説明

複合材料の製造方法、複合材料、炭素繊維複合材料の製造方法及び炭素繊維複合材料

【課題】カーボンナノファイバーを用いた、複合材料の製造方法、複合材料、炭素繊維複合材料の製造方法及び炭素繊維複合材料を提供する。
【解決手段】本発明の炭素繊維複合材料の製造方法は、粒子状の超高分子量ポリエチレン40とカーボンナノファイバー38とを、第1の温度に設定した密閉式混練機30内に投入し、剪断力によって混練する。こうして、粒子状の超高分子量ポリエチレン40にカーボンナノファイバー38が入り込んだ粒子状の複合材料を得る。第1の温度は、超高分子量ポリエチレン40の融解温度以上流動開始温度未満である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノファイバーを用いた、複合材料の製造方法、複合材料、炭素繊維複合材料の製造方法及び炭素繊維複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、カーボンナノファイバーはマトリックスに分散させにくいフィラーであった。。本発明者等が先に提案した炭素繊維複合材料の製造方法によれば、エラストマーとカーボンナノファイバーを混練し、剪断力によって凝集性の強いカーボンナノファイバーを均一に分散させることができた(例えば、特許文献1)。より具体的には、エラストマーとカーボンナノファイバーとを混合すると、粘性を有するエラストマーがカーボンナノファイバーの相互に侵入し、かつ、エラストマーの特定の部分が化学的相互作用によってカーボンナノファイバーの活性の高い部分と結合し、この状態で、分子長が適度に長く、分子運動性の高い(弾性を有する)エラストマーとカーボンナノファイバーとの混合物に強い剪断力が作用すると、エラストマーの変形に伴ってカーボンナノファイバーも移動し、さらに剪断後の弾性によるエラストマーの復元力によって、凝集していたカーボンナノファイバーが分離されて、エラストマー中に分散していた。このように、マトリックスへのカーボンナノファイバーの分散性を向上させることで、高価なカーボンナノファイバーを効率よく複合材料のフィラーとして用いることができるようになった。
【0003】
また、本発明者等が先に提案した熱可塑性樹脂をマトリックスとした炭素繊維複合材料の製造方法によれば、これまで困難とされていた熱可塑性樹脂マトリックスに対するカーボンナノファイバーの分散性を改善することができた(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
しかしながら、熱可塑性樹脂をマトリックスとする場合、混練工程においてエラストマーのような弾性が得にくくカーボンナノファイバーの移動が少ないため、さらなるカーボンナノファイバーの均一分散が求められていた。
【0005】
超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)やポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などは、医療分野、特に生体関節に置換して用いられる人工関節の部材に採用されている(例えば、特許文献3参照)。人工関節としては、膝関節、股関節、肘関節、指関節などが十分に機能しなくなった場合に置換して用いられている。人工関節は、繰返し摩擦や荷重を受けるため、超高分子量ポリエチレンにおいては接触面における耐摩耗性の要求が高かった。
【特許文献1】特開2005−97525号公報
【特許文献2】特開2005−336235号公報
【特許文献3】特開2002−301093号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、カーボンナノファイバーを用いた、複合材料の製造方法、複合材料、炭素繊維複合材料の製造方法及び炭素繊維複合材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる複合材料の製造方法は、
粒子状の超高分子量ポリエチレンとカーボンナノファイバーとを、第1の温度に設定した密閉式混練機内に投入し、剪断力によって混練し、前記粒子状の超高分子量ポリエチレンに前記カーボンナノファイバーが入り込んだ粒子状の複合材料を得る工程を含み、
前記第1の温度は、前記超高分子量ポリエチレンの融解温度以上流動開始温度未満であることを特徴とする。
【0008】
本発明にかかる複合材料の製造方法によれば、第1の温度の密閉式混練機で混練することで、超高分子量ポリエチレン粒子にカーボンナノファイバーが入り込むことができ、粒子状の複合材料として後の成形に容易に用いることができる。第1の温度の密閉式混練機で混練することで、超高分子量ポリエチレンは粒子状の形態を保ちながらエラストマーの様な弾性を有し、少なくともその粒子の表面にカーボンナノファイバーの一部が入り込むことで超高分子量ポリエチレンの粒子と共にカーボンナノファイバーをハンドリングできる。
【0009】
本発明にかかる複合材料の製造方法において、
前記粒子状の超高分子量ポリエチレンと前記カーボンナノファイバーとを、前記密閉式混練機に投入する前に、前記超高分子量ポリエチレンの融解温度未満で攪拌して粉体状の混合物を得る工程をさらに有することができる。このように攪拌することで、凝集し易いカーボンナノファイバーが複合材料の一部に偏在することを防止することができる。
【0010】
本発明にかかる複合材料の製造方法において、
前記第1の温度は、130℃以上180℃未満であることができる。
【0011】
本発明にかかる複合材料の製造方法において、
前記第1の温度は、130℃以上160℃以下であることができる。
【0012】
本発明にかかる複合材料の製造方法において、
前記カーボンナノファイバーは、平均直径が0.5ないし500nmであって、
前記超高分子量ポリエチレン100重量部に対して前記カーボンナノファイバーを1重量部〜20重量部含むことができる。
【0013】
本発明にかかる複合材料の製造方法において、
前記粒子状の超高分子量ポリエチレンの平均粒径は10〜200μmであることができる。
【0014】
本発明にかかる複合材料は、
前記複合材料の製造方法で得ることができる。本発明にかかる複合材料によれば、超高分子量ポリエチレンは少なくともその粒子の表面にカーボンナノファイバーの一部が入り込むことで超高分子量ポリエチレンの粒子と共にカーボンナノファイバーを容易にハンドリングできるため、多様な成形法にもちいることができる。
【0015】
本発明にかかる炭素繊維複合材料の製造方法は、
前記複合材料の製造方法で得られた前記粒子状の複合材料を成形して一体化した炭素繊維複合材料を得る工程をさらに含むことができる。
【0016】
本発明にかかる炭素繊維複合材料によれば、超高分子量ポリエチレンの粒子にカーボンナノファイバーが入り込んだ複合材料を用いて成形しているので、微小サイズの超高分子量ポリエチレンの系を囲うようにカーボンナノファイバーが存在しかつ全体に分散した炭素繊維複合材料を成形することができる。
【0017】
本発明にかかる炭素繊維複合材料の製造方法において、
前記粒子状の複合材料を、第2の温度に設定した金型内に充填して予熱した後、加圧して成形する工程をさらに含み、
前記第2の温度は、前記超高分子量ポリエチレンの流動開始温度以上熱劣化開始温度未満であることができる。
【0018】
本発明にかかる炭素繊維複合材料の製造方法において、
前記第2の温度は、180℃以上230℃未満であることができる。
【0019】
本発明にかかる炭素繊維複合材料は、前記製造方法で得られた炭素繊維複合材料であって、
前記超高分子量ポリエチレン100重量部に対して前記カーボンナノファイバー1重量部〜20重量部含み、かつ、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって150℃、観測核がHで測定した、特性緩和時間(T2’H/150℃)が800〜1280μ秒であることができる。
【0020】
本発明にかかる炭素繊維複合材料によれば、微小サイズの超高分子量ポリエチレンの系を囲うようにカーボンナノファイバーが配置されて全体に分布している。また、炭素繊維複合材料によれば、超高分子量ポリエチレン単体よりも耐熱性や剛性を向上することができる。
【0021】
本発明にかかる炭素繊維複合材料において、
前記超高分子量ポリエチレン単体におけるパルス法NMRを用いてハーンエコー法によって150℃、観測核がHで測定した特性緩和時間(T2’Hpe/150℃)に対して、前記炭素繊維複合材料の前記特性緩和時間(T2’H/150℃)が低下した割合((T2’Hpe−T2’H)/T2’Hpe)は、前記カーボンナノファイバー1重量部当たり0.5%以上であることができる。
【0022】
本発明にかかる炭素繊維複合材料は、前記製造方法で得られた炭素繊維複合材料であって、
前記超高分子量ポリエチレン100重量部に対して前記カーボンナノファイバー1重量部〜20重量部含み、かつ、パルス法NMRを用いてソリッドエコー法によって150℃、観測核がHで測定した、特性緩和時間(T2’S/150℃)が4〜1000μ秒であることができる。
【0023】
本発明にかかる炭素繊維複合材料によれば、微小サイズの超高分子量ポリエチレンの系を囲うようにカーボンナノファイバーが配置されて全体に分布している。また、炭素繊維複合材料によれば、超高分子量ポリエチレン単体よりも耐熱性や剛性を向上することができる。
【0024】
本発明にかかる炭素繊維複合材料において、
前記超高分子量ポリエチレン単体におけるパルス法NMRを用いてソリッドエコー法によって150℃、観測核がHで測定した特性緩和時間(T2’Spe/150℃)に対して、前記炭素繊維複合材料の前記特性緩和時間(T2’S/150℃)が低下した割合((T2’Spe−T2’S)/T2’Spe)は、前記カーボンナノファイバー1重量部当たり1.0%以上であることができる。
【0025】
本発明にかかる複合材料は、
平均粒径は10〜200μmの超高分子量ポリエチレンの粒子に、平均直径が0.5ないし500nmのカーボンナノファイバーの少なくとも一部が入り込んだことを特徴とする。
【0026】
本発明にかかる複合材料によれば、超高分子量ポリエチレンは少なくともその粒子にカーボンナノファイバーの一部が入り込むことで超高分子量ポリエチレンの粒子と共にカーボンナノファイバーを容易にハンドリングできるため、多様な成形法にもちいることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0028】
本発明の一実施形態にかかる複合材料の製造方法は、粒子状の超高分子量ポリエチレンとカーボンナノファイバーとを、第1の温度に設定した密閉式混練機内に投入し、剪断力によって混練し、前記粒子状の超高分子量ポリエチレンに前記カーボンナノファイバーが入り込んだ粒子状の複合材料を得る工程を含み、前記第1の温度は、前記超高分子量ポリエチレンの融解温度以上流動開始温度未満であることを特徴とする。
【0029】
本発明の一実施形態にかかる複合材料は、平均粒径は10〜200μmの超高分子量ポリエチレンの粒子に、平均直径が0.5ないし500nmのカーボンナノファイバーの少なくとも一部が入り込んだことを特徴とする。
【0030】
本発明の一実施形態にかかる炭素繊維複合材料の製造方法は、前記複合材料の製造方法で得られた前記粒子状の複合材料を成形して一体化した炭素繊維複合材料を得る工程をさらに含むことができる。
【0031】
本発明の一実施形態にかかる炭素繊維複合材料は、前記超高分子量ポリエチレン100重量部に対して前記カーボンナノファイバー1重量部〜20重量部含み、かつ、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって150℃、観測核がHで測定した、特性緩和時間(T2’H/150℃)が800〜1280μ秒であることができる。
【0032】
本発明にかかる一実施形態にかかる炭素繊維複合材料は、前記超高分子量ポリエチレン100重量部に対して前記カーボンナノファイバー1重量部〜20重量部含み、かつ、パルス法NMRを用いてソリッドエコー法によって150℃、観測核がHで測定した、特性緩和時間(T2’S/150℃)が4〜1000μ秒であることができる。
【0033】
(I)超高分子量ポリエチレン
超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)は、市販されている粒子状の超高分子量ポリエチレン樹脂であって、粘度法で測定した平均分子量が好ましくは100万g/mol〜800万g/mol、さらに好ましくは300万g/mol〜800万g/molである。超高分子量ポリエチレンの平均粒径は、10〜200μmであることが好ましい。超高分子量ポリエチレンは、融解温度(融点)が130℃〜135℃であり、超高分子量ポリエチレンの粒子同士が融着し始める流動開始温度が180℃以上であり、超高分子量ポリエチレンが熱分解し始める熱劣化開始温度(熱分解温度)が230℃以上であることが好ましい。超高分子量ポリエチレンの融解温度と流動開始温度は、後述する熱機械分析装置(TMA)によって測定することができる。また、超高分子量ポリエチレンの熱劣化開始温度は、後述する熱重量分析(TG)法によって測定することができる。市販されている超高分子量ポリエチレンとしては、例えば、三井化学工業のハイゼックスミリオン、旭化成工業のサンテック、Ticona社のHOSTALRN.GUR、ハーキュルスのHIFLAX.100などがある。
【0034】
(II)カーボンナノファイバー
カーボンナノファイバーは、平均直径が0.5ないし500nmであることが好ましく、炭素繊維複合材料の剛性を向上させるためには0.5ないし160nmであることがさらに好ましい。さらに、カーボンナノファイバーは、ストレート繊維状であっても、湾曲繊維状であってもよい。カーボンナノファイバーの配合量は、特に限定されず、用途に応じて設定できるが、超高分子量ポリエチレン100重量部(phr)に対してカーボンナノファイバー1重量部(phr)〜20重量部(phr)が成形性の点で好ましい。
【0035】
カーボンナノファイバーとしては、例えば、いわゆるカーボンナノチューブなどが例示できる。カーボンナノチューブは、炭素六角網面のグラフェンシートが円筒状に閉じた単層構造あるいはこれらの円筒構造が入れ子状に配置された多層構造を有する。すなわち、カーボンナノチューブは、単層構造のみから構成されていても多層構造のみから構成されていても良く、単層構造と多層構造が混在していてもかまわない。また、部分的にカーボンナノチューブの構造を有する炭素材料も使用することができる。なお、カーボンナノチューブという名称の他にグラファイトフィブリルナノチューブといった名称で称されることもある。
【0036】
単層カーボンナノチューブもしくは多層カーボンナノチューブは、アーク放電法、レーザーアブレーション法、気相成長法などによって望ましいサイズに製造される。アーク放電法は、大気圧よりもやや低い圧力のアルゴンや水素雰囲気下で、炭素棒でできた電極材料の間にアーク放電を行うことで、陰極に堆積した多層カーボンナノチューブを得る方法である。また、単層カーボンナノチューブは、前記炭素棒中にニッケル/コバルトなどの触媒を混ぜてアーク放電を行い、処理容器の内側面に付着するすすから得られる。レーザーアブレーション法は、希ガス(例えばアルゴン)中で、ターゲットであるニッケル/コバルトなどの触媒を混ぜた炭素表面に、YAGレーザーの強いパルスレーザー光を照射することによって炭素表面を溶融・蒸発させて、単層カーボンナノチューブを得る方法である。気相成長法は、ベンゼンやトルエン等の炭化水素を気相で熱分解し、カーボンナノチューブを合成するもので、より具体的には、流動触媒法やゼオライト担持触媒法などが例示できる。
【0037】
カーボンナノファイバーは、超高分子量ポリエチレンと混合される前に、あらかじめ表面処理、例えば、イオン注入処理、スパッタエッチング処理、プラズマ処理などを行うことによって、超高分子量ポリエチレンとの接着性やぬれ性を改善することができる。
【0038】
(III)複合材料及び炭素繊維複合材料の製造方法
本実施の形態にかかる複合材料の製造方法としては、まず、粒子状の超高分子量ポリエチレンと、カーボンナノファイバーと、を超高分子量ポリエチレンの融解温度未満で攪拌して粉体状の混合物を得る工程を有することができる。このように攪拌することで、凝集し易いカーボンナノファイバーが複合材料の一部に偏在することを防止することができるため好ましいが、例えばカーボンナノファイバーの配合量などによって後の工程で使用する密閉式混練機で同様の攪拌操作を行なうこともできる。このような攪拌に用いられる攪拌機としては、一般に2種類以上の粒子状の物質を混合するミキサやブレンダを用いることができる。このような攪拌操作は、超高分子量ポリエチレンの融解温度未満で行なうことがカーボンナノファイバーの偏在を防止するために好ましい。しかしながら、このままではカーボンナノファイバーは凝集塊のままであるので、解繊しなければならない。
【0039】
図1は、2本のロータを用いた密閉式混練機30による粒子状の複合材料を得る工程を模式的に示す図である。図1に示すように、粒子状の超高分子量ポリエチレン40と、カーボンナノファイバー38と、を含む粉体状の混合物42を、第1の温度に設定された密閉式混練機30内に投入口34投入し、剪断力によって混練し、粒子状の超高分子量ポリエチレン40にカーボンナノファイバー38が入り込んだ粒子状の複合材料を得る工程を行うことができる。前述したように、粉体状の混合物42を得ることなく、そのまま粒子状の超高分子量ポリエチレンと、カーボンナノファイバーと、を密閉式混練機30に投入することも可能である。第1の温度は、超高分子量ポリエチレンの融解温度以上流動開始温度未満である。第1の温度は、130℃以上180℃未満であることが好ましく、130℃以上160℃以下であることがさらに好ましい。流動開始温度は、融解温度と共に、熱機械分析装置(TMA)によって超高分子量ポリエチレンの温度を変化させながら一定の荷重を加えて温度に対する変形量を測定することで得ることができる。超高分子量ポリエチレンをこのように熱機械分析すると、融解温度を超えたあたりから試料が急激に膨張し始め、膨張停止温度まで達すると試料の膨張がほぼ停止し、流動開始温度を超えると試料が急激に収縮を開始する。
【0040】
密閉式混練機30は、第1のロータ31と、第2のロータ32と、を有する。第1のロータ31と第2のロータ32とは、所定の間隔で配置され、回転することによって超高分子量ポリエチレン40とカーボンナノファイバー38とを混練することができる。図示の例では、第1のロータ31および第2のロータ32は、互いに反対方向(例えば、図中の矢印で示す方向)に所定の速度比で回転している。第1のロータ31と第2のロータ32との速度、第1、第2のロータ31,32とチャンバー36の内壁部との間隔などによって所望の剪断力を得ることができる。この工程での剪断力は、超高分子量ポリエチレン40の種類とカーボンナノファイバー38の量などによって適宜設定される。密閉式混練機30を第1の温度に設定しておくことで、超高分子量ポリエチレン40は少なくとも融解温度以上で混練されるため、粒子状の形態のまま弾性を有したエラストマーのような状態となり、カーボンナノファイバー38が超高分子量ポリエチレン40の粒子へ浸入することができる。このような密閉式混練機30としては、バンバリーミキサー、ニーダーなどを採用することができる。
【0041】
このようにして得られた粒子状の複合材料は、平均粒径は10〜200μmの超高分子量ポリエチレンの粒子に、平均直径が0.5ないし500nmのカーボンナノファイバーの少なくとも一部が入り込んむことができる。粒子状の複合材料は、超高分子量ポリエチレンの粒子の表面付近をカーボンナノファイバーが囲むように存在することができる。このような粒子状の複合材料によれば、超高分子量ポリエチレンは少なくともその粒子にカーボンナノファイバーの一部が入り込むことで超高分子量ポリエチレンの粒子と共にカーボンナノファイバーを容易にハンドリングできるため、多様な成形法にもちいることができる。
【0042】
最後に、このようにして得られた粒子状の複合材料を成形して一体化した炭素繊維複合材料を得る工程について説明する。この粒子状の複合材料を超高分子量ポリエチレンの一般に採用される成形加工例えば、押出成形法、トランスファー成形法、射出成形法、プレス成形法などによって所望の形状例えばシート状に成形して炭素繊維複合材料を得ることができる。例えば、プレス成形では、粒子状の複合材料を、第2の温度に設定した金型内に充填して予熱した後、加圧して成形する工程を有することができる。ここで、第2の温度は、超高分子量ポリエチレンの流動開始温度以上熱劣化開始温度未満であることが好ましい。第2の温度は、180℃以上230℃未満であることが好ましい。熱劣化開始温度(熱分解温度)は、熱重量分析(TG)法によって昇温させながら超高分子量ポリエチレンの重量変化を測定したとき、熱分解によって重量が減少し始める温度として求めることができる。金型内での予熱によって複合材料における超高分子量ポリエチレンは少なくとも流動開始温度まで昇温され流動が可能となり、加圧されることで他の粒子と結合すると共に所望の形状に成形される。
【0043】
(IV)炭素繊維複合材料
炭素繊維複合材料について説明する。
炭素繊維複合材料は、超高分子量ポリエチレンのマトリックス中にカーボンナノファイバーが分散している。より詳細には、超高分子量ポリエチレンの微小系例えば原料時の超高分子量ポリエチレンの粒子と同じくらい小さい系を取り囲むようにカーボンナノファイバーが配置され、ケージセルレーションを構成している。前記製造方法によって得られた炭素繊維複合材料は、例えば、超高分子量ポリエチレン100重量部(phr)に対してカーボンナノファイバー1〜20重量部(phr)含み、かつ、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって150℃、観測核がHで測定した、特性緩和時間(T2’H/150℃)が800〜1280μ秒であることができる。さらに、前記製造方法によって得られた炭素繊維複合材料は、超高分子量ポリエチレン単体におけるパルス法NMRを用いてハーンエコー法によって150℃、観測核がHで測定した特性緩和時間(T2’Hpe/150℃)に対して、炭素繊維複合材料の特性緩和時間(T2’H/150℃)が低下した割合((T2’Hpe−T2’H)/T2’Hpe)は、カーボンナノファイバー1重量部当たり0.5%以上であることが好ましい。なお、特性緩和時間(T2’H)における「H」は、後述するソリッドエコー法の「S」と区別するために用いた表記であり、特性緩和時間(T2’Hpe/150℃)の「pe」は超高分子量ポリエチレン単体であることを示す。また、超高分子量ポリエチレンの特性緩和時間(T2’Hpe/150℃)は、炭素繊維複合材料と同様に、粒子状の複合材料を超高分子量ポリエチレンの一般に採用される成形加工例えば、押出成形法、トランスファー成形法、射出成形法、プレス成形法などによって所望の形状例えばシート状に成形したものの測定結果を用いる。なぜなら、超高分子量ポリエチレンの粉末状の原料よりもプレス成形などによって分子量が低下するため特性緩和時間も低下するためである。
【0044】
ハーンエコー法による特性緩和時間(T2’H)は、超高分子量ポリエチレンの分子運動性を示す尺度であって、多成分系の平均的緩和時間を表す。したがって、特性緩和時間(T2’H)は、ハーンエコー法によって検出された複数の緩和時間の平均値であり、
1/T2’H=fa/T2a+fb/T2b+fc/T2c・・・
と表すことができる。
カーボンナノファイバーが分散した炭素繊維複合材料は、マトリックスである超高分子量ポリエチレン分子をカーボンナノファイバーが拘束する力を表すといえ、150℃におけるハーンエコー法による特性緩和時間(T2’H/150℃)が超高分子量ポリエチレン単体の特性緩和時間(T2’Hpe/150℃)に比べてカーボンナノファイバーの配合量に応じて小さくなる。したがって、カーボンナノファイバーを混合した炭素繊維複合材料であっても、カーボンナノファイバーが均一に分散していない場合には超高分子量ポリエチレン分子を全体に拘束しにくいため、150℃におけるハーンエコー法による特性緩和時間(T2’H/150℃)が超高分子量ポリエチレン単体の特性緩和時間(T2’Hpe/150℃)とほとんど変わらず、例えば特性緩和時間(T2’H/150℃)の低下した割合は0.5%未満もしくは増加する。
【0045】
前記製造方法によって得られた炭素繊維複合材料は、例えば、超高分子量ポリエチレン100重量部に対してカーボンナノファイバー1重量部〜20重量部含み、かつ、パルス法NMRを用いてソリッドエコー法によって150℃、観測核がHで測定した、特性緩和時間(T2’S/150℃)が4〜1000μ秒であることができる。さらに、前記製造方法で得られた炭素繊維複合材料は、超高分子量ポリエチレン単体におけるパルス法NMRを用いてソリッドエコー法によって150℃、観測核がHで測定した特性緩和時間(T2’Spe/150℃)に対して、炭素繊維複合材料の特性緩和時間(T2’S/150℃)が低下した割合((T2’Spe−T2’S)/T2’Spe)は、カーボンナノファイバー1重量部当たり1.0%以上であることが好ましい。
【0046】
ソリッドエコー法による特性緩和時間(T2’S)は、カーボンナノファイバーによる磁場の不均一性を示す尺度であって、多成分系の平均的緩和時間を表す。したがって、特性緩和時間(T2’S)は、ハーンエコー法によって検出された複数の緩和時間の平均値であり、
1/T2’S=fa/T2a+fb/T2b+fc/T2c・・・
と表すことができる。
【0047】
カーボンナノファイバーが分散した炭素繊維複合材料は、カーボンナノファイバーが均一に分散することで磁場の不均一性が起こり、150℃におけるソリッドエコー法による特性緩和時間(T2’S/150℃)が超高分子量ポリエチレン単体の特性緩和時間(T2’Spe/150℃)に比べてカーボンナノファイバーの配合量に応じて小さくなる。また、カーボンナノファイバーを混合した炭素繊維複合材料であっても、カーボンナノファイバーが均一に分散していない場合には磁場の不均一性があまり導入されず、したがって150℃におけるソリッドエコー法による特性緩和時間(T2’S/150℃)が超高分子量ポリエチレン単体の特性緩和時間(T2’Spe/150℃)とほとんど変わらず、例えば特性緩和時間(T2’S/150℃)の低下した割合は1%未満である。
【実施例】
【0048】
以下、本発明の実施例について述べるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(1)超高分子量ポリエチレンの熱機械分析装置(TMA)による測定
超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)は、三井化学社製ハイゼックスミリオンの粒子状の超高分子量ポリエチレン樹脂であって、粘度法で測定した平均分子量が550万g/molを用いた。粒子状の超高分子量ポリエチレンを融着防止のため石英板(0.5g)で挟み、厚さ約1mmのシート状に圧縮成形し、熱機械分析装置(TMA)によって実質荷重+0.5gで圧縮し、温度変化に対する熱変形量(μm)を測定した。測定装置は、SII社製TMA/SS6100を用いた。測定結果は、図2に示す。
図2の測定結果によれば、本実施例で用いられた超高分子量ポリエチレンは、点Aにおいて膨張率が大きくなり、点Bにおいてさらに急激に膨張率が大きくなり、点Cにおいてほぼ膨張しなくなり、点Dにおいて急激な収縮を開始した。これらの結果から、点Aが約60℃のガラス転移点、点Bが約130℃の融解温度、点Cが約160℃の膨張停止温度、点Dが約180℃の流動開始温度であることがわかった。なお、点Bについては、示差走査熱量分析(DSC)によって融解温度を確認した。
【0049】
(2)実施例1〜6及び比較例1〜2の粒子状の複合材料及び炭素繊維複合材料サンプルの作製
まず、ミキサーに、表1に示す所定量の超高分子量ポリエチレン(100重量部(phr))と、カーボンナノファイバーと、を投入し、高速攪拌後、粉体状の混合物をミキサーから取り出した。原料の粒子状の超高分子量ポリエチレンの電子顕微鏡写真を図3(3.0kV、150倍)、図4(3.0kV、500倍)、図5(3.0kV、10,000倍)に示した。
次に、160℃に設定した密閉式混練機(ブラベンダー社製、PLASTI−CORDER、容量350ml)に、粉体状の混合物100gを投入し、回転数20rpmで20分間混練し粒子状の複合材料を得た。実施例2の複合材料の電子顕微鏡写真を図6(3.0kV、150倍)、図7(3.0kV、500倍)、図8(3.0kV、10,000倍)に示した。
そして、粒子状の複合材料を、220℃に加熱された金型内に充填し、予熱5分間、加圧3分間でプレス成形し、それぞれ厚さ1mmのシート状の炭素繊維複合材料に成形した。
なお、比較例1のサンプルは、超高分子量ポリエチレン単体であるが、実施例1〜6と同じ条件で220℃にて余熱5分間、加圧3分間でプレス成形し、厚さ1mmのシート状サンプルに成形した。
表1において、原料の超高分子量ポリエチレンの「UHMWPE」は三井化学社製ハイゼックスミリオンの粘度法で測定した平均分子量が約550万g/mol、「気相成長炭素繊維」は平均直径87nmで平均長さ10μmの気相成長法で製造したマルチウォールカーボンナノチューブである。なお、超高分子量ポリエチレン100重量部(phr)に対してカーボンナノファイバーが20重量部(phr)を超えると成形が難しくなる傾向があった。
【0050】
(3)パルス法NMRを用いた測定
実施例1〜6及び比較例1の炭素繊維複合材料サンプルについて、パルス法NMRを用いてハーンエコー法による測定を行った。この測定は、日本電子(株)製「JMN−MU25」を用いて行った。測定は、観測核がH、共鳴周波数が25MHz、90゜パルス幅が2μsecの条件で行い、ハーンエコー法のパルスシーケンス(90゜x−Pi−180゜y)にて、減衰曲線を測定し、炭素繊維複合材料サンプルの150℃における特性緩和時間(T2’H)を測定した。測定結果を表1に示す。
さらに、比較例1の超高分子量ポリエチレン単体におけるパルス法NMRを用いてハーンエコー法によって同様にして測定した特性緩和時間(T2’Hpe/150℃)に対して、実施例1〜5の炭素繊維複合材料の特性緩和時間(T2’H/150℃)が低下した割合((T2’Hpe−T2’H)/T2’Hpe)をカーボンナノファイバー1重量部当たりで計算した。例えば実施例1の場合、(1300μ秒−1250μ秒)/1300μ秒/1phr×100=3.8%と計算した。計算結果を表1の「T2’H低下率」に示す。なお、原料の粒子状の超高分子量ポリエチレンの特性緩和時間(T2’H)は1390μ秒であった。
また、パルス法NMRを用いてソリッドエコー法による測定を行った。この測定は、日本電子(株)製「JMN−MU25」を用いて行った。測定は、観測核がH、共鳴周波数が25MHz、90゜パルス幅が2μsecの条件で行い、ソリッドエコー法のパルスシーケンス(90゜x−Pi−90゜y)にて、減衰曲線を測定し、炭素繊維複合材料サンプルの150℃における特性緩和時間(T2’S)を検出した。測定結果を表1に示す。
さらに、比較例1の超高分子量ポリエチレン単体におけるパルス法NMRを用いてソリッドエコー法によって同様にして測定した特性緩和時間(T2’Spe/150℃)に対して、実施例1〜5の炭素繊維複合材料の特性緩和時間(T2’S/150℃)が低下した割合((T2’Spe−T2’S)/T2’Spe)をカーボンナノファイバー1重量部当たりで計算した。例えば実施例1の場合、(1100μ秒−1000μ秒)/1100μ秒/1phr×100=9.1%と計算した。計算結果を表1の「T2’S低下率」に示す。なお、原料の粒子状の超高分子量ポリエチレンの特性緩和時間(T2’S)は1100μ秒であった。
【0051】
(4)引張強さ(TB)及び破断伸び(EB)の測定
炭素繊維複合材料サンプルを1A形のダンベル形状に切り出した試験片について、東洋精機社製の引張試験機を用いて、23±2℃、引張速度500mm/minでJIS K6251に基づいて引張試験を行い引張強さ(MPa)及び破断伸び(%)を測定した。これらの結果を表1に示す。
【0052】
(5)動的粘弾性試験
炭素繊維複合材料サンプルを短冊形(40×1×5(巾)mm)に切り出した試験片について、SII社製の動的粘弾性試験機DMS6100を用いて、チャック間距離20mm、測定温度−100〜300℃、動的ひずみ±0.05%、周波数10HzでJIS K6394に基づいて動的粘弾性試験を行い動的弾性率(E’、単位はMPa)を測定した。測定温度が30℃と150℃における動的弾性率(E’)の測定結果を表1に示す。
【0053】
(6)変形開始温度の測定
厚さ約1mmの炭素繊維複合材料サンプルを熱機械分析装置(TMA)によって無負荷で寸法変化を測定した。そして、融解による大きな変形を開始する温度を、変形開始温度とした。測定装置は、SII社製TMA/SS6100を用いた。その結果を表1に示す。なお、表1において、(測定温度範囲不明)−100℃〜300℃で大きな変形が見られなかった場合を「無し」と記載した。
【0054】
(7)熱劣化開始温度(熱分解温度)の測定
炭素繊維複合材料サンプルについて、熱重量分析(TG)法によって昇温速度20℃/minで昇温しながら重量変化を測定したとき、熱分解によって重量が減少し始める温度を熱劣化開始温度として得た。測定装置は、SII社製TG/DTA6300を用いた。その結果を表1に示す。なお、比較例1に示すように、超高分子量ポリエチレン単体の熱劣化開始温度は257℃であった。
【0055】
【表1】

表1から、本発明の実施例1〜6によれば、以下のことが確認された。すなわち、本発明の実施例2の複合材料は、図6,7,8に示すように、超高分子量ポリエチレンの粒子表面にカーボンナノファイバーが覆い、特に図8ではカーボンナノファイバーと超高分子量ポリエチレンが濡れていることが判った。また、実施例1〜6の炭素繊維複合材料は、比較例1に比べて特性緩和時間(T2’H/150℃)が短く、800〜1280μ秒であり、比較例1の超高分子量ポリエチレン単体サンプルに比べて特性緩和時間(T2’H/150℃)の低下率は0.5%以上であった。また、本発明の実施例1〜6の炭素繊維複合材料は、比較例1に比べて特性緩和時間(T2’S/150℃)も短く、150〜1000μ秒であり、比較例1の超高分子量ポリエチレン単体サンプルに比べて特性緩和時間(T2’S/150℃)の低下率は1.0%以上であった。また、本発明の実施例1〜6の炭素繊維複合材料は、動的粘弾性率(E’)が向上したため、剛性が向上し耐摩耗性も向上したと推測できた。実施例1〜6の炭素繊維複合材料においては、超高分子量ポリエチレンの融解温度以上の温度においても変形開始温度が観測されず、非常に高い耐熱性を示すことがわかった。このように耐熱性が向上したことで、特に高温における凝着摩耗による耐摩耗性も向上することが推測できた。なお、比較例2は、カーボンナノファイバーの配合量が多いため成形不能であった。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】密閉式混練機30による粒子状の複合材料を得る工程を模式的に示す図である。
【図2】熱機械分析装置(TMA)によって測定した温度変化−熱変形量を示すグラフである。
【図3】原料の粒子状の超高分子量ポリエチレンの電子顕微鏡写真(3.0kV、150倍)である。
【図4】原料の粒子状の超高分子量ポリエチレンの電子顕微鏡写真(3.0kV、500倍)である。
【図5】原料の粒子状の超高分子量ポリエチレンの電子顕微鏡写真(3.0kV、10,000倍)である。
【図6】実施例2の複合材料の電子顕微鏡写真(3.0kV、150倍)である。
【図7】実施例2の複合材料の電子顕微鏡写真(3.0kV、500倍)である。
【図8】実施例2の複合材料の電子顕微鏡写真(3.0kV、10,000倍)である。
【符号の説明】
【0057】
30 密閉式混練機
31 第1のロール
32 第2のロール
34 投入口
36 チャンバー
38 カーボンナノファイバー
40 超高分子量ポリエチレン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子状の超高分子量ポリエチレンとカーボンナノファイバーとを、第1の温度に設定した密閉式混練機内に投入し、剪断力によって混練し、前記粒子状の超高分子量ポリエチレンに前記カーボンナノファイバーが入り込んだ粒子状の複合材料を得る工程を含み、
前記第1の温度は、前記超高分子量ポリエチレンの融解温度以上流動開始温度未満である、複合材料の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記粒子状の超高分子量ポリエチレンと前記カーボンナノファイバーとを、前記密閉式混練機に投入する前に、前記超高分子量ポリエチレンの融解温度未満で攪拌して粉体状の混合物を得る工程をさらに有する、複合材料の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記第1の温度は、130℃以上180℃未満である、複合材料の製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記第1の温度は、130℃以上160℃以下である、複合材料の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、
前記カーボンナノファイバーは、平均直径が0.5ないし500nmであって、
前記超高分子量ポリエチレン100重量部に対して前記カーボンナノファイバーを1重量部〜20重量部含む、複合材料の製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかにおいて、
前記粒子状の超高分子量ポリエチレンの平均粒径は10〜200μmである、複合材料の製造方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかの製造方法で得られた、複合材料。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかの製造方法で得られた前記粒子状の複合材料を成形して一体化した炭素繊維複合材料を得る工程をさらに含む、炭素繊維複合材料の製造方法。
【請求項9】
請求項8において、
前記炭素繊維複合材料を得る工程は、前記粒子状の複合材料を、第2の温度に設定した金型内に充填して予熱した後、加圧して成形する工程をさらに含み、
前記第2の温度は、前記超高分子量ポリエチレンの流動開始温度以上熱劣化開始温度未満である、炭素繊維複合材料の製造方法。
【請求項10】
請求項9において、
前記第2の温度は、180℃以上230℃未満である、炭素繊維複合材料の製造方法。
【請求項11】
請求項8ないし10のいずれかの製造方法で得られた炭素繊維複合材料であって、
前記超高分子量ポリエチレン100重量部に対して前記カーボンナノファイバー1重量部〜20重量部含み、かつ、パルス法NMRを用いてハーンエコー法によって150℃、観測核がHで測定した、特性緩和時間(T2’H/150℃)が800〜1280μ秒である、炭素繊維複合材料。
【請求項12】
請求項11において、
前記超高分子量ポリエチレン単体におけるパルス法NMRを用いてハーンエコー法によって150℃、観測核がHで測定した特性緩和時間(T2’Hpe/150℃)に対して、前記炭素繊維複合材料の前記特性緩和時間(T2’H/150℃)が低下した割合((T2’Hpe−T2’H)/T2’Hpe)は、前記カーボンナノファイバー1重量部当たり0.5%以上である、炭素繊維複合材料。
【請求項13】
請求項8ないし10のいずれかの製造方法で得られた炭素繊維複合材料であって、
前記超高分子量ポリエチレン100重量部に対して前記カーボンナノファイバー1重量部〜20重量部含み、かつ、パルス法NMRを用いてソリッドエコー法によって150℃、観測核がHで測定した、特性緩和時間(T2’S/150℃)が4〜1000μ秒である、炭素繊維複合材料。
【請求項14】
請求項13において、
前記超高分子量ポリエチレン単体におけるパルス法NMRを用いてソリッドエコー法によって150℃、観測核がHで測定した特性緩和時間(T2’Spe/150℃)に対して、前記炭素繊維複合材料の前記特性緩和時間(T2’S/150℃)が低下した割合((T2’Spe−T2’S)/T2’Spe)は、前記カーボンナノファイバー1重量部当たり1.0%以上である、炭素繊維複合材料。
【請求項15】
平均粒径は10〜200μmの超高分子量ポリエチレンの粒子に、平均直径が0.5ないし500nmのカーボンナノファイバーの少なくとも一部が入り込んだ、複合材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−91439(P2009−91439A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−262459(P2007−262459)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【出願人】(000226677)日信工業株式会社 (840)
【出願人】(591060980)岡山県 (96)
【Fターム(参考)】