110(繰出装置201)への巻き付けによって生じる方向のあらゆる歪み即ち湾曲を取り除くために利用される。上記に加えて、加熱装置202は別の機能を備えている。コーティングされたマンドレルが加熱装置を通過するに従って、押出成形された官能化ポリマーコーティングが軟化される。コイルの巻き付けに先立ってポリマーコーティングを軟化させることにより、押出成形された官能化ポリマーの軟化した外径部にコイルを若干埋めることができる。これは、ポリマーの外側表面に沿って特定の位置にコイルを「固定すること」に役立つ。加えて、前述のように、インナーポリマーライナーにコイルを若干埋めると、従来の工程で形成されたシースと比べると小さい外形を有するシースとすることができる。
【0060】
任意の塗布装置203が、押出成形されたポリマーの外側表面に少量の接着剤を塗布するために設けられてもよい。接着剤塗布装置は当技術分野でよく知られており、通常、サーキュラ・ブラシなどの任意の従来の塗布装置が適している。接着剤は、使用されると、ポリマーへの塗布によりコイルの大幅な移動又は横滑りを阻止する。通常は、最少量の接着剤しか塗布されないので、装置の外形には目につくほど影響しない。当業者は、このような状況においては、接着剤が、接着するための生来の親和力を有する、低いデュロメーター硬度のポリエーテルブロックアミド(例えば、PEBAXR(登録商標))又はポリアミド(例えば、GRILAMIDR(登録商標)若しくはVESTAMIDR(登録商標))、或いは共押出成形用接着性ポリマー(例えば、BYNELR(登録商標))などの熱可塑性ポリマーであってもよいことを理解するであろう。
【0061】
測定装置204を、接着剤を塗布させたフッ素ポリマーコーティングの直径を測定するために設けることができる。前述したように、測定装置204は多軸レーザスキャニング装置であってもよい。
【0062】
コイリング機構205は、押出成形されたポリマーコーティングの外側表面にコイルを貼り付けるために設けられる。コイリング機構は当技術分野では既知のものであり、当業者は本発明での使用のために容易に適切な機構を選択することができる。本手順では、コイリング機構は、管状の構造にコイルを巻き付けるために、該管状の構造を該機構の中心を通して送り込むことができる、連続的なコイル形成機である。コイル形成機はまたコイルを巻き付けた材料を巻き取ることができることが好ましい。適切な連続的なコイル形成機は例えば Model # HS−KL/1035−60IMCとして、サウスカロライナ州インマン(Inman)のSteeger USAから入手可能である。
【0063】
コイリング機構205は、押出成形された官能化ポリマーの外側表面に沿ってコイルを巻き上げることができ、該コイルは一定間隔のコイルの巻きを有し、該コイルの巻きはまた一定のピッチを有していることが好ましい。前述のように、コイリング機構205で使用されるコイリングワイヤは、好ましくはステンレス鋼の平坦なワイヤであるが、他の組成物及び形態のワイヤと置換されてもよい。次に、コイルを巻き付けられたポリマーは、別の測定装置204を通過し、その後、巻取装置206に巻き取られる。
【0064】
次に、巻取装置206はアウターポリマージャケットの形成を行う状態になっている。図3及び図4のシステムにおいて、巻取装置206は図3のコーティングシステムに戻され、その時、該巻取装置は繰出装置101となる。この場合、繰出装置101は、押し出された官能化ポリマーを有し、さらに巻き付けられたコイルを有するマンドレルを有している。
【0065】
アウターポリマージャケットをコーティングするコーティング工程は、前述のように、官能化ポリマーをコーティングする工程と概ね同様である。しかしながら、この場合、コーティング装置(押出成形機)105は、補強されたチューブ状部材の外側の層を形成するのに適した特定のポリマー樹脂を有している。
【0066】
重要なことには、官能化ポリマーの上にアウタージャケットのポリマーを押出成形する際、その間に安定した結合が形成されるように、アウタージャケットを形成するためのポリマー樹脂が、押出成形された官能化ポリマーと反応しなければならない。官能化ポリマーが、EFEP RP−4020及びRP−5000などの組成物で形成されたフッ素ポリマーである場合には、前述のように、アウタージャケットはポリアミド(ナイロン)、ポリエーテルブロックアミド、ポリウレタンまたはポリオレフィンから通常形成される。後者の組成物は、導入シースなどの医療用チューブにおける使用においてよく知られており、前者の機能性フッ素ポリマーとの安定した結合を形成できる。当業者は、アウタージャケット材料としての使用に適した他のポリマーを特定の場合には代わりにできることを理解するであろう。
【0067】
アウターポリマージャケットのためのこのコーティング工程は、官能化ポリマーのインナーライナーのためのコーティング工程と異なっており、その工程では、通常、2つの付加的なステップが実施される。これらは図3では、108及び109で示される。ポリマーのアウタージャケット材料がコイルを巻き付けられた官能化ポリマーに押し出されると、補強されたチューブ状部材の製作は概ね完了する。この時点で、引抜き/牽引装置107を通過した後、官能化ポリマー、コイル、及びアウターポリマージャケットを含む細長いチューブ状の糸状部材は適切なサイズに切断される。チューブ状部材は、細長いチューブ状部材を所望の長さの個々のチューブに切断するために、事前に設定された切断機構(ナイフ)108を通過する。随意の回収装置109が、切断されたチューブを受け取るために設けられてもよい。
【0068】
最終工程は、マンドレルを引き抜き、チューブ状部材の外縁を適切なサイズに任意の最終調整をすることを伴う。通常、マンドレルは人の手で取り外される。
【0069】
図3で示したコーティングシステムは、上述したように、官能化ポリマーのインナーライナーとポリマーのアウタージャケットの両方を塗布するために本発明で使用できるが、これらの操作は単一のシステムに一体化する必要はない。むしろ、必要であれば、図4に示すように、コイリングステップの後に、コイルを巻き付けられたポリマーはポリマーのアウタージャケットの塗布のために別のシステムに移送されてもよい。前述のように、それぞれのコーティングステップに対して同じ押出成形装置を使用することにより、スペースとコストの節約ができるが、個別のシステムを使用することに対しても何らかの利点があり得る。例えば、個別のシステムが使用されるとき、ポリマーでマンドレルをコーティングするシステムに常に使用できる状態であるが、それ以外のアウタージャケットの押出成形には関わらない。同様に、設備が1つの特定のポリマー、又は他の密接に関連するポリマーの押出成形に使用されるだけであるなら、押出成形装置システムの掃除を容易にすることができる。しかしながら、一般に、該両者の押出成形のために同じシステムを使用して達成される節約は、ほとんどの場合個別のシステムによる節約より上回ると思われる。
【0070】
当業者は、付加的な機能を完成製品に組み入れるために、付加的なステップを工程に追加できることを理解するであろう。例えば、異なった剛性を有する複数のチューブ区間を含む外側の層12を形成することが望ましいかもしれない。この場合、該区間は、シースの遠位端に向かって剛性を減少させる順に通常並べられる。
【0071】
従って、例えば、比較的高いデュロメーター硬度の材料から成るアウタージャケットのより硬い近位区間と、比較的低いデュロメーター硬度の材料から成るより柔らかい遠位区間と、随意的に、近位区間と遠位区間の間に置かれ、近位区間と遠位区間の間で徐々に減少する剛性を有する1つ以上の中間区間とを有することが望ましいかも知れない。これは、例えば、1つ以上の追加の押出成形機105をコーティング工程の始めに加えることによって達成することができる。この場合、それぞれの押出成形機は、異なったデュロメーター硬度材料を有しており、製品の個々の長さに対して所望される特定のデュロメーター硬度により、システムが一方の押出成形機からもう一方の押出成形機に切り替わるようにプログラムされる。したがって、製品の長さに従って所望されるのと同数の異なるデュロメーター硬度(剛性)を有するように、製品を形成することができる。
【0072】
当業者は、医療装置において一般的であるように、追加のコーティング、処理などが、補強されたチューブ状部材に適用することができることを理解するであろう。例えば、チューブ状部材の外側の表面の部分に、親水性コーティングを塗布することが望まれてもよい。これは、図3のシステムに従って、アウタージャケットの押出成形の後に塗布されるように、そのような個別のステップのコーティングを加えることによって、達成することができる。或いは、チューブが適切なサイズに切断される前後に、親水性のコーティングを最終工程ステップとして塗布することができる。同様に、例えば、放射線不透過マーカーバンドはインナーライナーかアウタージャケットのどちらかの外側表面に塗布することができる。放射線不透過マーカーと親水性コーティングは導入シースと共に広く使用されており、本発明の理解を与えるためにこれらの特徴の更なる記述が必要となることはない。さらに、そのようなシースの記述、及びそれらの製造方法が参照で組み込まれた特許文献において行われている。
【0073】
本発明の導入シース10の他に開示されていない様々な要素の構成又は組成物の詳細は、列挙された要素が開示されたように機能するように、該要素にとって必要とされる強度又は機械的特性を有する限り、本発明に不可欠であるとは考えられない。本明細書に記載されていない多くのそのような詳細の記載が、参照で組み込まれた特許文献に細かく列挙されている。さらなる構成の詳細が当業者には十分理解できるものであると思われる。
【0074】
以上の記載は限定的ではなくむしろ例示的なものとして見なされることを意図しており、この発明の趣旨と範囲を画定することを意図しているのは、すべての同等物を含む特許請求の範囲であることが理解されるものとする。
【符号の説明】
【0075】
10 チューブ状部材、導入シース
12 アウタージャケット、外側の層
13 遠位部
14 遠位端
15 近位部
18 コネクタ
20 ハブ
21 インナーライナー
22 サイドアーム
23 ワイヤコイル
24 結合チューブ
101、201 繰出装置
102、202 加熱装置
103、203 塗布装置
104、204 測定装置
105 押出成形機
106 冷却装置
107 引抜き/牽引装置
108 切断機構
109 コンベア/部品回収装置
110、206 巻取装置
205 コイリング機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
補強されたチューブ状の医療装置を連続工程で形成する方法であって、
線状に移動可能な細長いコアを準備するステップと、
前記コアの移動した部分の周りに細長いチューブ状部材を形成するステップであって、
前記細長いチューブ状部材が、
前記コアの前記移動した部分の周りに官能化ポリマーのコーティングを形成するステップ、
前記移動した部分に沿って前記官能化ポリマーのコーティングの外側表面に補強材を形成するステップ、及び
前記移動した部分に沿って前記官能化ポリマー及び前記補強材を覆うようにポリマー製のアウタージャケットを形成するステップ、
によって形成され、それにより、前記官能化ポリマーと前記ポリマー製のアウタージャケットの間が結合される、細長いチューブ状部材を形成するステップと、
前記チューブ状の医療装置を製作するために、前記細長いチューブ状部材を切断するステップと、
前記チューブ状の医療装置から前記コアを取り除くステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記官能化ポリマーが前記コアの移動した部分の周りに押出成形によって形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記官能化ポリマーが熱可塑性ポリマーから成る、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記熱可塑性ポリマーがフッ素ポリマーから成る、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記官能化ポリマーがエチレンフッ素化エチレンプロピレンから成る、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記官能化ポリマーが高密度ポリエチレンから成る、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリマー製のアウタージャケットが前記官能化ポリマー及び前記補強材を覆うように押出成形によって形成される、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリマー製のアウタージャケットがポリエーテルブロックアミド、ポリアミド、ポリウレタン、又はポリオレフィンから成る、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記補強材を形成するステップが、コイル又はブレード補強材を形成するために前記官能化ポリマーの周りにワイヤを巻き付けるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記コアがアセタールから成り、前記官能化ポリマーがフッ素化エチレンプロピレンから成り、前記補強材が平坦なワイヤコイルから成る、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記官能化ポリマーのコーティング及び前記コアがスプールに回収され、前記補強材は、前記官能化ポリマー及び前記コアが前記スプールから巻きを解かれている最中に形成される、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
前記補強材を形成する前に、前記官能化ポリマーのコーティングを軟化させるステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記官能化ポリマーのコーティング及び前記補強材が第2のスプールに回収される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリマー製のアウタージャケットが、前記官能化ポリマー及び前記補強材が前記第2のスプールから巻きを解かれている最中に押出成形により形成される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
官能化ポリマーから成るインナーライナーと、
前記インナーライナーの外側表面を覆って配置された補強材と、
前記補強材を覆って配置され前記インナーライナーに結合されるポリマー製のアウタージャケットと、
を備える、補強されたチューブ状部材。
【請求項16】
前記インナーライナーが押出成形された層から成る、請求項15に記載の補強されたチューブ状部材。
【請求項17】
前記アウタージャケットが押出成形された層から成る、請求項16に記載の補強されたチューブ状部材。
【請求項18】
前記官能化ポリマーが熱可塑性フッ素ポリマーから成る、請求項15に記載の補強されたチューブ状部材。
【請求項19】
前記フッ素ポリマーがエチレンフッ素化エチレンプロピレンから成る、請求項18に記載の補強されたチューブ状部材。
【請求項20】
前記官能化ポリマーが高密度ポリエチレンから成る、請求項15に記載の補強されたチューブ状部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−509783(P2012−509783A)
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−537527(P2011−537527)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【国際出願番号】PCT/US2009/064519
【国際公開番号】WO2010/059542
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(506324909)サビン コーポレイション (5)
【Fターム(参考)】