説明

複合誘電セラミックス含有重合性組成物、樹脂成形体、積層体、及び誘電体デバイス

【課題】高誘電率かつ低誘電正接であり、誘電率の温度変化率が小さく、しかも機械的強度、耐熱性、及び冷熱衝撃試験での耐クラック性に優れた積層体の製造に有用な、重合性組成物及び樹脂成形体、並びに該積層体、さらには該積層体を用いてなる誘電体デバイスを提供すること。
【解決手段】シクロオレフィンモノマー、重合触媒、架橋剤、架橋助剤、および一般式(M、Li、RE)xTiO(式中、Mは、Ba、SrおよびCaからなる群より選択される少なくとも1種であり、REは、La、Ce、Pr、Nd、Sm、YbおよびDyからなる群より選択される少なくとも1種であり、xは、0.9≦x≦1.05を満たす。)で示される複合誘電セラミックスを含有してなる重合性組成物、前記重合性組成物を重合してなる樹脂成形体、前記樹脂成形体と、当該樹脂成形体及び/又は他の基体材料とを積層し、次いで硬化してなる積層体、並びに前記積層体を用いてなる誘電体デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合性組成物、樹脂成形体、積層体、及び誘電体デバイスに関する。さらに詳しくは、高誘電率かつ低誘電正接であり、誘電率の温度変化率が小さく、しかも機械的強度、耐熱性、及び冷熱衝撃試験での耐クラック性に優れた積層体の製造に有用な、重合性組成物及び樹脂成形体、該積層体、並びに該積層体を用いてなる誘電体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
高誘電率と低誘電正接とを有する新材料は、エレクトロニクス産業において、高周波デバイスの製造や、デバイスのさらなる小型化に必要とされている。かかる新材料を、薄膜、シート、プラーク及び他の成形形状にできれば、マイクロ波の周波数での使用に対応した回路基板、高エネルギー密度キャパシタ、誘電体フィルタ、誘電体アンテナ、埋設デバイス及びマルチチップモジュール等の誘電体デバイスに使用できるため、特に有用である。そのような新材料には、例えば、無線通信技術において様々な用途がある。しかしながら、多くのセラミック材料は、望ましい高比誘電率と低誘電正接とを有するが、容易に薄膜にはできない。また、フィルムやその他の成形品に製造したセラミック材料は一般に脆いという問題がある。
【0003】
そこで、近年提案されている一つの試みは、高い誘電率を有するセラミックフィラーとポリマーマトリックスを含む高分子複合材料(コンポジット)を使用することであるが、誘電体デバイスとして機能させるためには、誘電率の温度変化率の低減が課題となる。
【0004】
例えば、特許文献1には、誘電体セラミックスと有機高分子材料とを含有する複合誘電体材料であって、誘電体セラミックスとして、一般式(M、Li、RE)xTiO(ただし、MはBa、Sr、Caから選択される少なくとも1種を表し、REはLa、Ce、Pr、Nd、Sm、Yb、Dyから選択される少なくとも1種を表す。また、0.9≦x≦1.05である。)で表される組成を有する酸化物粉末を含有することを特徴とする複合誘電体材料が開示されている。有機高分子材料としては、ポリビニルベンジルエーテル系の熱硬化性樹脂が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−331675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の高分子複合材料は、それを用いてなる成形体において高誘電率、低誘電正接及び誘電率の温度変化率が小さい等の誘電特性をある程度実現可能であるが、高分子材料に多量の誘電体セラミックスを均一に分散するのが難しく、流動性に劣り、ガラスクロス等の強化繊維に含浸させた状態で用いることが困難であり、得られる成形体は、機械的強度、耐熱性及び冷熱衝撃試験での耐クラック性等の信頼性に劣るなどの問題があることが、本発明者らの検討により明らかとなった。
本発明の目的は、高誘電率かつ低誘電正接であり、誘電率の温度変化率が小さく、しかも機械的強度、耐熱性、及び冷熱衝撃試験での耐クラック性に優れた積層体の製造に有用な、重合性組成物及び樹脂成形体、並びに該積層体、さらには該積層体を用いてなる誘電体デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討の結果、シクロオレフィンモノマー、重合触媒、架橋剤、架橋助剤及び充填剤を含む重合性組成物において、充填剤として特許文献1に記載の複合誘電セラミックスを配合すると、比較的多量に配合しても均一に分散でき、得られる重合性組成物によれば容易にフィルムやプリプレグ等の樹脂成形体を製造でき、さらに、該樹脂成形体によれば、誘電特性、機械的強度、耐熱性及び冷熱衝撃試験での耐クラック性のいずれの特性にも優れた積層体が得られることを見出した。本発明者らは、かかる知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明によれば、
〔1〕シクロオレフィンモノマー、重合触媒、架橋剤、架橋助剤、および一般式(M、Li、RE)xTiO(式中、Mは、Ba、SrおよびCaからなる群より選択される少なくとも1種であり、REは、La、Ce、Pr、Nd、Sm、YbおよびDyからなる群より選択される少なくとも1種であり、xは、0.9≦x≦1.05を満たす。)で示される複合誘電セラミックスを含有してなる重合性組成物、
〔2〕連鎖移動剤をさらに含むものである前記〔1〕記載の重合性組成物、
〔3〕前記〔1〕又は〔2〕に記載の重合性組成物を重合してなる樹脂成形体、
〔4〕前記〔1〕に記載の重合性組成物を支持体上に塗布し、次いで重合してなる樹脂成形体、
〔5〕前記〔1〕に記載の重合性組成物を成形型の空間部に注入し、次いで重合してなる樹脂成形体、
〔6〕前記〔1〕に記載の重合性組成物を強化繊維に含浸させ、次いで重合してなる樹脂成形体、
〔7〕前記〔3〕〜〔6〕のいずれかに記載の樹脂成形体と、当該樹脂成形体及び/又は他の基体材料とを積層し、次いで硬化してなる積層体、
〔8〕誘電率の温度変化率(TCK)が300ppm/℃以下である前記〔7〕記載の積層体、並びに
〔9〕前記〔7〕又は〔8〕に記載の積層体を用いてなる誘電体デバイス、
が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高誘電率かつ低誘電正接であり、誘電率の温度変化率が小さく、しかも機械的強度、耐熱性、及び冷熱衝撃試験での耐クラック性に優れた積層体の製造に有用な、重合性組成物及び樹脂成形体、並びに該積層体、さらには該積層体を用いてなる誘電体デバイスが提供される。本発明の積層体は、前記の通りの特性を有することから、マイクロ波の周波数での使用に対応した回路基板、高エネルギー密度キャパシタ、誘電体フィルタ、誘電体アンテナ、埋設デバイス及びマルチチップモジュール等の誘電体デバイスに好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(シクロオレフィンモノマー)
本発明に使用されるシクロオレフィンモノマーは、炭素原子で形成される環構造を有し、かつ該環構造中に重合性の炭素−炭素二重結合を1つ有する化合物である。本明細書において「重合性の炭素−炭素二重結合」とは、連鎖重合(開環重合)可能な炭素−炭素二重結合をいう。開環重合には、イオン重合、ラジカル重合、メタセシス重合など種々の形態のものが存在するが、本発明においては、通常、メタセス開環重合をいう。
【0011】
シクロオレフィンモノマーの環構造としては、単環、多環、縮合多環、橋かけ環及びこれらの組み合わせ多環などが挙げられる。各環構造を構成する炭素数に特に限定はないが、通常、4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個である。また、環の数も特に限定はないが、好ましくは3〜6、より好ましくは3又は4である。
シクロオレフィンモノマーは、アルキル基、アルケニル基、アルキリデン基、アリール基などの炭素数1〜30の炭化水素基や、カルボキシル基又は酸無水物基などの極性基を置換基として有していてもよいが、得られる積層体を低誘電正接とする観点から、極性基を持たない、すなわち、炭素原子と水素原子のみで構成されるものが好ましい。
【0012】
シクロオレフィンモノマーとしては、単環のシクロオレフィンモノマーと多環のシクロオレフィンモノマーのいずれをも用いることができる。得られる積層体において、誘電特性、機械的強度及び耐熱性の特性を高度にバランスさせる観点から、多環のシクロオレフィンモノマーが好ましい。多環のシクロオレフィンモノマーとしては、特にノルボルネン系モノマーが好ましい。「ノルボルネン系モノマー」とは、ノルボルネン環構造を分子内に有するシクロオレフィンモノマーをいう。例えば、ノルボルネン類、ジシクロペンタジエン類、テトラシクロドデセン類などが挙げられる。
【0013】
本発明に使用するシクロオレフィンモノマーを、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を持たないものと、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1以上有するものとに分けて以下に例示する。なお、本明細書において「架橋性の炭素−炭素不飽和結合」とは、開環重合には関与せず、架橋反応に関与可能な炭素−炭素不飽和結合をいう。架橋反応とは橋架け構造を形成する反応であり、縮合反応、付加反応、ラジカル反応、メタセシス反応など種々の形態のものが存在するが、本発明においては、通常、ラジカル架橋反応又はメタセシス架橋反応、特にラジカル架橋反応をいう。架橋性の炭素−炭素不飽和結合としては、芳香族炭素−炭素不飽和結合を除く炭素−炭素不飽和結合、すなわち、脂肪族炭素−炭素二重結合又は三重結合が挙げられ、本発明においては、通常、脂肪族炭素−炭素二重結合をいう。架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1以上有するシクロオレフィンモノマー中、不飽和結合の位置は特に限定されるものではなく、炭素原子で形成される環構造内の他、該環構造以外の任意の位置、例えば、側鎖の末端や内部に存在していてもよい。
【0014】
架橋性の炭素−炭素不飽和結合を持たないシクロオレフィンモノマーとしては、例えば、シクロペンテン、3−メチルシクロペンテン、4−メチルシクロペンテン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3,5−ジメチルシクロペンテン、3−クロロシクロペンテン、シクロへキセン、3−メチルシクロへキセン、4−メチルシクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロヘキセン、3−クロロシクロヘキセン、シクロへプテンなどの単環シクロオレフィンモノマー;ノルボルネン、5−メチルノルボルネン、5−エチルノルボルネン、5−プロピルノルボルネン、5,6−ジメチルノルボルネン、1−メチルノルボルネン、7−メチルノルボルネン、5,5,6−トリメチルノルボルネン、5−フェニルノルボルネン、1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−メチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−エチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2,3−ジメチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−ヘキシル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−エチリデン−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−フルオロ−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、1,5−ジメチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−シクロへキシル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2,3−ジクロロ−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−イソブチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、1,2−ジヒドロジシクロペンタジエン、5−クロロノルボルネン、5,5−ジクロロノルボルネン、5−フルオロノルボルネン、5,5,6−トリフルオロ−6−トリフルオロメチルノルボルネン、5−クロロメチルノルボルネン、5−メトキシノルボルネン、5,6−ジカルボキシルノルボルネンアンハイドレート、5−ジメチルアミノノルボルネン、5−シアノノルボルネンなどのノルボルネン系モノマー;を挙げることができ、好ましくは架橋性の炭素−炭素不飽和結合を持たないノルボルネン系モノマーである。
【0015】
架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1以上有するシクロオレフィンモノマーとしては、例えば、3−ビニルシクロヘキセン、4−ビニルシクロヘキセン、1,3−シクロペンタジエン、1,3−シクロへキサジエン、1,4−シクロへキサジエン、5−エチル−1,3−シクロへキサジエン、1,3−シクロへプタジエン、1,3−シクロオクタジエンなどの単環シクロオレフィンモノマー;5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチリデン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−ベンジルノルボルネン、5−エチリデンノルボルネン、5−ビニルノルボルネン、5−アリルノルボルネン、5,6−ジエチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、ジメチルシクロペンタジエン、2,5−ノルボルナジエンなどのノルボルネン系モノマー;を挙げることができ、好ましくは架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1以上有するノルボルネン系モノマーである。
これらのシクロオレフィンモノマーは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
本発明に使用されるシクロオレフィンモノマーとしては、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1以上有するシクロオレフィンモノマーを含むものが、得られる積層体において耐クラック性等の信頼性が向上し、好適である。
本発明の重合性組成物に配合するシクロオレフィンモノマー中、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1以上有するシクロオレフィンモノマーと架橋性の炭素−炭素不飽和結合を持たないシクロオレフィンモノマーとの配合割合は所望により適宜選択すればよいが、重量比(架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1以上有するシクロオレフィンモノマー/架橋性の炭素−炭素不飽和結合を持たないシクロオレフィンモノマー)で、通常、5/95〜100/0、好ましくは10/90〜90/10、より好ましくは15/85〜70/30の範囲である。当該配合割合がかかる範囲にあれば、得られる積層体において機械的強度、耐熱性及び冷熱衝撃試験での耐クラック性等の特性を高度に向上させることができ、好適である。
【0017】
(重合触媒)
本発明に使用される重合触媒としては、前記シクロオレフィンモノマーを重合できるものであれば特に限定はないが、本発明の重合性組成物は、後述の樹脂成形体の製造において、直接塊状重合に供して用いるのが好適であり、通常、メタセシス重合触媒を用いるのが好ましい。
【0018】
メタセシス重合触媒としては、前記シクロオレフィンモノマーをメタセシス開環重合可能である、通常、遷移金属原子を中心原子として、複数のイオン、原子、多原子イオン、及び化合物などが結合してなる錯体が挙げられる。遷移金属原子としては、第5族、第6族及び第8族(長周期型周期表による。以下、同じ。)の原子が使用される。それぞれの族の原子は特に限定されないが、第5族の原子としては、例えば、タンタルが挙げられ、第6族の原子としては、例えば、モリブデンやタングステンが挙げられ、第8族の原子としては、例えば、ルテニウムやオスミウムが挙げられる。遷移金属原子としては中でも、第8族のルテニウムやオスミウムが好ましい。すなわち、本発明に使用されるメタセシス重合触媒としては、ルテニウム又はオスミウムを中心原子とする錯体が好ましく、ルテニウムを中心原子とする錯体がより好ましい。ルテニウムを中心原子とする錯体としては、カルベン化合物がルテニウムに配位してなるルテニウムカルベン錯体が好ましい。ここで、「カルベン化合物」とは、メチレン遊離基を有する化合物の総称であり、(>C:)で表されるような電荷のない2価の炭素原子(カルベン炭素)を持つ化合物をいう。ルテニウムカルベン錯体は、塊状重合時の触媒活性に優れるため、本発明の重合性組成物を塊状重合に供して樹脂成形体を得る場合、得られる樹脂成形体には未反応のモノマーに由来する臭気が実質的になく、生産性良く良質な樹脂成形体が得られる。また、酸素や空気中の水分に対して比較的安定であって、失活しにくいので、大気下でも使用可能である。
【0019】
前記ルテニウムカルベン錯体としては、得られる樹脂成形体及び積層体の機械的強度と耐衝撃性とが高度にバランスされ得ることから、ヘテロ環構造を有するカルベン化合物を配位子として少なくとも1つ有するものが好ましい。ヘテロ環構造を構成するヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子等が挙げられ、好ましくは窒素原子である。また、ヘテロ環構造としては、イミダゾリン環構造又はイミダゾリジン環構造が好ましい。かかるヘテロ環構造を有する化合物の具体例としては、1,3−ジ(1−アダマンチル)イミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジメシチルオクタヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン、1,3−ジ(1−フェニルエチル)−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3,4−トリフェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデン、1,3−ジシクロヘキシルヘキサヒドロピリミジン−2−イリデン、N,N,N’,N’−テトライソプロピルホルムアミジニリデン、1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジメシチル−2,3−ジヒドロベンズイミダゾール−2−イリデンなどが挙げられる。
【0020】
本発明においてメタセシス重合触媒として使用される、好適なルテニウムカルベン錯体の具体例としては、ベンジリデン(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(3−メチル−2−ブテン−1−イリデン)(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−オクタヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン[1,3−ジ(1−フェニルエチル)−4−イミダゾリン−2−イリデン](トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−2,3−ジヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(トリシクロヘキシルホスフィン)(1,3,4−トリフェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジイソプロピルヘキサヒドロピリミジン−2−イリデン)(エトキシメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)ピリジンルテニウムジクロリドなどの、配位子として、ヘテロ環構造を有するカルベン化合物と、その他の中性電子供与体とを有するルテニウムカルベン錯体が挙げられる。ここで「中性電子供与体」とは、中心金属原子から引き離されたときに中性の電荷を持つ配位子をいう。
【0021】
前記メタセシス重合触媒は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。メタセシス重合触媒の使用量は、モル比(メタセシス重合触媒中の金属原子:シクロオレフィンモノマー)で、通常、1:2,000〜1:2,000,000、好ましくは1:5,000〜1:1,000,000、より好ましくは1:10,000〜1:500,000の範囲である。
【0022】
メタセシス重合触媒は所望により、少量の不活性溶媒に溶解又は懸濁して使用することができる。かかる溶媒としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、流動パラフィン、ミネラルスピリットなどの鎖状脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ジシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデン、シクロオクタンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;インデン、テトラヒドロナフタレンなどの脂環と芳香環とを有する炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリルなどの含窒素炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどの含酸素炭化水素;などが挙げられる。これらの中では、鎖状脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、及び脂環と芳香環とを有する炭化水素の使用が好ましい。
【0023】
(架橋剤)
本発明で使用される架橋剤は、本発明の重合性組成物を重合反応に供して得られる重合体において架橋反応を誘起する目的で使用される。従って、該重合体は、後架橋可能な熱可塑性樹脂となる。本発明において架橋剤としては、通常、ラジカル発生剤が好適に用いられる。ラジカル発生剤としては、例えば、有機過酸化物、ジアゾ化合物、及び非極性ラジカル発生剤などが挙げられ、好ましくは有機過酸化物、及び非極性ラジカル発生剤である。
【0024】
有機過酸化物としては、例えば、t−ブチルヒドロペルオキシド、p−メンタンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシド類;ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサンなどのジアルキルペルオキシド類;ジプロピオニルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシドなどのジアシルペルオキシド類;2,2−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブタン、1,1−ジ(t−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサンなどのペルオキシケタール類;t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシベンゾエートなどのペルオキシエステル類;t−ブチルペルオキシイソプロピルカルボナート、ジ(イソプロピルペルオキシ)ジカルボナートなどのペルオキシカルボナート類;t−ブチルトリメチルシリルペルオキシドなどのアルキルシリルペルオキシド類;3,3,5,7,7−ペンタメチル−1,2,4−トリオキセパン、3,6,9−トリエチル−3,6,9−トリメチル−1,4,7−トリパーオキソナン、3,6−ジエチル−3,6−ジメチル−1,2,4,5−テトロキサンなどの環状パーオキサイド類;が挙げられる。中でも、重合反応に対する障害が少ない点で、ジアルキルペルオキシド類、ペルオキシケタール類、及び環状パーオキサイド類が好ましい。
【0025】
ジアゾ化合物としては、例えば、4,4’−ビスアジドベンザル(4−メチル)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4’−アジドベンザル)シクロヘキサノンなどが挙げられる。
【0026】
非極性ラジカル発生剤としては、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、3,4−ジメチル−3,4−ジフェニルヘキサン、1,1,2−トリフェニルエタン、1,1,1−トリフェニル−2−フェニルエタンなどが挙げられる。
【0027】
ラジカル発生剤を架橋剤として使用する場合、1分間半減期温度は、硬化(本発明の重合性組成物を重合反応に供して得られる重合体の架橋)の条件により適宜選択されるが、通常、100〜300℃、好ましくは150〜250℃、より好ましくは160〜230℃の範囲である。本明細書において1分間半減期温度とは、ラジカル発生剤の半量が1分間で分解する温度である。ラジカル発生剤の1分間半減期温度は、例えば、各ラジカル発生剤メーカー(例えば、日本油脂株式会社)のカタログやホームページを参照すればよい。
【0028】
前記ラジカル発生剤は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明の重合性組成物へのラジカル発生剤の配合量としては、シクロオレフィンモノマー100重量部に対して、通常、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.5〜5重量部の範囲である。
【0029】
(架橋助剤)
本発明に使用される架橋助剤は、得られる積層体の機械的強度を向上する目的で使用される。架橋助剤としては、特に限定されるものではないが、通常、開環重合に関与せず、架橋剤により誘起される架橋反応に関与可能な架橋性の炭素−炭素不飽和結合を2以上有する多官能性化合物が好適に用いられる。かかる架橋性の炭素−炭素不飽和結合は、架橋助剤を構成する化合物中、例えば、末端ビニリデン基として、特に、イソプロペニル基やメタクリル基として存在するのが好ましく、メタクリル基として存在するのがより好ましい。
【0030】
架橋助剤の具体例としては、p−ジイソプロペニルベンゼン、m−ジイソプロペニルベンゼン、o−ジイソプロペニルベンゼンなどの、イソプロペニル基を2以上有する多官能性化合物;エチレンジメタクリレート、1,3−ブチレンジメタクリレート、1,4−ブチレンジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、2,2’−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、トリメチロ−ルプロパントリメタクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレートなどの、メタクリル基を2以上有する多官能性化合物などを挙げることができる。中でも、架橋助剤としては、メタクリル基を2以上有する多官能性化合物が好ましい。メタクリル基を2以上有する多官能性化合物の中では、特に、トリメチロ−ルプロパントリメタクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレートなどの、メタクリル基を3つ有する多官能性化合物がより好適である。
【0031】
前記架橋助剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明の重合性組成物への架橋助剤の配合量としては、シクロオレフィンモノマー100重量部に対して、通常、0.1〜100重量部、好ましくは0.5〜50重量部、より好ましくは1〜30重量部である。
【0032】
(複合誘電セラミックス)
本発明においては、一般式(M、Li、RE)xTiO(式中、Mは、Ba、SrおよびCaからなる群より選択される少なくとも1種であり、REは、La、Ce、Pr、Nd、Sm、YbおよびDyからなる群より選択される少なくとも1種であり、xは、0.9≦x≦1.05を満たす。)で示される複合誘電セラミックスが用いられる。本発明の重合性組成物に、かかる複合誘電セラミックスを配合することで、得られる積層体は、高誘電率かつ低誘電正接であり、誘電率の温度変化率が小さいという優れた誘電特性を発現するようになる。また、本発明の重合性組成物は、従来、樹脂成形体や積層体の製造に用いられているエポキシ樹脂等の重合体ワニスと比べて低粘度であるため、容易に複合誘電セラミックスを高配合することができる。よって、得られる樹脂成形体又は積層体中には、粒状セラミックスが、従来の樹脂成形体又は積層体の限界含有量を超えて含まれ得る。従って、本発明の積層体の前記誘電特性は、従来の積層体と比べて、格別顕著に優れたものとなる。
【0033】
本発明における複合誘電セラミックスは前記特許文献1に記載されている誘電体セラミックスと同じものである。従って、複合誘電セラミックスとしては、特許文献1に記載のものを特に限定なく用いることができる。
【0034】
本発明に使用する複合誘電セラミックスは、前記一般式で示される酸化物粉末であり、BaTiO、SrTiO、CaTiO、及びLi1/2RE1/2TiO(REは、前記と同じである。)等のチタン酸塩を所定の割合で固溶させたペロブスカイト型構造を持つ。該複合誘電セラミックスの基本組成は、通常、aBaTiO−bSrTiO−cCaTiO−dLi1/2RE1/2TiO−eLi1/2Nd1/2TiO(式中、REはLa、Ce及びPrからなる群から選択される少なくとも1種であり、a〜eは各成分の配合比率(モル%)を表す。)で表される。得られる積層体の誘電率を増大させ、かつ誘電率の温度変化率を小さくする観点から、複合誘電セラミックスの基本組成を表す前記式において、各成分の配合比率は、0≦a≦3、0≦b≦30、5≦c≦35、0≦d≦20、55≦e≦80、かつa+b+c+d+e=100を満たすのが好ましく、0≦a≦3、2≦b≦17、7≦c≦17、4≦d≦10、65≦e≦76、かつa+b+c+d+e=100を満たすのがより好ましい。また、配合比率dとeは、d:e=1:2〜1:10を満たすのが好ましい。かかる複合誘電セラミックスは、前記特許文献1に記載の方法に従って適宜製造することができる。
【0035】
以上の複合誘電セラミックスは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。その配合量は、所望により適宜選択すればよいが、シクロオレフィンモノマー100重量部に対して、通常、10〜500重量部、好ましくは20〜350重量部、より好ましくは30〜250重量部の範囲である。
本発明の重合性組成物には、前記複合誘電セラミックス以外の誘電セラミックスをさらに配合することができる。かかる誘電セラミックスとしては、例えば、CaTiO、SrTiO、及びBaTiOなどを挙げることができる。その配合量は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択される。
【0036】
(重合性組成物)
本発明の重合性組成物には、上記する、シクロオレフィンモノマー、重合触媒、架橋剤、架橋助剤、及び複合誘電セラミックスを必須成分として、所望により、非ハロゲン難燃剤、重合調整剤、重合反応遅延剤、連鎖移動剤、老化防止剤及びその他の配合剤を添加することができる。
【0037】
本発明においては、樹脂成形体や積層体が民生用途の場合は、重合性組成物に、ハロゲン原子を含まない難燃剤である非ハロゲン難燃剤を配合することが好ましい。非ハロゲン難燃剤としては、工業的に用いられるものであれば格別な限定なく用いることができる。例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物難燃剤;酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等の金属酸化物難燃剤;ジメチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウムなどのホスフィン酸塩;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニル)ホスフェート、ビスフェノールAビス(ジフェニル)ホスフェート、ビスフェノールAビス(ジクレジル)ホスフェートなどの、ホスフィン酸塩以外の含燐難燃剤;メラミン誘導体類、グアニジン類、イソシアヌル類等の含窒素難燃剤;ポリ燐酸アンモニウム、燐酸メラミン、ポリ燐酸メラミン、ポリ燐酸メラム、燐酸グアニジン、フォスファゼン類等の、燐及び窒素の双方を含有する難燃剤;などを挙げることができる。
これらの非ハロゲン難燃剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。非ハロゲン難燃剤の配合量は、本発明の効果を損ねない範囲で適宜選択されるが、シクロオレフィンモノマー100重量部に対して、通常、20〜400重量部、好ましくは30〜300部、より好ましくは50〜250重量部の範囲である。
【0038】
重合調整剤は、重合活性を制御したり、重合反応率を向上させたりする目的で配合されるものであり、例えば、トリアルコキシアルミニウム、トリフェノキシアルミニウム、ジアルコキシアルキルアルミニウム、アルコキシジアルキルアルミニウム、トリアルキルアルミニウム、ジアルコキシアルミニウムクロリド、アルコキシアルキルアルミニウムクロリド、ジアルキルアルミニウムクロリド、トリアルコキシスカンジウム、テトラアルコキシチタン、テトラアルコキシスズ、テトラアルコキシジルコニウムなどが挙げられる。これらの重合調整剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。重合調整剤の配合量は、例えば、モル比(メタセシス重合触媒中の金属原子:重合調整剤)で、通常、1:0.05〜1:100、好ましくは1:0.2〜1:20、より好ましくは1:0.5〜1:10の範囲である。
【0039】
重合反応遅延剤は、本発明の重合性組成物の粘度増加を抑制し得るものである。従って、重合反応遅延剤を配合してなる重合性組成物は、例えば、樹脂成形体としてプリプレグを作製する際、容易に強化繊維に均一に含浸させることができ、好ましい。重合反応遅延剤としては、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、ジシクロヘキシルホスフィン、ビニルジフェニルホスフィン、アリルジフェニルホスフィン、トリアリルホスフィン、スチリルジフェニルホスフィンなどのホスフィン化合物;アニリン、ピリジンなどのルイス塩基;等を用いることができる。その配合量は、所望により適宜調整すればよい。
【0040】
本発明においては、連鎖移動剤を配合することにより、得られる重合体を高粘度でありながら、流動性に優れたものとすることができ、当該重合体を含んでなる後述の樹脂成形体は、例えば、他の基体材料と積層する際、溶融積層が可能となる。それゆえ、連鎖移動剤を含有してなる重合性組成物は、特にプリプレグの製造に好適に用いられる。また、得られる積層体においては、配線埋め込み性、機械的強度、耐熱性及び冷熱衝撃試験での耐クラック性が高度にバランスされ、好適である。
連鎖移動剤は、開環重合に関与でき、本発明の重合性組成物を重合反応に供して得られる重合体の末端に結合可能な脂肪族炭素−炭素二重結合を1つ有する化合物である。当該二重結合の例としては、末端ビニル基が挙げられる。連鎖移動剤は、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1以上有していてもよい。
【0041】
かかる連鎖移動剤の具体例としては、1−ヘキセン、2−ヘキセン、スチレン、ビニルシクロヘキサン、アリルアミン、アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、エチルビニルエーテル、メチルビニルケトン、2−(ジエチルアミノ)エチルアクリレート、4−ビニルアニリンなどの、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を持たない連鎖移動剤;ジビニルベンゼン、メタクリル酸ビニル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸スチリル、アクリル酸アリル、メタクリル酸ウンデセニル、アクリル酸スチリル、エチレングリコールジアクリレートなどの、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1つ有する連鎖移動剤;アリルトリビニルシラン、アリルメチルジビニルシランなどの、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を2以上有する連鎖移動剤などが挙げられる。これらの中でも、得られる積層体において、誘電特性、配線埋め込み性、耐熱性、及び耐クラック性の各特性を高度にバランスさせる観点から、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1以上有するものが好ましく、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1つ有するものがより好ましい。かかる連鎖移動剤の中でも、ビニル基とメタクリル基とを1つずつ有する連鎖移動剤が好ましく、メタクリル酸ビニル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸スチリル、メタクリル酸ウンデセニルなどが特に好ましい。
これらの連鎖移動剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。連鎖移動剤の配合量としては、シクロオレフィンモノマー100重量部に対して、通常、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部である。
【0042】
また、老化防止剤として、フェノール系老化防止剤、アミン系老化防止剤、リン系老化防止剤及びイオウ系老化防止剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の老化防止剤を配合することは、架橋反応を阻害しないで、得られる積層体の耐熱性を高度に向上させることができ、好適である。これらの中でも、フェノール系老化防止剤とアミン系老化防止剤が好ましく、フェノール系老化防止剤がより好ましい。これらの老化防止剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。老化防止剤の使用量は、所望により適宜選択されるが、シクロオレフィンモノマー100重量部に対して、通常、0.0001〜10重量部、好ましくは0.001〜5重量部、より好ましくは0.01〜2重量部の範囲である。
【0043】
本発明の重合性組成物には、その他の配合剤を配合することができる。その他の配合剤としては、着色剤、光安定剤、顔料、発泡剤などを用いることができる。着色剤としては、染料、顔料などが用いられる。染料の種類は多様であり、公知のものを適宜選択して使用すればよい。これらのその他の配合剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その使用量は、本発明の効果を損ねない範囲で適宜選択される。
【0044】
本発明の重合性組成物は、上記成分を混合して得ることができる。混合方法としては、常法に従えばよく、例えば、重合触媒を適当な溶媒に溶解若しくは分散させた液(触媒液)を調製し、別にシクロオレフィンモノマーや架橋剤などの必須成分、及び所望によりその他の配合剤等を配合した液(モノマー液)を調製し、該モノマー液に該触媒液を添加し、攪拌することによって調製することができる。
【0045】
(樹脂成形体)
本発明の樹脂成形体は、本発明の重合性組成物を重合、好ましくは開環重合して得られるものである。重合性組成物の開環重合は、塊状重合法又は溶液重合法、好ましくは塊状重合法により行われる。
【0046】
本発明の重合性組成物を開環重合して樹脂成形体を得る方法に限定はない。例えば、(a)重合性組成物を支持体上に塗布し、次いで開環重合する方法、(b)重合性組成物を成形型の空間部に注入し、次いで開環重合する方法、(c) 重合性組成物を強化繊維に含浸させ、次いで開環重合する方法などが挙げられる。
【0047】
本発明の重合性組成物は粘度が低いので、(a)の方法における塗布は円滑に実施でき、(b)の方法における注入は複雑形状の空間部であっても迅速に泡かみを起こさずに行き渡らせることが可能であり、(c)の方法においては強化繊維に対して速やかに満遍なく含浸させることができる。
【0048】
(a)の方法によれば、フィルム状、板状等の樹脂成形体が得られる。該成形体の厚さは、通常、15mm以下、好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下である。
支持体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ナイロンなどの樹脂からなるフィルムや板; 鉄、ステンレス、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム、金、銀などの金属材料からなるフィルムや板;などが挙げられる。中でも、金属箔又は樹脂フィルムの使用が好ましい。これらの金属箔又は樹脂フィルムの厚みは、作業性などの観点から、通常、1〜150μm 、好ましくは2〜100μm 、より好ましくは3〜50μmである。
【0049】
支持体上に本発明の重合性組成物を塗布する方法としては、スプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法、カーテンコート法、ダイコート法、スリットコート法などの公知の塗布方法が挙げられる。
支持体上に塗布された重合性組成物を所望により乾燥させ、次いで開環重合する。開環重合するために重合性組成物を加熱する。加熱方法としては、加熱プレート上に支持体に塗布された重合性組成物を載せて加熱する方法、プレス機を用いて加圧しながら加熱(熱プレス) する方法、熱したローラーを押圧する方法、加熱炉を用いる方法などが挙げられる。
【0050】
(b)の方法によって得られる樹脂成形体の形状は、成形型により設定でき、例えば、フィルム状、柱状、その他の任意の立体形状などが挙げられる。
成形型の形状、材質、大きさなどは特に制限されない。かかる成形型としては、従来公知の成形型、例えば、割型構造、すなわちコア型とキャビティー型を有する成形型;2枚の板の間にスペーサーを設けた成形型;などを用いることができる。
【0051】
成形型の空間部(キャビティー)に本発明の重合性組成物を注入する圧力(射出圧)は、通常、0.01〜10MPa、好ましくは0.02〜5MPaである。注入圧力が低すぎると、充填が不充分になり、キャビティー内面に形成された転写面の転写が良好に行われないおそれがあり、注入圧力が高すぎると、使用可能な成形型は剛性が高いものになり経済的ではない。型締圧力は、通常、0.01〜10MPaの範囲内である。
【0052】
空間部に充填された重合性組成物を加熱することによって開環重合させることができる。重合性組成物の加熱方法としては、成形型に配設された電熱器、スチームなどの加熱手段を利用する方法、成形型を電気炉内で加熱する方法などが挙げられる。
【0053】
(c)の方法によって得られる樹脂成形体としては、例えば、開環重合体が強化繊維のすき間に充填されて成るプリプレグが挙げられる。プリプレグの厚さとしては、通常、0.001〜10mm、好ましくは0.01〜1mm、より好ましくは0.05〜0.5mmの範囲である。この範囲にあれば、積層時の賦形性、また、硬化して得られる積層体の機械的強度や靭性などの特性が充分に発揮され、好適である。
【0054】
前記強化繊維としては、格別な制限はないが、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)繊維、アラミド繊維、超高分子ポリエチレン繊維、ポリアミド(ナイロン)繊維、液晶ポリエステル繊維などの有機繊維;ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、タングステン繊維、モリブデン繊維、ブデン繊維、チタン繊維、スチール繊維、ボロン繊維、シリコンカーバイド繊維、シリカ繊維などの無機繊維;などを挙げることができる。これらの中でも、有機繊維やガラス繊維が好ましく、特にアラミド繊維、液晶ポリエステル繊維、ガラス繊維が好ましい。ガラス繊維としては、Eガラス、NEガラス、Sガラス、Dガラス、Hガラス等の繊維が好適に用いることができる。強化繊維の形状としては、マット、クロス、不織布などが挙げられる。
【0055】
上記強化繊維は、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。その使用量は、所望により適宜選択されるが、樹脂成形体あるいは積層体中の、通常、10〜90重量%、好ましくは20〜80重量%、より好ましくは30〜70重量%の範囲である。この範囲にあれば、得られる積層体の誘電特性と機械的強度が高度にバランスされ、好適である。
【0056】
強化繊維に本発明の重合性組成物を含浸させるには、例えば、重合性組成物の所定量を、スプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法、カーテンコート法、ダイコート法、スリットコート法等の公知の方法により強化繊維に塗布し、所望によりその上に保護フィルムを重ね、上側からローラーなどで押圧することにより行うことができる。
【0057】
強化繊維に重合性組成物を含浸させた後は、含浸物を所定温度に加熱して開環重合させることにより重合体が含浸したプリプレグを得ることができる。加熱方法としては、例えば、含浸物を支持体上に設置して前記(a)の方法のようにして加熱する方法、予め型内に強化繊維を設置しておき、重合性組成物を含浸させてから前記(b)の方法のようにして加熱する方法などが挙げられる。
上記(a)、(b)及び(c)のいずれの方法においても、重合性組成物を開環重合させるための加熱温度〔(b)の方法においては金型温度〕は、通常、30〜250℃、好ましくは50〜200℃である。重合時間は適宜選択すればよいが、通常、10秒間〜20分間、好ましくは30秒間〜5分間以内である。
【0058】
重合性組成物を所定温度に加熱することにより開環重合反応が開始される。開環重合反応が開始されると、重合性組成物の温度は反応熱により急激に上昇し、短時間(例えば、10秒間から5分間程度)でピーク温度に到達する。さらに重合反応は進むが、重合反応は次第に収まり、温度が低下していく。ピーク温度を、この重合反応により得られる樹脂成形体を構成する樹脂のガラス転移温度以上になるように制御すると、完全に重合が進行するので好ましい。ピーク温度は加熱温度により制御できる。また、連鎖移動剤を配合して重合した際に得られる樹脂成形体の場合、樹脂成形体の重合反応率は、通常、80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。なお、樹脂成形体の重合反応率は、例えば、樹脂成形体を溶媒に溶解して得られた溶液をガスクロマトグラフィーにより分析することで求めることができる。重合がほぼ完全に進行している樹脂成形体は、残留モノマーを実質的に含まず、そのため臭気が実質的にない。開環重合反応時のピーク温度が高くなりすぎると、開環重合反応のみならず、一挙に架橋反応も進行してしまうおそれがあるため、開環重合反応のみを完全に進行させ、架橋反応が進行しないようにするためには、開環重合のピーク温度を、好ましくは200℃未満に制御する必要がある。この場合、開環重合でのピーク温度をラジカル発生剤の1分間半減期温度以下とするのが好ましい。例えば、ジ−t−ブチルペルオキシドでは186℃、3,3,5,7,7−ペンタメチル−1,2,4−トリオキセパン では205℃である。
【0059】
(積層体)
本発明の積層体は、本発明の樹脂成形体と、当該樹脂成形体及び/又は当該樹脂成形体以外の他の基体材料とを積層し、所望により更に賦形した後に、硬化することで製造することができる。
前記基体材料としては、回路基板で一般に用いられるものを格別な制限なく用いることができ、使用目的に応じて適宜選択すればよい。例えば、銅箔、アルミ箔、ニッケル箔、クロム箔、金箔、銀箔などの金属箔;プリント配線板製造用基板;ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)性フィルムや導電性ポリマーフィルムなどの樹脂フィルム;などが挙げられ、金属箔、中でも銅箔が好適に用いられる。
【0060】
前記金属箔の厚さは、使用目的に応じて適宜選択すればよいが、通常、1〜50μm、好ましくは3〜30μm、より好ましくは5〜20μm、最も好ましくは5〜15μmの範囲である。金属箔は、その表面が、シランカップリング剤、チオールカップリング剤、チタネートカップリング剤、各種接着剤などで処理されているものが好ましく、シランカップリング剤で処理されているものがより好ましい。本発明の樹脂成形体と、金属箔との接着界面における、金属箔表面の粗度(Rz)は、特に限定されないが、通常、10μm以下、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下、さらに好ましくは2μm以下である。一方、粗度の下限は、格別な限定はないが、通常10nm以上、好ましくは5nm以上、より好ましくは1nm以上である。金属箔表面の粗度が上記範囲にあれば、高周波伝送に於けるノイズ、遅延、伝送ロス等の発生が抑えられ好ましい。金属箔表面の粗度の調整は、積層する金属箔表面の粗度が所望の範囲にあるものを選択して使用することにより容易に行うことができる。かかる表面粗度を有する金属箔は市販品として入手可能である。なお、粗度(Rz)は、AFM(原子間力顕微鏡)により測定可能である。
【0061】
積層及び硬化させる方法は、常法に従えばよい。例えば、平板成形用のプレス枠型を有する公知のプレス機、シートモールドコンパウンド(SMC)やバルクモールドコンパウンド(BMC)などのプレス成形機を用いて熱プレスを行なうことができる。加熱温度は、架橋剤により架橋反応が誘起される温度以上である。例えば、架橋剤としてラジカル発生剤を使用する場合、通常、1分間半減期温度以上、好ましくは1分間半減期温度より5℃以上高い温度、より好ましくは1分間半減期温度より10℃以上高い温度である。典型的には、100〜300℃、好ましくは150〜250℃の範囲である。加熱時間は、0.1〜180分間、好ましくは1〜120分間、より好ましくは2〜60分間の範囲である。プレス圧力としては、通常、0.1〜20MPa、好ましくは0.1〜10MPa、より好ましくは1〜5MPaである。また、熱プレスは、真空又は減圧雰囲気下で行ってもよい。
かくして得られる本発明の積層体は、低線膨張率、高機械的強度、及び低誘電正接などのシクロオレフィン樹脂が有する基本特性をそのまま備えており、高誘電率かつ低誘電正接であって、さらに誘電率の温度変化率が小さいという優れた誘電特性を有する。本発明の積層体の誘電率としては、比誘電率で、好ましくは7以上、誘電正接としては、好ましくは0.0025以下、誘電率の温度変化率としては、好ましくは300ppm/℃以下である。それらの特性値は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。また、本発明の積層体は、機械的強度、耐熱性及び冷熱衝撃試験での耐クラック性等の特性にも優れる。従って、本発明の積層体は、例えば、マイクロ波の周波数での使用に対応した回路基板、高エネルギー密度キャパシタ、誘電体フィルタ、誘電体アンテナ、埋設デバイス及びマルチチップモジュール等の誘電体デバイスに好適に使用することができる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例における部及び%は、特に断りのない限り重量基準である。
【0063】
実施例及び比較例における各特性は、下記の方法に従い測定、評価した。
(1)誘電率
インピーダンスアナライザー(アジレントテクノロジー社製、型番号E4991A)を用いて周波数3GHzにおける比誘電率(εr)を容量法にて測定し、下記基準で評価した。
◎:7以上
△:5以上、7未満
×:5未満
(2) 誘電正接
インピーダンスアナライザー(アジレントテクノロジー社製、型番号E4991A)を用いて周波数3GHzにおける誘電正接(tanδ)を容量法にて測定し、下記基準で評価した。
◎:0.0025以下
△:0.0025超、0.005以下
×:0.005超
(3)誘電率の温度変化率(TCK)
積層体サンプルについて、−30℃〜+100℃の温度範囲で誘電率の温度変化率を求め、以下の基準に従って評価した。なお、誘電率はインピーダンスアナライザー(アジレントテクノロジー社製、型番号E4991A)を用いて容量法にて測定し、温度変化率は|TCK|として表し、下記基準で評価した。
◎:100ppm/℃以下
○:100ppm/℃超、300ppm/℃以下
×:300ppm/℃超
(4)機械的強度
積層体サンプルについてJIS C6481に基づいて銅箔引き剥がし強さの測定を行い、下記基準に従って評価した。銅箔の厚さは18μmとした。
◎:0.8kN/m以上
○:0.6kN/m以上、0.8kN/m未満
×:0.6kN/m未満
(5)耐熱性
積層体サンプルについて、動的粘弾性測定装置(DMA;SIIナノテクノロジー社製)を用い、引っ張りモード(5℃/分で昇温)にて、積層体を構成する樹脂のガラス転移点(Tg)を測定し、下記基準に従って評価した。
◎:Tg>150℃
×:Tg≦150℃
(6)耐クラック性
積層体サンプルについて、−50℃〜+125℃の温度範囲で所定回数の冷熱衝撃試験を行った後の外観観察を行い、以下の基準に従って評価した。なお、冷熱衝撃試験は、冷熱衝撃試験装置(エスペック社製、型番:TSA−71H−W)により行った。
◎:500サイクル終了後のサンプルで、クラックの発生が確認されない
○:300サイクル終了後のサンプルで、クラックの発生が確認されない
×:300サイクル終了後のサンプルで、クラックの発生が確認される
【0064】
実施例1
ベンジリデン(1,3−ジメシチル−4−イミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド51部と、トリフェニルホスフィン79部とを、トルエン952部に溶解させて触媒液を調製した。これとは別に、シクロオレフィンモノマーとしてジシクロペンタジエン100部、連鎖移動剤としてアリルメタクリレート0.74部、架橋剤として3,3,5,7,7−ペンタメチル−1,2,4−トリオキセパン(1分間半減期温度205℃)2部、架橋助剤としてトリメチロールプロパントリメタクリレート20部、非ハロゲン難燃剤としてトリキシレニルホスフェート80部、複合誘電セラミックスとして、前記基本組成においてa〜eの値が各成分の好ましい配合比率の範囲にあり、各成分元素が以下の組成:Sr(7モル%)、Ca(13モル%)、Li(40モル%)、La(4モル%)、Nd(36モル%)で含まれる酸化物粉末を190部、フェノール系老化防止剤として3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール1部を混合してモノマー液を調製した。ここに上記触媒液をシクロオレフィンモノマー100gあたり0.12mLの割合で加えて撹拌し、重合性組成物を調製した。
【0065】
ついで、得られた重合性組成物をガラスクロス(Eガラス)に含浸させ、これを120℃で5分間重合反応を行い、厚さ0.15mmのプリプレグを得た。プリプレグのガラスクロス含有量は40%であった。
次に、作製したプリプレグ6枚を重ね、さらに12μmF2銅箔(シランカップリング剤処理電解銅箔、粗度Rz=1,600nm、古河サーキットホイル社製)で積層したプリプレグシートを挟み、205℃で20分間、3MPaにて加熱プレスを行い積層体を得た。得られた積層体につき、前記(1)〜(6)の各特性を評価した。その結果を表1に示す。
【0066】
実施例2
複合誘電セラミックスを、前記基本組成においてa〜eの値が各成分の好ましい配合比率の範囲にあり、各成分元素が以下の組成:Ba(2モル%)、Sr(3モル%)、Ca(15モル%)、Li(40モル%)、La(4モル%)、Nd(36モル%)で含まれる酸化物粉末に変える以外は実施例1と同様にして重合性組成物を調製し、プリプレグ及び積層体を得て、各特性を評価した。その結果を表1に示す。
【0067】
実施例3
複合誘電セラミックスの配合量を250部に変える以外は実施例1と同様にして重合性組成物を調製し、プリプレグ及び積層体を得て、各特性を評価した。その結果を表1に示す。
【0068】
実施例4
シクロオレフィンモノマーをテトラシクロドデセン80部とジシクロペンタジエン20部に変える以外は実施例1と同様にして重合性組成物を調製し、プリプレグ及び積層体を得て、各特性を評価した。その結果を表1に示す。
【0069】
実施例5
シクロオレフィンモノマーをテトラシクロドデセン60部と5−エチリデン−2−ノルボルネン40部に変える以外は実施例1と同様にして重合性組成物を調製し、プリプレグ及び積層体を得て、各特性を評価した。その結果を表1に示す。
【0070】
比較例1
実施例1のプリプレグにおいて、基体樹脂であるシクロオレフィンポリマーがポリビニルベンジルエーテル系の熱硬化性樹脂となるようにしてプリプレグを作製し、さらに該プリプレグを用いて実施例1と同様にして積層体を得た。それらのプリプレグ及び積層体について各特性を評価した。その結果を表1に示す。
【0071】
比較例2
実施例1のプリプレグにおいて、基体樹脂であるシクロオレフィンポリマーがエポキシ系の熱硬化性樹脂となるようにしてプリプレグを作製し、さらに該プリプレグを用いて実施例1と同様にして積層体を得た。それらのプリプレグ及び積層体について各特性を評価した。その結果を表1に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
表1より、実施例1〜5で得られた積層体は、高誘電率かつ低誘電正接であり、誘電率の温度変化率が小さく、しかも機械的強度、耐熱性、及び冷熱衝撃試験での耐クラック性に優れることが分かる。一方、比較例1と2の積層体では、誘電率については実施例1〜5で得られた積層体と同等であるものの、その他の特性はいずれも明らかに劣ることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロオレフィンモノマー、重合触媒、架橋剤、架橋助剤、および一般式(M、Li、RE)xTiO(式中、Mは、Ba、SrおよびCaからなる群より選択される少なくとも1種であり、REは、La、Ce、Pr、Nd、Sm、YbおよびDyからなる群より選択される少なくとも1種であり、xは、0.9≦x≦1.05を満たす。)で示される複合誘電セラミックスを含有してなる重合性組成物。
【請求項2】
連鎖移動剤をさらに含むものである請求項1記載の重合性組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の重合性組成物を重合してなる樹脂成形体。
【請求項4】
請求項1に記載の重合性組成物を支持体上に塗布し、次いで重合してなる樹脂成形体。
【請求項5】
請求項1に記載の重合性組成物を成形型の空間部に注入し、次いで重合してなる樹脂成形体。
【請求項6】
請求項1に記載の重合性組成物を強化繊維に含浸させ、次いで重合してなる樹脂成形体。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれかに記載の樹脂成形体と、当該樹脂成形体および/または他の基体材料とを積層し、次いで硬化してなる積層体。
【請求項8】
誘電率の温度変化率(TCK)が300ppm/℃以下である請求項7記載の積層体。
【請求項9】
請求項7または8に記載の積層体を用いてなる誘電体デバイス。

【公開番号】特開2010−270271(P2010−270271A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−125260(P2009−125260)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】