説明

複合配線基板の製造方法

【課題】 作業工数を減らし、安価に製造できるとともにボイドを効果的に排出できる寸法精度の高い複合配線基板の製造方法を提供する。
【解決手段】 第1のガラスセラミックグリーンシート11〜15と、これよりも高い温度で焼成収縮を開始する第2のガラスセラミックグリーンシート21〜24とを作製し、接続端子用パターン41が上面となるように、ガラスセラミックグリーンシート積層体5を作製し、第2のガラスセラミックグリーンシート21〜24の焼成収縮終了温度よりも溶融温度が高く、接続端子用パターン41に対応して形成された複数の貫通孔71を有する中継基板7を作製し、接続端子用パターン41と複数の貫通孔71とが重なるように、ガラスセラミックグリーンシート積層体5の上面に接合材8を介して中継基板7を積層し、中継基板7が積層されたガラスセラミックグリーンシート積層体5を焼成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層配線基板の一方主面に熱応力を緩和するための中継基板が搭載された寸法精度の高い複合配線基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、多層配線基板の寸法精度(主面に形成された端子の間隔の精度)を向上させるために、焼成時の平面方向の収縮を抑制する方法として、第1のガラスセラミックグリーンシートと、第1のガラスセラミックグリーンシートの焼成収縮終了温度よりも高い温度で焼成収縮を開始する第2のガラスセラミックグリーンシートとを用意し、それぞれのガラスセラミックグリーンシートに貫通孔を形成して貫通導体用ペーストを充填するとともにそれぞれのガラスセラミックグリーンシートの一方主面に配線層用導体ペーストを塗布し、第1のガラスセラミックグリーンシートと第2のガラスセラミックグリーンシートとを組み合わせてガラスセラミックグリーンシート積層体を作製し、ガラスセラミックグリーンシート積層体を第2のガラスセラミックグリーンシートが焼成収縮する温度で焼成するという方法が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
このような製造方法によれば、第1のガラスセラミックグリーンシートが焼成収縮する際は、焼成収縮を開始していない状態の第2のガラスセラミックグリーンシートによって平面方向の収縮が抑制される。一方、第2のガラスセラミックグリーンシートが焼成収縮する際は、すでに焼成収縮を終了した状態の第1のガラスセラミックグリーンシートによって平面方向の収縮が抑制される。なお、平面方向の収縮が抑制される分、積層方向の収縮は大きくなる。以上のようなメカニズムにより、多層配線基板(ガラスセラミックグリーンシート積層体の焼成後の状態)の寸法精度(主面に形成された端子の間隔の精度)が高くなる。
【特許文献1】特開2001−15875号公報
【特許文献2】特許第3363227号公報
【特許文献3】特開平10−41606号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この多層配線基板の製造方法によれば、第1のガラスセラミックグリーンシートが焼成収縮を終了した後に第2のガラスセラミックグリーンシートが焼成収縮を開始するため、例えば第2のガラスセラミックグリーンシートにホウ素等の高温にてガス化する無機組成物が多く含まれ、ボイドが発生しやすい状態のときに、第2のガラスセラミックグリーンシートで発生したボイドが第1の絶縁層(第1のガラスセラミックグリーンシートの焼成収縮終了後の状態)によってその行き場を塞がれて外部に排出されず、第1の絶縁層との境界付近に溜まってしまい、絶縁信頼性が低下したり、層間剥離が生じたりするという問題があった。
【0005】
一方、圧力印加機構を用いてガラスセラミックグリーンシート積層体を上下から加圧しながら焼成することで、ボイドを効果的に排出しつつ、寸法精度のよい多層配線基板を製造する方法が提案されているが(特許文献2を参照)、この方法によれば、加圧焼成用の特別な設備を必要とし、設備コストの点で問題がある。
【0006】
また、上記方法により得られる多層配線基板とこの多層配線基板が実装されるプリント配線基板との間の熱膨張係数の差が大きい場合には、多層配線基板とプリント配線基板との間に中継基板を設ける方法が知られているが(特許文献3を参照)、この方法によれば、多層配線基板をプリント配線基板に実装するまでの作業工数の低減が図れなかった。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、作業工数を減らし、安価に製造できるとともにボイドを効果的に排出できる寸法精度の高い複合配線基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、プリント配線基板に実装される際に該プリント配線基板と対向する側となる多層配線基板の一方主面に熱応力を緩和するための中継基板が搭載されてなる、前記多層配線基板と前記中継基板とを備えた複合配線基板の製造方法であって、上下に複数積層されてガラスセラミックグリーンシート積層体となる第1のガラスセラミックグリーンシートと、該第1のガラスセラミックグリーンシートの焼成収縮終了温度よりも高い温度で焼成収縮を開始する第2のガラスセラミックグリーンシートとを作製する工程と、前記第1のガラスセラミックグリーンシートおよび前記第2のガラスセラミックグリーンシートに貫通孔を形成して該貫通孔の内部に貫通導体用ペーストを充填する工程と、前記ガラスセラミックグリーンシート積層体の最上層に配置される前記第1のガラスセラミックグリーンシートまたは前記第2のガラスセラミックグリーンシートの一方主面に配線層用導体ペーストを塗布して接続端子用パターンを形成するとともに、前記ガラスセラミックグリーンシート積層体の前記最上層以外の層に配置される前記第1のガラスセラミックグリーンシートおよび前記第2のガラスセラミックグリーンシートの少なくとも一方の一方主面に内部配線層用パターンを形成するための配線層用導体ペーストを塗布する工程と、前記接続端子用パターンが上面側となるように、前記第1のガラスセラミックグリーンシートと前記第2のガラスセラミックグリーンシートとを複数積層してガラスセラミックグリーンシート積層体を作製する工程と、前記第2のガラスセラミックグリーンシートの焼成収縮終了温度よりも溶融温度が高い、前記接続端子用パターンに対応して形成された複数の貫通孔を有する中継基板を作製する工程と、前記接続端子用パターンと前記複数の貫通孔とが重なるように、前記ガラスセラミックグリーンシート積層体の上面に接合材を介して前記中継基板を積層する工程と、前記中継基板が積層された前記ガラスセラミックグリーンシート積層体を、前記第2のガラスセラミックグリーンシートが焼成収縮する温度であって前記中継基板が溶融しない温度で焼成する工程とを有することを特徴とする複合配線基板の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第1のガラスセラミックグリーンシートとこの第1のガラスセラミックグリーンシートの焼成収縮終了温度よりも高い温度で焼成収縮を開始する第2のガラスセラミックグリーンシートとを組み合わせてガラスセラミックグリーンシート積層体を作製して焼成するので、平面方向の収縮が抑制され、複合配線基板を構成する多層配線基板の寸法精度を高くすることができる。
【0010】
また、ガラスセラミックグリーンシート積層体の平面方向の収縮が抑制されることから、第2のガラスセラミックグリーンシートの焼成収縮終了温度よりも溶融温度が高い中継基板を、接合材を介してガラスセラミックグリーンシート積層体に積層した状態で焼成しても、多層配線基板から中継基板がとれたり、接合材にクラックが生じたりするおそれは少ない。したがって、ガラスセラミックグリーンシート積層体に中継基板を積層して、中継基板による荷重をかけながら焼成することができ、このようにして焼成することにより、第2のガラスセラミックグリーンシートで発生し、第1の絶縁層(第1のガラスセラミックグリーンシートの焼成収縮終了後の状態)との境界付近に溜まってしまったボイドを、中央から周縁に向かって押し出すようにして効果的に排出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1は本発明の複合配線基板の製造方法の一実施形態の説明図であり、図2は本発明によって得られた複合配線基板をプリント配線基板に実装したときの状態を示す概略断面図である。
【0013】
本発明は、プリント配線基板に実装される際にプリント配線基板と対向する側となる多層配線基板の一方主面に熱応力を緩和するための中継基板が搭載されてなる、多層配線基板と中継基板とを備えた複合配線基板の製造方法であって、以下に述べる工程を有する。
【0014】
まず、上下に複数積層されてガラスセラミックグリーンシート積層体5となる第1のガラスセラミックグリーンシート11、12、13、14、15と、第1のガラスセラミックグリーンシート11、12、13、14、15の焼成収縮終了温度よりも高い温度で焼成収縮を開始する第2のガラスセラミックグリーンシート21、22、23、24とを作製する。
【0015】
ここで、それぞれのグリーンシートがガラスセラミックグリーンシートであるのは、焼成温度を低くすることができ、後述の貫通導体用ペースト3および配線層用導体ペーストとして銀、銅または金等の低融点で低抵抗の金属を主成分として用いることができ、信号の高速化、高周波化に十分に対応できるからである。
【0016】
第1のガラスセラミックグリーンシート11、12、13、14、15と第2のガラスセラミックグリーンシート21、22、23、24とは、焼成時の焼成収縮開始温度および焼成収縮終了温度が異なっていて、具体的には、第2のガラスセラミックグリーンシート21、22、23、24の焼成収縮開始温度が、第1のガラスセラミックグリーンシート11、12、13、14、15の焼成収縮終了温度よりも高くなっている。例えば、第2のガラスセラミックグリーンシート21、22、23、24に含まれるガラスの軟化点が、第1のガラスセラミックグリーンシート11、12、13、14、15に含まれるガラスの結晶化点よりも高くなるように調整することで、このように第2のガラスセラミックグリーンシート21、22、23、24の焼成収縮開始温度を第1のガラスセラミックグリーンシート11、12、13、14、15の焼成収縮終了温度よりも高くすることができる。なお、ここでいう焼成収縮開始温度とは、対象とする材料を単独で焼成した時に、0.5%体積収縮したときの温度をいう。また、焼成収縮終了温度とは、焼成前の状態から焼成終了後の状態までの収縮量に対し90%以上体積収縮したときの温度をいう。体積収縮はTMA(熱機械分析)の線収縮から体積収縮に換算して決定される。
【0017】
第1のガラスセラミックグリーンシート11、12、13、14、15および第2のガラスセラミックグリーンシート21、22、23、24を作製するための原料としては、1000℃未満の低温で焼成収縮させることができるように、ガラス粉末30〜100質量%、セラミック粉末0〜70質量%の割合で調合したものを用いるのが好ましい。
【0018】
ガラス粉末としては、SiOを含み、Al、B、ZnO、PbO、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属酸化物のうちの少なくとも1種以上を含有したものであって、例えばSiO−B系、SiO−B−Al系、SiO−B−MO系、SiO−B−Al系−MO系(但し、MはCa、Sr、Mg、BaまたはZnを示す)等のホウケイ酸ガラス、アルカリ珪酸ガラス、Ba系ガラス、Pb系ガラス、Bi系ガラス等が挙げられる。これらのガラスとしては、例えば、焼成後にリチウムシリケート、クォーツ、クリストバライト、エンスタタイト、コ−ジェライト、ムライト、アノ−サイト、セルジアン、スピネル、ガ−ナイト、ウイレマイト、ドロマイト、ペタライト、ディオプサイドやその置換誘導体の結晶を少なくとも1種類析出する結晶性ガラスが挙げられ、セラミック粉末の配合量との関係で、焼成後に結晶を析出しない非結晶性ガラスを用いてもよい。
【0019】
具体的には、第1のガラスセラミックグリーンシート11、12、13、14、15に用いられるガラス粉末としては、低温で焼成収縮を開始させるとともに結晶を多く析出させるために、例えばSiをSiO換算で1〜30質量%、AlをAl換算で5〜25質量%、MgをMgO換算で25〜60質量%、CaをCaO換算で0〜10質量%、BaをBaO換算で0〜20質量%、BをB換算で5〜25質量%、PをP換算で0〜10質量%、SnをSnO換算で0〜10質量%、NaをNaO換算で0〜3質量%を含むものが挙げられる。
【0020】
また、第2のガラスセラミックグリーンシート21、22、23、24に用いられるガラス粉末としては、第1のガラスセラミックグリーンシート11、12、13、14、15の焼成収縮の終了後に第2のガラスセラミックグリーンシート21、22、23、24が焼成収縮を開始するように、例えばSiをSiO換算で25〜45質量%、AlをAl換算で10〜25質量%、MgをMgO換算で10〜24質量%、BをB換算で5〜20質量%、ZnをZnO換算で5〜20質量%、およびCaをCaO換算で0.5〜4質量%を含むものが挙げられる。
【0021】
また、セラミック粉末としては、クォーツ、クリストバライト等のSiOや、Al、ZrO、コージェライト、ムライト、フォルステライト、エンスタタイト、スピネル、マグネシア等が用いられる。これらのうち、高強度化、低コスト化等の点でアルミナが、また高熱膨張化の点でクォーツを用いることが好ましい。
【0022】
上述した原料粉末を所定量秤量し、有機バインダ、有機溶剤、および所望により可塑剤等を加えてスラリーを調製した後、ドクターブレード法、圧延法、プレス法等の周知の成形法によりシート状に成形して、厚さ10〜500μmの第1ガラスセラミックグリーンシート11、12、13、14、15および第2のガラスセラミックグリーンシート21、22、23、24をそれぞれ作製する。
【0023】
次に、第1のガラスセラミックグリーンシート11、12、13、14、15および第2のガラスセラミックグリーンシート21、22、23、24に貫通孔を形成して、この貫通孔の内部に貫通導体用ペースト3を充填する。
【0024】
また、ガラスセラミックグリーンシート積層体5の最上層に配置される第1のガラスセラミックグリーンシートまたは第2のガラスセラミックグリーンシート(本例では第1のガラスセラミックグリーンシート11)の一方主面に配線層用導体ペーストを塗布して接続端子用パターン41を形成するとともに、ガラスセラミックグリーンシート積層体5の最上層以外の層に配置される第1のガラスセラミックグリーンシート12、13、14、15および第2のガラスセラミックグリーンシート21、22、23、24の少なくとも一方の一方主面に内部配線層用パターン42を形成するための配線層用導体ペーストを塗布する。
【0025】
第1のガラスセラミックグリーンシート11、12、13、14、15および第2のガラスセラミックグリーンシート21、22、23、24の少なくとも一方への貫通孔の形成は、パンチング、レーザー、エッチング等の方法などによって行われる。貫通孔に充填する貫通導体用ペースト3は、主成分としての銀粉末、銅粉末、金粉末などに有機バインダおよび有機溶剤を混練したものであり、さらに必要に応じて、電気抵抗、熱伝導性を劣化させない範囲で、他の金属、ガラス、酸化物、炭化物および窒化物等の無機分を含んでいてもよい。充填には、貫通孔に一致する箇所に穿孔されたメタルマスク、あるいは、エマルジョンメッシュスクリーンマスクを用いて、スクリーン印刷する方法を用いる。このとき、マスクを通して貫通導体用ペースト3を押し出す方法として、通常のポリウレタン製等の板状(あるいは剣状)のスキージを用いる方法でもよく、ペースト押し出し式のスキージヘッドを用いて、貫通導体用ペースト3を加圧注入する方法でもよい。
【0026】
また、接続端子用パターン41または内部配線層用パターン42を形成するための配線層用導体ペーストの塗布は、スクリーン印刷法などによって行われる。配線層用導体ペーストは、貫通導体用ペースト3と同様に、主成分としての銀粉末、銅粉末、金粉末などに有機バインダおよび有機溶剤を混練したものであり、さらに必要に応じて、電気抵抗、熱伝導性を劣化させない範囲で、他の金属、ガラス、酸化物、炭化物および窒化物等の無機分を含んでいてもよい。なお、ここで用いられる配線層用導体ペーストは、貫通孔内に充填した貫通導体用ペースト3とは、例えば有機溶剤の量を異ならせるなどの手段によって粘度を異ならせてもよい。貫通導体用ペースト3よりも粘度を低くすることで、厚みを薄くすることができ、精度のよいパターンを形成することができる。これに対し、貫通導体用ペースト3は、粘度を高くすることで、充填後に垂れないようにすることができる。さらに、配線層用導体ペーストと貫通導体用ペースト3とは、主成分およびガラス、無機フィラー等の副成分が異なっていてもよい。
【0027】
なお、貫通導体用ペースト3の充填および配線層用導体ペーストの塗布がなされた後、第1のガラスセラミックグリーンシート11、12、13、14および第2のガラスセラミックグリーンシート21、22、23は60〜100℃で0.5〜3時間程度かけて乾燥される。
【0028】
次に、接続端子用パターン41が上面側となるように、第1のガラスセラミックグリーンシート11、12、13、14、15と第2のガラスセラミックグリーンシート21、22、23、24とを複数積層してガラスセラミックグリーンシート積層体5を作製する。
【0029】
積層には、積み重ねられた第1のガラスセラミックグリーンシート11、12、13、14、15および第2のガラスセラミックグリーンシート21、22、23、24に熱と圧力とを加えて熱圧着する方法、有機バインダ、有機溶剤、可塑剤等からなる接着剤をシート間に塗布する方法等が採用できる。なお、互いのガラスセラミックグリーンシートによる焼成収縮抑制効果の点では、図1に示すように、第1のガラスセラミックグリーンシート11、12、13、14、15と第2のガラスセラミックグリーンシート21、22、23、24とが交互に積層された構成が望ましいが、この形態に限らず、例えば、第1のガラスセラミックグリーンシート11〜14が2層または3層連続して重なるように積層してもよい。また、図1に示す第1のガラスセラミックグリーンシートと第2のガラスセラミックグリーンシートとの配置を入れ替えて、表層に第2のガラスセラミックグリーンシートを配置するようにしてもよく、この場合にも同様のボイド排出効果が得られる。
【0030】
第1のガラスセラミックグリーンシート11、12、13、14、15と第2のガラスセラミックグリーンシート21、22、23、24とを複数組み合わせて積層することで、焼成収縮開始温度の低い第1のガラスセラミックグリーンシート11、12、13、14、15が焼成収縮する際は、未焼成収縮状態にある第2のガラスセラミックグリーンシート21、22、23、24によって平面方向の収縮が抑制され、焼成収縮開始温度の高い第2のガラスセラミックグリーンシート21、22、23、24が焼成収縮する際は、すでに焼成収縮を終了した状態にある第1のガラスセラミックグリーンシート11、12、13、14、15によって平面方向の収縮が抑制される。これにより、複合配線基板を構成する多層配線基板50(ガラスセラミックグリーンシート積層体5の焼成後の状態)の寸法精度が高くなる。ここで、寸法精度が高いとは主面に形成された端子の間隔が精度よく形成されていることをいう。なお、平面方向の収縮が抑制される分、積層方向の収縮は大きくなる。
【0031】
次に、第2のガラスセラミックグリーンシート21、22、23、24の焼成収縮終了温度よりも溶融温度が高い、接続端子用パターン41に対応して形成された複数の貫通孔71を有する中継基板7を作製する。
【0032】
中継基板7とは、図2に示すように、ガラスセラミックグリーンシート積層体5が焼成してなる多層配線基板50と、これが実装されるプリント配線基板9との間の熱膨張係数差によって生じる熱応力を緩和するためのものであって、この中継基板7を設けることによって実装高さ(半田の高さ)をかせぐことができ、半田にかかる熱応力を分散・低減することが可能となり、クラックを抑制し、優れた実装信頼性を得ることができる。
【0033】
中継基板7がない場合は、球状の半田か柱状の半田を用いることが考えられる。しかし、球状の半田を用いた場合は、接続端子の大きさにより半田の直径が制約されるため、高さを大きくすることができない。また、柱状の半田を用いた場合は、高さを大きくすることは可能であるが、半田を接続端子に接続させる際に半田が倒れやすいため、実装方法が煩雑になる。
【0034】
中継基板7は、ガラスセラミックグリーンシート積層体5の上面側に形成された接続端子用パターン41に対応して形成された複数の貫通孔71を有している。そして、少なくとも貫通孔71の内壁が電気絶縁体となっている。多層配線基板50の接続端子410(焼成後の接続端子用パターン41)とプリント配線基板9の接続パッド91とを半田で電気的に接続するためである。なお、貫通孔71はガラスセラミック積層体5に形成された接続端子用パターン41と同一形状(同一径)であるのが好ましい。
【0035】
また、中継基板7は、後述の焼成温度に耐えうるように、第2のガラスセラミックグリーンシート21、22、23、24が焼成収縮を終了する温度では溶融しないような材料で形成されたものである。このような中継基板7の形成材料としては、アルミナ、ムライト、コージェライト、フォルステライトなどのセラミック材料、あるいはCu、Fe、Cu−Wの金属材料に設けられた貫通孔71の内壁にガラスやセラミックペーストを塗布して絶縁処理が施されたものが挙げられる。
【0036】
次に、接続端子用パターン41と複数の貫通孔71とが重なるように、ガラスセラミックグリーンシート積層体5の上面に接合材8を介して中継基板7を積層する。
【0037】
接合材8としては、主成分としての軟化点が600〜800℃のガラス粉末とアルミナ・シリカ・フォルステライトなどのセラミックフィラーなどに有機バインダおよび有機溶剤を混練したものからなるペーストを用いることができる。
【0038】
最後に、中継基板7が積層されたガラスセラミックグリーンシート積層体5を、第2のガラスセラミックグリーンシート21、22、23、24が焼成収縮する温度であって中継基板7が溶融しない温度で焼成して、複合配線基板を得る。
【0039】
具体的には、ガラスセラミックグリーンシート積層体5を十分に焼結させるとともに過焼結を防止する点から、最高温度を800〜1000℃、特に850〜950℃とする。また、焼成にあたっては、最高温度に到達するまで徐々に昇温するか、第2のガラスセラミックグリーンシート21、22、23、24の焼成収縮開始温度未満の温度で一旦炉内温度を保持するなどの温度管理がなされる。また、焼成雰囲気としては、貫通導体用ペースト3や配線層用導体ペーストの主成分に応じて適宜決定され、例えば銀粉末を主成分とする場合には大気雰囲気とするのがよく、銅粉末を主成分とする場合には非酸化性雰囲気とするのがよい。なお、焼成に先立って、ガラスセラミックグリーンシート積層体5を400〜750℃で加熱処理して、ガラスセラミックグリーンシート積層体5中の有機成分を分解除去する。
【0040】
ここで、ガラスセラミックグリーンシート積層体5の平面方向の収縮が抑制されることから、中継基板7をガラスセラミックグリーンシート積層体5に接合材を介して積層した状態で焼成しても、多層配線基板から中継基板がとれたり、接合材にクラックが生じたりするおそれは少ない。したがって、このようにして焼成することにより、第2のガラスセラミックグリーンシートで発生し、第1の絶縁層(第1のガラスセラミックグリーンシートの焼成収縮終了後の状態)によってその行き場を塞がれてしまったボイドを効果的に排出することができる。また、中継基板7に複数の貫通孔71が形成されていることで通気孔の役割を果たし、第1のガラスセラミックグリーンシート11からも効果的にボイドが排出される。
【0041】
このようにして得られた複合配線基板は、図2に示すように、半田6によってプリント配線基板9に実装される。
【0042】
具体的には、多層配線基板50の下面に形成された接続端子410とプリント配線基板9の上面に形成された接続パッド91とを半田6で接合して実装される。
【0043】
ここで、中継基板7の貫通孔71への半田注入には、ペースト状の半田を、ディスペンサーを用いて注入する方法、複数の半田ボールを投入する方法あるいは柱状の半田を貫通孔71に挿入する方法などが挙げられる。半田の種類としては、鉛系共晶半田、鉛系高温半田のほかに、環境保護の観点から鉛フリー半田を用いてもよい。
【0044】
なお、図示はしていないが、多層配線基板50の中継基板7が積層されていない側の面(図2に示す上面)には、半導体素子やチップコンデンサーなどの電子部品を実装することができる。
【実施例】
【0045】
第1のガラスセラミックグリーンシートの原料粉末として、クォーツ粉末15質量%とガラス粉末85質量%とを用いた。ガラス粉末の組成は、SiをSiO換算で15質量%、AlをAl換算で2質量%、MgをMgO換算で40質量%、CaをCaO換算で1質量%、BaをBaO換算で15質量%、BをB換算で20質量%、ZnをZnO換算で1質量%、TiをTiO換算で0.5質量%、NaをNaO換算で0.5質量%、LiをLiO換算で5質量%としたものである。
【0046】
一方、第2のガラスセラミックグリーンシートの原料粉末として、クォーツ粉末45質量%とガラス粉末55質量%とを用いた。ガラス粉末の組成は、SiをSiO換算で50質量%、AlをAl換算で5質量%、MgをMgO換算で20質量%、CaをCaO換算で24質量%、BaをBaO換算で0.5質量%、BをB換算で0.3質量%、LiをLiO換算で0.2質量%としたものである。
【0047】
そして、それぞれの原料粉末に、有機バインダとしてアクリルバインダー、有機溶剤としてトルエンを添加してなるスラリーを調製し、ドクターブレード法により、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)上に厚さ10μmの第1のガラスセラミックグリーンシートを作製するとともに、PETフィルム上に厚さ100μmの第2のガラスセラミックグリーンシートを作製した。
【0048】
その後、第1のガラスセラミックグリーンシートと第2のガラスセラミックグリーンシートとを重ね合わせた後、PETフィルムを剥いで、第1のガラスセラミックグリーンシートと第2のガラスセラミックグリーンシートとからなる複合ガラスセラミックグリーンシートを作製した。
【0049】
第1のガラスセラミックグリーンシートおよび複合ガラスセラミックグリーンシートにパンチングで貫通孔を形成し、その貫通孔内に貫通導体用ペーストを充填するとともに、主面に配線層用導体ペーストと接続端子用導体ペーストをスクリーン印刷で塗布した。ここで、貫通導体用ペースト、配線層用導体ペーストおよび接続端子用導体ペーストの形成材料として、Cu粉末に、有機バインダとしてエチルセルロース、有機溶剤として2−2−4−トリメチル−3−3−ペンタジオールモノイソブチレートを添加してなるペーストを用いた。接続端子は、1つの直径が0.6mmであり、これが1mm間隔で48列×48列の2304個で構成されている。
【0050】
そして、第1のガラスセラミックグリーンシートおよび複合ガラスセラミックグリーンシートを組み合わせて、第1のガラスセラミックグリーンシートと第2のガラスセラミックグリーンシートとが交互に積層され、第1のガラスセラミックグリーンシートが最外層に配置されるようにして、第1のガラスセラミックグリーンシートが31層、第2のガラスセラミックグリーンシートが30層積層され、平面形状が5cm角のガラスセラミックグリーンシート積層体を作製した。
【0051】
次に、ガラスセラミックグリーンシート積層体の上面に、1つの直径が0.6mmであり、これが1mm間隔で48列×48列の2304個で構成された貫通孔を有するアルミナ製の中継基板(5cm角で厚み0.5mm)を、軟化点が760℃のガラス粉末70質量%およびシリカ粉末30質量%を100質量部として、これに固形比率が30%(残部はテルピネオール)のアクリルバインダー30質量部添加してなるペーストを接合材として積層した。
【0052】
そして、上面に中継基板を積層したガラスセラミックグリーンシート積層体と上面に中継基板を積層していないガラスセラミックグリーンシート積層体とを、窒素雰囲気で、700℃にて2時間保持して脱バインダ処理を行った後、焼成最高温度900℃にて焼成を行った。
【0053】
得られたそれぞれのサンプルについて、断面を研磨し、走査型顕微鏡(SEM)を用いて1000倍のSEM写真を撮影し、画像解析装置を用いて、上から2番目の第2絶縁層(第2のガラスセラミックグリーンシートの焼成後の状態)の上から2番目の第1絶縁層(第1のガラスセラミックグリーンシートの焼成後の状態)との境界付近(第1絶縁層との界面から20μmの領域)におけるボイド率を測定した。
【0054】
その結果、中継基板を積層していない多層配線基板のボイド率が20%であったのに対し、本発明により得られた複合配線基板(中継基板を積層した多層配線基板)のボイド率が10%であり、本発明によれば効果的にボイドを排出できることを確認した。
【0055】
また、中継基板を積層していない多層配線基板と本発明により得られた複合配線基板(中継基板を積層した多層配線基板)を、それぞれ共晶半田によりプリント配線基板に実装(評価数=20)し、0−100℃の温度サイクル試験を実施した結果、中継基板を積層していない多層配線基板では、1500サイクルで初期故障が始まり、最後の故障は4000サイクル、平均故障時間は3100サイクルであったのに対して、本発明により得られた複合配線基板(中継基板を積層した多層配線基板)では、初期故障が3500サイクル、最終故障が9000サイクル、平均故障時間は7200サイクルと大幅に実装信頼性が向上されていることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の複合配線基板の製造方法の一実施形態の説明図である。
【図2】本発明によって得られた複合配線基板をプリント配線基板に実装したときの状態を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0057】
11、12、13、14、15・・・第1のガラスセラミックグリーンシート
21、22、23、24・・・第2のガラスセラミックグリーンシート
3・・・貫通導体用ペースト
41・・・接続端子用パターン
410・・・接続端子
42・・・内部配線層用パターン
5・・・ガラスセラミックグリーンシート積層体
50・・・多層配線基板
6・・・半田
7・・・中継基板
71・・・貫通孔
8・・・接合材
9・・・プリント配線基板
91・・・接続パッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント配線基板に実装される際に該プリント配線基板と対向する側となる多層配線基板の一方主面に熱応力を緩和するための中継基板が搭載されてなる、前記多層配線基板と前記中継基板とを備えた複合配線基板の製造方法であって、
上下に複数積層されてガラスセラミックグリーンシート積層体となる第1のガラスセラミックグリーンシートと、該第1のガラスセラミックグリーンシートの焼成収縮終了温度よりも高い温度で焼成収縮を開始する第2のガラスセラミックグリーンシートとを作製する工程と、
前記第1のガラスセラミックグリーンシートおよび前記第2のガラスセラミックグリーンシートに貫通孔を形成して該貫通孔の内部に貫通導体用ペーストを充填する工程と、
前記ガラスセラミックグリーンシート積層体の最上層に配置される前記第1のガラスセラミックグリーンシートまたは前記第2のガラスセラミックグリーンシートの一方主面に配線層用導体ペーストを塗布して接続端子用パターンを形成するとともに、前記ガラスセラミックグリーンシート積層体の前記最上層以外の層に配置される前記第1のガラスセラミックグリーンシートおよび前記第2のガラスセラミックグリーンシートの少なくとも一方の一方主面に内部配線層用パターンを形成するための配線層用導体ペーストを塗布する工程と、
前記接続端子用パターンが上面側となるように、前記第1のガラスセラミックグリーンシートと前記第2のガラスセラミックグリーンシートとを複数積層してガラスセラミックグリーンシート積層体を作製する工程と、
前記第2のガラスセラミックグリーンシートの焼成収縮終了温度よりも溶融温度が高い、前記接続端子用パターンに対応して形成された複数の貫通孔を有する中継基板を作製する工程と、
前記接続端子用パターンと前記複数の貫通孔とが重なるように、前記ガラスセラミックグリーンシート積層体の上面に接合材を介して前記中継基板を積層する工程と、
前記中継基板が積層された前記ガラスセラミックグリーンシート積層体を、前記第2のガラスセラミックグリーンシートが焼成収縮する温度であって前記中継基板が溶融しない温度で焼成する工程と
を有することを特徴とする複合配線基板の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−129650(P2010−129650A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−300732(P2008−300732)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】