説明

複合熱線遮蔽フィルム

【課題】幅広い吸収特性を有し、高い熱線遮蔽能を有しながら、従来のものよりも可視光透過率が高く、かつ、耐候性にも著しく優れた複合熱線遮蔽フィルムを提供すること。
【解決手段】透明基材層(A)上に、無機系物質及び樹脂を含有する樹脂組成物からなる熱線遮蔽層(B)が形成された熱線遮蔽フィルム(I)と、透明基材層(C)上に800nm以上1200nm以下に光の最大吸収波長を有する有機系物質及び樹脂を含有する樹脂組成物からなる熱線遮蔽層(D)が形成された熱線遮蔽フィルム(II)とを張り合わせた複合熱線遮蔽フィルムにおいて、前記(D)層又は(D)層より入射光側に形成された層の少なくとも一層に紫外線吸収物質を含有させ紫外線遮蔽層を設ける。熱線遮蔽物質は無機系物質及び有機系物質を使用し、有機物としてはイミド酸をカウンターアニオンに有するジイモニウム塩が好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建物や乗り物の窓ガラス等の、透明ガラス体に貼着して用いられる熱線遮蔽フィルムに関し、特に耐候性に優れ、幅広い熱線吸収能を有する熱線遮蔽フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素排出量の増大から地球温暖化現象が引き起こされ問題となっている。地球温暖化現象を改善するためには省エネルギー化が有効な手段の一つであり、これら対策技術、対策製品が注目されている。この中の一つに熱線を遮蔽する機能が付与されたフィルム、すなわち熱線遮蔽フィルムがある。これは建物の窓、乗り物の窓、あるいは冷蔵、冷凍ショーケースの窓などに貼り付けることで熱線を遮蔽し、エアコン効率を向上させ省エネルギー化を図ろうというものである。
【0003】
これら、熱線遮蔽フィルムについては従来様々なものが開示されている。例えば、特許文献1には、Al、Ag、Au等の金属薄膜をスパッタリングや蒸着により形成してなる熱線反射フィルムや、ハードコート層にアンチモン含有酸化スズ微粒子やインジウム含有酸化スズ微粒子を含有してなる熱線遮蔽フィルム等が開示されている。
【0004】
前記特許文献1に開示の金属蒸着フィルムにおいては、可視光透過率と熱線遮蔽率が相反するため、十分な熱線遮蔽率を得るためには可視光透過性を犠牲にしなければならない欠点があった。また、スパッタフィルムに関しても蒸着フィルムと同様、十分な可視光透過率を得ることが困難であり、非常に高価であるという欠点があった。また、室外から見たときに、反射光による眩しさの問題も生じる。更には建物、自動車などに貼着、使用した際、携帯電話、カーナビゲーションシステムやカーテレビなどのカー用品に使用される有用な電波まで遮蔽してしまう可能性がある。また、アンチモン含有酸化スズ微粒子やインジウム含有酸化スズ微粒子を熱線遮蔽物質として使用したフィルムについては十分に大きな熱線遮蔽率を実現できず、特に太陽光に含まれる熱線においてエネルギー量が最も多い1000nm付近の光をほとんど遮蔽できないという問題があった。
【0005】
これらの問題に対し、特許文献2にはアンチモンドープ酸化錫やインジウムドープ酸化錫等の金属酸化物微粒子と1200nm以下の近赤外領域に最大吸収波長のある化合物であるジイモニウム塩及び(メタ)アクリロイル基を持つ活性エネルギー線重合型(メタ)アクリレートからなる樹脂組成物をコーティングしたフィルムが開示されている。
【0006】
しかし、幅広い吸収特性を有するジイモニウム塩は活性エネルギー線に弱く、活性エネルギー線を照射し(メタ)アクリレート樹脂を硬化させる際ジイモニウム塩が分解してしまう恐れがあり、ジイモニウム塩の分解に活性エネルギー線が消費されてしまうため(メタ)アクリレート樹脂の硬化阻害が引き起こされ、フィルム自体の作製が困難であるという欠点もあった。更に、窓張り用フィルムとして使用した際、該文献中に記載されている従来のジイモニウム塩については耐久性が不十分であり、熱線吸収によるフィルム自体の発熱や太陽光に含まれる紫外線により劣化し、熱線遮蔽効果がすぐに消失してしまう欠点もあった。
【0007】
【特許文献1】特開平8−281860号公報
【特許文献2】特開平9−310031号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は幅広い吸収特性を有し、従来のものより高い熱線遮蔽能を有しながら、可視光透過率が高く、かつ、耐候性にも著しく優れた熱線遮蔽フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は鋭意検討した結果、熱線遮蔽層中に熱線遮蔽物質を含有させた熱線遮蔽フィルムにおいて、特定の熱線遮蔽物質を含んだ熱線遮蔽層と同一層もしくは熱線遮蔽層に対し入射光側に形成された層の少なくとも一層に紫外線吸収物質を含有させ紫外線遮蔽層を設けることにより、前記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は以下の(1)〜(7)に示すものである。
【0011】
(1):透明基材層(A)上に、無機系物質及び樹脂を含有する樹脂組成物からなる熱線遮蔽層(B)が形成された熱線遮蔽フィルム(I)と、
透明基材層(C)上に、800nm以上1200nm以下に光の最大吸収波長を有する有機系物質及び樹脂を含有する樹脂組成物からなる熱線遮蔽層(D)が形成された熱線遮蔽フィルム(II)とを粘着層を介して張り合わされてなる複合熱線遮蔽フィルムにおいて、
前記(D)層又は(D)層より入射光側に形成された層の少なくとも一層に紫外線吸収物質が含有されたことを特徴とする複合熱線遮蔽フィルム。
【0012】
(2):前記有機系物質が下記一般式(1)で表されるジイモニウム塩である請求項2に記載の複合熱線遮蔽フィルム。
【0013】
【化1】

【0014】
式中、Rは同一または異なってもよい、アルキル基、分岐アルキル基、ハロゲン化アルキル基、シアノアルキル基、アリール基、ヒドロキシル基、フェニル基、フェニルアルキレン基またはアルコキシ基を示し、Rはフッ素原子またはフッ化アルキル基を示す。
【0015】
(3):前記紫外線吸収物質が340nm以上390nm以下に光の最大吸収波長を有する紫外線吸収剤であることを特徴とする請求項1又は2に記載の複合熱線遮蔽フィルム。
【0016】
(4):前記(B)層がハードコート層を兼ね、一方の最外層が粘着層であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の複合熱線遮蔽フィルム。
【0017】
(5):前記(B)層に含まれる樹脂が活性エネルギー線硬化性樹脂であり、
前記(D)層に含まれる樹脂が熱可塑性樹脂又は架橋硬化型熱硬化性樹脂であることを特徴とする請求項4に記載の複合熱線遮蔽フィルム。
【0018】
(6):前記無機系物質が金属酸化物微粒子であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の複合熱線遮蔽フィルム。
【0019】
(7):前記無機系物質がインジウム含有酸化スズ微粒子、アンチモン含有酸化スズ微粒子、酸化亜鉛微粒子からなる群の少なくとも1つであることを特徴とする請求項6に記載の複合熱線遮蔽フィルム。
【発明の効果】
【0020】
熱線遮蔽物質を含有する熱線遮蔽層を有した熱線遮蔽フィルムにおいて、有機系熱線遮蔽物質を含有する樹脂組成物からなる熱線遮蔽層と同一層もしくは熱線遮蔽層に対し入射光側に形成された層の少なくとも一層に紫外線遮蔽層を設けることで、熱線遮蔽物質の耐候性が著しく向上し、更に有機系熱線遮蔽物質として特定のジイモニウム塩を使用することで飛躍的に耐候性が向上した熱線遮蔽フィルムが得られる。このような幅広い熱線吸収能を有し、高耐候性を有した熱線遮蔽フィルムは省エネルギー効果に優れた窓張りフィルムなどへの応用に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の複合熱線遮蔽フィルムは、熱線と呼ばれる近赤外線を幅広く吸収し、高い可視光透過率を有する熱線遮蔽フィルムについて、これまでにない優れた耐候性を有するものであり、該熱線遮蔽フィルムは窓などに貼着し、熱線遮蔽による省エネルギー効果を奏し、また、窓ガラスが割れた際、ガラス破片の飛散を抑制する飛散防止フィルムとしての効果も有する。
【0022】
本発明は、透明基材層(A)上に、無機系物質及び樹脂を含有する樹脂組成物からなる熱線遮蔽層(B)が形成された熱線遮蔽フィルム(I)と、
透明基材(C)上に、800nm以上1200nm以下に光の最大吸収波長を有する有機系物質及び樹脂を含有する樹脂組成物からなる熱線遮蔽層(D)が形成された熱線遮蔽フィルム(II)とを粘着層を介し張り合わされてなる複合熱線遮蔽フィルムにおいて、
前記(D)層又は(D)層より入射光側に形成された層の少なくとも一層に紫外線吸収物質が含有されたことを特徴とする複合熱線遮蔽フィルムである。
【0023】
透明基材としては透明で可視光透過率が高ければ特に制限はなく、例えばポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂をなど使用した透明基材などを挙げることができる。なお、透明基材には紫外線遮蔽機能を付与したものや染料や顔料が添加された有色透明なものも必要に応じ使用することができ、基材厚として12〜300μm程度のものが好ましく使用される。
【0024】
次に、本発明に用いることができる熱線遮蔽物質について説明する。本発明の複合熱線遮蔽フィルムにおける熱線遮蔽層に用いる熱線遮蔽物質としては、無機系物質、有機系物質を用いることができ、特に制限されないが、より幅広い熱線吸収スペクトルを有するようにするために、熱線遮蔽フィルム中に無機系物質及び有機系物質をともに含有させることが好ましい。従って、無機系物質及び800nm以上1200nm以下に光の最大吸収波長を有する有機系物質であることが好ましい。
【0025】
無機系物質については、金属酸化物微粒子を用いることができ、可視光透過率を低下させないため一次粒子径が0.1μm以下であることが好ましい。微粒子形状については球状、針状、板状など任意の形状で良く特に限定されない。具体的には、酸化チタン、酸化インジウム、酸化錫、酸化アンチモン、ガラスセラミックス、インジウムドープ酸化錫(以下、「ITO」と略記する。)、アンチモンドープ酸化錫(以下、「ATO」と略記する。)、酸化亜鉛が挙げられる。それら金属酸化物微粒子の中でもITO、ATO、酸化亜鉛は熱線吸収能力に優れ、有機系熱線遮蔽物質と組み合わせることにより幅広い熱線吸収能を有する熱線遮蔽フィルムが製造できることから特に好ましい。無機系物質の樹脂組成物の固形分比に対する添加量ついては特に制限がなく、要求される熱線遮蔽性能に応じて任意に選ぶことができるが、樹脂成分100重量部に対し10〜500重量部にすることが好ましく、特に80〜400重量部にすることが好ましい。
【0026】
有機系物質としては、800nm以上1200nm以下に光の最大吸収波長を有するものが好ましく、可視光領域の吸収が少なく、モル吸光係数が大きいものが好ましい。また必要に応じて一種または二種以上混合して使用することもできる。具体的には、例えばニッケルジチオール錯体などの金属錯体、アントラキノン系化合物、ナフトキノン系化合物、フタロシアニン系化合物、シアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ジイモニウム系化合物などが使用されるが、熱線領域に幅広く吸収を有するジイモニウム塩を使用することが好ましい。更には下記一般式(1)で表される特定のジイモニウム塩を使用することにより飛躍的に耐候性が向上するためこれを使用することが特に好ましい。
【0027】
【化2】

【0028】
前記1式中、R基は、アルキル基、分岐アルキル基、ハロゲン化アルキル基、シアノアルキル基、アリール基、ヒドロキシル基、フェニル基、フェニルアルキレン基、またはアルコキシ基から選ばれる置換基であり、これらは同一であっても、また異なっていても良い。このR基としては、前記置換基であれば特に限定されないが、炭素数1〜8の直鎖もしくは側鎖を有するアルキル基、シアノアルキル基、アルコキシ基やハロゲン化アルキル基等が好ましい。
【0029】
より具体的な一般式Rの例としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、t−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基等の直鎖あるいは分岐状アルキル基、シアノメチル基、2−シアノエチル基、3−シアノプロピル基、2−シアノプロピル基、4−シアノブチル基、3−シアノブチル基、2−シアノブチル基、5−シアノペンチル基、4−シアノペンチル基、3−シアノペンチル基、2−シアノペンチル基、6−シアノヘキシル基、5−シアノヘキシル基、4−シアノヘキシル基、3−シアノヘキシル基、2−シアノヘキシル基等のシアノ置換(C〜C)アルキル基、メトキシメチル、2−メトキシエチル、3−メトキシプロピル、2−メトキシプロピル、4−メトキシブチル、3−メトキシブチル、2−メトキシブチル、5−メトキシペンチル、4−メトキシペンチル、3−メトキシペンチル、2−メトキシペンチル、6−メトキシヘキシル、エトキシメチル、2−エトキシエチル、3−エトキシプロピル、2−エトキシプロピル、4−エトキシブチル、3−エトキシブチル、5−エトキシペンチル、4−エトキシペンチル、6−エトキシヘキシル、プロポキシメチル、2−プロポキシエチル、3−プロポキシプロピル、4−プロポキシブチル、5−プロポキシペンチルなどの直鎖あるいは分岐状アルコキシアルキル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、4,4,4−トリフルオロブチル基、5,5,5−トリフルオロペンチル基、6,6,6−トリフルオロヘキシル基、8,8,8−トリフルオロオクチル基、2−メチル−3,3,3−トリフルオロプロピル基、ペルフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、ペルフルオロブチル基、ペルフルオロヘキシル基、ペルフルオロオクチル基、2−トリフルオロ−プロピル基、トリクロロメチル基、2,2,2−トリクロロエチル基、3,3,3−トリクロロオロプロピル基、4,4,4−トリクロロブチル基、5,5,5−トリクロロペンチル基、6,6,6−トリクロロヘキシル基、8,8,8−トリクロロオクチル基、2−メチル−3,3,3−トリクロロプロピル基、ペルクロロエチル基、ペルクロロプロピル基、ペルクロロブチル基、ペルクロロヘキシル基、ペルクロロオクチリ基、2−トリクロロ−ペルクロロプロピル基、トリブロモメチル基、2,2,2−トリブロモエチル基、3,3,3−トリブロモプロピル基、4,4,4−トリブロモブチル基、5,5,5−トリブロモペンチル基、6,6,6−トリブロモヘキシル基、8,8,8−トリブロモオクチル基、2−メチル−3,3,3−トリブロモプロピル基、パーブロモエチル基、ペルブロモプロピル基、ペルブロモブチル基、ペルブロモヘキシル基、ペルブロモオクチル基、2−トリブロモ−ペルブロモプロピル基等のハロゲン化アルキル基が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0030】
前記ジイモニウム塩におけるカウンターアニオンとしては、スルホンイミドアニオンであり、Rがフッ素原子又はフッ化アルキル基である、含フッ素スルホンイミドアニオンがより好ましい。
【0031】
ジイモニウム塩の樹脂組成物の固形分比に対する添加量については特に制限がなく、要求される熱線遮蔽性能に応じて任意に選ぶことができるが、長期的に使用した際の樹脂からの色素の析出を抑制するため、樹脂成分100重量部に対し0.1〜80重量部にすることが好ましい。
【0032】
なお、前記一般式(1)で表されるジイモニウム塩については特開平8−511274号公報記載の方法に従って調製されたビス(フルオロスルホニル)イミド酸や米国特許第5,874,616号明細書に準じて調製されたフッ化アルカンスルホニル−フルオロスルホニルイミド酸をアニオン成分とし、これに銀を作用させてビス(フルオロスルホニル)イミド酸銀、または、フッ化アルカンスルホニル−フルオロスルホロイミド酸銀(下記一般式(2))とし、ジイモニウム化合物(下記一般式(3))を、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル等の有機溶媒中、温度30〜150℃で反応させ、析出した銀を濾別した後、水、酢酸エチルまたはヘキサン等の溶媒を加え、生じた沈殿を濾過することにより合成することができる。
【0033】
【化3】

【0034】
本発明の複合熱線遮蔽フィルムは、透明基材層(A)上に、無機系物質及び樹脂を含有する樹脂組成物からなる熱線遮蔽層(B)が形成された熱線遮蔽フィルム(I)と、
透明基材層(C)上に、800nm以上1200nm以下に光の最大吸収波長を有する有機系物質及び樹脂を含有する樹脂組成物からなる熱線遮蔽層(D)が形成された熱線遮蔽フィルム(II)とを粘着層を介しが張り合わされてなる複合熱線遮蔽フィルムであり、有機系熱線遮蔽物質を含む熱線遮蔽層と同一層もしくは熱線遮蔽層に対し入射光側に形成された層の少なくとも一層に紫外線遮蔽物質を含有させることを特徴とし、そのような構成により、人体に有害な紫外線が遮蔽できるのみならず、紫外線が照射されることで劣化する有機系物質まで紫外線が到達せず、有機系物質の耐候性を向上させることができる。
【0035】
紫外線遮蔽層においては紫外線吸収物質を含有した樹脂組成物からなり、紫外線吸収物質としては特に限定されず、無機系、有機系などの紫外線吸収剤を使用することができ、好ましくは340nm以上390nm以下に光の最大吸収波長を有する紫外線吸収剤である。これらは必要に応じ一種もしくは二種以上を混合して使用することができる。
【0036】
無機系紫外線吸収剤としては例えば酸化亜鉛、酸化チタンなどの微粒子が挙げられ、可視光領域に吸収を持たないよう粒子径0.1μm以下のものを使用することが望ましい。樹脂成分に対する添加量については特に制限はないが、樹脂成分100重量部に対し0.1〜200重量部にすることが好ましく、さらには10〜120重量部にすることが好ましい。
【0037】
一方、有機系紫外線吸収剤としては例えば2,4−ヒドキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロ−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロ−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系、フェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート等のサリチル酸系、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート等のシアノアクリレート等の紫外線吸収剤が挙げられるがこれらに限定されることはない。樹脂成分に対する添加量については特に制限はないが、樹脂成分100重量部に対し0.1〜100重量部にすることが好ましく、特に3〜60重量部にすることが好ましい。
【0038】
次に本発明の熱線遮蔽フィルムの構成について図面を参照し説明する。本発明の複合熱線遮蔽フィルムは前記熱線遮蔽フィルム(I)と熱線遮蔽フィルム(II)とを粘着層を介し張り合わせてなる。
【0039】
熱線遮蔽フィルム(I)の層構成としては、無機系物質を含んだ熱線遮蔽層(B)を一層もしくは多層有する層構成とすることもできる。好ましくは、図1又は図2に示したように、透明基材2上に無機系物質を含んだ熱線遮蔽層1が形成され、もう一方の面に粘着層3を有する。
【0040】
もう一方の熱線遮蔽フィルム(II)の層構成としては、有機系物質を含んだ熱線遮蔽層(D)を一層もしくは多層有する層構成とすることもできる。好ましくは、図1に示したように、透明基材5上に有機系物質を含んだ熱線遮蔽層4が形成され、もう一方の面に粘着層6を有する。また、図2に示したように、有機系物質を含んだ熱線遮蔽層4が形成された側に粘着層6を有する構成でもよい。
【0041】
前記熱線遮蔽フィルム(I)及び(II)を張り合わせ本発明の複合熱線遮蔽フィルムを完成するが、耐擦り傷性を向上させるため最外層の一方の面がハードコート層を兼ねることが望ましく、もう一方の面は窓ガラスなどに貼着することから粘着層であることが好ましい。
【0042】
本発明の複合熱線遮蔽フィルムについては、内張を想定しているため粘着層がガラスなどに貼着される面である。従って、入射光側とはガラスなどに貼着される面側であって、図1又は図2中においては最外層にある粘着層6側をいう。一方無機系物質を含んだ熱線遮蔽層1はハードコート層を兼ねることが好ましい。
【0043】
前述したように、有機系熱線遮蔽物質を含む熱線遮蔽層と同一層もしくは熱線遮蔽層に対し入射光側に形成された層の少なくとも一層に紫外線遮蔽物質を含有させることが好ましく、図1の場合、熱線遮蔽層4、透明基材層5及び粘着層6のいずれか少なくとも一層に紫外線吸収物質を含有させることが好ましい。図2の場合、熱線遮蔽層4又は粘着層6の少なくとも一層に紫外線吸収物質を含有させることが好ましい。前記紫外線吸収物質を含有させる層については前記条件を満たし形成される各層に紫外線吸収物質を含有させ紫外線吸収を兼ねる層とすることもでき、必要に応じて新たな紫外線遮蔽層を設けることもできる。
【0044】
熱線遮蔽層については層を形成する樹脂成分に必要に応じ有機溶媒、熱線遮蔽物質、紫外線吸収剤、各種添加剤を加えインキを作成、透明基材層にコーティングし、溶媒を乾燥させることもしくは樹脂成分に合致した方法で樹脂を硬化させることで熱線遮蔽層を形成することができ、コーティング方法としては、浸漬法、グラビアコート法、バーコート法、オフセットコート法、ロールコート法などが挙げられる。
【0045】
800nm以上1200nm以下に光の最大吸収波長を有する有機系熱線遮物質を含有する樹脂成分については比較的有機系熱線遮蔽物質を劣化させることがない熱可塑性樹脂又は単独あるいは架橋剤によって架橋硬化する熱硬化性樹脂が使用されることが好ましい。このとき有機系熱線遮蔽層の厚みとしては特に限定されないが、好ましくは0.3〜50μm、更に好ましくは0.3〜10μm程度の層が使用される。有機系熱線遮蔽物質の樹脂組成物の固形分比に対する添加量については特に制限がなく、要求される熱線遮蔽性能に応じて任意に選ぶことができるが、樹脂からの色素の析出を抑制するためには、樹脂成分100重量部に対し0.1〜80重量部にすることが好ましく、特に0.5〜50重量部にすることが好ましい。
【0046】
本発明の複合熱線遮蔽フィルムは必要に応じ、耐擦り傷性の向上のため最外層の一層にハードコート層を形成することが好ましく、最外層のもう一方には窓などに貼り付けるため粘着層を形成することが好ましい。
【0047】
ハードコート層については耐擦り傷性の向上のために形成されるので膜硬度の高い樹脂膜であれば特に限定されず、そのような樹脂には活性エネルギー線硬化型あるいは熱硬化型である有機系硬化性樹脂、シリコーン系硬化樹脂等を使用することができる。有機系硬化性樹脂の一例としてはメラミン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等の多官能アクリル樹脂等があげられ、シリコーン系硬化樹脂の一例としてはシロキサン結合をもったトリアルコキシシラン等が挙げられるが特にこれに限定されない。ハードコート層には必要に応じ熱線遮蔽物質や紫外線吸収物質を添加することもできるが、有機系熱線遮蔽物質や紫外線吸収物質を含有する場合は、活性エネルギー線の照射により有機系熱線遮蔽物質が大きく分解する、樹脂の硬化阻害が引き起こされるなどの不具合が生じるため熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。ハードコート層の厚みについては材質や熱線遮蔽フィルムの用途等に応じて適宜選択できるが、0.5〜10μm程度の層が好ましく使用される。
【0048】
ハードコート層については層を形成する樹脂成分に必要に応じ有機溶媒、熱線遮蔽物質、紫外線吸収剤、各種添加剤を加え、フィルムにコーティングし、樹脂成分に合致した方法で樹脂を硬化させ形成することができる。紫外線硬化型の樹脂などに関して不活性ガス雰囲気中で樹脂を硬化させることにより膜硬度の強い樹脂膜を得ることもできる。コーティング方法としては浸漬法、グラビアコート法、バーコート法、オフセットコート法、ロールコート法などが挙げられる。
【0049】
粘着層についてはガラス基材に接着することができ、透明性を有するものであれば特に限定されないが、例えば(メタ)アクリル系;(メタ)アクリルウレタン系;(メタ)アクリルシリコーン系;シロキサン結合を主鎖にもつシリコーン系;ポリ塩化ビニル系;メラミン系;ウレタン系;スチレン系;アルキド系;フェノール系;、エポキシ系;ポリエステル系;ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系樹脂などの熱可塑性または熱硬化性、活性エネルギー線硬化性の硬化性合成樹脂粘着剤、天然ゴム、ブチルゴム、イソプロピレンゴム、エチレンプロピレンゴム、メチルゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴムなどのゴム系粘着剤等が使用できる。
【0050】
前記粘着剤は単独あるいは必要に応じ混合して使用することが可能であるが、有機系熱線遮蔽物質や紫外線吸収剤が含有される場合は熱硬化性の粘着剤を使用することが好ましい。粘着層の厚みについては要求に応じ適宜調整可能であるが、好ましくは4〜30μm程度で使用される。また、粘着層の上にはフィルムとしての扱いが容易になることなどから剥離可能なフィルムを設けることもでき、窓ガラスなどに貼着する際剥離し、粘着層を露出させることもできる。
【0051】
また、ここで使用される熱可塑性樹脂又は単独あるいは架橋剤によって架橋硬化する熱硬化性樹脂については、要求される特性などにより適宜必要に応じて単独あるいは2種以上混合し使用することができる。樹脂としては例えばポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコン樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、等の熱可塑性樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、アミノプラスト樹脂等の単独硬化する熱硬化性樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等の硬化剤によって硬化する熱硬化性樹脂をあげることができるが特にこれに限定されるものではない。
【0052】
本発明の複合熱線遮蔽フィルムの構成とすることによって、幅広い熱線吸収特性を有しながら、少なくとも可視光透過率50%以上有する熱線遮蔽フィルムとすることが容易である。また、本発明の複合熱線遮蔽フィルムについては必要に応じ形成させるいずれかの層に染料、顔料を添加し、所望の色彩に調色することもできる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例及び比較例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれによりなんら限定されるものではない。
【0054】
実施例1
・熱線遮蔽フィルム(I)の準備
〔無機系物質を含んだ熱線遮蔽層(B)〕
無機系熱線遮蔽物質であるITOフィラーが分散したウレタンアクリレートハードコート剤であるITOハードコート溶液(PI−3、三菱マテリアル社製)を用意した。
〔透明基材層(A)〕
透明基材である38μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、「PETフィルム」と略記する。)(A4300、東洋紡績株式会社製)にハードコート層厚が3μmとなるよう、前記ITOハードコート溶液をグラビア塗工し、160mJ/cmとなるよう紫外線を照射して塗膜を重合硬化させ、ITOハードコートフィルムを得た。
〔粘着層〕
アクリル系粘着剤(ダイアボンドDA762、ノガワケミカル株式会社製)に所定量硬化剤を添加した後、剥離フィルムに粘着層厚が10μmとなるようバーコートし、100℃で3分間乾燥硬化させた後、前記ITOハードコートフィルムの裏面に貼着加工し、熱線遮蔽フィルム(I)を準備した。
・熱線遮蔽フィルム(II)の準備
〔有機系物質を含んだ熱線遮蔽層(D)〕
メチルエチルケトン20重量部、トルエン20重量部、アクリル樹脂(LP-45M、総研化学株式会社製)50重量部、有機系熱線遮蔽物質であるジイモニウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸塩(CIR−1085F、日本カーリット株式会社製)5重量部、紫外線吸収剤2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール(ケミソーブ79、ケミプロ化成株式会社製)5重量部を攪拌混合し、有機系熱線遮蔽物質を含有するインキを作製した。透明基材である38μm厚のPETフィルム(A4300、東洋紡績株式会社製)に、作製した該インキを熱線遮蔽層が2. 7μmとなるようグラビア塗工し、100℃で3分間乾燥することで熱線遮蔽フィルムを得た。
〔粘着層〕
アクリル系粘着剤(ダイアボンドDA762、ノガワケミカル株式会社製)の樹脂成分100重量部(所定量硬化剤添加品)に対し、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール(ケミソーブ79、ケミプロ化成株式会社製)を3重量部添加させ攪拌混合した後、剥離フィルムに粘着層厚が20μmとなるようバーコートし、100℃で3分間乾燥硬化させた後、該熱線遮蔽フィルムの有機系熱線遮蔽層側に粘着層を貼着加工し、本発明の熱線遮蔽フィルム(II)を準備した。
・複合熱線遮蔽フィルム
熱線遮蔽フィルム(II)のPET露出面に熱線遮蔽フィルム(I)の粘着層を貼着することで複合熱線遮蔽フィルムを完成した。
【0055】
実施例2
・熱線遮蔽フィルム(I)の準備
実施例1と同様に作製した。
・熱線遮蔽フィルム(II)の準備
〔有機系物質を含んだ熱線遮蔽層(D)〕
メチルエチルケトン20重量部、トルエン20重量部、アクリル樹脂(LP-45M、総研化学株式会社製)50重量部、有機系熱線遮蔽物質であるジイモニウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸塩(CIR−1085F、日本カーリット株式会社製)5重量部、紫外線吸収剤2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール(ケミソーブ79、ケミプロ化成株式会社製)5重量部を攪拌混合し、有機系熱線遮蔽物質を含有するインキを作製した。透明基材である38μm厚のPETフィルム(A4300、東洋紡績株式会社製)に、作製した該インキを熱線遮蔽層が2.7μmとなるようグラビア塗工し、100℃で3分間乾燥することで熱線遮蔽フィルムを得た。
〔粘着層〕
アクリル系粘着剤(ダイアボンドDA762、ノガワケミカル株式会社製)の樹脂成分100重量部(所定量硬化剤添加品)に対し、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール(ケミソーブ79、ケミプロ化成株式会社製)を3重量部添加させ攪拌混合した後、剥離フィルムに粘着層厚が20μmとなるようバーコートし、100℃で3分間乾燥硬化させた後、該熱線遮蔽フィルムの有機系熱線遮蔽層の反対側に粘着層を貼着加工し、本発明の熱線遮蔽フィルム(II)を準備した。
・複合熱線遮蔽フィルム
熱線遮蔽フィルム(II)の有機系熱線遮蔽面に熱線遮蔽フィルム(I)の粘着層を貼着することで複合熱線遮蔽フィルムを完成した。
【0056】
実施例3
・熱線遮蔽フィルム(I)の準備
〔無機系物質を含んだ熱線遮蔽層(B)〕
無機系熱線遮蔽物質であるATOフィラーが分散したウレタンアクリレートハードコート剤であるATOハードコート溶液(三菱マテリアル社製)を用意した。
〔透明基材層(A)〕
透明基材である38μm厚のPETフィルム(A4300、東洋紡績株式会社製)にハードコート層厚が3μmとなるよう、前記ATOハードコート溶液をグラビア塗工し、160mJ/cmとなるよう紫外線を照射して塗膜を重合硬化させ、ATOハードコートフィルムを得た。
〔粘着層〕
アクリル系粘着剤(ダイアボンドDA762、ノガワケミカル株式会社製)に所定量硬化剤を添加した後、剥離フィルムに粘着層厚が10μmとなるようバーコートし、100℃で3分間乾燥硬化させた後、前記ATOハードコートフィルムの裏面に貼着加工し、熱線遮蔽フィルム(I)を準備した。
・熱線遮蔽フィルム(II)の準備
実施例1と同様に作製した。
・複合熱線遮蔽フィルム
熱線遮蔽フィルム(II)のPET露出面に熱線遮蔽フィルム(I)の粘着層を貼着することで複合熱線遮蔽フィルムを完成した。
【0057】
実施例4
・熱線遮蔽フィルム(I)の準備
実施例1と同様に作製した。
・熱線遮蔽フィルム(II)の準備
〔有機系物質を含んだ熱線遮蔽層(D)〕
メチルエチルケトン20重量部、トルエン20重量部、アクリル樹脂(LP-45M、総研化学株式会社製)50重量部、ジイモニウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸塩(CIR−RL、日本カーリット株式会社製)5重量部、フタロシアニン(IR−14、日本触媒株式会社製)2重量部、紫外線吸収剤2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール(ケミソーブ79、ケミプロ化成株式会社製)5重量部を撹拌混合し、有機系熱線遮蔽物質を含有するインキを作製した。透明基材である38μm厚のPETフィルム(A4300、東洋紡績株式会社製)に、作製した該インキを熱線遮蔽層が2μmとなるようグラビア塗工し、100℃で3分間乾燥することで熱線遮蔽フィルムを得た。
〔粘着層〕
アクリル系粘着剤(ダイアボンドDA762、ノガワケミカル株式会社製)の樹脂成分100重量部(所定量硬化剤添加品)に対し、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール(ケミソーブ79、ケミプロ化成株式会社製)を3重量部添加させ攪拌混合した後、剥離フィルムに粘着層厚が15μmとなるようバーコートし、100℃で3分間乾燥硬化させた後、該熱線遮蔽フィルムの有機系熱線遮蔽層側に粘着層を貼着加工し、本発明の熱線遮蔽フィルム(II)を準備した。
・複合熱線遮蔽フィルム
熱線遮蔽フィルム(II)のPET露出面に熱線遮蔽フィルム(I)の粘着層を貼着することで複合熱線遮蔽フィルムを完成した。
【0058】
比較例1
メタアクリレート樹脂を主成分とする紫外線硬化型ハードコート剤NKハードB500(新中村化学株式会社製)樹脂成分100重量部に対し、メチルエチルケトン40重量部、ジイモニウム−ヘキサフルオロアンチモン酸塩(CIR−1081、日本カーリット株式会社製)を15重量部添加しインキを得た。これを透明基材である38μm厚のPETフィルム(A4300、東洋紡績株式会社製)にバーコート層厚が3.5μmとなるようグラビア塗工し、160mJ/cmとなるよう紫外線を照射して塗膜を重合硬化させることを試みたが、重合阻害が生じ成膜することが不可能であった。
【0059】
比較例2
・熱線遮蔽フィルム(I)の準備
実施例1と同様に作製した。
・熱線遮蔽フィルム(II)の準備
メチルエチルケトン20重量部、トルエン20重量部、アクリル樹脂(LP−45M、総研化学株式会社製)50重量部、ジイモニウム−ヘキサフルオロアンチモン酸塩(CIR−1081、日本カーリット株式会社製)5重量部を撹拌混合し、有機系熱線遮蔽物質を含有するインキを作製した。透明基材である38μm厚のPETフィルム(A4300、東洋紡績株式会社製)に、作製した該インキを熱線遮蔽層が2. 0μmとなるようグラビア塗工し、100℃で3分間乾燥することで熱線遮蔽フィルムを得た。
〔粘着層〕
アクリル系粘着剤(ダイアボンドDA762、ノガワケミカル株式会社製)に所定量硬化剤を添加した後、剥離フィルムに粘着層厚が20μmとなるようバーコートし、100℃で3分間乾燥硬化させた後、該熱線遮蔽フィルムの有機系熱線遮蔽層側に粘着層を貼着加工し、熱線遮蔽フィルムを完成した。
・複合熱線遮蔽フィルム
実施例1と同様複合熱線遮蔽フィルムを完成した。
【0060】
比較例3
〔ハードコート層〕〔透明基材層〕
ハードコート剤(NKハードB500、新中村化学株式会社製)を透明基材である38μm厚のPETフィルム(A4300、東洋紡績株式会社製)にバーコート層厚が3.0μmとなるようグラビア塗工し、160mJ/cmとなるよう紫外線を照射して塗膜を重合硬化させ、ハードコートフィルムを得た。
〔有機系物質を含む熱線遮蔽層〕
メチルエチルケトン20重量部、トルエン20重量部、アクリル樹脂(LP-45M、総研化学株式会社製)50重量部、有機熱線遮蔽物質であるジイモニウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸塩(CIR−1085F、日本カーリット株式会社製)5重量部を攪拌混合し、有機系熱線遮蔽物質を含有するインキを作成した。ハードコートフィルムのハードコート層裏面に作成した有機系熱線遮蔽物質を含有するインキを熱線遮蔽層が2.7μmとなるようグラビア塗工し、100℃で3分間乾燥することで熱線遮蔽フィルムを得た。
〔粘着層〕
粘着剤(ダイアボンドDA762、ノガワケミカル株式会社製)を剥離フィルムに粘着層厚が20μmとなるようバーコートし、100℃で3分間乾燥硬化させた後、熱線遮蔽フィルムの有機系熱線遮蔽層側に粘着剤を貼着加工し、熱線遮蔽フィルムを完成した。
【0061】
比較例4
〔無機系物質を含む熱線遮蔽層(B)〕、〔透明基材層(A)〕は実施例1と同様な構成とした。
〔有機系物質を含む熱線遮蔽層(D)〕を設けず、実施例1と同様な構成し、熱線遮蔽フィルムを完成した。
【0062】
〔評価〕
前記方法により作製した実施例1〜4及び比較例2〜4の熱線遮蔽フィルムを5cm×5cm×3mm厚のガラス板に接着させた試験片を作成し、東洋精機社製耐光性試験機サンテストXLS+を用いブラックパネルが63℃の温度となるよう設定、キセノン光がガラス板側から照射されるよう試験片を配置させ、320W/m、100h耐光性試験をおこなった。耐光性試験の評価方法としては試験前後の熱線遮蔽フィルムの光透過率を日立分光光度計U−3500にて測定し、光透過率の変化を観察した。
【0063】
得られた熱線遮蔽フィルムの耐光性試験前後の分光特性図を図3〜6(実施例1〜4)及び図7〜9(比較例2〜4)に示す。
【0064】
図8〜9と図3〜6との比較から、本発明の熱線遮蔽フィルムは、熱線と呼ばれる780nm以上の光を幅広く遮蔽していることがわかる。また、図7と図3〜6との比較から、紫外線遮蔽層を設けることで耐候性が著しく向上し、更には特定のジイモニウム塩を使用することで飛躍的に耐候性が向上したことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の熱線遮蔽フィルムの層構成を示す概念図である。
【図2】本発明の熱線遮蔽フィルムの他の層構成を示す概念図である。
【図3】実施例1の耐光性試験前後の分光特性図である。
【図4】実施例2の耐光性試験前後の分光特性図である。
【図5】実施例3の耐光性試験前後の分光特性図である。
【図6】実施例4の耐光性試験前後の分光特性図である。
【図7】比較例2の耐光性試験前後の分光特性図である。
【図8】比較例3の耐光性試験前後の分光特性図である。
【図9】比較例4の耐光性試験前後の分光特性図である。
【符号の説明】
【0066】
1 無機系物質を含んだ熱線遮蔽層
2 透明基材層
3 粘着層
4 有機系物質を含んだ熱線遮蔽層
5 透明基材層
6 粘着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材層(A)上に、無機系物質及び樹脂を含有する樹脂組成物からなる熱線遮蔽層(B)が形成された熱線遮蔽フィルム(I)と、
透明基材層(C)上に、800nm以上1200nm以下に光の最大吸収波長を有する有機系物質及び樹脂を含有する樹脂組成物からなる熱線遮蔽層(D)が形成された熱線遮蔽フィルム(II)とを粘着層を介して張り合わされてなる複合熱線遮蔽フィルムにおいて、
前記(D)層又は(D)層より入射光側に形成された層の少なくとも一層に紫外線吸収物質が含有されたことを特徴とする複合熱線遮蔽フィルム。
【請求項2】
前記800nm以上1200nm以下に光の最大吸収波長を有する有機系物質が下記一般式(1)で表されるジイモニウム塩である請求項2に記載の複合熱線遮蔽フィルム。
【化1】

(式中、Rは同一または異なってもよい、アルキル基、分岐アルキル基、ハロゲン化アルキル基、シアノアルキル基、アリール基、ヒドロキシル基、フェニル基、フェニルアルキレン基またはアルコキシ基を示し、Rはフッ素原子またはフッ化アルキル基を示す)
【請求項3】
前記紫外線吸収物質が340nm以上390nm以下に光の最大吸収波長を有する紫外線吸収剤であることを特徴とする請求項1又は2に記載の複合熱線遮蔽フィルム。
【請求項4】
前記(B)層がハードコート層を兼ね、一方の最外層が粘着層であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の複合熱線遮蔽フィルム。
【請求項5】
前記(B)層に含まれる樹脂が活性エネルギー線硬化性樹脂であり、
前記(D)層に含まれる樹脂が熱可塑性樹脂又は架橋硬化型熱硬化性樹脂であることを特徴とする請求項4に記載の複合熱線遮蔽フィルム。
【請求項6】
前記無機系物質が金属酸化物微粒子であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の複合熱線遮蔽フィルム。
【請求項7】
前記無機系物質がインジウム含有酸化スズ微粒子、アンチモン含有酸化スズ微粒子、酸化亜鉛微粒子からなる群の少なくとも1つであることを特徴とする請求項6に記載の複合熱線遮蔽フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−20526(P2008−20526A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−190283(P2006−190283)
【出願日】平成18年7月11日(2006.7.11)
【出願人】(000228349)日本カーリット株式会社 (269)
【Fターム(参考)】