説明

複合触媒の異なる活性中心の相対活性を制御する方法

複合触媒の存在下、より低分子量のポリマー成分に対するより高分子量のポリマー成分の比を変化させるために、それぞれの場合において全反応混合物を基準として2〜100モルppmの量の水及び/又は2〜100モルppmの量の二酸化炭素の存在下で少なくとも一種のα−オレフィンを重合して、少なくともより高分子量のポリマー成分及びより低分子量のポリマー成分を含むポリマーを製造することを含む、オレフィンポリマーの製造方法。これにより、より低分子量の成分に対するより高分子量の成分の比を選択的に制御することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合触媒を用いてオレフィンを重合する方法、並びに、かかる複合触媒の活性中心の相対活性を制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィンの特性プロファイルを改良するために、ポリオレフィンの分子組成の正確な制御を達成することが必要であることが、ますます見出されている。この方向での大きな前進は、一つのタイプの触媒的な活性中心しか存在しないシングルサイト触媒の開発である。かかる触媒を用いて得られるポリマーは、モル質量、コモノマー分布、及び適当な場合には立体規則性の点でポリマー鎖の比較的均一な分布を有する。しかしながら、多くの用途のためには、極めて均一なポリマーを用いることは有利ではない。
【0003】
目標とする形態で比較的幅広い分布を有するモノマーを調製する一つの可能な方法は、異なる、別々に調製された均一なポリマーを互いに混合することである。ポリオレフィンのために工業的スケールでしばしば用いられている更なる可能な方法は、重合を異なる段階で異なる条件下で行う多段階重合プロセス(カスケード)でポリマーを製造することである。この方法においても、目標とする形態で比較的幅広い分布を有するポリマーを製造することが可能である。
【0004】
しかしながら、経済的な理由のために、且つ、かかる反応容器のより幅広い入手可能性を視野に入れて、単一の反応器を用いた連続法においてもより幅広い分布を有するポリマーを製造する努力が長く行われている。この目的を達成するために、触媒混合物、又は複合触媒として知られている異なる活性中心を有する触媒が、従来技術においてしばしば記載されている。複合触媒は、異なる種類の触媒の活性中心を有する触媒であってよい。而して、例えばWO 98/02247及びWO 01/48029においては、チーグラー成分及びメタロセン成分を含む複合触媒が記載されている。本特許出願の目的のために、チーグラー触媒という表現は、文献においてチーグラー・ナッタ触媒と呼ばれている触媒も包含する。WO 00/35970の文献は、メタロセン中心及び酸化クロム中心を有する触媒を用いてポリオレフィンを製造する方法に関する。WO 99/46302においては、オレフィンの重合のための、窒素含有遷移金属コンプレックス、及び更なる触媒、例えばチーグラー、酸化クロム、又はメタロセン触媒を含む触媒が開示されている。しかしながら、複合触媒は、また、同じ種の活性中心の異なる式を有する触媒であってもよい。而して、例えばWO 99/60032においては、二つの異なるメタロセンを含み、それによって改良された加工性を有するポリオレフィンを得ることができる複合触媒が記載されている。かかる公知の複合触媒は、通常、遷移金属配位化合物から誘導される少なくとも一つの成分を含む。
【0005】
しかしながら、単一の反応器内での複合触媒を用いたオレフィンの連続重合においては、得られるポリマーの特性が、重合条件のみならず、存在する活性中心の比にも大きく依存するという問題がある。而して、用いる複合触媒の異なるバッチの組成における変動によって、個々の触媒成分によって形成されるポリマー成分が異なる割合になる可能性がある。特に成分の一つが他の成分よりもより感受性である場合には、触媒の経時劣化プロセスによって、同じバッチを用いた場合であっても異なる生成物を生成する可能性もある。また、重合条件の変動によって、異なる方法で用いる触媒成分の活性が影響を受け、個々の触媒成分によって形成されるポリマー成分が異なる割合になる可能性もある。したがって、特に複合触媒の場合において、形成されるポリマーの組成を制御する方法に関する大きな必要性が存在する。
【0006】
この問題を解決するために種々の試みが行われている。而して、WO 00/50466及びWO 02/24768においては、それぞれにおいて二つの異なる複合触媒を反応器中に導入し、二つの複合触媒が同じ触媒成分を含むが異なる比である、複合触媒を用いた重合方法が記載されている。形成されるポリマー成分の互いの比は、二つの複合触媒の比を調節することによって制御することができる。しかしながら、これを達成するためには、一つの反応器上に二つの異なる計量システムを取り付けてこれらを互いに調節し、また、製造されるそれぞれのポリマーのタイプに関して二つの異なる触媒固体を製造して利用可能な状態に保持することも必要である。
【0007】
異なる試みがWO 02/090398によって記載されており、ここでは、複合触媒、及びホスフィン、ホスファイト、アセチレン、ジエン、チオフェン、及びアルミニウムアルキルからなる群から選択される助剤を用いて、まず個々の活性中心によって形成されるより高分子量及びより低分子量のポリマー成分の互いのモル質量を変化させ、次にポリマー成分の互いの比を変化させる。しかしながら、ポリマー成分の互いの比を変化させることは、成分のモル質量を同時に変化させることによってのみ上首尾に起こる。これは、より高分子量の成分又はより低分子量の成分が望ましくない形態で変化し、したがって予測できる結果が殆ど得られないという欠点を有する。
【0008】
また、WO 02/090398において記載されているように、二酸化炭素が、より低分子量の成分に対するより高分子量の成分の比に対して小さな影響しか与えず、したがって好適でないと思われることも注目に値する。
【0009】
単一のメタロセンコンプレックスのみをベースとする触媒の場合においては、助剤を加えることによって、オレフィンの重合において形成されるポリマーの特性を変化させることができることも公知である。言及することのできる助剤は、特に、形成されるポリマー鎖の平均モル質量を調節するのに極めて一般的に用いられる連鎖移動剤である。最も広く知られたモル質量調節剤としての水素とは別に、EP−A−435250及びEP−A−1092730に記載されているようなジアルキル亜鉛化合物、或いはEP−A−1092730、WO 98/56835、及びWO 03/104290に記載されているような種々のシランを、モル質量を制御するために用いることができる。モル質量を増加又は減少させるための二酸化炭素及び水の使用は、メタロセン触媒の使用に関するWO 95/13305において記載されている。
【0010】
この理由のために、複合触媒を用いるオレフィンの連続重合において、簡単な方法で、特に単一の反応器内で、形成されるポリマー鎖の更なる特性に対する影響を可能な限り小さくして、種々の活性中心によって形成されるポリマー成分の特性を制御する方法を見出す必要性が継続して存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、従来技術の上記記載の欠点を克服し、それによって、形成されるフラクションの特性を大きく変化させることなく、或いは他の触媒成分の活性を大きく低下させることなく、複合触媒を用いる場合に好適な変性剤を加えることによって触媒成分の種々の活性中心によって形成されるポリマー成分の比を制御することができ、したがって、一定の品質を有する生成物を製造するために重合条件及び目標とする形態で用いられる複合触媒の組成の変動を補償することのできる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本発明は、複合触媒の存在下、それぞれの場合において全反応混合物を基準として2〜100モルppmの量の水及び/又は2〜100モルppmの量の二酸化炭素の存在下で、少なくとも一種のα−オレフィンを重合して、少なくともより高分子量のポリマー成分及びより低分子量のポリマー成分を含むポリマーを製造することを含む、オレフィンポリマーの製造方法を提供する。水及び/又は二酸化炭素は、より低分子量のポリマー成分に対するより高分子量のポリマー成分の比を変化させるために加えられる。
【0013】
複合触媒を用いた場合にオレフィン重合において水又は二酸化炭素を加えることによって、一種の触媒成分しか有しない触媒を用いた場合と比べて、個々の成分のモル質量又はモル質量分布に大きな影響を与えることなく目標とする形態で個々の成分の活性を調節することが可能になる。
【0014】
本発明は、更に、少なくとも一つが遷移金属配位化合物である少なくとも二つの異なる触媒成分を含む複合触媒を用いて、それぞれの場合において全反応混合物を基準として2〜100モルppmの量の水の存在下及び/又は2〜100モルppmの量の二酸化炭素の存在下で重合を行う、オレフィンの重合方法を提供する。
【0015】
本発明は、更に、50〜130℃の温度及び0.1〜150MPaの圧力において、複合触媒の存在下で少なくとも一種のα−オレフィンを重合することを含み、より高分子量の成分の割合を減少させるために二酸化炭素を2〜100モルppmの量で用い、及び/又は、より低分子量の成分の割合を減少させるために水を2〜100モルppmの量で用い、ここでモルppmの量はそれぞれの場合において全反応混合物を基準とするものである、オレフィンポリマーにおけるより低分子量の成分に対するより高分子量の成分の比を制御する方法を提供する。
【0016】
より高分子量の成分及びより低分子量の成分に加えて更なるポリマー成分もポリマー生成物中に存在してよいことを強調することができる。重要な特徴は、単に、少なくとも二つの成分の互いに対する割合を制御又は調節するということである。ポリマーは、好ましくは、二つ、三つ、又は四つ、特に好ましくは二つ又は三つのポリマー成分を有する。
【0017】
制御は、好ましくは、調節工程の一部であってもよい。したがって、本発明は更に、
ポリマー生成物におけるより低分子量のポリマー成分に対するより高分子量のポリマー成分の比を測定し;
測定された比が所定の比よりも大きな場合には所定の比を達成するのに必要な二酸化炭素の量を算出するか、又は、測定された比が所定の比よりも小さな場合には所定の比を達成するのに必要な水の量を算出し;
算出された量の水又は二酸化炭素を反応混合物中に導入する;
ことを含む、上記記載の制御法を用いてオレフィンポリマーにおけるより低分子量のポリマー成分に対するより高分子量のポリマー成分の比を調節する方法を提供する。
【0018】
より低分子量のポリマー成分に対するより高分子量のポリマー成分の比を測定するためには、国際特許出願PCT/EP05/052683に記載されているようなNMRによる測定の迅速測定が特に好適である。
【0019】
ここで、重合反応器中のポリマー混合物の組成は、好ましくは、
(a)ポリマー混合物の少なくとも一つのH−NMR緩和曲線を記録し;
(b)測定された緩和曲線を個々のポリマー成分の緩和曲線と比較することによって、ポリマー成分の割合を算出する;
工程によって測定する。
【0020】
また、反応器中へ導入する1以上の触媒成分を調節することと組み合わせて変性剤の制御又は調節を行うこともできる。
本発明による触媒成分の活性を設定する特に選択的な方法をNMRによるポリマー成分の迅速測定と組み合わせて用いることによって、ポリマー組成の特に簡単で迅速で且つ信頼性のある調節が可能になる。
【0021】
最後に、本発明は、鉄又はコバルトをベースとする触媒成分及びシクロペンタジエニルリガンドを含む触媒成分を含む複合触媒の存在下での少なくとも一種のα−オレフィンの重合中において、オレフィンポリマーにおけるより低分子量の成分に対するより高分子量の成分の比を減少させるための二酸化炭素の使用、並びに、鉄又はコバルトをベースとする触媒成分及びシクロペンタジエニルリガンドを含む触媒成分を含む複合触媒の存在下での少なくとも一種のα−オレフィンの重合中において、オレフィンポリマーにおけるより低分子量の成分に対するより高分子量の成分の比を増加させるための水の使用を提供する。
【0022】
本発明によれば、重合は、それぞれの場合において全反応混合物を基準として2〜100モルppmの量の水又は2〜100モルppmの量の二酸化炭素の存在下で行う。水及び二酸化炭素は、好ましくは個別に用いるが、一緒に用いることもできる。二酸化炭素及び水は、以下、まとめて又は個々に変性剤とも称する。
【0023】
加えた水又は二酸化炭素の量は、より低分子量のポリマー成分に対するより高分子量のポリマー成分の比を変化させるように機能する。ポリマー成分の他の特性、例えば平均モル質量は、影響を受けないか、又は少量しか影響を受けない。それぞれの場合における他のポリマー成分の量は、変化しないか、又は少量しか変化しない。静電防止剤又はスキャベンジャーのような更なる添加剤及び助剤を本発明方法において更に用いることができることを強調することができる。
【0024】
本発明にしたがって用いられる変性剤は、容易に入手することができ、安価で、無臭で、完全に非毒性であるという更なる有利性を有する。
用いる水又は二酸化炭素の正確な量は、特に、変性剤に対する複合触媒中のそれぞれの触媒成分の感受性、並びに加える金属アルキルのようなスキャベンジャーのタイプ及び量に依存する。したがって、それぞれの反応条件に対して実験的に適合させることが必要である。この量は、いかなる場合においても、1以上の触媒成分が常として例えば反応器の停止の前に完全に不活性となるほど多量であってはならない。
【0025】
水は、好ましくは少なくとも3モルppm、より好ましくは少なくとも5モルppm、より好ましくは少なくとも8モルppmの量で用いる。水は、好ましくは90モルppm以下、より好ましくは75モルppm以下、より好ましくは50モルppm以下の量で用いる。好ましい濃度範囲は3〜80モルppm、より好ましくは3〜60モルppm、特に好ましくは5〜40モルppmの範囲である。
【0026】
二酸化炭素は、好ましくは少なくとも3モルppm、より好ましくは少なくとも5モルppm、より好ましくは少なくとも8モルppmの量で用いる。二酸化炭素は、好ましくは90モルppm以下、より好ましくは75モルppm以下、より好ましくは50モルppm以下の量で用いる。好ましい濃度範囲は3〜80モルppm、より好ましくは3〜60モルppm、特に好ましくは5〜40モルppmの範囲である。
【0027】
二酸化炭素及び水とは別に、好ましくは触媒成分に対して異なる選択性を有する更なる変性剤も存在させることができる。更なる変性剤の添加は、複合触媒も2種類を超える成分を含む場合に特に有用である。
【0028】
本発明の目的のために、複合触媒は、少なくとも二種類の化学的に異なる出発物質から誘導される少なくとも二つの異なるタイプの活性中心を有する触媒系である。異なる活性中心は、異なる遷移金属配位化合物から得られる活性中心であってよい。しかしながら、チーグラー・ナッタ触媒又はクロムをベースとする触媒、例えばフィリップス触媒から誘導される活性中心を用いることもできる。
【0029】
その名の通り、複合触媒は、少なくともより高分子量のポリマー成分及びより低分子量のポリマー成分を含む二峰性又は多峰性のポリマー生成物を製造するのに好適である。ポリマーは、二種類の異なるポリマー成分を有する場合には二峰性であり、ポリマーは、二種類を超える異なるポリマー成分を有する場合には多峰性である。ポリマー成分は、必然的に、複数の成分を含む重合触媒中の一つの特定のタイプの活性成分によって製造されたポリマーである。
【0030】
本発明方法において用いる複合触媒は、2種以上の異なる粒子状触媒固体の混合物を含むことができる。しかしながら、全てのタイプの活性中心が一つの触媒粒子上に存在する触媒固体を含む触媒系を用いることが好ましい。一緒に担体上に固定化された複数の触媒成分を用いることが特に好ましい。
【0031】
本発明方法においては、異なる遷移金属成分から得られる複合触媒の少なくとも二種類の成分がそれらのコモノマー組み込み挙動に関して異なる複合触媒を用いることが好ましい。これによって、より高分子量のポリマー成分のコモノマー含量がより低分子量のポリマー成分のものと異なるポリマー生成物が得られる、即ち複数の触媒成分が異なるコモノマー組み込み挙動を示す。本特許出願の目的のために、異なるコモノマー組み込み挙動は、種々のポリマー成分のコモノマー含量が少なくとも30%異なる場合に存在する。ポリマー成分のコモノマー含量は、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは2倍、より好ましくは10倍、特に好ましくは100倍異なる。
【0032】
好ましい変法においては、より高分子量のポリマー成分は、より高いコモノマー含量を有するものである。一態様においては、より低分子量のポリマー成分は、0〜1.5モル%、好ましくは0〜0.8モル%、特に好ましくは0〜0.3モル%のコモノマー含量を有する。更なる態様においては、より高分子量のポリマー成分は、0〜15モル%、好ましくは0.01〜10モル%、特に好ましくは0.3〜3モル%のコモノマー含量を有する。
【0033】
より低分子量のポリマー成分は、好ましくは10,000〜100,000g/モル、より好ましくは20,000〜80,000g/モル、特に好ましくは30,000〜70,000g/モルの平均モル質量Mを有する。より高分子量のポリマー成分は、好ましくは100,000〜2,000,000g/モル、より好ましくは150,000〜1,000,000g/モル、特に好ましくは200,000〜800,000g/モルの平均モル質量Mを有する。生成物の要件に依存して、高分子量成分及び低分子量成分の量並びにこれらの成分のモル質量の異なる組み合わせが選択される。より低分子量の成分に対するより高分子量の成分の比は、それぞれの場合においてより高分子量の成分及びより低分子量の成分の合計を基準として、好ましくは5〜95重量%、より好ましくは10〜90重量%、特に好ましくは20〜80重量%である。より高分子量の成分及びより低分子量の成分に加えて更なるポリマー成分をポリマー生成物中に存在させることができることを強調することができる。
【0034】
より高分子量のポリマー成分及びより低分子量のポリマー成分のモル質量を独立して調節するために、触媒成分は、好ましくは、水素のようなモル質量調節剤に対して異なる応答性も有する。
【0035】
本発明のオレフィンの重合方法において用いる複合触媒は、少なくとも二種類の触媒成分を含む。触媒成分としては、原則として、有機基を有し、通常、助触媒及び適当な場合には有機金属化合物との反応後にオレフィン重合のための活性触媒を形成する、周期表第3〜12族の遷移金属又はランタニド族の全ての化合物を用いることができる。触媒成分は、通常、少なくとも一つの単座又は多座リガンドがσ又はπ結合を介して中心原子に結合している化合物である。可能なリガンドとしては、シクロペンタジエニル基を有するリガンド、及びシクロペンタジエニル基を有しないリガンドの両方が挙げられる。Chem.Rev.2000,vol.100,No.4においては、オレフィン重合に好適な多くのかかる化合物が記載されている。更に、多核シクロペンタジエニルコンプレックスも、オレフィン重合に好適である。
【0036】
好適な遷移金属コンプレックスは、特に、少なくとも一つのシクロペンタジエニルタイプのリガンドを有するコンプレックスであり、二つのシクロペンタジエニルタイプのリガンドを有するものは一般にメタロセンコンプレックスと称されている。特に適切なコンプレックスは、一般式(I):
【0037】
【化1】

【0038】
(式中、置換基及び指数は以下の意味を有する:
1Aは、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、又はタングステン、或いは周期表の第3族又はランタニド族の元素であり;
基Xは、同一か又は異なり、それぞれ、互いに独立して、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、水素、C〜C10アルキル、5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C〜C10アルケニル、C〜C40アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、−OR6A又は−NR6A7Aであるか、或いは二つの基Xは互いに結合して、例えば置換又は非置換ジエンリガンド、特に1,3−ジエンリガンド、或いはビアリールオキシ基を形成するか、或いは次式:
【0039】
【化2】

【0040】
のリガンドを形成し;
ここで、Q1A〜Q2Aは、それぞれ、O、NR6A、CR6A7A、又はSであり、Q1A及びQ2AはM1Aに結合しており;
は、C又はSであり;
は、OR6A、SR6A、NR6A7A、PR6A7A、水素、C〜C10アルキル、5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C〜C10アルケニル、C〜C40アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリール、或いは−SiR8Aであり;
1A〜E5Aは、それぞれ、炭素であるか、或いはE1A〜E5Aの1つ以下はリン又は窒素であり、好ましくは炭素であり;
tは、1、2、又は3であり、M1Aの価数に応じて、一般式(I)のコンプレックスが非荷電となるような数であり;
1A〜R5Aは、それぞれ、互いに独立して、水素、C〜C22アルキル、置換基としてC〜C10アルキル基を有していてもよい5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C〜C22アルケニル、C〜C40アリール、−NR8A、−N(SiR8A、−OR8A、−OSiR8A、−SiR8Aであり、ここで、基R1A〜R5Aは、また、ハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの基R1A〜R5A、特に隣接する基は、それらを結合する原子と一緒に結合して好ましくは5、6、又は7員環、或いは好ましくはN、P、O、及びSからなる群からの少なくとも一つの原子を有する5、6、又は7員の複素環を形成してもよく;
6A及びR7Aは、それぞれ、互いに独立して、C〜C10アルキル、5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C〜C22アルケニル、C〜C40アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、或いは−SiR8Aであり、ここで、基R6A及びR7Aはハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの基R6A及びR7Aは結合して5、6、又は7員環を形成してもよく;
基R8Aは、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ、C〜C10アルキル、5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C〜C22アルケニル、C〜C40アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、C〜C10アルコキシ、又はC〜C10アリールオキシであってよく、ここで、基R8Aはハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの基R8Aは結合して5、6、又は7員環を形成してもよく;
1Aは、Xに関して定義した通りであるか、又は式:
【0041】
【化3】

【0042】
であり;
ここで、基R9A〜R13Aは、それぞれ、互いに独立して、水素、C〜C22アルキル、置換基としてC〜C10アルキル基を有していてもよい5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C〜C22アルケニル、C〜C40アリール、アルキル基中に1〜16個の炭素原子及びアリール基中に6〜21個の炭素原子を有するアリールアルキル、−NR14A、−N(SiR14A、−OR14A、−OSiR14A、又は−SiR14Aであり、ここで、基R1A〜R5Aはハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの基R1A〜R5A、特に隣接する基は、それらを結合している原子と一緒に結合して、好ましくは5、6、又は7員環、或いは好ましくはN、P、O、又はSからなる群からの少なくとも一つの原子を有する5、6、又は7員の複素環を形成してもよく;
基R14Aは、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ、C〜C10アルキル、5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C〜C22アルケニル、C〜C40アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、C〜C10アルコキシ、又はC〜C10アリールオキシであってよく、ここで、有機基R14Aはハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの基R14Aは結合して5、6、又は7員環を形成してもよく;
6A〜E10Aは、それぞれ、炭素であるか、或いはE6A〜E10Aの1つ以下はリン又は窒素であり、好ましくは炭素であり;
或いは基R4A及びZ1Aは、一緒になって−R15A−A1A−基を形成し;
ここで、R15Aは、
【0043】
【化4】

【0044】
−BR16A−、−(BNR16A17A)−、−AlR16A−、−Ge−、−Sn−、−O−、−S−、−SO−、SO−、=N−、−NR16A−、−CO−、−PR16A−、又は−(POR16A)−であり;
ここで、R16A〜R21Aは、同一か又は異なり、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、トリメチルシリル基、C〜C10アルキル、5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C〜C22アルケニル、C〜C40アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、C〜C10アルコキシ、又はC〜C10アリールオキシであり、ここで、有機基R16A〜R21Aはハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの基R16A〜R21Aは結合して5、6、又は7員環を形成してもよく;
2A〜M4Aは、それぞれ、ケイ素、ゲルマニウム、又はスズ、好ましくはケイ素であり;
1Aは、−O−、−S−、−NR22A−、−PR22A−、−OR22A、−NR22A、−PR22A、或いは、非置換、置換、又は縮合複素環系であり;
ここで、基R22Aは、それぞれ、互いに独立して、C〜C10アルキル、5〜7員のシクロアルキル、シクロアルケニル、C〜C22アルケニル、C〜C40アリール、或いはアルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、又はSi(R23Aであり、ここで、有機基R22Aはハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの基R22Aは結合して5、6、又は7員環を形成してもよく;
23Aは、水素、C〜C10アルキル、5〜7員のシクロアルキル、シクロアルケニル、C〜C22アルケニル、C〜C40アリール、或いはアルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキルであり、ここで、有機基R23Aはハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの基R23Aは結合して5、6、又は7員環を形成してもよく;
vは、1であるか、又はA1Aが、非置換、置換又は縮合複素環系である場合には1又は0であってもよく;
或いは、基R4A及びR12Aは、一緒になって−R15A−基を形成する)
のコンプレックスである。
【0045】
かかるコンプレックスの合成は、それ自体公知の方法によって行うことができ、適当に置換された環式炭化水素アニオンを、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、又はクロムのハロゲン化物と反応させることが好ましい。
【0046】
言及した金属コンプレックスをベースとする触媒成分は、より高分子量のポリマー成分を製造するのに特に好適である。これらは、また、特に好ましくはより高分子量の成分として比較的高いコモノマー含量を有するポリマー成分を製造するのにも特に好適である。
【0047】
本発明の目的のために、アルキルは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、又はn−デシルのような直鎖又は分岐鎖のアルキルである。アルケニルは、二重結合が内部か又は末端であってよい直鎖又は分岐鎖のアルケニル、例えば、ビニル、1−アリル、2−アリル、3−アリル、1−ブテニル、2−ブテニル、1−ペンテニル、又は1−ヘキセニルである。C〜C40アリールは、非置換、置換、又は縮合アリール系であり、アリール基は更なるアルキル基によって置換されていてもよく、アリール基は一般に6〜20個の炭素原子を有し、アルキル基は一般に1〜10個の炭素原子を有し、例えばフェニル、ナフチル、ビフェニル、アントラニル、o−、m−、p−メチルフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、又は2,6−ジメチルフェニル、2,3,4−、2,3,5−、2,3,6−、2,4,5−、2,4,6−、又は3,4,5−トリメチルフェニルである。アリールアルキルは、アリール置換アルキルであり、更なるアルキル基によって置換されていてもよく、例えばベンジル、o−、m−、p−メチルベンジル、1−又は2−エチルフェニルである。
【0048】
1Aは、橋架基R15Aと一緒になって、例えば、アミン、エーテル、チオエーテル、又はホスフィンを形成してもよい。しかしながら、A1Aは、また、環炭素に加えて、酸素、イオウ、窒素、及びリンからなる群からのヘテロ原子を有してもよい、非置換、置換、又は縮合複素環式芳香環系であってもよい。5員及び6員のヘテロアリール基は、また、C〜C10アルキル、C〜C10アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜10個の炭素原子を有するアリールアルキル、トリアルキルシリル、又はハロゲン、例えばフッ素、塩素、又は臭素によって置換されていてもよく、或いは、1以上の芳香族基又はヘテロ芳香族基と縮合してもよい。複素環の命名及び付番は、L.Fieser及びM.Fieser,Lehrbuch der organischen Chemie,第3改訂版,Verlag Chemie,Weinheim 1957からとった。
【0049】
一般式(I)における基Xは、好ましくは同一であり、好ましくは、フッ素、塩素、臭素、C〜Cアルキル又はアラルキル、特に塩素、メチル、又はベンジルである。
本発明の目的のために、式(I)のこのタイプのコンプレックスは、また、シクロペンタジエニル又はヘテロシクロペンタジエニルと縮合複素環とによって形成される少なくとも一つのリガンドを有する化合物も包含し、複素環は、好ましくは芳香族であり、窒素及び/又はイオウを含む。かかる化合物は、例えばWO 98/22486に記載されている。
【0050】
一般式(I)のコンプレックスの中で、一般式(Ia)〜(Id):
【0051】
【化5】

【0052】
【化6】

【0053】
(式中、置換基及び指数は以下の意味を有する:
1Aは、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、又はタングステン、或いは周期表の第3族又はランタニド族の元素であり;
基Xは、同一か又は異なり、それぞれ、互いに独立して、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、水素、C〜C10アルキル、5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C〜C10アルケニル、C〜C40アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、−OR6A又は−NR6A7Aであるか、或いは二つの基Xは互いに結合して、例えば置換又は非置換ジエンリガンド、特に1,3−ジエンリガンド、或いはビアリールオキシを形成するか、或いは、次式:
【0054】
【化7】

【0055】
のリガンドを形成し;
ここで、Q1A及びQ2Aは、それぞれ、O、NR6A、CR6A7A、又はSであり、Q1A及びQ2AはM1Aに結合しており;
は、C又はSであり;
は、OR6A、SR6A、NR6A7A、PR6A7A、水素、C〜C10アルキル、5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C〜C10アルケニル、C〜C40アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、或いは−SiR8Aであり;
1A〜E5Aは、それぞれ、炭素であるか、或いはE1A〜E5Aの1つ以下はリン又は窒素であり、好ましくは炭素であり;
tは、1、2、又は3であり、M1Aの価数に応じて、一般式(I)のコンプレックスが非荷電となるような数であり;
1A〜R5Aは、それぞれ、互いに独立して、水素、C〜C22アルキル、置換基としてC〜C10アルキル基を有していてもよい5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C〜C22アルケニル、C〜C40アリール、−NR8A、−N(SiR8A、−OR8A、−OSiR8A、−SiR8Aであり、ここで、基R1A〜R5Aはハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの基R1A〜R5A、特に隣接する基は、それらを結合する原子と一緒に結合して好ましくは5、6、又は7員環、或いは好ましくはN、P、O、及びSからなる群からの少なくとも一つの原子を有する5、6、又は7員の複素環を形成してもよく;
6A及びR7Aは、それぞれ、互いに独立して、C〜C10アルキル、5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C〜C22アルケニル、C〜C40アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、或いは−SiR8Aであり、ここで、基R6A及びR7Aはハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの基R6A及びR7Aは結合して5、6、又は7員環を形成してもよく;
基R8Aは、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ、C〜C10アルキル、5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C〜C22アルケニル、C〜C40アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、C〜C10アルコキシ、又はC〜C10アリールオキシであってよく、ここで、基R8Aはハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの基R8Aは結合して5、6、又は7員環を形成してもよく;
9A〜R13Aは、それぞれ、互いに独立して、水素、C〜C22アルキル、置換基としてC〜C10アルキル基を有していてもよい5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C〜C22アルケニル、C〜C40アリール、アルキル基中に1〜16個の炭素原子及びアリール基中に6〜21個の炭素原子を有するアリールアルキル、−NR14A、−N(SiR14A、−OR14A、−OSiR14A、又は−SiR14Aであり、ここで、基R1A〜R5Aはハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの基R1A〜R5A、特に隣接する基は、それらを結合している原子と一緒に結合して、好ましくは5、6、又は7員環、或いは好ましくはN、P、O、又はSからなる群からの少なくとも一つの原子を有する5、6、又は7員の複素環を形成してもよく;
ここで、基R14Aは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、C〜C10アルキル、5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C〜C22アルケニル、C〜C40アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、C〜C10アルコキシ、又はC〜C10アリールオキシであり、ここで、有機基R14Aはハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの基R14Aは結合して5、6、又は7員環を形成してもよく;
6A〜E10Aは、それぞれ、炭素であるか、或いはE6A〜E10Aの1つ以下はリン又は窒素であり、好ましくは炭素であり;
或いは基R4A及びZ1Aは、一緒になって−R15A−A1A−基を形成し;
ここで、R15Aは、
【0056】
【化8】

【0057】
であり;
ここで、R16A〜R21Aは、同一か又は異なり、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、トリメチルシリル基、C〜C10アルキル、5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C〜C22アルケニル、C〜C40アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、C〜C10アルコキシ、又はC〜C10アリールオキシであり、ここで、有機基R16A〜R21Aはハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの基R16A〜R21Aは結合して5、6、又は7員環を形成してもよく;
2A〜M4Aは、それぞれ、ケイ素、ゲルマニウム、又はスズ、好ましくはケイ素であり;
1Aは、−O−、−S−、−NR22A−、−PR22A−、−OR22A、−NR22A、−PR2A、或いは、非置換、置換、又は縮合複素環系であり;
ここで、基R22Aは、それぞれ、互いに独立して、C〜C10アルキル、5〜7員のシクロアルキル、シクロアルケニル、C〜C22アルケニル、C〜C40アリール、又はアルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、又はSi(R23Aであり、ここで、有機基R22Aはハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの基R22Aは結合して5、6、又は7員環を形成してもよく;
23Aは、水素、C〜C10アルキル、5〜7員のシクロアルキル、シクロアルケニル、C〜C22アルケニル、C〜C40アリール、又はアルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキルであり、ここで、有機基R23Aはハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの基R23Aは結合して5、6、又は7員環を形成してもよく;
vは、1であるか、又はA1Aが、非置換、置換又は縮合複素環系である場合には1又は0であってもよい)
のものが特に好ましい。
【0058】
式(Ia)のコンプレックスの中で、
1Aが、チタン、ジルコニウム、又はハフニウムであり;
基Xが、同一か又は異なり、それぞれ、互いに独立して、塩素、C〜Cアルキル、フェニル、アルコキシ又はアリールオキシ、式:−O−C(O)−R6Aのカルボキシレート、又は式:−O−C(O)−NR6A7Aのカルバメートであり;
tが、1又は2、好ましくは2であり;
1A〜R5Aが、それぞれ、水素又はC〜Cアルキルであるか、或いは二つの隣接する基R1A〜R5Aが、それらを結合する原子と一緒に置換又は非置換の5、6、又は7員環、特に置換又は非置換のベンゾ基6員環を形成し;
6A及びR7Aが、それぞれ、C〜C10アルキル、C〜C40アリール、又はアルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキルである;
ものが特に好ましい。
【0059】
かかる化合物(Ia)の調製及び化合物(Ia)の特に好ましい態様は、例えば、米国特許5,527,752に記載されている。
式(Ib)の非橋架メタロセンコンプレックスの中で、
1Aが、チタン、ハフニウム、又はクロムであり;
が、フッ素、塩素、C〜Cアルキル、又はベンジルであるか、或いは、二つの基Xが置換又は非置換のジエンリガンドを形成し;
tが、クロムの場合には0であり、それ以外の場合には1又は2、好ましくは2であり;
1A〜R5Aが、それぞれ、水素、C〜Cアルキル、C〜C10アリール、−NR8A、−OSiR8A、又は−Si(R8Aであり;
9A〜R13Aが、それぞれ、水素、C〜Cアルキル、C〜C10アリール、−NR14A、−OSiR14A、又は−Si(R14Aであり;
8A及びR14Aが、同一か又は異なり、それぞれ、C〜C10アルキル、5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C〜C40アリール、C〜C10アルコキシ、又はC〜C10アリールオキシであり、ここで、基R8A及びR14Aはハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの基R8A又はR14Aは結合して5、6、又は7員環を形成してもよく;
或いは、二つの基R1A〜R5A及び/又はR9A〜R13Aが、C環と一緒になって、インデニル、フルオレニル、又は置換インデニル若しくはフルオレニル系を形成する;
ものが好ましい。
【0060】
シクロペンタジエニル基が同一である式(Ib)のコンプレックス、例えばビス(シクロペンタジエニル)クロム又はビス(インデニル)クロムが特に有用である。
式(Ib)の特に有用なコンプレックスの更なる例は、
1Aがハフニウムであり;
が、フッ素、塩素、C〜Cアルキル、又はベンジルであるか、或いは、二つの基Xが置換又は非置換のジエンリガンドを形成し;
tが2であり;
1A〜R5Aが、それぞれ、水素、C〜Cアルキル、又はC〜C10アリールであり;
9A〜R13Aが、それぞれ、水素、C〜Cアルキル、又はC〜C10アリールであり;
8A及びR14Aが、同一か又は異なり、それぞれ、C〜C10アルキル、5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C〜C40アリール、C〜C10アルコキシ、又はC〜C10アリールオキシであり、ここで、基R8A及びR14Aはハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの基R8A又はR14Aは結合して5、6、又は7員環を形成してもよく;
或いは、二つの基R1A〜R5A及び/又はR9A〜R13Aが、C環と一緒になって、インデニル、フルオレニル、又は置換インデニル若しくはフルオレニル系を形成する;
ものである。
【0061】
コンプレックス(Ib)の更なる好ましい群は、
1Aがジルコニウムであり;
が、フッ素、塩素、C〜Cアルキル、又はベンジルであるか、或いは、二つの基Xが置換又は非置換のジエンリガンドを形成し;
tが、1又は2、好ましくは2であり;
1A〜R5Aが、それぞれ、水素、C〜Cアルキル、C〜C10アリール、−OSiR8Aであり;
9A〜R13Aが、それぞれ、水素、C〜Cアルキル、又はC〜C10アリール、又は−OSiR14Aであり;
8A及びR14Aが、同一か又は異なり、それぞれ、C〜C10アルキル、5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C〜C15アリール、C〜C10アルコキシ、又はC〜C10アリールオキシであり、ここで、基R8A及びR14Aはハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの基R8A又はR14Aは結合して5、6、又は7員環を形成してもよく;
或いは、二つの基R1A〜R5A及び/又はR9A〜R13Aが、C環と一緒になって、インデニル、フルオレニル、又は置換インデニル若しくはフルオレニル系を形成する;
ものである。
【0062】
かかる系の調製及び好ましい態様は、例えば、FI−A−960437において開示されている。
言及した非橋架メタロセンをベースとする触媒成分は、より高分子量のポリマー成分を製造するのに特に好適である。これらは、また、より高いコモノマー含量を有するポリマー成分を製造するのにも特に好適である。これらの触媒成分は、コモノマーに富むより高分子量のポリマー成分を製造するために特に好ましく用いられる。
【0063】
式(Ic)の特に有用なコンプレックスは、
15A
【0064】
【化9】

【0065】
であり;
1Aが、チタン、ジルコニウム、又はハフニウム、特にジルコニウム又はハフニウムであり;
基Xが、同一か又は異なり、それぞれ、塩素、C〜Cアルキル、ベンジル、フェニル、又はC〜C15アルキルアリールオキシである;
ものである。
【0066】
式(Ic)のコンプレックスとしては、ラセミ又は擬似ラセミ形態の橋架ビスインデニルコンプレックスを用いることも好ましい。ここで、擬似ラセミという用語は、コンプレックスの他の置換基を全て無視した場合に二つのインデニルリガンドが互いに対してラセミ配置であるコンプレックスを意味する。
【0067】
かかるコンプレックスの合成はそれ自体公知の方法によって行うことができ、適当に置換された環式炭化水素アニオンを、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、又はクロムのハロゲン化物と反応させることが好ましい。適当な製造法の例は、とりわけ、Journal of Organometallic Chemistry,369(1989),359−370に記載されている。
【0068】
一般式(Id)の特に有用なコンプレックスは、
1Aが、チタン又はジルコニウム、特にチタンであり;
が、塩素、C〜Cアルキル、又はフェニルであるか、或いは二つの基Xが置換又は非置換のジエンリガンドを形成し;
15Aが、
【0069】
【化10】

【0070】
であり;
1Aが、−O−、−S−、又は>NR22Aであり;
tが、1又は2、好ましくは2であり;
1A〜R3A及びR5Aが、それぞれ、水素、C〜C10アルキル、5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C〜C40アリール、−NR8A、又は−Si(R8Aであり、ここで、二つの基R1A〜R3A及びR5Aは結合して5、6、又は7員環を形成してもよく、R1A〜R3A及びR5Aの全てがメチルであることが特に好ましい;
ものである。
【0071】
特に有用な式(Id)のコンプレックスの一つの群は、
1Aが、好ましくは酸化状態IIIのチタン、バナジウム、又はクロムであり;
が、塩素、C〜Cアルキル、又はフェニルであるか、或いは二つの基Xが置換又は非置換のジエンリガンドを形成し;
15Aが、
【0072】
【化11】

【0073】
であり;
1Aが、−OR22A、−NR22A、−PR22A、或いは非置換、置換、又は縮合複素環、特にヘテロ芳香環系であり;
vが、1であるか、或いはA1Aが非置換、置換、又は縮合複素環系である場合には1又は0であってよく;
1A〜R3A及びR5Aが、それぞれ、水素、C〜C10アルキル、5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C〜C40アリール、又は−Si(R8Aであり、ここで、二つの基R1A〜R3A及びR5Aは結合して5、6、又は7員環を形成してもよい;
ものである。
【0074】
コンプレックス(Id)の好ましい態様においては、A1Aは、非置換、置換、又は縮合ヘテロ芳香環系であり、M1Aはクロムである。A1Aが、非置換又は置換、例えばアルキル置換のキノリル、特に8位又は2位において結合している置換又は非置換キノリルであり、vが0であるか、或いはA1Aが2位において結合している置換又は非置換ピリジルであり、vが1であることが極めて特に好ましい。
【0075】
コンプレックス(Id)の特に好ましい態様においては、置換基R1A〜R3A及びR5Aの少なくとも一つはC〜C40アリールであり、A1Aは8位又は2位において結合している置換又は非置換キノリルであり、vは0であるか、或いは、A1Aは2位において結合している置換又は非置換ピリジルであり、vは1であり、M1Aはクロムである。
【0076】
かかる官能性シクロペンタジエニルリガンドの製造は、長い間公知である。これらのコンプレックスへの種々の合成経路は、例えば、M.Endersら,Chem.Ber.(1996),129,459−463、又はP.Jutzi及びU.Siemeling,J.Orgmet.Chem.(1995),500,175−185において記載されている。
【0077】
金属コンプレックス、特にクロムコンプレックスは、(例えば、DE−A−19710615の実施例に類似する方法を用いて)対応する金属塩、例えば金属塩化物を、リガンドアニオンと反応させることによって、簡単な方法で得ることができる。
【0078】
更なる好適な化合物は、シクロペンタジエニル単位を有しない遷移金属コンプレックスであり、以下、Cp非含有コンプレックスと称する。好適なCp非含有コンプレックスは、一般式(II):
【0079】
【化12】

【0080】
(式中、
1Bは、チタン、ジルコニウム、又はハフニウムであり;
1B〜R6Bは、それぞれ、互いに独立して、水素、C〜C22アルキル、置換基としてC〜C10アルキル基を有していてもよい5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C〜C22アルケニル、C〜C40アリール、アルキル基中に1〜16個の炭素原子及びアリール基中に6〜21個の炭素原子を有するアリールアルキル、又は−SiR9Bであり、ここで、基R1B〜R6Bはハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの基R1B〜R6B、特に隣接する基は結合して5、6、又は7員環を形成してもよく、及び/又は、二つの隣接する基R1B〜R6Bは、N、P、O、及びSからなる群からの少なくとも一つの原子を有する5、6、又は7員の複素環を形成してもよく;
基Xは、それぞれ、互いに独立して、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、水素、C〜C10アルキル、C〜C10アルケニル、C〜C15アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、−OR7B、−NR7B8B、−O−C(O)−R7B、又は−O−C(O)−NR7B8Bであり、基Xは、適当な場合には互いに結合してもよく;
1Bは、−O−、−OR7B−、−NR7B−、又は−NR7B8B−であり;
mは、1又は2であり;
nは、1、2、又は3であり、M1Aの価数に応じて一般式(II)のメタロセンコンプレックスが非荷電となるような数であり;
oは、NR1Bが隣接する炭素と一緒になってイミンを形成する場合には1であり、或いはNR1Bが負の電荷を有する場合には2であり;
ここで、R7B及びR8Bは、それぞれ、C〜C10アルキル、5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C〜C22アルケニル、C〜C40アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、又は−SiR9Bであり、ここで、有機基R7B及びR8Bはハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの基R7B及びR8Bは結合して5、6、又は7員環を形成してもよく;
基R9Bは、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ、C〜C10アルキル、5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C〜C22アルケニル、C〜C40アリール、C〜Cアルコキシ、又はC〜C10アリールオキシであってよく、ここで、有機基R9Bはハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの基R9Bは結合して5、6、又は7員環を形成してもよい)
のコンプレックスである。
【0081】
一般式(II)の好ましい遷移金属コンプレックスは、A1Bが−O−であり、oが1であるイミノフェノキシドコンプレックスであり、このリガンドは、例えば、置換又は非置換サリチルアルデヒド、及び第1級アミン、特に置換又は非置換アリールアミンから製造される。かかる化合物の製造は、例えば、EP−A−1013674に記載されている。
【0082】
更なる好適なCp非含有コンプレックスは、一般式(III):
【0083】
【化13】

【0084】
(式中、
1Cは、チタン、ジルコニウム、又はハフニウムであり;
1C〜R5Cは、それぞれ、互いに独立して、水素、C〜C22アルキル、5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C〜C22アルケニル、C〜C40アリール、アルキル基中に1〜16個の炭素原子及びアリール基中に6〜21個の炭素原子を有するアリールアルキル、又は−SiR8Cであり、ここで、有機基R1C〜R5Cはハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの基R1C〜R5C、特に隣接する基は結合して5、6、又は7員環を形成してもよく、及び/又は、二つの隣接する基R1C〜R5Cは、N、P、O、及びSからなる群からの少なくとも一つの原子を有する5、6、又は7員の複素環を形成してもよく;
基X1Cは、それぞれ、互いに独立して、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、水素、C〜C10アルキル、5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C〜C22アルケニル、C〜C40アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、−OR6C、−NR6C7C、−O−C(O)−R6C、又は−O−C(O)−NR6C7Cであり、基X1Cは、適当な場合には互いに結合してもよく;
1Cは、−CR6C7C−、又は−CR6C=であり;
mは、1又は2であり;
nは、1、2、又は3であり、M1Aの価数に応じて一般式(II)のメタロセンコンプレックスが非荷電となるような数であり;
oは、0又は1であり;
ここで、R6C及びR7Cは、それぞれ、C〜C10アルキル、5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C〜C22アルケニル、C〜C40アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、又は−SiR8Cであり、ここで、有機基R6C及びR7Cはハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの基R6C及びR7Cは結合して5、6、又は7員環を形成してもよく;
基R8Cは、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ、C〜C10アルキル、5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C〜C22アルケニル、C〜C40アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、C〜Cアルコキシ、又はC〜C10アリールオキシであってよく、ここで、有機基R8Cはハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの基R8Cは結合して5、6、又は7員環を形成してもよい)
のものである。
【0085】
一般式(III)の好ましい遷移金属コンプレックスは、oが1であり、A1Cが−CR6C7C−であり、R1CがC〜C40アリールであるコンプレックスである。かかる化合物の製造は、例えば、WO 02/046249及びWO 03/040201に記載されている。
【0086】
更なる好適なCp非含有コンプレックスは、一般式(IVa)〜(IVe):
【0087】
【化14】

【0088】
【化15】

【0089】
の少なくとも一つのリガンドを有し、遷移金属は、Ti、Zr、Hf、Sc、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Fe、Co、Ni、Pd、Pt、及び希土類金属の元素の中から選択される。中心金属としてニッケル、鉄、コバルト、又はパラジウムを有する化合物が好ましい。
【0090】
1Dは、元素周期表の第15族の元素、好ましくはN又はPであり、Nが特に好ましい。分子内の二つ又は三つの原子E1Dは同一であっても異なっていてもよい。式(IVe)における元素E2Dは、それぞれ、互いに独立して、炭素、窒素、又はリン、特に炭素である。
【0091】
基R1D〜R25Dは、リガンド系(IVa)〜(IVe)内において同一であっても異なっていてもよく、以下の基である。
1D及びR4Dは、それぞれ、互いに独立して、C〜C10アルキル、5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C〜C22アルケニル、C〜C40アリール、又はアルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキルであり、ここで、有機基R1D及びR4Dはハロゲンによって置換されていてもよく、元素E1Dに隣接する炭素原子が少なくとも二つの炭素原子に結合している炭化水素基が好ましく;
2D及びR3Dは、それぞれ、互いに独立して、水素、C〜C10アルキル、5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C〜C22アルケニル、C〜C40アリール、又はアルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキルであり、ここで、有機基R2D及びR3Dはハロゲンによって置換されていてもよく、R2D及びR3Dは一緒になって1以上のヘテロ原子も存在していてよい環系を形成してもよく;
5D〜R9Dは、それぞれ、互いに独立して、水素、C〜C10アルキル、5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C〜C22アルケニル、C〜C40アリール、又はアルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキルであり、ここで、有機基R5D〜R9Dはハロゲンによって置換されていてもよく、R6DとR5D又はR8DとR9D又は二つのR7Dは一緒になって環系を形成してもよく;
10D及びR14Dは、それぞれ、互いに独立して、C〜C10アルキル、5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C〜C22アルケニル、C〜C40アリール、又はアルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキルであり、ここで、有機基R10D及びR14Dはハロゲンによって置換されていてもよく;
11D、R12D、R12D’、及びR13Dは、それぞれ、互いに独立して、水素、C〜C10アルキル、5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C〜C22アルケニル、C〜C40アリール、又はアルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキルであり、ここで、有機基R11D、R12D、R12D’、及びR13Dはハロゲンによって置換されていてもよく、2以上のジェミナル又は隣接する基R11D、R12D、R12D’、及びR13Dは一緒になって環系を形成してもよく;
15D〜R18D及びR20D〜R24Dは、それぞれ、互いに独立して、水素、C〜C10アルキル、5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C〜C22アルケニル、C〜C40アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、又は−SiR26Dであり、ここで、有機基R15D〜R18D及びR20D〜R24Dはハロゲンによって置換されていてもよく、二つの隣接する基R15D〜R18D及びR20D〜R24Dは結合して5又は6員環を形成してもよく;
19D及びR25Dは、それぞれ、互いに独立して、C〜C40アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、又は−NR26Dであり、ここで、有機基R19D及びR25Dはハロゲン又はSi、N、P、O、若しくはSを含む基によって置換されていてもよく;
20D〜R24Dは、それぞれ、互いに独立して、水素、C〜C10アルキル、5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C〜C22アルケニル、C〜C40アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、NR26D、−SiR26Dであり、ここで、有機基R20D〜R25Dはハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つのジェミナル又は隣接する基R20D〜R25Dは結合して5、6又は7員環を形成してもよく、及び/又は、二つのジェミナル又は隣接する基R20D〜R25Dは結合してN、P、O、及びSからなる群からの少なくとも一つの原子を有する5、6、又は7員の複素環を形成してもよく;
基R26Dは、それぞれ、互いに独立して、水素、C〜C20アルキル、5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C〜C20アルケニル、C〜C40アリール、又はアルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキルであり、二つの基R26Dは結合して5又は6員環を形成してもよく;
uは、E2Dが窒素又はリンである場合には0であり、或いはE2Dが炭素である場合には1であり;
指数vは、それぞれ、互いに独立して、1又は2であり、vが1の場合には、一つの基を有する炭素と隣接する元素E1Dとの間の結合は二重結合であり、vが2の場合には、二つの基を有する炭素と隣接する元素E1Dとの間の結合は単結合であり;
xは、0又は1であり、xが0の場合には、式(IVc)のコンプレックスは負に荷電しており;
yは、1〜4の整数、好ましくは2又は3である。
【0092】
中心金属としてFe、Co、Ni、Pd、又はPt及び式(IVa)のリガンドを有するCp非含有コンプレックスが特に有用である。
言及した後期遷移金属コンプレックスをベースとする触媒成分は、より低分子量のポリマー成分を製造するのに特に好適である。これらは、また、比較的低いコモノマー含量を有するポリマー成分、特に実質的にコモノマーを含まないポリマー成分を製造するのに特に好適である。これらの触媒成分は、低いコモノマー含量で低分子量のポリマー成分を製造するために特に好ましく用いられる。
【0093】
本発明方法において用いる複合触媒系を製造するのに好ましい遷移金属コンプレックスは、リガンド(IVe)と遷移金属であるFe、Co、又はNiとのコンプレックス、特に一般式(V):
【0094】
【化16】

【0095】
(式中、
原子E2Dは、それぞれ、互いに独立して、炭素、窒素、又はリン、特に炭素であり;
20D及びR24Dは、それぞれ、互いに独立して、水素、C〜C20アルキル、5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C〜C22アルケニル、C〜C40アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、−NR26D、又は−SiR26Dであり、ここで、有機基R20D及びR24Dはハロゲンによって置換されていてもよく;
21D〜R23Dは、それぞれ、互いに独立して、水素、C〜C20アルキル、5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C〜C22アルケニル、C〜C40アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、ハロゲン、−NR26D、又は−SiR26Dであり、ここで、有機基R21D〜R23Dはハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの隣接する基R21D〜R23Dは結合して5、6、又は7員環を形成してもよく、及び/又は、二つの隣接する基R21D〜R23Dは結合して、N、P、O、及びSからなる群からの少なくとも一つの原子を有する5、6、又は7員の複素環を形成し;
uは、E2Dが窒素又はリンである場合には0であり、或いはE2Dが炭素である場合には1であり;
27D〜R30Dは、それぞれ、互いに独立して、C〜C20アルキル、5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C〜C22アルケニル、C〜C40アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、ハロゲン、−NR26D、−OR26D、又は−SiR26Dであり、ここで、有機基R27D〜R30Dはハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの隣接する基R27D〜R30Dは結合して5、6、又は7員環を形成してもよく、及び/又は、二つの隣接する基R27D〜R30Dは、結合して、N、P、O、及びSからなる群からの少なくとも一つの原子を有する5、6、又は7員の複素環を形成し;
31D〜R36Dは、それぞれ、互いに独立して、水素、C〜C20アルキル、5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C〜C22アルケニル、C〜C40アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、ハロゲン、−NR26D、−OR26D、又は−SiR26Dであり、ここで、有機基R31D〜R36Dはハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの隣接する基R31D〜R36Dは結合して5、6、又は7員環を形成してもよく、及び/又は、二つの隣接する基R31D〜R36Dは結合してN、P、O、及びSからなる群からの少なくとも一つの原子を有する5、6、又は7員の複素環を形成し;
指数vは、それぞれ、互いに独立して、0又は1であり;
基Xは、それぞれ、互いに独立して、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、水素、C〜C10アルキル、C〜C10アルケニル、C〜C40アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、−NR26D、−OR26D、−SR26D、−SO26D、−O−C(O)−R26D、−CN、−SCN、β−ジケトナート、CO、BF、PF、或いは嵩高の非配位アニオンであり、基Xは、適当な場合には互いに結合してもよく;
基R26Dは、それぞれ、互いに独立して、水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキルであり、ここで、有機基R26Dはハロゲン若しくは窒素−含有基及び酸素−含有基によって置換されていてもよく、二つの基R26Dは結合して5又は6員環を形成してもよく;
sは、1、2、3、又は4、特に2又は3であり;
Dは、非荷電のドナーであり;
tは、0〜4、特に0、1、又は2である)
のものである。
【0096】
更に、エーテル、アミン、又はアミド官能基を有する二座又は三座キレート形成リガンドを有する遷移金属コンプレックスもまた好ましい。かかるリガンドにおいては、エーテル官能基は、例えば、アミン又はアミド官能基に結合する。
【0097】
好適なCp非含有コンプレックスとしては、構造的な特徴としてクロムが少なくとも一つのイミド基を有するイミド−クロム化合物も挙げられる。これらの化合物及びそれらの製造は、例えば、WO 01/09148に記載されている。
【0098】
更なる好適なCp非含有コンプレックスは、三座巨大環式リガンド、特に置換又は非置換1,3,5−トリアザシクロヘキサン又は1,4,7−トリアザシクロノナンを有するコンプレックスである。このタイプのコンプレックスの場合においても、同様にクロムコンプレックスが好ましい。
【0099】
クロムをベースとする触媒、例えばフィリップス触媒、或いはチーグラー・ナッタ触媒もまた、それからオレフィンを重合する本発明方法において用いられる複合触媒を得ることができる遷移金属成分として好適である。
【0100】
チーグラー触媒は、一般に、チタン又はバナジウム化合物、並びに無機又はポリマー微粉砕担体、マグネシウムの化合物、ハロゲン化合物、及び電子ドナー化合物を用いて調製されるチタン又はバナジウム含有固体成分を含む。本発明の目的のために、チーグラー触媒という用語は、文献においてチーグラー・ナッタ触媒と称されているものを包含する。
【0101】
フィリップス触媒は、通常、クロム化合物を無機担体に施し、次にこれを350〜950℃の範囲の温度でか焼して、これによって6よりも小さい価数で存在するクロムを6価状態に転化することによって調製される。クロムとは別に、Mg、Ca、B、Al、P、Ti、V、Zr、及びZnのような更なる元素も用いることができる。Ti、Zr、又はZnを用いることが特に好ましい。上記記載の元素の組み合わせも本発明にしたがって可能であることを強調することができる。触媒前駆体は、また、か焼の前又はか焼中にフッ素化物でドーピングすることもできる。同様に当業者に公知であるフィリップス触媒用担体としては、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素(シリカゲル)、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、又はこれらの混合酸化物若しくは共ゲル、或いはリン酸アルミニウムに言及することができる。更なる好適な担体材料は、細孔表面積を、例えばホウ素、アルミニウム、ケイ素、又はリン元素の化合物によって変性することによって得ることができる。シリカゲルを用いることが好ましい。球状又は顆粒状のシリカゲルが好ましく、前者は噴霧乾燥することもできる。活性化クロム触媒は、次に、予備重合又は予備還元することができる。予備還元は、通常、Coによるか、或いは水素によって、250〜500℃、好ましくは300℃〜400℃において、活性化装置内で行う。
【0102】
言及した遷移金属コンプレックスの幾つかは、そのままでは僅かな重合活性しか有さず、したがって良好な重合活性を示すことができるように活性化化合物と接触させる。この理由のために、複合触媒は、好ましくは、更なる成分として、1種以上の活性化化合物(以下、活性化剤又は助触媒とも称する)を含む。触媒成分の種類によって、1種以上の活性化剤が有利である可能性がある。例えば、同じ活性化剤又は活性化剤混合物或いは異なる助触媒を用いて活性化を行うことができる。同じ活性化剤を、少なくとも2種類の触媒成分のために、特に有利には全ての触媒成分のために用いることが有利である。
【0103】
好適な活性化剤は、例えばアルミノキサン、非荷電の強ルイス酸、ルイス酸カチオンを有するイオン性化合物、或いはカチオンとしてブレンステッド酸を有するイオン性化合物のような化合物である。言及した種類の触媒のために好適な活性化剤は、一般に公知である。
【0104】
用いる活性化化合物の量は、活性化剤の種類に依存する。一般に、活性化化合物(C)に対する金属コンプレックス(A)のモル比は、1:0.1〜1:10,000、好ましくは1:1〜1:2,000であってよい。
【0105】
本発明方法を行うために、活性化化合物として少なくとも一種のアルミノキサンを用いることが好ましい。アルミノキサンとしては、例えば、WO 00/31090に記載されている化合物を用いることができる。特に有用なアルミノキサンは、メチルアルミノキサン(MAO)である。
【0106】
非荷電の強ルイス酸としては、一般式(VI)
2D1D2D3D (VI)
(式中、M2Dは、元素周期表の第13族の元素、特にB、Al、又はGa、好ましくはBであり;
1D、X2D、及びX3Dは、それぞれ、水素、C〜C10アルキル、C〜C15アリール、それぞれアルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有する、アルキルアリール、アリールアルキル、ハロアルキル、又はハロアリール、或いは、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素、特にハロアリール、好ましくはペンタフルオロフェニルである)
の化合物が好ましい。非荷電の強ルイス酸の例は、WO 00/31090において与えられている。
【0107】
ルイス酸カチオンを有する好適なイオン性化合物は、一般式(XIII):
[((M3Da+)Q・・・Qd+ (XIII)
(式中、M3Dは、元素周期表の第1〜16族の元素であり、
〜Qは、マイナス1価の基、例えば、C〜C28アルキル、C〜C15アリール、それぞれアリール基中に6〜20個の炭素原子及びアルキル基中に1〜28個の炭素原子を有する、アルキルアリール、アリールアルキル、ハロアルキル、ハロアリール、置換基としてC〜C10アルキル基を有していてもよいC〜C10シクロアルキル、ハロゲン、C〜C28アルコキシ、C〜C15アリールオキシ、シリル、又はメルカプチル基であり;
aは、1〜6の整数であり;
zは、0〜5の整数であり;
dは、a−zの差に相当するが、dは1以上である)
のカチオンの塩様化合物である。
【0108】
特に有用なカチオンは、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、及びスルホニウムカチオン、並びにカチオン性遷移金属コンプレックスである。特に、トリフェニルメチルカチオン、銀カチオン、及び1,1’−ジメチルフェロセニルカチオンに言及することができる。これらは、好ましくは、非配位対イオン、特にWO 91/09882においても言及されているようなホウ素化合物、好ましくはテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを有する。
【0109】
また、上記記載の活性化剤の全ての混合物を用いることもできる。好ましい混合物は、アルミノキサン、特にメチルアルミノキサン、及びイオン性化合物、特にテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオンを含むもの、及び/又は非荷電の強ルイス酸、特にトリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン又はボロキシンを含む。
【0110】
言及した好ましい複合触媒のための共活性化剤としては、アルミノキサンを用いることが好ましい。また、ハフノセンのための活性化剤として、特に鉄コンプレックスのための活性化剤としてのアルミノキサンと組み合わせて、一般式(XIII)のカチオンの塩様化合物、特にN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルベンジルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、又はトリチルテトラキスペンタフルオロフェニルボレートの組み合わせも好ましい。また、式(XIII)のアルミニウム化合物と過フッ素化アルコール及びフェノールとの反応生成物も、共活性化剤として特に有用である。
【0111】
複合触媒は、担持又は非担持形態で用いることができ、特に気相重合反応器中において用いる場合には担持形態が好ましい。
担体としては、任意の有機又は無機固体であってよい微粉砕担体を用いることが好ましい。無機担体材料としては、シリカゲル、塩化マグネシウム、酸化アルミニウム、メソ多孔性材料、アルミノケイ酸塩、及びハイドロタルサイトが好ましい。シリカゲルを用いることが特に好ましい。なぜなら、その寸法及び構造のためにオレフィン重合のための担体として好適である粒子をこの材料から製造することができるからである。より小さな顆粒状粒子、即ち一次粒子の球状凝集体を含む噴霧乾燥シリカゲルが特に有用であることが見出された。
【0112】
用いる担体は、好ましくは、10〜1000m/gの範囲の比表面積、0.1〜5mL/gの範囲の細孔容積、及び1〜500μmの平均粒径を有する。50〜700m/gの範囲の比表面積、0.4〜3.5mL/gの範囲の細孔容積、及び5〜350μmの範囲の平均粒径を有する担体が好ましい。200〜550m/gの範囲の比表面積、0.5〜3.0mL/gの範囲の細孔容積、及び10〜150μm、特に30〜120μmの平均粒径を有する担体が特に好ましい。
【0113】
担体は、例えば吸着水を除去するために使用前に熱処理にかけることができる。かかる乾燥処理は、概して、80〜300℃、好ましくは100〜200℃の範囲の温度で行われ、100〜200℃における乾燥を減圧下及び/又は不活性ガス(例えば窒素)のブランケット下で行うことが好ましい。別法としては、無機担体を、200〜1000℃の温度でか焼して、適当な場合には、固体の所望の構造を生成するか及び/又は表面の所望のOH濃度を設定する。
【0114】
特に、好ましい態様の活性化剤と好ましい態様の触媒成分との組み合わせが好ましい。
担持複合触媒を製造する好ましい方法においては、少なくとも一種の鉄コンプレックスを活性化剤と接触させ、次に脱水又は不動態化した担体と混合する。更なる遷移金属化合物、好ましくはハフノセン又はジルコノセンを同様に好適な溶媒中で少なくとも一種の活性化剤と接触させて、好ましくは可溶性の反応生成物、付加体、或いは混合物を与える。この方法で得られた製剤を、次に、直接か又は溶媒の分離後に用いられる固定化した鉄コンプレックスと混合し、溶媒を完全か又は部分的に除去する。得られた担持触媒系を、好ましくは乾燥して、溶媒の全部又は殆どが担体材料の細孔から確実に除去されるようにする。担持触媒は、好ましくは自由流動粉末として得られる。上記のプロセスの工業的な実施の例は、WO 96/00243、WO 98/40419、又はWO 00/05277に記載されている。更に好ましい態様においては、活性化剤をまず担体に施し、次にこの担持化合物を適当な遷移金属化合物と接触させる。
【0115】
混合触媒は、更なる成分として、一般式(XX):
(R1GrG(R2GsG(R3GtG (XX)
(式中、Mは、Li、Na、K、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、亜鉛、特にLi、Na、K、Mg、ホウ素、アルミニウム、又はZnであり;
1Gは、水素、C〜C10アルキル、C〜C15アリール、それぞれアルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有する、アルキルアリール又はアリールアルキルであり;
2G及びR3Gは、それぞれ、水素、ハロゲン、C〜C10アルキル、C〜C15アリール、それぞれアルキル基中に1〜20個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有する、アルキルアリール、アリールアルキル、又はアルコキシ、或いはC〜C10アルキル又はC〜C15アリールを含むアルコキシであり;
は、1〜3の整数であり;
及びtは、0〜2の整数であり、r+s+tの合計はMの価数に相当する)
の金属化合物を更に含んでいてもよく、ここで成分(E)は、通常、成分(C)と同一ではない。また、式(XX)の種々の金属化合物の混合物を用いることもできる。
【0116】
一般式(XX)の金属化合物の中で、
が、リチウム、マグネシウム、ホウ素、又はアルミニウムであり、
1Gが、C〜C20アルキルであるものが好ましい。
【0117】
式(XX)の特に好ましい金属化合物は、メチルリチウム、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、メチルマグネシウムクロリド、メチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド、ブチルマグネシウムクロリド、ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、n−ブチル−n−オクチルマグネシウム、n−ブチル−n−ヘプチルマグネシウム、特にn−ブチル−n−オクチルマグネシウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロリド、ジメチルアルミニウムフルオリド、メチルアルミニウムジクロリド、メチルアルミニウムセスキクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、及びトリメチルアルミニウム、並びにこれらの混合物である。アルミニウムアルキルとアルコールとの部分加水分解生成物もまた用いることができる。
【0118】
本発明に従って用いられる複合触媒の構成成分として用いる少なくとも二種類の上記記載の遷移金属配位化合物、特に遷移金属配位化合物の全部が化学的に異なっていることが好ましい。複合触媒において二種類の遷移金属配位化合物しか用いないことが特に好ましいが、更なる遷移金属配位化合物を用いることを排除するものではない。
【0119】
遷移金属コンプレックスの好ましい組み合わせは、少なくとも一種のCp非含有コンプレックス、特に式(V)のコンプレックスを用いるものである。また、式Iの少なくとも一種のコンプレックス、特に式Iのコンプレックス及び式VのCp非含有コンプレックス、式Iのコンプレックス及び式IIのCp非含有コンプレックス、式Iのコンプレックス及び式IIIのCp非含有コンプレックスを含む組み合わせ、或いは式Ibの二種類の異なるコンプレックスの組み合わせもまた好ましい。
【0120】
特に好ましい触媒成分は、式Ib及び/又はIdの遷移金属配位化合物をベースとするものである。式Vの遷移金属配位化合物をベースとするものも特に好ましい。本方法は、式Ib及び/又は式IdのCp含有コンプレックス及び/又は式VのCp非含有コンプレックスを含む組み合わせに特に適している。
【0121】
本発明方法に特に好ましい複合触媒は、
(A)そのシクロペンタジエニル系が、非荷電ドナーによって置換されているか(A1)、或いはハフノセンをベースとするものである(A2)、元素周期表の第4〜6族の金属のモノシクロペンタジエニルコンプレックスをベースとする少なくとも一種の遷移金属コンプレックス;
(B)鉄又はコバルトと、少なくとも二つのo,o−二置換アリール基を有する三座リガンドとの少なくとも一種の有機遷移金属化合物(B);
(C)場合によっては、一種以上の活性化剤;
(D)場合によっては、一種以上の有機又は無機担体;
(E)場合によっては、周期表の第1、2、又は13族の金属を含む一種以上の金属化合物;
を含む。
【0122】
有機遷移金属化合物Bに対する有機遷移金属化合物Aのモル比は、通常、1:100〜100:1、好ましくは1:10〜10:1、特に好ましくは1:5〜5:1の範囲である。有機遷移金属化合物Aは、好ましくは、エチレンの単独重合又は共重合において同等の反応条件下で触媒中で単独で用いた場合に、有機遷移金属化合物Bを同等の反応条件下で触媒中で単独で用いた場合に生成されるものよりも高いMを生成する。触媒成分A1、A2、及びBの好ましい態様は、有機遷移金属化合物A1とBとの組み合わせ、及び有機遷移金属化合物A2とBとの組み合わせの両方において好ましい。
【0123】
本発明方法は、オレフィンの重合、特にα−オレフィン、即ち、末端二重結合を有する炭化水素の重合のために好適である。
好適なモノマーは、アクリル酸又はメタクリル酸のエステル又はアミド誘導体、例えばアクリレート、メタクリレート、又はアクリルニトリルのような官能化されたオレフィン性不飽和化合物であってよい。アリール置換α−オレフィンをはじめとする非極性オレフィン性化合物が好ましい。特に好ましいα−オレフィンは、直鎖又は分岐鎖のC〜C12−1−アルケン、特に直鎖のC〜C10−1−アルケン、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、又は分岐鎖のC〜C10−1−アルケン、例えば、4−メチル−1−ペンテン、共役及び非共役ジエン、例えば1,3−ブタジエン、1,4−ヘキサジエン、又は1,7−オクタジエン、又はビニル芳香族化合物、例えば、スチレン、又は置換スチレンである。また、種々のα−オレフィンの混合物を重合することもできる。好適なオレフィンとしては、また、二重結合が、1以上の環系を含んでいてもよい環式構造の一部であるものも挙げられる。例は、シクロペンテン、ノルボルネン、テトラシクロドデセン、又はメチルノルボルネン、或いはジエン、例えば5−エチリデン−2−ノルボルネン、ノルボルナジエン、又はエチルノルボルナジエンである。また、2種以上のオレフィンを重合することもできる。
【0124】
特に、本発明方法は、エチレン又はプロピレンの重合又は共重合のために用いることができる。エチレンの重合におけるコモノマーとしては、C〜C−α−オレフィン、特に1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、及び/又は1−オクテンを用いることが好ましい。プロピレンの重合における好ましいコモノマーは、エチレン及び/又はブテンである。エチレンを1−ヘキセン又は1−ブテンと共重合するプロセスが特に好ましい。
【0125】
オレフィンを重合する本発明方法は、0〜200℃、好ましくは25〜150℃、特に好ましくは40〜130℃の範囲の温度、及び0.05〜10MPa、特に好ましくは0.3〜4MPaの圧力下で、工業的に公知な重合プロセスの全てを用いて行うことができる。重合は、バッチ式か、或いは好ましくは1以上の段階で連続的に行うことができる。溶液法、懸濁法、撹拌気相法、又は気相流動化法が全て可能である。このタイプのプロセスは、当業者に一般に公知である。
【0126】
担持又は非担持複合触媒は、使用する前に予備重合にかけることができ、担持触媒系を予備重合することが好ましい。予備重合は、気相中、懸濁液中、或いはモノマー(バルク)中で行うことができ、重合反応器の上流に設置した予備重合ユニット内で連続的か、或いは反応器の運転とは独立した不連続予備重合ユニット内で行うことができる。
【0127】
懸濁重合の場合には、重合は、通常、懸濁媒体、好ましくはイソブタン又は炭化水素の混合物のような不活性炭化水素中、或いはモノマーそれ自体の中で行う。懸濁重合温度は、通常、−20〜115℃の範囲であり、圧力は0.1〜10MPaの範囲である。懸濁液の固形分含量は、一般に10〜80%の範囲である。重合は、例えば撹拌オートクレーブ内でバッチ式か、或いは例えば管状反応器、好ましくはループ反応器内で連続的に行うことができる。特に、米国特許3,242,150及び米国特許3,248,179に記載されているようなフィリップス−PFプロセスによって行うことができる。
【0128】
言及した重合プロセスの中で、特に気相流動床反応器内での気相重合、特にループ反応器及び撹拌槽反応器内での溶液重合及び懸濁重合が好ましい。
循環反応器ガスが反応器の下端に供給され、その上端において再び回収される気相流動床反応器内での気相重合が特に好ましい。α−オレフィンの重合においては、循環反応器ガスは、通常、重合するα−オレフィン、所望の場合には分子量調整剤、例えば水素、及び不活性ガス、例えば窒素、及び/又は低級アルカン、例えばエタン、プロパン、ブタン、ペンタン、又はヘキサンの混合物である。プロパンを、適当な場合には更なる低級アルカンと組み合わせて用いることが好ましい。反応器ガスの速度は、管内に配置されて重合領域として機能する微粉砕ポリマーの混合床を流動化し、且つ重合熱を効率的に除去する(非凝縮モード)のに十分に高くなければならない。重合は、また、反応ガスを冷却するために気化のエンタルピーの追加の使用をなすために、循環ガスの一部を露点以下に冷却して二相混合物として反応器に再循環する凝縮又は超凝縮モードで行うこともできる。
【0129】
気相流動床反応器においては、0.1〜10MPa、好ましくは0.5〜8MPa、特に1.0〜3MPaの圧力で運転することが望ましい。更に、必要な冷却容量は、流動床内で(共)重合を行う温度に依存する。本発明方法に関しては、30〜160℃、特に好ましくは65〜125℃の温度で運転することが有利であり、この範囲の上方の部分の温度は好ましくは比較的高い密度のコポリマーのために設定され、この範囲の下方の部分の温度は好ましくは比較的低い密度のコポリマーのために設定される。
【0130】
また、二つの重合領域が互いに接続され、ポリマーがこれらの二つの領域を通して多数回交互に通過し、二つの領域が異なる重合条件をも有することができる多領域反応器を用いることもできる。かかる反応器は、例えばWO 97/04015及びWO 00/02929に記載されている。
【0131】
また、所望の場合には、重合カスケードが形成されるように、異なるか又は同一の重合プロセスを直列に接続することもできる。2以上の同一か又は異なるプロセスを用いた並行の反応器配列もまた可能である。しかしながら、重合は、好ましくは単一の反応器内でのみ行う。
【0132】
本発明方法によって、特に有利な特性を有するポリマー成形組成物を製造することが可能になる。成形組成物は、好ましくは、4より大きく、より好ましくは5〜50、特に好ましくは7〜35の多分散度M/Mを有する。21.6kgの負荷下、190℃で測定したメルトフローレートは、好ましくは1〜300g/10分である。異なるモノマー導入能力を有する触媒を用いる場合、エチレンの重合の場合には、ポリマー生成物のコモノマー含量、したがって密度も、それぞれのポリマー成分の割合によって変化させることができる。
【0133】
二峰性又は多峰性ポリオレフィン、特にポリエチレンの重要な用途は、ガス、水道水、及び排水の輸送のための圧力配管の製造である。ポリエチレン製の圧力配管は、近年急速に金属管に置き換わっている。かかる用途のためには、管が、経年劣化及び脆性破壊の心配なしに極めて長い寿命を有することが重要である。圧力配管においては小さな欠陥又は切り欠きであっても、低圧においてさえも成長して脆性破壊を引き起こす可能性があり、このプロセスはより高い温度及び/又は浸食性の化学物質によって加速する可能性がある。したがって、管における欠陥、例えば腐り傷又は「白点」の数及び寸法を可能な限り大きく減少することが極めて重要である。
【0134】
低いレベルの腐り傷及び極めて高い機械強度及び優れた加工性を有するフィルムを得ることもできる。本発明によって用いられる変性剤は、生成物の官能特性に影響を与えず、したがって医療及び食品用途にも特に好適であるという更なる特性を有する。
【0135】
反応器内で生成物を製造することによって、エネルギーの消費を減少し、その後の配合プロセスが不要になり、ポリマー成分の分子量分布及び異なる分子量を簡単に制御することが可能になる。更に、ポリマーの良好な混合が達成される。
【0136】
以下において、本発明にしたがって用いる変性剤の作用機構を図面を用いて説明する。本発明はこれに限定されるものではない。
図1は、複合触媒を用いて製造したポリマーの典型的なモル質量分布を図式的に示す。曲線の最大値はより高分子量のポリマー成分によるものであり、一方、左側の肩部はより低分子量のポリマー成分によるものである。この分布は、触媒成分として式(V)の鉄−ビスイミンコンプレックス及びハフノセンを含む複合触媒によって生成された。
【0137】
実線は変性剤を添加しない場合の分布を示す。水を加えることによって鉄−ビスイミン触媒の活性が選択的に低下して左側の肩部が減少する一方で最大値は増加する。これは、より低分子量の成分がより高分子量のポリマー成分と比較して減少したためである。破線の曲線は水を加えた後の分布を示す。ポリマー成分のモル質量及びモル質量分布は、曲線の変化しなかった位置から明らかなように、僅かしか変化しない。
【0138】
本特許出願において用いるパラメーターは、以下の方法で測定した。
極限粘度(dL/g)
ポリマーの濃度をゼロに外挿した際の粘度数の極限値である極限粘度(η)の測定は、ISO 1628にしたがって、溶媒としてデカリンを用いて、135℃において、自動ウベローデ粘度計(Lauda PVS1)上で行った。
【0139】
モル質量分布の幅
Waters 150C GPC装置を用いて、1,2,4−トリクロロベンゼン中140℃においてゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を行った。HS−Entwicklungsgesellschaft fur wissenschaftliche Hard− und Software mbH,Ober−HilbersheimからのソフトウェアWin−GPCを用いてデータの評価を行った。カラムは、100〜10g/モルのモル質量を有するポリエチレン標準試料によって較正した。ポリマーの質量平均モル質量(M)及び数平均モル質量(M)、並びに数平均に対する質量平均の比(M/M)を測定した。
【0140】
密度及びコモノマー含量
IR分光法によって密度及びコモノマー含量を測定した。IRスペクトルは、180℃において15分間プレスすることによって製造した0.1mmの厚さを有するフィルムについて測定した。ISO 1183にしたがう浮力法により密度を測定することによってその密度を測定したポリマー標準試料に対する化学較正によって、IRスペクトルとポリマー試料の密度との相関を求めた。NMRスペクトルを評価することによってそのヘキセン含量を測定したポリマー標準試料に対する化学較正によって、IRスペクトルとポリマー試料のコモノマー含量の相関を求めた。NMRスペクトルを測定するために、ポリマー標準試料を不活性ガス下でチューブ内に配置し、チューブを炎封止した。その化学シフトをTMSに対する化学シフトに変換した溶媒信号を、H−及び13C−NMRスペクトルにおける内部標準として用いた。
【0141】
James C. Randall,JMS−REV,Macromol.Chem.Phys.,C29(2&3),201−317(1989)によって記載されているように、1000炭素原子あたりの分岐数を13C−NMRによって測定した。これは、1000炭素原子あたりの全CH基含量に基づく。
【0142】
融点
融点Tは、ISO 3146にしたがうDSC測定により、まず20℃/分の加熱速度で200℃の温度まで加熱し、20℃/分の冷却速度で25℃の温度まで下げて動的結晶化を行い、20℃/分の加熱速度で再び200℃の温度まで第2の加熱を行うことによって測定した。融点は、第2の加熱で測定されたエンタルピー対温度の曲線が最大値を示す温度である。
【0143】
上記記載の文献の内容は参照として本明細書中に包含する。他に示さない限りにおいて、量及び比は、常に質量基準である。
【実施例】
【0144】
全ての合成及び重合は、アルゴン雰囲気下で行った。
実施例1
2,6−ビス[1−(2−クロロ−6−メチル−フェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄(II)クロリドの調製
【0145】
【化17】

【0146】
WO 98/27124の実施例2に記載のようにして2,6−ビス[1−(2−クロロ−6−メチル−フェニルイミノ)エチル]ピリジンを調製し、WO 98/27124の実施例8の方法にしたがって、塩化鉄(II)と反応させて2,6−ビス[1−(2−クロロ−6−メチル−フェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄(II)クロリドを得た。
【0147】
実施例2
担持複合触媒の調製
Sylopol 2107(Grace,Wormsからの噴霧乾燥シリカゲル)を、窒素流中、600℃で6時間加熱乾燥した。
【0148】
632mg(1.042ミリモル)の2,6−ビス[1−(2−クロロ−6−メチル−フェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄(II)クロリド、4.38g(8.903ミリモル)のビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド(Cromptonから)、及び188mLのMAO(メチルアルミノキサン;トルエン中4.75M;Cromptonから;895ミリモル)の混合物を、室温で30分間撹拌し、次に撹拌しながら147.9gの予め処理したシリカゲルに加え、混合物を室温で更に2時間撹拌した。(Fe+Hf):Alのモル比は1:90であった。得られた固体を、自由流動するまで減圧下で乾燥した。これによって、34重量%の溶媒を未だ含む310.4gの触媒固体が得られた。
【0149】
実施例3〜5
1Lのスチールオートクレーブ内での重合
実施例3
>1mmの粒径を有するポリエチレン粉末(篩画分;減圧下80℃で6時間加熱乾燥し、アルゴン下で保存)70gを、アルゴンを充填した1Lのスチールオートクレーブ内に配置した。150mgのイソプレニルアルミニウム(IPRA;100mg/mLのヘプタン中IPRA;Cromptonから)及び14mLのヘプタンを加えた。5分間撹拌した後、実施例2で調製した触媒固体150mgを加え、触媒貯留容器及びラインを2mLのヘプタンですすいだ。次に、オートクレーブを70℃に加熱し、10barの圧力に到達するまでアルゴンを導入し、次に20barの圧力に到達するまでエチレンを供給した。次に、供給されるモノマーを、エチレン及び気体状1−ヘキセンの混合物に変えた。この混合物の1−ヘキセン含量は20容量%であった。エチレン及び1−ヘキセンを計量することによって反応器内の内部圧力を20barに1時間保持した。次に、撹拌を停止し、エチレンの導入を停止し、反応器を減圧し、室温まで冷却した。ポリマーを反応器から取り出し、減圧下で乾燥し、篩過によって最初の充填物から分離した。63gのポリエチレンが得られた。
【0150】
重合の更なる結果を下表1に示す。
実施例4
実施例3の手順を繰り返したが、触媒固体の添加及びラインのすすぎの後に、マイクロシリンジを用いて20mgの水をヘプタンと一緒に反応器中に更に導入した。49gのポリエチレンが得られた。
【0151】
重合の更なる結果を下表1に示す。
実施例5
実施例3の手順を繰り返したが、圧力をアルゴンによって10barに上昇させた後であってエチレンを導入する前に、22mgのCOを反応器中に更に導入した。この目的のために、ロック(lock)に適当量の気体状COを充填し、COをエチレンによってオートクレーブ中に流入させた。36gのポリエチレンが得られた。
【0152】
重合の更なる結果を下表1に示す。
【0153】
【表1】

【0154】
実施例4と3とを比較すると、水によって粘度及びMの大きな増加、即ちより低分子量の成分の割合の選択的減少が導かれることが示される。低分子量成分中へのコモノマーの極めて低い導入量は、鉄触媒が同時に密度における劇的な減少を導くことによって可能になった。これは、密度はコモノマー含量と相関しているからである。
【0155】
他方、二酸化炭素を添加することは逆の効果を有する。粘度及びMは劇的に減少し、一方、密度は大きく増加する。これは、より高分子量の成分の活性が選択的に低下するためである。
【0156】
いずれの場合においても、用いられる変性剤の量は、それぞれの変性剤に対して感受性を有する触媒成分を極めて強く失活させるが、全生産性に対しては比較的小さな影響しかない。これは、本発明にしたがって用いられる変性剤の高い選択性を強める。これは、非常に低い濃度を通常は用いるためである。
【0157】
実施例6及び7
連続気相重合
連続的に運転する気相流動床反応器内において、50容量%のエチレン、0.3容量%のヘキセン、及び5容量%のヘキサンのガス組成において、20barの反応器圧力、及び100℃の反応器温度で、実施例2で調製した触媒固体を用いて、エチレン−ヘキセンコポリマーを製造した。不活性ガスとして窒素を用いた(44容量%)。更に、0.1g/時のトリイソブチルアルミニウム、及びヘキサン中の溶液として、排出されるポリマーの量(産出量)を基準として6ppmのCostelan AS100(H.Costenoble GmbH & Co.KG,Eschborn)を計量した。触媒固体に関する計量速度は、実施例6においては4.0g/時、実施例7においては2.9g/時であった。実施例7においては、産出量を基準として10モルppmの水を気体形態で更に導入した。この添加は、100ppmの水含量を有する湿潤窒素を導入することによって行った。
【0158】
実施例6及び7の結果を下表2に示す。
【0159】
【表2】

【0160】
実施例6と7とを比較すると、全ポリマーの割合としてのより低分子量のコモノマーを含まないポリマー成分の相対量が水を加えた結果減少したことを示す。これは、より高いM及びより高い固有粘度、並びにより低いMFR及び密度によって全ポリマー特性において示される。更に、表2から、本方法によって割合の微調節がパーセントの範囲で可能となることがわかる。したがって、本方法は、実施例4及び5から明らかなようにポリマーの成分の質量割合における大きな変化に選択的に影響を与えるのに好適であることが示されるばかりでなく、連続プロセスにおける成分の比の微調節を可能にすることも示される。複合触媒を用いた場合に本発明方法によって、上述した特性を有する生成物を製造することができ、且つ極めて狭い限界内に調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1】図1は、複合触媒を用いて製造したポリマーの典型的なモル質量分布を図式的に示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合触媒の存在下、全反応混合物を基準として2〜100モルppmの量の水及び/又は2〜100モルppmの量の二酸化炭素の存在下で、少なくとも一種のα−オレフィンを重合して、少なくともより高分子量のポリマー成分及びより低分子量のポリマー成分を含むポリマーを製造することを含む、オレフィンポリマーの製造方法。
【請求項2】
50〜130℃の温度及び0.1〜150MPaの圧力において、複合触媒の存在下で少なくとも一種のα−オレフィンを重合することを含み、より高分子量のポリマー成分の割合を減少させるために二酸化炭素を全反応混合物を基準として2〜100モルppmの量で用い、及び/又は、より低分子量のポリマー成分の割合を減少させるために水を全反応混合物を基準として2〜100モルppmの量で用いる、オレフィンポリマーにおけるより低分子量のポリマー成分に対するより高分子量のポリマー成分の比を制御する方法。
【請求項3】
より高分子量のポリマー成分及びより低分子量のポリマー成分のコモノマー含量が少なくとも30%異なる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
複合触媒が、鉄又はコバルトを含む遷移金属配位化合物を含む触媒成分を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
遷移金属配位化合物が、一般式(V):
【化1】

(式中、
原子E2Dは、それぞれ、互いに独立して、炭素、窒素又はリン、特に炭素であり;
20D及びR24Dは、それぞれ、互いに独立して、水素、C〜C20アルキル、5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C〜C22アルケニル、C〜C40アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、−NR26D又は−SiR26Dであり、ここで、有機基R20D及びR24Dは、また、ハロゲンによって置換されていてもよく;
21D〜R23Dは、それぞれ、互いに独立して、水素、C〜C20アルキル、5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C〜C22アルケニル、C〜C22アルケニル、C〜C40アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、ハロゲン、−NR26D又は−SiR26Dであり、ここで、有機基R21D〜R23Dは、また、ハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの隣接する基R21D〜R23Dは、また、結合して5、6、又は7員環を形成してもよく、及び/又は、二つの隣接する基R21D〜R23Dは、結合して、N、P、O及びSからなる群からの少なくとも一つの原子を有する5、6、又は7員の複素環を形成し;
uは、E2Dが窒素又はリンの場合には0であり、E2Dが炭素の場合には1であり;
27D〜R30Dは、それぞれ、互いに独立して、C〜C20アルキル、5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C〜C22アルケニル、C〜C40アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、ハロゲン、−NR26D、−OR26D、又は−SiR26Dであり、ここで、有機基R27D〜R30Dは、また、ハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの隣接する基R27D〜R30Dは、また、結合して5、6、又は7員環を形成してもよく、及び/又は、二つの隣接する基R27D〜R30Dは、結合して、N、P、O及びSからなる群からの少なくとも一つの原子を有する5、6、又は7員の複素環を形成し;
31D〜R36Dは、それぞれ、互いに独立して、水素、C〜C20アルキル、5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C〜C22アルケニル、C〜C40アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、ハロゲン、−NR26D、−OR26D、又は−SiR26Dであり、ここで、有機基R31D〜R36Dは、また、ハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は、二つの隣接する基R31D〜R36Dは、また、結合して5、6、又は7員環を形成してもよく、及び/又は、二つの隣接する基R31D〜R36Dは、結合して、N、P、O及びSからなる群からの少なくとも一つの原子を有する5、6、又は7員の複素環を形成し;
指数vは、それぞれ、互いに独立して、0又は1であり;
基Xは、それぞれ、互いに独立して、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、水素、C〜C10アルキル、C〜C10アルケニル、C〜C40アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、−NR26D、−OR26D、−SR26D、−SO26D、−O−C(O)−R26D、−CN、−SCN、β−ジケトネート、CO、BF、PF、又は嵩高な非配位アニオンであり、基Xは、適当な場合には、互いに結合してもよく;
基R26Dは、それぞれ、互いに独立して、水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリールであり、ここで、有機基R26Dは、また、ハロゲン又は窒素及び酸素含有基によって置換されていてもよく、二つの基R26Dは、また、結合して、5又は6員環を形成してもよく;
sは、1、2、3、又は4、特に2又は3であり;
Dは、非荷電のドナーであり;
tは、0〜4、特に0、1、又は2である)
を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
複合触媒が、シクロペンタジエニルリガンドを含む触媒成分を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
触媒成分が、遷移金属として、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、クロム、又はバナジウムを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
触媒成分がハフニウム又はクロムを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
遷移金属化合物を、重合において担持形態で又は固体として用いる、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
より低分子量のポリマーフラクションに対するより高分子量のポリマーフラクションの比が、5〜95重量%、特に10〜90重量%である、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
重合を気相中又は懸濁液中で行う、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
ポリマー生成物におけるより低分子量のポリマー成分に対するより高分子量のポリマー成分の比を測定し;
測定された比が所定の比よりも大きな場合には所定の比を達成するのに必要な二酸化炭素の量を算出するか、又は、測定された比が所定の比よりも小さな場合には所定の比を達成するのに必要な水の量を算出し;
算出された量の水又は二酸化炭素を反応混合物中に導入する;
ことを含む、請求項2〜11のいずれかに記載の制御法を用いてオレフィンポリマーにおけるより低分子量のポリマー成分に対するより高分子量のポリマー成分の比を調節する方法。
【請求項13】
より低分子量のポリマー成分に対するより高分子量のポリマー成分の比の測定をNMR分光法によって行う、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
鉄又はコバルトをベースとする触媒成分及びシクロペンタジエニルリガンドを含む触媒成分を含む複合触媒の存在下での少なくとも一種のα−オレフィンの重合中において、オレフィンポリマーにおけるより低分子量の成分に対するより高分子量の成分の比を減少させるための二酸化炭素の使用。
【請求項15】
鉄又はコバルトをベースとする触媒成分及びシクロペンタジエニルリガンドを含む触媒成分を含む複合触媒の存在下での少なくとも一種のα−オレフィンの重合中において、オレフィンポリマーにおけるより低分子量の成分に対するより高分子量の成分の比を増加させるための水の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2009−503158(P2009−503158A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−523174(P2008−523174)
【出願日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際出願番号】PCT/EP2006/006857
【国際公開番号】WO2007/012406
【国際公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(500289758)バーゼル・ポリオレフィン・ゲーエムベーハー (118)
【Fターム(参考)】